2010年2月8日
サントリー社との経営統合交渉の終了について
キリンホールディングス株式会社(社長 加藤壹康)は、サントリーホールディングス株式会社(以下サントリー社)との経営統合に向け交渉を行ってまいりましたが、本交渉を終了しましたのでお知らせします。
当社としては、統合新会社は、公開会社として経営していくことを前提に、経営の独立性・透明性が十分に担保されるべきと考えておりました。しか し、この点につきサントリー社との間で認識の相違があり、このまま統合交渉を継続しても、当社が目指す「グローバルリーディングカンパニー」として、国内 外のお客様・従業員・株主をはじめとした全てのステークホルダーから理解・賛同を以って受け入れられる会社の姿を描くことが困難であると判断し、交渉を終 了することを決定しました。
(サントリー)
当社としては、統合新会社のあるべき姿を検討していくなかで、統合比率をはじめ、キリン社との間に認識の相違があり、今交渉において当社が追い求めている新会社の実現は難しいと判断し、交渉を終了することを決定しました。
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2010/2/8 日本経済新聞
キリン・サントリー、統合断念
国内食品最大手のキリンホールディングスは8日、同2位のサントリーホールディングスとの経営統合交渉を終了すると発表した。8日午前、両社トッ プによる会談を開いて交渉の中止を決めた。統合比率や経営体制などで合意に至らず、基本方針が一致しないまま交渉を続けては既存事業への影響が大きいと判 断した。
業績面などが堅調な両社の統合交渉は、内需が縮む中で「勝ち組」とされる企業でも大胆な戦略転換が必要であることを印象づける動きだっ た。国内の足場を固めてグローバルな競争に備える動きとして注目されていただけに、交渉断念はリーマン・ショック後の危機を経てもなお大企業同士の統合へ の壁が高いことを浮き彫りにした。
毎日
両社の統合交渉で、統合比率についてキリン側はキリン1対サントリー0.7程度を主張する一方、サントリー側は0.9程度を要求。平行線が続き、このまま交渉を続けても進展は見込めないと判断した。
キリン側は当初、サントリー株の89.33%を握る創業家が、統合後の新会社で重要議案について拒否権を持つ株式3分の1以上を保有することを警戒。昨年11月下旬、キリン1対サントリー0.5程度を提示した。昨年末には3分の1をギリギリ超える0.6程度まで歩み寄り、先月下旬には0.7程度まで譲歩したが、0.9程度の統合比率を主張するサントリー側との溝は埋まらなかった。
両社の主張で、最も大きく食い違っていたのは、キリンの医薬事業に対する評価だった。キリンは08年に協和発酵工業を連結子会社化し、傘下の医薬品子会社と合併して協和発酵キリンを誕生させるなど、医薬を酒類、飲料に続く収益源と位置づけている。一方サントリーは、新薬開発に膨大な開発費がかかるため、世界の大手専業メーカーと戦っていくのは難しいと、将来収益を懸念。キリンが協和発酵買収時に締結した外部への売却禁止契約の見直しと、統合比率算定から医薬事業を除外するこ.とを求めていた。
さらに、酒類や清涼飲料事業に対する評価も両社で隔たりがあり、トップ会談でもその溝は埋められなかった。
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2010年2月6日
社名「サントリーキリン」有力 課題調整のトップ会談へ
経営統合に向けて交渉中のキリンホールディングスとサントリーホールディングスは、両社トップが8日に協議し、統合比率などの最終調整に入る。世界市場で勝ち残りをめざす新会社の誕生に向けて基本合意をめざしており、交渉は最大の山場を迎えた。
新統合会社はキリンが存続企業となり、社名は「サントリーキリン」とする案が有力。キリンの加藤壹康(かずやす)社長、サントリーの佐治信忠社長の2人 が会長と社長に就く見通しだが、社名やトップ人事は統合比率の交渉次第で調整する。また、飲料などのブランドとして使っている「キリン」「サントリー」は そのまま残す考えだ。
統合比率では、キリンが「キリン1に対しサントリー0.6強」を示しているが、サントリーは「1対0.9弱」を求めており、主張にはまだ開きがあ る。サントリーは売上高ではキリンの3分の2程度だが、事業の将来性なども含めて「対等合併」をめざしており、トップ協議で着地点を見いだせるかが焦点。 サントリー創業家は、統合新会社の株式のうち、経営の重要事項に拒否権を持つ3分の1超を握ることになる。
〈キリンホールディングス〉 1907(明治40)年創業の総合飲料メーカー。東証1部上場。2007年に持ち株会社になり、キリンビール、キリンビバ レッジ、メルシャン、協和発酵キリンなどを傘下に持つ。主力の国内ビール事業は、アサヒビールとの激しいシェア争いで知られ、09年は9年ぶりに首位 (37.7%)を奪還した。08年12月期は連結売上高2兆3035億円、営業利益1459億円。従業員数は約3万7千人。
〈サントリーホールディングス〉 1899(明治32)年に大阪で創業した鳥井商店を母体に、1921(大正10)年に寿屋として誕生。ワインと ウイスキーの製造・販売で成長し、2009年4月に持ち株会社化。非上場で、株式の89%は創業家の資産管理会社が持つ。国内のシェアはウイスキーが首 位、清涼飲料が2位、ビール系飲料は3位。08年12月期は連結売上高1兆5129億円、営業利益813億円。従業員数は約2万2千人。
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産経 2010.2.6
キリンに医薬事業売却要求 サントリー、統合に条件 8日結論
キリンホールディングスと サントリーホールディングスの統合交渉で、サントリーがキリンの医薬品子会社「協和発酵キリン」の売却を統合条件として提案していることが5日、関係者の 話で分かった。統合比率をめぐる主張に大きな隔たりがある中、新たに医薬品事業の売却案が浮上したことで交渉が難航するのは必至。キリン、サントリーの両 社長は、8日に都内で会談し、統合合意に向け最終的な判断をする見通しだ。
サントリーは、世界の医薬品大手に規模で劣る協和発酵キリンが 競争に生き残るのは困難として、統合後数年以内の売却の確約を求めている。キリンは多角化の一環として、平成20年4月に協和発酵を連結子会社化。同年 10月1日に子会社のキリンファーマとの合併で協和発酵キリンに社名を変更した。キリンの出資比率は50・1%。
協和発酵キリンの22年12月期の営業利益予想は360億円で、売上高営業利益率は9%と好調だ。
一方、サントリーは巨額の開発費がかかる医薬品事業を17年に第一製薬(現第一三共)に売却し撤退。売上高が4千億円規模の協和発酵キリンについても、3兆〜4兆円規模の米ファイザーやスイスのロシュなどの巨大企業と互角に競争するのは難しいとみている。
キリンとサントリーの統合交渉は、統合後の力関係を示す統合比率をめぐって膠着(こうちゃく)状態が続いている。昨年11月、キリン側がキリン1に対しサントリー0・5を提示。一方、サントリー側は、キリン1に対してサントリー0・9程度を求め、溝は埋まっていない。
サントリーは売上高ではキリンの3分の2程度だが、事業の将来性なども含めて「対等合併」をめざしており、トップ協議で着地点を見いだせるかが焦点。
このため8日にキリンの加藤壹康社長とサントリーの佐治信忠社長が会談し、統合比率について直接、結論を出す見通しだ。
首脳会談で折り合いがつけば、世界5位の食品メーカーの誕生に向け大きく前進するが、両社の主張には開きが大きく、白紙撤回される可能性も残っている。
平
成23年4月の経営統合を目指してキリンホールディングスとサントリーホールディングスが進めている統合交渉で、最大の焦点の統合比率をめぐる両社の溝の
深さが改めて際だってきた。サントリーが統合新会社の発行済み株式の3分の1超を同社の創業家が握ることを「絶対条件」として譲らないことに対し、キリン
が株主の三菱グループの反対もあって難色を示しているためだ。来年1月の基本合意を目指す両社の交渉は、最終局面を前に最大の関門に直面している。 統合比率で折り合えば、公正取引委員会の 承認を経て経営統合に向けた両社の手続きは大きく前進することになる。新会社の社名は「キリン・サントリー」か「サントリー・キリン」で調整中だ。トップ にはキリンの加藤壹康社長、サントリーの佐治信忠社長が会長か社長のどちらかに就任する方向で検討している。本社は都内の新たなオフィスに入居する予定 だ。 サントリーは非上場会社で、株式の89・3%を創業家の佐治家と鳥井家の資産管理会社「寿不動産」が保有する。サントリー側は寿不動産が保有するサントリー株を一切売らず、統合後の新会社でも、筆頭株主となることを求めている。
合併や定款変更など会社経営の重要案件について実質的な拒否権を持つ33・4%超の株式を創業家が握るためには、計算式にもよるが統合比率でキリン1に対 し、サントリー0・6前後が最低でも必要だ。サントリー首脳は今週、寿不動産の保有比率が33・4%を下回る事態になれば「交渉はブレーク(破談)」と語 り、33・4%を死守する構えをみせている。 関係筋によれば、もともとキリンは、寿不動産が新会社で33・4%超の株式を保有することを容認する意向を示したとされる。しかし、キリンの母体である三 菱グループでは、寿不動産が新会社の経営に実質的な拒否権を持つ筆頭株主になることに反発を強めており、キリン側も態度を硬化させているという。 キリンの売上高は、サントリーの1・5倍、最終利益は2・5倍に達し、規模と収益の面でキリンが優位に立つのは明らかだ。三菱グループ首脳のひとりは「サントリーの軍門にくだったと見られかねない株主構成には反対だ」と語気を強める。 現在、統合比率については保有資産や文化事業などを加味して第三者機関が算定しており、近くキリンの加藤社長とサントリーの佐治社長が直接会談し協議する予定だ。世界最大級の酒類・飲料メーカーの誕生を左右する統合比率の合意ができるかどうか、なお予断できない状況だ。 |
経営統合交渉を進めているキリンホールディングスとサントリーホールディングスは2009/9/15日、公正取引委員会に統合に関する事前審査を申請した。
統合の狙いや統合後のシェアの見通しなどを盛り込んだもようで、統合後の、ビールや清涼飲料などの国内シェアが独占禁止法に抵触するかどうかの判断をあおぐ。
ビール類のシェアで国内で5割超、清涼飲料で3割超となるため、独占禁止法上の問題がないか、公正取引委員会が審査を進めている。
公正取引委員会の松山隆英事務総長は2009/11/11日の記者会見で、キリンホールディングスとサントリーホールディングスの経営統合をめぐる事前相談について、追加資料を9日付で求めたことを明らかにした。
統合が独占禁止法に抵触しないかを判断するための資料で、キリンやサントリーが販売する商品の市場規模、需要予測などが含まれている。公取委は追加資料が提出されるのを待って第1次審査に入る。事前相談が長引く可能性があり、年内の統合合意を目指す両社の交渉にも影響しそうだ。
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2009.7.13 産経
キリン、サントリー統合へ 酒類・飲料で世界最大級に
国内食品最大手のキリンホールディングスと同2位のサントリーホールディングスが経営統合に 向け交渉に入ったことが13日、分かった。統合が実現すれば、ビールと清涼飲料でそれぞれ国内トップとなるほか、平成20年3月期の両社単純合算の連結売 上高は3兆8200億円と、世界でも最大級の酒類・飲料メーカーが誕生する。食品業界の勢力図が塗り変わるのは確実で、国際的な業界再編が加速する可能性 も出てきた。
まず、両社それぞれの持ち株会社を統合し、その後に傘下の各事業会社を統合する方向で協議しており、早期の合意を目指す。景気低迷や少子化で国内市場の縮小が避けられない中、統合で国内の基盤を固めるほか、今後の成長が見込まれる海外市場開拓にも力を注ぎ、収益力を高める狙い。
統合後の両社の連結売上高は、国内食品3位のアサヒビール(1兆4627億円)を2・6倍に達し、世界の食品会社でも、米飲料事業最大手のペプシコや米総合食品大手のクラフト・フーズと肩を並べる。
国内酒類・飲料でも圧倒的なシェアを握る。キリンとサントリーの20年の国内ビール類飲料シェアは2位と3位。統合後はシェアで49・6%となり、37・8%で首位のアサヒビールを引き離す。清涼飲料でもキリンは3位、サントリーが2位で合計31・4%と、20%台後半で首位の日本コカ・コーラグループを上回る。
統合が実現すれば、戦後長く続いたキリン、アサヒ、サントリー、サッポロビールのビール大手4社体制が崩れることになり、再編機運が高まるのは必至。また、今回の統合が引き金となり、低採算にあえぐ、他の食品業界の再編をうながす可能性もある。
ただ、今回の統合に関してキリンは同日「物流や調達で協働を進めているが、統合に関して、具体的に決定している事実はない」との声明を発表している。
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キリン 2010-2012年キリングループ中期経営計画 2009年10月26日
経営統合を進める背景
1.綜合飲料グループ戦略を始めとするKV2015の課題と整合
・縮小する日本の酒類・飲料市場における事業基盤の更なる強化
・グローバルでの熾烈な競争への対応
・社会・環境・消費者等からの要請に応える企業体質の強化
2.KV2015の次なる成長戦略も視野に
→ 前向きに話し合いを継続中
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「今後も生き残るのは業界で2社だけだ」
「今後も生き残るのは業界で2社だけだ」。サントリーの佐治信忠社長(63)はこの数年、「ストロング・ナンバー2」という表現を好んで使っ てきた。少子高齢化による国内市場の縮小を前提に、各業界では2010年ごろまでには優勝劣敗が鮮明になり、勝ち組は上位2社に集約されるという意味だ。
サントリーの商品群で最大の強みは、創業の原点ともいえるウイスキー事業だ。国内シェアは約7割に上り、同社の最大の収益源。一方、63年に 業界最後発で参入したビール事業は長い間、キリン、アサヒ、サッポロという上位3社の後塵を拝し、07年まで40年以上も赤字が続いた。08年に「プレミ アム・モルツ」のヒットで一躍業界3位に浮上したが、2009年7月からはセブン&アイ、イオンの流通大手2社のプライベート・ブランド(PB)向けに 「第3のビール」を出荷するなど、業界のタブーを破る試みに出るのも、「業界2位」への強いこだわりの表れだ。
両社の統合の幕が上がったのは、2008年の年明け早々だった。キリンの加藤壹康社長(64)と佐治社長が東京都内の料亭で昼食を共にし、「どちらからともなく」(関係者)協力を持ち掛けたのがきっかけだったという。
キリンは06年5月、「キリン・グループ・ビジョン2015」という長期経営計画をまとめ、アジア・オセアニアでのリーディング・カンパニー を目指す方向を打ち出した。そのため売上高目標を現状のほぼ倍の3兆円とし、積極的なM&A攻勢に打って出る。国内ではメルシャンと協和発酵工 業、海外では豪乳業大手のナショナル・フーズ、フィリピンの大手ビール、サンミゲルなどの買収はその路線に沿った戦略投資だ。
サントリー株の9割は、創業一族が握る
一方、サントリーは中国・上海でのビール事業や中国・台湾でのウーロン茶など飲料事業が立ち上がり始めたが、海外の売り上げ比率は10数%にとどまる。業界勝ち組入りを目指す佐治社長にとって、キリンはノドから手が出るほど欲しい相手だった。
ただ、今後の交渉は簡単ではない。佐治社長は記者団に「対等合併」を強調したが、直近の連結売上高はキリンの2兆3035億円に対し、サント リーは1兆5129億円で、3分の2の規模にとどまる。さらに非上場であるサントリー株の9割は、創業一族の鳥井家と佐治家の資産管理会社である寿不動産 (本社・大阪市)が保有している。
同社の社長はサントリーの佐治社長のため、統合に反対することはないとみられる。しかし、そのまま統合すれば、上場会社となる統合会社株の4 割超を寿不動産が保有することになるため、統合実現には同社の保有株の売却が問題になるのは必至。「真の国際企業に脱皮するためには同族企業色を薄めるの は当然」(首脳)との声はサントリー社内にもある。今後はその売却先がどこになるのかによって、統合の性格が左右されることになりそうだ。
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■同族非上場の風土
異なる企業風土の壁を乗り越え、融和を図れるかも課題だ。
サントリーが同族非上場を続けてきたのは、株主の意向で短期的な視点での経営を迫られることを嫌ったためだ。
「やってみなはれ精神」に根ざした長期的な事業育成がサントリーの持ち味。46年目でようやく黒字になったビール事業を続けられたのも、サントリーだからこそだ。キリンと統合すれば当然、上場会社となり、市場や株価と向き合う経営を迫られる。
一方のキリンは、株主へのIR活動など、開かれた経営に熱心に取り組んできた。両社の企業風土の違いは、統合交渉が表面化した以降のトップの言動からも鮮明だ。
創業家一族出身のサントリーの佐治社長は、誰にはばかることなく、取材などに応えることができる。これに対し、キリンHDの加藤壹康社長は、株価への影響もあり、ほとんど「ノーコメント」を貫いている。
こうした意識の違いは、統合後の社内融和どころか、交渉の障害にもなりかねない。
■ブランド統廃合で衝突も
両社の統合が、独占禁止法に抵触するかも焦点だ。両社のビール系飲料(発泡酒、第3のビール含む)の国内シェアを合算すると、平成21年1〜6月は50・1%と半分を超える。飲料では、両社のトップブランドの合算だけでも、ミネラルウオーターが40%、緑茶が30%、缶コーヒーも25%を超える。
公正取引委員会の松山隆英事務総長は「日本を代表する大企業同士の統合事案ということで、慎重かつ詳細な審査が必要になるだろう」としている。
日本企業の国際競争力の向上のため、独禁法の運用が弾力化されるなか、統合そのものが認められない可能性は小さい。ただ、商品によっては、シェアを下げるため、ブランドの統廃合を迫られる可能性がある。
さらに、統合が実現した場合、経営の効率化の効果を最大限に発揮するため、いずれブランドの統廃合が課題となる。
長年にわたって育ててきたブランドへの愛着は強く、調整は一筋縄ではいかない。
食品業界にとどまらず、あらゆる業界が大再編時代に突入する号砲と注目される両社の統合だが、その道のりは険しい。