2020/8/15
EU、カンボジアに経済制裁、中国はカンボジアとFTA締結
EUの欧州委員会は8月12日、「カンボジアは人権に関して深刻な懸念がある」として同日に制裁を発動したことを明らかにした。カンボジアから武器以外の全品目を無関税で輸出できる「EBA協定」の優遇策の一部を停止した。
「EBA協定」(Everything but
Arms):
カンボジアは、EUの一般特恵制度(GSP)の中でも最も対象が広範囲の待遇である「武器以外の全て」の恩恵を受けてきた。
これは、国連が規定する後発開発途上国(LDC)を対象に、武器兵器以外の全ての製品の輸入関税を無税とし、輸入割り当ても行わないとするEU独自の特恵関税制度で、カンボジアからEUへの輸出額54億ドル(2018年)のうち、95.7%がEBAに基づき無税 でEUに輸入された。
これは、EBAの受益国の中ではバングラデシュに次ぐ規模である。
欧州委員会は2019年2月11日、カンボジアに対し、深刻な人権侵害や労働権侵害が確認されたとし、武器以外の全品目で数量制限なしにEU域内への輸入関税を撤廃する「EBA制度」を一時的に停止する手続きに入った。欧州委員会は2018年7月に今回の決定の是非を判断するための情報収集を開始していた。
具体的には、政治参加や表現の自由、集会・結社の自由、土地所有権、労働権に対する制限の「市民的および政治的権利に関する国際規約(ICCPR)」違反。
これに対し、カンボジアのフン・セン首相は2019年11月21日、EUの要求に従うつもりはないと断言した。EBA継続と引き換えにカンボジアの法制度や独立性を捨てることはないとした。
EBA制度が撤廃され輸入関税を課されたとしても、その用意はすでにできていると述べ、報復関税を課す考えも示した。
EUが指摘している人権軽視については、ミャンマーやラオスより遥かにましだと述べた。
欧州委員会は2020年2月12日、カンボジアに適用している特恵関税を一部停止する委任規則を採択した。欧州議会とEU理事会が否決しない限り、委任規則は半年後の8月12日から適用 される。
8月12日、予定通り制裁が発動された。 今回、一部の衣類と履物、全ての旅行用品、砂糖が適用停止の対象となる。カンボジアの産業発展全体へのインパクトを制限すべく、自転車や高付加価値の衣類などを対象から除外した。
EUはカンボジアにとって輸出額の20%以上を占める。
アパレル製品の主要輸出先で、輸出全体の40%を占める。
カンボジアでは新型コロナウイルスの影響で主要産業の縫製関連の輸出が伸び悩み、15万人以上が失業したとみられ、カンボジア縫製業協会はEUに制裁延期を求めてきた。
欧州委員会は一部除外について、「カンボジアの社会的および経済的な発展を保全すると同時に、人権尊重を確保するバランスの取れたアプローチ」の結果だと説明している。
EUは今後もカンボジア政府への働きかけと人権状況のモニタリングを継続し、顕著な改善が確認されれば、EBAに基づく特恵待遇の回復も可能 である。
ーーー
カンボジア商業省と中国商務部は7月20日、2国間自由貿易協定(FTA)の交渉が妥結したと発表した。物品貿易、原産地規則、税関手続き、貿易円滑化、貿易の技術的障壁、衛生植物検疫措置、サービス貿易、投資協力、経済技術協力、電子商取引の幅広い領域が含まれる。
両国は2020年内の署名を目指すとしている。
カンボジア商業省によると、2019年のカンボジアと中国の貿易額は前年比24.4%増の93億6,000万ドルと、全体の25.1%を占め、カンボジアにとって中国は最大の貿易相手国だった。
FTAによって両国の2国間貿易は2023年までに100億ドルを目指すとしている。
カンボジア縫製業協会事務局長は、「このFTAによってカンボジアから中国への輸出は20%以上増加する見込みだ。衣料品、履物、旅行用品、電子機器、その他の産業への原材料供給への投資が増える」と述べた。
両国大臣は、2019年末の交渉開始からわずか半年という短期間で妥結に至ったことは、カンボジアと中国の連携の強さを示すと高く評価した。
中国の商務部長は、「2020年は、両国間の包括的パートナーシップ締結から10年という節目であり、今回の合意は1958年から続く両国の伝統的かつ協力的関係を反映している」と述べた。
わずか半年での妥結は極めて異例で、EUの経済制裁に対抗するものと見られ、カンボジアの親中色が一段と強まるのは必至である。
ーーー
カンボジアの 2019年の輸出額は前年同期比12.7%増の145億3000万ドル、輸入額は前年同期比18.6%増の221億9000万ドルとなった。貿易赤字は76億6000万ドルに達し、前年比で31.6%増加した。
みずほ総合研究所の資料では輸出入先の内訳は次の通り。
カンボジアの最大の輸入先は中国である。但し、中国向け輸出は低迷している。逆に最大の輸出先はEUで、EUからの輸入は少ない。
ーーー
EUは人権侵害に対して厳しい態度をとっている。
EUは7月28日、「LGBTフリーゾーン(排除区域)」宣言を発してLGBTQの権利を抑圧しているポーランドの6つの自治体による補助金申請を却下した。
LGBT: Lesbian、Gay、Bisexual、Transgender
LGBTQ:LGBTに
Queer、Questioning(セクシャリティを決めかねているというアイデンティティをもつ人)を加えたもの
ポーランドでは国土の約3分の2にあたる80以上の自治体が「LGBTフリーゾーン(排除区域)」を宣言している。
こうしたアンチLGBTQの動きを後押しているのはアンジェイ・ドゥダ大統領と与党「法と正義」で、LGBTQを「共産主義よりも破壊的なイデオロギー」「外国からの良くない影響」「伝統的価値観を脅かす」と攻撃してきた。
欧州委員会のヘレナ・ダッリ平等担当委員はツイッターに、「加盟国とその当局は、EUの価値観および基本的人権を尊重すべきだ」と投稿した。
2020/8/15 英政府 、コロナワクチン3.4億回分確保 付 WHO最新リスト
英政府は8月14日、ベルギーのJanssenと米国のNovavaxからワクチン9千万回分を確保したと発表した。
付記
富士フイルム子会社 FUJIFILM Diosynth Biotechnologies は、英国政府が調達するNovavaxのワクチン候補の原薬製造を英国拠点で行なう。
これで3億4千万回分を確保したことになる。
内訳は下記の通りで6種類。
種類
メーカー
百万回分
治験Phase
アデノウイルスワクチン
Oxford University/AstraZeneca
100
V
Janssen
30
T/U
mRNAワクチン
BioNTech/Pfizer
30
V
不活化ワクチン
Valneva
60
Pre - Clinical
Protein adjuvant
GSK/Sanofi
60
Pre - Clinical
Novavax
60
T/U
合計
340
英国の人口は68百万人のため、全部が有効なら、1人当たり5回分となる。ほとんどのワクチンは1人2回接種である。
しかし、治験で失敗に終わる可能性も高いため、英政府は保険をかけている。
購入したうちの少なくとも1つが役にたつことを期待しており、感染すれば最もリスクのあるグループに十分なワクチンが渡るよう考えているとしている。
価格は明らかにされていない。
治験Phaseは WHO資料
DRAFT landscape of
COVID - 19 candidate
vaccines
– 1 3
August
2020
2020/8/17 昭和電工の2020年6月中間決算
大幅減収、減益となった。中間決算は無配とした。期末配当は未定。
同社では、2021年以降に向けた経営改善への方針を明らかにした。
3千億円規模の資産のスリム化を行なう。設備投資の厳選で500億円を捻出、政策保有株の売却などで450億円以上の資産を圧縮する。非主力事業の売却でも2千億円を確保する。
収益面でも、コスト削減で200億円以上、本社の統合効果などで10億円以上を見込む。
単位:億円 (配当:円)
売上高
営業損益
経常損益
特別損益
株主帰属
損益
配当
中間
期末
17/ 12
7,804
777
639
-133
374
0
5
18/ 12
9,921
1,800
1,788
-333
1,115
2
10
19/ 12
9,065
1,208
1,193
-214
731
5
8
20/12予
9,600
-300
-550
-900
0
未定
増減
535
-1,508
-1,743
-1,631
-5
+
19/6中
4,755
855
848
-12
658
20/6中
3,266
-258
-432
-64
-546
増減
-1,489
-1,113
-1,281
-52
-1,204
昭和電工は日立化成の公開買付を行ない、第2四半期に連結子会社とした。
日立化成株式に対する公開買付けを行な
い、 4月28日に 87.61%を取得、同社を連結子会社と した。
2020年6月19日に日立化成を上場廃止、6月23日に完全子会社化した。
10月1日付で「昭和電工マテリアルズ」に商号変更する。
2019/12/25 昭和電工、日立化成にTOB
日立化成 の株式取得に係る費用として上期に 216億円(内、営業 費用
43億円、営業外費用173億円)を計上した。
うち、営業費用の43億円は「全社」に含む。
下期からの日立化成の損益は「昭和電工マテリアルズ」セグメントに示す。
2020年12月期予想の200億円の赤字には、連結時の棚卸資産の 時価評価に伴う連結上の売上原価調整額( 118億円)、のれんなど償却額(下期分
187億円 ) の合計305 億円を含む。
「のれん」 は昭和電工マテリアルズのセグメントで4790億円増加しているが、 取得原価の配分 が完了していないため、暫定的に算定したもの。 6千億円規模になるという試算も示した。
日立化成の株式取得費用を除く第2四半期の損益は不明。セグメント別損益には表示なし。持分法損益と思われるが、前年同期比で余り差はない。
特別損失として、黒鉛電極のドイツの生産拠点の閉鎖で47億円の損失を計上した。
電炉鋼メーカーにおける黒鉛電極の在庫調整が長引き、特に景気減速が目立つ欧州市場においては稼働率の低下が生じており、ドイツ・マイティンゲンにある生産拠点の閉鎖について労使協議で合意に達した。全体の 生産能力は、年産4万t
減の21万tになる。
部門別実績
当期の売上高は前期比で大幅減となった。無機のうちの黒鉛電極の数量減、市況低下による販売減が大きい。
17/12
18/12
19/12
19/6
20/6
増減
20/12予
石油化学
2,407
2,580
2,409
1,223
910
-313
化学品
1,315
1,390
1,402
651
644
-7
エレクトロニクス
1,206
1,044
957
442
440
-2
無機
652
2,575
2,215
1,389
400
-989
SDKマテリアルズ
ー
ー
ー
ー
ー
ー
2,800
アルミニウム
968
991
905
453
354
-99
その他
1,255
1,341
1,177
596
518
-79
合計
7,804
9,921
9,065
4,755
3,266
-1,489
9,600
無機(黒鉛電極とセラミックス)の売上高はグラフと表の通り、従来は600億円前後であったが、2018年12月期に急増し、2575億円となった。
2019年6月中間も1,389億円と好調が続いたが、下期には826億円に減り、2020年6月中間は更に400億円に下がった。
詳細については下記参照。
営業損益は石油化学と黒鉛電極(無機)の赤字が大きい。
17/12
18/12
19/12
19/6
20/6
増減
増減理由
20/12予想
石油化学
334
203
172
85
-37
-121
数量要因 -551
価格要因 -206
コストダウン +68
その他 -424
10
化学品
165
174
137
55
50
-5
130
エレクトロニクス
219
124
49
9
18
8
90
無機
71
1,324
893
718
-229
-947
-230
SDKマテリアルズ
ー
ー
ー
ー
ー
ー
-200
アルミニウム
67
49
17
5
-2
-7
15
その他
6
29
18
6
5
-1
10
全社
-84
-104
-78
-24
-63
-39
-125
合計
778
1,800
1,208
855
-258
-1,113
-300
石油化学は、ナフサ価格低下による受払差、タイムラグによるものが-85 億円。
黒鉛電極(無機)の減産強化による数量減、市況低下 による赤字が大きい。 特殊要因として、黒鉛電極の低価法による簿価切り下げ
-217 億円がある。
上記の通り、ほかに特別損失として黒鉛電極のドイツの生産拠点の閉鎖で47億円の損失がある。
SDKマテリアルズの200億円の赤字には、連結時の棚卸資産の 時価評価に伴う連結上の売上原価調整額( 118億円)、のれんなど償却額(下期分
187億円 ) の合計305 億円を含む。
昭和電工は2016年10月に、ドイツのSGL
Carnbon GmbH より黒鉛電極製造の子会社 SGL GE Holding GmbHを買収すると発表した。
ドイツ、オーストリア、スペイン、アメリカ(2ヵ所)、マレーシアの6カ所に製造拠点を持つ。米司法省の指示で米国工場を東海カーボンに129億円で売却した。
昭和電工は再編後に生産体制見直しや管理部門の機能集約などで60億円以上のコスト削減が可能と試算し、2019年での事業黒字化 を目指した。
直後に状況が一転した。中国で地条鋼という違法鉄鋼が禁止となり、 安価で出回っていた鉄鋼が不足し、代替として鉄スクラップから鉄鋼を生産する電炉での生産が急増、黒鉛電極の需要が急増、価格が急騰した。
これが2018年12月期に売上高、営業利益が急増した理由である。
本ブログはこう書いた。
但し、こんな状況はいつまでも続くとは思えない。
中国では環境規制に対応した大手企業が黒鉛電極を増産する計画があるほか、原料のニードルコークスの需給も2019年から緩和する見通しで、価格も元に戻る可能性がある。
2018/8/13
昭和電工、2018年6月中間決算、黒鉛電極事業が大増益
昭和電工は2020年2月5日、電気炉製鋼用の黒鉛電極の世界生産能力を削減すると発表した。昨年下半期より、顧客である電炉鋼メーカーにおける黒鉛電極の在庫調整が継続し、特に景気減速が目立つ欧州市場においては稼働率の低下が生じていた。
2020/8/18
連邦高裁、Qualcommの反トラスト法違反の地裁判決を破棄
連邦高等裁判所は8月11日、Qualcommが反トラスト法(独占禁止法)に違反したとの連邦地裁の判決を破棄した。
ーーー
2017年1月17日、米公正取引委員会(FTC)はQualcommをスマホ用の半導体の独占で連邦地裁に訴えた。
スマホ用モデムチップで圧倒的なシェアを持つQualcommが、その地位を背景に端末メーカーに対して不利な契約条件を無理強いしたり、過剰なライセンス料を要求するなど独占禁止法に違反する行為を行っているとした。
Qualcommはスマホの接続に必須の3G、4Gなどの無線通信技術CDMA(符号分割多元接続)の特許を持っている。
企業の特許が技術標準として採択される場合(標準必須特許) 、他企業がその特許を使用する時、特許権利者は「公平で、合理的、かつ非差別的」(FRAND:Fair,
Reasonable And Non-Discriminatory)に協議しなければならないという義務がある。
FTCはQualcommが次の点で独禁法に違反しているとした。
特許料を支払わないとライセンスしない(“no license,
no chips”)政策
モデム市場において90%を超えるシェアを確保していながら、何年もの間、CDMA/LTE特許に対して不当に高額なロイヤルティーを課していたことや、優位な取引を行うために半導体チップの出荷を中止するなど
FRANDに違反し、競合業者にライセンスを拒否
Appleに対し、Qualcommの競争相手から購入するのを禁止した。
これに対しQualcommは、自分たちのビジネスモデルは違法ではなく、競争と価格低下を招くので消費者のためになると主張している。また、そもそも自社の立場は独占的でないことも強調し、半導体チップの出荷を停止させたことなど一度もないと反論している。
2017年1月、Appleは米国でQualcommを提訴した。FTCのQualcomm提訴を受け、過去の取引条件の見直しを迫ったもの。Contract
manufacturer に特許料を支払わないよう指示した。
AppleとQualcommは2019年 4月16日、Appleの契約メーカー(Contract manufacturers)
との間のものも含めて、すべての訴訟を取り下げることで合意した。
また両社は、4月1日から6年間のライセンス契約(+2年延長オプション)に加えて、複数年のチップセット供給でも合意した。
2019/4/18 AppleとQualcomm、知財紛争で全面和解
FTCの提訴による裁判は、 カリフォルニア州北部連邦裁判所でLucy
Koh判事が担当し、2019年1月に審理が始まった。
米司法省の独禁法部門は2019年5月2日、もしQualcommが有罪とされる場合、過度な罰則が今後の5Gでの競争で米国が不利になることを懸念し、裁判所に対し、どんな罰則を与えるかについて注意深く考慮するべきだとし、罰則についてヒアリングを行うことを要請した。
2019/5/8 米司法省、Qualcommの独禁法違反裁判で裁判所に賠償額で注文
米連邦地裁の Lucy Koh判事は2019年5月21日、Qualcommが スマートフォン用チップ市場における支配的な立場を利用して違法に競争を阻害し、過剰な特許使用料を課したと判断した。
同社の商慣行が通信半導体の競争を長年にわたり阻害してきたとした。
需要家に値引きと引き換えにQualcommのチップを独占的に使用することを求めており、Appleも2011〜2016年にiPhoneにQualcommのモデムを独占的に使うことに同意したとしている。
顧客のスマホ企業などと契約条件を再交渉することを命じ、アップルとの取引を念頭に、競合の参入を妨げる独占契約を結ばないよう命じた。
命令を順守しているかどうかを、7年間にわたりFTCに報告することも義務付けた。
Qualcommは控訴した。
連邦高等裁判所のCallahan判事ら3人は8月11日、2019年の連邦地裁判決を満場一致で破棄した。
AppleやSamsungなどスマートフォンメーカーとのライセンス契約の見直しを命じた地裁の決定も無効とした。Qualcommの昨年のこうしたライセンス収入は46億ドルに上る。
判決理由は次の通り。
1) 標準必須特許のライセンスは、Qualcommは独禁法の上では ライバルにライセンスする義務はないため、独禁法違反になるものではない。
「公平で、合理的、かつ非差別的」な協議を義務付けた FRANDの違反の問題は(高裁は違反しているかどうかを判断する必要もなく、実際に判断していないが)、独禁法の問題ではなく、契約法と特許法の問題である。(この法廷で裁くことではない。)
2) Qualcommのロイヤリティや“no license, no
chip”方針は、ライバルのmodem chip の売上高に反競争的な上乗せにはならない。Qualcommの商慣行は市場で競争を妨げるものではない。
3) Qualcommの2011年と2013年のAppleとの契約は、CDMA
modem chip市場で競争を著しく妨げる効果を持たない。
4) Appleは既に数年前にこれらの契約を終了させており、禁止する理由はない。
Qualcommは、標準必須特許については 、特許権利者は「公平で、合理的、かつ非差別的」(FRAND:Fair,
Reasonable And
Non-Discriminatory)に協議しなければならないという義務に違反していることが問題で、FTCや地裁はこれが独禁法違反であるとした.
これに対し 高裁は、基本的にライセンスするかどうか、ライセンス料をどうするかは企業が自由に決めることであり、独禁法上は問題でない。FRANDに違反して高いライセンス料を取るのは契約法や特許法の問題として訴えるべきであるとの立場である。
米司法省の独禁法部門が2019年5月に、Qualcommが有罪とされる場合、今後の5Gでの競争で米国が不利になることに懸念を表したが、これが判決に影響したかも知れないとの報道もある。
FTCは判決に不満を表明し、「今後の選択肢を検討する」としている。
2020/8/18 中国で新型コロナウイルスワクチンに初の特許
人民網は8月17日、軍事科学院軍事医学研究院のチームと康希諾生物(Cansino Biologics)
が共同で特許出願した新型コロナウイルスワクチンがこのほど、中国初の新型コロナワクチン特許を取得したと報じた。
このワクチンは、Cansino BiologicsとBeijing
Institute
of Biotechnologyが治験を進めているワクチンで、 中国人民解放軍の軍事科学院軍事医学研究院との共同開発である。
Developer/manufac turer
P latform
Type
doses
Timing
Route
Phase
1
1/2
2
3
CanSino Biological
Inc./
Beijing Institute
of Biotechnology
Non - Replicating
Viral Vector
Adenovirus Type 5 Vector
1
IM
〇
〇
国家知的財産権局の発明特許授与通知書によると、同特許名は「ヒト複製欠陥アデノウイルスをベクターとする新型コロナウイルス組換えワクチン」。発明者は軍事科学院軍事医学研究院の陳微氏ら15人で、3月18日に特許出願が行われ、8月11日に特許を取得した。陳氏等3人は11日に、新型コロナとの戦いにおける優れた貢献により、「人民英雄」国家栄誉称号を授与された。
同特許の概要:
「本発明はヒト5型複製欠陥アデノウイルスをベクターとする新型コロナウイルスワクチンを提供する……同ワクチンはマウス及びモルモットに対して良好な免疫原性を持ち、短時間内に有機体の強い細胞・体液免疫反応を誘発する。HACE2遺伝子組換えマウスの保護効果の研究によると、Ad5-nCoVは14日後に肺内部のウイルスの量を大幅に引き下げることができ、同ウイルスが2019年新型コロナウイルスに対して良好な免疫保護効果を持つことを物語る。また同ワクチンはスピーディかつ簡単に生産でき、短期間内に大規模生産が可能で突発的な感染症に対処することができる」。
同ワクチンは国内と海外でそれぞれ1・2期臨床試験に入っており、ワクチンの安全性と免疫原性を検証した。
CanSino によると、第3相治験実施でロシア、ブラジル、チリと協議している。
2020/8/18 米政府、香港製品に原産地「中国」表示を義務付けるが、中国本土の関税率適用せず
米国の税関・国境警備局は8月11日、香港で製造され米国に輸出する商品はすべて9月25日から「Made in
China」のラベルを貼り、原産地は中国と表明しなければならないと発表した。
トランプ大統領は7月14日、香港に対する優遇措置を廃止する大統領令に署名した。
「香港は今後、中国大陸と同様に扱われる。特別な恩恵も、特別な経済的待遇も、注意が必要な技術の輸出もなくなる」と述べた。
これまでの流れ、トランプ大統領の上の発言と税関・国境警備局のラベル変更命令から、各紙は下記の通り報じ、本ブログもそれに従った。
米政府は8月11日、米国が輸入する香港製品に対し、9月26日から中国本土と同じ関税率を適用すると発表した。
米中貿易戦争でトランプ政権が発動した年間輸入総額3700億ドル(約39兆円)相当の対中制裁関税も上乗せする。
2020/8/13 米政府、香港製品に中国本土の関税率適用、原産地「中国」表示も義務付け
しかし、これが間違いであることが分かった。
税関・国境警備局はこのたび、FAQ(よく寄せられる質問解説)を発表し、この問題について解説した。
Frequently Asked Questions - Guidance on Marking of Goods of Hong Kong –
Executive Order 13936
「Made in China」へのラベル変更の影響は?
ラベルの変更だけであり、通常関税、特別関税の扱いに変更はない。報告を求められた場合は原産国として従来通りHKと表示する。
The change in marking requirements does not
affect country of origin determinations for purposes of assessing ordinary
duties under Chapters 1-97 of the HTSUS or
temporary or additional duties under Chapter 99 of the HTSUS.
Therefore, goods that are products of Hong Kong should continue to
report International Organization for Standardization (ISO)
country code “HK” as the country of origin when
required.
ーーー
全く不思議な話で、これまでの流れに合わない。
関税での扱いが従来の香港(HK)のままなら、何のためのラベル表示変更なのであろうか。
今後、どうなるのか、注視する必要がある。
2020/8/19
イスラエルとUAE、新型コロナワクチンで協力
Trump大統領は8月13日、アラブ首長国連邦(UAE)とイスラエルが国交正常化に向かうことで合意したと発表した。アラブでは1979年のエジプト、1994年のヨルダンに次ぐ3カ国目となる。
3者の電話会談によって実現した共同声明によると、UAEとイスラエルの両国の使節団は今後数週間以内に会談し、相互の国での大使館の設置、直行便の就航を含め、投資、観光、セキュリティ、通信、技術、エネルギー、医療、文化、環境分野など多岐にわたる内容の2国間協定に調印する。
共同声明ではまた、新型コロナウイルス感染症の治療やワクチン開発に関して、両国が「即座に」協力を拡大・加速するとし、両国の協業が地域のイスラム教徒、ユダヤ教徒、キリスト教徒の命を救う助けとなるだろうと言及している。
両国の協力の第一弾として、UAEのAPEX
National Investment とイスラエルのTERA Group は新型コロナウイルス対策の研究開発で協力する"strategic
commercial agreement"に調印した。UAE国営news agency WAMが8月16日に報じた。
UAEのAPEXは健康関連を含む公共投資部門で活動している。
イスラエルのTERAは2003年設立で、 Israeli Weizmann
Institute of Scienceの一部であり、研究開発に投資している。
WHO資料(2020/8/13)では Israeli
Weizmann Institute of Scienceの コロナワクチン開発状況は下記の通り。
developer/manufac turer
platform
Type
Phase
Israel Institute for Biological
Research/
Weizmann Institute of Science
Replicating Viral Vector
VSV-S
Pre-Clinical
Israel Institute for Biological Research
は先週、ヒトでの治験を10月に開始すると発表した。
このワクチンの治験をUAEで実施する可能性がある。
本年6月にUAEは、UAEの2社とイスラエルの2社が新型コロナウイルスを含む医薬プロジェクトで協力すると発表、7月にAbu
DhabiのGroup 42 がイスラエルの技術企業 Rafael Advanced Defense Systems と Israel Aerospace
Industriesの2社と新型コロナウイルス対策での技術開発で提携したと発表している。
このAbu DhabiのGroup 42はSinopharmのワクチンのPhaseV治験をUAEで実施している。
中国医薬集団(China National Pharmaceutical Group
Corporation:Sinopharm )傘下の中国生物技術(China
National Biotec Group
:CNBG) は、開発中の新型コロナウイルス不活化ワクチン候補の第3相臨床試験をアラブ首長国連邦(UAE)で開始したと発表したが、Group 42
と組んで治験を実施する。
当初Abu Dhabiで治験を開始したが、先週、Sharjah首長国にも広げた。
2020/6/26 中国医薬集団、新型コロナウイルスワクチンの第3相臨床試験をUAEで実施
2020/8/19
米国共和党の
反Trumpの Lincoln
Project
Trump大統領のやり方に反対する米国の共和党員が結成した政治団体「Lincoln
Project」が、選挙広告を次々と繰り出し、Trump 攻撃を続けている。
Trump大統領は「憲法違反を犯し、秩序、礼儀正しさ、品位、アメリカ社会に反映する公約の基準を満たしていない」とする。
南北戦争による分断の危機を乗り越えたLincoln大統領を理想の大統領として位置づけ、Trump大統領は国の分断を促進する大統領であるとして、次期大統領選挙でTrump
を負かす運動を始めた。
設立者は弁護士のGeorge T. Conway III(夫人は大統領の側近で政治顧問のKellyanne
Elizabeth Conway) 、John
McCain 元大統領候補の選挙参謀だったSteve Schmidt、政治コンサルタントのJohn Weaver、
政治ストラテジストのRick Wilsonで、2019年12月17日にNew York Times のOpinion欄で Donald
TrumpとTrump主義を打ち負かすことをミッションとして運動すると発表した。
内容はホームページ で公開している。
愛国心と、Donald
Trumpの犯罪、不正、腐敗に直面する我が国の復活は、単なる政治以上のものある。アメリカ人として、被害を食い止めねばならない。
今後11か月間、投票箱でTrump大統領とTrump主義を打ち負かし、法の支配、憲法を保持する愛国者を選出することに専念する。
その結果、民主党が上院で多数を占め、下院で更に拡大するとしても。
Trumpは国民のリーダーの大統領としてやるべきことをやっていない。彼には道徳的な羅針盤も仕える気質もない。彼のビジョンは、彼に直接直面するものに限定されてい
る。
この大統領の行動は、議会共和党の狂った黙認によってのみ可能である。 議会の共和党はTrumpの残酷さをコピーし、腐敗を擁護している。
我々はLincoln大統領を理想とする。彼はバラバラになった国を統合した。
しかし、傷を治すには危険を取り除かねばならない。Trump主義の災厄を取り除いて初めて、我国は元に戻せるのだ。
ホームページでは頻繁にTrump 大統領を批判するニュース
と ビデオ を発表している。8月は14日までに5回、ニュースを出している。
ビデオの再生回数は6月だけで10億回を記録し、「選挙広告の拡散という効果的な戦い方を示し、Trump氏に政治的打撃を与えている」。
民主党のBiden元副大統領を応援し、Kamala
Harris 副大統領候補を支持する発表を行っている。 民主党が上院で多数を占め、下院で更に拡大するとしても
止むをえないとする。
2020/5/13 Republicans & Independents
for BIDEN launched by the Lincoln Project
2020/8/11 The Lincoln Project Supports Kamala Harris For Vice
President
2020/8/20 米商務省、Huawei向け輸出規制を更に強化
米商務省の産業安全保障局 (Bureau of Industry and
Security ) は8月17日、Huaweiに対する輸出規制を更に強化すると発表した。米国技術が関わる半導体やソフトがHuaweiにわたるのを完全に遮断する。
さらに禁輸リストであるEntity ListにHuaweiの関連会社38社を追加した。
なお、2019年5月のEntity List
指定時に、携帯電話のソフトウェア更新やネットワークの保守・運用に必要な一部の取引を90日間認めた。「現在Huawei
製のスマートフォンを使っている一般ユーザーと地方のブロードバンドネットワークのための運用継続を認めるもの」とした。
この措置は次々延長された。最後の延長は 2020年8月13日までとなっているが、今後は延長しない。
ーーー
1) 米商務省は2019年5月15日、Huaweiに対する米国製ハイテク部品などの事実上の禁輸措置を発表した。
輸出管理法に基づき安保上懸念がある企業を列挙したEntity
List (規則 744.11(b) )にHuawei を追加した。
同社が制裁対象のイランとの金融取引に関わったと指摘している。
今後、日本企業を含む企業が米国のハイテク製品や技術を同社に輸出する場合は商務省の許可が必要になり、原則却下される。
「再輸出」の規制は米国の国内法を海外の国にも適用する「域外規制」であり、もし、日本企業がこれに違反し、米国品を再輸出した場合には、罰金、禁固、取引禁止顧客としての指定、米国政府調達からの除外等が課せられ、そのため実質的に米国との取引が以後出来なくなる事態が生じる。
「域外規制」では、イラン、北朝鮮、シリア、スーダン向け輸出については米国品が10%以上、それ以外の国への輸出の場合は米国品が25%以上含まれておれば、再輸出となり、規制対象となる。
2019/5/16
米国、Huawei を対象に2施策
これには「抜け穴」 (米商務省)があった。
Huaweiは半導体生産の多くをTSMCに委託しており、これは対象になっていない。
2) 産業安全保障局 (Bureau of Industry and Security ) は2020年5月15日、Entity
ListによるHuaweiに対する輸出禁止措置を強化すると発表した。
下記の条項が追加された。
チップセットのような製品で、米国以外にある規制対象の半導体製造装置で、Huawei 及びHiSiliconなど子会社の設計仕様書でつくられた製品
これにより、米国に由来する技術を使った半導体は、外国製でも同社への輸出ができなくなる。
これを受け、台湾積体電路製造(TSMC)はHuaweiからの新規受注を止めた。
2020/5/18
米商務省、Huawei向け輸出規制を強化
3) 今回は更に規制を強化する。
輸出禁止に下記が追加された。
米国のソフトウエアか技術が、外国製品に使われており、それがHuaweiが生産、購入、注文するパーツ、コンポーネントや設備に組み込まれたり、その生産や開発で使われたりする場合
これにより、米国のソフトウエアや技術を使った外国製のチップは米国製のチップと同様に禁止される。
2020/8/20 豪州政府、AstraZenecaと契約、ワクチンを国産、全国民に無料接種
豪州政府は8月19日、下記の発表を行なった。
AstraZenecaと Letter of Intent を締結した。
AstraZenecaとUniversity of Oxford
のワクチンの開発、生産、販売に関するもので、安全性と有効性が確認されれば、ワクチンを豪州で生産する。
最終契約書で販売、タイミング、ワクチンの価格を決める。
このワクチンが成功なら、豪州が生産を行い、2500万人の豪州人全てに無償で接種する。
太平洋の友人や東南アジアのパートナーにもワクチンが早く渡るよう努力する。
豪州は豪州及び世界各地でのワクチンや治療に333百万ドルを投資している。うちワクチンには256百万ドルを投資した。
これには University of
Queenslandの独自の“molecular clamp” ワクチンへの500万ドルの投資を含む。最近、豪州で治験を開始した。
2020/8/21
武田薬品、大衆薬事業を米投資ファンドに売却へ
武田薬品工業が「アリナミン」などの一般用医薬品事業を扱う完全子会社の武田コンシューマーヘルスケアを米投資ファンド大手 The Blackstone
Group に売却する方向で最終調整に入った。共同通信が8月19日に報じた。
売却額は2500億円程度で、アイルランド製薬大手シャイアーの買収で膨らんだ負債を圧縮し、抗がん剤など医療用医薬品事業の新薬開発に経営資源を集中する。
付記
武田薬品は8月24日、売却を発表した。
売却先 The Blackstone Group Inc.
譲渡実行日 2021年3月31日(予定)
売却価額 2,420億円に純有利子負債や運転資本等に係る調整を行う。
付記 2021/3/31に新社名は「アリナミン製薬」 となった。
付記
武田薬品工業は、完全子会社の医薬品および医薬部外品の製造受託会社である日本製薬の全株式をアリナミン製薬に2024年7月1日付で譲渡した。
武田薬品→アリナミン製薬はアリナミンVの販売を始めた1987年から日本製薬に製造を委託してきた。アリナミン製薬は同社を子会社化することで、ドリンク剤の製造販売を自社で一貫する体制にする。消費者のニーズに迅速に対応するほか、安定供給につながるとしている。
付記
アジア系投資ファンドのMBKパートナーズ は2024年7月3日、米投資会社ブラックストーン傘下のアリナミン製薬を買収すると発表した。買収金額は非公表。
ーーー
武田薬品は2019年1月8日付で 、アイルランドの製薬大手 Shire
plc
の買収を完了した。
買収金額(円換算)は、買収を発表した2019年5月時点は約6.8兆円だったが、円高が進んだことで約6.2兆円となった。
同社では 普通株式を発行し、3.1兆 円を取得した。
2019/1/5 武田薬品、1月8日に Shire
plcの買収完了へ
Shire買収と同時に、 債務圧縮のために計100億ドル規模の資産売却方針を掲げ、武田薬品とShireのノンコア事業の売却を進めてきた。
時期
売却事業
売却先
売却金額
2019/5
Shireの ドライアイの兆候・症状の治療薬
Novartis
34億ドルの一時金
最大19億ドルのマイルストン
2019/11
ロシア、ジョージア、独立国家共同体の国々に限定されたノンコアの一般用医薬品および医療用医薬品
ドイツのSTADA
Arzneimittel
総額6.6億米ドル
中近東・アフリカで販売する一部の医療用医薬品・一般用医薬品約30製品のポートフォリオ
スイスのAcino
2億米ドル以上
2020/3
ラテンアメリカにおけるノン・コア一般用医薬品、医療用医薬品
Hypera
Pharma
8億2,500万米ドル
2020/4
欧州で販売する一般用医薬品および医療用医薬品ポートフォリオの一部、ならびにデンマークおよびポーランドに所在する2つの製造拠点
デンマークのOrifarm
Group
最大約6億7,000万米ドル
2020/6
アジア・パシフィックの国々のみで販売する一部のノンコアの一般用医薬品及び医療用医薬品
韓国のCelltrion
一時金2億6,600万米ドル
マイルストン最大1,200万米ドル
付記
2020/9
欧州およびカナダのノンコア医療用医薬品
独 Cheplapharm
5億6, 200万ドル
付記
2020/9
手術用パッチ剤「TachoSil®」
Corza Health, Inc.
3億5,000万ユーロ
製造は引き続き、オーストラリアの武田施設で行なう。
2020/6/16
武田薬品、アジア・パシフィックのノンコア医薬品を韓国のCelltrion社に譲渡
同社は2020年4月頃に武田コンシューマーヘルスケアを売却する方針を固めた。
同社の戦略は次の通り。
-グローバル戦略に沿って主要な5つのビジネスエリア(消化器系疾患、希少疾患、血漿分画製剤、オンコロジー、ニューロサイエンス)にさらに注力、ターゲットを絞った革新性の高い医薬品に集中
-「戦略投資の加速化」、「機動性のある組織の構築」、「変革を支えるための組織力の向上」を3つの柱に改革を進める
-主要な5つのビジネスエリアに資源とリソースを集中し、患者のアンメット・メディカル・ニーズにさらに貢献
国内の大衆薬市場については、人口減を背景に伸び悩んでおり、クリストフ・ウェバー社長はかねて大衆薬事業を「コアビジネスではない」として売却を探っていた。
今春から売却に向けた入札を実施、外資系ファンドや国内製薬会社が応札していた。ブルームバーグは7月末に売却先として大正製薬ホールディングスが最有力候補に浮上
していると報じていた。
最終的に Blackstone との交渉がまとまり、 近く正式な売買契約を結ぶという。
Blackstoneは2019年3月15日、鎮痛剤の「カロナール」などを主力品とするあゆみ製薬を買収すると発表した。負債を含む買収規模は1000億円前後になる。
Blackstoneは2018年から日本市場で企業投資事業を本格展開しており日本での1号案件となる。
あゆみ製薬は2015
年1月設立で、同年8月に参天製薬の抗リウマチ薬事業を、2015年12月には昭和薬品化工の医科事業(解熱鎮痛薬カロナール)をそれぞれ承継し、リウマチ・整形外科の領域に特化したスペシャリティファーマとして事業を展開している。
Blackstoneが海外で投資しているバイオ医薬領域の製品を日本市場で展開するうえでの受け皿として活用し、企業価値の向上を狙う。
武田薬品は、1950年に日本で最初の総合ビタミン剤「パンビタン®」を発売し、その後、1954年には「アリナミン®」の開発に挑戦し、成功した。
「戦後の食糧難からくる人々の栄養不足を救いたい」という想いが武田コンシューマーヘルスケアの原点であった。
2017年4月に100%子会社武田コンシューマーヘルスケが営業を開始した。
武田コンシューマーヘルスケアの2019年3月期の売上高は641億円で、営業利益は129億円だった。
扱い製品は下記の通り。
ビタミン剤・ミネラル・滋養強壮保健薬
アリナミン、アクテージ、ハイシー
ドリンク剤・パウチタイプ
アリナミン、ハイシー、ベンザブロック滋養内服液
かぜ薬
ベンザブロック、ベンザエース
鎮咳去たん薬
ベンザブロックせき止め、アネトンせき止め
鼻炎用薬
ベンザ鼻炎薬
外皮用薬
みずむし・たむし用薬
便秘薬
タケダ漢方便秘薬
整腸薬
ビオスリー
胃腸薬
ザッツ、タケダ漢方胃腸薬
解熱鎮痛薬
フェリア、タイレノールA、グレラン
鎮うん剤
タケダ乗り物酔い止め
痔疾用薬
ボラギノール
目薬
マイティア
漢方製剤
ストレージタイプ
禁煙補助剤
ニコレット
検査薬
ハイテスター
スキンケア・ボディケア・ヘアケア
薬用入浴剤・薬用石けん
その他
緑の習慣、マイティアハードレンズ装着液
2020/8/22 ナファモスタットのCOVID-19への効果はレムデシビルの600倍、韓国研究
韓国パスツール研究所(Institute
Pasteur Korea )は、COVID-19の治療薬「ナファモスタット」の効果がGilead
Sciencesの「Remdesivir」より 効果が600倍高いという研究結果を、8月7日発行の国際学術誌「Journal of Medical Viology」に
発表した。
https://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1002/jmv.26397
ーーー
東京大・医科学研究所の井上純一郎教授らは3月18日、急性膵炎の治療薬として国内で長年使われてきた点滴薬剤「ナファモスタット(商品名フサン)」が新型コロナウイルスの感染を阻止する可能性があると発表した。
ポイント:
COVID-19の原因ウイルスの感染の最初の段階であるウイルス外膜と、感染する細胞の細胞膜との融合を阻止することで、ウイルスの侵入過程を効率的に阻止する可能性がある薬剤としてナファモスタット(商品名フサン)を同定した。
本年3月初めにドイツのグループはナファモスタットの類似の薬剤であるカモスタット(商品名フォイパン)の有効性を発表したが、カモスタットと比較してナファモスタットは10
分の1以下の低濃度でウイルスの侵入過程を阻止した。
ドイツ霊長類センターなどの研究班は3月上旬、新型コロナウイルスの細胞への侵入機構について細胞株を用いてin
vitroで実験した結果を、「Cell」に論文投稿した。
カモスタットメシル酸塩が新型コロナウイルスのヒト細胞への感染を妨げることを培養細胞などを使った実験で確認したと報告している。
ナファモスタット、カモスタットともに急性膵炎などの治療薬剤として本邦で開発され、すでに国内で長年にわたって処方されてきた薬剤である。安全性については十分な臨床データが蓄積されており、速やかに臨床治験を行うことが可能である。
2020/3/18
急性膵炎治療薬が新型コロナウイルス感染阻止の可能性
東大医学部附属病院は7月6日、重症患者へのナファモスタットメシル酸塩(商品名フサン他)、ファビピラビル(商品名アビガン)併用療法の観察研究の結果を発表した。
患者11例中10例で症状の軽快が見られ「併用の有効性を示唆する」としている。結果は3日付の医学誌『クリティカル・ケア』(電子版)に掲載された。
2020/5/12 東京大学、アビガンとフサンの併用療法の臨床研究開始
ーーー
韓国パスツール研究所の研究チームはヒト肺細胞(Calu−3) を新型コロナウイルスに感染させた後、ナファモスタット、レムデシビルなど既にFDAの承認を受けた24の薬物をそれぞれ注入して「IC50」値を測定・比較した。
チームは5月サルの腎細胞(VERO)でも同じ実験をしていた。
IC50とは、ウイルス活性を半分に下げるのに必要な薬物の濃度のことで、IC50が低いほど効果が高い。
結果は下記の通りで、
「ナファモスタット」の効果は「Remdesivir」より 約600倍高い。
「ナファモスタット」の効果は、以前のサルの腎細胞での実験に比べ、ヒト肺細胞では6000倍高い。
2020/8/23 EU、トランプ大統領要望の米産ロブスター関税を撤廃
米国とEUは8月21日、一部の輸入関税を見直すことで双方が合意したことを明らかにした。
EU側が米国産のロブスター(生鮮と冷凍)の関税( 種類によって6%と8%) を撤廃する。かわりに、米国はEU産のガラス製品やライターなど1億6千万ドル相当の輸入品の関税を半分に引き下げる。
米国とEUの貿易交渉は対立点が多く、進んでいないが、ライトハイザーUSTR代表とEUのホーガン欧州委員(通商担当)は「追加の合意につなげる出発点としたい」との共同声明を発表した。
ーーー
トランプ米大統領は6月5日、EUと中国が米国産ロブスターに対する関税を撤廃しなければ、対抗措置として関税を発動すると警告した。
「EUが早急に関税を撤廃しなければ、EUから輸入する自動車に同等プラス("equivalent-plus")の関税を課す」と述べた。
メーン州で面会した漁業関係者が「隣のカナダはEUと貿易協定を結んでいるのでロブスターに関税がかからず、我々は不利だ」と不満を伝えると、「欧州や中国がロブスターへの関税をやめなければ、我々も関税を課す」と述べた。
EU市場は米国のロブスター輸出の15〜20%を占め、2億ドルの市場であるが、これまでカナダとは市場を分けており、カナダ産は主に北欧、米国産は南欧(スペイン、イタリア、ギリシャ)が主であった。
カナダ・EU包括的経済連携協定(CETA)が2017年9月21日に暫定適用が開始され、カナダ産ロブスターはこれまでの関税
1ポンド当たり約1ユーロがゼロとなり、競争力が高まった。
この結果、カナダ産ロブスターは南欧でも米国産の市場を奪うようになった。
中国については、 2020年1月15日の「第一段階貿易合意」で、 米国は1次〜3次の2500億ドル相当分の25%関税は据え置き、中国もこれに対応する1100億ドル相当分の関税を(9月11日除外分を除き)据え置いた。
この結果、米国産ロブスターへの25%追加関税は残ったままである。
2020/6/11 トランプ大統領、ロブスターでEUと中国に対抗関税警告
ーーー
今回、EUは米国のロブスターの関税を撤廃する。2017年の米国のEU向け輸出額は111百万ドルであった。撤廃期間は5年であるが、欧州委員会はこれを期限無しにする手続きを開始する。
関税撤廃は最恵国待遇ベースとなり、他国にも適用される。
WTOの規定は原則、最恵国待遇であり、FTA契約を締結する場合には、これが実質的にすべての貿易を対象とし、原則10年以内に関税撤廃を行うなどの条件を満たせば、FTA相手国のみに適用できる。
今回は特定の製品を対象とした契約のため、最恵国待遇ベースとなる。
米国は見返りに、EUの特定の調理済み食品、クリスタルガラス製品、surface
preparation、発射薬、シガレットライター、ライター部品などを含む年間160百万ドル相当の製品の関税を50%引き下げる。これも当然、最恵国待遇ベースとなる。
関税引き下げはいずれも、8月1日に遡って適用される。
米国とEU間の関税削減は初めて。
本件は、カナダがEUとのFTAで勝ち取った関税免除の影響であり、EUが不当なやり方をした訳ではないのに、トランプ大統領がメーン州の漁業関係者の陳情を受け、自動車への課税などの脅しで米国産の関税撤廃を要求したという、ごり押しである。
それが通って関税が免除されることとなり、トランプ大統領にとって政治的な支援材料になる。
2020/8/23 新型コロナウイルスワクチンの日本における生産体制の構築
厚労省は本年6月、 新型コロナウイルスワクチンの国内における早期供給を促すため、ワクチン生産体制等緊急整備事業の公募をおこなった。
https://www.mhlw.go.jp/sinsei/chotatu/chotatu/kikaku/2020/06/kk0612-02.html
厚労省は8月7日、採択結果を発表した。 9 件の応募が有り、 評価の結果、6事業者の事業を 採択した 。
厚生労働省は6社に対して総額最大約900億円の助成を決めており、複数のワクチンを国内で生産する体制を整える。
各社発表等による内容は下記の通り。
助成金
事業
英
AstraZeneca
約162億円
日本に1億2千万回分供給で基本合意
供給支援:
第一三共バイオテク(製剤化)→第一三共
KMバイオロジックス(製剤化)→Meiji Seikaファルマ
日本での原液製造で JCRファーマと協議
アンジェス
約 94億円
ワクチンの実生産(大規模生産)体制の早期構築を
図るための事業
KMバイオロジクス
約 61億円
上記 明治ホールディングスの連結子会社
原液製造に係る既存設備 の改造、精製・ユーティリティ設備の整備、 原材料保管・品質管理作業に係る設備の新設等
塩野義製薬
約223億円
自社ワクチンの生産体制構築
武田薬品工業
約301億円
Novavaxが開発中のワクチンの 製造技術移転、生産設備の整備、スケールアップ
第一三共
約 60億円
同社開発ワクチンDS-5670の第一三共バイオテックの工場での生産体制整備
合計
約901億円
AstraZeneca:
厚生労働相は8月7日、AstraZenecaから日本国内向けに1億2千万回分の供給を受けることで基本合意したと発表した
ワクチンは原液を輸入するほか、国内メーカーに原液の製造を委託し、国内で供給するという。
第一三共は6月26日、このワクチンの国内における製剤化(バイアル充填、包装、保管等)などについてAstraZenecaと協議を進めることに合意したと発表した。
製剤化は、子会社の第一三共バイオテックがAstraZenecaから原液供給を受けて実施する予定で、「新型インフルエンザワクチン開発・生産体制整備事業」の設備の活用も検討する。
明治ホールディングスは同日、傘下のMeiji Seika
ファルマとKMバイオロジクスが、アストラゼネカ鰍ェ日本へ導入予定の新型コロナウイルスワクチンの国内安定供給に向けた協議を進めることに合意したと発表した。KMバイオロジクスがAstraZenecaから原液の提供を受けて製剤化(バイアル充填・包装)した後、Meiji
Seika ファルマが保管・配送を行い、アストラゼネカ鰍ニ協力して国内流通に必要な準備を行う。
2020/6/27 政府、新型コロナワクチン供給でAstraZenecaと協議
JCRファーマ( 旧
日本ケミカルリサーチ)は7月31日、 AstraZenecaが開発中の ワクチン について、国内における原液製造に関し協議を進めることとなったと発表した。
KMバイオロジクス :
上記の明治ホールディングス発表では KMバイオロジクスは製剤化担当となっているが、 今回、原液製造に係る既存設備 の改造等々で助成を得た。
アンジェス:
開発中の自社ワクチン の大阪市立大学医学部附属病院での第 1/2 相臨床試験で高用量含め予定通り、全ての接種が完了した。 今後、接種間隔および接種回数等を検討する別の第 1/2 相臨床試験を実施する。
2020/6/26 アンジェスのコロナワクチン、大阪市大病院で治験へ
今回 、このワクチンの 大規模生産体制の早期構築を図る。
塩野義製薬:
グループ会社のUMNファーマが有するBEVSを活用した遺伝子組換えタンパクワクチンを開発している。
基本情報
取り組み状況
目標と対応
生産体制の見通し
組換えタンパクワ クチン
(感染研 /UMN フ
ァーマ / 塩野 義 )
遺伝子組換え技術を用いて培養細胞 に より コロナ ウイルス のタンパク質 ( 抗原 ) を製造し 、 コロナ ウイルス タンパク質 ( 抗原 ) を人に投与する ための注射剤 。
○ ワクチンの候補を作製 中
○動物を用いた有効性評 価を開始予定
有効なワクチン候補を選定し 、 その後 、 非臨床試験及び臨床試 験の実施を目指す 。
塩野義が開発主体
開発と並行して、国内で唯一BEVS技術を用いた遺伝子組換えタンパクワクチンの製造実績を有するアピ鰍ニそのグループ会社である涯NIGENと提携し、生産体制の立ち上げを進めている。
2021年末までに3,000万人分以上のワクチンを生産することを目標に、今回の助成金を活用し、生産体制の構築・増強を加速する。
武田薬品工業:
8月7日、米 Novavaxが開発中のワクチンNVX-CoV2373の日本における開発、製造、流通に向けた提携に関して基本合意したと発表した。
- Novavax社が新型コロナウイルス感染症ワクチンの製造技術を提供し、武田薬品が日本国内向けにワクチンを製造・流通
- Novavax社がアジュバントMatrix-Mを供給
- 日本政府は本ワクチンの製造技術移転、生産設備の整備、スケールアップに対し助成
武田薬品は Novavaxからのワクチン製造技術の移転、生産設備の整備、およびスケールアップの資金として、厚生労働省から助成金を受領する。
年間2億5千万回分以上のワクチンの生産能力を整備する。
第一三共:
同社が開発中の遺伝子(mRNA)ワクチン(DS-5670)は2021年3月頃の臨床試験開始に向けた準備を進めているが、子会社の第一三共バイオテックの工場にDS-5670の生産体制を整備する。
ーーー
WHO資料
DRAFT landscape of
COVID - 19 candidate
vaccines による各ワクチンの状況:
2020/8/24 モーリシャスの重油流出現場へ日本のマジックファイバー油吸着材
JICAは8月17日、モーリシャス共和国政府からの要請に基づき、同国沿岸で座礁したばら積み貨物船「WAKASHIO」による油流出事故に対し、国際緊急援助隊・専門家チーム(二次隊)を派遣すると発表した。
一次隊 (団長1名、専門家4名、業務調整員1名)の6名は8月10日に出発し、現地で油防除作業等に関する支援活動を実施している。
二次隊は、団長1名、専門家5名、業務調整員1名の計7名で、現地で活用される油吸着材等の資機材を携行 し、環境分野を中心に支援活動を実施する。
ーーー
7月25日夜、長鋪汽船の子会社が所有し、商船三井が傭船してインド洋を航行していたパナマ船籍のばら積み貨物船「わかしお」がモーリシャス南東部
Pointe d'Esny付近でサンゴ礁に乗り上げ座礁した。積み荷 はなく 、鉄鉱石の輸送依頼があった場合に備え 、中国からシンガポール経由でブラジルに向かっていた。座礁時に 約3800トンの重油と約200トンの軽油を積んでいた。
長鋪(ナガシキ)汽船は江戸時代から150年以上海運業に携わり、国際海上物流を支える老舗企業で、岡山県笠岡市に本社を置く。
この海域を航行するほかの船舶はモーリシャスの領海(岸から22キロ以内)に入らないよう距離を保つのに対し、「わかしお」は立ち寄る予定のない島に向けて一直線に向かうルートを取った。
捜査関係者の話として、複数の乗組員が島に近付いた理由として「インターネット接続のため、島のWi-Fiに接続するためだった」と供述している
。自動操縦に切り替えて、乗組員の誕生日パーティを開いていたとの報道もある。
地元警察は安全な航行を怠った疑いで船長ら2人を逮捕した。
2週間後の8月6日朝には燃料タンクに亀裂が入り、重油1000トン余りが流出した。流出した重油はモーリシャスの生態系を破壊し、経済や食料安全保障、健康にも深刻な影響を及ぼすことが懸念されることから、モーリシャスの首相は8月6日に環境緊急事態宣言を発出した。
モーリシャス政府などは8月12日までに海面を漂う約500トンの重油を回収したが、残る約500トンの多くが海岸やマングローブ林に漂着している。流出した油は、サンゴ礁や白い砂浜、手付かずのラグーンを汚染して
おり、 生態系への影響も懸念される。 沿岸部にはラムサール条約に指定された区域もある。
周辺に群生するマングローブ林にも重油が流れ込んでいる。マングローブ林は大小の根が複雑に絡み合うため、重油が入り込むと、ポンプなどの機材を使った除去ができず、根一本一本の油を丁寧に拭き取る地道な作業が求められる。 モーリシャス当局は8月15日、貨物船の船体が2つに割れたと発表した。
重油の漂着地域は下記の通り。
ソース:https://reliefweb.int/map/mauritius/mauritius-oil-spill-dg-echo-daily-map-19082020
モーリシャス政府は14日付の声明で、「経済、社会、環境面に影響が出ている」と指摘、「環境汚染による損失や損害の法的責任を追及する」と表明した。
油の海洋流出に関する国際条約では、事故の責任や保険加入義務は船主にある。
ーーー
今回 JICAチームが携行した油吸着材は、東京大田区の繊維メーカー エム・テックス鰍フマジックファイバー油吸着材で、ナノファイバー生産技術を活用して作られた 極細ポリプロピレン繊維製の油吸着材。
超極細サイズや3次元立体構造などの効果を有しており、極細繊維をシート状に形成し、親油性の高いファイバーが大量の油分(自重の約50倍) を吸着し閉じ込め、短時間で除去する。水は弾き、油だけ吸収する。
JICAは、2019年8月の九州北部の記録的大雨で佐賀県の佐賀鉄工所から油が大量に流出した際の除去作業に使用された実績から
これを現地に発送することを決めた。
この時は、工場敷地外へ流出した油が推定約5万4千リットルに上った。
復旧作業では吸着剤は18万枚以上が使われたが、「従来製品の吸着材とは比較にならない性能を持つ」(同町)として、使用した全吸着材のうち9割がマジックファイバー製だったという。
同社によると、「従来製品は水も一緒に吸ってしまうため、吸着材が水中に沈んで流出してしまった。また、油の保持力が低いため、仮置き場から油が漏れ出して二次被害を引き起こしたこともあった」という。
マジックファイバーの場合は、油だけを吸い、水は弾く。油分を吸着し閉じ込めるため、油が漏れ出すことはない。
エム・テックス ツイッターから
2020/8/24
欧州委員会、4社からCOVID-19 ワクチン確保:英・米・日の状況
欧州委員会は8月20日、ドイツのCureVacとの間でCOVID-19ワクチン購入の予備的交渉を終えたと発表した。
これは、Sanofi-GSK、Johnson & Johnson、AstraZenecaとの契約に続く4つ目のもので、合計で最大13.25億回のワクチンを確保した。更に他の企業との交渉を続けるとしている。
EUでは、6月17日にEuropea Vaccines
Strategyが採択された。12〜18カ月以内に全ての欧州市民のために高品質で安全で有効で安価なワクチンを確保することを狙うもの。
これに基づきメーカー各社と事前購入契約を締結してきた。
欧州委員会はまた、全ての人が安全でない限り、誰も安全でないとして、ワクチンを必要とする世界中の人にワクチンが渡ることを狙う。確保したワクチンの一部は低・中所得国に寄付する。
欧州委員会は5月4日以降、Coronavirus Global Responseのために 160億ユーロを確保した。
相手先
数量
7/31
Sanofi-GSK
3億回分
全てのEUメンバー国向け
8/13
Johnson & Johnson
当初2億回分、追加で2億回分
同上及び低・中所得国への寄付、EEA諸国への転売
8/14
AstraZeneca
3億回分、オプション 1億回分
同上及び低・中所得国への寄付、EEA諸国への転売
8/20
CureVac( 予備的交渉)
2.25億回分
同上及び低・中所得国への寄付、欧州諸国への転売
合計
最大 13.25億回分
全てのワクチンが成功の場合、13.25億回は1人2回接種として663百万人分となる。英国離脱後のEU人口は約447百万人。
付記
PfizerはドイツのBioNTech
と開発しているワクチンについて11月9日、「90%を超える予防効果がある」とする臨床試験の暫定的な結果を発表した。
EUのヨーロッパ委員会は11月11日、最大3億回分購入する契約を結んだと発表した。EU加盟国を代表してまず2億回分を購入したうえで、必要に応じて最大1億回分を追加で購入する。
EUがワクチン購入の契約を結んだのは、4例目。
日本政府も2021年6月末までに、6000万人分の供給を受けることで基本合意している。
EUが確保したワクチンの状況は次の通り。(WHO 2020/8/20)
Developer/manufac turer
Platform
Type
doses
Timing
Route
Phase
1
1/2
2
3
Sanofi Pasteur/GSK
Protein Subunit
S protein (baculovirus production)
Pre-clinic
Janssen Pharmaceutical (J&J)
Non - Replicating
Viral Vector
Ad26COVS1
2
0, 56 days
IM
〇
University of Oxford/AstraZeneca
Non - Replicating
Viral Vector
ChAdOx1 - S
1
IM
〇
〇
〇
CureVac
RNA
mRNA
2
0, 28 days
IM
〇
〇
(CureVac)
ドイツのバイオ製薬会社 CureVac
が開発中の新型コロナウイルスのワクチンを独占するために、米国が巨額の資金支援を約束したとの報道がなされた。ドイツ政府が激怒し、阻止に乗り出したとしている。
EUの欧州委員会は3月16日、欧州でのコロナウイルス蔓延に対応するため、ワクチンの開発・生産の促進のためにCureVacに80百万ユーロを供与すると発表した。
2020/3/19 米国がコロナウイルスワクチン技術独占を画策?
7月6日にはEuropean Investment
Bankが同社に75百万ユーロの融資をしている。
(AstraZeneca)
ドイツ、フランス、イタリア、オランダのEU4か国は「ワクチン同盟」を結成した。
AstraZenecaは6月13日、新型コロナウイルスワクチンを、欧州に最大4億回分供給することで「ワクチン同盟」と合意したと発表した。同社は「利益なし」で、年末までに納入を始める
。
2020/6/17 新型コロナウイルスワクチンの確保合戦
ーーー
なお、EUを離脱した英国は、3億4千万回分を確保している。
英国の人口は68百万人のため、全部が有効なら、1人当たり5回分となる。ほとんどのワクチンは1人2回接種である。
種類
メーカー
百万回分
治験Phase
アデノウイルスワクチン
Oxford University/AstraZeneca
100
V
Janssen
Pharmaceutical (J&J)
30
T/U
mRNAワクチン
BioNTech/Pfizer
30
V
不活化ワクチン
Valneva
60
Pre - Clinical
Protein adjuvant
GSK/Sanofi
60
Pre - Clinical
Novavax
60
T/U
合計
340
2020/8/15 英政府、コロナワクチン
3.4億回分確保
ーーー
米国は下記の通り確保している。 米国の人口は3.27億人
相手先
数量
支払額
7/22
Pfizer /
BioNTech
5,000万人分、1億回分
19億5000万ドル
7/31
Sanofi / GSK
5,000万人分、1億回分(+2億回分の可能性)
21億ドル
8/5
Johnson &
Johnson
1億回分
10億ドル超
8/11
Moderna
1億回分(+4億回分の購入権)
15億2500万ドル
政府拠出累計で24億8000万ドル
2020/8/1 米、Sanofi
/ GSKからコロナワクチン5000万人分確保
ーーー
日本の状況は下記の通り。
相手先
ー
「加速並行プラン」
7/31
Pfizer
6千万人分(2021/6までに)
8/7
AstraZeneca
1億2千万回分(1回接種?)
ー
複数国で共同購入する国際的な仕組み「COVAX
Facility」への参加を検討
2020/6/4
厚労省、新型コロナウイルスワクチンの早期実用化で「加速並行プラン」
2020/8/1
Pfizer、日本にCOVID-19ワクチン供給
2020/6/27 政府、新型コロナワクチン供給でAstraZenecaと協議
付記
2020/8/5
政府、ワクチン確保へ国際共同購入を検討
2020/8/25 日本ペイント、 Wuthelam グループの子会社に
日本ペイントホールディングスは8月21日、シンガポール塗料大手の Wuthelam( ウットラム
)グループの子会社になると発表した。
日本ペイントは、Wuthelamの持つインドネシア事業を買収する
とともに、日本ペイントとWuthelamとのアジアの合弁事業のWuthelam 持分を買収し、日本ペイントの100%子会社とする。
インドネシア子会社は2355億円で、支払総額は1兆2851億円
になる。2021年1月の完了を目指す。
このうち、1000億円は現金で支払い、残り 1兆1851億円は第三者割当による同社株式で支払う。
第三者割当 発行株式 1.487億株 @7,970円 1,185,139 百万円
この結果、Wuthelamの出資比率は、現在の39.6%から58.7%に上昇し、日本ペイントはWuthelamの子会社となる。
概要は次の通り。
2014/2
今回
Wuthelamの日本ペイント出資比率
14.51%→30.28%
→39.6%→58.7%
日本ペイントの出資比率
Nipsea Pte (持株会社)
0%
0%→100%
Nippon Paint (China)
中国
40%→51%
51%→100%
Guangzhou Nippon Paint
中国
Nippon Paint (Chengdu)
中国
Nippon Paint (HK)
香港、中国
日本ペイントマリン
日本
60%
60%→100%
ニッペトレーディング
日本
Nipsea Management
シンガポール
50%
50%→100%
Nippon Paint (India)
インド
50%
50%→99.9%
Neave Limited (持株会社)
香港
0%
0%→100%
PT Nipsea Paint and Chemicals
インドネシア
0%
0%→99.9%
Nippon Paint Coating (Taiwan)
台湾
34.8%→51%
51%→100%
Nipsea Chemical
韓国
40%→51%
Nippon Paint (Malaysia)
マレーシア
25%→51%
Paint Marketing (M)
マレーシア
Nippon Paint (Singapore)
シンガポール
40%→51%
Nipsea Technologies
シンガポール
50%→51%
Nippon Paint (Thailand)
タイ
40%→51%
51%→99.9%
Nippon Paint (Sabah)
マレーシア
12%→49%
インドとタイについては、 現地法上の株主数の規制により99.9%にとどまる。インドネシアは個人株主1人が0.1%所有
同社では、本件の戦略的意義を次の通りとしている。
日本ペイントの田中正明社長兼会長は、「グループ一体で様々な買収や今後の成長戦略を考えられるようになる。さらなる成長のために決めた」
と述べている。
ーーー
Wuthelam
Groupはシンガポール国籍のGoh Cheng Liangが設立した企業グループで、 一族が所有している。
Goh Cheng Liangは1955年にシンガポールで開業し、日本ペイントのディストリビューターとなった。
日本ペイントとWuthelamグループは、1962年にJVの Ni ppon
P aint
S outh e ast
A sia
グループ (NIPSEA グループ)をつくり、その後、アジア各国で自動車や建築用塗料などを中心に、 日本ペイントが技術、 Wuthelam がマーケティング を担当して合弁事業を展開してきた。
Wuthelam
Group( 日本ペイントの筆頭株主で14.5%を出資) は2013年1月21日、日本ペイントへの出資比率を約45%まで高めて傘下に収めるため、720億円を投じて8千万株を取得する提案を日本ペイントの取締役会に提出した。
しかし、日本ペイントとの協議の結果、Wuthelamは3月12日 付で日本ペイントへのTOB提案を取り下げた。
両社は、Wuthelam の日本ペイントに対する持株比率の引き上げと、両社のJVの日本ペイントによるマジョリティ化について協議を開始した。
日本ペイントは2014年2月3日、シンガポール塗料会社のWuthelam
Groupを引受先とする約1000億円の第三者割当増資を実施すると発表した。
増資により出資比率は30.3%に高まる。
更に、Wuthelam
は、第三者割当後の2年間に限り、市場での購入で出資比率を39.0%まで増やす意向で、日本ペイントもこれを認めている。
当初、日本ペイントはシンガポール、タイ、韓国、中国などのJVでは40%、その他ではそれ以下の出資比率であったが、2006年5月に、両社は合弁事業の更なる企業価値向上と両社の協業関係をより強固にするため、合弁会社の出資比率を見直す協議を行うことで基本合意に達した。2014年のWuthelamの出資比率引き上げと同時に合弁会社への出資比率を変更した。(上表の2014/2の項
参照)
2014/2/6 日本ペイント、Wuthelam
Groupとの戦略的提携の基本合意
Wuthelam Groupは 2018年1月19日、日本ペイントHDの取締役候補として6人を推薦する株主提案を出したと発表した。取締役の上限は10人で、3月の定時株主総会で可決されれば過半数を占める。
3月28日、定時株主総会を開き、Wuthelamが推薦した 6人を含む10人の取締役が選任された。WuthelamのGoh
Hup Jin社長 が日本ペイントホールディングスの会長にな った。
2018/1/23 日本ペイント筆頭株主の Wuthelam
Group、取締役の過半を求める株主提案
現在の日本ペイントの田中社長は、三菱UFJフィナンシャル・グループの副社長などを歴任した金融マンとしての経験や企業統治の知見を買われ、Wuthelamの総帥である Goh
Hup Jin氏から2019年にプロ経営者として招かれた。
これまでもWuthelamの出資比率は39.6%であるが、日本ペイントの取締役会の多数を占め、社長を指名している。今回、出資比率を58.7%に高め、名実ともに子会社とする。
資金支出なしに(逆に1000億円を受け取り)日本ペイントの支配権を取得した。
自社の子会社とJVの持分を日本ペイントに出すが、それを含めて拡大した日本ペイントの支配権を得ることで、アジアの業界での地位を高める。
失敗には終わったが、富士フィルムによるXerox買収と同様である。75%所有の富士ゼロックスを出して、Xerox本体の50.1%を取得しようとした。
富士フィルムHDは2018年1月31日、米国Xerox
Corporationとの間で以下の点で合意したと発表した。
@富士フィルムHDがXerox Corporatの50.1%を取得、Xeroxは社名をFuji
Xerox に変更、NYSEの上場を維持
A富士フィルムHDの子会社の富士ゼロックスとXerox Corporationの経営統合
古森会長は「富士フィルムが一銭も使わずに ゼロックスの支配権を得るもの」と述べたとされる。
この取引は、Wuthelamにとっては大きな意義のある取引であるが、日本ペイント(及びWuthelam以外の株主)にとっては、どうであろうか。
(インドネシア事業の取得は意味があるが、これの価値は2355億円に過ぎない。大半はJV持株の分である。)
2014年2月の際に、本ブログは次のように述べている。
Wuthelamは日本ペイントHDの議決権の20%以上保有で支配株主となり、1/3 以上保有で 株主総会の特別決議を単独で阻止できる 。
その場合、JVを含めた日本ペイントグループ全体がWuthelamの傘下に入ることとなり、日本ペイントが見返りに両社のJVの出資比率を51%にしてもあまり意味はない。
2020/8/26
中国、新型コロナワクチンの緊急投与を7月に開始
人民網によると、中国の専門家が8月22日に中国中央テレビ局の番組にゲストとして出演し、「中国は7月22日から、新型コロナウイルスワクチンの緊急使用を正式に開始した」と明らかにし、以下の説明をした。
中国の『ワクチン管理法』には、特に重大な公共衛生上の緊急事態が発生した場合、国家衛生健康委員会がワクチンの緊急使用を申請し、国家薬品監督管理局が組織する専門家による論証と同意を経て、国家衛生健康委員会が一定の範囲で、一定期間、ワクチンを緊急使用できると明確に定められている。
その目的は、医療関係者や防疫関係者、出入国管理関係者、都市の基本的運営を保障するための人員など、特定の人々をまず対象にして免疫バリアーを作り、都市全体の運営を安定して行うためだ。
中国国家衛生健康委員会の当局者は、中国のコロナワクチンの価格はコストとほぼ同水準に設定されるとし、「企業が利益を得られないわけではない。企業はかかったコストに基づいて妥当な利幅を決めるべきだ」と述べた。
中国医薬集団(Sinopharm)の会長は、傘下の中国生物技術が開発中の新型コロナワクチンについて、2回接種分の価格は1000元(144ドル)以下になるとの見通しを示しているが、当局者は、この額を確実に下回るだろうと語った。
ーーー
中国メディアは、中国医薬集団(シノファーム)傘下の中国生物技術(CNBG)が7月22日から中国国内でワクチンの緊急的な投与を始めたと報じた。対象は医療関係者や検疫担当者、都市の管理担当者などで、まず免疫のバリアーを作るとしている。
この企業が開発するワクチンは武漢( Wuhan
Institute of Biological Products) のものと北京( Beijing
Institute of Biological Products) のものがあるが、これは武漢のもので、PhaseVの臨床試験は北京、武漢のほかにUAEでも行われ、すでに2万人以上に投与された。さらに、ペルー、モロッコ、アルゼンチンでも臨床試験を行うとしている。
2020/6/26 中国医薬集団、新型コロナウイルスワクチンの第3相臨床試験をUAEで実施
なお、ロシアは Gamaleya疫学・微生物学研究所が国防省と開発中のワクチンを8月に承認し、9月に量産を始める。PhaseV治験実施と並行して、10月に医療従事者などから接種を始める。
2020/8/4 ロシアが新型コロナワクチンの接種を10月に開始
中国企業が関与するワクチンの状況は下記の通り。
2020/8/27 TikTokが米政府を提訴
トランプ大統領は8月6日、動画投稿アプリTikTok
を運営する北京字節跳動科技(ByteDance)との米国人の取引を禁止する大統領令及び、WeChat に関する騰訊控股(Tencent
Holdings )との米国人の取引を禁じる 大統領令を出した。45日後に商務長官が禁止対象行為を決め、それ以降の取引を禁止する。
いずれも、米国を脅かす非常事態に対応するため大統領に商業活動を規制する権限を与える国際緊急経済権限法(
International Emergency Economic Powers Act)と National
Emergencies Actなどに基づく。国際緊急経済権限法 は1977年に施行された法律で、安全保障・外交政策・経済に対する異例かつ重大な脅威に対し、非常事態宣言後、その脅威に対処する。
トランプ大統領は8月14日夜、国家安全保障上の懸念を理由に、中国のBytedance(北京字節跳動科技)に対し、運営する動画投稿アプリTikTokの米国資産を売却するよう命じた。
2017年に買収した Musical.ly
の株式や顧客データを売却するよう命じたものだが、 Musical.ly
のアプリはすでにTikTokと統合されており、事実上、TikTok売却を命じる内容となる。
2020/8/10 米国、TikTokとWeChatの運営会社との取引禁止
及び付記
TikTokは8月24日、
カリフォルニア州中部地区米国連邦裁判所に米商務省、トランプ大統領、Wilbur Ross商務長官に対する起訴状を提出した。
米政府がこのほど発表した同社と親会社のByteDanceに関わる大統領
令は、プロセスが合法的でなく、同社が享受すべき憲法で保障された権利を破壊した、同大統領令は「国際緊急経済権限法」の乱用であると指摘したと訴え、裁判で自分たちの合法的権利を守るとしている。
同社はnational-security
threatではなく、政府はトランプ大統領の反中国の政治キャンペーンを進めるために行動しているとする。
ポイント:
8月6日の大統領令は詳細は不明だが( 45日後に商務長官が禁止対象行為を決めることになっている)、それでもTikTokの米国事業にとって脅威である。
この命令は、事前通知も聴聞もなく、憲法修正5条のdue
process of law に反している。
「何人も、法の適正な過程(due process of
law)によらずに、生命、自由または財産を奪わ
れることはない。何人も、正当な補償なしに、私有財産を公共の用のために収用されることはない。」
大統領令は真のnational emergencyに基づくものでない。政府はTikTokの活動が 国際緊急経済権限法が対象とする「異常で特別な脅威」であるという法的基準に合致することを証明していない。
大統領によると、TikTokは米国で175百万回以上ダウンロードされており、自動的にユーザーの個人情報を収集する。これにより中国共産党が米国の個人情報を収集し、連邦職員やコントラクターの位置を追跡でき、個人情報に基づき脅迫や産業スパイも可能となる。TikTokはまた、香港やウイグルなど共産党が政治的にセンシティブになっている情報を監視している。
しかし、政府はTikTokが米国民のデータを中国政府に渡しているという証拠を示しておらず、TikTokは繰り返し、その恐れは根拠がないとしている。
TikTokは訴状で、米国のユーザーのデータは中国ではなく、米国とシンガポールに保管しており、また、米国のユーザーデータをByteDanceの他の製品から離すためのソフトウエア障壁をつくっているとしている。
トランプ大統領は8月14日にTikTok売却を命じたが、訴状ではこれには触れていない。
2020/8/27
AstraZeneca、COVID-19の抗体医薬品の治験開始、 米FDAは回復期血漿療法を緊急使用許可
AstraZenecaは8月25日、COVID-19の抗体医薬品AZD7442のPhaseT 治験を開始すると発表した。
AZD7442
はCOVID-19の回復期の患者から採取したモノクロナール抗体 2種類(AZD8895 +
AZD1061 )を組み合わせたもの。
特定の抗原に反応するこれらの抗体は米国のVanderbilt
University Medical Centerで発見されたもので、AstraZeneca は6月9日に6種類のモノクロナール抗体についてライセンスを受けた。
AstraZenecaで半減期延長やFc受容体 (FcRn)への結合の引き下げなどの最適化を行なっている。
最近のNatureの論文で、モノクロナール抗体がホストの細胞にウイルスが結合するのをブロックすることが明らかにされている。半減期延長で少なくとも6カ月はCOVID-19から保護される。
Phase T
治験は英国の18歳から55歳までの健康な人、最大48人で行なう。AstraZenecaは Vanderbilt
Universityとのライセンス契約と同時に、PhaseTの治験の費用拠出で、 米政府傘下の国防高等研究計画局(DARPA)と生物医学先端研究開発局(BARDA)と契約を結んでいる。
このうち、BARDAは 2,365万ドルを拠出する。
Phase
Tで有用性が認められれば、より大規模なPhaseU以降に移る。
ーーー
米FDAは8月23日、新型コロナウイルス感染症患者の回復期血漿を使った治療法に関する緊急使用許可
(Emergency Use Authorization) を発表した。
新型コロナウイルス感染症にかかり、回復期にある患者の血漿には新型コロナウイルスに対する抗体を含んでおり、これを投与することで治療を行うもの。
FDAは3月25日に研究者が重症の患者に対して回復期の患者の血漿を使った試験的な治療をすることを認めた。既に新型コロナウイルス患者6万人以上に対してこの治療法が使われている。
トランプ大統領は、「China virusとの闘いにおいて真に歴史的な発表を行う。これで無数の命が救われる
。本日の行動はこの治療法の利用を劇的に増大させる」と強調した。
中国の報告では、酸素投与が必要だが人工呼吸器が必要なほどではない中等症の患者グループでは有効性が示された。
今回の発表を受け、WHOの首席科学者は「効果があるとの決定的な研究結果はない」と述べ、現段階で各国が治療法として用いることに慎重な姿勢を示した。
新型コロナに関してはまだ大規模な臨床試験データがな
く、今後、血漿療法を受けた患者と受けない患者で効果を比較する臨床試験の実施を推奨するとした。
またWHO上級アドバイザーは、血漿療法によって、発熱から重篤な心肺機能の障害まで、さまざまな副作用が報告されていることを明らかにした。
2020/8/28
キリンHD、豪乳飲料事業の売却中止
キリングループのオ セアニア綜合飲料事業を担う Lion
Pty Ltd
は2019年11月25日、 飲料事業部門である Lion - Dairy
& Drinks の全株式 を中国蒙牛乳業の子会社である Monday
Smoothie Pty Ltd に譲渡 する契約を締結した。
キリン 及 びLionは、今後の成長に向けてLion飲料事業の投資・保有の継続から売却まであら ゆる選択肢を検討した後、同事業の成長ポテンシャルを最大化することができる第三者へ の譲渡が最善であると判断したもの。
牛乳 、乳飲料 、 ヨーグルト 、果汁飲料 及び氷菓 に関する事業、海外事業 並びに合弁事業の全て の全株式を 譲渡 する 。
譲渡 価額は、 約 4 56 億円 。
なお、 Lion - Dairy
& Drinksの チーズ事業については、 2019 年10月に カナダの大手乳 業メーカー Saputo
Inc.
に約224億円で 譲渡が完了して いる 。
今後は酒類事業のみが残るが、高収益カテゴリーへの資源配分強化 や 、 海外 クラフトビールや大人向 けプレミアム飲料といった新たな成長分野 へ の 投資と育成 を通じて、豪州・ニュージ ーラン ドの酒類市場を中心として 一層の成長を目指
すとしていた。
しかし、キリンホールディングスは8月25日、両当事者が本契約の解除に至ったと発表した。
Monday Smoothieによる本事業の 買収には、 外国投資審査委員会 (Foreign
Investment Review Board)と 競争・消費者委員会 の承認が必要で、 競争・消費者委員会
からは 2020 年2 月 21 日に
本件を 否認しない旨の確認が取れ
、 外国投資審査委員会 による審査の 結果を待って
いた。
半年を経過しても審査が進まないままであったが、豪州のFinancial
Review紙は8月20日、財務相が蒙牛乳業によるライオン飲料の買収を認めない方針だと報じた。
中国商務部は8月18日に豪州産ワインのダンピング調査開始を発表しており、同紙は「外交的な問題」が背景にあるとの関係者のコメントを紹介している。
両社は、今後においても 外国投資審査委員会 に よる承認が得られない 見通しとなった
として、 本譲渡契約をやむを得ず解除 する ことに合意 した。
キリンは、今後のライオン飲料事業の在り方については、改めて検討する。「今回は残念な結果となったが、ライオンの飲料事業部門の再生・再編は最重要課題であり、継続してライオン社とともに最善のシナリオを検討していく」としている。
ーーー
中国と豪州の 「外交的な問題」
豪州と中国は2019年から関係が悪化している。
豪州政府は2018年8月に、次世代通信規格「5G」の通信網について、「安全保障上の懸念」から、Huawei とZTEの参加を認めない方針を出した。豪州は「Five
Eyes 」の一員である。
2019年2月に豪州政府は、同国政治家や政治団体に多額の献金をした中国人の富豪・黄向墨の永住権を取り消し、再入国を禁止した。
中国の税関当局が遼寧省大連など5つの港で、オーストラリアからの石炭輸入を無期限の禁止にした。「安全や品質リスクの検査や分析をしている」と述べ、「中国企業の合法的権益や環境、安全を守る」と主張した。
豪州は今年に入り、中国が嫌がる行動をとっている。
4/19
新型コロナウイルスの感染拡大を受けた世界保健機関の危機対応を含め、パンデミックへの対応について独立の調査を実施するよう求めた。
外相は、昨年末の武漢における感染拡大への中国当局の初期対応などを調べる検証作業を主張する意向を明らかにした。
7/9
豪州首相は、国内に滞在している香港市民のビザを延長すると発表し、彼らの永住権取得にも道を開いた。約1万人の香港市民がビザ延長の対象になる。
7/27
国連の豪政府代表部は、中国が南シナ海の「群島」を結ぶ境界線を引き権益を主張する「法的根拠はない」とする文書を提出。
外国からの投資についても厳しくしたが、中国資本が主な対象である。
従来は、小規模な外国投資は報告義務が免除されており、多額の外国投資であっても、国益に反しない限り認可されていた。非常に多額、または重要インフラなどのセンシティブな案件については、外国投資審査委員会(FIRB)によって、国益に反しないか審議されてきた。国益に反するとしたものは阻止した。
2016/5/4 豪州政府、中国による牧場買収認めず、ニュージーランドも
2018/11/23 豪政府、長江集団による天然ガスパイプライン大手の買収を阻止
3月29日、外国からの全ての投資に対して、投資額や投資内容にかかわらず、政府の認可を必要とする暫定的措置を発表。国益を守るために必要な措置だとしている。
今回の不承認はこれに基づくと見られる。
これに対し、中国は5月12日から「中国消費者の健康と安全を守るため」として豪州の食肉処理場4カ所からの輸入を停止した。豪州の対中牛肉輸出の約35%をこの4カ所の食肉処理場が占める。
その後、中国はブラジルからの牛肉輸入を増やしているとされる。
付記
中国の税関総署は8月27日夜、オーストラリア産牛肉の輸入を一部停止したと発表した。豪食肉会社John
DeeのWarwick工場からの牛ヒレ肉から使用禁止物質の「クロラムフェニコール」(犬猫兼用の抗生物質)が検出されたとしている。
すでに豪州当局に連絡し、45日以内に関係企業への調査を実施して中国側に報告するよう求めた。
なお、5月に輸入停止したのは、JBS AustraliaのDinmore とBeef City、Kilcoy PastroralのBrisbane、Northern
Co-operative MeatのCasinoの4工場からのもの。
5月18日には豪州産大麦の反ダンピング、反補助金調査でクロの最終決定を行った。(2018年末に調査開始)
8月18日には豪州産ワインについて反ダンピング調査を開始した。
ーーー
キリンの豪州事業の歴史
キリンは1998年4月に豪州の酒類メーカーの Lion Nathan
に46.13%を出資した。
Lion
Nathanは1840年にニュージーランドで設立されたビール醸造所を母体とする。1860年からLion Beer を発売、他の醸造所を統合。
1988年に食品小売りのNathanと合併し、Lion Nathanに改称した。
1990年代に豪州に進出、本社を豪州に移した。
1998年に不振の中国でのビール事業立て直しと、醸造所間の品質統一のため、キリンの出資を受け入れた。
キリンは2009年10月に約2600億円を投じ、Lion
Nathanを100%子会社とした。
別途、キリンは2007年末に、同社が約20%を保有するフィリッピンの食品・飲料最大手のSan Miguel から同社子会社で 豪州の乳製品・果汁飲料最大手
Nationa Foodsの全株式を取得した。
これらの結果、豪州事業会社をLion Nathan National
Foodsとし、その下にLion NathanとNational Foodsを付けた。
2011年5月、Lion Nathan National Foodsを現在の Lion
Pty Ltd
に改称し、その下に酒類事業と飲料事業を付けた。
2020/8/29 中国のレアアース輸出大幅減は「報復」か
仏国際放送局RFIの中国語版サイトは、8月17日、中国のレアアース輸出が大幅に減少しており、米中対立の新たな火種になり得るとの見方が出ていると報じた。
中国産のレアアース輸出量が4月ごろから明らかに減少しており、7月の輸出量は前年同期比で69.1%減の1,620トンにまで落ち込んだ。
米国がレアアースの8割を中国からの輸入に頼っていることから、「中国のレアアース輸出が停滞すれば、米中対立の新たな火種となり得る。中国はレアアースを米トランプ政権による中国企業締め出しの対抗措置に用いる可能性がある」との見方があると伝えた。
一方で、中国のレアアース輸出の大幅な減少は新型コロナウイルスの影響による世界経済の停滞、需要低下に関係しているとの分析や、中国で4月に新材料開発やその応用技術の研究センター設置が決定され、自国産業強化のために輸出を減らしているとの意見もあるとしている。
コロナ禍による景気減速が波及し、レアアースの取引価格は5月まで軟調だった。しかし、6月に中国政府が国家備蓄に動くとの情報が伝わり、価格は上昇基調にあり、8月には9カ月ぶりの高値となった。
国家備蓄は戦略資源の確保が目的とされるが、相場上昇を狙ったものとの見方もある。但し、中国政府の具体的な行動は確認されておらず、市場からは「財源不足で実施されないのでは」との声も上がる。
8月20日の中国商務部のオンライン定例記者会見で、これが取り上げられた。
【記者】
税関総署のデータによると、7月の中国のレアアース輸出は前年同期比約70%減少した。輸出減少の原因は何か。
新型コロナウイルス感染症がサプライチェーンに影響を与えたからなのか。
米国は中国の輸出するレアアースに依存している。輸出量が減少したのは中国の米国への対抗措置なのか。
【報道官】
税関の統計によると、今年1-7月には、中国のレアアース輸出量は2万2800トンで、前年同期比20.2%減少し、輸出額は2億1100万ドルで同26%減少した。
業界の見方によると、今年に入ってから、新型コロナの影響を受けて、レアアース産業の川下企業の生産経営活動が鈍化した。
中国企業は国際市場のニーズの変化とリスクの状況に基づいて、国際貿易業務を展開している。
ーーー
なお、米国にはレアアースの分離・精製工場がないため、Mountain
Pass鉱山のレアアース鉱石は全量中国に輸出し、精製している。
中国税関によると、2020年1〜6月の中国の米国からのレアアース鉱石輸入量は前年比117%増 の37,674tとなった。平均輸入価格は前年同期比3.7%減である。
中国は米国のレアアース鉱山に対する25%輸入関税を撤廃しており、Mountain
Passレアアース鉱山の生産及び中国への輸出を刺激した。
米中貿易協議の「第1段階合意」が2月14日に発効した。
中国国務院関税委員会は2月18日、トランプ政権と合意した米国製品の輸入拡大に向けて追加関税を1年間免除すると発表した。
中国政府は5月12日、米国の対中制裁関税への報復として米産品に課している追加関税について、レアアース・レアメタルや化学品を含む79品目を新たに適用免除にすると発表した。適用免除の期間は5月19日から1年間。
12/13発表
2020/2/14
2/18発表
5/12発表
1100億ドル分
据置
自動車・部品は停止
696品目 1年免除
申請受付
79品目
1年免除
追加&新規
5%&10%
1717品目
据置
5%→2.5%
10%→5%
3361品目
実施見送り
2020/2/21 中国、対米追加関税を1年免除
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米国はレアアース・レアメタルにおける中国依存の脱却を加速させている。
オーストラリアのレアアース企業Lynas Corpは2019年5月20日、テキサスのBlue
Line Corporation との間で、Blue Lineのテキサス州の工場内にレアアースを分離・精製する工場を建設する覚書を締結した。
Lynas
Corpは6月27日、米国内に建設を計画する工場について、米国防総省から資金援助を受けることで合意したと発表した。重希土類を米国で分離・精製することで、中国への過度な依存を回避する狙いがある。
米国ではMolycorpがCaliforniaのMountain
Passでレアアースの採掘と生産を行っていたが、同社は2015年6月25日、連邦破産法11条の適用を申請した。
2017年にMP Materials がMountain Pass鉱山と他のMolycorp
の資産を買収した。2019年にMP Materials はMountain Passで凍結していた精製設備を再稼働することを決めた。
同社も7月31日、米国防総省から資金援助を受けることで合意したと発表した。
2020/7/31 米国防総省、レアアース事業へ資金支援
2020/8/31 キオクシア、10月に上場
東証は8月27日、キオクシアホールディングス(旧東芝メモリホールディングス)の上場を承認した。
上場予定日は10月6日で、東証1部か2部に上場する。想定売り出し価格は1株3,960円で、最終的な売り出し価格は9月28日に決まる。
時価総額は2兆円を超え、今年最大の新規株式公開となる。
付記
キオクシアホールディングスは2020年10月6日に予定していた東京証券取引所への上場を延期 する。大口取引先である中国の華為技術(Huawei)に対する米政府の取引規制で
収益性の急激な低下が予想され、先行きへの不透明感が高まっており、上場の時期を慎重に検討する。
付記
キオクシアホールディングス(旧東芝メモリ)が2024年8月23日、東京証券取引所に上場を申請したことが分かった。10月の上場を想定している。時価総額は1兆5000億円超を目指し、2024年最大の新規株式公開(IPO)になる見通し。
約3000億円分を既存株主が拠出し、別途、新規に854億円分の株式発行を行う。
キオクシアが入手するのは854億円分に過ぎず、大規模な設備投資はできない。
同社では使途として、四日市工場及び北上工場において、更なる大容量化、高速化を可能とする次世代フラッシュメモリ(第5世代 3次元フラッシュメモリ)である 112 層積層プロセスを適用した BiCS
FLASH TM 向け前工程生産設備の取得費用の 一部として充当する予定としている。
競争相手のサムスン電子は6月1日、京畿道平沢市の「平沢キャンパス」に8兆ウォン(約7000億円)を投資し、NAND型フラッシュメモリーの生産ラインを建設すると発表した。2019年 7月に世界で初めて量産に成功した世界最先端の第6世代積層NAND型フラッシュメモリー(V-NAND)を2021年下期から量産する。
NAND型フラッシュメモリの世界シェアは、サムスンが35.9%、キオクシアは19.0%(2019年)で、このままでは更に差が広がる。
株主のうちのBain Capital
は株式の高値での売却が目的であり、大規模増資で株価が下落するのを嫌ったとされる。キオクシアの長期的な利益拡大よりも、株主自体の短期利益を優先するもので、日本経済新聞は「 同床異夢」としている。
なお、東芝とBain/SK Hynix は議決権株のほかに転換型優先株を持っていたが、 2020年8月27日付で全部について普通株式に転換した。
SK Hynixは当初の協定により14.96%となる。
10年間のファイヤーウォール(機密情報へのアクセス制限) 10年間は15%超の議決権は与えられない。
当初
現状(議決権)
今回上場
上場後
@3,960 評価
東芝
40.2%
2020/8/27優先株
転換
210,300千株
40.64%
-30,117.2千株
* -7,886.9千株
172,295.9千株
31.96%
HOYA
9.9%
16,200千株
3.13%
-2,534.4千株
13,665.6千株
2.54%
Bain/SK Hynix
49.9%
291,000千株
56.23%
-33,417.3千株
257,582.7千株
47.78%
今回増資
21,562.5千株
21,562.5千株
14.72%
854億円
今回売り出し
+66,068.9千株
* +7,886.9千株
73,955.8千株
2,929億円
合計
100%
517,500千株
100%
21,562.5千株
539,062.5千株
100%
2兆1347億円
* オーバーアロットメント(募集を超える応募への備え)による売出し分で、東芝が拠出する。
東芝は6月22日、保有するキオクシアホールディングスの株式の売却を進め、売却で得た資金の半分以上を株主への還元にあてる方針を明らかにした。
現金化がなされた際には、手取金 純額の過半 を原則として 株主還元に充当する
。
2020/6/24 東芝、キオクシア株売却で株主還元
ーーー
キオクシアはこの準備のため、 Apple等4社の持つ優先株(取得価額4,155億円)を約5,300億円で買戻し、消却している。「取引先が株式を持つ現状では上場審査に不利」とされる。
東芝メモリは2019年5月31日、日本政策投資銀行による出資とメガバンク3行からの借り入れで、6月末までに総額1兆2000億円を調達すると発表した。3行は1000億円の追加融資枠も設定する。
今回の調達資金
1.2兆円(他に融資枠1千億円)で Apple等4社の持つ優先株(取得価額4,155億円)を約5,300億円で買戻し、消却する。
残りの資金で金融機関からの借入金 6千億円を返済する。現金700億円が手元に残ることとなる。
(単位:億円)
出資
合計
転換
社債
借入金
再計
今回
処理後
議決権 株
優先株
東芝
40.2%
1,096
2,409
3,505
3,505
3,505
HOYA
9.9%
270
270
270
270
(日本側)
(50.1%)
(1,366)
(2,409)
(3,775)
(3,775)
(3,775)
Bain
49.9%
1,361
759
2,120
2,120
2,120
SK Hynix
2,660
2,660
1,290
3,950
3,950
(Bain / SK)
(49.9%)
(1,361)
(3,419)
(4,780)
(1,290)
(6,070)
(6,070)
Apple ほか4社
(買戻し額)
4,155
4,155
4,155
-4,155
(-5,300)
0
金融機関
6,000
6,000
-6,000
9,000
9,000
日本政策投資銀行
3,000
3,000
INCJ
(産業革新機構)
0
合計
2,727
9,983
12,710
1,290
6,000
20,000
1,845
21,845
(今回のCash 増)
700
2019/4/5
東芝メモリ、1.3兆円調達
ーーー
同社の決算は2020年1Q以降、好転している。但し、価格の大幅アップは期待できず、大幅な増益は難しいとみられる。
(億円)
(旧)東芝メモリ
東芝メモリ (2019/10 キオクシア)
2018/3月期
2019/3月期
2020/3月期
2021/3月期
'18/4〜5
'18/6〜19/3
合計
1Q
2Q
3Q
4Q
合計
1Q
2Q予
売上高
12,294
1,894
10,745
12,639
2,142
2,390
2,544
2,796
9,872
2,675
2,980〜3,300
営業利益
4,568
704
459
1,163
-989
-658
-205
121
-1,731
147
0〜300
(うち一般)
(4,568)
(704)
(2,731)
(3,435)
(-360)
(-375)
(72)
(394)
(-269)
(414)
(270〜570)
(PPA影響)
(-2,272)
(-2,272)
(-285)
(-282)
(-288)
(-273)
(-1,128)
(-267)
(-270)
(停電影響)
(-344)
(-1)
(11)
(0)
(-334)
ー
ー
当期純利益
7,186
489
116
605
-952
-560
-253
98
-1,667
17
-60 〜160
キオクシアは旧東芝メモリを時価(交渉価格)で買収したため、簿価との差が出る。
このため、 買収価額を、資産及び負債の時価を基礎として、適切な勘定科目に配分する。これをPPA(Purchase
Price Allocation) と呼ぶ。
2020/5/22
キオクシア(旧称 東芝メモリ)の2020年3月期決算 2020/1Q実績、2Q予想を追加
2018年6月1日にBain
Capitalを軸とする企業コンソーシアムにより組成される咳angeaが東芝のメモリ事業を 2兆円で 買収、東芝メモリ鰍ニなった。
東芝、HOYA、 Bain
/ SK Hynix 各社は議決権株、優先株で合計8,555億円を出資した。
これが現在は議決権株517,500千株になっているが、1株当たりでみると、出資時には@1,653だったのが、今回@3,960で売り出すことになる。
その間、2018年3月期の営業利益が4,568億円であったのが、2019年3月期は一般ベースで3,435億円、2020年3月期には-269億円に落ち込んでいる。
市況が大幅に戻る可能性は少ない。
投資家がどのように反応するだろうか?
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