ブログ 化学業界の話題 knakのデータベースから 目次
これは下記のブログを月ごとにまとめたものです。
最新分は http://blog.knak.jp/
3月決算の発表が続いている。製品により業績に差が出てきている。
また、退職給付会計の数理計算差異の処理で損益が大幅に変動した会社がある。
旭化成
単位:百万円(配当:円) | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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2006/3期に発生した数理計算上の差異(益236億円)は、従来法では2007/3期に計上するが、10
年定額法に変更。
これにより2007/3期は従来法に比べ、損益は196億円減少。
ケミカルズ営業損益 前年比 +115億円 (数量差 +46、売価差 +522、為替差 +52、コスト差等 -505)
汎用事業(217→315 +98) | |
: | モノマー系は、需給逼迫で価格が急上昇したアジピン酸を始め、海外需要堅調なANM、SM
などを中心に増収増益。 ポリマー系は、ナイロン66樹脂及び繊維「レオナ」などが堅調に推移し、増収増益。 |
高付加価値系事業(188→205 +17) | |
リチウムイオン2次電池用微多孔膜、イオン交換膜の販売増、中国向けイオン交換膜法食塩電解プラントの輸出で増収増益。 |
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帝人
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* 単独決算は関係会社配当金、経営管理料、不動産賃貸収入の収益が中心。
合成繊維
ポリエステル繊維は増収、赤字横這い。
高機能繊維(アラミド繊維、炭素繊維)は需給逼迫で増収・増益。
化成品
フィルム(PET、PEN)は増収・増益
樹脂(PC)は増収・減益
中国ポリマー工場第2系列完成、PCシート大幅拡大・増設完了
(中国ポリマー工場第3系列建設・コンパウンド工場増強決定)
価格軟化(年央底打ち反転)、原料BPA価格
上昇継続
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日本触媒
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注 2002/3は「化学品」と「その他」の2区分 |
基礎化学品の減益幅が大きく、減益となった。
基礎化学品 | |||
: | アクリル酸、同エステル、酸化エチレン、エタノールアミン、高級アルコールは増収。 エチレングリコールは、市況堅調だが、在庫がタイトで販売数量が減少し、減収。 基礎化学品全体では増収となったが、アクリル酸等の市況弱含み、減価償却費等の増加で、大きく減益。 |
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機能性化学品 | |||
高吸水性樹脂は世界的に需要が拡大するなかで、販売数量増加、販売価格是正で増収。 無水マレイン酸等も増収。 販売数量の増加や一部製品の販売価格是正で、前期比 17.0%の増益。
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三菱レイヨン
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2006/3より、退職給付会計における数理計算上の差異の処理方法を、
これまでの定額法償却での営業外費用処理から
発生の翌年度に営業費用として一括償却する方法に変更:
営業損益、経常損益への影響 2007/3 142億円の益 (2006/3 9億円の損)
当期損益への影響 2007/3 約85億円の益
数理計算上の差異の影響除外の場合 |
化成品:(+280億円→+322億円 以下、数理計算上の差異の影響除外の場合)
ダイヤニトリックスの連結子会社化、三菱麗陽高分子材料のフル寄与が増益に貢献
MMAモノマーも販売好調
・ダイヤニトリックス:
アクリロニトリル、アクリルアミド、ポリアクリルアミド及び関連事業での三菱化学とのJV
当初50/50、2006/4/1に三菱レイヨン65%で連結子会社化
・三菱麗陽高分子材料:
江蘇省南通市のアクリル樹脂板、コーティングレジンの製造販売会社
三菱レイヨン 100%
樹脂板:20,000トン/年、塗料用樹脂 3,500トン/年
2005/7 稼動
繊維:(+16億円→-11億円)
原燃料価格高騰に対して価格転嫁不十分で赤字に
炭素繊維・複合材料、機能膜事業その他:(+99億円→+143億円)
炭素繊維・複合材料が産業・スポーツ用途が好調、米国Grafil社設備増強
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住友ベークライト
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退職給付会計の数理計算差異による利益が、06/3の79億円から07/3は 6億円と 73億円減少
数理計算上の差異の影響除外の場合 |
回路製品部門が大幅減益(5億円 → -20億円)
フレキシブル・プリント回路は値下げ圧力が強く、減収。
エポキシ樹脂銅張積層板、フェノール樹脂銅張積層板は増収。
全体として売上高は大幅に増加したが、原料価格の高騰と製品価格の値下りから大幅減益となった。
石化大手の決算も発表になった。
昨秋のナフサ値下がりで製品値下がりが懸念されたが、その後ナフサ価格は値上がりし、5月9日には過去最高値を更新する勢いで、逆に製品値上げが浸透した。
しかし、中国向け中心のPTAやVCMなどは値下がりの影響で前々期に比して利益は大きく下がっている。
電子材料が各社好調ななかで、液晶テレビの価格下落を受け、住友化学の情報電子化学の大幅減益が目立つ。
東レ
売上高は4年連続、営業利益及び経常利益は3年連続、当期純利益は2年連続で過去最高を更新
単位:百万円(配当:円) | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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2008/3予想:
税制改正による減価償却費の増加分を除いた従来ベースは
連結営業利益 113,000、経常利益 106,000、当期純利益
59,000百万円
営業損益対比 (億円) | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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炭素繊維複合材料が増益(118億円→181億円) | |
国内: | 航空宇宙・スポーツ・産業各用途とも旺盛な需要に対応し、炭素繊維、中間基材、成形品それぞれを拡販。 2007/1に稼働開始した愛媛工場増設分の増産・増販効果もあり、増収増益。 |
海外: | 航空機用途・産業用途とも旺盛な需要に対応し拡販。 2006/1から増設設備が稼動した米国子会社の増産・増販効果もあり、増収増益。 |
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三菱ケミカルホールディングス
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営業損益対比 (億円) | ||||||||||||||||||||||||||||||||
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石化: | テレフタル酸、エチレングリコール等の海外市況が弱含みで推移 生産設備トラブルの影響等 |
機能化学: | 炭素事業における原料炭在庫の受払差が当期は差損に転じたこと等 |
ヘルスケア: | 主力医薬品の販売数量増 販売手数料や退職給付費用等販売管理費の減少 |
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三井化学
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国内連結子会社の一部で、建物を除く有形固定資産の減価償却の方法を、当期より定額法から定率法に変更。
三井化学に合わせるもので、従来の方法と比べ、当期の減価償却費は12億円増加。
2006/3 | 2007/3 | 増減 | 内訳 | ||||
数量差 | 価格差 | 比例費差 | 固定費差等 | ||||
機能化学品 | 108 | 135 | 27 | 52 | △ 3 | △ 19 | △ 3 |
機能樹脂 | 101 | 222 | 121 | 9 | 239 | △ 138 | 11 |
基礎化学品 | 218 | 110 | △ 108 | 44 | 541 | △ 699 | 6 |
石油化学 | 159 | 454 | 295 | 61 | 662 | △ 429 | 1 |
その他 | 6 | 21 | 15 | 2 | 2 | △ 6 | 17 |
消去・全社 | △ 5 | △ 25 | △ 20 | △ 20 | |||
合計 | 587 | 917 | 330 | 168 | 1,441 | △1,291 | 12 |
機能樹脂:エラストマー、特殊ポリオレフィン、エンプラ。塗料用原料樹脂
アクリルアマイド、ウレタン原料、ウレタン樹脂
◎
TDIの市況が東・東南アジア、特に中国で改善
基礎化学品:PTA、PET、フェノール、ビスフェノールA、EO/EG
◎
各製品とも原料価格の高騰によるコストアップ分の全てをカバーするには至らず。
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住友化学
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同社の場合、特に説明がないが、退職年金積み立て超過が612億円あり、3年間で業績に反映させるので、本年度は約 235億円の増益要因になっている。(本年度 248億円、前年度 13億円)
営業損益対比 (億円) | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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情報電子化学: |
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: | 液晶ディスプレイ材料における売価の低下、減価償却費・試作開発費等の固定費の増加で前期比 182億円減益 |
医薬品: | |
大日本住友製薬の業績が通年で寄与。 |
薄型テレビの競争は激しく、少し前まで1インチ
1万円だったのが、3千円を切った。今後も下がることは必至で、上がることはあり得ない。
液晶ディスプレイ材料もコスト削減でどこまで採算を維持できるかがキイであろう。
1年前の懸念が的中した。
2006/3/4 ハイテク材料バブル説
付記
液晶用光学フィルム最大手の日東電工でも、「液晶テレビ用の需要が拡大したが、製品価格低下の影響を大きく受け、また液晶テレビパネルの急速な大型化の影響により、光学フィルムの歩留まりなど生産効率が悪化」したとしている。
液晶表示関連材料の属する電子材料部門の営業利益は、前期の587億円から314億円に46.4%減となった。
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東ソー
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売上高、営業利益、経常利益はいずれも過去最高。
営業損益対比 (億円) | ||||||||||||||||||||||||
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機能商品: | |
: | 無機・有機ファイン製品、計測・診断商品、水処理装置、電子材料(石英ガラス、スパッタリングターゲット)、機能材料、ウレタン原料等 日本ポリウレタン工業を連結子会社化し、ウレタン原料が新たに加わった。 |
同社の増収・増益要因の説明 | |
(1) | VCM、PVC、キュメン等の国際市況商品の輸出価格を国際需給バランスの好転を支えに底上げできたこと |
(2) | ポリエチレン、苛性ソーダ、PVC等の国内価格についても原燃料の上昇分を転嫁することで是正できたこと |
(3) | エチレンアミン、ジルコニア、石英ガラス、体外診断用医薬品など育成・強化に注力した機能商品の多くが順調に伸びたこと |
(4) | 日本ポリウレタン工業を連結子会社化したことによって全体の収益力を強化できたこと等 |
(1)のVCM、PVC価格は、大幅値下がりからの底上げで、それらの属する基礎原料部門の営業損益は前々期の204億円からは非常に下がった状況にある。
2007/5/12 米コンパウンド会社 Teknor Apex、中国進出
米コンパウンド会社 Teknor Apex が蘇州でコンパウンドの生産を行う。アジアではシンガポールのSingapore Polymer Corporation (SPC)を買収し、コンパウンド技術を移転したのに続く。
生産するのは子会社Teknor Apex (Suzhou) Advanced Polymer Compounds Co. で、家電、自動車、建築、エレクトロニクス、医療器具、電線・ケーブル、その他向けに国際規格に合ったコンパウンド(硬質・軟質塩ビやTPE、エンプラコンパウンドなど)を生産する。当初能力は2系列計 14千トンで、2年内に増設する。
ーーー
Teknor Apex は1924年に Apex Tire Company としてスタートした。
1949年に電線・ケーブル産業がゴムから塩ビに原料転換するのを機に塩ビコンパウンド生産を始めた。塩ビホース生産から Lawn and Garden 事業が出来た。
1959年には着色料の販売を開始している。
現在、次の7部門を持つ。
・Vinyl
・Thermoplastic
Elastomer
・Teknor
Color Company
・Chemicals
・Specialty
Compounding
・Lawn
& Garden
・Commercial
Products
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2001年10月、同社はシンガポールのSingapore Polymer Corporation (SPC)を買収した。
SPCはNorsk Hydro とシンガポール開発銀行のJVで、以前はPVCを生産(能力28千トン)していたが、その後レジンの生産を中止し、次のようなコンパウンド等の生産を行っていた。(能力70千トン)
硬質・軟質塩ビコンパウンド、着色料・添加剤マスターバッチ、ポリオレフィンコンパウンド、
スチレン・ポリオレフィンコンパウンド、TPE、その他
SPCは既存製品とともに、Teknor Apex が開発した製品を合わせ供給し、アジアに拠点を持つ多国籍企業に米国と同じ製品を供給した。
Teknor Apex
の7部門のうち、Lawn
& Garden と Commercial Products を除く 5部門がSPCを通じてアジア進出を行った。
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2004年12月、Teknor Apex は英国と米国でエンジニアリング樹脂コンパウンドを供給する英国のChem Polymer を買収した。
英国2工場、米国1工場で合計能力30千トンを持ち、自動車、家電、電子電機、その他向けに、ナイロン6 &66、アセタール、PBT、PET 等のコンパウンドを供給する。
この買収により、Teknor Apex は技術ベースの幅と活動地域を広げるという長期戦略で一歩を進めた。
同社はまた、Chem
Polymer の英国工場で2008年に従来製品の生産を開始する。
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これらにより、Teknor Apex は米国、英国、シンガポール、中国の米・欧・アジア3極で汎用樹脂からエンジニアリング樹脂までのコンパウンドを供給することとなる。
武田薬品工業
営業利益、15年連続最高益、配当年間128円(来期は160円)!
当期利益は移転価格税制に基づく更正処分追徴税
571億円を計上し、なお前期比 増益。
売上高 | 営業損益 | 経常損益 | 当期損益 | 配当 | |||||||
連結 | 単独 | 連結 | 単独 | 連結 | 単独 | 連結 | 単独 | 中間 | 期末 | 年計 | |
06/3 | 1,212,207 | 840,230 | 402,809 | 345,969 | 485,354 | 364,439 | 313,249 | 249,361 | 53.0 | 53.0 | 106.0 |
07/3 | 1,305,167 | 869,068 | 458,500 | 347,652 | 585,019 | 378,377 | 335,805 | 219,813 | 60.0 | 68.0 | 128.0 |
08/3予 | 1,390,000 | ー | 470,000 | ー | 585,000 | ー | 380,000 | ー | 80.0 | 80.0 | 160.0 |
売上高: | 前期比 930億円の増収 |
うち、為替レートが対米ドル、対ユーロで円安に推移し、為替の影響で前期比 228億円の増収 | |
営業利益: | 前期比 557億円の増益 |
販売費・一般管理費の増 397億円を売上総利益の増で吸収 | |
経常損益: | 前期比 997億円の増益 |
米国での金利アップで受取利息 210億円増 | |
持分法投資利益増加(前期比 120億円増加の662億円、うちTAPが 610億円) | |
特別損益: | 前期比 78億円増益 |
武田食品工業の飲料・食品事業をハウス食品とのJVに譲渡(譲渡益 190億円) | |
ワイスの株式の一部と三井武田ケミカルの株式を譲渡(譲渡益 171億円) | |
遊休不動産売却益 43億円 | |
(前期も関係会社株式売却益 120億円、厚生年金基金代行返上益 204億円あり) | |
税金: | 移転価格税制に基づく更正処分追徴税* 571億円を計上 |
配当: | 2007/3月期の年間配当 128円、2008/3月期予想
160円 (信越化学はそれぞれ、70円、80円) |
*移転価格税制に基づく更正処分追徴税
国税庁の更正処分に対し、同社は不服申立て中
2006/6/29
武田薬品、移転価格税制に基づく更正
追徴税を支払った時点では、監査法人の判断に基づき、当該追徴税を長期仮払金として処理
その後、納付者が不服申立て等を行っている場合であっても、一律に全額費用処理する方法に監査法人が意見を変更。
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トクヤマ
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営業損益対比 (億円) | ||||||||||||||||||||||||
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特殊品: (05/3の営業損益は 92億円)
多結晶シリコンの価格是正効果等が寄与
多結晶シリコンの需要は引き続き旺盛に推移
前期後半の輸出価格是正、当期初に国内価格是正、当期後半に更なる輸出価格是正を実現
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三菱瓦斯化学
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経理処理の変更
1.有形固定資産の減価償却を連結子会社を含め、備忘価額(1円)まで償却に変更
当期分 営業損益、経常損益が4億円減少
過去分 特別損失に88億円計上
◎
税法改正を先取りし、かつ、残存の5%を一括償却 文末参照
2.天然ガス等の開発費
従来:特別損失
改正:販売費一般管理費 「天然ガス系」の営業損益 11億円減少
営業損益対比 (億円) | ||||||||||||||||||||||||||||||||
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天然ガス系化学品 | |
: | メタノールは、需給がタイトな状況の中、世界的にプラントトラブルが相次ぎ、市況が高騰。 海外メタノール生産会社の持分法利益も大幅に増加。 |
酵素・補酵素類は、コエンザイムQ10の販売価格の大幅下落で減収減益 (2007/5/1 カネカ決算 参照) | |
開発費の経理処理変更で従来ベースより 11億円減少 | |
機能化学品 | |
ポリカーボネート、ポリアセタールは原料価格上昇等により若干採算が悪化 | |
ポリカーボネートシート・フィルムは増収増益 持分法の三菱エンジニアリングプラスチックスも、タイのPC生産会社からの特別配当も加わり増収増益 |
平成19年度税制改正において、減価償却制度の改正などが盛り込まれた法人税関係法令の改正が行われた。
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2007/5/15 速報 東京市場ナフサ価格、史上初の700ドル台
14日のナフサの東京市場スポット価格終値は中心値が1トン715ドルと、史上初めて700ドルの大台を突破した。
(その後の状況は http://www.knak.jp/index.html )
本年1月17日には最近での最安値503ドルを付けたが、4ヶ月で210ドルも上昇した。
原油価格も上がってはいるが、64ドル台で、昨年8月の72ドルを下回っており、ナフサ価格が突出している。
中国のナフサ需要増大を背景に、台湾や韓国のエチレン増設、米国のガソリン価格上昇などが理由となっている。
2007/5/15 アラムコとダウ、世界最大級の石油化学コンプレックス建設
サウジアラムコとダウは5月12日、世界最大級の化学品・合成樹脂のコンプレックス(ラスタヌラ総合計画)の建設・運営についての詳細覚書を締結したと発表した。
昨年7月、アラムコが本計画のパートナー候補にダウを選定し、独占的に交渉すると発表し、その後交渉を続けていた。
2006/7/18 アラムコの新石油化学計画
両社は今後、コンプレックスを建設・運営する合弁会社の設立について最終交渉を行う。
合弁会社は両社折半だが、株式の30%を一般公開する。
コンプレックスは 2012-13年のスタートを目指している。
コンプレックスの立地はサウジの東海岸のアルジュベイル南東のラスタヌラ。
同地にあるアラムコ所有のラスタヌラ製油所(55万バレル/日)とジュアイマ・ガス処理工場(いずれも世界最大)から原料ナフサ及びエタンの供給を受ける。
合弁会社は、広範囲の樹脂と化学品を製造する。
エチレン、プロピレン、芳香族の基礎原料のほか、当初にはワールドクラスのLDPE、HDPE、EO/EG、PO/PG、クロルアルカリ、VCM、ポリウレタン、エポキシレジン、PC、アミン、グリコールエーテルなどを生産する。
最終的には誘導品30プラントで300種の製品を製造し、4,000
人を雇用する。
能力は明らかにされていないが、昨年7月の時点ではエチレン能力は120万トンと噂されていた。
建設費についてはアラムコ社長は 'mammoth' というだけで発表されていないが、業界筋では当初100億ドルと想定された建設費が、昨年7月には150億ドルにアップし、現在では220億ドル(2兆6千億円)に達すると見ている。
(予定では本年初めにもMOUに調印することになっていたが、その後も発表されず、実現性について懸念が生じていた。)
2007/4/19 中東の石化計画、建設費アップが重大問題に
2007/5/16 Access Industries の会長、Lyondell Chemical の株式を購入
Access Industries の会長 Leonard (Len) Blavatnik がLyondell Chemical の株式 8.3%を購入する契約をMerrill Lynch との間で締結した。
21百万株で653百万ドルにのぼり、「戦略的投資」としている。
同時に、Occidental Petroleum がLyondell の株式7百万株をMerrill Lynchに売却し、残りについても(合計でBlavatnikの購入分に相当)処分するスワップ契約を結んだことが判明した。
Len Blavatnikはロシア生まれの大富豪で、Access Industries のオーナー。
Access
Industries は2005年に57億ドルでBasell を買収している。
2006/6/15 「Basellの買収」 参照
Lyondell
Chemical については下記を参照。
2007/2/26 「Lyondell
とシノペック鎮海煉油化工、寧波で PO/SM 生産」
同社は1997年に、同社41%出資で、Millennium
Chemicals とOccidental がそれぞれ29.5%を出資するオレフィンおよぴポリオレフィンのJVのEquistar
Chemicals
を設立した。
2001年にOccidental
が持株をLyondell に売却し、その代金でLyondell
株を購入している。
その後、2004年12月にLyondell
とMilleniumが合併し、Millenium と Equistar が Lyondell
の子会社の形をとっている。
今回は、Merrill Lynch を通して、Occidental がLyondell 株をLen Blavatnik に売却することとなる。
あるコンサルタントは、今回の動きは米国の石油化学の資産が、景気変動の波を受ける事業とは言え、価値のあるものということを示しているとしている。
これに対して Lyondell の CEO はもし買収の提案があれば検討するとしながらも、景気の悪化したときのことを考えると、買収のために80億ドルから100億ドルも資金を貸す側は大変だろうとコメントしている。
このあと、Len Blavatnik がどう動くのか、今のところ不明だが、「戦略的投資」という以上は、Basell とのなんらかの結びつきを考えていると思われる。エチレンやPO/SMに強いLyondell とポリオレフィン世界一のBasell との組み合わせは強力である。
更に、10日付けのBloomberg は、GE Plastics の売却先がApollo, Sabic と Basell の3社に絞られたと報じている。
医薬大手の3月決算がまとまった。
各社の連結営業損益は以下の通り。(単位:億円、中外製薬のみ12月決算)
各社とも薬価改定による国内事業の採算悪化や研究開発費の増大などで減益要因があるが、その中で武田薬品の大増益が目立つ。
武田薬品については既報の通り。
2007/5/14 注目会社、3月決算概要ー4
エーザイは北米でアルツハイマー型認知症治療薬が好調(29%の増収)
第一三共、アステラス製薬、中外製薬は研究開発費の増加で減益となった。
大日本住友製薬は2005/10月合併で、前年上期は大日本製薬単独のため、実質的には微増。
大正製薬は主力のドリンク剤の異常気象などにともなう市場の落ち込みが響き、医療用医薬品も引き続き厳しい事業環境で大幅減益となった。
セルフメディケーション事業:一般用医薬品、特定保健用食品、食品、医療用品、
衛生用品、不動産の賃貸・管理、ホテル経営
医薬事業:医療用医薬品
配当は各社とも増やしているが、エーザイが武田薬品にほぼ並んでいるのは驚きである。
(エーザイは2003/3が32円、2004/3が36円であったが、その後56円、90円と増やし、今回は120円で、次期は130円を予定している。武田は次期は160円を予定。)
化学会社の決算がほぼ出揃った。
各社の営業損益(前期及び当期)の対比は以下の通り。
(うち昭和電工は12月決算)
昨秋のナフサ値下がりで製品値下がりが懸念されたが、その後ナフサ価格は1月17日に503ドルまで下がってから値上がりに転じ、5月14日には史上初めて700ドルを超え、5月16日には722ドルを記録した。
これを受け、逆に製品値上げが浸透し、各社とも好調な決算となった。
円安も損益向上に大きな影響を与えている。
(既報の通り、武田薬品は為替の影響で前期比
228億円の増収となったが、トヨタ自動車の場合は円安効果は2,900億円。欧米の自動車企業は「円安で日本の自動車は1台当たり2,400ドルの価格競争力を得ている」と反発しているという。)
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しかし、中国向け中心のPTAやVCMなどは値下がりの影響で前々期に比して利益は大きく下がっている。
電子材料が各社好調ななかで、液晶テレビの価格下落を受け、住友化学の情報電子化学の大幅減益が目立つ。
営業損益変動の主な例は以下の通り。(問題製品を含む事業部門の営業損益、単位:億円)
中国向け中心のPTA、VCM、PVCなど値下がり | |||||||||||||||||||||||||||||
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コエンザイムQ:競争激化による大幅な減収、減益 | |||||||||||||||||||||||||||||
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三菱瓦斯化学の同部門のメタノールは好調 | |||||||||||||||||||||||||||||
液晶フィルム値下がり | |||||||||||||||||||||||||||||
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上記の各製品の状況は一時的なものでなく、今後も回復の可能性は少ない。 | |||||||||||||||||||||||||||||
逆に、半導体シリコンのように大増益の部門もある。 | |||||||||||||||||||||||||||||
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好調な石油化学も大きな問題を抱えている。 | |
: | 原油価格は現在 65ドル近辺だが、ファンダメンタルは
40〜45ドルと言われており、現状価格はいろいろな思惑やイラン情勢その他を加味したものである。(1/19には
48.85ドルまで下がっている) ナフサ価格はその原油価格のレベルを遥かに上回る状況で、中国の需要、台湾・韓国のエチレン増設、米国のガソリン価格上昇、その他を加味したものであるが、これまでの原油価格との相関関係から見て、異常な値上がりである。 |
ナフサ価格がいつまでも高い水準で推移する保証はない。 中国バブルがはじけ、ナフサ価格が下がった場合の反動は大きい。 |
中国外務省などは8日、パナマ向けに輸出された薬用シロップのグリセリンと、米国とカナダへ輸出されたペットフードにそれぞれ毒性物質が混入していたと発表した。同省の姜瑜副報道局長は8日の会見で「グリセリンの代わりに医薬品には使用できない化学薬品が使われた」と述べ、因果関係を認めた。
一方、中国の国家品質監督検査検疫総局は8日、江蘇省と山東省の2社が製造して北米に輸出されたペットフードからも、樹脂などに使われるメラミンが違法に添加されていたと発表した。
米国とカナダでは今年3月、これらのペットフードを食べた数百匹の犬と猫が原因不明で死亡。FDAが中国側に調査を依頼していた。同総局は2社の責任者らを立件する方針。
(以上 朝日新聞から)
6日付のニューヨーク・タイムズ紙はパナマで365名の死亡が伝えられ、うち100名が確認されたとし、以下のように詳細に報道している。
昨年5月、長い雨季が始まり、パナマ政府は風邪や咳の患者増大を予想して26万本の咳止め薬を製造した。
9月に Panama City の公衆病院は不思議な症状の患者の増大に気がついた。身体の一部の機能が停止または麻痺し、中には呼吸困難に陥った患者までいた。死亡者も続出したが、はっきりとした原因は分からないままだった。
調査の結果、病院の患者の半数が高血圧薬を処方されていたことが分かったが、それを飲んでいない患者もいた。
たまたま、ある患者が、その薬を飲んだが、咳が出たので咳止め薬を飲んだと話したので、咳止め薬に注目が集まった。
支援のために訪問していた米国疾病管理・予防センター(CDC)調査員が咳止め薬を持ち帰り、調べた結果、Glycerin ではなくDiethylene glycol であることが判明した。
死亡者数の確認が難航した。既に埋葬されており、多数が医者にもかかっていなかった。被害者の大半は幼い子供だった。
アルゼンチンの病理学者が埋葬された死体からの毒物分析方法を開発した。(現在確認されたのが上記の100名)
その後の調査で次のことが判明した。
・ | 咳止め薬に使われたシロップは 「99.5% pure glycerin」と表示されていた。 |
・ | 製造したのは江蘇省泰興市(Taixing)恒祥(Hengxiang)のTaixing Glycerine Factoryである。グリセリンの代わりに遥かに安価なジエチレングリコールを使用した。 |
・ | 北京の商社 CNSC Fortune Way がこれを スペインのRasfer International に販売、同社はパナマのブローカーの Medicom Business Group に販売した。どの社も製品テストはせず、メーカーの社名を消していた。(需要家が直接メーカーと契約をするのを防ぐため、しばしば行われる) メーカーの品質証明も購入者に渡すのがルールだが、それも行われていない。 |
・ | パナマでは2年間以上、使われず、Medicom
はシロップの有効期間を変更していた。 パナマ政府もこれを使用する際に品質検査を実施していない。 |
グリセリンの偽者は本物に似ており、極めて安いため、しばしば使用され、事故を起こしている。
70年前には米国でジエチレングリコールの入った薬品で100人以上が死亡、これが厳しい薬事法の制定と現在のFDAの設立のきっかけとなった。
その後、ハイチ、バングラデッシュ、アルゼンチン、ナイジェリアなどで事故が発生しているという。
中国でも昨年4月に少なくとも18名が死亡している。
これまでのところ、中国政府の反応は非常に鈍いものであった。
薬事当局は、工場は医薬品製造の登録をしていないので管轄権はないとし、商社についても医薬品を業としていないとして、両社とも違法な行為をしていないとしていた。
付記
中国の国家品質監督検査検疫総局(国家質検総局)は5月31日、「中国の出荷側に落ち度があったとしても、直接原因はパナマの業者の不正行為にある」とした見解を明らかにした。
発表によると、
北京の中服嘉運貿易会社は、輸出の際にスペインの貿易会社に、同製品は工業原料TDグリセリンで中国薬典規格に合っていないと説明したほか、製品の有効期間は1年とすることも伝えたという。
しかし、パナマの商社は、米国薬局方(USP)の純グリセリンと偽って同国の製薬会社に販売、さらに有効期間1年を4年に改ざんした。2006年製造開始の時点ですでに使用期限が2年前に切れていた。付記2
その後米国などで中国製練り歯磨きにジエチレングリコールが含まれているのが見つかり、問題となった。
国家質量監督検験検疫総局(品質検査部門)は7月11日、「練り歯磨き原料としてのジエチレングリコールの使用を禁止することに関する公告」を発表した。
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米国とカナダでは今年3月、メラミンが違法に添加されていたペットフードを食べた数百匹の犬と猫が原因不明で死亡した。
FDAは史上最大の製品リコールを行い、中国の2社、江蘇省徐州市の Xuzhou Anying Biologic Technology Development Co. と山東省の Futian Biology Technology Co. Ltd.を突き止めた。
メラミンの添加された両社の製品は成分が小麦グルテンと米プロテインと表示されていたが、実際には単なる小麦粉であった。
FDAの係員が製造した2社を訪問したところ、工場は閉鎖され、機械類も取り去られていたという。
米国ではメラミン添加は禁止されているが、中国では、メラミンには栄養価はないが、検査で蛋白質が入っているように見せかける安価な添加物として、動物飼料生産者は何年もの間メラミンを飼料に添加してきたという。
オンタリオの研究者は、小麦グルテンに含まれるシアヌル酸とメラミンが混合すると、動物の腎機能を妨害する結晶を形成するとしている。
なお、FDAと米国農務省は7日、メラミンが添加されたエサを食べた豚やチキンを食べても、人間の健康へのリスクは非常に少ないとの共同発表を行った。
2007/5/19 速報 GE Plastics の売却先、SABICに決定か?
17日付けのWall Street Journal はGEがGE Plastics をSABICに110億ドルで売却間近と伝えた。
同紙はまた、昨年にDubai の会社が米国の港湾設備を買収する計画が安全保障の観点で潰されたが、本件については政治問題にはならないとしている。
ロイターはBasell
がGE
Plastics 買収から離脱していると報じた。
また、その結果として、Basell と Lyondell の合併の可能性が出てきたともしている。
(既報の通り、Basell のオーナーのAccess Industries
の会長が Lyondell 株式を購入したが、今後、同氏
or Basell が GE Plastics と Lyondell
の両方の買収はさすがに無理である。)
10日付けのBloomberg は、GE Plastics の売却先がApollo, Sabic と
Basell の3社に絞られたと報じていた。
参考 2007/4/2 GE Plastics 争奪戦にSABICも参戦
最新分は http://knak.cocolog-nifty.com/blog/