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これは下記のブログを月ごとにまとめたものです。
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2025/1/20 最高裁、神奈川県の建設石綿訴訟で双方の上告却下、4社への賠償命令確定
建設現場でアスベストを吸い、肺がんや中皮腫を患った神奈川県の元労働者や遺族ら計28人が建材メーカー6社に損害賠償を求めた訴訟(横浜地裁→東京高裁)で、最高裁第3小法廷は1月15日付けで双方の上告を退ける決定をした。
メーカー4社(エーアンドエーマテリアル、ニチアス、エム・エム・ケイ、太平洋セメント)に対し22人に計約1億367万円の支払いを命じた差し戻し後の二審・東京高裁判決が確定した。
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建設現場でアスベスト(石綿)を吸い込んだ元建設作業員と遺族が、国と建材メーカーに損害賠償を求めた4件の訴訟の上告審判決で、最高裁第1小法廷(深山卓也裁判長)は2021年5月17日、規制を怠った国の対応は違法と認め、「違法状態が続いた1975〜2004年の被害に賠償責任が生じる」との初判断を示した。被害原因となった建材を製造した可能性が高い複数のメーカーの連帯責任も認めた。一部の元労働者について審理を高裁に差し戻した。
2021/5/19
神奈川県などの元労働者や遺族ら計28人が建材メーカー6社に計6億9300万円の損害賠償を求めた訴訟の差し戻し控訴審判決が2023年5月31日、東京高裁であった。渡部勇次裁判長は、うち4社に対し、22人へ計約1億367万円を支払うよう命じた。
賠償を命じられたのは、エーアンドエーマテリアル、ニチアス、エム・エム・ケイ、太平洋セメントの4社。
渡部裁判長は、元労働者の作業歴や建材製品の市場シェアなどに照らし、各メーカーの賠償額を算定した。
弁護団の田渕大輔弁護士は判決後に会見し、「責任を負うことが明確になった企業が、時間稼ぎのために訴訟を続けることはもはや許されない状況だ」として、各メーカー(計6社)による全面的な被害救済を求めた。
元労働者側とメーがー側がそれぞれ上告したが、最高裁は今回、双方の上告を退けた。
なお、首都圏建設アスベスト東京1陣訴訟については、東京高裁は2024年12月26日、7社が原告282人に計約40億円の和解金を支払う内容の和解案を提示した。
2025/1/6 東京高裁 建設石綿訴訟で和解案提示
2025/1/23 中居事件とフジテレビのコマーシャル
タレントの中居正広氏が1月23日、有料の会員サイトで芸能界を引退すると発表した。
英BBC(電子版)は「日本のエンターテイメント業界は長い間語られなかった性的暴行事件(sexually assaulting a woman
at a 2023 dinner party held by staff
)の精算に直面している」と報じた。「(フジの)社員がアレンジしたパーティ」としている。
「フジテレビがスキャンダルを隠蔽しようとしたというクレームの中、数十社がコマーシャルを差し止めた」としている。
フジテレビはあまり見ないが、BSのプライムニュースは、夜8時から10時の2時間にわたり、政治・経済問題を議論するので、よく見る。
23日も見たが、驚いた。通常は多数の大企業のコマーシャルが入るが、今回は全く入らず、代わりにACジャパンの公共広告が次々に出てきた。その後、初めて富士紡と原沢製薬のコマーシャルが出た。
通常は番組の終了に当り、提供各社の名前を挙げていき、残りは「ご覧の各社の提供でお贈りしました」と、社名は述べずに画面記載で済ませているが、今回は「ACジャパン、富士紡、原沢製薬の提供でお贈りしました」と2社の名前をあげた。
多数の大企業がコマーシャル枠を買い、代金も支払っているが、フジテレビの番組で自社の名前が広告主として出るのを嫌い、コマーシャル枠をACジャパンに譲ったものである。広告社として社名を出したのは富士紡と原沢製薬の2社だけであった。
ACジャパンによれば、
ACジャパンでは、創設から今日までさまざまなキャンペーンを展開しています。「公共マナー」「環境問題」「親子のコミュニケーション」といった時代を超えた普遍的なテーマ、「多様性」「ネットモラル」「災害」など時代の世相を反映したテーマ、公共福祉活動に取り組んでいる団体を支援するキャンペーン、阪神淡路大震災、東日本大震災など、大災害が発生した時の臨時キャンペーンを扱うものなど、社会がその時もっとも必要としているメッセージを発信し続けてきました。
ACジャパンの活動は、民間の企業・団体が持てる資源を少しずつ出し合い、社会にとって有益なメッセージを広告という形で発信しているCSR(Corporate
Social Responsibility)活動です。
世の中を少しでも良くしたい。今後もこれらの様々な問題と真摯に向き合い、私たちは活動を続けていきます。
ACジャパンは、民間企業の会員社と一般生活者の個人会員の協力によって運営されている。活動資金はすべて会員社と個人会員の会費によるもので、公的な資金は一切受けていない。会員社は広告に関連する3つの業種の約1000社から構成され、それぞれの立場からACジャパンの活動を支えている。
会員である媒体社(放送局、新聞社、出版社、インターネットなど)の広告枠を無償で提供してもらうことで、広告を放送・掲載している。
通常は時々、特定の広告をするだけだが、今回は非常に多数の企業から広告枠の提供を受けたため、延々と広告を流すこととなった。
3月末までの番組の広告枠は決まっており、各社は既に代金を支払っている。問題は4月からのコマーシャルである。今の状況が続けば、コマーシャルを出す企業はごく少数にとどまり、フジテレビの収入がなくなることになる。
早急に問題を解決しないと、会社の存続が危うくなる。
付記
ライオンは1月23日、「人権侵害に関わるため、客観的な事実究明と結果に基づいた適切な対応の実行」を直接申し入れた。
フジとしては今後の広告主との関係も勘案し、1月にACジャパンの広告に差し替えた各社の広告料を請求しないことを決め、2月以降のCMのキャンセルを受け付けることを決めたとされる。
同社の月間広告料は約122億円で、同社の業績への影響は大きい。
同社は1月23日、第三者委員会の設置を決めた。
当社及びフジ・メディア・ホールディングスは、本日開催の両社の臨時取締役会において、第三者委員会の設置を決議いたしました。
この第三者委員会は、日本弁護士連合会が策定した「企業等不祥事における第三者委員会ガイドライン」に準拠するものです。
1. 第三者委員会の設置目的
2023 年6月に当社の番組出演タレントと女性との間で生じた事案に関連した 2024 年12
月以降の一連の報道を受けて、事実関係の調査及び当社の事後対応やグループガバナンスの有効性を客観的かつ独立した立場から調査・検証するため、利害関係を有しない弁護士で構成する「第三者委員会」を設置いたしました。また、調査結果を踏まえた原因分析及び再発防止に向けた提言を得ることも目的といたします。
2. 第三者委員会への調査委嘱事項
1) 本事案への当社及びフジ・メディア・ホールディングスの関わり
2) 本事案と類似する事案の有無
3) 当社が本事案を認識してから現在までの当社及びフジ・メディア・ホールディングスの事後対応
4) 当社及びフジ・メディア・ホールディングスの内部統制・グループガバナンス・人権への取組み
5) 判明した問題に関する原因分析、再発防止に向けた提言
6)その他第三者委員会が必要と認めた事項
3. 第三者委員会の構成
委員長:竹内 朗 (弁護士・公認不正検査士、プロアクト法律事務所)
委員 :五味祐子(弁護士、国広総合法律事務所)
委員 :寺田昌弘(弁護士、三浦法律事務所)
4. 今後の対応
当社及びフジ・メディア・ホールディングスは、第三者委員会による調査に対して全面的に協力いたします。第三者委員会によりますと、調査報告書は本年3
月末を目途としてご提出いただける予定です。当社及びフジ・メディア・ホールディングスは、第三者委員会から調査報告書が提出され次第、速やかに本ガイドラインに従って調査報告書を公表し、必要な対策を講じてまいります。
5. 第三者委員会委員長よりコメント
第三者委員会委員長の竹内朗氏より、次のコメントを預かっておりますので、ご紹介いたします。
「当職は本日、第三者委員会の委員長に就任いたしました。この第三者委員会は、最も独立性・中立性の高い日本弁護士連合会の第三者委員会ガイドラインに準拠して設置され、これに即して運営して参ります。フジテレビ及びフジ・メディア・ホールディングスにとって重要なステークホルダーである、視聴者の皆様、スポンサーの皆様、お取引先の皆様、株主・投資家の皆様、そして従業員の皆様が抱かれている疑問や懸念に対し、説明責任を明確に果たせるよう調査に努めて参ります」
2025/1/25 2025年度の公的年金支給額
厚生労働省は1月24日、2025年度の公的年金の支給額を24年度に比べて1.9%引き上げると発表した。
年金額の伸びを抑える「マクロ経済スライド」が発動されるため、増加率は0.4ポイント目減りした。
直近1年の物価変動率(基本)と比べると0.8ポイントの目減りである。
2025年度の支給額は、国民年金では保険料を40年間納付した満額1人分で前年度比1,308円増の月6万9308円、厚生年金は夫婦2人のモデル世帯の場合、同4,412円増の同23万2784円。
計算は下記の通り。
直近1年の物価変動率 |
+2.7% |
過去3年の名目手取り賃金変動率
|
+2.3% |
採用 |
+2.3% |
マクロ経済スライド |
-0.4% |
最終改定率 |
+1.9% |
マクロ経済スライドによるスライド調整率(▲0.4%)=
公的年金被保険者総数の変動率(▲0.1%) + 平均余命の伸び率(▲0.3%)(令和3〜5年度の平均) (定率)
既裁定者(68歳到達年度以後の受給権者)
|
実績 |
原則 |
2020年度 |
2021年度 |
2022年度 |
2023年度 |
2024年度 |
2025年度 |
直近1年の物価変動率(基本) |
+0.5% |
+0.0% |
-0.2% |
+2.5% |
+3.2% |
+2.7% |
基本は物価変動率
賃金変動率が物価変動率より低い場合は賃金変動率を採用 |
過去3年の名目手取り賃金変動率 |
+0.3% |
-0.1% |
-0.4% |
+2.8% |
+3.1% |
+2.3% |
(採用) |
+0.3% |
-0.1% |
-0.4% |
+2.5% |
+3.1% |
+2.3% |
|
マクロ経済スライド
公的年金被保険者の変動と平均余命の伸びに基づいて、スライド調整率を設定し、その分を改定率から控除 |
-0.1% |
-0.1%
(調整せず) |
当期 -0.2%
繰越 -0.1%
計 -0.3%
(調整せず) |
当期 -0.3%
繰越 -0.3%
計 -0.6% |
-0.4%
|
-0.4%
|
上記の(採用)がマイナスの場合は、調整せず、その分を翌年に繰り越す。 |
最終改定率 |
+0.2% |
-0.1% |
-0.4% |
+1.9% |
+2.7% |
+1.9% |
|
マクロ経済スライド繰り越し |
|
-0.1% |
-0.3% |
ー |
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2025/1/26 米上院 国防長官にPete Hegsethを承認
与党一部からも疑問視
上院は1月24日、トランプ大統領が国防長官に指名していたPete Hegsethを承認した。
Pete Hegsethは FOXニュースの司会者で、元軍人だが、軍や国家安全保障分野の上級職に就いた経験
はない。戦闘任務への女性従事に否定的である。
過去に女性への性的暴行の疑いで捜査を受けていたなどと報じられ、与党・共和党の一部からも起用を疑問視する声が出ていた。
Pete Hegsethは、14日に行われた上院の軍事委員会での公聴会で、優先課題は中国への対応だとし、「同盟国やパートナーと協力し、インド太平洋地域における中国による侵略を抑止する」と述べ、同盟国とともに抑止力の向上を図る考えを示した。
採決では反対に回る共和党議員も出た結果、賛成50票、反対50票の同数となったため、上院議長を兼ねるバンス副大統領が採決に加わり賛成したことから、ようやく承認された。
|
共和党 |
民主党 |
民主系
無所属 |
合計 |
賛成 |
50 |
0 |
|
50 |
反対 |
3 |
45 |
2 |
50 |
異動後 |
53 |
45 |
2 |
100 |
共和党のMarco
Rubio
上院議員が国務長官になる時点で辞任、フロリダ州知事が後任にFlorida
Attorney General Ashley Moody を選び、1/16に就任した。
これで、承認されたのは3名となった。
1月20日 国務長官 Marco Rubio
上院議員 99 対 0 本人は投票せず
1月23日 CIA長官 John
Ratcliffe元下院議員 74 対 25 (棄権 1)
1月24日
国防長官 Pete Hegseth
50 対 50 → 議長が賛成票
2025/1/27 トランプ大統領の大統領令 最初の訴訟
トランプ大統領は就任直後に多数の大統領令を出した。そのなかに「アメリカ市民権の意味と価値を守る大統領令」がある。
憲法修正14条第1節は以下のとおり規定する。
第1節 合衆国において出生し、又はこれに帰化し、その管轄権に服するすべての者は、合衆国及びその居住する州の市民である。
いかなる州も、合衆国市民の特権又は免除を制限する法律を制定又は施行してはならない。またいかなる州も、正当な法の手続によらないで、何人からも生命、自由又は財産を奪ってはならない。またその管轄内にある何人に対しても法律の平等な保護を拒んではならない。
今回の大統領令は、これについて以下のように述べている。
改正第14条はアメリカ国内で生まれたすべての者に普遍的に市民権を付与するものとして解釈されたものではなく、「その管轄権の対象となる」条件を満たさない者を市民権付与の対象外としてきた。
アメリカ国内で生まれても、その管轄権の対象とならない者のカテゴリーには以下が含まれる。
|
母親 |
父親 |
1 |
アメリカに不法滞在中 |
アメリカ市民または合法的永住者でない |
2 |
アメリカに合法的だが、一時的に滞在中
(例えばビザ免除プログラム、学生ビザ、就労ビザ、観光ビザ等) |
このため、上記に該当する場合は市民権を付与しない。本命令発効後30日以降にアメリカ国内で生まれる者にのみ適用される。
これは、不法移民や、米国籍獲得を目的としたBirth Tourism
(出産旅行)の規制が目的である。不法滞在の母親を持つ子供で2022年に全米で生まれた子供は約25万5千人とされる。
これに対し、ワシントン、アリゾナ、イリノイ、オレゴンの4州が差し止めを求めて訴訟を提起。訴えを検討する間、大統領令を一時差し止めるよう求めた。4州は、大統領に憲法を修正する権限はないと主張。大統領令が執行されれば、「米市民権を奪われた人々は不法滞在となり、強制退去や拘束の対象とされ、その多くは無国籍になる」とし、州民らが「回復不可能な損害を直ちに被る」と訴えた。
ワシントン州の連邦地裁のジョン・クーナー判事はは1月23日、25分間の審理を経て、今回の大統領令を「あからさまに違憲」と判断、差し止め命令を出した。大統領は控訴するとしており、最終的に最高裁に持ち込まれるとみられている。
ーーー
本件については既に1898年に最高裁の判断が出ている。
最高裁は1898年の United States v. Wong Kim Ark
事件で、「敵対的な職業に就いている敵性外国人の子供、外国の外交代表の子供を除き、米国内で生まれた全ての居住者の子供を明白に対象にしている。米国内に居住する外国人は全て米国の司法権に属する」とした。
背景
- 修正第14条は、奴隷制度廃止後に、元奴隷やその子孫の市民権を保障するために制定された。
-
19世紀後半、中国人労働者はアメリカ西部に多く移住したが、1882年の「中国人排斥法」により新たな中国人移民が禁止されるなど、移民政策が厳しく制限された。中国系アメリカ人の市民権の問題もこの差別的な背景の中で浮上した。
- 原告 Wong Kim Ark (黄金コ)は1873年にサンフランシスコで中国系移民の両親のもとに生まれた。彼自身はアメリカ生まれであり、修正第14条に基づき市民権を主張していた。彼が中国への旅行から戻る際にアメリカ入国を拒否され、市民権の有無をめぐる法的争いが生じた。
判決の内容
最高裁は1898年に6対2の判断で以下の結論を下した:
-
アメリカで出生したすべての人は、両親の国籍や移民ステータスにかかわらず、アメリカ市民であると確認した。
-
修正第14条の「アメリカで出生し、かつ合衆国の管轄下にある」という文言は、両親が外国人であっても、その子供がアメリカ国内で生まれた場合には市民権を認めると判断した。
-
この原則には例外があり、外国政府の外交官の子供や占領軍の子供など、特定のケースには適用されない。
当時、中国系移民に対する差別が強まっていた中で、この判決は憲法の平等原則を支持するものであり、中国系アメリカ人にとって大きな勝利となった。
これによると、今回の大統領令が「管轄権の対象とならない」とする者は、不法滞在中であれ、一時的滞在であれ、「管轄権の対象」になる。
今回の大統領令を実行するためには、憲法改正か、長年認められてきた最高裁判断を覆す必要があることになる。
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強硬派の間には、1898年の最高裁判断は合法移民の子供に限定した判決だとの解釈がある。
不法入国者の流入は「侵略」で、不法移民は「敵性外国人」との主張もある。
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