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2010/4/12 丸紅、インドでSBR生産 

丸紅は4月5日、インドでSBRの製造販売を行う合弁会社設立で合意したと発表した。
合弁相手は
インド国営石油会社のIndian Oil Corporation Limited(IOCL)と、台湾の台湾合成ゴム(TSRC Corporation)。

会社名  :Indian Synthetic Rubber Limited(予定)
所在地  :インド  ハリヤナ州パニパット
総投資額 :約2億米ドル(予定)
能力:12万トン
株主構成 :IOCL 50%、TSRC 30%、丸紅20%
稼働予定 :2012年

付記
東洋エンジニアリングは2011年5月26日、
設計から工事/試運転までのEPC業務を一括請負で受注したと発表した。
TSRC社保有技術がベース。

付記

国際協力銀行(JBIC)とみずほコーポレート銀行は2012年5月29日、Indian Synthetic Rubber との間で、総額1億1100万米ドルの協調融資契約に調印した。JBICが6660万米ドル、みずほコーポレート銀行が4440万米ドル限度。

自動車産業の成長著しいインドでの需要拡大を狙って、インド国内 初のSBR事業を行うもの。
インドの自動車販売台数は
2009年4月〜2010年2月までの11カ月間で259万台と、年率10%以上のペースで伸びており、今後数年で倍増し、米国、中国、日本に次ぐ世界第4位の市場となると言われている。

タイヤメーカーではブリヂストンが約500億円を投じてインドで2工場目となる新工場を建設する。2013年に稼働し、2020年には現地生産能力を現状より約8割増やす。

IOCLはインド国内に8か所の製油所を有し、石油化学事業の拡大を進めている。
ハリアナ州パニパットのパニパット製油所(原油処理能力・年間 600万トン)の隣接地にエチレン・コンプレックスを建設中で、エチレン857千トン、プロピレン650千トンのほか、HDPE、PP、MEGを建設する。
ほかに同地で
PX 360千トンとPTA 553千トンを建設しており、またGujarat Refinery120千トンのLABを持つ。

2006/6/5 インドのエチレン計画 

ナフサクラッカーは今春に稼働予定で、このクラッカーから副産物として産出されるブタジエンを使用し、SBRを生産する。

TSRCは台湾の合成ゴムメーカーで、丸紅とは中国・タイですでに合弁事業を行っている。

中国・江蘇省南通市

 会社名:Shen Hua Chemical Industrial Company (申華化学)
 出資者:Polybus Pte Limited ( 台湾TSRC 子会社)
      丸紅
      
Nantong Petro-Chemical Corporation
 製品  :SBR 170千トン

タイ・ラヨン県

 会社名:Thai Synthetic Rubbers Co.
 設立  :1995/11
 出資者:宇部興産 73.1%
      丸紅 13.0%
      TSRC 13.0%ほか
 製品  :
BR 50千トン→増設後 72千トン(2006/1) 

丸紅は、ブタジエ ンの有効利用を模索していたIOCLと、インド進出を目論んでいたTSRCを引き合わせた。

 


2009/4/13 Sinopec PetroChina 2009年決算

Sinopec329日、2009年の決算を発表した。

売上高は前年比7%減となったが、営業損益は前年の赤字から一転、2006-7年を上回る黒字となった。
純損益も2006-7年を上回った。

なお、2005年以降、原油価格が上昇する中、政府が石油製品の価格を統制し、石油精製が大赤字となったため、政府が補助金を出してこれを補っていたが、2009年には石油製品の価格の決定方法が変更となり、補助金はなくなった。

連結損益 (百万RMB)
  03 04 05 06 07 08 09
Sales   429,949  597,197  799,115 1,034,888 1,173,869 1,413,203 1,315,915
Operating profit 38,883 63,069 66,814 80,632 81,010 -23,964 84,431
補助金     9,415 5,000 4,900 50,300 0
Net Profit 24,396 41,791 44,776 55,038 55,896 28,525 61,760

部門別売上高は以下の通り。
(部門間売上高を含む。但し、
Refining Marketing and distribution はほぼ重複するため、前者を除外した。)

部門別営業損益は以下の通り。
Refining について、上は補助金算入前、下は参入後。
Refiningは補助金無しで2004年以来の黒字となった。原油価格値下がりでExploration の利益は減少している。

化学品の業績は以下の通り。(百万RMB)

  03 04 05 06 07 08 09
売上高 99,379 138,523 172,982 208,323 233,442 247,026 213,860
営業損益 3,543 18,721 14,296 14,458 13,416 -12,950 13,615

化学品の生産実績は以下の通り。 (千トン)

  2007 2008 2009
エチレン  6,534  6,289  6,713
合成樹脂 9,660 9,643 10,287
合成ゴム 800 834 884
合繊原料モノマー、ポリマー 9,018 7,264 7,798
合成繊維 1,417 1,260 1,302
尿素 1,565 1,649 1,752

ほとんどの製品が3月以降フル生産になった。

ーーーーーーー

PetroChinaの決算は以下の通り。

  05 06 07 08 09
売上高 552,229 688,978 836,353 1,072,604 1,019,275
営業損益 192,171 197,976 200,771 159,571 143,444
純損益 133,362 142,224 146,750 114,453 103,387
           
参考
Sinopec純損益
44,776 55,038 55,896 28,525 61,760

部門別では、本年から組替えが行われ、Chemicals はRefining 部門に統合された。

Sinopecと異なり、石油採掘部門の利益が圧倒的である。
2009年は原油価格の値下がりで、この部門の営業損益が前年の240,470から105.019百万人民元へと半分以下になった。
しかし、逆にRefining & Chemicalsが前年の大幅赤字から黒字に転換したため、全体では若干の減益でとどまった。

 


2010/4/13 厚労省、子会社のデータ改ざんで田辺三菱製薬に業務停止命令

厚生労働省は4月13日、子会社が血液製剤の試験データを改ざんしたとして、田辺三菱製薬に対して4月17日から25日間の一部業務停止と業務改善を命じた。

データが改ざんされていたのは連結子会社のバイファ(北海道千歳市)と共同開発し、バイファが製造、田辺三菱製薬が販売している遺伝子組換え人血清アルブミ ン製剤「メドウェイ注5%」で、同社は昨年3月にデータ改ざんを公表して5%製剤の承認を返上するとともに、同25%製剤を含めて自主回収している。

2009/3/26 田辺三菱製薬、試験データ改竄、承認取下げ、自主回収

業務停止の対象となるのは第1種医薬品の製造販売で、販売済み医薬品の安全管理や、代替性のない一部製品の供給は対象外となる。

同社の2010年3月期売上高予想は3900億円。うち行政処分対象は約1800億円。
在庫の出荷はできるほか、医薬品卸が仕入れ済みの製品を医療機関に販売することは可能で、自社と卸を合わせ約1ヶ月分の在庫がある。

厚労省はデータ改ざんした子会社バイファにも4月14日から30日間の一部業務停止を命じた。

田辺三菱製薬が設置した第三者委員会の委員長を務めた郷原弁護士は「ミドリ十字の利益重視、安全性軽視の企業姿勢が直接的原因」と指摘した。

厚労省によると、医薬品承認申請に関する薬事法違反での製薬会社への業務停止命令は1975年以降で約80件。1994年には抗ウイルス剤の副作用問題で発売後に死者15人を出した日本商事が105日間の製造業務停止処分を受けたが、田辺三菱のような大手の業務停止は異例という。

付記

日本製薬工業協会は4月21日、理事会で、田辺三菱製薬に対し、同社社長が務める副会長、常任理事、理事の役職を解任する処分を決定した。同社社員が務める薬事委員会など常設委員会の委員長・副委員長職からも外すが、同社の会員資格は認める。
処分期間は明示していないが、5月に予定される役員改選でも役職に就けないとしており、役員の任期である最低2年間は一般会員として活動することになる。

ーーー

岐阜県は3月26日、後発品大手の大洋薬品工業の高山工場(岐阜県高山市)に対し、薬事法に基づく業務停止命令を出したと発表した。期間は同日から4月3日までの9日間。

調合ミスにより承認規格外の製品を製造、出荷した。
「出荷判定試験時に、他のロッ トのサンプルが意図的に品質部門に提出され、試験が行われていたため、逸脱が判明することなく、市場に出荷された」(岐阜県)という。自主回収を行ったが、回収できたのは16%程度にとどまった。健康被害の発生の報告は、県等に寄せられていない。


2010/4/14  主要石油化学製品 生産能力調査 (2009/12/末)

経済産業省は4月6日、2009年末時点の 我が国の主要石油化学製品生産能力調査の結果を発表した。
(単位:千トン)

若干の増減はあるが、前年末と大差はなく、相変わらずの小規模多数工場体制である。
各製品とも能力に対する内需の比率は低く、今後輸出の縮小が予想されるなか、大幅な設備廃棄が必要である。

1.エチレン  前年末と同じ

  定修年 スキップ年  
東ソー   493   527  
昭和電工   615   691  
東燃化学   491   540  
三菱化学  1,278  1,301 水島のエチレンの統合交渉中
山陽石化(旭化成) 443 504
丸善石油化学   480   525  
京葉エチレン   690   768 丸善石化 50%、三井化学 25%、住友化学 25%引取り
住友化学   380   415  
大阪石化(三井化学)   455   500  
三井化学   553   612 千葉のエチレン運営統合 「千葉ケミカル製造」
出光興産  997  1,101
新日本石油精製   404   443  
合計  7,279  8,023  

・三菱化学 鹿島火災事故で以前より能力減となっている。
 
事故前の能力は定修あり 1,301千トン、定修なし 1,422千トンであった。(定修なしで121千トンの減)

2009年のエチレン生産量は6,913千トン。
これに対して、エチレン製品のエチレン換算輸出量は2,945千トン、輸入量は407千トンで、差引き内需は4,375千トンに過ぎない。(定修年能力に対し、60%)

2.ポリエチレン 前年末と同じ

  LD専用 HD 併産 合計  
LD LL HD LL
旭化成   120       116   47        283  
宇部丸善PE 147   50       197  
チッソ     63     63  
東ソー 152 31 125     308  
丸善石油化学     111     111  
日本ポリエチレン 347 364 475     1,186  
日本ユニカー 180     10 110 300  
住友化学 172 133       305  
日本エボリュー   240       240
  当初 現状 計画
プライムポリマー  150  190  250
住友化学   50   50   50
合計 200 240 300
プライムポリマー   145 246 87 11 489  
三井化学     4     4 試験設備
三井・デュポン 170         170 下記参照
合計 1,288 963 1,141 144 121 3,657  
               
LDPE合計           2,372  
HDPE合計           1,285  

* プライムポリマーは2010年4月に高圧法LDPE事業を三井・デュポンポリケミカルに譲渡する。

2009年のLDPE出荷は、国内 1,325千トン、輸出 331千トン、合計 1,656千トン。
  (能力に対し70%、内需は56%)
HDPE出荷は、国内 819千トン、輸出 214千トン、合計 1,032千トン。
  (能力に対し80%、内需は64%)

3.PP  前年末比 162千トン増

プライムポリマー プライムポリマー  1,071  
宇部ポリプロ 90 2011年3月停止、2012年3月清算
徳山ポリプロ 200 トクヤマとのJV
サンアロマー 347  
住友化学 316  
日本ポリプロ 1,244 前年比 +162
(鹿島 +300、川崎 -138)
合計 3,268  

2009年の出荷は、国内 2,278千トン、輸出 303千トン、合計 2,580千トン。
  (能力に対し79%、内需は70%)

4.SM  前年末と同じ

太陽石油化学    335 04/1/1 三井化学から譲受け(宇部市)
日本オキシラン   412 住友化学60%/Lyondell 40%
PO/SM併産
千葉スチレンモノマー   270 電気化学 60%/住友化学40%
電気化学    240  
新日鐵化学   422 2008年3 月末に東ソーとのJVの日本スチレンモノマーを
100% 完全子会社した上で設備(232千トン)を取得。
出光興産   550  
三菱化学   371  
旭化成    678  
合計   3,278  

2009年の出荷は、国内 1,379千トン、輸出 1,650千トン、合計 3,030千トン。
  (能力に対し92%、内需は42%)

5.PS  前年末比 162千トン減

日本ポリスチレン   0 住友化学 /三井化学
2009
年9末で生産停止(162千トン)→解散
DIC   131  
東洋スチ レン   278 電気化学/日鉄化学/ダイセル
PSジャパン   445 旭化成 /出光興産 (2009/10 三菱化学撤退)
合計   854  -162

2009年の出荷は、国内 687千トン、輸出 32千トン、合計 719千トン。
  (能力に対し84%、内需は80%)

6.VCM 前年末と同じ

テック   391 PVC:ヴイテック
2011年3月末までに停止
東ソー  1,454 PVC:大洋塩ビ
トクヤマ   330 PVC:新第一塩ビ
京葉モノマー   200 (旭硝子/クレハ/丸善石化)
カネカ   540 PVC:カネカ
鹿島塩ビモノマー   600 PVC:信越化学、カネカ
合計  3,515  

2009年の出荷は、国内 1,684千トン、輸出 1,027千トン、合計 2,711千トン。
国内出荷のうち、輸出PVC用は705千トン。
  (能力に対し77%、内需は48%。輸出PVC用を除く純国内用は28%)

7.PVC 前年末比 -41千トン 

徳山積水   114 前年比 -1
(積水化学 70%/東ソー 30%)
テック 220 2011年3月末までに停止
  06/12 07/12 08/5
川崎 115 95 121
四日市 104 99 99
水島 115 110 0
334 304  220
大洋塩ビ   558  
東ソー    28 ペースト
新第一塩ビ   255 前年比 -4
信越化学   550  
カネカ   431 前年比 -35
合計   2,157 前年比 -41

2009年の出荷は、国内 960千トン、輸出 705千トン、合計 1,665千トン。
  (能力に対し77%、内需は45%)

8.アクリロニトリル

旭化成 419  
ダイヤニトリックス 196 三菱レイヨン65%/三菱化学35%
昭和電工 55 前年比 -4
住友化学 52  
合計 722 前年比 -4

 

9.EO

丸善石油化学 197 (2005/4に丸善ケミカルを吸収)
日本触媒 324 前年比 +70
三井化学 100 前年比 -119
2009年11月、市原工場停止
三菱化学 286  
合計 907 前年比 -49

 

10.アセトアルデヒド 前年末と同じ

協和発酵ケミカル   60
昭和電工  300
日本アルデハイド   69
合計  429

 

11.合成ゴム

  SBR   BR   IR  
旭化成   133        35 前年比 +11          
宇部興産       95          
JSR 257 前年比 -2   61 前年比 -4     39 前年比 -1  
日本エラストマー 46 前年比 +6   16 前年比 +5       旭化成 75%、
昭和電工 25%
日本ゼオン 146 前年比 -7   55     36 前年比 +3  
三菱化学 43                
合計 625 前年比 -3    262 前年比 +12     75 前年比 +2  

 

12.MMAモノマー  前年末と同じ

旭化成   100 川崎 直メタ法 70、ACH法 30
クラレ 67 中条 ACH法 67 (2005/9 共同モノマー離脱)
住友化学 72 直酸法(愛媛 40、姫路 32)
三井化学 40 直酸法(大阪:旧 共同モノマー)
三菱ガス化学 51 新潟 新ACH法
三菱レイヨン 217 大竹 直酸法 110、ACH法 107
合計 547  

 


2010/4/15  Reliacne IndustriesAtlas Energy と組んで Marcellus Shale を開発

Reliance Industries 49日、米国のAtlas Energy, Inc.との間で米国ペンシルベニア州のMarcellus Shaleエリアでのシェールガス開発でAtlasの権利の40%を取得する契約を締結したと発表した。

Relianceは、Atlasが権利を持つ合計30万エーカーの未開発鉱区のうち不可分の40%の権利を取得する。
操業は
Atlasが行うが、Relianceは将来、Atlasの主操業地区以外で操業を行うオプションを持つ。

Reliance は権利取得に339百万ドルを支払うとともに、7年半の開発期間中に自社枠の開発投資のほか、Atlas分の開発投資の75%13.6億ドルが限度)を負担する。

Marcellus Shale豊富な埋蔵量に加え、一大需要地である米国北東部に近く、また生産コスト面でも競争力が高いため、米国 において、最も有望なシェールガス産出地の一つと言われている。

三井物産は本年216日、三井石油開発とのJVMitsui E&P USA を通して、Anadarko Petroleum が米国ペンシルベニア州のMarcellus Shaleエリアにおいて開発・生産中のシェールガス事業に参画すると発表した。

Atlasの開発地域では3000以上の井戸を掘り、13.3 tcfe (Trillion Cubic Feet Equivalents)を得ることを想定している。(Reliance持分 5.3 tcfe)

Atlasは開発地域の拡大を計画しているが、Relianceはその40%を取得するオプションを得た。

付記

Chevron は119Atlas Energyを買収すると発表した。
現金
32億ドルのほか、11億ドルの債務を引き継ぐ。

Relianceとの契約はChevronが引き継ぐ。

ーーー

RelianceLyondellBasell145億 ドルで買収する提案をしていたが、LyondellBasellはこれを拒否した。

2010/3/11 LyondellBasell、Reliance の買収提案を拒否

Reliance は インドの新興財閥でインド最大の私企業。 事業は多岐にわたり、ガスパイプライン、石油精製、化学繊維、アパレル等の上流から下底までの石油化学 事業、通信、電力等インフラ事業を行っている。

同社はアジアを越えて欧州と北米に石油化学、合成樹脂事業などを拡大する機会を狙っており("global player になりたい")、いずれも失敗はしたが、BPの石化子会社 Innovene 買収を図り、更にGE Plasticsの買収も検討した。

2007/1/16 インドの Reliance Industries

同社はLyondellBasell買収 を狙うと同時に、オイルサンドの権利を持つカナダのValue Creation Inc.買収にも関心を示し、同社の65%を取得するため20億 ドルのオファーを行ったとされていた。

しかし、Value Creation315日、BP CanadaとのPartnership契約締結を発表した。
Value Creationが開発権を持つAthabasca 州のTerre de Graceオイルサンドの開発でBPが過半のシェアを持ち、運営に当たる。

Relianceとしては2つの大物、LyondellBasellValue Creation を相次いで失い、次の手としてAtlas Energyと手を組んだこととなる。


2010/4/16 Sinopec、カナダのオイルサンドに投資

ConocoPhillipsは4月12日、カナダのオイルサンド事業会社 Syncrude Canada Ltd の持株 9.03%Sinopecに売却すると発表した。
売却金額は
46.5億米ドルで、中国の北米投資で最大のものとなる。
市場での予想は40億ドルで、
Sinopecの買値は予想を上回った。

付記 カナダ政府は6月25日、本件を承認した。

中国によるカナダのオイルサンドへの投資としては既にSinopecPetroChinaのものがあるが、今回のものは開発段階ではなく、既に1978年から操業をしており、日量35万バレルの生産を行っている。取引金額もはるかに大きい。

Sinopec20056月、 カナダのアルバータ州Northern Lightsにおけるオイルサンド事業の権益の40% をSynenco Energy から15千万カナダドルで買収し2009年に買い増しして50%にアップした。
  付記 残り 50%は
Totalが買収

PetroChina 2009831日、カナダのAthabasca Oil Sands Corp. からMacKay River 及び Dover オイルサンド計画の60%の 権益を取得する契約を締結したと発表した。対価は19億カナダ ドル。

2009/9/10  PetroChina、 カナダのオイルサンド事業に参加

ConocoPhillipsにとっては2年計画での100億ドルの資産処分計画の一部で、昨年10月に売却を発表していた。
当初は
Syncrude Canadaの最大株主のCanadian Oil Sandsが買うのではないかと見られていた。

Syncrude Canadaの現在の株主は以下の通り。(%)

Canadian Oil Sands  36.74
Imperial Oil Resources 25.00
Petro-Canada Oil and Gas 12.00
Conoco-Phillips Ois Sand 9.03
Nexen Oil Sands Partnership 7.23
Murphy Oil 5.00
Mocal Energy
(
新日本石油開発 100%)
5.00
合計 100.00

このうち、新日本石油開発の100%子会社のMocal Energy 1980年代に三菱石油が資本参加していたもので、後に日本石油による三菱石油の吸収合併で、新日本石油開発の子会社となった。

 


2010/4/16 水俣病「救済措置の方針」を閣議決定 

鳩山内閣は16日、水俣病の未認定患者を救済するための特別措置法の「救済措置の方針」を閣議決定した。

「水俣病被害者の救済及び水俣病問題の解決に関する特別措置法」(平成21年7月15日法律第81号)は2009年7月8日の参院本会議で可決成立した。
一時金の額など具体策は今後、環境省、チッソ、被害者団体などで協議するとしていた。

2009/7/3 水俣病救済法案、衆院を通過、来週成立の見通し

別途、水俣病不知火患者会が国などに損害賠償を求め集団訴訟を行っていたが、熊本地裁は3月15日の第4回和解協議で所見を示 し、年内に決着するよう要請した。

政府、チッソ、患者会はいずれも、これの受け入れを決め、3月29日の第5回和解協議で和解に基本合意した。

今回の「方針」はこれを折り込み、特措法の具体策を決めたもの。

ーーー

水俣病患者救済をめぐっては、国が1977年に設けた認定基準が「二つ以上の症状の組み合わせ」がある人のみを患者としたため、基準に満たない被害者らが国などを相手に訴訟が相次ぎ、1995年の村山内閣による政治決着で約1万人を救済した。

しかし、2004年の関西訴訟の最高裁判決が国の認定基準より幅広く水俣病と認めたため、再び水俣病被害を訴える患者が続出したため、未認定患者を救うため昨年7月に特措法が成立した。1995年の政治決着につぐ第2の大幅救済になる。

ただ、水俣病被害者互助会(水俣市)など依然として訴訟を続ける被害者団体もある。
また現時点で救済を求めている人のほかにも、自分が水俣病だと気づい ていない人が相当数いるとみられる。「被害地域の全住民の健康調査で被害の全容を明らかにしなければ、最終解決にならない」との指摘がある。

ーーー

水俣病犠牲者慰霊式が行われる5月1日から熊本、鹿児島、新潟の3県で救済申請を受け付ける予定。

「方針」の内容は以下の通り。

救済対象 熊本、鹿児島県の水俣湾や、新潟県の阿賀野川の周辺地域に、
1968年12月末以前(新潟は1965年12月末以前)に1年以上居住するか、
水俣湾やその周辺(新潟は阿賀野川)の魚介類を多く食べた者

母胎を通じてメチル水銀摂取の可能性があるため、1969年11月末までに生まれた者も対象とする。
これより後に生まれても、へその緒などで水銀摂取がわかれば対象となる。

症状としては、手足の先の感覚が鈍いことや全身の感覚障害。
口周囲の触覚や痛覚障害なども考慮するとしており、1995年の政治決着より広げた。

死亡した人についても、過去の公的な診断資料などによって申請が可能となり、遺族が一時金を受 け取ることができる。

(環境省では、対象者は3万人を超える可能性があるとしている。)

救済希望者は申請後、3県が指定する公的医療機関で受診、3県に設置される判定検討会で対象となるかどうか判断する。

 特措法での救済は3県に設置される「判定検討会」がその診断書を基に対象者かどうかを審査する。
 3月の和解案による救済は原告、被告双方が推薦する医師らでつくる「第三者委員会」が判定する。

受付期限 5月1日に受付開始予定。
受け付けは2011年12月までを一区切りとするが、その時の状況により判断する。
特措法が定める救済措置の開始後3年以内には確定させる。

付記 2012/2/3

水俣病特別措置法に基づく救済制度の申請期限について、細野豪志環境相は2月3日、正式に2012年7月末で申請を区切ることを表明した。

2010年5月施行の特措法は、3年以内をめどに救済対象者を確定すると規定。判定手続きに最長9カ月ほどの期間を要することから、申請を今年7月末までと決めた。「7月末までの半年間は十分な期間であり、その間に十分告知していく方が被害者の救済につながる」としている

救済制度には受け付け開始以来、熊本、鹿児島、新潟の3県で、当初予測の3万人を超える約5万人が申請していた。

 

救済措置 一時金:210万円

療養手当月額 :
 入院療養を受けた者  月額17,700円
 通院療養を受けた日数が1日以上で、  
   70歳以上の者  月額15,900円
   70歳未満の者  月額12,900円

療養費の自己負担分

一時金
加算額
被害者団体計3団体に、活動費用や社会福祉施設の運営費などとして計31億5千万円支給
 「水俣病出水の会」(鹿児島県出水市)に29億5000万円
   同会が取り組む胎児性患者支援事業費 9億5000万円を含む。
 「水俣病被害者芦北の会」(熊本県津奈木町)に1億6000万円。
 「水俣病被害者獅子島の会」(鹿児島県長島町)に4000万円。
負担 一時金や加算金は原因企業のチッソが負担する。
但し、チッソは債務超過に陥っていることなどから、国は熊本県が出資する財団法人を通じ、資金支援をすることも閣議で了解された。

鳩山由紀夫首相は16日、記者団に対し「これまで苦しみ抜かれた方々のお気持ちを考えると大変つらい思いだが、国として改めておわびする。一定の区切りがつけられることは、よかったと思 う方も多いのではないかと思う」と述べた。

小沢鋭仁環境相は閣議決定後の会見で、「水俣病公式確認から54年、多大な苦痛を強いられた被害者、引き裂かれた地域社会に思いをはせると、行政のあり方を反省し、おわびの気持ちでいっぱいである」と語った。

 

今後の問題として、チッソの分社化の問題がある。

2010/1/11 チッソ会長、「10月分社化目指す」

 


2010/4/17 LGグループ、環境産業に10年間で20兆ウォンを投資

LG ElectronicsLG DisplayLG Chemで構成される LGグループは4月11日、2020年までにエコ製品の開発と製造工程のエコ化に20兆ウォン(約1兆7000億円)を投資し、グループ売上高全体の1割を環境産業分野で上げるという「環境経営戦略−環境2020」計画をまとめたと発表した。

グループ内の事業所の温室効果ガス排出量を2020年までに4割、水の使用量は3割減らす。
温室効果ガスについては20百万トンを製造設備やgreen energy事業で減らし、30百万トンを省エネ製品で減らす。

太陽電池・次世代照明・次世代電池の使用を拡大するとともに、今よりもっと省エネのエアコン、冷蔵庫、テレビを開発する。

LG Electronics は太陽光で充電するフルタッチスクリーンの携帯電話を発表した。
ソウルの本社ビルの蛍光灯をLEDに置き換え、45%以上の省エネを図る。.

エコ新製品の開発や新事業の発掘など研究開発分野に10兆ウォン、製造工程のエコ化に10兆ウォンを投資する計画で、今年から2015年までに7兆ウォン、2016−2020年に13兆ウォンを投資する。


具本茂LG会長は社長団協議会で「単なる外部の規制や法規に対応するレベルにとどまらず、積極的な環境経営を通じて意味のある成果を出していく」とし「経営の必須要素に定着した環境分野事業を積極的に推進していく必要がある」と述べた。

韓国政府は2009年11月17日、2020年までの温室効果ガス排出量削減の中期目標を、2005年比で4%減にすると決定した。特別な措置を取らなかった場合と比べ 30%削減になり、削減義務のない途上国の中では最高水準に相当する。
また、昨年末に「低炭素環境成長基本法」が国会を通過し、4月14日に施行される。

ーーー

Samsung Electronics も、同社を2013年までにleading eco-friendly companyにするべく、グリーン研究開発とグリーン設備に 5.4 兆ウォンを投資すると発表している。

ソニーは4月7日、環境負荷ゼロを目指す環境計画「Road to Zero」を策定したと発表した。

ソニーは、持続可能な社会の実現を目指し、2050年までに 自らの事業活動および製品のライフサイクルを通して、「環境負荷ゼロ」を達成することを長期的ビジョンとして掲げている。今回策定した環境計画 「Road to Zero」においては、気候変動だけでなく、資源循環、化学物質管理、生物多様性を含んだ4つの視点をもって総合的に「環境負荷ゼロ」を実現するまでのロードマップを描いている。
http://www.sony.co.jp/SonyInfo/News/Press/201004/10-0407/

 


2010/4/19 河南煤業化工、石炭原料で100万トンのMEGを建設 

河南煤業化工集団 (Henan Coal & Chemical Industry GroupHNCC)の子会社の安陽化学(Anyang Chemical)はこのたび、河南省安陽市で年産20万トンのMEGの起工式を行った。

安陽化学は旧称安陽化学肥料で、年産24万トンのアンモニア、42万トンの尿素、20万トンの複合肥料のプラントを持っている。

総額13.5億人民元を投じ、通遼GEM ChemicalTongliao GEM Chemical) のCoal-to-MEGプロセスを使用し、安陽化学の余剰の石炭ベース合成ガスを原料とする。
これはHNCCにとって5番目の
Coal-to-MEG計画で、合計能力は100万トンとなる。同プロセスにとっては6番目の計画となる。

通遼GEM Chemical Coal-to-MEGプロセスは中国科学院福建物質構造研究所と江蘇省の丹化グループ及び上海のGEM Chemical Technology により開発された石炭ベースのsysgas からMEGを生産する技術で、3社のJVの通遼GEM Chemical2007年8月に内蒙古の通遼経済開発地域で20万トンのプラントの建設を開始した。
その後計画を変更し、MEG 15万トンとシュウ酸(MEGを酸化して生産)10万トンとしたが、昨年末に完成した。(現在手直し中で、5月に商業生産を開始する。)

同プロセスによるプロジェクトは以下の通り。

実施者 立地 能力 建設開始
通遼GEM Chemical
中国科学院/丹化/GEM
内蒙古・通遼経済開発地域  150千トン 2007/8
 (400千トン) 計画
       
HNCC HNCC/通遼GEM Chemical 河南省洛陽市  200千トン 2009/11
HNCC/通遼GEM Chemical 河南省商丘市 200千トン 2009/11
HNCC/通遼GEM Chemical 河南省新郷市 200千トン 2009/11
中原大化集団(HNCC子会社) 河南省濮陽市 200千トン 2010/2
安陽化学(HNCC子会社) 河南省安陽市 200千トン 2010/4
合計   1,000千トン  

HNCCは2009年に通遼GEM Chemical のメンバーの陽化学(丹化)に出資、第二位の株主となった。
HNCCと
丹化は本年3月にCoal-to-MEG投資契約を締結、 今後の計画は共同で実施することを決めた。

中国のMEGの輸入は2009年は580万トンで前年比12%の増加となっている。
ASIACHEM Consultingによると、中国のMEG消費は2012年には1050万トンを超える予想で、HNCC5計画が完成すると能力は100万トンとなり、全消費の10%を占めることとなる。

HNCC200812月に5つの石炭事業会社、永城煤電(Yongcheng Coal) 、鶴壁煤業(Hebi Coal)、焦作煤業(Jiaozuo Coal) 、中原大化(Zhongyuan Dahua)、河南省煤気集団(Henan Provincial Town-Gas)が合併して設立された。石炭埋蔵量は400億トンで、年間生産量は57百万トンとなっている。

同社は石炭化学の開発に積極的である。
シノペックと河南省は本年2月に、河南省鶴壁市で年産180万トンのメタノールと60万トンのオレフィンを製造する計画の覚書を締結したが、これはシノペックとHNCCが実施するもので、石炭採掘から、メタノール合成、MTO(メタノールからオレフィン製造)、誘導品製造を統合する。
初期段階ではHNCCが石炭採掘関連、シノペックがメタノール、MTO、誘導品を担当し、河南省の関連部局が必要書類を準備する。

ーーー

ASIACHEMによると、上記のほか計画中のCoal-to-MEG計画は以下の通り。

実施者 立地 能力(千トン)  
Hebi Baoma Group 河南省鶴壁   0.3 Pilot plant
Shanghai Coking, Huayi Group 上海   10 同上
Jiangsu Danhua Group 江蘇省鎮江   10 同上
       
Wison Group Hengyuan Chemicals 内蒙古オルドル   300  
Kailuan Group 同上   200  
Huawai Energy
(Towngas & Sanwei Resources jv)
同上   200  
East Sea New Energy 同上   200  
SES Zaozhuang New Gas 山東省棗荘    40  
Hualu Hengsheng 山東省徳州    50  
Shaanxi Coal and Chemical Industry 陝西省渭南   200  

なお、2010年5月27-28日に、上海のGrand Metropark Jiayou Hotel で第一回Coal-to-MEG 会議が開催される。
詳細は
http://www.chinacoalchem.com/events/2010MEG/MEGChina2010.pdf

ーーー

20104月時点の中国のMEGメーカー大手は以下の通り。

メーカー 立地 能力
 千トン
備考
シノペック鎮海煉油化工 浙江省寧波市 650 2010/4 スタート
シノペック上海石化 上海市 610  
シノペック揚子石化 江蘇省南京市 450  
シノペック・SABIC石化 天津市 420  
中海シェル石化 広東省恵州市 320  
シノペック燕山石化 北京市 300  
BASF-YPC 江蘇省南京市 300  
ペトロチャイナ遼陽石化 遼寧省遼陽市 200  
シノペック茂名石化 広東省茂名市 200  
遼寧華錦グループ
(盤錦エチレン)
遼寧省金州市 200  
ペトロチャイナ吉林石化 吉林省吉林市 160  
通遼GEM Chemical 内蒙古自治区
 通遼市
150 Coal-to-MEGプロセス

ソース:ASIACHEM Consulting)

 


2010/4/20 次世代自動車戦略 2010 

経済産業省は4月12日、電気自動車やハイブリッド車などの普及を目指す「次世代自動車戦略 2010」を発表した。

自動車や関連産業および社会全体の中長期的な対応のあり方に関する新たな戦略を構築すべく「次世代自動車戦略研究会」でとりま とめたもので、研究会は各自動車メーカーや電機メーカー、経産省、大学など産官学のスタッフでメンバーが構成されている。

次世代自動車をハイブリッド自動車、電気自動車、プラグインハイブリッド自動車、燃料電池自動車、クリーンディーゼル自動車と定義、「全体戦略」「電池戦略」「資源戦略」「インフラ整備戦略」「システム戦略」「国際標準化戦略」の6つの戦略を策定している。

今年2月時点で新車販売に占める次世代車割合は9.3%に過ぎないが、戦略では、2020年に20〜50%、2030年に50〜70%に引き上げる目標を掲げた。

EVに必要な急速充電器を2020年に5000基、家庭用などの普通充電器を200万基設置する目標も設定。
EVに使用する蓄電池などの国際標準化で日本が主導的役割を果たすことを盛り込んだ。

新興国などで普及が進む従来型のガソリン車についても「低燃費車の開発を続けることが生命線」と明記。
環境性能が優れたガソリン車と、次世代車を合わせて「先進環境対応車」とし、2020年に新車販売の80%を目指す目標を掲げた。

ーーー

戦略策定の議論ではメーカー側から「最大限の努力をしても2020年の次世代車は全体の20%未満」との声が上がった。

戦略では「先進環境対応車」という新たな概念をこしらえ、2020年に新車販売の80%との目標も示したが、次世代車が2020年に20%としても、低燃費のガソリン車を含めて80%なら目標を達成したことになる。

急速充電器も1基設置するのに600万円程度かかるとされ、EVの購入補助やインフラ整備には積極的な財政出動が不可欠だが、目標達成に向けた財政支出は明記されなかった。

なお、3月31日発表の温暖化対策「ロードマップ」(環境相試案)では2020年までに1990年比で 25%削減する目標の達成に向けた具体策として、
  ハイブリッド自動車 (普通・小型乗用車) 約50%
  電気自動車 (普通・小型乗用車) 約7%
としている。

2010/4/8  温暖化対策「ロードマップ」、環境相試案を発表 

鳩山政権は次世代車普及を6月にまとめる新成長戦略に盛り込む考えだが、政府内の調整も必要となる。

ーーー

「次世代自動車戦略 2010」の概要は以下の通り。
  
http://www.meti.go.jp/press/20100412002/20100412002-3.pdf

6つの戦略

  目標 アクション・プラン 資料
全体戦略 日本を次世代自動車
開発・生産拠点に
・普及目標(2020年・2030年)の設定
 -次世代自動車:
2020年最大50%
 -先進環境対応車:
2020年最大80%
  (次世代+環境性能に特に優れた従来車)
・燃料多様化
・部品の高付加価値化
・低炭素型産業立地促進
車種別普及目標



電池戦略 世界最先端の電池
研究開発・技術確保
・リチウムイオン電池の性能向上
・ポスト・リチウムイオン電池開発
・電気自動車普及による量産効果創出
・電池二次利用のための環境整備
電池開発目標
(2006年策定)
資源戦略 レアメタル確保+
資源循環システム構築
(上流)・戦略的資源確保
(中流)・レアメタルフリー電池・モーター確保
(下流)・電池リサイクルシステム構築
資源戦略
ロードマップ
インフラ
整備戦略
普通充電器 200万基
急速充電器 5000基
・市場準備期の計画的集中的インフラ整備
 -EV・PHVタウンを中心に
・本格普及期への道筋構築
 -EV・PHVタウンベストプラクティス集策定
 -民間(CHAdeMO協議会)との連携
インフラ整備
ロードマップ
システム戦略 車をシステム(スマート
グリッド等)で輸出
・EV・PHVタウンでの新たなビジネスモデル創出
・次世代エネルギー社会システム実証事業での
 検証
・検証結果を踏まえた国際標準化・ビジネスへの
 展開
国際標準化
ロードマップ
国際標準化
戦略
日本主導による
戦略的国際標準化
・電池性能・安全性評価手法の国際標準化
・充電コネクタ・システムの国際標準化
・官民による標準化検討体制強化
・標準化人材育成

資料

車種別普及目標
  2020年   2030年
民間努力
ケース
政府目標   民間努力
ケース
政府目標
従来車 80%以上 50〜80%   60〜70% 30〜50%
次世代自動車 20%未満 20〜50%   30〜40% 50〜70%
次世代内訳 ハイブリッド自動車 10〜15% 20〜30%   20〜30% 30〜40%
電気自動車 5〜10% 15〜20%   10〜20% 20〜30%
プラグイン・ハイブリッド自動車
燃料電池自動車 僅か 〜1%   1% 〜3%
グリーンディーゼル自動車 僅か 〜1%   〜5% 5〜10%

      政府目標達成には政府による積極的なインセンティブ施策が必要と注記している。

 
電池研究開発目標(2006年策定)
  2006年 改良型電池
(2010年)
先進型電池
(2015年)
革新型電池
(2030年)
電力会社用小型EV 用途限定コミューターEV
 高性能HV
一般コミューターEV
燃料電池自動車
Plug-in HV 自動車
本格的EV
性能 1 1 1.5倍 7倍
コスト 1 1/2倍 1/7倍 1/40倍
開発体制 民主導 民主導 産官学連携 大学・研究機関

(1)先進型リチウムイオン電池の開発(2007〜2011年度)

 ・ハイブリッド自動車、電気自動車の動力源となるリチウムイオン蓄電池の更なる性能向上・コスト低減
  を目指す。
 ・2010年度予算 24.8億円 (2009年度予算 26.1億円)                             

(2)革新型電池(ポスト・リチウムイオン電池)の開発(2009〜2015年度) 

 ・包括的な産学官共同研究により蓄電池の反応メカニズム等を解明し、ポストリチウムイオン電池開発の
  フロントランナーを目指す。
 ・2010年度予算 30億円 (2009年度予算 30億円)

 
資源戦略ロードマップ
 
インフラ整備ロードマップ
 
国際標準化ロードマップ

 


2010/4/21  鉄鋼のように強い汎用プラスチック創製

広島大学大学院総合科学研究科の彦坂正道特任教授と岡田聖香博士研究員らは、科学技術振興機構の産学連携事業の一環として、鉄鋼を超える比強度を持ち、安価で水に浮く軽さで、リサイクルが可能なシート状の超高性能汎用プラスチックの創製に成功した。
科学技術振興機構と広島大学が4月19日に発表した。

融点以下に冷やした高分子の融液を引っ張って結晶化させるという極めてユニークな製法により、代表的汎用プラスチックのポリプロピレンの結晶化度をほぼ100%に高めることに成功し、引張強度をこれまでの7倍以上の230MPa(メガパスカル)に高め、比強度を鉄鋼の2〜5倍にした。
しかも通常の汎用プラスチック並みに安価で成形しやすく、リサイクルが可能という大きな利点を持っている。

ーーー

高分子材料は軽量・安価・高成形性の利点を持つが、強度や耐熱性などの材料特性が金属などより著しく劣るために高度な性能要求に応えることができない。

その原因は、結晶にならない部分の比率(非晶率)の高さにある。

結晶性高分子は長いひも状分子だが、融液中で毛玉のように互いに絡み合う部分が多いために、これらが薄い板状結晶にしかなれず、結晶と非晶が層構造を成し「球晶」というゴルフボールのような結晶体になる。
球晶内には結晶にならず、固化しただけの非晶が半分以上残ってしまう。

彦坂特任教授と岡田博士研究員らは、高結晶化度と超高性能実現の方策として、「ナノ配向結晶体(NOC)」に狙いを定めた。
ひも状の高分子鎖が融液段階で毛玉状に絡まっているために非晶が発生するため、これを一定方向にきれいに並べた上で結晶化すれば、結晶化度の高いナノ配向結晶体が実現すると考えた。

発案したのは、融点以下に冷やした高分子の融液を潰す(compress)ことによって伸長するというアイデア。

融点以下に冷やした高分子の融液を潰す圧力と速度を変えながら伸長と配向の様子を観察したとこ ろ、1秒間に数百倍も伸長するような、大きな伸長歪み速度によって、同じ結晶化温度でも結晶化が一気に100万倍も速くなる「臨界伸長歪み速度」が確認された。過冷却融液中の高分子鎖が平行に並んだ完璧に近い配向融液になり、無数の核がミリ秒オーダーで生成し、融液全体の92%が結晶化することが確認された。
「ナノ配向結晶体(NOC)」の実現が確認された。

ポリプロピレンのナノ配向結晶体は以下の特徴を有している。

・引っ 張り破壊強度はこれまでの7倍以上の230MPa

・成形性がよく錆ないプラスチック本来の特性を持ちながら、
 引っ 張り破壊強度が
同重量の鉄鋼の2〜5倍、アルミの6倍 

  引張破壊
強度(MPa)
比重  比強度 
(MPa)
アルミニウム 100 2.7 37
ステンレス 500 7.8 64
鉄鋼(車両用) 400-800 7.8 51-102
本研究 iPP 230 0.94 244
  比強度=引っ 張り破壊強度/比重

耐熱性は通常のポリプロピレンより50℃以上高い176℃

・光の波長より小さいナノ結晶であるがゆえに高い透明性(透過率 99%)

・折りたたんでも、力を外すと、再び元の形状に戻る

高分子融液を潰すという単純な工程が加わるだけで、通常の汎用プラスチック並みに安価

・従来の成形法を少し改良した成形法で成形できる

・何も混ぜ物を加えないので、高い収率でリサイクルができる

こうした数々の特性によって、既存のエンプラにとって代わることは十分に期待され、 比強度の大きさから、鉄鋼やアルミニウムなどの金属材料に代替することで、製品の軽量化を図ることが期待される。
また、高剛性と高靱性を備え、錆ないこ とから、高層ビルや家屋などの建築材料にも適しており、耐水性も加味されるので、橋梁やダムなどの構造材としての利用も期待される。
しかも透過率 99%という高い透明性は、ガラスの代替材としても期待できる。

広島大学では今後、サンアロマー(高分子最適化)及びエフピコ(食品容器製品化)と共同研究を行い、実機プロトタイプの超臨界伸長成形機を開発し、実用サイズの超高性能高分子材料の成形、量産技術を確立し、製品化を図る。

 


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