ブログ 化学業界の話題 knakのデータベースから 目次
これは下記のブログを月ごとにまとめたものです。
最新分は http://blog.knak.jp
政府は7月29日、第2回エネルギー・環境会議を開催した。
議題 1.当面のエネルギー需給安定策について
2.「革新的エネルギー・環境戦略」策定に向けた中間的な整理について
概要は以下の通り。
1.当面のエネルギー需給安定策
http://www.npu.go.jp/policy/policy09/pdf/20110729/siryo1_1.pdf
原子力発電所が再起動しない場合の電力需給動向は以下の通り。 (単位:万kw)
ピーク需要 | 供給能力 | 過不足 | 対策 | |||
今夏 | 東日本 | 7,986 | 7,401 | -585 | -7.3% | 平日昼間における15%の節電要請と 大口需要家への電力使用制限 |
中西日本 | 9,968 | 10,070 | 102 | +1.0% | 関西電力管内は、平日昼間における10%超の節電要請 | |
合計 | 17,954 | 17,471 | -483 | -2.7% | ||
今冬 | 東日本 | 7,149 | 7,069 | -80 | -1.1% | 平日昼間における節電要請に加えて 補正予算などを活用した政策支援 |
中西日本 | 8,662 | 8,629 | -33 | -0.4% | 同上 | |
合計 | 15,811 | 15,698 | -113 | -0.7% | ||
来夏 | 東日本 | 7,986 | 7,152 | -834 | -10.4% | 同上 |
中西日本 | 9,968 | 9,145 | -823 | -8.3% | 同上 | |
合計 | 17,954 | 16,297 | -1,657 | -9.2% |
前提
@最大電力需要は、昨年実績 or 各社の今後の見通し
(需給調整契約によるカットを折り込まず) →対策余地あり
A定期検査に入った原子力発電所について再起動なしの場合
B火力発電所等は、7月27日時点の見通し
→電力会社による供給力の積み増し、自家発による供給力積み増しを期待
原発を再稼働させない場合の電力コストアップは3.16兆円(経産省試算)
原発発電量 x (火力燃料費 ー 原発燃料費)
原発発電量 2745億kwh(2009年実績稼働率)
火力燃料費 12.5円/kwh (LNG 11円、石油 16円)
原発燃料費 1円/kwhLNG価格上昇など、折り込まず。
基本的な対処方針5原則
(1)原子力発電所の停止が広範に生じた場合でもピーク時の電力不足とコスト上昇を最小化する
(2)計画停電、電力使用制限、コストの安易な転嫁を極力回避する。
(3)政策支援や規制・制度改革で持続的かつ合理的な国民行動を全面的に支援し、エネルギー構造改革を先行的に実施する。
(4)経済活性化策としてエネルギー需給安定策を位置づける。
(5)国民参加の対策とするため、3年間の工程を提示する。
目標達成へ向けた具体的な対策
(1)需要構造の改革 | ||
○ | 省エネ商品の導入促進 | |
○ | 産業の省エネ投資の促進 | |
○ | 住宅や工場、ビルの省エネ投資促進等 | |
○ | 家庭も含む需要家による投資促進 | |
○ | スマートメーター(通信機能付き高性能メーター)の導入促進及び活用 | |
○ | 地域ぐるみの節電行動への支援、地域における分散型エネルギーの地産地消システムの構築、地域主体の発電事業者の育成 | |
○ | 就業日・時間のシフト等、社会行動改革の促進 | |
(2)効率性と環境性を重視、あらゆる主体の電力供給への参加を促す | ||
○ | 再生可能エネルギーの導入拡大 | |
○ | 火力発電の増強、高効率化支援等 | |
○ | 資源確保戦略の強化 | |
○ | ピーク電力供給力強化 | |
○ | 分散型電源(再生可能エネルギー、熱やガスを併給する燃料電池やコジェネレーションシステム等環境性の高いエネルギー)、スマートコミュニティー(次世代エネルギー・社会システム)の導入促進 | |
(3)電力システムの改革(需要構造改革と供給構造の多様化の視点で) | ||
○ | 柔軟な料金メニューの設定などの需要家のピークカットの誘引強化、小売事業の自由化などを通じた需要家の選択肢の拡大 | |
○ | 電力卸売市場の整備など、電力会社間及び電力会社と自家発の間の競争促進 | |
○ | 電力会社の調達改革によるコスト構造のスリム化 | |
○ | 送電・配電システムの機能強化 (送電・配電網のスマート化や連系送電網の整備、再生可能エネルギー導入の基礎となる送電網の拡充) |
|
○ | 送電・配電事業の中立性・公平性の強化 | |
(4)再起動も含め原子力安全対策を徹底するという国の姿勢を明示 | ||
2.「革新的エネルギー・環境戦略」策定に向けた中間的な整理
http://www.npu.go.jp/policy/policy09/pdf/20110729/siryo2_1.pdf
戦略の基本理念
基本理念1:新たなベストミックス実現に向けた三原則
原則1:原発への依存度低減のシナリオを描く。
原則2:エネルギーの不足や価格高騰等を回避するため、明確かつ戦略的な工程を策定する。
原則3:原子力政策の徹底検証を行い、新たな姿を追求する。
基本理念2:新たなエネルギーシステム実現に向けた三原則
原則1:分散型のエネルギーシステムの実現を目指す。
原則2:課題解決先進国としての国際的な貢献を目指す。
原則3:分散型エネルギーシステム実現に向け複眼的アプローチで臨む。
基本理念3:国民合意の形成に向けた三原則
原則1:「反原発」と「原発推進」の二項対立を乗り越えた国民的議論を展開する。
原則2:客観的なデータの検証に基づき戦略を検討する。
原則3:国民各層との対話を続けながら、革新的エネルギー・環境戦略を構築する。
戦略工程
(1)短期(今後3年の対応)
エネルギー構造改革の先行実施。当面は需給安定に全力。
原発への依存度低減について、国民的議論を深め、対応を決定。
(2)中期(2020年を目指して)
新たなベストミックスとエネルギーシステムを目指す。
(3)長期(2020年から、2030年又は2050年を目指して)
新たなベストミックスとエネルギーシステムの成果を実現する。
「革新的エネルギー・環境戦略」策定に向けた論点を整理する
@原子力をはじめとしたコストの徹底的な洗い出し及び中長期的な見通し、
A再生可能エネルギーをはじめとした技術革新と経済拡大効果の見極め、
B化石燃料をはじめとした環境性能向上の可能性の評価等、前提となる検証事項について具体化する。
「コスト等試算・検討委員会(仮称)」の設置
「客観的なデータの検証に基づき戦略を検討する」ことが原則となる。
原発をはじめとする電源別のコスト、再生可能エネルギーの導入可能量等などを検討し、方針策定に反映。
@ どのような試算方法が適当か。
A 前提条件の設定が適切か。
B 政策経費を勘案すべきではないか
C 各電源別に、それぞれ考慮すべき重要な項目があるのではないか。
D その他、試算にあたっては影響を考えるべき事項もあるのではないか。
資料:発電コスト試算比較(今後の方向性)
筆者注
各エネルギーの縦棒の上下にある数値は、これまでに発表された発電コストの幅を示す。
それに対し、点線の矢印(紫の上向き、ブルーの下向き)で今後の変動の可能性を示している。太陽光発電の、2020年14円、2030年7円はNEDO「太陽光発電ロードマップ」(2009年6月)
原子力の「バックエンド」は放射性廃棄物の処分費用で、現在一部だけが計算に入っている。
(原子力では、一般会計のエネルギー対策費や電源開発促進対策特別会計もコスト計算に入っていない)
原子力のコストについては大島堅一立命館大教授の分析がある。
詳細な解説は http://iwakamiyasumi.com/archives/8207
水力発電には揚水発電(原発の夜間電力利用)が含まれ、これを除くともっと安い(最近で3.5円)としている。
2011/8/2 富士フィルム、ジェネリック医薬品のDr. Reddy’s Laboratories と業務提携
富士フィルムは7月28日、ジェネリック医薬品大手のインドのDr. Reddy’s Laboratories Ltd(DRL)と、日本市場向けのジェネリック医薬品事業で業務提携し、国内に合弁会社を設立する基本合意を締結した。
設立する合弁会社はジェネリック医薬品の開発・製造をするもので、出資比率は富士フイルムが51%、DRLが49%となる。
2014年のジェネリック医薬品の市場導入を目指す。
富士フイルムが写真フィルムで培った高度な品質管理技術や生産技術と、DRLがグローバル展開の中で蓄積してきた原薬や製剤中間体の低コスト生産技術などを融合して、高品質でコスト競争力に優れたジェネリック医薬品を開発・製造する。
日本市場のニーズを取り入れた製品設計を行なうことで、信頼性の高いジェネリック医薬品を提供し、さらなる普及を図る。
また、DRLとの提携を足がかりに、DRLのネットワークを通じて、ワールドワイドにスーパージェネリック医薬品を提供することも検討していくとしている。
付記
富士フィルムは2013年6月3日、Dr. Reddy’s Laboratories との合弁会社設立に関する基本合意を解消したと発表した。
よりプライオリティーの高い領域へ資源・リソースを投入していくことが必要と考えた。DRL社とは、今後、原薬の開発・製造、製剤の開発・製造の委託、スーパージェネリック医薬品の開発・マーケティングなどにおける協業の可能性を検討するとしている。
ーーー
DRLは1984年設立のインドのトップクラスの大手医薬品会社で、世界でもトップ10に入るジェネリック医薬品の開発・製造・販売会社。
売上高2011年3月期で1,667百万米ドル、その31%を北米、22%を欧州、15%をロシア、32%をインドを含むその他地域で占めている。
事業構成は医薬品原薬事業、開発薬事業、後発医薬品事業、委託生産サービス事業となっており、後発医薬事業は欧米市場向けに伸びている。
2009年にGlaxoSmithKline (GSK)と提携、GSKはDRLの100以上の製品をアフリカ、中東、アジア太平洋、ラテンアメリカで販売する権利を得た。特定の市場では両社が販売する。
本年6月には、DRLはGSKから米国のペニシリン事業を買収した。テネシー州Bristolの工場と、2つのブランドを取得した。他の地域ではGSKが引き続き販売する。
同社は昨年8月に、日本の後発医薬品市場に参入するため、提携先と協議中であることを明らかにした。
当時は、東和薬品、沢井製薬、富士製薬工業などが相手ではないかと推測されていた。
ーーー
富士フイルムは、メディカル・ライフサイエンス事業を重要な成長分野として位置付け、「予防〜診断〜治療」の全領域をカバーする総合ヘルスケアカンパニーを目指した事業展開を進めている。
2008/2/19 富士フイルム、富山化学を買収、総合ヘルスケア企業を目指す
2010/2/22 富士フイルム 医薬品開発・販売に本格参入
2010/9/3 富士フイルム、ジャパン・ティッシュ・エンジニアリングと資本提携
2011/2/28 富士フイルム、米メルクからバイオ医薬事業買収
ーーー
世界のgeneric医薬品メーカー大手は以下の通り。医薬品大手が含まれている。
シェアは日経推計 (2011/5/3)
企業 | 国 | 備考 | シェア (%) |
日本の活動 |
Teva Pharmaceutical | イスラエル |
米国 Barr Pharmaceuticals を買収 ドイツRatiopharmを買収 |
12.0 |
興和テバ 大洋薬品を買収 |
Sandoz | ドイツ | Novartis のgeneric 部門 | 6.3 |
サンド ニプロと業務提携 |
Mylan | アメリカ |
ドイツMerck のgeneric部門買収 インド Matrix Laboratories を買収 |
4.0 | マイラン製薬 |
Watson Pharmaceuticals | アメリカ | Andrx を買収 | 1.7 | |
Greenstone | アメリカ | Pfizerのgeneric 部門 | ファイザー | |
Apotex | カナダ | |||
Stada Arzneimittel | ドイツ | |||
Winthrop | 英国 | Sanofi-Aventis のgeneric 部門 | ||
Bayer | ドイツ | |||
Actavis Group | アイスランド |
米 Amide Pharmaceutical を買収 米 Alpharmaを買収 (AlpharmaはCoxを含む Hoechstのgeneric部門を買収) |
あすかActavis製薬 | |
Dr. Reddy's Laboratories | インド | 富士フィルムとJV設立 | ||
Ranbaxy Laboratories | インド | 第一三共が買収 | ||
Sanofi Aventis | フランス | 日医工サノフィ・アベンティス |
韓国鉱物資源公社(Korea Resources Corp.) とPOSCOのコンソーシアム は7月30日、ボリビアで国営鉱業会社COMIBOL:Corporacion Minera de Boliviaとリチウムバッテリー事業推進のための 合弁会社を設立する覚書を締結した。
覚書は韓国をボリビアのリチウム事業推進の戦略的パートナーと認定し、来月にも合弁事業推進のためのタスクフォース を構成し、詳細を詰める。
SK Innovation とLG Chem もこれに参加する予定。
SK Innovationは旧称 SK Energy。
2011年1月に石油事業(SK Energy)と化学事業(SK Global Chemical)を分離し、2009年設立のSK Lubricantsとともに100%子会社とした。SK Innovationは持ち株会社で、主に研究開発(R&D)分野と資源開発(E&P)分野を担当し、リチウムイオン電池用分離膜(LiBS)事業も受け持つ。
LG Chemは電気自動車用バッテリーを現代・起亜自動車、CT&T、GM、Eaton Corporation、長安汽車、ボルボ、Fordなどに供給、子会社のCompact Powerがミシガン州Hollandでリチウムイオン電池工場を建設している。
2010/7/17 オバマ大統領、LG化学の米工場起工式で祝辞
覚書に基づき、韓国各社はリチウム採掘の共同調査のため、近くウユニ塩湖に調査団を派遣する。
また世界4位の鉄鋼メーカーであるPOSCOは、ウユニでの炭酸リチウム製造・加工設備建設にも応札する予定。
ーーー
鉱物資源公社は2009年8月、ボリビア科学委員会および国営鉱業企業と了解覚書を締結し、ウユニ湖の塩水で炭酸リチウムを製造する技術を開発してきた。
2009/5/5 韓国鉱物資源公社、ボリビアでリチウム鉱開発へ
2010年8月、ボリビアのモラレス大統領が韓国を国賓訪問した。同大統領と李大統領は、韓国鉱物資源公社とボリビア鉱山公社の「ウユニ塩鉱山の蒸発資源産業化研究開発に関する了解覚書」締結式に立ち会った。
モラレス大統領は訪韓中、LG化学研究所を訪問し、韓国の最先端リチウムイオン電池生産技術を見学した。
2010/8/27 韓国とボリビア、リチウム開発で覚書
ボリビアのピメンテル鉱業・金属相は2010年11月、リチウムの共同開発のパートナー国の選定については、国内のリチウムイオン電池の生産が条件となると明言した。
日本とフランスなど約10か国がCOMIBOLと交渉を続けているが、鉱物資源公社では、今回の覚書締結で、リチウム開発で有利な地位に立ったとしている。
リチウム関連記事 | ||
2009/5/5 | 韓国鉱物資源公社、ボリビアでリチウム鉱開発へ | 日本関連記事を含む |
2010/8/27 | 韓国とボリビア、リチウム開発で覚書 | 同上 |
2010/6/11 | 韓国鉱物公社、アルゼンチンのリチウム開発に参加 | 同上 |
2010/11/20 | 韓国、チリのリチウム鉱区確保 | 同上 |
2010/7/13 | 伊藤忠、米国リチウム資源開発会社に資本参加 | |
2010/9/21 | 中国のBYD、チベットのリチウム会社に出資 | |
2010/10/11 | 中国で大規模なレアアース資源を発見 |
8月2日の期限切れでの米国史上初のデフォルトを目前にし、米与野党指導者は7月31日夜、連邦政府の債務上限を2.1兆ドル引き上げるとともに、その条件として今後10年間で2.5兆ドルの財政赤字を削減することで合意に達した。
下院は8月1日、賛成269票、反対161票で可決した。
上院は8月2日、賛成74、反対26で可決した。
オバマ大統領は直ちに署名し、法律となり、デフォルトは寸前に回避された。
しかし、最大の焦点だった財政赤字削減の具体策は先送りされ、米国債の格下げ懸念も続く。
付記
デフォルト目前にオバマ大統領が与野党トップを集め、交渉するがまとまらず。
大統領と下院議長(共和党)との交渉も破談。
下院議長などが独自案を出すが、通らず。
最後に、Biden副大統領とMcConnell共和党上院総務の交渉でまとまる。
Bidenは18ヶ月延長を、McConnellは予算削減が出来ない際に自動的に増税にならないことを要求。
最後に、予算削減できない際の50/50 強制カットを militaryとnon-militaryではなく、securityとnon-security(幅が広い)とすることでまとまる。
連邦政府の債務については、
1917年成立の公債法(Second Liberty Bond Act)で上限が定められている。
1917年には限度額が4000億ドルと決められたが、1962年3月以降74回、2001年以降では10回引き上げられている。
現在の上限は14.29兆ドル(約1130兆円)で、 5月に上限に達し、つなぎの資金繰り対策でしのいでいるが、8月2日までに上限が引き上げられなければ、米国は新たな借り入れができなくなり、米国債の利払いなどの資金が不足 して、米国史上初のデフォルトに陥るおそれが指摘されていた。
しかし、前提となる財政赤字削減策で、民主党と共和党が争い、ぎりぎりまでもつれ込んだ。
民主党は富裕層向けの増税を主張、共和党は増税に反対、社会保障費のカットを主張した。
草の根保守派運動「Tea Party」の支持を受ける共和党議員らは上限の引き上げ自体に反対した。
共和党は半年程度の資金手当てに必要な1兆ドル規模の上限引き上げを実施した後、総額3兆ドルの赤字削減で合意すれば再度引き上げに応じる2段階方式を提案 した。
これに対し、民主党は来年末まで資金を手当てできるよう2兆7千億ドルの引き上げを行い、同額の赤字を10年間で削減する案を主張したが、共和党は「赤字削減の実現性が疑わしい」と批判した。
7月29日、下院は共和党のベイナー下院議長が提出した法案を、賛成218票、反対210票の小差で可決した。
まず9000億ドルだけ債務上限を引き上げ、2012年2月までに与野党で総額3兆ドルの赤字削減で合意すれば、更に1.6兆ドルを引き上げるもの。
法案は上院に即日送付されたが、与党民主党が賛成多数で同法案を審議しないことを決め、廃案となった。
今回の合意内容は以下の通り。(細目追加)
・今後10年間で約1兆ドルの支出を削減(先行決定)
10月1日から10年間9170億ドルの削減(初年度は210億ドル)
・大統領に2.1兆ドルの債務上限引き上げ権限
デフォルトを避けるため、直ちに4000億ドル
9月中に追加の5000億ドル(議決必要だが、大統領に拒否権)12月末に予算修正案が通れば、追加の1.5兆ドル、通らなければ1.2兆ドルの引き上げ権限授与
・超党派の特別委員会が11月末までに1.5兆ドル規模の財政赤字の追加削減策を大統領と議会に報告
11月23日までに1.2〜1.5兆ドルの削減案決定(増税、福祉費、軍事費を含める)
議会は12月23日までに採決(修正なしで yes or no、遅延認めず)付記 米議会の超党派委員会が、11月23日の期限を前に、決裂した。
民主党:2.3兆ドルの赤字削減、うち富裕層向けに1兆ドルの増税
共和党:年金、医療保険の大幅縮減否決の場合、10年間1.2兆ドルの予算カット条項発動(2013年1月から)
半分は国防・安全保障費、メディケアも一部カット、 Social Security とMedicaidは除外
12月末に予算修正案(シンボリックなもの)
通れば、追加の1.5兆ドル、通らなければ1.2兆ドルの債務上限引き上げ権限授与
先行決定の1兆ドルの支出削減には、大統領が強く求めていた富裕層向けなどの増税措置は盛り込まず、基本的に歳出削減で対応する。
追加赤字削減策の対象には、
社会保障費や高齢者医療保険への切り込み:民主党リベラル派にとり妥協の余地は少ない、
税制改革も対象:共和党主張の「増税なき財政赤字削減」路線が覆る可能性
軍事費削減
が含まれ、難航は必至であり、今回は単に時間稼ぎをしたに過ぎない。
また、2012会計年度の予算教書ベースでは、米財政赤字は向こう10年で累計7兆ドル超に上る見込みで、仮に2.5兆ドル規模の赤字削減が実現しても、巨額の財政赤字が残ることとなる。
付記
米格付け会社Standard &
Poor'sは8月5日、米長期国債の格付けを最上位の「AAA」から1段階引き下げて「AA+」に格下げしたと発表した。
米政府の債務削減計画が格付けを維持するには不十分と判断した。
さらに今後の格付けの見通しを、追加引き下げの可能性がある「Negative(弱含み)」とした。今後2年以内にさらに1段階格下げして「AA」にする可能性があるという。
日本の国債の長期国債の格付けについては、本年1月に「AA」から上から4番目の「AA-」に下げ、見通しは4月に「安定的」から「ネガティブ(弱含み)」に引き下げた。
日本触媒のインドネシア子会社PT. Nippon Shokubai Indonesiaは7月28日、アクリル酸(AA)8万トン/年および高吸水性樹脂(SAP)9万トン/年設備建設の起工式を行った。
2013年8月に商業生産開始の予定で、これにより生産能力はAAが14万トン、SAPが9万トンとなる。
世界トップクラスのシェアを維持するため、SAP増産を当初の計画(30千トン)より拡大し、原料であるAAも含め増強する。
2011/4/6 日本触媒、インドネシアでアクリル酸と高吸水性樹脂を増強
同社は8月2日、2013 年5
月末完工を目途に姫路製造所内に生産能力年8万トンのアクリル酸の新プラントを建設すると発表。
合わせて、アクリル酸特殊エステル年産能力2万トンの新プラントを川崎製造所に建設し、姫路と合わせ6万トンにすると発表した。
日本触媒の現状と計画は下記の通り。(千トン)
アクリル酸 SAP 現状 計画 付記 現状 計画 付記 日本 460 80 320 +50 US 60 60 ベルギー +100 60 +100 インドネシア 60 80 90 シンガポール 40 中国 30 30Total 620 160 470 90 780 →880
560 +30→710
付記
日本触媒は2012年1月31日、中国の能力を倍増すると発表した。
2014年3月末完成、7月から商業運転を開始する予定。
日本触媒は2014年7月31日、中国の倍増計画を中止すると発表した。
付記
日本触媒は2013年10月23日、インドネシアでアクリル酸、SAPの竣工式を行った。
世界能力はアクリル酸が70万トン、SAPが56万トンとなった。付記
日本触媒は2014年10月1日、姫路のSAPの50千トン増設を発表した。
2016年6月に完成すれば、日本が370千トン、合計610千トンとなる。付記
日本触媒は2015年5月11日、ベルギーでSAP 100千トン増設、アクリル酸100千トン新設を発表。
2018年5月に完成すれば、SAPが710千トン、アクリル酸が880千トンとなる。
ーーー
住友精化は7月26日、高吸水性樹脂の堅調な需要の伸びに対応するため、姫路工場での増設を決定したと発表した。
新設備の能力は54千トンで、増強後の姫路の総能力は164千トンとなる。
併せて、7,000KWHの自家発電設備も増設する。
いずれも2012年12月に完成の予定。
同社は5月31日に、フランスで高吸水性樹脂を増設すると発表した。
同社は2008年4月にArkemaからこの事業を買収して、ArkemaのCaring工場で製造委託を行っているが、ここに27千トンの設備を増強し、合計能力を47千トンとする。
完成は2013年春を予定している。
販売はSumitomo Seika Europeが行っている。
このほかSumitomo Seika Singapore(住友精化 80%、住化シンガポール 20%)が、シンガポールSakra島で製造している。
住友精化の現状と計画は下記の通り。(千トン)
現状 増強 完成後 付記 姫路工場 110 54 164 →210
フランス
Arkema 委託20 27 47 シンガポール 70 70 →129 合計 200 81 281 →386
付記
住友精化は2013年9月、姫路の増設を発表、2015年4月稼動で、合計210千トンになる。
住友精化は2014年5月28日、韓国の麗水市に高吸水性樹脂製造設備(年産59千トン)を建設することを決めたと発表した。
2019年 韓国の増設(+59千トン)完成
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なお、三洋化成工業 60%/三菱化学 40%のJVのサンダイヤポリマーは2010年4月、中国の子会社三大雅精細化学品(南通)有限公司 で70千トンの増強を行うと発表した。2011年7月完成予定。
同社の現状と計画は下記の通り。(千トン)
現状 増強 完成後 名古屋工場 105 105 大垣工場 20 20 中国 65 70 135 合計 190 70 260
同社では完成後は年産26万トンで世界第4位になるとしている。
しかし、各社とも増強しており、増強後には、日本触媒、BASF、Evonik、住友精化に次ぐ5位と思われる。
各社の詳細は 2009/9/26 高吸水性樹脂業界の動き
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日本触媒は世界の主要SAPメーカーの生産能力を以下の通りとしている。(2010/11/5決算説明会資料)
(筆者の数値と若干異なる。日本触媒以外の社名は筆者の推定)
付記
BASFは2011年8月19日、ブラジルのCamaçariに5億ユーロ以上を投じて、アクリル酸、ブチルアクリレート、SAPプラントを建設すると発表した。能力は明らかにしていない。アクリル酸とSAPは南米で初めての工場となる。
付記 韓国LGは2013年12月にアクリル酸とSAPの増強を発表した。
粗アクリル酸は8万トン増やし51万トンに、SAPは16万トン増やし36万トンとする。
BASFは2010年12月17日、ベルギーと米国の高吸水性樹脂の能力を増強すると発表した。
ベルギーのAntwerpと米国のFreeportのプラントをデボトルネッキングなどで2012年までにそれぞれ35千トン増強し、同社の合計能力を年産47万トンとする。
BASFの高吸水性樹脂の主工場はAntwerpとFreeportで、ほかにドイツのMannheim とタイのRayongにもプラントを持つ。
同社の能力は以下の通り。(単位:千トン)
現在、SinopecとのJVのBASF-YPC(南京市)で60千トンのプラントを建設中。
付記 2014年4月 アクリル酸と吸水性樹脂が生産開始、追ってブチルアクリレートとも。
過去 現状 増強後 欧州 Antwerp 115 175 210 Mannheim 25 25 25 米国 Portsnmouth,VA 115 - - 元Clariant Aberdeen, MS 65 - - 元Chemdal Freeport,TX - 180 215 タイ Rayong 20 20 20 元Chemdal 合計 340 400 470 中国JV 南京(BASF-YPC) - - 60 再計 340 400 530 2010/12/22 BASF、高吸水性樹脂を増強
付記
BASFは2011年10月11日、ブラジルのCamaçariに60千トンプラントを建設すると発表。生産開始は2014年末。
BASF-YPCのプラントは2014年初めスタート。
更にマレーシアのKuantanでの生産をFS中。
2011/8/5 台湾プラスチック、事故多発で台湾政府が徹底した検査を要求
台湾プラスチックグループ(台プラ)の第6ナフサ分解プラント(雲林県麦寮:エチレン年産2,935千トン)で7月30日、過去1年で6回目の火災事故が発生した。
グループ企業の南亜プラスチックの嘉儀での火災を入れると7回目となる。
2010/10/3 | 南亜プラスチック | 嘉儀 PEPA(合成紙)工場 | PEPA(合成紙)工場2階から出火 | |
2010/7/7 | 台塑石化 | 麦寮第6 | オレフィン第一 | |
2010/7/25 | 台塑石化 | 同上 | 第二製油所 | 原油精製、水添脱硫装置が原油漏れで爆発火事 |
2011/5/12 | 台塑石化 | 同上 | オレフィン第一付近 | LPGパイプラインから気体が漏れ爆発、発火 |
2011/5/18 | 南亜プラスチック | 同上 | イソデシルアルコール工場 | |
2011/7/26 | 台塑石化 | 同上 | オレフィン第一付近 | 各生産工場にUtilitlyを供給する「第1公用工場」の水素パイプラインで失火 |
2011/7/30 | 台塑石化 | 同上 | 第三製油所 | プロピレン回収工程の脱硫乾燥器が破裂し、 プロピレンが外部に漏れた。 |
これを受け、行政院は7月31日、政府部門を横断した会議を開き、台プラへの要求4項目を決議した。
具体的な内容は
【1】昨年7月以来、これまでに発生した7度の火災に関連する設備の稼働を即座に止め、全面的な検査を実施
【2】今回の7度目の火災が発生した設備と同種の材料を使用した圧力容器の稼働を直ちに止めて検査
【3】同プラント内にあるその他の設備も1年内に順番に稼働を止めて検査
【4】これらの全面的な稼働停止と検査の過程、結果について、公正な第3者機関から監督・認可を得る――。
台プラ幹部によると、稼働を停止せねばならない工場は同プラント内の全66基の半数近くとなる約30基に達する。今回の火災が起きた第3製油所に加えて、第1、第2製油所もすでに操業を停止している。
同プラント内には、PVCメーカーの台湾塑膠工業(Formosa Plastics)やエチレングリコール世界4大メーカーの南亜塑膠工業(南亜プラスチック)、高純度テレフタル酸で世界最大手の台湾化学繊維(Formosa Chemicals & Fiber)の工場がある。
このため、アジアの石油化学の需給に大きな影響を与える可能性がある。
台塑 麦寮第6
常圧蒸留装置(CDU) 15万BD×3基=45万BD
FCC No.1 37.5万トン(As C'3)
No.2 37.5万トン
メタセシス 25万トン
エチレン
(公称)No.1 700 No.2 900 No.3 1,200
経済部は声明を発表し、「安全不在のところに石化製品の生産は不在」と強調した。
さらに製油所の操業停止への対応で、台プラに対し、域内のガソリンやディーゼル油、プロピレンなどが不足する場合は、域内の需要を優先し、必要に応じて輸出を控えるよう求めた。
地元の雲林県政府は7月31日、県内にある台プラのプラントの全面的な稼働停止を経済部に強く要求した。
2011/8/5 New York市場でWTI原油先物価格が急落
8月4日のNew
York株式市場は急反落し、前日比512.76ドル安の11,383.68ドルとなった。
世界的な景気減速懸念が強まり、投資家のリスク回避的な動きが加速した。
この結果、金融市場全体にリスク回避の動きが拡大、原油も売りが強まり、売りが売りを呼ぶ展開となった。
NY原油先物相場は7月28日以来、終値は続落していたが、8月4日は急落し、前日比5.30ドル安の86.63ドルとなった。一時86.00ドル付近まで下落した。
7/28 | 97.44$/bbl |
29 | 95.70 |
8/1 | 94.89 |
2 | 93.79 |
3 | 91.93 |
4 | 86.63 |
2011/8/5 会社更生法申請の林原、長瀬産業とスポンサー契約締結
会社更生手続き中のバイオ企業 林原は8月3日、長瀬産業とスポンサー契約を結んだと発表した。
今後、管財人が11月18日までに更生計画案を提出する。
経緯については、
2011/1/28 林原が私的整理手続き
2011/2/7 林原が会社更生法申請付記
林原は2011年12月31日、東京地裁から更生計画案の認可を受けたと発表した。
負債総額約1400億円に対し、資産売却などによる弁済原資は約1300億円で、債務弁済率は9割を超えた。長瀬産業は、今後、林原グループの中核事業会社3社を合併して100%減資を実施、長瀬産業の子会社として、天然甘味料「トレハロース」などの主力事業を継続する。
長瀬産業は再建中の林原グループ3社に対し、総額700億円の資金支援を実施する。
長瀬
産業は林原のバイオ技術を自社の酵素研究に取り込みたい意向で、700億円の買収額についても、「私どものグループになって相乗効果で将来の発展を考えれば高くはない」としている。
長瀬産業は、酵素事業をバイオ分野の基盤と位置付け重点育成する方針で、バイオケミカル技術の確立も視野に入れている。
酵素ビジネス では、1939年にアミラーゼを工業化して以来70年以上の歴史を持つ。
1950年代に深層液体発酵技術、70年代には国産初の異性化糖製造技術を確立した。
現在は遺伝子工学、たん白質工学、細胞工学・代謝工学、生物情報科学といった基盤技術をベースに、ナガセR&Dセンターが製品設計、新規商品の開発を行い、ナガセケムテックス福知山事業所での生産に結びつける体制を敷いている。
主なターゲットはエキス・調味料、ヘルスケア製品をはじめとした食品分野。とくに海外市場での販売に力を入れる。
裁判所の認可を経て、林原(製造、グループ統括)、林原商事(販売)、林原生物化学研究所(R&D)の3社は合併し、統合後に100%減資を実施する。
長瀬産業は存続会社が発行する全株式を取得し、弁済資金の貸し付けなどとあわせ、総額700億円を拠出する。
林原のスポンサーには当初70〜80社程度の企業から打診があり、多数の会社が応募したが、7月25日の最終入札には次の4社が残った。
長瀬産業 | |
日本たばこ産業(JT) | |
韓国CJグループ (国内ファンドのユニゾン・キャピタルとの連合) |
サムスングループの製糖事業(第一精糖
Cheil Jedang)がルーツ。 1993年にサムスンから独立 韓国内外で食品やバイオ、流通、メディア事業などを展開 |
群栄化学工業 | フェノール系樹脂、澱粉糖類、高機能繊維、高機能複合材料、その他 |
スポンサー 選択には、「トレハロース」をはじめとする食品素材、香粧品素材、医薬品素材、機能性色素事業について、その研究開発・製造販売活動が一体として継続・発展することが基本方針で、買収額のほか、美術館や博物館、チンパンジー研究など林原が行っていたメセナを含めた事業の一括引き受けが条件 となった。
当初、買収金額は400億円規模とみられたが、林原の持つトレハロースの技術が評価され、価格は段階的に引き上げられた。
ーーー
長瀬産業は8月4日、林原の本社で会見した。
長瀬社長は「今のまま岡山に軸足を置いて事業を続けてもらい、林原の会社名も当面は残す」との考えを示し、従業員の雇用も継続すると断言した。
メセナ活動については、「林原のメセナが社会的にも意味のある事業であることは理解している。当面はそのままの継続を考えている」としたが、「将来、もっといい主体が出てきたら引き継ぐか考えたい」と述べた。
「当面」の時期については、「2、3カ月ということはないが、1年なのか数年なのか十数年なのかは、今の時点でお答えしかねる」と答えた。
ーーー
林原の事業の状況は以下の通り。
会社更生法申請 | 林原 (製造、グループ統括) |
合併 統合後に100%減資 増資を長瀬産業が引き受け (引受と貸付で700億円拠出) |
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林原商事 (販売) |
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林原生物化学研究所) (R&D) |
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太陽殖産 (不動産) |
不動産部門 |
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保険部門 | |||
林原美術館 | 当面 長瀬が引き受け | ||
林原自然科学博物館 | |||
林原共済会 (メセナ活動) |
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京都センチュリーホテル | 2011/7/25 京阪電気鉄道が99.72%を買収 | ||
H+Bライフサイエンス (健康食品) |
2011/6/21 潟nーバー研究所が買収 (無添加化粧品メーカー) |
||
アメニティルネサンス | |||
ザ ハヤシバラシティ | 駅前の土地の事業(下記) |
林原の管財人は、林原が所有するJR岡山駅前の駐車場(約45千m2)について、別の入札で来月をめどに売却先を決めると説明した。
中国銀行が設定した担保権を無効とする否認請求も東京地裁に行っており、管財人は100〜200億円の売却額を想定している。
管財人は又、林原健・前社長、林原靖・前専務と前常務、前取締役の旧経営陣4人に対する損害賠償査定を8月3日付で東京地裁に申し立てたことを明らかにした。前社長に200億円、前専務に150億円とされる。
裁判所が賠償責任を認めれば、前社長らに支払いが求められる。
なお、林原グループの負債総額は約1400億円。
東日本大震災でコスモ石油千葉製油所で火災爆発事故が発生した。
3月11日 15時47分頃 LPGタンク付近で火災を確認、全装置停止
3月21日 10時10分 鎮火確認
経済産業省原子力安全・保安院は6月30日、コスモ石油に対し、千葉製油所の高圧ガス保安法に基づく完成検査及び保安検査に係わる認定を取り消す行政処分を行ったと発表した。緊急時の安全確保基準に違反していたと判断した。
2011/7/2 経産省、東日本大震災の火災事故でコスモ石油に行政処分
付記
コスモ石油は2012年3月30日、稼働を停止していた千葉製油所の第2常圧蒸留装置(120,000バレル/日)が3月23日に保安検査証を受領し、3月30日に稼働を再開したと発表した。「製油所」としての機能が回復した。
今後は第1常圧蒸留装置(100,000バレル/日)を含めたその他の装置につきましても稼働再開の準備を進める。
コスモ石油は8月2日、事故原因と対策を発表した。
1.事故概要
14時46分に震度5弱の東北地方太平洋沖地震が発生
・当時満水状態のLPG364番タンクの支柱筋交いの多くが破断した。
(開放検査中で、タンク内の空気を除去する為に水を注入していた。)
15時15分に震度4の茨城県沖地震が発生
・筋交いが破断した364番タンクの支柱が座屈し、LPGタンク本体が倒壊、近接する複数の配管が破断し、LPGが漏洩。
・漏洩、拡散したLPGに着火し、火災が発生。
・火災の影響により隣接するLPGタンクが爆発し、延焼。
・それにより、付近の複数のLPGタンクが爆発し、火災が拡大。
1. 人的被害:負傷者6名(重傷者 1名、軽傷者 5名)
2. 物的被害:
発災箇所に設置してある全LPGタンク(17基)、及び周辺配管・道路が損傷。
爆発による飛散物・爆風等の影響により丸善石油化学及びチッソ石油化学の構内で火災が発生。
その他
2011/7/16 丸善石油化学、C5系石油樹脂と液状石油樹脂事業から撤退
3.原因
- (1)LPGタンクの支柱筋交いの多くが破断し、LPGタンクの支柱が座屈・倒壊
LPGタンクは耐震基準を満たしていたが、解放検査のため、軽量のLPGではなく、水が注入され満水状態であった事から地震で支柱の筋交い部分に荷重が作用し、筋交いが破断、倒壊した。
(2)LPGの漏洩
(3)着火源及び爆発・延焼
4.対策
(1)安全総点検活動
(2)緊急異常時の対応能力向上
(3)再発防止策の進捗管理および水平展開
米格付け会社Standard & Poor's(S&P)は8月5日、米国債の長期格付けを最上位の「AAA」から、「AA+」に1段階引き下げた。
米国債を格下げするのは1941年の現行制度開始以来初めて。
S&Pは7月14日に米国債を「クレジットウオッチ」に指定し、90日以内に格下げする確率が50%以上あると公表、信頼に足る財政再建には今後10年で4兆ドル程度の財政赤字の圧縮が必要だとの考え方も示していた。
米連邦政府の債務の上限額引き上げを巡り与野党が鋭く対立し、期限当日の8月2日に、債務上限を引き上げる一方、財政赤字額を今後10年で2.4兆ドル減らすことで決着した。
S&Pはこれが、「政府の中期的な債務構造の安定に不十分と判断した」としている。
同時に、S&Pは長期的な格付け見通しを「Negative(弱含み)」に指定した。
向こう2年間に歳出削減の動きが鈍ったり、金利急上昇などで財政への圧力が高まったりした場合には、格付けを「AA」
にもう1段階引き下げるとしている。
米国債を巡っては、Moody'sは8月2日、最上位の「Aaa」で維持すると発表、Fitchも「AAA」に据え置くと発表している。
S&Pによる主要国の長期国債(外貨建て)の格付けは以下の通り。(青字はPIIGS諸国)
AAA フランス、ドイツ、英国、カナダ、シンガポール、豪州 AA+ 米国、ベルギー AA スペイン(S)、カタール、クウェート 付記 10/13 スペインをAA- に引き下げ AA- 日本、中国、サウジ、台湾 A+ イタリア(I)、チリ 付記 9/19 イタリアをAに引き下げ A 韓国 BBB+ アイルランド(I) BBB ロシア BBB- ポリトガル(P) CC ギリシャ(G) S&Pは日本の国債の長期国債の格付けについて、本年1月に「AA」から上から「AA-」に下げ、見通しは4月に「安定的」から「ネガティブ(弱含み)」に引き下げた。
付記
Moodysは8月24日、日本国債の格付けを上から3番目の「Aa2」から4番目の「Aa3」(S&Pと同じレベル)に1段階引き下げると発表した。
東日本大震災で政府支出の増加が見込まれるなか、財政赤字削減の具体策が見えないと指摘。債務返済の可能性が低下したと判断した。
米国債保有高を1兆1600億ドル(5月時点)保有する中国は今回の格下げで「国際金融市場が混乱し 、中国は大きな影響を受ける」と強く非難した。
新華社は「中国は最大の債権者として、米国に構造的な債務問題への対処と中国のドル資産の安全確保を要求する当然の権利がある」と強調、「借金依存症」を改め、「巨額の軍事費と社会保障費を削減しなければ、国債のさらなる格下げを招く」と警告した。
ーーー
S&Pの格下げに先立ち、中国の格付け機関、大公国際資信評価有限公司(Dagong Global Credit Rating Co.)は8月3日、米国債の格付けをA+からAに引き下げ、見通しを「ネガティブ」とした。
- 同社は2010年7月に初めて世界50カ国の信用格付けを発表した。
中国は自国通貨建てがAA+で外貨建てはAAA。
一方、米国はAA、AAで、いずれも中国の格付けを上とした。
英国とフランスは自国通貨建て、外貨建ていずれもAA−、ドイツはいずれもAA+とした。- その後、2010年11月に米国を A+に引き下げた。
さらに本年7月にマイナス観察リストに入れ、債務返済能力が実質的に改善される大きな出来事がなければ、格付けを引き下げると表明していた。
大公国際資信評価は格付けの引き下げの理由として、以下の通り述べている。
米連邦議会は政府の債務上限引き上げをめぐる決議を採択したが、国の債務の増加速度が経済・財政収入の伸びを上回るという基本的状況は変わっていない。このことは米政府の債務返済能力の一層の低下に向けたターニングポイントとなった。
・ | 米政党間の争いにより、政治体制の弊害が明るみに出た。 米政府が国のソブリン債務危機を根本的に処理するのが難しく、政治・経済制度による債権者の利益保障が十分でないことを示している。 |
・ | 国の債務返済能力は改善されておらず、政府の債務負担は引き続き重くなり、米国のソブリン債務危機は深刻化すると見られる。 |
・ | 米国の財政赤字削減の速度は、新たな債務の増加速度を大きく下回っている。 |
・ |
米議会は、国の経済成長の原動力不足を根本的に解決するための建設的決議を打ち出していない。 経済成長率の低さと財政赤字、債務増加が債務返済能力に及ぼす根本的な影響を解決することができず、債務返済能力の低下が避けられないことを示している。 |
2011/8/8 「ガスランド 〜アメリカ 水汚染の実態〜」
先週、NHKのBS世界のドキュメンタリー 「ガスランド 〜アメリカ 水汚染の実態〜」 のアンコール放送を見た。
昨年12月の放映を見逃し、再放送は東日本大震災で2度も中止となっていた。
世界の資源地図を塗り替えると期待される、新しい天然ガス「シェールガス」。その開発に疑惑を持ち、コロラド、ワイオミング、テキサス、ルイジアナ・・・ と自家用車で旅を続けるジョシュが見たものは、飲み水や大気の汚染で深刻な健康被害に怯える人々と、無残な姿をさらすアメリカの大地だった。
行政担当者や環境問題の専門家などに話を聞くうち、汚染の原因は、岩石層の水圧破砕のために地下に注入する特殊溶液にある可能性が浮上してくる。アメリカでは飲料水の安全確保のため、水源地帯の土中に異物を混入する行為は厳重に規制されている。ところが、住民の要請を受け当局が調査を行った形跡はなく、ガス会社には溶液の成分を公表する義務さえないという腑に落ちない事実が明らかになっていく。
こうしたガス開発を優先する特例を推し進めたのは、巨大エネルギー会社のCEOからブッシュ政権入りしたチェイニー前副大統領だった。特例を認めるべきか?否か?安全な水を求めるジョシュの取材の旅は、ついに連邦議会での攻防の場へとたどり着くことに・・・
(NHK ホームページから)
見終わってゾッとした。米国でこんなことが許されるのか。
米国各地でオイルシェールが発見され、開発が進んでいる。
日本の企業も多数、参加している。
2011/7/4 三井物産、テキサス州のシェール開発に参加;米国でシェール論争
オイルシェールの採掘には水圧破砕法(Hydraulic fracturing 又は fracking)が使われている。
これは1940年代にHalliburton Energy Servicesが開発したもので、同社はまた、水圧破砕溶剤の3大製造会社の1社である。
坑井内に高い圧力を加えて採収層に割れ目(フラクチャー)を作り、その中に砂などの支持材を充填することによりその閉塞を防ぎ、採収層内に非常に浸透性の高い油・ガスの通り道を形成するもの。
大量の水と600種類にも及ぶ薬剤を投入する。一つの井戸で18回も投入する。
第一の問題はこの薬剤が漏れて、近くの民家の井戸に混入したり、河川を汚染することである。
放送では井戸水に火がついたり、健康被害で苦しむ住民や河川の汚染の状況が 多く出てくる。
米国では水道用地下水源を保護するために、1974 年安全飲料水法で、固体、液体及び気体を含む流体の地下注入を規制する法律上の権限をEPAに与えている。
但し、石油とガス業界は危険物質を地下の飲料水の源泉の近くに注入する事を許可されている。
1995-2000年にHalliburtonのCEOであったDick Cheney副大統領のエネルギーポリシー特別対策委員会の努力で、2005年連邦エネルギーポリシー条令が水圧破砕を飲料水安全条令から適用除外にした。これは「Halliburtonの抜け穴」と呼ばれる。
ガス会社は危険はないとしながらも、クレームがあれば井戸水を検査し、飲用不可の場合にはタンクを設置して飲み水を供給している。
放送ではまた、廃棄物処理の無茶苦茶を写している。
回収された薬剤入りの水は仮の溜池に保管されているが、池の土手から水が漏れている。
また、溜池から薬剤がどんどん蒸発している。コンデンセートタンクからもガスがもうもうと蒸発しており、大気汚染を起こしている。
天然ガスのパイプラインは途中でガスを放出している。
環境当局は以下の通り述べている。
世の中に完全無欠なエネルギーはない。
オイルシェールも完璧ではない。
飲料水で問題のある所帯には水を供給している。
雇用や石油の外国依存によるリスクも考える必要がある。
水素エネルギーが利用できるまでは妥協が必要だ。
カナダのタールサンド開発での環境汚染に関して、クリントン国務長官は、
「中東の汚い石油か、カナダの汚い石油か、アメリカの選択肢は2つです」と述べている。
2011/4/14 「岐路に立つタールサンド開発」
放送では、コロラド、ワイオミング、テキサス、ルイジアナと移動する間、井戸は絶え間なく続き、各地で被害が出ている。
しかし、問題はこれからのMarcellus Shaleの開発である。
地図の赤い部分は未開発で、間もなく 5万本の井戸を掘る予定地域だが、ここはNew York 680万人、Pennsylvania 540万人、Delaware70万人、New Jersey 290万人の合計1,580万人に飲み水を供給する水源である。
これが汚染されれば、いったいどうなるのか。これだけの人口密集地に代わりの水を供給することは不可能である。
いつまでも、このようなことが許されるとは思えない。
本日のブログ記事、「ガスランド 〜アメリカ 水汚染の実態〜」で、2005年連邦エネルギーポリシー条令が水圧破砕を飲料水安全条令から適用除外にした ことを述べた。
日本でも原発が環境法の除外を受けている。
河野太郎代議士の「ごまめの歯ぎしり」はこれまでの自民党の原子力政策の誤りを追及している。
なぜ自民党は...したのか?(2011年07月12日)
自民党はどこで間違えたのか(2011年08月04日)
そのなかで、「なぜ、自民党は、全ての環境法令について原発を適用除外にしたのか」を問うている。
ーーー
環境基本法
(放射性物質による大気の汚染等の防止)
第十三条 放射性物質による大気の汚染、水質の汚濁及び土壌の汚染の防止のための措置については、原子力基本法その他の関係法律で定めるところによる。
水質汚濁防止法
(適用除外等)
第二十三条 この法律の規定は、放射性物質による水質の汚濁及びその防止については、適用しない。
土壌汚染対策法
(定義)
第二条 この法律において「特定有害物質」とは、鉛、砒素、トリクロロエチレンその他の物質(放射性物質を除く。)であって、それが土壌に含まれることに起因して人の健康に係る被害を生ずるおそれがあるものとして政令で定めるものをいう。
化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律
(定義等)
第二条 この法律において「化学物質」とは、元素又は化合物に化学反応を起こさせることにより得られる化合物(放射性物質及び次に掲げる物を除く。)をいう。
最新情報は http://blog.knak.jp/