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これは下記のブログを月ごとにまとめたものです。

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2020/4/15 メキシコの原油事情

OPECプラスは4月12日、4月9日に続いてふたたび緊急テレビ会議を開き、アジアの原油市場が開く直前に日量970万バレルの減産で最終合意した。

協調減産への参加に難色を示していたメキシコに配慮し、メキシコの減産を当初の割当の40万バレルから同国主張の10万バレルに落とした。

OPECプラスは4月9日、5月と6月に日量1000万バレルを協調して減産することを決めた。
7〜12月は800万バレル、2021/1〜2022/4月は600万バレルにする。

1000万バレルのうち、サウジとロシアが250万バレルずつ引き受け、生産量をそれぞれ日量 850万バレルに落とす。他のメンバーは23%カットする。

しかし、この計画は、非OPECのメキシコが削減参加を拒否し、破綻した。
メキシコの2019年の生産は168万バレルで、23%の40万バレルの減産を求められたが、メキシコは拒否し、日量10万バレル減産を提案した。

世界の産油国全体が原油余剰による価格暴落で苦しむなか、メキシコは割当の40万バレル減産に対し、10万バレルの減産を主張、全体で1000万バレルのうちのたった30万バレルの問題で減産合意が3日延びた。
その間、実現はしなかったが、トランプ大統領がメキシコに肩代わり減産を提案することまであった。

2020/4/13    OPECプラス協調減産、日量970万バレルで最終合意

世界中を困惑させた末に、メキシコは主張を通した。

メキシコのわがままとの感がある。

しかし、メキシコにとっては、同国がこれまで多額の資金をかけてやってきた努力をいかすだけで、努力をせずに減産で逃げる他国の方がおかしいということになる。
備えを怠った他の産油国と同様に強いられるのは不当とした。

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メキシコは過去20年にわたり、原油価格下落に備え、アジアン・オプションをかけており、権利行使価格と満期日までの期間の平均価格との差の支払いを受ける。

通常のオプションは満期日の資産のスポット価格の価格との差だが、アジアン・オプションはその期間の資産価格の平均値との差となる。

このため、原油価格が暴落しても、原油輸出損益は変わらず、減産して価格を引き上げる必要はない。

2008-09年のグローバルな財政危機の際に原油価格が暴落した際には51億ドルを受取り、サウジが値下げした2015年には64億ドル、2016年には27億ドルを受け取っている。

逆に減産すれば、その分だけ、高い価格での原油販売収益が失われることとなる。

そのためにはコストもかかり、最近ではアジアン・オプションの購入に年間10億ドルを支払っている。

メキシコの財務大臣は、「保険は高くつく。しかし、保険はこんな時のためにかけている。原油価格が下がっても、国家予算は打撃を受けない」と述べている。

実際の付保については国家機密として明らかにされていないが、11月までの1年で輸出量のほぼ全量について1バレル49ドル(輸出バスケット)で付保しているとされる。

4月6日のメキシコの輸出バスケット価格は18.66ドルまで下がっているが、損害は受けない。

また、メキシコは2004年には日量383万バレルの生産を行ったが、順次減少し、2018年には207万バレルとなっている。ここからの更に40万バレルの減産は非常に苦しい。


2020/4/16 Samsung Biologics、Vir Biotechnologyの新型コロナ治療薬候補を 受託生産 

韓国のバイオ医薬品大手のSamsung Biologicsは4月10日、感染症治療薬を開発する米国のベンチャー企業 Vir Biotechnology から新型コロナウイルスの治療薬のモノクローナル抗体を受託生産する契約を結んだ。契約金額は4418億ウォン(約400億円)。

Vir Biotechnology は2016年の創設で、B型肝炎(HBV)、結核及びヒト免疫不全ウイルス(HIV)等の慢性感染疾患、インフルエンザ、呼吸器合胞体ウイルス(RSV)及びメタニューモウイルス(MPV)等の呼吸器疾患、並びに院内感染疾患の3つの分野に注力する。

siRNAはmRNAの破壊によって配列特異的に遺伝子の発現を抑制

ライフサイエンス投資家のArch Venture Partnersが26.20%、ソフトバンク・ビジョン・ファンドが20.6%%出資し、他にシンガポールのTemasek HoldingsやBill & Melinda Gates Foundation  なども出資する。

Vir Biotechnologyは、新型コロナウイルスと似ているSARS(重症急性呼吸器症候群)の完治患者から抗体(SARS-CoV-2mAB)を確保して治療剤を開発しており、 候補のモノクローナル抗体 VIR-7831 とVIR-7832は非常に有望とされる。

これらは米食品医薬品局(FDA)から新型コロナウイルス治療候補物質のファーストトラック(臨床簡素化)の承認を受けており、
3〜5カ月内にPhase 2 の臨床実験を実施し、2021年の量産を目指す。

このため、本年2月に中国のWuXi Biologics と、COVID-19のモノクローナル抗体の臨床実験のための開発と製造についての協力契約を締結した。

医薬品としての承認を受けた場合、WuXi Biologicsは中国での、Virは世界の他の地域での商業化の権利を持つ。

Vir Biotechnologyはまた3月12日にBiogenとの間で上記と同様の臨床 実験のための開発と製造についての覚書を結んだ。

今回のSamsung Biologicsとの契約は、 承認取得後の本格生産に関するものである。

Samsung Biologics は早ければ2021年から仁川延寿区松島の第3工場で本格的に 受託生産を行う予定。

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大手製薬会社のGlaxoSmithKline は4月6日、Vir Biotechnologyに2億5,000万ドルを出資し、新型コロナウイルスによって引き起こされる肺炎を治療・予防する複数の医薬品とワクチンを共同開発すると発表した。

今回の提携により両社は複数のアプローチで医薬品を開発する。

最も先進的なのは、Virが開発した上記のVIR-7831およびVIR-7832という2種類の抗体を使用するアプローチで、両社は今後3〜5カ月以内に第2相臨床試験を開始する。

両社は今後、新型コロナウイルスが細胞に感染する際に使用するタンパク質を特定するため、Vir BiotechnologyのCRISPRスクリーニング技術を活用する。タンパク質を特定することにより、それを標的とする医薬品を開発し、ウイルス感染を防ぐことができる。

他にも、GlaxoSmithKlineのワクチン技術とウイルス全般に反応する抗体を生成する可能性が最も高いウイルスタンパク質を特定するVir Biotechnologyの専門知識を組み合わせることを計画している。

両社は、将来的に出現する可能性のある他のコロナウイルスから患者を保護するワクチンを開発したいとしている。


2020/4/17 テルモの治療機器、FDAからCOVID-19患者向け緊急使用許諾 

テルモは4月13日、同社の遠心型血液成分分離装置「スペクトラオプティア」(Spectra Optia® Apheresis System)が、スイスのMarker Therapeutics AGの「D2000吸着カートリッジ」との組み合わせで、米国FDAから新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の患者を対象とする緊急使用の許諾(EUA: Emergency Use Authorization)を受けたと発表した。

COVID-19に対する緊急使用許諾は、検査キット、診断機器、防護服(PPE)などには出されているが、治療機器としては初めてで、 COVID-19を原因とする呼吸不全で集中治療室(ICU)に入院している18歳以上の患者に使用することと、公衆衛生の緊急事態である期間のみの使用が条件となっている。

「スペクトラオプティア」は、テルモの米国子会社のTerumoBCTの製品で、血液を採取し遠心方式で血液成分を分離する装置。
血中から病気の原因となる液性因子(抗体、炎症性サイトカイン、有害代謝物質、中毒物質など)や細胞(リンパ球、顆粒球、ウイルスなど)を除去し、病態の改善を図る
アフェレシス治療などで使用されてい る。

TerumoBCTは、2011年4月のテルモによるCaridianBCT 買収に伴い、CaridianBCTとテルモの血液事業部門の統合により設立された。

Marker Therapeuticsはスイスの医薬品メーカーで、臨床段階のがん免疫治療を手掛ける。血液がんおよび固形腫瘍の治療に特化した次世代のT細胞ベース免疫治療の開発に注力している。
サイトカインストームや重度の炎症反応症候群などの治療のために、炎症性サイトカイン、代謝廃棄物などを血漿から除去するための、特許取得済みの血漿カートリッジを扱う。

インフルエンザやコロナウイルスなどの感染症では、ウイルスを排除するために分泌されたサイトカインが、サイトカインストームと呼ばれる過剰な免疫反応を起こし、重篤な呼吸障害につながることが知られている。

サイトカイン(cytokine)は主に免疫系細胞から分泌されるタンパク質で、生体内の様々な炎症症状を引き起こすもの(TNF-αやIL-6等)を炎症性サイトカインと呼び、炎症症状を抑制する働きを有するもの(L-10やTGF-β等)を抗炎症性サイトカインと呼ぶ。

サイトカインストーム(cytokine storm)は、感染症や薬剤投与などの原因によって血中サイトカイン(TNF-αやIL-6等)の異常上昇が起こり,その作用が全身に及ぶ結果,好中球の活性化,血液凝固機構活性化,血管拡張などを介して,ショック・播種性血管内凝固症候群(DIC)・多臓器不全にまで進行する状態をいう。

 

患者の血液を「スペクトラオプティア」のディスポーザブル回路に通すことで、血球と血漿に分離する。
この回路に接続した「D2000吸着カートリッジ」が、血漿中に存在するサイトカインを減らし、血液はまた患者の体内に戻る。

サイトカインの減少により、サイトカインストームが抑制され、呼吸障害の改善が期待される。


2020/4/17   富士フィルム、アビガン増産 

富士フィルムは4月15日、「アビガン®錠」(一般名:ファビピラビル)の生産体制を拡大し、増産を開始したと発表した。

政府が緊急経済対策の1つとして「アビガン」の備蓄量を200万人分まで拡大することを決定したことに対応する。

「アビガン」の増産を支援し、2020年度中に現在の最大3倍にあたる200万人分(インフルでは600万人分)の備蓄を確保する。中国に集中した部品の生産拠点などを国内に回帰させる企業に費用の最大3分の2を補助する。

富士フィルムは既に、新型インフルエンザ流行に備えた国家備蓄用に200万人分を約68億円で納入しているが、これまで、新型コロナウイルスと新型インフルエンザでの用法用量が異なるかは定かでなかった。

2月26日に日本感染症学会が「COVID-19に対する抗ウイルス薬による治療の考え方」で暫定的な指針として、アビガンの用法・容量を発表した。

当初の新型インフルエンザの場合(成人):

1日目は1回 1600mgを1日2回、2日目から5日目は1回 600mgを1日2回経口投与する。総投与期間は5日間とすること。合計 8,000mg

COVID-19の場合:

1日目1,800mg/回×2回、2日目以降800mg/回×2回、最長14日間  合計最大 24,400mg  新型インフルエンザの場合の3倍

これに基づくと、現在の備蓄は70万人弱分しかないことになり、増産により200万人分まで拡大する。

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3月上旬時点でのアビガンの生産能力は月4万人分強である。

増産には原料や生産設備の確保が課題となっていた。

現在、原料のマロン酸ジエチルは中国から輸入している。

デンカが、原料から最終製品に至る一貫生産体制のもと、2017年4月まで国内で生産を行ってきたが、海外製品との競合が激しくなり、2017年4月に国内生産を休止した。(設備は残存)
マロン酸ジエチルの原料のモノクロル酢酸は現在もデンカ子会社のデナックが国内で生産している。

政府は国内での一貫した供給体制構築のためデンカに生産再開の要請を行なった。

これを受け、デンカは4月2日、マロン酸ジエチルを新潟県内の工場で5月から生産開始すると発表した。

2020/4/3  デンカ、「アビガン」の原料供給開始

富士フィルムは、グループ会社の富士フイルム和光純薬にて医薬品中間体の生産設備を増強するとともに、原料メーカーや各生産工程における協力会社など国内外の企業との連携によりアビガンの増産を推進する。

カネカも4月16日、原薬を供給することで合意したと発表した。
設備投資、人員配置転換や生産計画調整により製造体制を至急整え、7月より供給を開始する。

付記

チッソ子会社JNCは427アビガン®の中間体について、水俣製造所内のプラントで製造し、供給を開始すると発表した。

付記

広栄化学は4月30日、原料のピリジンの供給を発表した。なお、同社はレムデシビルの原料としてピロールを供給している。

本年7月にはこれまでの2.5倍の約10万人分/月、同9月には約30万人分/月(同約7倍)の生産を実現する。

今後は和光純薬の子会社の富士フイルムワコーケミカルが約10億円を投じて、原薬の生産能力を引き上げる。10月以降の稼働を目指し、さらに約10万人分のアビガンを増産する。(合計40万人分/月)

順調に進めば、年内にも日本政府の備蓄要請(+130万人分)に対応できることとなる。同社では増産を進め、海外からの提供要請にも対応する。


2020/4/17 Remdesivirの臨床試験で好結果 

ヘルスケア・ライフサイエンス系専門メディアのSTATは4月16日、COVID-19の中等度と重度の患者を対象に実施しているRemdesivirの臨床試験の結果を報じた。

University of Chicago Medicine は125名の患者(うち113名が重症)でテストをした。このうち、ほとんどが既に退院した。死亡は2名だけであったという。

対照群にプラセボ群は置いていない。

病院の発表ではなく、臨床試験の結果について大学の他のメンバーとのテレビ会議のビデオのコピーをSTATが入手したもの。

Gilead では、2本の第3相臨床試験を実施中で、4月中にも結果を発表すると見られる。「今の段階で言えることはテストの結果のデータに期待しているということだ」としている。

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Remdesivir はGilead Sciencesが開発した抗ウイルス薬で、エボラ出血熱及びマールブルグウイルス感染症の治療薬として開発され、MERSおよびSARSウイルスなどのコロナウイルスに対して抗ウイルス活性を示すことが見出された。同社の研究チームは、MERSコロナウイルスに近いCOVID-19の治療にも使える可能性を指摘している。

Remdesivir はどの国でもまだ承認を受けていない。

 

米国立衛生研究所(NIH)はCOVID-19の治療薬候補のGilead Sciences 社のRemdesivirの世界規模での治験に着手している。

治験はNIHの1部門である米国立アレルギー・感染症研究所が主導、米ネブラスカ大学と協力して進める。世界50カ所で偽薬とremdesivir を患者に投与し、治療効果を検証する。治験参加数は400人程度を想定している。

中国を視察したWHOのBruce Aylward 事務局長補は2月24日、「現時点で有効と思われる唯一の薬がある。それは remdesivirだ」と述べた。

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Gileadは、2本の第3相臨床試験を実施中。

うち1本は、COVID-19と診断された中等度の入院患者1600例を対象としたもので、被験者を標準療法に上乗せしてRemdesivirを5日間または10日間静注投与する群と、標準療法を受ける群に割り付け、11日後の重症度を7段階の尺度で評価する非盲検ランダム化比較試験。

同第3相臨床試験には、日本を含めた世界各国・地域、169施設が参加している。

もう1本は、COVID-19と診断された重度の入院患者2400例を対象としたもので、被験者を標準療法に上乗せしてRemdesivirを5日間または10日間静注投与する群に割り付け、14日後の重症度を7段階の尺度で評価する非盲検ランダム化比較試験。同第3相臨床試験には、世界各国・地域、152施設が参加している。

今回報道されたUniversity of Chicago Medicine はこれに参加している。

 

 


2020/4/18   香港で新型コロナ検査キット発売

遺伝子検査会社のPrenetics と英保険大手のPrudentialや香港中文大学(Chinese University of Hong Kong)等のグループはこのたび、香港で非営利の新型コロナウイルスのRT-PCR検査計画(Project Screen) をスタートさせた。

これまでの鼻の粘膜からの採取ではなく、ツバを検査するもので、自宅で自分で採取し、ピックアップしてもらう。

Prenetics は香港に本拠を置き、アジアではCircleDNA、欧州ではDNAFit のブランドで消費者直結の遺伝子検査事業を行っている。

世界に10カ所の拠点を持ち、これまで30万件以上のDNAテストを実施した。

Prenetics の既存の研究所で現状で1日1000件のRT-PCR検査が出来るが、必要に応じ3000件まで増やす。

Project Screen の仕組みは以下の通り。

インターネットで申し込み、簡単な質問に答えると検査キットが送られてくる。


 

自宅で試験管にツバを吐いて、送り返す。24時間以内にRT-PCR検査の結果が通知される。

料金は個人が985香港ドル(127米ドル)で、医療関係従事者とその家族はPrudential からの補助金で685香港ドルとなる。

内訳は下記の通りで、non-profit をうたっている。


 

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米国でも唾液を使ったウイルス検査が始まった。

ニュージャージー州立のRutgers UniversityがFDAからCOVID-19検査用に初めて緊急使用の認可を受けた。

当面は同大学のNew Jersey のラボでの医療用テスト(prescription-only test)用に限定される。FDAでは家庭での採取を認めるものではないとしている。

関係者は、従来の鼻から粘液を取得する方法と比較し、サンプルを取得する医療関係者への感染リスクを避けられるとしている。

検査は同大学のRWJBarnabas Health network と Middlesex County と組んで、4月15日からEdison, New Jersey のドライブスルー施設で始まった。48時間以内に結果が出る。1日に1万体の検査が可能という。


2020/4/20 米、3段階で経済再開へ 

トランプ大統領は4月16日の記者会見で、新型コロナウイルスの感染者が少ない地域から経済活動の再開を3段階で進める新指針(Guidlines for Opening up America Again)を発表した。

トランプ大統領は3月16日、新型コロナウイルス感染拡大防止のために、若者や健康な国民に対し、10人を超える集まりや、旅行、レストランやバーでの外食を自粛するよう呼び掛けた。病気の時は外出しないなど、国民向けの15日間の行動指針として公表した。3月29日には行動指針を4月30日まで延長する意向を明らかにした。

ニューヨーク州は、3月22日午後8時から、警察や医療従事者などの一部の仕事を除いて、すべての社員や従業員などの出勤を禁じたほか、住民に外出を控え自宅にとどまるよう求めた。

カリフォルニア州では3月19日、州内のすべての住民に対し、食料品を購入したり病院に行ったりするなど必要最低限の場合を除いて、外出を控えるよう知事命令を出した。多くの州が同様の措置をとった。

この結果、経済活動は大幅に滞り、雇用環境が悪化している。

11月の大統領選で再選をめざすトランプ大統領は経済の立て直しを急いでいる。

新指針を基に、各州知事の判断で段階的に緩和を進めていく。一部の州は、今月中にも経済活動を再開できると示唆した。

トランプ大統領は「戦いにおける次のステップは、アメリカを再び開くことだ(Opening up America Again)。アメリカは経済の再開を望んでいる。そしてアメリカ国民も経済の再開を望んでいる」と述べた。

ミシガン、オハイオ、ウィスコンシン、ミネソタ、イリノイ、インディアナ、ケンタッキーの各州知事は連携して経済活動を再開するとの合同声明を出した。「各州の経済は互いに依存しあって成り立っている。勤勉な人々が職場に戻り、事業が立ち直れるよう、私たちは連携して、経済活動を安全に再開しなければならない」としている。

しかし、患者の多いニューヨーク州のクオモ知事は、同州は5月15日まで在宅命令を継続すると述べた。

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新指針は各地域が経済の再開を判断するための要件を設けた。

(1) 病気の報告と症状の報告件数が14日間、減少傾向
(2) 確認された件数又は検査件数のうちの陽性の件数が14日間、減少傾向
(3) 病院で緊急対応なしに全ての患者の治療ができ、かつ、危険にさらされているヘルスケア要員に抗体検査を含めた十分な強力な検査プログラムがあること

これらの要件を満たせば、まずPhase Oneに進み、さらに、新たにこれらの条件が満たされれPhase TwoPhase Threeに進む。

それぞれの段階では、以下のように決められている。

  個人 雇用者 特別雇用者
Phase One 老人や重大な疾患を持つ人は避難を続ける。
その家族は
ウイルスを持ち帰らないように。

公共の場所では他人から距離を。
10人以上が集まるのは予防措置が無い場合は避ける。

10人以上のレセプションや展示会のような集会は十分な距離を撮れない場合は避ける。

不要不急の旅行は最低限にし、CDCのガイドラインに従う。

テレワークの推奨

出来れば、段階的に職場復帰

人が集まる共同エリアは閉める。

必須でない旅行は最低限にし、CDCガイドラインに従う。

老人や重大な疾患を持つ人の家族には特別な場所を考える。

 

学校や保育施設は閉鎖を継続

老人施設や病院への訪問は禁止。
接する人は衛生に関する規則を厳密に守る。

大規模施設(食堂、映画館、スポーツ施設、宗教関係など)は距離を保つことを厳密に守る。

ジムは、厳密に距離を保ち、衛生規則を守る場合にオープンできる。

バーは閉鎖継続。

Phase Two

 

老人や重大な疾患を持つ人は避難を続ける。
その家族は
ウイルスを持ち帰らないように。

公園、戸外のレクリエーション、ショッピングエリアなどの公共の場所では他人から距離を。
50人以上が集まるのは予防措置が無い場合は避ける。

不要不急の旅行も可能に。

 

テレワークの推奨継続

人が集まる共同エリアは閉める。

老人や重大な疾患を持つ人の家族には特別な場所を考える。

 

学校や若者の集団活動(デイケア、キャンプなど)は再開。

老人施設や病院への訪問は禁止。
接する人は衛生に関する規則を厳密に守る。

大規模施設(食堂、映画館、スポーツ施設、宗教関係など)は距離を保つことを厳密に守る。

緊急でない手術も再開可能。

ジムは、厳密に距離を保ち、衛生規則を守る場合にオープンできる。

バーは立ち飲み場所の人数を減らして営業可能。

 

Phase Three

 

老人や重大な疾患を持つ人も活動再開可能だが、予防措置が無い場合は距離を離す。

低リスク集団は密集場所での時間を最低限にする。

 

就業場所での制限を外す。 老人施設や病院への訪問再開。
 

大規模施設(食堂、映画館、スポーツ施設、宗教関係など)は一定の距離を保ち、再開。

ジムは再開。

バーは立ち飲み場所の人数を増やして営業可能。

 


各州により事情は異なるが、米国全体では死者はなお増大を続けている。

4月17日に米国の死者は3万4千人を超えた。ニューヨーク州では1万4千人を超え、うちニューヨーク市は1万2千人以上である。

下図の通り、現在も死者数の増加は止まっておらず、米国全体として Phase one に移れるのには、まだまだ時間がかかると思われる。


2020/4/21   アビガン投与で重症患者6割、軽中等症患者9割が改善 

4月18日開催の日本感染症学会のWeb特別シンポジウムで、藤田医科大学微生物学講座・感染症科の土井洋平教授がアビガン投与の迅速観察研究の結果を報告した。

研究は、日本医療開発研究機構の研究開発課題で、全国約200医療機関が参加し、中等症・重症患者における臨床経過の検討を目的に実施された。
オンラインサーベイ形式で基礎疾患や肺炎の重症度、転帰を収集した。データクリーニングは行っていない。

投与開始14日後に重症患者の6割が改善、軽症や中等症では9割の患者で改善が認められた。

 

解析対象は346例で、内訳は次の通り。

性別

男性 262 感染症は男性の比率が高い
女性 84 催奇形性の副作用が知られている

年齢 比較的高齢者が中心

合併症

心血管疾患 30%
糖尿病 26%
慢性肺疾患(COPD) 14%
免疫疾患 6%
 
いずれかの合併症 53%

 

 

迅速観察研究の結果は次の通りで、アビガン投与後の転帰を、主治医の主観で「改善」、「不変」、「増悪」にわけて評価した。

対象患者

結果

投与開始

  酸素
投与
機械
換気
7日後 14日後
軽症 無し   改善  70% 90%
中等症 有り 無し 改善 66% 85%
重症   有り 改善 41% 61%
増悪 34% 33%

有害事象は解析した188人のうち、32人(17%)に発生した。

高尿酸血症が15人、肝機能値異常が12人、高ビリルビン血症、急性腎障害、吐き気、皮疹、薬剤熱が 各1人。
 

土井教授は、転帰の判断が医師の主観によるものであるほか、吸入ステロイドのシクレソニドなどとの併用療法も多く、対照群も置かれていないなど、観察研究の限界もあると指摘 した。

治験や特定臨床研究が進行中であることを紹介し、さらなる検証が必要との考えを示した。

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軽症や中等症では9割の患者で改善がみられるのに対し、重症患者は6割で、悪化した患者が3割もいる。

現在、治療に用いられている抗ウイルス剤はノイラミニダーゼ阻害剤(Neuraminidase inhibitors)で、増殖されたウイルスの放出を阻害して感染の拡大を防ぐものだが、
アビガンは、ウイルスの細胞内での遺伝子複製を阻害することで増殖を防ぐRNAポリメラーゼ阻害剤である。

このため、ウイルスの増殖前の早期の投与の場合に効果がある。
 


2020/4/22  中国、四半期ベースで初のマイナス成長

中国の国家統計局が4月17日に発表した2020年第1四半期のGDPは、前年同期に比べてマイナス6.8%となった。

これは四半期ごとのデータが公表されている1992年以降、初めてマイナスとなった。

下記の通り、IMFは中国の2020年のGDP予測を1.2%としている。これは天安門事件の時のGDPをはるかに下回る。

参考 年間GDPの推移  

国家統計局によると、本年第1四半期の国民経済データは下記の通り。(1元は約15.2円)

GDP:20兆6504億元で前年同期比 マイナス6.8%

第一次産業の付加価値は1兆186億元 マイナス3.2%
第二次産業は7兆3638億元 マイナス9.6%
第三次産業は12兆2680億元 マイナス5.2%

雇用:3月の全国都市部の失業率は5.9%

物価:3月に下落

 

消費:社会消費財小売総額は1Qに前年同期比19.0%減少

貿易:輸出は11.4%減少、輸入は0.7%減少

投資:農業を除く固定資産投資は16.1%減少
    うち、インフラ投資が19.7%減、製造業投資が25.5%減、不動産開発投資が7.7%減

ーーー

習主席は共産党最高指導部のメンバーが集まる会議を開催し、「突然の新型コロナウイルスの発生が中国の経済・社会の発展にかつてない衝撃を与えた」と指摘した。

感染拡大は抑えられているとの認識を示しつつも、「再拡大を防ぐ任務は重く、せっかく得た成果を大切にしなければならない」として、感染の「第2波」への警戒を強めている。

ーーー

国際通貨基金(IMF)は4月17日、「世界経済見通し(World Economic Outlook)」を発表した。

3カ月で世界は劇的に変わったと述べ、2020年は新型コロナの影響から、10年前のリーマン・ショック直後を超えて、およそ100年ぶり、世界大恐慌から後では最大の景気後退になるとしている。

世界全体の2020年のGDPは -3.0%で、中国については1.2%としている。

最新の成長率予測(実質GDP)

  2019 予想
2020 2021
世界 2.9 -3.0 5.8
米国 2.3 -5.9 4.7
ユーロ圏 1.2 -7.5 4.7
   ドイツ 0.6 -7.0 5.2
英国 1.4 -6.5 4.0
日本 0.7 -5.2 3.0
中国 6.1 1.2 9.2

https://www.imf.org/en/Publications/WEO/Issues/2020/04/14/weo-april-2020

 

参考 中国の過去のGDP推移

http://japanese.china.org.cn/business/txt/2009-09/30/content_18637114.htm

 


2020/4/23 米国で原油生産制限の動き 

OPECプラスは4月12日、日量970万バレルの協調減産に合意したが、4月の原油需要が前年比2900万バレル減とされ、原油の値下がりが続いている。

4月20日のNY原油市場で 5月もの(4/21決済)WTI原油は -37.63ドル/バレル(一時 -40.32ドル)と市場初のマイナスとなった。

米国で原油生産量が最も多いテキサス州の規制当局が供給過剰の解消に向けた生産制限の導入について検討を始めた。導入すれば1970年代前半以来、40年以上ぶりとなる。

3月に石油業者2社がエネルギー分野の規制当局であるTexas Railroad Commissionに対し、石油の生産制限を検討するよう求めた。

石油の州際取引は当初、主に鉄道によって行われていたため、各州のRailroad Commission が石油(その後、ガスが加わる)の規制を担当する。

Railroad CommissionはTexas Natural Resources Code により、余剰が差し迫っている場合に石油とガスの生産を割当制にする権限を有している。

3月21日にTexas Railroad CommissionはOPEC事務局長と石油市場安定化問題を話し合ったとされる。

Railroad Commissionは4月14日、生産制限をめぐる公聴会をオンラインで開いた。

意見は分かれた。

シェール生産大手の幹部は「原油安はOPECプラスに参加しない米国などの減産が明確になっていないからだ」と指摘し、州内の生産者に2割程度の減産を命じるべきだと訴えた。

他のシェール大手はこれに反発、既に掘削を30%停止するプロセスに入っており、もし州で生産制限が実施されればゼロに減らす、その場合、雇用喪失、家庭への影響といった形で深刻な結果をもたらすだろうと警告した。

「一部の事業者が契約上の義務を履行しなくて済むようになることを期待して強制的な減産に賛成しているのではないか」との指摘もあった。

米国石油協会は「制限は長期的な生産性低下につながりかねない」と反対の立場を示した。

Railroad Commissionは4月21日に 会合を開いたが、生産量を20%カットするという提案の投票を拒否した。次回は5月5日に開催する。

付記

テキサス鉄道委員会は5月4日、翌日に予定されていた生産制限に関する採決の中止を決定、この問題は「葬られた」。

3人のメンバーの一人だけが生産割り当てに対する支持を表明、他の州や他国も同様の動きをとることを条件に、州内の原油生産を2割削減し、割り当てを超過して生産した業者にはバレル当たり1000ドル程度の罰金を科すことを提案していた。

オクラホマ州でも、Oklahoma Corporation Commissionが5月11日の公聴会を予定している。

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OPECプラスは4月12日、4月9日に続いてふたたび緊急テレビ会議を開き、アジアの原油市場が開く直前に日量970万バレルの減産で最終合意した。

当初、OPECプラスは、米国やカナダ、ノルウェーなど枠組みに参加していない産油国については、4月10日に開かれる主要20カ国・地域(G20)エネルギー相会合で減産への協力を取り付けることを目指した。
日量500万バレル削減を求め、全体で1500万バレルの減産を目指した。

しかし、4月10日のG20エネルギー相会合の声明では「世界経済の回復とエネルギー市場の安定を確保するため、協調した対応策を作るよう協力する」としたが、OPECプラス以外の諸国の減産目標は明記できなかった。

カナダとノルウェーはこれまでに減産に前向きな姿勢を示していた。

しかし、ブルイエット米エネルギー長官は会議で米国の生産量は2020年末までに日量200万バレル減るとの見通しを説明。OPECプラスには減産を求める一方で、「自由で開かれた原油市場」を重視する考えを強調し、生産量を連邦政府が決めるのは適切ではないとの建前論にとどまった。

米国は代わり国家戦略備蓄施設の活用を提案した。備蓄施設を民間企業に貸し出し、行き場を失った原油を貯蔵し市場の流通量を削減するが効果は限られている。

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米国では反トラスト法が業者が協調することを違法としており、政府が生産を規制することもできない。

米国はOPECそのものを違法としてきた。

米下院司法委員会は2019年2月7日、OPEC加盟国を反トラスト法違反で提訴することを可能にする「石油生産輸出カルテル禁止(No Oil Producing and Exporting Cartels Act : NOPEC法案)」を全会一致で可決した。同様の法案が上院の財政委員会に提出された。 しかし、上院では投票に至っておらず、法律としては成立していない。

米国政府がOPEC加盟国をSherman Antitrust Actで訴訟できるというもので、Aramcoが米国での上場を避ける理由の一つである。

しかし、米国でも州が生産制限をすることは認められている。

1930年代に原油の供給過剰が起き、連邦議会が過剰解消を目指す産油州の団体創設を承認した。産油州は連邦政府の需要予測に基づいてそれぞれの生産量を決め、各州の制度に従って生産者に枠を割り振った。

Franklin Roosevelt 大統領のNew Deal 政策で最重要な法律である全国産業復興法(National Industrial Recovery Act:NIRA)が1933年に制定された。

国が産業の生産統制を行った。不況カルテルを容認する一方、労働者には団結権や団体交渉権を認めたり、最低賃金を確保したりして、生産力や購買力の向上を目指そうとした。
その施行を管轄する行政機関として全国復興庁 (NRA) が設立された。

しかし1935年5月に合衆国最高裁判所が Schechter Poultry Corp. v. USA等の裁判で、満場一致で、憲法が立法権を議会に与えているのに反し、この法律が立法権を全国復興庁に与えており、違法であるとした。このため、この法律は2年足らずで廃止された。

当時、サウジで油田が発見されるまでは世界最大の油田であったEast Texas 油田の石油が市場にあふれ、石油価格が暴落しており、生産制限が必要であった。

このため、全国産業復興法が廃止になると、連邦議会は1935年2月にInterstate Transportation of Petroleum Products Act を通した。提案者のテキサス選出上院議員Tom Connallyの名前をとってConnally Hot Oil Act of 1935と呼ばれる。

産油州は連邦政府の需要予測に基づいてそれぞれの生産量を決め、各州の制度に従って生産者に枠を割り振るが、州が決めた数量を超えたもの (hot oil、contraband oil ) を州外に輸送するのを禁止した。 違反者には罰金か禁固刑が課せられる。

“The shipment or transportation in interstate commerce from any State of contraband oil produced in such State is prohibited. ”

Any person knowingly violating any provision of this chapter or any regulation prescribed thereunder shall upon conviction be punished by a fine of not to exceed $2,000 or by imprisonment for not to exceed six months, or by both such fine and imprisonment”

この法律は1937年6月までの時限立法であったが、その後延長され、期限のない法となった。1973年にアラブ湾岸諸国が米国に石油禁輸措置を講じると各州は生産制限を停止したが、多くの州で この制度は残っている。

Owen L. Anderson The Evolution of Oil and Gas Conservation Law and the Rise of Unconventional Hydrocarbon Production  

 


2020/4/24    米国で4800億ドルの3.5次対策で合意、更に第4次対策を検討 

トランプ米政権と与野党の議会指導部は4月21日、4840億ドルの新型コロナウイルス対策で最終合意した。第3弾の対策の補充で、COVID-19 3.5 relief packageと呼んでいる。

上院は関連法案(Paycheck Protection Program and Health Care Enhancement Act )を同日可決した。下院も23日に可決し、大統領に送った。

これまでの3回の経済対策と合わせ、財政出動は2兆8千億ドルになる。

今回、中小企業の雇用対策など(Paycheck Protection Program) に3700億ドルの追加資金を用意し、医療体制の整備(Health Care Enhancement) にも1000億ドル強を投じる。

主なものは下記の通り。

・中小企業庁の Paycheck Protection Program (PPP) の補充に3200億ドル

3月27日に議会は第3弾の2兆ドル規模の景気刺激策の法律(Coronavirus Aid, Relief, and Economic Security Act=CARES Act)を通した。

この一部が中小企業のレイオフ回避、給与支払い補助のための3490億ドルの基金であるが、4月4日の受け付け開始から中小企業の利用申請が殺到。4月16日に早くも上限に達した。

このため、大幅に増加する。

このうち、600億ドルは中小企業向けの融資機関に支給され、銀行融資を受けられない企業に資金が行くようにする。

・医療機関のCOVID-19関連の費用、収入減支援に750億ドル(CARES Actでの1000億ドルの追加)

・地方や無保険者の新型コロナの検査に250億ドル

ーーー

トランプ大統領は4月21日の記者会見で「中小企業に追加資金を供給するため、迅速に関連法を成立させる」と述べ、ムニューシン財務長官は「これまでの中小企業の資金支援で既に3000万人の雇用維持につながった」と政策効果を強調した。

大統領は、この後すぐに『経済対策第4弾』の議論に入るつもりだと表明した。「地方でのインフラ投資や給与税の減税など、次策の議論を開始する」と述べた。

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これまでの新型コロナウイルス対策は下記の通り。

第一弾:

トランプ大統領は3月6日、議会上下両院が可決した新型コロナウイルス対策用の83億ドルの緊急補正予算法に署名し、同法が成立した。

可決された83億ドルの予算のうち、ワクチンなどの研究・開発費用(30億ドル以上)、連邦・州・自治体の公共衛生機関への財政支援(22億ドル)などが含まれる。
ビジネス支援に関しては、10億ドルを新型コロナウイルス拡大により資金的損害を受けた中小企業などへの低利融資に充てるとしている。
また、4億3,500万ドルを外国の医療機関への支援として計上している。

第二弾:

トランプ米国大統領は3月18日、議会が可決した第2弾の新型コロナウイルス対策法案(「家族第一・コロナウイルス対応法」)に署名し、同法が成立した。

第2弾の対策法では、個人への支援が主となっており、新型コロナウイルスの検査無償化や、従業員がウイルスの影響で休暇を取得せざるを得ない場合の所得保証などが盛り込まれている。

新型コロナウイルスの検査無償化については、無保険者向けの公的プログラムに資金を拠出するとともに、民間医療保険に被保険者の検査費負担を無料にすることを義務付けている。

コロナウイルスの影響で出勤できない従業員への雇用の保証や有休疾病休暇の与え方、給与の支払い額、休業した従業員に支払った給与の税控除などについて定めている。

このほか、低所得者向けの食料補助プログラムや、失業保険拡充のための各州への財政支援などが含まれている。

第三弾:

3月27日に議会は第3弾の2兆ドル規模の景気刺激策の法律(Coronavirus Aid, Relief, and Economic Security Act=CARES Act)を通した。

法案の内容は下記の通り。

 ・個人に1200ドル(夫婦に2400ドル、子供一人に500ドルずつ)の現金支払い(年収75000ドル以上の場合は減額)
 ・中小企業の、レイオフ回避、給与支払い補助のための3500億ドルの基金
 ・被害を受けた産業へのローン、保証、投資のため財務省が5000億ドルを用意
 ・ローンを受けた企業は、その期間は自社株の買戻しを禁止、その企業で425千ドル以上の給与を受ける役員等は次の2年間昇給無し
 ・保険業者は追加コストなしでコロナウイルス予防サービスを対象に加える。
 ・雇用維持の税額控除
 ・ヘルスケア補助に2400億ドル、病院補助に750億ドル、退職軍人のヘルスケアに200億ドル、緊急公共輸送に200億ドル、空港救済に100億ドル、CDC補助 45億ドル、
   航空会社補助のローンに500億ドル、貨物航空補助に80億ドル、国防維持に必要な事業(不特定)の補助に170億ドル
 ・失業保険強化(各州の規定に加え、最長4カ月、週600ドルを加算)

2020/3/26   米与野党、2兆ドルを超える緊急景気浮揚予算案で合意

今回は第三弾の補充のCOVID-19 3.5 relief packageである。この後、第四弾が予定されている。



2020/4/24   ニューヨーク州の新コロナウイルスの抗体検査、感染者は実際の10倍?

ニューヨーク州のAndrew Cuomo知事は4月23日、州(人口1950万人)の感染者が270万人に上る可能性があると発表した。 実際に感染が確認された人の10倍超になる。

ニューヨーク州の19の郡の40カ所の食料品店などで2日間で 3000人を対象に検査を実施した。

結果は下記の通り。

New York City (5 boroughs) 21.2%
Long Island 16.7%
Westchester and Rockland 11.7%
その他地区  3.6%
合計 13.9%

州内の感染者の大半を占めるNew York City(人口860万人)が特に高く、21.2%に上った。
人種・民族でみると、アフリカ系やヒスパニック系の陽性率は、白人やアジア系に比べて2倍前後高くなったという。

州人口は1950万人のため、単純に13.9%を掛けると陽性者は270万人になる。実際に感染が確認されたのは約26万3千人で、それの10倍超になる。

New York州のCOVID-19の死者は15,500人で、感染者を270万人とすると 死亡率は0.5%にとどまることになる。

但し、抗体検査はその正確性に疑問の声があるほか(WHOは、抗体検査の技術は十分に検証されておらず、抗体自体に関しても不明な点が多いという認識を示している)、
外出していた人のみの検査であり(外出しない人の感染率は低いだろうとみられている)、州民全体からの無作為抽出ではないため、
知事は「検査は暫定的で限定的」で、実態の把握には検査の拡充が必要だとしている。

死者には自宅で死んだ人やCOVID-19のテストを受けていない人は含んでおらず、実際はもっと多い可能性がある。

今回の13.9%という割合はこれまでの研究結果に比べて高すぎるという見方も出てる。

 

現時点では、抗体ができている人が今後罹らないという保証はない。

 


2020/4/25 JDIといちごアセットマネジメント、最終契約を大幅に変更 

経営再建中のジャパンディスプレイ(JDI)は2020年1月31日、独立系投資顧問のいちごアセットマネジメントから最大1008億円の出資を受け入れる方向で最終契約を結んだと発表した。

この時点の契約では、いちごのB種優先株発行時点で、いちごの出資比率は44.26%となる。

その後3月13日に、JDIはいちごアセットマネジメントとの間で100億円の追加の資金調達で基本合意したと発表した。
新型コロナウイルスの感染拡大で事業環境が悪化しており、追加的な運転資金を確保するもの。

2020/2/3 JDI、いちごアセットマネジメントと最終契約

当初、いちごの優先株はB種、C種とも転換価格は1株50円とされており、3月13日の合意で単に100億円の追加と見られていた。

4月22日付日本経済新聞は、3月13日の合意はそれだけでなく、全体の半分を占めるC種優先株の転換価格を1株20円に変更することを含んでいることを報じた。
これにより、全体の転換価格は1株50円から30円弱に引き下げられ、C種優先株の転換後のいちごの出資比率は当初の想定と比べ、大きく増えることとなる。

  2020/1/31合意 2020/3/13合意 増減
金額   株数 金額   株数 金額 株数
B種優先株 504億円 @50 10.08億株 554億円 @50 11.08億株    
C種優先株 504億円 @50 10.08億株 554億円 @20 27.70億株    
合計 1008億円 @50 20.16億株 1108億円 @28.57 38.78億株 +9.9% +92.4%

これは、契約中のMAC条項(Material Adverse Change  Clause)or MAE条項(Material Adverse Effect Clause)と呼ばれる条項に基づくもので、契約書にサインした時からクロージングまでの間に発生する各種リスクを契約当事者間で配分するための取り決めをいう。

JDIは3月25日に臨時株主総会を開いて、いちごの出資受け入れを正式に決めることになっていた。

2020年1月31日にいちごアセットが契約を締結した際のJDIの株価は@70で、転換価格の@50は好ましいものであった。

しかしその後、新型コロナショックで株価は下落、3月12日には@50を割った。

これを受け、いちごアセットはMAC条項を発動し、出資額を100億円増やすことを交換条件に、C種優先株について転換価格を大きく引き下げた。


2020/4/27  「イベルメクチン」新型コロナに効果か 

大村智博士がノーベル医学・生理学賞を受けた抗寄生虫薬の「イベルメクチン」がCOVID-19に効果があるとする報告が出た。

4月29日付のSSRN(旧称 Social Science Research Network) に  “Usefulness of Ivermectin in COVID-19 Illness” というタイトルで報告された。

筆者は University of UtahのDr. Amit Patelほか。 (2月1日付でUniversity of Miami に移った。)

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イベルメクチン(ivermectin)は腸管糞線虫症の経口駆虫薬、疥癬、毛包虫症の治療薬である。

アフリカや中南米では、全身の皮膚にかゆみを起こし、視力を奪われる河川盲目症(オンコセルカ症)という寄生虫による感染症が流行していた。
1970年代には35の発展途上国で8500万人が感染の危機にあった。

Merck & Co., Inc.(米国とカナダ以外では独のMerck と区分さるため MSDの社名を使用)のDr. William Campbell 治療薬の開発を進めていたが、大村智・北里大特別栄誉教授が静岡県伊東市内のゴルフ場近くで採取した土壌から見付けた新種の放線菌「ストレプトマイセス・アベルメクチニウス」(Streptomyces avermitilis)が生産する物質を元にイベルメクチンをつくった。

イベルメクチンは、河川盲目症(オンコセルカ症)に加え、象皮病にもなるリンパ系フィラリア症、世界で数千万人が感染しているとされる糞線虫症(糞線虫が消化器官に寄生する寄生虫感染症)などにも効果があるということが分かった。

大村智特別栄誉教授とDr. William Campbell は2015年にノーベル医学・生理学賞を共同受賞した。

日本ではMSDが、腸管糞線虫症および疥癬用に商品名ストロメクトールで製造、マルホが販売する。

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COVID-19の治療薬を探すため、世界中で研究が行われている。

オーストラリアのビクトリア感染研究所の研究グループが、イベルメクチンを試したところ、新型コロナウイルスの増殖を抑え、ウイルス数を劇的に減少させる可能性があることを発表した。

研究グループは、イベルメクチンが、ウイルスのタンパク質が分子インポーチン(輸送タンパク質)と結合して核内移行するのを抑制すること、この結果様々なウイルスタンパク質の核内移行が阻害され、エイズウイルスや、デングウイルスの増殖が低下することを見付けていた。

タイではすでに、イベルメクチンをデングウイルス治療に使う360人規模の治験が進んでおり、抗ウイルス薬としてのイベルメクチンはすでに臨床段階にある という。

グループはイベルメクチンが新型コロナウイルスにも効くのではないかと考え、細胞を使った試験をしてみた。

結果は、ウイルスの増殖が24時間で1000分の1に低下した。

これは、イベルメクチンが新型コロナウイルスのタンパク質生成を阻害し、増殖を強く抑制したことを意味する。同研究グループは、まだ細胞を使った実験室内の結果であり、さらなる研究が必要としている。

        https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0166354220302011

 

米国チームは、イベルメクチンは実験室でウイルスRNA複製を減らすことを確認した。

チームは2020年1〜3月にアジアと欧州と北米の169の病院から、COVID-19に感染し治療を受けた人のデータを収集した。

イベルメクチン(150mcg/Kg)を使った704例と、使わなかった704例とを比べ、統計分析した。年齢、性別、人種、併存症、重症度評価を合わせた。

呼吸器を必要とした患者のうち、イベルメクチンを使わなかった患者は死亡率が21.3%だったのに対し、使った患者は7.3%と約3分の1にとどまった。
患者全体の死亡率は、イベルメクチンを使用した時の死亡率が1.4%で、不使用だった時(8.5%)と比べて約6分の1に抑えられた。

チームは「死亡率を減らし、入院日数を減らす効果もある。さらに研究が必要だが、治療方法の一つとして検討する材料にはなる」としている。

 

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トランプ大統領が新型コロナウイルスをめぐり、繰り返し、マラリアなどの治療に使われるヒドロキシクロロキンが有効だと思うと主張している。

2020/4/9 トランプ大統領、CVD-19治療に抗マラリア薬を絶賛

米食品医薬品局(FDA)は4月24日、抗マラリア薬の「ヒドロキシクロロキン」と「クロロキン」について、心臓に深刻な副作用を引き起こすリスクがあると警告した。医者の監督下で慎重に使うよう呼びかけた。

これらは新型コロナの治療薬として承認されていないが、医療現場では既に一定条件の下で使われている。FDAは「深刻で生命を脅かす可能性がある心臓への副作用が報告されている」と指摘し、副作用のリスクを抑えるため入念な事前検討や経過観察を医療関係者に求めた。


2020/4/27   BCGとCOVID-19(その3)

さきに2019/4/7「BCGはCOVID-19に効くか?」、2020/4/13    BCGとCOVID-19(補足)を書いた。BCGとCOVID-19の関連についての仮説を確かめた。

2週間後の状況を調べてみた。

 

100万人当たり死亡       

BCG注射実施 BCG亜株  
元資料 4/11 4/26 現在も 過去に 実施せず
米国 27.2 56.7 160.7     X TICE BCG実施なし
・・ イタリア 253.9 311.8 436.4     X Denmark BCG実施なし
フランス 120.6 202.2 346.5     Denmark  
ドイツ 17.5 30.4 67.3     Denmark 医療体制? 
オランダ   146.5 240.3     X   BCG実施なし
ベルギー   260.5 596.8     X  
  スペイン 259.7 338.9 481.8     Denmark  
ポルトガル 25.1 42.7 86.3     Denmark  
  英国 69.6 132.0 299.3     Denmark 1952年導入、2005年終了
アイルランド   58.1 215.3     Denmark 1937年に導入、現在中断
  スウェーデン 40.1 86.1 217.1     Denmark  
ノルウェー 12.9 17.0 35.6   Denmark ごく最近中止
  イラン 46.7 50.4 66.4     Pasteur1173P2(後期型)  
イラク 1.8 1.7 2.1     Japan  
豪州 1.4 2.1 3.2     Connaught 地理的に隔離、医療体制?
トルコ 6.9 11.9 32.1     ソ連/Bulgaria  
韓国 3.7 4.1 4.7     1種以上  
中国 2.5 2.3 3.2     ソ連/Bulgaria  
日本 0.6 0.7 2.8     Japan  
台湾 0.2 0.2 0.3     Japan?  

1) BCG全員注射をやったことのない4か国の死者は極めて多い。米国はまだ増えている。

2) 現在もBCG注射をしている国は、現在はしていない国境を接する隣国に比し、著しくひくい。

ポルトガル(86.3) vs スペイン(481.8)、ノルウェー(35.6) vs スウェーデン(217.1)、イラク(2.1) vs イラン(66.4)。

なお、アイルランドは当初、英国に比し著しく低かったが、急速に近づいている。

アイルランドは1937年に早くも導入したが、EU各国が中止ししたためか、2015年にワクチンがなくなり、それ以降生まれた子は接種されていない。
国家予防接種助言委員会等により「アイルランドではすべてのこどもの定期予防接種とする必要はない」との勧告が出されている。

3) 現在もBCG注射をしている国のなかでは、ポルトガル(86.3人)とトルコ(32.1人)が多い。他は全て5人未満。

ポルトガルの理由は不明。トルコについては多くの難民(注射をしていない)が含まれているのかどうか。

BCG全員注射をやったことのない4か国(160人以上)と、現在もやっている残りの国(5人未満)との差は驚くほど大きい。

 

 


 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

4) 現在BCG全員注射をやっていない国では、オーストラリア 3.2人(と ニュージーランド 3.7人)が極めて低い。地理的に隔離されていること、そのため準備期間が長かったことが理由か?

5) イタリア、オランダ、ベルギー、及びフランスに囲まれ、当初は相互移動が自由であったドイツが、現在BCG注射をやっていないにもかかわらず、死亡率が低いのが目立つ。

付記 下記の点が分かった。

上記でドイツはDenmark株としているが、これは旧西独の話で、旧東独ではソ連/Bulgaria株であった。いずれも1998年に接種の義務付けを中止した。
22歳以上の国民は予防注射をしているが、BCG亜株が異なっている。

上の統計の通り、ワクチンのうち、ソ連株や日本株を使う国は死亡率が低く、死亡率が高い国はDenmark株が多い。

報道によれば、旧西独地区の死亡率は旧東独地区の死亡率の3倍強という。

但し、統合時の西ドイツの人口は6,200万人、東ドイツは1,800万人で、亜株の違いによる影響は小さい。

これらから見ると、BCG注射が何らかの関係があるのではと思われる。

感染に影響するかどうかは、特に日本の場合、検査対象がごく一部に限られるため、不明であるが、少なくとも死者については関連がみられる。

 

 


2020/4/28 ExxonMobil、恵州大亜湾の新石油化学コンプレックスの着工式 

ExxonMobilは4月22日、恵州大亜湾の新石油化学コンプレックスの着工式をクラウドで行った。
式典は、北京の人民大会堂、広東省恵州市の会場、米テキサス州ダラス市の3会場をライブ配信でつなげる形で行われた。

韓正副総理が人民大会堂で参加、午前11時に建設開始を宣言した。

米国企業としては初の単独でのプロジェクトで、投資額は100億ドル、年産160万トンのエチレンクラッカーと誘導品を建設する。

ーーー

ExxonMobilは2018年9月5日、広東省政府との間で、恵州大亜湾石油化学工業団地に石油化学コンプレックスを建設する協議を進める基本協力契約に調印したと発表した。

計画では、年産120万トンのエチレン(原料は多様化)、2基の機能性ポリエチレン系列、2基の機能性ポリプロピレン系列を含む。2023年の操業開始を目指す。

基本契約では、ExxonMobilがLNGの供給を含めて参加する意向の恵州LNG受入基地の建設に省政府が協力することも確認している。(本件については詳細を明らかにしていない。)

エチレンと誘導品で最先端の製造技術を使用し、中国の石油化学政策(自給自足の多様化した原料ソース、燃料と価格品のバランス是正、最先端の競争力ある技術)の達成に向け支援するものとなるとしている。

2018/9/10 ExxonMobil、中国で新しい石化コンプレックス、LNG受入基地も 

ExxonMobilは2019年10月、Framework Agreement を締結した。

この時点までは、エチレン能力は120万トンとしていたが、今回の人民日報等の報道では160万トンとなっている。

計画は2段階で行われ、第一段階では下記のプラントを建設する。

エチレンクラッカー 160万トン
メタロセンポリエチレン 120万トン
高圧ポリエチレン 47万トン
耐衝撃性ポリプロ 42万トン
一般ポリプロ 42万トン

第一段階は2023年スタートで、その後に第二段階(内容不明)の建設を開始する。

ーーー

ExxonMobilは既に、福建省泉州に福建煉油(SINOPECと福建省政府の50/50JV)との石油精製・石化JVを持つ。

@Fujian Refining & Petrochemical Company Limited 

福建煉油の製油所(4百万トン/年)を12百万トン/年に拡張し、石油化学コンプレックスを新設

出資:ExxonMobil China Petroleum and Petrochemical Company Limited 25%
   
Saudi Aramco Sino Company Limited  25% 
   
福建煉油Fujian Petrochemical Company)50%

製品: エチレン 80万トン→ 110万トン
  PE 80万トン→96万トン
  PP 40万トン→55万トン
  芳香族 100万トン
  パラキシレン 70万トン

ASinopec SenMei (Fujian) Petroleum Company Limited.  ガソリン販売

 出資:Sinopec  55%
     ExxonMobil China Petroleum and Petrochemical Company Limited 22.5%
     Saudi Aramco Sino Company Limited 22.5%

2006/4/7 中国のエチレン合弁会社ー2

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恵州市大亜湾では、中海シェル石油化学が2期エチレンをスタートさせている。

2018/5/16  中海シェル石油化学、第二期計画スタートアップ 


2020/4/28 COVID-19対策、ベトナムの場合

ベトナムは中国と約1400キロの国境を接している。

初めて感染が確認されたのは1月23日で、中国武漢出身の親子だった。

人口は97百万人で、4月21日現在の感染者数は268人だが死者はいまだにゼロで、完全に抑え込んだ。感染者のうち約8割にあたる224人が既に回復した。

ベトナムはすでにほぼ全域で経済活動を再開させた。 ベトナム政府は4月23日、外出制限を緩和した。首都ハノイや南部ホーチミンではレストランや露店が営業を再開し始めた。タクシーも車両の台数に制限はあるが営業を許可された。

新たな感染者は4月16日から23日まで出なかった。4月24日に新たに感染が確認された2人は、特別便で2日前に日本から帰国したベトナム人だった。
 

死者ゼロは奇跡的なことで、ベトナム政府の強硬な3つの対策と、これを受け入れたベトナム国民の協力によるものである。

2003年に重症急性呼吸器症候群(SARS)が流行した際に民間病院での集団感染をきっかけに、5人が死亡、63人が感染した。当時はベトナムは感染者と接触者を徹底的に追跡し、隔離することで世界で最初にSARSの「制圧」を宣言した が、今回、同様の措置を行った。

「SARSと鳥インフルエンザの悪夢を経験していたので、市民もルールを守った」とされる。

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1月23日に中国・武漢出身の親子の感染が分かり、感染者はその後、2月13日までに計16人に増加した。

ベトナム政府はただちに第一の対策「検査」を実施した。

ベトナム政府は早くも2月1日に中国との旅客航空便の運航を停止し、2月5日には過去2週間以内に中国に滞在歴のある外国人の入国拒否を始めた。
(日本が中国からの入国の大幅な制限を決めたのは3月5日で ある。)

2月からは、主要都市に到着した航空便の乗客の体温検査と旅行詳細、健康状態についての自己申告義務を課した。
その後、陸路で主要都市に入る人や、政府機関ビルと病院に入る全員に これを義務づけた。

38℃以上の場合、検査のため近くの医療設備に移した。
自己申告で嘘をついた場合や自己申告拒否の場合は起訴される。

企業、銀行、レストラン、アパートは各自でチェック手続きをとった。

その後、全国で包括的な検査を行った。各都市に検査場所を設置し、全市民が検査を受けた。感染者が出た場所の近辺は素早くロックダウンされた。

検査のため、政府は3月5日までに3種のテストキット(全てベトナム製)を認定した。テスト費用は25米ドル以下で、90分以内に結果が出る。

 

第二の対策は、隔離とロックダウンである。

政府は2月央以来、外国からの帰国者とベトナム来訪の外国人は14日の隔離と検査を義務付けた。

感染者の行動を公表、接触した人は強制隔離した。

2月13日には6人の感染者が出たハノイ近郊の村全体が隔離された。

3月に全市と市中の特定地区をロックダウンし、都市間移動は厳しく制限した。

ダナン市では市民以外で同市に入る場合、政府指定の場所に2週間、自費で隔離された。

人口1万人の市が患者1人のために封鎖された。COVID-19治療センターでもあるハノイの有名な大病院のBach Mai病院はメンバーの一人が外部で感染し陽性になったため、3月後半に閉鎖された。

政府と民間の事業所は閉鎖、旅行産業及び航空産業は凍結された。

旧正月の休暇(1月23日〜1月29日)を終えて再開するはずだった学校は早々に休校が決まった。再開は繰り返し延期になり、結局、ほとんどの学校は1月下旬から休校 となった。

 

第三の対策は政府による広報活動である。

1月初め以降、政府は国民に対し、コロナウイルスの深刻さを広く伝えた。

「COVID-19は単なる悪性の風邪ではない、非常に深刻に考えないといけない病気で、自分自身と他人を危険にさらしてはいけない」とした。

毎日、異なる政府機関が情報を送った。症状や対策を全国にスマホを通じて送った。政府はZaloなどのチャットアプリと組んで、更新情報を送った。

町にはポスターが張り巡らされ、ウイルスを止めるのが市民の義務であると伝えた。

その一つ:‘To stay at home is to love your country’ (「家にとどまることが国を愛することだ」)

3月31日には切手も発行した。“Join hands to defend the COVID-19”   (Buu Chinh は郵便)

政府は陽性になった人、隔離を逃れた人の行動の詳細(氏名は除く)を公表した。

使用済みマスクのポイ捨てに月収分の700万ドン(約3万2000円)の罰金を課すなど、コロナ対策の厳格な罰則を設けた。

 

ベトナムはこれらの対策で世界に先駆けてコロナを封じ込めた。

 

ベトナム政府は4〜6月に毎月180万ドン(約8200円)を失業者に給付することを含めた総額62兆ドン(約2800億円)の経済対策を決めた。

 

主ソース https://theconversation.com/vietnam-has-reported-no-coronavirus-deaths-how-136646


2020/4/29 東北大学と住友化学、高純度アルミニウム箔使用のリチウムイオン二次電池の負極を開発 

東北大学金属材料研究所の研究グループと住友化学は4月27日、高純度アルミニウム箔のみの負極材で充放電時に起こる巨大体積ひずみを回避するという、新しい機構を解明したと発表した。

リチウムイオン二次電池は、正極、負極、電解質およびセパレータの主要4部材から構成されており、リチウムイオンが正極と負極間を移動することで充放電が行われ、負極は、充電時に正極から移動してきたリチウムイオンを取り込む役割を果たしている。

現在の負極は炭素系材料が主流だが、電池のさらなる高容量化のために、炭素系材料に比べて3〜10倍のエネルギーを蓄えられるシリコン、スズやアルミニウムなどの金属系材料の使用が期待されている。

しかし、それらの材料は、多くのリチウムイオンを取り込み大きなエネルギーを蓄えられる反面、充放電時に2〜4倍も膨縮するため内部の電極構造が崩れやすい点が、実用化の課題となっている。

東北大学と住友化学は、2019年4月より連携してリチウムイオン二次電池の高容量化のための新しい負極の研究開発を行ってきた。

今回、グループは、高純度アルミニウム箔の硬さを最適化することにより、課題であった充放電時の体積膨縮の制御が可能なことを見いだした。
  • 炭素系負極に比べて数倍のエネルギーを蓄えられるアルミニウム負極について、課題であった充放電時の体積膨縮を、高純度アルミニウム箔の使用により制御できることを見いだし、その機構を解明した。
     
  • さらに、従来の負極は、リチウムイオンを蓄える機能の炭素系材料と、電流を集め基材の機能も果たす銅箔の積層構造とする必要があったが、高純度アルミニウム箔の使用により双方の役割を両立する「一体型負極」となることを突き止めた。
  • これらの成果は、電池の製造工程の大幅な簡素化と高性能化に貢献するものである。
     
  • 高容量化や軽量化、低価格化なども期待できる。
     
  • 次世代電池として注目される全固体電池にも、本研究の成果を適用できる可能性がある。
     

技術の説明:

  • 高純度アルミニウム箔の硬さを最適化することで、充電時に、箔全面で均一なリチウムイオンの受け入れが可能になる
     
  • 全面均一にアルミニウム−リチウム金属間化合物が形成されるが、比率が1:1でなくても化合物を作るその金属間化合物の特異な性質によって、箔表面と深部とで濃度勾配ができる。それにより、箔深部にあるアルミニウムが全面一様に表面へ押し上げられて、厚み方向のみに体積膨張が進み、充電(リチウム化)が行われる
     
  • 放電時は、リチウム化により体積膨張したアルミニウム−リチウム合金電極箔の表面から、リチウムイオンが放出される。リチウムイオンを放出すると、次の充電においても効率的にリチウムイオンを受け入れるよう、多くの孔が開いたアルミニウム構造を作り出す
     
  • 箔の底部のアルミニウムは変化せず、電流を集め、電極構造を維持する銅箔の代替となる。すなわち、高純度アルミニウムだけで双方の役割を両立する一体型負極となり得る

 

本成果は、Nature Communications誌に4月13日付けでオンライン掲載された。
   Circumventing huge volume strain in alloy anodes of lithium batteries

 

住友化学グループはすでに正極材、セパレーターを事業展開しており、今回の成果を基に負極材にも参入を目指す。

まず3年後をめどに試作品を開発したのち事業化する考えで、事業売り上げ数百億円を視野に入れていく。

 

リチウムイオン二次電池用セパレータ(「ペルヴィオ®」)

ポリオレフィン基材にアラミド樹脂で耐熱層を形成することにより電池の安全性確保に寄与する点が特長で、主に車載用途で採用されている。

大江工場(愛媛県新居浜市)、韓国大邱市の子会社SSLMで製造

正極材(「エナヴィオ®」)

世界的に供給が不足しているレアメタルのコバ ルトを使用しない正極材

子会社田中化学研究所(福井市)で製造


2020/4/30    英国の「EU離脱後」交渉、難航

EUと英国は4月24日、英・EUの自由貿易協定(FTA)など将来関係を巡る交渉で進展が得られなかったと発表した。特に「公正な競争環境の確保」や「漁業」など4つの対立点で溝が埋まらなかった。

付記

EUと英国は5月15日、5日にわたった第3回会合(テレビ会議)を終えたが、「公正な競争環境の確保」や「漁業」など対立する重要分野での進展は今回も見られず、「期待外れだった」(EUのバルニエ首席交渉官)。

最大2年の期間延長を決定できる期限が6月末に迫る。6月初めに予定する次回会合で正念場を迎える。 

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英国とEUは2020年末までの「移行期間」中にFTAを締結すべく交渉することになっている。

3月2日から5日まで、将来的な貿易関係の最初の交渉を行なった。

漁業から金融サービスまで10分野の作業部会に分かれて専門的な協議を行った。

@製品貿易、Aサービス貿易・投資、B運輸(航空)、Cエネルギー(民間原子力協力) 、D漁業、Eオープンで公正な競争のための対等な競争環境(LPF:Level Playing Field)、F法執行・犯罪問題における司法協力、GEUプログラムへの参加、H移動・社会保障協力/テーマ別協力 、I水平的アレンジメント・統治――の10分野にわたる。

第1回の交渉を終え、EU側のバルニエ首席交渉官は、「公平な競争条件」の確保や漁業権、司法協力などを挙げ、双方に「多くの非常に深刻な違いがある」と述べた。互いを尊重し合えれば「合意はまだ可能だ」とも強調した。

英国は6月までに合意の大まかな概要をまとめ、9月までに確定させることを目指している。6月に交渉が英国の望む方向へと進んでいるかを見極め、交渉を継続するか 、合意なしに12月31日に離脱する準備に「集中する」かを決定する方針。

2020/3/12 英国とEU、貿易交渉を開始 

3/18〜20日に計画した第2回会合は新型コロナウイルスの影響で中止に追い込まれた。

EUのバルニエ首席交渉官は3月19日、新型コロナウイルスに感染したことを明らかにした。

3月20日には英国側の責任者をデービッド・フロスト氏が新型コロナウイルスの症状を示し、自主的に隔離措置を講じ た。

EUと英国は4月15日、交渉日程の変更で合意した。テレビ会議に切り替え、4〜6月に毎月1回(4月20日、5月11日、6月1日から)1週間程度の交渉会合を開く。6月末までに首脳級のハイレベル会合を開き、交渉の進捗を確認する。

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今回、EUのバルニエ首席交渉官は「失望した」と表明した。英政府の報道官も、「交渉の進展は限定的だった」と説明した。

特に溝が深いのが「公正な競争の確保(Level Playing Field」 である。

EUの欧州委員会は2月3日、基本方針案を公表したが、関税ゼロを目指すFTAの締結の条件として、労働者や環境保護、国家補助の規制、競争法、税制などのルールをEUの水準に合わせるよう求めることを明確にした。

英国が過度な規制緩和で不当に競争力を高めて、域内企業が競争上、不利になることを恐れ、「競争を開かれた公平なものにする必要がある」と、関税・数量割り当てゼロのFTAは、Level Playing Fieldの徹底した履行義務が条件としている。

英国政府も2月3日、交渉の方針を示した声明文を公表したが、政府補助金や環境・労働規制、税制などに関する「公正な競争条件」については、一般的なFTA以上に規制を連動させることは認めないとの考えを明示した。

ジョンソン英首相は2月27日、EUとの間にカナダ型のFTAが成立する見通しが立たないのであれば、6月にEUとの交渉を打ち切る意向を鮮明にした。

「対等な主権を持つ二者間の友好的な協力に基づく関係」を目指しており、「英政府が自国の法律や政治生命に対して自ら統制を取れないような取り決めについては一切交渉しない」とした。

カナダとEUのFTAにはこのような「公正な競争条件(Level Playing Field)」の規定はない。

今回もEUは、英国が税制や雇用政策などの面でEUルールに合わせるべきだとの立場を変えておらず、英側は「EUが他の国と結んだFTAの前例にはないことを要求している」と批判し、一歩も譲らない姿勢 を見せた。

本件については、英国側の主張が正しく、EUの主張は無理押しである。

 

漁業に関する具体的な進展はなかった 。EUは、「漁業に関する公平かつ持続可能で長期的な解決策を含まない将来の経済連携に合意するつもりはない」としている。

1983年にEEC水域に対する年間総許容漁獲高(TAC)が導入され、毎年、加盟国間で配分されるようになった。

英国の漁民は割り当てられた漁獲枠に制限される一方で、他国漁船が自国EEZで操業するのを黙認せざるを得ない状態に長年置かれてきた。

英国はEU離脱で主権を回復し、領海内での漁業を自国で管理しようとしており、逆にEUは従来通りとすることを求めている。

但し、英国の弱みは、現在でも水産物と水産加工品の4分の3を輸出し、輸出額の65%はEU市場向けであることである。英国が水域内の漁獲量を増やした場合、その輸出先はEUとなる。
EUは
EUの漁船の英国水域での操業継続が認められない場合、英国の水産品に関税をかけるとしており、その場合は英国の漁業には大打撃となる。

今回、「公正な競争環境の確保」、「漁業」とあと2つの対立点で溝が埋まらなかった。

5、6月に1回ずつ交渉を重ねる予定だが、妥結の道筋は見えていない。

離脱協定によると、移行期間の延長は1回に限り、1年あるいは2年の期間でされるが、そのためには、6月30日までに双方で合意・決定する必要がある。

拙速な交渉は避けて移行期間を延長すべきだとの声は強まっているが、英国側は今回の交渉後も依然として、移行期間の延長には応じない方針であり、FTAなしの 離脱となる可能性も出てきた。そうなれば、英・EU双方の経済に甚大な影響を与えるのは避けられない。


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