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これは下記のブログを月ごとにまとめたものです。

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2020/11/16 インドを除く15カ国、東アジア地域包括的経済連携(RCEP)に署名

東アジア地域包括的経済連携(RCEPRegional Comprehensive Economic Partnership)交渉に参加する日中韓、ASEAN 10か国、豪州、NZの15カ国は11月15日、ハノイでテレビ会議形式で首脳会合を行ない、協定に合意し、署名した。

付記

タイは2021年2月9日、国会で承認
中国は2021年3月8日、正式に承認した。

2021年4月28日 参院本会議で承認された。

付記

協定はASEAN10カ国の過半数と他の5カ国の過半数が、それぞれ国内手続きを終えてから60日後に発効する。

既に、シンガポール、ブルネイ、タイ、カンボジア、ベトナム、ラオス(6カ国)、中国、日本(2か国)が完了しているが、2021年11月に豪州とNZが国内手続き終了、2022年1月1日にRCEPが発効する

付記 韓国が2021年12月3日、批准書を寄託、60日後の2022年2月1日に発効する。日本/韓国間で初めてFTA。

当初の16か国からインドが抜けた。RCEPは発効後18カ月間、新規の加入を認めないが、インドには特例を設け、復帰を希望すればいつでも参加を認める

発効すれば世界のGDPや貿易額の3割をカバーするアジア圏最大のFTAとなる。日本にとっては主要貿易相手である中国、韓国と初めて結ぶ貿易協定でもある。

日本から中国に輸出する自動車や自動車部品への関税が幅広く削減・撤廃になるほか、日本の清酒や焼酎などの関税も段階的に撤廃される。

10年〜20年かけて減らすものが多い。

日本の農家への影響が大きいコメ、麦、牛肉・豚肉、乳製品、砂糖の「重要5品目」は、関税の削減・撤廃の対象としない。

日本が輸入する農産品への関税の撤廃率は、対中国で全体の56%、対韓国で49%と、TPPの82%より低い水準にとどまる。

関税の削減・撤廃に加え、電子商取引や知的財産など計20分野で共通ルールを策定する。

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RCEPは2013年から日中韓のほか、東南アジア諸国連合(ASEAN)やインド、豪州、NZの16か国が交渉を進めてきた。

2017年11月の首脳会合では、経済発展の度合いごとに「特別かつ異なる待遇」を設けることや、各国の政策に配慮することとした。 「現代的・包括的で、質が高く互恵的な協定を達成する」という目標を掲げた。

一般的な自由貿易協定(FTA)に盛り込まれる章のほかには、インドが重要視する域内の自由な人の移動を保障する「人の移動章」や、日本が重視するデータの自由な流通を促す「電子商取引章」が盛り込まれた。

ASEANの一部の国は中国と歩調を合わせ、議論を関税引き下げに絞って年内妥結に導こうとしたが、日本はオーストラリアなどは、貿易・投資ルールを含め質の高い協定を目指した。

2019年11月、16カ国は目標としていた年内妥結を断念した。大部分の交渉にめどをつけたが、貿易赤字の拡大を懸念するインドが関税撤廃などで慎重姿勢を崩さなかった。
インドは会合後に「RCEPに今後参加しないと各国に伝えた」と交渉からの離脱も示唆した。

中国製品の流入急増による貿易赤字拡大が最大の懸念とされる。インドの貿易黒字は1972年が最後で、2018年は過去最大の貿易赤字(1,897億ドル)を記録した。首脳会議期間中,インド国内では反RCEP活動が全国的に拡大した。

インドは物品貿易交渉で妥協を迫られる一方,競争力があり,攻める側に立つサービス貿易に関して,特にIT人材の移動等を強く求めたのに対し,他の参加国は消極的であったことから,物品とサービスとで釣り合いが取れないことに不満を募らせた。

2020年8月の閣僚会合でも、11月に予定される首脳会議での署名を目指し、交渉が続いたが、インドは欠席した。各国はインドに対して今後も交渉に復帰するよう働きかけることを確認した。

インドを除く15カ国は11月11日にテレビ会議形式で閣僚会合を開き、詰めの協議をした。

交渉から離脱したインドがほぼ無条件で即時加入できることを規定した特別文書を採択することとした。中国の台頭をにらみ日本が主導したとされる。

 


2020/11/17   三井化学と三井物産、本州化学にTOB  

三井化学三井物産は11月11日、共同TOBにより本州化学工業 (東証2部上場)の普通株式を 全株取得すると発表した。

両社は現在、本州化学にそれぞれ26.99%出資しているが、TOBによる非公開後の出資比率を三井化学が51%、三井物産が49%とする。

TOB価格は1株1,830円。

11月11日の終値は 1,283円であった。

SMBC日興証券の各手法による株式価値の範囲:
 
市場株価法:1,213円〜1,281
 DCF法:1,718円〜2,082

付記

日本、欧州、中国、台湾及びトルコの競争法に基づく手続きが充足できたため、2021年5月17日からTOBを開始する。

 

本州化学は、191411月に由良浅次郎らが設立した由良精工合資会社を前身とする。欧州からの輸入が途絶えた染料を自製するため、日本で初めてアニリン及び合成フェノールの工業化に成功し、現在の和歌山市小雑賀において本格的な生産を開始した。

1953年に会社更生法の適用を受けるが、三井物産の前身の一つの第一通商の全面的な支援のもと、1956年3月に会社更生手続を終結した。
途中、
195510月に社名を現在の「本州化学工業」に改称した。

1959年に日本で初めてビスフェノールAを国産化し、1967年には世界で初めて合成クレゾールを工業化した。
1988年に主力製品であったビスフェノールA事業を三井石油化学工業に譲渡

1980年に多品目を切り替え生産できるプラントを建設し、独創的でニッチな製品へと注力分野のシフトを加速し、ファインケミカルスペシャリストを標榜する研究開発型企業へと大きく舵をきった。

2001年には、特殊ビスフェノールの生産増強を目的として、ドイツに合弁会社Hi-Bis GmbHを設立し、2014年には、第二期プラントが稼働した。

社名 Hi-Bis GmbH
事業 特殊ビスフェノールの製造販売
場所 ドイツ ザクセン・アンハルト州ビッターフェルド市
株主 本州化学 55%、三井物産 35%Bayer 10%
設立 2001/11
能力 5千トン 2014年に第二期プラント
備考 自動車部品、超高密度DVD等に用いられる特殊ポリカーボネート樹脂原料
全量バイエル向け

現在の事業:

    2020/3月期実績 (億円)
売上高 営業損益
化学 ビフェノクレゾール誘導品等 97 10
機能材 電子材特殊ビスフェノール等 58 9
工業材 主にHi-Bisの特殊ビスフェノー受託品等 53 19
その他   4 0
全社   - -8


最近の業績:

単位:億円 (配当:円)

  売上高 営業損益 経常損益 株主帰属
当期損益

 配当

中間 期末
2019/3 208 31 30 18 10 18
2020/3 213 30 30 17 12 20
2019/9 94 10 10 4 12  
2020/9 97 18 18 11 12  
2021/3予 200 25 24 14 12 20

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買収する三井化学、三井物産と本州化学との関係は下記の通り。

  三井化学(三井石油化学) 三井物産(第一通商)
    前身の第一通商が原料供給、製品販売
1953   会社更生法からの再建支援、出資(20.91%)
 以降、複数回の第三者割当増資、複数回の譲受、譲渡
1959 本州が三井石油化学にフェノール供給開始
 以降 アニリン、BPA等を三井グループに供給
 
1968 三井石油化学、本州株式7.78%を東レから取得
 以降、第三者割当増資、少数株主から譲受
 
1987 三井物産から本州株式譲受(→30.98%) 三井物産に本州株式譲渡(→30.98%)
1988 三井石油化学がビスフェノールA事業を譲受
三井石油化学のファインケミカル技術者を移管
 
現状 本州の増資により出資比率26.99% 本州の増資により出資比率 26.99%
フェノール及びメタ・パラ・クレゾールの主要販売先 原料供給、製品販売、新規事業開発支援

 


2020/11/18 アンジェス、ゲノム編集の米社を買収 

大阪大学発のバイオ企業アンジェスは11月9日、ゲノム編集技術に強みを持つ米国のEmendo Biotherapeutics (EmendoBio) を2億5000万ドル と評価して買収すると発表した。
すでに同社の発行済み株式の約4割を保有しており、12月15日付で追加取得し、完全子会社化する。

買収の概要は下記の通りで、一部はEmendoの現金 (一部アンジェスが融資)で支払うが、残りはアンジェスの増資株式で支払われる。

Emendoの株式価値 295百万米ドル    企業価値 250 + 現金  45
うちアンジェス所有分 103百万米ドル  
差引 買収分 192百万米ドル  
     
うち 現金払い 59百万米ドル   オプション行使格相当額を控除
残り アンジェス株株式 129百万米ドル   ワラント行使価格相当額を控除

Emendo は、イスラエルを代表する総合的な基礎研究機関であるワイツマン科学研究所の科学者によって 2015 年12 月に設立された。研究開発は主にイスラエルにおいて行われている。
設立後、CRISPR/Cas9 システムを用いたゲノム編集技術を発展させ、既存のゲノム編集技術の課題を解決し、より安全に医療への応用を可能とする次世代のゲノム編集技術の研究開発に取り組んで いる。

Emendoの主要株主は次の通り。

アンジェス 40.04%
OrbiMed Israel Partners II, LP 22.50%
Takeda Ventures Inc. 13.72%

アンジェスは、究極の遺伝子治療技術となる可能性のあるゲノム編集の分野についても進出したいと考え、ゲノム編集技術の開発ベンチャー企業であるEmendo に総額 54 百万米ドル を投資した。更に2020年に追加で50百万ドルを出資して合計4割とし、持分法適用関連会社としている。

Emendoは2019年4月24日、 武田薬品工業とのライセンスオプション契約締結を発表した。この取引の一環としEmendoは武田ベンチャー投資から投資を受ける。

ライセンスオプション契約により、武田薬品にはEmendoの特許である2つの遺伝子を編集するヌクレアーゼ・プログラム、OMNI使用のオプションが付与される。さらにEmendo は、武田が選択した遺伝子に高特異性と活性を持たせるためにオムニ・ヌクレアーゼを最適化する新型の遺伝子編集工学プラットフォームを使用する。

アンジェスによる買収後もEmendoは武田薬品とがん治療分野で共同開発を続ける。

ーーー

アンジェスは大阪大学医学部の森下竜一助教授による研究成果を基に1999年に設立され、マザーズに2002年に上場した。

同社は2019年3月に、「標準的な薬物治療の効果が不十分で血行再建術の施行が困難な慢性動脈閉塞症(閉塞性動脈硬化症及びバージャー病)における潰瘍の改善」を効能・効果とする「コラテジェン筋注用4mg」を条件付きで承認を受けた。

プラスミド(大腸菌などの細菌や酵母の核外に存在し、細胞分裂によって娘細胞へ引き継がれるDNA分子の総称)に、血管を新生する作用を持つHGF(肝細胞増殖因子)遺伝子を組み込み、それをベクターとして虚血部位に注射することで、細胞内で遺伝子が発現、血管新生が促され血流が確保されて潰瘍を改善するとされる。

2019/2/22 厚労省部会、国内初の遺伝子治療2品目の承認を了承

アンジェスは本年3月に、上記の実績をもとに大阪大学と共同で新型コロナウイルス対策のための予防用DNAワクチンの開発を行うことを決定した。

新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)のゲノム配列に基づき、ウイルスのスパイク蛋白質の遺伝子を導入したプラスミドDNA(環状のDNA)を設計し、このプラスミドDNAを産生する組換え大腸菌を確立し、GLP試験に使えるDNAワクチンの原薬を製造した。

2020/5/22    アンジェスの新型コロナウィルス向けDNA ワクチン開発

 遺伝子治療用製品では、遺伝子を組み込んだベクターを導入して、欠損した遺伝子を補充したり、必要な遺伝子機能を増強する方法が行われてき たが、近年、特定の遺伝子を特異的に切断、編集、改変するゲノム編集技術により特定の遺伝子の機能を失わせたり、疾患の原因となっている遺伝子の異常を修正する方法が開発されてきた。

Emendo は設立後、CRISPR/Cas9 システムを用いたゲノム編集技術を発展させ、既存のゲノム編集技術の課題を解決し、より安全に医療への応用を可能とする次世代のゲノム編集技術の研究開発に取り組んで いる。

ゲノム編集は、特定の塩基配列(ターゲット配列)のみを切断することによって、標的とする遺伝子を改変するが、類似の配列を誤って切断してしまうこと(オフターゲット効果)により標的以外の遺伝子の変化を生じさせる可能性があるため、安全性上の課題となっている。

Emendoは、この方法とは別に、ターゲット配列以外ではDNA を切断することがない高精度な切断酵素の開発を行っている。これにより、安全性の高いゲノム編集が実現するのみでなく、類似した配列の制限を受けることなく、より自由に標的を選定できるようになることが期待できる。

アンジェスは、究極の遺伝子治療技術となる可能性のあるゲノム編集の分野についても進出したいと考え、ゲノム編集技術の開発ベンチャー企業であるEmendo 社に総額 54 百万米ドル を投資した。

Emendo を完全子会社とすることによって、これまで強みとしていたプラスミド製品、核酸医薬及び DNA ワクチンの3つの分野に加え、新たにゲノム編集の分野における先端技術を当社グループに加えることにより事業の第4の柱とすることができ、グループの守備範囲を大幅に拡大する。

同社は、米国及びイスラエルにも拠点を置く世界的な遺伝子治療用製品の開発企業となり、世界で初めてゲノム編集プラットフォーム技術及び治療プログラムを一体として所有する企業となり、「遺伝子医薬のグローバルリーダー」に近づいていくと考えて いる。

 


2020/11/18   九州電力・川内1号機の原子炉起動、テロ対策施設 初整備 

九州電力は11月17日、全国で初めてテロ対策の「特定重大事故等対処施設」(特重施設)を整備した川内原発1号機の原子炉を起動させた。東京電力福島第1原発事故を受け厳格化された新規制基準の要件を満たした最初の原発となる。

川内1号機は18日午前に核分裂反応が安定的に続く「臨界」に到達、19日に発電を開始し、12月中旬に営業運転に移行する。

特重施設は航空機を衝突させるような大規模テロ攻撃を受けても、放射性物質の外部放出を抑えるのが目的。九電は、原子炉建屋から100m以上離れた場所に、遠隔操作で原子炉を冷却する緊急時制御室や注水ポンプなどを配置した。

ーーー

原子力規制委員会は2013年6月19日、福島第一原発事故の教訓を踏まえた新しい規制基準を決定した。

テロ対策などを盛り込んだ「過酷事故対策編」、既存設備の安全対策を強化する「設計基準編」、活断層調査の強化や津波防護策を定めた「地震・津波編」の三つに大別される。

基準には、最新の安全対策を義務付ける「パックフィット制度」が導入され、既設原発も対象になる。

過酷事故対策編 「特定安全施設」(事故の際、中央制御室の代替として機能) 5年間猶予
「緊急時対策所」(前線本部となる免震重要棟) 仮設も当面可能(機能を満たせば)
フィルター付きベント装置 加圧水型原発は現状でも当面容認
電源車やポンプの配備  
航空機墜落などのテロ対策 法施行から5年猶予→審査終了後5年
非常用バッテリー(3つ目) 5年猶予
設計基準編 ケーブル難燃化(火災対策)  
活火山、竜巻対策の強化  
冷却装置、電源設備の多重化、多様化  
地震津波対策編 最高の耐震性  
防潮堤、水密扉  
活断層の調査対象を必要に応じて「40万年前以降」までさかのぼって拡大  
最高津波の高さ(「基準津波」)に応じた安全対策を実施  
活断層直上に重要施設の設置を認めない 日本原子力敦賀2号を認定

原子力規制委員会は2019年4月24日の定例会合で、原発に設置が義務付けられているテロ対策施設が期限内に完成しない場合、 期限の延長を認めないことを決めた。原則として原発の運転停止を命じる。

本来の趣旨からは、これら施設が完成してから初めて、再稼働が認められるべきものである。
それを電力供給の面から、例外的に5年の猶予を認めた。更に、「
法施行から5年」猶予「審査終了後5年」に延ばした。
実際には工事が大幅に遅れ、どの原発も期限までの完成は見込めなかったが、各社は(再度の延期が当然認められると考えてか?)ぎりぎりまでこれを明らかにしなかった。

2020年にテロ対策施設設置の期限がくるのに、まだ完成していない原発は4基あり、いずれも停止した。

      停止 工事完成、再稼働予定
九電 川内 1号機 2020/3/16 2020/11/26 → 11/19 
2号機 2020/5/20 2020/12/26
関電 高浜 3号機 2020/1 * 2020/12
4号機 2020/10/7 2021/1 下旬

この結果、関西電力大飯原発4号機が11月3日、定期検査のため停止し、国内では当面、九州電力玄海原発4号機のみの稼働となった。

2020/11/5 日本で稼働の原発、一時的に九州電力玄海原発4号機 1基のみに 



2020/11/19 ロシアの新型コロナウイルスワクチン
「Sputnik V」、韓国で生産 

11月13日のタス通信によると、ロシア直接投資基金(RDIF)は、「RDIFと韓国有数のバイオテック企業のGL Rapha は、世界で初めて承認されたSputnik V ワクチン年間1億5千万回分以上を韓国で生産する協定を結んだ」と明らかにした。

12月からGL Raphaで生産に入り、来年1月に世界市場への輸出用供給を始めることで合意した。
GL Raphaは「韓国への供給用ではない。生産するワクチンは全量RDIFに送る計画だ」としている。

ロシア政府は、モスクワの国立Gamaleya疫学・微生物学研究所が国防省と開発中のSputnik Vワクチンを8月に承認した。PhaseU臨床試験を終えた時点で承認し、その後にPhaseVの1600人への治験を並行して進めるとされた。

2020/8/4 ロシアが新型コロナワクチンの接種を10月に開始 

RDIFは11月11日、「Sputnik V の効果が92%に達した」と主張した。現在 このワクチンは4万人を対象に、フェーズ3の臨床試験を進めている。

50か国以上から12億回分以上のSputnik V ワクチンの供給要請を受けているという。韓国以外にインド、ブラジル、中国その他でも生産する計画で、現在のところ、ロシア向け以外で年間5億回分の生産が可能となっている。

なお、ロシアは10月14日、2番目の新型コロナウイルスの国産ワクチンが承認している。シベリアのノボシビルスク州にあるVektor 国立ウイルス学・生物工学研究センターが開発した ペプチドベースのワクチンで、EpiVacCoronaと名付けられている。

2020/10/19 ロシア、2番目の新型コロナワクチン承認

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GL Raphaは輸出用医薬品を受託生産している。他社からの受託生産に加え、子会社 Hankook Korus Pharm でジェネリック医薬品も生産している。

生産品目は、抗生物質のセファロスポリン、抗がん剤、バイオ製品(エリスロポエチン:EPO、ヒト成長ホルモンhGH、インターフェロン、その他)、その他(サプルメントを含む)。

 

GL Raphaは2019年10月、サウジアラビアの General Investment Authority との間で320百万ドルを投資してサウジでバイオ医薬品を生産するMOUを締結した。

今後5年で30種のバイオ医薬品、5種のその他の革新的製品を生産する設備を建設する。原料から生産する。

本年5月にはCOVID-19用のヒドロキシクロロキンをサウジに輸出した。

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中国、ロシア、インド、ブラジル、南アフリカのBRICS5か国の首脳会議 が11月17日にオンラインで開かれた。

議長国のロシアのプーチン大統領は、すでに2種類の新型コロナウイルスのワクチンを承認し、3種類目の開発を進めているとしたうえで、「われわれはインドやブラジルとワクチンの臨床試験を実施する。中国やインドの製薬会社とは第3国のためのワクチンの生産拠点を開設する協定も締結している」と述べ、各国と協力してワクチンの開発や生産を進める考えを示した。

また、習近平国家主席は中国が参加し、米国は参加していない
ワクチンの共同購入の国際的な仕組み「COVAX Facility」に言及し、「この基盤を活用し特に発展途上国に優先的にワクチンを共有していく。BRICS各国にも積極的に提供する用意がある」と 述べた。

11月21〜22日に予定する20カ国・地域首脳会議(G20サミット)をにらみ結束を演出した。


2020/11/20    電気自動車のリコール 相次ぐ 

GMは11月14日、火災発生の恐れがあるとしてLG製バッテリーを装備した電気自動車をリコールすることにした。

リコール対象は2017〜2019年に生産されたChevrolet Bolt の電気自動車のうち、LG Chemの梧倉(
Ochang)工場製のバッテリーが搭載された6万8600台。このうち米国で販売されたものは5万900台ほどとみられる。

これに先立ち米道路交通安全局(NHTSA)は先月この電気自動車の後部座席下部から駐車中に火災が発生した3件について調査に着手した。NHTSAはChevrolet Bolt EVの利用者に火災関連の問題が解決されるまで車を家から離れた屋外に駐車するよう勧告した。

GMはバッテリーが完全に充電された時に火災が発生する危険があると明らかにした。正確な火災発生原因が明らかになるまでBolt EVのバッテリー充電量を90%に制限する方針で、そのソフトウエアは各代理店でアップデートされる。


BMW、Ford、現代自動車の一部電気自動車モデルも火災の危険性のためリコールが実施された。それ以前にTeslaや中国の広州汽車でも問題が発生している。

FordとBMWがリコールする車に搭載されたバッテリーはSausung SDI 製である。

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問題の発端はHyundai MotorのEV「Kona Electric」で、2018年の発売以降、国内外で14件の火災事故が発生した。

2020年10月8日に韓国国土交通部が、火災事故原因について「電池セル製造過程で正極と負極の間にある分離膜が損傷したことによって、完全充電した際に正極と負極の端子が接触してショートを引き起こし、火災が発生する可能性があると認められた」と発表した。  

Hyundaiは10月16日に対象車両の回収を開始、韓国国土交通部や米運輸省高速道路交通安全局(NHTSA)に同車のリコールを届け出た。
対象は、2017年9月〜20年3月に生産した車両で、韓国販売分が2万5564台、海外販売分(北米、欧州、中国など)が約5万1000台である。

リコール対象車両はBattery Management Systemをアップデートするほか、電池そのものについても電池セル間の過度な電圧差や急激な温度変化といった異常の兆候があれば交換するという。

しかし、国土交通部の上記の発表を受け、LG Chemは「現代自動車と共同実施した再現実験では火災が発生しなかった。火災事故の原因は、電池セルの不良とはいえない。国土交通部は正確な原因が究明されていないのに発表した」と反論し、現代自動車と協力して徹底的に原因を究明するとしている。

Kona Electricの電池モジュールの電池セルはLG Chem製だが、電池パックにしているのHL Green Power(LG ChemとHyundai MobisのJV)、Battery Management Systemの開発はHyundai Keficoで、Hyundai Mobisがこれらを組み合わせた電池モジュールの形で納品している。実際に問題がどこにあるかは現在のところ明らかでない。

問題はLG Chemのバッテリーだけではない。

Samsung SDIのバッテリーでも、BMW、フォードの一部EVモデルが火災リスクを理由にリコールを実施した。

BMWは10月に火災危険性のためプラグインハイブリッド車 2万6700台に対する販売中断とリコールに入った。「バッテリー充電時に火災の危険があり、当分は充電をしないでほしい」と顧客に勧告した。

Ford は8月に Kuga PHEVをリコールした。報道では、FordがSamsung SDIに対し、バッテリーの欠陥に関連する損害賠償を要求する計画とされる。

米Teslaは2019年6月、パナソニック製バッテリーを搭載した「モデルS」「モデルX」について、バッテリーモジュールの異常が推定されるとしてリコールを決定した。

中国の寧徳時代新能源科技(CATL)製バッテリーが搭載された中国・広州汽車の「Aion S」でも 本年5月、8月に相次いで火災が発生し、調査が進んでいる。


2020/11/20 WHO、Remdesivirは「治療効果なく推奨せず」

WHOはCOVID-19 治療薬のremdesivirについて、世界各地の臨床試験を分析した結果、「死亡率の低下などにつながる重要な効果はなかった」として、 「症状の軽い重いにかかわらず、入院患者への投与は勧められない」とする指針を公表した。

死亡率の低下や人工呼吸器の必要性、それに症状の改善にかかる時間について「重要な効果はなかった」とし 、「症状の軽い重いにかかわらず、入院患者への投与は勧められない」としている。

WHOに勧告する専門家のパネル WHO Guideline Development Group が英国の専門誌 The BMJ に11月20日に発表した。詳細は後記。

これを受けメーカーのGilead Sciences は、remdesivirは米国のNational Institutes of Health and Infectious Diseases Society of Americaや日英独など多くの国家組織から入院患者の標準治療法として認められており、50か国以上で最初の、唯一の承認済み治療法として使用されているのを無視するもので、失望していると述べた。

2020/10/17 WHO、暫定結果で「Remdesivirの効果認められない」、メーカーは反発 

パネルは、ステロイド薬「デキサメタゾン」(Corticosteroids)については推奨するというコメント(強)と推奨しないというコメント(弱)を行なった。

 

今回の発表を受け、加藤官房長官は、指針について「レムデシビルの効果がないとまでは証明されておらず、また、レムデシビルに効果があるとする十分なエビデンスもないという説明などが記載されている」と述べ た。

そのうえで「日本ではアメリカでの緊急使用許可を契機に、複数の臨床試験の結果から一定の有効性が確認できたことから、5月に特例承認を行い、現在、レムデシビルを使った治療がなされている。厚生労働省では特段、承認について見直す必要はないというのが、現時点での認識だと承知している」と述べた。

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2020/10/23  FDA、レムデシビルを正式承認 

新型コロナウイルスに罹ったトランプ米大統領は、Remdesivirと、抗体カクテル療法、ステロイド薬「デキサメタゾン」 を使用した。

2020/10/4 トランプ大統領にレムデシビル投与、未承認の抗体カクテル療法も 

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パネルの発表(図)は下記の通り。
   https://www.bmj.com/content/370/bmj.m3379

Remdesivirについては下記の各項目でいずれも差がなかったとする。

そのほか、手間がかかるとか、コストが高いという点も問題にしている。

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ステロイド薬「デキサメタゾン」(Corticosteroids)については、下記の通りで、重症者の死亡率が低いことが利点である。

但し、軽症者の死亡率が高いため、推奨しないというコメントもある。

 

 


2020/11/21 FUJIFILM Cellular DynamicsとLonza、iPS細胞関連技術の利用拡大の合意  

富士フィルム子会社で iPS細胞の開発・製造の世界的なリーディングカンパニーであるFUJIFILM Cellular Dynamics, Inc.は11月12日、GMPグレードのiPS細胞製造において世界的なリーディングカンパニーであるLonza Walkersville, Inc. (Lonza) との間で全世界を対象とする契約を締結した。

FUJIFILM Cellular Dynamicsは、Lonzaに対し、細胞治療用iPS細胞株の開発および治験薬製造を対象に、エピソーマルベクター・初期化因子といったiPS細胞作製技術に関する特許を非独占的に使用できる権利を付与する。

Lonzaは、FUJIFILM Cellular Dynamicsに対し、革新的なNucleofector®テクノロジーを拡大利用するための非独占的な権利を付与する。

Nucleofectorテクノロジーは、初代細胞や遺伝子導入の難しい細胞株を導入対象とした初の高効率非ウイルス性遺伝子導入法。

Nucleofectorは電気パルスにより細胞膜に瞬時に細孔を形成する。細胞質へはもちろん、さらに核膜を通して核内への遺伝子の導入を実現した。これにより、細胞種によっては99%という高導入効率と細胞増殖に依存しない遺伝子導入の実現が可能になった。

本契約により、医薬品開発企業が両社のヒト人工多能性幹細胞(iPS細胞)の製造における専門知識と技術を活用することが可能になる。

 

FUJIFILM Cellular Dynamics は医薬品候補物質の安全性や有効性を試験するためのiPS細胞を販売している。薬の毒性を調べるときに使うiPS細胞の外販では世界首位で、作製技術の特許を持つ。

しかし、治療用iPS細胞の販売や特許供与は資本関係のある企業に限ってきた。

今回、治療用iPS細胞の外販や特許ライセンスの供与を本格的に始める こととし、まずLonzaに治療用iPS細胞の作製に関する特許を供与する。

Lonzaの他にも「十数社から引き合いが来ている」という。治療用iPS細胞の外販も始める。

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山中教授とSir John Bertrand Gurdon がノーベル医学生理学賞を受けたが、ウィスコンシン大学のJames  Thomson 教授も山中教授と同じ2007年11月に人間の受精卵を使わずに皮膚細胞からiPS細胞ができると発表している。Cellular Dynamicsは、そのJames Thomson 教授が創始者の一人である。

Cellular Dynamicsが持つ特許の範囲は、体の様々な細胞からiPS細胞を作製する技術、iPS細胞から心筋や糖尿病治療への応用が期待される膵臓のベータ細胞を作る技術など幅広いが、中でも2013年に成立したプラスミドと呼ばれる環状DNAを使ってiPS細胞を作る技術は、がんになりにくい安全なiPS細胞を得るのに不可欠とされる。

富士フイルムHDは、2015年3月30日、株式公開買付けによりCellular Dynamics を買収することで同社と合意した。
発行済普通株式の総数を約307 百万米ドルで取得し、100%子会社FUJIFILM Cellular Dynamics とした。

2015/4/14   京都大学iPS 細胞研究所、Cellular Dynamics Internationalと提携へ 

FUJIFILM Cellular Dynamics は、iPS細胞技術・ノウハウを生かし、加齢黄斑変性、網膜色素変性、がん免疫などの分野におけるアンメット・メディカル・ニーズにこたえるための強固な細胞治療パイプラインの開発に取り組んでいる。

自社のiPS細胞プラットフォームを利用し、パートナー企業が臨床開発を進めるための開発・製造受託(CDMO)サービスも提供している。

また、細胞治療に加えて、iCell® 製品を含む創薬支援ツールも提供している。

FUJIFILM Cellular Dynamics は2020年3月4日、ウィスコンシン州マディソン市で治療用iPS細胞の新生産施設「Innovation Facility for Advanced Cell Therapy」を稼働させた。

今後、生産したiPS細胞を用いて自社再生医療製品の開発を加速させるとともに、本施設を活用した、iPS細胞およびiPS細胞由来分化細胞の開発・製造受託も展開していく。

同社は、加齢黄斑変性や網膜色素変性、パーキンソン病、心疾患の領域で自社再生医療製品の研究開発を進めている。またがん領域では、米国有力ベンチャーキャピタルのVersant Venturesと設立した新会社Century Therapeuticsにて、他家iPS細胞由来のCAR-T細胞を用いた次世代がん免疫治療薬の開発を行ってい る。


2020/11/21 FDA、Eli Lillyの抗体治療薬の緊急使用許可、Samsung BioLogics が本格生産、富士フィルムも 

FDAは11月9日、Eli Lillyのモノクローナル抗体治療薬「Bamlanivimab」(LY-CoV555)について、軽度から中等度の新型コロナウイルス感染症の成人および小児患者向けに緊急使用許可(EUA)を付与したと発表した。入院を必要としていない軽度から中度のCOVID-19患者465名を対象とする第2相試験 (ランダム化プラセボ対照二重盲検試験)の結果に基づいている。

血漿療法やRemdesivirなど使用が認可された治療薬は重症患者向けであるが、今回の決定で医師は高リスクの患者について重症化する前に対処する選択肢が得られる。
Eli Lillyでは、「コロナ検査で陽性となった場合、できるだけ早く、症状が出始めてから10日以内に」投与すべきだと説明している。

EUAの対象は、12歳以上、体重40 kg以上で、SARS-CoV-2ウイルス陽性の軽度から中度 (mild-to-moderate)の症状で重症化するリスクそしてまたは入院が必要になる可能性が高い新型コロナウイルス感染者で、65歳以上または一定の慢性疾患を帯びてる感染者が含まれる。

一方で、COVID-19入院患者には効用を示さず、COVID-19入院患者または酸素療法を必要とするCOVID-19患者へのEUAは認められていない。
Bamlanivimabのようなモノクローナル抗体は、高濃度酸素吸入や人工呼吸器を必要としている入院患者の症状を悪化させる恐れがある。

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Eli Lillyは10月13日、COVID-19抗体治療薬の臨床試験で被験者の登録を安全性への懸念が理由で停止したことを明らかにした。米政府の支援を受けて進めている入院患者を対象に実施していた治験は独立したデータ安全性監視委員会(DSMB)から停止の勧告を受けたと述べた。

Eli Lilly はこの抗体医薬について、10月上旬にFDAに軽度から中程度の外来患者向けでの緊急使用許可を申請した。

治験結果とNIHの発表から、新型コロナウイルスが肺に深く侵入し深刻なダメージを与える前の、治療コース初期にコロナ向けモノクローナル抗体が投与された場合にのみ効果がある可能性がうかがえる。

2020/10/29   Eli LillyのCOVID-19用抗体薬に動き 

Eli LillyはEUAの取得以前に米国政府との間で、1錠 1,250ドルでの30万錠の供給契約を締結している。米国市民は無償で(注射料金は必要)治療を受けられる。

 

抗体治療薬は、新型コロナウイルスのスパイクたんぱく質を直接攻撃して、細胞内へのウイルスの侵入を防ぐ。

Eli Lilly は6月1日、新型コロナウイルス治療のための抗体療法について、米国の入院患者を被検者として、世界初となる第1段階の臨床試験を開始したと発表した。

カナダのバイオテクノロジー企業の AbCellera と共同で開発した。AbCelleraは米国で新型コロナウイルス感染症から回復した患者の血液試料を入手し、米国立アレルギー・感染症研究所(NIAID)のワクチン研究センターと共同で有望な抗体を見つけ出した。その後、Ely Lillyが3か月でウイルスが持つスパイク状のタンパク質構造に対応した IgG1 モノクローナル抗体 LY-CoV555を開発した。

2020/6/5   Eli Lilly、新型コロナウイルスの抗体療法の治験を開始

 

Samsung BioLogics は11月17日、Eli Lilly が開発したコロナ治療剤を本格生産していると発表した。初期供給量の一部を生産し、10月末に引き渡した。

5月に世界の需要に対応し、COVID-19抗体治療の提供を加速するためにEli Lillyとの受託生産契約を締結している。

両社はグローバルな供給を加速する。本年に100万錠、2021年にはもっと大量に供給する。

Eli Lillyでは他の供給ソースの確保にも動いている。9月にはAmgen、10月には富士フィルムと契約した。富士フィルムは低中所得国向けの生産を受託、FUJIFILM Diosynth Biotechnologiesのデンマーク拠点で2021年4月より製造を開始する。

富士フィルムは7月28日、FUJIFILM Diosynth BiotechnologiesがCOVID-19ワクチン候補の原薬の製造受託を拡大すると発表した。

COVID-19 の治療推進プロジェクト「COVID-19 Therapeutics Accelerator」ビル&メリンダ・ゲイツ財団がウェルカム財団や Mastercard と立ち上げた COVID-19 の治療推進プロジェクト)よりCOVID-19治療薬のプロセス開発・製造を受託することを決定している。

今回、Eli Lillyと「COVID-19 Therapeutics Accelerator」の間で抗体医薬品の開発・製造支援で合意したことを受け、原薬製造を受託することが決定した。

世界での配分はEli Lillyの決める原則に基づいて行われる。


2020/11/23  Pfizer、新型コロナワクチンのEUP申請;予防接種法改正案 衆院通過

Pfizer とBioNTech は11月20日、新型コロナウイルスのmRNA ワクチン BNT162b2 について、米食品医薬品局(FDA)に緊急使用許可(EUA)を申請した。

FDAは治験データを入念に検査する諮問委会合を12月10日に開催する。承認されれば年内にも実用化される見通し で、最初の接種対象者は米疾病対策センター(CDC)が決めるが、まず医療関係者や高齢者に限定するとみられる。

日本や豪州、カナダ、欧州、英国その他でも申請を準備している。

第3相試験は7月27日に開始され、4万3661人が参加した。うち4万1135人が11月13日時点で2回目の接種を受け、その1週間後には170人が発症した。 そのうち、ワクチン接種組は8人で、プラセボ(偽薬)組は162人であった。重症化した10人のうちワクチン接種組は1人だけ。

BNT162b2 は95%の予防効果が確認できた。65歳以上の高齢者でも有効性は94%である。
グレード3(重症または医学的に重大だが、直ちに生命を脅かすものではない)で頻度が2%を超えたのは倦怠感3.8%と頭痛2%のみ。

接種から2カ月以上の経過観察でも重大な副作用は出ていない。

11月9日に、第3相臨床試験のデータを中間解析したところ、90%以上の有効性を示したと発表している。
11月18日に最終分析で95%の確率で有効性が示されたと発表した。

米国とベルギーの計4拠点でワクチンを製造する。BioNTechの製造分と合わせて、 2020年中に世界で50百万回分の、2021年末までに13億回分の生産を行う。(1人2回接種)

許可を得られ次第、数時間内にワクチンの供給体制を整える。

ワクチンは-70℃ 前後で保存する必要があるため、同社は専用の全地球測位システム(GPS)付き保冷容器を用意し、輸送に万全を期す。

日本政府はPfizerと1億2000万回分(6千万人分)のワクチン供給で合意している。日本への供給分は空輸される見込みで、到着後の流通方法については日本当局と今後調整する。

厚生労働省は医療機関向けに超低温冷凍庫3000台を確保し、集団接種も念頭に準備を進める。
 

新型コロナウイルスワクチンの臨時接種を無料とすることを盛り込んだ予防接種法などの改正案が11月19日の衆院本会議で全会一致で可決され、参院に送付された。

 ワクチン接種を国民の努力義務とする。(接種勧奨を実施、接種を受ける努力義務)
 有効性や安全性が十分に確認できない場合は、努力義務を適用しない規定も盛り込んだ。
  なお、「努力義務」は違反しても罰則はない。

予防接種法は、かつて「予防接種を受けなければならない」とする義務規定を設けていたが、健康被害の発生などを受け、1994年の改正により努力義務規定となった。

 新型コロナワクチンの臨時接種は市町村が実施し、国が費用を全額負担する。

 健康被害が出た場合の救済措置も整え、製薬会社に生じる損害賠償は国が肩代わりする。

付記

改正予防接種法は12月2日の参院本会議で可決、成立した。


新型コロナワクチンでは米 Modernaも最終治験で94.5%の効果を確認したとする暫定結果を公表した。同社も近くFDAに緊急使用許可を申請する予定。

参考 COVID-19 ワクチンの 開発状況(WHO 2020/11/12)

ーーー

英医薬品・医療製品規制庁(MHRA) は10月にPfizerのワクチン候補について「逐次審査」を開始した。逐次審査は当局がリアルタイムで治験データを評価できる仕組みで、進行中の治験や医薬品の製造工程について企業側との協議することで承認に要する時間を短縮できる。

英政府は11月21日、MHRAにワクチン承認の判断を下すよう求めた。

12月1日から国民医療サービス(NHS)の医療従事者、1月から80歳以上の高齢者から接種を開始する予定で、2021年4月末までに発症・重症化リスクの少ない若者を含め国民全員を対象にワクチンを接種する計画。ただし、Covid-19の予防接種は義務化されていないので、これから接種の必要性を国民にアピールしていく。

65歳以上で報告された94%という高い有効性は期待を上回ったもので、65歳以上はリスクが最も高いグループの1つであるため、医療従事者と並んでワクチン接種を優先する。

英国は4000万回分の供給を予約済みで、年末までに1000万回分を確保するとみられる。

 

欧州委員会のウルスラ・フォン・デア・ライエン委員長は、欧州でも年内にワクチンを承認できるよう迅速に対応すると述べた。

 



2020/11/24    AstraZenecaのワクチン、有効性70%

英のAstraZenecaとOxford大学は11月23日、ワクチンAZD1222の「有効性は70%」とする最終の臨床試験の暫定結果を発表した。
1回目に通常の半分の量を、1カ月の間隔を置いて、2回目に通常の量を投与したグループ
(n=2,741) だと90%で効果があった。

Pfizer とBioNTech のワクチンBNT162b2 は95%の予防効果が確認できた。
米 Modernaも最終治験で94.5%の効果を確認した。

今回公表されたのは英国とブラジルで行った約2万3000人分の治験結果で、日本を含む多くの国でも治験を行っている。

1回目に通常の半分の量を、1カ月の間隔を置いて、2回目に通常の量を投与したグループ(n=2,741) だと90%で効果があった。
通常の量を、少なくとも1カ月の間隔を置いて、2回投与したグループ(n=8,895) だと病気の予防効果は62%だった。

付記

AstraZenecaは11月26日、追加の臨床試験(治験)を行うことを明らかにした。投与量が想定よりも少ないケースの方が効果が高かったためで、有効性や望ましい投与方法を再確認する。

なお、90%の効果があった分は、1回目に定量を与える筈が、誤って通常の半分の量を与えてしまったものと判明した。

2種類の投与方式を合わせた分析(n=11,636) では平均70%だった。いずれの結果も統計的に有意 (p<=0.0001) だとしている。

ワクチンに関連した重症例は確認されなかった。

データは世界中の規制当局に提出 する準備を行う。低所得諸国での利用のため、WHOに緊急使用リスト掲載(Emergency Use Listing)を求める。

このワクチンは2〜8度という通常の冷蔵施設の温度で保管できるメリットがある。(Pfizerワクチンは-70℃ 前後で保存する必要がある)

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ワクチンはOxford UniversityのJenner Instituteが開発したAZD1222。当初名はChAdOx1で、Chimpanzee Adenovirus Oxford 1の略語である。

チンパンジーに感染する風邪のアデノウイルスが人間の体内で増殖できないように、複製能を欠損させた改変ウイルスを作る。
そこに、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)粒子の表面に存在するスパイクタンパクの遺伝子を組み込む。

2020/5/22   アストラゼネカ、新型コロナウイルスのワクチン 9月に供給へ 

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日本政府は1億2千万回分の供給を受けることで基本合意している。2021年の1〜3月にまず3千万回分が供給される。
(当初1回接種とされていたが、上記の報告から2回接種となり、6000万人分となる。)

JCRファーマ(旧日本ケミカルリサーチ)での原液製造と海外からの原液輸入で、これら原液は、第一三共、第一三共バイオテック、Meiji Seikaファルマ、KMバイオロジックスで製剤化される。

2020/6/27 政府、新型コロナワクチン供給でAstraZenecaと協議


2020/11/24 FDA、Regeneron Pharmaceuticalsの抗体カクテル療法にEUA 

米食品医薬品局(FDA)は11月21日、Regeneron Pharmaceuticals, Inc.のCOVID-19の抗体カクテル療法「Casirivimab and Imdevimab Antibody Cocktail」(旧称 REGN-COV2)について、緊急使用許可(EUA)  を与えた。

付記

RocheはRegeneron との間で、この製造および開発を共同で実施するとともに、米国での販売はRegeneron 、米国外での製造および販売をRohceが担う契約を締結している。

中外製薬は2020年12月10日、Rocheより新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対するこの抗体カクテル療法「REGN-COV2」について、日本における開発および販売に関するライセンス契約を締結した。

Rocheは2021年4月12日、新型コロナウイルス感染者との家庭内における濃厚接触者を対象に、casirivimabとimdevimabの抗体カクテル療法によるCOVID-19の発症リスクと負担の軽減を評価した第III相臨床試験(REGN-COV 2069試験)の良好な結果を確認した。

中外製薬は5月10日、本抗体カクテル療法が日本において薬事承認された場合、国内での供給を目的として2021年分を日本政府が確保することで政府と合意した。

付記

中外製薬は2021年6月29日、Casirivimab と Imdevimabの抗体カクテル療法について、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対する製造販売承認申請を厚生労働省に行った。

COVID-19患者を対象とした海外第III相臨床試験成績、および日本人を対象とした国内第I相臨床試験成績に基づく申請で、特例承認(FDAのEUAに基づく)の適用を希望している。

付記 2021/7/21   新型コロナウイルス感染症の抗体カクテル療法を承認

FDAは声明で「COVID-19患者に対する臨床試験で抗体カクテル(casirivimab &imdevimab)を共に投与したところ、プラセボ(偽薬)投与の患者と比べて治療後28日以内に病状進行の高いリスクがある患者の入院や救急治療の減少が示された」と指摘した。

FDAによると、この抗体薬は患者が検査で陽性反応を示してからできるだけ早い段階で使われる。
EUAの対象は65歳以上や体格指数(BMI)35以上、基礎疾患のある人など高リスクのグループに限定される。
12歳未満の子どもや、新型ウイルス感染ですでに入院したり酸素吸入を受けたりしている患者は対象外。

Regeneronでは11月末までに約8万人分、2021年1月第1週までに20万人分、1月末までに30万人分の用意をする。

米当局は11月23日、この抗体治療薬の配布を24日から開始すると発表した。約3万回分を州ごとの感染者数や入院者数に基づき配分する。
注射などの費用はかかるが、薬そのものは政府負担で無料となる。

Regeneronの抗体カクテル「REGN-COV2」(旧称)は、コロナウイルスのスパイクタンパク質に対する2つのモノクローナル抗体(REGN10933+REGN10987)を組み合わせたもの。

何千ものモノクローナル抗体候補のなかから最終的にウイルスに対する強い中和抗体を産出させることができる組み合わせを見つけた。

抗体はウイルスが健康な細胞に感染するのをブロックするが、単一の抗体の場合、ウイルスの自然発生的な変異型は、抗体のブロック作用を回避する可能性がある。これらの変異体は抗体処理にもかかわらず生き残り、増殖することができ、最終的にはウイルスの優性株になる可能性がある。

REGN-COV2は重複しない別々の場所でウイルスのスパイクタンパク質に結合することにより、ウイルスが逃げるリスクを減らすことができる可能性があることを示す。

6月に新型コロナの入院患者と外来患者の両方を対象に複数の臨床試験を開始し、短期間でPhase3まで終えた。

7月には政府のワクチン開発計画 Operation Warp Speed に採用され、4.5億ドルの契約を締結した。8月には米国以外での販売についてRocheと締結した。

9月29日に発表された臨床試験1件の暫定結果では、投与した外来患者でウイルス量を減らし症状を緩和する効果が示された。

COVID-19に罹ったトランプ大統領の専属医は10月2日、新型コロナウイルス感染で入院した大統領が抗ウイルス薬Remdesivirを服用したと明らかにした。また、米Regeneron Pharmaceuticals, Inc.の治験段階にある抗体カクテル療法が使用された。更に医師団は大統領の容体の安定に向けてステロイド薬「デキサメタゾン」の使用を始めた。

Regeneron Pharmaceuticalsはトランプ大統領の主治医から人道的見地で未承認薬の使用を認める「Compassionate Use」の要請を受け、大統領向けに高用量の未承認の抗体カクテル1回分を提供した。

Regeneron Pharmaceuticalsは10月7日、この抗体カクテル療法治療薬について、緊急使用許可(EUA)を米食品医薬品局(FDA)に申請したと発表した。大統領は同日、ツイッターに投稿した動画メッセージでこの薬を称賛、緊急使用を認め、「無料にするつもりだ」と述べた。

2020/10/4 トランプ大統領にレムデシビル投与、未承認の抗体カクテル療法も 

 

 


2020/11/25 2020年 米国大統領選挙 結果

米国の大統領選挙と、同時に行われた上院議員、下院議員、知事の選挙の結果がほぼ確定した(3州8人の下院議員が未確定だが票数で判断した)。

ジョージア州は11月19日、得票を再集計した結果、民主党のバイデン候補が勝利したと発表した。当初の集計でバイデン候補のリードが得票率で0.5ポイント以下だったため、州法に基づき手作業で約500万にのぼる票を再集計していた。

 

大統領選

選挙人は上院(100)と下院(435)の議員数にコロンビア特別区の3人を合わせ総数は538人、当選に必要な人数は270人。

下記2州を除き、最も多く得票した候補がその州の選挙人全員を獲得する。
  メインは4人のうち、上院分 2人は全体勝者とし、下院分 2人は2選挙区の勝者
  ネブラスカは5人のうち、2人は全体勝者、3人は3選挙区の勝者

Biden候補は25州とWashington DC 及びネブラスカ州の1/4を獲り、306人を確保した。
Trump候補は25州とメイン州の1/3を獲り、232人となった。

確保した投票数はBidenが79,662千票、Trumpが73,686千票で、コロナ渦のなか、いずれも過去最高の2008年のObama(69,499千票)を大きく上回った。
民主党の場合は郵便投票が大きく貢献した。(Obamaはこれが「不正投票」であるとしてクレームしている。)

今回は、Trump の問題点を取り上げる「暴露本」が相次いだ。共和党のなかから大統領のやり方に反対する政治団体「Lincoln Project」が生まれ、選挙広告を次々と繰り出し、Trump 攻撃を続けた。
その中でのTrumpのこの大得票は驚きである。

  トランプ バイデン
2020

232

73,686千票

306

79,662千票

  トランプ ヒラリー クリントン
2016

304

62,985千票

227

65,854千票

  マケイン オバマ
2008

173

59,948千票

365

69,499千票

Trump大統領はまだ敗戦を認めていない。

もしもの場合、米大統領選挙、期限の1月6日までに確定しない可能性も


しかし、米政府機関の政府一般調達局(GSA) は11月23日、バイデン候補に「法廷闘争に関連した最近の出来事や(各州の)選挙結果の認定を踏まえ、要請に応じて連邦法が定める物資やサービスへのアクセスを認めることを決めた」と伝えた。米政府は安全保障の機密情報や移行に伴う資金を提供する。

トランプ大統領もツイッターでこれを認めた。今後の戦いで勝つと信じるが、政権以降の初期手続きをするようGSAに勧め、自分のチームにもそうするよう伝えたとしている。
(政権移行にはGSAの認定が必要だが、これまで認定せず、下院の4委員会が11月24日にGSAを呼び、説明を求めていた。)

I want to thank Emily Murphy at GSA for her steadfast dedication and loyalty to our Country. She has been harassed, threatened, and abused – and I do not want to see this happen to her, her family, or employees of GSA.
Our case STRONGLY continues, we will keep up the good fight, and I believe we will prevail!
Nevertheless, in the best interest of our Country, I am recommending that Emily and her team do what needs to be done with regard to initial protocols, and have told my team to do the same.

 

上院議員選

定員100名 50州x2
任期 6年 2年ごとに約1/3ずつ 改選(本年は33名が改選で、他にジョージア、アリゾナの補欠選挙2名)

ジョージア州の改選(共和 49.72%、民主 47.96%)、補選(共和2人 25.9%と19.55%、民主 32.91%)の2議席が、どの候補も過半数をとれず、1月5日に決戦となる。
民主党が2議席とも取れば、50:50となり、その場合、上院議長である副大統領(民主)が票を投じるため、支配権をもつ。

なお、非改選の共和党の2議員(上院の最高裁判事承認の討論終結に反対したメイン州のSusan Collins 議員とアラスカ州のLisa Murkowski 議員)は民主党寄りの判断をすることが多い。
 

  共和党 民主党 民主系
無所属
未定
(決戦)
合計
改選前 53 45 2   100
非改選 30 33 2   65
改選 補選 21+2 12 0   35
結果 補選   1   1 2
改選 20 12   1 33
改選後 50 46 2 2 100

48


下院議員選

定員 435名で、全員が任期2年のため改選

 

民主党は当初予想の大勝は逃したが、過半数を確保した。
ルイジアナ州は1議席が12月5日に決選投票となる。

下院は全体では民主党が過半を取ったが、州別に過半をとったのは共和党が27州、民主党が20州、同数が3州となった。 下記の偶発的事態では共和党の勝利となる。

投票証明書の開封、確認を経ても、なお大統領、副大統領の当選を決定できない場合を選挙における偶発的事態(electoral contingencies)と呼ぶが、その場合、米国憲法修正第12条で下院が大統領を選出する。「この方法により大統領を選出するときは、投票は州を単位として行われ、各州の議員団が1をもつ。」(各州は、その州の下院議員の多数決で決める。) 

  共和党 民主党 無所属 未定
(決戦)
合計 欠員  

2018/11改選

200 235   435  

North Carolina-No.9 は2019/7に確定(共和党)

2020年改選前

197 232 1   430 5 欠員は民主2、共和3の辞任、死亡による。
無所属は共和党からの脱党者。

改選後 

211 222 0 2 435
 
  ルイジアナ州5区 12/5決選投票で共和党Letlowが当選したが、12/29に新型コロナで死去
→2021/3/20に選挙

NY州22区 29票差のため裁判(疑惑の約2500票の判断)
 

付記 ルイジアナ州5区は12月5日の投票で共和党

知事選挙

  共和党 民主党
改選 8 3
留任 19 *   20
合計 27 23

*  ミネソタ州はミネソタ民主農民労働党

 

州別の結果は下記の通り。

上院は任期6年で、2年ごとに約1/3ずつ改選する。 @2024/11選挙 A今回選挙、B2022/11選挙  
今回、Bの補選がジョージアとアリゾナの2州であった。  

   

大統領選挙

  上院

 

下院   知事
Trump Biden

共和

民主

独立 決戦 共和 民主 未定 共和 民主
今回

非改選

今回

非改選

非改選 今回
New England Maine 1 3 A           @   0 2        
New Hampshire   4       A   B     0 2        
Vermont   3 -     -   B @   0 1        
Massachusetts   11       A @       0 9        
Connecticut   7 -     - @ B     0 5        
Rhode Island   4       A @       0 2        
Mid-Atlantic New Jersey   14       A @       2 10        
New York   29 -     - @ B     7 19 1      
Pennsylvania          20 -   B - @       9 9        
Delaware   3 -     A @       0 1        
Maryland   10 -     - @ B     1 7        
Washington D.C.   3      
The South Arkansas 6   A   B           4 0        

Alabama

9   A   B           6 1        
West Virginia 5   A       @       3 0        
Florida 29   - @ B -         16 11        
South Carolina 9   A   B           6 1        
Georgia       16               AB 8 6        
Texas 38   A @             23 13        
Tennessee 11   A @             7 2        
Kentucky 8   A   B           5 1        
North Carolina     15   A   B           8 5        
Virginia   13       A @       4 7        
Mississippi 6   A @             3 1        
Louisiana 8   A   B           4 1 1      
Great Plains Oklahoma 7   A   B           5 0        
Kansas 6   A   B           3 1        
South Dakota 3   A   B           1 0        
North Dakota 3   - @ B -         1 0        
Nebraska 4 1 A @             3 0        
The Midwest Iowa 6   A   B           3 1        
Indiana 11   - @ B -         7 2        
Illinois   20       A   B     5 13        
Ohio 18   -   B - @       12 4        
Wisconsin   10 -   B - @       5 3        
Michigan     16       A @       7 7        
Missouri 10   - @ B -         6 2        
Minnesota   10       A @       4 4        
Rocky Mountains Idaho 4   A   B           2 0        
Colorado   9       A   B     3 4        
Montana 3   A       @       1 0        
Wyoming 3   A @             1 0        
The Southwest Arizona    11       B @       4 5        
New Mexico   5       A @       1 2        
Nevada                        6 -     - @ B     1 3        
Uta 6   - @ B -         4 0        
Pacific Oregon   7       A   B     1 4        
Washington   12 -     - @ B     3 7        
California    55 -     - @ B     11 42
 
       
  Alaska                3   A   B           1 0        
  Hawaii    4 -     - @ B     0 2        
合計
 
232 306 20 10 20 13 21 12 2 2 211 222 2 8 19 3 20

50

48 2

538

35 + 非改選65 = 100

435

27 23

 


2020/11/26    武田薬品グループのCOVID-19用 抗体治療薬

 FDA、Eli Lillyの抗体治療薬の緊急使用許可  モノクローナル抗体治療薬「Bamlanivimab」

FDA、Regeneron Pharmaceuticalsの抗体カクテル療法にEUA    「Casirivimab and Imdevimab Antibody Cocktail」

武田薬品工業は世界の9社と共同でCoVIg-19 Plasma Allianceをつくり、COVID-19の治療を目的とした高度免疫グロブリン製剤(CoVIg-19)を開発している。現在、臨床第3相試験に入っており、早ければ年内にも治験結果がまとまる。成功すれば各社がノーブランドで販売する。

免疫グロブリンは「天然の予防抗体」といわれ、新型コロナから回復した患者の血液中の抗体の集まり で、人工的に設計された ものに対し、効果が高いとされ、量産もしやすい。


付記  

武田薬品は2021年4月2日、CoVIg-19 AllianceにおけるCOVID-19治療薬候補の高度免疫グロブリン製剤を評価するためにNIHが実施した臨床第3相試験「Inpatient Treatment with Anti-Coronavirus Immunoglobulin」において、評価項目を達成しなかったと発表した。CoVIg-19アライアンスの取り組みは終了する。

ーーー

武田薬品の参加するCoVIg-19 Plasma Allianceは10月9日、共同で開発が進められるCOVID-19の治療を目的とした高度免疫グロブリン製剤(CoVIg-19) について、米国国立衛生研究所(NIH)の米国国立アレルギー・感染症研究所(NIAID)が実施する臨床第3相試験「Inpatient Treatment with Anti-Coronavirus Immunoglobulin(ITAC)」の患者が登録されたことを確認した と発表した。

武田薬品は、世界をリードする他の血漿分画製剤企業9社と共同でCoVig-19 Plasma Alliance を共同設立し、新型コロナウイルスとの世界的な闘いに向けた高度免疫グロブリン製剤の開発および製造を進めている。

2020年4月6日に CSL Behringと武田薬品がCOVID-19の治療薬となり得る血漿分画製剤の開発に関する提携契約を締結し、本提携にBiotest、BPL、LFB、Octapharmaの各社が参画した。
5月8日に4社が追加参加した。

血漿分画製剤領域で世界をリードする企業が協力し、COVID-19に対する世界的な戦いにおいて高度免疫グロブリン製剤の開発および製品化を行なう もので、
ノーブランドの抗SARS-CoV-2ポリクローナル高度免疫グロブリン製剤の臨床開発に直ちに着手した。  

このアライアンスは、米Mayo Clinicが提唱した感染回復患者から血漿を採取し治療薬を開発するイニシアチブ「The Fight Is In Us」にも参加している。

CoVIg-19 Plasma Allianceメンバー
当初
メンバー
2020/4/6
武田薬品 免疫グロブリン製剤を含む血漿分画製剤は、買収したシャイアーが強みとして抱えていた分野。
Biotest 血漿タンパクと生物学的製剤を提供する企業であり、ドイツのDreieichに本社を置く。前臨床および臨床開発から世界中での販売にまでおよぶバリューチェーンを有し、主に臨床免疫領域、血液領域および集中治療領域に特化してい る。
ヒト血漿由来の免疫グロブリン、凝固因子、アルブミンを開発、販売している。
BPL(Bio Products Laboratory) 60年以上の歴史を有するBPLは世界中の医師、患者、顧客のニーズを満たす高品質の血漿分画製剤を提供してい る。 英国に本社を置き、全米に血液収集センターを有し、免疫不全、出血性疾患、感染症の治療や救急医療用の医薬品の製造に取り組んでいる。
CSL Behring 豪の CSLの米国子会社
生物学的製剤のグローバル企業で、血液凝固疾患、原発性免疫不全症候群、遺伝性血管性浮腫、遺伝性呼吸器疾患、神経系疾患などの治療に用いられる製剤を開発、提供している。
また、心臓手術、臓器移植、やけど、新生児の溶血性疾患の予防などに使用される製剤も扱っている。
世界でも最大規模の血漿採取ネットワーク(CSL Plasma)を運営している。
LFB 重篤な希少疾患の患者の治療に用いる血漿分画製剤および遺伝子組換えタンパクを開発、製造、販売するバイオ医薬品グループ。
欧州におけるバイオ医薬品企業のリーディングカンパニーの1つで、主に病院の医療関係者に、免疫、止血、集中治療の3つの主要分野における血液由来の治療薬を届ける。
1994年にフランスで設立され、現在30カ国以上で15の製品を販売している。
Octapharma スイスに本社を置き、ヒト血漿およびヒト細胞株からヒトタンパクを開発および製造する世界最大のヒトタンパクメーカーの1つ。
血液がん領域、免疫治療領域、救命救急領域の3つの領域にわたり、118か国で販売している。
追加
メンバー
2020/5/8
ADMA Biologics 感染リスクのある免疫不全患者および特定の感染症のリスクがある患者の治療に用いる専門的な血漿由来生物学的製剤の製造、販売および開発に特化した米国のバイオ医薬品企業。
免疫不全の治療および特定の感染症予防に用いる血漿由来生物学的製剤3種類を製造・販売している。
フロリダ州の血漿分画精製施設で免疫グロブリン製品を製造している。
BioPharma Plasma 血漿分画製剤の開発・生産に注力するウクライナのバイオ医薬品企業。
ウクライナおよびその近隣諸国において、製造の最新技術を持つ唯一の工場を有している。
アルブミン、免疫グロブリン、凝固因子をウクライナおよび世界30カ国以上に供給している。ウクライナ
GC Pharma 旧社名Green Cross Corporation。タンパク質治療薬やワクチンを製造販売する韓国のバイオ医薬品企業。
世界有数の血漿タンパク製剤メーカーの一つであり、半世紀以上にわたり高品質な医療ソリューションの提供に専念。
Sanquin オランダで血液採取と血漿採取の両方を担い、Sanquin Blood Bankとその製薬法人であるSanquin Plasma Productsで構成され る。研究目的と抗COVID-19免疫グロブリン製造の両方に活用すべく、回復された患者からの血漿を収集してきた。
支援 Bill&Melinda Gates Foundation 助言支援
Microsoft テクノロジー面でのサポート(ウェブサイト、Plasmabot:ドナー募集のためのツール)

臨床第3相 ITAC試験では、COVID-19により重篤化リスクのある患者を治療できる可能性のある抗コロナウイルス高度免疫グロブリン静注製剤(H-Ig) の安全性、忍容性、有効性を評価 する。

これは国際多施設共同二重盲検プラセボ対照無作為化試験で、米国やメキシコ、その他16カ国の5大陸にわたる最大58施設において実施され る。

治験に使われる高度免疫グロブリン静注製剤は、CoVIg-19アライアンス のCSL Behring と武田薬品が提供するほか、他の2社からも提供される予定。

発症後12日以内で、生命を脅かすような臓器障害や終末臓器不全のない成人のCOVID-19入院患者500人が登録される。
標準治療としてレムデシビルが投与され、さらに高度免疫グロブリン静注製剤が投与された時の安全性と有効性が評価され る。

 

CoVIg-19アライアンスでは、COVID-19から回復した患者に血漿提供を呼びかけている。(日本ではやっていない)

ーーー

武田薬品はビジネス面、研究面の双方で「血漿分割製剤」をフォーカス対象にし、重視している。

 


有機EL材料事業を韓国SK Materials 主体のJVに移管 

チッソの事業子会社JNCは11月24日、有機EL材料事業に関し、開発・販売を新設の子会社に移管するとともに、韓国のSK Materials との間で合弁会社を設立し、新設子会社をJVに移すと発表した。

子会社には製造機能は移管しないとし、製造設備はリースするとしている。製造設備を子会社にリースしたうえで、製造そのものは受託するとみられる。

JNCはSK JNC Japanを設立して有機EL材料事業を移管、この子会社の全株式と、有機EL材料の特許や商標を売却する対価として韓国の新会社SK JNCの株式を取得し、子会社は新会社の傘下に入る。

 

合弁相手のSK Materialsは半導体、ディスプレイ、太陽電池などの中核素材の生産、販売を主たる事業としており、韓国のパネル大手との関係が深い。

JNCは色の純度や発光効率で世界最高水準の青色発光材料(ドーパント材料、ホスト材料)や電子輸送材料などの有機EL材料を手掛ける。

同社が関西学院大学の畠山琢次教授との共同研究により開発した有機EL材料は、これまでに使用されてきた材料系とは全く異なる新しい構造を特徴とした青色発光材料で 、ホウ素原子を含むヘテロ環構造を主骨格とし、電圧をかけることによって発生する光の波長の幅が従来の材料に比べ狭いことを特徴としている。これにより、発光したエネルギーロスを抑えることが可能となり、低消費電力化を実現できる。

2018年にホウ素系青色ドーパント「DABNA」を上市し、大手ディスプレイメーカーのスマートフォンに採用された。

2018/12/14 JNC、新規有機EL材料を開発

かつての収益源であった液晶事業が赤字に転落するなかで、これに代わるものとして期待されたが、単独では難しいと判断した模様。
有機EL材料の特許や商権と日本の事業を、パネルメーカーと太いパイプを持つSK Materialsに譲渡する。SK Materialsは有機EL材料への参入を検討してきたが、JNCの高い技術力に着目した。

譲渡の対価で新設のSK JNCの49%を取得することで、JNCは引き続き事業に関与する。また、水俣製造所で の有機EL材料の生産は、設備をリースしたうえで、受託の形で継続する。

ーーー

2011年1月12日チッソの100%出資で「JNC株式会社」(社名はJapan New Chissoから)が設立され、3月末に親会社チッソから機能材料分野、化学品分野及び加工品分野などの事業継続に必要な土地や設備などの財産譲渡を受けた。

親会社は当面、子会社の株式配当益で補償業務を担い、3年後をめどに株式を他者に全面譲渡、譲渡益を熊本県に納付して補償業務を委ね、清算するという構想であった。

なお、特措法では、「救済の終了」と「市況の好転」をJNC売却の条件としている。

 

液晶関連材料、電子情報材料を扱う機能材料事業は液晶の好調で2015年3月期には182億円の経常利益を上げた。

しかし、液晶パネルから有機ELパネルへの切り替えが進むなか、中国液晶材料メーカーの台頭でパネルの供給過多の状況が増幅され、減益が続き、2019年3月期には赤字に転落、2020年3月期は更に悪化した。

  15/3 16/3 17/3 18/3 19/3 20/3 20/9中
機能材料 182 128 83 26 -28 -31 -9
合計 175 138 75 48 -14 -13 12

2020年9月には、韓国パネルメーカーの液晶パネル事業からの撤退した。

 

チッソの問題は液晶に代わる収益の柱が見当たらないことで、このままでは賠償金の支払いも難しくなる。


2020/11/27   米最高裁、コロナ対策の教会での集まり制限は憲法違反と判断

米最高裁は11月25日、New York州がコロナ対策として宗教施設での集まりで人数制限したことについて、カトリックとユダヤ教の教会がこれを差し止めるよう求めた件で、教会側の主張を認めた。

5対4の判断で訴えを支持した。亡くなったリベラル派のGinsburg 判事の後任にトランプ大統領が保守派のBarrett判事を指名し、与党共和党が強行承認したのがたちまち効果を表した。


New York州のAndrew Cuomo知事は10月6日、コロナが蔓延する特定の地域(Brooklyn 近郊を含む)で非必須事業の閉鎖を指令し、宗教施設での集まりを、ある地域では10人、別の地域では25人に制限した。

これに対し、Roman Catholic の教区と2つの正統派ユダヤ教会派が、制限は憲法修正第一条の信仰の自由に違反するものであり、食品店などよりも厳しい制限だとして訴えた。

連邦地裁はこれを却下、控訴裁も却下した。


コロナ対策としての宗教サービスの制限については、既に連邦最高裁が2回、判断している。

カリフォルニア州による制限については5月29日、ネバダ州による制限については7月24日、最高裁は教会による訴えを却下した。

いずれも5対4の判断で、リベラルのRuth Bader Ginsburg が健在で、当時は保守派 5 対リベラル派 4 であったが、保守派のJohn Roberts 長官が合憲とみなした。

 

今回、Ginsburg 判事の死去、Barrett判事の指名で、保守派 6 対リベラル派 3 となり、保守派のJohn Roberts 長官は従来と同じく合憲とみなしたが、前2回と逆の判断となった。

多数派は、当該規制が過去に最高裁に持ち込まれたいかなるケースと比較しても格段に厳しい内容だったなどとし、感染拡大が深刻な地域でもここまで強力な規制は導入されていないとの見解を示した。

Neil Gorsuch 判事は、「酒屋やバイク店の再開を認めながら、教会やシナゴーグ、モスクを閉鎖するという色分けされた行政命令を合衆国憲法は許容しない」と述べた。

                                                                                                                  〇:合憲X:違憲

  性別 人種背景 就任日 判断傾向 5/29
California
7/24
Nevada
11/26
New York
Clarence Thomas 男性 アフリカ系 1991年10月23日 保守 X X X
Ruth Bader Ginsburg 女性 ユダヤ系 1993年8月10日 リベラル
Stephen Breyer 男性 ユダヤ系 1994年8月3日 リベラル
John Roberts  (Chief) 男性 白人系 2005年9月29日 保守
Samuel Alito 男性 イタリア系 2006年1月31日 保守 X X X
Sonia Sotomayor 女性 ラテン系 2009年8月8日 リベラル
Elena Kagan 女性 ユダヤ系 2010年8月7日 リベラル
Neil Gorsuch 男性 白人系 2017年4月10日 保守 X X X
Brett Kavanaugh 男性 白人系 2018年10月6日 保守 X X X
Amy Coney Barrett 女性 白人系 2020年10月26日 保守 X
結果         5 5  X 5

 


2020/11/28 米メルク、バイオ医薬品会社OncoImmuneを買収 、新型コロナ薬候補を取得 

米製薬会社 Merck(ドイツのMerckと区分するため、米加以外での社名は MSD )は11月23日、株式非公開のバイオ医薬品会社OncoImmuneを425百万ドルの現金前払いで 買収すると発表した。2020年末までに買収を完了する。
OncoImmuneの株主は売上高および一定の規制関連のマイルストン達成に基づいた支払いを受け取る権利を得る。

OncoImmuneは 新型コロナ治療薬「CD24Fc」のほか、がんや自己免疫疾患の治療薬を開発する。

「CD24Fc」を除く事業は、買収完了前にスピンアウトさせ、既存株主が株主となる。Merckも50百万ドルを投じ、この会社の少数株主になる。

「CD24Fc」は重度の新型コロナ患者向けの治療薬で、臨床試験(治験)の中間分析によると、人工呼吸器を必要とする入院患者に対して呼吸不全と死亡のリスクを50%減少させる効果が確認されている。

MerckはOncoImmuneで課題となっていた製造・供給能力を強化する。自社の生産設備の一部を使って、2021年半ばまでに新型コロナ治療向けの増産体制を構築する。

Merckは5月26日にオーストリアのワクチンメーカーのThemis Bioscienceを買収すると発表した。新型コロナウイルスのワクチン開発を加速させるのが狙いで、臨床試験を年内に開始する。

ーーー

OncoImmuneの主力製品の新型コロナ治療薬「CD24Fc」は、自然免疫系を標的とするfirst-in-classの組換え融合タンパク質で 、過剰な免疫反応を抑えることで炎症を防ぎ、治療の効果を飛躍的に高めるもの。


  Paulson & Kawasaki  Nat Biotechnol 2011 may 29

 組織障害が起こると放出されるDAMPs(危険関連分子パターン)は、免疫細胞膜上のTLRに結合して活性化させ、NFkBを介して各種サイトカイン(TNF-α、IL-1β、IL-6) 産生を起こす。

CD24抗原はDAMPsを取り込んで、TLRとの結合を減らすとともに、細胞表面蛋白質のSiglecと結合、DAMPからの活性化シグナルを抑制し、過剰な免疫反応を抑える

CD24Fc はCD24を抗体のIgG1のFc部分とfusionさせたCD24の二量体。 CD24部分が遊離DAMPsおよびSinglec10に競合的に結合することで、初期炎症反応抑制およびT細胞活性化抑制の二つの作用機序を持つ。 

同社ではCOVID-19以外にも多くの症状の治療に効果があると見ている。

治験の状況は下記の通り。

COVID-19の入院患者で人工呼吸器を必要とした重症患者の50%超に対し、呼吸器の疾患や死亡のリスクを減らしたことが実証されている。

健康なボランティアを対象とした第I相臨床試験では、CD24Fcの安全性が実証されただけでなく、複数の炎症性サイトカインの発現を抑制する生物学的活性も実証された。

造血幹細胞移植(HCT)を受けている白血病患者を対象とした第II相臨床試験では、CD24Fcの3回投与により、免疫系の過剰反応によって引き起こされる重度(グレード3〜4)の急性移植片対宿主病(GVHD)が効果的に排除された。

GVHDは、ドナー(臓器提供者)の臓器が、免疫応答によってレシピエントの臓器を攻撃することによって起こる症状の総称
ドナーの移植片が攻撃されることによる「拒絶反応」の逆)

HIV / SIV感染の前臨床モデルでは、CD24Fcが複数の炎症性サイトカインの産生を改善し、Tリンパ球の喪失と機能的なT細胞の枯渇を逆転させ、複数の臓器の白血球浸潤を減少させることを示した。


2020/11/30 中国の国産原子炉「華龍一号」1号機 年内に稼働へ

中国核工業集団有限公司(CNNC)は2020年9月4日、建設中の福清原子力発電所5号機(115万kW)が燃料の初装荷を始めたと発表した。同月10日には177体すべての燃料集合体の装荷が完了した。
10月21日の午後3時過ぎに初めて臨界条件を達成、正式に運転可能な状態に移行、年末までの営業運転開始を目指す。

中国核工業集団有限公司(CNNC)と中国広核集団有限公司(CGN)が開発した第3世代設計のPWR型原子炉 「華龍一号」(Hualong One) で、運転開始する第1号となる。

両者の「ACP1000」と「ACPR1000+」を統合して開発され、主要技術と機器の知的財産権は中国が保有する。

「華龍一号」は、これを含め、国内で5基、パキスタンで2基を建設中で、更にパキスタンでもう1基の建設を決めている。

福建省福清原発 

 

5号機 115万kW 年内稼働
6号機 115万kW 建設中
江西省防城港原発 3号機 118万kW 建設中
4号機 118万kW 建設中
江西省漳州原発 1号機 115万kW 2019/10 着工
2号機   計画

 更に4基の建設が9月に認可された。

中国国務院の常務会議は2020年9月2日、新設プロジェクト2件を認可した。

海南省の昌江原発第2期(原子炉2基)および浙江省の三澳原発第1期(同2基)で、いずれも「華龍一号」を採用する。両プロジェクトの投資額は合計700億元(約1兆872億円)を超える。

常務会議では、原発建設の積極的かつ着実な推進がエネルギー供給能力を下支えすると同時に、温室効果ガスの排出削減のために重要であるとの認識が示された。

昌江原発第2期は、国有発電大手の中国華能集団が51%、中国核工業集団が49%を出資する。

これにより、華能集団は核工業集団、中国広核集団、国家電力投資集団に続いて加圧水型軽水炉の建設資格を獲得した4番目の発電企業グループとなった。

 

中国はパキスタンのチャシュマでPWR原発4基を稼働させているが、カラチ原発で「華龍一号」を2基建設中である。更に、チャシュマ原発5号機の建設を決めた。

カラチ原発 1号機 Candu型加圧重水炉 13.7万kW 1972年営業運転開始
2号機 華龍一号 110万kW 2015着工、2021年商業運転予定
3号機 華龍一号 110万kW 2016着工、2022年商業運転予定
チャシュマ原発
(Chashma)
1号機 CNP-300 PWR 32.5万kW 2000年9月営業運転開始
2号機 CNP-300 PWR 32.5万kW 2011年5月営業運転開始
3号機 CNP-300 PWR 34万kW 2016年末 営業運転開始
4号機 CNP-300 PWR 34万kW 2017年6月営業運転開始
5号機 華龍一号 100万kW 2017年11月建設に関する協力協定を締結

「華龍一号」は、英国でEDFエナジー社が建設するブラッドウェルB原子力発電所(2基、合計出力220万kW)にも採用が決まっている。

中国の習近平国家主席は2015年10月21日、フランス電力公社(Électricité de France:EDF)がイングランド南西部サマセット州Hinkley Pointで進める新規原子力発電所Hinkley Point Cの建設プロジェクトに33.5%を出資することで正式に合意した。中国広核集団(CGN)が33.5%を出資、残りはEDFが出資する。(その後、大幅なコスト増に直面している。)

中国はまた、EDFがイングランド東部のサフォーク州 Sizewell とエセックス州 Bradwellで予定する新規原発建設計画にも参画することで合意した。

Sizewellの新原発(2020/5 申請)は中国から20%の出資を受け入れる。一方、Bradwell新原発は資金の2/3 を中国から受け入れるとともに、欧米で初めて中国製の原子炉を採用する。

2015/10/28   中国、英国の原発に出資、中国製原発も導入  

英国の原子力規制庁(ONR)は2020年2月13日、「華龍一号」の英国版(UK HPR1000)で実施中の包括的設計審査(GDA)で第3ステップが完了し、最終段階の第4ステップに進展することになったと発表した。これまでところ同設計への設計容認確認書(DAC)発給を阻むような安全・セキュリティ上の根本的欠陥は見受けられない」と結論付けた。

 

 


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