ブログ 化学業界の話題 knakのデータベースから      目次

これは下記のブログを月ごとにまとめたものです。

最新分は http://blog.knak.jp


2023/9/19   高齢者人口推計 65歳以上が29.1%、80歳以上は10人に1人 

9月18日の敬老の日にちなみ、総務省は9月17日に高齢者の人口(人口推計、World Population Prospects)を公表した。15日時点の推計。

https://www.stat.go.jp/data/topics/topi1380.html

それによると、2023年の総人口は1億2442万人で、うち65歳以上の高齢者は3623万人だった。

一方で、出生数が減っていることなどから、総人口に占める高齢者の割合は29.1%で、去年と比べて0.1ポイント上昇し、過去最高を更新した。

このうち、80歳以上の人は1259万人で、去年より27万人増えて過去最多となり、総人口に占める割合が初めて10%を超え、10人に1人が80歳以上となった。





 



 

また、働く高齢者の数は去年、912万人で過去最多を更新し、19年連続で増加した。

就業している高齢者のうち、役員と自営業を除く529万人のうち、非正規が405万人を占める。

 

 


2023/9/20 「G77+中国」首脳会合

キューバの首都ハバナで行われた新興・途上国で構成する国連の枠組み「77カ国グループ(G77)プラス中国」の首脳会合は9月16日、先進国主導の国際秩序がもたらす不公平に「Global South」と呼ばれる国々が「深い懸念」を表明し、是正を求める声明を採択して閉幕した。G77は1964年に発足し、134の国と地域で構成する。

政治宣言では「現在の不公正な国際秩序によって途上国が直面する課題はより深刻になっている」として強い懸念を表明し、食料やエネルギーの危機、市場の不安定性などにより途上国は大きな影響を受けやすく極度の貧困や難民の発生を招くと指摘、国際機構における途上国の代表の割合を増やすことも求めた。

一方、ロシアによるウクライナへの軍事侵攻については「地政学的な緊張」という表現にとどめている。

宣言ではこのほか、新型コロナウイルス流行時に途上国へのワクチン普及が遅れるなど不公平が一層悪化したとし、科学技術の分野で途上国が取り残されないよう国際協調の必要性を訴えた。

なお、G77設立時に参加し、1994年に離脱したメキシコが再加盟を要望、首脳会合は満場一致で再加盟を認めた。正式に再加盟すると135カ国となる。

メキシコは、気候変動などの課題に対処し、世界の経済的・社会的非対称性と闘うためのSouth-South協力を推進し、「新しい世界の形成」に貢献することが目標だとしている。

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G77は1964年の第1回国際連合貿易開発会議(UNCTAD)総会時に、アジア、アフリカ、ラテンアメリカの開発途上国77か国によって形成されたグループである。現在はGlobal Southと呼ばれる途上国や新興国と中国など134の国と地域が参加している。

The Member States of the Group of 77   https://www.g77.org/doc/members.html 

設立時の77カ国のうち、韓国がOECD参加を機に1996年に離脱、メキシコも1994年に離脱し、75カ国が残っている。

なおNew Zealandは設立前の宣言(1963年10月)には署名したが、実際の設立時には参加しなかった。

ユーゴ、キプロス、マルタ、ルーマニアの欧州勢も一時は参加していたが、EU加盟などで離脱している。

中国は1994年以来、G77の主導的な「支援国」と称しており、公式にはGroup 77 and China(G77プラス中国)という言葉が使われている。Group 77の参加国リストには中国が入っており、下図にも入っているが、中国自身は参加国とはみていない。

 

 


2023/9/25  三井物産、台湾で洋上風力発電事業   

三井物産は9月22日、台湾の海龍(ハイロン)洋上風力発電事業につき、事業パートナーであるカナダの大手独立系発電事業者のNorthland Power Inc.と共に、プロジェクトファイナンスに係る契約発効を前提とした最終投資決断を 行ったと発表した。2023 年内の発効を予定している。

台湾は 2050 年までに温室効果ガス排出量のネットゼロを目指し、洋上風力発電設備 40〜55GW の導入を目標としてい る。本事業はこの目標の達成に寄与すると共に、台湾の一般家庭 100 万世帯超の年間消費量に相当する電力を供給 する。

台湾彰化県沖 45〜70km の洋上に大型風力タービン(14MW)  73 基を建設し、2025 年末以降に順次、運営・売電を行う もので、概要は次の通り。

なお、現時点では出資はNorthland Powerが60%、三井物産が40%となっているが、Northland Powerは2022年12月に事業の権益(60%)の49%をマレーシアのクリーンエネルギー企業のGentari International Renewable に売却した。
この結果、本年第4四半期には、出資はNorthland Power 30.6%、Gentari 29.4%、三井物産40%となる。

Gentari は2022年6月16日にマレーシアの総合石油ガス会社PETRONASがクリーンエネルギーソリューションの新会社として設立を発表した。2030年には風力発電やバッテリーストレージの機会を追加した3〜4千万kWの太陽光発電容量の建設、年間最大120万トンの水素供給、アジア太平洋地域の主要市場で10%のEVエコシステムの市場シェア獲得など目指すとした。

なお、当初の計画はNorthland Power 60%、シンガポールのYushan Energy 40% であった。
2018年に三井物産がYushan Energy Taiwanの50%株主となり、本事業に20%出資することになった。
今回の最終計画では三井物産が40%出資となり、Yushan Energy は参加していない。この事情は明らかでない。

JV 発電所 発電容量 売電先 期間
Hai Long 2 HL2A 294MW (14MW x 21基) 台湾電力 20 年間
HL2B 224MW (14MW x 16基) 台湾民間電力需要家 30 年間
Hai Long 3 HL3 504MW (14MW x 36基)
合計 1,022MW (14MW x 73基)    

総事業費約 9600億円の内、約 5,400 億円はプロジェクトファイナンスによる調達を予定しており、国際協力銀行及び日本貿易保険をはじめとする世界各国の輸出信用機関や金融機関が参画する予定。

三井物産による投融資保証額は約 2,600 億円(投融資:約 1,700 億円、保証:約 900 億円)を予定している。

提携先のNorthland Power Inc.はカナダを拠点とするグローバルな電力生産会社で、アジア、欧州、中南米、北米、その他で、4つの事業セグメント(陸上風力、オフショア風力、天然ガス、オンショア再生可能)を通じてクリーンでグリーンなグローバル電力インフラ資産の開発・構築・所有・運営に注力する。

同社は、2,429MW(正味2,014MW)の運転中発電設備、399MWの建設中発電設備を所有または関与しており、ドイツ北海のDeutsche Bucht 洋上風力発電プロジェクトおよびメキシコのLa Lucha太陽光発電プロジェクトの代表企業となっている。

日本では、秋田県潟上市と千葉県いすみ市で洋上風力発電開発プロジェクトを展開している。

 

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台湾の西海岸沖には各国の洋上風力計画が林立している。

https://zhuanlan.zhihu.com/p/99179492


2023/9/26  インドと中東、ヨーロッパを結ぶ「経済回廊」の建設計画を発表、トルコが反発

9月9日及び10日にG20議長国インドの主催により、ニューデリーにおいてG20サミットが開催され、サウジアラビアのムハンマド・ビン・サルマン皇太子兼首相はインドのナレンドラ・モディ首相の招待に応じ、出席した。

米国、インド、中東、欧州連合の指導者らは9月9日、G20サミットに合わせ、欧州・中東・南アジアを結ぶ多国間鉄道・港湾構想を発表した。

「インド・中東・欧州経済回廊(IMEC:India-Middle East-Europe Economic Corridor)」に関する覚書は、サウジアラビア、アラブ首長国連邦(UAE)、インド、フランス、ドイツ、イタリア、米国、EUによって署名された。

米国は世界的なインフラ整備で中国主導の巨大経済圏構想「一帯一路」に対抗しようとしている。

バイデン米大統領は今回の覚書について、2つの大陸の港を結ぶ「真のビッグディール」であり、「より安定・繁栄し、統合された中東」につながると述べた。

米当局者によると、この構想は中東諸国を鉄道で結び、港でインドと接続させることで輸送時間やコスト、燃料の使用量を削減し、湾岸諸国から欧州へのエネルギー・貿易の流れを後押しすることが狙い。

覚書によるとIMECはインドとアラビア湾を結ぶ東側回廊と、アラビア湾と欧州を結ぶ北側回廊の2回廊で構成されることが想定されている。

これにより、インド、湾岸諸国、欧州間の商品やサービスの輸送が可能になる。メンバーはまた、鉄道ルートに沿って、電力やデジタル接続のためのケーブル敷設や、クリーン水素の輸出用パイプラインの敷設を計画している。

 

米国にとってIMECは、バイデン大統領が2022年のG7サミットで初めて発表した「グローバルインフラ投資パートナーシップ(the Partnership for Global Infrastructure Investment (PGII) 」イニシアチブの基盤となる。

2022年6月のG7ドイツ・エルマウ・サミットで立ち上げた。同サミットの際、今後5年間で、質の高いインフラに特に焦点を当てた公的及び民間投資において最大6,000億ドルを共同で動員することを目指す旨表明した。
 

 広島で開催された今年のG7サミットでバイデン大統領は、中低所得国における質の高いインフラ整備支援に対する世界的な需要によりよく応えるため、同イニシアチブを拡大する新たな機会を特定することを約束するよう、同組織の首脳陣を説得した。

それ以来、米国は複数の国やセクターにまたがるインフラ投資を促進することを目的に、いくつかの経済回廊を構築するための構想を発表してきた。

今回、サウジ皇太子はグローバルインフラ投資パートナーシップを称賛し、そのプロジェクトにサウジアラビアが200億ドルを拠出することを発表、同時にIMECとの統合の必要性を示唆した。

ニューデリーでの約束を確実に履行するため、参加メンバーは今後2カ月間にわたり会合を開き、関連するタイムテーブルを含む行動計画を策定し、これにコミットする意向である。

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Financial Timesによると、トルコは周辺の友好国との間で、「インド・中東・欧州経済回廊」の代替策について集中協議を実施している。トルコはアジアから欧州への物流で担ってきた歴史的な役割を一段と高めることを狙っている。

トルコ政府は、インドからアラブ首長国連邦(UAE)、サウジアラビア、ヨルダン、イスラエルを通って欧州市場へと輸送するG20の経済回廊に抵抗している。 中国の影響力拡大を阻止しようとするものだが、G20案はトルコを完全に迂回するとみられている。

トルコのエルドアン大統領はG20サミット後に「トルコ抜きの経済回廊はありえない」と述べたうえで「東から西への貿易で、最適なルートは必ずトルコを通らなければならない」と付け加えた。

トルコは東西を結ぶ架け橋としての歴史的な役割を強調することに熱心で、トルコ政府は代わりに「イラク開発道路」と呼ばれる構想を推している。

「開発ルート」として知られるプロジェクトが完成すると、トルコとの北国境から南の湾岸まで1,200キロメートルに及ぶ国土に広がることになる。

170億ドル(約2兆5000億円)規模のルート案は石油資源が豊富な同国南部のグランド・フォア港から10県を経てトルコに通じる。計画は1200キロメートルに及ぶ高速鉄道と並行した道路のネットワークを想定している。3段階のスキームとなっており、第1段階は2028年、第3段階は50年の完成を目指している。

イラクのスダニ首相は、イラン、ヨルダン、クウェート、オマーン、カタール、サウジアラビア、シリア、トルコ、アラブ首長国連邦の運輸省代表との会議の中でこのプロジェクトを発表した。

イラクやカタール、UAEとの間で「今後数カ月内」に構築する方針の同構想について「集中協議」が進行中だという。

https://www.aa.com.tr/en/middle-east/turkiye-iraq-development-road-project-enhancing-regional-connectivity-trade/2993555

アナリストは、イラク開発道路について財政や安全の観点で実現可能性に懸念があると指摘している。

しかし、ペルシャ湾岸北西部にあるイラクの「Grand Al-Faw港」の建設はすでに着々と進んでいる。 イラク運輸大臣によると、170億米ドルのプロジェクトはほぼ3分の2が完了したという。 第1 段階の完成予定日は 2025 年に設定されており、初期能力年間 350 万Teu の 5 バースのコンテナターミナルが含まれている。 韓国の大宇が第1期工事を進めている。


2023/9/27  米国、太平洋諸島フォーラム首脳との2回目の会合を開催

バイデン米大統領は9月25日、太平洋島しょ国で構成する「太平洋諸島フォーラム(PIF)」の首脳らとの2回目の会議をホワイトハウスで開催した。(2022年9月29日に1回目を開催)

これに先立ち、太平洋の小国であるクック諸島とニウエを国家承認すると発表した。(これにより、仏領のニューカレドニアとポリネシアを除くPIFのすべての国を承認したこととなる。)

バイデン氏は声明で、米国にはクック諸島との長い協力の歴史があり、その歴史は米軍がクック諸島の環礁の1つに空港の滑走路を建設した第二次世界大戦までさかのぼると指摘。クック諸島とニウエを国家承認することで「両国の国民生活にとって最も重要な課題に取り組むため、この永続的なパートナーシップの範囲を拡大することができる」とした。

バイデン氏は歓迎式典で「米国は、自由かつオープンで繁栄し安全なインド太平洋地域の確保にコミットしている。われわれはこのテーブルを囲む全ての国と協力して目標を達成することに尽力する」と述べた。

米国は海底ケーブルによるインターネット接続の改善など地域のインフラ整備への新たな資金提供を確約した。

バイデン氏は気候変動対策、経済成長促進、違法漁業対策、公衆衛生改善を目的とする地域の事業にさらに2億ドルを拠出するため議会と協力すると表明した。

「これらの新たなプログラムや活動は今後数年にわたり、太平洋島しょ国と共に協力を拡大・深化させることへの米国のコミットメントを示すもの」としている。

共同声明によると、首脳らは2025年に再度会議を開催し、その後、2年ごとに政治的に関与していくことで合意した。

PIFの議長国であるクック諸島のブラウン首相は、今回の首脳会議は「繁栄に向けたパートナーシップを発展させる機会」と指摘。数週間後に開催する第52回PIFF首脳会議に「最高レベルで積極的に関与する」よう米政府に要請した。

今回の会議にはPIF加盟18カ国・地域全ての代表者が出席したが、全てが首脳レベルではなく、中国と関係を深めているソロモン諸島のソガバレ首相は欠席した(国連総会には出席)。米政府高官によると、米国はこれに失望したという。 バヌアツのキルマン首相も国内対応を優先し欠席した。

太平洋諸島フォーラム(PIF)は、1971年8月、第1回南太平洋フォーラム首脳会議がニュージーランドのウェリントンにおいて開催されて以来、大洋州諸国首脳の対話の場及び地域協力の核として発展してきた。

16か国・2地域が加盟し、政治・経済・安全保障等幅広い分野における地域協力を行っており、事務局はスバ(フィジー)にある。毎年1回総会を開催し、最終日に総会コミュニケを採択している。

オーストラリア、ニュージーランド、パプアニューギニア、フィジー、サモア、ソロモン諸島、バヌアツ、トンガ、ナウル、ツバル、ミクロネシア連邦、パラオ、マーシャル諸島、キリバス、クック諸島、ニウエ、仏領ポリネシア、ニューカレドニアの16か国及び2地域が参加している。

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中国もこれらの諸国との関係強化を図っており、台湾との国交を断絶する国も増えている。

付記 ナウルは2024年1月15日午後声明を発表し、台湾と断交し中国と国交を結ぶことを明らかにした。 下図 赤字

中国の王毅国務委員兼外相は2022年5月に南太平洋の島しょ国など8カ国を歴訪し、5月30日にフィジーで島しょ国9カ国との外相会議をオンラインで開催した。

2022/6/1 中国、南太平洋島しょ国と外相会議、安保面の合意はできず  

2022年8月にはソロモン諸島が米沿岸警備隊の巡視船の寄港を拒否した。(4月に中国と安全保障協定を締結)


バイデン大統領は2022年9月29日、太平洋島嶼国首脳を招いた会議を初めて開いた。

参加したのは14島嶼国で、豪州とNZがオブザーバーで参加した。

協力強化に向けた「米太平洋パートナーシップ宣言」に署名した。

ソロモン諸島は当初、声明に参加しないとしていたが、中国に配慮して表現を修正させたうえで署名した。
 

  各国・地域名 米国交 台湾
国交
中国
国交
Pacific Islands Forum 2022年中国
外相会議
自由連合
盟約*
米 首脳会議
訪問 会議 2022/9/29 2023/9/25
メラネシア パプアニューギニア    
フィジー    
ソロモン 2019/9
断絶
→ ◯  
バヌアツ    
仏領ニューカレドニア            
ポリネシア サモア    
トンガ    
クック諸島 2023/9        
ツバル        
ニウエ 2023/9        
仏領ポリネシア            
ミクロネシア ミクロネシア    
キリバス 2019/9
断絶
→ ◯    
マーシャル      
パラオ      
ナウル 2024/1
断絶
→ ◯      
東南アジア 東チモール            
豪州            
NZ            
米国            

    *自由連合盟約: 国家としての独立を承認し、且つ経済援助を与える代わりに安全保障(主として軍事権と外交権)に関してはアメリカが統轄するというもの
    期間:マーシャル諸島およびミクロネシア連邦は15年間、パラオは50年間(ただし経済援助は15年間)

 



2023/9/28   大阪地裁、水俣病救済巡る訴訟で国側に賠償命じる 

2009年施行の水俣病特別措置法に基づく救済対象から外れた未認定患者ら128人が国などに損害賠償を求めた訴訟の判決で、大阪地裁(達野ゆき裁判長)は9月27日、原告側の請求を認め、国などに各275万円、総額3億5200万円の賠償を命じた。

付記  チッソは、この判決を不服として、10月4日付けで大阪高裁に控訴した。 国と熊本県も10月10日付けで控訴した。

同様の訴訟は熊本、東京、新潟の各地裁でも提起されており、原告は計1700人超に上る。今回が最初の司法判断となった。大阪地裁の原告は、大阪など2府11県に住む128人で、国と熊本県、原因企業チッソに1人当たり450万円の損害賠償を求めていた。

付記

特措法に基づく救済を受けられなかった熊本、鹿児島両県などの住民ら144人が国と熊本県、原因企業のチッソに1人当たり450万円の損害賠償を求めた訴訟の判決で、熊本地裁(品川英基裁判長)は2024年3月22日、原告の請求を棄却した。

原告のうち25人を水俣病と認定したが、いずれも不法行為から20年で損害賠償請求権が失われる「除斥期間」を適用して退けた。

大阪地裁判決は、2006年以降に訴訟のために実施された検診時を起算点として、国などの除斥期間適用の主張を退けていた。

残る119人は感覚障害の診断などから水俣病とは言えないと結論付けた。

同種の集団訴訟は東京、大阪、新潟でも起こされ、判決は2件目。2023年9月の大阪地裁判決は原告128人全員を水俣病と認め、1人当たり275万円の賠償を国などに命じた。熊本と大阪で司法判断が分かれる形となった。

特措法は、国の基準で患者と認定されていない人にも、一定の要件を満たせば一時金210万円や療養費を支給するとした。2012年7月の期限までに約4万8千人が申請し、3万8320人が対象となったが、9692人が漏れた。

対象地域や居住期間、年齢などで「線引き」する基準が設けられ、原告らは対象外とされた。

主な争点は、原告らがメチル水銀に汚染された魚介類を日常的に摂取していたことが原因で水俣病の症状が発症したと認められるかどうかで、国が特措法で定めた救済基準の妥当性を司法がどう判断するかが注目されていた。

特措法条件:

@チッソ水俣工場がメチル水銀を含む排水をした水俣湾周辺の熊本・鹿児島両県9市町村に1年以上居住(居住歴)
A排水が止まった翌年の1969年11月末までの生まれ(出生時期)

訴えを起こしていたのは、昭和30年代から40年代にかけて水俣病が発生した熊本県や鹿児島県に住み、その後、大阪や兵庫などに移り住んだ50代から80代の128人 。

水俣病特有の手足のしびれなどの症状があるにもかかわらず、2009年に施行された水俣病に認定されていない人を救済する特別措置法で、特措法の対象地域外の出身▽1969年以降に生まれた▽症状はあったが病院などで診断されず、水俣病と認識できずに申請できなかった――などの事情がある。

原告は「同じ地域に住み、同じ海の魚介類を食べていたのに、救済対象外となるのは不合理だ」と訴えた。住んでいた「地域」や、「年代」によって救済の対象外とされたため、不当だとして、国と熊本県、それに原因企業のチッソに1人あたり450万円の賠償を求めていた。

一方、国や県は「原告が訴える症状は、水俣病によるものではない」などとして請求の棄却を求めていた。

判決は次の通り。

原告のうち71人は居住歴の要件を満たさず、国側は「水銀汚染濃度は距離とともに減退する」と線引きの正当性を強調していた。

しかし判決は、大学の調査による魚介類の水銀濃度などから汚染が不知火海の広範囲に広がっていたと指摘。「特措法の対象地域外でも、不知火海で取れた魚を継続的に多く食べた場合は、水俣病を発症しうる程度にメチル水銀を摂取したと推認できる」とし、国の主張を退けた。

熊本県と鹿児島県による毛髪水銀濃度の調査▽魚介類の水銀濃度や浮死の発生状況▽公害健康被害補償法に基づく水俣病認定患者の分布――などを基に検討。不知火海沿岸の各地には、チッソ水俣工場がメチル水銀を含む排水をした水俣湾周辺に匹敵する毛髪水銀濃度の地域もあったなどとし、水俣病を発症しうる汚染が広範囲に広がっていたと判断した。

その上で、沿岸地域の魚介類が行商人による売買で周辺に広がっていた当時の流通状況も考慮。特措法の対象外地域である熊本県の旧姫戸町(現上天草市)▽旧倉岳町(現天草市)▽旧新和町(同)▽旧河浦町(同)――など原告の居住地域でも、水俣病を発症する程度の水銀を摂取したと推認するのが合理的と結論付けた。

出生時期も「(水俣湾に仕切り網が設けられた)1974年1月まで」に水俣湾周辺の魚介類を食べれば水俣病を発症し得たと判断。特措法の期限(施行後3年以内)までに救済を申請しなかった人も含め、認定患者でも特措法の対象でもないとされた原告全員が水俣病で、健康被害の慰謝料を支払うべきだと結論付けた。

水俣病は水銀摂取から長期間経過後に症状が出る「遅発性」も少なくないと指摘。

国側は不法行為から20年で賠償請求権が消滅する「除斥期間」の適用を求めたが、医師らの検査で水俣病と確認できた時期が除斥期間のスタート地点だと位置付け、原告全員について診断が20年以内だとして除斥期間の適用を認めなかった。

慢性水俣病の場合、損害の性質上、加害行為が終了してから相当の期間が経過した後に損害が発生する。当該損害の全部または一部が発生した時が除斥期間の起算点となる。

慢性水俣病は、神経学的検査などによって、確認できる程度に症候が出現する時期と自覚症状の出現時期とが一致するとは限らない。遅発性水俣病について曝露終了から特定の期間内に症状が客観的に現れると認められない。損害の全部または一部が発生したと認められるのは、神経学的検査などに基づいて水俣病と診断された時、すなわち原告らについて共通診断書検診が行われた時だ。原告らに除斥期間を経過した者はいない。

ただし、6人は国などに責任が生じる1960年1月以前に水銀を摂取したとして、チッソにのみ賠償を命じた。

付記  この6人は10月11日、大阪高裁に控訴した。

ーーー

チッソ付属病院の細川院長が1956年4月、歩行障害や言語障害などを訴える5歳と2歳の姉妹を診察した。他にも同様の症状を訴える患者が多数発生していることが分かり、同年5月1日、水俣保健所に「原因不明の中枢神経症患者が多発している」と報告、この日が水俣病の公式確認の日となった。(公式確認以前でも、死んだ魚が水俣湾に浮いたり、ネコが狂ったような状態で死ぬことが確認されており、患者は公式確認の10年以上前から出ていたとされる。)

2006/5/1 水俣病50年

1995年の政治決着で約1万1千人が救済対象となった。
      補償 人数
救済 公害健康被害補償法患者 行政が感覚障害と運動失調など複数症状の
組み合わせにより認定
1,600万円〜1,800万円 補償   2,962
1995年 政治解決* 医療手帳 四肢末端優位の感覚障害 チッソから一時金260万円、
国・県から医療費自己負担分全額、
月額約2万円の療養手当
 11,152
保健手帳 感覚障害以外で一定の神経症状 医療費自己負担分(上限付き)支給   1,222
司法救済 85年8月 2次訴訟(福岡高裁) 600〜1,000万円補償     4
04年10月 関西訴訟(最高裁)
 チッソは二審で確定(51人)
 国・県分のみ上告(45人)
37人へ計7,150万円
8人は賠償取消
(但し二審判決で支払済みで変更なし
    51
新保険手帳 *  関西訴訟で国側が敗訴し、復活 医療費自己負担分支給  21,190

* 医療手帳、保健手帳、新保険手帳は、認定審査、認定訴訟取り下げが条件
  保健手帳、新保険手帳は、補償はなく、
医療費補助のみ 

2009/5/4 水俣病 53年

 

その後も未認定患者らの提訴が相次ぎ、新たな救済策として特別措置法が2009年に施行された。

  2009/7/2 自民・公明/民主 合意、7月8日付で議員立法により成立
対象疾病 1)四肢末梢優位又は全身性の触覚又は痛覚の感覚障害
2)口の周囲の触覚又は痛覚の感覚障害
3)舌の二点識別覚の障害
4)求心性視野狭窄

5)全身性感覚障害

(胎児性水俣病患者に多い「大脳皮質障害による知能障害」は法案への明記を見送り)

救済を受けるには、国や原因企業を相手取った訴訟や、認定申請を取り下げることが条件。

診断 主治医の診断を活用
被害者給付金 別途協議→ 一時金210万円
医療費等  
最終解決に向けた取組 地域指定継続
「チッソが一時金支払いに同意するまで凍結」の条件を加え、容認
(チッソが一時金の支払いに同意するまで、環境相が分社化の前提となる事業再編計画を認可しない)

2009/7/3 水俣病救済法案、衆院を通過、来週成立の見通し

 


2023/9/29 米政府機関閉鎖の可能性 強まる 

米政府は9月28日、新年度となる10月1日以降の連邦政府予算が確保できないことに伴う政府閉鎖を見据え、閉鎖時の対応などについて職員に通知を始めた。

議会下院では多数派を占める共和党の内部対立で、予算案の成立が見通せていない。政府閉鎖となれば、トランプ前政権だった2018年12月〜2019年1月以来となる。

米議会上院の与野党は2018年12月21日午後8時30分に、新たなつなぎ予算案を可決することなく22日正午まで休会に入った。 国土安全保障省、司法省、住宅都市開発省など、連邦政府の約4分の1にあたる機関では12月22日午前0時1分に予算が失効した。

2018/12/31     米政府機関の一部閉鎖、年明けまで続く

上院は2019年1月25日、満場一致で「国境の壁」建設費を含まないつなぎ予算を承認、その後、下院が承認し、ホワイトハウスに送った。大統領が署名し、2018年12月22日から始まり、35日間続いた政府閉鎖はいったん終わった。

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今回の新年度予算を巡っては2023年5月、バイデン大統領とマッカーシー下院議長が、国防費を除いた歳出規模を前年度並みに抑制することで合意。財政拡張を志向する民主党と、緊縮財政を求める共和党の双方が歩み寄り、歳出抑制方針を盛り込んだ法案を超党派で可決した。

Biden米大統領と米連邦議会のKevin McCarthy 下院議長(共和党)は2023年5月27日、米政府債務の法定上限を引き上げることで合意した。債務上限を引き上げる一方で、政府の支出を削減するなどの案で「基本合意に至った」と明らかにした。今後は双方のスタッフ間での法案の文言の調整を進めるほか、28日にはBiden大統領と再び会談し、正式合意に至るとの見通しも示した。

暫定合意には、2年間の債務上限引き上げ(時限措置として現行の上限である約31.4兆ドルを上回る債務残高を認める)に加え、非国防支出を今後2年間にわたりほぼ現行の水準に据え置く歳出合意が盛り込まれた。
非国防支出を2024年度は2023年度と同レベルとし、2025年度は1%だけ増やすとされる。
未使用の新型コロナウイルス資金を回収、一部のエネルギープロジェクトの許可プロセスを加速し、貧しい米国人向けの食糧援助プログラムに要件を追加する。

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しかし、共和党の一部の保守強硬派は、新年度予算でこの合意内容を上回る大幅な歳出削減を要求した。

トップ合意に反する主張だが、党内基盤の弱いマッカーシー下院議長は保守強硬派の声に配慮せざるを得ず、新年度予算の協議は行き詰まった。政府機関閉鎖を避けるため、つなぎ予算の検討に入った。

米上院の民主・共和両党の指導部は9月26日、つなぎ予算により11月17日まで連邦政府機関の閉鎖を回避するとともに、ウクライナ への60億ドル(約8900億円)の支援を提供する計画について合意した。

ウクライナ支援はバイデン大統領が要求した240億ドルには届いていない。ホワイトハウスが求めた緊急災害援助160億ドルのうち60億ドルは含まれている。

ウクライナ支援には保守派が反対しており、ポール上院議員(共和)が、ウクライナ支援を盛り込むことを巡り、手続き上の妨害によって審議・採決を遅らせると脅している。
このため、上院は9月30日深夜の政府機関閉鎖回避期限前に同計画の承認採決を実施できない可能性もある。


下院はそれ以上に問題である。下院のマッカシー議長(共和党)は党内の保守強硬派の反対を受け、譲歩に譲歩を重ねて15回目の投票でようやく新議長に選出された経緯があり、保守強硬派の意見を無視できない立場にある。

下院共和党の保守強硬派でつくる「フリーダム・コーカス(自由議連)」のドナルズ議員は、つなぎ予算案には不要な歳出が多いとして「実現不可能だ」と一蹴した。

下院共和党は、政府機関閉鎖を避けるための予算案には、メキシコとの国境に移民希望者が殺到している現状を踏まえ、新たな入国規制措置を盛り込む必要があるとしている。

具体的に提示しているのは(1)トランプ前大統領が目玉政策としていたメキシコとの国境の壁の建設再開(2)亡命申請者の規制(3)国境管理関係の人員増強と報酬引き上げ――など。

下院の一部共和党議員は、ウクライナ向け追加支援を盛り込んだ法案には反対票を投じる姿勢。

連邦緊急事態管理庁(FEMA)は、ハリケーンや山火事など自然災害の被災者向け支援予算が間もなく尽きると議会に警告しており、 上院では60億ドルの災害支援を含む歳出法案が超党派の支持を獲得したが、これがウクライナ支援とセットになる場合、下院共和党の一部が反対に回る恐れがある。

下院共和党は、社会問題への対応で保守的な政策を入れた歳出法案を幾つか提案している。(1)薬局での経口中絶薬ミフェプリストンの販売禁止(2)国防総省が職員に対して中絶を合法としている州で手術を受けるための旅費を支給することを禁止(3)国防総省による人種多様性プログラム実施の禁止(4)人種問題に関する学校教育の制限――といった内容 。
 

下院のマッカーシー議長(共和党)は9月27日、上院が超党派で合意した11月17日までの政府予算を賄う「つなぎ予算」案について、成立に必要となる下院の採決を行わない意向を示した。

つなぎ予算成立のタイムリミットは9月30日深夜で、間に合わなければ10月1日から一部の政府機関が閉鎖される見通し。

バイデン大統領は9月27日、政府が閉鎖されれば「多くの重要な仕事が影響を受ける」とし、共和党に譲歩を促した。

 

共和党のマコネル上院院内総務は債務上限問題ではマッカーシー議長を公然と支持する姿勢を貫いたものの、今回は上院で取りまとめられている政府機関閉鎖回避のための超党派案を支持し、自身をはじめとする上院共和党と下院共和党との違いを鮮明にしている。  「上院と下院とでは極めて異なる。上院では、超党派ベースで可決が可能な合意に達することに引き続き努め、政府閉鎖がないようにしたい」と語った。

 


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