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これは下記のブログを月ごとにまとめたものです。

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2006-5-1

2014/3/1  
人民元が急落 

人民元が急落している。

2014年1月14日には終値 6.0412人民元/$で最高値を更新したが、その後、下落に転じた。

最近の動向は下記の通り。

まず、人民銀行は1月14日に基準値を過去最高値の6.0930人民元に設定した後、低目の設定をしていたが、2月中旬以降、 基準値を急に下げた。

人民銀行が基準値を元安方向に設定して、下落を誘導しており、大手国有銀行も人民銀行の要請で元を売っているとされる。

この結果、旧正月の連休直前に下落に転じ、2月20日頃からは急落、この数日の終値は基準値を下回るに至った。

2月28日の終値は6.1450人民元で、半年前の水準である。
一時、6.1808人民元と、下限ぎりぎりまで下がった。

2月26日付ウォール・ストリート・ジャーナルは、市場の力やトレーダーによる売買でなく、中国人民銀行による通貨切り下げだと報じた。

人民銀行の唐突な元安誘導の理由については意見が分かれているが、単なる誘導だけでは効果は一時的だとの見方が強い。

 ・輸出企業支援

 ・一方的な元高をけん制

これ以上一方的な元高が進まないことを市場に理解させる。

 ・元の変動幅拡大に備えた動き

中国は2012年4月16日に基準値からの変動幅をそれまでの0.5%から1.0%に拡大したが、これを更に拡大する意向で、基準値の上下2%まで拡大するのではと予想されている。

中国人民銀行は2月19日の声明で、「徐々に人民元の変動メカニズムを完成させ、為替の変動幅を秩序だった方法で拡大する」と述べた。国境を越えた人民元の利用を着実に拡大する方針も示した。

付記

中国人民銀行は3月15日、対ドル相場の変動幅を17日から上下それぞれ2%に広げると発表した。変動幅の拡大は2012年4月以来。

 ・元安によって米国に圧力をかける狙い(量的緩和の縮小において慎重な方法をとるよう求める)

 ・元安誘導を行うことで、利ザヤ狙いのホットマネーの流入に打撃を与える。

 

中国の国家外貨管理局は2月26日、最近の人民元相場の下落は市場原理の結果だと説明し、大規模な資金流出が将来発生する公算は小さいとの考えを示した。


市場では、このところの元急落にもかかわらず、今年も2-3%のペースで元高が進むとの見方が根強い。

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ロイターは、人民元の下落で、オフショアのデリバティブ(金融派生商品)の損失リスクが高まっており、このまま元が下げ続ければ、投資家は数十億ドルもの損失を抱える可能性があると報じた。

問題のデリバティブは、Target Redemption Forwardと呼ばれる投資商品で、元が急落しなければ、安定的なリターンが得られる投資商品として人気化した。
発行額は3500億ドルで、ドイツ銀行の試算では、主にドル債権を持つ中国企業に今年だけで1000億ドル販売されたという。


2014/3/3  アルゼンチン政府、YPF の接収で補償

アルゼンチン政府は2012年4月16日にスペインの石油会社 Repsol-YPF のアルゼンチン子会社 YPF を国有化する方針を示し、アルゼンチン下院は5月3日、国有化法案を可決した。

YPFはもともとアルゼンチンの国有石油会社だったが、1999 年の民営化に伴う政府放出株式をRepsol が購入した。
アルゼンチン政府は0.2%の“golden-share”を持ち、買収拒否権などの重要事項についての権利を持つ。

Repsol はYPF の買収後、2008年にアルゼンチンの億万長者Eskenazi 一族に15%を売却、2011年には更に10%をEskenazi に売却した。

アルゼンチン政府はRepsolの持ち株57.4%のうち、51%分を接収した。
時価による買収ではなく、資産没収で、補償額は国家評価裁判所(National Appraisal Tribunal)が決定するとするだけで詳細は明らかにされなかった。

Repsolは2012年5月にニューヨークの裁判所に105億米ドルの損害賠償を求めて民事訴訟を起こし、2012年12月3日にアルゼンチン政府を相手取り、世界銀行傘下の投資紛争解決国際センターに仲裁を提訴した。

2012/4/19  アルゼンチン大統領、スペイン石油大手傘下を国有化へ、スペインは反発

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Repsolは2014年2月25日、アルゼンチン政府との間の合意書を取締役会が承認したと発表した。
Repsolの株主総会による承認と、アルゼンチン議会の承認を得て発効する。

合意書は、YPF の51%持分の接収の補償として50億米ドルを支払うとしている。

支払いは米ドル建てのアルゼンチン政府の長期債で行われるが、アルゼンチン政府債は2002年のデフォルト以降、大幅な割引率で取引されているため、複雑な仕組みとなった。

1)基本パッケージ 額面合計50億米ドル

Bonar X債 5.0億米ドル 年利7%、2017年償還
Discount 33債 12.5億米ドル 年利8.28%、2033年償還
Bonar 2024債 32.5億米ドル 年利 8.75%、2024年償還
合計 50.0億米ドル  

2)補完パッケージ 額面合計10億米ドル

Boden 2015 4.0億米ドル 2015年償還
Bonar X債 3.0億米ドル 年利7%、2017年償還
Bonar 2024債 3.0億米ドル 年利 8.75%、2024年償還
合計 10.0億米ドル  

政府債の市価が下がった場合、補完パッケージの政府債で調整する。

Repsolは満期まで保持しても、売却してもよいが、利息とコストを除いて50億米ドルを超えた分は政府に返却する。

この債券がデフォルト(債務不履行)に陥ってもRepsol が50億ドルを受け取るまではこの債務は返済されたことにならない。

もし政府債が支払われない等の場合、Repsolは未払い分を国連国際商取引法委員会を通して期限前支払いを求める権利を有する。

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アルゼンチンはYPFの持つVaca Muerta油田の開発に外資を必要とするが、Repsol からの訴訟を恐れ、外資は参入をためらっていた。

今回の解決には、両国の政治家のほか、メキシコ政府も関与した。
メキシコ国営石油のPemexはRepsol の第3位(9.4%)の株主であり、メキシコはアルゼンチンと密接な関係を持つ。PemexはVaca Muerta油田の開発参入に関心を示している。

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なお、RepsolからYPFの株を2回にわたり買収(15%+10%)したアルゼンチンの億万長者Eskenazi 一族のPetersen Groupは、2回目の買収資金の借入金でデフォルトを起こし、グループの持ち株は金融機関等が担保として取り上げた。

債権者の一社であるRepsolはこれにより、接収後の持ち株 6.4%を12%に増やした。

Repsol では、YPFの持ち株売却やスペインのGas Natural Fenosaの持ち株(30%)の売却を行い、それらの資金と今回の補償金で北米で石油資産を購入し、YPFで失った分を補填する構想を持っている。



2014/3/4 Bayer、中国の漢方薬メーカーを買収 

Bayerは2月27日、雲南省昆明市の市販薬 (OTC)と漢方薬(herbal traditional Chinese medicine:TCM) のメーカーの滇虹集団(Dihon Pharmaceutical Group)を買収すると発表した。

買収額等は明らかにしていない。今後、詳細を詰め、独禁法等の手続きを終えて、2014年下期に買収完了の予定。

滇虹集団は、1997年に米国の Great Eastern Enterprises Inc.と雲南滇虹集団のJVとして設立された。
マジョリティを持つ
雲南滇虹集団は1993年に雲南滇虹天然藥物として設立され

1993年に一つの製品で出発した小さな製薬メーカーが、従業員2400名の大企業となり、皮膚炎、にきび、口内炎、骨過成長、子宮内膜症の5分野で市販薬と漢方薬を製造販売している。

代表的な製品は、OTCではふけ用等の“康王Kang Wang®、抗菌クリームの“皮康王Pi Kang Wang®)等と、漢方薬では女性疾患治療の“丹莪婦康煎膏(Dan E Fu Kang®)など。

2013年の売上高は123百万ユーロで、中国国内のほか、ナイジェリア、ベトナム、ミャンマー、カンボジア等でも販売している。

Bayerでは、グローバルに戦略的買収を行ってLife Sciences事業を強化しようとしており、実績のある市販薬メーカーの取得により、中国のOTC事業で多国籍企業のなかで主導的ポジションを得ることになるとし、更に、中国のOTC部門で半分を占める漢方薬に参入できることも重要であるとしている。
 

Bayer は2013年5月にドイツのハーブ薬メーカーSteigerwald Arzneimittelwerk を買収する契約を締結した。
同社の製品には、機能性胃腸疾患治療用のIberogast®や、軽度〜中軽度のうつ病用の Laif®がある。

Bayerはこの時も今回も、消費者により幅広いself-care options を与えられるものとしている。


2014/3/5  Solvay とIneos、欧州塩ビ事業統合で対案提出 

SolvayとINEOSは2013年5月7日、欧州の塩ビ事業を統合し、50/50のJVとする覚書に調印した。
両社の塩ビ事業を統合するJV設立から4年から6年の間に、INEOSがSolvayの持株を全て買取り、100%子会社とするものである。

2013/5/15 Solvay、欧州塩ビ事業をINEOSと統合、将来塩ビ事業から撤退 

この計画は欧州委員会の独禁法審査で難航した。

EUは、特に漂白剤と塩ビ管・窓枠用のサスペンジョンPVCで競合者が無くなるとし、2013年11月に徹底調査を開始した。

2014年1月22日、両社はEU当局から本件について問題ありとの通知(the statement of objections)を受け取ったと発表した。

これを受け、両社は2月27日、問題解決のための改正案を当局に提出した。

内容は、以下のプラント(いずれもINEOSの設備)をJVから除くというもので、第三者が購入するまでの間、単独で事業をやっていけるとしている。

PVC Schkopau (Germany)
 
旧 EVC
EVCがBSLのPVCプラントを買収し、新設備を増設
Beek, Geleen (The Netherlands)
Mazingarbe (France)
Tessenderlo Groupから買収
電解、EDC、VCM Tessenderlo (Belgium)

 


欧州委員会はこれを勘案し、最終決定を行うこととなる。



2014/3/6 中国の浙江恒逸化学、ブルネイで石油精製・石油化学 

中国の浙江恒逸産業は2月25日、ブルネイのPulau Muara Besarでの石油精製・芳香族プロジェクトのため、ブルネイ政府の Strategic Development Capital Fundの子会社Damai Holdings とJVを設立したと発表した。

JVは恒逸実業(文莱)有限公司:Hengyi Industries (Brunei)で、浙江恒逸石化の香港子会社が70%、Damai Holdingsが30%を出資する。

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ブルネイ湾に位置するPulau Muara Besarでは、ブルネイ経済開発委員会が総合開発事業を行っている。
 
 

島を経済水域、生活文化と観光事業区域、地域共同体の3つの主要な区域に発展させる。

初期段階では、@島発展のための浚渫及び開拓並びに新しい東回り水路、A道路、本土への連絡橋のような基本的インフラ、Bコンテナーターミナルのための660メートルの埠頭を建設し、産業施設としては、コンテナーターミナル、製油所、船舶用品基地を建設する。

ブルネイ政府は、1990年代から本格的な製油所建設を検討してきたが、いろいろの計画が頓挫した。

2011年7月になり、中国の浙江恒逸石化 の製油所プロジェクトを、サルタンが承認した。
2013 年3月には、中国の国家発展・改革委員会(NDRC)が、浙江恒逸の石油精製・石油化学プラント建設プロジェクトを認可した。

全体計画は、2期に分け、1期では製油所および合繊原料を生産する芳香族プラント、2期でエチレンコンプレックスを建設する。

承認されているのは、第1期の石油精製・芳香族プロジェクトで、年間800万トンの原油を処理してガソリン、ジェット燃料、軽油などを生産する精製ユニットとベンゼン(50万トン)やパラキシレン (150万トン)を生産するプラントから構成される。

ほかに原油や石油製品埠頭、発電プラント、海水淡水化プラントなどを建設する。

概要は以下の通り。

原油およびコンデンセートは、ブルネイ、カタール、そのほかの原油をそれぞれ3分の1ずつ処理する方針で、2011年11月の温家宝首相のブルネイ訪問を機に、Brunei Shellとの間で15年間にわたり年間275万トンの原油を供給するという協定に調印している。

生産した石油製品のかなりの部分は中国に輸出される可能性が高い。

浙江恒逸は高純度テレフタル酸(PTA)からポリエステル繊維まで一貫生産しており、本プロジェクトによってPTA およびカプロラクタムの原料が確保する。

資料:JPEC レポート ブルネイの石油・ガス産業


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Brunei では三菱ガス化学と伊藤忠がBrunei石油と共同で2010年4月からメタノールの生産を行っている。

合弁会社 Brunei Methanol Company
出資比率 三菱ガス化学    50%
伊藤忠     25%
PB Petrochemical  25% (PetroleumBRUNEIの関連会社)
生産能力 年産 850,000トン
立地 スンガイ・リアング工業地区

2007/4/23 三菱ガス化学、ブルネイのメタノール事業決定

 


2014/3/7  中国海洋石油(CNOOC)、北極圏油田開発に参加

アイスランドの国家エネルギー機関(Orkustofnun)は1月22日、中国海洋石油(CNOOC)に対し、北極圏での石油開発の認可を与えた。同社が最近発表した。

アイスランドは同国の東北の北極圏にある Jan Mayen海嶺の一部 Dreki Area の権益を持つ。(残り地域はノルウェー )

「北極圏」は北緯66度33分以北の地域

今回、Dreki Area での3番目の認可で、権益者は以下の通り。

CNOOC 60%
アイスランドのEykon Energy 15%
アイスランド国営石油Petoro Iceland 25%

Petoro Icelandは全ての鉱区で25%の権益を取得することとなっている。

アイスランドは2013年1月に2つのライセンスを与えている。

下図 赤色地区 Faroe Petroleum(Norway)  
Iceland Petroleum   
Petoro
 Iceland
67.5%
7.5%
25.0%
 
下図 青色地区 Valiant Petroleum  
Icelandic Kolvetni
Petoro
 Iceland
 56.25%
 18.75%
25.0%
2013年にカナダの Ithaca Energyが買収

 

それぞれの区域は下記の通り。

中国企業にとって、最初の北極圏での採掘となる。

中国は2013年に280百万トンの原油を輸入している。国内生産は208百万トンにとどまっており、輸入比率は58.1%に達する。

中 国の石油会社はグローバルに展開しているが、北極海域の油田開発についてもチャンスを窺っており、ロシアのRosneftの社長が2013年上半期に中国を訪問、CNOOCその他の石油会社とロシア北極海域に眠る油田開発について 議論したと報道されている。

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中国とアイスランドは2013年4月15日、自由貿易協定(FTA)を締結した。
中国にとって欧州の国との最初のFTAとなる。

中国は、地熱探査やグリーンエネルギーなどの分野での協力強化、氷河や火山、地震などの共同研究と技術協力、海洋と極地共同研究センターの構築に力を入れていきたいとしている。

中国にとっては、北極圏進出の象徴としての意味合いもあると報じられている。

また、SinopecはアイスランドのOka Energy Holdings と提携し、地熱開発に取り組んでいる。

アイスランドにとっては、水産物などの中国向け輸出は約6100万ドルとなっており、FTAにより更に恩恵を受けるとみられている。

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北極圏開発のルールづくりを各国が話し合う北極評議会は2013年5月、中国と日本、韓国、インド、イタリア、シンガポールの6カ国を評議会の「オブザーバー」に加えることを決めた。

北極評議会の構成は下記の通り。

 


2014/3/8   ゼオライト膜をつかった日本酒の濃縮 

“讃岐のこんぴら酒”で有名な琴平の 西野金陵は3月5日、三菱化学のゼオライト膜を使った三菱化学エンジニアリングの脱水装置を使用し、同社の純米大吟醸「大瀬戸の花嫁」の旨みとアルコール成分を濃縮して製造した新ジャンルの酒「琥珀露」を4月1日に発売すると発表した。

三菱化学は新しい分離精製技術としてゼオライト膜に関する知見を多く保有しており、2010年から三菱化学エンジニアリングと共同でエタノールやイソプロパノールの脱水用途に展開しているが、西野金陵がこの技術を日本酒に応用した。

  純米大吟醸
 「大瀬戸の花嫁」
「琥珀露」
アルコール度数 14度以上15度未満 30度以上31度未満

アルコール分のほか、
有機酸、アミノ酸、芳香成分、糖類などの成分濃度が高くなる。

酒税法における品目 清酒
(アルコール分22度未満)
雑酒A
(いかなる分類にも属さないもの)

ちなみに、清酒の酒税はアルコール度数に関係なく、1kl当たり12万円。
雑酒は21度未満は22万円で、1度ごとに11,000円加算(30度なら33万円)

エタノールの脱水の仕組みは以下の通り。

ゼオライト膜の応用例としては、他に、食品の旨み成分濃縮や、天然ガスからの二酸化炭素の分離などがある。

三菱化学エンジニアリングは三菱化学のMSM-1膜を使用し、有機溶剤中の水分を選択的に除去する有機溶剤脱水回収システムを販売している。

ゼオライト浸透気化膜を使用し、従来のゼオライト膜で対応不可能だった酸性有機溶剤や、含水率の高い有機溶剤も安定的に処理することができるようになった。また、同社が開発したイオン交換器や蒸発缶を付加することにより、金属イオンなど水以外の不純物を除去することも可能。


2014/3/9  LNG輸入金額分析--- 原発停止の影響 

2013年の貿易統計(速報、通関ベース)によるLNGの輸入金額の推移は以下の通り で、原発停止前の2010年と比較すると、2013年のLNGの輸入金額は3兆6080億円増加している。前年比では1兆0545億円の増加である。

これについて、原発停止の影響がいくらかが問題となっている。

  2010 2011 2012 2013  

増加分

2010年比 2012年比
輸入金額(兆円) 3.4480 4.7730 6.0015 7.0560 3.6080 1.0545
数量(百万トン) 70.008 78.532 87.314 87.491 17.483 0.177
為替レート(円/ドル) 88.09 79.97 79.55 96.91 8.82 17.36
以下は上記から計算    
輸入価格(円/kg) 49.25 60.78 68.73 80.65 31.40 11.91
輸入価格(セント/kg) 55.91 76.00 86.40 83.22 27.31 -3.19
同上 原油価格スライド 55.91     68.77 12.86  
             
WTI原油価格平均($/bbl) 79.59 94.81 94.19 98.05    

上の数値をもとに分析すると以下の通りとなる。

  2010年比 2012年比
数量差 8611億円 121億円
ドル建て価格差
(原油価格スライドの場合)
(原油価格アップを超える分)
2兆3155億円
(1兆0903億円)
1兆2252億円
-2700億円
円レート差 4314億円 1兆3123億円
合計 3兆6080億円 1兆0545億円
うち原発停止の影響 2兆0863億円  

ドル建て価格差と円レート差は下記により計算。

3.11による原発停止前の2010年と比較すると、2013年のLNGの輸入金額は3兆6080億円増加している。

輸入数量は17.5百万トン増加しているが、この影響は8611億円で、ドル建ての価格アップ分が2兆3155億円、円安の影響が4314億円である。

ドル建て価格は55.91セント/kgから83.22セント/kgと、149% 高騰している。
日本のLNGの購入契約はほとんどが原油価格スライドとされる。この間、WTI原油価格は年平均で79.59ドル/バレルから98.05ドル/バレルに123%アップ であり、LNG価格はこれ以上にアップしている。これはスポット買いで足元を見られたものが主と思われる。

原油価格アップ以上にLNG価格がアップしている分(1兆2252億円)と数量増によるもの(8611億円)の合計2兆0863億円が原発停止による影響といえる。

2010年平均の円レートは88.09円/ドルと、かなり高い水準であった(2013年平均は96.91円/ドル) ため、2010年比でのレート差の影響は小さい。

2012年と2013年では1兆0545億円の増加となっているが、数量はほとんど変わらず、ドル価格は下がっており、増加のほとんどは円安によるものである。

 


2014/3/10 Ineos会長の欧州委員会委員長宛オープンレター 

IneosのJim Ratcliffe会長は3月7日付けでBarroso欧州委員会委員長宛に欧州化学産業についてのオープンレターを送った。
http://www.ineos.com/en/News/INEOS-Group/Letter-to-Mr-Barroso/

内容は以下の通りで、真意はカーボンタックス課税への牽制である。

欧州化学産業の将来について、深刻な懸念を伝えたい。悲しいことだが、欧州の化学産業の多くが10年以内に閉鎖の運命にある。
1980年代に欧州の繊維産業が壊滅したのをこの目で見た。化学も同じ運命(もう一つの恐竜)だ。

しかし、化学産業はもっと大きく、欧州経済にとりもっと重要だ。直接従事が100万人、他に間接従事が500万人の職がかかっている。

化学セクターの売上高は全世界で 4兆3千億ドルあり、ドイツのGDPより多く、自動車セクターの売上高2兆6千億ドルよりもかなり多い。

欧州では化学と自動車はそれぞれ1兆ドルでトップである。経済的には化学は欧州のjewels in the crownの一つである。

化学製品は生活のどこででも使われる。金属を作るのにも、繊維を作るのにも、陶器を作るのにも使われ、時計にも、消臭剤にも、iPhoneにも、車にも、衣服やNikeのシューズにも使われている。化学産業なしでは、欧州のこれらの産業はやっていけなくなる。

戦略的にも経済的にも、化学産業を捨てるわけにはいかない。

しかし、欧州は欧州の化学の運命について分かっていないようだ。
欧州繊維産業はアジアの低労賃に競争できず抹消された。Courtaulds社の100の繊維工場がすべて赤字を出し、閉鎖されていった。

化学製品はエネルギーコストと原料コストの競争力に依存している。技術が重要であり、欧州のこれまでの成功も技術によっているが、技術だけでは救えない。

欧州のエネルギー(ガス)は米国の3倍もする。電力料は50%高い。欧州には安い原料はなく、米国や中東の原料コストはまるで別世界だ。

米国のシェールガスは米国の競争力と自信を変えてしまった。シェールガスで710億ドルもの石油化学新増設が行われている。 

これに対し、欧州では閉鎖に次ぐ閉鎖である。

中東では、Abu Dhabi、Qatar、Saudiで建設が続き、イランでも600万トンのエチレンが新設される。

英国では2009年以降、22の化学プラントが閉鎖され、新設はゼロだ。

更に中国がある。英国の大学で技術を学ぶのは中国人だ。昨年息子が経済学部を卒業したが、先進工学の卒業生で優等は全て中国人で、英国人はいなかった。

中国は絶え間なくプラントを建設しており、これまで世界の余剰化学品を全て吸収したが、まもなく完全自給する。その後は流れを変え、輸出するだろう。2020年までに世界最大の経済になるのだ。

このなかで、EU本部や欧州各国は対案を持つのか? どんな防衛策を持つのか?

欧州では、環境税が導入される。シェールガスはない。原発は閉鎖される。製造業は追いやられる。独禁当局は輸入品がツナミのように押し寄せるのに気がつかず、企業がまともなリストラをしようとしているのを邪魔している。

INEOSの欧州の利益はこの3年で半分になった。米国での利益は3倍になった。
世界最大のBASFは、市場低迷、高いエネルギーコスト、高い労賃を理由に、これまでで初めて、欧州での投資を戦略的にカットすると発表した。

欧州にとってよくないことだ。我々は激しい恐怖に襲われている。

欧州の化学産業を守るため、緊急対策を取ってほしい。

これについて Ratcliffe 会長は、INEOSが工場を閉鎖するとか、Grangemouth石化コンビナートの再建を取り止めるとかを言っているのではないとし、EUに直ちに何かをしろといっているのでもないとも述べた。

「しかし、政治家は化学産業がなくなった場合のことを考える必要がある。遅いと思った時はもう遅い。世界で最も高率のGreen Tax を課すのは結構なことだが、その結果、欧州の製造業がなくなってしまうなら、よくないことだ」としている。

European Chemical Industry Council のHubert Mandery会長も最近、欧州の温暖化対策が、競争相手が安いエネルギーの恩恵を受けているのに対し、欧州産業に高コストを負わせると警告した。「エネルギーと温暖化対策は負担可能なものでないといけない。欧州の競争力を削ぐと産業空洞化(de-industrialisation)に直結する」と述べた。

ーーー

EUは2014年1月に 気候変動・エネルギー政策目標を発表した。

・温室効果ガスを2030年に90年比で40%削減する。
・再生可能エネルギーを2030年にエネルギー消費量の27%まで引き上げる。
・エネルギー効率向上に向け、政策を本年中に見直す。
・排出量取引制度を改正する。

現在の目標は2020年にトリプル20(排出量20%削減、再生可能エネルギー割合20%、エネルギー消費効率20%改善)で、これを更に強化する。

BASF、INEOS、Solvay、Totalなど欧州の主要化学企業14社のCEOは1月15日、Barroso欧州委員会委員長にオープンレターを出した。
http://www.solvay.com/en/binaries/Letter to Barroso January 2014-155252.pdf

オープンレターのタイトルは、エネルギー価格についての警告(Chemical Industry Warns Europe Over Energy Prices)で、「我々エネルギー多消費型製造業14社のCEOは欧州の将来(短期及び長期)に懸念を持つ」とし、EUのエネルギー・温暖化対策と、産業の競争力の復活・欧州への投資の再開という目標との調和を要請している。

温室効果ガス削減目標と産業の成長目標とを調和させ、厳密にモニターし、問題あれば再調整することを求め、カーボンタックスを製造業に課さないことなどを求めている。


2014/3/11 米国のウラン濃縮会社がChapter 11申請 

世界の四大ウラン濃縮企業の1社の米国のUSEC Inc.は3月5日連邦破産法11条(Chapter 11) の適用を裁判所に申請した。

USECは米国を中心とした原子力発電用濃縮ウランの供給等を行っており、新技術を採用した新型遠心分離機(American Centrifuge Plant)の開発を進めている。

この資金需要に対応するため、同社は2010年5月に、東芝及び米国の原子力発電所向け大型機器メーカーのBabcock & Wilcoxとの間で、2社が各1億ドルを出資して優先株を得る契約を締結、両社は2010年9月に第1回分として各3750万ドルを出資している。

その後の 東京電力福島第一原発の事故のあと、日本やドイツで多くの原発が運転を停止したことなどから燃料の濃縮ウランが供給過剰となって価格が3割以上下落したことなどが影響し、 同社は経営に行き詰まった。

このため、USECでは先ず、債権の60%を占める債権者との間で2013年12月に、2014年10月満期の転換社債を新たな債権と資本金に交換することで合意に達し、優先株を持つ東芝とBabcock & Wilcoxと同様の処理を行う交渉を行ってきた。

今回、リストラ案がまとまったことから、Chapter11を申請し、裁判所の許可を得てリストラを実行する。
同社では
3ヶ月〜4ヶ月で処理が完了し、Chapter 11 から離脱できるとみている。

子会社のUnited States Enrichment Corporation がDIP(Debtor In Possession:占有継続債務者)ファイナンスを行うため、外部からの支援は必要としない。

Chapter 11 申請で、日常業務や新型遠心分離機開発に影響を受けない。

リストラの概要は以下の通りで、減資増資を行い、既存株主には新株式を5%与え、債権者には旧債権の放棄の代わりに新債権と残り株式を与える。

転換社債は2014年10月に満期となるもので、交換する新債権は期間5年だが、条件付で更に5年延長できる。

  債権(百万ドル) 資本金
既存債権の放棄 新債権 減資 増資割当
債権者(債権の60%) 転換社債  530.0 200.00   79%
Toshiba 優先株  37.5 20.19   8%
Babcock & Wilcox 優先株  37.5 20.19   8%
既存株主       -100% 5%
total   605.0 240.38 -100% 100%

ーーー

USEC Inc.は世界の四大ウラン濃縮企業の1社。2011年のシェアは以下の通り。

USEC:
エネルギー省が所管していたウラン濃縮事業が1993年7月に公社化され、合衆国濃縮公社(US Enrichment Corporation:USEC)が発足した。
1994年7月に米国政府が民営化を承認し、1998年7月28日までに株式を公開し完全に民営化されたUSEC Inc.が発足した。
ケンタッキー州Paducahにガス拡散法プラントを持つ。

URENCO:
英国、オランダ、ドイツが1/3ずつ出資する国際共同企業体で、英国とオランダは政府、ドイツはRWEとE.ON が出資する。
英国の
Capenhurst、オランダのAlmelo、ドイツのGronauで遠心分離法による濃縮工場の操業を行っている。

ROSATOM:
ロシア政府の原子力関連企業で、Novouralsk、Zelenogorsk、Seversk、Angarskに工場を持つ。

EURODIF:
フランス、イタリア、スペイン、ベルギー、およびイランの合弁会社で、フランスのArevaが約60%を出資する。

各社の詳細は:http://www.jaea.go.jp/03/senryaku/topics/t13-1.pdf

ーーー

原子力産業の民営化政策に沿って原子力国営企業の民営化を進めてきた英国政府は2013年4月22日、保有するウラン濃縮会社 URENCOの持ち株(1/3)の全て、または一部を売却する方針を明らかにした。

ドイツ側の株主E.ONとRWEも、ドイツの原子力発電所の停止対策と再生可能エネルギーや天然ガス火力発電などの代替エネルギーへの投資のための資金確保のためにURENCOの株の売却の検討を始めている。

英国政府とドイツ政府がURENCO株の売却を望んでいるのに対し、オランダ政府は現状維持を望んでいると伝えられている。

英国政府は、英国の安全保障や核技術の不拡散が担保され、かつ売却額が妥当と判断された場合にのみ売却する方針。

URENCO創設時の取り決めにより、株式取得者は3カ国の承認を得る必要がある。

フランスの原子力関連企業Areva、カナダのウラン鉱会社Cameco Corp や東芝などが株式取得を目指しているとされている。

核拡散につながる機微情報管理の問題を抱えており、売却先企業については多くの制約と関係国間の新たな条約が必要となるため、今後、紆余曲折が予想される。


2014/3/12 1月の経常収支、過去最大の赤字 

財務省が3月10日に発表した1月の経常収支は1兆5890億円の赤字となった。
比較可能な1985年以降で最大の赤字で、4ヶ月連続赤字も初めて。

財務省は同日の財政制度等審議会の財政制度分科会で、貿易赤字の拡大を背景に経常収支が年間を通じて赤字に転落する可能性があり、財政赤字との「双子の赤字」に陥ることへの懸念を表明した。

貿易収支の赤字幅の急増が原因で、輸出は前月比減に対し、輸入は増加した。
輸入増については、消費税増税前の駆け込み需要によるとの見方が強い。

                                                         単位:億円
  2014/1 2013/12 増減
輸出 55,167 59,501 -4,334
輸入 78,620 69,974 8,646
差引 貿易収支 -23,454 -10,474 -12,980
サービス収支 -4,674 -3,977 -697
第一次所得収支 13,374 8,843 4,531
第二次所得収支 -1,136 -779 -357
差引 経常収支 -15,890 -6,386 -9,504

財務省は2014年1月分から国際収支の項目を見直し、従来の所得収支を「第一次所得収支」に、経常移転収支(対外経済援助など)を「第二次所得収支」に名称変更した。

参考  2014/1/28   2013年の貿易赤字、過去最大11兆円

      2014/2/11   2013暦年 国際収支状況

     2013/3/9 LNG輸入金額分析--- 原発停止の影響

日銀は3月11日の金融政策決定会合での景気判断で、輸出は、これまでの「持ち直し傾向にある」から「横ばい圏内の動き」に下方修正した。
一方、設備投資は「持ち直している」から「持ち直しが明確」に、生産は「緩やかに増加している」から「伸びがいく分高まっている」とそれぞれ上方修正した。

黒田東彦総裁は会見で、輸出が弱い理由について「製造業の海外生産シフトなど構造的要因があるものの、ASEANなど新興国経済がもたついている影響が大きい」とした。「米国の寒波、中国の旧正月(春節)、駆け込み需要で国内出荷を優先する動きなど一時的な要因も作用」と指摘。輸出が弱い主たる理由は一時的なものとした。

日銀のシナリオは、金融緩和→円安→輸出増→企業業績回復→賃上げ→消費増大であるが、現在は円安で輸入は増大するが輸出は増えておらず、今後の動きが注目される。

ーーー

内閣府は同日、2月17日発表の2013年第4四半期のGDP速報値の改定値を発表した。

速報値では季節調整の年率換算で実質1.0%、名目1.6%増としていたが、これ実質で0.7%増、名目で1.2%に下方修正した。

民間調査機関では、本年初めまで4Qの実質成長率を3%台半ばと見ており、円安でも輸出が伸びないことから、内閣府幹部は公表前に2%台半ばと見ていたというが、はるかに下回った。

  実質GDP
(年率)
名目GDP
(年率)
     年間換算 実質ベース増減 
個人消費 設備投資 住宅投資 公共投資 輸出 輸入
13/1Q 4.8 3.0 4.2 -3.5 7.2 13.3 17.8 4.5
2Q 3.9 4.1 2.6 4.4 3.6 30.3 12.3 7.2
3Q 1.1 0.7 0.9 0.8 13.9 31.9 -2.7 10.1
4Q 1.0 1.6 2.0 5.3 17.8 9.3 1.7 14.9
3/10改定 0.7 1.2 1.6 3.0 17.6 8.7 1.7 14.7

設備投資と個人消費の伸び率が大きく減少した。

注)季節調整は直近値までを対象に毎回かけ直すため、季節調整系列はその都度、名目、実質ともに遡及して改定される。
  2013/3Qまでの数値も今回改定されているが、ここでは前回発表時のままとした。



2014/3/13  近隣住民によるアスベスト訴訟、高裁も企業に賠償命令、国の責任は否定 
 

兵庫県尼崎市にあったクボタの工場周辺で生活し、アスベスト特有のがんで死亡した住民(男女 2名)の遺族が、国やクボタに賠償を求めた裁判で、大阪高裁は3月6日、 男性については、一審(神戸地裁:2012年8月7日)と同じくクボタの責任を認めて、約3190万円の支払いを命じたが、女性については却下した。

工場従業員ではなく、工場周辺の石綿健康被害を巡り、高裁レベルで企業の責任を認めたのは初めて。

国が被害防止の立法や規制をしなかったことについては、一審と同様、違法性はないと判断した。

付記

原告側と企業側が上告していたが、最高裁判所第3小法廷の大谷剛彦裁判長は、2015年2月17日付けで、いずれも退ける決定をした。
この結果、国の責任は認めず、企業の責任を認めて賠償を命じた判決が確定した。
アスベストを扱う工場の周辺住民の健康被害について、企業の責任を認めた判決が最高裁で確定するのは初めて。

ーーー

旧神崎工場は1954〜1995年に石綿を含むパイプなどを製造していた。

男性は1939〜75年に、同工場の約200メートル先の工場に勤務、自宅は約600メートル離れていた。

一審では「中皮腫発症は旧神崎工場から飛散した石綿粉じんに暴露したのが原因」として、約3190万円の賠償を認めた。

今回の高裁判決では、「当時20年にわたり工場から300メートルの範囲内で1年以上住んだ人は、中皮腫を発症する危険性が高い」 とし、一審と同じ賠償を認めた。
遅延損害金についても、一審判決は訴状送達の翌日からとしたが、今回は男性が死亡した日までさかのぼり、1800万円余りの支払い を命じた。

女性は1960年から1995年まで、1.1〜1.5キロ離れた家に住んでいた。

一審では石綿と発症との因果関係ありとは認めたが、以前の居住地域にも石綿関連工場があったことなどから、「原因が旧神崎工場と特定できない」として請求を退けた。

控訴審では原告側は「疫学調査の結果から、工場から1.5キロまでは危険だった」と主張したが、高裁は、「旧神崎工場から飛散した石綿で中皮腫が発症したとはいえない」として請求を退けた。


国の賠償責任については、一審では「1975年以前に周辺住民の発症リスクが高いとの医学的知見はなく、健康被害を防止する立法をしなかったことが違法とはいえない 」とした。

控訴審で原告側は、国際がん研究機関が1972年に石綿工場周辺の危険性を指摘していたとして、国がその時点で公害として規制すれば2人は死亡しなかったと主張したが、高裁は、「1975年以前に周辺住民の発症リスクが高いとの医学的知見はなかった」と指摘、国が被害防止の立法や規制をしなかったことに違法性はないと判断した。

原告側は判決を不服として上告する方針。

「クボタ」は「主張が認められず残念です。判決の内容をよく見て、上告を含めて今後の対応を検討します」とコメントしている。

2005年に工場周辺住民に中皮腫の発症が多発していたことが分かり、クボタは2006年に救済金制度を設け、2013年9月末時点で計255人に1人最高4600万円を支払った。ただ、工場の石綿との因果関係は認めていない。

原告らは救済対象だったが、裁判で責任を問いたいと提訴した。

ーーー

アスベスト被害での国の責任についての国側の主張は下記の通り。

最高裁の判例(筑豊じん肺訴訟最高裁判決等)上、規制権限の不行使が国家賠償法上違法となるのは、その権限を定めた法令の趣旨、目的や、その権限の性質等に照らし、当時の具体的事情の下において、その不行使が許容される限度を逸脱して著しく合理性を欠くと認められるときに限られる。

国は、戦前から、石綿についても粉じんの一つとしてその衛生上の有害性を認識し、その時々の医学的知見、工学的知見に応じ、使用者に一定の義務を課すなどの措置を講じ、適時、措置を強化してきたものであり、国の規制権限の不行使が許容される限度を逸脱して著しく合理性を欠くとは認められず、国家賠償法上の違法は認められない。

これまでの判決は以下の通りで、高裁レベルでは大阪アスベスト訴訟第一陣が原告敗訴、第二陣では国側が敗訴と分かれている。
今後、最高裁で判断が出る。

他に、屋外型訴訟では地裁レベルで判断が分かれている。

  一審 二審 現状
大阪アスベスト
訴訟(第1陣)
大阪地裁(2010/5) 賠償支払い

石綿対策を省令で義務づけなかったのは違法」
大阪高裁(2011/8) 一審判決取消

「国が1947年以降、健康被害の危険性を踏まえて行った法整備や行政指導は著しく合理性を欠いたとは認められない」
原告上告

2011/8/30 アスベスト被害訴訟、高裁で逆転判決 

大阪アスベスト
訴訟(第2陣)
大阪地裁(2012/3/28)

「1959年までには石綿肺の医学的知見が集積され、国は粉じんによる被害が深刻だと認識していた」
「旧じん肺法が制定された60年までに対策を取るべきだった」

60〜71年の期間外に勤務していた従業員や、勤務先から十分な賠償を受けたと認められる原告の請求は棄却

原料搬入の運送業者の元従業員1人の遺族の請求も認定

ーーー

55人に総額約1億8千万円賠償命令

従業員の健康被害について最終的責任を負うのは使用者→被害額に対する国の責任の割合 1/3

大阪高裁(2013/12/25)

1971年までに石綿粉じんを除去する排気装置の設置を罰則付きで義務づけなかったのは著しく合理性を欠き、違法

工場内の石綿粉じんの濃度規制については、1988年まで学会の勧告値に従わなかった点は「遅きに失した」

 

 


ーーー

総額3億4500万円賠償命令

 損害賠償額を増額
 喫煙による減額を否定
 被害額に対する国の責任の割合 1/2

原告・被告双方が上告
屋外型の横浜
建設アスベスト訴訟
横浜地裁(2012/5/25)
原告の請求を全て棄却

「1972年時点で、石綿粉じん曝露により肺がん及び中皮腫を発症するとの医学的知見が確立した」

それ以前はもちろん2006年に至るまでアスベスト建材の使用を全面禁止しなかったこと等について、「著しく合理性を欠く」と言うことまではできない。

  原告控訴
屋外型の東京
建設アスベスト訴訟
東京地裁(2012/12/5)

国に対する請求を一部認容
170人に総額10億6394万円の賠償命令
  双方が控訴
2012/12/10  建設労働者アスベスト訴訟、国に初の賠償命令


 



 
2014/3/14   エネルギー供給構造高度化法 処理期限

経済産業省は2010年7月5日、通称「エネルギー供給構造高度化法」に基づき、告示を出した。

日本の重質油分解装置の装備率を2013年度までに10%から13%程度まで引き上げることを目標に基準を定め、引き上げを義務化した。

重質油分解装置の装備率 改善率
10%未満の企業  45%以上
10%以上13%未満の企業  30%以上
13%以上の企業  15%以上
重質油分解装置の装備率=重質油分解装置の処理能力÷常圧蒸留装置(トッパー)の処理能力

重質油分解装置の新設には500億円以上かかるとされ、内需が縮小する中で新増設は非現実的で、実質的にはトッパー能力削減しかないとされた。

2010/7/7 エネルギー供給構造高度化法で重質油利用促す新基準、石油業界の再編圧力に

本ブログでは、以下の理由で「官製の設備カルテル」ではないかとして批判してきた。

どういう原料を使って、どういう製品をつくるかは、企業の判断であり、重質油分解能力の向上を各社に義務付けるのはおかしい。
「重質油分解能力の向上」を
「重質油分解装置の装備率」にすり替えており、単なる告示で、違法に設備処理を強制している。

各社ともこれに対応していることから、「官民の設備カルテル」とみられる。

2010/7/21 エネルギー供給構造高度化法は第二の産構法か?

処理期限は2014年3月末である。

後記のとおり、各社の対策がほぼまとまった。

東燃ゼネラル川崎が分解能力を増加した以外はすべてトッパー能力の削減による対応で、METIの狙いは達成されたといえる。

2つの特別ケースがある。(以下 日量能力)

1) コスモ石油

坂出の140千バレルを停止したが、これだけでは未達である。

同社は2014年3月11日、暫定的措置として、四日市の155千バレルのうち43千バレルの生産削減をMETIに届出し、受理された。
METIは3月末までの新たな設備削減は難しいと判断し、暫定措置を認めた模様。
 

2) 昭和シェル

昭和シェル扇町の120千バレルを停止したが、枠からは過剰停止となる。

同社は本年に入り、四日市の原油処理能力 210千バレルを260 千バレルに引き上げることを決め、METIに書類を提出した。
新たな設備投資ではなく、2001年から閉めていた一部バルブを開けて原油投入量を増やす。

精製した軽油、航空機用燃料、ガソリンなど石油製品は需要が旺盛なアジアを軸に海外販売する。

ーーー

各社の対応は以下の通り。

1)昭和シェル:扇町の120千バレルを停止したため、四日市増強後も枠達成

社名 製油所 トッパー
処理能力
(万bbl/d)
重質油分解装置 処理
分解能力
(万bbl/d)
現状
装備率
(%) a
改善
目標率
(%) b
改善後
装備率(%)
 a x b
昭和シェル石油グループ
  昭和四日市石油 四日市 20.5   29.0    

+5.0

西部石油 山口 12        
東亜石油 京浜 7   14.6      
昭和シェル 扇町 12         −12
合計   51.5 8.8 17.1 15 19.665  
処理   -12          
処理後   39.5 8.8        
増産計画   +5.0          
再計   44.5 8.8     19.775  

 

2)JXグループ:大阪製油所115千バレルをPetroChinaとのJVとした分を含め、580千バレル削減を達成。

社名 製油所 トッパー
処理能力
(万bbl/d)
重質油分解装置 処理 処理後
(千/D)
 
分解能力
(万bbl/d)
現状
装備率
(%) a
改善
目標率
(%) b
改善後
装備率(%)
 a x b
JXグループ
  ジャパンエナジー 水島 B 20.52   14.6       240.2*
鹿島石油 鹿島 21         -2.1 252.5*
日本海石油 富山 6         -6  
新日本石油精製 室蘭 18         -18  
仙台 14.5   29.7       145
根岸 34   11.8     -7 270
大阪 11.5         -11.5  
水島 A 25   18.4     -11 140
麻里布 12.7   17.3       127
大分 16.0   16.3     -2.4 136
合計 179.22 20.6 11.5 30 14.95 -58 1,310.7
処理  詳細 -58          
処理後 121.22 20.6     16.99  

                                        *コンデンセートスプリッター含む


                  
3)出光興産:徳山の120千バレルを停止し、達成

社名 製油所 トッパー
処理能力
(万bbl/d)
重質油分解装置 処理
分解能力
(万bbl/d)
現状
装備率
(%) a
改善
目標率
(%) b
改善後
装備率(%)
 a x b
出光興産 北海道 14   23.6      
千葉 22          
愛知 16   31.3      
徳山 12         -12
合計 64 8.3 13.0 15 14.95 -12
処理 -12          
処理後 52 8.3     15.96  

付記

出光興産は、2014年4月末で停止する予定だった徳山製油所の石油精製設備の操業を前倒しで3月31日に終了した。
3月14日未明の伊予灘を震源とする地震で常圧蒸留装置や関連装置をいったん停止した が、再稼動を断念した。

なお、これまでの能力は上記の通りとなっていたが、今回の発表では以下の通り見直したとしている。
  徳山 停止設備   85千bbl/d
  残存設備:北海道 160千bbl/d、千葉 220千bbl/d、愛知 175千bbl/d、合計 555千bbl/d 
 

4)コスモ石油:上記のとおり、坂出の140千バレル停止でも未達、暫定措置として四日市を43千バレル減産で対応。          

付記 同社資料では重質油分解 が29千バレルになっているため、補正 

社名 製油所 トッパー
処理能力
(万bbl/d)
重質油分解装置 処理 処理後
(千B/D)
分解能力
(万bbl/d)
現状
装備率
(%) a
改善
目標率
(%) b
改善後
装備率(%)
 a x b
コスモ石油 千葉 24           240
四日市 15.5        

-4.3

112
10   31.3     分解 +0.4 100
坂出 14         -14  
合計 63.5 2.5 3.9 45 5.66 -18.3 452
処理 詳細 -18.3 0.4          
処理後 45.2 2.9     6.42    


5)東燃ゼネラル:川崎と和歌山の小規模トッパー各1基を廃棄するとともに、川崎の残油水素化分解装置を増強し対応。

    付記  分解能力は増強後が34.5千バレルになる。表を修正した。(2014/7)

社名 製油所 トッパー
処理能力
(万bbl/d)
重質油分解装置 処理 処理後
(千B/D)
分解能力
(万bbl/d)
現状
装備率
(%) a
改善
目標率
(%) b
改善後
装備率(%)
 a x b
東燃ゼネラル石油 川崎 33.5   8.4    

-6.7
(分解能力増 +0.65)

268
15.6           156
和歌山 17         -3.8 132
合計 66.1 2.8 4.2 45 6.09 -10.5 556
処理 詳細 -10.5 +0.65          
処理後 55.6 3.45     6.20    

なお、東燃ゼネラル石油は2013年12月18日、三井物産が保有する三井石油の全株式(発行済株式の89.93%)を249億円で取得することについて合意した。他株主との間でも株式取得について協議を進めており、2014年3月末を目途に発行済株式の約95%を取得する意向。
井石油および極東石油工業合同会社は東燃ゼネラル石油の子会社となる。

2013/9/23     東燃ゼネラル、三井石油を買収へ

付記

極東石油は2014年3月24日、3月31日付で日量23千バーレル削減し、日量152千バーレルとする変更届を経済産業省に提出し、受理された。

製油所 トッパー
処理能力
(万bbl/d)
重質油分解装置
分解能力
(万bbl/d)
現状
装備率
(%) a
改善
目標率
(%) b
改善後
装備率(%)
 a x b
東燃ゼネラル 66.1 2.8 (4.2) (45) (6.09)
極東石油 千葉 17.5 3.4 (19.4) (15) (22.31)
合計 83.6 6.2 7.4 45 10.73
処理 (-10.5)
+( -2.3)
0.65      
処理後 70.8 6.85     9.68

 

6)富士石油:2010年に 第1常圧蒸留装置(52千バレル)を廃棄 しており、達成。
    付記 減圧残油熱分解装置(別名:ユリカ熱分解装置)は30千バレル/日

社名 製油所 トッパー
処理能力
(万bbl/d)
重質油分解装置 処理
分解能力
(万bbl/d)
現状
装備率
(%) a
改善
目標率
(%) b
改善後
装備率(%)
 a x b
富士石油 袖ヶ浦 19.2 2.4 12.5 30 16.25

-5.2

処理 -5.2          
処理後 14.3 3.0     21.4  

 

7)太陽石油:

太陽石油の残油流動接触分解設備 (日量 25千バレル)は告示発表時点では既に建設中で、同年11月に完成し、稼動した。

装備率20.8%は改善後の各社よりも高い。
METIの目標は、日本全体の
装備率を2013年度までに「現状の10%から13%程度まで引き上げる 」ことである。

社名 製油所 トッパー
処理能力
(万bbl/d)
重質油分解装置 処理
分解能力
(万bbl/d)
現状
装備率
(%) a
改善
目標率
(%) b
改善後
装備率(%)
 a x b
太陽石油 四国 11.8 2.5 20.8      


他に、大阪国際石油精製 115千B/D、南西石油 100千B/Dあり。


2014/3/15   Petronas と石油資源開発のカナダのシェールガス開発・LNG輸出計画にインドとブルネイが参加

石油資源開発(JAPEX)は2013年3月、マレーシアの国営石油会社 Petronasとの間で、Petronasが推進するカナダBritish Columbia 州でのシェールガス開発・生産プロジェクトおよび同州西海岸で検討中のLNGプロジェクトに参画することで基本合意したと発表した。

North Montney地域のAltares、Lily、Kahta鉱区でシェールガスを開発し、パイプラインでPrince Rupert 市のLelu島に運び、年1,200万トンのLNGプラントでLNGにして輸出する計画。

この計画は、カナダのProgress Energy Resources Corporationが行っていたものだが、Petronasは2011年6月にシェール鉱区の権益の50%を取得し、その後2012年6月に、PetronasはProgressを55億カナダドルで買収することで合意し 、年末に取得した。

JAPEXはシェールガス鉱区の10%権益を取得するとともに、同州西海岸におけるPacific Northwest LNG Projectの10%権益と同権益比率相当のLNG(120万トン/年)を引き取る権利を併せて取得した。

LNG計画は2014年末までに最終決定を行い、2018年末には最初の出荷を行う予定。
能力は年産600万トンの2系列、計1200万トンで、あと1系列追加のオプションがある。

2013/3/7   石油資源開発、カナダのシェールガス開発計画及びLNG計画に参画 

Petronasはその後も参加者を募った。

2013年12月、Petroleum Brunei がこの計画に3%の出資を行った。

インド最大の石油会社 Indian Oil Corporation Limited (IOCL) は2014年3月7日、Petronasとの間で、シェールガス開発とLNG計画に10%参加し、生産するLNG年間1,200万トンの10% 120万トンを20年間引き取る契約に調印した。

本計画の主体の構成推移は下記の通り。

Progress Energy Resources
 
   →
参加
Progress Energy Resources 50%
Petronas 50%
  →
買収


Petronas

 
 →
参加
Petronas 77%
Japex                 2013/3 10%
PetroBRUNEI  2013/12 3%
IOCL                 2014/3 10%

IOCLはインド東南部のチェンナイの北方のEnnoreに年500万トン能力の再ガス化ターミナルの建設を決めている。

付記 その後、Sinopecが15%の出資の交渉を行っていると報じられた。

ーーー

IOCL はOil India Limited (OIL) と共同で、米国のシェールガス計画にも参加している。

両社は2012年10月、米国のCarrizoが Niobrara shaleにもつ権益の30%を取得する契約に調印した。

 


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