2020/7/8 西豪州ガス田権益、ConocoPhillipsが売却・撤退、一部をJERAが取得へ
東京電力ホールディングスと中部電力が折半出資するJERAは、オーストラリア北部沖の天然ガス田の権益を取得する。豪エネルギー大手Santosが保有する
豪北部ダーウィン沖のBarossa
and Caldita
ガス田の権益の12.5%を取得することで基本合意した。
日本経済新聞が報じた。
両社は2020年4月に本件でLOIを結んでいる。Barossa
and Calditaガス田の権益の12.5%は、年間約42万トンのLNGに相当する。
SantosはConocoPhillips と組んで(ConocoPhillips
主導で)豪州西部の石油ガス事業を行なってきた。
Barossa
and Calditaガス田は西豪州のDarwin の北方の海上にある。
この南西海上にはBayu-Undanガス田があり、このガスはDarwinに送られ、LNGにしている。
Bayu-Undan ガス田は2022年までに終掘される。
今後、Barosssa 及びCalditaガス田が開発されると、Bayu-Undanガス田の後継ガス田となり、Darwin
LNGの液化設備(約370万トン/年)、LNG輸出設備をそのまま使用できることとなる。
JERAとしては、Bayu-Undanガス田(9.2%)が終掘された後、Barossaガス田(12.5%)~
Darwin LNG(6.13%)の権益を持つことになる。
ConocoPhillips
は2019年10月13日、以下の権益をSantosに13.9億ドルで売却する契約を締結したと発表した。
なお、売却分のうちのBarossa 計画が最終決定すれば、追加で75百万ドルを受け取る。現在、政府の認可待ち。
売却する事業は以下の通り。
|
Conoco Phillips
|
他株主 |
Barossa
and Caldita Field |
37.5 % |
Santos 25%、SK
E&S 37.5% |
|
Bayu-Undan Field |
56.9% |
Santos 11.5%、INPEX
11.4%、ENI 11.0%、JERA 9.2% |
Darwin LNG |
56.9% |
Santos 11.5%、INPEX 11.4%、ENI
11.0%、JERA 6.13%、Tokyo Gas 3.07% |
Poseidon Field |
40% |
Karoon Gas |
Athena Field |
50% |
ExxonMobil 50.0% (Operator) |
ConocoPhillipsは、このほかに、Greater
Sunriseガス田に30%出資していた。他に、豪州のWoodside が33.4%、Shellが26.6%、大阪ガスが10%が出資していた。
この海域は豪州とTimor-Leste(東チモール)が争っていたが、2018年に企業を含めた交渉が開始され、決着した。
ConocoPhillipsは権益を350百万ドルでTimor-Leste
政府に譲渡し、離脱した。
更に直後にShellがTimor-Leste
政府に300百万ドルで売却した。この結果、Timor-Leste政府が56.6%、Woodside
33.4%(Operator)、大阪ガス 10% となる。
なお、ConocoPhillipsは東豪州のCoal
seam gasからのLNGメーカーのAustralia
Pacific LNGに37.5%出資している。他の出資者はOrigin Energy (37.5%), and Sinopec (25%)
で、Originがガス田の運営、ConocoPhillipsはLNG輸出設備、LNG輸出業務を担当しているが、この出資は続ける。
これについては 2013/5/3
商船三井、中国向けLNG輸送に参加
SantosはConocoPhillipsから買収する持分の一部を売却した。
①
Bayu-Undanガス田とDarwin
LNGの権益の25%を2020年3月に韓国のSK E&S
に390百万ドルで売却
Santosの持分は当初の11.5%が68.4%になるが、この売却で43.4%になる。
②
Barossa
and Caldita ガス田の持分をJERAに売却。
Santosの持分は当初の25%が62.5%になるが、この売却で50%になる。
|
当初 |
2012年 |
今回 |
ConocoPhillips |
60.0 |
37.5 |
0 |
Santos
|
40.0 |
25.0
|
50.0 |
SK E&S
|
- |
37.5
|
37.5 |
JERA |
- |
- |
12.5 |
合計 |
100 |
100 |
100 |
韓国のSKグループの液化天然ガス事業会社、SK
E&S(旧称 SK-Enron)は2012年6月7日、Barossa
and Calditaガス田の権益をConocoPhillipsと豪州Santosから取得する契約を結んだと発表した。
2012/6/29 韓国のSK、豪州ガス田開発に総額5.2億ドル投資
2020/7/9
Berkshire
Hathaway、Dominion Energyの天然ガス輸送事業を買収
著名投資家Warren
Buffettが率いる投資会社
Berkshire
Hathawayは7月5日、エネルギー事業子会社のBerkshire
Hathaway Energy が米国のDominion
Energyから天然ガス輸送・貯蔵事業を97億ドルで買収すると発表した。
約7700マイルのパイプラインや、Cove Point
LNG、大型の貯蔵施設等を取得する。
対価として40億ドルを現金で支払うほか、57億ドル相当の負債を引き継ぐ。
Dominionは今回の約30億ドルと見られる税引後売却利益で自社株買いを行なう。
Berkshire Hathaway Energy は発電や送配電事業などを手掛けており、今回の買収で収益源の多角化を図る。
一方、Dominionは「2050年までに二酸化炭素とメタンの純排出量をゼロにする」とし、再生可能エネルギーに投資する考えを示している。
同社では2035年に事業の70%をゼロカーボン(風力、太陽光、電池、原子力)に、残りの大半をLow
carbonの天然ガスにするとの計画を示している。
付記
Berkshire
Hathawayは2021年7月13日、この買収のうち、Questar Pipelines
の買収(17億ドル)をとりやめると発表した。FTCの承認を得られないと判断した。
FTCによると、Rocky
Mountainの天然ガス採掘地からUtah州中央への輸送パイプラインは、Berkshireの持つKern
River PipelineとDominionの Questar Pipeline
の2本だけであり、買収により競争が無くなることを問題視している。.
なお、これ以外(当初計画の97億ドルのうち80億ドル)については2020年11月に完了している。
ーーー
今回の買収資産は下記の通り。
・Dominion Energy Transmission
Ohio、West Virginia、Pennsylvania、New
York、Maryland、Virginia の6州をつなぐ3,900マイルのパイプラインと貯蔵設備
・Questar Pipelines
ロッキー山脈周辺
・Carolina Gas Transmission
South Carolina 州
・Iroquois Gas Transmission (50%持分)
TransCanada Pipeline
とDominionの50/50JVで、米加国境からNY州を南下し、Connecticut州西部を通ってNY市のBronxまでの414マイル
・Cove Point LNG(25%持分)
Cove Point LNG はDominionが100%所有していた。
2019年12月に持分
25% をBrookfield Super-Core Infrastructure Partners に売却した。
今回、25%をBerkshire
Hathaway Energy に譲渡し、残り50%をDominionが所有し続ける。
Cove Point LNG については、2018/4/18 Cove
Point LNGが商業運転開始
・各地の貯蔵設備等
なお、下記のDominionの資産は買収に含まれない。
1) Dominion EnergyとDuke
Energy が計画していたAtlantic Coast Pipeline
Dominion Energy とDuke Energy は7月5日、本事業の中止を発表した。
環境団体などの反対が根強く、訴訟が相次いでいた。
農務省林野部は国立公園内でのパイプライン建設を許可する決定を下し
たが、控訴裁判所が建設を禁止する判断を下した。これについては最高裁が6月に建設を認める判決を下した。
しかし、他にもいろいろな訴訟があり、最終的に承認されたとしても大幅に遅れることから、両社は中止を決めた。
2)
Cove Point LNGの50%
3) Renewable Natural Gas (RNG) への投資
Dominionは全国の養豚、酪農業者と組み、豚や牛の排泄物から精製メタンをつくっている。
2035年までに20億ドルの投資を考えている。
2020/7/10 Sinovac Biotech、新型コロナウイルスワクチンの
phase III 治験をブラジルで実施
中国の北京科興控股生物技術(Sinovac
Biotech)は7月6日、開発中の新型コロナウイルス向けワクチンについて、提携しているブラジルのButantan研究所と共同で最終の
phase III 臨床試験(治験)をブラジルで始めると発表した。ブラジル国家衛生監督庁(ANVISA)が7月3日にButantan研究所による治験を承認した。
ブラジルの各州の12箇所のCOVID-19担当施設にいる9,000人のヘルスケア専門家を対象に今月に実施する。
Butantan研究所はラテンアメリカで最大の免疫生物学およびバイオ医薬品の製造会社。
付記
ブラジル国家衛生監督庁(ANVISA)は11月9日、中国の北京科興控股生物技術(Sinovac
Biotech)の新型コロナウイルスワクチンの臨床試験を、被験者の死亡を受け、停止すると発表した。
しかしANVISAは11月11日、第3相臨床試験(治験)再開を許可した。死因は自殺であったことが判明、ANVISAは治験中断を決定した際、被験者の死因を知らされていなかったと説明した。
ブタンタン研究所は同日から治験を再開する。
Sinovacは子会社のSinovac Life Sciences (旧称Sinovac
R&D)で 不活化ワクチンを開発しており、2020年4月16日に、米国のDynavax
Technologiesと提携、DynavaxのアジュバントCpG1018を適用すると発表している。
Phase
Ⅰ、Ⅱは4月16日に江蘇省で開始した。合計743人にテストしたが、悪影響は出なかった。PhaseⅡでは、初日と14日目の2回接種し、90%以上の抗体陽転となった。PhaseⅡはまず大人で実施した。今後、子供と思春期のグループに実施する。
付記
Sinovac
のワクチンの第3相臨床試験が、インドネシアで9月11日に始まった。
Sinovacが提携するインドネシア国営製薬会社Bio
Pharmの協力の下、西ジャワ州バンドンのUniversity of Padjadjaranで臨床試験を実施する。半年間で1,620人に臨床試験を実施する予定。保健省の食品医薬品監督庁も参加する。
インドネシア政府は来年1月にも実用化できるよう急いでいる。Bio Pharmaはワクチン生産の準備を3カ月前から進めており、8月に約1億回分を生産、年末までに合計2億5,000万回分を生産できるようにする。
ジョコ・ウィドド大統領はこの日の記念式典で、「来年1月には国産ワクチンを広く流通できるようにする」と述べた。「全国民がワクチンを接種できるまで、新型コロナの脅威は収まらない」とも述べている。
Sinovacはブラジル、インドネシアのほか、トルコ、バングラデシュ、チリでも臨床試験を行っている。
ーーー
WHOは5月30日、新型コロナウイルスのワクチン開発状況を発表した。臨床試験段階にあるものは次の10件で、うち中国関係が5件である。
2020/6/3
中国製ワクチン5種が第2期臨床試験段階へ
WHOは7月7日、これを更新した。
DRAFT landscape of
COVID-19candidate
vaccines
–7July2020
ここでは、治験に入った候補を21としている。
このなかで、PhaseⅢはAstraZenecaとSinovac
Biotechのみ。なお他に、下記の通り、SinopharmがUAEでPhaseⅢを開始した。
報道によると、このほかにModernaが7月にPhaseⅢ治験を開始する。PfizerとドイツのBioNTechのワクチン候補も早ければ7月にPhaseⅢ治験を開始できる可能性があるとされる。
Johnson & Johnson(子会社Janssen
Pharmaceutical )が9月に実施との報道もあるが、WHO資料では、まだpre-clinical 段階である。
2020/6/18 Johnson
& Johnson、新型コロナウイルスワクチンの臨床試験を7月に繰り上げ
付記 J&Jは7月16日、PhaseⅢ治験を早ければ9月に前倒しすると発表した。
WHO 21candidate
vaccines
in clinical evaluation
–7
July
2020
|
Platform |
Type of
candidate
vaccine |
Developer |
Current stage |
1 |
Inactivated |
Inactivated +
alum |
Sinovac |
Phase1/2、
Phase 3 |
2 |
Non-Replicating
Viral Vector |
ChAdOx1-S |
University of
Oxford/
AstraZeneca |
Phase 1/2、Phase2b/3、
Phase 3 |
2020/6/27 政府、新型コロナワクチン供給でAstraZenecaと協議 |
3 |
Non-Replicating
Viral Vector |
Adenovirus Type
5
Vector |
CanSino Biological
Inc./
Beijing Institute of
Biotechnology |
Phase 1、Phase
2 |
2020/5/26
CanSino Biologicsのワクチン、初期治験で安全性と免疫誘導確認
◎ Phase Ⅲを含め、カナダで臨床試験実施 |
4 |
RNA |
LNP-encapsulated
mRNA |
Moderna/
NIAID |
Phase 1、Phase
2 |
2020/5/19
米Moderna、新型コロナウイルスワクチン治験で抗体確認 |
5 |
DNA |
DNA plasmid
vaccine
with
electroporation |
Inovio Pharmaceuticals/
International Vaccine
Institute |
Phase 1/2 |
INOVIOとGeneOne Life
Scienceは4月29日、DNAワクチンINO-4700(Spike糖タンパク質を標的にするDNAワクチン)の第1/2a相試験12週の中間データを発表した。 |
6 |
DNA |
DNA plasmid
vaccine |
Cadila Healthcare Limited(印) |
Phase 1/2 |
7 |
Inactivated |
Inactivated |
Wuhan Institute of
Biological
Products
/
Sinopharm |
Phase 1/2
(Phase 3 UAE) |
2020/6/26 中国医薬集団、新型コロナウイルスワクチンの第3相臨床試験をUAEで実施 |
8 |
Inactivated |
Inactivated |
Beijing Institute of
Biological
Products /
Sinopharm |
Phase 1/2 |
9 |
Protein
Subunit |
Full length
recombinant
SARSCoV-2
glycoprotein
nanoparticle
vaccine
adjuvanted with
Matrix M |
Novavax (USA) |
Phase 1/2 |
10 |
RNA |
3 LNP-mRNAs |
BioNTech/
Fosun
Pharma /Pfizer |
Phase 1/2 |
2020/5/7
ファイザー、新型コロナウイルスワクチンの臨床試験を米国で開始
|
11 |
DNA |
DNA Vaccine
(GX-19) |
Genexine Consortium(韓国) |
Phase 1 |
12 |
DNA |
DNA plasmid
vaccine +
Adjuvant |
Osaka University/
AnGes/
Takara Bio |
Phase 1 |
2020/6/26 アンジェスのコロナワクチン、大阪市大病院で治験へ |
13 |
Inactivated |
Inactivated |
Institute of Medical Biology,
Chinese Academy of
Medical Sciences |
Phase 1 |
14 |
Non-Replicating
Viral Vector |
Adeno-based |
Gamaleya Research
Institute (Russia) |
Phase 1 |
15 |
Protein
Subunit |
Native like
Trimeric
subunit
Spike Protein
vaccine |
Clover Biopharmaceuticals
Inc.(中国)/
GSK/Dynavax |
Phase 1 |
16 |
Protein
Subunit |
Adjuvanted
recombinant
protein (RBD-Dimer) |
Anhui Zhifei Longcom
Biopharmaceutical/
Institute of Microbiology,
Chinese Academy of
Sciences |
Phase 1 |
17 |
Protein
Subunit |
Recombinant
spike protein
with Advax™
adjuvant |
Vaxine Pty Ltd(豪州)/
Medytox(Korea) |
Phase 1 |
18 |
RNA |
LNP-nCoVsaRNA |
Imperial College London |
Phase 1 |
19 |
RNA |
mRNA |
Curevac(独) |
Phase 1 |
20 |
RNA |
mRNA |
People's Liberation Army
(PLA) Academy of Military
Sciences/
Walvax Biotech (雲南沃森生物技術) |
Phase 1 |
21 |
VLP |
Plant-derived
VLP |
Medicago Inc./
Université
Laval カナダ |
Phase 1 |
2020/7/11 朝鮮戦争の韓国軍捕虜、金正恩委員長を相手取り勝訴
朝鮮戦争(6・25戦争)当時、北朝鮮に連行され、強制労働をさせられた元韓国軍捕虜の2人が北朝鮮政府と金正恩国務委員長を相手取り、損害賠償を求めた訴訟で勝訴した。
朝鮮戦争は、1950年6月25日に金日成率いる北朝鮮が38度線を越えて韓国に侵略を仕掛けたことによって勃発した。
2人は6・25戦争に参戦した際に捕虜となり、1953年から33カ月にわたり平安南道江東郡の炭鉱で作業に従事、2001年に脱北し韓国に戻った。
2人は強制労働に対する慰謝料の支払いを求め、2016年10月にソウル中央地裁に訴えを起こした。
ソウル中央地裁は7月7日「北朝鮮と金正恩は2人にそれぞれ2100万ウォン(約190万円)ずつ賠償せよ」とする原告勝訴の判決を言い渡した。
争点は、北朝鮮政権の「法的性格」で、韓国の国内法上、北朝鮮は「政府を僭称する不法団体」であるため、行為能力を認めることができるかが争点となった。
裁判長は北朝鮮について「非法人社団」と規定し、損害賠償責任義務があると判断した。そして、「違法行為は金日成の在任中に発生したが、(金正恩委員長は)実質的かつ法律的な代表者であり違法行為者である金日成・金正日の相続者として連帯責任がある」と判断した。
文在寅政権は、強制動員被害者に対して日本企業に損害賠償を命じた判決に「司法府の判断には政府が介入できない」という基本立場をとっており、今回も介入しないと思われる。
北朝鮮側は裁判に応じておらず、判決はこのまま確定する見通し。今後、北朝鮮が反発する可能性が強い。
弁護団は、韓国の裁判所に現在まで20億ウォンほど供託されている北朝鮮向けの著作権料から賠償金を受け取る計画である。
韓国の放送局や出版社などが北朝鮮の朝鮮中央テレビの映像、出版物を使用して得た著作権料がその対象で、南北経済文化協力財団は2004年からこれらの資金を北朝鮮に送金してきたが、金剛山観光客狙撃事件の影響で著作権料の送金が禁じられ、2008年から今年5月までおよそ20億ウォンが裁判所に供託されている。
この裁判は韓国国内で金正恩委員長を相手取って行われた初の裁判で、今後同様の訴訟にも影響を与えるものと予想される。
今回の国軍捕虜訴訟をサポートした市民団体によると、身元が確認されている韓国内の国軍捕虜は合計80人になる。残りの生存者21人をはじめ、故人になった57人の国軍捕虜遺族の意思を確認した後、追加訴訟を進める。
今回の判決は韓国人拉致被害者損害賠償訴訟や、最近北朝鮮が一方的に爆破した開城工業団地内の南北共同連絡事務所に対する被害補償などにも影響を及ぼす。
米国では、2015年末から2016年初めにかけて実施された北朝鮮へのツアーに参加中に北朝鮮当局に拘束され、2017年6月に昏睡状態で帰国しその後死亡した米国人大学生Otto
Warmbierの家族は金正恩委員長と北朝鮮を相手取り起こした訴訟で5億ドルの賠償判決を受けた後、各国に隠されている北朝鮮の財産を差し押さえている。
2020/7/13 ニュージーランドのアルミ精錬 NZAS、閉鎖へ
英豪資源大手Rio Tintoは7月9日、ニュージーランドにあるアルミニウム製錬のNew
Zealand Aluminium Smelters (NZAS) を2021年8月をメドに閉鎖すると発表した。電気料金の上昇とアルミ価格の低迷で採算が見込めないと判断した。
New Zealand Aluminium Smelters (NZAS)はNew
Zealandの南島の最南端のTiwai Pointに精錬所を持つ。現在の出資はRio
Tintoが79.36%、住友化学が20.64%となっている。年産能力は313千トン。
Rio
Tintoは2019年10月に、アルミ市場の低迷やエネルギーコストの高さを理由に、NZASの生産削減か、閉鎖を実施する可能性があることを明らかにした。「アルミ業界の短期および中期見通しは厳しく、この資産は不採算が続く見込みだ」と指摘、2020年第1四半期に決めるとしていた。
今回、戦略的見直しの結果、閉鎖を決めた。
電力を供給しているMeridian
Energyに2021年8月の契約終了を通告した。今後、閉鎖の準備を進める。
なお、閉鎖の場合、約164百万米ドルの浄化コストがかかるとされており、New
Zealand政府は同社が義務をきちんと果たすことを期待するとしている。
ーーー
1955年に豪州のWeipaでボーキサイトが発見され、1956年にこの開発のため、Commonwealth
Aluminium Corporation Pty が設立された。
1957年にBritish Aluminium Company とのJVでCommonwealth Aluminium Corporation(Comalco)となった。
(1982年にBritish Aluminium
CompanyはAlcanに買収された。)
Rio TintoはComalco株を買い進め、72.43%を取得していたが、2000年にTOBでComalcoの100%を取得した。
なお、Rio Tintoは2007年7月、カナダのアルミ大手、Alcanを買収することで合意したと発表した。買収額は381億ドル。両社のアルミ地金生産量は合計で430万トン強に達し、統合後は世界首位に躍り出る。
2007/7/17 Rio
Tinto、Alcanを買収 アルミ生産で世界最大に
1965年にアルミニウムの需要が急増して国際的にも不足をきたし、内外の製錬会社はいずれも競って増産工事を進めたが、それでも需要に追い付けず、供給不足が続くものとみられた。
1967年にComalcoから昭和電工にニュージーランドでのアルミニウム製錬工場建設計画への参加の勧誘があり、昭和電工から住友化学に参加を勧めた。
これは当時ニュ-ジーランド政府が建設中であったManapouri
湖の水力発電所からの電力を利用して、Comalcoのアルミナを使用してアルミニウムの製錬を行なおうとするもので、Manapouri
湖は当時残されていた水力発電地点のうち世界でもっとも有望なものであった。
New Zealand Aluminium Smelters (NZAS)
は1969年に、Comalco Ltd (50%) と日本の昭和電工(25%)、住友化学(25%) のJVとして設立された。
1971年に第1期の75千トンがスタートした。その後、第2期、第3期の増設を行い、1976年に157千トンとなった。その後の増設で能力は313千トンとなった。
その後、昭和電工が撤退し、Comalcoを買収したRio
Tintoが79.36%、住友化学が20.64%となって現在に至っている。
ーーー
日本のアルミニウム精錬能力は1978年には164万トンであったが、「電気の缶詰」とも呼ばれるアルミは石油危機により深刻の度を深めた。
その結果、各社は工場閉鎖を進め、1979年には110万トン体制、1982年には70万トン体制、1986年には35万トン体制としたが、世界的なアルミニウム地金の構造的な供給過剰傾向、1985年秋以来の円高の一層の進行により、国内地金市況は低下し、長期的低迷から回復のめどが立たない状況となった。
さらに日米通商交渉の結果、地金の輸入関税(9%)が1988年から米国並みの1%と決定され、各社は撤退を決定した。
唯一残っていた日本軽金属の蒲原製造所(年産7千トン)が2014年3月31日をもって停止し、日本の工場は無くなった。
2014/3/19 日軽金、日本唯一のアルミ精錬工場を停止
日本のアルミメーカー(及び商社)は日本での増設と並行して、海外プロジェクトも推進した。
日本での製造停止後はこれらが供給ソースとなった。
今回停止するNZAS以外のアルミニウム海外事業の概要は下記の通り。
|
立地 |
能力 |
主体 |
その他 |
参考 |
ALBRAS
(Alumínio Brasileiro S.A.) |
ブラジル |
45万トン |
Norsk Hydro 51%
(当初 Rio Doce ) |
日本アマゾンアルミニウム 49% |
日本アマゾンアルミニウム
国際協力機構(JICA) 44.92%、
三井物産 12.58%、伊藤忠商事 12.12%、三井アルミニウム 8.31%、日本軽金属 7.94%、住友化学 4.59%、
YKK 2.02%、双日 1.84%、神戸製鋼所 1.84%、日産自動車 1.01%、
豊田通商 0.92%、JFE商事 0.92%、三協立山 0.92%、三井住友海上火災 0.09% |
2010/6/16
ブラジルのVale、アマゾン・アルミ事業から撤退、Norsk Hydroに譲渡 |
CVG Venalum
|
ベネズエラ |
43万トン |
Corporacion Venezolana
de Guayana 80%
(ガイアナ開発公団) |
日本側(下記)撤退
昭和電工
7%、神戸製鋼4%、住友化学 4%、三菱マテリアル 3%、三菱アルミニウム 1%、丸紅 1% |
|
2009/6/11 ベネズエラのアルミ合弁 日本の6社撤退へ |
Aluminerie
Alouette |
カナダ・
ケベック州 |
55万トン |
Rio Tinto
40%
(当初 Alcan) |
AMAG
Austria Metall 20%、
Hydro Aluminium Canada 20%、
Investissement Québec 6.67%、
丸紅 13.33%
|
|
Boyne
Smelters |
豪州 |
50万トン |
Rio
Tinto 59.39%
(当初 Comalco) |
YKK
9.50%、
UACJ Australia 9.29%、
Southern Cross Aluminium 7.71%、
Ryowa Development 5.19%、Ryowa Development II
6.46%、
住友化学 2.46% |
Ryowa
Developmentは三菱商事の豪州子会社 |
Indonesia Asahan Aluminium (INALM) |
インドネシア |
|
日本アサハンアルミニウム 58.9%→0 |
インドネシア政府
41.1%→100% |
日本アサハンアルミニウム
国際協力機構(JICA) 50%
旧精錬5社(住友化学、昭和電工、日本軽金属、三菱化学、三井アルミ)各7.5%、計37.5%
7商社 合計12.5% |
2013/12/11 日本企業連合、アサハンアルミから撤退
2018/7/17 インドネシアのアサハンアルミ、銅鉱山運営のFreeport
Indonesiaの株式の51%を取得
|
ALCOA
- INTALCO |
Ferndale,
Washington |
278千トン |
Alcoa 61%→100% |
YKK 7%→0
三井物産 32%→02006年売却 |
|
ALCOA
- EASTALCO |
Frederick,
Maryland. |
195千トン |
Portland Aluminium Smelter |
豪州 |
345千トン |
Alcoa
55% |
China
International Trust Investment Corporation (CITIC) 22.5%
丸紅 22.5% |
|
Mozal Aluminium Smelter |
モザンビーク |
56万トン |
BHP
Billiton 47.1%, |
三菱商事 25%、
Industrial Development Corp. of South Africa 24%、
Government of Mozambique 3.9% |
|
最近の日本のアルミ地金輸入は下記の通り。
2020/7/14 米国、フランスのデジタル課税に報復関税
米通商代表部(USTR)は7月10日、フランスの「Digital
Services Tax」を巡り、化粧品、ソープ、ハンドバッグの21品目、13億ドル分のフランス製品に25%の報復関税を課すと発表した。
Digital Taxに関して2国間や多国間で協議する追加の時間を確保するため、発動日は180日間先送りして2021年1月6日に設定した。
https://ustr.gov/sites/default/files/enforcement/301Investigations/France_Digital_Services_Tax_Notice_July_2020.pdf
対象品目は
Annex B
ーーー
フランス上院は2019年7月11日、Digital Services Tax法案を可決し、Macron
大統領は7月24日にこれに署名、これが法律となった。
米国は7月10日、フランスのDigital
Services Taxによって米IT大手が打撃を受けるかどうか、通商法301条に基づいて調査すると発表した。
2019/7/31
フランスのデジタル課税法案成立、米国は報復を示唆
フランスのマクロン大統領は2019年8月26日、フランスのDigital
Taxを巡り、米国と合意を得たことを明らかにした。 フランスのDigital
Taxと経済協力開発機構(OECD)がまとめている課税制度に基づく税収の差額を仏政府が企業に払い戻す方針で暫定合意に達した。
しかし、米通商代表部(USTR)は2019年12月2日、フランスが導入したDigital
Services Taxが米国のIT企業を不当に差別していると断定し、24億ドル分に相当するフランスの63品目に最大100%の制裁関税を検討すると発表した。
追加関税を課す対象として、スパークリングワインやチーズ、ハンドバッグなどを含む品目リストの原案をFederal Register
に提示した。対象規模は米企業が被る損害に基づき算定した。
2019/12/5 米、仏デジタル税に制裁関税検討
本年初めに、OECDでDigital
Taxに関する議論をしている間は、フランスはDigital
Taxの導入を凍結する代わりに、米国が関税発動を棚上げする「一時休戦」で折り合った。
デジタル課税を巡る議論はOECDを中心に2020年末の最終合意をめざすが、各国の意見が折り合わず議論が難航している。
ムニューシン米財務長官は2019年12月上旬、OECDのグリア事務総長に「米国はDigital
Taxに強く反対する。米企業活動に差別的な影響を及ぼす」との書簡を送付した。米国の反対で協議は難航する可能性が高い。
OECDは2020年2月13日、多国籍企業への課税に関する新しい国際ルールが適用された場合、世界の法人税収の4%に相当する年1000億ドルの税収増が見込まれるとの試算を公表した。
2020/2/18 OECD、多国籍企業課税新ルールの影響の試算発表
米通商代表部(USTR)は2020年6月2日、Digital
Services Taxを巡り、英国など10カ国・地域を調査すると発表した。不公正だと認定すれば制裁関税を含む対抗措置を検討する。
2020/6/4 米、10カ国・地域にデジタル税の対抗措置検討
そして、米通商代表部(USTR)のRobert Lighthizer代表は6月17日、下院歳入委員会の公聴会で証言し、Mnuchin米財務長官がDigital
Taxを巡る国際協議からの撤退を決めたと伝えた。
2020/6/23
米、デジタル税を巡る国際協議からの撤退を示唆
今回、米国はフランスがDigital
Taxを撤回しなければ報復措置に出る姿勢を明確にした。
USTRが昨年12月に提示した案は、24億ドル分に相当するフランスの63品目に最大100%の制裁関税であった。
それに対し、今回は13億ドル分のフランス製品に21品目に25%の制裁関税で、品目、金額、税率のいずれも下回っている。前回に話題となったスパークリングワインとチーズは今回は対象から外れた。
USTRでは、フランスがDigital tax
で米国企業に課税する金額を考慮して課税対象額を決めたとしている。フランスの課税額より若干少ないともしている。
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