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目次
これは下記のブログを月ごとにまとめたものです。
最新分は
2015
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2015/2/12 年金のマクロ経済スライド実施 4月から年金のマクロ経済スライドが実施される。
年金の改定率は前年の全国消費者物価指数(2.7%)と過去3年間の賃金変動率(2.3%)の低い方を取ることとなっており、2015年度は本来なら2.3%のアップとなる。
但し、2000〜2002年の過払い分の解消分(0.5%)とマクロ経済スライド分(0.9%)を差引し、年金は0.9%のアップにとどまることとなる。
1) 全国消費者物価指数 2.7%
総合指数 |
前年比 2.7%の上昇 |
生鮮食品を除く総合指数 |
前年比 2.6%の上昇 |
食料(酒類を除く)及びエネルギーを除く総合指数 |
前年比 1.8%の上昇 |
2) 名目手取り賃金変動率 2.3%
物価変動率(2.7%)×実質賃金変動率(▲0.2%)×可処分所得割合変化率(▲0.2%)
(2014年)
(2011〜2013年度平均)
(2012年度の変化率)
3) 過去の過払い分の解消 0.5% 本年で完了
2000〜2002年の3年間は物価が下落したため、本来は年金を下がるべきところ、特例的に据え置いた。
その後の差異を含め、過払い分は2.5%分となる。
これを下記により解消する。
2013年10月から 1%
2014年4月から 1%
2015年4月から 0.5%
4) マクロ経済スライド 0.9% 本年から(少子高齢化により、2004年の年金制度改正で導入
、初適用)
公的年金被保険者数の変動率(▲0.6%)×平均余命の伸び率(▲0.3%:固定)
(2011〜2013年度の平均)
公的年金被保険者数の減(現役人口の減) → 保険料収入の減少(収入減)
平均余命の伸び → 年金給付費の増加(支出増)
この合計分が年金会計を悪化させることとなるため、この分だけ給付水準を調整する。
なお、2014年の財政検証では、2015年度のスライド調整率は▲1.1%と見込んでいたが、60歳以上の高齢者雇用が見込みよりも進んだことなどにより、厚生年金被保険者が増加したことで、スライド調整率は0.9%となった。
マクロ経済スライドは、下記の例のごとく、消費者物価(or
賃金上昇率)を下回らないこととなっている。
消費者物価 |
本来のスライド調整 |
実際のスライド調整 |
年金改定 |
2.3 |
0.9 |
0.9 |
1.4 |
0.8 |
0.9 |
0.8 |
0 |
-1.0 |
0.9 |
0 |
-1.0 |
マクロ経済スライドは物価スライド特例措置による物価下落率の累積分(1.7%)が解消された後に開始されることとされている。
制度発足時からデフレが続いたため、これまで発動されず、今年が初の適用となる。
付記
厚労省は2014年6月の年金財政の検証で、物価にかかわらずマクロ経済スライドを実施するとの案を出したが、自民党が反対していた。
厚労省は2015年2月24日、改革案を自民党に示し、了承を得た。
デフレ時はマクロ経済スライドを凍結する現在の仕組みを続けるが、調整不足分を繰り越し、物価が大きく上がれば、複数年の繰り越し分をまとめて実施する。
2015/2/12 1月の実質企業物価指数、前年比 マイナス 2.4%
日銀は2月12日、1月の企業物価指数を発表した。
国内企業物価は前年比 +0.3%
となったが、消費税の影響を除外するとは前年比 -2.4%となる。
3カ月連続で前年比でマイナスで、マイナス幅は現行の2010年基準統計で最大となった。
企業物価指数は、企業間で取引される商品の物価指数で、国内市場向けの国内生産品の企業間取引価格の「国内企業物価指数」と、「輸出物価指数」、「輸入物価指数」の3つを日銀が調査・公表している。2002年12月までは「卸売物価指数」と呼ばれていたが、生産者段階での価格のウエイトが高くなったことで名称が変更された。
2010年平均を100とした物価の動きは下記のとおり。
前月比でもいずれもマイナスとなっているが、品種別の寄与度(下落率 x
構成比)は下記の通りで、原油価格の下落による石油・石炭製品や化学製品の価格が大きく下がったことが影響した。
国内企業物価 |
石油・石炭製品 |
-0.83% |
化学製品 |
-0.34% |
農林水産物 |
-0.11% |
非鉄金属 |
-0.04% |
食料品・飲料ほか |
+0.03% |
電力・ガス・水道 |
+0.03% |
情報通信機器 |
+0.02% |
その他 |
-0.06% |
合計 |
-1.30% |
|
輸出物価(契約通貨ベース) |
化学製品 |
-0.58% |
石油製品 |
-0.51% |
金属、金属製品 |
-0.20% |
輸送用機器 |
-0.08% |
電気・電子機器 |
+0.11% |
その他 |
+0.16% |
合計 |
-1.10% |
|
輸入物価(契約通貨ベース) |
石油・石炭・天然ガス |
-4.15% |
金属、金属製品 |
-0.51% |
化学製品 |
-0.06% |
プラスチックフィルムほか |
-0.05% |
電気・電子機器 |
-0.03% |
食料品・飼料 |
-0.02% |
その他 |
+0.12% |
合計 |
-4.70% |
|
2015/2/13 Dow Chemical、内部告発者と和解
Dow Chemical
は2月9日、Andrew Liveris CEOなどの不当な支出を暴露し馘首されたとして訴えた従業員Kimberly Wood
の裁判で和解したことを明らかにした。
友好な和解としているが、和解条件は明らかにされていない。
原告のKimberly Wood
はDowに25年勤務していた不正調査官で、DowがLiverisの一家のスーパーボール、南アのワールドカップ、マスターズやアフリカのサファリなどへの旅行の費用を支払っていたことを明らかにした。DowはLiverisが共同出資しているギリシャのチャリティ団体のHellenic
Initiativeを経由して支出していた。
(本件は監査で事業に関係のない支出であるとされ、Liverisは720万ドルを支払ったが、Kimberly Wood
はこの発表は事実を誤魔化していると主張した。)
Woodはこのあと、CEOの過去のことは調べるなと注意されたとしている。
裁判の記録では、Kimberly
Wood は2009年にはDowがMidlandに所有するH Hotel
が13百万ドルの予算を20百万ドル超過したことを見つけたとしている。従業員が予算超過とLiverisの妻とその友人の介入を防ごうとして解雇されたことを明らかにしている。
Kimberly Wood
は2013年10月に、Dowの経営者がエチレン計画の予算超過を隠すため、会計記録をごまかしたのは「財務諸表不正」であるとして上司に注意して馘首され、Sarbanes-Oxley
Act(SOX法)に基づき訴えた。
Dow
はこの訴訟を却下するよう申請したが、昨年12月に裁判所がこれを拒否した。
Dowは当時、Kimberly Wood
は「不労給付」の支払いを拒否された報復に偽りの訴えをしたとし、強力に戦うとしていた。
ーーー
Sarbanes-Oxley Act
は2002年7月に制定されたPublic Company Accounting Reform and
Investor Protection Act of
2002で、米国の不正会計問題に対処するため、企業会計の信頼性を高め、内部統制を強化することを目的に、企業経営者の責務と罰則を定めた米国連邦法。
エンロン事件やワールドコム事件などで問題になった企業会計の不正に対処するために制定された。
同法は、「上場会社又はその役職員、請負業者、下請け業者等」が、「従業員」に対し、合法的な内部通報・内部告発を理由とする解雇、降格、停職、脅迫、嫌がらせ、及びその他の差別的な行為をすることを禁止している。
従業員が内部通報・内部告発を理由に差別的な行為等を受けたと認められた場合には、現状回復に必要な救済(同等の役職への復帰・利子を含む期限経過給与の支払い・訴訟費用等の補償等)が受けられる。
2015/2/14 中国、独禁法違反でQualcommに975
百万ドルの罰金
中国の国家発展改革委員会(NRDC)は2月10日、米半導体大手のQualcommに60.88億人民元(975
百万ドル)の罰金支払いを命じた。中国の独禁法違反では、過去最大の制裁金となる。
NRDCは、主に下記の点を問題とし、「Qualcommの違法行為は悪質で長期にわたり、極めて重大だ。ただちにやめるよう命じた」としている。
(1)不公平な高額の特許使用料を徴収していた。
(2)正当な理由なく、モバイル通信で標準的に必要としない特許の使用料を抱き合わせで販売した。
(3)半導体チップの販売において不合理な条件を押しつけた。
中国の独禁法は違法企業には最高で前年度の売上高の10%の罰金としているが、今回の罰金は2013年の売上の8%に相当する。
中国の独禁法の担当は下記の通り。
国家発展改革委員会(NDRC) |
価格独占行為の調査・処分 |
商務部 |
事業者集中行為 |
工商総局 |
独占協定、市場支配的地位の濫用、
行政権力を濫用した競争の排除、制限 |
Qualcommは中国当局の決定に従うとし、そのための対策の概要を発表した。9億7500万ドルの罰金に異議を申し立てない
としている。
Qualcommは、中国で高いシェアを持つスマートフォン向けの通信技術を巡り、端末メーカーに不当に高い使用料を強いるなどの違反行為があったと認めた。
NRDCは、中興通訊(ZTE)や華為技術(Huawei)など中国メーカーから苦情が相次いだため「時間をかけて調査を続けてきた」としている。
Qualcommの対策は下記の通り。
・中国国内で使用・販売する携帯電話端末について、これまでは卸売価格の100%にあたる特許使用料を徴収していたのを、今後は65%とする。
中国で販売する製品に3Gと4Gの特許を使う場合、それぞれ5%、3.5%のロイヤリティとする。
・中国の特許の被許諾者に特許の使用を許諾する場合、特許のリストを提供し、特許権の存続期間を過ぎた特許については使用料を徴収しない。
・Qualcomm が中国側からのクロスライセンスを求める場合、交換特許に妥当な評価を行う。
・モバイルの標準に必要な特許を許諾する場合に、正当な理由なくモバイル通信の標準に必要のない特許の許諾を抱き合わせで販売しない。
・半導体チップを販売する時に、中国の被許諾者に不合理な条件を含む許諾合意に調印するよう求めない。
特許の許諾をめぐって争わないとする合意への調印を中国の被許諾者に半導体チップを提供する際の条件としない。
QualcommのCEOは、事業めぐる不透明感が取り除かれたとし、これにより
中国のワイヤレス市場にフルに参加でき、同社の3G/4G
技術の採用が速まると述べた。
ーーー
中国では外資大手の大型摘発が続いている。(1人民元は2012/9までは約12.5円、現在は約19円)
なお、湖南省長沙市中級人民法院(地裁)は2014年9月19日、GlaxoSmithKline
に対し、賄賂や脱税で30億元の罰金を課している。
2013/7/18
中国、GlaxoSmithKline を贈賄の疑いで捜査
2015/2/18 2014暦年 GDP速報
内閣府は2月16日、2014年10〜12月期の国内総生産(GDP)速報値を発表した。
物価変動の影響を除いた実質GDPは7〜9月期と比べて0.6%増(年率で2.2%増)だった。
プラス成長は3四半期ぶりで、2014年4月の消費税率引き上げ後は初めてだが、民間エコノミストのコンセンサス予想(年率3.8%増)と比べ、大幅に下回った。
付記
内閣府は3月9日、二次速報で下方修正した。
4Q 実質年率2.2→1.5%、名目 4.5→3.9%
2014年 実質0.0→ -0.0%、名目1.7→1.6%
需要項目別に見てみると、内需の回復が全般的に弱かった。
民間最終消費支出は、実質0.3%で、市場予想の同0.7〜0.8%増を下回った。
住宅投資は、同マイナス1.2%だった。
民間企業設備投資は同プラス0.1%に止まり、市場予想の同1.2〜1.3%を大きく下回った。
財貨・サービスの輸出は実質2.7%増、輸入は実質1.3%増となった。
年率換算の寄与率は下記の通り。
ーーー
2014年暦年の実質成長率は0.0%成長となった。名目では1.7%の増となった。
1〜3月期に消費増税前の駆け込み需要があったが、その後は反動減が大きく、年間ではまったく成長しなかったことになる。
各項目の金額の推移(名目)は下記の通り。
GDP デフレーターは下記の通りで、消費税アップの影響もあり、デフレの象徴とされる、名目成長率が実質を下回る「名実逆転」を17年ぶりに解消した。
GDPデフレーターは
名目GDP/実質GDP x 100 で、構成項目ごとに計算する。
2015/2/19 米国が中国を不当な輸出補助金でWTOに提訴
米通商代表部(USTR)は2月11日、中国が紡績品など多くの業界を対象に、数10億ドルに上る不当な輸出補助金を実施しているとして、WTOに提訴した。
中国の “Demonstration
Bases ー Common Service Platform” (モデル拠点 ー
公共サービスプラットホーム) を 輸出補助金であるとしている。
中国政府は公共サービスプラットホームを通して、禁止されている輸出補助金を与え、米国に被害を与えている。
公共サービスプラットホームを通して、179箇所のモデル拠点にあり、輸出基準に合格した企業に、無料又は割引価格でサービスを供給するとともに、補助金やその他のインセンティブを与えている。
対象業種は
(1) 繊維、衣料、履物、(2) 先端材料・金属(特殊スティール、チタン、アルミ製品を含む)、(3) 軽工業、(4) スペシャルティ
ケミカルズ、(5) 医療製品、 (6) ハードウエアと建材、 (7) 農業の7業種。
具体的な補助金の額は不明で、業種や事業規模や場所によって異なるが、あるモデル拠点の企業は毎年635千ドル以上の供与を受けている。
更に、中国政府はモデル拠点の企業に無料若しくは割引価格でのサービスを供与する公共サービスプラットホームのサプライヤーに3年の期間で10億ドルを支払ったことが書類で明らかになっている。
モデル拠点は中国の輸出に貢献しており、例えば2012年には繊維産業で40のモデル拠点のうちの16の拠点が中国全体の繊維輸出の14%を占めており、水産物の10拠点のうちの6拠点が輸出の20%を占めている。
これに対して中国商務部は、「指摘されているモデル拠点は、中国が貿易発展の方法を転換し、対外貿易の健全で安定した発展を促進させるための重要な政策で、WTOの規定にも合致している」
としている。
WTOの関連規定では、紛争を解決するために、まず今後60日の間に、二国間協議が実施されることになっている。
それでも、問題が解決されない場合には、米国政府が、スイスのジュネーヴにあるWTO本部に仲裁を請求し、WTOが9カ月以内にその結果を出すことになる。
もし、中国がWTOの貿易規定に反していると判断されれば、一定期間内に補助金政策を中止しなければならない。
米紙は今回の動きを、TPP問題と結び付けている。
オバマ政権は議会に対して通商交渉で政府に権限を一任する大統領貿易促進権限(TPA)法の成立を求めているが、中国との貿易をめぐる対策を講じることで、オバマ大統領は議員の支持を取り付けたいのだろうと分析している。
通商条約については、以前には、Trade Promotion
Authority法によりファスト・トラック権限(fast track negotiating
authority)が認められ、議会は、大統領と外国政府との通商合意の個別内容の修正を求めずに、一括承認するか不承認とかのどちらかであった。
しかし、これは2007年7月1日に失効したままになっている。
アメリカ合衆国憲法第2章第2条第2項では、大統領は上院の助言と承認を得て条約を締結する権限を有するとされるが、同憲法第1章第8条第3項では、連邦議会の立法権限として諸外国との通商を規制する権限も認めている。
ジョージ・W・ブッシュ政権は、2002年8月に成立したTrade
Promotion Authority法(2002年超党派貿易促進権限法)によって貿易促進権限(TPA)を得た。
これによって、議会への事前通告や交渉内容の限定などの条件を満たす限り、議会側は行政府の結んだ外国政府との通商合意について、個々の内容の修正を求めず迅速な審議により一括して諾否のみ決することとされた。
TPAは2005年6月に延長されたが、その後は再延長が認められず、2007年7月1日に失効したまま現在に至っている。
2015/2/20 IAEA調査団の福島第一原発・廃炉作業の調査報告書
福島第一原発の廃炉作業について、(2013年4月、2013年11月に次いで) 3回目の調査を行っていたIAEA(国際原子力機関)の調査団は一連の視察などを終え、2月17日、調査報告書を発表した。
そのなかで、
汚染水を処理したあとのトリチウムを含んだ水について、国の基準以下まで薄めて海に放出することも含め検討する必要があるという考えを示した。
対策実施が進展していることを高く評価するとしながらも、状況は依然大変複雑であるとし、短期的課題として「増大する汚染水を持続可能な状態に持っていくこと」、長期的課題として「損傷燃料および燃料デブリを含む高い放射線量をメルトダウンした原子炉から取り出すこと」を挙げた。
汚染水については、現在の汚染水の貯蔵は一時的な手段であり、持続的な解決策が必要であるとし、前回のアドバイスを繰り返した。
トリチウムを含む汚染水を地上のタンク(能力80万m3)に貯蔵するのは短期的にはベストな方法であると考えるが、もっと持続可能は解決策が必要である。
このため、前回のアドバイスを繰り返す。
持続可能な解決には、管理された海洋放出の再開も含め、全てのオプションを考える必要がある。
東電は、トリチウムや他の残留核物質を含む汚染水の海洋放出が人や環境に与える放射線学的影響の評価を実施し、意思決定のための科学的ベースを確立すべきである。
最終決定には、全ての関係者(東電、原子力規制委員会、政府、福島県、市町村、その他)が参加する必要がある。
協議プロセスでは社会経済的条件を考慮することや、人間の健康や環境に有害な影響を与えないよう広範囲なモニターを行うことが必要と考える。
IAEAとしてはそのような広範囲な海水モニター計画の実施に際して支援を続ける用意がある。
調査団のJuan Carlos Lentijo団長は記者会見で、汚染水対策が直近の課題だとした上で、以下のとおり述べた。
環境への影響がほぼ無視できることが確認されれば、管理した上で(国の基準以下まで薄めて) 海へ放出することは、福島第一原発の状況を大幅に改善できる有力な選択肢だ
。
海洋放出は(人や環境に)ほとんど影響しない。
濃度が国際的な基準値以下のトリチウム水を海に流すことは世界中の多くの原発で行われている。
実際の海洋放出にあたっては、漁業関係者や地元住民による受け入れや丁寧な放射能モニタリングが欠かせない。
ーーー
福島第一の汚染水の状況は
下記の通りで、ALPS等でトリチウム以外を除去した汚染水が約30万トンある。
更に、ALPS等での処理の前の汚染水が約24万トンあり、これが毎日420トン追加される。
2015年2月16日
福島第一原発の汚染水、年度内処理断念
河野代議士は以下のように述べている。
キュリオンかサリーでは、セシウム134は3000Bq/L程度に、セシウム137は6300Bq/L程度まで除去されるが、それでも告示濃度限度を上回っている。
今年の1月19日以降、キュリオンとサリーでもストロンチウムもある程度除去できるようになったが、もともと10の7乗ベクレル/Lだったものが10の5乗ベクレル/Lまで低下するだけで、告示濃度限度の30Bq/Lとは文字通りけた違いだ。
これをALPSを通すとセシウム134と137が0.3Bq/L未満に、ストロンチウムが0.12Bq/Lにまで下がってくる。
ALPSを通らずにRO濃縮水処理設備とモバイル型ストロンチウム除去設備だけを通った汚染水はいわば「中ストロンチウム汚染水」とでも呼ぶような程度にしか汚染レベルは下がらない。
いずれにしろ汚染水はALPSを通さなければならない。
しかし、ALPSを通しても、トリチウムだけは残る。
トリチウムは、三重水素からなる水と同型の分子構造からなる液体の放射性物質で、半減期は約12年。
水の形態で存在するため、分離は困難である。
東電ではトリチウムの除去方法について調査しているが、現在のところ使える技術はないとしている。
経産省告示でのトリチウムの排出規制値は6万ベクレル/リットルであるのに対し、当初は420万ベクレル、現状でも40万ベクレルもある
。
当初、政府と東電は、ALPS処理水を汚染されていない地下水と混ぜて規制値以下にし、海洋投棄することを考えていたと思われる。
ロンドン条約は、船舶等から汚染水を海洋へ処分する行為等を禁じているが、原発施設からの放射性排水の海洋への放出は対象にはならない。
(海洋に関する国際法において海洋への「投棄」とは、船舶等を用いて陸上で生じた廃棄物を海洋において処分することを意味し、陸上からの放出は「投棄」には含まれない。)
東電は2013年2月28日に「福島第一原発のトリチウムについて」という発表をし、安全だとの主張をしている。
・化学上の形態は、主に水として存在し、私たちの飲む水道水にも含まれています
・ろ過や脱塩、蒸留を行なっても普通の水素と分離することが難しい
・半減期は12.3年、食品用ラップでも防げる極めて弱いエネルギー(0.0186MeV)のベータ線しか出さない
・水として存在するので人体にも魚介類にも殆ど留まらず排出される
・セシウム-134、137に比べ、単位Bqあたりの被ばく線量(mSv)は約1,000分の1
これに対する批判は多い。
例えば、下記の報告がある。
カナダには重水を用いたCANDU
炉があり、重水に中性子があたるとトリチウムが発生するため、トリチウムの生成量が多く、また、環境中への放出量も多い。ピッカリング原発やブルース原発といったCANDU
炉が集中立地する(ともに8 基ある)地域の周辺で、子どもたちに異常が起きていることが1988 年に市民グループによって明らかにされた。
http://www.cnic.jp/files/20140121_Kagaku_201305_Kamisawa.pdf
原子力規制委員会の田中俊一委員長は2013年9月2日、日本外国特派員協会で講演し、汚染水問題への対応で、放射能濃度を許容範囲以下に薄めた水を海に放出する必要性を強調した。
原子力規制委員会は、本年1月21日、福島第一原発の「中期的リスクの低減目標マップ」案を了解したが、「貯蔵液体放射性廃棄物」の削減策として、「多核種除去設備処理水の規制基準を満足する形での海洋放出等」としている。
これに対し、JF全漁連は1月23日、以下の会長声明を出した。
原発事故発生以来、我々漁業者が、汚染水の海への放出・漏出を行わないよう、再三再四強く求めてきたにもかかわらず、海洋放出等を前提とした方針が示されたことは極めて遺憾である。
本格操業の再開を心待ちにしている地元漁業者の不安は大きく、また、国内外での風評被害の広がりなど、我が国の漁業の将来に不安を与える影響は計り知れない。
原子力規制委は、今回、厳しく規制すべきところを緩和するような方針を示した理由、海洋放出による健康・環境への影響が無いとする根拠等を漁業者のみならず国民全体に丁寧に説明すべきであり、漁業者、国民の理解を得られない汚染水の海洋放出は絶対に行われるべきではない。
IAEA調査団の団長は会見で、
海洋放出には漁業関係者や地元住民による受け入れが必要とし、「地元の人が不安を感じるのであれば、別の方法も検討するべき」という趣旨の発言をし、科学的に良い方法でも地元の理解が重要であるという考えを示している。
付記
東京電力は2月24日、福島第1原発の排水路から汚染水が外洋流出していたことを発表した。
流出を把握しながら約10カ月間公表しなかったことも判明、福島県漁連は2月25日の組合長会議で東電に「情報隠しであり、信頼関係は崩れた」との見解を伝えた。
県漁連はこの日、汚染地下水を浄化後に海洋放出する「サブドレン(井戸)計画」承認に向け意見集約する予定だったが、問題発覚を受け、納得できる説明があるまで計画を容認しない方針も示した。
2015/2/21 KHネオケム、台湾にイソノニルアルコール製造販売のJV設立
KHネオケムは2月11日、台湾国営石油会社の台湾中油(CPC)および兆豊国際商業銀行(Mega
International Commercial Bank)と合弁契約書を締結した
合弁会社を設立し、可塑剤フタル酸ジイソノニル(DINP)の原料のイソノニルアルコール工場を建設する。
総投資額は、日本円にして500億円規模となり、日台間の石油化学分野では過去最大級の投資事業となる。
社名 |
曄揚股份有限公司(Taiwan-Japan Oxo Chemical Industries Inc.) |
出資 |
KHネオケム |
47% |
生産に関する特許技術を提供 |
CPC |
47% |
原料の安定供給 |
兆豊国際商業銀行 |
6% |
財務面で協力 |
立地 |
高雄臨海工業区 |
能力 |
イソノニルアルコール |
年産 180千トン |
ブテン3量体 |
21千トン |
投資額 |
137億台湾元(約520億円) |
完成予定 |
2019年 |
イソノニルアルコールは、耐熱特性等の優れた性能を有し主に自動車・電線・建材用途において世界的に需要が拡大している可塑剤ジイソノニルフタレート(DINP)等の原料となる高級アルコールであり、KHネオケムの主要製品のひとつ。
KHネオケムは旧称 協和発酵ケミカルで、2011年3月に協和発酵キリンが日本産業パートナーズの買付会社ケイジェイホールディングスに譲渡、2012年4月に改称した。
2010/10/27
協和発酵キリン、子会社の協和発酵ケミカル売却で合意
KHネオケムは千葉工場に年産 100千トンの工場を持つ。
独自技術及びノウハウを豊富に有しており、需要の伸びが著しい中国、インドなどアジア諸国の需要拡大に対応し、価格競争力のある原料を調達するために有利な立地での生産拠点新設を目指して検討を重ねてきた。
一方、CPCは主力のガソリン・燃料事業から、より付加価値の高い石油化学等の川下事業への展開強化を模索しており、その一環として合弁会社への原料供給を含めた本事業への展開を決断した。
ーーー
イソノニルアルコールの生産技術を持つ企業は世界で5社のみといわれ、KHネオケムはそのうちの1社。
・ KHネオケム
・ BASF
・ Evonik
・ ExxonMobil
・ 南亜塑膠工業 (台湾プラスチックグループ)
上記のほかに三菱化学が水島で独自のロジウム触媒法の35千トンプラントを持っていたが、2001年3月末に停止した。
三菱化学は、オキソアルコール事業の多様化の一環として1987年よりINAの生産を行ってきたが、操業開始以来厳しい事業運営を続けてきており、今後、INA需要の伸びは期待できるものの、さらなる収益の改善が見込めないことから停止を決定した。
BASFは2012年7月、Sinopec
との間で世界最大級のイソノニルアルコールプラント建設に関する覚書を締結した。
建設予定地は広東省の茂名高新技術産業開発区で、50/50JVのMaoming
Petrochemical BASF を設立し、工場を建設中。
Evonikは2013年1月、マレーシアのPetronasのRAPID計画の一環として、Petronasとの間で過酸化水素、1-ブテン、オキソ製品のJVを設立する覚書を締結した。
報道では過酸化水素は25万トン、1-ブテン 11万トン、イソノニルアルコール 22万トンとなっている。
2014/8/25
東洋エンジニアリング、マレーシアで大規模石化プラント受注
2015/2/23 理研と住友化学、ヒトES細胞から毛様体縁を含む立体網膜を作成
理研と住友化学は2月19日、共同研究グループが、ヒトES細胞(胚性幹細胞)から、毛様体縁幹細胞ニッチ(幹細胞を長期間維持できる特別な微小環境)を含む立体網膜(複合網膜組織)を作製することに成功したと発表した。
毛様体縁は、胎児の網膜の端に存在する領域で、ヒトの毛様体縁の網膜発生における役割はほとんど明らかにされておらず、これを解明するには、ヒト毛様体縁を含む立体的な網膜を安定的に作製する新たな技術が有用である。
これまで理研では、亡くなった笹井芳樹博士を中心に 「SFEBq法(無血清凝集浮遊培養法)」という分化誘導法を開発し、ES細胞やiPS細胞から、
大脳、視床下部、下垂体、小脳や網膜などの複雑な神経組織を作製しており、網膜についても、マウスES細胞やヒトES細胞から立体網膜を作製している。
しかし、この方法では、分化を促進するために、培養液中に動物由来の基底膜抽出物を添加していた。
この基底膜抽出物は、マウス肉腫由来細胞の抽出物であり、さまざまな成分を含んでいるため品質保証が難しく、再生医療用途には
向いていない。
今回、理研と住友化学の共同研究グループは、この技術をさらに改良して、新しい網膜分化誘導法の開発に
成功した。
概略は下記の通り。
1)選択的な網膜分化誘導法(BMP法)の開発
SFEBq法では分化を促進するために、培養液中に動物由来の基底膜抽出物を添加していた。
今回は、基底膜抽出物を使わず、分化培養の初期にBMP (Bone Morphogenetic
Protein:骨形成タンパク質)と呼ばれるシグナル作用物質を添加することで、ヒトES細胞から効率よく網膜組織へと分化誘導できることを発見した。
BMP法は、基底膜抽出物を使った従来法(効率は最高でも70%で、不安定)と比べ、分化誘導効率が80%程度と高く、かつ安定している。
2)毛様体縁を持つ網膜組織の作製法(揺り戻し法)の開発
毛様体縁は、胎児期の網膜(神経網膜)と網膜色素上皮(RPE)の境界領域に形成される。
これまでの研究により神経網膜の分化・維持にはFGFシグナルが、また RPEの分化・維持にはWntシグナルが重要な役割をしていることが分かっている。
共同研究グループは、ヒトES細胞からBMP法で作製した網膜組織を、まずFGFシグナルの阻害薬とWntシグナルの作動薬を含む培養液で培養してRPEへと分化させ、その後、再び神経網膜を誘導する条件で培養することにより神経網膜へと戻すことで
(「揺り戻し」)、神経網膜とRPEが共存した複合網膜組織の形成に成功した。
これまでの方法では、神経網膜のみ、または、RPEのみを作ることはできていたが、神経網膜とRPEが共存する複合網膜組織を、効率よく安定的に作るのは困難だった。
今回、複合網膜組織を安定して40%程度の効率で作製できるようになった。
3) 培養
この毛様体縁を含む複合網膜組織は、60日目まで培養を続けると、幼若な視細胞前駆細胞を豊富に含むことが確認された。
この複合網膜組織を解析したところ、神経網膜とRPEの境界領域に胎児の毛様体縁によく似た特徴を持つ組織が形成された。
このことは、ヒトES細胞から神経網膜とRPEを同時に誘導することで、自己組織化により、両者の境界領域に毛様体縁が形成されることを示唆する。
さらに、150日目まで培養を続けると、分化の進んだ視細胞が産生された。
毛様体縁を含む立体網膜を詳しく解析したところ、毛様体縁に幹細胞が豊富に含まれることが分かった。
また、毛様体縁に含まれる幹細胞は、光を受ける視細胞や、脳に視覚情報を伝える神経節細胞への分化能を持つことも確認した。
さらに、毛様体縁の近くで立体網膜を成長させる細胞が供給されることを発見した。
これらの結果から、ヒト毛様体縁には幹細胞が存在し、この幹細胞が増殖する機能を発揮することで、網膜を試験管内で成長させることが分かった。
ヒト立体網膜を用いた再生医療を広く普及させるための大きな課題の1つとして安定生産が難しいという課題があったが、本研究により、安定生産に適した分化誘導技術を確立できた。
この技術の長所は、
(1)分化誘導効率が安定的に高い点、
(2)複合網膜組織は品質のバラツキが小さい点(網膜の形状、神経網膜とRPEの比率)、
(3)複合網膜組織の毛様体縁付近は、胎児網膜と良く似た規則的な立体構造(連続上皮構造)をとる点、
が挙げられる。
現在、理研多細胞システム形成研究センター網膜再生医療研究開発プロジェクトの高橋政代プロジェクトリーダーらは、住友化学子会社の大日本住友製薬との共同で、本研究成果をヒトiPS細胞に適用して、網膜色素変性を対象とした再生医療の実現に向けた研究開発を進めている。
ーーー
大日本住友製薬と理研認定ベンチャーのヘリオス(旧称
日本網膜研究所)は2013年12月に再生・細胞医薬事業に関する提携を発表、2014年2月にJV サイレジェンを設立した。
ヘリオスはiPS細胞から生体内のRPE細胞と同じ形態と機能を持つRPE細胞を分化誘導することに成功しているが、これを拡大培養し、RPEの懸濁液及びシートを作成し、それぞれドライ型、ウェット型の治療に使用しようというもの。
理化学研究所の高橋政代プロジェクトリーダーは、iPS細胞を使い、滲出型加齢黄斑変性の患者を対象に、目の網膜を再生する世界初の臨床研究を実施しているが、ヘリオスがシートの作成を担当している。
2013/12/4
大日本住友製薬と理研認定ベンチャーのヘリオス、iPS細胞由来医薬品を共同開発
2015/2/24 創薬ベンチャーのそーせい、英同業を450億円で買収
創薬ベンチャーのは2月21日、同業の英Heptares
Therapeutics を買収したと発表した。
買収額は最大4億ドルで、20日付で全株式を取得し、完全子会社化した。
Heptares
の株主に対し 1億8000万ドルを現金で支払ったほか、Heptares
が現在開発中の医薬品で発生する収入から最大2億2000万ドルを支払う。
そーせいでは、さらなる企業価値の向上を目指すべくパイプラインの強化や新たな事業拡大を図るため買収を実施したとしており、本買収により、「日本発の世界トップバイオ企業になる」というビジョンをより迅速に達成できると期待している。
ーーー
そーせいは1990年に、元ジェネンテックの日本法人の社長などを務めた田村真一氏が設立したベンチャーで、開発したCOPD
(慢性閉塞性肺疾患:Chronic
Obstructive Pulmonary Disease)治療薬である「Seebri®」(Vecturaとの共同開発品)とその配合剤「Ultibro®」の全世界独占販売権をNovartis
に提供しており、これのロイヤリティが現在の主たる収入源である。
両製品は世界各国で承認されており、ドイツ、日本、その他主要な市場で販売されている。
Novartisは2014年12月に米国で承認申請を行った。
情報収集などを狙って欧州に拠点を持っており、2005年に英国エセックスに本拠を置くバイオ医薬品開発企業であるArakis
Limited を210億円で買収して、両社のバイオ医薬品開発事業を統合し、開発パイプラインの拡充および国際的な研究開発体制の強化を図った。
Arakis の買収は下記により行った。
1) 第三者割当増資
Arakisの全株主に対して第三者割当増資を行い、その対価として全株主は同社の発行済株式数の88.91%を現物出資した。
(2) 株式買取
Arakisの全株主より残り株式(11.09%)を23億円で買い取った。
「そーせい」の社名は「そうせい侯」と呼ばれた長州藩藩主・毛利敬親から取った。
毛利敬親は家督相続後、財政難だった藩をたてなおし、軍政改革を実施して軍事の洋式化を推進したり、文武を奨励して蘭学による教育を充実させるなどの革新を行ったが、一方では家臣からの進言には何事にも「そうせい」と言ったということから、陰では「そうせい侯」とも呼ばれた。しかし敬親公はこうして有為な人材を積極的に登用し、のびのびと活躍させていたため、波乱の幕末においても藩は壊れず、結果長州藩が討幕運動の原動力となりえたと言われている。
同社は平成維新の一つの原動力たらんとして発足したが、このエピソードにヒントを得て、社名とした。
ーーーー
Heptares Therapeutics は、英国のMRC
Laboratory of Molecular Biology およびNational Institute of Medical Research
の研究成果を事業化するべく、2007 年に設立された。
医薬品ターゲットとして期待の大きい G
タンパク質共役受容体(GPCR)に作用する薬剤を創出する世界で最も進んだ独自の技術(StaR®)を有する。
同社は既に複数の著名な製薬企業との創薬共同研究契約を締結しており、開発の進捗に応じたマイルストン・ロイヤリティ収入を受領できることになっている。
本買収の狙いは下記の通り。
@ COPD 治療薬の特許が切れる2026
年以降の収益を生み出せるドラッグディスカバリー技術
Heptares
は自社開発のみならず、独自のドラッグディスカバリー技術を基に、Novartis、AstraZeneca、武田薬品等の世界トップレベルの製薬企業と提携契約を締結しており、今後、これによるロイヤリティ収入がCOPD
治療薬の特許切れを迎える2026 年以降の収益の柱となる。
武田薬品は2011年4月、中枢神経疾患の病態に重要な役割を果たすGタンパク質共役受容体(「GPCR」)の一つを対象とした2年間の共同研究契約を締結した。
A
高収益パイプラインの拡充
Heptaresの保有する独自技術は新規医薬品を効率的に多数創出することが可能であり、それらの自社研究開発の推進、または他社への導出を図ることで短期的な収益確保から、長期的な収益基盤の構築まで、網羅的なポートフォリオ戦略が実現可能となる。
Heptaresのパイプライン
開発プログラム
|
適応 |
開発段階 |
ムスカリン受容体M1作動薬 |
アルツハイマー病、認知障害 |
第T相臨床試験 |
M4 or
M1/M4デュアル作動薬 |
統合失調症、精神障害 |
前臨床試験 |
アデノシン受容体2A
拮抗薬 |
注意欠如・多動性障害 |
前臨床試験終了、IND(治験計画届出書)申請中 |
CGRP 受容体拮抗薬
|
偏頭痛治療および予防 |
前臨床試験 |
GPR39 作動薬 |
糖尿病、膵島β
細胞保護 |
前臨床試験 |
GLP-1 作動薬
|
糖尿病 |
前臨床試験 |
B
開発体制の強化
C ドラッグディスカバリー基盤技術の獲得による、シーズ探索手法の強化
2015/2/25 ユーグレナ、バイオ燃料精製実証設備の建設で Chevron Lummus
Global と基本合意
ユーグレナは2月20日、バイオ燃料精製実証設備の建設に向けて、Chevron
Lummus Global との間でBiofuels ISOCONVERSION Process 技術を採用することに関する基本合意契約を締結した。
同社はミドリムシなどのバイオマスから抽出した油脂を国内でバイオジェット燃料に精製することを目指しており、この技術導入はバイオジェット燃料事業の実現性を高めるものとなる。
Chevron Lummus Global は、Chevron
U.S.A.と米国の建設・エンジニアリング大手の CB&I Technology Ventures の合弁会社。
Biofuels ISOCONVERSION Process
技術は、同社とApplied Research Associatesが共同開発した独自のバイオ燃料製造技術
で、植物や藻類からとった油をジェット燃料やディーゼル燃料に変換、他の油と混ぜることなしに、石油系燃料向けに設計されたタービンやディーゼルエンジンを動かすことが出来る。
バイオ燃料はそのままではジェット機やディーゼルには使用できない。
生産された油は
“Renewable,
Aromatic, Drop-in
(Readi) fuels”と呼ばれ、ジェット用を ReadiJet®
、ディーゼル用をReadiDiesel®と名付けている。
2012年にカナダのNational
Research Centre が ジェット機 Dassault Falcon 20 bizjet で100%バイオ燃料ReadiJet での飛行に成功した。
(ReadiJet は Chevron Lummus Global とApplied Research Associates が米空軍研究所の資金提供を受けて製造した。
)
製法は下記の通り。
ーーー
潟ーグレナと同社の微細藻類ユーグレナ(euglena:ミドリムシ)については、下記を参照。
2013/10/17
ミドリムシが地球を救う!
ヘルスケア分野で収益をあげ、エネルギー・環境事業の研究開発を他社と共同で実施している。
|
|
燃料開発
油脂を多く含むユーグレナを活用したジェット燃料開発
飼料開発
高蛋白質ユーグレナを活用した水産、家畜飼料開発
CO2固定化技術開発
高濃度CO2耐性ユーグレナを活用したCO2固定化技術開発
水質浄化技術開発
水中有機物を活用するユーグレナによる水質浄化技術開発
ーーー
化粧品
ユーグレナの加水分解エキスを活用した化粧品事業
|
バイオジェット燃料の開発体制は下記の通りとしていた。
燃料供給のためには、現在の食品生産のレベルとはけた違いの量が必要になるため、量産用の大きなプールで安定生産ができるかどうかがキイとなる。培養に必要な機器は日立プラントテクノロジー、培養に必要な管理技術はユーグレナが担当する。
抽出した油脂は脂肪酸のため、水素化により液体燃料に転換することが必要で、これまではJX日鉱日石が担当するとしていた。
今回、実績のあるChevron Lummus Global
の技術を導入し、早期の事業化を図るものと思われる。
2015/2/26 旭化成、米電池素材会社Polypore
International を買収
旭化成は2月23日、米国のバッテリーセパレータメーカーのPolypore International, Inc.を約22億ドルで買収すると発表した。
付記 2015/5/12のPolyporeの株主総会で承認された。
付記 2015/8/26
買収完了
付記
2023/3/10
旭化成、リチウムイオン電池のセパレーター生産の米子会社Polyporeで減損損失 1,850 億円を計上
Polypore
はほかに医療・工業用膜関連の高分子ポリマー膜事業を行っているが、これについては3M Companyが約10億ドルで買収する。
Polyporeは医療・工業用膜事業で使用される分離膜を主に「Membrana™」ブランドの下で製造・販売している。
3Mは医療・工業用膜事業分野における拡大を目指している。
旭化成は2011年度よりスタートさせた中期経営計画で、「環境・エネルギー」「住・くらし」「ヘルスケア」の3つの分野において、既存事業のさらなる拡大と新しい社会価値の創出に取り組んでいる。
「環境・エネルギー分野」の一翼を担うエレクトロニクス事業領域は、電子部品系事業と電子材料系事業で高度な技術による製品を提供しているが、とりわけ電子材料系事業では、スマートフォンやタブレット端末、ノートパソコン用のリチウムイオン二次電池用セパレータ「ハイポア™」を戦略的製品と位置付けている。
今後は成長が期待されるハイブリッド車・プラグインハイブリッド車・電気自動車といった環境対応車用途や、電力エネルギーの効率的活用で需要の拡大が見込まれる電力貯蔵、蓄電システム用途での事業拡大を目指しており、そのため、製品力をさらに高めるべく、顧客ニーズに適合した高機能膜の開発強化や海外加工体制の構築等に積極的に取り組んでいる。
Polyporeは車載用途を中心に強みを持ち、グローバルな供給体制と高度な製品開発力を有する企業である。
Polypore買収により、下記の効果が期待できる。
1)
車載用途を中心に強みをもつPolypore社との共同研究開発、相互技術提供等を通じて、多様な分野で用いられるより革新的な製品開発を実現する。
旭化成 |
リチウムイオン二次電池用セパレータ「ハイポア™」 |
スマートフォンやタブレット端末、ノートパソコン用 |
Polypore |
リチウムイオン二次電池用セパレータ「Celgard™」 |
電気自動車用 |
鉛蓄電池用のセパレータ「Daramic™」 |
自動車や産業向け用途等で広く普及 |
2)
車載用途を含め、今後成長が期待されるリチウムイオン二次電池用セパレータ事業で、より幅広い製品・技術の提供が可能になる。
3)
中長期にわたって安定的な収益貢献が期待できる鉛蓄電池用セパレータ市場への参入を果たす。
4)
Polyporeのグローバルな製品供給体制及び販売網等の活用によって、「ハイポア」のグローバル展開の一層の加速を図る。
買収により、セパレーター世界首位の旭化成は現状で35%のシェアを約50%に引き上げ、2位の東レを引き離す。(日経 2015/2/24)
2015/2/27 再生可能エネルギーの2015年度買取価格案
経済産業省の有識者委員会(委員長・植田和弘京大教授)は2月24日、再生可能エネルギーの2015年度の買取価格案をまとめた。
国民からの意見公募を経た上で、3月中に正式決定する。ポイントは下記の通り。
1) 事業用太陽光(発電能力10kw以上)
当初の40円、現在の32円を、4-6月は29円、7月からは27円に引き下げる。(当初からは32.5%の引き下げとなる)
固定価格買取制度(FIT)では、再生エネの買取価格算定にあたって、一般的な費用に「適正な利潤」を上乗せしている。
当初3年間については、再生エネを集中的に拡大するため、「利潤に特に配慮する」と定め、利潤がさらに上積みされている。
2015年6月で3年間の「利潤配慮期間」が終了するため、追加利潤分を除外する。
20円台まで下がると、新規開発する事業者は激減するとの見方が強い。
2) 住宅用太陽光(10kw 未満)
当初の42円、現在の37円を、東電・中部電・関電管内は33円、その他は 35円に引き下げる。
太陽光は天候によって発電量が変わるため、受け入れる電力会社は火力の発電量を変えたり、送電線で他地域と電気をやりとりするなどの対策が必要となる。
2014年に九州電力など5社で設備の調整能力が不足しているとして、再生エネの新たな買取を一時保留する混乱があった。
3社以外の地域は4月以降、新規買い取りの申請者に、電力会社の指示に応じて発電量を抑える機器(遠隔出力制御システム)の設置が義務づけられる。
このため、その分のコストを上乗せする。
3) バイオマス
政府は、2020年度に木質バイオマス発電等のエネルギー源としての利用量を600万m3とする目標を掲げている。
木質バイオマスの買取価格は5,000kw 規模を想定して計算しており、実際に出力5,000kw級の事業計画が集中している。
この場合、木材を集める地域が半径50kmに及び、全国的な普及が難しいため、2,000kw未満を優遇して40円とし、小規模な発電設備の導入を促すことにした。
4) その他
2014年11月末までに実際に発電を始めた再生エネ設備(1,493万kw)のうち、企業と住宅向けを合わせた太陽光は約
98%を占める。
風力や地熱、中小水力、バイオマスの導入はほとんど進んでいない。
太陽光(非住宅) 1,176万kw、同(住宅用) 280万kw、
風力 22万kw、中小水力 3万kw、バイオマス 12万kw、地熱 ゼロ
このため、7月以降も優遇期間を続け、従来の価格を据え置き、普及を後押しする。
買取価格の推移は下記の通り(円/kwh)
家庭用太陽光以外は消費税が加算される。
申請受理された期間の買取価格が調達期間を通じて適用される。
再生エネルギー |
区分 |
調達 期間 |
利潤配慮期間(3年) |
|
備考 |
2012/7-
2013/3 |
2013/4-
2014/3 |
2014/4-
2015/3 |
2015/4-
2015/6 |
2015/7-
2016/3 |
太陽光 |
10kw 以上 |
20年 |
40 |
36 |
32 |
29 |
27 |
|
10kw 未満
|
税無し |
10年 |
42 |
38 |
37 |
33 |
東電、中部、関電 |
35 |
上記以外 |
同 W発電 |
10年 |
34 |
31 |
30 |
? |
エネファーム等 |
風力 |
20kw 以上 |
20年 |
22 |
|
未満 |
20年 |
55 |
|
洋上 |
20年 |
ー |
ー |
36 |
|
地熱 |
15,000kw 以上 |
15年 |
26 |
|
未満 |
15年 |
40 |
|
水力 |
1,000〜30,000kw |
20年 |
24 |
|
200〜1,000kw |
20年 |
29 |
|
200kw 未満 |
20年 |
34 |
|
既設誘水路活用
中小水力 |
1,000〜30,000kw |
20年 |
ー |
ー |
14 |
|
200〜1,000kw |
20年 |
ー |
ー |
21 |
|
200kw 未満 |
20年 |
ー |
ー |
25 |
|
バイオマス |
メタン発酵 |
20年 |
39 |
|
間伐材等 |
2,000kw 以上 |
20年 |
32 |
32 |
|
未満 |
40 |
一般木質・農作残渣 |
20年 |
24 |
|
リサイクル木材 |
20年 |
13 |
|
一般廃棄物 |
20年 |
17 |
|
バイオマスの例
メタン発酵:下水汚泥・家畜糞尿・食品残さ由来のメタンガス
間伐材等由来の木質:間伐材、主伐材
一般木質・農作物残渣:製材端材、輸入材、パーム椰子殻、もみ殻、稲わら
リサイクル木材:建設資材廃棄物、その他木材
一般廃棄その他:剪定枝・木くず、紙、食品残さ、廃食用油、汚泥、家畜糞尿、黒液
2015/2/28 Valeant
Pharmaceuticals、米同業Salix
Pharmaceuticalsを買収
カナダの製薬大手Valeant
Pharmaceuticals International
は2月22日、米同業Salix
Pharmaceuticalsを借入金込みで145億ドルで買収することで合意したと発表した。
1株当たり158ドル、総額101億ドルの現金で全株を買い取る。
Salix
は胃腸病薬の市場のリーダーで、有名な処方薬4種を含め合計22種類の薬を保有する。
Valeantの推計によると、米国の胃疾患治療薬市場(GI市場)は50億ドル規模で、年間5%拡大している
が、Salixの売り上げの伸びはこの市場成長ペースを上回っている。
スペシャルティ製品で多様化を図るValenatにとってSalixの獲得は理想的であるとしている。
Valeantでは買収の効果として年間ベースで5億ドル以上のコスト削減を期待している。このうち約65%は一般管理費や研究費の合理化によるもので、半年以内に達成できると見ている。
しかし、専門性を生かすため、販売要員や販売ルートはそのままとする。
この買収によってValeantの債務は310億ドルへと2倍前後に膨らむ。
ーーー
Valeantは2013年5月にBausch +
Lomb(ボシュロム)を87億ドルの現金で買収した。
うち約42億ドルはBausch + Lombの債務返済に充てられる。
Bausch +
Lombは眼科分野における世界的主要企業の一つで、医薬品(処方薬、ジェネリック薬、およびOTC薬を含む)、ビジョンケア(コンタクトレンズとレンズケア用品)、およびサージカル(眼内レンズと眼科手術機器)の3つの分野で事業を展開している。
Valeantは買収により、皮膚科領域に加え眼科領域に関しても世界のリーダーとしての位置づけを確立するとしており、少なくとも年間8億ドルのコスト削減を見込んだ。
2014年の売上高は83億ドルで、前年比43%の伸びとなった。
|
2014 |
2013 |
増減 |
皮膚病 |
1,134.9 |
905.8 |
229.1 |
消費者向け一般薬 |
587.4 |
313.4 |
274.0 |
Bausch + Lomb |
眼科薬 |
465.4 |
223.9 |
241.5 |
コンタクトレンズ |
170.4 |
62.2 |
108.2 |
サージカル |
215.1 |
90.4 |
124.7 |
神経ほか(ジェネリックス) |
1,528.7 |
1,122.3 |
406.4 |
歯科 |
123.4 |
109.6 |
13.8 |
美容 |
241.1 |
366.9 |
-125.8 |
米国合計 |
4,466.4 |
3,194.5 |
1,271.9 |
他先進国 |
1,700.7 |
1,098.7 |
602.0 |
途上国 |
2,096.4 |
1,476.4 |
620.0 |
売上高合計 |
8,263.5 |
5,769.6 |
2,493.9 |
営業損益 |
2,039.7 |
-409.5 |
2,449.2 |
今回買収するSalixの2013年の売上高は 933.8 百万ドル、営業損益は 271.7 百万ドル。
ーーー
Valeant は2014年に米国のしわ取り注射剤「ボトックス」のメーカー
Allergan の買収を狙い、Allerganの大株主である物言う株主William
Ackmanと組んで攻勢をかけた。
しかし、Allerganはこれを拒否し続け、Valeantの買収を防ぐため、Salix Pharmaceuticals の買収を図った。
他方、Actavis がAllergan買収提案をし、拒否されたが、再度買収を図った。
Allerganは2014年11月17日、Actavisによる660億ドルの買収案に合意した。
この額は、Valeantが最後に提示した額を60億ドル超上回っており、Valeantは、これだけ高額な買収額をAllerganに支払うことは正当化できないとし、買収を断念した。
2014/10/22 米製薬会社
Allergan を巡る買収合戦