ブログ 化学業界の話題 knakのデータベースから 目次
これは下記のブログを月ごとにまとめたものです。
最新分は http://blog.knak.jp/
2008/6/2 韓国SK Energy、シノペックの武漢エチレン計画に出資
Sinopec
と韓国のSK Energy
は5月28日、SK Energy がSinopec
の武漢エチレン計画に35%出資することで合意したことを明らかにした。
韓国の李明博大統領は27日から4日間、就任後初めて中国を訪問したが、基本契約調印は大統領の北京滞在中に行なわれた。
アジア勢としては初めてのエチレン計画への参加となる。
昨年の4月24日にSKとSINOPECとの間で共同投資の覚書を締結したと伝えられていた。
同社の投資額は明らかにされていないが、韓国業界筋では10億ドル程度とみている。
政府の認可が得られ次第、合弁会社を設立する。
武漢エチレン計画は既に建設が始められており、2011年末のスタートの予定。
Sinopec 子会社の武漢石油化学が実施するもので、19億ドルを投じ、80万トンのエチレンコンプレックスを建設する。
計画には以下の誘導品が含まれている。SKはこれらにも参加する。
LLDPE 300千トン
HDPE 300千トン
PP 400千トン
EO 100千トン
EG 380千トン
2007/4/9 中国、湖北省武漢市のエチレン計画を承認
ーーー
付記
その後、2009年4月に、中国SKのトップが中国メディアに対し、現在の経済危機のなかで、SKに十分な資金がないとして、この投資を延期することを明らかにした。
Sinopecは2010年4月、建設を軌道に乗せることを明らかにした。2013年上半期の生産開始を目指す。
中国国家発展改革委員会(NDRC)は2013年6月5日、SKグループがシノペックの武漢エチレンに35%出資することを承認した。
シノペックが65%出資するJVとなる。
2011年12月に予備契約に調印した。SKの負担額は明らかにされていない。社名 Sinopec-Sk Wuhan Petrochemical Co Ltd
付記 2017年10月、両社は増設を決定した。
654百万ドルを投じる。
増設後の能力は、
エチレン 1,100千トン、
ポリエチレン 900千トン
ポリプロピレン 700千トン
ーーー
SKは2007年7月に持株会社制度を採用し、石油及び化学部門を SK Energy とした。
SKは元々は鮮京(SunKyung:ここからSKという名前ができた)で、石油化学の歴史は以下の通り。
1962年に韓国政府が100%出資で Korea Oil を設立、1972年に蔚山に韓国最初の石化コンプレックスをつくった。
Korea Oil は1976年に米国 Gulf Oil との50/50JV となったが、同社の撤退で1980年に鮮京が50%出資、1980年の政府民営化方針で鮮京の100%出資となった。1982年にKorea Oil をYukong (油公)と改称した。
1987年にはARCOとのJVのYukong ARCO でPO/SM 併産プラントを建設した。(1992年にARCOが撤退、現在はSK子会社のSKC となっている。)Yukong は1997年にSKと改称、上記の通り、現在はSK Energy となっている。
SK Energyの蔚山コンプレックスの概要は以下の通り。(単位:千トン)
その後設立された各財閥のコンプレックスと異なり、政府設立のコンプレックスのため、川下企業が多数参加している。
三星石化:三星グループ 47.41%、BP 47.41%、Shinsegae 5.18%
三星BP Chemical :三星とBPのJV
SKC:元 Yukong ARCO Chemical
BASF:現在のSKCからPO/SM 併産以外のSM設備購入
東西石油化学:旭化成 100%
龍山三井化学:龍山化学/三井化学JV
韓国 PTG :龍山化学 33.33%/龍山 14.11%/愛敬石化 30%
愛敬油化(元 三敬化学):愛敬化学/三菱ガス化学JV
5月23日の日本経済新聞は「中東湾岸 素材産業の拠点に」として、次ぎのように述べている。
中東のペルシャ湾岸産油国が素材産業の生産拠点として台頭してきた。空前の原油高で流入する資金と豊富な原燃料を使った石油化学や鉄鋼、アルミニウムなどの大型生産計画が相次いでいる。2010年代には湾岸地域は石化最大の輸出拠点となり、アルミ地金の世界シェアは1割を超える見通し。天然ガスを使う製鉄所建設も相次ぎ、エネルギー資源をてこに素材分野でも存在感を高めている。
既報のとおり、Abu Dhabi 政府の投資会社 Mubadala
Development
は Dubai Aluminium と組んで、世界最大のアルミ精錬工場を建設する。
2008/2/14 Abu Dhabi、'Polymer Park' と 'Metal Park' 創設へ
このほか、オマーンとカタールで新工場が建設中で、現在170万トンの湾岸地域のアルミ生産能力は2010年代前半には400万トン超、世界シェアは現在の5%から10%に高まる見通しだ。
中東のアルミ事業の概況は以下の通り。
国 | 社名 | 株主 | 能力 | 電力 | 稼動 | |
既存 | Bahrain | Bahrain Aluminium (Alba) |
Bahrain Government:77% SABIC:20% Breton Investments(Germany):3% |
830千トン (→1,000千トン) |
1,500MW 石油コークス焼成 450千トン |
1971 (56千トン) |
UAE (Dubai ) |
Dubai Aluminium (Dubal) |
Government of Dubai:100% | 950千トン | 1,983 MW | 1979 (136千トン) |
|
建設中/ 計画 |
UAE (Abu Dhabi ) |
Emirates Aluminium (EMAL Taweelah Aluminium Smelter) |
Dubai Aluminium:50% Mubadala Development:50% (Abu Dhabi Government 100%) |
700千トン (→1400千トン) |
2,000 MW (→3,500 MW ) |
2010 (2013) |
Oman | Sohar Aluminium Co. (SAC) |
Abu Dhabi Water and
Electricity Authority:40.0% Oman Oil:40.0% Alcan:20.0% |
350千トン | 1,000 MW (gas-fired) |
||
Qatar (Mesaieed ) |
Qatalum | Qatar Petroleum:50% Hydro:50% |
585千トン | 1,350 MW (gas power) |
Dubai Aluminium と Abu Dhabi 政府のMubadala Developmentは以下の計画を持っている。
計画 | 立地 | 出資者 | 内容 | スタート |
Bauxite
Mining cum Alumina Refinery Project |
Orissa, India | Dubai
Aluminium:74% Larsen & Toubro(India):26% |
bauxite mining alumina 1,400千トン (+ 1,450千トン) |
2009/下期 |
Sangaredi Refinery Project
(Guinea Alumina Co.) |
Guinea | Dubai
Aluminium:25% Global Alumina:33.3% BHP Billiton:33.3% Mubadala Development:8.3% |
bauxite mining 9,000千トン alumina 3,000千トン |
|
Beni Saf aluminium smelter | Algeria | Dubai
Aluminium Mubadala Development Sonatrach (Algeria 国営石油ガス) |
Aluminium 700千トン |
付記
サウジの2件の新しいアルミ計画が明らかになった。
出資者 | 内容 | 予算 | ||
Sino-Saudi
Jazan Aluminum (Jazan Economic City) |
Chalco(China):40% MMC(Malaysia):20% Binladen Group:20% Other Saudi investors:20% |
アルミ 100万トン | $3 billion | 2007/11 契約締結 2008/4Q 着工 |
Chalco(China):20% MMC(Malaysia):50% |
電力 1,860MW | $2 billion | ||
(King Abdullah Economic City) | Emal International (Dubai Aluminium/ Mubadala Development) |
アルミ 70万トン 発電 |
$5 billion | 2008/1 契約 |
2008/6/4 中国でレジ袋有料化 実施
国務院弁公庁は本年1月、各省・自治区・直轄市の人民政府、国務院の各部・委員会、直属の各機関に向けて、「ポリエチレン製のレジ袋の生産・販売・使用の制限に関する通知」を出した。
今年6月1日以降、スーパーマーケット、デパート、大型市場など商品を小売りするすべての場所でレジ袋を有料化し、無料での提供を一律禁止する。また、ゴミ公害(「白色汚染」)対策として極薄(0.025mm
以下)ポリエチレン製のレジ袋の生産・販売
・使用を禁止する。
2008/1/14 中国、6月1日からレジ袋を有料化
中国では現在、1日30億枚以上のレジ袋が使い捨てられていると言われている。
6月1日から、この「限塑令」(レジ袋規制条例)が施行され、ポリエチレン製レジ袋が有料化された。
人民日報日本語版には哈爾濱(ハルビン)市のスーパーでレジに掲示された買い物袋の価格の写真が載っているが、大型が0.3人民元(4.5円)、中型が0.2人民元(3円)となっている。
新華社のウェブサイト「新華網」環境保護チャンネルが行ったオンライン調査によると、回答者の88.02%がレジ袋の代わりとして布製などの「エコバッグ」を準備した、あるいは準備中であると回答した。
中国の3部門・委員会は5月、「商品小売施設におけるレジ袋有償使用管理弁法」を共同で公布し、レジ袋の有償使用や価格基準など詳細内容に関する詳細な規定を定めた。これにより、商店が規定に違反してレジ袋を無料で提供した場合、罰金が科せられることとなった。
工商部門はレジ袋の制限に向けて今後、次の5つの措置を取ることを決定した。 | |
(1) | 今年6月1日から8月1日までの間、総合的・集中的な検査活動を展開し、レジ袋販売会社が法律に基づいて許可証を取得しているか、経営者が規定の厚さ(0.025mm)に満たないレジ袋の使用を停止しているかどうかを検査する。 |
(2) | 業務内容にレジ袋の生産・販売を含む法人の設立申請や、これらの業務内容の追加登録に対する検査を厳しくする。 |
(3) | スーパーマーケット、商店、大型市場でのレジ袋販売状況の巡回調査制度をうち立て、ルール違反行為を摘発・処分する。 |
(4) | 6月1日以降、商店、スーパー、市場および小売専門店でのレジ袋の提供・使用状況を監督・検査の重点項目とし、規定の厚さ(0.025mm)に満たないレジ袋を提供・使用した違法な経営者や企業、および品質合格マークのないレジ袋を販売した経営者や企業に対しては、法律に基づいて処分を下す。 |
(5) | 行政法律執行ネットワークの役割を十分に発揮させ、消費者からの通報を迅速に受理し対応する。またトラブルを迅速に処理し、違法な経営活動に対する調査をタイミングよく進める。 |
信越化学は6月2日、「日経ビジネス」6月2日号の特集記事 「深層スペシャル 原油200ドルに備えよ―このままでは信越化学が8割減益に―」への抗議を発表した。
見出しならびに本文中に架空試算数値を掲げ、あたかも同社に大幅減益の危険があるかのような著しく誤った印象を読者に与え、投資家、取引先にも少なからぬ不利益をもたらしかねない不当な表現があったとし、猛省を促すとともに、「風評被害」の発生を抑えるために実効性ある対応を早急に実施されることを強く要望するとしている。
ーーー
日経ビジネスの特集記事の概要は以下の通り。
深層スペシャル 「原油200ドル」に備えよ
(タイトル) 原油高で磨く競争力
(サブタイトル) このままでは信越化学が8割減益に?
「信越化学工業が8割、ユニ・チャームが6割、花王や武田薬品工業が3割の減益にーーー。原油価格が1バレル=200ドルになったら、日本企業の業績はどうなるか。第一生命経済研究所の長濱利廣・主席エコノミストがはじいた試算では、こうなる。」
原油200ドルが営業利益にもたらす影響度 (その中の化学関連の例)
信越化学 -81.37% 花王 -31.44 武田薬品工業 -30.03 住友化学 -22.76 日本触媒 -21.93 三井化学 -10.81 昭和電工 - 9.29 JSR - 8.66
計算は、「1990年以降の原油価格の動きと企業の売上高やコスト構造の相関関係から」算出したもので、具体的には「営業利益の前年比における売上高要因と変動費要因に対するWTI弾性値(WTIが1%変化すると、それぞれ何%変化するか)を調べ、WTIが200ドル/バレルとなったと仮定した時の営業利益に対する影響度を算出した」としている。
こういう計算は企業が内部資料を使ってやらないと出来ない。セグメント別の変動費も発表されていないのに、どうやって計算したのだろうか。
企業の業態は大きく変化しており、1990年からの企業のコスト構造などは企業の今後の予想に関係あるとは思えない。
信越化学や武田薬品工業は石油の使用は大きくなく、何故この数値になるのか、理解しがたい。
サブタイトルとは異なり、記事の中では、信越化学については次ぎのように肯定的に述べている。
もっとも、卓越した相場観と少数精鋭のスピード経営で知られる金川社長のこと。現状に手をこまねいているわけではない。塩化ビニール事業では、競合他社が大幅減益に陥る中で、欧州への輸出などで米工場のフル操業を維持し、300億円超の経常利益を確保した。厳しい環境だが、「知恵と努力で乗り切る」と金川社長は力を込める。
そして、結論は以下の通り。
(石油ショック時のように)この未曾有の事態を危機と捉えるか、競争力を磨く機会とするかで、未来は変わってくる。
ーーー
信越化学が記事に関して問題と考える点は以下の通り。
【原油価格高騰の同社への影響について】 | |
同社では原油を原料とする製品より、地球上に無尽蔵にあるケイ石を出発原料とする製品が大きな割合を占めており、原油が200ドルとなった場合でも、他の会社より影響が大きいとは考えられない。 | |
【日経ビジネス誌当該記事の問題点】 | |
(1) | 試算数値 |
当該記事では、「試算」の算出意図も計算根拠も明示しておらず、同社の業績見通しとは関わりのない架空の条件下での数値。 試算の数値を個別企業の業績とことさらに結びつけた形でクローズアップする意味はない。 |
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(2) | 同社名を見出しに使用した点 |
当該記事は大見出しの上に赤文字で「このままでは」同社が大幅減益に陥るかのような表現が使われている。 1)同社が特に見出しで言及される必要性や必然性をまったく見出しえない。 2)「このままでは」という表現が、具体的に何を指しているのか不明で、同社が大幅な減益に陥るかのような印象を与えている。 |
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(3) | 同社の業務実態に対する誤った記事内容 |
当該記事中では、「石油を大量に使う化学メーカー」としているが、直接石油系原料を使用しているのは塩ビ系事業に限られる。 塩ビは原料構成比は6割が塩であり、石油化学系樹脂の中ではきわめて石油使用量が少ない素材。 また、米国シンテック社では、原料は石油ではなく天然ガス由来。 |
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(4) | なんら取材を行わず当該記事を作成した点 |
ーーー
信越化学のセグメント別営業損益内訳は下図の通り、シリコンウェハーなどの電子材料の貢献が大きく、石化(塩ビ)の比率は小さい。
2008/5/2 2008年3月期決算 信越化学 好調
塩ビの営業損益の減少はShintech 減益が主な理由だが、原油値上がりのためではなく、米国の住宅不振が影響したもの。それでもShintech は同業他社が稼働率を落とし大幅な減益や赤字に転落する中で、輸出で補完してフル操業を行い、300億円を超える経常損益を確保した。
同社のエチレンの原料は石油からのナフサではなく、米国のエタンであり、値上がり度合いは異なる。
住友化学のサウジのラービグ計画も原料はエタンで、価格が安定しているため、「原油価格が上がればそれだけ有利になる」(住友化学)。
原油が200ドルになっても、利益8割減などあり得ない。
原油200ドルの影響を説明するのに、信越化学は適当な例ではなく、数値の計算、タイトルなどは問題で、同社の主張は当然である。
こういう数字を出す以上は、計算根拠や前提も示すべきである。
2008/6/6 BHP Billiton、EC に Rio Tinto 買収の事前届出
2008年5月30日、BHP Billiton は European Commission に対し Rio Tinto 買収の事前届出を行なった。
ECは7月4日までに、買収を認めるか、更なる審査を行なうかの結論を出す。
ーーー
2007年11月、BHP Billiton がRio Tinto に対して買収の提案を行った。
Rio Tinto の株式1株に対してBHP株3株を与えるという案で、1,400億ドル以上に相当する。
これに対し、Rio Tinto は買収価額が著しく安すぎるとし、拒否した。
2007/11/15 BHP Billiton がRio Tinto に買収提案
Rio Tintoの要請に基づき、英国公開買付パネルは
12月21日に決定を下した。
BHP Billiton は2008年2月6日までに、Rio Tinto に対してオファーをするか、しないかを伝えろというもの。
2007/12/29 BHP Billiton によるRio Tinto 買収提案のその後
BHP Billiton は期限の2月6日にRio Tinto に対し買収提案を行なった。
対価は当初の案を修正し、BHP株3.4株とした。
Rio Tinto は同日、これを拒否した。
BHP Billiton の提案を慎重に検討した。
若干の値上げはあったが、依然としてRio Tinto の価値、将来性を過小評価しているとして拒否する。
その後、両社の応酬があり、5月30日にBHP Billiton は European Commission に対し買収の事前届出を行なった。
付記
株主への提案にはほかに、オーストラリア、南アフリカ、米国への事前届出が必要。
ーーー.
日本鉄鋼連盟は本年3月13日、公正取引委員会に対して、次ぎの理由で、本件の精査および、鉄鉱石・原料炭各市場における公正な競争を確保するための適切な措置の実施を正式に要請した。
BHPビリトンによるリオ・ティント買収が実現すると、鉄鉱石・原料炭両市場での一層の寡占化が進展し、特に鉄鉱石については、他に大きな代替ソースがないことから上位2社に供給を依存せざるを得ず、供給側における競争が実質的に制限され、公正な価格形成を損なうものと懸念する。原料価格の更なる高騰は、鉄鋼業界のみならず、需要産業ひいては消費者にも深刻な影響を及ぼしかねない。
今回の事前届出を受け、次ぎの声明を発表した。
両社の統合が鉄鉱石および原料炭の海上貿易市場における健全な競争を著しく阻害すると認識しており、今後は、日本高炉各社が主要関係国の独禁当局に対して異議申し立て等という形でその立場を主張していくこととなる。
鉄鋼業界は、今年度に入って、強粘結炭が昨年度比で3倍となった他、鉄鉱石が昨年度比65%を上回る大幅な値上げとなるなど、深刻な原料コストの高騰に直面しており、結果的に鉄鋼製品価格への転嫁を顧客にお願いせざるを得ないような事態に立ち至っている。鉄鋼製品は橋梁、建築物等の社会整備インフラから、日用品・自動車及びハイテク製品に至る基礎素材として幅広く利用されており、本統合により更なるコストアップも懸念され、わが国経済に与える影響は甚大なものと考えられることから、主要関係国の独禁当局に対して統合阻止を求めていきたい。
公取委事務総長は6月4日の定例会見で、以下の通り述べた。
我々としても強い関心を持っており、海外の競争当局とも連携をとりつつ、情報収集等に努めてきた。
引き続き、欧州委員会をはじめ、海外の競争当局と連携をとりつつ、情報収集、実態把握を行い、独占禁止法上の問題点の有無について、検討を進めていきたい。(現行法では)株式取得については、問題がないかどうかをチェックするために、取得後30日以内の届出を義務付けているだけ。
EU等諸外国と同じように事前届出にしようという改正法案を、今、国会に提出している。(下記)我が国市場に影響を及ぼすおそれも十分あり得るし、独占禁止法上の問題もあり得るため、十分慎重に検討していきたい。
こういう企業結合案件については、当事会社からいろいろと事情を聞く、あるいは資料を提出してもらうのに加え、競争業者、ユーザー等からヒアリングをしたり、資料を提出してもらうというような形で進めるのが一般的。
なお、独占禁止法の改正案は国会に提出されたが、まだ審議入りもしていない状況で、今国会での成立は難しい。
2008/6/7 インドネシア Chandra Asri の状況
インドネシア最大の石化会社
PT
Chandra Asri は同国のPPメーカー Tri Polyta の株式の
75.95%
を取得する。
Chandra
Asri の大株主のBarito group の総帥 彭雲鵬
(Prajogo Pangestu) が所有する Tri Polyta 株式のうち、5%を除き、Chandra Asri に譲渡する。残りは創業者一族が所有している。
付記
Barito group は同国唯一のエチレン センターであるチャンドラ・アスリと、同国最大のPPメーカーであるトリポリタ・インドネシアの2社の合併を計画している。早ければ2010年年内にも合併新会社を発足させる可能性がある。
ーーー
両社の取締役会は2010年9月27日、両社の合併を承認した。
Tri Polyta は1988年に設立され、1992年にPPの生産を開始した。現在の能力は36万トン。原料プロピレンはChandra Asri から購入している。
Tri Polyta は1996年8月に日本触媒、トーメンと45/50/5%出資のアクリル酸製造のJV PT Nisshoku Tripolyta Acrylindo を設立した。
2000年8月にトリポリタの所有する全持ち株を日本側が買い上げ、出資比率が日本触媒93.8%、トーメン6.2%となり、2001年1月には社名をNippon Shokubai Indonesia に改称した。
Chandra Asri の能力はエチレン 520千トン(現状は実質590千トン)、プロピレン 270千トン、LLDPE/HDPE 240千トン、HDPE 100千トン。
Chandra
Asri は昨年、豊田通商からインドネシアのスチレンモノマー製造・販売子会社
PT.Styrindo Mono Indonesia の全株式を買収した。Styrindo
Mono の原料エチレンはChandra Asri が供給している。
2007/3/31
ニュースのその後 Styrindo Mono Indonesia
Chandra Asri は最近、2億ドルを投じてブタジェン工場を建設することを明らかにしている。能力は10万トンで、2011年上期の稼動を目指す。
付記
東洋エンジニアリングは2011年6月、チャンドラアスリ社の子会社のインドネシアペトロケミカルブタジエンが、ジャワ島西部チレゴンに建設する、年産10万トンのブタジエン製造設備を受注した。
付記
別途同社は 西ジャワのAnyer にBTXプラントの建設を計画した。
2011年完成予定で、ベンゼン170千トン、トルエン70千トン、キシレン55千トンを建設するというもの。Styrindo は原料ベンゼンを外部から購入しているが、ここに供給しようとした。
しかし、採算悪化の予想から、2008年9月に本計画を棚上げした。
インドネシアでのBTX生産は、Pertamina とTrans-Pacific Petrochemical Indotama (ツバン計画)が行なっている。
ーーー
Chandra Asri はスハルト元大統領の次男のバンバンのビマンタラ・グループ、合板王と呼ばれる彭雲鵬が率いるPT Barito Pacific、林紹良が率いるサリム・グループからスピンオフしたナバン・グループが75%出資し、日本インドネシア石油化学投資(丸紅85%、昭和電工10%、TEC5%)が25%出資して設立された。
2006/4/26 インドネシアのエチレン計画への日本企業の参加−1
その後、紆余曲折の結果、インドネシア金融再編庁(IBRA)が融資の担保として現地側企業の持分を保有、その後、Barito GroupのPT Inter Petrindo Inti Citra とマレーシアのGlazers & Putnam Investment に売却した。
他方、丸紅は2005年10月に、日本側持株をComerzbank International Trust (Singapore) Ltd に売却した。
丸紅は重点分野の事業として PT Barito Pacific と共同出資しているMusi パルプ事業の経営権取得を目的として、段階的に出資比率の引き上げを行なってきた。
Barito が債務リストラの一環として、大口債権者でBaritoに21%出資する Comerzbank に対し、Musiパルプ事業の関連資産への転換オプション付き社債を発行するとの動きが出てきたことから、懸案の「Chandra事業からの撤退」と、「Musiパルプ事業の経営権の取得」という2つの課題を同時に達成すべく、Comerzbank と交渉を行い、Chandra 株式とBarito社債を交換することとしたもの。
2006年1月、シンガポールの政府系投資機関のTemasek Holdings
がChandra Asri の株式
50.45% を7億ドルで買収したと報じられた。(同社は発表していない)
Comerzbankの所有する 24.59% と Glazers & Putnam
Investment Ltd.(マレーシア)の所有する 25.86%
を買収したと言われる。
ここまでの株主の推移は以下の通り。
IBRA | 75.41% | ー | ー | ー |
PT Inter Petrindo Inti Citra(Barito) | ー | 49.55% | 49.55% | 49.55% |
Glazers & Putnam Investment Ltd.(マレーシア) | ー | 25.86% | 25.86% | ー |
丸紅(日本インドネシア石油化学投資) | 24.59% | ー | ー | ー |
Comerzbank International Trust (Singapore) | ー | 24.59% | 24.59% | ー |
Temasek Holdings | ー | ー | ー | 50.45% |
2007年11月、インドネシア当局は
PT
Barito Pacific Tbkが検討していた10億ドルの増資を承認した。
同社はこの資金の大半を使い、PT Chandra Asri の株式 70% を買収した。
PT Inter Petrindo Inti Citra から14.6%を、マレーシアの2つの企業、Strategic Investment Holdings
とMIH (Malaysian
Issuing House Sdn Bhd)から55.4%を購入した。
残りの30%はTemasek Holdingsが保有していることが判明した。
PT Inter Petrindo Inti Citra(Barito) | 49.55% | 14.6% | − |
Temasek Holdings | 50.45% | 30.0% | 30.0% |
Strategic Investment Holdings、MIH | − | 55.4% | − |
PT Barito Pacific | − | − | 70.0% |
いずれにせよ、Chandra Asri の経営権は、当初の株主の一人のPT Barito Pacific に戻ったことになる。
6月6日のニューヨーク・マーカンタイル取引所の原油先物相場は、ユーロなどに対するドル安進行を材料に急騰し、WTI原油の7月渡しが一時、139.12ドル/バレルまで上昇し、最高値を大幅に更新した。
終値も前日比10.75ドル高の138.54ドルで、終値の最高値を更新、1日の上昇幅としては過去最大の8.4%となった。
6日に発表になった米雇用統計で、失業率が5.5%と前月から0.5ポイント急上昇した。0.5ポイントの上昇は22年ぶりのことで、これを受け、為替市場でドル売りユーロ買いが強まり、原油価格も上昇した。
Morgan Stanley がレポートで、7月4日までに原油価格が150ドルまで上昇する可能性を述べたことなども買いを誘った。
Morgan Stanley のアナリスト Ole Slorer が、アジア諸国の強い需要で独立記念日前にも150ドルまで上昇する可能性があるとした。
週明けの東京市場でもドバイ原油やナフサが急騰するとみられる。
2008/6/9 BASF Plant Science、韓国・中国・台湾の研究機関とバイオ技術で相次ぎ提携
BASF Plant Science は5月27日、台湾の最高学術研究機関の中央研究院(Academia Sinica) との間で協力契約を締結した。
コメやトウモロコシのような主要作物の収穫量を増大し、環境ストレス耐性を改善する遺伝子発見が主要テーマとなる。
中央研究院がコメの遺伝子の機能分析を行い、BASFが中央研究院の基礎資料のなかから、収量が高く、ストレス耐性がよいものの選択を行なう。
当初の協力期間は2年で、収量の高い、いくつかの遺伝子組み換え作物を市場に出したいとしている。
BASF Plant Science にとって、今回の契約は韓国、中国に次ぐ、8ヶ月で3回目の協力契約である。
同社はアジア地区での事業を狙っており、各国の研究機関を高く評価している。
BASF は、収量増大が現在の農業研究で中心の目標としている。
中国のような国で生活水準の向上で肉の消費は過去20年で300%増大しており、それに伴い、飼料の需要が増大している。同時に都市化によってアジアの耕作面積が減少している、と指摘している。
ーーー
BASF Plant Science は昨年10月、韓国のCrop Functional Genomics Center (CFGC) との間でR&D契約を締結した。
Crop Functional Genomics Center は韓国の科学技術部(Ministry of Science and Technology)がThe 21C frontier R &D program という計画の下で行なっているコンソーシアム形式の研究組織で、全国の大学、研究機関、企業の研究をサポートするバーチャルな研究所。
予算は年間10 百万ドルで、主にイネ、ダイズ、唐辛子の3種類の植物の機能ゲノム研究を行う。
研究内容、@Crop functional genomics :ゲノム構造、遺伝子探索、ADevelopment of Transgenic Crops:有用植物への遺伝子導入技術の推進、有用形質の付与、BMolecular Breeding :分子マーカー(形質マーカー)の探索とそれらを用いた有用形質の獲得である。
契約内容は研究協力とライセンスで、40の著名研究機関の200人の研究員の10年間の発見を含む。
狙いはコメやトウモロコシのような主要作物の収量増大、環境ストレス耐性改善で、分担は上記台湾のケースと同じ。
CFGC は重要な作物について韓国以外での独占ライセンス権をBASFに与える。
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BASF Plant Science は本年1月、北京生命科学研究所(National Institute of Biological Sciences, Beijing :NIBS) との間で協力・ライセンス契約を締結した。
トウモロコシ、大豆、コメのような作物の収量増加を狙うもの。
NIBS は2003年に政府の科学技術の開発戦略の一環として、ライフサイエンスの基礎研究の基地として設立された。
NIBS は作物の収量増加を示す遺伝子を見出している。同所で更にその機能の分析を進めた後、BASFに回す。
契約ではNIBS は発見された遺伝子を組み込んだ作物を開発・販売する独占権(中国以外)をBASFに与える。
2008/6/10 電解二酸化マンガンに対する暫定的な不当廉売関税の賦課
経済産業省は6月6日、オーストラリア、スペイン、中国、南アフリカから輸入される電解二酸化マンガンに対して暫定的な不当廉売(アンチ・ダンピング)関税を賦課すると発表した。
昨年1月に東ソーと東ソー日向が不当廉売関税の課税申請を行い、4月から調査を行なってきた。6日に関税・外国為替等審議会から答申があったもので、10日に閣議決定し、14日から開始される。
暫定的な不当廉売関税率は以下の通り。
関税率 不当廉売差額
(輸出価格=100)オーストラリア 29.3% 41 スペイン 14.0% 17 中国(紅星大龍) 34.3% 43 * 中国(その他) 46.5% 74 * 南アフリカ 14.5% 18
* 中国の生産者の正常価格については、平成13年の中国のWTO加盟時の取り決めに基づく特例措置(下記)により算定した。
米国、EUも電解二酸化マンガンに対し不当廉売課税をしている。
米国 オーストラリア 120.59% 2008/3 暫定措置 中国 236.81% EU 南アフリカ 17.1% 2007/9 暫定、2008/3 確定措置
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不当廉売関税制度は、関税定率法第8条、不当廉売関税に関する政令に基づく。
(WTO協定上はガット第6条、ダンピング防止協定)
不当廉売された輸入貨物に対し、同種の貨物を生産する国内産業を保護するために割増関税を課するもので、
適用要件は:
(1) ダンピング輸入の事実
(2) 損害等の事実、因果関係
(3) 産業保護の必要性
以上の要件を充足する場合、
不当廉売差額〔(正常価格)−(不当廉売価格)〕と同額以下の割増関税を課する。
暫定措置の期間は原則4か月以内。
利害関係者の反論、反証を受けた後に最終決定を行なう。
確定措置の期間は原則5年間以内となっている。
今回の調査の結果は以下の通り。
(1) ダンピング輸入の事実
上記表の「不当廉売差額」の存在
不当廉売差額は、個々の生産者から提出された証拠に基づいて、工場出荷段階を原則に調整した上で算出した。
中国の生産者の正常価格については、平成13年の中国のWTO加盟時の取り決めに基づく特例措置により算定した。
WTO協定では「貿易の完全な又は実質的に完全な独占を設定している国ですべての国内価格が国家により定められているもの(「非市場経済国」)からの輸入の場合には、規定の適用上比較可能の価格の決定が困難であり、また、このような場合には、輸入締約国にとって、このような国における国内価格との厳密な比較が必ずしも適当でないことを考慮する必要があることを認める。」と規定している。
「非市場経済国」の場合、ダンピング調査の際に、輸出価格は、国内価格との比較ではなく、経済発展レベルが近い代替国の価格と比較して判定される。EUは中国に市場経済国待遇を適用せず、しかも中国よりコスト水準の高い国を代替国に採用するケースが多く、この結果、ダンピングと判定される確率も高くなっているといわれている。
2006/2/27 EU、中国・ベトナムの革靴に反ダンピング税
日本の場合は、中国の調査対象企業自らが、
@ 生産者が政府から独立して市場原理に基づき意思決定していること
A 市場価格での原料購入
B 労働者との賃金交渉
C 生産手段の自己管理
D その他(国際会計基準に基づく会計処理)
を立証しない限り、輸出価格と比較する対象を中国の国内価格等ではなく、第三国での国内価格等を用いることができることとしている。紅星大龍は価格決定に関する証拠を提出したが、地方政府が間接的な株主となっている等、生産者の事業活動が政府から独立していないものと考えられ、市場原理により生産価格、販売価格が決定されている証拠は明確に示されなかったことなどから、特例措置を適用した。
(2) 損害等の事実、因果関係
平成16年度を100として、平成18年度には、
国内総需要が90に減少し、
国産品の国内販売量が54に減少し、
国内産業の市場占拠率が60に減少しているのに対して、
4ヶ国からの輸入量は166に増加している。
この結果、国内産業の利潤、雇用等が大幅に減少しており、国内産業に損害が生じている。
(3) 産業保護の必要性
国内産業は大幅に収益等が悪化していること、
EC、米国が不当廉売関税を発動し、我が国への販売圧力が強まること、
から、緊急に損害の拡大を防止する必要がある。
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電解二酸化マンガンは、主に一次電池(マンガン電池、アルカリマンガン電池等)の正極材料として使用。その他、マッチ原料、ガラス工業用途(着色)、触媒原料等にも利用される。
メーカー:
東ソー梶A東ソー日向 日向工場 (東ソー日向は東ソーの100%子会社)
三井金属鉱業 竹原工場
輸入量: 単位 トン(2006年度)
南アフリカ 2,654 17.5% スペイン 2,600 17.2% 豪州 5,671 37.4% 中国 4,111 27.1% その他 124 0.8% 総輸入量 15,160 100.0% * 2004年度は 9,225トン
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我が国における不当廉売関税の申請及び課税の状況は以下の通り。
@フェロシリコマンガン(中国、南アフリカ、ノルウェー産)
1993年 中国産に不当廉売関税課税
(中国2社とは価格約束)
1998年 課税期間満了
Aパキスタン産綿糸
1995年 不当廉売関税課税
2000年 課税期間満了
Bポリエステル短繊維(韓国、台湾産)
2002年 不当廉売関税課税
2007年 延長
日本水泳連盟は10日、東京都内で常務理事会を開き、8月の北京五輪で競泳日本代表選手が、SPEEDO社製水着LZR RACERを含め着用水着を自由に決められることを正式に決定した。
ミズノもその後、北島選手などの契約選手に他社の水着着用を認めた。
水連はこれまで、選手が五輪や世界選手権等主要大会で着用できる水着を、サプライヤー契約(2017年までの12年契約)を結ぶ国内メーカーのミズノ、デサント、アシックスの3社製品に限定していた。
しかし2月のLZR
RACER発表以降、世界中で多くの着用選手が軒並みベストタイムを短縮するなど、これまでの常識を覆す性能の高さを示した。(今回の北島選手を含め、2月以降の世界記録19のうち、LZR RACER着用は18)
2008/5/17 競泳用水着の闘い
水連はミズノ、デサント、アシックスに対して水着の改良を求めていたが、5月30日、3社から改良水着の説明を受けた。
ミズノは従来と比べて2〜4倍締め付ける素材を使った。東レとの共同開発素材。
山本化学工業の素材は、デサントとアシックスが部分的に使用したタイプをつくった。
6月6日からのジャパン・オープンで、SPEEDO 社製も含めて代表選手が試し、着用水着の結論を出すこととなった。
ジャパン・オープンでは3日間で
17の日本新が出た。
このうちLZR RACERを着用した選手が16個をマーク。男子200m平泳ぎで北島康介選手がLZR RACERを着用して
2分7秒51の世界新記録をマークした。
LZR RACER以外の日本記録は古賀淳也選手がミズノ社製の従来品で男子50メートル背泳ぎ予選で達成した1個のみ。
(但し、同決勝ではLZR
RACERを着用した宮下純一選手がこれを上回る記録を出した)
この結果を受け、日本水連は8日、日本代表が北京五輪で着用する水着について、英SPEEDO 社を含むすべてのメーカーの製品を選べるようにする方針を決めた。ミズノ、デサント、アシックスの国内3社からも同意を得た。
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ミズノにとって大きな誤算となった。
同社は1965年にSPEEDO社とライセンス契約を結び、日本における同社ブランド製品の製造・販売のみならず、同ブランドグループ全体における最先端技術の開発の役割も担ってきた。
2000年のシドニー五輪ではミズノがSPEEDO社の協力を得て完成させたサメ肌水着 SPEEDO Fastskin を、出場選手1,677人の6割にあたる1,006人(138カ国)が着用、メダルは、151個のうちの100個を獲得した。
採用した素材は東レと共同開発の「アクアブレード」で、表面にサメ肌状の微小な凹凸が刻まれた。
しかし2006年、ミズノは創業100周年を機に、「全商品のブランドを“MIZUNO”に統一する」方針を決定した。
これに基づき、まだ期間が残っていたライセンス契約を、2007年5月31日付で打ち切った。
同社の決算では特別損失に「ライセンス契約解除に伴う費用」としてこのライセンス契約の早期解除に伴う諸費用が計上されている。
2007/3月期に 327百万円が計上されたが、2008/3月期にも更に 252百万円が計上されている。合計では579百万円にもなる。
ミズノの契約解除に伴い、三井物産がSPEEDO社とのライセンス契約を締結し、主要商品カテゴリーの開発・製造・販売を担当するパートナーとして、ゴールドウインとサブライセンス契約を結んだ。2008年春夏シーズンから日本での製品販売を開始した。
ゴールドウインは1951年に富山県西部の小矢部市で、津沢莫大小(メリヤス)製造所としてスタート、翌年、「今日のスポーツ産業の隆盛を先取りし」、一般メリヤスメーカーから、スポーツウエア専業メーカーへと転身、1963年にゴールドウインと改称した。
北島康介選手は2004年1月、ミズノとの間でSPEEDOブランドのアドバイザリー契約を結んだ。SPEEDOのスポーツウエア、水着、ゴーグル、タオル、スイミングキャップ等を使用するほか、ミズノ商品開発へのアドバイス、JOC契約に基づく肖像権の使用及びイベントへの参加なども含まれている。
当初は2004年の1年間であったが、延長して、2005年〜2008年の長期契約としている。
ミズノのSPEEDO社との契約打ち切りに伴い、SPEEDOブランドの水着を使っていた北島康介選手らの契約は、ミズノに引き継がれた。
このため、日本水連がすべてのメーカーの製品を選べるようにする方針を決めても、北島選手は契約上は、ミズノの水着しか使用できないこととなる。(ジャパン・オープンではミズノは、テストとして、LZR RACER着用を認めた。)
ミズノは当初、自社水着の改良と選手の忠誠心に期待を寄せていたが、水連決定を受け、他の水着の着用を認めた。違約金の発生もないと明言した。
北島選手はそもそもSPEEDOブランドのアドバイザリー契約をミズノと締結しており、ミズノのSPEEDO 離脱時になんらかの条件を付けておれば問題にならずに済んだかも分からない。(当然契約は修正している筈だが、内容は分からない)
また、契約時には想定外であったLZR RACER 出現ということで、北島選手がLZR RACER を着用しても、「法的には」契約違反にならないかも分からない。
いずれにせよ、仮に、ミズノが契約を盾に着用を認めなかったり、違約金を取ったりすれば、同社に対する批判が強まり、同社にとって大きなマイナスとなる。
本年2月に発表された
LZR RACER は3年あまりをかけて開発されたといわれており、2006年末のミズノによる契約打ち切り発表時には、当然
LZR RACER の開発の情報は入っていたと思われる。
それなのにミズノが違約金を払ってまで中途解約したのには、ミズノ側に、これが国際水連に認められないとの判断があったのではないかと噂されている。
国際水泳連盟には「競技中に速さや浮力、持久力の向上につながる道具を身につけてはいけない」という規則があり、LZR RACER はこれに抵触する可能性がある。
しかしLZR
RACER は問題にならず、許可された。(山本化学の材料を使用したニュージーランド製水着も同様)
浮力に関する明確な数値規定はなく、国際水連役員の裁量で決まる。
当然政治力も影響する。これまでも五輪では日本選手に不利なルール改正が何度も行なわれてきた。もし、LZR RACER をミズノが出しておれば、許可されなかったことも考えられる。
ミズノは本年4月、表面にジェル加工を施すことで水になじむ親水素材を開発し、さらなる低抵抗を追求した新水着「WATER
GENE」を発表した。
従来は生地が水をはじく撥水加工により低抵抗を追求したが、全く発想を変え、『水との融合による低抵抗』を素材の開発コンセプトとし、カジキ(marlin)
をヒントに低抵抗素材 Marlin Compを開発した。
Marlin Comp HD(高密度素材)はポリエステル70%、ポリウレタン
30%、同HS(高ストレッチ素材)はポリエステル
80%、ポリウレタン 20%となっている。
しかし、結果はLZR RACERに全く敵わなかった。
ーーー
山本化学工業の素材は、デサントとアシックスの水着に部分的に使用された。
山本化学は、アシックスとデサントの2社に意見や提案を聞いてもらえない、素材を全身に使用した水着(ニュージーランド製)を試してほしいが、どの選手が試着を希望しているか情報がもらえないとの不満を表明している。
同社の水着が全く試されないまま、LZR RACER に決まってしまうのは残念な気がする。
付記
山本化学工業は7月中旬に大阪市内の長水路(50メートル)プールで、学生選手などの協力を得て、LZR RACERとの公開比較記録会を行う。
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山本化学工業の山本富造社長は7月15日、大阪市内で18日に行う予定だった高速水着の比較測定会を中止することを明らかにした。「日本水泳連盟の支援と許可がもらえなかった」としている。
7月24日、同社の新素材を100%使った日本製水着が完成し、大阪市内で発表された。
水着メーカー「スポーツヒグ」が素材供給契約を結び、男女2タイプを製作した。北京五輪後の9月に国際水連の認可を得る予定。
付記 北島選手は11日、ホームページで、北京でのLZR RACER 着用を明らかにした。
今回の水着問題は水泳界だけではなく、報道を通じて、全国的な注目を集めていますが、今日、僕なりの答えをだしました。
北京オリンピックではspeedoの水着を着用しようと思います。 (中略)先日の記録更新という結果を冷静に受け止め、応援してくださる皆さんに、最高のパフォーマンスを見ていただくために、現段階での最善の選択をしたいと思います。 (中略)
水着は、もちろん競泳にとって、勝負に関わる大切なものであることには違いありません。
でも、泳ぐのはやはり選手です。
とにかく北京では、世界の代表選手たちと勝負して、結果を出したいと思っています。
そしてその経験で、今後のミズノの水着開発に少しでも役立ちたいと思っています。 (後略)
経済産業省は6月10日、エチレンセンター11社の2007年度の収益状況を発表した。
それによると、売上高は前年比で大幅な増加となったが、経常利益は、売上高の増加や合理化努力によるコスト削減があったものの、高騰するナフサ等の原燃料価格を製品価格に転嫁しきれず、利益が圧縮されたことにより、2,108億円(対前年同期比 ▲22.6% 減)となった。
経常損益推移(億円)
年度 合計 (上期) (下期) 2004 2,132 838 1,294 2005 1,753 1,201 552 2006 2,725 832 1,893 2007 2,108 1,286 822 注 下期は年度合計 マイナス 上期
上期、下期に分けて見ると、図の通り、06年下期をピークに、07年上期、下期と大幅に減少している。
07年下期は前年同期に比べ、1,071億円、57%もの減少となっている。
参考 2008/5/14 2008年3月期 注目会社決算 石油化学各社
過去の年度別推移は以下の通り。
集計対象は下記(2007年度)の通りだが、連結ベースの場合は連結対象会社の変更等があるので、前年度と単純な比較は出来ない。
単独ベース エチレンセンター |
連結ベース 集計区分 |
三井化学、大阪石油化学 | 三井化学 基礎化学品、機能材料部門 |
丸善石油化学 | 丸善石化 |
山陽石油化学 | 旭化成 ケミカルズ部門 |
出光興産(石油化学部門) | 出光興産 石油化学製品部門 |
東燃化学 | 東燃ゼネラル 石油化学製品部門 |
昭和電工 | 昭和電工 石油化学部門 |
住友化学 | 住友化学 石油化学部門 |
東ソー | 東ソー 石油化学部門 |
三菱化学 | 三菱化学 石化部門 |
新日本石油(石油化学部門) | 新日本石油 石油化学製品部門 |
Denver, Colorado の裁判所は6月2日、Dow Chemical とBoeing に、核兵器工場のプルトニウム汚染による被害に対し合計 926百万ドルの罰金を課した。
18年前にコロラド州のRocky Flats核兵器工場の近辺の12千人の住民が被害(健康被害の懸念と住宅価値の下落)を訴えた集団訴訟で、 陪審員が2006年2月にDow Chemical とRockwell International (Boeing が1996年に買収)に責任があると判断したが、それに対して罰金を決めたもの。
判決は住民補償のため Dow に 653.3 百万ドル、Boeing に 508.1 million 百万ドルを命じたが、総額725.9百万ドルの頭打ちとした。別途、懲罰的賠償として、Dow に 110.8 百万ドル、Boeing に 89.4百万ドルの支払いを命じた。
Denver 北西25kmにあるRocky Flats 工場は米国の核爆弾のためのプルトニウム起爆装置を生産していたが、1953年〜1975年にダウが、それ以後1994年の閉鎖まではRockwell が操業していた。
その間、火災事故、設備の漏れ、ルーズな貯蔵管理のため、プルトニウムや他の放射性物質が漏れる重大事故があった。
1989年にFBIとEPAが環境犯罪の疑いで工場の立入捜査を行い、最終的に閉鎖された。
プルトニウムに汚染された廃油や溶剤の容器が戸外に置かれていた。いくつかの容器が漏れて周辺の土を汚染し、それが風で風下に飛ばされたという。
政府はサイトのクリーンアップに70億ドルを投じた。現在は野生生物保護区となっている。
これに対して Dow は、契約上はDow も Boeing も免責となっていて、最終的にはエネルギー省が責任を持つべきものであるとし、控訴するとしている。
2008/6/14 Rohm and Haas、アジアでアクリルエマルション事業展開
Rohm and Haas は5月26日、拡大する塗料市場の需要に対応するため、ベトナムのDong Nai省Nhon Trach市(Ho Chi Minh市から30km) にアクリルエマルション工場を建設すると発表した。能力は25千トンで、10百万ドルを投じ、2009年央に完成させる。
同社は1953
年に世界初の水性アクリル樹脂を開発して以降、品質と技術を高めてきた。
内外装用塗料を始め、金属用塗料、木工塗料、一般道路や高速道路に使用される路面標示用塗料、DIY用塗料、プラスチック用塗料、住宅用断熱材やフロアケアに至るまで、様々な分野でのニーズに応え、多種多様な原料を提供している。
今回のベトナム工場は、全世界で34番目、アジア太平洋地区で12番目の工場となる。
同社は過去6ヶ月で、中国の広東省仏山市三水区とインドのChennai に新工場を建設し、インドのTaloja 工場を拡張している。
このほか、ロシア、トルコ、メキシコで新増設している。
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中国:
同社は本年1
月8
日、中国広州省三水の新製造工場の稼動を正式に開始したと発表した。
約10百万ドルを投資したもので、アクリルエマルション技術をベースとした製品を製造する。
能力は2万トンで塗料やコーティングの製造に使用される環境に配慮した水性バインダーおよびエマルションが含まれる。
華南地域の塗料産業は、中国全土の40%を占めている。
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インド: | |
@ | Taloja: |
Mumbai 近郊のTaloja に能力35千トンのプラントを持つが、これを倍増した。 | |
A | Chennai: |
昨年9月、南インドの Chennai から80kmのSriperumbudur industrial areaに工場を開設した。塗料、接着剤、繊維、紙、皮革等の原料用で能力は30〜40千トン。 | |
これにより、インドの能力は100〜110千トンとなる。 |
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Rohm and Haas は2006年にビジネス戦略「ビジョン2010」を発表した。
アジア太平洋地域では、2006 年度の16 億ドルから2010
年度には32 億ドルの売上げを目標にしている。
この実現のため、今後ますます重要な役割を果たしていくアジア太平洋地域の体制強化の一環として、同社は昨年11月、 アジア太平洋地域において5 名の副社長を任命した。
エマルション以外では同社は中国のプラスチック添加剤市場向けに合弁会社を設立している。
2006年12月、同社は中国の威海金泓高分子有限公司(Weihai Jinhong Polymer )との間で、プラスチック添加剤製造を行う新規製造合弁会社、金泓Rohm and Haas Chemical (JinHaas)を設立することに基本合意した。
Rohm and Haas が51%出資し、金泓社の山東省威海市の工場を拠点に、MBS、アクリル系耐衝撃強化剤(AIM)、アクリル系加工助剤を製造し、それらをアジア地域に提供する。
JV は2007年8月に営業を開始している。
又、韓国では昨年末に、フラットパネルディスプレイ市場で使用される最先端の光学および機能フィルムの開発、製造、および販売を行う韓国 SKC との合弁会社SKC Haas Display Filmsの操業を開始している。
Rohm and Haas はフラットパネルディスプレイ事業の拡大の為、2007年にEastman Kodak のLight Management Films businessを取得している。
最新分は http://knak.cocolog-nifty.com/blog/