ブログ 化学業界の話題 knakのデータベースから
目次
これは下記のブログを月ごとにまとめたものです。
最新分は http://blog.knak.jp
2015/9/1
油田開発・サービス世界最大手のSchlumberger、Cameron
International を買収
油田開発・サービス世界最大手のSchlumberger Ltd.は8月26日、掘削機材メーカーのCameron
International を約127億4000万ドルで買収すると発表した。
合併により、油田調査から井戸掘削までの幅広い事業にCameronの油圧制御機器や爆発防止装置といった商品を加えられるようになる。
Cameron株主は1株につき現金14.44ドルとSchlumbergerの0.716株を受け取る。Cameron株主は統合後の会社の約10%を握る計算。
1株当たりでは66.36ドルで、Cameron株の25日終値(原油価格下落で1年で42%下落している)を56.3%上回る水準となる。
取引は2016年1-3月期中の完了予定。Schlumbergerによれば、シナジー効果(税引き前)は完了後1年目で約3億ドル、2年目で6億ドルに達する見込み。
CameronとSchlumbergerは2013年6月、海底石油・ガス市場向けに製品、システム、サービスの製造と開発を行う合弁事業のOneSubseaを60/40の出資で設立している。
今回の買収についても数ヶ月間、協議していたとされる。Schlumbergerはその間の株価下落で安価に買収できたこととなる。
原油価格の低下を受け、エネルギー各社は投資を削減している。
日本経済新聞はメジャー6社は2015年の投資を前年実績の16%に相当する約300億ドル減らすと報じている。エネルギー業界全体で投資見直し規模は2000億ドル規模に上るとの予測もある。
今回の買収はこれに対応するものであり、2014年11月に発表された業界2位のHalliburton Co.
と3位のBaker Hughes Inc.の346億ドルの合併に次ぐものである。
ーーー
米資源装置・サービス大手のHalliburton Co
は2014年11月17日、同業のBaker Hughes Inc を現金と株式で買収すると発表した。買収総額は346億ドルに上る。
原油安を受けて世界的に石油開発のピッチが鈍化する可能性が出てきており、互いの重複部門を整理するなどしてコスト競争力を高める。年間20億ドルのコストダウンを目指す。
売り上げ規模は単純合計でSchlumbergerを上回り業界トップの専業企業となる見通しだが、独禁法上で問題となる可能性がある。
Halliburton はこれを避けるため、75億ドル相当の事業の売却を行うとしている。
本年4月終わりに、HalliburtonはSperry Drilling
事業を売りに出した。30億ドルでの売却を狙っている。
更に掘削ビット(鑿)事業も売りに出した。15〜20億ドルを見込んでいる。
独禁法をクリアできない場合、Halliburton はBaker Hughes
に35億ドルを支払う。
しかし、米国でもEUでも公取当局の審査は難航している。
両社は米国のシェールオイルからブラジル沖の深海まで、多くの同じ地域で掘削を行っている。両社の事業所は北米、欧州、中国、中東からラテンアメリカまで重複している。
対策としてHalliburtonが行う事業売却が、合併で失われる競争を補うことになるのかどうかも疑問視される。
各当局は油田開発・サービスの2位と3位の合併による独禁法上の影響について懸念し、次々と資料を要求しており、見通しは立っていない。
ーーー
HalliburtonとCameronはともに、2010年4月20日に発生した海洋掘削プラットフォームDeepwater Horizon rig
の爆発事故に関与している。
Deepwater Horizon rig 関連
・設計:R&B Falcon
・建設:韓国の現代重工業
・所有:Transocean(R&B Falconを買収)
・リース:BP Exploration and Production
・コントラクター
Transocean:掘削作業
Halliburton:セメント作業(井戸内、または井戸と鉄管との間のセメント作業)
M-I SWACO(SchlumbergerとSmith InternationalのJV):Drilling Fluid
(mud)サービス
・Blow Out Preventor(BOP)の製造:Cameron
International
2010/6/17 メキシコ湾石油流出事故の損害負担
|
Halliburton:
Halliburtonは2014年9月、同社に対する一般及び漁業者からの損害賠償の訴訟で、11億ドルの支払で合意した。
BPはHalliburtonに対し、不適切かつ不注意に作業を行い、これが爆発の原因になったとして、民事訴訟を行った。
これに対し、Halliburtonは、爆発は他の関係者により起こったもので、同社の行動によるものではないとして、BP、Transoceanと他のコントラクターを訴えた。
2015年5月21日、BPとHalliburtonは和解し、それぞれに対する訴訟を取り下げた。
米政府による水質浄化法(Clean
Water Act)に基く民事訴訟の裁判で、New
Orleansの District Court
のCarl Barbier 裁判官は2014年9月4日、BPに「重大な過失」(gross negligence )と「故意の不法行為」(willful
misconduct)があり、これが大量流出の原因となったとし、BPは水質浄化法によるバレル当たり4,300ドルの罰金に値するとの判決を言い渡した。
リグのオーナーで掘削作業を行ったTransoceanとセメント作業を行ったHalliburtonに対しても「過失」(「重大な過失」ではない)があったとみなした。
責任割合について、判事は、BPが67%、Transoceanが30%、Halliburton
が3%と認定した。
最終的にClean Water Actによる罰金は、BPは55億ドル、Transoceanは10億ドルとなったが、Halliburtonについては、政府から訴えられていないと報道
されている。
Cameron:
パイプの元には自動的に原油流出を止める噴出防止バルブ(blow-out
preventer)が備えられていたが、装置が稼動しなかった。
2011年12月16日、BPとCameronは、CameronがBPに250百万ドルを支払うことで和解した。
刑事面では機器の欠陥を理由にいくつかの罪を問われたが、2013年4月にU.S.
District JudgeはCameron側に重大な過失(gross
negligence )無しとして全てのクレイムで免責とした。
同社は事故に伴い油井に関する新しい規則が出たため、石油会社が機器を更新したため、恩典を受けている。
2015/9/2 Bayer のMaterial
Science 部門、Covestro として分離独立
Bayer のMaterial Science 部門は9月1日、Covestro
として分離独立した。
法的及び経済的に独立するが、当面はBayer の100%子会社として位置づけられる。
Bayerは遅くとも2016年半ばまでにCovestroを上場させ、自らはライフサイエンス事業に注力する。
付記 2015/10/6 上場 Bayer 69.14% 保有
|
Bayer |
Pentsion Trust |
2015/10 |
69.14% |
ゼロ |
2016/4 |
64.2% |
4.9% |
2017/2 |
53.3% |
この間 4.9%→8.9% |
2017/6 |
44.8% |
2017/9 |
24.6% |
2018/1 |
14.2% |
8.9% |
2018/5 |
6.8% |
ゼロ |
Bayerの監査役会は2014年9月18日、今後は完全にLife
Science 事業(HealthCare
と CropScience )に注力することとし、
MaterialScience事業を別会社として上場させる
、という経営委員会の提案を全会一致で承認した。
Bayerは2015年6月1日、別会社として上場させる予定の
MaterialScience事業の社名を「Covestro」とすると発表した。
社名の「Covestro」は造語で、
Collaboration(協力し)、
Invest(最新鋭の設備に十分な投資をし)、
Strong(高いイノベーション能力を持ち、市場において存在感があり、優秀な社員で構成される力強い)
企業であることを示す。 |
|
2014年のMaterial Science の売上高は110億ユーロを超え、欧州で第4番目の企業となる。
2015/6/3
Bayerが分離するMaterialScience事業会社の社名「Covestro」に決定
事業は次の3部門に分かれる。
|
2014年の売上高 |
Polyurethanes |
60億ユーロ |
Polycarbonate |
30億ユーロ |
Coatings, adhesives,
specialties |
20億ユーロ |
主な製造拠点
ドイツ:Brunsbüttel、Dormagen、Krefeld-Uerdingen、Leverkusen
Belgium:Antwerp
China:上海
Thailand:Map Ta Phut
USA:Baytown
ポリカーボネートの製造拠点
立地 |
PC能力 |
Uerdingen,
Germany |
330千トン |
Antwerp,
Belgium |
240千トン |
Map Ta Phut,
Thailand |
270千トン |
Shanghai, China |
200千トン |
Baytown, USA
|
350千トン |
合計 |
1,390千トン |
2015/9/3 中国でまた、化学工場が爆発
8月31日夜、中国山東省東営市利津縣の濱海經濟技術開發新區で化学工場の爆発があり、5名が死亡した。(当初1名死亡と報じられた)
付記
東営市は9月5日、死者13人、負傷者25人と発表した。
9月3日の抗日戦争勝利70年パレードが終わるまで情報を隠したのではとの批判が出ている。
爆発が起こったのは、山東濱源集團の100%子会社 山東濱源化學有限公司(Shandong
Binyuan Chemical)。
同社は2014年3月の設立で、接着剤や新素材を生産している。能力は年産2万トンとされる。
同社のホームページでは、 「日本の三井、住友などから先進的な生産技術を導入し、主に新素材の生産・販売を行っている。最先端の水素化、加水分解技術を使用。生産過程は全てコンピュータによって制御、監視・警報システムも導入して安全性に配慮している」としている
。
三井系、住友系の会社で同社に技術供与している会社は見当たらない。
当局によると、この施設では以前、安全検査を受け、試運転を行わないよう指導を受けていたが、同社は無断で調製作業を行っていた。
警察はすでに同社関係者ら6人の身柄を拘束した。
今のところ、爆発の原因は不明。
中国では8月12日に天津東疆保税港区の瑞海公司の危険物倉庫で爆発が起こり、8月30日現在で、死者
150名、行方不明
23名となった。
2015/8/27
天津爆発事故のその後(3)
8月22日には、山東省淄博市桓台県果里鎮東付村の化学会社・山東潤興化工科技の工場で大規模な爆発があり、1名が死亡した。
アジポニトリルが爆発の原因とみられる。
2015/8/23 中国山東省で工場爆発
ーーー
これとは別に甘粛省隴南市にある花火工場で9月1日午後、2度の爆発があり、1人が死亡、6人が負傷した。
式典などに使う礼砲の製造所で、本年5月の査察で安全上の問題ありとされ、操業を停止していた。
2015/9/4
天津爆発でB型肝炎治療薬がピンチ
GraxoSmithKline (GSK)の日本法人は8月31日、医療関係者に下記の「重要なお知らせ」を出した。
2015年8月12日に起きた中国天津浜海新区倉庫爆発事故により、GSK天津工場が被害を受けた。
本工場では日本向けのB型慢性肝疾患治療薬「テノゼット®錠300mg」
(一般名:テノホビル ジソプロキシルフマル酸塩)を製造しているが、爆発事故による被災により本剤の製造・出荷が停止しており、8月31日現在、本工場の操業再開の目途が立っていない状況
。
2015年8月末時点での国内における本剤の在庫数は、月間出荷量の約2カ月分。
この状況をうけ、本剤の出荷調整を実施する。
同社は日本の工場での早期製造開始(許可が必要)や、他社から薬剤の供給を受けることも検討する。
医療現場には新規患者への処方を控えると同時に、一度の処方量を減らすよう求めていく。
約7000人の患者が服用している。
ーーー
B型肝炎ウイルス(HBV)の主たる感染経路は母子間感染だが、その約9割は自然経過によりHBVが減少し、健康人となる。
しかし、残りの1割ほどは炎症が持続してB型慢性肝炎を発症する。慢性肝炎からは年率約2%で肝硬変へと進展し、肝硬変からは年率約3%で肝癌が発生する。
B型慢性肝炎の治療では、従来からインターフェロン療法、ステロイド離脱療法などが行われているが、近年では抗ウイルス療法が積極的に行われている。
抗ウイルス療法で使用される薬剤は逆転写酵素阻害剤(核酸アナログ製剤)で、HBV(B型肝炎ウイルス)やHIV
(ヒト免疫不全ウイルス:AIDSの原因) の逆転写(RNAからDNAへと遺伝情報を複写する過程)を行う酵素を阻害することで、ウイルスの複製を阻害する。
ラミブジン(商品名ゼフィックス®)、HIV治療薬としては商品名エピビル®:GSK
アデホビルピボキシル(商品名ヘプセラ®):GSK
エンテカビル(商品名バラクルード®):ブリストル・マイヤーズ
これら薬剤の使用で有効性は飛躍的に向上したが、薬剤耐性のHBVの出現が大きな問題となっている。ラミブジン及びアデホビルは耐性ウイルスが比較的出現しやすい。
エンテカビルもDNA変異ウイルスの出現により耐性を獲得されることがある。
テノゼット®も同じ逆転写酵素阻害剤だが、多剤耐性獲得ウイルスに対しても効果を示す。
このため、海外の主要学会におけるB型慢性肝疾患治療ガイドラインで第一選択薬として推奨されるとともに、他の核酸アナログ製剤に耐性を示す患者に対しても、単独または他の核酸アナログ製剤との併用療法が推奨されている。
「テノゼット®錠」は、米国Gilead
Sciences社により開発された。B型慢性肝疾患の適応では、2008年4月に欧州で承認されて以来、米国を含む113の国又は地域で承認されている。
GSKグループはGilead
Sciences社との間で開発・販売契約を締結し、日本と中国における本剤のB型慢性肝炎治療薬としての独占的開発権および販売権の供与を受けている。
現在は日本のみで販売している。
HIV治療薬としては商品名ビリアード®で、日本たばこ産業製造、鳥居薬品販売が扱っている。
GSKは2014年3月24日、日本での製造販売の承認を受けた。
製品は天津のGlaxoSmithKline(Tianjin)
でテノゼットの原薬から製剤を行い、栃木県日光市の工場で包装している。
GlaxoSmithKline(Tianjin) は、GSKとTianjin
Pharmaceutical GroupのJVで、爆発現場の2km西にある。
2015/9/5 AIBOなど25件 未来技術遺産登録へ
国立科学博物館は、2008年から毎年、暮らしを大きく変えたり、産業の発展に貢献したりした技術を「重要科学技術史資料(愛称
未来技術遺産)」として登録しているが、9月1日、AIBO 、8ビットパソコン、 レーザディスクプレーヤ、タカヂアスターゼ など 25件を新しく選んだ。
http://www.kahaku.go.jp/procedure/press/pdf/77825.pdf
このうち、化学関連は下記の通り。
00188号 |
海軍航空機用塗料 色別標準(色見本帳) |
日本特殊塗料 |
1942年 |
00193号 |
カラーネガフィルム「フジカラー F-U400」
世界初の高感度(ASA400)カラーネガフィルム |
フジフィルム |
1976年 |
00207号 |
日本初のイオン交換樹脂の工業生産に係わる諸資料 |
山田化学工業 |
1939〜 |
00208号 |
タカヂアスターゼ |
第一三共 |
1909 |
00209号 |
スタチンおよびその発見に関する月報と実験ノート |
東京農工大学
科学博物館 |
1971〜 |
タカヂアスターゼ
タカヂアスターゼは高峰譲吉博士が1894年に発見した消化酵素を胃腸消化薬に製品化したもの。粉末状で取り出すことに成功した。
当時、高峰博士の一連の特許を元に米国のパーク・デービス社で製造され世界各国で発売されたが、博士の意向で日本では1899年に三共商店から発売された。
三共商店は高峰博士のタカヂアスターゼを技術導入して1899年に設立されたもので、1913年に三共株式会社となったが、この初代社長に高峰博士が就任している。
なお、最初の合成樹脂ベークライトは日本では早くも1911年に試作されているが、発明者のベークランド博士の親友であった高峰譲吉博士が特許権実施の承諾を受け、三共商店の品川工場で製造された。
1932年にベークライト部門が三共株式会社から独立し、日本ベークライト株式会社が設立された。その後1955年に住友化工材工業(1938年轄成樹脂工業所として設立)と合併、住友ベークライト株式会社になった。
スタチンおよびその発見に関する月報と実験ノート
三共の研究者であった遠藤章博士がスタチン類の最初の化合物(メバスタチン:ML-236B)をアオカビの培養液から発見した。
本資料は、大阪大学で日本で最初に患者の治療に使ったものと同じロットの錠剤と、この新薬を発見したときの過程を記録した遠藤博士の月報と助手の実験ノート
スタチンの発明については
2008/9/16 米ラスカー賞に遠藤章・東京農工大名誉教授
2012/5/5 発明家殿堂
ーーー
過去の未来技術遺産のうち、化学関連は下記の通り。
|
登録番号 |
名称 |
所在地 |
製作年 |
2008 |
00009号 |
国産初期の硬質塩化ビニル管サンプル |
アロン化成
名古屋工場 |
1951 |
2009 |
00026号 |
池田菊苗博士抽出の第一号具留多味酸
― 日本最古のグルタミン酸 ― |
東大大学院 |
1908 |
00029号 |
【 アンモニア合成装置 】 輸入機器
(1) アンモニア合成塔
(2) 混合ガス圧縮機
(3) 清浄塔
― わが国初の本格的なアンモニア合成プラント ― |
旭化成
(延岡市) |
1923 |
00039号 |
界面活性剤製造設備(TO リアクター)
― 世界で初めてα オレフィン・スルフォン酸塩の工業化に成功 ― |
ライオン
大阪工場 |
1976 |
2010 |
00051号 |
合成ガス循環機
― 日本初の国産アンモニア合成装置 ― |
昭和電工
川崎事業所 |
1930 |
00056号 |
ビニロン(ポリビニルアルコール繊維)
― 国産初の合成繊維 ― |
クラレ
岡山事業所 |
1950 |
00057号 |
塩化ビニル被覆電線・ケーブル見本
― 現存最古級の塩化ビニル被覆電線 ― |
古河電工
(市原市) |
1950〜
1955頃 |
00072号 |
上中啓三 アドレナリン実験ノート
― 高峰譲吉によるアドレナリン発見を決定づけた実験ノート ― |
教行寺
(西宮市) |
1900 |
2011 |
00080号 |
硬質塩化ビニル板製造用プレス機
― 日本最古の硬質塩ビ板成形プレス ― |
三菱樹脂
長浜工場 |
1954 |
00082号 |
“テトロン”糸生産第一号機
― 日本初のポリエステル繊維製造装置 ― |
東レ
(三島市) |
1958 |
2012 |
00095号 |
クロード法によるアンモニア国産化史料
アンモニア合成管用台盤、運転日誌、分離器 |
下関三井化学 |
1923~
1930 |
00097号 |
国産初のPVC製LPレコード |
日本コロンビア |
1951 |
00106号 |
世界初の木材用非ホルマリン系接着剤
イソシアネート系PVA系接着剤量産工場 |
光洋産業
富士工場 |
1972年 |
2013 |
00117号 |
量産初期のPVC樹脂製造装置 |
カネカ大阪工場 |
1950年 |
00133号 |
セメダインC |
セメダイン |
1938年 |
00135号 |
世界初の除虫菊を含む蚊取り線香 |
大日本除虫菊 |
|
2014 |
00154号 |
航空機製造用プリプレグ
ボーイングの要求を満たして国産材料として初めて認定
繊維基材に熱硬化性樹脂を含浸させたシートを重ね合わせて所定の形状にし、熱硬化させて繊維強化プラスチックに |
横浜ゴム |
1978年 |
2011/10/8
「未来技術遺産」
2013/9/12 未来技術遺産ー2013年
なお、日本化学会も別途、「化学遺産」を指定している。
2015/3/19
第6回化学遺産 発表
2015/9/7 日本ガイシ、自動車用触媒担体のカルテルで米司法省と司法取引
日本ガイシは9月3日、米国司法省との間で自動車用触媒担体の取引の一部に関して米国反トラスト法違反で有罪を認め、罰金6530万米ドルを支払うことを主な内容とする司法取引に合意した。
証拠隠滅などにより当局の捜査を妨害した疑いもあり、司法省は同社がこの件でも有罪を認めるだろうとしている。
司法妨害でも別途罰金を課せられる可能性がある。
自動車用触媒担体は、米国その他の
GM、トヨタ、日産などに供給されている。少なくとも2000年7月から2010年2月まで、共謀する他社(1社)との間で価格等の話し合いを行った。
同社はこれに加え、調査開始に気づき、2010年2月から2012年7月までの間、調査を妨害するため、司法妨害したとして訴えられている。
幹部と社員が電子ファイルを抹消し、書類を破棄や隠匿し、幹部のパソコンを取り替えたり、米国事務所に蓄積されている電子ファイルを除去したり隠したりした。
日本経済新聞によると、日本ガイシの前社長(現在
相談役)は2002年から2007年まで、排ガス浄化装置を扱うセラミックス事業本部長を務めており、調査に非協力的だったこともあり、他の2名とともに免責されなかった模様。
起訴された場合、1部上場企業のトップとしては初めてとなる。
(東証2部上場のダイヤモンド電機では元社長と元副社長が禁固刑を受けている)
起訴された場合、禁固刑&罰金刑の可能性がある。
出頭しない場合は「海外逃亡」で時効が中断する。犯罪人引渡し条約により他国に入国した時点で逮捕・米国送還される(下記の1例あり)。
2014/5/8
マリーンホース国際カルテルでのイタリア人被告の米国への引渡し
日本への引渡し要請の可能性もある。
炭素ブラシのカルテルと司法妨害で訴えられた英国のMorgan
Crucibleの元CEOが英国から米国に引き渡され、18ヶ月の禁固刑を受けた例もある。
(カルテル時点ではカルテルは英国での犯罪ではなかったとの主張で、カルテルは外され、司法妨害の罪で引き渡された)
日本の場合は1980年の条約で、両国でいずれも処罰の対象となり両国の法律で死刑、無期懲役、1年以上の拘禁刑に当たる罪の場合は引渡しが可能となっているが、独禁法違反の場合には日本政府は該当せずとし、引渡しは行われなかった。
2009年改正により、独禁法の最高が懲役5年となったため、執行猶予の対象外となり、条約上の引渡し対象となる。
(それまでは最高が懲役3年のため、執行猶予が付いた。)
条約第5条では、「被請求国は、自国民を引渡す義務を負わない。ただし、被請求国は、その裁量により自国民を引き渡すことができる」となっており、日本政府の判断で引渡しを行うかどうかを決めることとなる。
ーーー
2011年9月に古河電工が自動車用ワイヤーハーネスに係るカルテルに関して司法省との司法取引に合意して以降、多くの企業(ほとんどは日本企業)が自動車部品カルテルで起訴され、司法取引を行っている。
今回の日本ガイシを含め、合計36社(うち日本企業は31社)が総額25億67百万ドルの罰金を支払っている。
このなかには、1936年に日本ガイシ(NGK Insulators) から独立した日本特殊陶業(NGK Spark Plug)も含まれている。
自動車部品カルテルでは企業に加え、担当の責任者も多数起訴されている。
(企業が司法取引をする場合、責任者や担当者も免責されるが、違法行為がひどい場合は免責されず、起訴される。)
現時点で55名が起訴され、うち30名が禁固刑と罰金刑(2万ドル)を受けている。
このうち、タカタの米国人1名が禁固刑を受けた以外、すべて日本人である。
自動車部品カルテルの以前には、日本人で禁固刑を受けたのは2名のみであった。
うち1名は、若い担当者のため、将来海外に行けないのは困るとして、自ら渡米して刑を受けた。もう1名は米国で謀議中に逮捕された。
他にも多数が起訴されているが、日本から出ず、「海外逃亡」で時効中断となっている。
2015年に入り、海上貨物輸送カルテル
で3社の3名が禁固刑を受けた。
この結果、日本人で禁固刑を受けたのは34名となっている。
米国の反トラスト法による罰則は、以下のとおり。
法人:最高額1億ドルの罰金
個人:罰金の最高額は100万ドル。禁固刑は最大10年
1990年代後半までは外国籍の役職員については収監されることがないという”No-jail”ポリシーがあった。
2000年代に入るとそのポリシーは破棄され、外国籍の役職員に対しても積極的に禁固刑を科すようになった。
日本では当初、外国で独占禁止法により課された課徴金は、刑事手続きを経たものは損金不算入、刑事手続きを経ないものは損金算入とされていた。
2009年度税制改正で、外国政府が命ずるカルテル等違反の課徴金に対しては、損金不算入という取り扱いに改められた。
|
詳細は下記の通り。
自動車部品カルテル |
企業 |
|
個人 |
|
|
百万$ |
決定日 |
|
個人 |
禁固刑 |
決定日 |
禁固 |
起訴 |
1 |
古河電工 |
200 |
2011/9 |
|
I.F. |
1年+1日 |
2011/10/24 |
1 |
|
H.N. |
15か月 |
2011/10/13 |
2 |
|
T.U. |
18か月 |
2011/11/10 |
3 |
|
2 |
矢崎総業 |
470 |
2012/1 |
|
T. H. |
2年 |
2012/1/30 |
4 |
|
R. K. |
2年 |
2012/3/26 |
5 |
|
S. O. |
15か月 |
6 |
H. T. |
15か月 |
7 |
T. S. |
14か月 |
2012/8/16 |
8 |
|
K. K. |
14か月 |
2012/9/26 |
9 |
|
3 |
デンソー |
78 |
2012/1 |
|
N. I. |
1年+1日 |
2012/3/26 |
10 |
|
M. H. |
14か月 |
2012/4/26 |
11 |
|
Y. S. |
16か月 |
2013/5/21 |
12 |
|
H. W. |
15か月 |
13 |
S. H. |
1年+1日 |
2014/6/30 |
14 |
|
K.F. |
1年+1日 |
2014/2/20 |
15 |
|
4 |
ジーエスエレテック
|
2.75 |
2012/4 |
|
S.O. |
13ヶ月 |
2014/7/31 |
16 |
|
5 |
フジクラ |
20 |
2012/4 |
|
R.F. |
起訴 |
2013/9/19 |
|
1 |
T.N. |
2 |
6 |
Autoliv Inc
(Stockholm) |
14.5 |
2012/6 |
|
T.M.
日本人 |
1年+1日 |
2013/7/16 |
17 |
|
7 |
TRW Deutschland
(米社独子会社) |
5.1 |
2012/7 |
|
|
|
|
|
|
8 |
日本精機 |
1 |
2012/8 |
|
|
|
|
|
|
9 |
東海理化 |
17.7 |
2012/10 |
|
H.H. |
起訴 |
2014/5/22 |
|
3 |
10 |
ダイヤモンド電機 |
19 |
2013/7 |
|
S.I. |
16ヶ月 |
2014/1/31 |
18 |
|
T.I. |
13ヶ月 |
19 |
11 |
パナソニック |
45.8 |
2013/7 |
|
S.K. |
起訴 |
2013/9/24 |
|
4 |
12 |
日立オートモティブシステムズ
(starters, alternators and other electrical automotive components) |
195 |
2013/9/26 |
|
T.T. |
15ヶ月 |
2015/4/23 |
20 |
|
K.F. |
起訴 |
2014/9/18 |
|
5 |
K.T |
6 |
T.I. |
7 |
13 |
ジェイテクト |
103.27 |
M.I. |
起訴 |
2014/11/13 |
|
8 |
14 |
ミツバ |
135 |
K.U. |
13ヶ月 |
2014/12/1 |
21 |
|
H.K. |
起訴 |
2015/2/5 |
|
9 |
H.N. |
10 |
15 |
三菱電機 |
190 |
A.U. |
起訴 |
2014/9/18 |
|
11 |
M.K. |
12 |
H.S. |
13 |
16 |
三菱重工 |
14.5 |
|
|
|
|
|
17 |
日本精工(NSK) |
68.2 |
H.H. |
起訴 |
2014/11/13 |
|
14 |
18 |
ティラド(T.RAD) |
13.75 |
K.T. |
1年+1日 |
2014/12/1 |
22 |
|
M.S.. |
起訴 |
2015/5/14 |
|
15 |
19 |
ヴァレオジャパン
(仏Valeoの子会社) |
13.6 |
|
|
|
|
|
20 |
山下ゴム |
11 |
H. Y. |
1年+1日 |
2012/11/16 |
23 |
|
21 |
タカタ |
71.3 |
2013/10/9 |
|
G.W.
米国人 |
14か月 |
2013/9/26 |
24 |
|
Y.U. |
19 ヶ月 |
2013/11/21 |
25 |
|
S.I. |
16ヶ月 |
26 |
Y.F. |
14ヶ月 |
27 |
G.N. |
起訴 |
2014/6/5 |
|
16 |
H.U. |
起訴 |
2015/1/22 |
|
17 |
22 |
東洋ゴム |
120.0 |
2013/11/26 |
|
T.K. |
1年+1日 |
2013/9/26 |
28 |
|
M. H. |
起訴 |
2013/1121 |
|
18 |
K. N. |
19 |
23 |
スタンレー電気 |
1.44 |
2013/11/27 |
|
|
|
|
|
|
24 |
小糸製作所 |
56.6 |
2014/1/16 |
|
|
|
|
|
|
25 |
愛三工業 |
6.86 |
2014/2/2 |
|
|
|
|
|
|
26 |
ブリヂストン |
425.0 |
2014/2/13 |
|
Y.T. |
起訴 |
2014/4/15 |
|
20 |
Y.R. |
21 |
I.Y. |
22 |
Y.S. |
18ヶ月 |
2014/4/16 |
29 |
|
27 |
ショーワ |
19.9 |
2014/4/23 |
|
A.W. |
起訴 |
2014/10/15 |
|
23 |
28 |
日本特殊陶業
(NGK Spark Plug) |
52.1 |
2014/8/19 |
|
N. T. |
起訴 |
2015/5/21 |
|
24 |
H. N. |
25 |
29 |
豊田合成 |
26 |
2014/9/29 |
|
M.H |
1年+1日 |
2015/1/6
|
30 |
|
30 |
日立金属 |
1.25 |
2014/10/31 |
|
|
|
|
|
|
31 |
アイシン精機 |
35.8 |
2014/11/13 |
|
|
|
|
|
|
32 |
Continental Automotive Electronics (Korea) |
4.0 |
2014/11/24 |
|
|
|
|
|
|
33 |
サンデン |
3.2 |
2015/1/27 |
|
|
|
|
|
|
34 |
Robert Bosch (独) |
57.8 |
2015/3/31 |
|
|
|
|
|
|
35 |
山田製作所 |
2.5 |
2015/4/28 |
|
|
|
|
|
|
36 |
日本ガイシ
(NGK Insulators) |
65.3 |
2015/9/3 |
|
|
|
|
|
|
|
以下 追加 付記 2018/1/24
米の自動車部品カルテル裁判で東海興業に無罪、
2018/5 マルヤスも罰金大幅減額、マルヤス子会社も起訴取り消し。米の自動車部品カルテル裁判で東海興業に無罪の付記
37 |
カヤバ工業(KYB) |
62.0 |
2015/9/16 |
|
|
|
|
|
|
38 |
イノアック |
2.35 |
2015/11/19 |
|
|
|
|
|
|
39 |
オムロン |
4.55 |
2016/3/17 |
|
|
|
|
|
|
40 |
コーニング 日本 |
66.5 |
2016/5/16 |
|
N.N. |
起訴 |
2016/5/11 |
|
26 |
x |
東海興業 |
無罪
2018/1 |
2016/6/15
起訴 |
|
A.T. |
無罪
2018/1 |
起訴2016/6/15 |
|
|
x |
Green Tokai |
41 |
マルヤス
|
12 |
2018/5/31 |
|
T.H. |
取消
(2018/5) |
Y.S. |
27 |
x |
Curtis-Maruyasu America |
取消
2018/5 |
2016/6/15
起訴 |
K.K |
|
S.M |
|
42 |
西川ゴム |
130 |
2016/7/19 |
|
K.K. |
18ヶ月 |
2016/4/20 |
31 |
|
|
M.K. |
起訴
司法妨害起訴 |
2015/10/8
2016/9/21 |
|
28 |
|
Y.K. |
起訴 |
2015/10/8 |
|
29 |
|
F.H. |
司法妨害起訴 |
2016/9/21 |
|
30 |
43 |
日立オートモティブシステム
(shock absorbers) |
55.48 |
2016/8/9 |
|
|
|
|
|
|
44 |
臼井国際産業 |
7.2 |
2016/11/8 |
|
|
|
|
|
|
45 |
Kiekert AG (独) |
6.1 |
2017/3/7 |
|
|
|
|
|
|
|
累計 |
2,913.4 |
|
|
65 |
取り消し 4 |
|
31 |
30 |
|
|
|
|
|
|
|
|
|
日本企業 38社 (日立2回含む)
外国企業日本子会社 2社 |
|
日本人 |
30 |
30 |
|
無罪 東海興業/Green Tokai
マルヤス子会社Curtis-Maruyasu |
|
うち 無罪 1 東海興業
起訴取り消し 3 マルヤス |
|
|
表では、有罪を45社、31名だが、2018/5/30の司法省発表では46社、32名となっており、差がある。調査中。
罰金は殆どが各2万ドルで、ダイヤモンド電機の場合は2人が各5千ドル。
東海興業とマルヤスは米子会社各1も合わせて起訴、このうちマルヤス本社のみ有罪。
日立オートモティブは2回(No.12 & No.46)
日立は前回に本件を申告しなかったため、罰金を増やし、3年のprobation (保護観察)
コンプライアンス・プログラムの策定及び実施等に係る遵守事項につき監視される
これ以外の日本人の禁固刑
|
氏名 |
|
禁固 |
罰金 |
ダイセル
ソルビン酸価格カルテル |
H. H. |
2004/8/5 |
3ヶ月 |
2万ドル |
ブリヂストン
マリンホース国際カルテル |
M. H. |
2008/12/10 |
2年 |
8万ドル |
|
海上貨物輸送カルテル |
川崎汽船 |
H. T. |
2015/1/30 |
18
ヶ月 |
2万ドル |
川崎汽船 |
T. Y. |
2015/2/6 |
14ヶ月 |
2万ドル |
日本郵船 |
S. T. |
2015/3/10 |
15 ヶ月 |
2万ドル |
|
付記
米司法省は2015年10月6日、海上貨物輸送カルテルで新たに3人を起訴した。
Y. A. 川崎汽船
M.K. & S. K. 日本郵船
通常、起訴されるのは役員クラスだが、ダイセルの場合、減免制度でチッソが提出した詳細情報に若い担当者の関与が記載されており、起訴された。
海外に行けないのでは仕事にならないため、服役を選んだ。
米国司法省は、「日本人で最初に服役」と誇らしげにこれを発表するとともに、本人には3ヶ月の禁固という軽い刑にし、その他でも特別待遇をしたという。
出所後は欧州勤務をするなど、活躍している。
付記 ソルビン酸カルテル事件
|
企業 罰金 |
|
個人 |
ダイセル |
53百万ドル |
2000/7/25 |
|
K. K. |
2000/7/25
起訴
(時効中断) |
H. I. |
T. M. |
H. H. |
禁固3ヶ月
罰金 2万ドル |
2004/8/5 |
上野製薬 |
11百万ドル |
2001/1/23 |
|
Y. K. |
2001/1/23起訴
(時効中断) |
Y. K. |
W. S. |
日本合成
(事業撤退) |
21百万ドル |
1999/7/14 |
|
H. I. |
罰金 35万ドル |
1999/7/14 |
Eastman |
11百万ドル |
1998/9/30 |
|
|
Hoechst |
36百万ドル |
1999/5/5 |
|
Manager |
罰金 25万ドル |
1999/5/5 |
チッソ
(事業撤退) |
情報提供で免除 |
|
|
EU
2003/10/1
|
課徴金 |
ダイセル |
16.6百万ユーロ |
上野製薬 |
12.3百万ユーロ |
日本合成 |
10.5百万ユーロ |
Hoechst |
99.0百万ユーロ |
チッソ |
情報提供で免除 |
ーーー
米当局は現在、キャパシタ(電解コンデンサー)業界のカルテルの調査を行っている。
司法省は9月2日、NECトーキンが罪を認め、1380万ドルの罰金を支払うと発表した。
付記
2015年3月2日にキャパシタのメーカーの1社のT. I. を起訴した。
2016年4月27日、日立化成が有罪を認めた。同社は6月20日、罰金380万ドルが確定したと発表した。
2015/9/7 天津の爆発事故現場、早くも公園化計画 批判相次ぐ
天津市は浜海新区の爆発現場を「海港生態公園(海港エコ公園)」として整備する計画を明らかにした。
公園は24ヘクタールで「エコ、活気、暮らし、記念」を理念とし、事故前に着工していた小学校や幼稚園も敷地内に建てる。11月に着工し、来年7月の完成を目指すという。
大惨事の原因究明も済んでいない中での発表に、事故車両を埋めようとした温州の高速鉄道と同じだと、批判が相次いでいる。
全体は43ヘクタールで、公園部分(左図の赤線内)は約24ヘクタール。公園の池は丁度、爆発の穴の場所。
南側には小学校、幼稚園などが、西側にはグリーンベルトがつくられる。
|
|
2015/9/8 Dow
Chemical、塩素バリュー・チェーンのOlinへの売却手続き開始
Dow Chemical は9月2日、塩素バリュー・チェーンをOlin
Corporation に売却するのに際し、Reverse Morris
Trust の手法のもとで、自社の株主に
Dowの株式と分離した子会社の株式を交換させる手続きを開始した。
Dow Chemical
は3月27日、同社のクロルアルカリ事業の大半を分離してOlin Corp と合併させ、売上高70億ドルのグローバルリーダーをつくると発表した。
Reverse Morris Trust
という手法により、同社のクロルアルカリ事業を分離して無税でOlinに売却し、Olinはこれを統合する。
新しいOlinにはDowが50.5%を出資する。
米国には、Morris Trust が開発し、その後、税法上承認されたMorris
Trust 取引と、これの変形のReverse Morris Trust 取引がある。
通常、事業を売却すれば売却益に対して課税されるが、売却側の企業の株主が、買収した事業を統合した後の買収企業の株の50%かそれ以上を所有する場合には無税となる。
下図で、A社が本体をB社に売却する形でB社と統合する場合がMorris Trust
取引、不要事業を売却する形でB社と統合する場合がReverse(逆)Morris Trust 取引である。
いずれの場合も新しいB社の株の50%以上をA社
株主が持つ場合に売却が非課税となる。
Dow のLiveris CEO が下記の通り発言している。
「Dowは(Dowのクロルアルカリ事業との統合後の)Olin
株の50.5%を所有する。しかし、追ってDowはDow株主にOlin株を直接所有するよう、オファーする。
最終的には、3人の取締役を出すだけで、それ以外にはOlin の経営には全く関与しない。」
2015/3/30
Dow Chmeical、クロルアルカリ事業をOlin Corp.と統合
両社は6月16日、独禁法の Hart-Scott-Rodino (HSR)
Antitrust Improvements Act of 1976 に基づく待機期間が満了し、独禁法上の問題がなくなったと発表した。
7月6日には関係各国全ての承認を得た。
また、7月17日、IRSからReverse Morris
Trustによる取引を認めるレターを受け取ったと発表した。
これにより、この取引の非課税対価は50億ドル(課税ベースで80億ドル相当)となる。
今回の取引は下記の通りとなる。
最終的にDowの塩素関連事業を買収するOlinについて、Dow株主が過半を占めるため、事業売却は非課税となる。
Dowは9月2日、Dowの株主に対し、Dow株式と100%子会社のSpinco株式の交換のエクスチェンジ・オファーを開始した。
Dowの普通株主は、Dow普通株式1.00米ドル当たり約1.11米ドルのSpinco普通株式を受領する。
その後、Spinco普通株式1株は Olin普通株式 0.87482759株に転換される。
(株主には実際にはSpinco株式ではなく直接Olin株式が渡される。)
Dowの普通株主が、1株当たり何株のSpinco普通株式を受領するかを決定する最終の交換比率は、遅くとも、エクスチェンジ・オファー期間終了日(10月1日)の直前の最終取引日に発表される。
応募が超過した場合は割り当て、過少の場合は残存するDow株主に比例配分される。
なお、Olinに売却する事業のなかに、Dowと三井物産のJVの Dow Mitsui
Chlor-Alkali LLCがある。
三井物産とDowは2010年7月、両社が折半出資でテキサス州フリーポートで電解事業を行う合弁事業の設立に関する合弁契約書を締結、12月にJVを設立した。三井物産は約1.4億ドルを出資。
社名:Dow-Mitsui Chlor-Alkali LLC
能力:苛性ソーダ約88万トン、塩素約80万トン
操業:Dow
操業開始:2014年初め
製品:折半引取り
三井物産は塩素はDowに委託してEDCにし、アジアで販売、
苛性ソーダはDowを通じて米国で販売
2010/7/2 三井物産とダウ、合弁でテキサスで電解事業
これについての発表はないが、報道ではDowがOlinに売却するのに合わせ、同社も当事業から撤退する模様。
Dow-Mitsui Chlor-Alkali への投資会社である Mitsui
& Co. Texas Chlor-Alkali は2015年3月期で76億円の赤字、2015年4-6月期で32億円の赤字となっている。
付記
三井物産は2016年3月14日、Dow-Mitsui Chlor-Alkali への投資会社である Mitsui
& Co. Texas Chlor-Alkali が、3月12日に解散決議したと発表した。
Dowの電解事業売却に伴い売却参加権を行使し、同社持ち分をDowへ売却した。今回、ダウ社への売却関連業務が完了した為、同社を解散及び清算する。
2015/9/9 Sinopecのロシア進出
Sinopec
は、
プーチン大統領が抗日戦争勝利70周年式典参加で北京
を訪問したのを機に、ロシアのRosneft 及びSibur
と提携を深める覚書を締結した。
1) 対 Rosneft
SinopecとロシアのRosneftは9月3日、ロシアの2箇所で共同で石油・ガス開発を行う覚書を締結した。
プーチン大統領の北京訪問を機に、習近平主席も列席のもと、両社会長により調印された。
SinopecはYurubcheno-Tokhomskoye
ガス田を運営するEastern Siberian Oil and Gas
Companyと、Russkoye油田の権利を持つTyumenneftegazの株のそれぞれ49%を取得する権利を取得する。
Eastern Siberian
Oil and Gas はRosneftの子会社。
Tyumenneftegazは当初は TNK-BP の子会社であったが、現在はRosneftの子会社となっている。
SinopecとRosneftは今後、合同の技術グループをつくり、投資計画を作成する。
Sinopec とRosneft は既に下記の2件で協力し合っている。
(1) Udmurtneft
Udmurtneftはロシアのウドムルト共和国の石油会社で、TNK-BP
の子会社であったが、同社が売りに出し、2006年にSinopec とRosneft が共同で買収し、共同運営している。
(2)
サハリン3プロジェクト
サハリン3は3つの鉱区に分かれているが、ウェーニン地区では両社が協力している。
キリンスキー鉱区 |
Gasprom |
アヤシ・東オドプト鉱区 |
Gazprom |
ウェーニン(Venin) 鉱区 |
Rosneft 74.0%、Sinopec
25.1% |
ーーー
2) 対 Sibur
2014年5月のプーチン大統領の訪中時に、下記の契約が締結された。
SinopecとSiburは戦略的協力契約を締結した。今後、取引の拡大やガス処理・石化計画での協力などを検討する。
その一環として、Shanghai Chemical Industry
Parkにブタジエンにトリルゴム
(NBR) のJVの設立を決めた。
能力:50千トン/年
出資:Sinopec 74.9%、Sibur 25.1%
技術:Siburがライセンス
両社は2013年にロシアのKrasnoyarsk
にNBRのJVを設立している。
能力:56千トン/年
出資:Sinopec 25%+1株、Sibur 75%-1株
技術:Siburがライセンス
2014/5/27 ロシアと中国のエネルギー関係契約(2)
Siburは9月3日、SinopecがSiburに出資する計画であると明らかにした。
プーチン大統領の訪中を機に、framework investment agreementが締結された。
SinopecはSiburの10%以上を取得するとされる。
付記
2015年12月17日、10%を取得した。
Sibur Holding
はロシアの30社以上の石油化学・化学企業を統括し、ガス精製からタイヤ生産まで幅広く手がけている。
1995年設立で、政府が38%出資し、残り62%を上場した。
2001年にGazpromが51%を所有。
2003年にGazprom 25%、Gazprombank 75% となった。
Gazprom はその後、石油化学をnon-core とみなし、2008年にSibur 株をGazfundのエネルギー資産と交換した。
Gazprombankは2010年にSibur 株を個人株主 Leonid Mikhelsonに売却した。
その後も変遷があり、現在の株主は下記の通り。 |
Leonid Mikhelson |
50.2% |
会長(Novatekの創業者・CEO)
|
Kirill Shamalov
|
21.3% |
取締役 |
Gennady Timchenko
|
15.3% |
(Novatek 取締役) |
役員等(新旧) |
13.2% |
|
同社は3つの事業部門を持つ。
2015/9/10 BASFとGazprom、断念した資産交換を実施、Nord
Stream 2 計画もスタート
BASFは9月4日、ロシアのGazpromとの間で2013年に締結したものの、2014年12月に「現在の厳しい政治情勢を踏まえ」断念した資産交換合意を復活させると発表した。
資産交換は2013年12月に合意し、2014年末に実施する予定で、欧州委員会からは2013年12月に承認を得ていたが、ロシアと西側諸国の間で緊張が高まったことから断念していた。
2014/12/25 BASF、Gazpromとの資産交換計画を断念
BASFは「当時の厳しい政治環境のため、BASFとGazpromは2014年末に予定していた資産交換を完了させない決定を下していた」が、「後日完了させる可能性は排除しておらず、今、この取引完了の共同決定に至った」と説明した。
BASFは7月31日
に、下記のNord Stream
2 計画への参加を発表している。
2013年4月1日に遡って実施される。
BASFはGazpromに天然ガスのトレーディング事業を譲渡し、交換で鉱区権益を取得する。
譲渡するのは、
1)BASF子会社Wintershall とGazpromの50/50JVの天然ガスのトレーディングと貯蔵会社、WINGASとWIEH
のWintershall 持分
両社はGazprom 100%となり、WIEWIEHの100%子会社のWIEE
もその結果、Gazprom に移る。
WINGASとベルリンに本社を持つWIEH(Wintershall Erdgas
Handelshaus) はドイツのみならず、ベルギー、フランス、英国、オーストリア、オランダ、チェコなどに天然ガスを供給している。
WIEWIEHの100%子会社のWIEE (Wintershall Erdgas
Handelshaus Zug) はスイスに本拠を置き、ルーマニアとブルガリアを中心に天然ガスを供給している。
2) 北海で石油の開発を行っているWintershallの100%子会社WINZ(Wintershall
Noordzee)の50%持分
代わりにWintershallが譲り受けるのは、北極圏北海のUrengoyskoye
石油・ガス田のAchimov depositsの4A and 5Aブロックの開発権の25.01%。
Urengoyskoye
石油・ガス田は1966年発見で、北極圏のガス田で最大のもの。
今回取得する2鉱区は24億バレルの埋蔵量が見込まれ、2016年に生産が始まる予定であった。
Wintershall は長年、Gazpromと共同でシベリアのガス田を開発している。
ーーー
同じ9月4日、Gazprom
とBASFその他の各社はNord Stream 2 pipeline 計画の実施に関する株主契約書に調印した。
Gazpromは2015年6月、シベリアの天然ガスをサンクトペテルブルク北方のビポルクからバルト海海底約1200キロを通ってドイツ北東部グライフスバルトまで供給するNord
Stream Pipelineの倍増計画に着手した。
Gazpromは6月18日、同計画での協力についての覚書を、Royal
Dutch Shell、ドイツのE.ON、オーストリアのOMV との間で締結した。
7月31日、BASF子会社Wintershall
の参加を発表した。
2015/7/1
Nord Stream 倍増計画
倍増計画のため、新会社
New European Pipeline AG が設立される。
参加する企業と出資比率は次のとおりとなった。
|
Nprd-2 |
参考 Nord-1 |
Gazprom |
51% |
51.0% |
BASF/Wintershall
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10% |
15.5% |
E.ON
|
10% |
15.5% |
OMV |
10% |
|
Shell
|
10% |
|
ENGIE |
9% |
|
Nederlandse
Gasunie |
|
9.0% |
GDF SUEZ |
|
9.0%
|
|
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* ENGIEはフランスの電気・ガス事業者 |
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|
2015/9/11 トリニダード・トバゴでのメタノール/ジメチルエーテル計画 最終決定
三菱ガス化学、三菱商事、三菱重工業は9月3日、トリニダード・トバゴ共和国で同国の国営ガス会社
National Gas Company of Trinidad and Tobago (NGC)および同国のMassy
Holdingsと進めているメタノール/ジメチルエーテル製造販売事業について、最終決定したと発表した。
国際協力銀行及び三菱東京UFJ 銀行と融資契約を締結する。
三菱ガス化学と三菱商事は2013年4月に、トリニダード・トバゴ政府及びのNeal &
Massy Holdings とともに、メタノール年産能力100 万トン、ジメチルエーテル(DME)年産能力10
万トンの製造事業を検討することに合意したと発表した。
経緯や同国のメタノール事業の状況、三菱ガス化学のメタノール事業の状況について、下記参照。
2013/4/12 三菱ガス化学と三菱商事、トリニダード・トバゴでメタノール/DMEの製造事業F/S
に合意
2015/4/17
三菱ガス化学・三菱商事・三菱重工の3社、トリニダード・トバゴでのメタノール事業で契約
その後、検討・交渉を行い、下記により実施することを決めた。
ジメチルエーテルについては、当初の10万トンを2万トンに変更した。
会社名 |
Carribbean Gas Chemical |
立地 |
La Brea, Union Estate Industrial
Estate
|
能力 |
メタノール 100万トン
ジメチルエーテル(DME) 2万トン |
総投資額 |
990百万米ドル |
出資と役割 |
三菱ガス化学 |
26.25% |
メタノールを世界中で販売 &
同国並びにカリブ諸国でにおいて、DMEのディーゼル燃料代替促進に向けたプロモーション |
三菱商事 |
26.25% |
Massy |
10.00% |
三菱重工 |
17.50% |
プラントの設計から建設までを担当 |
NGC |
20.00% |
原料天然ガスの供給 |
|
運転開始 |
2019/3 |
Massy(旧称 Neal & Massy
)は卸売、不動産、自動車販売・メンテナンス代理店、産業用ガス製造供給、ホテル経営等、幅広い事業をカリブ全域で展開している。
2015/9/12 米国独禁法事件での米国への引渡し事例
日本ガイシは9月3日、米国司法省との間で自動車用触媒担体の取引の一部に関して米国反トラスト法違反で有罪を認め、罰金6530万米ドルを支払うことを主な内容とする司法取引に合意した
が、証拠隠滅などにより当局の捜査を妨害した疑いもあり、
司法妨害でも会社と役員が起訴される可能性がある。
日本ガイシの前社長(現在
相談役)は2002年から2007年まで、排ガス浄化装置を扱うセラミックス事業本部長を務めており、調査に非協力的だったこともあり、他の2名とともに免責されなかった模様。
仮に起訴された場合、日本に留まれば「海外逃亡」で時効が中断するが、犯罪人引渡し条約により、日本から送還されたり、他国に入国した時点で逮捕・米国送還される
可能性がある。
2015/9/7 日本ガイシ、自動車用触媒担体のカルテルで米司法省と司法取引
独禁法で米国に送還された最初の外国人は、マリーンホース国際カルテルのイタリアのParker
ITRのRomano Pisciotti である。
当時米国におらず逮捕を免れていたRomano Pisciottiは、2013年6月にナイジェリアからイタリアに戻る途中、ドイツの空港で逮捕された。
Pisciottiはイタリアの裁判所とEUの人権裁判所に訴え、EUの法律が適用されるべきとするとともに、ドイツによる国籍差別の犠牲者であると主張したが、2014年4月3日に米国に送還された。
Romano Pisciottiは4月24日、有罪を認め、禁固2年、罰金5万ドルを受け入れた。
ドイツでの拘束期間の(9ヶ月+ 16日)がこれから差し引かれる。
2014/5/8
マリーンホース国際カルテルでのイタリア人被告の米国への引渡し
しかし、その前の2010年3月に英国の工業用炭素・セラミック製品メーカーのMorgan
Crucible の元CEOが英国から米国に身柄を引渡されている。
英国のWindsorに本拠を置くMorgan
Crucibleの米国子会社 Morganite, Inc. は1990年1月頃から2000年5月頃まで、集電装置、炭素ブラシなどで競争相手と価格談合を行った。
1999年4月頃、大陪審は独禁法違反の疑いで Morganiteに文書提出令状を出した。
Morgan Crucibleの当時のCEO のIan
Norrisはタスクフォースを編成し、カルテルの証拠を集め、隠滅した。
従業員が聴取されると知り、供述の際に使う競合相手との会合についてのシナリオを作成、競合相手にもそのシナリオに従うよう求め、リハーサルでうまくやれなかった従業員を無理やり退職させた。
しかし、最終的に隠滅作戦は失敗した。
2002年に米子会社Morganite
Inc.は独禁法違反で当時の罰金の最高限度の1000万ドル、Morgan Crucible は司法妨害で100万ドルの罰金の支払を命じられた。
更に3人の従業員が2003年に有罪を認め、禁固刑と罰金刑を受けた。
Morgan
Crucibleの事業部長が証拠隠滅で禁固4ヶ月、罰金2万ドル
英国子会社 Morganite Electrical Carbon のPricing
Coordinator が従業員に証拠隠滅をさせたとして、禁固5ヶ月、罰金2万ドル
米国子会社 Morgan Advanced Materials and Technology
の社長が証拠隠滅を助けたとして、禁固6ヶ月、罰金2万ドル
Morgan Crucible とCEOのIan
Norrisは2001年にEUでの10年前のカルテルについて報告し、EUでの免責を得た。Ian Norrisは1年後に病気を理由に退任した。
しかし、米国の大陪審は2004年、Ian Norris
を独禁法違反と証拠隠滅の2つの容疑で起訴した。
米司法省は犯罪人引渡し条約に基づき英国にIan Norrisの送還を要請した。
これに対しIan
Norrisは、英国で価格カルテルが罪になったのは2002年であり、米国でのカルテルはそれ以前のため、カルテルの罪は当て嵌まらないと主張し、抵抗した。
裁判となり、最終的に2007年に英国の最高裁である貴族院で Ian
Norrisの勝訴となった。
米司法省はこれで諦めず、独禁法違反を外し、司法妨害の罪で送還を求めた。
今回も貴族院まで行ったが、今回は司法省の勝訴となった。
最後に欧州人権裁判所に訴えたが却下され、Ian Norris
は2010年3月に米国に送還された。
独禁法事件で米国に送還される最初の外国人となったが、独禁法の罪は外され、司法妨害の罪での送還となった。
2010年12月10日、連邦地裁はIan Norris に禁固18ヶ月、罰金25千ドルの判決を下した。
ーーー
日米の場合は1980年の条約で、両国でいずれも処罰の対象となり両国の法律で死刑、無期懲役、1年以上の拘禁刑に当たる罪の場合は引渡しが可能となっているが、独禁法違反の場合には日本政府は該当せずとし、引渡しは行われなかった。
2009年改正により、独禁法の最高が懲役5年となったため、執行猶予の対象外となり、条約上の引渡し対象となる。
(それまでは最高が懲役3年のため、執行猶予が付いた。)
条約第5条では、「被請求国は、自国民を引渡す義務を負わない。ただし、被請求国は、その裁量により自国民を引き渡すことができる」となっており、日本政府の判断で引渡しを行うかどうかを決めることとなる。
逆に今後、日本側が引渡しを求める事態も発生する可能性があるため、要請があった場合には、余程の理由がない限り、引渡しを行うと思われる。
2015/9/14 中国のシルクロード基金がヤマルLNG計画に出資
ロシア天然ガス2位のNovatekは9月3日、プーチン大統領と習近平主席の見守るなか、中国のシルクロード基金(絲路基金)にYamal
LNG 計画の持分 9.9% を譲渡する基本契約書を締結した。
これにより、Yamal
LNG計画の出資比率は下記のようになる。
|
従来 |
今後 |
|
Novatek |
60% |
50.1% |
|
Total |
20% |
20.0% |
2011/3/2 調印 ロシアの天然ガス開発ーBP撤退、Total進出 |
CNPC |
20% |
20.0% |
2013/9 参加合意、2014/1/14 株式買収完了 |
絲路基金 |
- |
9.9% |
|
TotalとNovatekは2009年からTermokarstovoyeガス田(下の地図)を共同で開発している
が、2015年5月に生産を開始した。
Yamal LNG はYamal半島のSouth
(Yuzhno) Tambey ガス田を開発し、液化してLNGにする。
ガス田の推定埋蔵量は2014年末時点で9,260億m3とされる。
液化設備は550万トンx 3系列の合計年間1650万トン。第1期を2016年末に操業、第2期、第3期をそれぞれ2017年末、2018年末に稼働させる。
LNG基地を含む投資額は270億ドルとされる。
LNGの売却先は、Total、CNPCとスペインのGas Natural
Fenosa。
日揮がフランスのTechnipと共同で、このLNGプラント新設プロジェクトの有償見積りおよび詳細設計役務等を受注している。
2013/4/8
日揮、ロシアのヤマルLNGプラントの詳細設計役務等を受注
同地に多機能海港のSabetta港の建設が進められており、LNG、石油、天然ガス・コンデンセートを輸出する拠点港になる。
韓国の大宇造船は2014年7月8日、
大宇造船海洋がカナダ、中国、日本の海運会社と、Yamal
ProjectのLNGを輸送するための17万立方メートル級ARC7
砕氷LNG船9隻に対する受注契約を締結したと発表した。
最大氷厚2.1mの氷海において単独砕氷航行可能な仕様となっており、ヤマル半島サベッタ港のYamal
LNG基地から、通年にわたり世界各地への輸送に従事するが、夏季には北極海航路を経由して東アジア向けに運航される。
習主席は、APEC閣僚会議が開かれた2014年11月8日にバングラデシュ、タジキスタン、ラオス、モンゴル、ミャンマー、カンボジア、パキスタンの首脳と「相互接続パートナーシップ強化対話会議」を開催した。
習主席は「『シルクロード経済圏』と『21世紀の海のシルクロード』を建設しよう」と呼びかけ、中国が400億ドルの「シルクロード基金」を創設すると表明した。
2014/11/13 中国のシルクロード経済圏構想
シルクロード基金を運用する絲路(シルクロード)基金有限責任公司は外貨準備、中国投資有限責任公司、中国進出口銀行、国家開発銀行の共同出資で、2014年12月29日に北京市内で登記され、第1弾として100億米ドルの資金募集を終えている。
シルクロード基金は市場化、国際化、専業化の3原則を順守、アジアインフラ投資銀行(AIIB)と連携し、アジア地域のインフラ整備や経済交流を進める「一帯一路」構想を実現する。
第1号として、パキスタンの水力発電所のプロジェクトが選ばれた。
2015/5/2
中国のシルクロード基金が初投資、パキスタンで水力発電所整備へ
ーーーー
北極海には他に2件のLNG計画がある。
1)ムルマンスク近郊
Teriberka
バレンツ海Shtokman海底ガス田(Gazprom 75%、Total
25%)のガスをNord Stream Gas Pipeline へつなぎ込むとともに、
TeriberkaにLNGプラント建設
2) ノルウェー Melkøya島
Snøhvit海底ガス田(Snøhvit North,
Albatross, Askeladd の3鉱区)のガスをMelkøya島で液化
次の6社のコンソーシアムで、Statoilが率いる。
Statoil (33.53%), Petoro (30%), TotalFinalElf (18.4%), Gaz de France (12%),
Amerada Hess (3.26%), RWE-DEA (2.81%).
2015/9/15 大同特殊鋼に廃棄物処理法違反容疑で強制捜査
群馬県は、大同特殊鋼などを廃棄物処理法違反容疑で9月7日に刑事告発、群馬県警は9月11日、同社の名古屋、東京両本社など関係先を家宅捜索した。
大同特殊鋼の渋川工場(群馬県渋川市)から出た鉄鋼スラグに環境基準を超える有害物質が含まれていたが、この有害な廃棄物を「建設資材」として販売した件。
刑事告発と家宅捜査は同社の他に、廃棄物処理の許可なしでこれを処理した大同エコメット(大同の子会社)と佐藤建設工業にも行われた。
スラグは県内で国などが発注した工事225箇所で使われ、93箇所で環境基準を超えるフッ素などが検出された。
交通量が多い国道バイパスなどで使われており、交通への影響で撤去をどうするかが決まっていない。
また、渋川市では49箇所で76万トンが使われており、全部を撤去すると228億円もかかるとされる。
群馬県は2014年1月、渋川工場から出た「鉄鋼スラグ」を業者に販売する際、運搬費などの名目で販売価格を上回る代金を支払っていたことが廃棄物処理法違反に当たるとみて、渋川工場を立ち入り検査した。
この時点では、同社は、「スラグは商品価値が低く、運搬費などをこちらで負担しないと売れない」とし、「産業廃棄物ではなく、リサイクル商品に当たり法律には違反しない」と主張した。
2012年6月以前、子会社を通じて渋川市内の砕石業者にスラグを1トン100円で販売するとしながら、実際には1トン250円以上を支払う契約も同時に結んでいた。(引き取り手に支払う代金が、本来の金額を上回る取引のことを「逆有償取引」という)
鉄鋼スラグは、鉄鋼を製造する過程で出る副産物で、フッ素や六価クロムなどの有害物質が含まれている。
主に路盤材やセメント材などに再利用されるが、渋川市によると、同社のスラグを再利用した11カ所の施工現場で、環境基準を超えるフッ素などを検出した。
これに対し大同は、「工事した当時は基準内だったはずだ」とした。
大同特殊鋼は特殊鋼専業メーカーで、スラグは以下の工程でできる。
|
鐵鋼スラグ協会 |
その後、関係官庁が調査したところ、下記の結果が出た。
|
調査対象 |
フッ素溶出量 |
フッ素含有量 |
六価クロム溶出量 |
六価クロム含有量 |
基準 0.8mg/l |
基準 4,000mg/kg |
基準 0.05mg/l |
基準 250mg/kg |
超過
件数 |
最大値 |
超過
件数 |
最大値 |
超過
件数 |
最大値 |
超過
件数 |
最大値 |
渋川市 |
スラグ |
32/38 |
13 mg/l |
35/38 |
24,000mg/kg |
3/38 |
0.23mg/l |
- |
- |
土壌 |
28/38 |
8.7mg/l |
2/38 |
4,600mg/kg |
4/38 |
0.13mg/l |
- |
-- |
水資源
機構 |
スラグ |
8/8 |
2.5mg/l |
8/8 |
19,000mg/kg |
3/8 |
0.085mg/l |
- |
|
土壌 |
0/6 |
- |
- |
- |
- |
- |
- |
- |
国交省 |
スラグ |
1/6 |
4.4mg/l |
- |
- |
- |
- |
- |
- |
土壌 |
1/1 |
2.0mg/l |
- |
- |
- |
- |
- |
- |
2014年8月には、国が群馬県長野原町で建設を進める八ッ場ダムで、水没予定地からの立ち退きを求められた住民の移転代替地の整備に、有害物質を含む建設資材が使われていることが分かった。
大同と「逆有償取引」をしていた建設会社が八ッ場ダム関連工事十数件に参加し、大同から引き取ったスラグを天然砕石に混ぜて使っていたという。
調査対象 |
フッ素溶出量 |
フッ素含有量 |
基準値 |
0.8mg/l |
4,000mg/kg |
場所1 |
4.3mg/l |
19,000mg/kg |
場所2 |
13
mg/l |
20,000mg/kg |
場所3 |
19
mg/l |
21,000mg/kg |
群馬県は今回、大同はスラグには環境基準を超える有害物質「フッ素」が含まれていると知りながら出荷しており、こうした取引は建設資材を装った廃棄物処理に当たるとして、廃棄物処理に必要な許可を受けていない大同と建設会社に廃棄物処理法違反の疑いがあるとして刑事告発した。
群馬県の環境森林部長は「スラグの使用箇所の解明を進め、環境への影響も監視していく」と話した。
ーーー
これに似たケースとしては石原産業のフェロシルト不法投棄事件がある。
同社は酸化チタンを製造しているが、輸入した砂鉄状の鉱物を粉砕して、硫酸法と塩素法でチタンを抽出している。
同社は1969年に、硫酸抽出法で抽出した後の廃硫酸を長年にわたって中和処理せずに伊勢湾に捨てたとして、四日市海上保安部から摘発され、垂れ流した廃硫酸が約1億トンに上がることが認定されて、1980年に津地裁で有罪判決を受けている。
その後は廃硫酸と汚泥は炭酸カルシウムや消石灰で中和し、脱水して、産廃処分場に廃棄していた。
2003年の廃棄量は250〜380千トンと膨大な量で、処分費用は1トン9,400円との推定がある。
同社では国際競争力強化策の一環として、1997年に、廃棄物の減量化と酸化チタンの製造コストの低減をはかるため、製造工程から副生する使用済み硫酸を再生利用して副生品を生産・販売する研究開発に着手した。
2001年から土壌埋戻材を「フェロシルト」と命名して販売を開始し、2003年には三重県リサイクル製品利用推進条例に基づく「リサイクル製品」に認定された。
2005年4月までの間に約77万トンのフェロシルトを生産、そのうち約72万トンが販売され、委託業者を通じて東海3県や京都府加茂町など35カ所に埋設された。業者がケナフを植えるための肥料と偽って埋め捨てたケースもある。
2004年11月、大雨によってフェロシルトが流出し、川の水を赤く染めるという事件が発生した。
サンプル検査の過程でフェロシルト中から基準値を超える6価クロムやフッ素化合物も含まれていることが分かった。
土壌埋戻材として販売しながら、実際には購入業者には「改質加工費」などの名目で販売価格の約20倍の金額が払われていた。
その後について:
2006/11/13 石原産業フェロシルト不法投棄事件
2012/7/4 フェロシルト不法投棄事件で石原産業元役員らに賠償命令
2014/5/23 石原産業のフェロシルト不法投棄事件の株主訴訟が和解
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