日本政府は原発の輸出を促進するため、今後英国側と資金支援の詳細な検討を進める方針で、覚書では、日立傘下のHorizon Nuclear Power が英中部Wylfa で、東芝傘下のNuGenが英中部 Moorside(Sellafield)でそれぞれ計画する原発について言及した。
4月1日、三菱化学、三菱樹脂、三菱レイヨンが統合し、三菱ケミカル株式会社となった。
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2017/4/1 大阪ガス、米国の天然ガス火力発電事業に参加 (+豊田通商の米事業 )
大阪ガスは3月27日、米国の2つの天然ガス火力発電事業に参加すると発表した。
ニュージャージー州で稼働中のShore Power Plantと、ペンシルベニア州 で開発中のFairview Power Plantで、独立系発電事業者(IPP事業者)のCompetitive Power Ventureから出資権益の一部を取得する。
同社は長期経営ビジョン「Going Forward Beyond Borders 2030」で、2030年度の国内事業:海外事業の経常利益構成比が2:1になるよう、海外エネルギー事業の強化を加速させるとしているが、本件参画は、海外中下流事業強化の中核をなすものであり、プロジェクトへの燃料調達や電力市場への電力販売など、米国における発電事業ノウハウの蓄積を進め、今後も同地域を重要市場と位置づけ、主体的に発電事業を推進し、事業拡大していくことを目指す。
大阪ガスは2015年4月に、メリーランド州で建設中のSt. Charles 天然ガス火力発電事業に参画することとし、同事業の特別目的会社であるCPV Maryland LLCの出資権益の25%を、丸紅より取得する持分取得契約を締結している。これにもCompetitive Power Ventureが出資している。
付記
大阪ガスは2018年4月10日付でMichigan Power Limited Partnership の取得契約を締結した。
事業会社名 Michigan Power Limited Partnership社 所在地 米国・ミシガン州 Ludington 発電能力 12.5万kW ガスコンバインドサイクル方式 商業運転開始 1995年10月 出資者(出資比率) 大阪ガス(100%)
参加する事業は次の通り。
Shore Power Plant
立地:ニュージャージー州
能力:725MW
発電効率約57%のコンバインドサイクル方式
現状:稼働中(2016年1月に運転開始)
出資:
取得前 取得後 大阪ガス -- 20.00 Competitive Power Venture 57.53 37.53 豊田通商 31.25 31.25 John Hancock Life Insurance 11.22 11.22 合計 100.00 100.00
Fairview Power Plant
立地:ペンシルベニア州
能力:1,050MW
発電効率約60%のコンバインドサイクル方式
現状:開発中(2020年3月稼働予定)
出資:
取得前 取得後 大阪ガス -- 50 Competitive Power Venture 75 25 GE 25 25 合計 100 100
既存の St. Charles Power Plant
立地:メリーランド州
能力:725MW
現状:2017年2月商業運転開始予定
出資:
取得前 取得後 大阪ガス -- 25 丸紅 50 25 Competitive Power Venture 25 25 豊田通商 25 25 合計 100 100
これら発電所は北米最大のPJM電力卸売市場 (米国北東部13州およびワシントンD.C.の全部または一部の電力市場で、独立系統運用者により管理されている)で電力を販売し、米国北東部地域の電力供給に貢献する。
Shore Power Plantについては、豊田通商が2013年に参画した。
この時点では、Competitive Power Venturesと ArcLight ArcLightがJohn Hancock
豊田通商が参画する北米電力事業は、合計6件(総発電容量4,155MW)に上り、うち、米国での電力卸売市場向け発電事業は4件(総発電容量2,840MW)であり、Shore Power Plantは、そのなかの商業運転開始第1号案件となる。
同社が参加する事業は上記の2件のほか、次の通り。
Salem Harbor Power Plant
立地:マサチューセッツ州
能力:700MW
現状:2017稼働予定
出資:
Highstar Capital 87.5 豊田通商 12.5 合計 100
St. Joseph Energy Center
立地:インディアナ州
能力:700MW
現状:2018年春稼働予定
出資:
Ares EIF Group 80 豊田通商 20 合計 100
Oyster Creek Cogeneration
立地:テキサス州 Freeport(Dow Chemical 石化コンビナート内)
能力:424MW
現状:1994 運転開始
売電先:Dow Chemical 及びテキサス州卸売電力市場
出資:
取得前 取得後 GE Energy Financial Service 50 5 豊田通商 0 45 International Power(英国) 50 50 合計 100 100
カナダ、Goreway Power Plant Project
立地:オンタリオ州
能力:875MW
現状:2009年6月稼働
オンタリオ州電力公社から営業運転開始後20年間にわたる収入補填
出資:
当初 2011 Sithe Global Power 50 0 豊田通商 25 50 中部電力 25 50 合計 100 100
Paul Ryan下院議長は3月30日、メキシコ国境の壁建設について、来年度に予算計上を先送りする方針を示した。
Ronald Trump は2016年10月下旬に、大統領に選ばれた場合の公約 "Donald Trump's Contract With The American Voter" を発表した。
そのなかに、政権の最初の100日で「不法移民を排除するために南部国境沿いにメキシコ政府の費用で壁を建設する」件を議会を通すよう戦うというのがある。
大統領は2017年1月25日、Executive Order を出し、「南部の国境を守るために、即座に物理的な壁を建設する」と命じ、「不法移民、麻薬、人身売買、テロ行為を防ぐために、適切な人員が支援する」とした。
Executive Order on January 25, 2017
Executive Order: Border Security and Immigration Enforcement Improvements前日の Twitter: “Big day planned on NATIONAL SECURITY tomorrow. Among many other things, we will build the wall!”
当日のTwitter:
“The U.S. has a 60 billion dollar trade deficit with Mexico. It has been a one-sided deal from the beginning of NAFTA with massive numbers of jobs and companies lost.
If Mexico is unwilling to pay for the badly needed wall, then it would be better to cancel the upcoming meeting.”
これを受け、メキシコ大統領が訪米を取りやめたが、その後、両大統領が電話会談を行い、壁問題は分からなくなった。
しかし、3月27日の報道では、大統領は壁の建設資金として10億ドルの承認要請を議会に提出した。
San Diego の境界壁(14マイル)と交換用フェンス(14マイル)
Rio Grande Valley の堤防壁(28マイル)と境界壁(6マイル)
大統領はほかに、2018年度分の壁の予算26億ドルを提出している。これには「戦略的インフラ」と壁の設計計画の費用のほか、国境パトロール部隊(500人)と移民・関税警官(1000人)の人員強化費用3億1400万ドルも含まれる。
メキシコとの国境線の全長は1954マイルで、壁の建設には、総額で最大200億ドルの費用が掛かると推計されている。大統領の当初の意気込みからみると、控えめなスタートである。
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今回、予算計上を見送ったのは2017年度(2017年9月末まで)の予算である。
オバマ政権では、予算が事前に決まることはなく、2016年10月からスタートする2017年度予算も、2016年12月9日までの暫定予算でスタートした。
2016/10/5 米国、2017会計年度も暫定予算でスタート
米上院は2016年12月9日午後11時16分(期限直前)に、2017年4月28日を期限とする連邦政府の暫定予算案を賛成
64票 反対36票で可決した。
昨年とほぼ同レベルの支出を政府に認めるもので、4月29日以降についての本格予算はトランプ次期政権が発足してから審議することとした。
2016/12/10 米国議会、来年4月28日までの暫定予算を可決
4月29日以降の予算案が円滑に議会を通過するには民主党の協力が不可欠で、4月28日までに通過しなければ、政府機関の閉鎖に追い込まれる。
大統領は壁建設費用はメキシコに弁済させると主張しているが、メキシコ側は支払わないと断言している。
壁の建設には民主党が反対しており、共和党内でも反対が出る可能性がある。
下院議長は、「政府機関の閉鎖にはならない。大統領も閉鎖を望まない」と語った。
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米国の予算執行には、予算案の承認問題に加え、債務上限問題がある。余り問題になっていないが、実は現時点で既に上限に達している。
1917年に米国債の上限が法律で制定された。上限の見直しには議会の承認が必要である。
上限見直しはこれまではスムースには行われていない。
2015年も、3月16日以降は18兆1000億ドルの法定上限を超過する借り入れはできなくなり、政府が持つ基金の金を活用するなどの特別な措置でやりくりしており、11月3日にもデフォルトが発生する懸念があった。
オバマ大統領は2015年10月2日、債務上限問題について、解決する責任は議会にあるとして、野党共和党とは「交渉しない」と改めて表明。議会が上限を引き上げなければ、米国債のデフォルトが発生し「金融システムは危機に陥る」と警告した。
これを受け、米政府と議会指導部は協議を続け、10月26日遅く、連邦債務上限の引き上げで合意に至った。債務上限凍結を2017年3月15日まで再び延長し、それ以降については期限までに行った借り入れを含む金額を新たな上限として設定するとした。
2015/11/4 米議会、債務上限引き上げと予算案を承認、大統領署名
凍結期間の3月15日は既に過ぎた。これまでに行った借り入れを含む金額は19兆8000億ドルで、これを超えた借り入れには、上限の引き上げが必要である。
余り問題となっていないのは、追加の国債発行なしで暫くはやっていけるためで、連邦職員のsavings plan、Exchange Stabilization Fund、Civil Service Retirement and Disability Fundなどを活用し、秋まではやっていけるとみられている。
予算も債務上限引き上げも、、スムースに通らなかったのは、オバマ政権時代は議会で多数を占める共和党の反対があったためであるが、Trump 政権の提案内容によっては野党民主党だけでなく、与党の共和党内からも反対が出る可能性がある。
Trump大統領は3月31日、中国や日本などとの貿易赤字削減を目指す大統領令(Executive Order) “Omnibus Report on Significant Trade Deficits” に署名した。
商務長官と米通商代表部(USTR)代表に貿易赤字の要因を分析させ、相手国の不公正な関税や輸出補助金などを徹底的に調査する内容。
米国は長年の間、貿易協定やWTO参加で期待される利益を享受しておらず、2016年では、モノの貿易で7千億ドル、全体の貿易で5千億ドルを超える年間赤字となっているとし、貿易相手国のアンフェアで差別的な慣行が米国民から自由貿易で得るはずの利益を奪っているとする。
商務長官とUSTR代表に各省庁と協力して90日以内に報告を出すよう指示した。
2016年に米国が大きな貿易赤字を出した国が対象で、国ごとに次の報告を求めている。
(a) 貿易赤字の主因の評価
関税・非関税障壁、ダンピング、政府補助金、知財盗用、技術移管強要、不当な労働条件、その他のすべての差別
(b) 法律・規則・慣行などで米国の通商に直接間接に不当な重荷を課したり、不公平な差別をしていないか。
(c) 通商関係が米国の製造や防衛産業のベースの製造能力や強さに与える影響
(d) 通商関係が米国の雇用や賃金の伸びに与える影響
(e) 輸入や貿易慣行が米国の安全保障を損なっていないか。
Wilbur Ross 商務長官は記者会見で、調査対象は中国だけではなく、米国が大きな貿易赤字を出しているすべての主要国であるとして、列挙した。中国、日本、ドイツ、メキシコに加え、アイルランド、ベトナム、イタリア、韓国、マレーシア、タイ、フランス、スイス、台湾、インドネシア、カナダで、最後にインドを加えた。
合わせて、アンチダンピング税などの不払を防ぐための大統領令 “
Establishing
Enhanced Collection and Enforcement of Antidumping and Countervailing Duties and
Violations of Trade and Customs Laws” にも署名した。
2015年5月時点で23億ドルものアンチダンピング税、相殺関税が不払いとなっている。輸入業者が米国に資産を持たないなどが理由。
このため、保証金を積ませるなどの対策をとる。
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大統領は署名後、記者会見をおこない、次のように述べた。
選挙運動中に各地を訪れ、ひどい状況を見て、話を聞いた。雇用と富がこの国から奪われている。
この政権の下で、米国の富の奪取は終わる。
本日、2つの大統領令に署名した。
1つは、アンチダンピング税等の課税は完全に回収する。
2つ目は、米国に危害を加える米国の貿易赤字と貿易ルール違反についての総括的なレビューである。
私は米国民のために働く。TTPからの即時撤退や本日の歴史的ステップはそのためだ。
来週、中国の習近平主席とフロリダで会談する。真剣に議論する。しかし、米国企業や米国の雇用の点では、現在の状況はよくない。状況を変える必要がある。時間はかけない。
大統領は3月30日のtwitterで習近平主席との会談について、次のように述べている。
“The meeting next week with China will be a very difficult one in that we can no longer have massive trade deficits.”
付記
中国商務省の報道官は4月1日夜、「米国は公に認められた国際ルールに従うべきだ」との談話を公表した。「中国は平等と相互利益を基礎に、意見の相違を適切に処理することを望む」と指摘した。
菅義偉官房長官は4月3日午前の記者会見で、「日本の経済に与える影響などについては引き続き注視していきたい」と語った。
日本市場に関して「外国製品に差別的な取り扱いをしておらず、障壁となる措置もない。十分に開放的だ」と強調した。
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米通商代表部(USTR)は3月31日、2017年版の貿易障壁報告書を公表した。
日本(P.243〜)に関しては農産物市場に「重大な障壁」が存在すると批判し、牛肉や豚肉などで一層の市場開放を要求した。
日本側の食品添加物や農薬規制、自動車流通市場に非関税障壁があるとの見解も示した。
日本はBSE対策で米国産の輸入牛肉を月齢30カ月未満に制限しているが、米国側は制限の全面撤廃を要求に掲げている。
このほか皮革・革製品、コメ、海産物、保険・共済、郵便事業など各種分野で更なる市場開放が必要としている。
特に自動車市場については、車両の認証制度や販売店網に関する規制などを例に挙げて「さまざまな非関税障壁がある」と指摘。また医薬品についても、薬価の市場拡大再算定制度の透明性向上が必要としている。
日米も4月中旬に第1回の経済対話を開く方向だが、自動車や農業などの貿易問題が改めて焦点になる。
為替問題も議題に上がる可能性がある。
DuPontは3月31日、FMCとの間で、同社の農薬部門の一部を研究開発部門を含めて売却し、交換にFMCの健康・栄養事業のほとんど全てを買収する契約を締結したと発表した。
DuPontは事業価値の差額として16億ドル(現金12億ドル+運転資金 4.25億ドル)を受け取る。
農薬部門の売却は、Dowとの合併の承認の条件として欧州委員会と約束したもの。
DowとDuPontの合併(8月〜9月と想定)とその他の手続の完了を条件に、2017年第4四半期の取引完了を目指す。
付記
欧州委員会は7月27日、条件付きでこれら取引を承認した。
FMCが特定の農薬製品で独占となり、一方的に値上げをする可能性があるとした。
これを受け、FMCはsulfonylurea とflorasulamの事業を売却することとした。
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欧州委員会は3月27日、DowとDuPont の合併を条件付きで承認すると発表した。
EUの規制当局が慎重な姿勢を続けたため、問題とされた農薬事業及び石油化学製品事業について両社が提案を行い、欧州委員会はこれを条件に承認したもの。
農薬事業に関する提案は下記の通り。
DuPontの農薬事業のかなりの部分をR&D組織を含めて売却する。
2017/3/28 EU、条件付きでDow / DuPont 合併を承認
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今回 DuPont が売却する事業は次の通りで、該当品の2016年の売上高は14億ドル。
・除草剤 (cereal broadleaf herbicides) 及び殺虫剤(indoxacarb, cyazypyr and rynaxypyr)
・DuPontのグローバルなR&D組織
(種子処理、線殺虫剤、最終段階のR&Dプログラムを除く)
(DuPontに残る既に販売中の製品をサポートする要員を除く)
DuPontが取得するFMCの健康・栄養事業は次の通りで、2016年の売上高は7億ドル。
DuPontのNutrition & Health 事業と極めて補完的。
・食品原料成分としてのテクスチュラント(スターチなど)
・医薬品賦形剤
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三菱ケミカルホールディングスは2015年12月10日、100%子会社の三菱化学、三菱樹脂
及び三菱レイヨンの3社が、2017年4月1日をもって統合することを決定したと発表した。
2017年4月1日をもって、存続会社を三菱レイヨンとする吸収合併の方法により、3社を統合する。
新社は、統合後引き続き、純粋持株会社である三菱ケミカルホールディングスの100%子会社として事業を行う。
2015/12/10 三菱化学、三菱樹脂及び三菱レイヨンの統合
2016年3月4日、統合新社の商号を「三菱ケミカル株式会社」(Mitsubishi Chemical Corporation)とすることに決めたと発表した。
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三菱ケミカルホールディングス全体のポートフォリオとしては、成長事業8つ、基盤事業6つの13の事業ユニット(ライフサイエンスは双方に)と5つの次世代事業テーマとなる。
統合新社「三菱ケミカル株式会社」は機能商品分野で7つ、素材分野で3つの合計10の事業ユニットに再編成する。
部門 | 本部 | 事業部 |
石化部門 | 石化基盤 | 石化原料、ユーティリティー |
ポリオレフィン | ||
基礎化学品 | C2ケミカル、C3ケミカル、C4ケミカル、テレフタル酸 | |
炭素 | 炭素 | コークス炭素材、カーボンゴム |
MMA | MMA・Asia | 化成品、AN、機能樹脂 |
MMA・Europe & US | Europe、US | |
高機能ポリマー | パーフォーマンスポリマーズ | 機能性樹脂 |
エンジニアリングポリマーズ | フェノール・ポリカーボネート、ポリエステエル | |
サステイナブルリソース | サステイナブルリソース | |
高機能化学 | 機能化学品 | 機能化学品、スペシャリティケミカルズ |
機能材料 | エポキシ、ファインケミカルズ、無機化学品、メタブレン | |
食品機能材 | 乳化剤 | |
情電・ディスプレイ | 光学フィルム | ポリエステルフィルム、ポリエステル加工フィルム、ディスプレイフィルム |
情報電子 | ディスプレイマテリアルズ、イメージングマテリアルズ、半導体マテリアルズ | |
アセチル | ||
高機能フィルム | 包装フィルム | 食品包装 |
工業フィルム | 産業・メディカルフィルム、アクリルフィルム(部) | |
ホスタファン | ||
環境・生活ソリューション | アクア・分離ソリューション | イオン交換樹脂、分離・アクアケミカル |
インフラ・アグリマテリアルズ | アグリソルーション | |
高機能成形材料 | 高機能エンプラ | クオドラント(室) |
繊維 | フィルター・トウ、繊維素材 | |
炭素繊維複合材料 | 炭素繊維複合材料、コンポジット製品 | |
機能成形複合材 | アルポリック複合材、機能成形材、高機能モールディングシステムズ | |
アルミナ繊維・軽金属 | アルミナ繊維・軽金属 | |
新エネルギー | リチウムイオン電池材料 | 電解液、負極材 |
エネルギー変換デバイス部材 | LEDマテリアルズ |
2017/4/5 米国の消費者物価指数(CPI) と個人消費支出物価指数(PCE Price Index)
米商務省は3月31日、2月の個人消費支出(Personal Consumption Expenditures)統計を発表した。
それによると、PCE物価指数は前年同月比2.1%上昇した。米連邦準備理事会(FRB)の目標である2%を超えるのは2012年4月以来、4年10カ月ぶり。
食品とエネルギーを除くコアの物価上昇率は前年同月比1.8%だった。
これとは別に、米労働省が消費者物価指数(CPI)を発表している。
2016年12月(食品とエネルギーを除くものは2015年11月)から既に前年比で2%を超えている。
米連邦準備理事会(FRB)は現行の金融緩和政策について、インフレ率が目標水準である2%付近を維持することを条件としている。
FRBが注目しているのはPCE指数で、多くのエコノミストはこれをより正確なインフレ指標と見なしている。
FRBは3月15日の米連邦公開市場委員会(FOMC) で、昨年12月以来、3カ月ぶりの利上げを決めた。短期金利の指標であるフェデラルファンド金利の誘導目標を、年0.50〜0.75%から0.75〜1.00%に引き上げた。
2017/3/18 米国、追加利上げ
発表の席で、「食品とエネルギーを除く物価は長期目標2%に近づいている 」と述べた。
発表時には、CPIは全体もコアも既に2%を超えているが、PCE指数は未達であった。
今回、PCEが全体では目標の2%を超え、食品とエネルギーを除くコア指数も、2%に近づいている。
さらに、米商務省が3月30日に発表した2016年第4・四半期のGDP確報値は、年率換算で前期比2.1%増で、前回発表の1.9%から上方改定された。
今後の利上げ路線を後押しするとみられる。
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この2つのインフレ指標は、指数の計測方法に複数の相違点がある。
PCEがカバーする支出範囲はCPIよりも広い。
CPIは家計の現金支払い分を測るが、PCEには企業が負担する健康保険費用など、家計消費に関連する費用も含まれている。
PCEのウエイトに使われているデータは企業調査に基づいており、CPIのウエイトに使われている消費者調査よりも信頼性が高い。
PCEとCPIではデータソースが違うため、比較可能な品目の相対ウエイトが異なる。
PCEは、企業調査の小売販売データから導出されている。医療関係費のウエイトが最も高くなる傾向にある。
CPIは、消費者購買データから導出されており、住宅費用のウエイトが最も高い。 上げ幅がPCE指数に比べて大きくなる原因の1つ。
CPIは2年ごとに更新される商品のバスケットから導出される固定ウエイトを用いており、その間に発売された新商品や期中の価格変化を織り込めない。
PCEは短期間に生じる消費者行動の変化を調整する式を用いている。
東芝は4月4日、同社が60% 所有する英国の原発事業会社 NewGeneration (NuGen) の残り40%をフランスのEngieから買収すると発表した。
付記 2017年7月25日に買収完了。買収額は158.62億円(108.8百万ポンド)
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東芝は2014年1月15日、スペイン大手電力会社Iberdrola S.A.から、英原子力発電事業会社NewGeneration (NuGen)の株式50%を、GDF Suez から同社保有のNuGen社株式10%を、それぞれ譲り受けると発表した。取得額は総額で約1億ポンド。
NuGenは東芝 60%、GDF Suez 40%の出資となる。(GDF Suezは2015年4月24日にEngieに改称した。)
NuGen は、英中部Sellafield で合計出力360万キロワットの原発建設を予定している。Iberdrola が2012年に事業再編と債務削減を進めるためにNuGenの保有株を売却する意向を明らかにしたことで、プロジェクトは頓挫していた。
WestinghouseのAP 1000 を3基建設する予定で、原発計画を実際に着工するかどうかは2018年に判断するとしていた。
東芝は 原発設備を納入した後に経営権を売却することを想定しているとされている。
2013/12/27 英国が原発建設再開、固定価格買取制度導入、東芝と中国企業が計画に参加
日本政府は原発の輸出を促進するため、今後英国側と資金支援の詳細な検討を進める方針で、覚書では、日立傘下のHorizon Nuclear Power が英中部Wylfa で、東芝傘下のNuGenが英中部 Moorside(Sellafield)でそれぞれ計画する原発について言及した。
2016/12/27 日英、原発建設協力で覚書、日立・東芝の案件対象
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東芝子会社のWestinghouseが3月29日に米国でChapter 11
を申請したが、これは株主間契約に定められた東芝の帰責事由(Event of
Default)に該当することと規定されており、この帰責事由が発生した場合、Engie
は同社の保有株式全ての買取りを東芝に請求するか、東芝の保有する株式全てを買取る請求を行えることになっている。
Engieは当該規定に基づき、買取の請求をしてきたもの。
買取価額は、市場価格又はEngieのNuGen株式への投資額のいずれか高い方とされており、2017年3月までのENGIEの投資額をベースの約153億円となる。
NuGen はいったん東芝の完全子会社となるが、東芝はNuGenの完全売却も視野に入れており、「引き続き出資者の募集や持ち分売却を検討する」としている。
欧州理事会(EU首脳会議)のDonald Tusk(トゥスク)常任議長は3月31日、英国政府が3月29日に行った「EU離脱通知」を念頭に、今後のEUとしての交渉ガイドラインの原案を公表した。
内容は次の通り。
基本原則:
1.
将来も英国を親密なパートナーとしたい。英国との協定は権利と義務のバランスに基づく。単一市場の4つの自由(人・物・資本・サービスの移動の自由)は分割できず、好いとこ取り("cherry
picking")はあり得ないことを英国政府は認識してほしい。
2. Brexit交渉はワンパッケージで行う。個別アイテムを別に決めることはない。英国と各国の個別交渉はない。
課題として、次の4つを挙げている。
1. 英国で生活・就労・就学するEU市民、EUで生活・就労・就学する英国市民の互恵・無差別の権利保全
2. 英国でのEUの企業、EUでの英国企業に影響を与えるが、法的空白を避ける必要がある。
3. EUも英国も、離脱前に決めた義務を守る必要がある。全ての法的、予算上の約束、偶発債務を含めた債務についてである。
オーストリアのケルン首相は本年2月に、EU離脱に伴い英国は600億ユーロを支払う必要があるとの見解を示した。
これは最大額とされるが、EU職員の年金給付、英国が拠出に合意したプロジェクトの費用、借入保証、2020年まで決定済みの中期予算の拠出金などとされる。
これに対し、英外相は「英国が離脱後に巨額の請求に応じるとEUが期待するのは妥当ではない」と述べ、支払いの求めに英政府が抵抗することを示唆した。
4. 英国(北アイルランド)とアイルランドの国境問題について、国境復活などの厳格な対応ではなく、柔軟で建設的な解決を模索すべきである。
このほか、キプロスの英国主権基地領域(Acrotiri and Dhekelia 軍事基地)の扱いなどに触れている。
しかし、イベリア半島南端の英領ジブラルタルについての記載は問題である。
「英国がEUを離脱した後、離脱合意はスペインと英国の合意なしにはジブラルタルに適用されない」と記されている。
これは1713年に英領となったジブラルタル(スペインは現在も領有権を主張)がEUの域外に出るには、EUに加えてスペインの同意が必要と主張するもので、スペインの要望で草案に盛り込まれたという。
メイ英首相は4月2日、「ジブラルタル市民の意思に反し、ジブラルタルが他国の主権下に入るような交渉を英政府は絶対に行わない」と約束した。
元保守党党首のMichael Howardは4月2日、「35年前にサッチャー首相が英領フォークランド諸島をアルゼンチンから守ったように、メイ政権もスペインからジブラルタルを守るために戦争をする覚悟があるだろう」と述べ、問題となっている。
2017/4/7 田辺三菱製薬、ジェネリック医薬品事業等のニプロへの売却
田辺三菱製薬は3月28日、同社のジェネリック医薬品事業及び長期収載品の一部について、製造販売承認を含む販売権、製造委受託契約、共同開発契約ほかの関連契約、在庫、商標権、著作権並びに安全管理情報のすべてを田辺製薬販売に承継させた上で、田辺製薬販売の全株式をニプロに譲渡すると発表した。譲渡額については明らかにしていない。
田辺三菱製薬は2008年4月1日付でジェネリック医薬品のプロモーション並びに販売を目的とした子会社「田辺製薬販売」を設立し、「リライアブルジェネリック」の標榜のもと、ジェネリック医薬品事業を行ってきた。長期的にはジェネリック医薬品市場におけるリーディング・カンパニーを目指すとしていた。
日本のジェネリック医薬品市場は、政府による使用促進策の導入により2020年度には数量シェアの80%を占めるまで成長することが見込まれるが、一方で、同一品目に数十社が参入し競争が激化する等、将来に向けてますます事業環境の変化が予想される。
このような事業環境を踏まえて、同社で事業の最適化を検討した結果、市場での一層のシェア拡大と事業効率の向上が必須であることから、ジェネリック医薬品の豊富な開発経験と多様な生産体制を有するニプロに譲渡することを決めた。
対象事業を田辺三菱販売に承継させ、事実上のジェネリック医薬品メーカーとしての機能を持たせたうえで、ニプロに譲渡する。
付記 ニプロは6月12日、株式取得は、2017年10月1日の完了を予定しており、新社名はニプロESファーマとすると発表した。
ESには、「Essential」と「Establish」の二つの意味を込める。
対象製品は下記の通りで、2016年3月期の田辺三菱製薬の売上高は 12,893百万円となっている。
ジェネリック医薬品:51成分(2017年6月追補品目を含む) :現在、田辺三菱製薬が田辺製薬販売に供給
オーソライズド・ジェネリック医薬品:1成分 タリオンAG(抗アレルギー剤タリオンのAuthorized Generic)
:現在、田辺三菱製薬が田辺製薬販売に供給
長期収載品(既に特許が切れ、競合ジェネリック品が販売されているもの)
:26成分(田辺製薬販売が販売する分 14成分と田辺三菱製薬の直接販売分 12成分)
ーーー
ニプロ側は次のメリットをあげている。
(1)取り扱い製品の拡充 短期間に取扱製品の拡充を進めることが可能となる。
(2)ブランド強化による更なる販売強化
オーソライズド・ジェネリック薬品(タリオンAG)を自社製品として取り扱うことが可能となる。
(3)調剤薬局向け販売の更なる強化
(4)自社生産工場での生産による原価低減 将来的に承継製品群を同社に移管
(5)吉富薬品とのコ・プロモーションによる精神科領域の更なる強化
田辺三菱製薬の子会社であり精神科領域に強い吉富薬品との共同プロモーションにより、精神科領域の販売を更に強化
新日鉄住金は、持分法適用会社のブラジル鉄鋼大手 Usiminas の経営を巡り、3度目の訴訟に踏み切った。
新日鉄住金はともにUsiminas に出資するアルゼンチン鉄鋼大手Ternium との間で経営者選定を巡り対立し、混乱が続いている。
3月23日に開かれた経営審議会が、ホメル・ソウザ社長の退任、セルジオ・レイチ副社長の社長昇格人事を決めたが、新日鉄住金側は、重要事項について事前協議で決めるという株主間協定に違反し無効であるとして差し止め請求をミナスジェライス州ベロオリゾンテ市の裁判所に提出した。
過去1年間で社長が3回交代する異常事態となっており、2014年9月以降、社長人事を巡ってTerniumが1回、新日鉄住金側は今回が3回目の訴訟となる。
ミナスジェライス州ベロオリゾンテ市の裁判所は4月25日、新日鉄住金の申し立てを棄却した。
付記
2018年2月8日、新日鉄住金とTernium Investments S.à r.l. は、訴訟等の解決を定めた法的拘束力のある基本合意書を締結した。
(1)新たなガバナンスルールの導入
@CEO・取締役会議長(以下「議長」)の交互指名
CEO・議長は4年毎(任期2年×2)の交互指名とし、新ルールに基づく最初のCEOはテルニウム社が指名し、最初の議長は新日鉄住金が指名する。
なお、当初2年間については、テルニウム社はCEOにSergio Leite de Andrade氏を指名し、新日鉄住金は議長にRuy Roberto Hirschheimer氏を指名する予定。
A執行部門の構成及び指名
執行部門(CEO及び副社長)は6名とし、両社はそれぞれ3名ずつを指名する。
BJV解消ルール
2018年5月の執行部門の選任から5年後以降、新日鉄住金及びテルニウム社のいずれか一方が他方の保有するウジミナス社株を買い取ることにより共同経営を終了することができるJV解消ルールを導入する。
(2)関係する訴訟等の取扱い
両社は、過去数年内に生じ現在も係争中のウジミナス社に関わる訴訟等を円満に終了、または解決するために必要な全ての措置を講じる。
ーーー
当初、新日鉄グループ(新日鉄、日本ウジミナス、三菱商事・メタルワン)は、同業のVotorantim、Camargo Correa Group と従業員年金基金の間でUsiminas の株主協定を結び、経営に当たっていた。
ブラジルでは、上場会社の議決権の過半を有する株主が、会社の意思決定、株式譲渡等につき協定を締結することができる。
Usiminasの協定株主は、議決権の過半数を確保した上で、株主総会、経営協議会(取締役会に相当)において議決権を統一的に行使することを取り決めている。
2011年9月にブラジルの鉄鋼大手CSN (Companhia Siderurgica Nacional SA)が、Votorantimと Camargo Correa Group に対し、Usiminasの議決権株式26%分の買い取りを正式に提案した。
これに対抗し、中南米を拠点とする大手鉄鋼会社Ternium Group が、VotorantimとCamargo Correa及び従業員年金基金から全議決権の約27.66%相当を購入、新日鉄グループ及び 従業員年金基金の3者で新たな株主間協定を締結した。
元協定(〜2011年11月) 改正新協定 議決権 普通株+
優先株協定内 議決権 協定内 当社・日本ウジミナス社 26.14 40.93 27.83 43.57 三菱商事・メタルワン
(商事・双日)1.62 2.54 1.62 2.54 日本グループ合計 27.76 13.8 43.47 29.45 46.12 Votorantim 13.0 20.3 Camargo Correa Group 13.0 20.3 V/Cグループ合計 25.97 12.9 40.67 0 0 ウジミナス社年金基金 10.13 5.0 15.86 6.75 10.57 Ternium Group 27.66 43.31 協定株主計 63.86 100.00 63.86 100.00 2011/9/24 ブラジル鉄鋼大手CSN、ウジミナス株買い取りを提案
新日鉄住金側とTernium 側で問題が生じたのは2014年9月である。
Usiminasの経営審議会は2014年9月26日、Terniumグループ出身のフリアン・エグレン社長と子会社社長、製造担当取締役の3人の解任を発表した。経営審議会で賛否は5対5だったが、議長の判断で解任が決まった。ホメル・ソウザ氏が暫定社長となった。
Ternium側は、事前協議がなく 株主間協定に違反するとしたが、新日鉄住金側は、会社の規定にない賞与を受け取ったコンプライアンス違反が理由であり、協定違反でないと主張した。
Ternium側は、この決定の取り消しを求めて訴訟を行ったが、ブラジルの裁判所は2015年5月5日、解任を支持する判断を下し、ホメル・ソウザ氏が社長となった。
2014/10/7 ブラジル鉄鋼会社 ウジミナスを巡る争い
2016年4月の定時株主総会では、新日鉄住金とTerniumが事前合意の上で、Terniumが指名するエリアス・デ・マトス・ブリトー氏が経営審議会の議長に就任した。このためCEO人事は新日鉄住金が主導し選定されるものと見られ、ホメル氏の続投が濃厚とされていた。
しかし、経営審議会でTerniumが多数派工作を展開、新日鉄住金を裏切る形で事前の合意がないまま、セルジオ・アンドレーデ氏を社長に選出した。
新日鉄住金側は株主間協定に違反するとして、これを無効とすることを求め、訴訟を行った。
今回、同様の事態が発生した。
社長人事の推移は下記の通り。
就任 解任 2014/9 住金側主導で決定 (暫定)ホメル・ソウザ フリアン・エグレン Terniumが訴訟 2015/5 裁判所が是認判決 ホメル・ソウザ 2016/4 Ternium 主導で決定 セルジオ・アンドレーデ ホメル・ソウザ 住金側が訴訟 2016/10 裁判所が無効・復旧判決 ホメル・ソウザ セルジオ・アンドレーデ 2017/3 Ternium 主導で決定 セルジオ・アンドレーデ ホメル・ソウザ 2017/4 住金側が訴訟 付記 裁判所が却下
この間、Usiminas
は2016年4月に臨時株主総会を開き、10億レアル(約300 億円)の増資を承認した。
新日鉄住金は大幅増資を主張したのに対し、Terniumは、限定的な増資は受け入れるが、Usiminasの鉄鉱山会社 Mineração Usiminas S.A.(MUSA) のキャッシュの一部を流動性改善に充てるよう求めた。
両社は経営の重要事項を事前協議し、経営審議会や株主総会で協調する協定を結んでおり、採決での決着は異例である。
新日鉄住金側は他の株主が引き受けない場合、増資額の全額にあたる10億レアルを引き受ける意向であったが、協定株主は比率通りの引き受けを行った。
2017年3月時点の比率は次の通り。普通株 705万株
議決権 協定内 日本グループ合計 21.1 46.12 Ternium Group 19.8 43.31 Usiminas従業員年金基金 4.8 10.57 協定株主計 45.7 100.00 2016/4/25 Usiminas、300億円増資を承認
社長人事で大株主が何度も訴訟合戦をし、1年で3回も社長が交代するというのは異例中の異例である。両社の関係をなんとかしないと、企業の存続が危うくなる恐れがある。
承認は、「核オプション」(nuclear option)と呼ばれる禁じ手を使って行われた。
最高裁で保守色が強まるのは必至で、銃規制や人工妊娠中絶など、米世論を二分する問題を巡る司法判断に影響する可能性がある。
移民の入国を一時禁止する大統領令も裁判所が差し止めているが、今後は最高裁に上告すると思われる。
大統領は早速 Twitter を出した。
Congratulations to an exceptionally qualified and respected judge on his confirmation to the Supreme Court!
最高裁判事の定員は9人。昨年の保守派のScalia
判事死去により、現在は保守派4人(中道1人含む)、リベラル派4人と勢力が拮抗している。
トランプ大統領は公約通り、1月31日に保守的な信条で知られる
Neil Gorsuch 判事を指名すると発表した。就任すれば、保守派
5 対 リベラル派 4 に戻ることになる。
米上院司法委員会は4月3日、Gorsuch判事を11対9の賛成多数で承認した。
しかし、上院本会議では野党・民主党の抵抗は強く、承認に必要な60議席には達しない見通しである。上院(定数100)で与党・共和党は52議席を占めるが、民主党の議事妨害(フィリバスター)を打ち切って採決に持ち込むには60議席の賛成が必要になる。
フィリバスター制度は上院にだけある。与党の権力乱用を防ぐ措置として、1789年の上院設立以来認められてきた。
フィリバスターは本来は演説を長時間続ける手法であるが、現在では上院規則22条によりフィリバスターを宣言するだけでフィリバスターが有効とな り、演説を続けることは不要である。
会期末までフィリバスターの宣言を通すことができるため、意見調整が出来ない限り、多数派が法案成立を放棄せざるをえないことになる。審議打ち切りは当初、3分の2(67票)が必要であった。1975年の規則変更で5分の3(60票)となった。
今回、民主党がフィリバスターで抵抗し、審議打ち切りに本来必要な60議席の賛成は得られないのは確実なため、共和党は、51議席の賛成があれば承認できるようにする規則変更に踏み切った。
これは、多数派による強行採決が容易になることから、「核オプション」と呼ばれ、禁じ手とされている。
米上院は4月6日、トランプ大統領が連邦最高裁判事に指名したNeil Gorsuch 連邦控訴裁判事の人事を巡り、審議打ち切りの動議 (Motion to Invoke Cloture on the Nomination of Neil M. Gorsuch of Colorado, to be an Associate Justice of the Supreme Court of the United States)を賛成多数で可決した。 本件に関してのみ単純過半数の賛成で打ち切りを可能にする規則変更で、民主党員も3名が賛成した。
共和党 民主党 無所属 合計 賛成 52 3 55 反対 43 2 45 棄権 合計 52 46 2 100
これにより、4月7日、Neil Gorsuch 連邦控訴裁判事の最高裁判事就任を 54 対 45 の賛成多数で承認した。
共和党 民主党 無所属 合計 賛成 51 3 54 反対 43 2 45 棄権 1 1 合計 52 46 2 100
核オプションの行使により、議会で共和党と民主党の関係が一段と悪化することになる。
民主党のブルーメンソール上院議員は「核オプションと呼ばれるのは理由がある」と述べ「おそらく今後数年間、上院に非常に危険な死の灰が残ることになる」と警告した。
ーーー
民主党は2013年に下級審の判事や政府高官の人事について共和党の議事妨害を破るため規則を変更した。
但し、最高裁判事は終身制で影響力が大きいことなどから、最高裁判事の承認は規則変更の対象外とし、60議席の条件を維持した。
2013年にオバマ大統領が指名した公職者承認案のほとんどを共和党がフィリバスターで妨害した。
このため、民主党は2013年11月21日、手続き票決の可決定足数を60票から51票に引き下げる法案 (「核オプション」)を賛成52票、反対48票の僅差で成立させた。
当時、民主党は上院で55席(53席+民主系無所属2席)を占めているため、フィリバスターを防ぎ承認案を票決に付すことができるようになった。
但し、規則の条文はそのままとしたため、現時点ではフィリバスターを防ぐには60票が必要である。当時、共和党側は、変更は合衆国憲法で上院に与えられた指名人事への「助言、承認」機能を損なうものだとしていた。
日立製作所は4月5日、子会社の英国の原発事業開発会社の Horizon Nuclear Power が、英国Anglesey島のWylfa Newydd の原子力サイトライセンスを英国原子力規制庁(Office for Nuclear Regulation) に申請し、受理されたと発表した。
同社は2基のUK ABWR (英国向け改良型沸騰水型原子炉) の 2019年後半の建設開始、2020年代前半の初号機運転開始をめざして 開発を進めている。
サイトライセンスは、原子炉の建設および運営に関する英国原子力施設法に基づき、原子力規制庁から許可されるもので、今後、19 ヵ月間にわたる厳格な審査を通して、申請者のHorizon が規制義務を履行可能な適格な法人であること、建設予定地において安全に関る全ての作業を管理・統制し、これを実証できるかなどについて評価される予定 。
東芝が英中部Sellafield で合計出力360万キロワットの原発建設を予定しているNewGeneration (NuGen)の完全売却も視野に入れて、「引き続き出資者の募集や持ち分売却を検討する」としている のに対し、日立は着実に海外事業の拡大を進める。
2017年4月5日 英国の原発事業会社 NewGeneration
ーーー
日立製作所は2012年10月30日、英国で原子力発電所の建設を計画している原発事業会社Horizon Nuclear Power の全株式を、同社株主のドイツのエネルギー会社 No.1のE.ON 及びNo.2のRWE から買収する契約を締結した。買収額は6億7000万ポンド(約850億円)。
合わせて、建設プロジェクトの計画・推進に向け、英国で原子力業界有数のBabcock International、Rolls Royce、カナダの建設エンジニアリング会社SNC-Lavalin と協力覚書を締結した。
Horizon
は、北ウエールズのAnglesey島のWylfa
Newydd とSouth Gloucestershire のOldbury-on-Severn
の2カ所で、5,400MW級以上の原発(1,300MW級をそれぞれ
2〜3基)を建設する。
今回、Wylfa
Newydd での2基について申請したもの。
第三世代原子炉である改良型沸騰水型原子炉(ABWR)技術を用いる。
日立とGEのJVのGE Hitachi Nuclear Energyが高経済性・単純化沸騰水型原子炉(ESBWR:Economic Simplified Boiling Water Reactor)の設計認証を申請中だが、実績を優先した。
2012/11/1 日立製作所、英の原発会社買収
日本原子力発電(日本原電)は2016年7月7日、日立製作所及びHorizon
Nuclear Power との間で、Wylfa
Newydd で開発を進めているABWR の建設プロジェクトに関し、許認可段階における協力協定を締結した。
2016/7/9 日本原子力発電、日立の英国の原電事業に協力
日本政府は原発の輸出を促進するため、今後英国側と資金支援の詳細な検討を進める方針で、覚書では、日立傘下のHorizon Nuclear Power が英中部Wylfa Newydd で、東芝傘下のNuGenが英中部 Moorside(Sellafield)でそれぞれ計画する原発について言及した。
2016/12/27 日英、原発建設協力で覚書、日立・東芝の案件対象
2017/4/11 エネルギー供給構造高度化法に基づく石油精製業の原油等の有効利用の取組み
経済産業省は4月6日、エネルギー供給構造高度化法の「判断基準」に基づく、石油精製業者による原油等の有効利用の取組(残油処理能力の向上) の結果を発表した。
ーーー
経済産業省は2010年7月5日、通称「エネルギー供給構造高度化法」に基づき、告示を出した。
日本の重質油分解装置の装備率を2013年度までに10%から13%程度まで引き上げることを目標に基準を定め、引き上げを義務化した。処理期限は2014年3月末である。
2014/3/14 エネルギー供給構造高度化法 処理期限
この処理期限の2か月後の2014年6月に、経産省は、産業競争力強化法第50条に基づき、石油精製業に関する市場構造調査を実施し、
石油精製業は、@需要に見合った生産体制にする「設備最適化」やA総合エネルギー企業化も視野に入れた資本や地理の壁を越えた「事業再編」の早急な実施が必要であると結論付けた。
この結果を踏まえ、7月末にエネルギー供給構造高度化法の新たな判断基準を告示し、
対象となる石油会社に対して、「設備最適化の措置」と「事業再編の方針」を含む目標達成計画の提出を求め
るとともに、
残油処理装置の装備率(残油処理装置の処理能力÷常圧蒸留装置の処理能力)の2016年度までの改善を求めた。
2014年3月31日時点の平均45%程度の残油処理装置の装備率を 50%程度まで向上させることとし、各企業の目標改善率を下記の通りとした。
5%未満の場合 13%以上改善 45〜55%の場合 11%以上改善 55%以上の場合 9% 以上改善 平均 45%程度 50%程度まで向上
2014/7/4 経済産業省、2年続きで石油精製能力削減を強制
ーーー
2017年3月31日時点の各社の残油処理装置装備率は次の通り で、全社平均の残油処理装置の装備率は50.5%となり、「判断基準」で定める目標(50%程度)を達成した。
2014/3/31
の装備率目標改善率 2017/3/31
の装備率改善 JXエネルギー 46.20% 11%以上 51.20% 達成 東燃ゼネラル石油 35.90% 13%以上 40.60% 出光興産 51.50% 11%以上 57.20% 昭和シェル石油 59.40% 9%以上 64.80% コスモ石油 43.40% 13%以上 49.00% 富士石油 48.30% 11%以上 52.40% 未達
特例適用太陽石油 24.60% 13%以上 23.20% 特例 単一製油所で、対応により安定供給に支障が出る場合、残油処理装置の装備率の向上に準ずる措置による取組を認める。
事業再編については、JXホールディングスと東燃ゼネラル石油が2017年4月1日に合併し、JXTGグループとなった。
2016/9/2 JXホールディングスと東燃ゼネラル石油、経営統合の最終合意
2016/12/20 公取委、出光興産による昭和シェル石油の株式取得と JXホールディングスによる東燃ゼネラル石油の株式取得を承認
経済産業省は3月24日、産業競争力強化法第24条第1項の規定に基づく「事業再編計画」を認定した。
出光興産は2015年7月30日、昭和シェル石油の株式 33.24% を取得する株式譲渡契約を締結 、両社は2015年11月13日、経営統合に関する基本合意書を締結した。公取委の承認も受けたが、出光興産の創業家は合併に反対を続けており、見通しがつかないままである。
2015/8/3 出光興産と昭和シェル石油、経営統合で基本合意
統合に取り残されたコスモは2017年2月21日、販売会社のキグナス石油と資本・業務提携契約を締結、単独での生き残りを図る。2016/12/20 出光興産、シェルから昭和シェル株式取得
2016/12/20 公取委、出光興産による昭和シェル石油の株式取得と JXホールディングスによる東燃ゼネラル石油の株式取得を承認
ーーー
残油処理装置の装備率(残油処理装置の処理能力÷常圧蒸留装置の処理能力)の改善には、残油処理装置の処理能力の増加 and/or
常圧蒸留装置能力の減少が必要である。
後者については前回は廃棄が条件であったが、その直後のことでもあり、公称能力の削減(減産)も認めた。
実際に全社が公称能力の削減(減産)である。下記(単位:千バレル/日)は各社の発表又はホームページ記載の能力である。
1) JX
コンデンセートスプリッター含む能力(下記の*)が公称能力
大阪国際石油精製
はPetroChinaとのJVで、輸出型製油所
(装備率計算にはこれも含める)
社名 | 製油所 |
第一次 |
今回 |
||||||
処理前 | 処理 | 2014/3 | 処理前 | 処理 | 処理後 | ||||
一般 | * | ||||||||
鹿島石油 | 鹿島 | 210 | -21 | 189 | 252.5 | 274 | -76 | 197 | |
日本海石油 | 富山 | 60 | -60 | 0 | |||||
ジャパンエナジー | 水島 | 205.2 | 205.2 | 240.2 | 380 | -60 | 320 | ||
新日本石油精製 | 水島 | 250 | -110 | 140 | 140 | ||||
室蘭 | 180 | -180 | 0 | ||||||
仙台 | 145 | 145 | 145 | 145 | 145 | ||||
根岸 | 340 | -70 | 270 | 270 | 270 | 270 | |||
大阪 | 115 | -115 | 0 | ||||||
麻里布 | 127 | 127 | 127 | 127 | -7 | 120 | |||
大分 | 160 | -24 | 136 | 136 | 136 | 136 | |||
合計 | 1,792.2 | -580 | 1,212.2 | 1,310.7 | 1,332 | -143 | 1,188 | ||
大阪国際石油精製 | 大阪 | 115 | 115 | 115 | 115 | 115 |
2) 東燃ゼネラル
社名 | 製油所 |
第一次 |
今回 |
|||||
処理前 | 処理 | 2014/3 | 処理前 | 処理 | 処理後 | |||
東燃ゼネラル石油 | 川崎 | 335 | -67 | 268 | 258 | -23 | 235 | |
堺 | 156 | 156 | 156 | -21 | 135 | |||
和歌山 | 170 | -38 | 132 | 132 | -4.5 | 127.5 | ||
極東石油 | 千葉 | 175 | -23 | 152 | 152 | -23 | 129 | |
合計 | 836 | -128 | 708 | 698 | -71.5 | 626.5 |
* 極東石油 は2015年東燃ゼネラル石油に吸収合併
川崎は2015/3に -10
3)昭和シェル石油
社名 | 製油所 | 第一次 | 今回 | |||||
処理前 | 処理 | 2014/3 | 処理前 | 処理 | 処理後 | |||
昭和四日市石油 | 四日市 | 205 | +50 | 255 | 255 | 255 | ||
西部石油 | 山口 | 120 | 120 | 120 | 120 | |||
東亜石油 | 京浜 | 70 | 70 | 70 |
-5 |
65 | ||
昭和シェル | 扇町 | 120 | -120 | 0 | 0 | |||
合計 | 515 | -70 | 445 | 445 |
-5 |
440 |
4) 出光興産
社名 | 製油所 |
第一次 |
今回 |
|||||
処理前 | 処理 | 2014/3 | 処理前 | 処理 | 処理後 | |||
出光興産 | 北海道 | 160 | 160 | 160 | -10 | 150 | ||
千葉 | 220 | 220 | 220 | -30 | 190 | |||
愛知 | 175 | 175 | 175 | -15 | 160 | |||
徳山 | 85 | -85 | 0 | |||||
合計 | 640 | -85 | 555 | 555 | -55 | 500 |
5) コスモ石油
社名 | 製油所 |
第一次 |
今回 |
|||||
処理前 | 処理 | 2014/3 | 処理前 | 処理 | 処理後 | |||
コスモ石油 | 千葉 | 240 | 240 | 220 | +20 | 240 | ||
四日市 | 155 | -43 | 112 | 132 | -47 | 85 | ||
堺 | 100 | 100 | 100 | 100 | ||||
坂出 | 140 | -140 | 0 | |||||
合計 | 635 | -183 | 452 | 452 | -27 | 425 |
6) 富士石油
社名 | 製油所 |
第一次 |
今回 |
|||||
処理前 | 処理 | 2014/3 | 処理前 | 処理 | 処理後 | |||
富士石油 | 袖ヶ浦 | 195 | -52 | 143 |
143 |
143 |
7)太陽石油:
太陽石油の残油流動接触分解設備 (日量 25千バレル)は2010年の告示発表時点では既に建設中で、装備率20.8%は改善後の各社よりも高い。
社名 | 製油所 |
第一次 |
今回 |
|||||
処理前 | 処理 | 2014/3 | 処理前 | 処理 | 処理後 | |||
太陽石油 | 四国 | 118 | 118 | 118 | 118 |
中国政府は4月1日、河北省に副都心「雄安新区」(Xiongan New Area)を設置すると発表した。
北京市、天津市、河北省の一体化を目指すプロジェクトの具現化で、首都としての北京市への権益の一極集中や社会インフラへの圧迫を緩和する狙いもある。
「雄安新区」は北京と天津と保定に囲まれた河北省の雄県、容城、安新の3県とその周辺地域で構成される。深圳経済特区、上海浦東新区に続く全国的な意味合いを持つ新区という位置付けで、初期の開発面積は約100平方キロメートル、将来的には2000平方メートルが開発される。
雄安新区は一般的な意味での新区ではなく、「北京の非首都機能を分散させる上での集中受け入れ地であり、首都を中核とした世界レベルの都市クラスターの配置、北京・天津・河北の空間構造の調整において重要な役割を果たすことになる」 とされる。
シンガポール紙は、「中国は、深圳経済特区を設立して改革開放をスタートさせ、1992年の上海浦東新区設立で対外開放を世界に向けて全面的に始めた。雄安新区が担う戦略的使命として北京の水不足、大気汚染、渋滞問題などの緩和、政治経済が北京に集中していることに関するリスク分散、改革新時代のスタートなどである」としている。
付記
Sinopecは7月25日、51億ドルを投じて鄂爾多斯 - 安平 - 滄州 パイプラインを建設すると発表した。
雄安新区に年間300億m3のLNGを供給する。これは6千万トンの石炭に相当し、温室効果ガスの減少に貢献する。
当初は輸入LNGと河南省のガスを供給、長期的には内モンゴル、陕西省、山西省の石炭ガス、炭層ガス(coal bed gas)などを供給する。
中国の改革開放の中で、さまざまな「区」が次々に誕生している。
現在 | ||
経済特区 | 7 | 1979年 深圳、珠海、汕頭、廈門 1988年 海南 2011年 喀什(カシュガル)、霍尓果斯(ホルコス) |
開発区 | 219 | |
高新区(ハイテク産業開発区) | 145 | |
国家級新区 | 19 | 上海浦東新区 天津濱海新区 重慶両江新区、浙江舟山群島、 甘粛蘭州新区、広州南沙新区、陝西西咸新区、貴州貴安新区、 青島西海岸新区、大連金普新区、ハルビン新区、湖南湘江新区など 2017年 河北雄安新区 |
自由貿易区 | 11 | 上海自由貿易区など |
東芝は4月11日、監査法人による「結論の不表明」のまま、第3四半期決算を発表した。
主にCB&I ストーン・アンド・ウェブスター社の買収に伴うのれんに係る損失 7,166 億円を計上したことにより、2016年度第3四半期連結累計期間の営業損失は 5,763 億円、株主に帰属する四半期純損失は5,325 億円になった。この結果、2016 年12 月31 日現在の連結株主資本は△2,257 億円、連結純資産は 299 億円になった。
PwCあらた有限責任監査法人は、東芝の決算報告の内容が適正かどうかについて、「結論の表明の基礎となる証拠を入手することができなかった」という異例の意見表明をした。
根拠は以下の3点。
1)Westinghouseが巨額の損失の具体的な数値を算定する過程で、一部経営者による「不適切なプレッシャー」があったとの問題で東芝の監査委員会が調査を実施したが、監査法人としてはその結論が正しいかどうか納得せず、「評価を継続中」。
2)監査委員会は、巨額の損失の計上時期を2016年第3四半期と結論づけたが、監査法人は、当該損失を認識すべき時期がいつであったかをチェック中。
もっと以前から損失を認識していたが、それを適正に決算処理していなかったのではないかとの疑問が解消されていない。
監査法人は2016年4〜6月期と7〜9月期決算について、「適正」意見を取り消したと報道されている。
3)そのほかにも当監査法人の評価が終了していない調査事項があり、これらの影響についても、確定できていない。
そのうえで、東芝について「継続企業の前提に重要な疑義を生じさせるような事象または状況が存在しており、現時点では継続企業の前提に関する重要な不確実性が認められる」と指摘している。
これに対し、東芝は同日、本件に関し調査に当たった監査委員会の見解を発表し、監査法人の懸念をすべて否定した。
1)本件損失に係る調査において、損失認識時期が問題となる証拠は発見されていない。
調査の過程で、一部経営者について、限定された範囲・期間で不適切なプレッシャーとみなされ得る言動が認められたが、東芝及びWestinghouseの内部統制は有効に機能しており、財務諸表に影響を与えなかったと判断している。
この一部経営者については、Westinghouseの経営に関与させない等、抜本的な措置を講じることを執行側に要請し、改善措置の実施を確認している。
2)監査委員会としては、2016年12月以前に財務諸表に織り込むことができる程度の確度をもって損失を認識し得たとの証拠は認めらず、本件損失を認識し得たのは早くとも2016年12月以降。
東芝およびWestinghouseの役員・従業員、合計15名に対してインタビューを実施するとともに、これらの役員・従業員らの電子メールのデジタルフォレンジック調査を実施した結果、2016年12月以前に財務諸表に織り込むことができるような 確度をもって本件損失を認識しえたとの証拠は認められませんでした。
ーーー
しかし、巨額の損失が2016年12月まで全く分からなかったということの方が不思議である。事態は当初から変わっておらず、巨額損失の原因が急に出現したわけではない。
Westinghouseは2015年にS&WをCB&I
から、建設の遅れについては責任を一切免責する(to
get a "complete end to responsibility or liability")という条件で無償で買収した。
(既報の229百万ドルは、建設完成後の報酬と機器引き渡しなど事後にCB&Iが実施するものの対価である)
また、原発の発注元の電力会社との間では、S&W買収と同時に、コスト増のうちの電力会社負担分で合意しており、それ以上の求償できない。
このため、工事完成までのコストアップ分は全てWestinghouseが負担せざるを得ないこととなる。
WestinghouseはS&Wと一緒に事業を行っており、実態は熟知している筈である。
完成まで、どれだけ遅れるかは当然知っている。
電力会社との裁判を通じて、これまでのコストアップや今後の追加コストについても知っている筈である。
電力会社への追加請求ができないことも、自身が和解の当事者であるため知っている。
この時点で東芝は87百万ドルの「のれん」を想定していたが、これは余りにも少なすぎる。取引の承認を得るための一部経営者による「不適切なプレッシャー」があった可能性も考えられる。
監査委員会は、どういう計算で買収を決めたのかを調べる必要があるのではないか。
また、東芝の2016年8月12日の発表によると、S&Wの買収契約には下記の「価格調整条項」がある。
購入契約上、CB&Iは S&B の運転資本額として1,174百万ドル相当額を計上した状況で株式を譲渡する義務を負う。
買収完了後に運転資本額を精査し、運転資本額がこれを下回った場合は、差額をCB&Iが支払い、
逆に、上回った場合は、差額をCB&Iに支払うこととなっている。見解に相違があった場合は、第三者の会計士が判断する。
この発表によると、Westinghouse では、これに基づく算定結果を含む書面をCB&Iに提出していたが、CB&Iは7月21日に、第三者会計士へ判断を委ねることの差し止めを求めデラウエア州公衡平法裁判所に行った。
東芝は一切触れていないが、CB&Iによると、CB&Iは運転資本の算定の結果として16億ドル(基準を428百万ドル上回る)であると報告したが、Westinghouseは
976.5 百万ドルのマイナスであるとし、差額の21.51億ドルを請求したという。
おそらく、Westinghouseはこの時点では損失を認識し、これをマイナスの運転資本額として、差し引き20億ドルを請求したと思われる。
CB&IはS&Wの売買契約の免責条項を理由にこれを拒否し、裁判所に提訴した。
2017/1/24 東芝の原子力事業の損失の実態
デラウエア州公衡平法裁判所の裁判はどうなっているのだろうか。裁判が始まれば、東芝の主張が明らかになる。
監査委員会はこの件を調べたのだろうか。
2016年12月に巨額の赤字は初めて分かったとするが、どういう経緯で分かったのだろうか。
監査委員会の発表だけでは納得はできない。
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このままでは、本決算の監査で「適正」意見が得られる保証はない。監査法人の差し替えも「選択肢」とされるが、簡単ではなく、間に合わない。
東芝は過去の不正会計問題で東証から「特設注意市場銘柄」に指定されており、上場が適当かどうかの審査が行われている。上場廃止リスクが高まった。
東芝は3月30日、臨時株主総会で、半導体事業を分社化して売却する計画を3分の2以上の賛成で承認を受け、4月1日に半導体事業の新会社「東芝メモリ」を発足させた。
東芝メモリの売却先を決める入札手続きは3月29日に締め切られ、海外のファンドや競合企業など約10社が応札した。
このうち、有力とされるのは、米半導体大手のBroadcom Ltd.、東芝の四日市工場で半導体事業に共同投資する米Western Digital Corp、シャープを傘下に持つ台湾の鴻海精密工業(Foxconn)、半導体大手の韓国SK Hynix の4陣営とされる。Broadcomは米ファンドのSilver Lake Partners と連合を組んでいる可能性がある。
Wall Street Journal によると鴻海は3兆円のオファーをしたとされる。
しかし、半導体事業に共同投資する米Western Digital が東芝メモリの入札にクレームをつけた。
Western Digital (が買収したSanDisk)は、東芝の主力製品であるNAND型フラッシュメモリ事業に関する提携を行っており、実質折半出資のJVが東芝の工場の建屋内に設備を所有し、生産を行い、製品を折半で引き取っている。(後記の通り、一部生産ラインの約3割は東芝がJVから取得し、単独で運営している) これまで日本に90億ドルもの投資をしたという。
Western Digital は、これがあるために190億ドルという多額の金額でSanDiskを買収したと言える。
東芝の取締役会宛ての4月9日付の同社CEOのレターで、東芝メモリの分割がJV契約の重大な違反であるとしている。入札手続きは東芝の株主の利益にならないとし、独占交渉を求めている。
付記
東芝はWestern Digital の持ち株を東芝メモリに譲渡したが、JV契約では、事業譲渡には双方の同意が必要となっており、現状は違反。破産の場合を除き、契約は法的拘束力を持つ。
準拠法はカリフォルニア州法。
噂に挙がっている候補は適当でないとし、特にBroadcomについて最近の取引を基に重大な懸念を示している。さらに噂される2〜3兆円の金額はチップ事業の公正な価値を上回るものだとしている。
Western Digital Corp が東芝とのJVの相手となったのは2016年5月で、それまではSanDisk Corporationが相手であった。
SanDisk と東芝は1999年10月7日、次世代の大容量NAND型フラッシュメモリの共同開発と、製造合弁会社を設立することで基本合意に達した。(その後の経緯は後記の通り)Western Digitalは大手ハードディスクメーカーであったが、2015年11月21日、フラッシュメモリ製品メーカーのSanDisk を190億ドルで買収することで合意したと発表した。
2016年5月12日に買収が完了し、SanDiskはWestern Digitalの完全子会社となった。
それ以来、両社の技術者が詳細な情報を共有して最先端の製造プロセスを開発してきた。(2014年時点でSanDisk技術者 約600名が四日市工場に駐在)
東芝の事情だけで簡単に合弁契約を解除することはできない。東芝メモリを同社の意向に反する企業に売却することも難しい。
東芝は債務超過の解消のため、できるだけ高い金額での売却を望んでいるが、3兆円のオファーをしたとされる鴻海については中国との関係で日本政府が認めない可能性がある。
さらに今回のWestern Digital の主張は、東芝にとって深刻である。Western Digital との独占交渉では、売却価額はかなり低いものとなると思われる。逆に他社を選んだ場合、JV契約違反で裁判になると、短期の解決は考え難い。売却相手によっては独禁法の問題も生じる。
東芝がこれまでJV相手のWestern Digital と話をしていなかったのは不思議である。
東芝の再建に新たな問題となる。
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東芝とSanDiskのJVの経緯は次の通り。
1999/10/7 | NAND型フラッシュメモリ事業に関する提携で基本合意 ・次世代の大容量フラッシュメモリ(512メガビット、1ギガビット)及びSDメモリーカード用コントローラの共同開発 ・折半出資による製造合弁会社の設立と、東芝の国内外のメモリ生産拠点を活用した両親会社への製品の供給 |
2000/5/10 | NAND型フラッシュメモリの製造合弁会社の設立 社名:FlashVision LLC 立地:バージニア州(東芝子会社Dominion Semiconductor内に700億円の設備投資) 出資比率、製品引取比率:50/50 |
2000/9 | 業界最大容量512メガビットNAND型フラッシュメモリの商品化決定 2001/7からDominion Semiconductor内で生産 |
2001/12/18 | 東芝の半導体メモリ事業の構造改革 Dominion Semiconductorの設備を2002/1にMicron Technology Inc.に売却 半導体メモリ事業に関する技術、生産管理などの本社機能を、2002/6月末までに四日市地区に集結 四日市工場をメモリ事業の世界拠点に |
2002/4/12 | 「フラッシュビジョン」(50/50JV 旧:Flash Vision
LLC)を東芝四日市工場内に移転 NAND型大容量フラッシュメモリ(512メガビット、1ギガビット、2ギガビット)の製造 |
2003/12/3 | NAND型フラッシュメモリの生産能力増強 300mmウェハー対応の製造ラインを共同で導入 製造は、両社の合弁会社フラッシュビジョン 投資総額は約2000億円 |
2004/4/13 | 四日市工場における最先端のNAND型フラッシュメモリ製造棟(第3クリーンルーム棟)の建設 Flash Partners 東芝:50.1%、SanDisk:49.9% |
2005/2/21 | 東芝四日市工場における300ミリウェハー対応新製造棟の竣工 2007年前半には月産40,000枚 |
2006/4/5 | NAND型フラッシュメモリの生産能力増強 四日市工場内に300ミリウェハー対応の新製造棟(第4製造棟)を建設 製造設備はFlash Alliance(東芝:50.1%、SanDisk:49.9%)が導入、2008年後半には月産8万枚 |
2008/6/16 | 四日市工場200mmウェハ製造ラインの再構築 200mmウェハラインの生産活動を終了し、保有設備を移設、売却 |
2008/10/20 | 改組 これまで:第3、第4製造棟で、両社の合弁会社を通じて、共同生産(折半出資、均分引取) 今後:第3、第4製造棟の生産ラインの約30%を東芝単独で運営 残りの約70%については、引き続き、合弁会社形式で共同生産し、生産能力を両社で均分。
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2011/7/12 | 四日市工場でNAND型フラッシュメモリ新製造棟(第5製造棟)を竣工 設備投資は、2010年9月設立のフラッシュフォワード社(東芝 50.1%、SanDisk 49.9%) |
2014/5/14 | 四日市工場第2棟を建て替え 2015年夏に竣工、NAND型フラッシュメモリ(3Dメモリ)の専用設備を設置する拡張スペースを確保 2015/10 両社共同で設備投資を実施する正式契約を締結。3次元フラッシュメモリの生産体制を構築。 2016/7 竣工 |
2014/9/9 | 四日市工場の第5製造棟(第2期分)の竣工 15nmプロセスを採用した製品の量産 |
2016/5/12 | Western Digital によるSanDisk 買収完了 東芝のJV相手はWestern Digital に。 |
2014年9月の竣工式でのSanDiskのCEOのスピーチ:
東芝とSanDiskは、日本と米国をつなぐお手本ともいえる取り組みであり、半導体業界のなかで最も成功を収めた協業である。15年間の協業によって、フラッシュメモリを11世代も進化させてきた。四日市工場は、300mmウエハの製造工場を3棟持つ、世界最大レベルの工場であり、SanDiskは、90億ドルの投資を行っており、日本に対して、最大の投資を行っている米国の企業だともいえる。
現在、日本にはSanDiskの社員として600人以上のエンジニアを有しており、今回の第5製造棟第2期分の稼働により、15nmプロセスの新たな技術へと進むことができる。さらに今後は、既存の製造拠点にも磨きをかけて最先端技術を展開していく。
2017/4/15 日本原子力発電、米社と原発の保守や運転を手掛けるJVを設立
日本原子力発電(日本原電)は4月13日、米国の電力大手Exelon
Corporationと、原発の保守や運転を手掛ける折半出資の合弁会社
JExel Nuclear を日本で設立したと発表した。
日立製作所の英国子会社のHorizon Nuclear Power が英国Anglesey島のWylfa Newydd で進めている原発プロジェクトに対し、運転保守に係るアドバイザリー業務を実施する。
Horizon Nuclear Power は、2基のUK ABWR (英国向け改良型沸騰水型原子炉) の 2019年後半の建設開始、2020年代前半の初号機運転開始をめざして 開発を進めている。
2017/4/10 日立の英国の原発計画は 前進
日本原電は2016年7月7日、日立製作所及びHorizon Nuclear Power との間で、Wylfa Newydd でのABWR の建設プロジェクトに関し、許認可段階における協力協定を締結した。
2016/7/9 日本原子力発電、日立の英国の原電事業に協力
今回のJVは、操業開始後の運転保守に係るアドバイザリー業務を受託する。日本原電の長年に亘る原子力発電所の運転経験により培った技術力と、Exelon の優れた安全性と高い稼働率を実現させる運転管理モデル(Exelon Nuclear Management Model:ENMM)を活用する。
国際標準である米規制基準に沿ったExelon の原発運転技術などを取り入れるもので、JExel NuclearがExelon に技術供与の対価を支払う形になるとみられる。
ーーー
日本原電は、日本における原子力専業会社として 1957 年に設立された。日本における最初の商業用原子力発電所の建設や、その後の運転、廃止措置を含め、日本の原子力発電のパイオニアとしての役割を担ってきた。
同社の原発の状況は下記の通りで、再稼働の見通しは立っておらず、計画中のものの実現の可能性は少ない。
発電所 | 号 | 運転開始 | 型式 | 能力 万KW |
状況 |
東海 | 1 | 1966/7/25 | 英国製黒鉛減速ガス冷却炉 | 16.6 |
1998/3/31運転終了 2020年度に廃炉解体終了予定 |
2 | 1978/11/28 | BWR | 110.0 | 2014/5/20 再稼働申請 PWR優先で審査停滞 |
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敦賀 | 1 | 1970/3/14 | BWR | 35.7 | 2015/3/17 廃炉決定 |
2 | 1987/7/25 | PWR | 116.0 | 2013/5/27 敦賀2号機直下の断層を活断層と断定 2014/11/5 再稼働申請 活断層断定で申請は初 |
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3 | 計画中 | APWR | 153.8 | 見通しなし | |
4 | 計画中 | APWR | 153.8 |
このため、海外展開に活路を探るが、これまではアジアなどの小規模なコンサルティングにとどまっている。
今回、Exelon と組むことで、アジアを中心とした海外展開を有利に運びたい考え。
なお、同社はこのほかに、原発の廃炉作業を支援する廃炉ビジネスを目指している。
同社は2016年4月20日、米国の廃炉専門会社であるEnergySolutions, Inc. との間で、敦賀1号機廃炉の効率的な遂行に向け、同社の有するノウハウを取得し、活用することで合意した。
将来の廃炉ビジネスに向け、事業の共同化の協議を行う。
Exelon Generation, LLC は、米国最大級の電力会社で、米国とカナダで事業を展開している。
原子力、ガス、風力、太陽光、水力で 33,300 メガワット以上の発電能力を有しており、原子力部門では、米国で23基の原発(BWR14 基、PWR9 基)を所有し、独自の運転管理モデルを用いて、優れた安全性と高い稼働率を実現させている。
最新分は http://blog.knak.jp