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これは下記のブログを月ごとにまとめたものです。

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2022/3/1 米最高裁判事に黒人女性を指名

バイデン大統領は1月27日、米最高裁のStephen Breyer 判事(83歳)の引退を発表、後任の候補者を2月中に指名するとした。


バイデン大統領は2月25日、連邦最高裁判事に首都ワシントンの連邦高裁判事(Judge on the U.S. Court of Appeals for the D.C. Circuit) のKetanji Brown Jackson(51歳) を指名した。上院で承認されれば、黒人女性として初めての最高裁判事となる。

最高裁判事の保守派、リベラル派の比率は変わらない。

  保守派 Swing リベラル派
以前  保守系中道 のKennedyがswing 4 ← 1 → 4
2016 Scalia 判事死去 3 ← 1 → 4
2017 Gorsuch 就任 4 ← 1 → 4
2018 Kennedy 引退、Kavanaugh指名 5 4
2020 Ginsburg 死去 5 3
Amy Coney Barrett 6   3

 

  性別 born 人種背景

指名した大統領

就任日 判断傾向
Clarence Thomas 男性 1948/6 アフリカ系 George H. W. Bush 1991年10月23日 保守
Stephen Breyer 男性 1938/8 ユダヤ系 Bill Clinton 1994年8月3日 リベラル
John Roberts  (Chief) 男性 1955/1 白人系 George W. Bush 2005年9月29日 保守
Samuel Alito 男性 1950/4 イタリア系 2006年1月31日 保守
Sonia Sotomayor 女性 1954/6 ラテン系 Barack Obama 2009年8月8日 リベラル
Elena Kagan 女性 1960/4 ユダヤ系 2010年8月7日 リベラル
Neil Gorsuch 男性 1967/8 白人系 Donald Trump 2017年4月10日 保守
Brett Kavanaugh 男性 1965/2 白人系 2018年10月6日 保守
Amy Coney Barrett 女性 1972/1 白人系 2020年10月26日 保守
             
Ketanji Brown Jackson 女性 1970/9 アフリカ系 Joe Biden   リベラル



今後上院での承認が必要だが、大きな問題がある。

上院司法委員会で聴聞会を経て上院への人事案送付を議決し、上院本会議で採決するが、司法委員会が民主、共和両党議席が11対11、上院は50対50で拮抗している。

司法委員会の議決が同数の場合は、上院運営規則で本会議が決定を代行することができるとが、その本会議も民主、共和議席が同数である。

通常、過半数での議決では、可否同数の場合、上院議長を兼ねる副大統領の票で決まるが、上院の「助言と承認」に関しては副大統領に投票の権限がないという説がある。

合衆国憲法の実質的な起草者のアレクサンダー・ハミルトンは、合衆国憲法の理解を深めるために1788年に出版した冊子「ザ・フェデラリスト」の69編で、「副大統領は上院で法案をめぐる採決で決定票を投ずる権限があるが、上院の“助言と承認”に関わる問題にまで合衆国憲法はその権限を与えてはない」と記している。

行政府に対する“助言や承認”に行政府の副大統領が最終的な決定権を持つことはできないというもの。

これまでは50:50の例がなく、実際にどうするかは分からない。民主党側は50:50にならないよう、共和党議員の取り込みを図るとみられる。

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バイデン大統領は2021年3月30日、連邦裁判事に指名する11人を発表した。アフリカ系女性とアジア系の他、初めてイスラム教徒も指名された。白人は2人(女性)だけである。

アフリカ系女性3人を連邦控訴裁判事に指名した。このうち 今回のKetanji Brown Jackson判事がアフリカ系女性として初めて、重大事件を扱う首都ワシントンのコロンビア特別区巡回区連邦控訴裁判所の判事に指名された。

連邦地裁判事にはアフリカ系2人、アジア系2人、ヒスパニック系1人、白人女性2人、パキスタン系1人を指名した。

パキスタン系のZahid Quraishi判事はイスラム教徒としては初の連邦地裁判事になった。


2022/3/1    BP、ロシアから事実上撤退、ロスネフチ株売却へ  

英BPは2月27日、ロシアのRosneftの持株19.75%全てを売却すると発表した。BP側が出している2人の取締役、BP のCEOのBernard Looney と元CEOのBob Dudleyは直ちに辞任する。

Rosneftと手掛けてきたロシア国内での合弁事業も全て解消 し、ロシアから事実上撤退する。

BPの財務に最大250億ドル(約2兆8900億円)の打撃となる可能性がある。

Helge Lund会長は発表文で「今回の軍事行動は根本的な変化をもたらした」とし、「BP取締役会は徹底的なプロセスを経た末、国有企業であるロスネフチとの関係は断じて継続できないとの結論に達した」と説明した。

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BPは当初、ロシアの投資家グループAlfa-Access-Renova(AAR) との合弁で石油会社TNK-BPを運営していた。

露石油最大手 Rosneftは2012年10月22日、TNK-BPを、BP、AAR 双方から合計550億ドルで買収することを明らかにした。

BPはJVの50%を譲渡し、現金171億ドルとRosneftの株式 12.84% を取得する。
BPは同時に、ロシア政府からRosneft株式 5.66%を48億ドルで買収する。(BPはネットで123億ドルを受け取ることとなる。)

BPは既にRosneft株式 1.25%を保有しており、この取引で合計19.75%を保有することとなり、Rosneftの取締役会に2人の取締役を出す。

Rosneftにはロシア政府が75%出資し、残りは上場している。

BPは2013年3月21日、本取引を完了した。

2012/10/24 ロシアのRosneft、TNK-BPを買収

 

2014年にクリミヤ・ウクライナ紛争が起こった。

しかし、当時のBPのBill Dudley CEOは、「Rosneftが制裁対象ではない。ロシアの事業には影響はない」と語った。

BPとRosneftは5月24日、ボルガ・ウラル地域のドマニク累層のシェール鉱区などの開発を推進する覚書を締結した。

BPは6月27日にはRosneft から1200万トンの精製石油製品を購入する5年契約を締結した。

Dudley CEO は2014年11月、ロシアでの投資を継続する方針を示すとともに、Rosneftの持株(保有比率 19.75%)を売却する計画がないことを明らかにした。

2014/7/3   BP、ロシア制裁開始後にRosneft との関係を強化

 

BPとRosneft は2015年6月19日、両社の長期的な戦略提携を強化する数件の契約に調印した。

東シベリアの最大の油田の一つで、現在日量2万バレルを生産するSrednebotuobinskoye 油田・ガスコンデンセート田の開発権を有するTaas-Yuryakh Neftegazodobycha (Taas)の20%をRosneftから取得し、新しいJVを設立した。

これに加え、両社は西シベリアとYenisey-Khatanga 盆地の26万平方kmに及ぶ地域を共同で開発することで合意した。

各国によるロシア制裁で各社とロシアの石油事業での提携が停滞するなか、BPは提携強化を進めた

2015/6/23 BPとロスネフチ、長期戦略関係を強化 


BPの2021年12月期の決算でRosneft 事業は税引き・利払い前利益の2割弱を稼ぎ出した。

今回、ロシアは2月24日にウクライナに対する軍事侵攻に踏み切ったが、BPのBernard Looney CEOは2月14日の時点では、ロシアで手掛けている石油・ガス事業について、同国と西側の緊張の高まりによる影響を受けていないとし、引き続き事業を手掛ける方針を表明した。但し、西側がロシアに制裁を発動すれば、BPとして順守すると付け加えた。 

ロシアの軍事侵攻を受け、英国の民間企業・エネルギー・産業戦略相は2月25日、BPのBernard Looney CEOを呼び、ロシア事業について聴取した。複数の英メディアが報じた。ウクライナに軍事侵攻したロシアに国際社会が経済制裁を強めるなか、同国での事業展開に懸念を伝えたとされる。


2022/3/1 Shell、サハリン2から撤退 

Shellは2月28日、主要な液化天然ガスプラントを含むロシアの全事業から撤退すると発表した。

サハリン沖の石油・天然ガス開発プロジェクト「サハリン2」からも手を引き、「ノルドストリーム2」への関与も終了する。

サハリン2のLNG年産能力は約1000万トンで、うち5割をJERAや東京ガスなど日本の電力・ガス会社8社が長期契約で調達している。

三井物産と三菱商事の対応が焦点となる。

ロシアからの撤退により減損が発生する見込みで、ロシアの事業に関連する非流動性の保有資産は2021年末で約30億ドルという。

付記

Shellは3月8日、ロシア事業を全面的に終了すると発表した。

ロシアからの原油のスポット購入をやめ、石油製品や天然ガスなどあらゆる資源の調達を段階的に終える。ロシア国内での石油製品の販売も終える。

付記

プーチン大統領は6月30日、「サハリン2」の運営をロシア側が新たに設立する法人に移管し、現在の運営会社の資産を無償譲渡するよう命じる大統領令に署名した。

新たな運営主体としてロシア側が設立する有限法人を指定。三井物産や三菱商事が出資する現在の運用主体であるサハリンエナジーから、すべての資産や従業員、権利関係を引き継がせる。

サハリンエナジーの外国株主は新しい有限法人の株主として参加できるが、ロシア当局から提示された条件に同意することが前提で、条件をのめなければ、日本の商社はサハリン2への関与を失うことになる。

付記

三菱商事は8月25日、ロシア極東の資源開発事業「サハリン2」の新たな運営会社に参画する通知を出す方針を決めた。ロシアは8月にサハリン2の運営を新会社に移管し、三井物産と三菱商事に出資を続けるかどうか判断を迫っていた。

三井物産も参画の意向を通知する方針を決めている。

両社ともロシア側の動向を精査しつつ、月内にも意向を伝える見通し。

付記

シア政府、8月26日の政令で、サハリン2新運営会社が三井物産の子会社に12.5%の株を譲渡することを承認 。三菱商事についても10%の株の譲渡を承認

Shell (27.5%) は9月1日、新運営会社に出資しない方針を通知した。

ロシアのエネルギー相は9月7日、Novatekが参加する見通しを示した。Shell分を引き継ぐ可能性。

 

サハリン2プロジェクト

事業主体 Shell 55%→27.5%-1株
Gazprom 0%→50%+1株
・三井物産 25%
12.5%
・三菱商事 20%
10%
投 資 額 200億ドル
開発鉱区 ピルトン・アストフスコエ、ルンスコエ
推定可採
埋蔵量
@原油 10億バレル
A天然ガス 4,080億立方メートル

<石油>プリゴロドノエまでパイプラインで運搬後、新設港湾よりタンカーで日本等へ輸出
<ガス>プリゴロドノエまでパイプラインで運搬、液化後、LNGをタンカーで輸出
 


2007/1/9 サハリン2計画 再スタートとその背景

サハリン2計画の概要については、2006/6/6 「新・国家エネルギー戦略」発表 のサハリン計画の項を参照。

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付記 

ExxonMobil は3月1日、Sakhalin-1事業から撤退すると発表した。
現状に鑑み、ロシアでの新規開発は行わないとしている。 

サハリン1,2のいずれにも日本が参加しており、どうするかが注目されている。仮に撤退となれば日本のエネルギーへの影響は極めて大きい。

付記

プーチン大統領は10月7日、Sakhalin-1について、新たに設立する会社に事業を移管する大統領令に署名した。撤退方針を表明している米エクソンモービルら既存株主に圧力をかける狙いとみられる。

 

サハリン1プロジェクト

事業主体 ・エクソンネフテガス社
 (米、エクソン・モービル子会社、オペレーター、30%)
・サハリン石油ガス開発(株)(通称:SODECO)
 (日、石油公団・伊藤忠・丸紅等 出資30%)
・ONGCヴィデッシュ社(インド、20%)
・サハリンモルネフテガス・シェルフ社(ロシア、11.5%)
・ロスネフチ・アストラ社(ロシア 8.5%)
投 資 額 約120億ドル以上
開発鉱区 オドプト、チャイヴォ、アルクトン・ダギ
推定可採
埋 蔵 量
@石油    約23億バレル
A天然ガス 約4,850億立方メートル

原油:パイプラインで大陸のDe-Kastri に輸送し、輸出
ガス:当初、日本までのパイプラインで輸送する計画:漁業補償問題、東京電力の反対で取り止め
   サハリン2に売り、LNGにする交渉をしたが、価格で折り合わず、取り止め
   現状は、
ほとんどは原油回収率向上のため油層圧入、一部を近くの既存パイプラインSKV:サハリン〜ハバロフスク〜ウラジオ天然ガスパイプライン)ハバロスクなどで国内販売
   

   2019年に
大陸のDe-Kastri 港湾620 万トンの自前の LNG 設備を建設することに決めたと報じられた。

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ノルドストリーム2

2015年9月にShareholders’ Agreementが調印された。

  Nord Stream -1 Nord Stream -2
Gazprom 51.0% 51.0%
E.ON 15.5% 10.0%
Wintershall(BASF子会社) 15.5% 10.0%
Nederlandse Gasunie 9.0%
GDF SUEZ 9.0%
Shell 10.0%
OMV 10.0%
ENGIE   仏電気・ガス事業者 9.0%

2015/7/1  Nord Stream 倍増計画

 

付記

その他のShellとGazpromのJVは次の通り。

Salym Petroleum Development N.V.  Shell 50%、Gazprom Neft 50%

 西シベリア Khanty Mansiysk Autonomous District

Gydan         Shell 50%、Gazprom Neft 50%

        北西シベリアのGydan 半島で開発を計画中

 


2022/3/2 東芝、綱川社長が退任 

東芝は3月1日、同日付での代表執行役の異動を発表した。

2人しかいない社内取締役が社長、副社長を退任し、新たに社内から3人の代表執行役(いずれも取締役ではない)を選任した。

但し、3人の選任は暫定とされており、本年6月開催予定の定時株主総会に付議する取締役候補者の選任案については追って決定するとしている。

ーーー

2021年4月14日付で当時の車谷社長兼CEOがで辞任し、前任社長の綱川智会長が社長に復帰した。

2021年6月25日の定時株主総会で、下記の取締役が選任された。

 智 取締役会議長、代表執行役社長 CEO  
Paul J. Brought 社外取締役 元 KPMG
Ayako Weissman 社外取締役 元 投資会社
Jerry Black 社外取締役 イオン顧問
George Zage V 社外取締役 元 投資銀行
畑澤 守 代表執行役副社長  
綿引 万里子 社外取締役 元 裁判官
橋本 勝則 社外取締役 元 デュポン

2021/6/26 東芝、株主総会 

その後、社長は企業価値向上を求める「物言う株主」との対話を重視するとともに、後任社長の選定を進めていた。

しかし、「物言う株主」との交渉に基づき、企業価値を高めようと打ち出した「会社を3つに分割する」という方針は反対が強く、本年2月に半導体などのデバイス事業だけを分離して2分割とすると発表したが、これについても反対が多い。

今後、再編策をさらに見直す可能性もある。

今回の異動は次の通り。

  従来 2022/3/1付
 智 取締役会議長、代表執行役社長 CEO 取締役会議長(暫定)及び取締役
畑澤 守 代表執行役副社長 取締役
島田太郎 執行役上席常務 (暫定)代表執行役社長 CEO
柳瀬悟郎 東芝エレベータ社長 (暫定)代表執行役副社長 COO
佐藤 裕之 デバイス&ストレージ所管 (暫定)代表執行役専務

 3人は代表権を持つが、取締役ではない。

島田新社長は、会社全体を2つに分割する改革案について「予定通り進捗する」としつつ、「全てのステークホルダーの意見を受け止め、全てのオプションを検討したい」と述べた。


2022/3/3 カナダのStandard Lithium、米国で新方式によるリチウムの商業生産へ

カナダのStandard Lithiumと独 Lanxess Corporationは米Arkansas州El DoradoのLanxessの工場に隣接して建設する最初のリチウム商業生産計画をまとめた。2月24日に発表した。

Standard Lithiumはリチウムの直接抽出技術(LiSTR:Direct Lithium Extraction Technology) を開発した。リチウムリッチのかん水からリチウムを直接抽出するもの。

米国のアーカンソー州を中心にテキサス州南部からフロリダ州西部まで約1,000マイルに及ぶSmackover formationという地層がある。ジュラ紀に多孔質石灰岩帯水層に閉じ込められた有機化石堆積物と濃縮かん水で構成されており、かん水にはリチウムが含まれている。

Standard Lithiumはアーカンソー州El Doradoで臭素を生産する独 Lanxessと提携した。臭素工場群で副生される残渣のかん水から、環境に配慮したLiSTR技術でリチウムを抽出する。

2020年9月に最初の工場で生産を開始した。

今回、商業生産の計画をまとめた。

Lanxessのプラント内に建設するが、建設はStandard Lithiumがコントロールする。技術はすべて同社が確保し、同社が最低51%を出資する。当初は同社が100%出資し、Lanxessの出資は今後決定する。

Lanxessは土地をリースし、かん水を供給、インフラやその他サービスを提供する。

Lanxessは製品の一部又は全てを「市場価格マイナスα 」(追って決めるが最大20%)で購入する権利を持つ。

また、第二、第三工場をJVベースで建設すること、Lanxessがこれらからの製品を別途決める価格で購入する権利を持つことも決めた。

 

Standard Lithumは別途、El Dorado の西のMagnolia近郊でのSouth West Arkansas Lithium Project(30,000t/y)を検討している。

また、カリフォルニア州の Mojave 砂漠で土地をリースすることも検討している。


2022/3/4    EU、ロシア7銀行をSWIFTから排除

欧州連合(EU)は3月2日、ロシアへの追加の経済制裁として同国2位のVTBバンクなど大手7行を国際的な資金決済網「国際銀行間通信協会(SWIFT)」から排除することで合意した。

2022/2/28  ロシア追加制裁、国際決済網から排除

制裁は10日以内に発動される。

SWIFTから排除される7行の総資産は外銀を含む全体の2〜3割とされる。欧州委は、ロシアの行動次第では「制裁リストにロシアの銀行を追加する用意がある」としている。

ロシア最大手のSberbank PJSCと、ガス大手Gazpromが出資するGazprombank は含まれていない。
これらを除外すれば石油、天然ガスなどの取引が出来なくなり、欧州経済への影響が大きいことを判断したとみられる。
当初から、エネルギー関連については対象外にするという考えが出ていると報道されていた。
米国もGazprombankについては新規借り入れを禁止するということに止まっている。(欧州にSWIFT排除をやらせるための配慮とされる。)

SberbankはSWIFT排除からは外れたが、米国はSberbankに対し金融遮断しており、ドル取引ができない。

なお、Sberbankは3月2日、欧州市場から撤退すると発表した。預金流出で事業継続が困難と判断した、
 

別途、各国も独自の制裁を行っている。

日本は当初、下位3社のみであったが、3月3日に4銀行を追加した。

  順位 SWIFT 米国 EU 英国 日本
Sberbank PJSC  1 対象外 金融遮断 * 対象外 資産凍結 対象外
VTB Bank PJSC 
貿易決済を担う国営銀行
2 SWIFT除外 取引停止 資産凍結
(追加)
Gazprombank  
(Gazpromが投資)
3 対象外 取引制限 対象外
Bank Otkritie   SWIFT除外 取引停止 取引停止 資産凍結
(追加)
Novikombank   対象外
Sovcombank PJSC  
Bank Rossiya   取引停止 資産凍結
VEB.RF
国営開発対外経済銀行 
  (第一弾)

取引停止
Promsvyazbank PJSC
(軍とのつながり)
 
ロシア中央銀行 取引制限、外貨準備凍結

米国は2月24日、ロシア最大の銀行であるズベルバンクと第2位のVTBバンクを含む大手金融機関を幅広く制裁対象に加えた。
米国の金融機関にズベルバンクとの取引を拒否するよう求め、ズベルバンクと海外子会社25社の米金融システムへのつながりを断つ。

付記

米国は4月6日、追加制裁を発表した。ズベルバンクのほか、国内4位のアルファバンクも制裁対象とし、「米金融システムと接触する」両行の資産を凍結するとした。ただ、エネルギー取引は今回の制裁措置から除外された。


抜け穴が2つある。

ロシアは2014年にウクライナ南部のクリミア半島を併合した際、SWIFTからのロシア排除案が浮上したのを機に、「SPFS」(FINANCIAL MESSAGING SYSTEM OF THE BANK OF RUSSIA)と呼ばれる独自の銀行間決済ネットワークを開発した。
現在、約400の金融機関などが利用しており、ロシア国内のSWIFT加盟数を上回っているが、ほとんどがロシア国内での利用にとどまっている。


http://www.cbr.ru/Content/Document/File/72210/pres_11102021.pdf


中国人民銀行は2015年、人民元の国際銀行間決済システム(CIPS :Cross-Border Inter-Bank Payments System)を導入した。

主な機能は、クロスボーダー人民元決済(貨物貿易、サービス貿易、直接投資、融資、個人送金など)にかかる顧客送金およびインターバンク決済となっている。

・直接参加行:CIPS内に専用口座を有し、直接CIPSにアクセス、中継銀行を介さず、中国人民銀行と決済することができる。
・間接参加行:直接参加行を通じてCIPSに参加


2022/3/5   ウクライナの原発 

ウクライナのシュミハリ首相は2月24日、北部にあるチェルノブイリ原子力発電所が戦闘の末、ロシア軍に占拠されたと明らかにした。

ウクライナ原子力規制監督庁幹部は、チェルノブイリ立ち入り禁止区域で2月25日に放射線量の上昇が確認されたと説明した。ウクライナ議会も、同区域の自動監視装置のデータが通常以上の放射線量を示したと発表した。
国際原子力機関は、報告された放射線量は低く、危険な水準ではないと発表した。

チェルノブイリ原子力発電所では1986年4月26日、試験運転をしていた4号機で爆発が発生して、大量の放射性物質が放出された。

爆発を起こした4号機は「石棺」と呼ばれるコンクリートなどの建造物で覆われたが、老朽化したため、2019年には「石棺」を巨大なシェルターで外側から覆った。

残り3基は運転を続けたが、順次停止、2000年に全停止した。

ウクライナのクレバ外相は3月4日、ウクライナ南東部、エネルホダルにある国内最大規模のザポロジエ原子力発電所について「ロシア軍があらゆる方向から攻撃している、すでに火災が起きている」と述べた。

火災は敷地外の研修施設と報道された。その後、ロシア軍が制圧した。

左から、2基の冷却塔と6基のリアクター。冷却塔右のビルと煙突は3km奥の火力発電所のもの

 

付記

ウクライナの国営原子力企業エネルゴアトムはロシア軍が9月19日未明、南部ミコライウ州の南ウクライナ原子力発電所を攻撃したと発表した。原子炉に損傷はなく正常に運転している。

爆発は原子炉から300メートル(ヤード)離れた場所で起きた。真夜中過ぎに発電所の建物が破損し、近くの水力発電所と送電線も被害を受けたという。

「現在南ウクライナ原発の3つの発電ユニットは通常通り運転している。職員に負傷者はいない」と説明した。


付記

プーチン大統領は2022年10月5日、ウクライナ南部のザポロジエ原子力発電所をロシア政府の管理下に置くように命じる大統領令に署名した。

プーチン大統領は10月4日、ウクライナ東・南部4州のロシアへの「編入条約」の批准と関連法についての関連文書に署名した。

ザポロジエ原子力発電所は併合されたザポリージャ州にある。(南ウクライナ原発はヘルソン州の北西にあるムィコラーイウ州にある。)

ーーー

ウクライナは原発依存度が極めて高い。(残りの火力もロシアからの天然ガスに依存している。)

ベラルーシはついに原発の導入に踏み切り、2020年11月7日、同国初となる「ベラルーシ原発」で、1号機(119万kw)が稼働した。2号機が2022年に稼働の予定。

ソース https://globe.asahi.com/article/14333242

ウクライナの原子力発電所は次の通り。

いずれもロシア型加圧水型原子炉である。

    炉型 出力 運転開始
ザポロジェ 1〜6号機 VVER-1000/320 100万kw x 6 1984/12〜1995/10
ロブノ 1〜2号機 VVER-440/213 42万kw、41.5万kw 1980/12、1981/12
3〜4号機 VVER-1000/320 100万kw x 2 1986/12、2004/10
南ウクライナ 1号機 VVER-1000/302 100万kw 1982/12
2号機 VVER-1000/338 100万kw 1985/1
3号機 VVER-1000/320 100万kw 1989/9
フメルニツキ 1〜2号機 VVER-1000/320 100万kw x 2 1987/12、2004/8
合計   1,383.5万kw  

設計寿命は30年で、順次、寿命延長作業を行っている。


 

2022/3/7    ウクライナ、EU加盟申請書に署名 、即時加盟を求める

ウクライナのゼレンスキー大統領は2月28日、EUに正式に加盟申請した。通常手続きでなく、「新たな特別手続きによる即時加盟を求める」と訴えた。

ウクライナの南西に隣接する旧ソ連のモルドバのサンドゥ大統領は3月3日、EU加盟を正式に申請する文書に署名した。
同じく旧ソ連のジョージアのガリバシビリ首相も同日、EUへの加盟を正式に申請した。

ロシアは強く反発している。

 

ウクライナ、モルドバ、グルジア(現 ジョージア)は2014年に南部クリミア半島をロシアに併合された直後に、EUとの貿易自由化を含む関係強化に向けた 「連合協定」に署名したが、正式にEUに加盟申請するのはこれが初めて。

EUは2014年6月27日、ウクライナ、モルドバ、グルジア(現 ジョージア)の3ヵ国と高度かつ包括的な自由貿易圏(DCFTADeep and Comprehensive Free Trade Areas)の構築を含む連合協定に調印した。

「連合協定」は、EUと非EU諸国との間の政治、貿易、社会、文化、安全保障上の結びつきを強める協定。
DCFTAは連合協定の一部として、関税障壁撤廃というFTA本来の課題に加えて、双方間の貿易経済活動にEUのルールを浸透させてヒト・モノ・カネの動きを活発化させようとするもの。

ゼレンスキー大統領は2月28日、EUのフォンデアライエン委員長と電話で会談したことを明らかにし、以前から希望しているEU加盟を重ねて求めた。

EUのフォンデアライエン委員長は27日、「いずれ、ウクライナはわれわれの一員となる。彼らに加わってほしい」などと述べ、加盟を支持すると受け取ることができる発言をした。

但し、EUの報道官は、「委員長の発言は、ウクライナがヨーロッパの国だという意味だ。委員長はあわせて、加盟には手続きがあるとも述べていて、これが重要なポイントだ」と強調し、実際の加盟までには時間がかかることを示唆した。

EUへの加盟にあたっては、全加盟国の承認が必要な上、法の支配や汚職の撤廃、経済の安定などの条件を満たさなければならず、加盟交渉には数年かかるのが一般的。

スロバキア、スロベニア、チェコの首脳陣は、ウクライナが速やかにEUに加盟できるような「まったく新しい道筋」をEUに作るよう求めているが、EU側は 消極的である。

ーーー

ウクライナのNATO加盟阻止が今回のロシアによる軍事進攻の口実である。

ウクライナ最高会議は1990年7月に「主権宣言」を採択したが、「対外安全保障」の項は次の通り であった。

「将来において恒久的に中立国家となり、軍事ブロックに加わらず、非核三原則――核兵器を受け入れず、使用せず、保持しないという自らの意向を厳に宣言する」。

ドイツの東西統合(1990年)に際し、NATOを統合ドイツより東に拡大しないという口頭の約束があったが、西側は順次東方に拡大、ロシアの隣国で、ロシアにとって特別な国であるウクライナの加盟を否定しなかった。

2021/12/22  ロシアの安全保障条約草案 
2022/1/2     プーチン大統領の怒り

2019年2月、ウクライナの議会に当たる最高会議は、ポロシェンコ大統領(当時)が提出したEUとNATOへのウクライナの加盟路線をウクライナ憲法に明記する憲法改正法案を可決した。

NATOについては、西側は建前として参加を求める国の要請は拒否しないとするが、北大西洋条約の第5条で、締約国に対する武力攻撃を「全締約国に対する攻撃とみなすことに同意する」と定めており、ロシアとの全面戦争になりかねないため、NATOは簡単には ウクライナの参加を認めないと思われる。

このため、ウクライナのゼレンスキー大統領はまず、EUへの加盟を求めたもの。


現在、EUに加盟しているのは27カ国で、東方への拡大に向け一部のバルカン諸国と加盟交渉を進めているが、西欧の慎重姿勢もあって協議は停滞している。最後に加盟したのは2013年のクロアチアが最後で、新規加盟は8年以上ない。

2007/1/5 EU 加盟国、27カ国に  → 28か国 (2013/7/1) → 27か国(2020年英国離脱)

加盟交渉はバルカンのモンテネグロとセルビアと始めており、コソボとボスニア・ヘルツェゴビナを潜在候補国と位置づける。

トルコとの加盟交渉は、キプロス問題やトルコの司法制度が依然として西欧法治国家の水準に達していないことなどから事実上停止している。

2020年3月にアルバニアと北マケドニアとEU加盟に向けた交渉に入ることで合意した。欧州委は2018年に交渉入りを加盟国に勧告したが、フランスやオランダ、デンマークが難色を示していた。

欧州委は交渉国について、「法の支配」「市場経済」などの分野でEU基準を満たすための改革が進んでいるかを年ごとに評価し、各国に報告する。

 

ウクライナについては、もしウクライナをEUに入れた場合、EUの一部がロシアに侵略されたことになり、ロシアに対し直接対応せざるを得なくなる。

また、ウクライナ(とモルドバ、ジョージア)を加盟審査を経ずに早期の加盟を認めるのは問題である。

欧州委は「法の支配」「市場経済」などの分野でEU基準を満たすかどうかを重視する。

EUは加盟国のうちで法の支配の後退が目立つハンガリーとポーランドに資金提供を禁止した。

2022/2/18   欧州司法裁、「法の支配」違反国へのEU資金停止を合法と判決

加盟国についてさえ、EU基準を守らない国に制裁をしているなかで、例外的にウクライナ等の早期のEU加盟を認めると、長年交渉を続けている他の候補国をどうするかが問題になる。

1987年に加盟申請を行ったが棚上げされているトルコのエルドアン大統領は早速、3月1日に同国のEU加盟手続きについて、ウクライナと同様に扱うよう求めた。トルコがNATO加盟国であることも付言している。

仮に EUの基準を満たしていない参加希望国をすべて加盟させた場合、その後のEUの運営は混乱すると思われる。


2022/3/7 Shell、ロシア産原油購入で釈明 

Shellは2月28日、主要な液化天然ガスプラントを含むロシアの全事業から撤退すると発表した。サハリン沖の石油・天然ガス開発プロジェクト「サハリン2」からも手を引き、「ノルドストリーム2」への関与も終了する。

2022/3/1 速報 Shell、サハリン2から撤退

しかし、同社がロシア産原油の調達を続けていることが明らかになり、波紋が広がっている。同社は3月4日にロシア産原油の購入を決めた。

これに対し、ウクライナのKuleba外相が、Shellのロシア原油の購入について、「SHELLへの質問は、ロシア原油はウクライナの血の匂いがしないかということだ。世界中の人に、多国籍企業がロシアとの全ての関係を切るよう要求してほしい」とツイートした。

Dmytro Kuleba

I am told that Shell discretely bought some Russian oil yesterday.
One question to @Shell: doesn’t Russian oil smell Ukrainian blood for you? I call on all conscious people around the globe to demand multinational companies to cut all business ties with Russia.

これを受け、Shellは次の声明を発表した。

Shell はGazpromとのJVから離脱し、(Nordstream)パイプライン計画との縁を切った。

戦争がエネルギー供給に与える影響を各国政府と協議を続けている。

ロシア原油購入は苦肉の策である。継続的に原油を供給しないと、精油所はガソリンやディーゼルその他の製品を生産できない。ロシア原油以外の原油は入荷までに時間がかかり、間に合わない。

軽く考えての決定ではなく、皆さんの感情は理解している。

代替品入手に努力を続けるが、ロシアの原油シェアは大きく、一夜にできることではない。

ロシア原油からの利益の一部をファンドに寄付する。ウクライナの人に役立つよう、寄贈先を相談して決める。

Shell statement

We are appalled by the war in Ukraine and have already made clear our intention to exit joint ventures with Gazprom - which is majority-owned by the Russian government - and related entities, as well as intending to end our involvement with a significant project to pipe gas from Russia to Europe.

We have been in constant discussion with governments about the consequences of the war on the security of energy supplies. We have acted throughout in accordance with what we have understood was the intent to allow energy flows from Russia for the time being in order to provide security of energy supply.

Yesterday we made the difficult decision to purchase a cargo of Russian crude oil. Our refineries produce petrol and diesel as well as other products that people rely on every day.  To be clear, without an uninterrupted supply of crude oil to refineries, the energy industry cannot assure continued provision of essential products to people across Europe over the weeks ahead.  Cargoes from alternative sources would not have arrived in time to avoid disruptions to market supply.

We didn't take this decision lightly and we understand the strength of feeling around it.

We will continue to choose alternatives to Russian oil wherever possible, but this cannot happen overnight because of how significant Russia is to global supply.  We have been in intense talks with governments and continue to follow their guidance around this issue of security of supply, and are acutely aware we have to navigate this dilemma with the utmost care.  We welcome any direction or insights from governments and policymakers as we try to keep Europe moving and in business.

We will commit profits from the limited amount of Russian oil we have to purchase to a dedicated fund. We will work with aid partners and humanitarian agencies over the coming days and weeks to determine where the monies from this fund are best placed to alleviate the terrible consequences that this war is having on the people of Ukraine.

 

付記

Shellは3月8日、ロシア事業を全面的に終了すると発表した。

ロシアからの原油のスポット購入をやめ、石油製品や天然ガスなどあらゆる資源の調達を段階的に終える。ロシア国内での石油製品の販売も終える。

 

今後、日本のサハリン1、サハリン2 などへの出資継続も問題にされる可能性がある。

 


2022/3/8 シャープ、堺ディスプレイプロダクトを完全子会社化 

シャープは3月4日、テレビ用の大型液晶パネルを生産する「堺ディスプレイプロダクト」について、現在80%を保有する海外ファンド World Praise Limitedから全株式を取得することで合意したと発表した。
シャープの経営危機時に手放したものを買い戻すもので、パネル調達を安定させて北米向けなどの販売を拡大する。

シャープは約3845万株の新株を発行、堺ディスプレイ 1株に対してシャープ株11.45株を割り当てる株式交換を実施する。実施日は未定。

同社は2021年2月15日には所有する全株式の売却を決定し、3月15日に実施すると発表していたが、売却を予定していた相手先から中止を申し込まれ、3月12日に売却断念を発表した。

堺ディスプレイプロダクトの20%を保有するが、2022年2月18日に今回の取得の協議を開始したと発表している。

今回、シャープの戴正呉会長兼CEOは昨今の国際情勢や大型パネル市場の動向などを踏まえて完全子会社化を判断したとしている。

同社は次のように説明している。

「テレビ事業及び業務用ディスプレイ事業においてグローバルレベルの事業拡大に取り組む上で、コスト構造上大きな割合を占める高品位パネルの安定的且つ優位性のある調達が極めて重要である」

「現在、大型液晶パネル市場において高いシェアを占める中国が米中貿易摩擦の最中にあることから、中国以外にある唯一の第10世代(マザーガラス2,880mm×3,130mm)以上の大型液晶パネル工場である堺ディスプレイプロダクトPは、米州市場向けのパネル供給において優位性が期待できる」

ーーー

シャープは2007年7月、新たに大阪府堺市に最先端の液晶パネル工場と、薄膜太陽電池を量産する太陽電池工場を併設することを決定したと発表した。

主な生産品目:40型・50型・60型クラスの大型テレビ用液晶パネル
 ・マザーガラスサイズ:2,850mm x 3,050mm(第10世代)
  (60型クラスのパネルが6枚、50型クラスは8枚、40型クラスは15枚取れる)
 ・投入能力:月72,000枚(稼動当初は月36,000枚)

液晶パネル工場は2009年10月に稼働した。太陽電池工場はその後、シャープ本体の「グリーンフロント堺」の愛称で事業を行っている。

凸版印刷と大日本印刷は同地にカラーフィルターの工場を建設した。

2007/12/5  シャープの「21世紀型コンビナート」

2009年4月にシャープとソニーは、この液晶パネル工場を分社化し、大型液晶パネル・モジュールの生産および販売を行う合弁会社シャープディスプレイプロダクトを設立した。

会社名称 シャープディスプレイプロダクト
設立日 2009年4月1日
稼動開始 2009年10月
出資比率 最終 シャープ66%、ソニー34% (当初 ソニー 7.04%)
事業 大型テレビ用液晶パネル・モジュールの生産およびシャープ、ソニーへの販売
生産能力 72,000枚/月(稼動当初は36,000枚/月)(マザーガラス投入ベース)

2009年12月29日、ソニーはシャープディスプレイプロダクトの増資を引き受け、7.04%を100億円で取得した。
ソニーは堺工場で生産されるパネルの7%にあたる55万台分(40型換算)を購入する。

2011年4月末までに最大34%まで引き上げられ、その時点で265万台分がソニーに供給されることとなっていた。

しかし液晶パネルの調達環境をめぐる変化を背景に、両社は2011年4月、ソニーの追加出資を先送りにした。

シャープは2012年3月27日、電子機器の受託製造サービスの世界最大手の鴻海グループ(Hon Hai) と戦略的グローバル・パートナーシップを構築すると発表した。

鴻海グループのシャープの第三者割当増資 9.88% 669億円
これは中止となり、その後2016年3月30日に鴻海は取締役会でシャープ買収を決めた。鴻海グループでシャープの3888億円の第三者割当増資を引き受け、議決権の66%を得た。

シャープディスプレイプロダクトを「ワンカンパニー」として共同で事業運営 シャープ 46.48%、董事長 46.48%、ソニー 7.04%

シャープとソニーは2012年3月28日、ソニーの追加出資を行なわないことで合意し、2012年5月24日にシャープディスプレイプロダクトについて、6月末までにソニーが保有する株式(出資比率:7.04%)すべてを譲渡し、両社の合弁を解消すると発表した。対価として、ソニーの出資時と同額の100億円が全額現金で支払われる。

また、シャープと凸版印刷、大日本印刷は2012年5月24日、凸版、大日本の堺工場における液晶カラーフィルター事業をシャープディスプレイプロダクトに吸収分割の方式により承継させることを決めた。

これらの結果、シャープディスプレイプロダクトの出資比率は以下の通りとなった。(吸収分割で株式発行)

シャープ 37.61%
郭台銘 37.61SIO International Holdings Limited)
凸版印刷 9.54
大日本印刷 9.54
自己株式 5.70 (ソニーから買収分 旧 7.04%相当)

2012年7月17日付で社名を「堺ディスプレイプロダクト」に変更した。

2016年12月28日、シャープが持ち株 436千株を 17,170 百万円で郭台銘氏の投資会社に譲渡した。

シャープディスプレイプロダクトの出資関係は次の通りとなった。

郭台銘 53.05%
シャープ  26.71%
凸版印刷 9.54%
大日本印刷 9.54%

その後、2019年6月に、シャープがテレビ向けの大型液晶パネルを生産する運営会社 堺ディスプレイプロダクトを子会社化する検討を始めたと報じられた。

2019/6/19 シャープ、堺の液晶パネル工場の子会社化検討

しかし、これは進展はなく、株主の異動についても全く報道されていない。今回、代表取締役がWorld Praise Limited邱啓華氏と発表されたが、これも初めてと見られる。

但し、情報として郭台銘氏の保有株が個人の都合により譲渡されたと の記事があった。

2022年2月18日、シャープは「堺ディスプレイプロダクトの子会社化(復帰)に向けた協議開始」の発表を行った。

現時点の出資が、シャープ 20.00%、World Praise Limited 80.00%で、シャープの子会社として復帰させることを目的として、World Praise Limitedから株式を取得することにつき協議することを確認したとした。

郭台銘氏 がWorld Praise Limited売却し、その時に凸版印刷、大日本印刷、およびシャープ(6.71%分)も合わせて売却したと見られる。

そして、3月4日に契約締結を発表した。

ーーー

World Praise Limited については詳細は不明である。判明事項は次の通り。

所在地:サモア島(Tax Havenと見られる。)
組成日:2001/3/8
組成目的:
Investment Holding
大株主:
Yau Leroy(邱啓華)83.08%    現 堺ディスプレイプロダクト代表取締役

Yau Leroy(邱啓華)は台湾人で、コンサルタント事業の Everiii のexecutive directorで、グローバル志向の企業家を養成し最も革新的な台湾スタートアップを世界に展開することを目標とする Taiwan Startup Stadium (台灣新創競技場)の共同設立者でCEOを務める。


2022/3/9 ロシア、日本などを非友好国に指定    

ロシア政府は3月7日、日本や欧米諸国など48の国・地域を「ロシアに対する非友好的な活動をする国・地域」に指定した。プーチン大統領が3月5日の大統領令で政府に作成を指示していた。

ウクライナ侵攻に伴う対ロ制裁を実施している国や地域とされ、ウクライナと米国、英国、EU加盟国(27カ国)、カナダ、オーストラリア、ニュージーランド、日本、韓国、ノルウェー、シンガポール、台湾のほか、理由は不明だが下記の諸国が含まれている。

  モンテネグロ、スイス、アルバニア、アンドラ、アイスランド、リヒテンシュタイン、モナコ、サンマリノ、北マケドニア、ミクロネシア (以上で合計48カ国)

中国は当然 対象外だが、台湾については、タス通信は、「中国領土と見なされるが、1949年以降自主的行政府によって統治されている」と説明した。

これらの国に対しては、ウクライナ侵攻を受けた対露制裁への対抗措置をとる。

付記

ロシア外務省は3月21日、日本が米欧と歩調を合わせて発動した対ロ経済制裁を巡り「日本との平和条約締結に関する交渉を継続するつもりはない」との声明を発表した。「明らかに非友好的な立場を取り、我が国の利益に損害を与えようとしている」としている。

平和条約締結交渉を拒否
北方領土への「ビザなし交流」の廃止、旧島民の簡素化された北方領土訪問もなくす。
日本との間で進めていた北方領土での共同経済活動の実現に向けた話し合いも放棄
黒海の周辺国でつくる黒海経済協力機構のパートナー国としての日本の資格延長にも応じない。

声明では、こうした対抗措置を発表したうえ、日ロ関係悪化の責任は「反ロシアの方針を選択した」日本政府にあると一方的に非難した。

ロシア政府は3月7日の政令で、ロシア企業が非友好国の企業・個人と取引をする場合、外国投資に関する政府委員会の承認を必要とした。
政府委員会は取引の申請に基づき、承認か拒否の判断を下し、取引の条件を課すことも可能という。政府は「外部からの制裁圧力の中で国の財政的安定を確保するため」と説明している。

プーチン大統領は3月5日、対外債務を外貨でなく、自国の通貨ルーブルで返済することを一時的に認める大統領令に署名した。
ロシア中央銀行が定めた為替レートに沿ってルーブルで返済すれば、債務履行と見なす。



今後ロシアの政府機関や企業などが特別の口座を作り、非友好国への債務の相当額をルーブルで返済できる。対象となるのは月1000万ルーブル(約830万円)相当以上の債務で、債権を持つ側が拒否できるかどうかは不明。

ーーー

 ウクライナ侵攻にともなう西側諸国の経済制裁に対抗し、ロシア産業貿易省は3月6日、「最後の手段で対応する権利がある」とし、電子製品素材 の合成サファイアの輸出を中止する可能性があると言及した。

世界市場でロシア産は40%を占める。スマートフォン画面をはじめ、各種電子製品やマイクロチップ・発光ダイオード(LED)などの製造に使われる。



2022/3/9  
ロシア産原油禁輸、米が追加制裁 即日発効 英は年内停止

バイデン米大統領は3月8日、ロシア産の原油、天然ガス、石炭と関連製品の輸入を全面的に禁止すると発表した。同日に大統領令に署名し、即日発効した。

3月8日からロシア産の石油、天然ガス、石炭や関連製品の新規購入ができなくなり、すでに契約した分は同日から45日間以内であれば輸入できる猶予期間を設ける。

米国人がロシアでエネルギー生産にかかわる外国企業に投資することも禁じる。

大統領は「米国はロシア経済の大動脈を標的にしている。ロシアの石油、ガス、エネルギーの輸入を全面的に禁止する」と述べ、「世界中の同盟国、特に欧州と緊密に協議して決めた。欧州の同盟国・有志国の多くが我々(の輸入禁止)に加われない参加しないと理解したうえで禁輸する」と強調した。また、「欧州と協力してロシアへのエネルギー依存を減らす長期的な戦略もつくっている」と述べた。

大統領は3月7日に英国のジョンソン首相、フランスのマクロン大統領、ドイツのショルツ首相とビデオ会議形式で会談した。首脳らは対露制裁の強化で一致したものの、原油の禁輸措置に関しては結論が出なかった。ドイツの慎重姿勢が影響したとされる。

英国のジョンソン首相は同日、ロシアからの原油と石油製品の輸入を段階的に削減し、2022年末までに完全に停止すると発表した。ビジネス・エネルギー・産業戦略省長官は、移行期間を設けることで企業などがロシアに代わる調達先を探すために十分な時間が得られると説明、このほか、ロシア産天然ガスの輸入停止も模索していると明らかにした。

米欧は、燃料価格などの高騰につながりかねないとの懸念からエネルギー産業をロシアへの制裁対象から外していたが、現状を踏まえて追加制裁が必要と判断した。


これに対し、ドイツのショルツ首相は3月7日、ロシアからのエネルギー輸入が当面必要だとする声明を公表した。「欧州は意識的にロシアからのエネルギー調達を制裁の例外にした」と指摘、「ロシアに代替するエネルギー源の速やかな確保に向け、政府はEU内外のパートナー国と長らく取り組んできたが、一夜にして成し遂げられることではない」と述べた。

 

EUは3月10-11日首脳会議を開き、ロシアからの石油・天然ガス・石炭の輸入を徐々に縮小していくことで合意する見通し。

このための対策として(1)LNGの利用やバイオガス、水素の開発を通じたエネルギー供給と調達の多様化、(2)再生エネルギー普及加速、(3)域内のガス・電力網の共有化による有効活用促進、(4)電力網の統一化とエネルギー安全保障のための緊急計画強化――などを打ち出している。

現在EUは、ロシアからのガス輸入が全体の45%、石油輸入が約3分の1、石炭輸入がほぼ半分を占めており、欧米の制裁に対する報復としてロシア側が輸出制限に動けば、域内のエネルギー供給が大混乱しかねない。

 

なお、ドイツ経済省は3月5日、エネルギーのロシア依存を抑えるため、国内初となるLNG輸入ターミナルの建設に向けて、ドイツ復興金融公庫KfWが国内の電力大手RWE、オランダのガス大手Gasunieとの間で了解覚書に調印したと発表した。

ブルンスビュッテルに年80億立方メートルの容量のターミナルをできるだけ早期に建設する。持ち分はKfWが50%、RWEが10%、Gasunieが40%で、運用はGasunieが行う。

ーーー

OPECのバルキンド事務局長は3月7日、ロシア産原油への制裁でロシアが輸出する日量約700万バレル(サウジの輸出量と同じ)の石油が市場に供給されなくなる懸念について「世界にロシア産の不足分を埋め合わせる余剰能力はない」とした。「需要に対して供給が不足している。産油国の生産能力には制約がある」と危機感をあらわにした。

付記

サウジアラムコのCEOは3月8日、エネルギー業界の会合でウクライナ危機を巡りエネルギー市場の混乱が悪化していると指摘、「サウジの増産余地は日量200万バレルで世界需要の2%相当しかない」と話した。


ロシアのノワク副首相は3月7日、欧米がロシア産原油の輸入を禁止すれば、「世界市場は壊滅的な打撃を受ける」、「予測もできないほどの原油高に見舞われる」とし、原油価格は1バレル 300ドルを超える水準に上昇するほか、ロシアからドイツに天然ガスを供給するパイプラインも閉鎖されると警告した。

その上で、欧州がロシアから輸入する原油の代替輸入源を探すには1年以上かかるとし、「ロシアからのエネルギー供給を拒否するなら、すればよい。ロシアには代替輸出先がある」と述べた。

また、天然ガスパイプライン「Nordstream 2」の凍結に対し、「ロシアには既存のNordstream 1を通した天然ガス供給の停止を決定する権利がある」と述べた。「現時点ではこうした決定は行っていない」としながらも、「欧州の政治家のロシアに対する発言や非難は、ロシアをその方向に後押しするものだ」と警告した。


2022/3/10 東大、安全かつ高性能な局所止血材を開発 

東京大学は3月7日、血液に触れると瞬時に固化する合成ハイドロゲルで速やかな止血を実現したと発表した。

外科手術では、太い静脈や動脈からの出血に対しては止血剤を併用した圧迫止血が必要となるが、既存の止血剤には、止血に長い時間を要する、もしくは、ヒト血液成分由来の感染症伝播が否定できないといった課題がある。

東京大学の研究グループは、新たに、体液と接触した際に速やかに自己固化する合成ハイドロゲルを設計した。

このハイドロゲルは、はじめは液体だが、血液と接触すると瞬時に血液を巻き込んだ固化を起こし、止血に至る。
ラットの下大静脈大量出血モデルでは、1分間で安定した止血効果が得られた。

血液凝固反応とは独立した作用機序をもって速やかな止血に至るだけでなく、未知の感染症の伝播も否定でき、将来の医師・患者双方の精神的負担軽減に貢献できると考えられる。

本成果は、33日の『Annals of Vascular Surgery』(オンライン版)に掲載された。


本研究グループは、体液と接触した際に速やかに自己固化する合成ハイドロゲル新たに設計した。

この合成ハイドロゲルは、はじめは液体だが、主成分である 4 分岐型のポリエチレングリコールPEG徐々に反応することで固体となる


弱酸性において反応は制限され液体の状態を維持するが、中性においては反応は極めて速く、即時固化する。

そのため、弱酸性の合成ハイドロゲルと血液のような体液が接触すると、体液にある緩衝作用(外から少量の酸や塩基を加えても pH が一定に保たれる働き)によって、瞬間的に合成ハイドロゲルが中和され、瞬時に体液を巻き込んだ固化を引き起こすことができる。

実際に、抗凝固薬を加えたラットの血液に対し、今回開発した合成ハイドロゲルを接触させたところ、血液ごと瞬時に固化することが確かめられた。


今回開発した新規合成ハイドロゲルは、他の病気や抗凝固薬によって血液が固まりにくい状態にある患者においても、速やかに止血を達成できる局所止血材を開発できる可能性がある。

また、血液に限らず、髄液などの各種体液漏出防止材としての応用も広く期待される。



2022/3/11「歯生え薬」の安全性試験実施 

京都大学発スタートアップのトレジェムバイオファーマは3月8日、第三者割当増資で4億5000万円を調達したと発表した。

出資したのは、京都大学イノベーションキャピタル、Astellas Venture Management、新日本科学の創薬支援子会社Gemseki、フューチャーベンチャーキャピタル、京信ソーシャルキャピタル、京都市スタートアップ支援 2 号ファンド

今回の資金調達により、「歯生え薬」の開発に向け、臨床試験(治験)の前段階の安全性試験に乗り出す。

ーーー

歯の再生を促す新規医薬品を開発する歯科領域の創薬ベンチャー、トレジェムバイオファーマ(Toregem BioPharma)は2020年5月12日に設立された。
Toregemの社名は Tooth Regeneration Medicine(歯の再生薬)から採った。

京都大学医学研究科口腔外科学分野の高橋克准教授が、永久歯の次に生える歯(第3生歯)を成長させることによって歯の再生の実現が可能なことを発見した。
一般的な歯の治療法である義歯やインプラントの人工歯に対し、自己歯の再生が根治的な治療法と成り得る可能性がある。

ヒトでは大臼歯が1生歯性(永久歯)、それ以外は2生歯性(乳歯+永久歯)で、歯数は厳密に制御されている。

実際には、乳歯と永久歯のあとに第3歯堤という歯の原器があるが、骨形成タンパク質(BMP)等の働きを阻害する拮抗分子USAG-1遺伝子の働きによって第3生歯は消失してしまう。

USAG-1遺伝子の欠損マウスでは、本来は退化消失するはずの痕跡的乳切歯が生き残った結果、過剰歯として萌出することが確認されている。

橋克准教授による長年の研究により、この拮抗分子USAG-1遺伝子を抑制する中和抗体siRNA2本鎖RNAが遺伝子の発現を抑えてしまうRNA干渉に関与するRNA)によって無歯症モデル動物で欠損歯が歯槽骨と共に回復することが分かった。

京都大学医学研究科口腔外科学分野の喜早(きそ)ほのか氏がCEOを務めるトレジェムでは、USAG-1中和抗体のヒト化に向けた開発を進めており(現在は前臨床開発段階)、中和抗体とsiRNAの化合物を新規医薬品として上市することを目指している。

2020/12/2 歯の再生を促す医薬品を開発する トレジェムバイオファーマ

トレジェムは USAG-1 中和抗体の実用化を目指しており、同抗体のヒト化に成功している。

トレジェムは今回の資金調達により、USAG-1 中和抗体の非臨床安全性試験と治験用製剤の製造準備を進める。

根本的な治療手段がない先天性無歯症患者を第一適応症の候補として USAG-1 抗体の開発を行う。

さらに、USAG-1 中和抗体は永久歯の後の第三生歯を発生させることを動物試験にて確認しており、この知見は、高齢者のオーラルフレイル(口腔内の虚弱)の改善に貢献し得ると考えている。

 

今回、2億円を引き受けた京都イノベーションキャピタル は、京都大学 100%出資子会社として、京都大学を中心とした国立大学から生まれた研究成果を活用するベンチャー企業を対象に投資やその他の事業支援を行っている。

現在、総額160億円のKYOTOiCAP 1 号ファンドと総 180 億円の KYOTOiCAP 2 号ファンド(2021 1 月設立)を運営している。


2022/3/12 UAE、コスモの全持ち株を売却 

コスモエネルギーホールディングスは3月9日、筆頭株主のアラブ首長国連邦(UAE) のアブダビ政府のファンドの Infinity Alliance Limited が持分 15.70%を全て売却すると発表した。

コスモはInfinity Alliance がこの株式全てを海外市場で売却することを承認した。
売り出し価格は時価から16.21%割り引いたもので、売却総額は326億円となる。

Infinity Allianceはアブダビ首長国100%出資会社であるMubadala Investment Company の100%子会社。

コスモは Infinity Alliance から保有株式の売却に関する相談を受け、協議を重ねてきたが、Mubadala との戦略提携によって一定の事業上の成果を得たこと、またMubadala の投資戦略の進展に基づく株式売却に係る意向を尊重し、協力して株式売出実施を承認することとした。

株式売出し実施後にMubadala との資本関係及び提携関係は解消されるが、引き続きMubadalaとの良好な関係を継続していくことを確認している。
アブダビでの石油開発事業や原油の安定調達といった事業活動への影響はない。

ーーー

コスモ石油は2007年9月18日、アラブ首長国連邦(UAE)のアブダビ首長国が100%出資するIPIC(International Petroleum Investment Company)と業務提携することを決議したと発表した。

IPICが100%出資する特別目的会社 Infinity Alliance Limitedを割当先に株式総数の約20%に相当する株を発行、約891億円を調達した。

IPICはアブダビ首長国外におけるエネルギー事業への投資を主な事業内容としており、コスモ石油は共同事業案件として、コスモ石油の製油所の高度化・高付加価値化、環太平洋地域における石油製品販売事業の拡大、アブダビ首長国外における新規油田開発などを検討するとした。

IPICは世界各地で石油関連の企業に投資している。下記に出資先を記載(現状は未確認)

2009/2/24 アブダビのIPIC、カナダのNOVA Chemicals を買収

IPICは2016年8月に政府出資のMubadala Development Companyと合併し、Mubadala Investment Company となった。

2021年8月10日、Infinity Alliance はコスモ石油の株式の一部を売却、出資比率は20.76%から15.69%となった。

今回、残りの全株を売却する。


2022/3/14 G7、ロシアに新たな経済制裁 

G7は3月11日、ウクライナへの侵攻を続けるロシアに新たな経済制裁を科すと表明した。

ロシアの最恵国の地位を取消し、ロシアからの輸入品に大幅に高い関税を課すほか、高級品の対ロ輸出も禁じる。

国際通貨基金(IMF)や世界銀行、欧州復興開発銀行(EBRD)によるロシアへの融資を阻止することでも協力する。

プーチン大統領の側近や関係が近い大富豪への制裁を強化するほか、重要製品や技術、高級品が渡らないよう貿易を規制する。暗号資産(仮想通貨)などを使って制裁を回避しないよう監視を強める。

声明内容は下記の通り。

1)各国の手続と整合的な形で、重要製品に関するロシアの最恵国の地位を否定する行動をとるよう努める。

これにより、WTO加盟国としての重要な利益が打ち消され、ロシア企業の製品が最恵国 待遇を受けないことが確保される。

注)最恵国待遇原則(Most-Favoured-NationTreatment MFN 原則)は、WTO 協定の基本原則の 1 つで、いずれかの国に与える最も有利な待遇を他のすべてのWTO加盟国に対して与えなければならないというものである。これについては下記に詳細を述べる。

2)国際通貨基金(IMF)、世界銀行、欧州復興開発銀行を含む主要な多国間金融機関からロシアが融資を受けることを防ぐよう共同で取り組んでいる。

  国際法に著しく違反しておきながら、国際経済秩序の一部であることの恩恵を受けることを期待することはできない。

3)プーチン大統領やその他の戦争の立案者に近いロシアのエリート層、代理勢力、オリガルヒ及び彼らの家族やその支援者に対して圧力をかける。

制裁を受けた個人及び団体が所有する動産及び不動産を特定し凍結する

4)  制限的措置の有効性を維持し、回避を取り締まり、抜け穴を塞ぐ

国際的な制裁の影響を回避あるいは相殺するための手段としてデジタル資産を活用することができないことを確保

5)  ロシアの体制による偽情報拡散の試みと戦うロシア国民の自由かつ偏見のない情報への権利を確認し支持する。

6)  ロシア連邦に対する重要物品及び技術の輸出入に対し、更なる制限を課す

7)  ロシアが国際的に資金を調達する能力を更に制限する措置を開発及び実施するために、引き続き共に取り組む。

 

バイデン米大統領は3月11日、プーチン大統領は「侵略者であり、代償を払うことになる」と言明、G7 と協調し、WTOルールに基づくロシアの「最恵国待遇」を撤回すると表明した。
ペロシ下院議長は、14日の週にロシアとの貿易関係を見直し最恵国待遇を取り消すための法案を採決すると表明した。野党・共和党でも賛同の声が上がっている。

バイデン政権はロシアとベラルーシへの自動車や宝石、衣類、たばこ、アンティーク品など高級品の輸出も禁じた。
ロシアからのウォッカやキャビアなどの魚介類、ダイヤモンドの輸入を禁止する措置も示した。
制裁対象とするロシアの新興財閥(オリガルヒ)を拡大する。

米国では、最恵国待遇から外れているのは北朝鮮とキューバだけで、ロシアを両国並みの扱いにする。(2001年末まではアフガニスタンとベトナムも外れていた。)

米国がロシアから輸入する商品や原材料には現在、協定税率で平均で3%程度の関税がかかっているが、これが平均で30%超に跳ね上がるとされる。但し、米国の対ロ輸入は2021年で297億ドル程度で全体の1%にすぎない。

EUの欧州委員会も3月11日、ロシアへの最恵国待遇を取り消すと発表した。有名ブランドなどの高級品をロシアに輸出することを禁じるほか、ロシアの主力輸出品である鉄鋼製品の輸入をやめる。 EU主脳会議は、2027年までにロシア産ガスや石油からの依存を脱する方針を確認した。

EUはロシアの最大の貿易相手で、2920年はロシアのモノ輸出の37%を占めた。

カナダ政府は3月3日、各国の先頭を切り、最恵国関税撤廃令を出し、ロシアとベラルーシが関税法のもとで最恵国待遇を受けている資格を撤廃し、2国を原産地とする輸入品のほぼ全てに一般税率である35%の関税率を適用することを発表した。同税率の適用は、ロシアとベラルーシ以外では、北朝鮮のみとなっている。

岸田首相は「日本も連携という観点からどうあるべきなのかしっかり考える」と述べた。(いつも、この発言)

最恵国待遇の剥奪は「日本は過去に実行したことがない」(政府関係者) 法律の改正が必要である。

2021年の日本のロシアからの輸入額は1兆5488億円で、例えばカニの関税は4%から6%になる。輸入の過半を占める原油やLNGなどは基本税率がゼロのため、変わらない。

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付記

貿易上の優遇措置などを保障する「最恵国待遇」の撤回などを盛り込んだ法律の改正案は、4月12日に衆院で審議入りし、14日の衆議院本会議で可決され、参議院に送られた。

このうち、関税暫定措置法の改正案では、ロシアに対する「最恵国待遇」を撤回するために必要な内容が盛り込まれ、外国為替法の改正案では、ロシアが制裁の抜け穴として暗号資産を悪用できないよう、制裁の対象者が第三者に暗号資産を移転するのを規制することなどが盛り込まれている。

4月20日午前の参院本会議で可決、成立した。

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なお、下記の通り、最恵国待遇原則はWTO協定の基本原則である。

しかし、GATT21条は「安全保障のための例外」を定めており、以下の場合は例外を認めている。ロシアを除外するのは、この c) に基づく。

(a)締約国に対し、発表すれば自国の安全保障上の重大な利益に反するとその締約国が認める情報の提供を要求すること。
(b)
締約国が自国の安全保障上の重大な利益の保護のために必要であると認める次のいずれかの措置を執ることを妨げること。

 (i)
核分裂性物質又はその生産原料である物質に関する措置

 (ii)
武器、弾薬及び軍需品の取引並びに軍事施設に供給するため直接又は間接に行なわれるその他の貨物及び原料の取引に関する措置

 (iii)
戦時その他の国際関係の緊急時に執る措置

(c)
締約国が国際の平和及び安全の維持のため国際連合憲章に基く義務に従う措置を執ることを妨げること

 

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最恵国(Most Favored Nation)除外について:

いずれかの国に与える最も有利な待遇を他のすべてのWTO加盟国に対して与えなければならないという最恵国待遇原則(Most-Favoured-NationTreatment MFN 原則)は、WTO 協定の基本原則の 1 つである。

関税については、日本では「関税定率法」と「関税暫定措置法」という2つの法律によって「国定税率」が定められている。

「関税定率法」では、基本税率としては7,254種目の税率が設定されている。
一方、「関税暫定措置法」には、一時的に基本税率によりがたい事情がある場合に、一定期適用される433種目の暫定税率が定められている。

WTO加盟国には、最恵国待遇原則が適用される。WTO協定において、WTO加盟国・地域全てに対して一定率以上の関税を課さないことを約束している。
この税率が「協定税率(WTO譲許税率)」である。

仮にある国にこれ以下の税率を適用すれば、その税率は他の全てのWTO加盟国に適用しなければならないことになる。

その例外が投資・サービス分野などを含む自由貿易協定(FTA)を締結した相手国からの産品のみを対象とした税率で、これは他の加盟国には適用されない。

まとめると、関税率は下記の通りとなる。

   国定税率>協定税率(WTO譲許税率)>FTA税率

今回、G7は「重要製品に関するロシアの最恵国の地位を否定する行動をとるよう努める 」とした。
ロシアはWTO加盟国ではあるが、最恵国待遇から外し、協定税率を適用しない(=国定税率を適用する)ということになる。これには各国の国内手続きが必要である。


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