ブログ 化学業界の話題 knakのデータベースから
目次
これは下記のブログを月ごとにまとめたものです。
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2016/4/16 商標「フランク三浦」が勝訴 スイスの高級時計「FRANCK
MULLER」のパロディー商品「フランク三浦」を商標登録した大阪市の会社が、この商標を無効とした特許庁の判断を取り消すよう求めた訴訟の判決が4月12日、知財高裁であった。
判決文:http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/835/085835_hanrei.pdf
「フランク三浦」の権利者は、株式会社ディンクスで、2012年3月に商標出願
を行い、2013年8月に商標登録がなされた。(商標5517482)
これに対し、FRANCK
MULLERが2015年4月に商標無効審判請求を行い、特許庁は2015年9月に無効審決を行った。
ディンクスは2015年10月、知財高裁に無効の取り消しを提訴したもの。
裁判でMULLER側は、「語感が極めて似ている」「信用や顧客吸引力への『ただ乗り』目的だ」などと主張した。
鶴岡裁判長は「イメージや外見が大きく違う。呼称は似ているが、外観で明確に区別できる」と指摘。「多くが100万円を超える高級腕時計と、4千〜6千円程度の低価格商品の『三浦』を混同するとは到底考えられない」として、「三浦」側の勝訴とする判決を言い渡した。
判決の結果、「フランク三浦」の商標は有効となった。
付記
最高裁第1小法廷は2017年3月2日付で、ミュラー側の上告を退ける決定をし、三浦側の勝訴が確定した。
両社の販売する時計は全くそっくりである。
しかし、今回の問題は「商標」であり、商品そのものよりも、「商標」が類似したり混同するかどうかで判断される。
商標 |
商標番号 |
分類 |
登録年 |
|
2701710 |
時計 |
1994 |
4978655 |
(浦の字の上の「 、」がない) |
5517482 |
時計 |
2013/8 |
特許庁の審決は次のとおりであった。
呼称は似ている。
パロディであっても「ただ乗り」であることは間違いない。
パロディとして認識し、模した商品を製造・販売しているから、不正の利益を得る目的、他人に損害を与える目的その他の不正の目的で使用するものと認められる。
商標4条1項19号
「全国的に知られている商標と同一又は極めて類似するもの」で、「不正の目的をもって使用をするもの」は無効となる。
しかし、知財高裁の判断は以下の通り。
呼称は似ているが、商品の出所に誤認混同が起こらない。
・前者は英語かカタカナ(標準文字)、後者はカタカナと漢字(手書き風の字体)で、外観で明確に区別できる。
・「三浦」で日本、日本人の観念が生じるが、前者では生じない。
前者が100万円程度、後者が4000円〜6000円の商品(「とことんチープにいくのがコンセプト」としている)で、指向性をまったく異にする。需要家が混同するとは考えられない。
商標を模倣する意図があっても、直ちに商標の類否判断に影響しない。
商標そのものが類似するとはいえないから、不正の目的かどうかに関係なく、商標4条1項19号に該当しない。
ーーー
今回は商標法の問題であるが、不正競争防止法違反(他人の商品と混同を生じさせる行為)で製造販売を差止められる可能性はある。
2016/4/18 韓国の東亜ST、米製薬会社と新薬技術のクロスライセンス
韓国の東亜ST(Dong-A ST) は4月11日、米国の製薬会社Tobira
Therapeutics に新薬Evogliptin の開発・販売の権利を供与すると発表した。
東亜は逆にTobiraからTobira のcenicriviroc (CVC) の韓国での開発・販売権を受ける。
東亜STはEvogliptin を開発、これを主成分とするType 2
の糖尿病の治療薬 Suganon を3月に韓国で発売している。
CVC はTobira の主力製品候補で、非アルコール性脂肪肝炎(NASH)とHIVの治療薬として開発中。
Tobiraでは現在、NASH と肝繊維症、HIVの患者を対象にグローバルでPhase IIb
研究を実施中。
両社は両剤の組み合わせで、先ず、非アルコール性脂肪肝炎(NASH)の治療薬を開発する。
両社はまた、CVC単剤でのNASH治療を行うグローバルなPhase III 計画を進める。
ある調査では、2020年には世界のNASH治療剤市場が17億ドルを超える。
第一のライセンス契約では、東亜はEvogliptin
を米国、カナダ、欧州、豪州で単剤又はCVCとの合剤ですべての治療薬として開発・販売する独占権をTobiraに供与し、対価として6,150万ドル以上を受け取る。
一時金として150万ドル、最初の医薬品承認で2,500万ドルを受け取り、販売のマイルストーンを達成すれば更に3,500万ドルを受け取る。
新しい用途での医薬品承認で追加の1,000万ドルを受け取る。
第二のライセンス契約で、東亜はTobiraからCVCを韓国内で単剤又はEvogliptin
との合剤ですべての治療薬として開発・販売する権利を取得し、対価として一時金50万ドル、用途ごとにマイルストーン達成で250万ドルを支払う。
両社は上記に加え、売上高に応じて所定のランニングロイヤリティを支払う。それぞれのテリトリーでの開発費は自己負担となる。
東亜はEvogliptinの原料もTobiraに輸出する計画で、東亜STでは、「今後、様々な治療剤を開発できる新薬成分を開発して、海外進出を増やしていきたい」と
している。
ーーー
東亜STは持株会社東亜Socio
Holdingsの医療用医薬品事業部門。
1932年設立の東亜製薬は2013年に持株会社体制に移行し、事業部門を東亜STと一般用医薬品を扱う東亜製薬に分割した。
Tobira Therapeutics
はHIV感染症治療の開発・販売に特化したバイオ製薬企業で、2006年にlife sciencesのベンチャーキャピタルDomain
Associate のEckard Weber氏により設立された。
武田薬品は2007年8月に同社に、武田薬品が創製したHIV感染症治療薬TAK-220およびTAK-
652について、全世界を対象とした独占的開発・製造・販売権を供与している。
2016/4/20 主要石油化学製品生産能力調査 (2015年12月末)
経済産業省は4月15日、2015年末時点の我が国の主要石油化学製品生産能力調査の結果を発表した。(単位:千トン)
|
2014年末 |
2015年末 |
増減 |
内訳 |
エチレン |
定修年 |
6,903 |
6,588 |
-315 |
住友化学千葉停止 |
-380 |
定修スキップ年 |
7,658 |
7,317 |
-341 |
-415 |
LDPE |
合計 |
2,310 |
2,218 |
-92 |
|
(うちLLDPE) |
1,046 |
954 |
-92 |
日本ポリエチレン鹿島停止 |
-92 |
HDPE |
1,143 |
1,142 |
-1 |
|
PP |
2,883 |
2,874 |
-9 |
|
EO |
921 |
921 |
0 |
|
SM |
2,667 |
2,255 |
-412 |
日本オキシラン停止 |
-412 |
PS |
816 |
816 |
0 |
|
VCM |
2,774 |
2,774 |
0 |
|
PVC |
2,009 |
1,929 |
-80 |
新第一塩ビ千葉停止 |
-80 |
アセトアルデヒド |
289 |
289 |
0 |
|
アクリロニトリル |
496 |
496 |
0 |
|
合成ゴム |
SBR |
608 |
611 |
3 |
|
BR |
296 |
296 |
0 |
|
IR |
72 |
74 |
2 |
|
MMAモノマー |
547 |
547 |
0 |
|
BTX |
ベンゼン |
6,034 |
5,666 |
-368 |
出光
-247、住友化学
-122 |
トルエン |
2,667 |
2,606 |
-61 |
住友化学
-61 |
キシレン |
8,507 |
8,487 |
-20 |
住友化学
-28 |
パラキシレン |
3,682 |
3,682 |
0 |
|
|
1.エチレン
住友化学千葉工場のエチレンが停止し、定修スキップ年で
7,317 千トンとなった。
(2015年のエチレン換算内需量は4,892千トン)
2013/2/4 住友化学、エチレン国内生産から撤退
なお、三菱ケミカルと旭化成の両社は、2016年4月1日
に「三菱化学旭化成エチレン」でエチレン1基体制による運営を開始
した。
旭化成の50万トンは2月中旬に停止した。三菱化学の50万トンは57万トンに増強する。
2014/2/27 旭化成と三菱ケミカル、水島地区エチレンセンター集約で合意
2.ポリエチレン
日本ポリエチレンが2015年3月に鹿島のLL 92千トンを停止した。
3.PP
4.EO
5.SM
住友化学は千葉のエチレン停止に合わせ、日本オキシランのハルコン法のPO/SM併産設備(SM:412千トン、PO:181千トン、PG:100千トン)を停止した。
2013/11/29 住友化学、エチレン停止に合わせ日本オキシランのSM、PO、PGを2015年に停止
6.PS
7.VCM
8.PVC
ふ
トクヤマは塩化ビニル事業の抜本的な収益構造の改革を行うため、新第一塩ビの千葉工場(80千トン)を停止した。
2014/11/5 トクヤマ、新第一塩ビ千葉工場を停止
なお、東亞合成はヴイテック解散時に川崎工場を引取り、カネカから製造を受託している。
9.アセトアルデヒド
10.アクリロニトリル
11.合成ゴム
12.MMAモノマー
13.BTX
|
2014年末 |
2015年末 |
増減 |
内訳 |
ベンゼン |
6,034 |
5,666 |
-368 |
出光
-247、住友化学 -122 |
トルエン |
2,667 |
2,606 |
-61 |
住友化学
-61 |
キシレン |
8,507 |
8,487 |
-20 |
住友化学
-28 |
住友化学はエチレン停止により、全停止。
14.パラキシレン
2016/4/21 Samsung とLG、九州の有機ELベンチャーに出資
九州大学の研究成果を活用したベンチャーで、「究極の有機EL発光材料」を開発する
Kyulux は4月6日、総額15億円の出資を得て本格稼働したと発表した。
Kyulux
は九州大学の安達千波矢主幹教授が内閣府の最先端研究開発支援プログラム(FIRST)で開発に成功した第三世代有機EL発光材料(TADF材料)の実用化を担うスタートアップ企業で、2015年3月9日に設立された。
増資にあわせ、実用化に伴う技術の特許に関して権利者である九州大学らと実施許諾等を締結、本技術を世界中で実用化できる体制を構築した。
(2015年4月に基本特許の実施許諾契約を締結しているが、今般、基本特許以外の特許についても、契約を締結した。)
2018年に予定している製品化に向けた活動の加速が期待される。
今回出資に応じたのは、次の各社:
Samsung Display
LG Display
ジャパンディスプレイ(ソニー、東芝、日立の中小型液晶ディスプレイ事業を統合)
JOLED (ソニーとパナソニックの有機ELディスプレイパネルの開発部門を統合)
他に
産学連携機構九州(九大TLO)
出資型新事業創出支援プログラム
ベンチャーキャピタル(西日本シティ銀行等が出資するQBキャピタル、ユーグレナSMBC日興リバネスキャピタル、SMBCベンチャーキャピタルなど)
九州大学は特許に関する契約の対価として株式を取得し、資本参加する。
韓国紙は、長年のライバルである両社が「共通の敵」である中国の台頭に危機感を覚えての「呉越同舟」だとしている。
金額は公表されていないが、両社がそれぞれ3億−4億円ほど出資したとみられる。
韓国が主導するテレビ用大型液晶パネル分野では中国メーカーの攻勢にさらされており、両社はこれに対し、有機ELパネルで対抗する考えだが、有機ELパネルは製造コストが高いのが難点となっている。
Kyuluxは、レアメタルのイリジウムを使わず、有機ELの製造コストを下げる技術を開発しており、Samsung
Display とLG Displayは今後、Kyuluxの技術を使用して有機ELの性能向上に取り組む。
ーーー
安達教授は2012年12月に第三世代の有機EL発光材料であるTADF(熱活性化遅延蛍光)材料の開発に成功した。
TADFは、第1世代の発光材料である蛍光材料と同等の低コスト(レアメタル不使用)と、第2世代のリン光材料と同等の発光効率を同時に達成する画期的な第3世代の発光材料で、100%の内部量子効率を達成した。
同じく九州大学で発明されたHyperfluorescence はTADFと第1世代の発光材料である蛍光材料を組み合わせることで、高効率発光、低コストに加え高純度な発光色を実現した。
TADFとHyperfluorescence
の組み合わせで、高効率、低コストのみならず、高純度の発色と高強度のEL発光を実現できる。その結果、日中屋外でも視認性の良い鮮やかな映像を楽しむことができ、モバイルディスプレイの性能向上だけでなく、屋外での新しい用途の開発につながる。
また、省エネ効果が上がり、携帯機器の長時間使用を可能にする。
有機ELの発光材料は、発光の原理的な違いによって蛍光材料とリン光材料に分けられる。
蛍光材料は、励起子が「一重項状態」というスピンの状態を経由する場合にだけ発光する。
リン光材料は、一重項状態に加えて、三重項状態というスピン状態からでも発光する。
レアメタルを使用する。
一重項状態と三重項状態は1:3 の割合で発生するため、蛍光材料の内部量子効率は最大で25%、リン光材料は同100%と考えられていた。
TADF(Thermally Activated Delayed
Fluorescence) は励起三重項状態から励起一重項状態への逆エネルギー移動を熱活性化によって生じさせ、蛍光発光に至る現象を示す。
三重項経由で発光が生じるために一般に寿命の長い発光が生じることから遅延蛍光と呼ばれる。
電子を光へほぼ100%の効率で変換でき、低コスト・高効率発光を可能とし、また、無限の分子設計の自由度を最大限生かせる夢の発光材料の創出と位置付けることができる。
また、蛍光分子からのEL発光効率を究極の100%まで向上させることに成功した。
一重項と三重項の励起エネルギー差(ΔEst)の極めて小さな分子設計によって三重項励起子を一重項励起状態にアップコンバージョンさせる。
有機ELデバイスの発光層の大部分を占めるホスト材料にTADFと蛍光材料を分散させ、励起エネルギーの生成をTADFが行い、そのエネルギーを蛍光材料に遷移させ、発光させることで、これまでの蛍光材料に比べ4倍の発光効率を実現した。
これまでは内部量子効率が高い材料は、イリジウムなどのレアメタルを利用するリン光材料に限られていたが、新材料ではレアメタルは利用しない。
高効率、低コスト、高純度発光色の全てを実願する究極の発光メカニズムである。
2016/4/22 丸紅も2016年3月期損益予想を大幅に引き下げ
丸紅は4月18日、2016年3月期の連結最終損益予想を大幅に引き下げた。
株主帰属当期損益を前回予想比1200億円減の600億円とする。
三井物産、三菱商事、住友商事が大幅な特別損失を計上するなか、同社は2月の第3四半期決算発表では、前期比70.4%増の1800億円とする予想を据え置くとしていた。
北海やメキシコ湾での原油開発にからみ減損損失を計上するが、電力や環境インフラなどの増益でカバーするとしていた。
損益予想の引き下げ理由は下記の通り。
事業分野 |
内容 |
当期損益
税引き後 |
資源 |
チリ銅事業 減損損失 |
-350億円 |
豪州鉄鉱石事業 減損損失 |
-200億円 |
米国等石油・ガス事業 減損損失 |
-150億円 |
市況悪化 |
-50億円 |
非資源 |
海外プラント案件 損失引当 |
-200億円 |
その他 一過性の要因 |
-150億円 |
穀物事業及び鉄鋼製品事業等での減益 |
-100億円 |
合計 |
-1,200億円 |
|
|
同社は2015年3月期にも1,200億円の特別損失を計上している。
|
減損損失 |
主な理由 |
損益 |
資源 |
北海の油ガス 5鉱区群 |
原油価格下落、開発コスト増加 |
-600億円 |
メキシコ湾沿岸(1鉱区) |
原油価格下落 |
-175億円 |
米シェールオイル |
-175億円 |
チリ銅事業の減損損失 |
銅価格下落 |
-100億円 |
豪州石炭事業の減損損失 |
石炭価格下落 |
-50億円 |
非資源 |
Gavilon社「のれん」の減損損失 |
計画未達による計画見直し |
-500億円 |
合計 |
-1,600億円 |
税効果 |
400億円 |
損益合計 |
-1,200億円 |
この時点では、豪州鉄鉱石事業については、高いコスト競争力があり、高品質の鉱石が期待できるため、減損不要と判断したが、今回は減損計上した。
2015/1/29
丸紅、原油価格下落等で1600億円の減損損失を計上
2015年3月期では丸紅が2013年に買収した米穀物大手Gavilonの「のれん」の半分の500億円を減損処理したが、Gavilonの損益は当初予定の半分にとどまっている。
今回の発表に当たり、国分社長は、「ガビロンの収益貢献は当初の計画を下回った。3年前に買収してから毎年、計画未達が続いており、このまま手をこまねいているわけにはいかない。現地に経営を任せてきたが、今は経営陣を入れ替え、我々の意思でリストラなどができる体制に変えた」と述べた。
買収に際し、中国商務部から厳しい条件を付けられた。
2社の合併は「中国の大豆輸入市場への支配力を強め、競争を排除あるいは抑制する」可能性があるとし、
(1)中国向け輸出・販売業務を分離独立すること
(2)例外を除き、丸紅はGavilonから大豆を買い付けてはならない
(3)市場情報を交換してはならない――といった義務を課した。
この結果、買収で目標とした中国市場でシナジー効果を出せない状況にある。
2013/4/26
中国、丸紅の米穀物大手Gavilon買収を条件付きで承認
ーーー
丸紅は世界でも有数の銅生産会社のAntofagasta と組み、チリで事業を行っている。
1997年にAntofagastaが60%の権益を保有するLos Pelambres鉱山の権益(現持分35千トン)を取得した。
2008年4月には、Antofagastaが間接的に100%の権益を保有する
Esperanza及び El Tesoroのプロジェクトの各30%の持分(前者が60千トン、後者が30千トン)を取得した。
Esperanza鉱山に隣接するTelégrafo鉱山も開発が予定されている。
更に2011年12月には、Antofagastaが100%の権益を保有するAntucoya鉱山プロジェクトに30%の参加を決めた。24千トンの銅地金を引き取る権利を持つ。
これにより、同社のチリで銅地金換算で150千トンの権益を持つこととなった。
ーーー
チリの銅事業では、2016年3月期に、三井物産が1,150億円、三菱商事が2,800億円の特別損失を計上している。
両社はAnglo American
Surに出資しているが、大幅な銅価格の下落を理由にしている。
2016/3/28
三井物産と三菱商事、減損損失計上で2016年3月期損益予想を大幅に引き下げ
2016/4/23 カナダ競争法による自動車部品カルテル摘発
ショーワは4月4日、カナダにおける自動車用部品(ピニオンアシストタイプ電動パワーステアリング製品)の価格カルテルで、オンタリオ州の裁判所で4月1日に13百万カナダドル(約11億円)の罰金支払を命じられたと発表した。
同社は2014年4月に米国でも価格カルテルで有罪を認め、罰金1990万ドルの支払いに同意した。
また、2014年10月には本件でショーワの元役員が起訴されている。
ショーワは1938年に昭和航空精機として設立、航空機部品を製造した。
戦後、1946年に昭和製作所と改称し、自動車部品の製造を開始した。
1993年に精機技研工業と合併し、ショーワに改称した。
ーーー
自動車部品カルテルを巡っては、米国ではこれまでに37社(日本企業32社、外国企業5社)が合計2,629百万ドルの罰金を支払っている。
また、日本人54名と外国人1名の55名が起訴され、うち30人(うち外国人1名)が禁固刑と罰金刑を受けている。
最終リスト
カナダでも摘発が続いており、今回で7社となる。
|
|
対象製品 |
裁判所 |
罰金(C$) |
古河電工 |
2013/4/4 |
自動車部品 |
オンタリオ州 |
500万 |
矢崎総業 |
2013/4/18 |
ワイヤーハーネス |
オンタリオ州 |
3,000万 |
ジェイテクト |
2013/7/12 |
ホイールハブユニットベアリング |
ケベック州 |
500万 |
日本精工 |
2014/1/31 |
自動車用軸受 |
ケベック州 |
450万 |
パナソニック |
2014/2/20 |
自動車部品 |
オンタリオ州 |
470万 |
デンソー |
2014/8/20 |
ボデーECU
(電装品や電源を制御するコンピュータ部品) |
オンタリオ州 |
245万 |
ショーワ |
2016/4/1 |
電動パワーステアリング製品 |
オンタリオ州 |
1,300万 |
合計 |
|
|
|
6,465万 |
現在の1C$は約85.5円のため、罰金合計は約55億円となる。
付記
三菱電機は2017年4月25日、特定顧客向けの一部自動車用部品(オルタネータ―及び点火コイル)の取引に関してカナダ競争法に違反したとして、同国オンタリオ州の裁判
所から1,340万カナダドルの罰金支払いを命じられた。
2016/4/23 日本企業の海外子会社による他の日本企業の海外子会社向けの価格カルテルで有罪
MT映像ディスプレイと海外子会社3社による価格カルテルに関する審決取消請求事件について、東京高裁は4月13日、原告の請求を棄却した。
海外の取引であり、日本の独禁法の対象外であるとする訴えに対し、取引自体は需要家の海外の子会社が行ったとしても、日本の親会社と海外子会社が一体不可分となって供給を受けたと評価できる場合は、日本の親会社を需要家と認め、日本の独禁法上の「不当な取引制限」に当たるとした。
公取委は2009年10月7日、外国事業者を含むテレビ用ブラウン管の製造販売業者らに排除措置命令及び課徴金納付命令を出したと発表した。
公取委が国際カルテルで海外企業に課徴金納付を命じたのは初めて。
各社は、日本のブラウン管テレビ製造販売業者(オリオン電機、三洋電機、シャープ、日本ビクター、船井電機)の現地製造子会社等が購入するテレビ用ブラウン管について、最低目標価格等を設定する旨を合意することにより、公共の利益に反して、特定ブラウン管の販売分野における競争を実質的に制限していた。
外国法人間の取引では日本の独禁法は適用できないが、公取委は今回、日本の電機大手の親会社がブラウン管の購入価格などを交渉していたため、日本の親会社と現地製造子会社は一体だとして、日本の市場にも悪影響を及ぼしたと認定、同法が適用できると判断した。
|
|
価格
決定 |
出荷 |
|
排除措置
命令 |
課徴金納付
命令 |
|
MT映像ディスプレイ |
|
◎ |
|
大阪府 |
○ |
− |
|
MT
Picture Display (Malaysia) Sdn. Bhd. |
子会社 |
|
○ |
Malaysia |
− |
650,830千円 |
清算手続き中 |
PT.
MT Picture Display Indonesia |
子会社 |
|
○ |
Indonesia |
− |
580,270 |
清算手続き中 |
MT
Picture Display (Thailand) |
子会社 |
|
○ |
Thailand |
− |
566,140 |
清算手続き中 |
Samsung SDI |
|
◎ |
|
Korea |
○ |
− |
|
Samsung
SDI (Malaysia) BERHAD |
子会社 |
|
○ |
Malaysia |
− |
1,373,620 |
|
LG Philips Displays Korea |
|
◎ |
○ |
Korea |
− |
151,380 |
事業譲渡 |
P.T.
LP Displays Indonesia |
|
|
○ |
Indonesia |
− |
*(10億円以上)
→ 932,680 |
|
Chunghwa Picture Tubes |
|
◎ |
|
Taiwan |
ー |
− |
自主申告 |
Chunghwa
Picture Tubes (Malaysia) Sdn Bhd. |
子会社 |
|
○ |
Malaysia |
ー |
− |
|
Thai CRT |
|
◎ |
○ |
Thailand |
− |
− |
解散消滅 |
合計 |
|
|
|
|
2社 |
4,254,920 |
|
2015年5月22日の審決で、MT映像ディスプレイ及びSamsung
SDI について、排除措置命令を取り消した。
排除措置命令時において既に独禁法違反の行為がなくなっていると認められた。
2009/10/9 公取委、外国事業者に排除措置命令と課徴金納付命令
MT映像ディスプレイは旧松下東芝映像ディスプレイ(松下/東芝JV)で、同社と海外子会社3社は、以下の理由で審決の取り消しを求めた。
ブラウン管を使用したのは日本のメーカーの海外子会社であり、日本のブラウン管テレビ製造販売業者ではない。
|
日本(親会社) |
海外 |
出荷 |
購入 |
ブラウン管供給 |
MT映像ディスプレイ
|
MT Malaysia
MT Indonesia
MT Thai |
|
ブラウン管購入
|
オリオン電機
三洋電機
シャープ
日本ビクター
船井電機 |
|
各社の
海外子会社 |
ブラウン管の需要者は我が国には所在せず、「一定の取引分野」における競争を実質的に制限するものとは認められない。
今回の判決理由は下記の通り。
本件ブラウン管の取引条件を決定していた我が国ブラウン管テレビ製造販売業者とその現地製造子会社等とは、両者が一体不可分となって本件ブラウン管の供給を受けたものと合理的に評価することができ、我が国ブラウン管テレビ製造販売業者が需要者に該当するとした認定は、実質的証拠に基づくものということができる。
(1) 独占禁止法3条後段(不当な取引制限)
独占禁止法が、我が国における自由競争経済秩序の維持をその直接の目的としていることに照らせば、
日本国外において、他の事業者と共同して「不当な取引制限」に及んだ場合であっても、
一定の取引分野における我が国に所在する需要者をめぐって行われるものであるときには、適用される。
(2) 独占禁止法2条4項1号にいう「需要者」について
需要者が供給を受けるに当たり、
意思決定者と、供給を受けこれを使用収益する者とが異なる場合であっても、
両者が一体不可分となって供給を受けたと評価できる場合は、意思決定者についても需要者として認めることができる。
2016/4/25 Usiminas、300億円増資を承認
ブラジル鉄鋼大手のUsiminas は4月18日、臨時株主総会を開き、10億レアル(約300
億円)の増資を承認した。
1株 5レアルの普通株を2億株発行、株数は
505百万株から705百万株となる。他に約20億円の優先株を発行する。
既存の株主に新株優先引受権があり、4月22日から5月23日まで申し込みを受け付ける。
新日鉄住金は他の株主が引き受けない場合、増資額の全額にあたる10億レアルを引き受ける意向だが、共同出資するTechint
Groupの鉄鋼大手Ternium がどの程度の出資に応じるかが焦点となる。
Techint Groupは、アルゼンチン、イタリアを拠点とする財閥。鉄鋼、鋼管、石油、ガス、建設、産業機械、ヘルスケアなどの事業を手掛ける。
イタリアの市民権をもつ
Rocca 一族が、オランダの財団を通じて各グループ企業を支配している。
傘下に鉄鋼メーカーTernium、鋼管メーカーTenarisを持つ。
付記 協定株主は比率通りの引き受けを行った。
2017年3月時点の比率は次の通り。普通株 705万株
|
議決権 |
協定内 |
日本グループ合計 |
21.1 |
46.12 |
Ternium
Group |
19.8 |
43.31 |
Usiminas従業員年金基金 |
4.8 |
10.57 |
協定株主計 |
45.7 |
100.00 |
ーーー
ブラジルの経済低迷を受け、Usiminasの2015年12月期の連結純損失は36億8500万レアル(約1200億円)で運転資金が不足しており、3月中旬が期限の借入金を返済すれば資金ショートする状況であった。
金融機関は借入金の返済猶予の条件として、主要株主の追加出資を求めた。
しかし、Usiminasの協定株主で、ともに3割弱の議決権を保有する新日鉄住金などの日本グループとTerniumは、再建方法を巡って対立してきた。
ブラジルでは、上場会社の議決権の過半を有する株主が、会社の意思決定、株式譲渡等につき協定を締結することができる。
Usiminasの協定株主は、議決権の過半数を確保した上で、株主総会、経営協議会(取締役会に相当)において議決権を統一的に行使することを取り決めている。
現状は下記の通りで、詳細は後記の通り。
|
議決権 |
協定内 |
日本グループ合計 |
29.45 |
46.12 |
Ternium Group |
27.66 |
43.31 |
Usiminas従業員年金基金 |
6.75 |
10.57 |
協定株主計 |
63.86 |
100.00 |
新日鉄住金とTerniumは1年以上にわたり、Usiminasの経営をめぐって意見が対立しており、2月に行われた前回の取締役会も増資について合意せずに終わっている。
新日鉄住金は大幅増資を主張したのに対し、Terniumは、限定的な増資
は受け入れるが、Usiminasの鉄鉱山会社 Mineração
Usiminas S.A.(MUSA)
のキャッシュの一部を流動性改善に充てるよう求めた。
MUSAについては 2010/10/4 住友商事、ウジミナスの鉄鉱山子会社に出資
Usiminasが3月11日に開いた経営審議会(取締役会に相当)で、新日鉄住金が提案した既存株主への新株2億株の割り当てによる総額10億レアルの増資が承認され、別の増資案を提示するよう求めたTerniumの要請を拒否した。
(4月18日の株主総会で、この増資案を決議した。)
両社は経営の重要事項を事前協議し、経営審議会や株主総会で協調する協定を結んでおり、採決での決着は異例
。
経営審議会での増資決議を受け、Usiminasは主要債権者との間で
4カ月間の債務支払い猶予で合意した。
新日鉄住金は翌12日、Usiminasが実施する増資
について、最大10億レアル全額を引き受けると発表した。
他の株主が株式を引き受けない場合、代わりに引き取る
もの。
仮に
全株を取得すれば、日本グループのUsiminasへの出資比率は現在の29.45%から5割に高まることになる。
株主協定では、協定期間中、比率は一定だが、増資の場合は反映させるとなっている。
また、 各株主はこれ以外に株を買うことは可能だが、その分については協定株主として決めた結論に従って投票する。
新日鉄住金は協定外で約 1.33%を保有している。
Ternium グループは2014年10月、ブラジル銀行年金基金から株式の10.2%を買い取り、持ち株比率を27.66%から37.86%に増やした。
株主間協定では、新たに購入した株を協定に盛り込むには、両社の合意が必要だが、新日鉄住金側は応じておらず、協定上の比率は変わらない。
2014/10/7 ブラジル鉄鋼会社
Usiminasを巡る争い
新日鉄住金が全株を引き受けた場合の議決権は次のとおり。(株数は比率からの逆算による概数)
実際には、交渉による株主協定の改定が必要となる。
Case 1 新日鉄住金が増資全株を引き受け
Case 2 上記に合わせ、協定枠外の持株も協定内に組み入れ
ーーー
ブラジルでは、上場会社の議決権の過半を有する株主が、会社の意思決定、株式譲渡等につき協定を締結することができる。
Usiminasの協定株主は、議決権の過半数を確保した上で、株主総会、経営協議会(取締役会に相当)において議決権を統一的に行使することを取り決めている。
Usiminasの株主協定の推移は下記の通り。
当初、日本グループとV/Cグループ及び従業員年金基金が株主協定を結んでいた。
2011年2月18日に、従業員年金基金を含めた協定は2016年11月に終了し、以降は新比率とする
ことに決めた。
|
2006/11〜2016/11 |
2016/11〜2031/11 |
議決権 |
協定内 |
議決権 |
協定内 |
|
新日鉄住金・日本Usiminas |
26.1 |
|
26.1 |
|
三菱商事・メタルワン |
1.6 |
|
1.6 |
|
日本グループ合計 |
27.8 |
43.5 |
27.8 |
51.7 |
|
Votorantim |
13.0 |
|
13.0 |
|
Camargo Correa Group
|
13.0 |
|
13.0 |
|
V/Cグループ合計 |
26.0 |
40.7 |
26.0 |
48.3 |
従業員年金基金 |
10.1 |
15.9 |
- |
- |
協定株主計 |
63.9 |
100.0 |
53.7 |
100.0 |
直後にブラジル鉄鋼大手のCSNがUsiminas株買取を提案した。
2011/9/24 ブラジル鉄鋼大手CSN、Usiminas株買い取りを提案
CSNはその後の買い増しで議決権株の16%とした。
ブラジル司法省はCSNに対して、Usiminas株の買い増しを禁止する通達を出した。
一部製品での両社のシェアは7割を超えており、寡占状態を防ぐための措置との見方が多い。
これに対し、新日鉄は2011年11月28日、協定株購入に関する契約および同社に関する新たな株主間協定を締結したと発表した。
1) |
新日鉄が、Usiminasの従業員年金基金から、全議決権の約1.69%相当を購入。 |
2) |
中南米を拠点とする大手鉄鋼会社Ternium Groupが、VotorantimとCamargo
Correa及び従業員年金基金から全議決権の約27.66%相当を22億ドルで購入。 |
3) |
新日鉄グループ(新日鉄、日本Usiminas、三菱商事グループ)、テルニウム・グループ、従業員年金基金の間で、新たな株主間協定を締結。 |
|
2006/11〜 |
株売買 |
2012/1/16施行 |
議決権 |
協定内 |
議決権 |
協定内 |
|
新日鉄住金・日本Usiminas |
26.1 |
|
|
27.83 |
|
三菱商事・メタルワン |
1.6 |
|
1.62 |
|
日本グループ合計 |
27.8 |
43.5 |
+1.69 |
29.45 |
46.12 |
|
Votorantim |
13.0 |
|
|
- |
|
Camargo Correa Group
|
13.0 |
|
|
- |
|
V/Cグループ合計 |
26.0 |
40.7 |
-26.0 |
0 |
0 |
Ternium Group |
- |
- |
+26.00 +1.66 |
27.66 |
43.31 |
Usiminas従業員年金基金 |
10.1 |
15.9 |
-1.69 -1.66 |
6.75 |
10.57 |
協定株主計 |
63.9 |
100.0 |
|
63.86 |
100.00 |
新体制下で、新日鉄住金とTerniumの間には経営方針を巡る対立が起こった。
2012年1月に社長に就いたTernium出身のEguren氏は、投資と経費の削減、生産性向上、資産売却、人員整理など経営再建に努め、業績は目立って改善されてきた。
新日鉄住金は自動車用鋼板など高級品で収益拡大を目指しているのに対し、Terniumはコスト圧縮による短期収益改善と南米での自社販売網を活用した汎用品の販売拡大を
狙っているとみられる。
Usiminasの経営審議会は2014年9月26日、Terniumグループ出身のJulián
Eguren社長と子会社社長、製造担当取締役の3人の解任を発表した。
Terniumは、事前協議がなく、株主間協定に違反するとしたが、日本側が押し切った。
経営審議会で賛否は5対5だったが、議長の判断で解任が決まった。
これは法廷闘争となったが、ブラジルの裁判所は2015年5月5日、解任を支持する判断を下した。
2014/10/7 ブラジル鉄鋼会社
ウジミナスを巡る争い
今回の資金不足対策についても、両者の方針が異なり、混迷した。
ーーー
増資に関しては、2011年にUsiminasの買収を提案したブラジル鉄鋼大手のCSNも反対を表明した。
報道では、CSN
は現在、Usiminasの普通株を14.1 %、議決権のない優先株を 20.7% 保有している。
同社はまず、Ujiminasに鉄鉱山子会社のMUSAにある現金9億レアルを使うよう命じること地方裁判所に求めたが、これは却下された。
更に、増資は少数株主の権利を希薄化し、有害であるとして、増資案を無効とするよう訴えた。1株5レアルは安すぎるとしている。
同社の株価推移は下記の通り。
ーーー
今回の増資が実施されても、当面の借入金返済資金ができるに過ぎない。
大株主同士で経営に対する意見が異なるなかでの同社の再建は大変である。
2016/4/26 タイ石炭大手のBanpu、米国のシェール開発に投資
タイ最大の石炭メーカーのBanpu Pcl
は4月20日、米国ペンシルバニア州のシェールガス開発の Chaffee Corners
Joint Exploration Agreement の29.4%の権益を112百万ドルで取得したと発表した。
Marcellus Shale belt の北東部分にあり、Repsolが買収した Talisman Energy Inc
が65.4%の権益をもって運営し、残り5.2%の権益をPassive Investorが持つこととなる。
Banpuの持分ベースで、確認埋蔵量はドライ天然ガス 156Bcf
で、2016年の目標生産量を日量21百万cf としている。
天然ガスは全量米国市場(主に発電用)に販売する。
これはBanpuにとって最初の米国の天然ガス事業で、これまでアジア市場が中心であったのを是正する戦略の一つである。
Banpuでは、PTT
Exploration and Productionの前CEOを取締役に起用し、上流のガス戦略についてアドバイスを受ける。
ーーー
Banpuは1983年にタイで設立されたタイ最大の石炭採掘会社だが、国内の炭鉱が枯渇したため、採掘は国外が中心である。
2001年以降、アジア太平洋地域で石炭をベースとするエネルギー企業となると決めた。
石炭採掘と石炭火力発電が中心だが、最近は太陽光発電にも乗り出し、日本にも進出している。
現在の石炭採掘事業の概要は下記の通り。
モンゴリアでは2011年にHunnu Coal Limited を買収した。
中国には2003年に子会社 Banpu Investment (China)
(BIC) を設立し進出した。現在、Gaohe 鉱山を運営するShanxi Gaohe Energy に45%出資、またHebi鉱山を運営するHebi
Zhong Tai Mining に40%出資している。
インドネシアには1991年に進出、同社の主力基地となっている。子会社のIndo
Tambangraya Megah Tbk がカリマンタンで6つの炭鉱を運営している。
豪州では、2010年に9つの炭鉱を運営するCentennial Coal
Companyを買収した。
発電事業の概要は次のとおり。
タイでは、Map Ta Phut コンビナートで1,434MW
の石炭火力発電所を運営するBLCP Power の50%の権益を有する。
ラオスでは現地の電力会社や国営企業と合弁でHongsa Power Plant を完成させた。
中国では子会社BICを通じ2006年に火力発電に進出した。
現在、河北省に2つ、山東省に1つの発電所を持つ。
更に、山西省でShanxi Lu Guang Power Project を進めている。Banpuが30%出資し、山西潞安礦業と格盟国際能源が35%ずつ出資する。
Banpuは2020年までに発電能力を3割増の240万キロワットに引き上げ、そのうちの2割を太陽光など再生可能エネルギーとする方針である。
付記
Banpuは5月13日、中国山東省の太陽光発電施設4カ所、出力計78.5メガワットを9300万ドルで取得すると発表した。。
日本でも太陽光発電事業に参入し、現在7箇所で事業を行っている。
2020年までに合計20万キロワット規模の発電能力を目指す。
むかわ:北海道鵡川町
ナリ会津:会津若松市の会津カントリーゴルフクラブのコース跡などに設置
Olympia:群馬県のパチンコ機製造のオリンピア伊勢崎三和工場
付記 日経(2016/4/30)によると岩手県一関市に25MWを建設する。
同社は2015年7月に子会社 Banpu Power 設立を発表した。
Power Business の日本関連の構造は下記の通り。
2016/4/27 アルゼンチン債務問題、ほぼ解決
アルゼンチンとヘッジファンドとの15年に及ぶ争いが終結した。
アルゼンチン政府は2月28日夜、2002年のアルゼンチン国債のデフォルトに対する2004年12月の債務再編案(民間保有の国債の75%をカット)を拒否していたElliott
Management など複数のファンド("holdout"
債権者)に対し、世界各国の訴訟で和解するため46億5300万ドルを支払うことで合意した。これは、ヘッジファンドが主張していた債務全額の約75%に相当する。
2015年12月に就任したマクリ大統領は経済再建のために外資の流入が不可欠だと考えており、債務問題の解決を重要視した。
2016年1月からニューヨークで交渉を再開し、すでに複数の欧米のファンドとは合意に達していた。
アルゼンチンの経済財務相は「15年間で初めて、アルゼンチンはデフォルトからの脱却を開始した」と述べた。
2016/3/4
アルゼンチンとヘッジファンドとの15年に及ぶ争いが終結
その後、残る債権者の大半とも和解した。
アルゼンチンの上院は3月31日、米投資ファンドとの返済和解案を承認した。
アルゼンチンと"holdout"
債権者の合意を受け、マンハッタン連邦地裁のThomas
Griesa判事は3月2日、2012年に出したアルゼンチンの債務支払いの一時停止命令を解除する判決を下した。
2012年の判決は下記の通りで、これによりアルゼンチン政府は新債券保有者に対し利息を払えなくなり、デフォルトとなり、国際金融市場から締め出された。
アルゼンチンが債務再編に応じた新債券保有者に支払いを続けるのであれば、"holdout"債権者の保有債券についても、全額支払わねばならない。
もし"holdout"債権者に支払わない場合は、米国の金融機関はアルゼンチン政府から新債権保有者への支払い手続きをしてはならない。
(複数の債権者に対し返済の優先劣後を設けないとするPari Passu 条項:債権者平等条項を適用)
米連邦高裁は4月13日、地裁の判断を支持した。
これを受け、アルゼンチン政府は4月19日、165億ドルの債券を米国市場で発行したと発表した。
2001年にデフォルトに陥って以来、約15年ぶりに国際金融市場に復帰した。
アルゼンチン政府は4月22日、20のヘッジファンドなどに対して62億ドルを返済し、2月に合意した返済案を実行した。
遅れて和解した他の債権者に支払うため、Bank of New York に31億ドルを寄託した。
なお、"holdout"
債権者との和解条件が2004年12月の債務再編案に応じた債権者を優遇するとして訴訟が行われており、全面解決ではない。
2016/4/28 三菱商事、インドネシアのニッケル計画から撤退
三菱商事は4月25日、インドネシアのWeda Bay Nickel
鉱山の開発権益を事業パートナーであるフランスのEramet S.A. に売却すると正式発表した。
保有していた30%分の権益を月内にすべて手放す。売却額は約100億円の見込み。
三菱商事は2016年3月期決算で4300億円の減損損失を計上するが、本件はすでに減損処理を済ませており、決算予想の見直しはない。
三菱商事とともに3.4%の出資をしていた太平洋金属も同様に売却した。
操業に向けて準備してきたが、ニッケルの国際価格が2011年と比べて約3分の1
に下落し、今後、事業を継続しても採算がとれないと判断した。
三菱商事では、「事業化要件が満たされなかった為、今般株主間協定書に基づき売却する」としている。
この計画は、世界有数の金属原料・高性能合金生産者のEramet
がインドネシアのハルマヘラ島のWeda Bay
の世界有数の大規模ニッケル鉱床を開発するもので、同鉱床の資源量はニッケル純分ベースで630万トンと見込まれ、Erametの開発したニッケル湿式精錬法を採用し、年産6.5万トンのニッケルを生産するもの。
三菱商事は2009年2月に同プロジェクトに33.4%
参画し、これまで事業化調査を進めてきた。2011年12月に太平洋金属が三菱商事から持分3.4%の譲渡を受け、参加した。
太平洋金属は、旧称 日曹製鋼
で、フェロニッケルとフェロニッケルスラグ加工品を生産している。低品位ニッケル鉱石からの製錬技術を生かした、ごみ焼却灰などの再資源化システムの事業も展開している。
この計画の運営形態は下記の通り。
10%出資するPT
Antamはインドネシア政府が株式65%所有する国営の資源大手で、世界最大級のニッケル生産企業。
ーーー
住友商事は2016年1月13日、マダガスカルで進めてきたニッケル採掘・精錬の「Ambatovy
Nickel
Project」に関してニッケル価格の下落を理由に約770億円の減損損失を計上すると発表した。
足元のニッケル価格の下落を踏まえ、中長期価格の見通しを見直した結果、プロジェクト会社が保有する固定資産の簿価を全額回収することは困難と判断したとしている。
2016/1/19
住友商事、マダガスカルのAmbatovy ニッケルプロジェクトで約770億円の減損損失を計上
住友金属鉱山は2016年3月29日、ニューカレドニアのGoro
Nickel Cobalt Project を進めているVale Nouvelle Calédonie S.A.Sの全株式をVale
Canada Limitedに譲渡する売買契約を締結した。譲渡金額は約80億円。
共同で出資する三井物産も同様に売却した。
住友金属鉱山と三井物産は、SUMIC Nickel
Netherlands(住友 52.38%、三井 47.62%)を設立して2005年よりGoro Nickel Cobalt
Projectに参加しているが、2015年12月末までに商業生産目標を達成できない場合には、株式をVale
Canadaに売却することとしており、商業生産条件を達成することができなかったため、撤退する。
2016/4/6 住友金属鉱山と三井物産、ニューカレドニアのニッケル事業から撤退
2016/4/29 トヨタ自動車、バイオ合成ゴムを原料としたエンジン・駆動系ホースを採用
トヨタ自動車は4月21日、高い耐油性、耐熱性が必要な特殊ゴム製部品であるエンジン・駆動系ホースに、バイオ合成ゴム(バイオヒドリンゴム)を世界で初めて採用すると発表した。
国内生産車種のバキュームセンシングホース(エンジン吸気系部位に使用)に2016年5月から順次適用し、年内には国内生産の全車種に採用する予定。
今後、ブレーキ系ホース、燃料系ホースなどの特殊ゴム部品にも採用拡大を目指す。
このバキュームセンシングホースは、トヨタと日本ゼオンおよび住友理工が共同開発した。
住友理工は旧称
東海護謨工業で、自動車用防振ゴム・ホース部門の国内トップメーカー。
1937年に住友グループに入った。2014年に現社名に改称した。
ヒドリンゴム(エピクロルヒドリンゴム)は耐油性、耐熱性、耐熱老化性、耐オゾン性、ガス透過性に優れ、ホースなどに使われる。
エピクロルヒドリンの単独重合体(略称 CO)と、エピクロルヒドリンとエチレンオキサイドの共重合体(略称 ECO)がある。
バイオヒドリンゴムは、ヒドリンゴムの原料の一部であるエピクロルヒドリンを植物由来のバイオ原料に替えて製造したもので、ライフサイクルでCO2排出量を約20%抑制可能とする。
今回、植物由来原料を分子レベルで石油由来原料と結合させ合成ゴムへ変換する技術など、様々な複合化技術を駆使することにより、バキュームセンシングホースに求められる耐油性、耐熱性、耐久性は同等レベルを確保した。
さらに部品製造においても、従来の石油系ヒドリンゴムを用いた場合と同等の品質と量産性を確保し、市販車への採用を可能としている。
ーーー
Solvayは2007年4月、同社技術での菜種油からのバイオディーゼル生産時の副生グリセリンを原料とするエピクロルヒドリンの生産をフランスのTavauxで開始したと発表した。
当初の能力は年10千トンで、需要に応じて簡単に拡張できる。
グリセリンはバイオディーゼル生産時の副産物で、1トンのバイオディーゼルに対して100kg のグリセリンが副生する。
Solvay のEpicerol
プロセスは、グリセリンと塩酸から中間体の
ジクロロプロパノールを直接合成し、次の脱塩化水素工程でエピクルヒドリンを生成する。
塩素と水が少なくて済み、廃液も少ないのが特徴で、20以上の特許を取った。
2007/4/13 Solvay、バイオディーゼル副生グリセリンを原料とするエピクロの生産開始
Solvayは2007年9月、タイのMap
Ta Phut にEpicerol®法による年産10万トンのエピクロルヒドリン工場を建設すると発表した。
生産開始後、Solvayはこの事業をPVCのJVのVinythai
に移管した。
2007/9/11 Solvay、タイでエピクロルヒドリン生産
Dow
もバイオディーゼル副生のグリセリンからエピクロ生産の独自の技術を持っており、Dow
Epoxyが上海ケミカルパークで初めて工業化をした。
年産10万トンの液体エポキシ樹脂とともに、グリセリンからの年産 15万トンのエピクロルヒドリンのプラントを建設した。
ーーー
日本ゼオンの米国子会社Zeon Chemicals
は2013年2月、ミシシッピー州の Hattiesburg 工場で椰子油や植物性油から作ったエピクロルヒドリンを使ってHydrinゴムを開発していると発表した。
2016/4/30 日立化成、コンデンサ事業でのカルテルで米国司法省と司法取引
米国司法省は4月27日、日立化成が司法取引を行ったと発表した。
米国子会社が2002年から2010年の間、米国その他で電解コンデンサの価格でカルテルを結んだことを認め、罰金を支払うとともに、調査に協力することを約束した。
日立化成も4月28日、これを発表した。司法省と日立化成ともに、罰金額については明らかにしていない。
司法省は、これが本件で有罪を認めた2つ目の司法取引で、カルテルに加わった他の業者を引き続き追及するとしている。
コンデンサのカルテルでは、2015年9月2日に
NEC TOKIN が罪を認め、1380万ドルの罰金を支払うことで合意している。
これとは別に、2015年3月12日に大陪審は日本のコンデンサメーカー(Company A とし、社名を明らかにしていない)の前事業部長のT. I.
氏をカルテルに参加したとして起訴した。
日立化成もNEC
TOKINも調査の協力を約束しており、今後も摘発が続くと思われる。
付記 2018/6/27 司法省は、これまで8社と10人を起訴したが、2人目(Elna
Co.)が罪を認めたと発表した。
|
|
罰金 |
10人を起訴 |
2015/9/2 |
NEC TOKIN |
13.8百万ドル |
|
2016/4/27 |
Hitachi Chemical |
3.8百万ドル |
|
2016/8/22 |
Rubycon Corporation |
非公表 |
|
Elna Co., Ltd.
|
Tokuo Tatai 禁固 1年と1日 |
Holy Stone Holdings
* |
|
2017/2/8 |
Matsuo Electric
|
非公表 |
Satoshi Okubo 禁固 1年と1日 |
2017/7/11 |
Nichicon |
42百万ドル |
|
2017/10/8 |
Nippon Chemi-Con |
非公表 |
|
*日立化成エレクトロニクスは、2009年10月29日、三春工場のタンタル・ニオブコンデンサ事業を、三春工場関係の資産とともに台湾の禾伸堂企業股份有限公司(Holy
Stone Enterprise Co., Ltd. )が新たに日本に設立する法人に譲渡することを決議
ーーー
公取委
は3月29日、家電や自動車に使われる2種類のコンデンサーの価格でカルテルを結んだとして、独禁法違反で、ニチコン、日本ケミコン、ルビコン、松尾電機、NECトーキンのメーカー5社に計約67億円の課徴金納付命令を出した。
自主申告したため課徴金を免除された日立AICは日立化成の子会社。
台湾の公平交易委員会(公取委に相当)は2015年12月9日、スマートフォンなどに使う電子部品のコンデンサーについて、日本ケミコンなど日本企業とその海外子会社10社が価格カルテルを結んでいたとして、総額約215億円の課徴金を科すと発表した。台湾でのカルテルに対する課徴金としては過去最高額。
|
|
日本
(2016/3/29) |
台湾
(2015/12/19) |
千円 |
減免 |
排除命令 |
百万円 |
アルミ電解
コンデンサー |
日本ケミコン |
1,435,240 |
|
○ |
8,307 |
ルビコン |
1,067,740 |
|
○ |
4,618 |
エルナー |
ー |
283 |
三洋電機 |
ー |
3,115 |
ニチコン |
3,362,230 |
|
○ |
412 |
日立AIC |
0 |
免除 |
|
ー |
小計 |
5,865,210 |
|
3社 |
16,735 |
タンタル電解
コンデンサー |
NECトーキン |
127,150 |
50% |
○ |
4,507 |
ニチコン |
277,950 |
|
|
ー |
ビシェイポリテック |
0 |
免除 |
○ |
115 |
松尾電機 |
427,650 |
|
○ |
90 |
小計 |
832,750 |
|
3社 |
4,712 |
合計 |
6,697,960 |
|
6社 |
21,447 |
2016/4/2
公取委、コンデンサーメーカーに課徴金納付命令
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