ミツバチ大量死の一因とされるネオニコチノイド系農薬への規制を強化するため、 新規に登録する農薬の安全性などを審査する環境省は、安全性審査の対象となる影響評価生物に野生のミツバチを追加する方針を固めた。
申請のあった農薬について、試験データが充実するセイヨウミツバチで毒性などを確かめて登録基準を作り、安全性に問題があれば登録を認めない方針。
農林水産省も2020年4月施行の改正農薬取締法で、影響評価対象に飼育用ミツバチを加えたほか、農薬の容器に被害を与えない使用方法を表示することなどを義務付けた。
新規登録農薬について、メーカーにはミツバチへ被害を与えない散布時期や回数、濃度など使用方法の明記 を義務付けた。
農家にはその表示通りに使用することを義務付けた。
表示や使用の違反に罰金を科す罰則規定も盛り込まれた。
ネオニコチノイド系農薬はイネなどの害虫のカメムシの防除目的で1990年代ごろから水田などで広く散布されてきた。
1990年代初めから、世界各地でミツバチの大量死・大量失踪が報告されている。
働き蜂のほとんどが女王蜂や幼虫などを残したまま突然いなくなりミツバチの群れが維持できなくなってしまう現象は「蜂群崩壊症候群」(CCD:Colony
Collapse Disorder)と呼ばれる。
ネオニコチノイドはこの主な原因と疑われており、 EU は 2013 年5 月、蜜蜂への危害を防止するため、ネオニコチノイド系農薬の使用の一部を暫定的に制限することを決定した。
2013年1月に、3種類のネオニコチノイド系農薬(イミダクロプリド、クロチアニジン及びチアメトキサム)について、蜜蜂に被害が出る可能性があるとし、
2014年5月に、以下を決めた。
・穀物や蜜蜂が好んで訪花する作物については、種子処理、土壌処理又は茎葉への直接噴霧による使用禁止。
・施設栽培における使用や、花が終わった後の野菜・果樹に対する使用は、農家や防除業者であれば使用可能。(家庭園芸用等では禁止)
日本では、これらの農薬は水稲のカメムシ防除に重要だが、使用時に蜜蜂の被害が報告されており、農林水産省では、農薬の使用方法の変更が必要かどうかを検討し、必要であれば変更するとしている。
農薬による蜜蜂の危害を防止するための我が国の取組(Q&A)(2016年11月22日更新)
しかし、農薬工業会はネオニコチノイド系殺虫剤 の影響を否定している。
・日本では蜂群崩壊症候群(CCD)は確認されていない。
・日本でのミツバチ被害事故の原因は農薬の「直接暴露」であり、農家と養蜂家間の連携不十分がその原因の一つ。
・1993年以降ネオニコチノイド系殺虫剤が使用されているが、その出荷量とミツバチ群数に相関は認められない。
ミツバチ被害事故に関する農薬工業会の見解について (2019年8月改訂)
欧米などで規制が進んでいることや、ミツバチが植物の受粉など生態系の中で重要な役割を果たしていることなどを考慮 し、国は使用制限へ方針転換した。
中央環境審議会は6月26日、第二次答申(生活環境動植物に係る農薬登録基準の設定について)を発表した。
今回の答申では、野生ハナバチ類の影響評価について次のように述べている。2018年6月交付の改正農薬取締法で、農薬の動植物に対する影響評価の対象が、水産動植物から生活環境動植物に拡大され た。その結果、環境大臣から中央環境審議会に対し、「生活環境動植物に係る農薬登録基準の設定について」の諮問がなされた。
野生ハナバチ類は、植物の授粉に重要な役割を果たす花粉媒介昆虫であることに加え、欧米等において、農薬による被害のおそれがある対象としてリスク評価、規制が行われていること 、我が国でも、農林水産省が、養蜂用ミツバチに対するリスク評価を導入していること等を勘案すれば、評価対象動植物に加えることが適当である。
野生ハナバチ類については、試験方法が公的なテストガイドラインとして確立されており、なおかつ摂餌量等のデータが充実しているセイヨウミツバチを供試生物とした試験成績に基づき、リスク評価を行う。
米連邦最高裁は6月29日、人工妊娠中絶を大幅に制限する南部ルイジアナ州の州法を違憲とする判断を下した。
Hope Medical Group for Womenが、州共和党が通過させた反中絶の規定は違法として訴えていたもの。
問題とされたのは、中絶手術を実施する医師に、緊急事態に対応するため、近くの病院と患者受け入れに関する協定を結ぶことを事前に義務づける条項(admitting privileges requirement)、および中絶薬使用の制限に関する条項など。
関連の学会によると、入院を要する重篤な合併症が中絶処置後に起こることはまれであり、周辺病院での診察に特別な権利を付与する医学的根拠はない。
さらに、中絶を行う施設の設備に対してテキサス州が求めている厳重な要件付けは、医学的に正当な理由がない。
また、中絶薬について、使用の際に遵守を義務付けるプロトコルはエビデンスに基づいたものではないとしている。
信条的または経済的な理由から中絶医との協定に同意する病院は少なく、施行された場合は「中絶手術を続けられる州内の医師は1人になる」とみられていた。 一方、州内で中絶手術を求める女性は年間約1万人とされる。
最高裁は、州法は女性が憲法で保障された権利を行使する上で不当な負担を強いられていると認定した上で、同州法は無効との判断を示した。9人の判事のうち、リベラル派4人と保守派のJohn Roberts 長官が「州法は無効」 との意見に賛成した。
性別 | 年齢 | 人種背景 |
指名した大統領 |
就任日 | 判断傾向 | |
---|---|---|---|---|---|---|
Clarence Thomas | 男性 | 70歳 | アフリカ系 | George H. W. Bush | 1991年10月23日 | 保守 |
Ruth Bader Ginsburg | 女性 | 85歳 | ユダヤ系 | Bill Clinton | 1993年8月10日 | リベラル |
Stephen Breyer | 男性 | 80歳 | ユダヤ系 | 1994年8月3日 | リベラル | |
John Roberts (長官) | 男性 | 63歳 | 白人系 | George W. Bush | 2005年9月29日 | 保守 |
Samuel Alito | 男性 | 68歳 | イタリア系 | 2006年1月31日 | 保守 | |
Sonia Sotomayor | 女性 | 64歳 | ラテン系 | Barack Obama | 2009年8月8日 | リベラル |
Elena Kagan | 女性 | 58歳 | ユダヤ系 | 2010年8月7日 | リベラル | |
Neil Gorsuch | 男性 | 51歳 | 白人系 | Donald Trump | 2017年4月10日 | 保守 |
Brett Kavanaugh | 男性 | 53歳 | 白人系 | 2018年10月6日 | 保守 |
米国では1973年 の最高裁で、妊娠中絶の権利を保証し、中絶を規制する法律を違憲とする「Roe v. Wade」判決が確定している。最長で妊娠28週までの中絶が女性の権利として容認 された。
米連邦最高裁は2016年6月27日、人工妊娠中絶を行う医師や医療施設に厳格な規則を求める南部テキサス州の州法について、女性が憲法で保障された権利を行使する上で不当な負担を強いられていると認定した上で、同州法は無効との判断を示した。
同州法は2013年に成立。中絶を行う施設に病院並みの高額な設備を義務付けるなどし、州内に41あった中絶施設は19に半減した。
判決は5対3で、保守 系中道で事態ごとに判断するスイング派のAnthony Kennedy判事がリベラル側にまわった。
判決文で、「州法は、中絶に関する規制を正当化するに十分な医学上のメリットを与えるものではない 。法的に許される中絶手術を受けようとする女性に著しい障害を課すものであり、妊娠中絶に不当な負担を加え、いずれも合衆国憲法に違反するものである」 とした。
この件ではJohn Roberts判事は違憲に反対であった。
今回は、「判例順守」の観点から賛成したと述べた。
ーーー
中絶反対を掲げ、1973年の「Roe v. Wade」判決を取り消すことを狙うトランプ大統領は保守派判事2人を相次ぎ指名 し、保守系5人、リベラル系4人とした。
しかし、このところ、本件を含めて大統領の意に反する判決が相次いでいる。
2020/6/19 職場でのLGBT 差別は公民権法違反、米最高裁が初判断
2020/6/19 米最高裁、トランプ政権によるDACA撤廃を認めず
今回も保守系のJohn Roberts 長官が、前の2件と同様、賛成にまわった。
2020/7/6 東京応化工業、韓国でフォトレジスト生産開始
東京応化工業は、政府の輸出規制を避け、韓国でフォトレジストの本格生産を始めた。
フォトレジストは半導体製造工程におけるパターン形成に使用される感光性樹脂で、極端紫外線(EUV)用フォトレジストは日本政府が昨年7月から対韓輸出を規制した。
東京応化は韓国仁川市の松島に子会社TOK尖端材料社を持つ。2012年にサムスン物産とのJV設立、業務提携を決めた。
商号:TOK尖端材料(株)
所在地:大韓民国仁川広域市
事業内容:フォトレジストの研究開発・製造・販売
資本金:900億ウォン(約63億円)
出資比率:東京応化工業90%、サムスン物産10%
以前から日本から原材料を持ち込んでフォトレジストの完成品を少量生産していた。
現在サムスン電子は7ナノメートル以下のファウンドリー(半導体委託生産)工程でEUV(極端紫外線リソグラフィー)を使っているが、これ用のフォトレジストの量産に入ったという。
サムスン電子は当初、フォトレジストの調達に苦労し、JSRのベルギーJVからも空輸した。
JSRは2017年3月、2015年末に同社とナノエレクトロニクス技術研究の先端的な研究機関であるimec がベルギーに設立した合弁会社 「EUV Resist Manufacturing & Qualification Center N.V. 」(JSR61%) のEUVフォトレジスト製造設備が完成したと発表した。
ある半導体メーカー関係者は、「サムスン電子がシステム半導体とメモリー半導体ともにEUV工程を選びフォトレジストが大量に必要になった。これに伴い 東京応化も大口顧客を失わないために韓国での生産の割合を高めている」と話した。この決定には米 DuPontが本年1月に「忠清南道天安にEUV用フォトレジスト工場を作る」と発表したことも影響を与えたという。 (韓国中央日報)
2020/1/11 DuPont、韓国でレジスト生産へ
なお、SK Materials はこのたび、純度99.999%の超高純度フッ化水素ガスの量産を始めた。
日本のメーカーも、韓国の国産化推進方針に乗り、半導体部材の現地生産を進めている。
2020/6/20 韓国SK Materials 、 超高純度フッ化水素ガスの量産開始
経済産業省 は低効率な石炭火力発電所の休廃止に乗り出す。現在約140基ある石炭火力のうち、低効率とされる約110基のうち9割にあたる100基程度を対象とし、2030年度までに段階的に進める。
具体的には、電力会社が発電できる量に上限を設けて、古い発電所を休止や廃止するなどして、段階的に引き下げていく方法などが検討されている。災害などの際に大規模な停電を防ぐためにすべてがすぐに廃止されないような仕組みも検討する 。
一方、二酸化炭素の排出を抑えた効率がよい石炭火力発電所は新設も認める。
ーーー
2019年に改定した政府の「エネルギー基本計画」では、2050年に向けた対応として非効率な石炭を段階的に削減するとしているが、その取り組みを加速する。
「エネルギー基本計画」5.化石燃料の効率的・安定的な利用
(1)高効率石炭・LNG火力発電の有効活用の促進
石炭火力発電は、安定供給性と経済性に優れているが、温室効果ガスの排出量が多いという課題がある。
環境負荷の低減という課題と両立した形で利用していくため、温室効果ガスの排出を抑制する利用可能な最新鋭の技術を活用するとともに、エネルギーミックス及びCO2削減目標と整合する排出係数を目標としている電力業界の自主的な枠組みの目標達成に向けた取組を促す。
高度化法において、2030年度に販売電力の44%を非化石電源とすることが規定されている。
省エネ法に基づいて発電効率の向上を求めており、石炭火力発電の新設は最新鋭のUSC相当の発電効率を求めている。今後、これらの規制的措置の実効性をより高めるため、非効率な石炭火力(超臨界以下)新設を制限することを含めたフェードアウトを促す仕組みや、2030年度に向けて着実な進捗を促すための中間評価の基準の設定等の具体的な措置を講じていく。
国際社会の強い批判に応える狙いだが、高効率型の発電所は維持する方針で、欧州の全廃路線とは一線を画すことになる。
2019年12月にスペインで開かれた「COP25」では、国連のグテーレス事務総長が石炭火力発電の利用をやめるよう各国に呼びかけた。
英国は、2010年に28%だった石炭火力発電の割合を、2025年までにゼロにする方針で、フランスは、2022年までに石炭火力発電を廃止する。
ドイツは、2017年の時点で石炭火力の依存度が日本よりも高かったが、7月3日に2038年末までに段階的に完全撤退する法案が可決された。国内に77基ある全ての石炭・褐炭の火力発電所が廃止される。
カナダは、二酸化炭素を回収して地下に埋める技術が導入されていない従来型の石炭火力発電は、2030年までに段階的に廃止する。
日本は、COP25に参加するにあたり、小泉環境相は石炭火力の輸出を原則認めない方針を打ちだそうとしたが、経済産業省や官邸との調整がつかず見送った。
梶山経済産業大臣は、国内で「石炭火力発電など化石燃料の発電所は選択肢として残していきたい」と述べた。
これを受け、COPの会場では日本に「化石賞」が贈られた。
今回、梶山経済産業大臣は次のように述べた。
2018年7月のエネルギー基本計画の中で非効率な石炭火力発電所についてはフェードアウトを図っていくという表現があるが、これについては、この表現だけで、具体的な手法について何も今までに仕組みがなかった。これらも踏まえて仕組みづくりをしていこうということ。
日本が、エネルギー資源がない中でベストミックスをしていく、そして再生可能エネルギーも入れていく中で、調整力として火力も有用な電源であると思って いる。
火力発電は、調整電源や、また災害時の立ち上げのときの電源として非常に重要な電源であるということには、考え方は変わりはない。
一方で、非効率の石炭火力というのは、多くのCO2を排出するということにつながる。そういったものを、資源のない国なりにしっかりと考えながら高効率化をしていく、そして、再エネも入れたベストミックスをどうしていくかということを考えていくという中で議論を進めて いきたい。
石炭火力の輸出支援については、次期インフラシステム輸出戦略骨子策定に向けて、関係省庁で議論をしているという段階で、詰めの段階に来ているので、この答えは控えたい。
ーーー
2018年7月のエネルギー基本計画では2030年度の電源構成に占める石炭の割合を26%としている。
電源 エネルギー基本計画
問題点
2010年
震災前2016年 2030年目標 火力 石炭 27% 33% 26% → 高効率型の新増設を差し引いても20%程度まで低下 LNG 28% 40% 27% →◎ LNG火力の拡大でしのぐ しかない。 石油 9% 9% 3% 小計 64% 83% 56% 原子力 26% 2% 22〜20% → 現状約6%、再稼働は今後も難航必至 再生エネルギー 10% 15% 22〜24% → 天候に左右、送電網利用ルール見直しや蓄電技術が必要
今回の方針変更で、旧型火力の休廃止と高効率型の新増設を差し引いて、2030年の石炭火力の比率は20%程度まで低下すると見られる。
原子力については再稼働は今後も難航が必至で、再生エネルギーも多くの問題を抱える。
当面はLNG火力の拡大でしのぐしかない。
大手電力からは「基準が決まっていないので何とも言えないが、9割の石炭を廃止するのは困難だ」との声や、「石炭を廃止する以上、国が原発の新増設を後押しすべきだ」と の声が聞こえる。
ーーー
小泉進次郎環境相が1月21日に、三菱商事が主導するベトナムでの石炭火力発電所の建設計画について再検討を訴え、話題となった。
2020/2/6 小泉環境相、ベトナムへの石炭火力建設計画に反対
経産相の説明の通り、現在、次期インフラシステム輸出戦略骨子策定に向けて検討中だが、概要は次の通りとされる。
輸出は、経済成長や国民生活に不可欠な電力であるアジアの途上国などを対象に例外的に認めるが、国内最高水準の「燃料効率43%以上」を要件とする。
「パリ協定」に基づき2050年までのCO2排出削減の長期戦略を策定する国への輸出を原則とし、戦略の無い国には策定を支援し、脱炭素政策への移行案を提案する。
三井物産と石油天然ガス・金属鉱物資源機構(LOGMEC)が出資するアフリカ・モザンビークのLNG開発に国際協力銀行(JBIC)やメガバンクが144億ドルを協調融資し、民間の融資には日本貿易保険がリスクをカバーする。
融資に参加するのはJBICが144億ドルのうちの30億ドル、残りはアフリカ開発銀行のほか、三菱UFJ銀行、みずほ銀行、三井住友銀行 、三井住友信託銀行など。
LNG開発に参加するのはMitsui E&P Mozambique Area 1 Ltd.で、三井物産が50.01%、JOGMECが49.99%出資する。2007年11月に設立された。
付記
LNGプロジェクトは「イスラム国」を名乗る武装集団による度重なる襲撃、3000人に及ぶスタッフの「全面撤退」とプラント建設停止を受けて、2021年4月26日に筆頭権益者のTotal が「Force Majeure」を発表、事業を中断した。
上川外相は2023年11月27日、モザンビークのマカモ外相と会談し、治安悪化で中断しているアフリカ最大規模を誇る同国のLNG開発事業の再開に向け、協力を進めることで一致した。
マカモ外相はその後、「2024年の再開を目指す」と表明した。
ーーー
モザンビークとタンザニアの国境を流れるRovuma川の河口と沖合に世界最大規模のガス田が発見され、開発が始まった。
モザンビークの海底ガス田の開発は6区に分けて行われている。
全体図 |
三井物産は2008年2月、米国大手独立系石油・ガス開発会社 Anadarko Petroleumがモザンビークに保有する石油・天然ガス探鉱鉱区(Area 1)の権益の一部を取得することで同社と合意した。
現在 | ||
Anadarko (オペレーター) | 26.5% | ONGCに10% 譲渡 |
Mitsui E&P | 20% | |
モザンビーク国営石油会社 ENH Rovuma Área |
15% | |
ONGC Videsh Oil and Natural Gas Corp (インド) |
10% | Anadarkoより |
↓ (+6%) | (Beas Rovuma) | |
Beas Rovuma
Energy Mozambique (ONGC and state-run Oil India ) |
10% |
Videocon より (ONGC60%、Oil India 40%) |
Oil India(インド) | ↑ (4%) | (Beas Rovuma) |
BPRL Ventures Mozambique(インド)Bharat PetroResources Limited (BPRL) | 10% | |
PTTEP
Mozambique Area 1 PTT Exploration & Production (タイ) |
8.5% |
計画:
概要 Area 1 海底天然ガス田 推定可採資源量
17〜30兆立方フィート超LNGプラント LNG年産2,000万トン
当初LNG年産500万トン×2系列
2019年にAnadarkoはLNGプラント着工を決定した。
Occidental Petroleumは2019年8月8日、Anadarkoの買収が完了したと発表した。債務込みで550億ドルとなる。
2019/5/2 Occidental Petroleum、Chevronに対抗し、Anadarkoに再度の買収提案 付記
千代田化工建設は2019年6月6日、イタリアSaipem S.p.A.及び 米国McDermott International Inc.と共同で、EPC(設計・調達・建設工事) 業務を受注した。
三井物産も2019年6月19日に最終投資決断を行ったと発表した。
天然ガスの生産・液化からLNGの輸送までを行う上中流一体型事業で、LNG事業も上記の権益比率で行う。2024年より年間1,200万トンのLNGを生産する。
2019/6/7 モザンビークLNG 計画スタート
このうち、下記の供給が決まっている。
CNOOC 年間150万トン、EDF 年間120万トン、Shell 年間200万トン
JERA(東電と中部電力のJV)と台湾CPC 年間160万トン、東京ガスと英国Centrica
plc 年間260万トン、東北電力 年間28万トン
モザンビークの他のプロジェクトの状況は 2019/9/6 東アフリカのLNG計画
2020/7/8 西豪州ガス田権益、ConocoPhillipsが売却・撤退、一部をJERAが取得へ
両社は2020年4月に本件でLOIを結んでいる。Barossa and Calditaガス田の権益の12.5%は、年間約42万トンのLNGに相当する。
SantosはConocoPhillips と組んで(ConocoPhillips 主導で)豪州西部の石油ガス事業を行なってきた。
Barossa and Calditaガス田は西豪州のDarwin の北方の海上にある。
この南西海上にはBayu-Undanガス田があり、このガスはDarwinに送られ、LNGにしている。
Bayu-Undan ガス田は2022年までに終掘される。
今後、Barosssa 及びCalditaガス田が開発されると、Bayu-Undanガス田の後継ガス田となり、Darwin LNGの液化設備(約370万トン/年)、LNG輸出設備をそのまま使用できることとなる。
JERAとしては、Bayu-Undanガス田(9.2%)が終掘された後、Barossaガス田(12.5%)〜 Darwin LNG(6.13%)の権益を持つことになる。
ConocoPhillips
は2019年10月13日、以下の権益をSantosに13.9億ドルで売却する契約を締結したと発表した。
なお、売却分のうちのBarossa 計画が最終決定すれば、追加で75百万ドルを受け取る。現在、政府の認可待ち。
売却する事業は以下の通り。
Conoco
Phillips他株主 Barossa and Caldita Field 37.5 % Santos 25%、SK E&S 37.5% Bayu-Undan Field 56.9% Santos 11.5%、INPEX 11.4%、ENI 11.0%、JERA 9.2% Darwin LNG 56.9% Santos 11.5%、INPEX 11.4%、ENI 11.0%、JERA 6.13%、Tokyo Gas 3.07% Poseidon Field 40% Karoon Gas Athena Field 50% ExxonMobil 50.0% (Operator) ConocoPhillipsは、このほかに、Greater Sunriseガス田に30%出資していた。他に、豪州のWoodside が33.4%、Shellが26.6%、大阪ガスが10%が出資していた。
この海域は豪州とTimor-Leste(東チモール)が争っていたが、2018年に企業を含めた交渉が開始され、決着した。
ConocoPhillipsは権益を350百万ドルでTimor-Leste 政府に譲渡し、離脱した。
更に直後にShellがTimor-Leste 政府に300百万ドルで売却した。この結果、Timor-Leste政府が56.6%、Woodside 33.4%(Operator)、大阪ガス 10% となる。
なお、ConocoPhillipsは東豪州のCoal seam gasからのLNGメーカーのAustralia Pacific LNGに37.5%出資している。他の出資者はOrigin Energy (37.5%), and Sinopec (25%) で、Originがガス田の運営、ConocoPhillipsはLNG輸出設備、LNG輸出業務を担当しているが、この出資は続ける。
これについては 2013/5/3 商船三井、中国向けLNG輸送に参加
SantosはConocoPhillipsから買収する持分の一部を売却した。
@ Bayu-Undanガス田とDarwin LNGの権益の25%を2020年3月に韓国のSK E&S に390百万ドルで売却
Santosの持分は当初の11.5%が68.4%になるが、この売却で43.4%になる。
A Barossa and Caldita ガス田の持分をJERAに売却。
Santosの持分は当初の25%が62.5%になるが、この売却で50%になる。
当初 2012年 今回 ConocoPhillips 60.0 37.5 0 Santos 40.0 25.0 50.0 SK E&S - 37.5 37.5 JERA - - 12.5 合計 100 100 100
韓国のSKグループの液化天然ガス事業会社、SK E&S(旧称 SK-Enron)は2012年6月7日、Barossa and Calditaガス田の権益をConocoPhillipsと豪州Santosから取得する契約を結んだと発表した。
2012/6/29 韓国のSK、豪州ガス田開発に総額5.2億ドル投資
2020/7/9 Berkshire Hathaway、Dominion Energyの天然ガス輸送事業を買収
約7700マイルのパイプラインや、Cove Point LNG、大型の貯蔵施設等を取得する。
対価として40億ドルを現金で支払うほか、57億ドル相当の負債を引き継ぐ。
Dominionは今回の約30億ドルと見られる税引後売却利益で自社株買いを行なう。
Berkshire Hathaway Energy は発電や送配電事業などを手掛けており、今回の買収で収益源の多角化を図る。
一方、Dominionは「2050年までに二酸化炭素とメタンの純排出量をゼロにする」とし、再生可能エネルギーに投資する考えを示している。
同社では2035年に事業の70%をゼロカーボン(風力、太陽光、電池、原子力)に、残りの大半をLow
carbonの天然ガスにするとの計画を示している。
付記
Berkshire Hathawayは2021年7月13日、この買収のうち、Questar Pipelines の買収(17億ドル)をとりやめると発表した。FTCの承認を得られないと判断した。
FTCによると、Rocky Mountainの天然ガス採掘地からUtah州中央への輸送パイプラインは、Berkshireの持つKern River PipelineとDominionの Questar Pipeline の2本だけであり、買収により競争が無くなることを問題視している。.
なお、これ以外(当初計画の97億ドルのうち80億ドル)については2020年11月に完了している。
ーーー
今回の買収資産は下記の通り。
・Dominion Energy Transmission
Ohio、West Virginia、Pennsylvania、New York、Maryland、Virginia の6州をつなぐ3,900マイルのパイプラインと貯蔵設備
・Questar Pipelines
ロッキー山脈周辺
・Carolina Gas Transmission
South Carolina 州
・Iroquois Gas Transmission (50%持分)
TransCanada Pipeline とDominionの50/50JVで、米加国境からNY州を南下し、Connecticut州西部を通ってNY市のBronxまでの414マイル
・Cove Point LNG(25%持分)
Cove Point LNG はDominionが100%所有していた。
2019年12月に持分 25% をBrookfield Super-Core Infrastructure Partners に売却した。
今回、25%をBerkshire Hathaway Energy に譲渡し、残り50%をDominionが所有し続ける。Cove Point LNG については、2018/4/18 Cove Point LNGが商業運転開始
・各地の貯蔵設備等
なお、下記のDominionの資産は買収に含まれない。
1) Dominion EnergyとDuke Energy が計画していたAtlantic Coast Pipeline
Dominion Energy とDuke Energy は7月5日、本事業の中止を発表した。
環境団体などの反対が根強く、訴訟が相次いでいた。
農務省林野部は国立公園内でのパイプライン建設を許可する決定を下し たが、控訴裁判所が建設を禁止する判断を下した。これについては最高裁が6月に建設を認める判決を下した。
しかし、他にもいろいろな訴訟があり、最終的に承認されたとしても大幅に遅れることから、両社は中止を決めた。
2) Cove Point LNGの50%
3) Renewable Natural Gas (RNG) への投資
Dominionは全国の養豚、酪農業者と組み、豚や牛の排泄物から精製メタンをつくっている。
2035年までに20億ドルの投資を考えている。
2020/7/10 Sinovac Biotech、新型コロナウイルスワクチンの phase III 治験をブラジルで実施
中国の北京科興控股生物技術(Sinovac Biotech)は7月6日、開発中の新型コロナウイルス向けワクチンについて、提携しているブラジルのButantan研究所と共同で最終の phase III 臨床試験(治験)をブラジルで始めると発表した。ブラジル国家衛生監督庁(ANVISA)が7月3日にButantan研究所による治験を承認した。
ブラジルの各州の12箇所のCOVID-19担当施設にいる9,000人のヘルスケア専門家を対象に今月に実施する。
Butantan研究所はラテンアメリカで最大の免疫生物学およびバイオ医薬品の製造会社。
付記
ブラジル国家衛生監督庁(ANVISA)は11月9日、中国の北京科興控股生物技術(Sinovac Biotech)の新型コロナウイルスワクチンの臨床試験を、被験者の死亡を受け、停止すると発表した。
しかしANVISAは11月11日、第3相臨床試験(治験)再開を許可した。死因は自殺であったことが判明、ANVISAは治験中断を決定した際、被験者の死因を知らされていなかったと説明した。
ブタンタン研究所は同日から治験を再開する。
Sinovacは子会社のSinovac Life Sciences (旧称Sinovac R&D)で 不活化ワクチンを開発しており、2020年4月16日に、米国のDynavax Technologiesと提携、DynavaxのアジュバントCpG1018を適用すると発表している。
Phase T、Uは4月16日に江蘇省で開始した。合計743人にテストしたが、悪影響は出なかった。PhaseUでは、初日と14日目の2回接種し、90%以上の抗体陽転となった。PhaseUはまず大人で実施した。今後、子供と思春期のグループに実施する。
付記
Sinovacが提携するインドネシア国営製薬会社Bio Pharmの協力の下、西ジャワ州バンドンのUniversity of Padjadjaranで臨床試験を実施する。半年間で1,620人に臨床試験を実施する予定。保健省の食品医薬品監督庁も参加する。
インドネシア政府は来年1月にも実用化できるよう急いでいる。Bio Pharmaはワクチン生産の準備を3カ月前から進めており、8月に約1億回分を生産、年末までに合計2億5,000万回分を生産できるようにする。
ジョコ・ウィドド大統領はこの日の記念式典で、「来年1月には国産ワクチンを広く流通できるようにする」と述べた。「全国民がワクチンを接種できるまで、新型コロナの脅威は収まらない」とも述べている。
Sinovacはブラジル、インドネシアのほか、トルコ、バングラデシュ、チリでも臨床試験を行っている。
ーーー
WHOは5月30日、新型コロナウイルスのワクチン開発状況を発表した。臨床試験段階にあるものは次の10件で、うち中国関係が5件である。
2020/6/3 中国製ワクチン5種が第2期臨床試験段階へ
WHOは7月7日、これを更新した。
ここでは、治験に入った候補を21としている。
このなかで、PhaseVはAstraZenecaとSinovac Biotechのみ。なお他に、下記の通り、SinopharmがUAEでPhaseVを開始した。
報道によると、このほかにModernaが7月にPhaseV治験を開始する。PfizerとドイツのBioNTechのワクチン候補も早ければ7月にPhaseV治験を開始できる可能性があるとされる。
Johnson & Johnson(子会社Janssen
Pharmaceutical )が9月に実施との報道もあるが、WHO資料では、まだpre-clinical 段階である。
2020/6/18 Johnson & Johnson、新型コロナウイルスワクチンの臨床試験を7月に繰り上げ
付記 J&Jは7月16日、PhaseV治験を早ければ9月に前倒しすると発表した。
WHO 21candidate
vaccines
in clinical evaluation
–7
July
2020
Platform | Type of candidate vaccine | Developer | Current stage | |
1 | Inactivated | Inactivated + alum | Sinovac |
Phase1/2、 Phase 3 |
2 | Non-Replicating Viral Vector | ChAdOx1-S |
University of
Oxford/ AstraZeneca |
Phase 1/2、Phase2b/3、 Phase 3 |
2020/6/27 政府、新型コロナワクチン供給でAstraZenecaと協議 | ||||
3 | Non-Replicating Viral Vector | Adenovirus Type 5 Vector |
CanSino Biological
Inc./ Beijing Institute of Biotechnology |
Phase 1、Phase 2 |
2020/5/26
CanSino Biologicsのワクチン、初期治験で安全性と免疫誘導確認 ◎ Phase Vを含め、カナダで臨床試験実施 |
||||
4 | RNA | LNP-encapsulated mRNA |
Moderna/ NIAID |
Phase 1、Phase 2 |
2020/5/19
米 |
||||
5 | DNA | DNA plasmid vaccine with electroporation |
Inovio Pharmaceuticals/ International Vaccine Institute |
Phase 1/2 |
INOVIOとGeneOne Life Scienceは4月29日、DNAワクチンINO-4700(Spike糖タンパク質を標的にするDNAワクチン)の第1/2a相試験12週の中間データを発表した。 | ||||
6 | DNA | DNA plasmid vaccine | Cadila Healthcare Limited(印) | Phase 1/2 |
7 | Inactivated | Inactivated |
Wuhan Institute of
Biological
Products
/ Sinopharm |
Phase 1/2 (Phase 3 UAE) |
2020/6/26 中国医薬集団、新型コロナウイルスワクチンの第3相臨床試験をUAEで実施 | ||||
8 | Inactivated | Inactivated |
Beijing Institute of
Biological
Products / Sinopharm |
Phase 1/2 |
9 | Protein Subunit | Full length recombinant SARSCoV-2 glycoprotein nanoparticle vaccine adjuvanted with Matrix M | Novavax (USA) | Phase 1/2 |
10 | RNA | 3 LNP-mRNAs |
BioNTech/ Fosun Pharma /Pfizer |
Phase 1/2 |
2020/5/7 ファイザー、新型コロナウイルスワクチンの臨床試験を米国で開始 | ||||
11 | DNA | DNA Vaccine (GX-19) | Genexine Consortium(韓国) | Phase 1 |
12 | DNA | DNA plasmid vaccine + Adjuvant |
Osaka University/ AnGes/ Takara Bio |
Phase 1 |
2020/6/26 アンジェスのコロナワクチン、大阪市大病院で治験へ | ||||
13 | Inactivated | Inactivated |
Institute of Medical Biology,
Chinese Academy of Medical Sciences |
Phase 1 |
14 | Non-Replicating Viral Vector | Adeno-based | Gamaleya Research Institute (Russia) | Phase 1 |
15 | Protein Subunit | Native like Trimeric subunit Spike Protein vaccine |
Clover Biopharmaceuticals
Inc.(中国)/ GSK/Dynavax |
Phase 1 |
16 | Protein Subunit | Adjuvanted recombinant protein (RBD-Dimer) |
Anhui Zhifei Longcom
Biopharmaceutical/ Institute of Microbiology, Chinese Academy of Sciences |
Phase 1 |
17 | Protein Subunit | Recombinant spike protein with Advax™ adjuvant |
Vaxine Pty Ltd(豪州)/ Medytox(Korea) |
Phase 1 |
18 | RNA | LNP-nCoVsaRNA | Imperial College London | Phase 1 |
19 | RNA | mRNA | Curevac(独) | Phase 1 |
20 | RNA | mRNA |
People's Liberation Army
(PLA) Academy of Military
Sciences/ Walvax Biotech (雲南沃森生物技術) |
Phase 1 |
21 | VLP | Plant-derived VLP |
Medicago Inc./ Université Laval カナダ |
Phase 1 |
2020/7/11 朝鮮戦争の韓国軍捕虜、金正恩委員長を相手取り勝訴
朝鮮戦争(6・25戦争)当時、北朝鮮に連行され、強制労働をさせられた元韓国軍捕虜の2人が北朝鮮政府と金正恩国務委員長を相手取り、損害賠償を求めた訴訟で勝訴した。
朝鮮戦争は、1950年6月25日に金日成率いる北朝鮮が38度線を越えて韓国に侵略を仕掛けたことによって勃発した。
2人は6・25戦争に参戦した際に捕虜となり、1953年から33カ月にわたり平安南道江東郡の炭鉱で作業に従事、2001年に脱北し韓国に戻った。
2人は強制労働に対する慰謝料の支払いを求め、2016年10月にソウル中央地裁に訴えを起こした。
ソウル中央地裁は7月7日「北朝鮮と金正恩は2人にそれぞれ2100万ウォン(約190万円)ずつ賠償せよ」とする原告勝訴の判決を言い渡した。
争点は、北朝鮮政権の「法的性格」で、韓国の国内法上、北朝鮮は「政府を僭称する不法団体」であるため、行為能力を認めることができるかが争点となった。
裁判長は北朝鮮について「非法人社団」と規定し、損害賠償責任義務があると判断した。そして、「違法行為は金日成の在任中に発生したが、(金正恩委員長は)実質的かつ法律的な代表者であり違法行為者である金日成・金正日の相続者として連帯責任がある」と判断した。
文在寅政権は、強制動員被害者に対して日本企業に損害賠償を命じた判決に「司法府の判断には政府が介入できない」という基本立場をとっており、今回も介入しないと思われる。
北朝鮮側は裁判に応じておらず、判決はこのまま確定する見通し。今後、北朝鮮が反発する可能性が強い。
弁護団は、韓国の裁判所に現在まで20億ウォンほど供託されている北朝鮮向けの著作権料から賠償金を受け取る計画である。
韓国の放送局や出版社などが北朝鮮の朝鮮中央テレビの映像、出版物を使用して得た著作権料がその対象で、南北経済文化協力財団は2004年からこれらの資金を北朝鮮に送金してきたが、金剛山観光客狙撃事件の影響で著作権料の送金が禁じられ、2008年から今年5月までおよそ20億ウォンが裁判所に供託されている。
この裁判は韓国国内で金正恩委員長を相手取って行われた初の裁判で、今後同様の訴訟にも影響を与えるものと予想される。
今回の国軍捕虜訴訟をサポートした市民団体によると、身元が確認されている韓国内の国軍捕虜は合計80人になる。残りの生存者21人をはじめ、故人になった57人の国軍捕虜遺族の意思を確認した後、追加訴訟を進める。
今回の判決は韓国人拉致被害者損害賠償訴訟や、最近北朝鮮が一方的に爆破した開城工業団地内の南北共同連絡事務所に対する被害補償などにも影響を及ぼす。
米国では、2015年末から2016年初めにかけて実施された北朝鮮へのツアーに参加中に北朝鮮当局に拘束され、2017年6月に昏睡状態で帰国しその後死亡した米国人大学生Otto Warmbierの家族は金正恩委員長と北朝鮮を相手取り起こした訴訟で5億ドルの賠償判決を受けた後、各国に隠されている北朝鮮の財産を差し押さえている。
2020/7/13 ニュージーランドのアルミ精錬 NZAS、閉鎖へ
英豪資源大手Rio Tintoは7月9日、ニュージーランドにあるアルミニウム製錬のNew Zealand Aluminium Smelters (NZAS) を2021年8月をメドに閉鎖すると発表した。電気料金の上昇とアルミ価格の低迷で採算が見込めないと判断した。
New Zealand Aluminium Smelters (NZAS)はNew Zealandの南島の最南端のTiwai Pointに精錬所を持つ。現在の出資はRio Tintoが79.36%、住友化学が20.64%となっている。年産能力は313千トン。
Rio Tintoは2019年10月に、アルミ市場の低迷やエネルギーコストの高さを理由に、NZASの生産削減か、閉鎖を実施する可能性があることを明らかにした。「アルミ業界の短期および中期見通しは厳しく、この資産は不採算が続く見込みだ」と指摘、2020年第1四半期に決めるとしていた。
今回、戦略的見直しの結果、閉鎖を決めた。
電力を供給しているMeridian Energyに2021年8月の契約終了を通告した。今後、閉鎖の準備を進める。
なお、閉鎖の場合、約164百万米ドルの浄化コストがかかるとされており、New Zealand政府は同社が義務をきちんと果たすことを期待するとしている。
ーーー
1955年に豪州のWeipaでボーキサイトが発見され、1956年にこの開発のため、Commonwealth
Aluminium Corporation Pty が設立された。
1957年にBritish Aluminium Company とのJVでCommonwealth Aluminium Corporation(Comalco)となった。
(1982年にBritish Aluminium
CompanyはAlcanに買収された。)
Rio TintoはComalco株を買い進め、72.43%を取得していたが、2000年にTOBでComalcoの100%を取得した。
なお、Rio Tintoは2007年7月、カナダのアルミ大手、Alcanを買収することで合意したと発表した。買収額は381億ドル。両社のアルミ地金生産量は合計で430万トン強に達し、統合後は世界首位に躍り出る。
2007/7/17 Rio Tinto、Alcanを買収 アルミ生産で世界最大に
1965年にアルミニウムの需要が急増して国際的にも不足をきたし、内外の製錬会社はいずれも競って増産工事を進めたが、それでも需要に追い付けず、供給不足が続くものとみられた。
1967年にComalcoから昭和電工にニュージーランドでのアルミニウム製錬工場建設計画への参加の勧誘があり、昭和電工から住友化学に参加を勧めた。
これは当時ニュ−ジーランド政府が建設中であったManapouri 湖の水力発電所からの電力を利用して、Comalcoのアルミナを使用してアルミニウムの製錬を行なおうとするもので、Manapouri 湖は当時残されていた水力発電地点のうち世界でもっとも有望なものであった。
New Zealand Aluminium Smelters (NZAS) は1969年に、Comalco Ltd (50%) と日本の昭和電工(25%)、住友化学(25%) のJVとして設立された。
1971年に第1期の75千トンがスタートした。その後、第2期、第3期の増設を行い、1976年に157千トンとなった。その後の増設で能力は313千トンとなった。
その後、昭和電工が撤退し、Comalcoを買収したRio Tintoが79.36%、住友化学が20.64%となって現在に至っている。
ーーー
日本のアルミニウム精錬能力は1978年には164万トンであったが、「電気の缶詰」とも呼ばれるアルミは石油危機により深刻の度を深めた。
その結果、各社は工場閉鎖を進め、1979年には110万トン体制、1982年には70万トン体制、1986年には35万トン体制としたが、世界的なアルミニウム地金の構造的な供給過剰傾向、1985年秋以来の円高の一層の進行により、国内地金市況は低下し、長期的低迷から回復のめどが立たない状況となった。
さらに日米通商交渉の結果、地金の輸入関税(9%)が1988年から米国並みの1%と決定され、各社は撤退を決定した。
唯一残っていた日本軽金属の蒲原製造所(年産7千トン)が2014年3月31日をもって停止し、日本の工場は無くなった。
2014/3/19 日軽金、日本唯一のアルミ精錬工場を停止
日本のアルミメーカー(及び商社)は日本での増設と並行して、海外プロジェクトも推進した。
日本での製造停止後はこれらが供給ソースとなった。
今回停止するNZAS以外のアルミニウム海外事業の概要は下記の通り。
立地 | 能力 | 主体 | その他 | 参考 | |
ALBRAS (Alumínio Brasileiro S.A.) |
ブラジル | 45万トン |
Norsk Hydro 51% (当初 Rio Doce ) |
日本アマゾンアルミニウム 49% |
日本アマゾンアルミニウム 国際協力機構(JICA) 44.92%、 三井物産 12.58%、伊藤忠商事 12.12%、三井アルミニウム 8.31%、日本軽金属 7.94%、住友化学 4.59%、 YKK 2.02%、双日 1.84%、神戸製鋼所 1.84%、日産自動車 1.01%、 豊田通商 0.92%、JFE商事 0.92%、三協立山 0.92%、三井住友海上火災 0.09% |
2010/6/16 ブラジルのVale、アマゾン・アルミ事業から撤退、Norsk Hydroに譲渡 | |||||
CVG Venalum |
ベネズエラ | 43万トン |
Corporacion Venezolana
de Guayana 80% (ガイアナ開発公団) |
日本側(下記)撤退 昭和電工 7%、神戸製鋼4%、住友化学 4%、三菱マテリアル 3%、三菱アルミニウム 1%、丸紅 1% |
|
2009/6/11 ベネズエラのアルミ合弁 日本の6社撤退へ | |||||
Aluminerie Alouette | カナダ・ ケベック州 |
55万トン | Rio Tinto
40% (当初 Alcan) |
AMAG
Austria Metall 20%、 Hydro Aluminium Canada 20%、 Investissement Québec 6.67%、 丸紅 13.33% |
|
Boyne Smelters | 豪州 | 50万トン | Rio
Tinto 59.39% (当初 Comalco) |
YKK
9.50%、 UACJ Australia 9.29%、 Southern Cross Aluminium 7.71%、 Ryowa Development 5.19%、Ryowa Development II 6.46%、 住友化学 2.46% |
Ryowa Developmentは三菱商事の豪州子会社 |
Indonesia Asahan Aluminium (INALM) | インドネシア | 日本アサハンアルミニウム 58.9%→0 | インドネシア政府 41.1%→100% |
日本アサハンアルミニウム
国際協力機構(JICA) 50% |
|
2013/12/11 日本企業連合、アサハンアルミから撤退 2018/7/17 インドネシアのアサハンアルミ、銅鉱山運営のFreeport Indonesiaの株式の51%を取得 |
|||||
ALCOA - INTALCO | Ferndale, Washington | 278千トン |
Alcoa 61%→100%
|
YKK 7%→0 三井物産 32%→0 2006年売却 |
|
ALCOA - EASTALCO | Frederick, Maryland. | 195千トン | |||
Portland Aluminium Smelter | 豪州 | 345千トン | Alcoa 55% | China
International Trust Investment Corporation (CITIC) 22.5% 丸紅 22.5% |
|
Mozal Aluminium Smelter | モザンビーク | 56万トン | BHP Billiton 47.1%, |
三菱商事 25%、 Industrial Development Corp. of South Africa 24%、 Government of Mozambique 3.9% |
最近の日本のアルミ地金輸入は下記の通り。
米通商代表部(USTR)は7月10日、フランスの「Digital
Services Tax」を巡り、化粧品、ソープ、ハンドバッグの21品目、13億ドル分のフランス製品に25%の報復関税を課すと発表した。
Digital Taxに関して2国間や多国間で協議する追加の時間を確保するため、発動日は180日間先送りして2021年1月6日に設定した。
対象品目は Annex B
ーーー
フランス上院は2019年7月11日、Digital Services Tax法案を可決し、Macron 大統領は7月24日にこれに署名、これが法律となった。
米国は7月10日、フランスのDigital Services Taxによって米IT大手が打撃を受けるかどうか、通商法301条に基づいて調査すると発表した。
2019/7/31 フランスのデジタル課税法案成立、米国は報復を示唆
フランスのマクロン大統領は2019年8月26日、フランスのDigital Taxを巡り、米国と合意を得たことを明らかにした。 フランスのDigital Taxと経済協力開発機構(OECD)がまとめている課税制度に基づく税収の差額を仏政府が企業に払い戻す方針で暫定合意に達した。
しかし、
米通商代表部(USTR)は2019年12月2日、フランスが導入したDigital Services Taxが米国のIT企業を不当に差別していると断定し、24億ドル分に相当するフランスの63品目に最大100%の制裁関税を検討すると発表した。追加関税を課す対象として、スパークリングワインやチーズ、ハンドバッグなどを含む品目リストの原案をFederal Register に提示した。対象規模は米企業が被る損害に基づき算定した。
2019/12/5 米、仏デジタル税に制裁関税検討
本年初めに、OECDでDigital Taxに関する議論をしている間は、フランスはDigital Taxの導入を凍結する代わりに、米国が関税発動を棚上げする「一時休戦」で折り合った。
デジタル課税を巡る議論はOECDを中心に2020年末の最終合意をめざすが、各国の意見が折り合わず議論が難航している。
ムニューシン米財務長官は2019年12月上旬、OECDのグリア事務総長に「米国はDigital Taxに強く反対する。米企業活動に差別的な影響を及ぼす」との書簡を送付した。米国の反対で協議は難航する可能性が高い。
OECDは2020年2月13日、多国籍企業への課税に関する新しい国際ルールが適用された場合、世界の法人税収の4%に相当する年1000億ドルの税収増が見込まれるとの試算を公表した。
2020/2/18 OECD、多国籍企業課税新ルールの影響の試算発表
米通商代表部(USTR)は2020年6月2日、Digital
Services Taxを巡り、英国など10カ国・地域を調査すると発表した。不公正だと認定すれば制裁関税を含む対抗措置を検討する。
2020/6/4 米、10カ国・地域にデジタル税の対抗措置検討
そして、米通商代表部(USTR)のRobert Lighthizer代表は6月17日、下院歳入委員会の公聴会で証言し、Mnuchin米財務長官がDigital Taxを巡る国際協議からの撤退を決めたと伝えた。
2020/6/23 米、デジタル税を巡る国際協議からの撤退を示唆
今回、米国はフランスがDigital Taxを撤回しなければ報復措置に出る姿勢を明確にした。
USTRが昨年12月に提示した案は、24億ドル分に相当するフランスの63品目に最大100%の制裁関税であった。
それに対し、今回は13億ドル分のフランス製品に21品目に25%の制裁関税で、品目、金額、税率のいずれも下回っている。前回に話題となったスパークリングワインとチーズは今回は対象から外れた。
USTRでは、フランスがDigital tax で米国企業に課税する金額を考慮して課税対象額を決めたとしている。フランスの課税額より若干少ないともしている。