ブログ 化学業界の話題 knakのデータベースから 目次
これは下記のブログを月ごとにまとめたものです。
最新分は http://blog.knak.jp/
資産管理会社のカネボウは2007年6月28日、定時株主総会を開き、6月30日付で解散することを決めた。
7月1日からは「海岸ベルマネジメント」と社名を変えて清算手続きに入る。残った資産を売却・処分して負債を返済し、残余財産を株主に分配する。
同社の資産評価を巡っては一部の株主が経営陣を提訴しており株主総会の席上でも解散に反対したが、普通株の85%を握るユニゾン・キャピタル、アドバンテッジパートナーズ、MKSパートナーズの3ファンドが賛成した。
日用品、医薬品、食品の3事業を引き継いだカネボウ・トリニティ・ホールディングスは7月1日付で「クラシエホールディングス」に社名変更する。
「カネボウ」の名前は花王が買収し100%子会社としたカネボウ化粧品に残るのみとなる。(花王が独占使用権を取得)
2007/3/6 カネボウ・トリニティ、社名をカネボウからクラシエに変更
「カネボウ個人株主の権利を守る会」では東京地裁に対して株式買取価格決定申請を行っている。
争点は、ファンドが実行した上記のカネボウ3事業のカネボウ・トリニティ・ホールディングスへの営業譲渡の譲渡価格で、ファンド側は434億円、同会は2,785億円以上をそれぞれ主張している。
参考 カネボウ個人株主の権利を守る会 公式サイト
http://www.geocities.jp/tob_kanebo/index.htm
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付記(2007/9/29)価格決定に必要となる事業・資産を評価していた鑑定人が1株323円という価格を東京地裁に提示したことが28日、明らかになった。
ファンド連合はTOBを実施した時と同じ162円での買取を主張、少数株主側は700-1800円を要求してきた。
同地裁の判断が焦点となる。
2007/7/2 ガス用ポリエチレン管・継手に排除措置及び課徴金納付命令
公正取引委員会は6月29日、ガス用ポリエチレン管及び継手の製造販売業者に対し、排除措置命令及び課徴金納付命令を出した。
2004年9月と2005年9月にそれぞれ価格引き上げで合意し、競争を実質的に制限したというもの。
化学業界では改正独禁法の最初のケースで、再犯企業(過去10年以内に独禁法違反があった企業)の課徴金5割増し、自主申告した企業の課徴金減免が適用された。
2006/2/16 独禁法改正
排除措置命令及び課徴金納付命令の対象と内容は以下の通り。(単位:千円 )
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改正独禁法では課徴金の算定率がこれまでの6%から10%に引き上げられた。
今回のケースでは改正前の期間については6%で、改正後の期間は10%で計算された。
三井化学の場合は、2003年3月末にポリプロの価格カルテルでただ一社 760,080千円の課徴金を支払っており、10年以内の「再犯」となるため、改正後の期間については15%が適用された。
ポリプロの価格カルテルでは住友化学、出光興産(当時は出光石油化学)、サンアロマー、トクヤマの4社は勧告を拒否、日本ポリケム、チッソは応諾したが課徴金に関して審決の手続きを要求し、いずれも審判が開始された。
2006/7/13 ポリプロ価格カルテル事件の現状昨年秋以降は、両ケースとも審判が行われておらず、公取委ホームページに何の記載もない。
どうなっているのだろうか。
富士化工は立ち入り検査の前に自主申告したため、管・継手とも排除命令と課徴金を免除された。
積水化学はと日本鋳鉄管はPE管で、また積水化学と三菱樹脂は継手で、それぞれ立ち入り検査後に自主申告を行い、30%減額となった。
改正独禁法では
公取委が立ち入り検査をする前に、
最初に申し出た企業は課徴金を全額免除、
2番目は課徴金額の50%を減額、
3番目は30%を減額
公取委立ち入り検査後の場合は30%減額となっている。
いずれも先着順(指定宛先へのファックス)で、適用は合計3社となっている。
今回、三菱樹脂が継手で適用、管で不適用となっているのは、富士化工が先ず立ち入り前に申告し、立ち入り後に日本鋳鉄管(管のみ)と積水化学が申告し、その次ぎとなったためであろう。(管では4番目、継手では3番目)
なお、クボタは2005年4月1日付けでクボタシーアイにガス用ポリエチレン管事業を譲渡したため、それ以前はクボタ、以後はクボタシーアイが課徴金を支払う。
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三井化学は本命令を応諾する方針で、三菱樹脂も応諾する方向で検討しているとしている。
これまでと違い、自主申告で資料が出されているため、否認が難しいと思われ、この制度が有効であることが明らかとなった。
2006/11の日本経済新聞夕刊連載 「ドキュメント挑戦 法化社会 日本を創る」に、公取委の怒りの的となっていた弁護士の話が出ている。公取委の事情聴取にあたって否認するよう、多くの企業に助言していた。
減免制度が導入され、この弁護士の方針は、否認から早期申告へと180度切り替わった。
「事情聴取に応じるより課徴金の減免申請が先だ。早く申告しないと他社に先を越されるぞ」と電話している。
三井化学では、価格引上げに関する情報交換等が行われていた事実が確認されたとしている。
同社では、「独占禁止法遵守確認手続」など遵守のための対策を全社を挙げて実施してきたが、会社の指示に反し、かつ上司にも報告無く、担当者が価格引上げに関する同業者間の情報交換に加わっていたとし、今回の独占禁止法違反に関係した社員及びその上司の事業部長に同社規則に基づく厳正な懲戒処分を実施して社内に周知し、同時に会長、社長、グループ担当の副社長、リスク管理委員会担当の専務取締役、リスク管理委員会事務局担当の常務執行役員が役員報酬を一部返上する。
本件には該当しないが、三井化学は出光興産とのポリオレフィン事業統合(現在のプライムポリマー)の公取委審査の際に、公取委よりPPに関してはいろいろの理由で「当事会社が単独で又は協調して競争を実質的に制限することとなるおそれがあると考えられる」との指摘を受けた。
これに対して両社は問題解消措置を申し出て、それを基に統合を認められたが、その中のコンプライアンスについては 統合会社において以下の措置を取るとしている。
@ 就業規則に,法令に違反するなど会社の名誉又は信用を傷つける重大な行為があったときは懲戒解雇に処する旨(情状により減給,出勤停止等)規定するとともに,全営業担当者等から,独占禁止法を遵守し,違反があった場合は就業規則に則り厳正な処分を受けても異存はない旨の誓約書をとること。 http://www.jftc.go.jp/pressrelease/04.december/04120701.pdf
三菱樹脂でも取締役全員について報酬の一部を返上するとしている。
付記
今後は自主申告をしなかった会社は株主総会で問題になる可能性がある。今回の発表が6月29日というのは、公取委の配慮からかとも思われる。
29日は金曜のため、3月決算の会社の総会は既に終了している。三井化学は公取委から5月25日に排除措置及び課徴金納付に関する事前通知を受けたことを5月30日に発表している。
付記2
公取委は2007年3月1日、ステンレス製ガス管のメーカー4社(下記)に立ち入り調査を行っている。
日立金属、協成、テクノフレックス・トーラ、JFE継手
中国の国会に相当する全国人民代表大会(全人代)の常務委員会で6月29日、労働者の解雇を制限する「労働契約法」が可決、成立した。2008年1月1日から施行される。
事実上、労使間で「終身雇用」契約を結ぶよう求め、違反した雇用者の賠償金支払いを義務付けた。中国が労働者保護に力点を置く姿勢を鮮明にした。
常務委員会では本法を出稼ぎ労働者への虐待(強制労働、給料未払い、不当解雇など)への防波堤としている。
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常務委は1995年に施行された労働法を補完する目的で2005年末から同法案の審議を始めた。
政府首脳は出稼ぎ労働者問題が社会的不安や暴力事件の多発の原因になっているのを懸念した。.
素案では臨時労働者の雇用を厳しく制限したり、レイオフには組合の承認取得を必要とするなど、今回の案よりも厳しいものであった。
このため、多国籍企業などは、労務費が上昇し、雇用の弾力性がなくなるなどとして強く反対し、施行されれば中国から逃げ出すしかないなどの主張も行われた。
低賃金での酷使や賃金未払いが顕著とされる中国企業の反発は続き、当初は採決を危ぶむ声もあった。
2週間前に、中国各地で拉致・誘拐されたり、巧みにだまされて河南省鄭州に集められた1千人以上の少年が、山西省臨汾市周辺の違法れんが焼き工場で奴隷のように強制労働させられた上に虐待を受けており、地方の共産党がこれを止めることをしなかったことが明らかになり、国中にショックを与えた。
同事件が問題化したことを受け、6月15日に温家宝首相らが徹底解明を指示した。
救出・解放された少年を含む出稼ぎ労働者は5万人を超える強制労働者のうち1%に満たず、当局が再検査したれんが焼き工場のうち、約2/3に当たる2,036カ所が無許可営業で、違法に農民工53,026人を長期間にわたって強制労働させていたことが判明した。
誘拐された少年たちは1人500元(約7500円)で人身売買され、大部分が食事も十分に与えられないまま1日15時間以上の労働を強いられていた。最年少は8歳で、知的障害者も含まれていた。中国メディアは「奴隷工場」と表現している。
闇れんが焼き工場は過去10年間、山西省だけでなく、河北省定州、河南省武陟、山東省臨清、広東省恵州に至るまで全国各地に広がっており、山西省特有の事情とはいえない全国規模のものである。違法なれんが焼き工場での未成年の強制労働に対して見て見ぬふりをしてきた地元政府の腐敗、汚職構造が浮かび上がってきた。
労働保障部は22日、「少数の地方幹部らが違法れんが焼き工場の生産活動に関与して職権乱用による不法利益をむさぼっている」と闇れんが工場経営者と地方幹部が結託して人身売買、強制労働を行っていたことをついに認めた。
この問題により、常務委の雰囲気が一挙に変わった。
「北京五輪を前に不当な雇用環境を速やかに改善すべきだ」、「国際的な批判もあり、採決を急がねばならない」などの意見が相次ぎ、可決された。
146票のうち、145票の賛成で、棄権が1票であった。.
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具体的な条文は発表されておらず、要約のみが発表された。主な内容は次の通り。
・ | 労働契約は雇用開始後1ヵ月以内に書面化しなければならない。 企業側が雇用開始の1年以内に書面にサインしない場合は、終身雇用契約を締結したとみなされる。 |
・ | 企業はレイオフの場合、組合と相談しなければならない。 (素案ではレイオフに際して組合に認めるか拒否するかの権利を与えるとなっていた)
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・ | 「試用期間契約」を制限する。また、退職金支払を義務付け、首切りの条件を厳しくする。 (素案では、「臨時労働者の勤務が1年を超えれば直接雇用とする」となっていた。) |
・ | 経営者は従業員に超過勤務を強制できず、従業員は暴力、脅し、個人の自由の制限などにより働かされた場合、事前通知なしに雇用契約を破棄できる。 |
・ | 10年以上勤続するか、期限付き労働契約を2期連続で結んだ労働者は、終身雇用に切り替えなければならない。 違反した場合、違反期間は2倍の月給を支払わねばならない。 |
・ | 組合(中華全国総工会の企業支部)や従業員の代表の委員会に、給与、ボーナス、訓練、その他雇用に伴う権利と義務に関して、企業と交渉する権利を与える。 (従来は従業員は給与に関しては個人的に交渉するしかなかった。組合は賃金や便益のレベルについてはほとんど関与していない) |
・ | 報酬の支払いに遅延・不足があった場合、労働者は現地の人民法院(裁判所)に強制執行を求められる。 |
・ | 公務員は権限を濫用したり義務を怠って労働者の権利を著しく害した場合、行政罰、刑事罰を受ける。 |
常務委の副委員長は、外資の懸念に対して、不法な雇用をしていない企業はコストアップの心配はなく、また、外資が不当に差別されることはないとしている。
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華南地域などで大量の出稼ぎ労働者を雇用する台湾系や日系の輸出型企業は、生産量が多いときに1カ月単位で短期の派遣労働を使っているが、これが難しくなり、事業戦略全体を見直す必要も出てくると思われる。
2007/7/4 Ineos、Lanxess のABS事業を買収へ
Ineosは6月29日、Lanxess との間でABS事業の合弁会社設立で合意したと発表した。
合弁会社の社名は
INEOS ABS で、Lanxess のABS事業のLustran
Polymers を引き継ぐ。
Ineos が合弁会社に51%を出資し、その分の対価として35百万ユーロをLanxessに支払う。
ドイツ、スペイン、タイ、インド、米国の工場と1600人の従業員が新会社に移される。
本年9月末に手続きが完了すると予想されるが、それから2年後に、Ineos が合弁会社の残りの49%をその時点での事業価値をもとにした代価で購入し、Lanxessは事業から完全に撤退する。
Lustran Polymers の2006年の業績は、売上高が9億ユーロ、特別損益を除く EBITDA (税引前利益+支払利息・減価償却費)は16百万ユーロであった。
付記
Lanxessは2009年にINEOS ABSの持株をINEOSに譲渡、同社はINEOSの100%子会社となった。
2007年のJV設立時にこの約束があったもの。
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Lanxessは、2004年7月にBayer
Chemicalsの大半とBayer Polymersの一部が分離独立した会社で、2005年に上場した。
同社は昨年10月1日にエンプラ事業部のスチレン系樹脂部門をLustran
Polymers 部門と改称し、ABSの特殊グレードと着色グレードを事業の中核として、地域ごとに製品開発から生産、マーケティングまで自主性を持たせる運営に変更していた。
同社ではこの時点でABS事業の処分を考えていた。
同社のエンプラ事業部にはポリアミドやPBTなどのエンプラ部門だけが残る。(当初はABSのほかにスパンデックスがあったが、旭化成に売却した。)
2006/9/6 Bayer と Lanxess
Lanxess はABS事業を処分する一方、合成ゴム事業に注力することとしている。
同社は6月27日、同社としては過去最高の約 4億ユーロを投じて、アジアにブチルゴムの工場を建設することを明らかにした。
シンガポール、マレーシア(Kuantan)、タイ(Map Ta Phut) を候補に交渉中で、立地が決まれば2010年スタートを予定している。
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Ineos については以下を参照。
2006/6/14 事業買収で急成長した化学会社
最近では、3月にNova Chemicals の北米のSM、PS事業を欧州のIneos/Nova の50/50JVのNOVA Innovene に移管することで合意。
2007/3/26 NOVA
Chemicals、北米のSM、PS事業をINEOSとのJVに移管
5月にはNorsk
Hydro からポリマー事業のKerling
社(旧称 Hydro Polymer)を670百万ユーロで買収する契約を締結している。
2007/5/25 INEOS、Norsk
Hydro からポリマー事業を買収
Jim Ratcliffeが1998年に設立したIneos は売上高180億英ポンド、利益は630百万英ポンドとなり、売上高で英国15位、個人企業としては英国最大企業となった。世界18カ国、73箇所に拠点を持ち、従業員は16,500人となった。但し、 Lyndhurst の本社には150人しかいない。
Jim Ratcliffeの個人資産は昨年の11億英ポンドから33億英ポンドに膨らんだと見られている。
先月26日にHuntsman Chemical はBasell Polyolefinsによる56億ドルでの買収に合意したことを発表した。
2007/6/27 速報 Basell がHuntsman Chemicalを買収
そのHuntsman Chemicalは4日、同社がHexion Specialty Chemicals から新たな買収提案を受けたことを発表した。
Hexion Specialty Chemicals は投資会社のApollo Management の100%子会社で、Borden Chemical、Resolution Performance Products、Resolution Specialty Materials の3社が合併して設立された。Huntsmanの買収は実質的にApollo Management による買収である。
Apollo Management は昨年、GE Silicones を買収した。昨年初めには、多角化企業のTyco International からプラスチック・接着剤部門を975百万ドルで買収している。GE Plastics 売却の際にも買い手候補としては筆頭にあがっていた。
買収価格はBasell が1株 $25.25 だったのに対して $27.25 で、総額60億ドルとなる。
なお、Basell との契約では、Huntsman がより有利な提案を受けた場合には契約を破棄できることとなっており、その場合はBasell に2億ドルのペナルティを払うこととなっている。Hexion は同社との合併が実現すれば、このうち1億ドルを負担するとしている。
Huntsman ではHexionの提案はBasell との契約での「より有利な提案」に該当すると判断、これを詳細に検討して意思決定を行うとしている。
Hexion の提案は、Basell との契約の破棄、Hexion
との統合契約の実施を条件としている。
法規制での承認が得られないとか、資金が得られなくて取引が行われない場合には、Hexion は325百万ドルのペナルティを支払うとし、逆にHuntsman側が取締役会の決定等で契約を破棄した場合には225百万ドルのペナルティを支払うこととの条件がついている。
付記
Hexion Specialty Chemicals は7日、買収価格を$28.00に引き上げ、通知したと発表した。借入金込みで106億ドルの買収となる。
なお、買収資金は全額、Credit Suisse and Deutsche Bankの子会社からのファイナンスができているとしている。付記2
BasellはHuntsman買収に関して、7/11までに買収価格の見直しの機会を与えられていたが見直しを行わないと発表した。
これを受け、Hexion (Apollo) はHuntsman買収の契約を締結した。
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これに対してBasell 及びその親会社のAccess Industries のオーナーのLen Blavatnik の反応はまだ明らかでない。
Huntsman に対してより有利な条件で再提案をするのか、2億ドルのペナルティをもらって Len
Blavatnik が「戦略的目的で」株を購入したLyondell
Chemical の買収に動くのか、目が離せない。
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Borden
Chemical は接着剤やフォルムアルデヒドなど、Specialty chemical
の会社で、1995年に投資会社のKohlberg, Kravis,
Roberts (KKR)に買収された。
Borden
は、ベークラント博士がベークライト製造のため1910年に
Rutgers AG と合弁で設立した Bakelite GmbH を2004年にRutgers
AG から買収している。
2004年に投資会社のApollo Management
がBorden
を KKRから12億ドルで買収した。
なお、塩ビメーカーの
Borden Chemicals and Plastics は、当初はBorden Chemical の子会社であったが独立した。
同社は破産し、3工場をそれぞれ Shintech、Formosa、Geismar Vinyls (Westlake) に売却している。
Resolution Performance ProductsはApolloがShell Chemical から買収した会社で、エポキシレジンとバーサチック酸及びその誘導品のメーカー。
Resolution Specialty MaterialsはApolloがEastman Chemical から買収した会社で、熱硬化性樹脂と成形コンパウンドを販売している。
2005年4月、いずれもApollo Managementの100%子会社の上記3社は、合併して社名を Hexion Specialty Chemicals とし、世界最大の熱硬化性樹脂メーカーになると発表した。
2007/7/6 Solvay、ロシアでワールドクラスの塩ビJV
Solvayは6月27日、ロシアのGazprom の子会社で総合化学会社のSibur
LLC との間で、ロシアで最初のワールドクラスの塩ビのJVをニジニ・ノヴゴロド州のKstovoに建設する合弁契約に調印したと発表した。
SolVin (SolvayとBASFの75/25の塩ビJV)
とSibur が50/50で出資し、RusVinyl を設立する。
SolVinは欧州復興開発銀行(EBRD)に本計画への参画を働きかけている。
総予算650百万ユーロを投じ、330千トンのPVC(300千トンのS-PVCと30千トンのE-PVC)と225千トンの苛性ソーダを生産する計画で、2010年スタートを目指す。州政府の支援を受けている。
旧ソ連の拡大しつつある需要に対応するもので、最終的には2014年までに合計能力をPVC
510千トン(S-PVC 450千トン、E-PVC 60千トン)、苛性ソーダ335千トンに増設可能な設計を考える。
原料のエチレンはSibur がKstovo
にあるエチレン工場を増設して供給する。
Solvayが環境にも配慮した最新のベストの技術をJVにライセンスする。
ーーー
SIBUR Group はGAZPROMが100%出資するロシア最大の垂直統合石油化学会社。
付記
Gazpromは11日、Sibur株の25%(+1株)を関係会社のGasfondにモスクワの電力会社Mosenergo の株式と交換した。
電力事業強化のためで、同社のマジョリティを持つこととなる。Siburの残りはGazprombank (Gazpromが42%、同グループ会社が残りを所有)が引き続き所有する。
付記
2008/4/21 東洋エンジニアリング、ロシア向けエチルベンゼン生産設備を受注
同社は3つの事業部門と2つの子会社(以前は事業部門であった)を持つ。
(事業部門)
1)Hydrocarbon
Feedstock Business Unit (ガス処理部門)
・Gas processing
plants (GPPs):
Nizhnevartovsky
GPP, Belozerny GPP, Yuzhno-Balyksky GPP,
Gubkinsky GPP,
Noyabrsky GPP、Nyagangazpererabotka
・Tobolsk-Neftekhim (NGL処理)
LPG、ブタジェン、イソブチレン、MTBEの生産
2)Plastics and Organic Synthesis Business Unit (6社)
Sibur-PETF JSC、Sibur-Neftekhim
JSC、Sibur-Geotekstil LLC、
Sibur
- Khimprom CJSC、Tomskneftekhim LLC、Plastik JSC
KstovoとDzerzhisnk に工場を持つSibur-Neftekhim JSC は最近工場の近代化を行い、エチレン及びEOの能力を増やしている。
2006年の年間ベースのエチレン能力は230千トンを超えており、今回の塩ビ事業のため
Kstovo の能力を増強する。
3)Synthetic Rubbers Business Unit (8社)
Voronezhsintezkauchuk
JSC、Tolyattikauchuk LLC、Krasnoyarsk Synthetic Rubbers
Plant JSC、
Uralorgsintez
JSC、Tobolsk-Neftekhim JSC、Novokuybyshev Petrochemicals
Company CJSC、
Kauchuk
JSC、Volzhsky Enterprise TIBA JSC
(子会社)
1)Sibur
- Russian Tyres
Yaroslavl Tyre Plant, Omsk Tyre
Plant, Uralshina LLC (Yekaterinburg),
Voltyre-Prom JSC (Volzhsky)、Saransk industrial rubber plant
2)Sibur - Mineral Fertilizers
2007/7/7 イランとベネズエラ 経済協力で合意 合弁メタノール工場建設
イランのMahmoud
Ahmadinejad大統領とベネズエラのHugo Chavez大統領は7月2日、イラン南西部 Assalouyeh のPars Special
Economic Energy Zoneでの両国の合弁メタノール工場の起工式に参加した。
両大統領は合弁メタノール計画に加え、幅広い経済協力契約に調印した。
炭素陽極のベネズエラからイランへの輸出、機械部品工場建設のFS、イラン技術でのミルク処理工場、ベネズエラでの乳製品加工のJV、工具製造のJV、プラスチック押出機の製造、自転車組み立て、北ベネズエラでの住宅建設など、多岐に亘っている。
ーーー
両国はいずれもOPECメンバーの石油資源国で、反米路線をとっている。
両大統領は記者会見で、「米国などすべての敵に協力して立ち向かう」と表明、反米姿勢を強調した。
Assalouyeh
の町には両大統領が握手している写真とともに、「イランとベネズエラ 連帯の枢軸
(Axis of Unity)」と書かれたポスターが貼られており、イラン大統領は今回の連携を革命的な2国の兄弟の結びつきの強化であると自賛し、ベネズエラ大統領はペルシャ湾とカリブ海の連帯であると述べた。
「連帯の枢軸(Axis of Unity)」 はBush 大統領がイランとイラク、北朝鮮の3国を「悪の枢軸(Axis of Evil)」と呼んだのを皮肉っている。
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Pars Special Economic Energy Zoneの合弁メタノール工場の生産能力は年間175万トンで、出資比率はイランのNPCが51%、ベネズエラのPequiven が49%となる。
両国はベネズエラのZigma にPequivenが51%、NPCが49%出資で、同じ規模の合弁メタノール工場を建設する。
建設費はいずれも650-700百万ドルとみられており、操業まで4年をみている。
両工場の完成により、イラン側はラテンアメリカ市場(特にブラジル)に、ベネズエラ側はインド、パキスタン市場にアクセスできることとなる。
両国でのメタノール合弁計画は昨年9月に発表されたもので、その時点では能力は各330万トン、総投資額16億ドルとしていた。
5日付けの朝日新聞によると、米司法省と公正取引委員会などが今年5月に摘発したマリンホースをめぐる国際的なカルテル事件は、横浜ゴムの米司法省への自主申告によることが分かったという。
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米司法省は5月2日、原油の海上輸送に使うマリンホースの販売で国際的な価格カルテルに関与した疑いがあるとして日欧企業の幹部8人を逮捕したと発表した。
逮捕されたのは、
英国に本拠を置くコンサルタント会社 PW Consulting (Oil & Marine)
Ltd のオーナー
英国のDunlop Oil & Marine Ltd の2名
フランスのTrelleborg Industrie S.A の2名
イタリアのParker ITR slr の1名
イタリアの Manuli Rubber Industries SpA の1名
日本のブリヂストンの1名
の合計6社の8名。
少なくとも1999年以降、フロリダ、バンコック、ロンドンなどで何度も会談し、入札のやり方、価格、割当などの協議を行い、決定していたという。議題や議事録も見つかった。
PW
Consulting (Oil & Marine) Ltd
のオーナーは1社当たり年間5万ドル、合計30万ドルを集め、カルテルを調整していた。
マリンホースは海上タンカーと陸上の貯蔵基地を結んで原油を移送するもので、全世界の市場規模は150億円強。
需要家はShell、Exxon、Chevronなどの石油会社のほか、米国の国防総省も購入し使用しているため、国民の税金を奪うものとして重要視され、国防総省も捜査に入った。
司法省発表 http://www.usdoj.gov/atr/public/press_releases/2007/223037.htm
司法省の発表を受けて、欧州委員会と日本の公取委も調査に入った。
公取委は5月7日、ブリヂストンと横浜ゴムに立ち入り検査に入った。(上記逮捕者に横浜ゴムは入っていない)
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朝日新聞によると、司法省は2006年秋、横浜ゴム の船舶用ゴム製品の販売エージェントの米国人を別のカルテル容疑で逮捕し、同社が関与したとする供述を引き出し、同社に対し、本件の訴追を見送る条件としてマリンホース事件について減免制度での自主申告を持ちかけた。
横浜ゴムの自主申告に基づき、司法省は横浜ゴム担当者になりすましてコンサルタントらとやりとりを開始、ヒューストンのホテルで会合を開くことになった。 ホテルでの話し合いが終わった直後に、司法省の捜査員らが踏み込み、横浜ゴムの担当者をのぞく参加者を逮捕したという。
横浜ゴムは「捜査中なので何も話せない」としている。
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2007/7/2 ガス用ポリエチレン管・継手に排除措置及び課徴金納付命令 で同事件での自主申告について述べたが、欧米では既に多くの日本の企業がこの適用を受けている。また、摘発された多くの企業のほとんど全てが調査に協力し、司法取引で罰金の減免を受けている。
藤沢薬品はグルコン酸ナトリウムで米国及びEUで摘発されたが、EUでは最初にカルテルの決定的証拠を提出したとして80%という最高の減免を受けている。
武田薬品はビタミン剤カルテルで摘発を受けたが、他の例がないかとの質問(omnibus question)に対して調味料のカルテルについて供述した結果、調味料カルテルでは免責、ビタミン剤カルテルでも法人としての罰金のみで、社員・役員については免責された。
防カビ剤のソルビン酸価格カルテルではダイセル、上野製薬、日本合成の3社が米国及びEUで罰金を支払い、米国では各社の役員が起訴されたが、詳細情報を当局に提出したチッソは全て免責されている。
日本人がカルテル問題で米国で逮捕されたのは初めて。
これまで何人もの人が米国で起訴されているが、日本在住の場合には犯罪人引渡し条約が適用されず、時効の中断の状況のままである。(米国や米国との犯罪人引渡し条約が適用される国に入国すれば逮捕されることとなる)
ただし、防カビ剤のソルビン酸価格カルテルで起訴されたダイセル、上野製薬、日本合成の3社の役員、社員のうち、ダイセルの社員が出頭して実際に服役している。
2006/2/16 独禁法改正
2007/7/2 「ガス用ポリエチレン管・継手に排除措置及び課徴金納付命令」でポリプロのカルテルについて触れ、次ぎの通り述べた。
ポリプロの価格カルテルでは住友化学、出光興産(当時は出光石油化学)、サンアロマー、トクヤマの4社は勧告を拒否、日本ポリケム、チッソは応諾したが課徴金に関して審決の手続きを要求し、いずれも審判が開始された。
昨年秋以降は、両ケースとも審判が行われておらず、公取委ホームページに何の記載もない。
どうなっているのだろうか。
ポリプロカルテルについては 2006/7/13 ポリプロ価格カルテル事件の現状 参照
公取委は記者発表はしていないが、日本ポリケムとチッソの審判については、本年6月19日に審決が出ていた。
公取委審決等データベース http://snk.jftc.go.jp/pdfdocs/H190619H15J01000022_.pdf
審決は8月20日までに課徴金の支払を命じるもので、当初の納付命令と対比すると大きく減額となっている。
2003/3/31 | 今回 | |||
会社名 | 課徴金 | 対応 | 会社名 | 課徴金 |
日本ポリケム | 8億4517万円 | 審判請求 | 日本ポリプロ | 2億2087万円 |
チッソ | 4億3513万円 | 審判請求 | チッソ | 1億1662万円 |
三井化学 | 7億6008万円 | 応諾 | − | − |
注 日本ポリケム(東燃化学が離脱して三菱化学の100%子会社)は2003年10月1日に、チッソのPP事業を統合して日本ポリプロ(日本ポリケム65%/チッソ35%)となった。
今回の課徴金の計算はいずれも、平成12年4月21日(需要者に通知した値上げ実施予定日)から同年5月29日(本件立入検査日の前日)までの期間の売上高に 6/100を乗じている。
当初の課徴金の計算については、当初の発表には記載されていないが、今回の審決の内容を見ると、公取委側は計算の終期を以下の通り主張しており、これが当時の計算の元になっていると思われる。
不当な取引制限に当たる違反行為は、違反行為の参加者間においてその事業活動を相互に拘束することであるから、違反行為が終了したというためには,当該違反行為者がその事業活動を相互に拘束する状態を消滅させたこと、すなわち、他の違反行為者との間での意思の連絡が切断されたことが必要であり、そのためには、当該違反行為者がその事業活動を相互に拘束する状態を消滅させたことについて、他の違反行為者がうかがい知るに十分な客観的な状況、すなわち、外部的徴表が必要である。(中略)
被審人日本ポリプロにおいては平成12年9月7日ころ、被審人チッソにおいては同月5日ころ、違反行為から離脱する旨を他の違反行為参加者に文書で通知した時期までは、意思の連絡が切断されたことを示す外部的徴表は認められず、本件違反行為が消滅したとはいえない。
これに対して、会社側は以下の通り反論している。
外部的徴表が必要であるというのはおかしい。
公正取引委員会の立入検査が行われた事実が大々的に報道され,当時の販売を担当していた営業部は大変な混乱状態となり、値上げ活動を継続することが事実上不可能となった。
最終的に会社側の意見が通り、計算期間が大幅に短縮された。
なお、三井化学については当初の時点で応諾し、課徴金を支払っており、この審決の適用は受けない。
また、当初の納付命令(2003/6/2期限)は旧独禁法では審判開始で失効しており、2社はその間の金利の支払は不要である。
(昨年の改正独禁法では、「課徴金納付命令」に対して審判手続が開始されても、「課徴金納付命令」は失効せず、課徴金の納期限までに課徴金を納付しない場合において審決で当該課徴金納付命令が維持されたときは、延滞金が上乗せされる。)
本件が公表されたので、住友化学、出光興産、サンアロマー、トクヤマの4社に対する審決も間もなくではないかと思われる。
付記 2007/8/11 PPカルテル審決
2007/7/11 カザフスタンのコンソーシアムがトルコの国営石化会社Petkim の51%を取得
トルコ政府は国営石化会社Petkem民営化のため株式の51%の入札を実施したが、カザフスタンとロシアのコンソーシアムTransCentralAsia Petrochemical Holding が2050百万ドルで落札した。
ーーー
トルコの石油化学進出は1962年に決められ、1965年にPETKIM Petrokimya Holding
が設立された。
1972年から76年にかけて Yarimca Complex でSM、PS、SBR、LDPE等がスタート、次いで Aliaga Complexでエチレンからのコンプレックスが1985年以降スタートした。(その後、Yarimca は老朽化で閉鎖された)
現在の主な製品の能力は以下の通り。(千トン)
同社はトルコの石化市場の1/3を占め、従業員は4,000名。
ーーー
トルコ政府は当時93%を所有していたPetkimについて、IMFの指導により、2003年前半での民営化を決定した。
同年6月、政府は88.86%分の入札を実施、いずれもトルコの化学会社Standard Kimya、化学・繊維会社Sanko Kimya Ltd、化学品・樹脂の電子取引会社のChemOrbis、トルコ最大の銀行のVakiflar Bankが応札した。
その結果、最高の605百万ドルを提示したStandard Kimyaが落札、政府の承認を得た。
その直後、Standard KimyaのオーナーのUzan 一族の不正取引が発覚し捜査を受けた。
政府はStandard Kimyaが落札決定後の30日以内に必要な頭金支払いをやっていないとして、この落札をキャンセルした。
政府は2003年8月に同様の入札を行ったが、関心を持つ投資家がおらず、失敗した。
2005年4月に一般公募で34.5%の株がトルコ及び海外の投資家に267百万ドルで売却された。
当初からの民間所有を入れると40%強が民間所有となっている。
今回、51%分について入札された。
ーーー
落札したTransCentralAsia
Petrochemical Holding は3社のコンソーシアムであることが判明した。
中心となるのは、ロシアの投資銀行のTroika Capital
Partners。
その他は、カスピ海油田の開発のために設立された米国の石油会社Transmeridian
Exploration の100%子会社の Caspi Neft と、ロシアやカザフの投資家のためにトルコでの投資管理を行っている不動産業のEvrazia である。
今回の入札では落札者は3年間は売却できないこととなっており、Troika では4年から6年の間で売却を考えていると伝えられている。
今回応札した8社は以下の通り。
イスラエルのCarmel
Olefins とインドのIndian Oil Corporation がそれぞれ現地企業と組んで応札している。
・TransCentralAsia
Petrochemical Holding
カザフスタンとロシアのコンソーシアム
・Socar-Turcas-Injaz
joint investment group
アゼルバイジャンの石油会社Socar、トルコの石油会社Turcas とサウジの
Injaz Projects のコンソーシアム
・Turkish
Limak-Carmel
トルコの建設・エネルギー・セメント会社Turkish Limak とイスラエルのCarmel Olefins
Carmel Olefins の海外進出戦略の一環
・Zorlu
トルコの繊維・家電メーカーの
Zorlu グループ
・Hokan Chemicals
joint investment group
トルコのコンソーシアム
・IOC-Calik
インドのIndian Oil Corporation とトルコのCalik Energyの連合
・ Naksan-Torunlar-Toray-Kiler
joint investment group
・ Firat
Plastik, Kaucuk Sanayi ve Ticaret AS
なお、5月14日に行われた予備入札には19社が応募したが、その中にはIneos とBasell と現地企業がコンソーシアムを組んで参加していた。
付記 2007/11/6 トルコの国営石化会社 Petkim 売却で逆転劇
注 イスラエルのCarmel Olefins については下記参照。その後操業を再開している。
2006/7/24 イスラエルのCarmel Olefins、戦闘激化で操業停止
さきに、仏の食品メーカーのダノン Danone が出資する中国の合弁企業「杭州娃哈哈集団」Hangzhou Wahaha Group の飲料水「娃哈哈」(Wahaha)のブランド使用をめぐって、ダノンと中国側相手の対立が深刻化していると述べた。
2007/6/15 仏食品メーカーのダノン、中国で「ブランド流用」で合弁企業と対立
その後、事態は更に悪化し、ダノンにとって苦しい状況になりつつある。
本件の推移は以下の通り。
1996/2/29 | : | Wahaha Group Ltd とDanoneがJV契約締結 商標移転契約(WahahaブランドをJVに)、非競合契約、守秘契約を含む。 |
1996/3/28 | 中国で5つのJV設立で合意、宗慶後が会長に就任。その後JVは39社に。 | |
2000年 | Wahaha Group Ltd.が改組、杭州市政府が46%所有の会社に。 | |
6年間で独自に17社を設立し、Wahahaブランドで製品を販売。 | ||
2006年末 | DanoneがWahahaに対し、これらの会社の51%の買収を提案(519百万ドル)、Wahahaが拒否(「安すぎる」) | |
2007/5/9 | DanoneがJV契約に関する仲裁をストックホルム商工会議所に申請 (JV契約では仲裁はストックホルム商工会議所で行うこととなっている) |
|
2007/6/4 | Danoneがロスアンジェルスの裁判所に訴訟 (詳細は6/15記事参照) | |
2007/6/5 | 宗慶後が会長辞任 | |
この後、WahahaはDanoneの行為に対し法的手続きで正義を追求することに決めたと述べた。Danoneが法に反している証拠を持っているとした。そして、Wahahaは中国の開放方針に反対せず、外資とも協力するが、平等で、互恵の協力関係を望むとしている。
自尊心の強い宗慶後は、Danoneの態度は我慢できないものだとしている。ほとんど全ての決定は3ヶ月に一度出席する役員で決められ、会長として何一つできないとし、Danoneは中国国民の感情を傷付けているとする。「中国が8カ国の軍隊に侵略された時代は過去のもので、中国国民は立ち上がった」とも述べている。
Wahahaは6月13日に杭州市の仲裁委員会に仲裁を要請し、1996年の商標移転契約と合弁契約の終結を求めた。Wahahaは、Danoneとの商標移転契約は当時の商標法では中国の商標管理当局の承認が必要だが、これを得ておらず、無効であるとしている。
Wahahaは商標移転契約に反して、別会社でWahahaの商標を使用していることは事実であり、契約無効論はWahahaの拠り所である。
JV契約では仲裁はストックホルムで行うこととなっており、既に受付けられている。このため、杭州市での仲裁は問題であるが、杭州市の仲裁委員会は翌日、これを受け入れた。杭州市は地元であり、市当局はWahahaの46%の株主でもあり、圧倒的にWahahaに有利な場所である。(最終的にここでの仲裁は有効性に疑問がある)
付記
Danone は7月12日に、杭州市の仲裁委員会に反論を提出したと発表した。
Wahahaが1996年の商標移転契約を完全には実行しておらず、最近になって商標管理当局が商標移転を認めなかったと嘘をついているとしている。
Danone 側弁護士は、商標移転契約での両当事者の権利と義務を終焉させるような事情も事態も発生していないと主張している。付記2
China Business Law Blog によると、契約書には仲裁はストックホルムとなっているのに、Wahaha が杭州市の仲裁委員会に仲裁を要請した理由は、宗慶後のnon-compete 違反は商法上の問題ではなく、雇用関係があるため労働法上の問題であり、中国の労働法では問題があれば中国国内で解決することとなっているというのが宗慶後の弁護士の主張という。
http://chinabusinesslaw.blogspot.com/2007/08/wahaha-v-danone-my-arbitration-is.html
Wahaha Groupは中国最大の弁護士事務所
King & Wood
(金杜律師事務所)を雇い、攻勢に出た。7月2日に、JVの会長に就任したEmmanuel FaberなどDanoneの3人の役員を訴えることを明らかにした。
彼らが20以上のJVの競合会社の仕事をしているというのが理由。中国商法に違反し、JVとその株主の利益を損なっているとする。
これに加え、Danoneが飲料水の企業3社ーRobust, Shenzhen Yili、Shanghai Jianguangheを買収したのも、競合禁止の条項に違反しているとしている。
Robust は飲料水と乳飲料の大メーカー
Shenzhen Yili は深センのYili (益力)Mineral Spring Incorporated
(これらは当然Wahahaブランドは使用していないが、競合禁止にはひっかかると思われる)
更に、Danoneに対する民族主義的な感情(「外国の悪魔」)があり、多くのJVのディストリビューターがJV製品の販売を止め始めている。
需要家の感情を傷つけることがDanoneにとって最大の被害となる。
Wahahaが中国で有力ブランドとなったのにはDanoneの力が大きかったのは明らかであるが、Danoneが中国側の商標を採用したのは失敗であった。
今後もDanoneにとって苦しい状況が続くと思われる。
なお、Danone は今月2日に米食品大手の Kraft Foods からあったビスケット・Cereal 製品事業の買収提案(53億ユーロ)に応じ交渉しているが、逆に9日、オランダのベビーフード大手のRoyal Numico N.V.に対し123億ユーロでの買収提案をし、相手側も受け入れる方向であることを明らかにした。健康関連の食品事業を強化する。
最新分は http://knak.cocolog-nifty.com/blog/