経理部 主計課 1964年3月〜1975年8月                              ←目次へ

 

1964年3月 本社経理部主計課に転勤。
  原価班で最初は大阪製造所関係を担当、その後新居浜製造所担当。

 


新総合システム(新幹線計画)

 住化のコンピュータ化の歴史は以下のとおり。

 1961 総合事務機械化委員会設置
      計算事務の機械化、IDPシステム採用、新居浜地区への計算機設置を決定
 1961 本社―春日出間にIDP回線
 1963 NEAC2230 運転開始
 1964 新居浜事務所にIBM統計会計機導入
 1964 全事業所、主要中継地にIDP網完成
 1965 総合事務機械化
 1967 NEAC2200 M500
 1967 MIS委員会 
 1970 オンラインシステム推進委員会発足 
 1973 7月 オンライン稼働失敗
      9月 稼働 新総合システム(新幹線計画)も

 
総合事務機械化(1965年)

 1965年の総合事務機械化は主計課の近藤誠宏さんと計数課のS氏が中心に作成したもので、システム体系としては非常に優れており、現在の体系のベ−スとなっている。

    ・売上デ−タのデ−タチェックシステム
    ・当初のインプット・デ−タから損益計算まで一括処理
    ・各デ−タから自動展開仕分け−−−B/Sまで

 即ち出荷オーダーと出荷報告をマッチングさせて売上データを作成、あらかじめ登録した引当単価、率でリベートを計算して純売上高を計算、また登録した標準原価で売上原価を計算する。更に登録した標準運賃や技術料の単価・率で運賃や技術料を計算し、本社間接費をそのグループの純売上高の比で配賦して品名別損益を計算する。製品勘定については購入データや他の受け払いデータ(標準原価で評価)と売上データから受払・残を計算する。
 それぞれの計算結果で自動仕訳を行い、一般の仕訳と合わせ、残高試算表を作成するというものである。

*のち、金塊密輸で逮捕された。見つからないようにか、香港から鹿児島空港に入ったが、ゴルフバッグだけのため怪しまれ、みつかった。土曜日(半ドン)に計数課の机の捜査があった。上が不在で現在の筆者の妻(当時計数課勤務)が立ち合った。即日解雇。


問題点
 1.全てのデ−タが正しくインプットされることを前提にしている。

売上伝票の場合、50を超える項目(課、扱い、出荷場所、内輸別、製品の製造所区分、品名、荷姿、容量、個数、数量、単価・金額区分、単価、輸送条件、etc, etc)をコードで記入する必要がある。またパンチャーがそれを正しく打鍵する必要がある。

デ−タチェックはあったが、非常に単純なもの
 ・登録されたデ−タかどうかだけ(登録されておれば間違ってもエラーでない)
 ・価格は品名ごとに下限と上限を登録し、その範囲に入っているかどうかだけ
   エラーデータはカットされるため、上限を大きくするのが多い。
 ・それ以外の項目はチェックなし。

実際には記入ミス、ミスパンチによる誤データが多数出るが、そのままで最後の作表まで走ってしまうため、経理の仕事は一件別リストで誤りをみつけ、損益や製品勘定を修正していくのが中心となった。
ひどい場合は単価・金額区分の間違いで、輸出(レートや口銭を計算して売上金額をインプットする)の場合に金額を単価として数量にかけ、何千億円の売上になり、本社費の配賦計算をハンドでやり直したことがあった。

 2.基本的な取引のみを考えたシステムで、例外処理が考えられていない。

その後、新しい製品(例 MMA 縦x横x厚みx枚数で重量換算)が次々出てきた上、以下の関係会社が設立され、それぞれの会社の売上データ処理と、それらの会社との複雑な取引処理が必要となった。

  住友千葉化学 
    1967年エチレン,PE,PP,PVC完成
    PE,PP、PVCは工場出荷時に買い取り、大江・菊本品とプールして販売
  住友ノーガタック 1966愛媛工場スタート
    当初は住化売上対象外であったが、売上拡大(ビリオンダラーカンパニー目標)の
    ため売上を通すこととした。
  住化バイエルウレタン 1969設立      
  
  日本ラクタム    1965年 新居浜工場完成 以下 Paper Company
  日本アトランチック 1967 菊本工場スタート
  日本アルデハイド  1968 千葉工場スタート
  日本塩化ビニール 1971スタート
  千葉塩ビモノマー  1971スタート
  東日本メタノール  1970スタート
  日本アンモニア   1971スタート

これらの部門での原料使用は(通常なら入出庫伝票だが)売上伝票を切らす必要があった。また売上は住化経由となるため、1つのデータ(住化売上)で関係会社の売上、住化の購入データを作成する必要がある。品名コード等の誤りがあれば間違って展開されてしまう。

 3.プログラム変更が簡単でない。  

長い長いプログラムをCOBOLという言語で組んでいたが、個人の判断で修正箇所、修正方法が異なるため、正しい修正ができず、一度変更すると数か月にわたり混乱し、ハンド修正が続く。

例 住友ノーガタック品を対象とする場合、「所別」で選んだり、「品名」で選んだりするためコード誤りが対象から外れる。

プログラムの中で、効率を考えてデータを集約したり、仮の名前を付けたりしているが、修正個所を間違うと修正にならない。

 4.自動仕訳はすべてプログラムで組んでいた。判定条件は単純なもののため、例外分や品名、課名等のコード誤りはすべて仮勘定(「未決算金」)として処理された。

スタート時には膨大な仮勘定が発生したが、ほとんどの課員が仕組みそのものを知らないため、筆者がすべて処理した。

 5.当時の計数課の考え方
    ・デ−タ誤りはインプット側の責任である。
    ・コンピュ−タ−は大量デ−タの一括早期処理が特徴で、例外処理はできない。

 当時はほとんど毎年、新しい会社や製品が出来、プログラムを書き込む必要がある上、売上控除の率など頻繁に変更がある項目もプログラム修正が必要であり、コードのミス(ミスパンチを含む)は膨大な件数があったため、経理(原価班)は間違いを見付け、それを修正していくことで毎月残業を強いられた。

 当然、いろいろな対策はとった。

 膨大なデ−タをインプットする場合、誤りがでるのは当然であり、まずインプットするデ−タ量を減らす工夫をした。
    pre-print  課ごと等で決まっている項目を伝票に予め印刷
    pre-set   デ−タの組み合わせでコンピュ−タでデ−タ作成

 また、データチェックも単なるコードの存否ではなく、論理チェックを導入した。

条件を階段状に付け、「A項目がXXで、B項目がYYの場合」等でチェック。
条件は yes or no だけでなく、範囲、≦、≧なども可能とする。
(この方式の開発が後の取引展開等のマスターにつながった。)

MIS (Management Information System) 委員会発足 (1967)

  コンピューターで集めたデータを経営に役立てようとしたが、生データは誤りが多く、ほとんど役に立たないことが問題となった。
  対策としてオンラインシステムを導入してその都度誤りデータを修正することを考えた。しかし、コストが高すぎるということで委員会としてはギブアップした。


新幹線計画の検討

 特別のコンピューター処理を要する新しい製品が次々と出て、また新しい Paper Company も次々に設立され、品名コードや所別コードも一杯となり、コンピュータープログラムは複雑なものになって対応が不可能となった。
 このため、既存システムの修正ではなく、全く新しくシステムを構築することを考えた。丁度、国鉄が既存の鉄道とは別に新幹線をつくったのに合わせ、新幹線計画と名づけた。

 コンセプトとしては以下のとおり。

・ 総合化学で多数の事業を行う以上、異なる処理が必要であり、また事業の拡大で新しい取り引き形態が発生する。コンピュ−タがこれを処理しえないなら意味がない。

・ プログラム修正を頻繁に行う必要があり、修正する個所を固定し、修正方法を一定にするとともに、現状が常時把握できる必要がある。

このため、プログラムは基本の流れのみとし、それぞれの処理は、「条件」と「処理」をマスターカードで規定し、それにより処理することとした。従来は計数部門がプログラムで書いていたのを経理部門がマスターカードを作成し、管理することとした。マスターカードをプリントし、常時最新の状態を見られるようにした。
   例 システムの
「受払」&「損益計算」参照

マスターカードは論理チェックのやり方で階段式に条件を定義し、計算方法を規定するものとした。例 システムの「取引展開」参照

・ 経理上の取引にあわせた伝票を切らせるのでなく、モノの動きに合わせた伝票を切らせ、後はコンピューターで経理上の取引に展開する。 

新居浜のラクタム製造部門でアンモニアを使用する場合、経理上は日本ラクタムへのアンモニアの売上となるが、アンモニア部門からラクタム部門への入出庫伝票を切らせる。(他の部門と同じ扱いとする)

・ 会社名コードの導入

住友ノーガタックや住友バイエルウレタンのような販売データ作成を受託する会社や多数の Paper Companyの設立で、システムが複雑となり、所別コードで区分するのには限界が出たため、新たに会社名コードを導入することとした。
この結果、会社別に処理を変えることも可能となった。

1995年に新第一塩ビが設立され、住化(千葉、愛媛工場)、日本ゼオン(水島、高岡工場)、トクヤマ(徳山工場)に製造を委託することとなり、当然原価計算や棚卸資産管理も委託することとなった。しかしゼオンのプログラムには会社区分がなく、データを入れると全てゼオンのデータとなってしまうため、新第一塩ビの原価計算はハンドで行われた。

・ 合わせて全てのコード体系を変更した。
   品名コードは上2桁をアルファベットとした。

・ 展開仕訳もすべてマスターで行う。


 まず、現状の把握が大変であった。変更に変更を加えたため、どのような処理をしているかを誰も把握していない状況であった。このため筆者が計数部門の現状のプログラム(COBOL)を全て読み、整理していった。販売、購買、棚卸資産、原価計算、固定資産、人事等、全プログラムを整理した。

 並行して計数部門と新しい体系について協議した。データの流れをもとにどの個所でどの処理を行うかを決め、それぞれに必要なデータ内容を決めていった。
 合わせて新しいマスター方式を協議した。マスターの形態はさきに導入したデータチェック(論理チェック)を改善した。問題は取引展開などで1データで何度も処理をする必要があるため、当初のテストでは処理に何時間もかかった。これは計数部の西田さんの工夫で解決した。

 
オンラインシステム推進委員会発足 1970

 新幹線計画の検討開始に合わせ、オンラインシステム推進委員会が発足した。MIS委員会ではコスト問題でギブアップとなったが、トップの判断で採用と決まった。
 委員会ではオンラインを(経理処理ベースでなく)実務の実態に合わせ、モノの流れに沿ったものとすることと決めた。このため経理部門は直接はタッチせず、間接的に協力することとした。

 オンライン計画と新幹線計画は同時に(1973/7)にスタートすることとし、新コード体系もその時点で使用することとした。


新幹線計画

 基本システムは添付のとおり。

 添付資料では製品中心の受払と損益計算の基本構造を示したが、このほかに工場での受払、原価計算や購買、新居浜地区(同所のコンピューターで別処理)とのデータのやり取り、棚卸資産の期末評価計算その他、全てにわたっている。

 マスターの例として添付資料で「
売上控除」、「所別按分」、「取引展開」を示したが、あらゆる判断項目(条件→結果)をマスターで計算することとしたため膨大にわたった。全社分を全て経理で作成した。展開仕訳についても経理で全社分を作成した。

 各コードの体系についても経理で作成し、管理した。 

オンラインとのつなぎ

 スタートが近づき、問題となったのは在庫の引継ぎである。
 オンライン委員会では実残をインプットしてスタートすることを主張したが、経理としては経理上の残を引き継ぐ必要がある。

 この結果、次の方法で処理することとした。

・ コンピューターで各所別の経理残を架空保管場所の残として引き継ぐ。
・ 各所は実残を実保管場所(倉別その他)でインプットする。
・ インプットされた数量は同時に架空保管場所のマイナスデータとする。
・ この結果、実残との差は架空保管場所の残(プラスorマイナス)となるため必要な修正処理を行う。

 1973/7/1 オンラインシステムが稼働した。
 しかし、データ処理に時間がかかり、待ち行列(Queue)が出来、これが溜まってシステムが休止するという事態が続いた。
 この結果、1週間ほど後に2ヶ月の延期を決めた。それまでにインプットされたデータは旧システムに移した。

 1973/9/1 オンラインシステムが稼動。9月度分から新総合システム(新幹線計画)も稼動した。

 新総合システムは長期間使用されたが、その考え方、手法はその後のシステムでも長く使われた。統合業務パッケージ(ERP)システム「SAP・R/3」の導入に当たっては、経理処理に合わせてデータを1件づつインプットするという(原始的な)システムであるが、関係会社との取引については取引展開システムを残すこととしている。


SAPシステムについてのコメント:

 SAPシステムは経理処理に合わせてデータを1件づつインプットするという意味では新幹線採用前の住化のシステムと同じであり、新幹線への切替の理由になった問題点を抱えている。
 また、全世界統一システムのため、各業界の特殊取引を処理できるようになっていない。

 毎日、損益が分かるというメリットについては、新幹線計画採用時にはコンピュータ能力の関係でやれなかったが、今なら毎日「月次処理」を行なえば、今のシステムでも損益の日次把握は可能である。問題は、毎日損益が分かってどういう意味があるのかということである。経営の意思決定には月別の予算管理で十分であろう。
 子会社向けのエチレンの売上(子会社プラントのエチレン使用)を毎日インプットするなどというのも意味のないことである。(日次損益把握のためには必要)

 おそらく今後、これらの点はシステム改良されるであろう。(取引展開も採用されよう。)

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