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米与野党幹部は2012年12月31日夜、 2012年末から2013年初頭にかけて米国で減税の期限切れと政府支出の強制削減がほぼ同時に訪れる「財政の崖」への対応で、当面の回避案で合意した。
米議会上院は1月1日未明、この法案を89対8の賛成多数で可決した。
しかし、下院では共和党員が、この案はほとんどが増税で、歳出カットはほとんどないとして、猛反発した。
保守派が追加の歳出削減を盛り込む法案修正を目指したため、協議が長引いた。
最終的に賛成257、反対167で法案は可決された。共和党は過半数が反対した。
オバマ大統領は、2%の富裕層に対し増税し、中間層の増税を防ぐものと評価し、米国の税制をより公平なものにするという大統領選での公約を果たせたとするとともに、新年においてはこの種の政策をもう少し円滑にまとめられないか皆が考えることを期待すると述べた。
法案の成立は1月1日に持ち越したため、形式上は一旦全国民が増税となったが、遡って減税を実施する。
付記
米上院は1月31日、連邦債務の法定上限超過の期限を先送りする法案を可決した。
現状では3月初めまでに上限を超える見通しだが、5月19日まで借り入れを認める。
ーーー
財政の崖(Fiscal Cliff)は“Ben” Bernanke FRB議長が使った言葉で、次の2つによる増税と歳出減で(財政赤字は縮小するが)消費の大幅減 となり、アメリカの景気が崖から落下するように悪化するというもの。マイナス成長と失業増が懸念される。
米経済がつまずけば、世界景気への影響も大きく、格付け会社FitchRatingsは、米国が「財政の崖」を回避できなければ、控えめに見積もっても、2013年の世界の経済成長率が半減する可能性があるとの見通しを示している。
1)2012年末で大型減税が期限切れを迎える。
増税関連
・ 医療改革に伴う増税 110億ドル
・ 医療保険税(Obama Care)増税 180億ドル特別措置の終了
・ 失業手当金給付期間延長措置の終了 260億ドル
・ 投資減税延長期間の終了 650億ドル
・ 社会保障税の減税の終了 950億ドル
・ ブッシュ減税(所得税率や配当・キャピタルゲイン税率の軽減)の終了 2,210億ドル付記(背景)
2009年のObama大統領就任時点では、上院、下院ともに民主党が支配していた。
政府と民主党は、共和党を多数で押し切る姿勢を示した。
2010年11月の中間選挙で下院は共和党多数となり、ネジレが生じた。
このため、Obama 大統領は最富裕層の減税を止めるとの主張をおろし、次善の策として、期限がきたBush減税を2年間延長した。しかし、その後はネジレのために終始混乱した。
2)財政管理法に基づく歳出の一律削減
連邦政府債務が上限に達したため、米与野党指導者は2011年7月、債務上限を2.1兆ドル引き上げるとともに、その条件として今後10年間で2.5兆ドルの財政赤字を削減することで合意に達した。
しかし与野党が具体的な削減案に合意できなかったため、2013年1月から10年間1.2兆ドルの予算カット条項が発動されることとなった。この半分は国防・安全保障費で、メディケアも一部カットされる。但し、Social Security とMedicaidは除外。
2012/10/8 米国経済の問題点
付記
2012年は大統領選挙のため、この関係の交渉は全く行われなかった。
米議会予算局(CBO)は、「財政の崖」が現実になれば5000億ドル超の規模の財政緊縮となり、2013年の実質経済成長率はマイナス 0.5%、失業率は9.1%になる と予想する。
民主党と共和党では、「財政の崖」と赤字削減に関する主張に大きな隔たりがある。
民主党は富裕層への増税を主張、共和党はこれに絶対反対で、逆に福祉カットを主張している。
保守系の市民運動 Tea Party もオバマ政権の大型景気対策や医療保険制度改革などを批判し、「増税なき小さな政府」を掲げるが、Tea は"Taxed Enough Already" (もう税金はたくさんだ!)を表している。
逆に、大富豪のWarren Buffettは高額所得者に応分の負担を求めるべきだとしている。
両党は12月21日を与野党協議の期限として交渉を続けた。
最大の対立点は税制で、民主党側は「富裕層増税抜きの合意はあり得ない」としたが、共和党はこれに反対した。
共和党のベイナー下院議長は12月14日に、それまでの「減税継続・増税ゼロ」の主張 から降り、「年収100万ドル以上の富裕層への増税」案を出した。これに対し、オバマ大統領は12月17日、これまでの「夫婦合算年収25万ドル超での減税打ち切り」から降り、「40万ドル超での減税打ち切り」を提案した。
しかし、この後の交渉は進展せず、最終日を迎えた。
ーーー
今回の合意の内容は以下の通り。
・年収40万ドル超(夫婦合算申告では45万ドル超)の個人の所得税減税措置の打ち切り
これにより、これら高所得層の税率は35%からクリントン政権の頃の39.6%に引き上げられる。
米国の所得税率(夫婦合算申告)
所得 Bush減税前 現行税率 改正税率 ~$14,400 15% 10% 同左 *
(Bush減税
継続)~$17,400 15% ~$70,700 ~$142,700 28% 25% ~$217,450 31% 28% ~$388,350 39.6% 33% ~$450,000 35% $450,000~ 39.6% * オバマ大統領の当初案は25万ドル以下のみを減税継続
・配当とキャピタルゲインへの税の引き上げ
年収40万ドル超(夫婦合算申告では45万ドル超)の個人の所得に対し現在の15%から20%へ
・年収25万ドル超(夫婦合算申告では30万ドル超)の個人への所得控除、税控除の上限復活
・500万ドル以上の資産の遺産税は35%から40%に引き上げる。
・社会保障税(給与から控除)の減税打ち切り
2011年にオバマ政権が経済刺激策として従来の6.2%を4.2%に下げたが、これを6.2%に戻す。
・逆に、2百万人に対する緊急失業 保険給付金の1年延長
・政府予算の強制削減措置については、2カ月間延長する。
ーーー
今回の合意は「財政の崖」問題の当面の回避に過ぎない。
歳出の大幅カット問題は2011年夏以降の協議で結論を得られなかった。共和党は今回、増税だけを呑まされたとの不満が大きく、強硬に福祉関連予算のカットを要求すると思われる。
2011年7月31日に連邦政府の債務上限14.3兆ドルを2.1兆ドル引き上げデフォルトを直前で逃れたが、2012年末には連邦債務はその16.4兆ドルに達している。
このため、財務省は公務員の年金基金などへの投資凍結などの「緊急措置」を発動したが、2月中には限度にくるとされる。しかも、その時期は、今回延期された国防費の自動的な歳出削減が発動される時期と重なる。
今後も両党の攻防は続き、協議がまとまらない場合は世界経済にも悪影響を与える。
12月26日付の毎日新聞のコラム(水説)に「日銀総裁の変心」 が出ている。
これまで金融緩和のためのインフレターゲット(物価目標)に反対していた日銀白川総裁が、1月の金融政策決定会合で導入に踏み切る考えを表明した。記者会見で、政策変更は次の首相になる安倍さんの強い要請に応えるためだ、と説明した。
総裁の変心(乱心という人もいる)に対し、筆者の潮田道夫・専門編集委員は以下のように述べている。
「変心の理由は明白で、ここで白川さんが突っぱれば、安倍さんは日銀法改正に動く。面目にかけてもそうせざるをえない。政府提案でなく議員提案になるかもしれないが、これは成立する。素案通りなら先進国とは思えない異常な中央銀行法になる。
白川さんはそれを回避するために、安倍提言を受け入れた。法改正が行われれば、国民の共有財産である中央銀行の価値を損なう。恒久的な損失につながる。政策変更は白川さんのメンツを傷つけるに過ぎない。副作用も制御不能というわけではないだろう。日銀法改正を唱えてきた政治家たちは作戦成功と喜んでいる。あきれて声も出ない。日銀は日本国を形成するさまざまな集団の中で、いまだに信用を保持している希少な存在だ。政治家のなすべきことは政治不信の解消であって、日銀不信を作り出すことではないはずだ。」
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自民党は2012年4月の財務金融部会で、日銀法の一部改正案を取りまとめた。(2012/12/4 毎日新聞)
・金融政策の目的に「雇用の安定」を追加
「物価の安定を通じ、雇用の安定を含む国民経済の健全な発展に資すること」
・物価目標を定める協定を政府と結ぶ
・日銀は物価目標の達成状況を定期的に説明
・目標未達成の時は、達成できなかった理由、達成に向けた方針、政府の経済政策との整合性、
達成に必要な時間−−を説明
・目標と現実の数値が著しく異なる場合、内閣は両院の同意を得て総裁、副総裁、審議委員を解任できる
・日銀は必要に応じ、自ら外国為替の売買を行うことができる
現在は、政府の指示に従うだけ
みんなの党も2012年04月10日、日銀法改正案を提出した。
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白川総裁は2012年11月12日に「物価安定のもとでの持続的成長に向けて」という講演を行い、日銀の考え方を分かり易く説明している。
これは辛口の評論家も激賞しているものである。
1.はじめに
2.海外経済の動向
3.日本経済の動向
4.日本銀行による金融政策運営
5.デフレ脱却を巡る論点
デフレ脱却と物価上昇率の関係
インフレ予想の実像
需給ギャップの意味
成長力強化の重要性
6.日本銀行の金融政策を巡る論点
金融緩和は不足か十分か
資産買入れを「無制限」に行うと宣言すべきか
マネーの増加は問題を解決するか
外債を買うべきか
7.おわりに
「切迫感を持ちつつも悲観論には陥らず、日本全体の力を結集して、成長力の強化に真剣に取り組んでいくことが重要です。日本銀行としても、引き続き、デフレから早期に脱却し物価安定のもとでの持続的な経済成長の実現に向けて、中央銀行として最大限の努力を続けていきたいと考えています。」
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この中で、特に「需給ギャップの意味」が示唆に富む。
需給ギャップは、一般に「需要不足額」として認識されているため、これを埋めるだけの需要を政策的に付ければ、ギャップが直ちに解消してデフレから脱却できるはずだ、という議論がなされることがあります。
注意しなければならないのは、需給ギャップというのは、あくまで現存する供給構造を前提に、それらに対応する需要不足を捉えたものに過ぎない、という点です。
日本でも、高齢化や女性の社会進出、価値観の多様化などによって、新しいタイプの需要が潜在的にはどんどん生まれていると考えられます。例えば、医療・福祉産業では、高齢化により潜在需要が急拡大しているにもかかわらず、各種の規制や現場の人手不足などから、需要に見合うサービスが提供できていないとの声が多く聞かれています。また最近注目が集まっている高齢者の消費についても、所得、健康状態、嗜好の違いなどから若年層の消費よりも個別性が強く、供給者サイドの工夫如何でさらに拡大する余地があることが指摘されています。
いずれにせよ、こうした未充足の需要、すなわち成長分野における「供給不足」は、需給ギャップにカウントされていません。
本来「需給のミスマッチ」と認識すべき部分まで、「需要不足」という形で示されているということです。持続的に需給ギャップを改善していくためには、潜在需要を顕在化させるように、経済の変化に合わせて供給構造を作り変えていくことが必要です。
12月29日の日本経済新聞は白川総裁のインタビューを掲載した。
白川総裁は物価目標について「金融政策の柔軟性が確保できれば『めど』か『目標』かという議論に意味はない」と述べ、安倍首相が求める物価目標の導入に前向きに応じる姿勢を示した。
インタビューでは総裁は上記の講演で述べたのと同じ趣旨で説明しており、「変心」は見られない。
4つの論点
・「物価安定」や「デフレ脱却」の意味を正確に共有する必要
単なる物価上昇ではなく、景気が良くなり、それから物価が上がるということが必要。
賃金が上昇し、雇用が確保され、企業の収益も増えていく状況が望まれる。・物価上昇を達成するには、成長力の強化と金融面からの後押しの両方が必要
上場企業の43%が実質無借金で、手元現預金だけをみても47兆円ある。
魅力的な投資機会がなければ、お金は有効に使われない。成長力強化の取り組みが不可欠。・金融政策の柔軟性と金融システムの安定の確保
・政府の果たす役割
マクロ経済政策、規制緩和をはじめとする成長力の強化、財政規律日銀の独立性について
・中央銀行は、政府の財政赤字を穴埋めするために国債を引き受ける財政ファイナンスを行ってはいけない。・ゼロ金利環境のもとでのデフレ脱却達成には、中央銀行と政府が力を合わせることが必要
金融面の後押しと成長力強化の推進が欠かせない。
・中央銀行が採用する政策の性格を十分認識することも重要
中央銀行が採用する非伝統的政策は、財政政策の要素を帯び始めており、損失発生の可能性がある。注)中央銀行の非伝統的政策:
マネタリーベースを拡大して市中に潤沢な資金を供給する量的緩和や、
CPや社債などのリスク資産を従来の範囲を超えて購入する信用緩和など。
社債などが大きく値下がりした場合、損失が発生し、国民の税負担となる。
付記
日本銀行は1月22日の政策委員会・金融政策決定会合において、金融緩和を思い切って前進させることとし、①「物価安定の目標」を導入すること、②資産買入等の基金について「期限を定めない資産買入れ方式」を導入することを決定した。
http://www.boj.or.jp/announcements/release_2013/k130122a.pdf
①については、民間出身で2012年7月に就任した木内登英氏(野村証券出身)と佐藤健裕氏(モルガン・スタンレーMUFG証券出身)が、物価安定の目標を消費者物価の前年比上昇率で2%とすることに反対した。
また、政府との共同声明「デフレ脱却と持続的な経済成長の実現のための政府・日本銀行の政策連携について」を発表した。
http://www.boj.or.jp/announcements/release_2013/k130122c.pdf
シノペック武漢化学の80万トンエチレン計画が昨年末に完成した。2012年12月29日の新華社通信が報じた。
立地は湖北省武漢市の揚子江沿岸で、5年をかけて建設した。
シノペック武漢化学は1971年に設立され、1977年に年産能力500万トンの原油処理能力の製油所が稼働した。
この計画は2007年初めに承認を得て、同年12月に建設を開始したもので、製油所能力を800万トンに拡大し、次の石化プラントを新設する。
エチレン | 800 | 千トン | |
LLDPE | 300 | ||
HDPE | 300 | ||
EG | 300 | ||
PP | 400 | ||
BTX | 400 | ||
ブタジエン | 120 |
2007/4/9 中国、湖北省武漢市のエチレン計画を承認
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2008年5月に韓国のSK化学がこの計画に35%の出資をすることで合意した。
2008/6/2 韓国SK Energy、シノペックの武漢エチレン計画に出資
しかし、2009年4月に、SKは、当時の経済危機のなかで十分な資金がないとして、この投資を延期することを明らかにした。
但し、撤退の考えはなく、当初の構想どおり、エチレン計画に35%の出資をする予定とした。
その後、この件についての進展はなく、シノペック単独で完成させた。
付記
中国国家発展改革委員会(NDRC)は2013年6月5日、SK GroupがSinopecの武漢エチレンに35%出資することを承認した。
Sinopecが27億ドルを投じて単独で建設し、2012年末に完成しているが、Sinopec 65%、SK Group35%出資のJVとなった。
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中国の2011年末のエチレン能力は15,510千トンであった。
2012年には、PetroChina
大慶石化が600千トンの増設を行って能力を倍増した。
続いてPetroChina
撫順石化が800千トンの増設を行い、能力を約100万トンとした。
更にPetroChina 四川石化が四川省彭州市にエチレン80万トンの彭州石化を建設中で2012年の年末に完成したと見られている(未確認)。
今回の大慶石化の増設を含めると、300万トンの増設となる。
中国のエチレン能力(単位:千トン)
2011 年末 能力 |
2012 完成 |
||
PetroChina 大慶石化 | 黒竜江省 | 600 | +600 |
PetroChina 吉林石化 | 吉林省 | 850 | |
華錦集団(盤錦エチレン) | 遼寧省 | 620 | |
PetroChina 遼陽石化 | 遼寧省 | 200 | |
PetroChina 撫順石化 | 遼寧省 | 150 | +800 |
PetroChina 彭州石化 | 四川省 | ー | 800 |
Sinopec 北京東方化工 | 北京市 | 150 | |
Sinopec 燕山石化 | 北京市 | 710 | |
Sinopec 天津石化 | 天津市 | 200 | |
Sinopec 斎魯石化 | 山東省 | 840 | |
Sinopec 揚子石化 | 南京市 | 650 | |
Sinopec 上海石化 | 上海市 | 850 | |
Sinopec 広州エチレン | 広東省 | 200 | |
Sinopec 茂名石化 | 広東省 | 1,020 | |
Sinopec 中原石化 | 河南省 | 280 | |
Sinopec 武漢化学 | 湖北省 | ー | 800 |
PetroChina 蘭州化学 | 甘粛省 | 690 | |
PetroChina 新疆独山子 | 新疆自治区 | 1,220 | |
瀋陽化工 (残渣油から*) | 遼寧省 | 300 | |
YPC-BASF | 江蘇省 | 740 | |
SECCO | 上海市 | 1,190 | |
CNOOC-Shell | 広東省 | 950 | |
福建連合石油化工 | 福建省 | 800 | |
Sinopec SABIC (Tianjin) | 天津市 | 1,000 | |
Sinopec 鎮海煉油 | 浙江省 | 1,000 | |
神華包頭石炭化学
(Coal-to-Olefin) |
内蒙古自治区 | 300 | |
合計 | 15,510 | +3,000 |
* 瀋陽化工
藍星集団の子会社、瀋陽化工は2010年に遼寧省の瀋陽でエチレンプラントをスタートした。
独自の技術を使用し、50万トンの残渣油を熱分解して12万トンのエチレンを生産する。(その後、300千トンに)
瀋陽化工は、中国最大のペースト塩ビのメーカーで、エチレンは全量、塩ビ用に使われる。
併産するプロピレンは、同社が三菱化学からライセンスを受けて建設したアクリル酸(8万トン)及びアクリル酸エステル(12万トン)用に使用される。
2013/1/8 Transocean 、Deepwater Horizon 事故で罰金14億ドル支払い
米司法省は1月3日、世界最大の海洋掘削会社であるスイスのTransoceanが、Deepwater
Horizon 事故で罪を認め、14億ドルの罰金を支払うことで合意したと発表した。
Transoceanも同様の発表を行った。
Transoceanは事故を起こしたリグの所有者であるとともに、掘削作業のコントラクターである。
コントラクターは他に2社がある。
Halliburton:セメント作業(井戸内、または井戸と鉄管との間のセメント作業)
M-I SWACO:Drilling Fluid (mud)サービス
1)刑事上の罰金
Transocean は、BPのリーダーの下でリグで働いていた同社の作業員が、井戸が安全でなく、原油やガスが井戸に流れ込んでいるとの明確な兆候があるのに十分調査しなかった過失を認めた。
これに対する司法取引で、同社は刑事上の罰金4億ドルを支払う。
このうち、1億ドルの罰金を60日以内に支払う。
他に、1億5千万ドルを5年分割でNational Academy of Sciencesに、1億5千万ドルを3年分割でNational Fish and Wildlife Foundationに支払う。
前者はメキシコ湾での原油流出事故防止と対策のために、後者は自然の復活、沿岸の生態回復のために使われる。
2)民事上の罰金
同社は又、3か月に及ぶ大量の原油流出に関し、Clean Water Act
での民事上の司法取引で 10億ドルを支払う。
合わせて、米国の領海で稼働するすべての掘削リグで安全策と緊急時の措置の改善を義務付けられた。
合計14億ドルの支払いは下記の通りの分割で行われる。
2013年 560百万ドル
2014年 460
2015年 260
2016年 60
2017年 60
ーーー
Transocean は、今回の米政府との合意以外に、原油流出で経済および健康上の被害を被ったと主張する10万人以上の個人や企業オーナーを代表する原告委員会と交渉している。
UBSのアナリストは、Transoceanの最終的な負担は40億ドル以上に達すると推測している。
ーーー
事故を起こした鉱区の権益保有者についての現状は以下の通り。
1)BP(権益65%、Operator)
刑事訴訟:罰金
4,525百万ドル
2012/11/17
BP、Deepwater Horizon事故に関する米政府の全ての刑事訴訟で和解
Clean Water Actによる民事訴訟:未定
流出量500万バレルの場合、過失なしで55億ドルと過失有では215億ドルとなる。
一般民事訴訟:総額 約78億ドル
2012/3/5 BP、メキシコ湾岸原油流出事故で漁業関係者などと和解
2)Anadarko (権益 25%)
Clean
Water Actによる民事訴訟:未定
その他:BPが肩代わり(BPに40億ドル支払)
2011/10/19
BP、メキシコ湾原油流出事故でAnadarko Petroleum と和解
3)三井石油開発(権益10%)
Clean
Water Actによる民事訴訟:罰金70百万ドル、土地買収等の費用20百万ドル
2012/2/20
メキシコ湾原油流出事故で三井石油開発が米政府と和解
その他:BPが肩代わり(BPに10億6500万ドル支払)
2011/5/20 BPと三井石油開発、メキシコ湾原油流出事故損失負担で和解
中国国家発展改革委員会は1月4日、LG電子、サムスン電子など韓国、台湾の液晶メーカー6社がカルテルを結んで液晶パネルの販売価格を不当につり上げていたとして、総額353百万人民元(約49億円)の制裁金を科したと発表した。
中国当局が外国企業に価格カルテルで制裁金を科すのは初めて。
価格カルテル以外では、Unileverが値上げの情報をむやみに流して消費者の値上げ観測をあおったとして、価格法に基づき200万元(約2500万円)の罰金が科された例もある。
対象となったのは、韓国のLG、サムスン電子のほか、台湾の群創光電(当時は奇美電子、現在は鴻海グループ)、友達光電、中華映管、瀚宇彩晶
の6社。
6社は2001年から2006年まで53回にわたり会合(“晶体会議”)を開いて液晶パネルの価格について談合を繰り返し、計208百万元の所得を違法に得たという。
制裁金353百万元のうち、144百万元が罰金となっている。不当利得208百万元のうち、172百万元は需要家に返却させ、37百万元は没収された。
(需要家に返却された金額が消費者に還元されるかどうかは疑問との報道がある。)
各社の期間中の販売個数と制裁金は以下の通り。 | |||||
販売個数 | 制裁金 | 個数当たり 制裁金割合 |
|||
LG | 192.70 | 万片 | 118.00 |
百万元 |
0.5 |
三星 | 82.65 | 101.00 | 1.0 | ||
群創光電 | 156.89 | 94.41 | 0.5 | ||
友達光電 | 54.94 | 21.89 | 0.33 | ||
中華映管 | 27.06 | 16.20 | 0.5 | ||
瀚宇彩晶 | 0.38 | 0.24 | 0.5 | ||
* 個別の制裁金の合計と全体額に若干の差がある。 制裁金割合は筆者計算 |
制裁金は各社の協力度合いに応じて決定された。
液晶パネルメーカーが共同で液晶パネル価格を操作しているとの情報が2006年12月以降、発展改革委員会に寄せられていた。
これを受け同委員会が調査を開始したところ、自発的に液晶パネルの価格操作に関する報告があったという。
三星以外は協力し、制裁金が減額された。友達光電は最初に違反行為を認めたため、需要家への返却は命じられたが、罰金は免除された。
中国の独禁法にも自主申告の制度はあるが、減免のルールの規定はないため、実際に減免されるかどうかの保証がなく、これまでに自主申告しようという動きはなかった。
今回、協力の度合いにより制裁金に差がついたことから、自主申告する例が増えると見られている。
(個数当たり制裁金でみると、
6社は、今後は中国の法律を遵守し、中国のテレビメーカーに公平な商品提供を行うことを承諾した。6社はまた、中国のテレビメーカーが国内で販売するテレビの液晶パネルの保証期間を18カ月から36カ月に延長した。
人民日報は以下の通り報じている。
日本メーカーの独占を破り、日本メーカーの一人勝ちを防ぐため、EUや米国などはこれまで韓国や台湾のメーカーの価格操作を黙認する態度を取ってきたのだという。
関係者によると、今回摘発された各メーカーによる共同での価格操作がなければ、日本メーカーにあれほどの打撃を与えることはできず、今のような地位に上ることもできなかったという。
共通のライバルが姿を消した今、新たな市場競争の局面でかつての結びつきは弱まり、これまでの独占行為を明らかにするメーカーも出てきたのだという。
ーーー
今回の罰金は独禁法ではなく、価格法に基づいて決められた。
中国の反壟断法(独占禁止法)は2008年8月1日に施行された。
2008/8/4 中国、独占禁止法施行
しかし、違法行為は2001年から2006年までに行われたものであるため、これを適用できず、それ以前から存在する価格法を適用した。
価格法第4条
事業者は合意、決議、調整その他不正な方法で価格を決めたり、維持したり、修正したりしてはならない。価格法第14条は以下のような異常な価格設定を禁止している。
・他と共謀して価格コントロールを行い、他の事業者や消費者の利益を損なうこと
・価格を過度に上げるために、値上げ情報をでっち上げたり、広めること
・法や規則に反して暴利をあげること
・その他
NRDCでは、もし独禁法が適用されれば、
不当利益ではなく、期間中の売上高で制裁金が決まるため、制裁金はもっと高くなるとしている。
ーーー
中国では独禁法の執行機関は中国国家発展改革委員会、商務部、工商行政管理総局の3つとなっている。
発展改革委員会:価格独占行為の調査・処分を担当
商務部:事業者結合行為に対する独占禁止審査工商総局:独占協定、市場支配的地位の濫用、行政権力を濫用した競争の排除・制限に対する執行
(価格独占を除く)
山西省長治市潞城市の化学工場、天脊石炭化学工業で2012年12月31日、パイプが破裂し、有害物質アニリン8.7 トンが浊漳河に流れ出す事故があった。
しかし、企業側が当局に通報したのは、1月5日になってからであった。
当局は直ちに流出を止め、汚染の除去を始めた。
調査の結果、更に30トンのアニリンが近くの使用されていない貯水池で見つかった。
被害は下流約80キロに及ぶとみられ、5日午後に下流の河北省邯鄲市で一時、断水措置が取られた。
中国の規定では水中のアニリン濃度は1リットルあたり0.1ミリグラムを超えてはいけないとしている。事故発生後、王家荘観測点での濃度は一時、1リットル中72ミリグラムに達していた。活性炭による吸着などにより6日までに濃度は3.4ミリグラムに減少した。
工場を経営する会社の社長ら4人が解任された。
山西省では昨年末に8人が死亡する鉄道トンネル工事の爆発事故があったが、工事を担当する企業が当局に通報していなかったことが発覚しており、新華社は「事故の隠蔽や通報の遅れは人民に対する犯罪」と批判する論評を配信した。
三井物産は2012年12月21日、世界有数のガス田、モザンビークのRovuma Offshore Area 1 鉱区での海底天然ガス生産設備とLNGプラントの基本設計作業を発注したと発表した。
この鉱区の最大の権益を持ち、オペレーターを務めるAnadarko Petroleumは同日、隣接するArea 4のオペレーターのEni との間で共同開発の覚書を締結したと発表した。両グループは天然ガスの開発は連系はしつつも個別に行なうが、LNG生産設備建設は共同で行う。
発注先 概要 Area 1 海底天然ガス田 Technip USA, Inc.
Subsea 7 Saipem SAの企業連合
McDermott及びAllseas USA の企業連合推定可採資源量
17~30兆立方フィート超LNGプラント 日揮びFluor Transworld Servicesの企業連合
CB&I 及び千代田化工建設の企業連合
International BechtelLNG年産2,000万トン
当初LNG年産500万トン×2系列
追加2系列
(Area 4との合計)
生産開始 2018年(予定)両グループはLNGプラントについても独自で実施する考えであったが、モザンビーク政府が重複による全体のコストアップを懸念し、圧力をかけたといわれている。
東京ガス、中部電力、大阪ガスなどはそれぞれ、モザンビークで開発中のガス田からの調達を目指し、Anadarkoや三井物産と交渉に入ったとされる。
ーーー
三井物産は2008年2月、米国大手独立系石油・ガス開発会社 Anadarko Petroleumがモザンビークに保有する石油・天然ガス探鉱鉱区(Area 1)の権益の一部を取得することで同社と合意した。
権益保有者は以下の通り。
当初 現在 Anadarko (オペレーター) 76.5% 36.5% Mitsui E&P ー 20% モザンビーク国営石油会社 15% 15% Bharat Petroleum(インド) ー 10% Videocon (インド) ー 10% Artumas Group(現 Wentworth Resources) 8.5% ー PTT Exploration & Production (タイ) ー 8.5%
ーーー
モザンビークとタンザニアの国境を流れるRovuma川の河口と沖合に世界最大規模のガス田が発見され、開発が始まった。
モザンビークの海底ガス田の開発は6区に分けて行われており、三井物産はArea 1に権益を持つ。
LNGプラントはPalmaの南に建設される。
各鉱区の権益保有者は以下の通り。ENHはモザンビーク国営石油会社。
Area 4 Eni 70%、ENH 10%、ポルトガルGalp 10%、韓国Kogas 10% Area 2 Statoil (当初 Norsk Hydro)90%、ENH 10%
→Statoil 65%、英Tullow Oil 25%、ENH 10%Area 5 Area 3 Petronas 90%、ENH 10% Area 6
Norsk Hydroの石油部門は2007年にStatoilに吸収された。
付記
国際石油開発帝石は4月2日、Area2&5鉱区の25%の権益をノルウェーのStatoilから取得したと発表した。
付記
BPは2016年10月、Area 4 の権益所有者4社からLNGを全量20年間購入する契約を締結した。
本計画の最終の投資承認は2016年末の予定で、LNG能力は年間330万トン以上となっている。
なお、モザンビークの陸上ガス田はオスロに上場しているArtumas Group(現 Wentworth Resources)が権益を持つ。
ーーー
タンザニア側では英BGと米Ophir Energyの連合、Statoil とExxonMobile連合等が開発を行っている。
Saudi Kayan は2012年12月26日、同社とSadara Chemical Company、Saudi Acrylic Acid の3社がブタノールを生産するJV を設立する契約を締結したと発表した。
JV名はSaudi Butanol Companyで、3社が均等出資を行う。
工場をTasnee PetrochemicalsのJubail Industrial Cityのコンプレックスに建設し、Tasneeが操業を受託する。
能力はn-butanol が年産 330千トン、iso-butanolが年産11千トンで、建設費は約480百万ドル。2015年第1四半期に操業開始の予定。
製品のn-butanol は3社が均等に引き取り、原料のプロピレンは各社が持ち込む。
iso-butanol はSaudi Acrylic Acid が引き取る。
3社の概要は以下の通り。
1)Saudi Kayan Petrochemical Company (Saudi Kayan)
2)Sadara Chemical Company (Sadara)
Saudi Aramco と Dow Chemical のJV
3)Saudi Acrylic Acid Company (SAAC)
Tasnee Petrochemical とSahara Petrochemical がアクリル酸、吸水性樹脂の事業化のために設立した50/50JV。
Tasnee はサウジのワリード・ビン・タラール王子の投資・持株会社Kingdom Holding Companyが筆頭株主のNational Industrialisation Company が51%出資して石油化学事業を行う会社。
Tasneeには他に、ガルフの6国(バーレン、クウェート、オーマン、カタール、サウジ、アラブ首長国連邦)が均等出資するGulf Investment Corporationなどが株主となっている。SaharaはAl-Zamil Group の石油化学子会社。
Saudi Acrylic Acid Companyの相関図は下記の通り。
TasneeとSahara は個別にもBasell とのポリオレフィンJVを持っている。
中国税関当局が1月10日に発表した2012年12月の貿易統計によると、輸出が7カ月ぶりの高い伸びを示した。
12月の輸出は前年同月比14.1%増、輸入は6.0%の増となった。(ロイター予想では輸出は4.0%増、輸入は3.0%増であった)
この結果、12月の貿易収支は316億ドルの黒字となった。
年間では、輸出は20,489億ドルで前年比 7.9%増、輸入は18,178億ドルで4.3%増となり、貿易収支は2,311億ドルとなった。
輸出と輸入を合わせた貿易総額の伸び率は6.2%にとどまり、「10%前後の増加」としていた政府目標は達成できなかった。
最大の貿易相手であるEUとの貿易は3.7%減、対日本では3.9%減となった。
輸出 輸入 収支 輸出入計 億ドル 前年比 億ドル 前年比 億ドル 億ドル 前年比 2012/12 1,992.3 14.1 1,676.1 6.0 316.2 2012暦年 20,489 7.9 18,178 4.3 2,311 38,667 6.2
中国国家統計局が1月11日に発表した2012年12月の消費者物価指数(CPI)は寒波の影響等による食品価格の大幅上昇を主因に上昇した。
11月 12月 CPI 2.0% 2.5% うち食品 3.0% 4.2% 非食品 1.6% 1.7% PPI -2.2% -1.9%
参考 2011年の食品の高騰は豚肉によるものが大きい。
2012年通年では、CPIは前年比 2.6%となった。
政府の抑制目標「4%前後」の範囲に収まっているが、徐々に物価上昇の勢いが増している。
生産者物価指数(PPI)は企業の生産活動の低迷を受けて11年夏から下落しているが、ようやく持ち直しつつある。
市場関係者は、2013年のCPIは3%程度の予想で、政府にとり大きな懸念要因にはならないだろうと見ている。
先週の記事のように、サウジや中東では依然として大規模石油化学プラントが建設されている。
次から次に新しいコンプレックスができるため、全貌の把握が難しくなった。
このため、現時点で筆者が把握している計画を別紙にまとめてみた。
次の目次から各社の計画概要に飛びます。
中心となるのはSABIC。
同社はAl Jubail とYanbuに世界の各社とのJV及び単独で石化コンプレックスを展開し、順次、高機能性製品にまで拡大しつつある。
欧州ではDSMの石化部門とHuntsmanの英国石化子会社を買収した。
更に、GE Plastics を買収してSABIC Innovative
Plastics と改称、世界中で機能性樹脂の製造販売を行っている。
中国ではSinopecの天津石化事業に参加し、SINOPEC
SABIC Tianjin Petrochemical としている。
サウジの国営石油会社 Saudi Aramcoも石油化学に参入した。
住友化学とのJVで西海岸のRabighにPetroRabighを設立、新たにJubailでDowとのJVのSadaraを建設中。
中国ではSinopec、ExxonMobilと共同で福建省に石油化学コンプレックスを建設した。
民間企業では、Zamil グループとTasneeが、個別に、及び共同で、多方面に事業展開を行っており、他にも多くの企業がある。
サウジではExxonMobilやShell、その他の欧米企業がSabicと組んで、またDowがAramcoと組んで石化事業を行っているが、Chevronは民間企業と組んでいる。
日本企業は、サウジ石油化学及び日本サウジアラビアメタノールがSABICと、日本アラビアメタノールがSipchemと、住友化学がAramcoと組んで事業を行っている。更に三菱レイヨンと旭化成が新たにSABICとJVを設立した。
2013/1/15 イタリアのM&G、米国に1系列では世界最大のPETプラントを建設
イタリアのM&G (Gruppo Mossi & Ghisolfi)は1月11日、テキサス州Corpus Christi に建設するPTAとPETプラントの設計・購買・建設契約(EPC Contract)をSinopec Engineering(Group) との間で締結したと発表した。
PTAは年産120万トンで1系列としては西欧諸国では最大、PETは年産100万トンで1系列としては世界最大となる。
契約はTurnkeyベースで、10億ドル。
M&Gの誇るEasyUp™ SSP technologyを使用する。
同社は2007年7月に、米国に80万トンの最新鋭のPET工場を建設すると発表、立地は追って発表するとしていた。
このうち65万トンは2009年前半に完成する予定としていたが、用地の選定が遅れていた。
2012年9月にテキサス州 Corpus Christiで土地を買収したことを発表した。新設のPETの能力は当初の計画80万トンを100万トンに変更した。
認可手続きを含め、完成まで36か月をみている。
同社は米国、メキシコ、ブラジル、イタリアにPETプラントを有し、現在の合計能力は約170万トンとなっている。
これが完成すると、合計能力は270万トンとなる。
ーーー
M&Gについては 2008/7/25 M&G、ブラジルのPETプラントを拡大、1系列で世界最大に を参照。
同社の現在のPETプラントは以下の通り。
立地 能力(千トン) 米国 Apple Grove(WV) 285+α (*1) Mexico Altamira Tamaulipas 400+α (*1) Brazil Suape 650 (*2) Italy 190 合計 1,700 (*1) 2007年発表 米国とメキシコでデボトルネッキングで合計200千トンの手直し増強
(*2) 2008/7/25 M&G、ブラジルのPETプラントを拡大、1系列で世界最大に
中国各地で1月11日ごろから大気汚染が悪化し、当局が市民に外出を控えるよう“警報”を出す事態になっており、北京では死者も出た。
北京などでは晴天が続いて放射冷却現象が起き、地表近くの高湿度の空気が飽和状態となった。
風も止まって濃霧が発生。空気中に汚染物質が滞留し大気汚染が悪化した。
車の排ガスなどに含まれ、肺癌などを引き起こすとされる直径2.5μm以下の超微粒子物質「PM2.5」の濃度が国際基準の3倍近くまで上昇し、6段階ある大気質指数(AQI:Air Quality Index)も最悪の水準に達した。
北京市当局はこの日、大気汚染を減らすため、58の企業に営業を停止させ、問題解決に取り組む姿勢を強調した。
北京の日本大使館も14日、在留日本人に対し、不要不急の外出を避けるよう注意を呼びかけた。
ーーー
大気質指数(AQI:Air Quality Index)は下記の通り、PM2.5の濃度を基準にしており、100以下が問題なし。
AQI | PM2.5 μg/m3 |
分類 | 健康アドバイス |
0~50(緑) | 1~15.4 | 優 | 通常の活動が可能 |
51~100(黄) | 15.5~40.4 | 良 | 特に敏感なものは長時間又は激しい屋外活動の減少を検討 |
101~150(橙) | 40.5~65.4 | 軽微汚染 | 心臓・肺疾患患者、高齢者及び子供は、長時間又は激しい屋外活動を減少 |
151~200(赤) | 65.5~150.4 | 軽度汚染 |
心臓・肺疾患患者、高齢者及び子供は、長時間又は激しい屋外活動を中止
すべての者は、長時間又は激しい屋外活動を減少 |
201~300(紫) | 150.5~250.4 | 中度汚染 |
心臓・肺疾患患者、高齢者及び子供は、すべての屋外活動を中止
すべての者は、長時間又は激しい屋外活動を中止 |
301~(赤褐色) | 250.5~ | 重汚染 |
心臓・肺疾患患者、高齢者及び子供は、屋内に留まり、体力消耗を避ける |
各地の現状は http://www.aqicn.info/
2013年1月15日朝11時の北京のAQIは153だが、1月14日の最高値は661の重汚染となっている。
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四川省成都市の場合、1月15日朝11時で重汚染の426、2日間の最低でも235である。
上海の場合は、2日間の最高が226、最低は84であった。
1.クウェート国内
クウェートの石油化学を担当するPIC (Petrochemical Industries Company K.S.C ) は1963年に国営会社として設立され、1980年のクウェート国営石油(KPC) 設立で同社の子会社となった。
1995年にDow Chemical(当時のUCC)とのJVでEquate Petrochemical Company を設立した。
2006/5/31 湾岸諸国の石油化学ー1 クウェート&バーレーン
その後、改組や増設で、現状は下記の通り。
2. MEG/PET JV (海外)
PICとDow Chemical は2004年にDowのMEG、PTA、PET事業をJV化した。
ダウの “asset light” 戦略の適用第1号である。
両社は2つの50/50JVを設立した。
(1) MEGlobal
MEG、DEGの製造販売で、ダウのカナダの2工場 (合計能力100万トン)を移管した。他社製品の販売も行っている。
Fort Saskatchewan EO/EG plant 340千トン
Prentiss I EO/EG plant 310千トン
Prentiss II EO/EG plant 350千トン
(2) Equipolymers (現在はMEGlobal の100%子会社)
工場 PTA PET Schkopau, Germany 335千トン
No.1:160千トン
No.2:175千トンOttana, Italy (190千トン) (160千トン) 売却 イタリアの工場は2010年7月、同地で発電所と用役工場を運営しているOttana Energia とタイのIndoramaのJVに売却した。
3. Dow Chemical とのGlobal 石化JV(海外)(破談)
経緯については、2012/5/25 Dow、石化JV中止問題での調停で勝利、21.6億ドルを獲得
4. 中国 Sinopecとの石油精製・石油化学JV (建設中)
立地:広東省湛江市東海島
出資:50/50
製品:
原油精製 15,000 千トン エチレン 1,000 PE 460 PP 750 BTX 710 MEG 400 EO 38 EVA 200 ブタジエン 150 2011/3/31 中国の国家発展改革委員会、Sinopec-KPCの石油精製・石油化学計画を認可
5.ベトナム
製油所・石油化学コンプレックス 2013/1 発注内示
社名:Nghi Son Refinery & Petrochemical Limited Liability Company
立地:タインホア省ニソン経済区
出資:出光興産 35.1%
三井化学 4.7%
Kuwait Petroleum International (KPI) 35.1%
PetroVietnam 25.1%
設立:2008/4
能力:石油精製 20万バレル/日
パラキシレン 700千トン/年
商業生産開始:2017年2008/8/25 ベトナム最大の石化コンプレックス、9月に建設着工 後半部分
1974年に副生エタンガスの利用のためにQatar Petrochemical Company (QAPCO) が設立された。
石油化学の立地はMesaieed だが、 その後、Ras Laffanに新しいクラッカーが建設され、Mesaieedにエチレンを送っている。
他に、Ras LaffanではShell/Qatar Petroleum、Exxon/Qatar Petroleumの計画がある。
2006/6/1 湾岸諸国の石油化学ー2 カタール
また、Qatar Petroleumは積極的に海外展開を図っている。 海外計画
国営石化計画
Ras Laffan
Ras LaffanにはShell とQatar PetroleumとのJVのPearl GTLと南アのSasolとQatar PetroleumのJVのOryx GTLがあり、ナフサも生産している。
Qatar Petroleum とShellは2011年12月、カタールの石化計画でHeads of Agreement を締結した。
2011/12/14 Qatar Petroleum とShell、カタールの石化計画でHeads of Agreement を締結
付記 Qatar PetroleumとShellは2015年1月14日、計画中止を発表した。建設費が高過ぎるとしている。
ExxonMobil / Qatar Petroleum 計画 Pending
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その他計画(立地:Mesaineed)
2007/7/26 韓国湖南石油化学、カタールで石化事業に参加
付記
立地:Mesaineed
EPS Qatar
2014/5/29 EPS
Qatar picks Ineos EPS process for polystyrene project |
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Qatar PetroleumとShellは2007年に戦略的パートナーシップ契約を締結し、川上から川下全般で、双方が関心を持つインターナショナルな計画を一緒に行うこととしている。
1)シンガポール
Qatar Petroleumは2009年、シンガポールの住化主導の2つの石化会社、Petrochemical Corporation of Singapore(PCS) とThe Polyolefin Company (TPC)に参加した。
ShellはPCSに50%、TPCに30%を出資していたが、この持分をQatar PetroleumとShellの新設の50/50JVのQPI and Shell Petrochemicals (Singapore) Pte Ltd に譲渡した。
Qatar Petroleumにとって初めての海外での石油化学への参加となる。
2009/11/26 カタール石油、シンガポールのPCS、TPCに出資
2)中国
Qatar PetroleumとPetroChina、Shell の3社は2008年6月 、中国での石油精製・石油化学コンプレックス建設の予備検討開始の覚書を締結した。
3社は2011年10月、浙江省台州市当局との間で、同市での石油精製・石油化学コンプレックス建設に関する協力枠組み協定を締結した。
立地:浙江省台州市路橋地区
出資:PetroChina 51%
Qatar Petroleum 24.5%
Shell 24.5%計画:製油所 年産2000万トン
エチレン 120万トン2011/10/27 PetroChina/Qatar石油/Shellの中国の石油精製・石油化学コンプレックス計画、進展
3)ベトナム
Qatar Petroleum International (QPI) のCEOは2009年に、アジアの拡大する需要に対応するため、2015年までに中国とベトナムで98億ドルに達する2つの石油化学プラントを建設することを明らかにした。
中国については上記。
ベトナムに関しては、40億ドルを投じる計画を、PetroVietnam、伊藤忠、タイのSiam Cement Group と予備的協議を開始した。
2009/11/27 カタール石油、中国とベトナムで石油化学事業
2012年2月にSiam Cement、Qatar Petroleum はベトナム側とベトナムでの石化JV設立の契約を締結した。
JV名:Long Son Petrochemical Ltd
出資: ベトナム側 29% PetroVietnam 18%、Vinachem 11% Siam Group 46% Siam Cement 28%、TPC 18% Qatar Petroleum 25% 立地:Long Son Island、Ba Ria-Vung Tau province, Vietnam
能力:オレフィン 1,400千トン
HDPE 400千トン
LLDPE 400千トン
PP 450千トン
アルジェリアで1月16日、アルカイダ系のイスラム武装勢力が英BPなどが運営するIn Amenasの石油関連施設を攻撃し、外国人を人質にとる事件が発生した。報道によると、人質には日揮の従業員5人が含まれている。
武装勢力は、マリに軍事介入を行っているフランスに対しアルジェリアが自国空域の使用を認めたことに対する報復として、アルジェリアのガス関連施設を攻撃したとしている。
武装組織はフランスに対し、人質の安全と引き換えにマリ北部での軍事作戦を停止するよう求めている。
マリでは2012年4月に北部の遊牧民のアザワド解放民族運動(MNLA)が北部を掌握し、独立を宣言したが、7月にイスラム過激派がMNLAを放逐し、北部支配を固めた。
テロの温床となるのを恐れた西アフリカ諸国経済共同体は過激派を北部から掃討するため部隊派遣を決定、国連安保理が2012年12月にこれを承認した。
しかし、過激派が中部の政府軍要衝を攻略したため、フランスが軍事介入し、アルジェリア政府は1月13日、仏軍の領空通過を認めた。
In Amenasはアルジェリア有数のガス田で、アルジェリア国営炭化水素公社(Sonatrach)とBP、Statoilが共同で運営にあたっている。
日揮は2011年5月に、In Amenas天然ガス田の生産レベルを維持するための2億1300万ドル相当の契約を運営3社と締結した。
BPにとっては、In AmenasとIn Salahがアルジェリアでの重要プロジェクト。
In Amenasでの1日当たりの生産量を今後12年間3000万立法メートル程度に維持する狙いで圧縮プラントを建設することなどが含まれ 、2013年8月完了の予定であった。
ーーー
日揮は1969年にアルジェリアの地中海沿岸のArzew製油所建設を受注して以来、同国で事業展開している。
2001年8月にアルジェリア国営炭化水素公社(Sonatrach)とBPからIn
Salahでのガスプロジェクトを受注した。
1997年11月にKBRとのJVで本プロジェクトの概念設計を受注していた。
2009年6月にSonatrachからGassi Touil での大型ガス処理設備建設プロジェクトを受注。
2011年5月に本件 In Amenas天然ガス田の業務を受注。
2011年8月には、Groupement Bir SebaがBir
Seba地区で計画している原油処理プラント建設プロジェクトを受注した。
16の生産井から産出される原油の収集設備、原油とガスの分離を含む原油処理設備、ならびに製品を送るパイプラインを建設するプロジェクトで、Groupement Bir SebaはSonatrachが25%、Petrovietnamが40%、PTTが35%出資の3社JV。
2013/1/18 2012年VCM、PVCの生産・出荷 激減
塩ビ工業・環境協会(VEC)は1月16日、2012年1~12月のPVCとVCMの生産出荷実績を発表した。
PVCの生産は1982年以来の低水準となった。
国内出荷は若干の前年割れだが、輸出は前年比42.6%減で3年連続の前年割れとなり、1993年以来の低水準となった。
PVCの国内出荷は1997年の2,013千トンをトップに、ダイオキシン問題も影響して急減し、最近は低位安定の状況にある。
PVCの主たる需要の住宅の着工件数は、最盛期の半分の水準で推移している。
(2012年1~11月実績は807千戸。12月は2010年は75千戸、2011年は69千戸)
VCMは2011年11月の東ソー南陽工場の事故で生産が減少し、その分、輸出が大幅に減少した。
2011/11/17 東ソー・南陽事業所の第二VCMプラントで爆発事故
VCM設備は 1−3号機すべてが停止したが、第一プラント(年産能力:25万トン)は2012年5月8日から、第三プラント(年産能力:40万トン)は7月8日から稼働を再開した。
なお、VCM能力は2011年3月にヴイテックが391千トンのプラントを停止(同社は解散)、2011年11月の事故で東ソー南陽工場の第二プラント550千トンが破壊され、2011年末では2,574千トンになっている。
米商務省が1月17日発表した2012年12月の住宅着工件数は前月比12.1%増の年換算954千戸となり、2008年6月以来4年半ぶりの高水準となった。
2012年年間合計では780千戸となった。(今後、修正の可能性あり)
米景気の大きな追い風になるとの見方が強まっている。
2013/1/19 NHK クローズアップ現代 “コンビナート危機”
1月16日のNHKクローズアップ現代は、“コンビナート危機”ー急増する事故なぜー、を放送した。
この10年で10倍に急増している“コンビナート事故”。去年9月の姫路の事故では、消防隊員1人が死亡し、周辺住民の生活を脅かした。経済産業省は、去年11月に審議会を開き、この喫緊の課題の検討を始めた。笹子トンネルの事故などインフラの老朽化が指摘される中、同じく高度経済成長期に作られ、産業基盤として日本経済を下支えしてきたコンビナートも設備の経年劣化が懸念されている。さらに、効率化の中で進められた分業が技術継承を阻み、競争力維持のために高度・複雑化した製造方法にヒトの技術力が追いついていない現状も浮かび上がってきた。対応に模索する現場を見つめ、これからの安全のあり方について考える。 (番組紹介から)
付記 放送全文 http://www.nhk.or.jp/gendai/kiroku/detail02_3294_all.html
放送では日本触媒や三井化学の事故を紹介し、事故の原因として2つを取り上げた。
第一は、老朽化問題。
高度経済成長期に相次いで建設されたコンビナートは、半世紀あまりが経過した今、一斉に老朽化が進行している。
法律では爆発や火災の恐れのある設備のうち、特に痛みやすい場所についてのチェック項目を決めているが、それ以外は各社の判断で行うことになっている。
ある社の社員が、老朽化対策の必要を訴えても、予算がカットされ、必要なメンテナンスが全ては行えていない実情を証言している。
第二は技術力の低下。
創業時のベテランが退職し、技術力が低下して危機に対応できない例として、三井化学の岩国大竹工場の例を挙げている。
この問題は、2012年 回顧と展望 (2012/12/25) の後半部分で取り上げた。
番組では老朽化対策として3つの例を取り上げている。
メーカーでつくる協会では、各社で見つけた腐食箇所などのデータベースをつくり、他社が活用できるようにした。
ガスの配管は
これまでは均一に老朽化すると思われていたが、ガスの流れなどから特定箇所が問題であることが分かった例もある。
四日市市では産業支援の一環として、老朽設備を更新した設備について、固定資産税を最大で5年間、半額にしている。
この制度をきっかけに、劣化が進んでいたボイラーを新しくするなど、7つの施設で更新が行われた。
日本ゼオンでは水島工場に統合生産センターを新設、オペレーターの作業内容の最適化を図るとともに、ベテラン技術者からの聴取で技能継承を図っている。
中国国家統計局が1月18日に発表した2012年第4四半期のGDP伸び率は前年同期比7.9%となった。
2012年通年では7.8%となり、1999年 (7.6%) 以来13年ぶりに8.0%を下回った。
しかし、市場予想の7.7%を若干上回ったほか、中国政府が目標とする7.5%も上回った。
中国経済を支えてきた輸出の伸びが、欧州の信用不安などによる世界経済の低迷や、中国の労務費上昇による輸出競争力の低下を背景に、大幅に鈍ったことなどによる。
国家統計局では、「共産党と政府は穏やかな成長を一層重視して、経済を一定の水準に保ち、社会を安定的に発展させている」としている。
最新分は http://blog.knak.jp