RCEPの場合は、新しい協定であり、最終的に中国の主張が通ったが、TPPの場合は追加加入を要請するもので、少々のモディファイは認められるとしても、既存の条件を受け入れなければ、参加を認められないこととなる。
これは下記のブログを月ごとにまとめたものです。
最新分は http://blog.knak.jp
2021/9/15 バイデン大統領のCOVID-19対策アクションプラン
バイデン大統領は9日、新たな6つの包括的な新型コロナウイルス対策を発表した。
大統領権限を最大限に使い、ワクチンを接種していない国民にワクチンを受けさせる。ワクチン接種や副反応からの回復のために仕事を休めないなど、まだワクチンを接種していない人が持つ不安を取り除く施策も含まれている。
大統領は今後数週間で、労働安全衛生庁を通じ、大企業にワクチン接種のための有給休暇の設定を義務付けると述べた。新しいルールに従わない企業には、数千ドル規模の罰金が科されるという。
ワクチン接種を拒否した連邦職員は解雇される可能性がある。
公共交通機関でのマスクを義務付け、違反者への罰金を倍増する。デルタ型対策としてモノクロなる抗体を重視する。
一連の施策により、アメリカの労働者の約3分の2にワクチン接種が義務付けられることになる。
1) ワクチン非接種者の接種促進
従業員が100人以上の企業に対して、全従業員にワクチンの接種か、少なくとも週1回の検査を義務づける。
連邦政府の全ての職員と連邦政府と取引する数百万の業者にワクチンを義務付ける。
Medicare、Medicaid 参加の病院や医療施設の17百万以上のヘルスケア職員にワクチンを義務付ける。
大規模娯楽施設の入場者にワクチン接種証明か検査を求める。
雇用者は従業員のワクチン接種に有休休暇を認める。
2) 接種完了者の更なる保護
3度目の接種(Booster shots)が容易に受けられるようにする。
どこでBooster shotsが受けられるかを知らせる。
3) 学校を安全に開き続ける
低所得者層の3歳から4歳の子供を対象とするHead Start Programs、米国国防総省従属学校、インディアン教育局のスタッフにワクチン義務付け
全ての学校の職員にワクチン接種を求めることを全ての州に求める
学校を安全に再開するため追加の資金補助
教育省の全権力を使用し、生徒の対面教育が出来るようにする。
生徒および学校職員の定期的検査
FDAは12歳未満へのワクチン接種を検討
4) 検査の増加とマスクの義務付け(ワクチン接種者の保護)
簡単な検査キットの生産拡大
家庭での検査を安価に
生活困窮者のためのフードバンクや地域のヘルスセンターに無料の家庭での検査キット用品を送付
無料での薬局での検査の拡大
公共交通機関でのマスク義務付けと罰金倍増
米運輸保安庁は、公共交通機関でのマスク着用を1月から義務付けているが、マスク着用義務の違反者に対する罰金を9月10日から倍増する。
(航空機、船、フェリー、鉄道、地下鉄、バス、タクシー、ライドシェアなどで、空港、船乗り場、鉄道や地下鉄、バスの駅構内なども含まれる。)
現在:1回目が250ドル、繰り返し違反した場合は最大1500ドル。
改正:初回の違反に対して500ー1000ドル、2回目は1000ー3000ドル。
来年1月18日まで継続する。
連邦施設でのマスク着用継続
5) 経済復興
COVID-19の影響を受けた中小企業に新たな支援
政府の融資プログラムである給与保護プログラム(Paycheck Protection Program)での返済猶予プロセスの簡素化
中小企業を支援策と結びつけるCommunity Navigator Program
6) デルタ型との闘い:COVID-19患者のケア改善
病院への支援の増加
モノクロナル抗体を必要とする患者に
連邦モノクロナル抗体対策チームをつくり、治療専門家プールを拡大
注)米ピッツバーグ大学医療センターがホワイトハウスの新型コロナウイルス対策チームと協力して実施した研究で、新型コロナ感染症の患者に早い段階でモノクローナル抗体を投与することで、重症化率や死亡率を大幅に低下させることができるという結果が出た。
アメリカ政府の首席医療顧問を務めるアンソニー・ファウチ博士もモノクローナル抗体の使用を推奨している。
ーーー
バイデン米大統領の「ワクチン義務」計画に、伝統的に個人の自由を重視する共和党の州知事らが猛反発し、バイデン政権を相手取り訴訟を起こす構え。
共和党全国委員会も声明で大統領の新計画は「憲法違反」と指摘し、提訴する考えを表明した。
これに対しバイデン大統領は、テキサス、フロリダ両州など一部の州を念頭に、「対策の強化を拒む者がいる。失望している」と述べた。
「現段階で7州がマスク着用の義務化を封じ込み、学校区でワクチン接種を受けていない低年齢の子どもに対してもマスク着用を禁止している」と主張した。
特にテキサス州に言及し、州立大学や地域のカレッジで教師がワクチン未接種の生徒にマスク装着を求めた場合、罰金が科される新たな規則に批判の矛先を向けた。
新型コロナは国全体の試練とし、「我々は全員が団結し、国として問題を解決しなければならない」と強調。「人命を救うため権限を用いるべきだ」と訴えた。
米下院歳入委員会の民主党メンバーは9月13日、一連の増税案を発表した。10年間で3.5兆ドル規模の予算の財源となる。
(経緯)
2021/4/2 バイデン大統領、American Jobs Plan 発表、8年間で2兆2500億ドル投資
この計画は最終的に2つに分けられた。
@5500億ドル規模のインフラ包括法案
A10年間で3.5兆ドルの予算(予算決議→財政調整法=予算)
米上院は8月10日、5500億ドル規模のインフラ包括法案を賛成69、反対30で可決した。
下院ではペロシ議長が、超党派のインフラ投資法案を9月27日までに採決すると約束した。(当初は3.5兆ドル予算を通してからとしていた)
政府と民主党は、これから除外された教育や子育て支援、気候変動対応などの10年間で3.5兆ドルの予算を予算決議案(上院で多数決で議決可能)の形で提案した。
民主党は8月9日、3兆5000億ドル規模の法案の概要を明らかにした。下記が含まれている。「クリーン」な製造業向けの税優遇措置 1980億ドル
全ての3─4歳児への幼児教育提供やコミュニティーカレッジ(日本の短大)の無償化に約7260億ドル、
安価な住宅に3320億ドル
数百万人の移民労働者に市民権獲得への道を開く措置など3兆5000億ドルの費用は、増税、連邦医療保険制度の節減、長期的に見込まれる経済成長によって全額賄われると想定している。
増税は富裕層を対象とし、年収40万ドル以下は対象とならない。米内国歳入庁の徴税強化も併せて実施する。輸入品に炭素価格を賦課する措置も求めている。
2021/8/11 米上院、5500億ドル規模のインフラ包括法案を可決、下院採決時期は不透明
上院は8月10日、3兆5000億ドル規模の予算決議を50対49の賛成多数(民主党のみの賛成)で可決した。下院は8月24日 に可決した。
予算決議では、決議に基づき具体的な税制・支出法案を策定する委員会の期限を9月15日に設定している。
民主党内にも増税や財政膨張を懸念する議員は多く、修正が必要となる。
2021/8/26 米下院、3.5兆ドルの予算決議案を可決
ーーー
今回の案は、予算決議に基づく具体的な税制法案のベースである。
共和党は増税反対である。民主党は増税案を盛り込んだ歳出法案の単独での可決を目指すが、規模や内容を巡り党内に異論があり、修正は避けられない情勢 である。 (上院は50:50であり、民主党内で1人でも反対すれば通らない。)
下院歳入委員会のニール委員長(民主党)が示した増税案は次の通り。
法人税 (現行 21%):
年間利益が500万ドル超の企業 26.5% 500万以下〜40万ドル超 21% 40万ドル以下 18%
多国籍企業の海外収益に対する最低税率: 現行10.5% →16.5%
所得税:増税は富裕層を対象とし、年収40万ドル以下は対象とならない。
年収40万ドル超の最高税率 現行 37%→39.6%
年収500万ドル超 42.6%
キャピタルゲイン課税最高税率 現行 20%→ 25%
ーーー
バイデン大統領は3月31日、国内のインフラの整備等に8年間で2兆2500億ドルを投入するAmerican Jobs Plan を発表したが、財源として、増税を発表した。
現行で21%の法人所得税率を28%に引き上げる。各国が行っている税率引き下げ競争を米国は止める。
キャピタルゲイン税最高税率を現行20%から39.6%に引き上げる。
Tax Haven 国への本社移転で税回避するのを防ぐため、種々の対策を折り込むとした。
この時点で、28%は無理というのが一般的で、大統領も「進んで耳を傾ける。条件を付けずに臨む」と述べ、妥協に前向きな姿勢を示した。双方にとって受け入れ可能な25%程度で折り合うと予想されていた。
2021/4/2 バイデン大統領、American Jobs Plan 発表、8年間で2兆2500億ドル投資
毎日新聞(9/15 夕刊)はこのタイトルで、感染制御学が専門の愛知県立大の清水宣明教授に話を聞いている。
WHOや米疾病対策センター(CDC)は今春、新型コロナは空気中に漂うウイルスを含んだ微粒子「エアロゾル」を吸い込むことで起きる「空気感染」(エアロゾル感染)が感染経路だと明記した。
しかし、国は「飛沫感染や接触感染
」が原因とし、かたくなに空気感染を認めていない。
厚労省のウェブサイト:
新型コロナウイルス感染症は、主に飛沫感染や接触感染によって感染するため、3密(密閉・密集・密接)の環境で感染リスクが高まります。
このほか、飲酒を伴う懇親会等、大人数や長時間におよぶ飲食、マスクなしでの会話、狭い空間での共同生活、居場所の切り替わりといった場面でも感染が起きやすく、注意が必要です。
付記 今回の声明を受けてか、厚労省は10月末にウェブサイトを下記の通り修正し、エアロゾル感染を主たる感染原因と認めた。
感染者の口や鼻から、咳、くしゃみ、会話等のときに排出される、ウイルスを含む飛沫又はエアロゾルと呼ばれる更に小さな水分を含んだ状態の粒子を吸入するか、感染者の目や鼻、口に直接的に接触することにより感染します。
一般的には1メートル以内の近接した環境において感染しますが、エアロゾルは1メートルを超えて空気中にとどまりうることから、長時間滞在しがちな、換気が不十分であったり、混雑した室内では、感染が拡大するリスクがあることが知られています。
また、ウイルスが付いたものに触った後、手を洗わずに、目や鼻、口を触ることにより感染することもあります。WHOは、新型コロナウイルスは、プラスチックの表面では最大72時間、ボール紙では最大24時間生存するなどとしています。
実際は、接触感染の感染リスクは極めて小さいことが分かっている。
また、飛沫は比較的重いため、口や鼻から吐き出されると空中を漂わず、瞬時に落下する。それを鼻から吸い上げるというのは大変難しく、飛沫感染と言われているのも大半が空気感染だとみられている
。
清水教授は、「真の感染経路に真正面から向き合わず、消毒や手洗い、アクリル板の設置といった効果の低い対策ばかりを推奨した結果 、第5波までに多くの犠牲者を生み出したのだと思います」としている。
エアロゾルは3時間程度は感染性を有して空気中を浮遊し続けることが報告されている。従って、食堂などで食事する場合、食事相手への対策をいくらやっても、以前の客が出し浮遊しているウイルスを吸い込み感染することが考えられる。
他人がいなくても、閉鎖された場所でマスクを外すと、以前にいた人が出したウイルスを吸い込む可能性もある。
特にデルタ株の場合、患者から検出されるウイルスの量が従来の新型コロナウイルスの少なくとも4倍以上になると推定されるという。浮遊ウイルスの量が多いと感染する可能性も高くなる。
最新の知見に基づいたコロナ感染症対策を求める科学者の緊急声明 新型コロナウイルス感染拡大を受け、政府や一部医学関係者から「策が尽きた」との声が聞こえている。早期発見と隔離、ワクチン、緊急事態宣言等で用いられてきた対策以外に有効な施策がないとの意見には同意できない。彼らが感染拡大の可能性の指標とする人流は、たとえあったとしても、人と人の交わりの場において実効性のある対策がとられれば、必ずしも感染は広がらないはずである。 その意味で、感染経路への理解が進み、空気感染が主たる経路であると考えられるようになっている現在、対応すべきことは明らかである。すなわち、最新の知見を踏まえれば、対策が尽きてしまったと言うほどのことはなされていない。未だ様々な方法が残されており、それらによる感染拡大の阻止は可能である。 空気感染は主に感染者の口腔から空間に放出されるウイルスを含んだエアロゾルが空間に滞留する量(濃度)に応じて起こる。理論的にもエアロゾル滞留濃度を下げることで感染抑止は可能なはずであり、少なくとも以下に挙げる2つ方向において対策の余地は大きい。
1)ウイルス対応マスクによる、口腔から空間に放出されるエアロゾルの量と、他者からのエアロゾル吸入の抑制 ウイルス対応の、すきまの少ない不織布マスクは感染者からのウイルス排出を抑えると同時に、非感染者がエアロゾルとしてウイルスを吸入する確率を小さくでき、相乗効果があることは周知の事実である。一方で、若者を中心に広く使われているポリウレタン製のマスクや布製のマスクは、直接下気道に吸い込まれ肺炎のリスクを高める粒子径5μm以下のエアロゾルの吸入阻止に無力である。これもすでに広く知られていることであり、たとえば感染拡大時のドイツでは、公共の場や交通機関等では一定以上の性能を持つマスク着用が罰則付きで義務化され、ウレタンマスクの着用は禁止される。一方、わが国ではそうしたことに何の制約もないし、正式な呼びかけすらなされていない。日本でも、人流抑制やロックダウンの可能性を云々する前に、こうした効果の明らかな基本が徹底されるための措置を可及的速やかに実施すべきである。 2)滞留するエアロゾルの機械換気による排出、エアロゾル濃度抑制 屋内で感染者から放出されたエアロゾルは長時間空間に滞留しうる。窓開けやドア開けが有用な換気方法だが、1時間に2回程度の短時間の窓やドアの開閉では必ずしも十分な換気は確保されない。さらに、夏や冬は、冷暖房効果が大きく損なわれる危惧から窓開け換気の実施自体も容易でなく、今般の感染拡大の一因になっている疑いが強い。換気不十分の、複数の人が集まる狭い密閉空間では、発生するエアロゾルの空間濃度を下げるための工夫、すなわち熱交換換気や空気清浄機等を含めた機械的換気の適切な活用が重要となる。 以上から、私たちは国や自治体が以下の対策を速やかに検討するよう提起する。 A)ウイルス対応マスク装着についての市民への速やかな周知と必要な制度的措置 B)熱交換換気装置や空気清浄機、フィルター等の正しい選択と有効な活用についての行政の理解と市民一般への十分な周知 C)効果の科学的証明には時間を要するため、最新の知見から有効と予想できる対策は、中立的組織による効果の検証を平行しつつ、公平性や安全性に配慮して実施する 私たちの手には現在、感染抑制に活用できる不織布素材、熱交換換気装置、空気清浄機、扇風機やエアコンに付加する形でのフィルター等、科学技術の成果がある。室内空気環境を専門とする建築学分野は、シックハウス症候群を端緒とし、医学界との共同研究の歴史を持つ。本声明で指摘した項目と、狭義の医学に留まらない科学知を総合した対策の検討と実施が、いま速やかに必要である。 2021年8月18日
世話人:本堂 毅(東北大学大学院理学研究科) 以下 36名(略) http://web.tohoku.ac.jp/hondou/stat/
|
清水宣明教授によると、新型コロナが国内で初めて確認された段階で、専門家会議が「空気感染ではない」と言い切ってしまったことが全ての元凶 である。「最初に否定してしまったものを今更認めるわけにはいかないのでしょう。」
2020/2/24 新型コロナウイルス感染症対策専門家会議 見解 は次の通り。
このウイルスの特徴として、現在、感染を拡大させるリスクが高いのは、対面で人と人との距離が近い接触(互いに手を伸ばしたら届く距離)が、会話などで一定時間以上続き、多くの人々との間で交わされる環境だと考えられます。我々が最も懸念していることは、こうした環境での感染を通じ、一人の人から多数の人に感染するような事態が、様々な場所で、続けて起きることです。
これまでに判明している感染経路は、咳やくしゃみなどの飛沫感染と接触感染が主体です。
空気感染は起きていないと考えています。ただし、例外的に、至近距離で、相対することにより、咳やくしゃみなどがなくても、感染する可能性が否定できません。
専門家が当初空気感染を否定した理由は、専門家会議の議事録によると、エアロゾル感染を明記した方が良いという意見に対し「単にエアロゾル感染と書くと、たちまち医療機関では医療用のN95マスクがなくなり、一般の方は恐ろしくて外出できない状況にもなりうる」との発言がある。
また、東京オリンピックの開催を控えていたので、空気感染を認めてしまうと感染対策が大変になり、開催の印象が悪くなると懸念したのではない かと推定する。
「感染対策が難しいから主要な感染経路を伏せる」というのでは本末転倒で、空気感染はまさに 「不都合な真実」だったのだろうとしている。
2021/9/18 中国、英国に続き、TPPへの加入を正式申請
中国政府は9月16日夜、日本をはじめとする11か国が参加するCPTPP=環太平洋パートナーシップ協定(旧 TPP)への加入を正式に申請したと発表した。
付記
台湾は9月22日、TPP加盟を申請したことを明らかにした。台湾は、ニュージーランドとシンガポールとの間でFTAを結んでいる。
中国・台湾両方の加盟は「一つの中国」の観点から無いと見られており、加盟各国の今後の動きが注目される。
ーーー
付記
韓国政府は12月13日、経済関連閣僚会議を開き、環太平洋連携協定(TPP)加入申請に向けて関連手続きを開始すると発表した。今後、国会報告などを経て正式申請する方針。
ただ、国内の農業団体から反対の声が上がっている。付記
南米エクアドルが12月17日にTPP事務局の役割を担うニュージーランド政府に正式加盟申請文書を提出した。付記
中米コスタリカは2022年8月10日、ニュージーランド政府に申請文書を提出し、11日に受理された。
加盟申請国は、英国、中国、台湾、エクアドル、コスタリカの5カ国となる。
中国の習近平国家主席は2020年11月、TPPへの参加について「積極的に検討する」と表明している。
バイデン政権が早期のTPP復帰に慎重な姿勢を示す中、TPPへの加入を目指すことでアジア太平洋地域での影響力を高めるねらいがあるとみられ る。
中国は、ASEAN10カ国と日本、韓国、豪州、NZとともに、東アジア地域包括的経済提携(RCEP)に参加している。
協定はASEAN10カ国の過半数と他の5カ国の過半数が、それぞれ国内手続きを終えてから60日後に発効する。
2020/11/16 インドを除く15カ国、東アジア地域包括的経済連携(RCEP)に署名
RCEPでは、日本の重視した投資ルールや電子商取引ルールなどは骨抜きにされ、中国の望む国際経済ルールが実現したとされる。
TPP協定では今後の新規加盟国の扱いについて、前文で「この協定への加入を歓迎する」と表明している。
そのうえで、新たに加入する際の条件として第5条で「締約国が合意する条件に従うこと」と規定している。そのうえで、締約国すべてが同意することが必要である。
まず、中国が現在の協定を受け入れるかどうかが問題となる。
中国は国有企業の優遇措置をとっているほか、国境を越えたデータの自由な移転が確保されていないことなどが問題となる。RCEPの場合は、新しい協定であり、最終的に中国の主張が通ったが、TPPの場合は追加加入を要請するもので、少々のモディファイは認められるとしても、既存の条件を受け入れなければ、参加を認められないこととなる。
次に、中国の参加には、加盟11か国の同意が必要となる。
中国と豪州の関係が急速に悪化しており、両国の関係が改善しないと、豪州は簡単には同意しないと思われる。
2020/12/20 中国・豪州の関係悪化、豪州が中国をWTOに提訴
付記
米政府は2016年11月23日、中国を「市場経済国」と認定しない方針を明らかにしている。カナダ、メキシコ両国は中国のTPP参加を認めることはできない。
USMCA協定(旧NAFTA)の第32.10条 「非市場国とのFTA」は次の通りで、中国とFTAを締結した国は、3国協定から除外されることとなる。
1.USMCA締約国の一ヶ国が非市場国とのFTAを交渉する場合、交渉開始の3ヶ月前に、他の締約国に通知しなければならない。非市場国とは、本協定の署名日前に締約国が決定した国である。
2.非市場国とFTA交渉を行おうとする締約国は、他の締約国から請求があれば、可能な限りの情報を提供すること。
3.締約国は、他の締約国がFTA協定と潜在的な影響を調査するため、署名日の30日前に他の締約国がFTA協定の条文、附属書、サイドレターなど見直す機会を与えること。
締約国が機密扱いを要求する場合、他国は機密保持を行うこと。4.締約国が非市場国とFTAを締結する場合、他国は6ヶ月前の通知により、本協定(USMCA)を終了し、残りの二国間協定とする。
5.二国間協定は、上記締約国との規定を除き、本協定(USMCA)の構成を維持。
6.6ヶ月の通知期間を利用して、二国間協定を見直し、協定の修正が必要か決定する。
7.二国間協定は、それぞれの法的手続を完了したと通知してから60日後に発効する。
注 CPTPPは2018年12月30日に、メキシコ、日本、シンガポール、ニュージーランド、カナダ及びオーストラリアの間で発効
ベトナムについては2019年1月14日、ペルーは2021年9月19日に発効した。
残りはブルネイ、マレーシア、及びチリの3カ国。
なお、EUを離脱した英国は2021年2月1日、TPPへの加盟を正式に申請した。
英国はEUを正式に離脱し、他国とFTAを結ぶことができる。
2020年10月23日に日英経済連携協定(EPA) を締結、2021年1月1日に発効した。
2020/12/8 日英EPA、2021年1月1日発効へ
英国は、正式離脱前に多くの国とFTAを締結している。EU離脱で自動的に発効する。
韓国国会は2019年10月28日の本会議で、英国とのFTAの批准同意案を可決した。
英政府は2021年6月21日、TPP加盟11カ国との交渉を6月22日から始めると発表した。加盟によって金融やITサービス、自動車、ウイスキー、農産品などの輸出拡大をめざす。
河野太郎候補の原発政策が自民党内で論議を呼んでいる。
「安全が認められた原発は当面、再稼働する」と述べ、反原発の主張をおろしたのではとも見られたが、新増設はないとしたうえ、「核燃サイクルはなるべく早く手じまいすべきだ」とした。
河野候補の主張:
2050年までにカーボンニュートラルを実現するには石炭、石油から止めていかないといけない。きちんと省エネをする。再生可能エネルギーを最大限、最優先で導入していく。 それでも足らないところは、安全が確認された原発を当面は再稼働していく。それが現実的なんだろうと思ってい る。
これから新増設、リプレース、新設の計画が動いていくことはない。運転期間延長は最長20年のため、いずれ原子力はゼロになるんだろうと思う。
核燃料サイクルはなるべく早く手じまいすべきだ。
その根拠として高速増殖炉「もんじゅ」計画の頓挫や、プルトニウムの安定的な消費が見込めないことなどを挙げる。
完成の遅れや規制対応で建設費は当初計画から大きく膨らみ、経済合理性も損なわれている。この政策にこれまで協力をしてくれた自治体に迷惑をかけることなく、きちんとした将来展望を描けるように国は責任を持たなければならない ともした。
河野氏は以前のブログで次のように述べている。
再処理はやめ、高速増殖炉からは撤退、使用済み核燃料をドライキャスクで暫定保管しながら、もはや守ることができない国と自治体の数々の約束について、守れないという現実を認めて具体的な方策を考えるという方向性でほぼ一致したといっても良いと思います。
自民党内のリプレース推進派は、リプレースを主張するとともに、再処理をしなければ各原発で使用済み燃料が溢れ、止めざるを得なくなると訴えている。
使用済み燃料の処理のために、破綻している核燃料サイクルをやれというのが間違いである。実際には後述の通り、乾式貯蔵で最終処分が決まるまで保管し続ける方法がある。
自民党内の一部は、核燃料サイクルが止まることで、プルトニウムの保管が認められなくなることを恐れているとされる。
日本はプルトニウムを再処理して分離している唯一の非核保有国で、保有量46トンは、中国が軍事用に持っていると推定される量の10倍以上 、核兵器の数に換算すると数千発分に相当する。
これは、核燃料サイクルのために例外的に認められているもので、核燃料サイクルをやめると、保有を認められなくなる。
自民党の一部は、将来、核を保有するためにプルトニウムの所有に固執しているとされる。 (実際には核保有はあり得ないが、プルトニウムは持っておきたい。)
ーーー
核燃料サイクルについては下記を参照
2013/2/14 核燃料の再処理問題
2020/12/21 日本の原発の最近の諸問題
日本の核燃料サイクルは2つ、@プルトニウムとウランを混ぜて作るMOX燃料を高速増殖原型炉「もんじゅ」で使用する計画 、AプルトニウムをMOX燃料として利用する計画であった。
@については、2016年12月21日に廃炉が正式決定され、現在、廃炉作業中。
Aについては、原子力規制委員会はようやく2020年になり、7月に 青森県六ケ所村の「再処理工場」、12月に同「MOX燃料工場」について、安全対策の基本方針が新規制基準に適合すると認める審査書を正式決定した。
しかし、日本原燃は、「MOX燃料工場の完成目標時期を2022年度上期から2024年度上期に2年延期すると発表した。7回目の延期になる。
「MOX燃料」を軽水炉で使用する「プルサーマル」について、大手電力でつくる電気事業連合会は2020年12月17日、新たな計画を発表した。これまで「16〜18基」としていたプルサーマルを導入する原発の目標数を、「2030年度までに少なくとも12基」へと事実上、下方修正した。
現在、プルサーマル炉で再稼働しているのは4基(高浜3,4号、伊方3号、玄海3号)だけで、未稼働で利用可能なのは他に5基(浜岡4号、島根2号、泊3号、女川3号、柏崎刈羽3号)の合計9基、他に建設中の大間原発 があるが、12基稼働の目途は立っていない。
2020/5/15 原燃・再処理工場の安全基準「適合」へ
日本はプルトニウムを再処理して分離している唯一の非核保有国 で、既にMOX燃料として 24.3トンを持つが、六ケ所村再処理工場がフル稼働すると年間6.6トンのプルトニウムが追加される。
45.5トンのうち、英国の21.2トンは、MOX燃料製造工場が閉鎖されているため、プルトニウムでの保管であり、英国は2011年に、日本が処分費用を払えば英国にある日本のプルトニウムを引き取って英国自身の100トン以上のプルトニウムとともに処分してもよいと提案した。
電気事業連合会の予測では、2030年度までに少なくとも12基稼働するとして、プルトニウム利用量は、2024年度 0.7トン、2025年度1.4〜2.8トン、2026〜30年度 約6.6トンに過ぎない。
仮にこれが実現しても、既存のMOX燃料(日本にプルトニウム換算8.9トン、フランスに15.4トン)はそのまま、残り続けることとなる。
原発の新増設がなく、いずれ原発はゼロになるとすると、核燃料サイクルは続ける意味はない。
そもそも、核燃料サイクル構想は1990年代に始まったもので、当時は原子力発電所の新増設が検討され、かつ、ウランの入手が埋蔵量の問題から今後難しくなるとの予想があった。
この想定が変った。なお、MOX燃料のコストはウランの9倍との試算も報告されている。
ーーー
自民党内のリプレース推進派は、リプレースを主張するとともに、再処理をしなければ各原発で使用済み燃料が溢れ、止めざるを得なくなると訴えている。
現在、各原発で使用済み燃料の保管能力が無くなりつつある。これも最終処分を決めないまま、原発を建設した咎めである。
このため、対策として各原発は乾式貯蔵施設を敷地内に建設しつつある。最終処分が決まるまでの仮の措置としているが、実際には長期間の保管が可能であるとされる。
乾式貯蔵は1980年代にできた技術で、安全性は問題なく、空気が循環するだけで冷却できる。再処理をやめた米国では、原発の廃棄物はすべてこの方式で処理しているが、何の問題も起こっていないという。
2019年11月時点での各原発の使用済み燃料貯蔵量と対策は次の通り。
貯蔵能力 | 貯蔵量 | 乾式貯蔵 |
余裕年数 |
|||
対策前 | 対策後 | |||||
伊方原発 | 930t | 710t | +500t | 約6年 | 約29年 | 2020/6 規制委、設置許可発出決定 |
玄海原発 | 1,190t+290t | 980t | +440t | 約5年 | 約21年 |
プール内の核燃料の間隔を詰める「リラッキング」+290tは着工済み 2021/3/17 規制委、乾式貯蔵の審査書案了承 |
東海第二 | 260t+180t | 370t | +70t | 約3年 | 約6年 | 既存能力の180tは乾式貯蔵 設置許可済み |
浜岡原発 | 1,300t | 1,130t | +400t | 約2年 | 約8年 | |
むつ中間貯蔵施設 | +3,000t (最終 5,000t) |
2020/11 規制委、事業変更許可発出を決定 2020/12/21 日本の原発の最近の諸問題 文末 |
https://www.enecho.meti.go.jp/about/special/johoteikyo/kanshiki_tyozou.html
なお、核燃料サイクルを止める場合、各原発での保管に加え、「原料用」として六ケ所村に送っている約3000トンの使用済み核燃料の扱いが問題となる。原料として使用しない場合、各原発に送り返すこととなる。
青森県六ケ所村議会は2012年9月、政府が原子力発電所から出る使用済み核燃料の再処理から撤退する場合、村内に保管されている使用済み核燃料などをすべて村外に搬出するよう求める意見書を全会一致で採択した。
各原発での貯蔵量に加え、この分の対策を考える必要がある。
2021/9/21 SK Innovation、10月1日付でバッテリー事業、石油開発事業を分社化
SK Innovationは9月16日に臨時株主総会を開き、バッテリー事業と石油開発事業の分社化の承認を得た。
10月1日付でバッテリー事業の「SK Battery」、石油開発事業の「SK E&P」(いずれも仮称)を100%出資で設立する。
SK BatteryはEV用の中・大型バッテリー生産、BaaS (Battery as a Service: EV のバッテリーをリースする事業)、ESS(Energy Storate System)などを行なう。
SK Batteryの分社化は、経営陣がタイムリーに投資が行えるようにすることが目的としている。将来的には株式公開を行って、多額の投資が必要な能力拡大のための資金調達を行なうことを狙うが、企業価値を市場が認識するのを待つため、来年に株式公開を行うことはないとしている。
SKは米国や欧州、中国の3大市場で合計5つの新工場建設を進めている。足元で年間40ギガワット時の電池生産能力を2025年には200ギガワット時まで拡大する計画で、毎年2000億〜3000億円規模の設備投資を継続するため、バッテリー事業の上場を計画した。
同時に分社化するSK E&P は石油の探査・開発・生産、CCS (Carbon Capture & Storage) などの事業を行う。
昨年時点では、石油開発事業の分社の後、持株会社は「国外石油開発事業に全力を挙げる」としていたが、今回の発表では海外での開発をどこがやるのかに触れていない。
ーーー
SKは2007年7月に持株会社制度を採用し、石油及び化学部門を SK Energy とした。
SK Energyは2009年10月1日、自社の潤滑油事業を物的分割した100%子会社のSK Lubricants が正式に営業を開始したと明らかにした。SK Lubricantsは潤滑油専門企業として独自経営体制で世界市場に進出していく。
SK Energyは2020年10月に社名をSK Innovationに変更することを決定した。同社は2021年にSK Innovation を持ち株会社にし、石油事業と化学事業を独立法人として分割し、潤滑油のSK Lubricants の計3社を子会社とする方針を発表している。
今回の決定はこの方針に従うもの。
なお、現在のSK Energy はSK Lubricantsのほかに下記の子会社を持っている。
SK Incheon Petrochemical (100%) :石油精製、石油化学
SK Geo Centric (100%) :廃プラのリサイクルで石油抽出
SK IE Technology (90%、10%は公開):LiBS (Lithiu-ion battery separator)
SK Trading Internationl (100%)
恐らく、前2社はSK E&P、SK IE Technology はSK
Batteryの子会社にすると思われる。
SK Trading Internationl は持株会社がそのまま持ち続けるか?
2021/9/22 中国、3月のパイナップルに次ぎ、2種類の台湾産果実を輸入禁止
中国税関総署は9月18日、台湾産の2種類の果実、バンレイシとレンブについて、9月20日から輸入を一時停止すると発表した。税関は、これらの果物から害虫のPlanococcus minor(柑橘類コナカイガラムシ)を繰り返し検出したとして、禁輸は植物感染症のリスクを防止するためだと説明している。
いずれの果物も、中国が主な輸出先となっており、昨年、バンレイシは約1万4千トン(総生産の約23%)、レンブは約4800トン(同約10%)輸出された。
ーーー
バンレイシ(別名:釈迦頭)は中南米原産だが、台湾では主に台湾東部の花蓮県や台東県で栽培されている。
実が熟す前に出荷され、硬い状態で店に出されるが、熟し始めるとあっという間に実が崩れてしまう ため、中国などごく限られた地域へ輸出されるのみで、日本へはほとんど入ってこない。
レンブ(蓮霧)は、マレー半島原産で、リンゴと梨を合わせたような淡い味わいの果物。
日本では沖縄、奄美群島のほか、一部でハウス栽培されている。沖縄ではデンブとも呼ぶ。
ーーー
中国は2021年3月1日から台湾産パイナップルの輸入を禁止している。この時も自国の作物に影響を及ぼしかねない「害虫」を複数回確認したためとしている。
台湾のパイナップル生産は年間43万〜45万トンで、輸出は5万トン前後だが、このうち9割以上が中国向けで、対中輸出額は年間約57億円と、台湾の果物農家の貴重な収入源である。
今回、台湾の行政院(内閣)農業委員会によると、問題の害虫については輸出のための検疫措置を強化しており、今年6月末以降、中国側から検疫における不合格の通知は受けていなかったという。
パイナップルの輸入停止時と同様に輸入先で対処できる害虫でもあり、一方的な輸入停止は認められないとの考えを示した。
月末までに中国側が改善要求に応じない場合、「WTOに提訴する」と強調した。
いずれの禁輸も、中国が敵視する台湾の民進党・蔡英文政権への揺さぶりとみられている。
ーーー
台湾は、新型コロナウイルスのワクチン輸入でも中国の妨害を受けていると主張している。
台湾の蔡総統は5月26日、「AstraZeneca、Moderna、ドイツのBioNTech(Pfizer と提携)と積極的に交渉し、AstraZenecaとModernaからは購入できた。BioNTechとは契約成立に近づいたが中国の妨害によって今も契約できていない」と明言した。
台湾は人口2350万人に対し、確保したワクチンは約1300万回分で、接種率はいまだ約43%にとどまる。
台湾当局は9月2日、鴻海精密工業と台湾積体電路製造(TSMC)が海外から独自に調達した新型コロナウイルスワクチンを、両社から無償で受け取ったと発表した。中国の妨害でワクチン調達が進まないとして民間企業にワクチン調達を委ねる異例の決定を下していた。
両社は既に合計1500万回分の調達契約を結んでおり、Pfizer / BioNTechのワクチン 93万回分が同日、台湾に到着した。両社は今後の調達分も含め、ワクチンを全量、当局に無償提供する。
調達資金は諸経費込みで合計最大3億5000万米ドル(約390億円)。
2021/9/23 米下院、つなぎ予算・債務上限凍結一体化法案を可決
米下院は9月21日、本年12月3日までのつなぎ予算と、連邦政府の債務上限の適用を2022年12月16日まで凍結する措置を一体化した民主党提出の法案を可決した。
上院は与野党勢力が拮抗しており、議事妨害を避けて法案を可決するには60票が必要となるため、成立するかどうか見通せない。
共和党 民主党 合計 欠員 賛成 220 220 反対 211 211 棄権 1 1 合計 212 220 432 3
米国では債務上限が法律で決まっている。予算の運営のためには、別の法律により、これらを引き上げる必要がある。
付記 1917年に第一次世界大戦の戦費を野放図に拡大しないことが目的で導入
これを繰り返し先送りするのを Kick the can down the roade. という。
2019年7月22日に2021年7月末まで債務上限の2年間棚上げを決めたが、その期限がきた。
2019年3月1日時点の債務上限の22兆289億ドルに、それ以降 7月31日までに追加で借り入れた約6.5兆ドルを加えた約28.5兆ドルが新しい債務上限とな り、上限を引き上げるか、凍結するかを新たに決めるまでは、借入は出来ない。
2021/7/26 米国、債務上限復活
民主党は現在、10年で総額3.5兆ドル規模の財政支出をめざす法案の成立をめざしている。
米下院歳入委員会の民主党メンバーは9月13日、3.5兆ドル規模の予算の財源として、一連の増税案を発表した。 当然、共和党は増税に反対である。
民主党はこの法案を上院で通すため、上院で多数決で議決可能な「予算決議案」の方法を使っている。民主党で造反が無ければ、50 対 50の場合、上院議長である副大統領の1票で法案は成立することになる。
このため共和党は、民主党が増税・支出計画を推し進める限り、上院で債務上限凍結の法案を阻止する方針を表明している。
また、10月1日から始まる新年度の予算も月末までに通る可能性はなく、政府機関閉鎖を避けるためには暫定予算が必要である。
このため、民主党は今回、とりあえず下院で本年12月3日までのつなぎ予算と、連邦政府の債務上限の適用を2022年12月16日まで凍結する法案を通したもの。
つなぎ予算案には今回のハリケーン被害などの支援に286億ドル、アフガニスタン避難民の支援に63億ドルの支出が含まれている。
共和党の上院トップ、マコネル院内総務は、「我々は債務上限の引き上げを支持しない」と改めて述べた。
しかし、債務上限問題が放置されれば10月にも政府の資金繰りが行き詰まってデフォルトに陥る可能性がある。つなぎ予算がなければ、10月1日には政府機関が閉鎖される。このため、なんらかの妥協が行なわれるが、暫くは両党でせめぎ合いが続く。
予想通り、上院共和党は9月27日、この法案を本会議で採決することを否決した。60票が必要だが、共和党、民主党から各1議員が棄権したほか、民主党の1議員が反対にまわった。
共和党 | 民主党 |
民主系 無所属 |
合計 | |
賛成 | 46 | 2 | 48 | |
反対 | 49 | 1 | 50 | |
棄権 | 1 | 1 | 2 | |
改選後 | 50 | 48 | 2 | 100 |
民主党のシューマー上院院内総務は、連邦政府のデフォルト(債務不履行)と政府閉鎖の両方を回避するため、今週中にさらなる措置を講じると述べた。
特に、つなぎ予算については、9月30日までに通さないと政府機関閉鎖となる。
代替策は、つなぎ予算と連邦政府の債務上限凍結を切り離し、まず、つなぎ予算を通すことである。これについては共和党が代替案無しで反対する理由はない。
共和党の反対は、まだ時間的に余裕のある債務上限問題である。民主党の進めている3.5兆ドル規模の財政支出、その財源としての一連の増税案に対する交渉材料である。
民主党側のこれへの対策として、既に可決済みの3兆5000億ドル規模の予算決議を修正し、債務上限引き上げのための別の法案を策定することではないかとされる。その場合、過半数で議決できる。
2021/9/24 Shell、米国のPermian シェール資産をConocoPhillips に売却
Shell は9月20日、テキサス州とニューメキシコ州にまたがるシェールの最大鉱区、Permianシェール事業をConocoPhillipsに現金95億ドルで売却する契約を締結したと発表した。
ShellのPermian事業は、約225千エーカーで、現在の生産能力は原油換算で日量175千バレル。このほか、600マイル以上の原油・ガス・水のパイプライン、インフラを含む。
(ConocoPhillipsでは2022年の生産量を原油換算で日量200千バレルと期待している。現在は約半分が稼働している。)
2020歴年の税引前損失491百万ドルであった。
2020年はコロナ禍で原油価格が下落し、多くの企業が苦しんだ。2021年に入り、原油価格は上昇している。
2020/6/30 米シェール大手のChesapeake Energy、Chapter 11 申請
2020/10/2 米シェール各社、業績悪化に悩む Oasis PetroleumがChapter 11 申請
Shellは売却により、24〜26億ドルの税引後利益を計上する見込み。
売却による現金収入95億ドルのうち、70億ドルは株主への追加配当に使い、残りはバランスシート強化に使う。事業からのCash flow の20〜30%を配当しているが、それに追加するものである。
Shellでは、これまで100年以上に亘り米国でエネルギーを供給しているが、Permian事業売却後も何十年にも亘り米国でのエネルギーリーダーであり続けるとしている。
Permian事業では2017年以降、インフラや技術への投資により、温室効果ガスやメタン濃度を80%減らしたとしている。
ーーー
Shellは2月11日に温暖化ガスの排出量を2050年までに実質ゼロとする中長期戦略を発表した。これまでの計画から踏み込み、販売する製品の消費で生じる分も含めた。
エネルギー1単位あたりのCO2の純排出量を2016年比で、2023年に6〜8%、2030年に20%、2035年に45%それぞれ減らす中間目標も立てた。
同社は2020年4月にも2050年までに実質ゼロを打ち出したが、これは自社の操業や電力消費などで生じる排出量(スコープ1 & 2)が対象で、他については達成は顧客動向次第としていた。
今回の目標は、販売したエネルギーが使われることで生じる分(スコープ3)なども含む。石油への依存度を徐々に下げ、天然ガスや、再生可能エネルギーによる電力などの販売を増やすとともに、CO2の回収・貯留(CCS)、CO2を吸収する森林育成・保全への投資も進める。排出量全体の約9割を占める供給網にも広げて脱炭素に取り組む。
Shellに対しては、環境保護団体グリーンピースや「地球の友」など7団体が2019年にオランダの1万7千人の市民を代表して温暖化ガス削減を求めて訴訟を起こしていたが、ハーグの裁判所は2021年5月26日、Shellの温暖化ガス削減目標は十分でないとし、2030年までに2019年比で45%削減するよう命じる判決を言い渡した。
裁判所は、まず、成文化されていない社会通念上の規範に違反して振る舞うことは不法行為であるとした。
そして、
・Shellの CO2 排出量が大きいこと、
・危険な気候変動の影響からの保護も人権の中に含まれ、企業は人権を尊重しなくてはならないという国際的コンセンサスが形成されている こと、
・Shell自身も CO2 排出がもたらす危険な結果と、気候変動の危険なリスクを長年にわたり認識していたこと等を理由に、
Shellには CO2を削減する義務があるとした。そのうえで、同社の戦略は「明確ではなく、さまざまな条件が付けられている。これは十分でない」とし、削減義務と相容れず、削減義務 に違反(不法行為)があったと判示した。
これに対しShellは、判決内容には不服とし、控訴するとしながらも、二酸化炭素排出量削減を加速させると宣言した。
Shellは7月20日、判決を不服として控訴すると発表した。脱炭素に取り組む重要性には同意する一方で、一企業への削減命令では気候変動問題に効果はなく受け入れられないと強調した。
同社は最終的な結審まで2〜3年かかるとみている。
Shellは今回、こうした司法判断も考慮し、さらに踏み込んだ事業転換が必要だと判断した模様。
ーーー
ConocoPhillips側は、この買収により、6月30日に発表した10か年計画を大幅に上乗せすることになるとしている。
同社は2020年10月に同じくPermian
Conchoの1株につきConoco株1.46株が支払われる。買収額は 最初に報道された日の前日のConcho株終値を15%上回る水準。 Concho Resourcesの生産量は日量319千バレル。(今回、Shellからの買収で200千バレルが加わる。)
買収で企業価値600億ドルの企業が誕生する。合わせた資源量は石油換算で230億バレルに達する。
2020/2 のConocoPhillipsの米加でのシェール事業は下記の通り(Concho、Shell 資産買収で、これに500千バレルが加わる。)
欧州委員会は9月23日、スマートフォンなどの電子機器に共通のUSB Type-C充電ポートを採用することを求める規制の草案を公開した。
欧州議会での可決が必要で、規則が導入された場合、機器メーカーは24カ月以内に新しい規則に従わなければならない。
AppleがiPhoneで使用するLightning(Apple独自のコネクタで、上下どちらの向きでも差し込み可能)は使用できなくなる。
1. スマートフォン、タブレット、カメラ、ヘッドフォン、ポータブルスピーカー、携帯用ビデオゲーム・コンソールの充電ポートをUSB-C に統一する。
高速充電規格を統一し、製品により充電速度を不当に変えることを防ぎ、充電速度を同じにする。
機器のブランドに関係なく、同じ充電器で充電できる。
なお、ワイヤレスイヤホン(earbuds)、スマートウオッチ、フィットネストラッカー(身体の状態や活動状況を記録する機器)などはサイズや使用条件などに結びつく技術的理由で除外した。
2. これらの機器と充電器は別々に販売する。
機器ごとに充電器を新しく買う必要がなくなり、既に持っている充電器が使用できる。
3. メーカーは、既存の充電器が使えるかを顧客が判断できるよう、充電の性能に関する情報を顧客に示すことが求められる。
不要な充電器を買わないことで、年間2億5千万ユーロの節約となる
。また、ユーザーが古い充電器を新しい機器で再利用できるようにすることにより、廃棄物を削減する狙いがある。
(捨てられたり、未使用になったりしている充電ケーブルにより、毎年1万1000トン以上のゴミ、“e-waste”が発生していると推定される。共通化により、年間約
1,000トンのe-waste を減らす。)
Appleが iPhoneなどで採用する「Lightning」端子は事実上、排除されることになる。
Appleの担当者は、「1種類のみのコネクターを義務付ける厳しい規制は、イノベーションを推進するどころか抑制し、それは欧州および世界中の消費者を害することになると懸念している」と述べた。
但し、Appleは、同社製品の多くで徐々にUSB Type-Cへの移行を進めている。
「MacBook」は2015年、「iPad
Pro」は2018年、「iPad
Air」は2020年にUSB Type-Cにした。
Appleは9月24日に新型タブレット「iPad mini(第6世代)」を発売したが、USB Type-Cを採用している。
競争政策担当コミッショナー、Margrethe Vestagerは「われわれは業界に、独自のソリューションを考案するための十分な時間を与えた。充電器統一の立法措置を講じる時期が来ている。これは消費者と環境にとっての重要な勝利だ」と語った。
同氏はこの法律で「引き出しで絡まるケーブルがなくなる」とツイートした。
Here is a small revolution in our daily lives!
Our proposal for a common charger for mobile phones and other devices was adopted today.
No more entangled cables in our hallway drawers
2021/9/25 米、司法取引でHuawei副会長の中国帰国を容認
カナダで拘束され、米国への身柄引き渡しをめぐる裁判中の中国の通信機器大手、華為技術(Huawei)の孟晩舟・副会長兼最高財務責任者(CFO)を巡り、米司法省は9月24日、中国帰国を容認することで同氏と合意した。同氏は9月24日、米ニューヨーク州の裁判所にオンラインで出廷、司法取引が成立し、バンクーバーで釈放された。
付記 同氏は中国航空の飛行機で深圳に向かった。
孟氏は、法廷では無罪を主張したが、「米国の制裁対象であるイランとHuaweiの取引を続けるため、金融機関に誤った説明をした
」とする米司法省の主張についてこれ以上争わないことに同意し、署名した。形としては不正を認めたことにな
る。
米司法省は代わりに起訴の効力を停止し(Deferred Prosecution
Agreement:「2022年末まで合意の条件を守れば起訴猶予とする」)、米国への身柄引き渡し要請を取り下げた。
New York Timesは「バイデン政権は懐柔的な対中接近のシグナルを送った」と伝えた。米司法省は孟氏が「責任を認めた」と起訴の効力を停止した理由を説明している。
カナダの裁判所はこれを受け、米国への身柄引き渡し審理を打ち切り、保釈条件(1000万カナダドル・約8億5千万円の保釈金の支払い、追跡装置を身につけ、夜間の外出は禁止、パスポート押収)の解除を命令し、釈放命令に署名した。
一方で、米政府は法人としての華為技術に対する米司法省の訴追手続きは継続する。バイデン政権は前政権と同様に華為技術を「安全保障上の脅威」とみなし、禁輸措置を続けている。
中国政府は、孟被告が2018年12月に逮捕されたわずか9日後、カナダ人2人を拘束した。
元外交官で独立系シンクタンク「国際危機グループ」に勤めていた と、中国を拠点とする実業家で北朝鮮旅行の手配をしていたMichael Spavor で、2019年5月に正式に逮捕された。
中国政府がこの二人をどうするかが次の焦点になる。
付記
カナダのTrudeau首相はその後の記者会見で、2人が釈放され、9月25日にカナダ駐中国大使が付き添い、帰国することを明らかにした。
ーーー
孟晩舟氏の米国への身柄引き渡しをめぐる裁判が8月4日、カナダで最終審理に入り、逮捕から2年半以上たった8月18日、全て終了した。
裁判所の判断は、2021年10月以降に出される予定だが、仮に引き渡しが認められても、孟被告側は控訴するとみられ、長期化する可能性もあった。
過去の経緯と関連情報
2021/8/12 ファーウェイ幹部裁判、カナダで最終審理、中国は逮捕したカナダ人に相次ぎ有罪判決
中国の反ダンピング・反補助金調査の状況をまとめた。 一覧表 詳細
中国は1997年に対外貿易法のダンピング防止及び相殺関税防止条例を施行、同年12月に韓国・米国・カナダからの輸入新聞用紙の反ダンピング調査を開始、1999年6月にダンピングと被害を確定し、課税を行った。
2001年12月11日にはWTOに加盟している。(143番目)
以下、反ダンピング調査についてまとめた。一覧表、詳細には反補助金調査の状況も記している。
反ダンピング調査については、これまでに最審査を含め120件(当方調査)あるが、調査中が4件である。
確定分116件のうち、99件がクロの最終決定を受け、ダンピング課税を受けている。
その場合、仮決定(保証金名目でダンピング税を支払う。シロなら返却)から5年で終了するが、大部分が延長審査を受け、その結果、課税が延長されている。
なお、99件のうち、2件はWTOの裁定で課税が取り消され、1件は行政再審法での最審査で取り消されている。
X線セキュリティチェック機については、WTO紛争処理小委員会は、WTO反ダンピング規定に違反するとの判断を下した。中国は再審査を始めたが、最初の申請者が取り消しを要請したため、調査継続は不要と判断、課税を終止した。
ステンレス鋼管については日本がWTOに要請、WTOの最終審に当たる上級委員会は、中国国内には同じような高性能の製品を作る競合する企業はないので、中国の産業に損害を与えているとは言えないなどとして、日本の主張を認め、中国に対し、追加の関税を撤廃するよう是正を勧告した。中国は再調査をしたが、申請者が要請を取り消した。
無漂白クラフト紙について、行政再審法(1999/10/1発効)に基づき米国企業が再審を要請、商務部が再審の結果、当初の決定がアンチダンピング法に合致しないとして、取り消した。
EUのワインについては、EUとの和解で調査を取り消した。これはEUによる中国製太陽光パネルに対するダンピング課税への対抗である。
2013/7/5 中国、EU原産の輸入ワインで反ダンピング&反補助金調査を開始
2013/7/28 EUと中国、太陽光パネルダンピング問題で和解
2014/3/26 中国とEU、欧州産ワインのダンピング問題で和解
米国のコーリャン(白酒の原料、飼料)については、クロの仮決定を行ったが、需要業界から、ダンピング課税によりコストアップとなり、消費者の生計費が上がるとの声があがり、課税を取り消した。
その他、ダンピングがあっても被害がないのが6件、ダンピング率が2%未満のものが1件、提訴取り下げによる調査取り止めが8件ある。
件数 | 品名の前の番号は一覧表の番号 | ||
ダンピング税を徴収 | 99 | ||
同上のうち
|
WTO違反で取り消し | ( 2) | 60. X線セキュリティチェック機(EU)、66. ステンレス鋼管(EU・日本) |
行政再審法審査で取り消し | ( 1) | 28. 無漂白クラフト紙(米、韓、タイ、台) | |
相手国と和解 | 1 | 80. ワイン(EU) | |
課税が悪影響のため取り止め | 1 | 105. コーリャン(米) | |
損害なし裁定で調査取り止め | 6 | 7. PS (日、韓、台)、
8. リジン(韓、米、インドネシア) 40. オクタノール(日本ほか)、41. ブタノール(日本ほか) 108. Vertical Machining Center (日、台)、118 PVC(米) |
|
ダンピング率が2%未満で調査終了 | 1 | 25. ナイロンフィラメントヤーン(台湾) | |
輸入量が少量のため調査終了(No.78部分的) | - | 78. 高性能合金鋼シームレス鋼管(日本)(米・EUは課税) | |
提訴取り下げで調査取り止め | 8 | 21. 30. 32. 49. 65. 67. 84. 111 | |
調査中:暫定反ダンピング措置 | 3 | 113. 115. 117 | |
調査開始 | 1 | 110. | |
計(30-2、32-2提訴取り下げ後、再審) | 120 |
参考 反ダンピング・反補助金の決定は中国商務部のホームページで発表されている。
http://file.mofcom.gov.cn/article/gkml/
2021/9/28 ドイツ総選挙、勝者なく、連立交渉難航の可能性
ドイツ連邦下院議会選挙(総選挙)は9月26日に投開票された。
速報は下記の通りで、社会民主党がメルケル首相のキリスト教民主・社会同盟(CDU/CSU) を抑えてトップとなり、環境政党の「緑の党」が第3党に躍進した。
社会民主党の首相候補のOlaf Scholz 副首相兼財務相の勝利である。キリスト教民主同盟のArmin Laschet 党首のミスが響いた。
2021/9/4 メルケル首相後任は?
しかし、社会民主党も206議席で過半数(368議席)には遠く及ばない。当然、連立しかあり得ないが、現在連立を組んでいるCDU/CSUと社会民主党はともに首相候補を出して争っており、少なくとも当面は連立を組む気はないとされる。
その場合、両党が他の1党と組んでも多数決に達しないため、どちらかが主導の3党連合となる可能性が高い。
但し、「ドイツのための選択肢」は極右政党であり、左派党は旧東独の共産党系で、いずれも連立を組みにくい。(社会民主党のScholz候補はテレビ討論で連立を完全には否定しなかった。)
どちらの党が緑の党と自由民主党の両方を取り込むかがキイになるとみられる。
付記 各党のシンボルカラーから3党連立の名前が付けられた。
社会民主党(赤)、緑の党(緑)、 自由民主党(黄)は交通信号機の色から「信号連立」
CDU/CSU(黒)、緑の党(緑)、 自由民主党(黄)はジャマイカの国旗の色から「ジャマイカ連立」と呼ばれる。
しかし、緑の党も首相候補を出して争っており、連立を組むためには厳しい条件を出すと思われる。
自由民主党も、増税せず、政府借り入れに対する憲法上の制限を復活させることを公約に掲げており、簡単には連立に応じないと見られる。
3党連立が成り立った場合、いろいろの政策でどのように折り合うか、想像しにくい。
付記 社会民主党、緑の党、自由民主党は10月15日、連立交渉に入ることで合意した。
前回も、当初、社会民主党が連立を離脱、CDU/CSUは緑の党、自由民主党との3党連立を協議したが、自由民主党が協議から離脱したため2党では過半数に達せず、すったもんだの結果、半年後の翌年3月に元の社会民主党との連立にこぎつけた経緯がある。
2018/3/17 メルケル首相 再選
今回も決着までに数カ月かかると見られている。最終的には前回同様、3党連合が成り立たず、CDU/CSUと社会民主党の連立になる可能性もある。
連立が成り立ち、次期首相が決まるまでは、メルケル首相が続けることとなる。
第一次 2005/11 |
第二次 2009/10 |
第三次 2013/12 |
第四次 |
今回 |
|||||||
2017/9 |
2018/3 | 2021/9 | 首相候補 | ||||||||
キリスト教民主同盟 | キリスト教 民主・社会同盟 (CDU/CSU) |
連立 | 連立 | 連立 | 245 | 連立協議 | 連立 | 196 | Armin Laschet 党首 | ||
キリスト教社会同盟 | |||||||||||
ドイツ社会民主党(SPD) | 連立 | 連立 | 152 | 離脱 |
→ |
206 |
Olaf Scholz 副首相 兼財務相 |
||||
緑の党 | 67 | 協議 | 118 |
Annalena Baerbock 共同党首(女性) |
|||||||
自由民主党(FDP) | 連立 | 80 | 協議 | 離脱 | 92 | ||||||
ドイツのための選択肢(AfD) | 87 | 83 | (極右政党) | ||||||||
左派党 | 69 | 39 | (旧東独共産党系) | ||||||||
無所属 | 9 | 1 | |||||||||
合計 |
709 (過半数は355) |
735(過半数 368 ) |
ドイツ下院は4年ごとに総選挙で、法定定数は598議席で、うち小選挙区は299議席となっている。それなのに、前回は709議席、今回は735議席となったのにはドイツ独特の仕組みがある。
下院選挙の仕組み
有権者は比例で政党に、小選挙区では候補者に1票ずつ投じる。
・ 小選挙区の最多得票者が当選
・ 全体議席を政党名簿投票の結果で各政党に配分
但し、政党名簿投票で有効得票総数の5%以上を獲得 or
小選挙区で3名以上の当選者を出した党に配分する。
・ 配分議席数から小選挙区当選者数を除いた数を比例当選者数とする。
但し、小選挙区当選者の数の方が多い党が出た場合、計算上は小選挙区当選者を落とすことになるが、超過分を取り消さない。
この場合、当選者比率が投票結果の比率を上回ることになる。このため、議席配分の比率を守るために議席数を増やす。
例 開票結果が下記の通りであったとする。
A党 B党 国民の選択 小選挙区当選 60議席 190議席 政党得票比率 20% 30% 総議席 598 119議席 179議席 差引比例議席 49議席 -11議席 この場合、B党は小選挙区で190議席をとりながら、総議席では179議席となり、小選挙区で選ばれた議員を11名やめさせることとなる。
有権者は小選挙区での190議席を選ぶとともに、B党に全体の30%を与えたが、これを否定することになる。
国民が選んだ190議席と30%の両方を満足させるには、総議席を増やすしかない。B党だけ増やすと他の党の比率が変ってしまうため、全党に適用する。
この結果、次の通りとなる。(端数の扱いを無視している)
A党 B党 小選挙区当選 60議席 190議席 政党得票比率 20% 30% 総議席 633 126議席 190議席 差引比例議席 66議席 0議席 小選挙区では小差であっても1位の得票者のみが選ばれるため、小選挙区の当選者の比率が全体の政党得票比率と大きく異なることがある。
このため、この調整が必要になる。
2021/9/29 Pfizer、COVID-19 予防飲み薬のPhase2/3 テストを開始、米Merck、塩野義も
Pfizerは9月27日、COVID-19治療薬を予防薬としても使う EPIC-PEP(COVID-19 暴露後の予防のためのプロテアーゼ阻害薬の評価試験)のPhase2/3の開始を発表した。感染した人と同居する人を対象とする。
* Evaluation of Protease Inhibition for COVID-19 in Post-Exposure Prophylaxis
新薬候補のPF-07321332とエイズウイルス感染症の治療に使われるリトナビル(ritonavir)(低用量)を併用する。
今回の Phase 2/3 テストはグローバルな研究計画の一部で、感染した人と同居する18歳以上の2660人を対象としている。
PF-07321332/ritonavir 合剤かプラセボを1日2回、5日又は10日経口投与し、安全性と感染と症状の予防の有効性を評価する。
このテストに加え、2021年7月に始まったグローバルなEPIC-PEPには、重症化(入院、死亡を含む)のリスクが高い感染患者を含めた試験、8月に始まった重症化リスクのない感染患者に対する試験がある。
PF-07321332はプロテアーゼ阻害薬(下図)で、特に経口投与するように設計されているため、患者を入院させることなく、感染の最初の兆候または曝露の最初の認識時に処方できる可能性がある。(臨床試験で評価された最初の経口投与薬 。現在承認されているものはない。)
低用量のリトナビル(これも経口投与)との同時投与は、PF-07321332の代謝または分解を遅らせ、ウイルスとの闘いを助けるために高濃度で長期間、体内で活性を維持するのに役立つと期待している。
Ritonavir もプロテアーゼ阻害薬で、同じくプロテアーゼ阻害薬のLopinavirとの合剤(AbbVie Inc.が販売する商品名Kaletra)がHIV感染症のHAART療法に用いられている。
Remdesivir 国際的な臨床試験を行ったが、その中にプロテアーゼ阻害薬のLopinavirとRitonavir の合剤(商品名Kaletra)が含まれている。
2020/10/17 WHO、暫定結果で「Remdesivirの効果認められない」、メーカーは反発
AbbVie Inc.は2020年5月に注意を出している。
ロピナビル・リトナビルは、成人及び小児のHIV感染症の治療薬として承認されている抗ウイルス化学療法剤です。
現在、本剤がCOVID-19に適応外使用されていることを把握している。これまでに、COVID-19に対して本剤が使用された場合の新たな安全性の問題は出ていない。
しかし、本剤のCOVID-19に対する承認は取得しておらず、その有効性・安全性は確立していないため、COVID-19に対する使用にあたっては、必要性やリスクを十分に検討してほしい。
Pfizer
は2021年3月、PF-07321332を健康な成人を対象とした第1相試験で、治験薬の安全性、忍容性、および薬物動態を評価した。
7月には、フェーズ2/3試験であるEPIC-HR(高リスク患者におけるCOVID-19のプロテアーゼ阻害の評価)に進み、リトナビルと組み合わせて、診断が確定した参加者の有効性と安全性を評価した。8月にはフェーズ2/3試験であるEPIC-SR(標準リスク患者におけるCOVID-19のプロテアーゼ阻害の評価)を開始し、SARS-CoV-2感染の診断が確定した参加者の有効性と安全性を評価した。
ーーー
米国のMerckも経口治療薬を開発している。こちらはRNAポリメラーゼ阻害剤である。
米製薬大手Merck (米加以外での社名はMSD : Merck Sharp and Dohme)は6月9日、開発中の新型コロナウイルスの経口治療薬「モルヌピラビル Molnupiravir」について、米政府への供給で合意したと発表した。
モルヌピラビルは、ウイルスの増殖を防ぐ飲み薬で、米国などで最終段階の治験が行われており、有効性などが確認できれば今年後半にも米当局に緊急使用許可を申請する可能性があるという。
感染者と接触した後に、感染の予防薬としてモルヌピラビルを飲んだ場合の効果を調べる試験も今年後半に始める。
モルヌピラビルはMerckと米バイオ医薬品企業 Ridgeback Biotherapeuticが共同開発するもので、アビガンと同様、ウイルスの細胞内での遺伝子複製を阻害することで増殖を防ぐRNAポリメラーゼ阻害剤である。
2021/6/15 米Merck、新型コロナウイルス治療薬の米政府への供給で合意
Merck と共同開発社のRidgeback Biotherapeutics は9月1日、Phase 3 の治験を開始したと発表した。
付記
Merckは10月1日、開発する新型コロナウイルスの飲み薬について、臨床試験(治験)で入院と死亡のリスクを50%減少させることが確認されたと発表した。
今後、米食品医薬品局(FDA)に緊急使用許可を申請する見通し。付記
Merckは11月26日、治験の最終分析で、入院と死亡のリスクを(前回発表の50%ではなく)30%減少させることが確認された発表した。前回より有効性が低下した。
(参考)
Merck はイベルメクチンを開発した。同社は2021年2月4日、イベルメクチンを新型コロナウイルス感染症治療に使う可能性についてデータを検証したところ、安全性と効果は示されなかったと発表、寄生虫病の治療以外の用途で使用すべきでないと警告した。
日本では疥癬用に販売しているが、この用途以外には製品を供給していない。
価格が安いため販売しないのだとする声があるが、このモルヌピラビルを高価格で売るためだったのか? (イベルメクチンは疥癬用で安価なため、大量に売っても利益は少ない。)
興和は7月1日、大村智博士の要請を受け、新型コロナウイルス感染症患者を対象にイベルメクチンを投与する臨床試験を開始すると発表した。
なお、通販ではインドのSun Pharmaのジェネリック品 Ivermectol が販売されている。数量によるが、@152(144錠の場合)、@500(4錠の場合)となっている。
中外の抗体カクテルは@31万円とされる。
ーーー
塩野義製薬は新型コロナウイルス感染症(COVID-19)治療薬(開発番号:S-217622)を経口投与の薬として開発中だが、国内第2/3相臨床試験を9月27日に開始した。2021年7月より国内第1相臨床試験を開始したが、現時点で、安全性上の大きな問題は認められておらず、薬物動態についても、目標とする血中薬物濃度を上回る良好な結果が確認されている。3CLプロテアーゼ阻害薬で、SARS-CoV-2の3CLプロテアーゼを選択的に阻害することで、SARS-CoV-2の増殖を抑制する。
形状はまだ決まっていないが、錠剤やカプセルなどを想定している。
2021/7/28 塩野義製薬、COVID-19治療薬の臨床試験開始
付記 経口投与治療薬(飲み薬)について新しい発表があった。年内に薬事法申請し、来年1〜3月に実用化の予定
年度内(2022年3月末まで)に100万人分を生産
海外供給も視野に国際共同治験も計画しており、年内に米FDA、欧州医薬品庁(EMA)と協議に入る。
なお、塩野義製薬は7月19日に東京大学発の創薬ベンチャーである株式会社HanaVaxとの間でカチオン化ナノゲルデリバリーシステムを用いたCOVID-19に対する新規経鼻ワクチンの開発に関するライセンス契約を締結したが、2022年度から臨床試験(治験)を始める。
呼吸器感染症に対するワクチンは、全身系の免疫に加えて、病原体の侵入門戸である呼吸器粘膜に「粘膜免疫」を誘導できる経鼻ワクチンがもっとも有効なワクチンと考えられているが、カチオン化ナノゲルデリバリーシステムは、天然に存在する多糖のプルランをコレステロール修飾、およびカチオン化修飾することにより粘膜保持性を高めたもので、ワクチン抗原をナノゲル内に封入し、経鼻投与を介して粘膜に導入することで、全身系および粘膜系両方の免疫を効果的に誘導することが期待される。
2021/9/30 塩野義製薬のCOVID-19 経鼻ワクチン
前回の記事で塩野義製薬の 経口投与治療薬と経鼻ワクチンについて触れた。
経口投与治療薬(飲み薬)について新しい発表があった。
年内に薬事法申請し、来年1〜3月に実用化の予定
年度内(2022年3月末まで)に100万人分を生産
海外供給も視野に国際共同治験も計画しており、年内に米FDA、欧州医薬品庁(EMA)と協議に入る。
経鼻ワクチンの詳細は次の通り。
塩野義製薬と東京大学発の創薬ベンチャーである芥anaVaxは2021年7月9日、カチオン化ナノゲルデリバリーシステム(cCHP)を用いた新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対する新規経鼻ワクチンの開発に関するライセンス契約を締結した。
塩野義は、cCHP技術を活用したCOVID-19経鼻ワクチンの全世界における独占的研究・開発・製造・流通ならびに販売権を取得する。HanaVax社は、本契約の締結に伴う一時金、今後の開発の進展に応じたマイルストン、ならびに製品上市後の販売額に応じたロイヤリティーを塩野義から受領する。
COVID-19のような呼吸器感染症に対するワクチンは、全身系の免疫に加えて、病原体の侵入門戸である呼吸器粘膜に「粘膜免疫」を誘導できる経鼻ワクチンがもっとも有効なワクチンと考えられている。
cCHPはHanaVax社の独自のデリバリー技術で、鼻腔内に投与することで、従来の注射による痛みがなく、感染部位である呼吸器粘膜ならびに全身に対して効果的に免疫を誘導することができる。また、医療環境が整っていない新興国では注射による投与が困難な場合があり、医療アクセスの観点から、どのような所でも使いやすい製剤として経鼻ワクチンの必要性が高まっている。
ワクチン抗原をナノゲル内に封入し、経鼻投与を介して粘膜に導入することで、全身系および粘膜系両方の免疫を効果的に誘導することが期待される。
塩野義製薬とHanaVax社は、画期的な次世代経鼻ワクチンの提供を通じて、COVID-19の脅威から人々を解放するため、感染症領域における塩野義製薬の強みと、粘膜免疫学のパイオニアであるHanaVax社の強みを融合し、本ワクチンの研究開発を加速して 行くと述べている。
発表にはないが、ワクチンそのものは塩野義が開発を進めているワクチンと思われる。
塩野義のグループ会社のUMNファーマと国立感染症研究所、九州大学(現 京都大学)が共有するBEVSを活用した遺伝子組換えタンパクワクチンを開発している。開発と並行して、国内で唯一BEVS技術を用いた遺伝子組換えタンパクワクチンの製造実績を有するアピ鰍ニそのグループ会社である涯NIGENと提携し、生産体制の立ち上げを進めている。
遺伝子組換えタンパクワクチンは、ウイルスの遺伝子情報から目的とする抗原タンパクを発現・精製後に、アジュバント(ワクチンの効果を高める物質)を添加して投与される。
BEVS (Baculovirus Expression Vector System ) 技術は、目的とするタンパクの遺伝子情報を組み込んだバキュロウイルスを昆虫細胞に感染させ、昆虫細胞内で目的タンパクを発現させる技術である。
ーーー
塩野義製薬と芥anaVaxは2020年9月30日に、HanaVax社が開発中のカチオン化ナノゲルデリバリーシステム(cCHP)を用いた新規経鼻肺炎球菌ワクチンに関するライセンス契約を締結した。
肺炎球菌は、特に高齢者や小児等に対して、重篤な肺炎のほか、髄膜炎、敗血症などの侵襲性肺炎球菌感染症を引き起こす。肺炎球菌には90種を超える血清型が報告されているが、既存ワクチンの効果は一部の血清型のみに限られる。
本ワクチンは、広範な抗原として期待されるPspA抗原を使うもので、HanaVax社の独自技術であるカチオン化ナノゲルデリバリーシステムを用いて鼻腔内に投与することで、従来の注射による痛みがなく、感染部位である呼吸器粘膜ならびに全身に対して効果的に免疫を誘導することができる。
PspA(Pneumococcal Surface Protein A)は菌体表層に存在するタンパク質で、肺炎球菌が共通して有する病原因子の一つ。肺炎球菌はPspAの働きによって、宿主免疫による排除から免れていると考えられており、広範な血清型に有効性を示す肺炎球菌抗原として期待されている。
ーーー
カチオン化ナノゲルデリバリーシステム(cCHP)はいろいろな治療薬、ワクチンに期待できる。