「カーボンナノチューブ」量産プラントが完成−−通産省・昭和電工
次世代テレビ画面に期待
通産省工業技術院物質工学工業技術研究所(茨城県つくば市)と昭和電工(本社・東京都港区)は2日、次世代平面ディスプレーへの応用が期待されているカーボンナノチューブを大量生産できる試験プラントを世界で初めて完成させたと発表した。6、7日に工業技術院で開く「フロンティアカーボンテクノロジーシンポジウム」で正式発表する。
カーボンナノチューブは、炭素原子が集まって直径2〜50ナノメートル(ナノは10億分の1)の円筒状になったもので、電圧をかけるだけで熱を加えなくても電子を放出するため、次世代壁掛け薄型テレビのディスプレーの電子源として注目され、燃料電池自動車、超高強度炭素繊維などへも応用が期待されている。
従来の製法では電力を大量に消費するうえ少量しか造れず、工業材料として実用化するためには大量合成方法が課題となっていた。
物質研と昭和電工はベンゼンと触媒を1200度の炉の中で反応させる試験プラントで従来の200倍に当たる1時間当たり200グラムのカーボンナノチューブの合成に成功した。従来製法より安価に大量生産が可能になったという。
2004年9月27日 昭和電工
カーボンナノファイバー 樹脂添加用新グレードを開発
http://www.sdk.co.jp/contents/news/news04/04-09-27.htm
昭和電工株式会社(大橋光夫社長)は、カーボンナノファイバーの新グレードとして、導電性が要求される樹脂等への添加材料として最適な「VGCF-S」を開発いたしました。
リチウムイオン電池向けに採用が進む「VGCF® (気相法炭素繊維:繊維径
150nm)」に加え、多層カーボンナノファイバーの新用途への展開を加速・拡大いたします。
カーボンナノファイバーは繊維径が細くなるほど、様々な特性が発現・向上する特長がありますが、反面、分散・混合等のハンドリングが難しくなるという難点があります。
この度開発した「VGCF-S」は、繊維径 20nmレベルのカーボンナノチューブ(CNT)を樹脂等に添加した場合と同等の導電特性を発揮するとともに、樹脂等への添加材料として不可欠な母材への高い分散・混合特性を実現いたしました。
「VGCF-S」は、信州大学 遠藤守信教授と共同開発し当社が年産40tの規模で世界で唯一事業化している「VGCF®」の生産技術等をベースに、高い導電性や良好なハンドリング特性を実現するために、繊維径や繊維長を最適化した製品です。
「VGCF-S」の応用例として、電子部品の微細回路が静電気の放電によって破壊されることを防ぐために、クリーンルーム内で使用する運搬トレーや治具用の樹脂に添加することで、導電性(放電性)を高める等、既に一部のお客様から高い評価を得ております。また「VGCF-S」は、導電性に加え、熱伝導性、電磁遮蔽性、摺動性等の母材への付与が可能なことから、当社は、これらの特性を組み合わせた多様な用途開発を展開してまいります。
製 品 | VGCF-S | VGCF® | CNT |
繊維径 (nm) |
100 |
150 |
20 |
繊維長 (μm) |
10 |
9 |
- |
*アスペクト比 |
100 |
60 |
- |
導電性(粉体抵抗:Ωcm) |
0.010 |
0.013 |
0.010 |
分散性 |
◎ |
◎ |
△ |
*アスペクト比:繊維径に対する繊維長の比率
当社は、「VGCF-S」の量産技術は既に確立済みであり、2005年の量産開始を目指しております。また、「VGCF®」と同様の安定供給が可能であり、量産開始3年後に年間30tの販売を見込んでおります。
当社は昨年10月、信州大学遠藤守信教授とともに、カーボンナノファイバー等先進炭素材料に関するスピード重視の応用研究、用途開発を戦略的に進める「MEFS株式会社」を設立いたしました。今後とも当社は、MEFS鰍ィよび当社独自の研究・開発成果を事業化につなげることにより、カーボンナノファイバーをはじめとするファインカーボン事業の基盤強化を図ってまいります。
2003/9/30 信州大学工学部 教授 遠藤 守信/昭和電工
“カーボンナノファイバー(MWCNT)の応用開発”を目指す大学発ベンチャー創設
http://www.sdk.co.jp/contents/news/news03/03-09-30.htm
信州大学工学部 遠藤守信教授と昭和電工株式会社(本社:東京都港区、大橋光夫社長)は、優れた機能と、幅広い応用用途の可能性を秘めた新素材“カーボンナノファイバー”を中心とする、先進炭素材料やエネルギーデバイスへの応用に関する研究開発型ベンチャー企業、「MEFS(メフエス)株式会社」を創設することに合意いたしました。
遠藤教授は、仏・オルレアン大学留学中(1975年頃)“カーボンナノチューブ”を発見し、その成果をベースに、カーボンファイバーからカーボンクラスター(炭素の集合体)に至る広範な炭素体等の先端素材に関する基礎科学と、ポータブル電子機器や電気自動車用の高性能電池および電源システム等への応用研究を展開しております。
遠藤教授と昭和電工(株)は、多層カーボンナノチューブの代表的な物質「気相法炭素繊維VGCF(Vapor Grown Carbon Fiber)」の共同研究を1982年に開始いたしました。両者は、リチウムイオン二次電池への高性能添加材としての用途開発を進めながら、世界に先駆けて極細VGCFの量産技術を確立いたしました。
この成果を礎に、昭和電工(株)は年産40トンの量産プラントを有し、カーボンナノファイバーを商業生産・販売している日本で唯一のメーカーです。
MEFS(株)は、カーボンナノファイバーのみならず、燃料電池やキャパシタ等に用いられる先端炭素材料の、スピードを重視した応用研究、用途開発を戦略的に進め、これらの成果を知的財産として権利化してまいります。
昭和電工(株)は、現在推進中の連結中期経営計画「プロジェクト・スプラウト」において、ファインカーボン事業を成長戦略事業と位置付け、電池材料を戦略的市場単位(SMU:Strategic
Market Unit)の一つとして、事業拡大・強化を図っております。今後は、MEFS(株)の研究・開発成果を事業化につなげること等で、ファインカーボン事業基盤の強化を目指してまいります。
*MWCNT:Multi-Walled Carbon Nano
Tube (多層カーボンナノチューブ)
ベンチャー企業の概要
1.会社名 MEFS(メフエス)株式会社
2.資本金 1千万円
3.設立予定 本年11月
4.本社所在地 長野県長野市
5.役員 CEO(社長):藤井豊春 (昭和電工(株)取締役無機材料事業部門長)
CTO(最高技術責任者):遠藤守信 (信州大学
工学部 教授)
6.目的 @
炭素材料に関する受託開発研究およびコンサルティング
A
エネルギーデバイス関連技術の受託開発研究とコンサルティング
B 前各号に附帯関連する一切の業務
7.経営基盤
昭和電工(株)および関係他社からの受託研究
AIST Research Hot Line 2001/8
http://www.aist.go.jp/aist_j/aistinfo/aist_today/vol01_07/vol01_7_p17.pdf
カーボンナノチューブの量産
− カーボンナノチューブの産業応用の推進 −
新炭素系材料開発研究センター 湯村守雄
カーボンナノチューブは、熱伝導性、電気伝導性、機械的強度などで従来の物質にない優れた特性を持つことが確認され、次世代壁掛けテレビの電子源材料、Li
電池の負極剤等の電池材料、水素等のガス貯蔵材料、複合樹脂材料まで幅広い用途への応用の可能性をもっていることから、21
世紀の産業を支える重要な物質になると期待されている。カーボンナノチューブを工業材料として実用化を進める上で、最大の課題が低コストで大量供給が可能な合成技術の確立である。
筆者らは、平成10年度より開始された通産省の産業科学技術研究開発プロジェクト「炭素系高機能材料技術」(フロンティアカーボンテクノロジー)において、昭和電工(株)とカーボンナノチューブの大量合成技術の開発を進めていたが、昨年度前半までの研究において、炭化水素と触媒を気相で1000
℃以上の温度で反応させ、高効率で多層カーボンナノチューブが生成する事を確認した。本方法は化学的プロセスによる合成方法で、スケールアップが容易で、原料に炭化水素等を使うことから、コストも安い特徴を有している。
この成果を受けて、平成11年3月より、物質研と昭和電工は、大型連続式反応試験装置の設計・製作に着手し、平成11年度末にはこの試験設備により、平均直径30
nm の多層カーボンナノチューブが1 時間当たり200g
生成されることを確認した。そして平12年5月の後処理行程の完成により、カーボンナノチューブ合成装置の全設備が完成し本格的に量産の可能性を実証する事となった。本連続式生産技術が確立されれば、1
日当たりの生産量が数kg から数百kg
の量のカーボンナノチューブの生産への見通しが得られるものと期待される。
フロンティアカーボンテクノロジープロジェクトでは量産技術の確立を受けて、カーボンナノチューブの試験供給を開始し、配布先は30
社を超し、電子放出材料、水素吸蔵材料、電池材料、機械的応用等、幅広い応用分野で、工業材料としての可能性が検討されている(図3
)。
日本経済新聞 2003/9/13
クラレ、米に研究拠点 海外初、ナノテク素材開発
クラレは来年4月、米国に海外で初めての研究拠点を新設する。ナノテクノロジー(超微細技術)を活用した新素材の開発に取り組む。米国で研究が活発なナノテク分野の先端技術を導入し、新素材や電子材料などの研究開発力を強化する。
新拠点「米国R&Dセンター」は研究開発本部の研究所としてテキサス州に開設。研究室や設備は米子会社のエバルカ・セプカ技術開発センター内に置く。当初は日本から2人の研究者を派遣、来年度中に5人まで増やす。
米国の研究機関やベンチャー企業と連携し、ナノテクを活用した包装材料などの新素材の開発や次世代ディスプレーなど電子機器の研究も検討している。
クラレは昨年、中期経営計画の見直しに伴って研究開発体制の強化を打ち出した。光デバイスなど6テーマの研究を重点的に進める方針で、国内では今春にディスプレー材料などを開発するオプトデバイス商品開発センターを新設した。
Chemnet Tokyo 2003年09月30日 発表
信州大と昭電、カーボンナノファイバーでベンチャー設立
信州大学工学部の遠藤守信教授と昭和電工の大橋光夫社長は30日記者会見し、新素材として注目されている「カーボンナノファイバー」について、さらに新たな機能や用途開発を促進するため、研究開発型ベンチャーを設立すると発表した。
昭電は1982年から遠藤教授と「気相法炭素繊維」(VGCF)の共同研究に取り組み、リチウムイオン二次電池の高性能添加材として用途開発を進めてきた。一方では世界に先駆けて極細VGCFの量産化技術を確立。現在昭電は年産40トンの量産プラントをもつわが国唯一のメーカーとなっている。
新会社は、社名が「MEFS株式会社」で11月に設立の予定。資本金は1000万円。社長は藤井豊春昭電取締役で、遠藤教授はCTO(最高技術責任者)に就任する。カーボンナノチューブの機能、用途開発研究を進めるほか、コンサルティングや、他社からの研究委託を受ける。
【遠藤守信教授の話】
カーボンナノファイバーは、燃料電池として期待が大きいが、用途は将来エネルギー、環境、情報通信、医療など、あらゆる分野に拡げていくことができる。大学が社会貢献をはたしていく基盤が出来た。これまでの知見や創造性を生かし、大学発ベンチャーのサクセス・モデルとなるようにしていきたい。
【大橋光夫社長の話】
この分野で世界的権威の遠藤教授が迎えられてうれしい。21世紀はカーボンの世紀といわれれるほど、大きな可能性をもった材料なので、早く電池に次ぐ第2、第3の用途を見つけてほしい。いかにスピードをあげて開発していくかがポイントになる。遠藤教授の経験と知識を生かして事業化に結び付け、社会に役立ちたい。
2003年09月30日 昭和電工/信州大学工学部
教授 遠藤 守信
“カーボンナノファイバー(MWCNT)の応用開発”を目指す大学発ベンチャー創設
http://release.nikkei.co.jp/detail.cfm?relID=56026
信州大学工学部
遠藤守信教授と昭和電工株式会社(本社:東京都港区、大橋光夫社長)は、優れた機能と、幅広い応用用途の可能性を秘めた新素材“カーボンナノファイバー”を中心とする、先進炭素材料やエネルギーデバイスへの応用に関する研究開発型ベンチャー企業、「MEFS株式会社」を創設することに合意いたしました。
遠藤教授は、仏・オルレアン大学留学中(1975年頃)“カーボンナノチューブ”を発見し、その成果をベースに、カーボンファイバーからカーボンクラスター(炭素の集合体)に至る広範な炭素体等の先端素材に関する基礎科学と、ポータブル電子機器や電気自動車用の高性能電池および電源システム等への応用研究を展開しております。
遠藤教授と昭和電工鰍ヘ、多層カーボンナノチューブの代表的な物質「気相法炭素繊維VGCF(Vapor
Grown Carbon Fiber)」の共同研究を1982年に開始いたしました。両者は、リチウムイオン二次電池への高性能添加材としての用途開発を進めながら、世界に先駆けて極細VGCFの量産技術を確立いたしました。
この成果を礎に、昭和電工鰍ヘ年産40dの量産プラントを有し、カーボンナノファイバーを商業生産・販売している日本で唯一のメーカーです。
MEFS鰍ヘ、カーボンナノファイバーのみならず、燃料電池やキャパシタ等に用いられる先端炭素材料の、スピードを重視した応用研究、用途開発を戦略的に進め、これらの成果を知的財産として権利化してまいります。
昭和電工鰍ヘ、現在推進中の連結中期経営計画「プロジェクト・スプラウト」において、ファインカーボン事業を成長戦略事業と位置付け、電池材料を戦略的市場単位(SMU:Strategic
Market Unit)の一つとして、事業拡大・強化を図っております。今後は、MEFS鰍フ研究・開発成果を事業化につなげること等で、ファインカーボン事業基盤の強化を目指してまいります。
ベンチャー企業の概要
1.会社名 | MEFS株式会社 | |
2.資本金 | 1千万円 | |
3.設立予定 | 本年11月 | |
4.本社所在地 | 長野県長野市 | |
5.役員 | CEO(社長):藤井豊春
(昭和電工且謦役無機材料事業部門長) CTO(最高技術責任者):遠藤守信 (信州大学 工学部 教授) |
|
6.目的 | @炭素材料に関する受託開発研究およびコンサルティング Aエネルギーデバイス関連技術の受託開発研究とコンサルティング B前各号に附帯関連する一切の業務 |
|
7.経営基盤 | 昭和電工鰍ィよび関係他社からの受託研究 |
2003/12/11
IPトレーディング・ジャパン/イデアルスター
原子内包フラーレン(A@C60)の事業化に向け本格始動
http://release.nikkei.co.jp/detail.cfm?relID=61197
研究開発ベンチャー、株式会社イデアルスター(以下、イデアルスター、本社:宮城県仙台市、社長:笠間泰彦)は、新機能材料として注目される原子内包フラーレンの量産化に向け本格的に動き出しました。東北大学大学院工学研究科電子工学専攻の畠山力三研究室で培われた技術をもとに、独自の量産プロセス技術の開発に取り組み量産に向けた機種の開発に着手しました。なお、本技術の事業化については、アルプス電気株式会社の知的財産戦略子会社であるIPトレーディング・ジャパン株式会社(以下、IPトレーディング、本社:東京都大田区、社長:梅原潤一)が、みずほ証券株式会社(以下、みずほ証券、本社:東京都千代田区、社長:大澤佳雄)とともに、新ファンド「IPインキュベーションファンド」を構築することにより、早期実現を目指します。
原子内包フラーレンは、フラーレンの中でも生成率の一番高いC60に各種原子を内包させたもので、素材としての貴重性は突出したものです。原子内包フラーレンをエレクトロニクス製品(半導体、磁性体、液晶、有機EL等)に応用することで、その性能等を飛躍的に伸ばすことが可能と思われます。原理は、プラズマ内でそれぞれ異極性にイオン化した原子とフラーレン分子の流れをつくり、バイアス電圧を印加することにより、フラーレンイオンと原子イオンとの相対的速度を下げ、相互に引き合う、いわゆるクーロン相互作用を用いて自然に内包させる方法を用います。イデアルスター独自の量産プロセス技術は、市場への原子内包フラーレンの安定供給を可能にします。原子内包フラーレンの量産・事業化は、世界でも先駆的な取り組みとなります。
当事業は、すでに東北経済産業局、宮城県、仙台市、株式会社インテリジェント・コスモス研究機構、JST研究成果活用プラザ宮城など地元の支援を受けています。さらにIPトレーディングとみずほ証券は、現在構築中の「IPインキュベーションファンド」の第1号案件として採用し、全面的な事業化支援を行います。
IPインキュベーションファンドとは、研究開発ベンチャーが創出する技術及びその技術から生み出される事業に投資する全く新しいファンドです。研究開発ベンチャーは、ファンド期間中、創出される知的財産(特許を受ける権利及び特許権等)を定期的に知的財産保有会社に譲渡することにより、譲渡対価を獲得し、研究開発資金の早期回収が可能となります。知的財産保有会社は、譲渡された知的財産をグローバルで運用し、収益をあげることをその任務とします。この仕組みにより、研究開発ベンチャーは、研究開発に専念することができます。
なお、IPトレーディングは、現在改正検討中の信託業法改正後の知的財産信託のデファクト・スタンダードを目指し、知的財産信託を用いた、より使いやすいファンド構成も射程範囲にいれております。
補足資料
IP インキュベーションファンドについて
IP
トレーディング・ジャパン株式会社(以下「IPTJ
」といいます)は、みずほ証券株式会社と共同で、新ファンド「IP
インキュベーションファンド」を設計しました。現在、原子内包フラーレン(A@C60
)技術の事業化を第1号案件として採択し、来年度中の構築に向けて動き出しました。以下、IP
インキュベーションファンドについて簡潔に説明します。
・IP インキュベーションファンドとは
IP
インキュベーションファンドとは、研究開発ベンチャーが創出する技術及びその技術から生み出される事業に投資する全く新しいファンド形態です。具体的には、研究開発ベンチャーは、ファンド期間中、知的財産保有会社との専属的な開発委託契約に基づき、所定の開発マイルストーンに従って創出するIP
、即ち、知的財産(特許を受ける権利及び特許権等)を定期的に新たに設立される知的財産保有会社に譲渡することにより、都度譲渡対価を取得し、研究開発資金を早期に回収できる仕組みを言います。この仕組みを利用することにより、研究開発ベンチャーは、知的財産保有会社に譲渡した知的財産の運用を任せ、研究開発に専念することができます。
・ファンドの仕組みのベースとなる知的財産の運用収入とその分配
知的財産保有会社は、譲渡された知的財産をグローバルベースで運用し、収入をあげることをその任務とします。知的財産を活用して事業化を進めるには、知的財産の管理及び知的財産を活用した事業に関する高度の専門知識と経験を必要としますので、知的財産保有会社単独で知的財産の管理及び運用を行うことは事実上困難です。そのため、知的財産保有会社からの委託に基づき、知的財産の管理・運用を専門とする会社が、他の事業会社などと協力して、知的財産保有会社が研究開発ベンチャーから購入した知的財産の維持・管理及び運用を知的財産保有会社のために行います。知的財産の運用から得られた収入は、知的財産保有会社との契約に基づき、研究開発ベンチャー、ファンドの投資家、知的財産管理・運用専門会社のそれぞれに分配されます。研究開発ベンチャーは、知的財産保有会社の運用収入(主として、ライセンス収入)の一定割合を定期的に受け取ることになります。
・事業化までの開発資金をいかなる方法で研究開発ベンチャーが調達するか研究開発ベンチャーは、知的財産の運用収入の一定割合を定期的に受け取ることになりますが、ファンド構築から事業化がなされるまでの間は、運用収入は生じません。しかしながら、この事業化までの期間をいかにインキュベートするかが研究開発ベンチャーにとって最も重要であり、この問題を解決すべく考え出された仕組みが、IP
インキュベーションファンドであり、その主たる特徴の1
つです。研究開発ベンチャーは、将来見込まれる運用収入に基づき、知的財産を譲渡したときに、都度所定の金額が譲渡対価として前払いされます。これにより、研究開発ベンチャーは、事業化までに必要な研究開発資金を早期に調達することができ、資金繰りを気にすることなく、研究開発に専念することができます。
・IP
インキュベーションファンド全体のメリット
IP
インキュベーションファンドは、研究開発ベンチャーが直面する、いわゆる「デス・バレー」の難題を解決する画期的な資金調達の仕組みです。また、研究開発ベンチャーは、自ら事業化を行なう必要がなくなるため、研究開発に専念することにより、その長所を最大限生かすことが可能となります。一方、事業化は経験豊富な企業が担うので、事業化の成功確率が高くなり、知的財産の価値の極大化を目指すことができます。ファンドの投資家は、知的財産を活用する事業化を専門とする会社による知的財産の運用に託することにより、継続的かつ安定したロイヤルティ収入からの分配を期待できます。また、事業化のための研究開発リスクを負担することがないので、事業化を行う企業にとってもメリットがある仕組みです。このようにIPインキュベーションファンドは、事業の役割分担と事業リスクの分散を適切に行うことにより、知的財産から生じる運用収入の極大化を目指すものであり、研究開発ベンチャーのインキュベートの一手段として、益々今後の利用が促進されるものと期待されます。
・IP
インキュベーションファンドと信託業法改正
IPTJ
は、現在改正検討中の信託業法によって、いわゆる知的財産信託を用いた、より使いやすいIP
インキュベーションファンドの構成も射程範囲にいれており、改正信託業法後の知的財産信託のデファクト・スタンダードをも目指しております。
日刊工業新聞 2003/12/19
OHC大牟田、廃タイヤからカーボンナノチューブ生産へ
OHC大牟田(福岡県大牟田市、古賀信友社長、0944-59-1116)は廃タイヤからカーボンナノチューブ(CNT)などを生産する事業を、04年に立ち上げる。現在、大牟田市内に建設中の工場で年明けにもリサイクルを開始し、品質、コストなどを実証した上で、4月以降工場を増設。年後半にはCNTを主体とするナノカーボンを月間100トン生産する。将来的にはグループ会社などを通じ、全国にリサイクル工場を建設する。
OHC大牟田は廃タイヤを乾留油化、カーボンブラック抽出、加熱・加圧などの瞬爆処理、という3工程によってナノカーボンを生産する技術を確立した。ナノカーボンは超高速コンピューターの微細配線や走査型プローブ探針などに使われる予定で、価格は現状では1グラム当たり数千円だが、今後コストダウンに力を入れる。
古タイヤを新素材に再生 大牟田市に新会社 住友商事など3社 地元と立地協定
http://www.nishinippon.co.jp/news/wordbox/report/0270.html古タイヤを炭素系新素材カーボンナノチューブ(CNT)に再生する技術を持つベンチャー企業、OHCカーボン(松山市)と住友商事などが、福岡県大牟田市の大牟田エコタウンに共同で新会社を設立し、古タイヤの再生事業を始める。8日午前、大牟田市と立地協定を結んだ。同エコタウンへの進出は2社目。
CNTは、自動車のクラッチ板などに使われている。「二十一世紀の新素材」として注目され、全国では約20社が生産しているが、九州での生産は初めて。
OHCカーボンは松山市で酒類卸会社を経営する越智洋太郎社長らが事業多角化の一環として2002年10月に設立。資本金は2200万円。古タイヤから出るタイヤ補強剤のカーボンブラックを瞬間的に水蒸気爆発させる技術で、他社に先駆けて量産を可能にしたという。
新会社のOHC大牟田(資本金1千万円)はOHCカーボンと住友商事、古賀商事(福岡県久留米市)が6月に設立。10月に操業開始する。社長には古賀商事の古賀信友社長が就任する。年間約25万本の古タイヤを処理し、CNT約10トン、カーボンブラック約500トンの生産を計画。初年度は5千万円の売り上げを見込んでいる。
越智社長は「われわれの開発した技術が地域活性化の起爆剤となり、雇用促進につながることを希望している」と話している。
日本経済新聞 2004/3/4
大手商社、相次ぎ先端技術を開拓 投資回収
不透明さも
大手商社がナノテクやバイオなど、先端技術の開拓に力を入れ始めている。各社は不採算取引の見直しなどで業績を改善させているが、既存事業のテコ入れによる収益力拡大は近い将来限界に来るとみており、新たな収益のタネとして先端技術をとらえているためだ。ただ、従来のビジネスモデルと異なる息の長いR&D(研究開発)や投資が実を結ぶかは不透明だ。
住友商事はNECからカーボンナノチューブに関する基本特許供与を受けたことで、カーボンナノチューブの応用製品開発を本格化する。住友商事は優れた電気特性などを持つ単層カーボンナノチューブの本格的な量産を4月から始める米CNI(テキサス州)と販売提携しており、今回の契約で「日本や韓国市場を開拓するための環境が整う」(住友商事)。
先行する三菱商事は商業化を前提にしたR&Dを戦略分野とし、社長の直轄事業と位置付けている。商社で最も早くナノテクに注目。三菱化学と共同でナノチューブと並ぶ代表的な微小素材、フラーレン(球状炭素分子)の量産化を進めると同時に、広島県立大学などと共同でフラーレンを用いた化粧品原料の開発などに着手した。
このほか三井物産はナノテクを研究開発する子会社3社を設立したほか、茨城県つくば市に研究開発拠点「ナノテクパーク」を設置した。伊藤忠商事も国内外の研究機関、大学などと連携するなど各社とも知的財産の共有などで手数料だけに頼らないビジネスモデルの構築を進めている。
大手商社の主な先端技術関連ビジネス
三菱商事 | フラーレンの量産化 |
フラーレンの用途開発 | |
三井物産 | 研究開発子会社によるカーボンナノチューブの開発 |
ナノテクパークの設置 | |
住友商事 | カーボンナノチューブの輸入販売 |
東大と提携し、糖鎖の研究開発会社 | |
伊藤忠商事 | 米ロスアラモス研究所などとの包括提携 |
産業技術総合研究所との包括提携 | |
丸紅 | 再生医療関連ベンチャーへの投資 |
カプセル型内視鏡の事業化 |
日本経済新聞 2004/4/7
ナノテク素材 がん転移抑制 三菱商事子会社と広島県立大確認
三菱商事の子会社でナノテクノロジー(超微細技術)の用途開発に取り組むビタミンC60バイオリサーチ(松林賢司社長)は、広島県立大・生物資源学部の三羽信比古教授のグループとの共同研究でナノテク素材、フラーレンに皮膚がんの転移抑制効果があることを確認した。 フラーレンは10億分の1メートルという微細な構造を持つナノテク素材で、60個の炭素原子がサッカーボール状に結合したものが代表的な構造。光の吸収性など複数の機能が確認されており、医療や工学、環境などへの利用が期待されている。
両者は皮膚メラノーマ細胞(皮膚がんの一種)により、がん細胞の転移を調べる手法を使い、マウスで実験した。水溶性のフラーレンを静脈注射すると、転移が7分の1に抑制されるという。フラーレンが高い浸透性によってがん細胞の周辺まで到達し、がん細胞の浸潤(生体組織間移動)プロセスを阻害する仕組みという。
がん治療にはがん細胞の死滅と転移抑制の二つの手法があるが、近年、後者の薬剤開発が停滞気味とされる。このため製薬会社へのライセンス供与なども検討し、早期の実用化をめざす。
広島県立大学三羽教授とビタミンC60 バイオリサーチ社のフラーレン共同研究成果
〜水溶性フラーレンの高いがん転移抑制効果を確認〜
“ナノテク素材初のがん転移阻害効果”
http://www.mitsubishicorp.com/jp/pdf/pr/mcpr040407.pdf
広島県立大学・生物資源学部三羽信比古教授らの研究グループは、三菱商事が100%出資して設立したフラーレン・ライフサイエンス研究開発のベンチャー:ビタミンC60 バイオリサーチ社(本社:東京千代田区、社長:松林賢司)との共同研究により、水溶性フラーレンに高いがん転移抑制効果があることを確認致しました。
今回実験に使用したビタミンC60 バイオリサーチ社が開発した水溶性フラーレンは、フラーレンを生体適合させるために精製し、水に溶けるように特別な処理を施したものであり、この工夫によりこれまで困難であったライフサイエンス分野全般での前臨床試験が可能になりました。今回行った試験における水溶性フラーレンのがん転移抑制効果は、非常に優れたものであり、がん転移を7分の1に抑制する効果が認められました。
がん治療の代表的な二つのアプローチとしては、“がん細胞の死滅”と“がん細胞の転移抑制”が挙げられますが、昨今、がん細胞の転移抑制に関する薬剤開発が進んでいないという問題点が指摘されています。今回の成果は、有効事例が少ない“がん細胞の転移抑制”という機能をフラーレンというナノテク素材が発現するという意味で画期的なものです。三羽研究室において実施された前臨床試験は、皮膚メラノーマ細胞(悪性黒色腫、皮膚がんの一種)により、がん細胞の転移抑制を調べる確立された手法を用いました。
フラーレンは、高い浸透性により、がん細胞周辺まで到達し、がん細胞の浸潤(生体組織間移動)プロセスを阻害し、又、酸化ストレスを軽減する特性により、がん転移の誘発原因をも消去、これがフラーレンのがん転移抑制メカニズムとなっています。これは細胞毒性の強い従来型の抗がん剤とは一線を画するものであり、共同研究の詳細は逐次関連の学会にて発表する予定です。
ビタミンC60 バイオリサーチ社は、フラーレンを用いた化粧品有効成分の研究開発を行う為に、三菱商事の100%出資会社として、昨年7月に設立されました。同社は、ライフサイエンス全般でのフラーレンの応用を想定した研究を推進しており、化粧品成分のみならず医薬品原料としても使用可能である精製フラーレン(商品名:BioFullerene
TM)と今回、前臨床試験に使用した水溶性フラーレン(商品名:Radical
Sponge®)の開発に成功しています。今後も、化粧品有効成分の製品化を目標に活動するとともにライフサイエンス分野にて“ラジカルコントロール”(活性酸素を含む人体に有害なラジカル種の消去)という概念の提唱、追及により人類の健康に貢献することを目指します。
尚、今回の共同研究成果は、ビタミンC60 バイオリサーチ社の開発した水溶性フラーレンが活性酸素を効果的に消去するだけではなく、皮膚がんの転移・拡大も防止する効果があることを意味しており、今後の化粧品有効成分などへの利用が大きく期待されるものです。
2004年4月7日 Hotwired Japan
ナノ素材の毒性を示す新たな実験結果――ナノテクへの懸念が増大
http://hotwired.goo.ne.jp/news/news/20040408301.html
Stephen Leahy
ナノ粒子にさらされた魚の脳に損傷が確認されたとする研究が3月末に発表され、誕生して間もないナノテク業界はいっせいに縮みあがった。ナノテク批判派は、喧伝されている数十億ドル規模のナノ業界には誰も触れたがらない暗い一面があると指摘する。
「毒性を示す研究結果があとどれぐらい出てきたら、規制当局は介入してくれるのだろうか」と、環境保護団体『ETCグループ』(カナダ、マニトバ州ウィニペグ)のキャシー・ジョー・ウェッター氏は問いかける。ETCなどの環境保護団体は、ナノ粒子の商業生産を一時停止するよう求めている。
ナノテク利用製品が特別な規制を受けていない理由として、ナノテクノロジーが環境や健康へ及ぼす影響についてほとんどわかっていないことも挙げられると、ライス大学(テキサス州ヒューストン)の生物環境ナノテクノロジー・センター(CBEN)の責任者ケビン・オースマン博士は述べる。
「ナノテクノロジー」は広範囲に使われる用語で、人間の毛髪の太さの数万分の1という単位に基づくあらゆる研究や技術に適用される。この極小な規模になると、ありふれた物質も並外れた特性を示すようになる――これにより、ピンの先ほどの大きさのスーパーコンピューターやガン治療用のナノロボット部隊といった空想がかったものから、高品質の塗装やアイシャドーといった日常的なものまで、さまざまな技術の実現が期待できる。
汚れにくいナノ素材パンツや、ナノサイズの二酸化チタン粒子を使った日焼け止めクリームや化粧品はすでに市場に出回っている。また、ボウリング用ボール『ナノデス』は、フラーレン(別名バッキーボール)と呼ばれるナノ粒子を使って作られた、初めての一般消費者向け商品の1つだ。フラーレンは、炭素原子がきわめて安定した構造を作っている分子で、サッカーボールのような形をしている(写真)。
南メソジスト大学生物科学部の講師で、水中環境について研究するエバ・オーバードースター博士は、バッキーボールが自然環境に入りこんだ場合に起きる現象を調べるため、バッキーボールを濃度0.5ppmで混入した水槽にオオクチバス9尾を入れて観察を行なった。その結果、バッキーボールを吸い込んでから48時間たったオオクチバスの脳にかなりの損傷が確認された。脳の細胞膜に、人間のアルツハイマー病などの疾患と関係があると考えられてきた種類の損傷を引き起こしていたのだ。
3月末に米国化学会(ACS)の会合で公表され、今週オンラインで論文が発表されるオーバードースター博士の研究は、ナノ素材の潜在的危険性を扱って結果を得た、数少ない徹底した研究の1つだ。懸念すべき理由はいくつかある。最近発表された2つの研究で、カーボン・ナノチューブというバッキーボールの一種を吸いこんだ動物は肺に損傷を受けることがわかった。別の研究では、吸い込んだナノ粒子が脳に入り込む可能性があることも示されている。
また、ナノ粒子はきわめて小さいため、細胞壁を通過して、生物のDNAが入っている細胞核にまで侵入しうる。さらに二酸化チタンのナノ粒子の場合、バクテリアを殺す可能性もある。これは病院では喜ばしい話だが、自然環境では歓迎されることではない。自然環境ではバクテリアが重要な役割を担っており、とくに肥沃な土壌を維持するためにきわめて重要な存在だからだ。
オースマン博士によると、ナノ素材と自然環境とがどう影響しあっているのかを理解することは、複雑かつ学際的な問題だという。
「環境の毒性を調べる際に通常用いる方法の中には、ナノテクノロジーに適用できないものもある。それに、こういった新しい素材を本当に理解している研究者は多くない」とオースマン博士。
その数少ない、新素材を理解する研究者の1人が、国立環境衛生科学研究所で行なわれている政府出資の環境と毒物に関する研究プログラムで副責任者を務めるジョン・ビューカー博士だ。ビューカー博士の研究グループでは近々、3種類のナノ粒子が自然環境と健康に及ぼす影響について研究を始める予定だ。
「ナノ素材は多種多様で、なかには毒性をもつ可能性が高いものもある」とビューカー博士は述べる。
ナノテクの影響を判断するのは容易なことではない。ナノ素材の特性はまだ明確になっていないからだ。通常は生物学的に不活性である金のような物質も、ナノサイズになると反応性が強まり、生物学的作用を阻害する可能性が高くなる。
そのうえ、これほど小さな粒子は探し出すこと自体が難しいという問題がある、とビューカー博士は話す。ナノ粒子を確認できるほど強力な顕微鏡(日本語版記事)はまだ少ない。
国立環境衛生科学研究所の研究プログラムの完了にも、まだ数年かかる。
オースマン博士は、将来の応用への道を開くためには規制が必要だと考えているが、現在はまだその規制を確立するできるだけの知識が得られていない。その間、毒性に対する懸念を理由に、ナノテク産業および、業界が社会にもたらしうる利益が損なわれるようことがあってはならない、と同博士は述べる。
「現時点では、私自身は心配していない」とオースマン博士は語った。
2005/9/20 毎日新聞夕刊
「超微粒子」で透明感 ナノ化粧品 安全性は?
122社使用 業界団体が検証へ
超微粒子を売りにしたファンデーションなどの「ナノ化粧品」について、日本化粧品工業連台会(粧工連)は、独自試験などでその安全性を検証していくことを決めた。ナノメートル(ナノは10億分の1)サイズの超微粒子(ナノ粒子)が、吸入などで体内の器官に入り込み健康に悪影響を与える可能性を示す研究報告が出てきたため。粧工連は現時点では安全性に問題ないとの立場だが、化粧品は薬事法で水銀などの配合禁止成分が定められているものの、含有成分の大きさや形状までは規制されていない。
ナノサイズの物質を扱うナノテクは、次世代を担う新技術として期待されている。化粧品分野ではナノテクを生かした超微粒子を含む製品が80年代後半から登場した。同じ成分でも、粒子がより細かい方が、透明感の高いファンデーションや紫外線予防効果の高い日焼け止めができるという。
粧工連が今年2月、化粧品会社や原料メーカーなど会員企業にアンケートした結果では、回答した478社の4分の1に当たる122社が「ナノ粒子を使っている」と答えた。成分は、化粧品によく使われる酸化チタンと酸化亜鉛がほとんどだったが、粒子の大きさは20〜50ナノメートル未満が約半数を占め、20ナノ未満も約3割で、従来製品の10分の1程度だった。
ところが、ナノ粒子の一種でサッカーボール状の炭素分子フラーレンを入れた水で飼育した魚の脳細胞が傷付く可能性がある▽ラットにナノ粒子を吸わせると、神経を経由して脳に入り込んだーーなどの報告が昨年、米国で相次いだ。
物質がナノサイズになると、反応性や性質が変わるとの指摘もある。英国王立協会は同7月、同じ成分でもナノサイズの物質は、新規物質として安全性を検討すべきだとの報告書をまとめた。
酸化チタンなどのナノ粒子については、皮膚の表面にとどまるとする海外の研究結果もあるが、粧工連は皮膚を透過するかどうかを動物の皮膚などで調べる予定だ。安全性部会の畠山義朗さんは「データを積み上げ、業界全体で安全性を保証していく必要がある」と話している。
世界的にもデータ不足
ナノテクノロジーで扱うナノ粒子は、電子部品や化粧品の新素材として注目が集まっているが、安全性の評価は遅れていた。産業技術総台研究所の阿多誠文・シニアリサーチャーは「ナノ材料を吸い込むことによる影響や慢性的な毒性試験は、技術的にも難しい。世界的にもデータが不足している」と指摘する。
日本化粧品工業連合会のナノ粒子製造会社への聞き取り調査でも、ナノ粒子を吸い込んだ時の影響は評価していないことが分かった。大手化粧品会社も「ナノ粒子が皮膚を透過するかまでは調べていない」と話す。
物質サイズが極微小になると、同じ成分でも、反応性が高まるなどその特性が変わるとされる。こうした性質が、人体に予想外の影響を与える恐れも生む。海外では、炭素原子でできたカーボン・ナノチューブの粒子が、アスベストと同じような害を人体に与える可能性を指摘するリポートもある。
国内ではこれまで、体系的な調査や研究はなかったが、厚生労働省や環境省など4省は7月、ナノ粒子の安全性評価やリスク管理の方法に関する共同研究を始めた。
幅広い産業でナノテク一が注目を集める中、今後はナノ粒子の総合的な安全性研究が不可欠だ。
日本経済新聞 2005/9/22
ディーゼル排ガス吸ったマウス 胎児にナノ粒子沈着 東京理科大などの研究
ディーゼル排ガスを妊娠中に吸わせたマウスの胎児の脳や精巣組織に、排ガスに含まれる超微小粒子(ナノ粒子)が母体から移行して沈着、周囲の細胞に変性を起こしている可能性が高いことを、東京理科大の武田健教授らの共同研究グループが突き止めた。
研究グループは同教授のほか、栃木臨床病理研究所の菅又昌雄所長、奥羽大の押尾茂教援ら。
21日、東京都内でのシンポジウムで結果を発表。「ナノテク産業が生み出すナノ粒子についても、生体内での挙動や影響などを詳しく調べる必要がある」と指摘した。
ナノ粒子は多様な機能が注目され、工業利用も進んでいる。一方で体内に入りやすく、沈着もしやすいため、生体への影響が大きいと懸念され、各国で毒性研究が進んでいる。
ナノ粒子の胎児への移行を確認した例はこれまでなく、世界でも注目されそうだ。
グループは、妊娠2日目から16日目まで1日12時間、排ガスを吸わせた母親から生まれたマウスの脳や精巣組織を電子顕微鏡で観察。海馬や大脳皮質など脳内のさまざまな場所に極めて微小な黒い粒子が多数沈着、周囲の細胞が変性し、血管が細くなっていることなどを確認した。精巣の特定の組織にも微粒子が多数取り込まれ、細胞が変性していた。
2006/2/1 British
Plastics & Rubber
Now
Arkema has commercial carbon nanotubes
Arkema has doubled its capacity
for carbon nanotubes and started up a pilot plant for
commercially-priced materials. Carbon nanotubes have wide-ranging
potential in plastics and composites as reinforcements and for
electrical conductivity. The company started its R & D into
carbon nanotubes in 2003, and a year ago announced a partnership
with Zyvex of the USA to develop applications
for carbon nanotubes. It has now inaugurated a plant at its Lacq
Research Center in Aquitaine, France. The plant operates a
patented catalysis process, and can produce up to 10 tonnes per
year. A commercial grade will be formally introduced at the JEC
Composites show in Paris in March.
Carbon
nanotubes were discovered in the early '90s, and represent a new
crystalline form of carbon. They are minute tubes which can have
several concentric graphite walls. Their diameter ranges from 1
to 60 nanometers - 10,000 times finer than a human hair - and
they can be tens of microns long. Carbon nanotubes are 100 times
stronger and six times lighter than steel. Their thermal
conductivity is greater than that of diamond, and, depending on
their molecular structure, they react like electrical conductors
or semi-conductors.
Towards
the end of last year Bayer introduced its Baytubes
which it said overcame the high price barrier which has prevented
wider adoption of the technology. Bayer has recently cited
Baytubes as a candidate for nurturing in its new 'Greenhouse'
concept for converting ideas into independent start-up companies
owned by Bayer MaterialScience.
2006/4/3 保土谷化学工業
合弁会社設立に関するお知らせ
http://www.hodogaya.co.jp/news/pdf/06040302.pdf
当社は三井物産梶i代表取締役 槍田 松瑩
と合弁で多層カーボンナノチューブの製造・開発・販売を行う新会社を設立しましたので、
下記のとおりお知らせいたします。
1.新会社設立の趣旨およびその内容
現在当社はコモディティ製品からスペシャリティ製品への事業構造変革の中で、電子材料、有機EL材料、樹脂材料等の付加価値をより高める事業戦略を推進しており、これとともに次世代新規事業の探索強化に取り組んでおります。
一方、三井物産鰍ヘ2001 年に100%子会社「兜ィ産ナノテク研究所」を設立し、主に多層カーボンナノチューブの工業的製法に関する開発とその製法確立に向け検討を続け、今回商業レベルでの設備稼動に関し目途を付けた段階となりました。
このような状況の中で、当社の新規事業探索強化の方向性と、三井物産鰍フ多層カーボンナノチューブに関する本格的工業化という方向性で両社ニーズが合致し、今般合弁会社設立に至りました。
今回の新会社設立により、当社の強みである有機合成技術や製剤技術の活用とともに、三井物産鰍フ販売力も生かしながら、今後新規事業の育成・強化を図る所存であります。
2.合弁会社の概要
@社 名 ナノカーボンテクノロジーズ株式会社
A代 表 者 代表取締役社長 栗原信治 (保土谷化学工業鰹務取締役)
B所 在 地 川崎市幸区堀川町66番地2(事業所:東京都昭島市)
C設立年月日 2006年4月3日
D事業内容
多層カーボンナノチューブおよびそれを含有した樹脂複合材の製造、販売
E決 算 期 3月31日
F従業員数 37名
G資 本 金 125百万円
H出資比率 保土谷化学工業 66%
三井物産 34%
新規炭素ナノ素材「カーボンナノスフィア」に関する提携について
住友化学は、このほど、米国ヘッドウォーターズ社(以下、HW
社)と、新規炭素ナノ素材である「カーボンナノスフィア」に関する研究開発ならびにその事業化について、両社共同で進めていくことで合意いたしました。
「カーボンナノスフィア」(carbon nanospheres)は、球状の新しいタイプの炭素ナノ素材で、HW
社が開発したcarbon nanospheres(以下、CNS)は、典型的なサイズが外径100nm
以下で、中空構造になっております。その特徴的な構造から、「カーボンナノチューブ」(*1)(carbon
nanotubes:以下、CNT)や「高性能カーボンブラック」(*2)(high
performance carbon black:以下、HPCB)といった他の炭素ナノ素材と比べ、数々の優れた特長を有しています。
1.高い導電性
CNS はグラファイト化(*3)された独特の球状多層構造を持つことから、高い導電性を有します。このため、プラスチックの帯電防止用フィラー(*4)などへの応用が期待されます。また、導電性の高さから、従来のHPCB
に比べ添加量が格段に少なくて済むため、プラスチック本来の強度を生かすことができます。
2.強度を損なわずに表面修飾が可能
CNT
とは異なり、基本構造を崩さずに、強度や導電性を損なうことなく表面の修飾が可能です。これにより、各種のプラスチックに対する親和性を増すことができ、均一な組成のCNS
含有プラスチックを容易に得ることができます。
3.製造プロセスがシンプル
製造プロセスが複雑なCNT
に比べ、シンプルなプロセスで効率的に製造することが可能です。
CNS
は、このような特長を有することから、これまでHPCB
やCNT
では実現できなかった新しい用途に道を開くものと考えております。
住友化学は、今後、HW 社と協力し、CNS
の特徴を生かしたさまざまな用途開発研究を行っていきます。さらに、その成果を元にCNS
に関する事業化を、HW
社と共同で早期に実現していく考えです。
(ご参考)
社名 Headwaters Incorporated
本社所在地 Salt Lake City
社長 Kirk A. Benson
資本金 5.0億ドル(2006 年9 月)
設立年月 1986 年
売上高 11.2 億ドル(2006 年)
従業員数 約4300 人
事業内容
エネルギー、建設関連の製品、技術、サービスの提供
表1 CNS と他の炭素ナノ素材との比較
CNS | CNT | HPCB | |
導電性 | ○ | ○ | X |
プラスチックとの親和性 | ○ | X | △ |
製造プロセス | ○ | X | ○ |
【用語解説】
(*1)カーボンナノチューブ
1991 年に、NEC
の飯島氏により発見された炭素ナノ素材の一種。グラファイトシート(*3
参照)を円筒状に丸めた構造で、直径数nm、長さ数百nm〜数μmの非常に細長い円筒状の形状を有する。最近では、ディスプレイ用の電界電子放出源、各種ガス吸着材などの用途が検討されている。
(*2)カーボンブラック
天然ガス、炭化水素ガスの気相熱分解や不完全燃焼によって生成する、微粉の球状あるいは鎖状の炭素。ゴムの補強用充填材、印刷インキ、顔料、炭素材料の原料などに用いられている。
(*3)グラファイト(=黒鉛)/グラファイト化
炭素の同素体の1つ。天然に産出するが、無定形炭素を3000℃前後で熱処理することによっても得られる。六角形に並んだ炭素原子が巨大な網状に積み重なった層構造(=グラファイトシート)を有する。無定形炭素からグラファイトの構造に変化させることをグラファイト化と呼び、その度合いによって異なる物性を示す。
(*4)帯電防止用フィラー
プラスチックは高い電気抵抗を有するため、表面に帯電して種々トラブルを起こすことがある。ある程度の導電性を与え帯電を防止するために、高い導電性を有するフィラー(=添加材)をプラスチックに練り込む方法がある。フィラー量が多いと、プラスチックの他の性質にも影響を与える。