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これは下記のブログを月ごとにまとめたものです。

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2021/5/15 新型コロナウイルス変異株の簡単、迅速な識別法を確立 

名城大学薬学部衛生化学研究室の神野透人教授らは新型コロナウイルスのPCR検査時に変異株かどうかを簡単、迅速に識別する方法を開発、愛知県衛生研究所と共同で「実証実験」を行い、この成果と合わせて5月12日に発表した。

今回の識別法は、高分解能融解曲線分析(HRM解析法)という手法を用いる。

まず、ウイルスのゲノム(全遺伝情報)から、試薬(蛍光色素)を結合させたDNA二本鎖をPCRで作成する。
徐々に温度を上げていくと、二本鎖が一本ずつに分かれていき、その際に蛍光強度が変化する。

DNAを構成する塩基の種類が1個でも違えば、温度−蛍光強度グラフの曲線が異なってくる。その曲線の違いから変異の有無と変異株の種類が識別できる。

DNA二本鎖に蛍光色素を結合させておくと、1本ずつに分かれていく際に蛍光が減弱する。
蛍光の強度と温度の関係を示すグラフの曲線は、DNAを構成する塩基によって変る。
つまり、曲線が異なれば「遺伝子変異あり」と判別できる。予め各変異型の曲線が分かっているため、変異株の種類も識別できる。

ウイルスの実物がなくても、文献やデータベースにあるゲノム配列情報に基づいてDNAを合成する技術を導入することで解決 し、従来型、英国型、南アフリカ型、ブラジル型、フィリピン型、日本固有型、カリフォルニア型、インド型の8種類を識別できるようになった。

愛知県衛生研究所との実証実験は2021年4月に3週間にわたって行い、実物の209の陽性検体を用いて、従来型と英国型をほぼ正確に識別できた。

これまでは検体を国立感染症研究所に送り、およそ3万個の遺伝子すべてを解析するため1週間かか る。
この技術は遺伝子の一部の解析で済み、一般的なPCR検査の装置をそのまま使用して、いずれの変異株も90分程度で識別することが可能で、ゲノム解析に要する期間を大幅に短縮できる 。

ーーー

神野教授は薬学部の実習で、名古屋コーチンなど鶏肉の銘柄を遺伝子の配列の違いから見分ける解析法を教えている。

「同じニワトリでも遺伝子の配列が違うので銘柄の違いが分かる。新型コロナウイルス(の従来株と変異株)も同様」と考えた。


この解析法で使う蛍光試薬は、PCR検査で使う試薬とは違い、加熱時に光が強くなった後、弱くなる時の温度で遺伝子配列の違いを精密に区別できる。
新型コロナの変異株で試しても、種類によって光が弱くなる温度が異なることが分かった。

HRM解析法自体は一般的な手法だが、ゲノム増幅に用いるDNAの設計開発には同研究室独自の工夫があり、それが今回の研究にも生かされ た。

 

この研究は、衛生薬学分野を専門とし、日頃から社会貢献を意識して研究に臨んできた同研究室の教員・大学院生の、「コロナ禍に対して何か貢献できないか?」という議論からスタートした。

実際のウイルスを用いた実験ができない制約の中、文献やデータベースにあるゲノム配列情報に基づいてDNAを合成する技術を導入することで、解決した。

今後新たな変異型の存在が報告された場合も、感染が拡大する前に、配列情報からDNAを合成して変異型の温度―蛍光強度特性を解析し、検出体制を速やかに整えられる。

このプロジェクトには、生物物理化学を専門とする薬学部の小田彰史教授も参加し、遺伝子変異が感染力や毒性に及ぼす影響をコンピューターで予測する方法を開発してい る。
新たな変異型が生じた場合、速やかに感染力や有害性を予測し、その型に応じた検出技術を確立するとしている。

 


2021/5/17      ENEOS、石炭事業から撤退

石油元売り最大手ENEOSホールディングスの大田勝幸社長は5月12日、オンラインでの決算発表記者会見で、石炭事業から撤退する方針を決めたと表明した。

「いまの石炭の環境問題に対する大きな流れなどを考えると、将来の当社のコア事業として持つ必要はないと判断した」と理由を説明した。

ENEOSは前身の旧日本石油時代の1981年に石炭事業に参入。豪州やカナダの炭鉱の権益を持ち、共同運営や開発を手掛けるほか、年間約1000万トンの石炭を日本の電力会社などに販売している。

保有する豪州やカナダの炭鉱の権益を売却する。

大田社長は「当社のポートフォリオとしてはそれほど大きなものではない」とし、関連資産の売却金額は「恐らく数十億円程度のレベル」との見方を示した。

「上流の権益の撤退と併せ、顧客の同意が得られれば販売についてもやめていく」とした。ただ、山口県の石炭中継基地で行っている輸入炭の受け入れや貯蔵、出荷業務の扱いは現在未定という。

ーーー

同社の石炭事業は次の通りで、ホームページで下記の通り記している。

「総合エネルギー企業」を目指しており、石炭ビジネスもその一翼を担う重要な事業と位置付けています。
海外炭の輸入販売の他、豪州及びカナダにおける炭鉱共同運営・開発や日本国内のコールセンター事業も行い、日本のお客様への石炭安定供給に取り組んでおります。

当社は1981年に石炭事業に参入しましたが、燃料油取引で培ったお客様との関係を活かし、現在では年間約1,000万トンの石炭を日本の需要家に販売しています。

海外石炭では下記に参加している。

1) 主力の豪州産バルガ炭   (1990年資本参加)

1992年に日本の電力会社に初納入して以来、現在までに全電力会社に納入実績があり、電力会社を中心に800万トン以上販売する豪州トップブランドに成長。
露天掘と坑内掘の2つの炭鉱および選炭工場を持つ年産約1,100万トンの大規模な炭鉱。

所在地:ニューサウスウェールズ州

開発生産企業:Bulga Joint Venture

出資者:

  比率 株主
Oakbridge Pty Ltd 87.5% Eneos      
Glencore (Operator) 
豊田通商 
JFE商事 

15.2%
78.0%
5.0%
1.8%

日本製鉄 12.5%  

 

2) カナダ Sukunka・Suska鉱区(強粘結炭と呼ばれる希少な高品位原料炭)

2012年3月にXstrata(現 Glencore)から鉱区保有会社の株式の25%を取得した。

Xstrataは多種類の資源を扱うスイスの大手企業であり、世界最大級の資源メジャー。 2013年に筆頭株主であったスイスの商社Glencoreと合併。

立地:British Columbia州

資源量:Sukunka鉱区 2.4億トン程度、Suska鉱区 2.4億トン程度

 

3)インドネシア Horna 炭鉱(一般炭中心、2011 年6 月6 日にPT Horna Inti Mandiri の5%の株式取得)

立地 : インドネシア・西パプア州
資源量 : 資源量1 億トン程度
生産能力: 約200 万トン/年程度

 


2021/5/18 米連邦取引委員会の委員、セブン&アイによる米スピードウェイ買収に異議

セブン&アイ・ホールディングスは、米子会社7-Eleven, IncによるMarathon Petroleum からのコンビニエンスストア併設型ガソリンスタンド部門「Speedway」事業に関する株式その他持分の取得が5月14日に完了したと発表した。

取引の対価の総額は210億ドル(2兆3232億円)で、日本で普通社債で3,500億円、金融機関借入4,820億円を、米国で普通社債で10,950百万ドル、金融機関借入で2,250百万ドルを調達して支払いにあてた。

取得した店舗への今後
15年おけるガソリン供給契約をMarathon Petroleum と締結した。

これに対し、米国の連邦取引委員会の一部の委員が異議を唱えた。

 

付記

7-Eleven, Inc は5月19日、買収した「Speedway」と7-Elevenの合計293店の売却で米3社と合意したと発表した。

売却の内訳はAnabi Oilに124店、Jacksons Food Storesに63店、CrossAmerica Partnersに106店舗で、同社は4月末にFTC事務局との間で、給油所293店の売却を含む和解契約で合意していた

米東部地域では今回の売却後もシェアが高い地域があるとされ、今後のFTCの動向に注目が集まっている。

付記

米連邦取引委員会(FTC)は6月25日、下記の内容の同意命令書を決議で承認した。一部の委員が反対を表明していたセブン&アイによる同業「スピードウェイ」の買収が承認される見通しとなった。

委員の4人が賛成し、就任したばかりのカーン委員長は棄権した。

FTCが発表した合意内容によると、セブンイレブンは、上記の通り、米国内の「スピードウェイ」と「セブンイレブン」の合計で293店を米同業など3社に売却し、今後5年間は店舗を買い戻すのにFTCの承認が必要になる。また、10年間はFTCが指定した商圏で資産を売買する際はFTCへの事前通知が必要となる。

ーーー

セブン&アイは2020年8月3日、同社の米国子会社7-Eleven, Incを通じて、米石油精製会社Marathon Petroleumの傘下の「Speedway」ブランドで運営されるコンビニエンスストア事業および燃料小売り事業を持つ複数の事業会社の株式その他の持ち分を取得することを発表した。 米国にはガソリンスタンド併設のコンビニエンスストアが多い。「Speedway」はMarathon Petroleum直営のガソリンスタンドとコンビニを運営する。

Marathonは2019年10月にSpeedway事業を分社化し、上場させる方針を発表した。選択と集中戦略に基づく方針で、ガソリン需要の低下が予想されて逆境にある本業の石油精製事業をテコ入れすることを目的とした。

その後、事業売却に方針を変更し、英ガソリンスタンド運営EG Groupに投資する英投資ファンドのTDR Capital やセブン&アイと交渉を行った。当初の売却提示価格は220億ドルであった。

一旦はセブン&アイが断念したとの報道もあったが、最終的にセブン&アイが当初提示価格よりも安い210億ドルで買収した。取引完了は2021年第1四半期(1〜3月)を見込んだ。

セブン&アイは成長戦略の柱として海外、特に北米市場でのコンビニ事業を掲げている。傘下の7-Eleven, Incは全米で約9,800店舗を運営しており、業界で最大手となっている。

米国で業界第3位のSpeedway(約3,900店舗、2019年末時点)を買収することで、米国内店舗は約1万4,000店舗と大きく拡大し、業界第2位の カナダのケベックでスタートした Alimentation Couche-Tard(“Couche-Tard”や“Circle K”など 約5,900店舗、2019年末時点)を店舗数で倍以上引き離すことになる。

但し、米国ではコンビニが乱立しており、Speedwayを合わせても、同社のシェアは約9%にとどまる。

 

その後、セブン&アイは米FTCとの手続きを進めてきた。

買収後のシェアは約9%で、これ自体は問題にはならないが、FTCは一部の州で寡占化によるガソリン価格の高騰を懸念した。

FTCの審査で難航し、FTCの要請に基づき契約時期を4回変更し、当初2021年3月までとしていた買収完了予定の延期に応じ、最終的にスピードウェイ買収の契約日を5月14日と決めた。

4月末にはFTC事務局との間で、給油所293店の売却を含む和解契約で合意した。FTCの事務方も委員に合意の承認を勧告したという。

FTC委員会は定員5名で、決定には過半数の賛成が必要である。(同一党からは3名しか指名できない。)

しかし、現在1名が欠員で、民主党系が2名、共和党系が2名となっている。

Biden大統領は3月22日、空席のFTC委員にLina Khan を指名した。任命は上院の承認待ちとなっている。

民主党系2名、共和党系2名のFTCは、全委員がこの取引に問題があると認識したが、対処方針をめぐり意見が分かれ、過半数の合意が必要となる買収の阻止や訴訟などの強制措置には至らなかった。

報道によると、合意した契約日の3日前の5月11日、Slaughter臨時委員長らが合意を検討するための時間がほしいと要請した。セブン&アイは「法的根拠がない」として拒否し、5月14日に契約を締結した。

これを受け、民主党系のRebecca Kelly Slaughter臨時委員長、Rohit Chopra 委員が連名で異議を唱える声明を発表した。

「独占につながる懸念がある違法なものだ」とし、全米のガソリンスタンドやコンビニでの価格高騰を招くとした。

競争上の懸念を払拭する対策を合意できていないなかでの契約締結は「極めて異例で困惑している 。両社は自己責任で契約を進めた」とし、司法当局と連携して調査を継続し、反競争的な弊害に対処するため「適切な道筋を決める」と している。

共和党系のNoah Phillips委員とChristine Wilson委員も買収の違法性には同意しており、「効果的な救済策を講じないまま、FTCは取引の完了を許可した」と非難した。臨時委員長らの声明について「当事者を拘束せず、消費者は無防備なままだ」と不満を漏らした。

 

セブン&アイは今後、事業の分離を求める訴訟などのリスクを抱える可能性がある


2021/5/18 EUと米国、鉄鋼・アルミニウム関税問題で休戦 

EUと米国は5月17日、トランプ前米政権が導入した鉄鋼とアルミニウムの輸入制限をめぐり、追加関税の拡大を停止する「休戦」で合意した。

EUは6月1日に予定していた対米報復関税の拡大を保留し、両政府は貿易紛争の背景にある鉄鋼とアルミの過剰生産問題に関して対話を始める。2021年末までの合意を目指す。

欧州委員会のドムブロフスキス執行副委員長は、バイデン政権との合意に基づきEUは来月の関税引き上げを控えるほか、欧米で鉄鋼業界の過剰生産能力に関する対話を行うことを明らかにした。
関係者は、最終的な関税撤廃に向け取り組んでいるが、まだその用意はないとしている。

バイデン政権は中国に対抗するため、EUなど同盟国・地域と連携する方針。

ーーー

トランプ前政権は2018年5月31日、安全保障上の脅威に対抗する米通商拡大法232条(国防条項)に基づき、EUUや日本、中国など外国製の鉄鋼に25%、アルミに10%の関税を上乗せした。

2018/6/2  米、EU・カナダ・メキシコに鉄鋼・アルミ関税発動 

欧州委員会は2018年6月6日、対抗措置として、米国からの輸入品に報復関税を課す方針を正式決定した。EUは被害を2017年ベースで64億ユーロ(71億米ドル)としている。

  米のEUからの輸入 追加税率 追加税額
Steel 製品 59億ドル 25% 15億ドル
アルミ製品 12億ドル 10% 1億ドル
合計 71億ドル   16億ドル

EUは直ちに28億ユーロ(32億ドル)相当の製品に課税する。

対象は、鉄鋼・アルミ製品のほか、オレンジジュース、バーボン、たばこ、化粧品、シャツ、ズボン、靴、バイク、ボートなど。

残りの36億ユーロ(38億ドル)相当の製品には、3年後又はWTOでの裁定のあった時のいずれか早い時期に課税する。

EUの報復課税

対応する米国の課税

時期 製品リスト 追加税率 製品 EUからの輸入 追加税率 追加税額
即時課税 Annex 1 * 25%
(1品目のみ10%)
Carbon and alloy flat,
Carbon and alloy long
32億ドル 25% 7億ドル
後日 Annex 2 * 10%、25%、35%、50% Steel 残り 26億ドル 25% 7億ドル
10% アルミ製品 12億ドル 10% 1億ドル
合計     71億ドル   16億ドル

 * 製品リスト  List of products for rebalancing

2018/6/7     EU、米国の鉄鋼・アルミニウム輸入制限への報復関税、7月発動へ 

欧州委員会は2018年6月20日、報復措置の第1段階を発動すると発表した。

米国からの輸入品28億ユーロ相当に25%の関税賦課を最終承認した。対象品目はハーレーダビッドソンの二輪車やリーバイストラウスのジーンズなど。米国製のトランプカードにも10%の関税をかける。

2018/6/23     米国の鉄鋼・アルミ関税問題のその後 

 

EUは3年後の本年6月1日に第2陣の36億ユーロに相当する製品の関税上乗せを予定していたが、今回、これを保留する。


2021/5/19  

最高裁、建設アスベスト訴訟で 国と企業の責任認める

建設現場でアスベスト(石綿)を吸い込んだ元建設作業員と遺族が、国と建材メーカーに損害賠償を求めた4件の訴訟の上告審判決で、最高裁第1小法廷(深山卓也裁判長)は5月17日、規制を怠った国の対応は違法と認め、「違法状態が続いた1975〜2004年の被害に賠償責任が生じる」との初判断を示した。被害原因となった建材を製造した可能性が高い複数のメーカーの連帯責任も認めた。

横浜、東京、京都、大阪の4つの地裁に起こされた裁判で、一連の集団訴訟では初めて、最高裁判所が判決を言い渡した。

今回の4件についての高裁判決、過去の最高裁判決は下記の通り。(〇は有罪、Xは無罪、一人親方の〇は補償対象、Xは補償対象外)
 
    メーカーの責任 一人親方への責任
最高裁第一小法廷 横浜地裁 東京高裁 2017/10   X   労働関係法令が保護対象とする「労働者」には当たらず、国は賠償責任を負わない
東京地裁 東京高裁 2018/3 X  「健康被害との因果関係が立証されていない」 〇  建設現場で労働者とともに作業に従事
最高裁 2020/12 2021/2/25に弁論  
京都地裁 大阪高裁 2018/8   〇  労働安全衛生法には「労働現場で生じる健康障害について労働者以外の保護を念頭に置いた規定がある」
最高裁 2021/1    
屋外作業1名:3/22に弁論
大阪地裁 大阪高裁 2018/9   〇  労働安全衛生法上の保護対象ではないが、国の違法行為があれば保護されるべき
最高裁 2021/2/22      
  屋外作業1名:4/19に弁論

詳細は  2018/9/5  建設石綿訴訟の控訴審、原告全面勝訴 


最高裁第一小法廷が担当する4件のうち、横浜分を除く3件は既に判決が出ているが、いずれも理由なしで原告または被告側の上告を却下し、一部の賠償が確定していた。
また高裁判決の一部については判断をせず、その後に弁論を開き、双方の意見を聴取した。

一人親方への責任、メーカーの責任、屋外作業者への責任で、判断が分かれていた。

今回、4件について最高裁としての判断を下したもので、裁判官5人全員一致の意見である。

(国の責任)

国は石綿の吹き付け作業を禁じた1975年10月1日には、肺がんや中皮腫の危険性を認識していたと指摘 した。
建設事業者に労働者への防じんマスク着用を義務付けたり、建材に危険物と表示するようメーカーを指導したりすることを怠ったとし、国が石綿使用を原則禁止した2004年9月30日までの29年間を違法と判断した。

(メーカーの責任)

メーカーが警告表示なしに建材を販売し、元労働者らに石綿を吸わせる結果になった点も違法と認定 した。

労働者は複数の現場で作業するため、 「複数の企業が個別にどの程度の影響を与えたかは不明」だが、シェアの高いメーカーの製品は現場に届いた可能性が高いなどとして各社の共同不法行為(民法719条1項後段類推適用)を認め、「各社は連帯して損害賠償責任を負う」とした。

下記のシェア上位企業10社を対象とし、メーカーごとの責任の範囲や賠償額については、高裁で審理することを命じた。

エーアンドエーマテリアル、神島化学工業、日鉄ケミカル&マテリアル、大建工業、太平洋セメント、
ニチアス、日東紡績、日本バルカー工業、ノザワ、エム・エム・ケイ

(救済対象)

労働者のほか、労働法令では労働者とみなされない個人事業主の「一人親方」についても、「労働者と同等に保護されるべきだ」として救済対象に含めた。
一人親方を救済しないことは「合理性を欠き、違法」だと結論付けた。

屋内作業者が対象となる。解体工 については国の責任は認めたが、メーカー責任は認めず。
(メーカーの場合、仮に警告表示していたとしても、解体時には警告を認識できないため、被害は回避できない。)

主に屋外で作業していた元労働者への責任は「国やメーカーが危険を認識できたとは言えない」として認めなかった。
屋外作業でのアスベスト濃度について、「規制値を下回っていたとするデータもある」などとして訴えを全面的に退けた。
 
    建材メーカー
対象職種 屋内作業者
解体工 X 
屋外工  X 

 


判決後の会見で、原告の弁護団長は最高裁判決を受けて政府が示す和解案を受け入れる方針を明らかにし、被害者の救済が前進することになった。

ーーー

最高裁で東京、京都、大阪のアスベスト集団訴訟での国の賠償責任が確定したことを受けて、自民・公明両党は2021年2月、被害者の救済策を検討する合同の対策チームの初会合を開き、関係者へのヒアリングを行うなどしたうえで具体策を取りまとめる方針を確認した。

今回の最高裁判決を前に、自民・公明両党の対策チームが早期解決に向けた救済策の骨子案をまとめた。

国に対し、原告に和解金などの支払いを求めるとともに、訴訟に参加していない被害者にも給付金を支給する制度の創設を目指すとしてい る。

被害者が求められる慰謝料の総額を最大2600万円とし、国が原告に症状などに応じて最大で1300万円の和解金を支払うことを求めてい る。

また、和解金に加えて、長期間にわたる訴訟の負担を考慮した解決金を支払うほか、国が拠出する基金を財源として、訴訟に参加していない被害者にも給付金を支給する制度の創設を目指すとしてい る。

議員立法で救済法を制定する。

 

菅総理は5月18日、総理大臣官邸で建設アスベスト訴訟原告団・弁護団等と面会して謝罪し、与党側がまとめた救済策に沿って、原告に和解金などを支払う方針を示すとともに、訴訟に参加していない被害者に対する給付金制度の実現に取り組む考えを示した。

国と原告団、弁護団は同日、和解の基本合意書を締結した。

国が原告に症状などに応じて500〜1300万円の和解金を、長期間にわたる訴訟の負担を考慮した解決金30億円を弁護団側に支払うこと、
訴訟を起こしていない被害者への補償制度を設け、和解金と同じ額の給付金を支給することなどを折り込んだ。



2021/5/20  韓国、官民協力で「K半導体ベルト」構築 

韓国政府は5月13日、ソウル南方にあるサムスン電子の平沢事業所で「K(韓国型)半導体戦略」の報告会を開き、「総合半導体強国」の実現に向けた戦略を発表した。

半導体メモリだけではなくシステム半導体(非メモリであるシステムLSI 製造やファウンドリサービス)でも世界一を目指す。

文在寅大統領は、「半導体は韓国の輸出の2割を占める重要な産業で、今年の年間輸出額は1000億ドルを超える見通しである。韓国内に世界最高の総合半導体生産基地を構築し、世界の半導体サプライチェーンをリードする」と述べた。

企業と協力し、2030年までに世界最大・最先端の半導体供給網「K半導体ベルト」を国内に構築することが戦略の柱で、半導体の製造、素材・部品・装備(装置や設備)、先端装置、設計などをひっくるめた半導体製造インフラを整備する。

サムスン電子やSKハイニックスなどの関連企業が今後10年間に総額510兆ウォン(約50兆円)以上を投資し、政府は民間投資を後押しするため税額控除や金融支援を拡大する。

ソウル近郊・京畿道の板橋(設計に特化するファブレス企業による「韓国型ファブレスバレー」)→ 器興 (Samsungの工場所在)→華城 (Samsungの工場所在)→平沢 (Samsungの工場所在)→忠清南道・温陽 (Samsungの後工程工場)へと南北につながる西側 に、東側の京畿道・利川 (SK Hynixの本社工場)、忠清北道・清州 (SK Hynixの工場所在)が京畿道・竜仁の(SK Hynixの竜仁半導体クラスター:下記)で連結し、「K字型」(Korea のK)になっている。

メモリー、ファウンドリー(受託生産)、素材、部品、設備、半導体パッケージング(封止)、ファブレス関連企業を地域別に集め、技術開発と生産能力を最大化させていく。

半導体関連の人材育成にも取り組む。半導体関連学科の定員拡大や契約学科(大学が企業との契約により設置する学科)の新設により、10年間で3万6千人を育成する。

こうした戦略が滞りなく進めば、年間の半導体輸出額は2020年の992億ドルから2030年には2000億ドルに増加し、雇用者数も計27万人に増えると政府は見込んでいる。

通商産業資源部によると、「K-半導体戦略」の核心部分の概要は以下の通り。

  • 研究開発・施設投資税額控除を拡大

     研究開発投資に対する税額控除率を最大40〜50%、設備投資に対する税額を最大10〜20%減税する
     

  • 1兆ウォン以上の半導体などの設備投資特別基金新設 (低金利)
     
  • 半導体工場のための10年分用水量の確保
     
  • 政府、電力会社による半導体関連の電力インフラ最大50%の共同分担サポート
     
  • 大学における半導体関連学科定員の拡大
     
  • 大学における半導体に関する契約学科5つの新設 (半導体開発人材確保)
     
  • 次世代パワー半導体、AI半導体、先端センサなどの開発に1.5兆ウォン以上の政府助成を推進
  • 「半導体特別法」制定のための立法方向の本格議論

韓国産業通商資源部は3月29日、SK Hynixから建設申請が出されていた120兆ウォン(約12兆円)規模の京畿道龍仁市の半導体クラスター工業団地の計画を承認したとに告示した。

2021年第4四半期に工場建設に着工し、2025年はじめに第1段階となるウェハファブの1棟目が竣工する予定。最終的には4つのファブが建設され、その生産能力は合計で月産80万枚(300mmウェハ)を計画している。

龍仁一帯に自社の半導体ファブ群のほか、50以上の半導体材料‧部品‧装置メーカーが協力会社として入居し、半導体企業と素材・部品・装置サプライヤの共生型クラスター構築を目指すとしており、これにより、1万7000人余りの雇用が創出されるものと韓国政府も期待を示している。

政府は龍仁半導体クラスターを2021年2月に「素材・部品・装置特化団地」に指定、工業用水(26.5万トン/日)の確保や、2つのSK Hynix専用の送電線の構築といったことを進めており、まだ一部完了していない土地の買収に向けた支援なども行っていく。

龍仁市の南西には、平澤市があり、Samsung Electronicsが3棟目の半導体ファブが建設中である。

 

2021/5/21  EUから米国への個人データ移管禁止

アイルランド高裁は5月14日、欧州連合(EU)域内から米国への個人データ移管を禁じる仮命令を不服とした米フェイスブック(FB)の申し立てを却下した。

フェイスブックが欧州拠点を置くアイルランドの規制当局であるデータ保護委員会(DPC)は2020年9月にデータ移管を禁止する仮命令を出した。
EUが2018年に導入した一般データ保護規則(GDPR)に沿わないなどと判断した。

これに対してFB側は「壊滅的な結果をもたらす」として異議を申し立てていたが、アイルランド高裁は「FBはデータ保護委員会の決定に反論する根拠を示せなかった」として却下した。

FBは高裁の決定を受け、「他の企業と同様に欧州の規則に従い、適切なデータ保護措置に基づいてグローバルなサービスを提供している。アイルランドの仮命令はFBだけでなくユーザーや他の企業にも損害を与える可能性がある」とコメントした。

データ移管禁止が最終的に確定すれば、EU全域のユーザーデータを米国に送れなくなり、ターゲット広告など個人情報を活用した事業展開が制約を受ける可能性がある。

ーーー

EUは2018年に一般データ保護規則(GDPR)を導入した。

標準契約条項(SCC)」は欧州委員会が決定したデータ移転契約のひな型で、個人データの欧州経済領域(EEA)外への移転を適法化するための手段の一つである。


米欧間の個人データの移管は規制が厳しくなっている。

EUの個人情報保護指令では、EU域外への個人情報データの移転は、基本的には、欧州委員会がデータの移転先国が法整備などに基づいて十分な個人情報保護措置を講じていると「十分性認定(adequacy decision)」をした場合にのみ認められている。

ところが、米国との間には、連邦法や州法が絡み合うなど同国の独特な事情により、「十分性認定」が存在しない。
(日本とEUは2019年1月に相互に十分性認定をしている。)

そのままでは経済活動に支障が出るため、2000年7月、従来の「十分性認定」とは異なるが、同等の保護を得るための枠組み「セーフハーバー」に合意、米国商務省が認証した企業にのみ個人情報の移転を認めてきた。

2013年の「スノーデン事件」を受けて、オーストリアのSchrems氏が自らの Facebook上の個人情報が米国に移転され、米国の法執行機関や公的機関によって利用されるリスクがあるたとして行った申し立てをきっかけに、セーフハーバー協定の有効性の判断がEU司法裁判所に求められ、2015年10月、同裁判所はセーフハーバー協定自体が無効であるとの判決を下した。(Schrems I 事件)

この判決を受け、EUと米国は規制内容を大幅に強化する枠組みの策定に動き、2016年7月12日に新たに「プライバシーシールド」が欧州委員会によって採択され、同枠組みは翌8月1日から本格稼動することとなった。国境を越えたデータの交換において、ユーザー情報の大量収集を防止したり、EU市民のデータへのアクセスを制限するといった内容を含む、高度かつ法的強制力のあるデータ保護標準の実現を目的として締結された。

セーフハーバー協定を無効としたSchrems I 事件判決の翌月、Facebook Irelandと米Facebookは標準契約条項(SCC)を締結した。


Schrems氏は、アイルランドの監督機関に対し、FacebookによるSCCに基づく移転の禁止を申立てた。

これに対しアイルランド監督機関は、Schrems氏の主張の当否はSCCの有効性に左右されるとの理由で、アイルランド高等法院に対し欧州司法裁判所の先決裁定を求めるよう申立てた。

高等裁判所は欧州司法裁判所 に付託した。

EUの最高裁判所にあたる欧州司法裁判所は2020年7月、米・EUが2016年に締結した「プライバシー・シールド」を無効とする判断を下した。Schrems U 事件
個人情報をEU域外に移管するための「標準契約条項(SCC)」については有効とした。

欧州司法裁判所は、個人データが第三国の法律により政府機関による監視の対象になる場合においても、個人データの移転は「一般データ保護規則」(GDPR)の適用を受け、GDPRにより保証される保護と同等のレベルの保護の提供が必要であることを確認した。

その上で、「標準契約条項」(SCC)にはGDPR上必要なレベルの個人データの保護を確保する実効的な制度が含まれることから、SCC決定を有効とした。
しかしながらSCCに従って行われた個人データの移転であってもEUの一般データ保護規則に沿った適切な保護措置が講じられているかどうか、各事業者において検証する必要があるとした。

一方、プライバシー・シールドに関しては、米国政府機関が個人データにアクセスする場合、米国法に基づく個人データの保護はEU法上の保護と実質的に同等のレベルとは認められないとし、同決定を無効と判断した。

FBはこれをもとに米欧間のデータ移管を継続している。米グーグルもSCCを根拠にデータを移管する方針を利用者に知らせている。アイルランドがSCCも認めないとの結論を下せば米国へも他の国と同様にデータを移せなくなり、他の大手企業や多くのユーザーに影響する可能性がある。

 

欧州司法裁判所の判断を受け、アイルランドの規制当局であるデータ保護委員会(DPC)はFBに対する調査を始め、2020年9月に一般データ保護規則(GDPR)に沿わないなどと判断し、データ移管を禁止する仮命令を出した。

フェイスブックがアイルランドの仮命令を順守するには、EUユーザーから回収する個人情報の大半を削除するか、EUユーザーへの全サービスをいったん中断し、サービスの見直しを余儀なくされる。命令を順守しない場合、DPCにはフェイスブックに年間売上高の4%に相当する28億ドルを上限とする制裁金を科す権限がある。

アイルランドがSCCも認めないとの結論を下せば米国へデータを移せなくなり、他の大手企業や多くのユーザーに影響する可能性がある。

FB側は「壊滅的な結果をもたらす」として異議を申し立てていた が、高裁は今回、「FBはDPCの決定に反論する根拠を示せなかった」として却下した。

 


2021/5/21     厚労省の部会、Moderna とAstraZenecaのワクチン承認を了承

これを受け、田村厚生労働大臣が21日にも正式に承認する。

Moderna製は5月24日に東京都や大阪府で開設する国の大規模接種会場で使用する。

しかし、AstraZeneca製のワクチンについては、極めてまれに血栓が生じるリスクがあるため、厚生労働省は直ちに公的な接種に使わず、推奨する年齢などを慎重に検討する。

 

先行のPfizerを加え、3種のワクチンが承認された。

年内の供給量は、いずれも1人2回接種で、
 Pfizer 1億9400万回分、Moderna 5000万回分、AstraZeneca 1億2000万回分で、合計 3億6400万回分となっている。

いずれも海外での承認を得たものに対する特例承認によるものである。

特例承認は、@疾病のまん延防止等のために緊急の使用が必要、A当該医薬品の使用以外に適切な方法がない、B海外(日本と同水準の国)で販売等が認められている、という要件を満たすもので、法律では、対象品目は「新型インフルエンザのワクチンと新型コロナウイルス感染症にかかる医薬品」で、
「日本と同水準の国」は「米国、英国、カナダ、ドイツ、フランス」のみである。

但し、人種による効果、副作用の可能性があるため、別途、国内治験を求めており、これが諸外国と比べての承認の遅れとなった。

ーーー

Modernaのワクチンは先行のPfizerのワクチンと同様、mRNAワクチンである。社名のModerna は発明の基であるmodified mRNAから採った。

2021/3/26 Moderna, Inc.のDerrick Rossi 

武田薬品工業はModerna ワクチンの日本でのPhase T/U 臨床試験を実施、3月5日に厚生労働省に製造販売承認を申請した。

武田薬品は 5000万回分(2500万人分)を輸入し、国内供給を行う。

同社はNovavaxとも提携しており、製造技術の提供を受け、日本国内向けのワクチン製造・流通を担当する。

2021/3/30   Novavax、ワクチンの原料不足でEUへの供給契約締結を延期

ーーー

AstraZenecaのワクチンはウイルス遺伝子の一部を別のウイルスに組み込んで使う「ウイルスベクターワクチン」。有効性は70%で、Phizerの95%、Modernaの94%に比べ若干落ちる。

2020年12月10日、日本政府との間で、日本における1億2千万回分の新型コロナウイルスワクチンAZD1222の供給について最終合意書を締結した。

日本においては国内の臨床試験の結果も合わせてAstraZenecaが承認申請を行った。

日本への供給の1億2千万回分のうち、25%分は輸入し、75%の9千万回分を日本でJCRファーマに委託生産する。輸入の3千万回分は既に輸入済み。

JCRファーマはAstraZenecaから製造技術の移管を受け、遺伝子を改変したアデノウイルスの提供も受けた。これを培養し、精製する。

日本での供給体制は下記の通り。

原液

@ 輸入、A JCRファーマに製造委託

バイアル充填 第一三共バイオテック KMバイオロジクス
保管・流通 第一三共 Meiji Seika ファルマ

2021/1/30 AstraZeneca、ワクチンを日本で製造委託 

 


 

2021/5/22 ipS細胞による筋萎縮性側索硬化症(ALS)治療薬探索  

慶応大の研究チーム(大学病院神経内科診療科・中原仁教授、医学部・岡野栄之教授ら)は5月20日、難病の筋萎縮性側索硬化症(ALS)の人にパーキンソン病の薬 ロピニロール塩酸塩を投与する医師主導治験を行い、その安全性と有効性を確認したと発表した。

ALSは筋肉を動かす神経が障害を受け、全身の筋肉がやせていく進行性の難病で、細胞内に特定のたんぱく質が異常にたまることなどが原因とされる。薬やリハビリで病気の進行を遅らせることはできるが、現時点で治す方法はない。

グループはALSの人のiPS細胞からつくった神経の細胞で病気の状態を再現させることに成功、さまざまな病気に使われる約1230種類の薬で効果を試し、2016年にパーキンソン病の薬であるロピニロール塩酸塩がALSの病態に有効であることを見出した。

この薬は、「家族性ALS」の人のiPS細胞を使って発見した。治験前の実験で、血縁者に患者がいない「孤発性ALS」の人からつくったiPS細胞でも約7割で効果が確認されている。

この薬がALSに有効な可能性があるとして、2018年に治験を始めた。

治験には、発症して5年以内で、多少の介助があれば日常生活が可能な43〜79歳の20人が参加した。
最初の半年間は13人が薬を、7人が偽薬をのんだ。その後の半年間は、治験を継続できた17人全員が薬をのんだ。

その結果、薬を1年間続けてのんだ人では、一人で歩けなかったり、物ののみ込みが難しくなったりするなどの状態になるまでの日数の中央値は約50週と、偽薬から始めた人より195日長くなった。既存の薬より効果が見られた。副作用などの理由で途中で薬をやめた人はいなかった。

今回の研究結果により、有効な治療法に乏しいALSという非常に重い病に、新たな治療の選択肢がもたらされる可能性が示された。

今後、追加の治験の必要性などを検討し、早めの承認申請をめざす。

ーーー

iPS細胞を使い、角膜や心臓の筋肉細胞、軟骨等々を作り、移植する再生手術が盛んに行なわれているが、今回のようにiPS細胞から特定の細胞をつくり、効果のある薬を見つけ出すというのが、山中教授が期待していた使い方である。

2011年9月の毎日新聞「時代を駆ける」で山中教授は以下の通り述べている。

iPS細胞でいちばん幅の広い使い方は、患者さんのiPS細胞から特定の細胞を作り出し、試験管内で薬の効き目や副作用の予見をすることです。ツール(道具)として使っていただき、新しい薬が一つでも二つでもできてほしい。

iPS細胞から作った組織を移植する再生医療についても、実現に向けて安全性の課題を克服していきたい。本当の意味で患者さんの役に立つ技術に持っていきたいという気持ちが研究の原動力です。

患者団体の集まりに参加したり、いろんな場面で思いを受け止めています。勇気づけられるのは、すぐには治療法がない患者さんにとって、iPS細胞を含むいろいろな発見が生きる希望になっているということ。

ALSについては、これまでも iPS細胞を使って治療薬の探索が行われている。

京都大学の研究グループは2012年8月1日、山中伸弥iPS細胞研究所長らの研究グループと協力し、ALS(筋萎縮性側索硬化症:ルー・ゲーリッグ病)の患者から作成したiPS細胞を用いて、ALSのこれまで知られていなかった病態を解明し、ALSに対する新規治療薬シーズを発見したと発表した。

ALSは運動ニューロン(神経細胞)が変性することで次第に全身が動かなくなり死に至る疾患。

これまではALS患者から運動ニューロンを取り出すことができなかったために、患者の病態をそのまま反映するモデルを作ることが難しく、ALS治療に有効な治療薬開発は進んでいなかった。

今回、TDP-43というタンパク質をコードする遺伝子に変異を持つ家族性ALS患者から作成したiPS細胞を用いて、運動ニューロンを分化誘導した。

このALS運動ニューロンには、ALS病理組織の運動ニューロン内で見られるものと類似のTDP-43の凝集体が観察された。さらに、ALSに罹患していない運動ニューロンと比較して、突起が短く、ストレスに対して脆弱になっていた。

このタンパク質は、ALSでは自己調節が異常をきたして、運動ニューロン内でTDP-43の発現量が増加し、神経細胞骨格の遺伝子発現や、RNA代謝に関連する分子の遺伝子発現に異常が生じていることが分かった。

そこで、RNA代謝を調節することが知られている化合物をALS運動ニューロンに作用させたところ、アナカルジン酸(anacardic acid)と呼ばれる化合物によって、TDP-43の発現量が低下し、ALS運動ニューロンのストレスに対する脆弱性が改善され、神経突起の長さが回復することを発見した。

TDP-43の異常を制御する本研究の治療薬シーズは、患者の大半を占める孤発性ALSにも効果があることが期待される。

2012/8/6   患者のiPS細胞でALSの病態解明・治療薬シーズ発見  

ーーー

ALSについては再生医療も行われている。

京都大学の高橋淳教授らは2018年11月9日、iPS細胞から育てた神経細胞をパーキンソン病患者の脳に移植したと発表した。医師主導による臨床試験(治験)の1例目。

パーキンソン病は脳で神経伝達物質のドパミンを分泌する神経細胞が失われる難病で、体が震えたり筋肉がこわばったりする。

京都大学iPS細胞研究所で構築している「再生医療用iPS細胞ストック」から提供されたiPS細胞をドパミン神経前駆細胞へ分化させ、分化誘導したドパミン神経前駆細胞(計約500万個)を、定位脳手術により、患者の脳の線条体部分(左右両側)に移植する。

手術は、頭部を固定した上で頭蓋骨に直径12mmの穴を開け、そこから注射針のような器具を用い、細胞を注入する。

細胞移植後に免疫反応が起こる可能性があるため、本治験では、既に臓器移植等において臨床実績のあるタクロリムスを細胞移植時の免疫抑制剤として使用する。

治験が成功すれば大日本住友製薬が開発を引き継ぎ、実用化を目指す

2018/7/30 京大がiPS細胞でパーキンソン病治療臨床試験へ 


2021/5/24  欧州議会、EU・中国の 包括的投資協定の批准を凍結

中国と欧州連合(EU)は2020年12月30日、「包括的投資協定」(CAI: Comprehensive Agreement on Investment)を結ぶことで大筋合意した。約7年越しの交渉がようやく妥結した。

2021/1/1 中国・EU、投資協定に大筋合意 

この投資協定の批准を巡り、EUの欧州議会は5月20日、中国がEUの政治家に対する制裁 (下記)を撤回するまで手続きを凍結する決議を、賛成599、反対30、棄権58で採択した。

決議では、投資協定の手続きを行う前に「中国が制裁を解除するよう要求する」とし、「EUと中国の関係は通常通り続けられない可能性がある」としている。決議は法的拘束力を持たないものの、欧州議会の公式な立場となる。

在EU中国政府代表部は3月21日に声明文を発表し、投資協定は「互恵的」であり、一方の側から他方への「優遇」ではないと指摘し、「中国は最初から誠実に相互協力を促進しており、EUの歩み寄りを期待する」とした。
中国の制裁はEUの行動への正当な対応だとしている。
 

ーーー

EUは2020年12月に中国との投資協定を結ぶことで大筋で合意した一方、ウイグルや香港などをめぐる人権問題では厳しい姿勢で臨んでいる。

EUは3月22日、外相会議を開き、世界の人権状況について協議した。

その結果、中国、北朝鮮、ロシア、リビア、エリトリア、南スーダンの6か国の個人11人と団体4つを対象に、深刻な人権蹂躙の責任があるという理由により、制裁の賦課を決定した。

別途、 ミャンマーの軍部高官11人に対しても資産凍結、入国禁止制裁を賦課した。

中国については、新疆ウイグル自治区で人権侵害に関わったとして自治区の公安部門のトップら4人と、自治区の開発や治安維持を担う組織「新疆生産建設兵団」の公安局に対し、EU域内への渡航禁止とEU内の資産凍結の制裁を科すことを承認し、即日、発動した。EU内の個人および機関が、制裁対象に資金を供給することも禁止される。

「ウイグル人への組織的な強制労働や恣意的拘束、信仰の自由侵害について制裁を科す」と説明した。

EUが中国に制裁を科すのは、EUの前身のEC(ヨーロッパ共同体)が1989年の天安門事件を受けて武器の輸出禁止の措置を取って以来、初めて。

 

これに対し中国外務省は同日夜、対抗措置としてヨーロッパ議会の議員など10人と4つの団体に制裁を科すと発表した。

制裁の対象者やその家族が中国や香港、マカオを訪れることを禁止するほか、関係する企業などに対し、中国との商取引を制限する。

また、EUによる制裁はでたらめや虚偽の情報に基づいているとして「事実を顧みずに黒を白だと言いくるめる乱暴な内政干渉で、国際法や国際関係の規範に反しており、中国とEUの関係を大きく損なう」などと強く非難し、「過ちの重大性を認識し、ただすことを求める」として、さらなる対抗措置も辞さない姿勢を示した。

今回の欧州議会の決議は、この制裁の撤回を求めたもの。 

 


2021/5/24 主要企業の2021年3月期決算  三菱ケミカルホールディングス 

多額の減損損失を計上し、株主帰属損益が赤字となり、減配。

単位:億円 売上高

営業損益

税引前
損益
株主帰属
損益
配当(円)
コア 非コア 合計 中間 期末
2019/3 38,405 3,141 -194 2,948 2,848 1,695 20 20
2020/3 35,805 1,948 -505 1,443 1,220 541 20 12
2021/3 32,575 1,747 -1,272 475 329 -76 12 12
増減 -3,230 -201 -767 -968 -891 -616 -8 0
2022/3予 36,600 2,300 -140 2,160 2,000 970 12 12

コア損益

  18/3 19/3 20/3 21/3 増減 22/3
機能商品 940 713 613 597 -16 690
MMA 1,096 944 238 131 -107 320
石化 259 87 -21 17 38 70
炭素 124 249 81 10 -71 90
産業ガス 575 633 880 851 -29 940
ヘルスケア 812 538 165 179 14 220
その他/全社 -1 -23 -8 -38 -30 -30
合計 3,805 3,141 1,948 1,747 -201 2,300

MMA事業の損益悪化が大きい。
MMAの2020年初の国際価格(アジア地域)は1トンあたり1550ドル弱で、前年同期の2,650ドルから大幅に下落した。
最近の価格は1900円程度に上がっているとされる。

非コア損益のうち、大きなものは下記。

ヘルスケア
(田辺三菱製薬)
-84,534 2019/10/18にイスラエルの中枢神経系治療薬(パーキンソン病等)の研究開発 を行なうNeuroDerm Ltd.総額11億ドル(経費込み1,252億円)で買収したが、予定した収益性が低下する見込みとなり、技術に係る無形資産を減額
(詳細 2021/2/10ブログ参照)
MMA
(旧 三菱レイヨン)
-19,382 米国子会社 Lucite Internationalテキサス州BeaumontにおけるMMAモノマーMAA生産を終了し、工場閉鎖することを決め 、減損損失を計上した。

2020/11/6  三菱ケミカル、テキサスのLuciteのMMAプラント閉鎖

これに関連し、コア営業損益のなかに、特別退職金 -901百万工場閉鎖関連損失引当金繰入額 -3,318百万円 、合計 -4,219百万円を計上した。

なお、2020年12月に新エチレン法(アルファ法)によるMMAモノマーのプラント建設を前提にルイジアナ州ガイスマーの土地を取得した。2022年半ばを目途に投資の最終判断を行い、2025年中に35万tのMMAモノマー生産設備の稼働を目標とする。

2021/2/10 三菱ケミカルHD、2021年3月期決算 480億円の赤字予想 

 

 

田辺三菱製薬

三菱ケミカルホールディングス田辺三菱製薬普通株式の全てを取得し、田辺三菱製薬は、2020/2/27に上場廃止となった。

2019/11/22 三菱ケミカルホールディングス、田辺三菱製薬に公開買付け

単位:億円 売上高

営業損益

税引前
損益
株主帰属
損益
配当(円)
コア うち
ロイヤリティ
非コア 合計 中間 期末
2019/3 4,248 558 631 -55 503 504 374 28 28
2020/3 3,798 191 174 -252 -61 -65 1 非公開
2021/3 3,778 210 159 -795 -585 -577 -469 非公開
増減 -20 19 -15 -543 -524 -512 -470  
2022/3予 4,075 260 非公表       175  

営業損益のうち、非コアについては上記の通り。

コア営業損益のほとんどを占めていたロイヤリティ収入が激減し、大幅減収減益となった。
同社はロイヤリティ収入を除くと、コア営業損益はほとんどゼロである。

問題は多発性硬化症治療剤「ジレニア」のロイヤリティ収入である。

2019年2月、ノバルティスから本件契約の規定の一部の有効性について疑義が提起され、2019年2月15日、国際商業会議所より、ノバルティスを申立人とする仲裁の申立てがあった旨の通知を受領した。

ノバルティスは、米国、EU等における製品の売上ベースのロイヤリティ支払い義務を定める本件契約の規定の一部は無効であり、ノバルティスにはロイヤリティの一部の支払義務がないことの確認を求めている。

IFRSルールでは、収益認識基準の要件の一つ に「契約の当事者が契約を承認しており、それぞれの義務の履行を確約している」 があり、ノバルティスが契約の有効性について疑義を提起している部分がこれを満たさなくなったため、売上収益から除外する。

2019/5/16   注目会社の決算  田辺三菱製薬

 

日本酸素ホールディングス (三菱ケミカルHDの産業ガス部門)

2014年に三菱ケミカルHDがTOB 三菱ケミカルと合わせ、50.56%

2014/5/19   三菱ケミカルホールディングス、大陽日酸株式の公開買い付け 

2020年10月に大陽日酸から日本酸素ホールディングスに改称。

2018年に米国のPraxair, Inc.の欧州事業を買収、損益に大きく貢献している。

2018/7/13 大陽日酸、米国Praxairの欧州事業を買収

 


 

2021/5/25 OECD、デジタル課税で米提案を採用へ 

巨大IT企業を念頭に置くデジタル課税の国際ルールづくりで、経済協力開発機構(OECD)は米国の新提案を採用する調整に入った。5月19〜20日に開いたオンライン会議で、関係国の交渉担当者に新たなルールに基づく複数の試算を示した。

米国が4月に提案した案に沿ったもので、利益率と売上高の規模による簡素な線引きで世界の100社程度を課税対象にする。

既に具体的な基準について約140の交渉参加国・地域に伝え始めた。早ければ20カ国・地域(G20)が7月にイタリアで開く財務相・中央銀行総裁会議での合意をめざす。

デジタル課税と並行して議論する法人税の最低税率についても、米国は従来想定の21%から引き下げて「15%を下限」とする案を示した。

ーーー

巨大IT企業が各国市場で膨大な利益を稼ぎながら、恒久的施設(Permanent Establishment) を置く国が課税権を持つという原則に基づき、全く法人税を納めないことが問題となっている。
特に欧州各国が問題とし、独自の課税を始めた。

フランス上院は2019年7月11日、Digital Services Tax法案を可決し、Macron 大統領は7月24日にこれに署名、これが法律となった。

米通商代表部(USTR)は2020年7月10日、フランスの「Digital Services Tax」を巡り、2021年1月6日から化粧品、ソープ、ハンドバッグの21品目、13億ドル分のフランス製品に25%の報復関税を課すと発表した。

イタリア議会代議院(下院)は2019年12月23日、2020年の予算案を賛成334、反対232で可決した。このなかで、フランスに追随してデジタル課税の2020年1月1日導入を決めた。

英政府は2020年3月12日、大手IT企業を対象にした新たなデジタル課税を4月に導入することを正式に決めた。

米通商代表部(USTR)は2020年6月2日、Digital Services Taxを巡り、英国など10カ国・地域を調査すると発表した。不公正だと認定すれば制裁関税を含む対抗措置を検討する。

経済協力開発機構(OECD)は2019年10月9日、高収益を上げている多国籍大企業(デジタル企業を含む)の消費者向け活動の拠点がどこにあるか、どこで収益を上げているかにかかわらず、確実に納税するための新枠組み案を公表した。10月17日からの20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議に報告し、2020年1月の大筋合意に向け、各国は詰めの議論に入る。

対象は連結の売上高が7.5億ユーロ以上で、利益率が10%超の「消費者向け」ビジネスを行う大規模企業
採掘産業、コモディティ、金融サービス等は除外)

対象となるグローバル企業の利益を分割し、それぞれに別個に課税する。

通常利益 一般的な利益
(OECD案では利益率10%分)
従来通り 恒久的施設(Permanent Establishment) を置く国が課税権を持つ。
超過利益 ブランド力や知名度といった「無形資産」で全世界の消費者から稼いだ利益 各国での売上高の割合に基づいて課税

2020/2/18 OECD、多国籍企業課税新ルールの影響の試算発表

デジタル課税を巡る議論はOECDを中心に2020年末の最終合意をめざすが、各国の意見が折り合わず議論が難航した。

米通商代表部(USTR)は2020年6月17日、Mnuchin米財務長官がDigital Taxを巡る国際協議からの撤退を決めたと伝えた。
その後、2020年12月に
デジタル課税の枠組みを「セーフハーバー」とする案(企業がデジタル課税の対象となるか否かを選択できることを認める案)を提案した

OECDは2020年1012日、デジタル課税等について検討しいる「包摂的枠組み」が、合意期限を当初の「2020年内」から「2021年半ばまで」に延期する旨の声明を発表した

米通商代表部(USTR)は2021年1月7日、フランスが導入した「デジタルサービス税」への対抗措置として計画した制裁関税を巡り、発動を無期限で延期すると発表した。「同様の調査が並行して続いており、対応をそろえる」ためだと説明した。

詳細経緯は 2020/10/23 フランス、デジタル税を再開 の後半参照

ーーーーーーーー

バイデン政権のイエレン米財務長官は2021年2月26日、バイデン政権発足後初めて参加したG20財務相・中央銀行総裁会議で、大手IT企業を対象としたデジタル課税をめぐり、「骨抜き案」の導入を主張していたトランプ前政権の方針を転換すると表明し、国際的な協議の進展へ歩み寄りを示した。


本年4月に米国が新たに提案した内容が判明した。

2020年10月にOECDがまとめた素案は、オンライン広告やクラウドサービスなどの業種で線引きしようとした。オンライン教育やIoTは対象外とする。
この案については業種の区分の定義が曖昧などとの批判があった。

米国案は、売上高と利益率の規模で機械的に対象を決める。米企業の狙い撃ちになるのを避け、対象を世界で100社ほどに絞り込む。
企業の国別売上高に応じて税収を各国に配分するという現行案の仕組みは変えない。

今回、OECDは関係国の交渉担当者に新たなルールに基づく複数の試算を示した。いずれも米国が4月に提案した案に沿っており、利益率と売上高の組み合わせで一定の基準を超えるグローバル企業に課税する。

具体的には売上高を100億ドル(約1兆1000億円)以上とする案や、利益率の水準を15〜20%以上とする案などがある。

財務省幹部によると「現状の試算では日本企業はほとんど含まれない」という。


2021/5/25  主要企業の2021年3月期決算  住友化学 

単位:億円 売上高

営業損益

税引前
損益
株主帰属
損益
配当(円)
コア うち
持分法
非コア 合計 中間 期末
2019/3 23,186 2,043 372 -213 1,830 1,884 1,180 11 11
2020/3 22,258 1,327 92 49 1,375 1,305 309 11 6
2021/3 22,870 1,476 -125 -105 1,371 1,378 460 6 9
増減 612 150 -217 -154 -4 73 151 -5 3
2022/3予 26,100 2,000   -200 1,800   1,000 10 10

 

コア損益

  18/3 19/3 20/3 21/3 増減 22/3
石油化学 946 616 145 -120 -265 360
エネルギー・機能材料 192 230 203 203 -0 190
情報電子化学 123 262 251 397 146 400
健康・農業関連 440 197 21 315 294 380
医薬品 948 808 753 717 -36 670
その他 111 94 88 128 40 110
全社 -132 -164 -134 -164 -30 -110
合計 2,627 2,043 1,327 1,476 149 2,000

コア損益のうち、持分損益は下記の通りで、大半が石油化学部門であり、石油化学部門のコア営業損益の推移(上のグラフ)と相似している。

サウジのPetroRabigh(37.5%出資)は2020年は定期修理で長期停止したため、大きな赤字を計上している。

情報電子化学は好調が続く。

健康・農業関連は飼料用メチオニンの価格低下で採算が悪化していたが、市況が上昇、海外農薬の出荷増もあり、採算向上した。

医薬品は下記、大日本住友製薬を参照。

 

非コア項目  大半が大日本住友製薬関連である。

  合計 大日本住友製薬
2020/3 2021/3 2020/3 2021/3
減損損失 -373 -408 -352 -357
条件付対価 公正価値変動 485 225 485 225
事業構造改善費用 -78 -63    
固定資産売却益 9 187   167
その他 6 -45 -20 -19
合計 49 -105 113 16

条件付対価 公正価値変動:
事業買収に当たり、買収額と純資産との差は「のれん」となるが、一定条件を満たした場合に追加支払いをする契約がある。
IFRS基準ではこの場合、買収時点で将来の追加予想支払額を「のれん」と負債に計上する。
その後、追加支払い契約分が確定した時点で、買収時に計上した「のれん」は修正せず、損益処理する。
さらに追加支払いの場合はその分を費用計上、支払い不要の場合は負債を消し、利益を計上する。別途、過大であった「のれん」を減損処理する。

大日本製薬の場合、いくつかの買収で追加支払いが不要となり、買収時に計上した負債を消し、利益に計上した。合わせて、「のれん」を評価しなおし、減損損失を計上した。
大日本製薬の売却益は既に休止している茨木工場跡地の売却益である。

 

大日本住友製薬

単位:億円 売上高

営業損益

税引前
損益
株主帰属
損益
配当(円)
コア うち
Sumitovant
非コア 合計 中間 期末
2019/3 4,593 773   -194 579 650 486 9.0 19.0
2020/3 4,827 720 -156 113 832 839 408 14.0 14.0
2021/3 5,160 696 -636 16 712 779 562 14.0 14.0
増減 332 -24 -480 -96 -120 -61 155    
2022/3予 5,780 640   -30 610   410 14.0 14.0

大日本住友製薬は2019年10月31日、米国のRoivant Sciences との間で、戦略的提携に関する正式契約を締結し、米国に運営会社Sumitovant Biopharmaを設立した。

2019/11/4 大日本住友製薬、Roivant Sciences と戦略的提携、30億ドルを投資 

Sumitovant販売活動の本格化で、同社の販管費、研究費は増加している。

全社損益のうち、Sumitovantの 部分は下記の通り。既存製品の増収でSumitovantの費用を賄っている。

単位:億円 売上高 販間費 研究費

営業損益

株主帰属
損益
コア 非コア 合計
2020/3 0 65 90 -156   -156 -119
2021/3 78 465 246 -636   -636 -443
増減 78 400 156 -480   -480 -324
2022/3予   960 210       非開示


非コア損益については上記のとおり。

なお、同社は2021年2月12日に、多額の減損損失が発生するとして非コア営業損益を-140億円にしていたが、その後、このうちの抗がん剤TP-0903の減損損失が発生しない見込みになったとして再修正した。最終的に非コア損益は +16億円となった。

 

なお、同社は2005年10月1日に住友製薬と大日本製薬が合併し、大日本住友製薬となったが、2022年4月1日付で住友ファーマに改称する。


2021/5/25   米、日本への「渡航中止」勧告

 

米国務省は5月24日、米国民向けの海外渡航情報(Travel Advisories)を改定し、日本を警戒レベルが最も高い「渡航中止勧告」(Level 4 "Do Not Travel")の対象に加えた。

https://travel.state.gov/content/travel/en/traveladvisories/traveladvisories/japan-travel-advisory.html

 

付記  6月8日付で Level 3 "Reconsider Travel" に戻した。

ーーー

米国務省は2021年4月19日、新型コロナウイルスの感染拡大が続いていることを受け、米国民向けの海外渡航情報(Travel Advisories)を改定すると発表した。新型ウイルスのパンデミックが「旅行者に前例のないリスクをもたらし続けている」とした。

これまで警戒レベルが最も高い「渡航中止勧告」(Level 4 "Do Not Travel")の対象となっていたのは約200カ国のうちケニアやミャンマー、イラク、アフガニスタン、アルゼンチンなど34カ国だったが、今回、世界の約8割の国に拡大、合計153か国とした。

日本は中国、ANZ、台湾などと同様に「Level 3 "Reconsider Travel"」に含まれていた。

2021/4/24 米、「渡航中止」勧告国 大幅増、日本は含まれず 

ーーー

今回、日本はLevel 4 に引き上げられたが、4月19日時点で日本と同様に「Level 3 "Reconsider Travel"」に含まれていた中国、豪州、New Zealand、台湾はLevel 3 のままである。
韓国は更に低い「Level 2 "Exercise Increased Caution"」である。


米疾病予防管理センター(CDC)もTravel Health Noticesを変更した。完全にワクチン接種を受けた人であっても新型コロナ変異株に感染し、感染を広げるリスクがあるとしている。

Level 4: Very High Level of COVID-19 in Japan

Key Information for Travelers to Japan

  • Travelers should avoid all travel to Japan.
  • Because of the current situation in Japan even fully vaccinated travelers may be at risk for getting and spreading COVID-19 variants and should avoid all travel to Japan.

https://wwwnc.cdc.gov/travel/notices/covid-4/coronavirus-japan

米国オリンピック・パラリンピック委員会(USOPC)はロイターへの声明で、日本に関する渡航情報の変更を承知しているとした上で「USOPCと日本の組織委員会による選手・スタッフ向けの現行の緩和措置や、渡航前と日本到着時、大会開催中の検査が、米代表チーム選手の今夏の安全な参加を可能にすると確信している」と表明した。

 

 


2021/5/26   Moderna と Novavax、韓国でワクチンを生産委託 

ModernaとNovavaxはそれぞれ、韓国でのワクチンの生産委託を発表した。

韓国では既にAstraZenecaとロシアのSputnik V ワクチンの生産を行っており、これで4つのワクチンを生産することとなる。

    委託生産先
2020/7 AstraZeneca SK Bioscience
2020/11 ロシア直接投資基金(RDIF)
「Sputnik V」
GL Rapha
2021/5 Moderna Samsung Biologics
2021/5 Novavax SK bioscience

 

韓国は早くも2021年2月26日から新型コロナワクチンの接種を始めた。AstraZenecaワクチンとPfizerワクチンを使用している。

AstraZenecaワクチンはSK BioScienceが韓国で受託生産をしている。

SK Bioscienceは2020年7月に、まだ実験段階にあった AstraZenecaワクチンの製造契約を結んだ。初期の臨床試験で良好な効果を示しており、AstraZenecaはこのワクチンを世界に供給することを考えているが、SK Bioscienceはこれに協力することとした。AstraZenecaは世界の各国と既に20億回分(うち米国向けに3億回分)供給契約を結んでいた。

生産契約は2020年7月にスタート、2021年初めまで続くが、ワクチンが成功であれば期間を延長するとなっている。

韓国保健福祉部が両社の交渉をアレンジし、同時にAstraZenecaとの間で韓国への供給の交渉を始めた。


ロシアのSputnik V ワクチン

ロシア直接投資基金(RDIF)は2020年11月、「RDIFと韓国有数のバイオテック企業のGL Rapha は、世界で初めて承認されたSputnik V ワクチン年間1億5千万回分以上を韓国で生産する協定を結んだ」と明らかにした。

12月からGL Raphaで生産に入り、2021年1月に世界市場への輸出用供給を始めることで合意した。
GL Raphaは「韓国への供給用ではない。生産するワクチンは全量RDIFに送る計画だ」としている。

GL Raphaは輸出用医薬品を受託生産している。他社からの受託生産に加え、子会社 Hankook Korus Pharm でジェネリック医薬品も生産している。生産品目は、抗生物質のセファロスポリン、抗がん剤、バイオ製品(エリスロポエチン:EPO、ヒト成長ホルモンhGH、インターフェロン、その他)、その他(サプルメントを含む)。

2020/11/19 ロシアの新型コロナウイルスワクチン「Sputnik V」、韓国で生産 

訪米中の韓国の文在寅大統領は5月21日、バイデン大統領との共同会見で、ワクチンの生産や供給で協力していくことを発表した。文在寅大統領は、米国の専門知識と韓国の生産能力を組み合わせる意向を示していた。

米国は韓国軍55万人に対するワクチン支援を約束した。今後、国防部や疾病管理庁などがアメリカ側と日程の協議に当たる。

なお、韓国は米国に余剰ワクチンの供給を求めた模様だが、「韓国より状況の悪い途上国への支援が急務」という意見が交わされたという。

サムスン電子など韓国の主要企業は首脳会談に合わせ、半導体やバッテリー事業などに関連して計44兆ウォン(約4兆2000億円)規模を米国に投資すると発表した。

翌日の5月22日、

米バイオ医薬品企業のModerna とNovavaxは
韓国国内での委託生産契約を締結した。韓国は5月21日にModernaのワクチンを承認した。

 

Moderna

Modernaは、Samsung Biologicsとの間でManufacturing Services and Supply Agreementを締結した。米国以外への世界中への供給のため、SamsungのIncheon工場で第3・四半期から数億回分のワクチンを委託生産する。

海外で製造されて韓国国内に持ち込まれたワクチンの原液を、瓶に詰めて包装する工程を担う。

国立保健研究院は、Modernaと了解覚書を締結し、ワクチンの研究で互いに協力することとしたが、今回はModernaのワクチンの製造技術の移転ではなく、単なる包装工程の担当に過ぎないことや、韓国に輸入されるワクチンの量の増加につなげられず、具体的な日程も示されたなかったことについては、韓国内で「残念」とする声が出ている。

なお韓国政府はModernaワクチン4000万回分を直接契約しているが、5月末に最初の5万5000回分が到着する。

Novavax

Novavax, Inc.は韓国保健福祉部とSK Bioscience との間で同社のNVX-CoV2373を含むワクチンの開発・製造での協力についての覚書を締結したと発表した。

Novavax とSK Bioscienceは韓国国内向けワクチン4000万回分のライセンス生産契約を結んでいる。

韓国政府は、Novavaxが開発したワクチンの現地生産を6月にも開始すると発表した。第3・四半期末までに最大2000万回分を供給できるとの見通しを示した。

 

韓国保健福祉相は、SK Bioscience、EuBiologics Co、Cellid、GenexineGeneOneLifeScienceの5社が年内にも、それぞれ独自に開発したワクチンの第3相臨床試験を行う方向であることを明らかにした。
これらの開発計画に対し、政府が687億ウォン(6110万ドル)の支援を行う。

 


2021/5/26     主要企業の2021年3月期決算  信越化学

若干の減益となったが、好調を続けている。増配する。

単位:億円 (配当:円)

  売上高 営業損益 経常損益 株主帰属
当期損益

 配当

中間 期末
2019/3 15,940 4,037 4,153 3,091 100 100
2020/3 15,435 4,060 4,182 3,140 110 110
2021/3 14,969 3,922 4,051 2,937 110 140
前年比 -466 -138 -131 -203 0 30
2021/3

未定

 

営業損益

信越化学の営業損益は2008年3月期に2872億円の最高益を記録して以降、減益となり、2010年3月期には前年比1157億円減の1172億円と半減した。
半導体シリコンの価格が下落して電子材料部門が727億円の減益となり、Shintechも188億円の減益となった。
その後、再び上昇に転じ、2020年3月期に過去最高となった。

  2011/3

---

2018/3 2019/3 2020/3 2021/3 増減
塩ビ・化成品 197   932 1,065 922 970 48
シリコーン 341   520 585 615 451 -164
機能性化学品 129   257 266 277 218 -59
半導体シリコン 389   930 1,320 1,433 1,441 8
電子・機能材料 361   616 670 685 702 17
その他 73   115 133 148 143 -5
全社 3   -2 -3 -20 -3 17
合計 1,492   3,368 4,037 4,060 3,922 -138

本年度は昨年度から若干の減益となったが、各製品ともに好調で、特に塩ビ・化成品は営業利益が10年前の5倍、半導体シリコンは3.7倍となっている。

 

米国Shintechが好調である。

2020年にエチレン設備が稼働した。PVC増強の第1期が本年央に完成し、更に第2期が2023年に完成する。

Shintech は2018年7月にルイジアナ州Plaquemineで更地での新工場建設を開始した。
第1期は2021年半ばに完工する。

今回、第2期を決定した。

増加する生産能力はVCM 580千トン/年、PVC 380千トン/年、か性ソーダ 390千トン/年で、完成時のシンテック社の総能力(公称)は、PVC 3,620千トン/年、VCM 2,950千トン/年、か性ソーダ1,950千トン/年、エチレン50万トン/年となる。第2期の投資金額は12.5億ドルを見込み、2023年末の完工を予定している。

Shintech の能力は次の通りとなる。単位:万トン

立地 PVC VCM カ性ソーダ エチレン
Texas州 Freeport  145   −   −  
Louisiana州 Addis   58   −   −  
Plaquemine   60   160  106  
  2013/6 増設 32 30 20  
手直し   19 3  
2020年初め 完成       50
T 2021年央 完成 29 28 27  
U 2023年末 完成 38 58 39  
今回増設後合計 362  295   195 50

 赤字は推定
 2018年の発表では、VCM 86万トン、苛性ソーダで66万トンの工場の建設に必要な許可を取得したとある。
 今回、第2期と完成後の能力の発表があり、これから逆算した。

 


2021/5/27 日本におけるワクチン開発の遅れ 

1980年代まで水痘、日本脳炎、百日ぜきといった日本のワクチン技術は高く、米国などに技術供与していた。

その後の2つの訴訟が厚生省をワクチン開発で消極的にさせ、日本のワクチン開発は停滞した。海外では広く接種されているHPV (子宮頸がんの原因) ワクチン は日本での接種率は1%以下まで落ち込んでいる。

 

1つは予防接種による副作用被害の裁判で、裁判所は、@副作用の可能性があるため予防注射の強制は違法であり、A副 作用う危険をなくすには事前医師「接種を受けることが適当でない者」的確識別外す体制必要あるが、それを怠ったのは過失であるとし、損害賠償を命じた。

「科学的な根拠がないような現象も副反応と認めるという判決」であったとされる。

「被害者救済に広く道を開いた画期的な判決」との世論が広がり、国は上告を断念し、その後、法律改正で予防注射は「努力義務」に変更された

もう一つは薬害エイズ事件で、防止のために必要かつ十分な措置を取るべき具体的義務を怠ったとして厚生省生物製剤課長に業務上過失致死罪で禁固1年、執行猶予2年の刑が確定した。

 

ワクチンの副作用で責任を問われ、エイズ薬害防止で措置をとる義務を怠ったとして官僚が業務上過失致死罪で有罪となったことから、厚労省はワクチンについて極めて慎重な態度を崩していない。

米国ではこれまでに、Pfizer、Moderna、Johnson & Johnsonの米3社のコロナワクチンに緊急使用許可(Emergency Use Authorization:EUA)が下りている。

EUAは、米食品医薬品局(FDA)が緊急時に未承認薬などの使用を許可したり、既承認薬の適応を拡大したりする制度で、連邦食品医薬品化粧品法(FDCA)の第564条に基づく。

FDAが、(1)生命を脅かす疾患である、(2)当該製品に関して、疾患の治療などで一定の有効性が認められる、(3)当該製品を使用した際のメリットが、製品の潜在的なリスクを上回ると判断できる、(4)当該製品以外に、疾患を診断、予防、または治療するための適当な代替品が無い──という条件を満たすと判断した場合に発行できる。 (リスクは覚悟の上)

正式な承認に必要なすべてのデータがなくても使用が認められるが、許可が取り消されることもある。

米国でも上記3社はまだ正式の承認は取得していない。Pfizerは5月7日、16歳以上への接種についてFDAに正式承認を申請した。

日本にはこの制度はなく、薬事法が求める全てのデータが必要である。米国と異なり、リスクがないことを確認できなければ(メリットが大きくても)認めない。

現在、日本ではPfizer、Moderna、AstraZenecaのワクチンが承認されているが、これはいずれも海外での承認を得たものに対する特例承認によるものである。

特例承認は、@疾病のまん延防止等のために緊急の使用が必要、A当該医薬品の使用以外に適切な方法がない、B海外(日本と同水準の国)で販売等が認められている、という要件を満たすもので、
法律では、対象品目は「新型インフルエンザのワクチンと新型コロナウイルス感染症にかかる医薬品」で、
「日本と同水準の国」は「米国、英国、カナダ、ドイツ、フランス」のみである。

各国での承認が正式承認でなく、緊急使用許可であってもよい。

但し、人種による効果、副作用の可能性があるため、別途、国内治験を求めており、これが諸外国と比べての承認の遅れとなった。

米国などで緊急使用許可を得たものは完全なデータがなしでも認めるが、日本製については完全なデータを必要とする。

実際に、どんな場合に副作用が出るか分からないため、多数の治験が必要である。既に使われているワクチンは世界各国で治験をしているが、それでも、AstraZenekaの血栓は実際の接種が始まって明らかになった。

日本では厚労省が積極的でないうえ、医薬メーカーも過去の実績をベースにワクチンにあまり力を注いでいない。

第一三共の社長は日経のインタビューで次のように述べている。

「第一三共を含め日本の製薬会社はワクチンへの投資をためらってきた。政府も開発支援に十分な予算を投じてこなかった。質の高い製品を作るためには大規模な投資が必要だ。採算がとれるかも重要になる。単独の企業で対応するには限界があり、政府主導で安全保障としてのワクチン確保をどうするのか、補助金や買い取り制度などを含めた議論が必要だ」

しかし、海外企業(中国を含む)の動きを見ると、日本市場を対象に開発を進めるというやり方では成功しないだろう。

日本勢が今後、ワクチンの先進国になるのは難しい。

参考 2020/8/23 新型コロナウイルスワクチンの日本における生産体制の構築 

ーーー

1.予防接種ワクチン禍集団訴訟

1980年代末から90年代初頭にかけ、はしか、おたふくかぜ、風疹の新三種混合(MMR)ワクチンを受けた子どもたちに無菌性髄膜炎の副反応が報告され、予防接種騒動が再燃。同ワクチンは中止となった。

北里生命科学研究所の中山哲夫特任教授によると、「科学的な根拠がないような現象も副反応と認めるという判決」で、国は、「訴訟をいろいろ抱えた後、ワクチンを積極的にやろうとして何かがあったら訴えられる」と 考えた。日本のワクチン制度は「15年、20年、何も進まなかった」。(2021/5/10 日本経済新聞)

事実:

    予防接種法の規定または国の行政指導に基づき自治体が勧奨した予防接種(インフルエンザワクチン、種痘、ポリオ生ワクチン、百日咳ワクチン、日本脳炎ワクチン、腸チフス・パラチフスワクチン、百日咳・ジフテリア二種混合ワクチン、百日咳・ジフテリア・破傷風三種混合ワクチン等)を受けた結果、
    副作用により障害または死亡するに至った被害児とその両親らが原告(被害児62名中訴提起前の死亡被害児を除く36名、その両親らの家族124名、合計160名)となり、
    民法上の債務不履行責任、国家賠償法上の責任または憲法上の損失補償責任を追及するとして、
    国を被告として損害賠償請求訴訟を1972年3月から六次にわたって提起した。

東京地裁 1984年5月18日判決

予防接種と重篤な副反応との因果関係認定基準として次の4つの要件が必要であると解し、本件ではそのすべてが充たされているとして相当因果関係があるものと認めた。

(1)ワクチン接種と、予防接種事故とが時間的、空間的に密接していること。
(2)他に原因となるべきものが考えられないこと。
(3)副反応の程度が他の原因不明のものによるよりも質量的に非常に強いこと。
(4)事故発生のメカニズムが実験・病理・臨床等の観点から見て、科学的、学問的に実証性があること。

賠償責任については、種痘と他の接種とを複合して行ったり、通常量の倍の種痘を施したという一部の原告を除いて過失が認められず、賠償責任も認められない。

しかし、憲法29条3項 「私有財産は、正当な補償の下に、これを公共のために用ひることができる」の「類推適用」による損失補償責任は認められると判示した。

    本件各被害児およびその両親にとって、予防接種により当然受忍すべき不利益の限度を著しく逸脱した特別の犠牲を余儀なくされたものということができる。

    他方、本件における各被害児及びその両親の蒙った特別犠牲に対し、その余の一般的国民は、予防接種の結果、幸にして、各被害児らのような不幸な結果を招来することなく、また各予防接種によって伝染の虞がある疾病の発生及びまん延を予防され、よって、予防接種法が目的としている国民一般の公衆衛生の向上及び増進による社会的利益を享受しているのである。

    そうだとすると、本件においては、各予防接種の結果蒙った各被害児及びその両親らの特別の犠牲は、予防接種を行うという国民全体の利益のために、己むを得ない犠牲であると解すべきか、はたまた、本件における各被害児及びその両親らの蒙った具体的ないわば個人の特別の犠牲は、国民全体の負担において、これを償うべきものと解すべきかの一つの政策の問題に帰着するということができる。

    (いろいろの考え方を検討した後)

    憲法29条3項は、公共のためにする財産権の制限が社会生活上一般に受忍すべきものとされる限度を超え、特定の個人に対し、特別の財産上の犠牲を強いるものである場合には、これについて損失補償を認めた規定がなくても、これを根拠として補償請求をすることができないわけではないと解される。これを類推適用し、かかる犠牲を強いられた者は、直接憲法29条3項に基づき、被告国に対し正当な補償を請求することができると解するのが相当である。

東京高裁 1992年12月18日判決

第1審の因果関係認定を是認

但し、憲法29条3項は適法行為による意図的な財産権侵害を対象とするもので、本件は「憲法解釈の枠を超える」として1審判決を否定

逆に、国家賠償請求を認めた。

「予防接種により重篤な副反応が生じた場合には、本来当該個人には予防接種を強制すべきでなかったという意味で予防接種の強制は違法」(勧奨接種の場合にも妥当)
厚生大臣の禁忌者(その後「接種を受けることが適当でない者」に呼び変え)への接種回避措置懈怠につき過失があった。

国は可能な限り予防接種によってこのような事故が生じないよう努める法的義務がある。

重篤な副反応という危険をなくすためには、事前に医師が予診を充分にして、禁忌者を的確に識別・除外する体制を作る必要があり、そのことは厚生大臣も充分認識していたが、長く、伝染病の予防のため、予防接種の接種率を上げることに施策の重点を置き、予防接種の副反応の問題にそれほど注意を払わなかった。

本件被害児62名はいずれも禁忌者に該当していたものと推定されるところ、「現場の接種担当者(医師)が禁忌の識別を誤り、本件被害児らが禁忌者に該当するのにこれに接種をしたため生じたものと推認される」

ーーー

判決は無過失責任まで認めたものではない。
「特段の事情」の存在が証明されれば損害賠償責任は問えない。
また、国が十分な予診体制を確立し現場の接種担当医が必要な予診を尽くした後なお重篤な後遺障害が発生した場合には、過失による損害賠償責任論では対処できない。

 

「被害者救済に広く道を開いた画期的な判決」との世論が広がり、国は上告を断念した

1994年に予防接種法が改正されて接種は「努力義務」となり、副作用を恐れる保護者の判断などで接種率はみるみる下がっていった。

従来、予防接種については、市町村に対して実施する義務、国民に対して接種を受ける義務が定められていたが、国民の義務については「予防接種を受けるよう努めなければならない」と改められた。

既に、罰則規定については1976年の改正により削除されていたことから、従来も強制的な義務接種ではなく事実上の努力義務ではあったが、今回の改正により強制的な義務接種ではなく、努力義務であることが法文上も明記されることとなった。なお、市町村長の実施義務については従前どおりである。

これにより1994年10月以降の予防接種は、予防接種法(BCGは結核予防法)に基づき市町村長が行う勧奨接種と、医療行為の一つとして医療機関が行う任意接種の二つのみとなり、義務としての予防接種は緊急時を除き存在しなくなった。また、従来、一般臨時の接種と言われていた接種形態は無くなり、予防接種法に基づく勧奨接種は、すべて定期接種として行われる。

ーーー

2.薬害エイズ事件

薬害エイズ事件で、エイズウイルス(HIV)に汚染された非加熱血液製剤の回収指示などを怠ったとして、業務上過失致死罪に問われた元厚生省生物製剤課長、松村明仁被告に対し、最高裁第2小法廷は2008年3月3日付で、上告を棄却する決定を出した。

禁固1年、執行猶予2年とした1、2審判決が確定する。

1996年10月、2件の被害事実について、厚生省の元生物製剤課長である松村明仁が、業務上過失致死罪で東京地裁に起訴された。

  @帝京大病院で1985年5-6月に非加熱製剤を投与された血友病患者の死亡(帝京大ルート)
  A大阪医科大学附属病院で
1986年4月に旧ミドリ十字の非加熱製剤を投与された肝臓病患者の死亡(ミドリ十字ルート) 

2001年9月、一審判決が出た。
地裁は非加熱製剤の危険性を認識できた時期を1985年12月末と判断し、@については無罪とした。
Aについては有罪で、禁固1年、執行猶予2年とした。(双方が控訴)

官僚個人の「不作為」が初めて罪に問われ最高裁で有罪が確定するのは初めて。小法廷は「薬務行政上必要かつ十分な対応を図るべき義務があったことは明らか」と指弾した。

最高裁は、業務上過失致死罪の成否について職権で判断した。

行政指導自体は任意の措置を促すものであり、薬害発生の防止は一次的には製薬会社や医師の責任で、国の監督権限は二次的・後見的なもの。
これらの措置に関する不作為が公務員の服務上の責任や国の賠償責任を生じさせる場合があるとしても、これを超えて公務員に個人としての刑事法上の責任を直ちに生じさせるものではない。
   
しかし、当時広範に使用されていた非加熱製剤中にはHIVに汚染されていたものが相当量含まれており、HIVに感染してエイズを発症する者が出現し、いったんエイズを発症すると有効な治療の方法がなく、多数の者が高度のがい然性をもって死に至ること自体はほぼ必然的なものとして予測された。
  しかし当時は同製剤の危険性についての認識が関係者に必ずしも共有されていたとはいえず、医師や患者においてHIV感染の結果を回避することは期待できなかった。
   
同製剤は、国によって承認が与えられていたものであり、国が明確な方針を示さなければ引き続き安易な販売や使用が行われる恐れがあった。その取り扱いを製薬会社等に委ねれば、その恐れが現実化する具体的な危険が存在していた。
   
このような状況の下では、薬務行政上、その防止のために必要かつ十分な措置を取るべき具体的義務が生じたといえるのみならず、刑事法上も、非加熱製剤の製造、使用や安全確保に係る薬務行政を担当する者には、社会生活上、薬品による危害発生の防止の業務に従事する者としての注意義務が生じていた。
   
被告は、非加熱製剤が生物製剤課の所管に係る血液製剤であることから、厚生省における同製剤に係るエイズ対策に関して中心的な立場にあった。厚相を補佐して、薬品による危害の防止という薬務行政を一体的に遂行すべき立場にあったのであるから、被告には、必要に応じて他の部局等と協議して所要の措置を取ることを促すことを含め、薬務行政上必要かつ十分な対応を図るべき義務があったことも明らかである。
   
非加熱製剤の販売中止・回収や、医師に不要不急の投与を控えさせる措置を取ることを不可能または困難とするような重大な法律上または事実上の支障も認められないのであって、被告においてその責任を免れるものではない。

2008/3/6 薬害エイズ事件、最高裁判決

 


2021/5/28 米、ガスパイプライン計画「Nord Stream 2」を容認 

米ロ両政府は5月25日、首脳会談を6月16日にスイスのジュネーブで開くと発表した。バイデン米大統領はNord Stream 2 計画の完了を容認する立場を表明した。

バイデン大統領は、「私は初めからNord Stream 2に反対してきた」と述べつつ、一方で、同プロジェクトは自身が大統領に就任した際にはほぼ完成していたと指摘した。

その上で、「そのため、現在さらに制裁を科し続けることは、米国の欧州との関係の観点から非生産的となり得ると考えている」と発言した。

付記

米国とドイツは7月21日、Nord Stream 2 の建設計画をめぐる合意を発表した。米独両政府の共同声明では、ロシアが天然ガスなどのエネルギーを、敵対関係にあるウクライナなど他国を揺さぶる「武器」として使用した場合、ドイツが独自の制裁措置をとるほか、EUにも制裁を働きかけることを明記した。

米独は共同声明で、ロシアによるウクライナ南部クリミア半島の併合やウクライナ東部への軍事介入を念頭に「ロシアによる悪意のある行動の責任を追及する決意を共有している」と指摘し、「ウクライナの主権に対する米独の支持は揺るがない」と表明した。


ブリンケン米国務長官は5月19日、ロシアとドイツを結ぶガスパイプライン計画 Nordstream 2の事業会社Nord Stream2 AG と、その最高経営責任者(CEO)でプーチン大統領に近いMatthias Warnig 氏(ドイツ人)に対する制裁を "national interest" を理由に見送ったと明らかにした。

米国務省が議会に送った報告書は、同社とそのCEOが制裁対象となり得る活動に関与したと結論付けていた。

バイデン政権はトランプ前大統領の下で悪化した米独関係の修復を目指している。制裁免除に期限は設けられていない。

一方、米国務省は、パイプライン敷設に携わるロシア船Akademik Cherskiyなど4隻と、ロシアのRussian Marine Rescue Serviceなど5団体に制裁を科した。

ーーー

米国では2019年12月20日、トランプ大統領の署名で「国防権限法」が成立した。

米国は、欧州のロシアへのエネルギー依存が深まることで「欧州の安全保障上の脅威」になると懸念しており、国防権限法で「Nord Stream 2」への制裁を決めた。敷設事業に関係する企業が制裁対象になると見られた 。

米国の決定を受け、敷設事業に参加するスイス拠点のAllseasは12月21日、作業の停止を発表した。

パイプラインの総延長約1200kmのうち、残りは約130kmとなっている。Allseas社の離脱で、事業を主導するガスプロムは関係企業に代行させる検討を始めた。

2020/1/10 トルコストリーム開通 


トランプ大統領はこの計画でドイツのMerkel 首相を批判していた。

トランプ大統領はNATOに関して、欧州諸国の防衛支出が低いことを盛んに批判したが(米国は欧州のために多額の防衛費用を出しているが、ドイツを初めほとんどの欧州メンバーが協定で決めたGDP比率を大きく下回るものしか出していない)、特にドイツのMerkel首相に対し、防衛支出が低いだけでなく、Nord Stream 2 建設でNATOの仮想敵であるロシアに多額の資金を供与していると批判した。

2021年1月20日に就任したバイデン大統領もNord Stream 2は欧州にとって悪い取引だと信じていると語り、トランプ政権で成立された法案に含まれるプロジェクトの制限を再検討するとした。

米国務省は、2021年1月19日、Nord Stream 2の建設に関与しているとして、ロシアのパイプライン敷設船 Fortunaと保有者のKVT-RUS社をSDNリスト(List of Specially Designated Nationals and Blocked Persons)に追加にすると発表した。

2019年12月にスイス企業のAllseas社が米国制裁の懸念から事業から撤退したことを受け、ロシアが代替のパイプライン敷設船として準備し、2020年12月にドイツの排他的経済水域内でのパイプライン敷設作業を行った。デンマーク領海でのパイプライン敷設開始を予定していた。

 

 


2021/5/28    主要企業の2021年3月期決算 武田薬品工業

2019年1に6兆2千億円Shire plc買収 した。

この統合関係の多額の費用(統合費用そのものと統合に係る会計処理)がいまだに残っている(今後も続く)。このため、コア利益と最終損益に大きな差がある。

2020年3月期から売上高が急増、これに伴いコア営業利益も倍増した。

2020年3月期はShire統合関係費用が増えて税引前損益は赤字となったが、
2021年3月期は統合関係費用が減少したため、税引前損益、株主帰属損益は急増した。

単位:億円 売上高

営業損益

税引前
損益
株主帰属
損益
配当(円)
コア 非コア うち
Shire関連
合計 中間 期末
2018/3 17,705 3,225 -807   2,418 2,172 1,869 90 90
2019/3 20,972 4,593 -2,216 -2,339 2,377 1,276 1,352 90 90
2020/3 32,912 9,622 -8,618 -6,783 1,004 -608 442 90 90
2021/3 31,978 9,679 -4,586 -4,198 5,093 3,662 3,760 90 90
増減 -934 57 4,032 2,585 4,089 4,270 3,318    
2022/3予 33,700 9,300 -4,420   4,880 3,520 2,500 90 90


 

2019年1月のShire 買収により、米国、欧州&カナダの売上が急増した。

これに伴いコア営業利益も倍増したが、20/3月期には非コアの赤字が増えた。21/3月期には非コア赤字は減少。

20/3月期に税引前損益は赤字に。21/3月期には非コア損益の減少で税引前は急増した。

 

営業損益内訳(億円)

  2019/3最終 2020/3 2021/3 2022/3予
 Core 4,593 9,622 9,679 9,300
 非コア        
 Shire統合会計 -850 -5,271 -3,402  
 Shire統合費用 -1,489 -1,512 -796  
    無形資産減損 -1,041 -1,303 -1,024  
    Consumer Health 利益*     1,395  
    資産売却益 886      
 Teva合弁関係 304 142 15  
 その他 -26 -674 -774  
    小計 -2,216 -8,618 -4,586 -4,420
合計 2,377 1,004 5,093 4,880

 

「アリナミン」などの一般用医薬品事業を扱う完全子会社の武田コンシューマーヘルスケアを2021年3月31日付で米投資ファンド大手 The Blackstone Groupに売却した。新社名は「アリナミン製薬」となった。

売却益と2021年3月期の同部門の営業損益は非コア損益に含まれている。

2020/8/21  武田薬品、大衆薬事業を米投資ファンドに売却へ


2021/5/29 注目企業の2021年3月期決算  JSR

JSRは5月11日、創業事業であるエラストマー事業をENEOSに売却することを発表した。合わせて韓国のEPDM製造販売のJVの錦湖ポリケムをJV相手のKumho Petrochemicalに譲渡すると発表した。 

年初来、同事業の売却を含めた構造改革を検討していると報じられていた。ENEOSへの売却事業の事業価値を1,150億円とし、資産負債等を調整して最終売却額を決める。

同社は4月26日に、エラストマー事業全体の公正価値評価を実施して減損損失を認識、2021年3月期に772億円を 減損損失として計上したと発表している。

2021/5/13 JSR、合成ゴム事業をENEOSに売却、韓国の合成ゴムJVも相手先に売却

2021年3月期決算は4月26日に発表され、この時点では売却が決まっていなかったため、2022年3月期予想ではエラストマー事業を折り込んだものであった 。

売却が決まったため5月11日付で予想を修正した。 同事業を非継続事業とし、売上高、営業損益からは除外、最終損益を他の損益と合算した。事業売却損益も折り込んだと見られるが、事業価値に合わせた減損損失後であるため、ほぼゼロと見られる。

単位:億円 売上高

営業損益

税引前
損益
株主帰属
損益
配当(円)
コア 非コア 合計 中間 期末
2019/3 4,954 453 0 453 464 311 30 30
2020/3 4,720 332 -4 329 326 226 30 30
2021/3 4,466 260 -876 -616 -624 -552 30 30
増減 -254 -73 -872 -945 -951 -778    
2022/3予 4,680 530 0 530 515 320 30 30
見直し額 -1,500 -100   -100 -90 -50    
見直し後 3,180 430 0 430 425 270    

2021年3月期非コア損益
  エラストマー減損  -772 及びエラストマー事業構造改革費用 -60 (推定、下記参照)
  他に、ディスプレイ材料の事業構造改革費用、ライフサイエンス不採算事業整理損など

営業損益

 

  18/3 19/3 20/3 21/3 増減 22/3予想
  見直し
エラストマー 149 74 -18 -114 -97 100
合成樹脂 56 92 62 44 -18 60 60
デジタルソリュ―ション 307 327 309 346 37 365 365
ライフサイエンス -18 8 36 35 -1 60 60
その他 -22 1 -3 11 14 10 10
全社 -35 -50 -59 -62 -4 -65 -65
合計 436 453 329 260 -69 530 430

 

エラストマー事業は最近では2018年3月期の149億円が最高益で、2020年3月期には赤字に転落、今期は114億円の赤字となった。
このため、創業事業ではあるが、将来性を勘案し、売却を決めた。

上記の通り、今期に減損損失 772億円のほか、エラストマー事業構造改革費用を計上している。

事業売却先のENEOSは、買収条件としてエラストマー事業の原料・物流コストの合理化等のコスト削減や販売価格のをはじめとした構造改革をJSRが実施し、約60億円規模のコスト削減が完了することを求めている。

JSRは3月に、エラストマー事業に関わる国内外の社員を対象に約100人の早期退職を募集すると発表した。原料や物流費用の削減も進めている。

2022年3月期予想では、これらの構造改革を折り込み、エラストマー事業の営業損益を100億円と見ていた。売却決定で営業損益からは外し、合計損益を他の事業の損益に加えた。

売却完了は2022年4月を目途としている。売却金額1,150億円の使途はまだ決めていない。

ジョンソンCEOは「半導体材料のM&Aなどに充てることも検討するほか、適当な買収対象がなければ配当などで株主に配分する」と述べた。

 

エラストマー事業売却後の姿として、JSRは3月26日、4年間の中期経営計画を発表した。

半導体材料を含む「デジタルソリューション事業」と医薬品関連の「ライフサイエンス事業」を強化することが柱で、2025年3月期に営業利益を600億円超に高め、2009年3月期の過去最高益の更新を目指す。

エラストマー事業売却後の石化系事業はABS等で、JVのテクノUMGで事業を行っている。

テクノUMG:JSR 51%、UMG ABS49%  (宇部興産 50/三菱ケミカル 50)

デジタルソリューション事業は、半導体材料、ディスプレイ材料、エッジコンピューティング事業(耐熱透明樹脂、機能フィルム、紫外線硬化樹脂等)

ライフサイエンス事業は、診断・研究試薬、バイオプロセス材料、同開発・製造委託等

同社は2015年2月、米のバイオ医薬品開発・製造受託企業のKBI Biopharma Inc. をシミック、産業革新機構と共同買収することで合意した。JSRが51%を持つ。
 

同社は2018年にがん、炎症性疾患、心血管疾患及び代謝性疾患領域向けの薬効試験サービスの提供及び 抗体医薬開発を行なう米国のCrown Bioscience Internationalを買収した。
   https://www.knak.jp/ta-sangyou/pharma/JSR.htm

そのCrown Bioscience20215月にオランダの開発受託会社(CRO) OcellO B.V.を買収した。

JSRは2021年3月、医学生物学研究所(MBL社) の全発行済株式の取得を完了した事を発表した。
   https://www.knak.jp/ta-sangyou/pharma/pharma-19.htm#MBL


2021/5/31 日揮とIHI、小型モジュール原子炉事業に参画 

日揮ホールディングスは4月6日、海外における小型モジュール原子炉(SMR:Small Modular Reactor)プラントのEPC(設計・調達・建設)事業への進出を目指し、SMRの開発を行っている米国NuScale Power, LLCへの出資を決定したと発表した。40百万米ドルの出資を行う。

IHIは5月27日、NuScale Power, LLCへ出資し、日揮とともに SMR事業に参画すると発表した。

SMRは、原子炉1基ごとの出力を小さくすることで原子炉の冷却を容易にし、安全性を高めた原子炉で、あらかじめ工場でモジュールを製造・組み立て 、トラックなどで運搬し建設地で据え付けることで、工期短縮や建設コスト・リスク削減が可能である。

原子炉の冷却性能など高い安全性を備えており、SMRとして初めて米国原子力規制委員会(NRC)の型式認定を完了しており、商業化に向けた検討が進められている。

複数の小型原子炉で構成するNuScale PowerのSMRは、炉の一部だけを運転することで負荷追従運転が可能であることから、再生可能エネルギーの調整電源としての役割が期待されている。

IHIは、カーボンソリューションを成長事業と位置づけており、SMRが脱CO₂社会実現の有力なソリューションの一つになり得るとして 、出資を決定した。

NuScale の現在のマジョリティ投資家はSMRの設計・購買・建設を担当するFluor Corporationで、他に同社にコア技術を売却したOregon State Universityや、ARES Corporation、ENERCON、Ultra、DHIC、Sargent & Lundy などが出資している。

ーー

NuScale Powerは、発電、地域暖房、淡水化、その他のプロセス熱アプリケーションにエネルギーを供給するための新しいモジュール式軽水炉(SMR)原子力発電所を開発した。

NuScale Power は2017年1月12日、SMRを使った初めての発電所を建設・運転するための認可申請を米原子力規制委員会(NRC)に提出した。

2017/1/17  米国で次世代原子炉申請 

米原子力規制委員会(NRC)は2020年9月1日、SMRの型式認定申請(DCA)に対する最終段階の審査を完了した。

 

SMRは直径 2.7m、高さ 19.8mで、1基当たりの出力は5万キロワットで、12基を組み合わせ、計60万キロワットの出力を予定している。



リアクターと容器は地下につくられたプールの水のなかに置かれる。

仕組みは以下の通り。

核反応によるエネルギーで一次冷却水が熱せられ、対流と浮力で上昇する。

上昇した熱は、蒸気発生器の数百本のチューブの壁を通して二次冷却水を熱し、蒸気にする。この蒸気がタービンを回し、発電する。 (リアクター1基に発電機1基)

冷たくなった一次冷却水は重力で落下し、再度熱せられる。(繰り返し)

モジュールの冷却には自然対流と伝導によるので外部配管やポンプ、駆動用の電源を必要としない。

事故で原子炉が運転停止すると 、外部電源無しに、冷却水の補充なしに、オペレータの作業なしに、全体が入っている大きなプールの水(400万ガロン)で自動的に無期限に冷却され炉心溶融を防ぐ。

 下記により安全を確保している。


 


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