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インド 目覚めた経済大国  日経ビジネス人文庫

 

地図  
     
人口   総人口 11億2千万人 出生率2%弱 「産児制限の優等生」
       インディラ・ガンジーの断種などの強硬政策失敗
       政府関与はタブー
        女性に対する教育が奏功

  都市部では急速に核家族化が進行

  地方では農作業労働力確保で子供4〜5人もざら
    穀倉地帯のパンジャブ州では男女出生比率が100対85
      男児は労働力、女児は高額の持参金必要

 2030年前後に14億人突破 中国を追い抜き世界一へ
 2050年には約16億人 世界人口の18%へ

 うち貧困層(1$/日以下の生活費) 3億人
   2$/日以下を加えると数億人上乗せ

 初等教育就学率 83%
 5歳未満の乳幼児死亡率 95/1,000

 人口の2/3強 7億人が農村部
   地方により状況異なる

  地域格差 1人当たり月間平均支出(2004)
    都市部 1052ルピー
    農村部  559ルピー

    365ルピー以下 平均30%、後進地域55-57%

 25歳以下の若年層が 54%
    教育、インフラを与えれば膨大な労働力
    失敗すれば失業者の山
  ◎政府 製造業誘致で雇用創出

 有権者 7億人

多民族、多宗教、多言語
  インドの紙幣の裏に
    公用語のヒンディ語と英語
    +15の準公用語で額面記載
    
  国会で同時通訳

宗教
 ヒンズー教 8割 9億人
 イスラム教 1億4千万人 人口増加率高く、徐々に差は縮まる
 キリスト教 2.3%
 シーク教  1.9%
 仏教  0.7%
 その他、ジャイナ教、パルシー(ゾロアスター教徒の末裔)

  インド人民党は右翼的なヒンズー至上主義団体を母体

 ◎インド憲法 世俗主義を明確に規定

     
人的資源   インド工科大学(IIT 国内7校)を筆頭とする理科系高等教育機関 年間40万人の技術者

世界で最初にゼロを発見した民族  抽象概念の思考や計算、情報処理に強い

激烈な競争社会
 IIT 7校の実質志願比率 50倍
 上級国家公務員試験(IAS) 数百人の募集に数十万人が受験
 
 エリートや成功者を産み出す原動力
 他方で、小学校終了が全体の7割未満

  列車に乗るとき並ばない、割り込み運転 : 子供の時からサバイバルを生き抜く根性

     
カースト  
ブラフミン(サンスクリットでブラーフマナ、音写して婆羅門(バラモン))
神聖な職に就いたり、儀式を行うことができる。ブラフマンと同様の力を持つと言われる。「司祭」とも翻訳される。
クシャトリア(クシャトリヤ)
王や貴族など武力や政治力を持つ。「王族」「武士」とも翻訳される。
ビアイシャ(ヴァイシャ)
商業や製造業などに就くことができる。「平民」とも翻訳される。
スードラ(シュードラ)
一般的に人々の嫌がる職業にのみ就くことが出来る。スードラはブラフミンの影にすら触れることはできない。「奴隷」とも翻訳されることがある。先住民族であるが、支配されることになった人々である。
ダリット
カースト以下の人々もおりアチュートという。「不可触賎民(アンタッチャブル)」とも翻訳される。力がなくヒンドゥー教の庇護のもとに生きざるを得ない人々である。
彼ら自身は、自分たちのことをダリット(Dalit)と呼ぶ。ダリットとは壊された民(Broken People)という意味で、近年、ダリットの人権を求める動きが顕著となっている。
     
    1947/8独立でカースト制度及びそれに基づく差別は憲法で禁止

   地方、農村部では残る。

インド政府 不可触民への Affirmative action
  国立大学、議員、公務員などの採用に一定の留保枠
  2006/12 隷属階級にも大学入学の優先権  

  インド西部 「指定カースト」優遇求め 暴動で25人死亡
    最下位層に属さないグジャールは「指定」外のまま。

     
     
歴史   1947/8/15 独立
 前日にイスラム教徒連盟がパキスタン建国を宣言
  カシミール領有権をめぐり第一次印パ戦争(1948年5月)

 東ベンガル地方 
   東パキスタンとして新国家建設に参加
   パンジャブ人主流の西パキスタンの差別的政策に反発
   1971年独立戦争 インド軍が介入し第三次印パ戦争
   →1971年末に西パキスタンが降伏、バングラデシュ独立

・国民会議派(コングレス)
  ネール首相→インディラ・ガンジー→ラジブ・ガンジー(テロ)
  1998年野党に

・インド人民党(BJP)主導の与党連合が経済成長の基礎を築く。
 バジパイ首相 1998年核実験強行、パキスタンの核実験を誘発、国際批判
 ヒンズー教徒とイスラム教徒の対立、貧困層の不満
 2004年春の総選挙で敗退

・シン首相率いる連立政権
  改革路線+「人の顔をした改革」

 −−−

1991年経済危機 湾岸戦争と政局混乱
 湾岸戦争:出稼ぎ労働者からの送金激減、原油高  91/1外貨準備高 10億ドルの危機的水準
   →20億ドルのIMF融資要請、日米独にそれまでの繋ぎ融資打診
   →首相が突如辞任、下院が予算未成立のままで解散総選挙。日米独、政局混迷理由に凍結
 ラジブ・ガンジー元首相(首相返り咲き狙う)の暗殺
 外貨危機でデフォルトの懸念

総選挙で国民会議派 ナラシマ・ラオ総裁が政権
 新産業政策を発表
  ・海外企業との合弁の外資出資比率を40%→51%(外資による経営権把握を容認)
  ・輸出業務(それまで国内企業に限定)を外国商社に開放
  ・産業の許認可制の廃止(軍事など一部を除く)
  ・国営企業の民営化推進(通信などの民間開放)

 ◎暫定内閣の筈のラオ政権が、これまで何度も挫折していた課題を実行  
   社会主義的経済運営から離脱 
    財務相がマンモハン・シン(現首相)
    商務相  チダムバラム(現財務相)

90年代半ばから外資参入ラッシュ
 
80年度から2002年度まで 平均6%の成長を持続 

海外進出
  2007/1 タタ製鉄が英蘭コーラスを70億ポンドで買収(ブラジル鉄鋼大手CSNに競り勝つ)
  2007/2 アルミ圧延大手ヒンダルコ・インダストリーズが米ノベリスを60億ドルで買収
  
  製薬業界(欧米市場進出の近道として買収)
    Dr.レッディーズ・ラボラトリーズ、ドイツのベータファルム・グループ買収
    ランバクシー・ラボラトリーズ、ルーマニア製薬5位のテラピアなど欧州3社を買収

 ◎規制緩和が後押し
    2005/5 事前認可なしの海外投資上限を純資産100%から200%に引き上げ

  アフリカ、中南米にも進出
   

     
中国との格差   海外からの直接投資 2005年 55億ドル(中国の1/10)
道路、電力、電気通信などのインフラ 大きく見劣り
外資優遇策 まだまだ不十分
日本経済新聞 2007/6/18

China/India 実力比較

人件費
 中国  製造業で上昇続く
 インド  IT分野、一段と高く

▲…一足先に高度成長軌道に乗った中国に比べ、インドの人件費はまだ安いというのが通り相場。だが一部には、中印の関係が逆転している労働市場がある。
▲…自動車産業の拠点がある中国・広州とインド・バンガロールの日系メーカーで一般労働者の月給の最高額が比べると広州が100ドル以上高いが、高い学歴と職能で大きな付加価値を生む「中堅技術者」はバンガロールが上。母国語と同様に英語を操り、米国留学組も多いインド人IT技術者は世界的に引く手あまたで、給与は一段と高くなる。
▲…「中印など新興国参入を考える際は人件費の安さが競争力の大きな要素」〈日系電子部品メーカー)。中国は製造業の一般労働者、インドはITなどの技術者の人件費が上昇。ともに“得意分野”の競争力を落としかねない構図をどう打開するか。両国の戦略が注目される。
     
インド産業の特異点
  製造業の出遅れ
    GDP構成
  1950年 2005年
第一次産業  59%  22%
第二次  13%  24%
第三次  28%  54%
    ペティ・クラークの法則
 第一次→第二次→第三次に発展
 インドはこの法則が当てはまらない。

 @インフラの脆弱性(製造業発展へのハードル)
    ITは知識集約型 パソコンと優秀なエンジニアがいればよい。
 
 A1991年までの事実上の鎖国政策
    海外製品との競争にさらされず、出遅れ
     (cf 中国 「世界の工場」 日本、欧米の技術取り入れ)

 インフラ   道路、空港、港湾、発電所など脆弱性

 製品、部品の輸送
   トラック輸送 デリー〜ムンバイ 1400km 40時間
   港湾   ムンバイ港 コンテナ山積
         陸揚げしてデリー到着までに1ヶ月も
 電力  各社自家発電に100%依存
 水

2006/1 インフラストラクチャー金融公社(IIFCL)

     
     
     
  産業   @IT New economy 牽引
     海外で8割稼ぐ
     インフォシス 抜群の知名度
      世界中からソフト開発を請け負う「Global delivery」ビジネスモデル
        高い教育の人材、英語、時差で昼夜逆転、インターネット技術

    懸念材料:人件費上昇

A自動車 世界トップテン間近
    最近のシェア
      マルチ 46.4% スズキ
      タタ   16.4%
      現代  14.3%
      以下、マヒンドラ(6.4)、ホンダ(4.3)、トヨタ(3.6)、・・・

    マルチのスイフトの成功(New rich 向け) Premium compact 中心価格135万円

     スズキ子会社 マルチ・ウドヨグ
      1983 小型車 「マルチ800」生産開始 現在月産5万台以上
      インド国内乗用車市場でシェア46%

B通信 携帯電話 利用者急増
     ブロードバンドは普及遅れ

C航空 競争過熱

Dエネルギー
   インド天然ガス公社(ONGC) 海外油田獲得急ぐ
      サハリン1に参加
      ミタルグループとONGCミタルエナジー(OMEL) 設立
      中南米、アフリカにも

      シリアやコロンビアで中国石油天然気(CNPC)と共同入札
       共存への道の模索

   原子力発電

E医薬
   ジェネリック ・・・1971年以降 「物質特許」なく、「製法特許」のみ

   → 2005年特許法改正 物質特許を35年ぶりに復活(WTOの要請)

   世界大手が進出
    エーザイ 2005/9販売会社設立
    
   インド勢は海外進出
     Dr. Reddy's Laboratories Ltd  ドイツのベータファルムグループ買収
     Ranbaxy Laboratories ルーマニア5位のテラピアほか買収

   欧米メガファーマとの提携

F小売

   Walmartの進出計画

   ◎小売分野への外資参入規制
      2006/1 単一ブランド小売のみ51%まで解禁

   ◎物流インフラ問題

G金融  
   規制緩和進む  

◎雇用に関する規制
  従業員100人以上の事業所の解雇やレイオフ、事業所閉鎖には州政府の事前許可が必要
    許可は至難の業

   規模縮小や撤退が柔軟に出来ない。

◎法律で、重要事項の決定には議決権の75%が必要
   通信(74%の出資認可)でも相手側が拒否権を持つ可能性

◎インド企業と提携、合弁の企業が、同じ分野で新たな事業をする場合、
  提携相手の「同意書」(Non Objection Certificate)が必要   

     
   農業   人口11億人の2/3強 7億人が農村に

   農業部門のGDP比 20%
   旱魃や病虫害での不作 インド経済成長の足を引っ張る

 政府対策
 @銀行などによる農村向け融資枠拡大指導
    但し、融資の3割が返済不能、返済困難に
    栽培技術、マーケティングなどの支援指導が必要
 A食品加工産業への大幅免税、農業機械などの関税減免、品種改良などのR&D
   農学研究、農業教育
 B高付加価値化、多様化の後押し
 C農業所得は原則非課税

  ◎人口の3割強、4億人がベジタリアン
    イスラム、シーク 豚肉がタブー
    ヒンズー 牛肉がタブー
     鶏肉、羊肉の消費拡大期待

潜在力
 1960-70のGreen Revolution で食糧自給達成
 毎年、穀物生産 2億トン以上
     ミルク生産量世界一
     コメはタイに次ぐ2位
     綿花 世界3位
     サトウキビ 世界2位
     バナナ 世界1位
     紅茶 世界1位

問題点
 @灌漑普及率の低さ
    パンジャブ州 95%、ハリヤナ州 84%
    タミルナド州 46%、アンドラプラデシュ州 36%
    インド平均 40%

   雨頼み、化学肥料投下も先進国の数分の一

 A産地と消費地を結ぶインフラが劣悪
   選果場、保冷倉庫なし
   農村の2割しか電気がない
   農村部の地方道未整備
    消費地到着までに30%が腐敗し廃棄

 インド経済の8-9%成長には、農業部門の4%成長が不可欠

大手資本の参入


 

     
     
     
     
政府方針
 (2007)
  庶民の生活水準の底上げ
 @農業振興策
    農家向け銀行貸出目標 1.9兆ルピー→2.25兆ルピー
    農薬補助金 増額
    公的天候保険の導入
    農家に対する社会保障制度創設(100億ルピー投入)
    農村地域の道路インフラ整備(400億ルピー)
   
   ◎全人口の約7割が従事
     ここ数年2%の低成長
     投資不足で天候頼みの農業 飢饉発生で大打撃


 A教育
    教育目的税(個人所得税、法人税に上乗せ) 2%→3%で財源確保
    技術系専門学校1400校の設備改善
    奨学金制度(中等教育中退者減)
    
 B個人所得税(低所得層の非課税枠拡大)
 

     
     
     
     
問題点   慢性的な補助金漬け体質
選挙対策上の地方・農村振興資金
総人口11億人弱で所得税支払は3千万人弱
 → VATの導入、サービス税の強化などでの税収拡大(税制改革は道半ば)

インフレ懸念
 2006/上 成長率 9.1%
 海外からの投資資金流入 年間200億ドル
 ↓
 2007/2 WPI 6.73% (抑制目標5.5%)