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これは下記のブログを月ごとにまとめたものです。

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2020/12/1 投資家連合、三菱商事などのベトナム石炭火力計画からの撤退を要求

機関投資家大手18機関は10月21日、三菱商事と韓国電力公社(KEPCO)主導のベトナムのVung Ang 2 石炭火力発電事業に投融資等で関与している日本と韓国の企業・金融機関に対し、気候変動を悪化させるとして同事業から撤退するよう求める共同書簡を送付した。

「石炭火力発電Vung Ang 2 の建設計画に関わるのは、気候変動に伴う企業の財務、評判への影響にとって、リスクだ。計画撤退を要請する」としている。

https://www.nordea.lu/documents/static-links/Nordea_CEO_letter_on_climate_coal_phase_out_Vung_Ang_2.pdf/

共同書簡の宛先は公開されていないが、事業主体の三菱商事、中国電力、KEPCO、付保を検討中の日本貿易保険、融資を検討中の国際協力銀行、三菱UFJフィナンシャルグループ、三井住友フィナンシャルグループ、みずほフィナンシャルグループ、三井住友信託銀行、韓国輸出入銀行、EPCで関与するとされる。

共同書簡を送付したのは、北欧最大の機関投資家 フィンランドのNordea Asset Managementを中心に、スウェーデンの公的年金AP7、英地方政府年金基金 Brunel Pension Partnership、英財団資産運用 CCLA、スウェーデンのFolksam等18機関。そのうち5社は、企業名の公表を控えた。

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問題となっているのはベトナムのVung Ang 2 石炭火力発電事業で、概要は以下の通り。

計画:1,200MW(600MW×2基)の石炭火力発電(超々臨界圧)

立地:ハティン省ブンアン経済区内(既設のブンアン1石炭火力発電所の隣接地)

事業者:Vung Ang 2 Thermal Power Company

出資者:OneEnergy Ltd.(三菱商事 40% / 中国電力 20% / KEPCO 40%)が100%

総事業費:約22億米ドル

融資者:国際協力銀行と民間金融機関

設計・調達・建設(EPC)契約者:(当初)Energy China GPEC(中国)、GE(米)

             両社が撤退し、韓国勢が引き受けるとする報道がある。

予定:2020年建設開始、2024年稼働開始


石炭火力が問題となるにつれ、事業参加者が次々撤退した。現状では出資、融資とも日本と韓国企業のみ。
なお、建設に日本企業は参加していない。

韓国電力公社(KEPCO)は2020年10月5日、香港のCLPが抜けた後の出資を最終決定した。政府系シンクタンク韓国開発研究院による予備妥当性評価で赤字プロジェクトになることが報告され、韓国環境相からも出資すべきではないとの意見が出ていたが、韓国政府とKEPCOは最終的に出資を決めた。

 出資:

  当初 2011/9 2012 2018/4

OneEnergy 出資者

当初 2019/12 2020/10
OneEnergy 30% 30% 48.45% 100%

三菱商事 40%
中国電力 20%
香港CLP   40%



CLP撤退

三菱商事 40%
中国電力 20%
KEPCO  40%

現地 LILAMA 25% 撤退      
Ree 冷蔵電気工業 23% 48% 51.55%      
その他 22% 22%      

 融資:

2019/11 OCBC銀行が脱石炭方針により撤退
2019/12 スタンダードチャータード銀行は、パリ協定の目標達成に整合させるためとして、融資を撤回
2020/1   DBS銀行が撤退。

三菱商事は2018年10月に「ESGデータブック」の改訂版を発表し、新規の石炭火力発電の開発を行わない方針を発表しているが、すでに開発に着手した案件(本件を含む)は例外としている。 

付記

国際協力銀行(JBIC)は、12月28日、三菱商事株式会社等が出資するVung Ang II Thermal Power Limited Liability Companyとの間で、ブンアン2石炭火力発電事業を対象として、融資金額約636百万米ドル(JBIC分)を限度とするプロジェクトファイナンスによる貸付契約を締結した。

本融資は、「成長投資ファシリティ」を活用し、民間金融機関及び韓国輸出入銀行との協調融資により実施するもので、協調融資総額は約1,767百万米ドル。

 

小泉進次郎環境相は2020年1月21日、三菱商事が主導するベトナムでの石炭火力発電所の建設計画について再検討を訴えた。

計画について「理解が得られるものではなく、つくるのはおかしい」と異例の反対意見を表明した。日本以外の国の企業が建設を担当し、政府の輸出要件に反することを理由に挙げた。

「日本がお金を出しているのに、結果的にプラントを作るのは中国やアメリカの企業だ。こういう実態はおかしい」と述べた。

2020/2/6 小泉環境相、ベトナムへの石炭火力建設計画に反対 


2020/12/1 Moderna、ワクチンの緊急使用許可申請 

Modernaは11月30日、開発中の新型コロナウイルスのワクチンの有効性が94.1%で、健康への重大な影響は認められていないという結果を明らかにするとともに、FDAにワクチンを緊急で使用するための許可(EUA) を申請したと発表した。
11月16日に、発症を防ぐ効果が「94.5%あった」とする最終の治験の暫定結果を公表していた。)

第3段階の臨床試験では、3万人以上の対象者のなかで新型ウイルスの感染症が196例確認されたが、このうち185例はプラセボ(偽薬)の接種を受けた人で、実際にワクチンの接種を受けた人では11例。

重症化したケースも30例あったが、すべてプラセボのグループだった。

FDAは同日、12月17日に開催する諮問委員会の会合で、このワクチンのデータについて検証を行うと発表した。それを受けて同日にも承認する見通し。

ModernaはEU当局にも条件付き販売許可を申請した。

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Pfizer とBioNTech は11月20日、新型コロナウイルスのmRNA ワクチン BNT162b2 について、米食品医薬品局(FDA)に緊急使用許可(EUA)を申請した。

第3相試験は7月27日に開始され、4万3661人が参加した。うち4万1135人が11月13日時点で2回目の接種を受け、その1週間後には170人が発症した。そのうち、ワクチン接種組は8人で、プラセボ(偽薬)組は162人であった。重症化した10人のうちワクチン接種組は1人だけ。

BNT162b2 は95%の予防効果が確認できた。65歳以上の高齢者でも有効性は94%である。
グレード3(重症または医学的に重大だが、直ちに生命を脅かすものではない)で頻度が2%を超えた

FDAは治験データを入念に検査する諮問委会合を12月10日に開催するが、ここで承認されるとみられている。

ワクチンは-70℃ 前後で保存する必要があるため、同社は専用の全地球測位システム(GPS)付き保冷容器を用意し、輸送に万全を期す。

2020/11/23  Pfizer、新型コロナワクチンのEUP申請;予防接種法改正案 衆院通過

英医薬品・医療製品規制庁(MHRA) は10月からPfizerのワクチン候補について「逐次審査」を開始している。英政府は11月21日、MHRAにワクチン承認の判断を下すよう求めた。

週明け早々にも認可されるとされ、政府当局者の話として、12月7日に接種が開始される可能性があるとされる。

付記 英医薬品・医療製品規制庁は12月2日、Pfizer / BioNTechのワクチンを承認した。英政府は同ワクチンを4000万回分調達する契約を結んでおり、7日から介護施設の入居者や職員、医療従事者、高齢者などに優先的に接種する。

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英のAstraZenecaとOxford大学は11月23日、ワクチンAZD1222の「有効性は70%」とする最終の臨床試験の暫定結果を発表した。

1回目に通常の半分の量を、1カ月の間隔を置いて、2回目に通常の量を投与したグループ(n=2,741) だと90%で効果があった。
通常の量を、少なくとも1カ月の間隔を置いて、2回投与したグループ(n=8,895) だと病気の予防効果は62%だった。

AstraZenecaは11月26日、追加の臨床試験(治験)を行うことを明らかにした。投与量が想定よりも少ないケースの方が効果が高かったためで、有効性や望ましい投与方法を再確認する。

なお、90%の効果があった分は、1回目に定量を与える筈が、誤って通常の半分の量を与えてしまったものと判明した。

2020/11/24    AstraZenecaのワクチン、有効性70%

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ロシアでは2番目のワクチンが承認されている。

2020/10/19 ロシア、2番目の新型コロナワクチン承認


2020/12/2 歯の再生を促す医薬品を開発する トレジェムバイオファーマ

11月30日の日本経済新聞(オンライン)は、“ 歯の治療にも再生医療 「歯生え薬」実用化目指す” と報じている。

歯の再生を促す新規医薬品を開発する歯科領域の創薬ベンチャー、トレジェムバイオファーマ(Toregem BioPharma)は2020年5月12日に設立された。
Toregemの社名は Tooth Regeneration Medicine(歯の再生薬)から採った。

京都大学医学研究科口腔外科学分野の高橋克准教授が、永久歯の次に生える歯(第3生歯)を成長させることによって歯の再生の実現が可能なことを発見した。
一般的な歯の治療法である義歯やインプラントの人工歯に対し、自己歯の再生が根治的な治療法と成り得る可能性がある。

ヒトでは大臼歯が1生歯性(永久歯)、それ以外は2生歯性(乳歯+永久歯)で、歯数は厳密に制御されている。

実際には、乳歯と永久歯のあとに第3歯堤という歯の原器があるが、骨形成タンパク質(BMP)等の働きを阻害する拮抗分子USAG-1遺伝子の働きによって第3生歯は消失してしまう。

USAG-1遺伝子の欠損マウスでは、本来は退化消失するはずの痕跡的乳切歯が生き残った結果、過剰歯として萌出することが確認されている。

橋克准教授による長年の研究により、この拮抗分子USAG-1遺伝子を抑制する中和抗体やsiRNA2本鎖RNAが遺伝子の発現を抑えてしまうRNA干渉に関与するRNA)によって無歯症モデル動物で欠損歯が歯槽骨と共に回復することが分かった。

京都大学医学研究科口腔外科学分野の喜早(きそ)ほのか氏がCEOを務める トレジェムでは、USAG-1中和抗体のヒト化に向けた開発を進めており(現在は前臨床開発段階)、中和抗体とsiRNAの化合物を新規医薬品として上市することを目指している。

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まずは120万人いると言われる先天性無歯症に対する治療薬を1号として上市を目指す。上市を2030年頃と想定している。

歯の欠損を有する患者(無歯症患者)に先天性の症例が存在し、原因遺伝子としてEDA, MSX1, WNT10A, RUNX2などが同定されている。
先天性無歯症は患者が未成年で顎骨が発達期にあるため義歯やインプラントの適用が困難で、成人するまでの長期間を温存療法で耐えるしかなく、歯の欠損が栄養確保と成長に悪い影響を及ぼすため、根治的な治療法の開発が強く望まれている。

同社では、こうした原因遺伝子変異をバイオマーカーとして対象患者を選択し、USAG-1中和抗体を適用していく。

これにより安全性と有効性を確立し、2号として部分無歯症へ適応拡大して事業成長を図り、その後、加齢や歯周病、事故等で歯を失った後天性無歯症で第3生歯を発生させ、インプラントや義歯と並ぶ新たな選択肢を提供する。

なお、京都大学イノベーションキャピタルは2020年9月同社に対して50百万円の投資を実行した。

 

 参考資料:

  2020/5/26 
京都府 京都企業紹介 
トレジェムバイオファーマ株式会社

  2020/11/19 THE INDEPENDENTS 歯の再生治療ベンチャーにおける市場戦略とライセンス交渉

 

 

エア・ウォーターでは、不歯から歯髄を採取し、その中に含まれる歯髄幹細胞を培養増殖し、虫歯神経を喪失した歯に移植することにより歯髄を再生する治療を開発中。

2020/6/29  エア・ウォーター、「歯髄幹細胞を用いた再生医療」を世界で初めて実用化

 


2020/12/3 新型コロナウイルスの中和抗体、半年持続

横浜市立大学の研究チームは12月2日、新型コロナウイルスの感染者のほとんどが、再感染を防ぐ抗体(中和抗体)を半年後にも持つことを確認したと発表した。症状の重かった人ほど多く残る傾向だった。

感染して回復した376人の血液を調べた。ワクチンが普及すれば中和抗体を持つ人が増え、感染の拡大防止につながる可能性が示された。

今後、感染から1年後に中和抗体が残っているかどうかについても調べる。

感染から6か月たっても中和抗体を保有している割合は下記の通り。

無症状  15人 97%
軽症 265人 97%
中等症(酸素投与) 71人 100%
重症(人工呼吸器等) 25人 100%
全体 (20〜70歳代) 376人 98%

但し、中和抗体の量が重症化や再感染を防ぐのに十分なのかは分かっていない。

横浜市大の山中教授は記者会見で、「一般に中和抗体を保有している人が再感染するリスクは低いと考えられている」とし、さまざまなワクチンの感染予防効果がどれぐらい続くかについては「自然感染による免疫とワクチンによる免疫は必ずしも同一ではないが、自然感染による免疫が少なくとも半年続くと分かり、ワクチンに一定の期待を持たせる」と述べた。

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横浜市立大学では、東京都医師会・神奈川県医師会より後援、地域医療機関の協力を得て、新型コロナウイルス感染症より回復した人を対象に、「コロナ回復者専用 抗体検査Project」を実施した。

発症日から半年後と1年後の2回、微量の血液を採取。抗体の有無と、抗体が「中和抗体」かどうかを調べる。
(感染抗原のあらゆる箇所に反応する抗体が産出されるが、そのうち、抗原を失活させ、病原性を抑える作用のある抗体を「中和抗体」と言う)

 感染後に回復したフリーアナウンサーの赤江珠緒さん などが協力した。「医療体制や研究が充実したものになるよう協力したい」とし、多くの参加を呼びかけた。

回復者の体内に中和抗体が確認されれば、再感染する可能性が低くなる。また1年後までの中長期を経た後の各種抗体の減少率などについて調査をすることで、新たな生活様式・社会活動のあり方に関する提言やより正確な既感染率の推定などに繋がり、今後実施される多様な抗体保有率調査などにも活用されることが期待される。

8月よりコールセンターにて予約受付を開始し、9月より各協力医療機関での血液検査を行ってきた。

 

グループが独自に開発した精度の高い検出法を用いた。

横浜市立大学大学院医学研究科 微生物学の共同研究グループは7月28日、新型コロナウイルスに対する中和抗体を簡便かつ迅速に測定できる新しい手法(新規中和アッセイhiVNTシステム)の開発に成功したと発表した。

実際の感染性ウイルスや遺伝子組換えウイルスを使用せず、ウイルスの殻だけからなる、ウイルス様粒子 (VLP) を使用することで、特殊な実験室や設備を必要としない。

発光によって標的タンパク質を定量するHiBit(11アミノ酸のペプチドタグ)を活用。表面に新型コロナのSタンパク質があり、HiBitで目印を付けたウイルス様粒子(VLP)を試験用細胞に投入した後、細胞内にあるLgBiTタンパク質とHiBitの相互作用で光る酵素の活性度合いで、中和活性のレベルを測る。酵素の発光量が少ないと、VLPが細胞に侵入している量が少なく、中和活性が高いと判断する。

https://www.yokohama-cu.ac.jp/amedrc/news/202007ryo_covid_hibit.html

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海外でも複数の抗体調査が行われているが、英国のKing's College London は7月13日、横浜市大とは逆の報告をしている。

King's College London のSchool of Immunology & Microbial SciencesのNature Microbiologyでの発表によると、3〜6月に陽性と診断された患者と医療従事者、計96人(無症状者を含む)に抗体検査を複数回実施した。

中和抗体の量は発症後約3週間でピークに達し、その後は減った。抗体の量は重症者が多かった。

発症後65日たつと、中和抗体が強く働いていた人は2割もなく、一部の軽症者はほとんど検出されなかった。

様々な研究報告から、新型コロナ感染症から回復後、抗体が急速に減る可能性が示されている。

横浜市大では、海外の研究は減少しやすい抗体を見ているのではないかと見ている。


2020/12/4  WTO、 韓国のステンレス鋼関税で日本勝訴認める、韓国は上訴へ 

世界貿易機関(WTO)は11月30日、日本製のステンレス鋼に対する韓国のアンチダンピング関税が不公正だとして日本が提訴している問題について、日本の勝訴を認める報告書を公表した。
韓国に対し、速やかに措置を撤回するよう勧告した。

第一審にあたる紛争処理小委員会(パネル)が報告書をまとめた。
韓国が不服とする場合、60日以内に最終審にあたる上級委員会に上訴できる。

経産省は「韓国がパネル報告書の判断や勧告に従って、課税措置を速やかに撤廃することを期待する」としている。

韓国政府が日本とのWTOでの貿易紛争で一部敗訴したのは今回が初めて。韓国政府はWTOが韓国側に下した「一部敗訴」(韓国側の理解)の判断を受け、一部の争点で下した判断に「法理的誤りがある」とし、上訴する意向を明らかにした。

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韓国は、2003年7月に日本、インド、スペイン製のステンレス棒鋼に対するアンチ・ダンピング課税調査を開始し、2004年7月30日にダンピングによって韓国の国内産業が実質的な損害を受けている旨の最終決定を行い、同日から 日本製について 15.39%のアンチ・ダンピング課税を開始した。

その後、2回の課税延長を経て、3回目のサンセット・レビュー(2016年6月から2017年6月)に基づいて2017年6月、さらに3年間の課税延長を決定した。
日本製とインド製、スペイン製のステンレス棒鋼7に対して2004年以来約16年間反ダンピング関税を課している。

更に、4回目のサンセット・レビューを2020年1月 に開始、11月13日に3か国製のステンレス鋼に対する反ダンピング関税適用を3年間延長することを決定した。

2017年6月までの課税総額は約56.6億円に上り、3回目のサンセット・レビューに基づく3年間の延長により2019年末までで12.5億円が課税されたと推計される。
日本から韓国へのステンレス棒鋼の輸出量は、本件課税措置発動前(2002年)と比較して約6割減少(2002年:9269トン→2019年:3791トン)した。

日本政府は、これら調査の過程で累次にわたり適正な調査を要請し、懸念を表明してきたが、措置の撤廃には至らず、2017年6月に 3回目の延長(3年間)の決定がなされた。

この延長決定は、韓国の調査当局の認定や調査手続に瑕疵があり、関税及び貿易に関する一般協定(GATT)及びアンチ・ダンピング協定(1994年の関税及び貿易に関する一般協定第6条の実施に関する協定)に違反する可能性があるとし、2018年6月18日にWTO協定に基づく日韓二国間協議を要請し、同年9月13日にWTOに対し、紛争処理小委員会(パネル)設置要請を行い、同年10月29日にパネルが設置された。

日本政府の主張:

特殊鋼中心の日本製は日本は高品質・高仕様で、韓国製と根本的な差があり、競合しない。

反ダンピング措置による被害を証明での韓国による「累積評価」(複数の輸出国を合計して被害規模を算定)は問題である。

韓国は国産、日本製、インド製のステンレス鋼は同じ商品だとし、被害規模を累積評価で合計して算出した。しかし、日本製とインド製 ・スペイン製のステンレス鋼は別の製品なので、累積評価ではなく、被害規模を輸出国別に算定する「非累積評価」を行う必要がある。

今回の決定で、WTOは日本製ステンレス鋼の「非累積評価」による価格が韓国製よりも高い点などを問題視した。

2019年9月及び12月にパネル会合(口頭弁論)が開催され、この度、WTOはパネル報告書を公表した。

報告書は、韓国による本アンチ・ダンピング課税延長措置は、損害再発の可能性があるとする認定や手続の透明性に問題があり、 韓国が反ダンピング関税を正当化する十分な根拠を提示できなかったとして、アンチ・ダンピング協定に整合しないと判断、韓国に対し措置の是正を勧告した。

(1)本アンチ・ダンピング課税延長措置は、
 @日本産輸入品が韓国産品より相当程度高価であることや
 A中国等からの低価格輸入が大量に存在していることが適切に考慮されていないため、
 日本産輸入品に対するアンチ・ダンピング課税の撤廃により、韓国国内産業への損害が再発する可能性があるとする認定に瑕疵があり、アンチ・ダンピング協定第11.3条に整合しない。

(2)本アンチ・ダンピング課税延長措置は、日本生産者の生産能力を認定する際、日本生産者の提出情報を合理的理由なく拒否した点で、アンチ・ダンピング協定第6.8条に整合しない。

(3)本アンチ・ダンピング課税延長措置は、秘密情報の取扱いに不備があり、アンチ・ダンピング協定第6.5条に整合しない。

韓国政府は11月13日、日本、インド、スペイン製のステンレス鋼に対する反ダンピング関税適用を3年間延長することを決定している。

韓国政府は今回の決定について最終審にあたる上級委員会に上訴する意向を示したが、WTO紛争調停委員会は米政府による上訴委員任命ボイコットで機能が中断されており(上訴されて上級委員会に係属した事案は上級委員会の機能が回復するまでの間、手続が進行しない)、当面、既存の反ダンピング措置は維持される。

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今回の報告書についての韓国側の認識は以下の通りで、「一部敗訴」としている。

日本側の提訴事項 WTO判断
日本製ステンレス鋼と韓国製ステンレス鋼には根本的な製品差が存在する 韓国側主張認める
日本製ステンレス鋼以外の要因による被害を日本製品に転嫁した
日本製のダンピング製品と韓国国内の同種製品の価格差を考慮しなかった 日本側主張認める
日本の生産者の生産能力に関する算出方法が適切だったか
日本の生産能力を無視し、世界ステンレス鋼フォーラムの統計資料を使用したことが適切だったか

反ダンピング関税の維持に最も重要なのは競争関係の有無だが、両国の製品の細部の製品群は異なり、競争関係は成立しないとする日本側の主張が認められなかったため今後も日本製ステンレス鋼に対する反ダンピング措置を維持する上で問題はないとする。

 


2020/12/4 中国、輸出管理法の対象品目第一弾を発表 

中国商務部は12月2日、国家安全に関わる物品や技術の輸出を制限する輸出管理法を巡り、規制対象となる品目の一部を発表した。

中国の全国人民代表大会常務委員会は10月17日、ハイテク製品の輸出管理を強化する輸出管理法案を可決、同法が成立した。
国家の安全を損ねると判断した海外企業をリスト化し、輸出を禁止できるようにする 。

12月1日に施行されたが、規制対象品目など詳細が発表されていなかった。

2020/10/21 中国、輸出管理法成立、ハイテク禁輸 

今回、輸入規制対象品目、輸出規制対象品目の第一弾が発表された。輸出入規制品目として、「暗号技術」が発表された。

システムや機器・部品で、ICチップ、暗号化機器、暗号化VPN機器、管理製品、特殊暗号化機器、量子暗号化機器、暗号分析機器などが含まれる。
また、
パスワードの開発および生産機器、パスワードのテストおよび検証機器も含まれる。

http://www.mofcom.gov.cn/article/zwgk/zcfb/202012/20201203019733.shtml

2021年1月1日から施行される。

中国政府は今後も随時、対象品目を公表していくとみられているが、レアアースが対象となるのかどうか、注目されている。

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Commercial Cipher Export Control List  

1. Systems, equipment and components

 1.1 Security chip
 1.2 Password machine Devices (including cryptographic cards)
 1.3 Encrypted VPN device
 1.4 Key management products (Server equipment used for management functions )
 1.5 Dedicated cryptographic equipment
 1.6 Quantum cryptographic equipment
 1.7 Cryptanalysis equipment

2. Testing, inspection and production equipment

 2.1 Password development and production equipment
 2.2 Password test verification equipment

3. software

Specially designed or improved software used in the development, production or use of items 1.1 to 2.2.

4. technology

Specifically designed or improved for the development, production or use of 1.1 to 3 technologies.

 

なお、輸入規制品目は次の通り。

1. Encrypted telephone
2. Encrypted fax machine
3. Password machine (password card)
4. Encrypted VPN device


2020/12/5    米下院、対中強硬法案を可決  

米下院は12月2日、米株式市場に上場する外国企業の会計監査状況について米当局の検査を義務づける法案(Holding Foreign Companies Accountable Act)を全会一致で可決した。

2019年に共和党のJohn Kennedy上院議員と民主党のChris Van Hollen上院議員が超党派で提出したもので、上院は2020年5月20日に満場一致で可決したが、下院で継続審議になっていた。

今後、トランプ大統領の署名によって成立する。すでに米証券取引委員会(SEC)はトランプ政権の要請を受けて、中国企業を念頭に置いたルール策定に着手している。

付記 大統領は12月18日にこれに署名、成立した。

今回の法案可決で中国勢の包囲網は一段と狭まった。

米国内で上場する外国企業に対し米企業と同じ規制に従うことを求めるもので、その企業の監査をする監査法人が@ 外国にあり、A米国公開企業会計監視委員会(PCAOB)による検査を受けないものが対象となる。米国の監査法人が監査をする場合は対象外である。

その企業の監査法人が3年以上連続して米国公開企業会計監視委員会(PCAOB)による検査を受けないもの、および、外国政府の支配下にないことを示す書類を提出しない企業は上場廃止とする。

 

米国公開企業会計監視委員会(PCAOB:Public Company Accounting Oversight Board)は2002年にアメリカ合衆国の上場企業会計改革および投資家保護法(SOX法)に基づき設置された非営利法人で、企業の監査を監督することを通じ、投資家利益の保護及び監査報告書発行における公益性を高めることを目的とする。

中国政府はPCAOBによる自国監査法人の検査を認めておらず、米国上場の中国企業で中国の監査法人の監査を受けている場合が問題となる。

2020/5/21 米上院、中国企業の上場規制強化案を可決 

 

Alibaba Group やBaidu (百度)など巨大企業を含む中国勢が米株式市場から締め出される可能性がある。

 


2020/12/5 OPECプラス、減産幅を縮小

OPECプラスは12月3日、2021年1月から減産規模を現在から日量50万バレル縮小し、同720万バレルとすることで合意した。

減産

  4月12日合意 実績
2020/5〜6 970万バレル 970万バレル
2020/7    770 960 (注)
2020/8〜12 770
2021/1 計画 580 720

2020/6/8 OPECプラス、現行の減産を1カ月延長  

 

ただ、来年の全般的かつ長期的な方針については合意に至らなかった。

OPECプラスは当初、現在の減産規模を最低3月まで延長するとみられていた。しかし、新型コロナウイルスワクチンへの期待から原油相場が値上がりする中、一部の生産国から減産延長に疑問の声が上がっていた。

関係筋によると、ロシア、イラク、ナイジェリア、アラブ首長国連邦(UAE)が来年の減産規模縮小に一定の関心を示した。

ロシアのノバク副首相は、OPECプラスが1月以降、毎月会合を開き、生産枠を決定すると明らかにした。月次の伸びは日量50万バレルを超えない見込み。

2020年4月の決定では、2021年1〜4月は580万バレルとしていた。


2020/12/7 大阪地裁、大飯原発の設置許可取り消しを命ず 

関西電力 大飯原発3、4号機の耐震性を巡り、安全審査基準に適合するとした原子力規制委員会の判断は誤りだとして、福井県などの住民らが国に原子炉設置許可の取り消しを求めた訴訟の判決が12月4日、大阪地裁であり、裁判長は国に設置許可の取り消しを命じた。

原子力規制委による原発の設置許可を取り消す司法判断は初めてとなる。

付記 国は大阪地裁の判決を不服として12月17日控訴した。

大飯原発を巡る訴訟で、住民側が勝訴したのは2014年5月の福井地裁の運転差し止め命令(控訴審で逆転敗訴)以来2度目。

東京電力福島第1原発事故後、安全性の保証をせずに大飯原発3、4号機を再稼働させたとして、福井県の住民らが関西電力に運転差し止めを求めた訴訟で、福井地裁は2014年5月21日、現在定期検査中の2基を「運転してはならない」と命じ、再稼働を認めない判決を言い渡した。

「この地震大国日本において、基準値振動を超える地震が大飯原発に到来しないというのは根拠のない楽観的見通しにしかすぎない上、基準値振動に満たない地震によっても冷却機能喪失による重大な事故が生じ得るというのであれば、そこでの危険は、万が一の危険という領域をはるかに超える現実的で切迫した危険と評価できる。このような施設のあり方は原子力発電所が有する前記の本質的な危険性についてあまりにも楽観的といわざるを得ない。」

名古屋高裁金沢支部は2018年7月4日、運転差し止めを命じた一審・福井地裁判決を取り消し、原告側の請求を棄却した。

「原子力規制委員会の新規制基準に違法・不合理な点はなく、大飯原発が同基準に適合するとした判断にも不合理な点はない」「原発の危険性は社会通念上無視できる程度にまで管理・統制されている」と判断した。

2014/5/30 大飯原発差し止め訴訟判決 

大飯3、4号機は現在は定期検査中で稼働していないが、検査が終われば判決が確定するまで稼働できる。
判決が確定した場合、関電はより厳格な耐震設計で工事をやり直し、改めて許可を得るまで稼働できない可能性が出てくる。

再稼働予定
    認可 テロ対策
工事期限

状況

関電 大飯 3号 2017/8/25 2022/8/24 停止 2020/7定修 1次系配管に損傷 →規制委側は議論を継続
4号 停止 2020/11/3  定修入り
 

訴訟では、関電が算出した耐震設計の目安となる揺れ(基準地震動)の評価を基に、設置を許可した規制委の判断が妥当かどうかが主な争点となった。

原告側は、関電や国が想定される揺れを過小評価しており、3、4号機の耐震設計は不十分だと主張。これに対し、国側は数値は妥当で原発の安全性は担保されていると反論していた。


判決要旨は次の通り。

結論:

原子力規制委員会の判断に不合理な点があり、設置許可を取り消す。原告の主張する地盤安定性や津波想定に関する誤りなどは、いずれも採用できない。

裁判所の審理は、規制委の判断に不合理な点があるかどうかとの観点から行う。
現在の科学技術の水準に照らして、規制委が使った審査基準に不合理な点があるか、判断過程に看過しがたい過誤、欠落がある場合には、その判断に基づく設置許可は違法だとするのが相当である。

基準地震動:

規制委は基準地震動を策定する際、震源断層の長さにまつわる不確かさなど、影響の大きな要素を分析し、適切に考慮すると内規で定めている。

規制委の「審査ガイド」は「経験式を用いて地震規模を設定する場合、適用範囲が十分に検討されていることを確認し、ばらつきも考慮される必要がある」と定める。

ばらつきの意義:

地震規模は基準地震動を策定するための重要な要素である。経験式から算出される地震規模は平均値であって、実際に発生する地震規模はそれより大きい方に外れることが当然に想定される。地震規模の設定では、平均値をそのまま使うのではなく、平均からのずれを考慮することが相当である。

ただし平均値に上乗せすることが必要かどうか検討した結果、不必要とした場合は、平均値をそのまま地震規模の値とすることも妨げられない。

このばらつきに対する解釈は、2011年の東日本大震災と東京電力福島第1原発事故を受けて耐震設計審査指針が改定される際、経験式より大きな地震が発生することを想定すべきだとの指摘を受けて定められた経緯とも整合する。

判断過程に欠落:

関電は基準地震動を策定する際、地質調査などに基づいて設定した震源断層面積を経験式に当てはめて出した地震規模の値をそのまま使用。実際の地震規模が平均値より大きくなる可能性を考慮して設定する必要があるかどうかを検討せず、上乗せもしなかった。

規制委も上乗せをする必要があるかどうかについて何も検討せず、関電の設置許可申請が基準に適合し、審査ガイドを踏まえているとした。
規制委の判断過程には看過しがたい過誤、欠落があるというべきだ。

 

この点に関し、規制委の考え方は次の通り。

安全審査では耐震のために想定する最大の揺れ「基準地震動」を基にした対策を確認する。基準地震動の算出では、計算式を使いながら想定する地震の規模を検討。震源と原発の距離なども踏まえて導き出されている。

その際、計算式で使う数値は、平均的なものではなく、大きな規模の地震も考慮されたものになっている。

しかし、ガイドラインについては「表現が曖昧と言われても仕方ない部分があり、解釈に違いが出てしまう可能性があった 。」規制委はガイドの見直しを予定している。

 

その他の原発での裁判の状況:

高浜3号、4号機

福井地裁は2015年4月14日、運転差し止めを求めた仮処分申請で、再稼働を認めない決定

2015/4/15 高浜原発、再稼働認めず 福井地裁が仮処分決定

福井地裁は2015年12月24日の異議審で仮処分の決定を取り消し、再稼働を認める判断

ーーー

大津地裁は2016年3月に運転停止の仮処分を命じた。

大阪高裁は2017年3月28日、「原子力規制委員会の新しい規制基準は不合理ではなく、原発の安全性が欠如しているとは言えない」として、大津地裁の仮処分の決定を取り消し、再稼働を認めた。

2017/3/28 大阪高裁、高浜原発3・4号機の再稼働認める判断

伊方3号

山口地裁岩国支部は2019年3月、運転差し止めを求めた仮処分申請を却下した。

この即時抗告審で広島高裁は2020年1月17日、山口地裁岩国支部の決定を取り消し、四国電力に運転差し止めを命じる決定を出した。

2020/1/20 広島高裁、伊方原発3号機運転差し止め

定期検査で停止していたが、司法判断が覆らない限り、運転を再開できない。
なお、定期検査中の1月25日に電源が一時喪失するトラブルがあった。

四国電力は2月29日に異議と仮処分の執行停止を申し立てを行なった。異議審の決定は2021年3月の予定。


2020/12/7 アビガン、米で最終治験

カナダの製薬企業Appili Therapeutics Inc.は12月2日、富士フイルムからアビガンの提供を受け、米国で第3相臨床試験(治験)を始めた。
富士フイルム富山化学は、2019年11月21日、カナダのバイオベンチャーAppili Therapeuticsと、抗真菌薬の候補化合物である「T-2307」の海外における開発権・販売権等を導出する契約を締結した。
「T-2307」の開発権・販売権等をAppili社に譲渡するとともに、同社から開発マイルストンおよびロイヤリティを受領する。

「T-2307」は、真菌が同剤を能動的に取り込み、真菌細胞内でミトコンドリアの機能が選択的に阻害される新しい作用機序を有している。

 

Appili Therapeuticsは米国の医薬品開発業務受託機関PRA Health Sciences を使い、47カ所の医療機関で、826人の患者を対象としてアビガンの第3相治験を実施する。2021年上半期に結果を出すことを期待している。

富士フイルムは米国で4〜11月に第2相治験を実施し、現在データを解析している。

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富士フイルムは7月1日、COVID-19治療薬の海外展開に向けて、インド大手製薬企業 Dr. Reddy’s Laboratories およびUAEの世界的な医療物資・医薬品提供会社Global Response Aid と提携すると発表した。

両社に対して海外(中国・ロシアを除く)での「アビガン」の開発権・製造権・販売権(製造権はDr. Reddy’s Laboratorieのみ)などを独占的に付与するとともに、2社より契約一時金や販売ロイヤリティを受領する。

2020/7/2 富士フィルム、「アビガン®錠」の開発・製造・販売に関するライセンス契約を締結 

Appili Therapeuticsは10月30日、Dr. Reddy’s Laboratories およびGlobal Response Aid との間で、アビガンの世界での商業化に向け、協力・開発・供給契約を締結したと発表した。

今回の米国での第3相治験の開始はこれに基づくもの。

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富士フィルム富山化学は10月22日、「アビガン®錠」の中国展開に向けて、上海の安徽康瓴薬業有限公司(Carelink Pharmaceutical )をパートナー企業に選定したと発表した。

なお中国では、アビガンの製法特許そのものは既に切れており、海正薬業が本年2月に中国当局から生産認可を取得し、2月16日から「法維拉韋(ファビピラビル)」の商品名で生産を始めた。

2020/10/24  富士フィルム富山化学、アビガンの中国展開で安徽康瓴薬業と提携 

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富山化学工業は2014年3月24日、日本で錠剤タイプの新しい抗インフルエンザウイルス薬「アビガン®錠200mg」の製造販売承認を取得した。

「アビガン®錠200mg」の承認には厳しい条件がついている。

動物実験で「初期胚の致死及び催奇形性が確認されていることから、妊婦または妊娠している可能性のある婦人には投与しないこと」。

日本人を対象にした薬物動態試験と追加臨床試験結果を医薬品医療機器総合機構に提出し、成績が確認されるまでは「原則製造禁止」 。
 (申請に用いたのが米国の試験結果で、日本人を対象にしたものがなった。)
 但し、パンデミック時など厚労相が「要請」した際は製造できる。

富士フイルム富山化学は2020年9月23日、同社が新型コロナウイルス感染症(COVID-19)を対象に実施した「アビガン」(ファビピラビル)の第3相臨床試験 で主要評価項目を達成したと発表した。

非重篤な肺炎を有するCOVID-19患者156人を対象に実施され、有効性や安全性をランダム化プラセボ対照試験で検討した。
主要評価項目の中央値は、「アビガン」投与群で11.9日、プラセボ投与群では14.7日となり、症状の早期改善が確認できて、安全性上の新たな懸念は認められなかった。
しかし、症状回復までの日数はわずか2.8日の短縮にとどまる。

10月16日にCOVID-19に係る効能・効果、用法・用量を追加する「アビガン」の製造販売承認事項一部変更承認申請を行った。現在、承認待ちの段階である。

 付記

「アビガン」を審議する12月21日の厚生労働省の部会に、薬の有効性について「明確に判断することは困難と考える」と指摘する審査報告書が提出されることが分かった。複数の政府関係者は、「承認審査は難航する可能性がある」などとしている。


2020/12/8 日英EPA、2021年1月1日発効へ 

参院は12月4日の本会議で日英経済連携協定(EPA)の承認案を可決した。衆院は11月24日の本会議で可決している。

日英両政府は9月11日、EPAの締結で大筋合意した。

日英両政府は10月23日、都内の飯倉公館で日英経済連携協定(EPA)の署名式を開いた。

英国議会でも近く承認する見通しで12月7日承認した。2021年1月1日に発効する。(英国がEUから離脱するのが前提で、残留の場合は棚上げとなる。)
英国の欧州連合(EU)離脱に伴い、日英の貿易は日欧EPAに基づく優遇関税が年末で切れるため、断絶を避ける。

日英間貿易で工業品や農林水産品の関税は欧州連合(EU)とのEPAをほぼ踏襲する。

日本製自動車にかかる税率を段階的に引き下げて2026年にゼロにする。英国への輸出は鉄道車両や部品、電気自動車に使う電子制御盤などの関税を即時撤廃する。

農産物の関税削減・撤廃はEUとのEPAと同内容だが、英国には新たな輸入枠を設けない。ブルーチーズを含むソフト系チーズなど10品目は、日欧EPAの輸入枠が余った分に限り、英国産にも低関税を適用する。

牛肉など、日欧EPAでセーフガード(緊急輸入制限措置)を設定した品目については、英国とEUから輸入量の合計が日欧EPAの発動基準数量を超えた場合、英国に発動する。
日欧EPAと同様に、コメは関税削減・撤廃の対象から除外した。


 

原産地規則で、EU域内での生産行為も日本国の生産行為とみなして日英EPA原産地規則を適用することができる。(拡張累積)

ーーー

英国は正式に離脱して初めて、他国とFTAを結ぶことができる。

離脱まで1カ月を切り、英国とEUは将来的な貿易関係について、まだ交渉を続けているが、妥結の見込みはない。

「公平な競争環境」と「漁業権」という最も大きな2つの争点については本格的な隔たりが残っている。これらはそもそも英国が離脱する理由であり、EUが要求を緩和させない限り、無理とおもわれる。

2020/9/11 英国 「合意なき離脱」辞せず

これらが決まってから、第3の争点、「確実に合意を履行させる仕組み」を決めることになる。

2020/9/11 Brexit:英国のInternal Market Bill 

 

韓国国会は2019年10月28日の本会議で、英国とのFTAの批准同意案を可決した。英国がEUを離脱した場合、自動的に発効される。

アジア諸国のうち、英国とのFTA批准を完了したのは韓国が初めて。

2019/9/5 韓国、韓英FTAをBrexit前に批准へ

英国はチリ、アイスランド、ノルウェー、スイス、カリブ海諸国、東南部アフリカ市場共同体、イスラエルなど38カ国と13件のFTAを締結している。


米連邦最高裁判所は12月8日、大統領選をめぐり東部の郵便投票の一部を無効にすべきだとの共和党の訴えを退ける判断を下した。民主党のバイデン候補の勝利を認定した同州の決定を差し止めなかったことになる。

ペンシルベニア州共和党が郵便投票の利用拡大を認めた制度が州法に違反すると主張し、最大約250万票を無効にすべきだと訴えていた。

ペンシルベニア州の結果は次の通り。
Joe Biden 3,459,923 50.02%
Donald Trump 3,378,263 48.84%
Jo Jorgensen 79,397 1.15%

州最高裁はこれについて、「郵便投票は1年以上前に州法で施行されている」として却下していた。

最高裁の保守系のSamuel Alito 判事が担当し、ペンシルベニア州の意見を聞いた。州は「要請は全く根拠のないもので、米国の司法の歴史で最もひどい訴えである」とし、却下を求めた。

Alito 判事は単独の判断でなく最高裁にこれを付し、最高裁は理由、署名無しのたった1行の判決を下した。

The application for injunctive relief presented to Justice Alito and by him referred to the Court is denied.

(Alito 判事に提出され、Alito判事が最高裁に提示した差止救済の訴えは却下する。)

判事ごとの賛否を明らかにしていないが、保守派 6 対リベラル派 3 であるが、この日の判断に明確に異議を唱えた判事はいなかったとみられる。
保守派6人のうち3人はトランプによる指名で(
Amy Coney Barrett判事は投票直前の10月26日に就任)、トランプ大統領は選挙前に、最高裁が勝者を決めることを期待していた。

今回は最高裁で争い、逆転するとのトランプ陣営による一連の訴訟での最初の判断で、再選に向けて痛手となった。

ーーー

テキサス州は12月1日、最高裁に対し東部4州の選挙結果を否定するよう求めた。Long-shot lawsuit(うまくいけば素晴らしいが成功の可能性の低い訴え)と呼ばれる。

対象はGeorgia、Michigan、Pennsylvania、Wisconsin の4州で、4年前にTrumpが勝利し、今回敗北した。テキサス州は、各州が郵便投票を拡大したのは違法であるとしている。


2020/12/18  COVID-19関連の動き 

1週間、ブログを休んでいる間にいろいろの動きがあった。

(ワクチン関連)

Pfizer /BioNTech

Pfizer /BioNTech は11月20日、新型コロナウイルスのmRNA ワクチン BNT162b2 について、米食品医薬品局(FDA)に緊急使用許可(EUA)を申請した。

英医薬品・医療製品規制庁は12月2日、Pfizer / BioNTechのワクチンを承認した。英政府は同ワクチンを4000万回分調達する契約を結んでおり、7日から介護施設の入居者や職員、医療従事者、高齢者などに優先的に接種する。

ワクチンの接種が始まったイギリスで8日、接種した人のうち2人が、激しいアレルギー反応のような症状を示していたことが分かった。高齢者などとともに接種したNHSのスタッフ2人が接種の直後、激しいアレルギー反応である「アナフィラキシー」のような症状を示した。

2人は重篤なアレルギーを抱え、アレルギー症状を緩和するアドレナリン自己注射製剤(EpiPen)を携帯していた。その後、手当てを受けて回復した。

今回の報告を受けて、イギリスの規制当局は医療関係者に対し、これまでワクチンや薬、それに食物で「アナフィラキシー」のような症状が出たことがある人には、このワクチンを接種しないよう予防的な措置としての勧告を出した。

メーカーのPfizer は「規制当局の原因究明に協力していく。4万4千人を対象とした第3段階の臨床試験のデータを検証した外部の委員会からは、これまでのところ深刻な健康への懸念は報告されていない」とコメントしている。

米国FDA は12月11日、16歳以上を対象としたCOVID-19に対するmRNAワクチンBNT162b2の緊急使用を許可した。

緊急使用許可(EUA)の状況にあり、両社は追加のデータを収集し、2021年の承認に向けて生物学的製剤承認申請(BLA)をFDAにする準備を進めている。

全米各地で12月14日にワクチンの接種が始まった。感染リスクの高い医療関係者や介護施設の入所者などを優先対象とし、年内に2000万人の接種を目指す。

ファイザーは12月18日、新型コロナウイルス感染症のワクチンを厚生労働省に承認申請した。

欧州医薬品庁(EMA) は12月21日の審査会で承認する予定。→同日、承認した。

Moderna

Modernaは11月30日、開発中の新型コロナウイルスのワクチンの有効性が94.1%で、健康への重大な影響は認められていないという結果を明らかにするとともに、FDAにワクチンを緊急で使用するための許可(EUA) を申請したと発表した。

3万人でテスト、プラセボでの発症が185人、ワクチン接種では11人・・・(1 - 11/185)x100=94.1%、重症化は30人対0人で100%
感染しても発症していない人はこの統計に入らないため、死角あり。

2020/12/1 Moderna、ワクチンの緊急使用許可申請 

米国FDAの諮問委員会は12月17日、Modernaの新型コロナウイルスワクチンの緊急使用を支持した。感染状況が深刻な米国で2つ目のワクチンが承認される道が開かれた。

FDAの諮問委は17日の会合で、モデルナのワクチンの接種によってもたらされる恩恵がリスクを上回ると判断。採決結果は賛成20、反対ゼロ、棄権1だった。

諮問委の勧告を受け、FDAは18日にも緊急使用許可(EUA)を与える可能性がある。接種は当初、ヘルスケア従事者や長期ケア施設の高齢者が中心となる。→18日承認。

Pfizerのワクチン-70℃で保存する必要があるが、Modernaのは-20℃であれば、最大6カ月間保管することができるという。

AstraZeneca

AstraZenecaのロシア法人は12月11日、自社ワクチンとロシア製ワクチンを組み合わせた臨床試験を行うと発表した。

相手はモスクワの国立Gamaleya疫学・微生物学研究所が国防省と開発し、8月11日に承認された「Sputnik V」で、同系統である。

2020/8/4 ロシアが新型コロナワクチンの接種を10月に開始 
 

2種類のワクチンを組み合わせれば、免疫反応が高まる可能性があり、予防効果が向上するか調べる。

developer/manufacturer platform Type
University of Oxford/AstraZeneca Non-Replicating Viral Vector ChAdOx1-S
Gamaleya Research Institute Non-replicating Viral Vector Adeno-based

 付記 

英政府は12月30日、AstraZeneca のワクチンを承認したと発表した。同ワクチンの承認は世界初で、2021年1月4日に接種を始める。
通常の冷蔵庫で保管できるため、途上国も含めた普及が期待される。インドも近く承認する見通し。


付記 中国

中国の国家薬品監督管理局は12月31日、製薬大手、中国医薬集団(シノファーム)傘下の北京生物製品研究所が開発した新型コロナウイルス感染症のワクチンを条件付きで承認したと発表した。
中国国産ワクチンの承認は初めてだが、緊急投与を夏から認めており、既に国内で大規模にこのワクチンを接種している。

シノファームは国外での臨床試験(治験)の最終段階の詳細な最終データはまだ公開しておらず、安全性を懸念する声もあるが、管理局は、安全性に問題はなく、深刻な副反応もないと強調した。

付記 WHO

WHOは12月31日、Pfizer /BioNTech のワクチンの緊急使用を承認した。WHOとして新型コロナのワクチンを承認したのは初めて。

 

ワクチンには問題も発生した。

Sanofi/GSK

製薬大手の仏Sanofiと英GlaxoSmithKline(GSK)は12月11日、開発中の新型コロナウイルスワクチンについて、治験の結果、より高齢の被験者の免疫反応が不十分だったことを明らかにした。
実用化は来年後半にずれ込む見通し。

第1/2相試験で「18─49歳の成人については、新型コロナから回復した患者と同様の免疫反応が示されたが、より高齢の人では免疫反応が弱かった」という。今月開始する予定だった第3相試験を当面見合わせ、その代わりに第2b相試験を来年2月に行う。

豪 Queensland Univ / CSL

オーストラリアのモリソン首相は12月11日、同国のバイオテクノロジー企業CSLとクイーンズランド大による新型コロナウイルスのワクチン開発を中止したと発表した。

ワクチン接種後、被験者の一部がエイズウイルス(HIV)検査で、感染していないのに陽性となる「偽陽性」となった。実際の健康被害はない。
「ワクチンは安全で効果も出ていたが、エイズウイルスの反応が出た」ため、このワクチンを接種する場合はエイズウイルスの検査が必要になり、実用化に向かないとしている。

中国医薬集団(Sinopharm)

南米ペルーは12月11日、Sinopharmが開発した新型コロナウイルスワクチンの被験者1人に神経症状がみられたとして、臨床試験(治験)を一時中断したと発表した。

ペルーの国立衛生研究所は被験者1人に腕の動作が困難となる症状が出たことから、治験の中断を決定したと述べた。

「この症状はギラン・バレー症候群と呼ばれる疾患に該当する可能性が考えられる」と明かした。手足の動作に影響を与え、まひなどを引き起こすまれな非伝染性の疾患。
(ペルーでは2019年6月にギラン・バレー症候群が多数報告され、公衆衛生上の緊急事態宣言を5地域に一時的に出していた。)

ペルーでの約1万2000人を対象としたシノファームのワクチン治験は、今週中に完了する予定だった。

Sinopharmのワクチンを接種した人の数は、アルゼンチンやロシア、サウジアラビアでの被験者も含めて世界で6万人に上る。

ギラン・バレー症候群は、1976年に米国で豚インフルエンザのワクチン接種で蔓延し、(関連は確定していないが)ワクチン接種は中止された。米国でワクチン接種反対が多い理由とされる。


1976年2月に豚に由来する豚インフルエンザ患者(軍人)が出現し、24時間以内に死亡した。その頃には、数人の兵士が発症し、入院していた。同じ基地で、無症状ながら感染している兵士が500人以上いると分かり、医師たちは危機感を募らせた。

米国の保健当局は新たな流行を恐れ、予防接種プログラムの承認を求め、フォード大統領は巨額を投じ、実行に移すことを決めた。

1976年10月、集団予防接種が開始された。ところが数週間もたたないうちに、注射の直後にギラン・バレー症候群を発症した人の報告が入り始めた。2カ月足らずで500人が発症し、30人以上が死亡した。危険を冒してまで予防接種を受けたくないという人が増え、12月16日、当局は突然プログラムを中止した。

その後の調査で、豚インフルエンザは1918年のインフルエンザ・ウイルスよりはるかに致死性の低いウイルスだということが分かった。

豚インフルエンザそのものによる死者は一人だけだったが、そのワクチンで(関連は確認されていないが)30人以上が死亡した。


同じSinopharmのワクチンについて、アラブ首長国連邦(UAE)は12月9日、第3相治験で86%の有効性が確認されたと発表した。

接種した人の99%に抗体ができた。また、接種者で新型ウイルス感染症COVID-19の深刻な症状や中程度の症状が出た人はゼロだったという。同国の保健省は、「検証の結果、深刻な安全上の懸念は見当たらない」とした。

UAEの国営メディアは、ワクチンがUAEで「正式に登録された」と報じ た。(「承認」なのかどうか不明)

ーーー

英国で変異種ウイルス

英保健相は12月14日、英国で新型コロナウイルスの「変異種」が検出され、この変異種が最近の感染者数急増に関係していると述べた。

英保健相は、ロンドンと、イングランド南部の多くの地域で新型コロナウイルスの感染者数が「急増」しているのを受け、新たに規制を強化すると述べた。

「現在、この変異種による感染が1000件以上、確認されている。おもにイングランド南部で、60近い地方自治体におよんでいる」と述べた。

この変異種が、感染者急増にどの程度関与しているのかはまだわかっておらず、重症化しやすいという証拠も、ワクチンに耐性を持つことを示す証拠も何もない。

新型コロナ被害の男女差

南アフリカのケープタウン大などの国際研究チームは、新型コロナウイルスに感染すると、男性は女性より重症化しやすく、死亡する確率が 1.4倍高いとする分析結果を英科学誌 Nature Communications に発表した。

米英など47か国・地域で今年1〜6月に感染した約310万人分のデータを分析した。
感染者数は男女でほぼ同数になった一方で、集中治療室に運ばれるのは男性が女性より3倍高く、死亡率も39%高かった。こうした傾向は、各国でほぼ共通していた。

チームは「高血圧や肥満などの持病の有無だけでは男女差を十分に説明できない」と指摘。女性の免疫の働きが重症化を防いでいる可能性があるという。

異なる主張もある。

イタリア・パドバ大などの研究チームは5月7日、国際的ながん専門誌Annals of Internal Medicineに、男性ホルモンの影響を発表した。

新型コロナウイルスの感染や症状悪化には男性ホルモン(アンドロゲン)が関与しており、前立腺がん患者に行う「アンドロゲン遮断療法(ADT)」が感染予防や治療に役立つ可能性があるとしている。

前立腺がんは男性ホルモンで増殖するため、作用を薬で抑えるADTが行われる。
イタリア北部ベネト州の前立腺がん患者を調べたところ、ADTを行う患者は行っていない患者に比べ、新型コロナの感染率や重症化率が大幅に低かった。

ベネト州の前立腺がん患者について、ADTを行う5273人と行わない3万7161人を比較した調査では、新型コロナ感染者はそれぞれ4人と114人だった。このうち重症は1人と31人で、死者はなしと18人だった。

これは、男性ホルモンがウイルスの感染に重要な役割を果たす酵素にも働いているためと考えられる。この酵素「TMPRSS2」は、ウイルスが人の呼吸器系などの細胞表面に結合した後、細胞膜に侵入するのに利用されている。

研究チームは、新型コロナに感染した際、男性が女性より重症化しやすいのは男性ホルモンの作用が要因の可能性があると指摘。短期間のADTが予防や治療の手段になるとして、前立腺がんではない男性感染者を対象に臨床試験を行うよう提言した。


2020/12/18 米大統領選挙でBiden候補、選挙人投票で正式に勝利 

米大統領選の全538人の選挙人からなる選挙人団は12月14日、各州で投票を行い、民主党候補のBiden前副大統領が25州とコロンビア特別区で勝者と認証された。

来年1月6日に行われる連邦議会での集計を経て正式に決定、1月20日に第46代のアメリカ大統領に就任する。

投票結果は選挙結果と同じで、Biden 306 対 Trump 232 である。

Trump Biden
選挙人 得票 選挙人 得票

232

73,686千票

306

79,662千票

選挙人は上院(100)と下院(435)の議員数にコロンビア特別区の3人を合わせ総数は538人、当選に必要な人数は270人。

下記2州を除き、最も多く得票した候補がその州の選挙人全員を獲得する。
  メインは4人のうち、上院分 2人は全体勝者とし、下院分 2人は2選挙区の勝者
  ネブラスカは5人のうち、2人は全体勝者、3人は3選挙区の勝者

2020/11/25 2020年 米国大統領選挙 結果

Trump大統領は各州に反乱を呼び掛けたが、ゼロであった。

不思議な話だが、大統領選挙の結果により選挙人が投票するというのは法律にはなく、慣行である。
大統領選挙では実際には、大統領候補を支持する選挙人を選ぶ。
選ばれた選挙人は当初支持するとしていた候補とは別の人に投票することも法的には可能で、過去に自分の名前を書いた例もあったという。

Trump大統領は、Bidenに決まった州の選挙人にTrumpに投票するよう、指示していたが、誰も応じなかった。

この結果を受け、大統領はバー司法長官の辞任を発表した。

大統領腹心のバー司法長官は12月1日、大統領選で大掛かりな不正があったとするTrump大統領の主張について、裏付ける証拠を司法省は発見できていないと述べた。

取材に対し、投票機が細工されてBiden候補の得票が増えたという大統領の主張に言及し、「大掛かりな不正があった、選挙結果をねじ曲げるように機器が仕組まれていた、といった主張が出ている」が、司法省と国土安全保障省が調べたが、「これまでのところ、そうした主張を証明するものは何も見つかっていない」、「選挙結果を変えるほどの規模の不正は、現在まで確認できていない」と話した。

Trump大統領は依然、敗北を認めていないが、上院共和党トップのMcConnell院内総務は12月15日にBiden氏の勝利を認めた。

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Trump大統領はまだ敗戦を認めていない。

もしもの場合、米大統領選挙、期限の1月6日までに確定しない可能性も

これまで、選挙に不正があるとして各地で訴訟を行なったが、ほとんど敗訴した。(一部、再集計など)

大統領は選挙前から、主に民主党に有利となる郵送投票が問題であるとし、最終的に最高裁で決まると主張した。

9月18日に逝去したRuth Ginsburg 判事(リベラル派)の後任に保守派のAmy Coney Barrett判事を選び、大統領選直前の10月26日に正式に選任、保守派 6 対リベラル派 3 とした。

しかし、この戦略は失敗に終わった。

米連邦最高裁判所は12月8日、大統領選をめぐり、ペンシルベニア州共和党が郵便投票の利用拡大を認めた制度が州法に違反すると主張し、最大約250万票を無効にすべきだと訴えた件を退ける判断を下した。

最高裁は理由、署名無しのたった1行の判決を下した。
The application for injunctive relief presented to Justice
Alito and by him referred to the Court is denied.

2020/12/10  米最高裁、ペンシルベニア州の大統領選挙郵便投票無効を認めず

別途、テキサス州は12月1日、最高裁に対し東部4州の選挙結果を否定するよう求めた。Long-shot lawsuit(うまくいけば素晴らしいが成功の可能性の低い訴え)と呼ばれる。

対象はGeorgia、Michigan、Pennsylvania、Wisconsin の4州で、4年前にTrumpが勝利し、今回敗北した。テキサス州は、各州が郵便投票を拡大したのは違法であるとしている。
州最高裁を通さず、直接 最高裁に訴えた。

米連邦最高裁は12月11日、これを却下した。

判決は無署名で、賛否の数は明らかにされていないが、命令自体に対する反対はない。

判決では、テキサス州は、他の州の選挙のやり方につい て司法的に認識できる関心(judicially cognizable interest) を明らかにしておらず、訴えの法的権利がないとした。

"The State of Texas's motion for leave to file a bill of complaint is denied for lack of standing under Article III of the Constitution. Texas has not demonstrated a judicially cognizable interest in the manner in which another State conducts its elections. All other pending motions are dismissed as moot."

通常はこの種の訴訟に同情的とされる Samuel Alito判事とClarence Thomas判事も、テキサス州が訴訟を行う権利があることは認めたが、それ以上は原告側に有利な立場は取らなかった。

最高裁で争うというTrump大統領の戦略は失敗に終わった。


2020/12/19  現代自動車、ソフトバンクからBoston Dynamicsを買収 

Hyundai Motor(現代自動車)グループは2020年12月11日、ソフトバンクグループが保有するBoston Dynamicsの株式の約80%を取得すると発表した。取引は2021年6月までに完了する予定。
これにより、現代自動車はスマートモビリティのソリューションプロバイダーとしての変革を進める。

Boston Dynamicsの時価総額は11億米ドルとしており、現代自動車による買収額(80%) は8.8億米ドルとみられる。

グループ各社が次の通り買収に参加する。

現代自動車 30%
現代モービス(自動車部品)20%
現代グロービス(物流会社)10%
鄭義宣グループ会長 20%
合計 80%

ソフトバンクグループでは残る20%を引き続き保有し、パートナーシップを継続する。

ソフトバンクのコメント:

本取引は、当社がグローバルな戦略的持株会社としてポートフォリオのレビューを行い株主価値の最大化を図る中、世界有数のグローバルモビリティ企業であるHyundai Motor Groupをパートナーに迎える時機を迎えたと判断したもの。
同社とのパートナーシップにより商業化がさらに促進され、Boston Dynamicsの次なる成長につながるものと確信。
本取引完了後、約20%は当社が当社100%子会社を通じて保有し続ける。
本取引後もBoston Dynamicsとのパートナーシップを継続することで将来アップサイドに参画していくとともに、同社の成長と商業化に貢献していく。

現代自動車グループは、ロボット市場の成長性を見込み、物流自動化を実現する物流ロボットや、治安や安全などにも向けたサービスロボットへの投資を計画している。
また、身体が不自由な人や高齢者に移動の自由を提供するロボットにも取り組んでいる。さらに、病院での看護や介護向けのヒューマノイドロボットへの進出も検討している。

現代自動車は自動車量技術とロボット工学分野を強化しており、2025年までにロボット工学に最大1.5兆ウォン投資すると発表している。

Boston Dynamicsは2020年6月に商用ロボット「Spot」を発売、電力や建設、石油、ガス、鉱業などさまざまな業界に向けて販売した。2021年にはSpotの製品ラインアップを拡充し、自律性や遠隔検査機能を備えたロボットが加わる。また、ロボットアームの販売も予定している。

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Boston Dynamicsは1992年、マサチューセッツ工科大学 (MIT)でロボットと人工知能を研究していたMarc Raibert教授がスピンアウトにより設立した。

設立当初は、American Systems Corporationとともに3Dシミュレーションを用いた米海軍用の航空機の発進トレーニングビデオを更新する業務に携わっていた。

2005年にFoster-Miller、NASAのジェット推進研究所、ハーバード大学と共同で四足歩行ロボット BigDog を開発した。

車両が走行できない荒地で、兵士に随伴し物資を運搬するロボットラバを実現することを目指して開発された。150 kgの荷物を運びながら6.4 km/hの速度で兵士に随伴して行動することが可能で、35度以上の傾斜を持つ荒れた地形をも踏破することができる。

四足歩行ロボット Cheetah は、45km/hでのギャロップ走行が可能で、2012年8月に脚を持ったロボットによる陸上移動において世界最速を記録した。

2013年7月には3世代目の人型ロボットAtlasを、2015年に電気駆動の四足歩行ロボットSpotを公開した。

Boston Dynamicsは2013年12月13日、Googleに買収された。

しかし2016年3月に、Googleが短期的には収益が期待できないとして売却を検討していると報道された。

 

ソフトバンクグループは 、Google親会社のAlphabet Inc.からのBoston Dynamicsの買収合意について発表した。

パラダイムシフトに関わるテクノロジーへの投資ならびにスマートロボティクスを次の段階へ推し進めるという同社のビジョンに沿ったものとしている。本取引条件の詳細については非公表で、数百億円とされ た。

ソフトバンクは2014年に世界初の感情認識ヒューマノイドロボット「Pepper」を発表以来、ロボティクスソリューションの第一人者としてテクノロジーの発展を推進してきた。PepperとNAOは全世界70ヵ国以上、累計25,000台を超えて導入されている。

福岡ドームではSpot (Boston)とPepper (ソフトバンク) がホークスを応援する場面もあった。

また、この取引の一環として、二足歩行ロボットを開発する日本企業のSchaftを買収することにも合意した。

Schaftは、2012年に東京大学の情報システム工学研究室で設立されたヒューマノイド型二足歩行ロボットの分野における世界的リーダー。危険な場所や被災地、建設現場や製造現場で活用できる二足歩行ロボットの開発を専門としていた。

Googleは2013年にShaftを買収したが、Boston Dynamicsと合わせ、ソフトバンクに売却した。


2020/12/19 米国、半導体SMICなど中国企業77社をEntity Listに追加 

米商務省は12月18日、半導体メーカーの中芯国際集成電路製造(SMIC : Semiconductor Manufacturing International Corporation)を含む中国企業77社をEntity Listに加えたことを明らかにした。「国家の安全を守るため」だと理由を挙げた。

Entity Listは輸出管理法(規則 744.11(b) )に基づき安保上懸念がある企業を指定するもので、海外企業を含む企業が米国のハイテク製品や技術を同社に輸出する場合は商務省の許可が必要になり、原則却下される。

SMICについては発表時点以前に商務長官がインタビューで言及しているが、同社以外の対象企業 名は12月22日に発表される。

SMICについては、「中国が軍民融合の国家戦略を進め、中国の軍産複合体でSMICと懸念される団体との活動が確認された」とし、他については、@中国での人権侵害、A南シナ海での軍事化、不当な領有権主張、B人民軍の計画支援のため米国原産品の取得、C米国の営業秘密盗用にかかわる企業となっている。

SMICは2000年に設立した半導体受託生産の中国最大手で、2019年の売上高は31億ドル、純利益は2億ドルに達する。中国国有通信機器大手や国策ファンドなどが大株主に名を連ねる。

同社は半導体生産に米Applied Materialsをはじめとした米企業の製造技術を活用している。輸出許可がでなければ、工場新設や増設が難しくなる可能性、半導体の生産などに悪影響が出る恐れがある。
SMICはHuawei傘下の半導体設計会社の海思半導体(HiSilicon Technology)から生産を受託し、Huaweiのスマートフォンや通信機器に半導体を供給している。


同社は、既に
10月4日に、同社の一部の米国サプライヤーが、同社が米追加輸出制限の対象であるとの通知を受けたと明らかにしている。

投資家向け開示資料で「輸出制限の生産や運営への影響の評価を始めた。一部の米国から輸出された設備や付属品、原材料の供給が遅れたり、不確実が生じたりして、将来の生産や運営に重要かつ不利な影響が出る可能性がある」と表明した。事業を展開する全ての国・地域で関連法規制を順守していると強調している。

SMICはまた、米商務省産業安全保障局と「予備的なやりとり」を行ったと明らかにした。

国防総省は9月上旬、安保上問題がある企業を並べたEntity ListにSMICを加えるか政権内で議論中だと明らかにしていた。SMICが中国人民解放軍の軍事プロジェクトに深くかかわり、防衛インフラの整備に加わっているのではないかという懸念があるためとしている 。

2020/10/8 中国SMIC、米輸出規制対象に  


なお、77社のなかにドローン(小型無人機)世界最大手の中国DJI が含まれていることが分かった。「ハイテク監視技術を通じて中国内での大規模な人権侵害を可能にした」としている。

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Entity Listはこれまで、大量破壊兵器(WMD)プログラム、テロリズム又はその他の行為のリスクをもたらす恐れのある企業が対象であった。

「知財戦争」に適用するものでは、2018年10月29日に中国の福建省晋華集成電路(Jinhua Integrated Circuit Company:JHICC)が初めてである。

米商務省は2019年5月15日、その2番目として華為技術(Huawei)を加えた。8月19日にはHuaweiへの米国製品の禁輸措置を強化、関連会社46社を追加した。

2019/5/16    米国、Huawei を対象に2施策
2019/8/21   米、Huawei 禁輸強化  

2019年6月21日には、スーパーコンピューター大手5社とそれぞれのグループ会社を追加した。スパコンが「核爆発のシミュレーション」などの軍事目的に利用されていると指摘した。

2019/6/24 米、中国スパコン大手を禁輸対象に指定

2019年10月には、監視カメラ世界首位の杭州海康威視数字技術(ハイクビジョン)などハイテク8社と、新疆ウイグル自治区各地区の公安部門など20機関をEntity Listに加えた。新疆ウイグル自治区の住民たちに対し先進技術を用いた監視によって抑圧、大量の恣意的な拘留などを強いるのに協力していたと判断されるとした。

2019/10/9   米、中国の少数民族弾圧でハイテク企業と公安部門をEntity Listに追加 


2020/12/19      建設アスベスト訴訟  最高裁で国の賠償責任 初確定

建設現場でアスベストを吸い込み、肺の病気になった東京などの元作業員らが健康被害を訴えた集団訴訟で、最高裁判所は12月14日付で国の上告を退ける決定をし、全国の集団訴訟で初めて国に賠償責任があるとした判断が確定した。

建設現場で働いていた元作業員や遺族が建材のアスベストを吸い込んで肺がんなどの病気になったとして、国と建材メーカーに賠償を求めた集団訴訟のうち、東京や埼玉などに住むおよそ350人が訴えた裁判では、2審の東京高裁が2018年3月、対策を怠ったとして国に対して22億8000万円余りの賠償を命じた一方、建材メーカーの責任については認めなかった。

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全国で起こされている「建設アスベスト訴訟」で高裁判決は下記の通り。(〇は有罪、Xは無罪、一人親方の〇は補償対象、Xは補償対象外)
    メーカーの責任 一人親方への責任
横浜地裁 東京高裁 2017/10   X   労働関係法令が保護対象とする「労働者」には当たらず、国は賠償責任を負わない。
東京地裁 東京高裁 2018/3 X  「健康被害との因果関係が立証されていない」 〇  建設現場で労働者とともに作業に従事
京都地裁 大阪高裁 2018/8   〇  労働安全衛生法には「労働現場で生じる健康障害について労働者以外の保護を念頭に置いた規定がある」
大阪地裁 大阪高裁 2018/9   〇  労働安全衛生法上の保護対象ではないが、国の違法行為があれば保護されるべき
福岡地裁 福岡高裁 2019/11   契約形式に違いがあるだけ
横浜地裁 東京高裁 2020/8   他の労働者と同等であり、国は一人親方にも安全を守る法的義務がある

詳細は  2018/9/5  建設石綿訴訟の控訴審、原告全面勝訴 (これ以降の高裁判決2件も付記している。)

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今回、最高裁第1小法廷は、裁判官5人全員一致の意見で、国の上告を退ける決定をし、国に賠償責任があるとした判断が全国の集団訴訟で初めて確定した。個人で仕事を請け負う「一人親方」の被害についても国の責任が認められた 。

一方で、元作業員側の上告のうち、賠償額に不服があるとした部分については退け、国の賠償額を22億8000万円余りとした判断が確定した。

建材メーカーの責任(高裁判決のうち、唯一「責任なし」)については、元作業員側の上告を受理し双方の意見を聞く弁論を来年2月25日に開くことを決めた。

弁論は2審の判断を変える際に必要な手続きで、建材メーカーの責任を認めなかった2審の判断が見直される可能性が 強い。


なお、神奈川県内の元建設作業員や遺族らが国と建材メーカーに損害賠償を求めた訴訟の上告審で、最高裁第1小法廷は10月22日、当事者の意見を聞く弁論を開いた。結審し、判決期日は後日指定する。

2020/8/11   建設アスベスト、最高裁弁論へ

この訴訟では、高裁判決のうち唯一、一人親方への責任を認めていないが、 今回と同じ第1小法廷であるため、これが見直されると見られる。


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