北越製紙 王子が敵対的TOBへ

  王子製紙発表  北越製紙反応

王子製紙が北越へTOB実施

  北越製紙、反対決議

北越TOB 不成立で決着


日本経済新聞 2006/7/24              

北越製紙 王子が敵対的TOBへ
 三菱商事と争奪戦 北越株過半数取得めざす

 製紙業界最大手の王子製紙は23日、同6位の北越製紙に対してTOB(株式公開買い付け)を実施すると発表した。7月3日に経営統合を提案したが、北越が21日に三菱商事から約24%(議決権べース)の出資を受けて傘下に入ると発表したため、敵対的な買収提案に踏み切る。実現すれば王子の世界シェアは現在の7位から5位に上がるが、北越は強く反発している。北越を巡り三菱商事と王子という大企業同士が争奪戦を繰り広げる異例の展開になる。


敵対的買収大企業に波及
 王子製紙による北越製紙の買収提案は日本のM&A(企業の合併・買収)市場を一変させる可能性を秘める。従来型の大企業による敵対的買収はこれまで実質的に1件もなかったからだ。「経営者同士が握手すれば統合成立」とは決めつけられない時代の始まりともいえる。
 

王子、提案拒否で強攻策
 首位固めへ執念 北越は防衛策の発動検討

 王子製紙が北越製紙に対する異例のTOB(株式公開買い付け)実施に動くのは、世界の素材産業が寡占化する中、国内製紙首位の地位を固めるのが狙い。

 


 王子が北越に最初に経営統合を打診したのは、北越の増産がうわさに上りはじめた今年3月。王子は弱含む国内市況の一段の悪化要因になると見て増産の自粛を打診したもようだが、北越は5月18日に大型増産を決断。これを受け王子は7月3日に北越の株式100%取得を柱とした統合提案書を提出していた。

 

 


2006/7/23 王子製紙

北越製紙株式会社に対する経営統合提案に関するお知らせ

 当社は、本日開催の取締役会におきまして、去る7月3日付けで当社代表取締役から北越製紙株式会社(以下、「北越製紙」といいます)に対して提案した、北越製紙と当社との経営統合案を付議しました。当社取締役会は、下記のとおり、同提案を承認すると共に、北越製紙が平成18年7月21日に公表した
三菱商事株式会社(以下、「三菱商事」といいます)に対する第三者割当増資(以下、「本件増資」といいます)および業務提携が撤回されることを条件に、上記経営統合の実現をめざすことを決定いたしましたのでお知らせいたします。

 

 ただ、本件増資が実行された場合には、本経営統合の実現を難しくするに止まらず、本公開買付けの条件の魅力を減じることとならざるを得ません。すなわち、本件増資と当社の予定投下資金額を前提に、本件増資後の全株式を対象とした公開買付価格を再計算すると、公開買付価格は1株あたり約800円になります。これは、三菱商事への割当価格である607円に対しては31.7%ものプレミアムがついた金額ではありますが、三菱商事以外の株主にとっては、本件増資がなければ得られたはずのプレミアム金額の減少を意味します。当社は、7月3日の本提案書記載の通り、北越製紙塗工紙生産設備増設資金の提供を申し出ており、本件増資による資金調達の必要性はありません。また、三菱商事との業務提携の内容についても、「原材料の調達、国内外の紙販売に関する協業等についての提携を行って参ります」(北越製紙の平成18年7月21日付プレスリリース「第三者割当による新株式発行及び主要株主の異動並びに業務提携に関するお知らせ」)との抽象的な開示にとどまっており、当該提携が北越製紙にもたらす具体的なメリットの説明は一切されておりません。当社としては、北越製紙の取締役会が自らの職責に照らして本件増資および業務提携を再考すること、あるいは三菱商事が株主全体の利益に配慮されて再考することを期待し、本件増資および業務提携が撤回されることを条件に、引き続き本経営統合提案(一株あたりの公開買付価格を860円とする公開買付けを含む)を本提案書記載の条件のまま維持します。但し、本公開買付けは本件増資等の撤回が公表されてから可及的速やかに行うものとし、本提案書III.2(新グループの経営体制および社名)のうち経営体制に関する部分については、当面凍結するものとします。


2006/7/24 北越製紙

王子製紙株式会社によるプレスリリースについて

 昨日、王子製紙株式会社(以下「王子製紙」といいます)は、「北越製紙株式会社に対する経営統合提案に関するお知らせ」を公表し、同社取締役会において当社との経営統合提案を承認すると共に、当社が平成18年7月21日に公表した三菱商事株式会社(以下「三菱商事」といいます)に対する第三者割当増資(以下「本件第三者割当増資」といいます)及び業務提携(以下「本件業務提携」といいます)が撤回されることを条件に、当社との経営統合の実現を目指す旨公表いたしました。かかる決議に対する当社の対応について、以下のとおり、お知らせいたします。

1.本件第三者割当増資及び業務提携の撤回について
 王子製紙は、
本件増資及び業務提携の撤回を条件に経営統合の実現を目指す旨を公表しております。
 しかしながら、当社は、本件増資により調達した資金は、当社の企業価値ひいては株主共同の利益の確保・向上のために必要な当社新潟工場の塗工紙生産設備増設の設備投資その他当社新潟工場を中心とした設備投資に充当するものであります。また、三菱商事との業務提携についても、同社の有する国際的な信用力と取引基盤を活用することで、当社の更なる成長につながるものと確信しております。
 したがいまして、当社が、本件
第三者割当増資及び業務提携を撤回することはございません。

2.買収防衛策の発動について
 当社は、平成18年7月19日に、当社の企業価値ひいては株主共同の利益を確保し、向上させることを目的として、当社株式の大量取得行為に関する対応策(買収防衛策)の導入を決議しました。
 しかしながら、王子製紙が、平成18年7月3日付けで当社に対して提案したと主張している内容は、非公式の打診以上のものではございませんし、また、王子製紙が昨日公表した提案は、本件増資及び業務提携の撤回を条件とする条件付の提案であるため、いずれも現段階では当社の買収防衛策の対象となる買付等に該当しないため、現時点において、当社の買収防衛策に従った手続きがとられる予定はございません。
 本件につきましては、今後も進捗があり次第、適時開示をいたします。


2006/08/01 日本経済新聞                   王子製紙発表

王子製紙が北越へTOB実施、1株800円で

 王子製紙は1日、同社が経営統合を提案していた北越製紙に対するTOB(株式公開買い付け)を実施すると発表した。買い付け価格は1株800円。北越製紙による三菱商事への第三者割当増資の実施を踏まえて当初の予定より60円引き下げた。買い付け期間は2日から9月4日までの34日間とする。


日本経済新聞 2006/8/4

北越株 日本製紙が対抗取得 8%強「王子TOB阻止」
 三菱商事と連携探る 王子は計画続行

 製紙業界2位の日本製紙グループ本社は3日、同6位の北越製紙の株式8.49%を取得したと発表した。今後も10%未満の範囲内で買い増す。同首位の王子製紙による北越株TOB(株式公開買い付け)を阻止するのが狙いで、経営支配が目的ではないとしている。北越の増資に応じて株式の24.4%を取得する三菱商事と合わせると、保有株比率は3分の1を超える可能性が高く、王子が目指す北越との経営統合は難しくなる。北越を巡る買収戦は業界1、2位メーカーが対決する構図に発展した。

王子の統合計画 公取委が任意審査

 公正取引委員会は3日、王子製紙が計画する北越製紙との統合が独占禁止法に抵触しないかどうか任意審査を始めたことを明らかにした。統合で市場占有率(シェア)が高まり公正な競争が制限される恐れがある分野があれば、生産設備の売却などを求める。
 公取委は統合後のシェアが35%を下回ればほぼ無条件で認可する。統合で35%を超す品目が白板紙や紙器用板紙、塗工印刷用紙など複数あり、王子は公取委に事前相談していた。公取委が見解をまとめる前にTOBに踏み切ったため自主的な審査に切り替える。
 審査結果の公表はTOB期限終了後になる見通し。公取委は2001年の日本製紙と大昭和製紙の統合で異議を唱え、両社は生産設備を一部売却した。今回も問題があればTOB終了後でも王子に設備売却などを求める。日本製紙の北越株取得は「議決権べースで10%未満なら審査対象にならない」としている。

日本製紙「王子独走」を警戒
 業界1、2位が敵対 社長会見「統合は著しく不利益」


日本製紙・王子 源流は同じ「大王子」
 財閥解体から2強へ


 実は01年に旧日本製紙と大昭和が経営統合する際、大王製紙が阻止しようと大昭和株を大量取得した経緯がある。同じ手法を今度は日本製紙がとるのは、歴史の皮肉といえる。


2006/8/30 日本経済新聞

北越TOB 不成立で決着
 設備刷新 王子、自前路線に

 王子製紙の篠田和久社長は29日の記者会見で北越製紙に対する敵対的TOB(株式公開買い付け)について「不成立の方向」と明言した。成立をめざして検討していたTOBの条件変更は「企業価値の向上につながらない」として断念。北越の最新鋭工場を使って効率化を進める戦略を転換し、自前の最新設備を徳島県阿南市の富岡工場に新設する路線に切り替える。国内大企業間では初の敵対的な買収攻防は業界内外の反発で、期日を待たず決着する。

誤算の王子 北越に代償
 北越 呉越同舟どう経営
 王子 寡占戦略練り直し

 王子製紙による北越製紙へのTOB(株式公開買い付け)攻防が事実上、決着した。大企業が仕掛けた初の敵対的買収として注目されたが、王子は予想以上の反TOB勢力拡大など誤算続きの末、敗北宣言に追い込まれた。一方の北越。三菱商事との提携戦略の具体化に加え、TOB阻止のためだけに大株主となった日本製紙グループ本社とどう関係を構築するか、難題を抱え込んだ。攻防の決着は本当に北越側の勝利なのかは不透明だ。

日本企業 変化の兆し 買収の手法透明性向上

業界再編へ火種残る
 設備増強ラッシュ 価格競争の激化必至

 製紙大手の設備建設計画

社名 工場 投資額
(億円)
新設備の
年産能力
(稼働時期)
王子製紙 富岡工場
(徳島県阿南市)
500-600  30万-35万トン
 (08年後半)
日本製紙 石巻工場
(宮城県石巻市)
 630  35万トン
 (07年11月)
大王製紙 三島工場
(愛媛県四国中央市)
 450  28万8000トン
 (07年8月)
北越製紙 新潟工場
(新潟市)
 550  35万トン
 (08年末)

王子・篠田社長「和洋折衷の手法、矛盾あった」