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2021/1/1 中国・EU、投資協定に大筋合意 

中国と欧州連合(EU)は2020年12月30日、「包括的投資協定」(CAI: Comprehensive Agreement on Investment)を結ぶことで大筋合意した。約7年越しの交渉がようやく妥結した。
テレビ会議には中国から習近平国家主席、EUからミシェル大統領とフォンデアライエン欧州委員長、ドイツのメルケル首相、フランスのマクロン大統領が出席した。

発効には少なくともあと1年かかるとみられているが、発効すれば世界2位と3位の経済規模を持つ国と地域の結び付きが一段と強まり、EU企業は中国市場への参入に弾みがつく一方、中国も東アジア包括的経済連携(RCEP)に続く大型協定で存在感を高める。

付記

EUの欧州議会は5月20日、中国との投資協定の批准を巡り、中国がEUの政治家に対する制裁を撤回するまで手続きを凍結する決議を採択した。採決結果は賛成599、反対30、棄権58。

中国は、新疆ウイグル自治区での人権侵害を巡り西側諸国が中国当局者に制裁を科したのに対抗し、3月にEUの政治家や外交組織、シンクタンクなどに制裁を導入した。


習主席は、投資協定締結は市場開放に向けた中国の決意と自信を示しているとし、新型コロナウイルス感染拡大の影響からの回復過程で世界経済が刺激されるほか、相互の信頼感増強に寄与すると述べた。
フォンデアライエ委員長は「投資協定は対中関係の重要な一里塚になる」と述べた。

新型コロナの打撃を受けた経済を再生させたいEUと、米国との対立の長期化をにらみ、独自の経済圏づくりを急ぐ中国の思惑が一致した。

これに対し、バイデン次期政権で大統領補佐官(国家安全保障担当)に就任するSullivan氏は、「欧州のパートナーと、中国の経済慣行をめぐる共通の懸念について早期に協議したい」とツイッターで発信した。バイデン陣営は同盟国と連携し、中国に貿易ルールの順守を迫る方針を示している。   

投資協定は投資環境の整備が目的で、関税の引き下げは伴わない。中国はFTA交渉を望んだが、EU側が時間がかかるとして、投資協定にした。

EU企業は電気自動車、民間医療機関、不動産、広告、海運、通信クラウドサービス、航空券予約システムなどの分野で中国で事業展開が許可される。これまでは事業展開の条件として中国企業との合弁を組む必要があったが、この条件の一部は撤廃される。
自動車産業では合弁会社の要件を段階的に廃止するほか、新エネルギー車の市場が開放される。
私立病院事業の合弁要件が緩和されてEU企業が北京など主要都市に進出できるようになる。
現在は禁止されているクラウドサービスへの参入が50%の株式取得を上限に認められる。

中国は参入企業への技術の強制移転を禁止する。
補助金の透明性を高め、国有企業が外国投資家を差別的に扱わないようにすることも確約した。

合意に違反した場合は法的な責任を問える紛争解決メカニズムを設立する。

交渉で最後まで対立した中国での労働者保護については、中国側は強制労働を禁じる国際労働機関(ILO)の関連条約の批准を目指すことを約束した。

中国商務部は、欧州の投資市場はすでに比較的開放されているが、今回合意された投資協定で、中国企業はEU域内で法的拘束力のある市場アクセスが得られると指摘した。

 

ーーー

EU発表の「包括的投資協定」の概要

EU AND CHINA COMPREHENSIVE AGREEMENT ON INVESTMENT

China is one of the largest and fastest growing economies in the world, with a domestic market of 1.4 billion consumers.
Increasing EU business relations with China will help boost
EU economic growth.

The EU-China Comprehensive Agreement on Investment will:

guarantee an unprecedented level of access to EU investors in China
allow EU companies to buy or establish new companies in key sectors
help level the playing field for EU companies in China
commit China to rules on state owned enterprises and transparency in subsidies

Market access commitments by China

 Manufacturing:

More than half of EU investment in China is in the manufacturing sector.
This is the first time China has committed to market access in this sector with a trade partner.
China's commitments in this sector include cars (traditional and new energy vehicles), production of transport and health equipment, and production of chemicals among others.

 Services:

Significant, binding commitments in financial services, international maritime services, environmental, construction and computer services.
Further opening in services related to auxiliary air transport services, cloud services, and private health services.

Commitments on fair competition

 State owned Enterprises (SOE) :

China to ensure that SOEs active in the market take decisions solely based on commercial considerations.
China to ensure that SOEs do not discriminate European companies when they buy goods or services from them or sell goods or services to them.
China to share information and consult if the behaviour of SOEs affects EU investors.

 Transparency in subsidies:

・Obligations on transparency as regards subsidies provided in the services sector.
・Commitment to share information and consult on specific subsidies that could have a negative effect on the investment interests of tht EU.

 Forced technology transfers:

•Clear prohibition of investment requirements that compel transfer of technology.
•No interference in contractual freedom in technology licensing.
•Protection of confidential business information.

 Standard setting, authorisations, transparency:

•Equal access to standard setting bodies for EU companies.
•Enhanced predictability in authorisations.
•Stronger legal certainty through transparency rules for regulatory and administrative measures.

 Sustainable development + effective implementation and dispute settlement:

・Commitments to respect core ILO principles and to effectively implement the ratified ILO Conventions.
・Specific commitment on the ratification on ILO fundamental Conventions on forced labour.
・Commitment to effectively implement the Paris Climate Agreement.
・Transparent resolution o disagreements by an independent Panel of experts and with the involvement of civil society.


2021/1/2 米議会、国防法案の大統領拒否権発動を大差で覆す、大統領が景気対策予算案につけた条件も通らず

米上院は1月1日、Trump大統領が拒否権を行使した国防権限法案を81対13の2/3以上の賛成で再可決した。下院も既に再可決している。現政権で議会が大統領の拒否権を覆したのは初めて。

1月3日に新議会が始まるため、ギリギリの採決だった。

トランプ大統領は、2021年度予算案と新型コロナウイルス対応景気対策予算案を一旦拒否し、12月27日に一転、これにサインしたが、いろいろ条件を付けた。

2021会計年度の国防予算の大枠を定める国防権限法案にも拒否権を発動した。海外駐留米軍の性急な削減を制限することや、南北戦争での南部連合軍にゆかりのある米軍基地名の変更条項などを問題にした。

これらについて、下院は民主党主導ですべて対応したが(支給額の1人当たり2000ドルへの引き上げ法案を可決、国防権限法の拒否権を覆す2/3以上での再可決)、上院で共和党の意見がまとまらず、混乱し た。

1月3日には現メンバーによる議会は終了し、新メンバーによる議会がスタート、ペンディングの法案は全て廃止となる。

今回、国防法案は再可決したが、 下院が可決した2000ドルへの引き上げは諦めた。先に議決し、大統領がサインした2021年度予算案と新型コロナウイルス対応景気対策予算案(1人当たり600ドルの支給)が成立 する。

 

国防権限法については、下院は12月28日、これを2/3以上の賛成で再可決した。大統領の拒否権を覆すには上院、下院がそれぞれ2/3以上の賛成が必要で、上院の決定待ちとなっていた。

  共和党 民主党 無所属 合計
賛成 109 212 1 322
反対 66 20 1 87
棄権 20 1   21

合計

195 233 2 430

1月1日の上院の採決は下記の通りで、共和党の反対は7名のみで、40名が大統領の意向に反し、賛成した。

  共和党 民主党 民主系
無所属
合計
賛成 40 40 1 81
反対 7 5 1 13
棄権 5 1   6
合計 53→52 45→46 2 100

11月3日に投票が行われたアリゾナ州の補欠選挙で、元NASA宇宙飛行士の民主党のMark Kellyが共和党現役(議員辞任で知事が一時的に指名)のMartha mcsallyに勝利した。
補欠選挙のため、一般の当選者の就任の1月3日を待たず、12月に就任、共和党が1名減となった。

大統領はツイッターで以下の通り述べた。

Our Republican Senate just missed the opportunity to get rid of Section 230, which gives unlimited power to Big Tech companies. Pathetic!!!
Now they want to give people ravaged by the China Virus $600, rather than the $2000 which they so desperately need. Not fair, or smart!

国防法案については述べず、景気対策予算案につけた条件(2000ドルへの引き上げ、Big Techを利するSection 230 の再検討)が通らなかったことを「痛ましい」としている。

ーーー

経緯は次の通り。

トランプ大統領は、2021年度予算案と新型コロナウイルス対応景気対策予算案を一旦拒否し、12月27日に一転、これにサインしたが、いろいろ条件を付けた。

新型コロナウイルス追加景気対策予算案の、1人当たり600ドルの支給に対し、成人には2000ドル、子供には600ドルを渡すこと。
Big Techを利する
Section 230 を再検討し、取り止めるか、大幅変更すること
今回の大統領選挙で発生した多くの不正投票に強く対応すること

米下院は12月28日、9000億ドルの新型コロナウイルス対策に盛り込んだ家計への600ドルの現金給付案を2000ドルに積み増す単独法案を賛成多数で可決した。

  共和党 民主党 無所属 合計
賛成 44 231   275
反対 130 2 2 134
棄権 21     21

合計

195 233 2 430

これに対し、共和党上院トップのMcConnell 院内総務は12月29日、@一人当たり2000ドルへの引き上げ、ASection 230の削除、B選挙制度検討の委員会を設置し、議会へ勧告を含めた法案を提出した。大統領の要請であるとし、3つを一括法案にするとした。

実際には、上院での法案提出を支配するMcConnell 院内総務が、2000ドルへの引き上げに反対、民主党などが反対する他の項目との一括法案にしたとされる。この案は共和党を含め反対が強く、可決される見込みはなく、McConnell 院内総務も諦めた。

その間、トランプ大統領はツイッターで2000ドル案を要求し続け た。

Give the people $2000, not $600. They have suffered enough!

$2000 for our great people, not $600! They have suffered enough from the China Virus!!!

Unless Republicans have a death wish, and it is also the right thing to do, they must approve the $2000 payments ASAP.
$600 IS NOT ENOUGH! Also, get rid of Section 230 - Don’t let Big Tech steal our Country, and don’t let the Democrats steal the Presidential Election. Get tough!

$2000 ASAP!

「ひ弱で疲れ切った共和党の“leadership” 」が国防権限法案を通そうとしているとし、これをやめて、もっとよい法律にせよとし、さもなくば交代せよとした。(これについては後記)

Weak and tired Republican“leadership” will allow the bad Defense Bill to pass.
Say goodbye to VITAL Section 230 termination, your National Monuments, Forts (names!) and Treasures (inserted by Elizabeth “Pocahontas” Warren), 5G, and our great soldiers being removed and brought home from foreign lands who do NOTHING for us.
A disgraceful act of cowardice and total submission by weak people to Big Tech.
Negotiate a better Bill, or get better leaders, NOW! Senate should not approve NDAA until fixed!!!....

民主党の Chuck Schumer院内総務は2日続けて、下院で議決した2000ドル法案を議決するよう求めた。

2000ドル案については、共和党内で意見が分かれている。

1月5日の決選投票を控えるジョージア州の2議員を含め、多くの議員が支持を表明している。
2024年の大統領候補とみなされているJosh Hawley、Marco Rubio 両議員は2000ドル案を推進した。
以前のリーダーNewt Gingrichは2000ドルを決めないとジョージア州で2議席を失い、上院で敗者になると警告した。

しかし、大部分の共和党議員は、追加が4000億ドルにも達するとして反対している。
討議では、「4000億ドルもの追加は多すぎる。議会は既に十分の額をCOVID支援に支給している」との発言があった。

しかし、McConnell 共和党院内総務は「必要としない多くの家庭に金が配られる」「もっと支援が必要な家庭があるなら、上院は限定した支援策を考える。しかし借入金での一斉支払いは駄目だ(Not another firehose of borrowed money)」と述べ、大統領の圧力があっても、意見を変えないことを明らかにした。2000ドル案について採決しないことを決めた。

議場で、「民主党主導の下院が通した2000ドル法案は、上院ではすぐに通るような現実的な道はない」と述べた。「上院は、追加で借金して、支援を必要としない民主党の友人に支払うようなことはしない」と付け加えた。

1月3日には新議員が宣誓、現在の議会は終了するため、既に可決されている600ドルを2000ドルに増やす法案は消えたも同様である。


国防権限法案についても、下院は大統領の拒否権を否定する2/3以上で可決したが、上院では難航した。

無所属のBernie Sanders 議員は2000ドル案が議決されるまでは国防権限法案の議決を妨害するとしている。議場でMcConnell 共和党院内総務に対し、「地元で選挙民に聞けば、直ちに2000ドルが必要としていることが分かる」と伝えた。

しかし、McConnell 院内総務は12月30日夜、討論終結を発動、討論を制限、Sandersによるfilibusterのオプションを封じた。

この結果、上院は1月1日に国防権限法案についての採決を行った。 同時に2000ドル案の議決可能性は消えた。

ーーー

国防権限法案について:

4500ページにも及ぶ総額7400億ドルの国防権限法案を巡り上下両院の共和、民主両党は何カ月も交渉を続けてきた。

米軍兵士の昇給や戦闘機および戦艦の購入数、ロシアや中国など競合国への対応などを幅広く網羅している。

法案はドイツ駐留米軍の規模維持を支持する内容となっている。国防総省は2020年7月に、トランプ大統領の決定に従い、 影響評価を行わずに、ドイツに駐留する約3万6000人のうち約1万2000人を削減すると発表したが、議会が阻止に動いた。

南北戦争の南軍を讃える全ての名称、シンボル、ディスプレイ、モニュメント、道具などを3年以内に取り除くことを命じている。

軍の施設にはBraxton Bragg将軍の名前を付けたFort Bragg 、Robert E. Lee将軍からの Fort Lee などが有名。

第二次大戦中に欧州と日本でモニュメント、美術品、記録等を破壊から守った人々を評価するという条文もある。

your National Monuments, Forts (names!) and Treasures (inserted by Elizabeth "Pocahontas" Warren) 
〔大統領は以前に、
Elizabeth Warren上院議員をけなし、400年前のインデアンの女性Pocahontas から採った渾名をつけた。〕

中国の5G通信技術(Huawei製のこと)を使用する国には武器や軍隊を送るのを再検討するよう国防総省に求める条項もある。
(トランプが、これをなぜ非難するのか不明)

 


2021/1/3      中国、長江で10年間全面禁漁  

中国政府は中国最長の河川、長江(揚子江:約6380 km)で10年間の全面禁漁措置を1月1日に開始した。禁漁の対象は長江主流のほか、主な支流や流域の湖にも及ぶ。
2020年1月1日から流域の332の保護区で禁漁としたが、今回、全面禁漁とする。

年末には取締り体制が整った。

当局者は長江の魚種が「枯渇に近付いているため」と説明した。2003年から禁漁時期を決めていたが、効果がないため、全面禁漁とする。

長江は淡水魚の一大産地として名をはせてきた。固有種も多く、地元の料理店などで人気だった。

中国政府の2013年の報告書では、長江上流で生息する魚種はかつての143から17に減ったとする。年間漁獲量が1954年の約43万トンから10万トン未満に落ち込んだ。

中国政府は漁獲減の背景として、流域生態系の破壊が進んだことを認め、生態系破壊の主な原因として、乱獲、工場や住宅の排水による水質汚染、ダム建設などを挙げる。
今回の禁漁は乱獲に対応した措置で、長江の魚の繁殖周期は3年前後とされ、
中国政府は禁漁期間の妥当性について「10年間に3回の周期を経れば資源は倍増する」と主張する。

専門家の間では、流域で多数建設されてきたダムが最大の原因との見方が有力で、禁漁の実効性に疑問も出ている
2009年に水力発電などを目的とする世界最大級の三峡ダムが完成した。現在も、長江上流で三峡ダムに次ぐ規模の大型ダムが建設されている。 ダム下流では、「ダム建設後、魚が取れなくなった」との声が強い。

失業する漁師は30万人規模に達する。
流域では禁漁措置の実施を控え、漁師約23万人が既に廃業し、漁船11万隻が廃船となった。中国政府は廃業者らに計約200億元(約3170億円)の補償金を支給し、転職を支援するとするが、簡単ではない。


2021/1/4 インド、COVID-19 国産ワクチン承認 

インドの医薬品規制当局は2021年1月3日、インドのワクチン製造会社Bharat Biotechと政府系研究機関 Indian Council of Medical Research - National Institute of Virology が開発した不活化ワクチン「Covaxin」の緊急使用を承認した。

また、Oxford大学 / AstraZenecaのワクチンも承認した。これについては英政府が2020年12月30日に承認している。


AstraZenecaのワクチンAZD1222はインドでは Covishield と呼ばれる。

AstraZenecaはワクチンを増設し、開発途上国にも供給すると発表している。

同社は、感染症流行対策イノベーション連合(CEPI)とGaviワクチンアライアンスと提携し、3億回分を年末までに引き渡しを開始する。  

AstraZenecaはインドのワクチン大手Serum Institute of India (SII) とライセンス契約を締結、10億回分を低・中所得国に供給することにしている。このうち、一定量(発表なし)はインド向けで、残りはGAVI によって他の低所得国に配られる。

2020/6/8 AstraZeneca、新型コロナウイルスワクチン増産、開発途上国に供給 

Serum Institute of India がこれの緊急承認をインド政府に要請した。

 

先進ワクチンの状況

Developer/manufacturer Platform Type doses Timing Route Phase 承認
 1  1/2  2  3
University of Oxford/AstraZeneca Non-Replicating Viral Vector ChAdOx1-S 1*    IM  

UK  2020/12/30

CanSinoBiological Inc./Beijing Institute of Biotechnology Non-Replicating Viral Vector Adenovirus Type 5 Vector 1   IM   〇   
Gamaleya Research Institute(ロシア) Non-Replicating Viral Vector Adeno-based 2 0, 21 days

 

IM  

Sputnik V
ロシア 2020/8
 

Vektor (State Research Center for Virology and Biotechnology)   ロシア                  

EpiVacCorona
ロシア 2020/10

 

Janssen Pharmaceutical (J&J) Non-Replicating Viral Vector Ad26COVS1 2 0,56 days IM      
Sinovac(中国) Inactivated Inactivated 2 0, 14 days IM      
Wuhan Institute of Biological Products/Sinopharm Inactivated Inactivated 2 0,14 or
0,21 days
IM  

 

 
Beijing Institute of Biological Products/Sinopharm Inactivated Inactivated 2 0,14 or
0,21 days
IM    

 

中国 2020/12/31

Bharat Biotech (インド) Inactivated Whole-Virion Inactivated 2 0, 14 days IM    

Covaxin
インド 2021/1/3

Moderna/NIAID(米国立アレルギー感染症研究所) RNA LNP-encapsulated mRNA 2 0, 28 days IM  

FDA 2020/12/17
EU 2021/1/6

BioNTech(独)/Fosun Pharma(上海復星医薬)/Pfizer       RNA 3 LNP-mRNAs 2 0, 28days IM  

 

UK 2020/12/2
FDA 2020/12/11
EU 2020/12/21
WHO 2020/12/31

Novavax(米) Protein Subunit Full length recombinant SARS CoV-2 glycoprotein nanoparticle vaccine adjuvanted with Matrix M 2 0, 21 days IM    

2020/12/18 COVID-19関連の動き


2021/1/4 米下院の議長に民主党のNancy Pelosi 女史を再選 

米下院は、新会期初日の1月3日、下院議長の選出を行い、民主党のNancy Pelosi 氏を改めて選出した。7票差の僅差であった。

80歳の高齢であり、今回、民主党が改選前の232議席から222議席へと減らしたこともあって、党内での反乱があった。

投票結果は下記の通りで、民主党から6人がPelosi氏に投票しなかった。(他人に2票、無投票が4人)

  民主党 共和党 合計
民主党  Nancy Pelosi  216 0 216
共和党 Kevin McCarthy院内総務 0 209 209
民主党 Tammy Duckworth上院議員 1 0 1
民主党 Hakeem Jeffries下院議員 1 0 1
“出席”と叫び、無投票 3 0 3
棄権 1 2 3
合計   (未定 2) 222 211 433

 

下院の定員は435だが、現在2議席が決まっていない。

1) ルイジアナ州 5区

11月3日の選挙では得票が50%を超えた候補がおらず、12月5日に上位2者が決選投票を行い、共和党のLuke Letlow氏が勝利した。

しかし、そのLuke Letlow氏が12月29日に新型コロナで死去した。(12月18日に陽性が判明、入院していた。)

2021年3月20日に選挙が行われる。

2) ニューヨーク州22区

共和党のClaudia Tenneyが民主党の現役 Anthony J. Brindisiに29票差で勝っているが、疑惑票が約2500票あり、裁判になっている。近く裁判所の判断が出る。


2021/1/5 米国上院議員選出の決選投票 

ジョージア州の上院議員2名の決選投票(run-off )が1月5日に行われる。

米ジョージア州は12月31日、有権者280万人超が郵便投票を含む期日前投票を済ませたことを明らかにした。投票者数は過去最多となる見通し。僅差での決着となる見通しで、結果判明まで数日あるいは数週間かかる可能性がある。

ジョージア州の規定では得票率の差が0.5ポイント以下だった場合、候補者が再集計を申し立てることが可能。

ーーー

11月3日の選挙の結果、上院は次の通りとなった。

  共和党 民主党 民主系
無所属
未定
(決戦)
合計
改選前 53 45 2   100
非改選 30 33 2   65
改選 補選 21+2 12 0   35
結果 補選   1   1 2
改選 20 12   1 33
改選後 50 46 2 2 100

この選挙で、ジョージア州の退任上院議員の後任を決める特別選挙と任期到来による通常選挙とも、いずれの候補者も50%以上を確保できなかったため、当選者が決まっておらず、今回、決選投票となる。

仮に2議席を民主党が取ると、50対50となる。法案の議決が50対50となった場合は、上院議長を兼ねる副大統領が1票を投じるが、民主党のKamala Harrisが副大統領になるため、民主党が上院、下院をともに抑えることになる。

逆に1人でも共和党が選ばれると、上院は共和党支配となり、バイデン政権の運営は難しくなる。

このため、両党とも必死である。

大統領選挙と同様、これまで投票していなかった層が多数、郵便投票で期日前投票したことが影響を与える。

また、共和党が上院で、新型コロナウイルス追加景気対策予算案での一人当たり支給額を600ドルから2000ドルに引き上げる大統領主張に反し、これを通さなかったこと(民主党主導の下院は法案を可決した)が結果に影響すると思われる。

トランプ大統領は、一旦署名を拒否した追加景気対策予算法案にサインしたが、今回の決選に出る共和党David Perdue候補が大統領に法案に署名するよう働き掛けたことが明らかにされた。経済対策法の成立が遅れれば、決選投票で自身とKelly Loeffler候補に逆風になると懸念した。

共和党の2候補は、上院での2000ドルに引き上げる法案に賛成を表明していた。

ーーー

特別選挙は2019年12月31日に辞任した共和党Johnny Isakson議員の後任で、一時的に州知事が共和党のKelly Loefflerを指名していたが、正式に選任するものである。
任期はIsakson議員の残り任期の2023年1月3日までである。(2022年11月選挙)

11月3日の投票結果は下記の通りで、共和党の票が割れ、臨時議員のKelly Loefflerは2位、民主党1位も32.9%にとどまった。

候補者 得票数 得票率
Raphael Warnock(D)
1,617,035 32.9%
Kelly Loeffler(R)
1,273,214 25.91%
Doug Collins(R)
980,454 19.95%
Deborah Jackson(D)
324,118 6.6%
Matt Lieberman(D)
136,021 2.77%

通常選挙の結果は下記の通りで、再選を狙う共和党のDavid Perdue候補は49.73%で、わずかに50%を下回った。

候補者 得票数 得票率
David Perdue(R)
2,462,617 49.73%
Jon Ossoff(D)
2,374,519 47.95%
Shane Hazel(LIB)
115,039 2.32%

今回の決選投票では、それぞれの上位2名が対決する。

なお、共和党のDavid Perdue議員は12月31日、新型コロナウイルスの陽性者(選挙関連者)への濃厚接触が分かり、自主隔離した。夫婦ともに陰性ではある。



2021/1/5 イラン、韓国のタンカーを拿捕、「化学物質で海を汚染」と主張 
 
イラン正規軍の革命防衛隊の海軍は1月4日、ペルシャ湾を航海していた韓国船籍のタンカー「韓国ケミ(Hankuk Chemi )」号を海洋の化学物質汚染を理由に拿捕し、自国の港であるBandar-e Abbasに移動させた。

同船舶は7200トンのエタノールを積み、サウジアラビアのAl-Jubail からペルシア湾を航海し、アラブ首長国連邦(UAE)東部のFujairah港に向かっていた。



同船舶は韓国船籍で、韓国人船員5人のほか、インドネシア・ベトナム・ミャンマー国籍の船員が乗船している。

拿捕船舶の船籍はDM Shippingで、イタリアのd'Amico Tankerが51%、三菱商事が49%出資する。同社は「公海上であり、海上汚染はなかった」と説明した。

英国海軍情報交換センター「英国海運貿易オペレーション」はイラン当局とこの船舶の間に相互交信があり、その後船舶がイラン海域に航路を変更したと伝えた。

この海域では、これまでイラン−米国間の緊張が高まりを受けて、第三国の商船やタンカーがたびたびイラン当局に拿捕される事件が発生してきた。

オマーン・マスカット港の南海域で作戦を遂行していた韓国海軍「清海部隊」がホルムズ海峡に緊急出動した。

 

ロイター通信は、今回の事件が、米国の経済制裁で韓国銀行がイランの石油販売代金を凍結している問題(後記)によって両国間の緊張が高まった状況で発生したと指摘した。

イラン外務省は同日、韓国による70億ドルの資金凍結解除に向け協議するため、韓国当局が数日中にテヘランを訪れる見通しと発表した。

米国務省はイランに対し、拿捕した韓国船籍のタンカーを直ちに解放するよう求めるとともに、イランが経済制裁から逃れるために航行の自由を脅かしていると非難した。「イランがペルシャ湾で航行権や自由を脅し続け、国際社会による制裁圧力を和らげようとしているのは明らか。われわれはタンカーの即時解放を求める韓国の呼び掛けに連なる」と述べた。

ーーー

イランが返済を要求している代金は、韓国のIBK企業銀行とウリ銀行に開設されたイラン口座にある70億ドル。

韓国は2010年からイラン産コンデンセートなどを輸入して、その代金を2つの口座に入金し、イランはこの代金を利用して韓国の物品を輸入してきた。

米国がイランとのドルの取り引きを禁止したためにとられた方法で、米国もこれを認めていたが、2019年9月、米国がイランに対する制裁を強化したことで2つの口座が凍結された。

トランプ米大統領は2018年5月8日、欧米など6カ国とイランが結んだ核合意から離脱すると表明した。

米国は2018年11月5日、イランの石油や金融部門を中心に経済制裁第2弾を再開した。

米政府は2019年4月22日、イラン産原油の禁輸措置について、日本を含む8カ国・地域に対する適用除外措置を5月1日から撤廃することを決定した。

トランプ米大統領は2019年9月18日、イランへの大幅な制裁強化を指示したと表明した。これにより、イランの韓国内の口座が凍結された。

これを受けてイランは、韓国が違法な制裁に賛同しているとして、韓米関係を「主従関係」と表現しながら、強く批判している。

韓国は、2020年5月から制裁に触れない人道的な取り引きとして、凍結された口座の代金を利用してイランへ医療品を送っているが、取り引き額は数十万ドル規模に限られている。

 


2021/1/5   サウジ、カタールとの国境閉鎖を解除

サウジアラビアは同じアラブの隣国カタールと、2017年6月の断交とともに導入した陸、海、空路の閉鎖を解除した。
仲介役のクウェートが1月4日、カタールとサウジが封鎖していた陸海空の国境を再び開放することで合意したと明らかにした。

トランプ米政権も仲介に当たっていた。イランに対する包囲網を強化する狙いがあるとみられる。

ペルシャ湾岸のアラブ諸国でつくる湾岸協力会議(GCC)が1月5日に開く首脳会議にカタールのタミム首長が参加する。
サウジのムハンマド皇太子は、首脳会議がGCC諸国を「結束させる」と強調した。

封鎖解除を受け、サウジなどとカタールの国交回復への動きが一気に加速するとみられる。

ーーー

2017年6月5日、サウジアラビアを中心としたペルシャ湾岸諸国(サウジアラビア 、UAE、バーレーン)とアフリカ大陸にあるイスラム国家の一部(エジプト、イエメン、モルディブ)は、Qatarに対して国交断絶を表明した。

断交理由には、サウジアラビアと対立するイランへの過度な接近やムスリム同胞団への支援を挙げている。

ムスリム同胞団については、エジプトが2013年に、サウジアラビアが2014年にテロ組織に指定している。

Qatar外相は「事実無根。決して降伏しない」と表明し、対抗姿勢を打ち出した。

その後、サウジアラビア、UAE、バーレーン、エジプトの4カ国は、Qatarに対し13項目にわたる要求を送付した。

要求の中には、アルジャジーラの閉鎖、カタール国内に存在するトルコ軍基地の停止、イランとの外交関係の縮小、過激派組織との関係断絶など があると報じられた。

Qatarはこれらの要求を拒否したうえで、各種の対抗措置をとった。

経済制裁が違法だとしてWTOに提訴するとともに、禁輸となった物資の輸入先をオマーンやインド、イラン、トルコへ切り替え。
LNGの年間生産量を従来の7700万トンから1億トンへ増やす計画を発表 。
欧米から戦闘機やコルベットを購入するとともに、トルコ軍と合同軍事演習を実施。

2018年4月、サウジアラビアがQatarとの国境線沿いに運河を建設する構想が報道された。 報道では、サウジアラビアは全長60キロに及ぶ国境沿いに軍事基地と核廃棄物処理場幅約200メートルの運河を建設し、Qatarを物理的にも孤立させるという。

2018/12/5     カタール、OPEC脱退へ 

 


2021/1/6  サウジの自主的減産増でOPECプラスが減産維持

石油輸出国機構(OPEC)加盟・非加盟の産油国で構成する「OPECプラス」はテレビ会議で閣僚級会合を開き、1月5日に2月から減産規模をわずかに縮小すると発表した。
新型コロナウイルスの感染拡大が続く中、石油需要が再び落ち込む懸念があることから、大幅な減産縮小は見送った。

OPECプラスは2020年12月3日、2021年1月から減産規模を日量50万バレル縮小し、同720万バレルとすることで合意した。

今回、2月以降に当初の予定通り最大50万バレル縮小するか、現行の720万バレルの減産規模を維持するかを協議した。
2日間に及んだ会合の結果、2月は日量812万5000バレル、3月は805万バレルの減産(うち各100万バレルはサウジの自主減産)とすることで一致した。

減産

  4月12日合意 実績 2021/4
2020/5〜6  970万バレル  970万バレル  
2020/7     770  960   
2020/8〜12  770  
2021/1  580  720  720万バレル
  2      812.5
  3      805

2020/12/5 OPECプラス、減産幅を縮小

1月は前月比で50万バレル生産増としたが、ロシアとカザフスタンは2月にも50万バレルの生産増を主張した。ロシアの場合、老朽化した油井を冬季にメンテナンスなしで停止した場合、再稼働するのが採算的に無理になるという。

しかし、他国は生産増を望まなかった。

その結果、Russia とKazakhstan のみ、2月に合計で75千バレル、3月にはさらに75千バレルの増産が認められた。

これに対し、サウジは石油市場を支えるため、独自で2月と3月に追加で各100万バレルを削減する。3カ国以外は現行の生産量を維持する。

この結果、2月の減産は812.5万バレル、3月は805万バレルとなる。

付記   

OPEC+は3月4日、4月も現行の協調減産をほぼ維持、 但し、季節要因を理由にロシアの13万バレル、カザフスタンの2万バレルの減産縮小を承認した。サウジは100万バレルの自主減産を継続する。

4月1日、5月以降の減産幅縮小を決めた。

(万バレル)

OPEC+ サウジ追加 合計
2020/5〜6  970   970
2020/7  960   960
2020/8〜12  770   770
2021/1  720   720
  2 712.5 100 812.5
  3  705 100 805
4 690 100 790
5    -35 655 -25 75 -60 730
6  -35 620 -35 40 -70 660
7  -44.1 575.9  -40 0 -84.1 575.9

 


2021/1/6 英国のEU離脱でどう変わるか? 

2020年12月31日グリニッジ標準時間午後11時に英国とEUの新協定が発効し、英国がEUを正式に離脱した。

英国は2020年1月31日午後11時にEUを離脱し、同時に移行期間に入った。今回、移行期間が終了した。

BBCはどう変わるのか、主要ポイントの解説をしている。

1.貿易

2021年1月1日以降、英国とEUの間の取引で関税、関税割当はない。→ 懸念された値上げは回避
国境では安全チェックや税関申告等の新しいチェックがある。→ 手続き不備なら問題に
英国の動物の餌に新しい制限がつく。調理されていない肉は-18℃以下に凍らさないとEUに入れない。

2.サービス

金融、建築、会計等のサービス業では自動的にはEU市場で業務ができず、ある程度制限を受ける。
医師、シェフ、建築家など(英国で資格を持つ人は、EUで)自動的に資格を得ることはできない。

英国の事業者は(EU全体の規則ではなく)EUの各国でのそれぞれの規則に従う必要がある。
英国の資格でEUで仕事をするのは難しい。EU各国のルールを調べることが必要。
しかし、英国とEUは将来的にサービス分野でのアクセス改善の協議を行うこととしている。

3.旅行

英国民はEUに180日間のうちで90日以上留まる場合、ビザが必要
EUのペットのパスポートは無効になる。旅行に連れて行くのは可能だが、旅行ごとにペットの健康証明が必要
欧州健康保険カード(EHICカード)は期限が切れるまでは有効。今後、UKグローバル保険カードを導入するが、細目は未定
従来は、EU域内であれば、どの国に行ってもローミング料金を課されることなく、自国と同様の料金でスマホが使えるが、今後は追加料金が必要。
(但し、双方とも透明性のあるリーズナブルな料金にすることとしている。旅行前にスマホ会社にチェックが必要。)
 

4.漁業

今後4年半にわたり、英国は自国海域からの漁業シェアを順次増やす。英国の漁民に不満が強い。
2026年からは英国はEU漁船を禁止できるが、その場合、EUは英国からの輸入魚に関税を課すことができる。2026年から双方は定期的に協議する。

5.司法その他

英国は欧州司法裁判所に関与しない。これにより英国は自国の法の支配を取り戻す。
但し、北アイルランドでは、特定のEUの貿易ルールに引き続き従うため、欧州司法裁は一定の役割を引き続き持つ。
英国とEUの間で解決できない紛争は独立した仲裁裁判所に廻る。
一方の側が現在の製品基準のルールを大幅に変更する場合、特定製品に関税を課すことができる。

6.治安

英国は今後、治安に関するデータベースに自動的にはアクセスできないが、要求すればアクセスできる。
英国は今後、EUの法執行機関のEuropolのメンバーではなくなるが、本部に席は持つ。
英国のEuropolとの関係は、現在の米国のEuropolとの関係と同じになる。
英国はEUのデータ保護基準に従う必要はないが、英国がデータ保護のルールを変えない限り、少なくとも4カ月は今まで同様にデータを交換する。

7.教育

英国は、EUが他国の学生を支援するErasmus 交換計画に参加しない。既にEUでのコースで学んでいる学生は引き続き、EUの支援を受ける。
北アイルランドの大学の学生は、アイルランド政府のアレンジのもと、Erasmus 交換計画に参加できる。
英国はErasmus 交換計画と似たAlan Turing計画を2021年9月に開始するが、これはEUだけでなく、世界中の国の学生を対象とする。

    ーーー

日英経済連携協定(EPA)が1月1日、発効した。

2020/12/8 日英EPA、2021年1月1日発効へ

 

付記  中島裕介 「イギリス解体の危機」から

英国とEUの関係はこんなに変わった

通商 英はEUの単一市場・関税同盟から離脱

FTAで関税ゼロ・割当枠(クオータ)なしの関税ゼロ維持。英・EU産以外の原材料比率が高い製品は無関税の対象外。

動植物の検疫や食品の衛生検査、原産地の証明、通関申告等が新たに必要に

製品基準も英・EUで別々に。許認可など煩雑に

ヒトの移動 英EU間の自由な移動は終了、居住や就労などはビザが必要。

ビザ不要の短期滞在は英市民は180日間で90日まで。EU市民は6ヵ月まで

英国は収入・技能に基づく新移民システムを導入

旅行者の免税ショッピングが復活

司法 英は欧州司法裁判所(ECJ)の管轄外に
金融 英はEU共通の免許の枠組み「単一パスポート」から離脱。規制や監督は別々に。
EUが英の金融制度に「同等性」を与えれば、英金融機関がEUで活動しやすくなるが2021年7月現在、未授与
資格・免許 弁護士、会計士などの資格の相互認証せず

英市民はEU内での自動車運転で国により国際免許必要に
ペツト 英EU間の移動は事前の検疫や申告などが必要に
携帯電話 英はEUローミング規制の対象外に。一部の英携帯大手は独自サービスで無料ローミング維持
治安協カ 英は欧州刑事警察機構(ユーロポール)やシェンゲン情報システムなどが持つデータベースヘの自由な即時アクセスを失う
データ 英はEUの一般データ保護規則(GDPR)の枠組みを外れる。EUが2021年6月に英にデータ保護の十分性認定を与え、個人データのやりとりは当面、従来通り可能に
教育 英はEUの交換留学プログラム「エラスムス」から除外
漁業 英は自国海域での漁業権を段階的に回復。英・EU間で5年半の激変緩和期間設定。その後は総漁獲量など毎年交渉
北アイルランド EUの単一市場に事実上残り、グレートブリテン島からのモノの入荷の多くで通関が必要に

4年ごとに北アイルランド議定書を継続すべきかどうか北アイルランド議会で投票、過半数の賛成で延長
否決すれば、否決2年後に失効 (それまでに協議)


 


2021/1/7 トランプ大統領、アリペイ含む中国アプリとの取引禁止の大統領令 

トランプ米大統領は1月5日、中国アリババ集団傘下の金融会社アント・グループが提供する決済アプリ「アリペイ」など中国アプリに関わる取引を米国内で禁じる大統領令に署名した。
45日後の実施となっているが、バイデン政権への交代で、どうなる実現性は不透明だ。

 これらのアプリはユーザーの個人情報にアクセスでき、これらの情報が中国政府や中国共産党が米国の政府職員やコントラクターの所在を追跡、個人情報を蓄積するのに使われるとしている。


トランプ大統領は2020年8月6日に動画投稿アプリTikTok を運営する北京字節跳動科技(Bytedance)との米国人の取引を、及び、WeChat に関する騰訊控股(Tencent Holdings )との米国人の取引を禁じる大統領令を出したが、同様の理由を挙げていた。

TikTokは米国で175百万回以上ダウンロードされており、自動的にユーザーの個人情報を収集する。これにより中国共産党が米国の個人情報を収集し、連邦職員やコントラクターの位置を追跡でき、個人情報に基づき脅迫や産業スパイも可能となる。TikTokはまた、香港やウイグルなど共産党が政治的にセンシティブになっている情報を監視している。

WeChatについても同様とし、national securityを守るために積極的な行動をとる必要があるとした。

2020/8/10 米国、TikTokとWeChatの運営会社との取引禁止 

 

今回取引禁止の対象となるのは下記のアプリを開発、支配する者など。

Alipay Alibabaグループの決済およびライフスタイルサービスで、運営はAlibabaグループの関連会社のAnt Group(螞蟻集團が行っている。
オンラインとオフラインの決済機能を提供している。
VMate Alibaba新規事業創出部門傘下で、インドのSNS動画サービス
CamScanner CC Intelligence Corporationが運営するモバイルアプリで、iOSおよびAndroidデバイスをイメージスキャナーとして使用できる。
QQ Wallet Tencentのが1999年からサービスを開始したSNS「QQ」のモバイル決済機能で、運営はグループで金融事業を展開する財付通科技有限公司(Tenpay)
Tencent QQ WeChat のTencentが提供・運営するインスタントメッセンジャーソフト。中国本土において最も普及しているコミュニケーションツールであり、特に若者の間で支持され携帯やメールと同じ感覚で使用されている。
SHAREit 携帯電話から携帯電話へ、携帯電話からラップトップへ、またはPCやラップトップ間でのデータ転送のためのアプリケーション
中国の Lenovo の部門であったが、スピンオフし、現在はシンガポールのSmart Media4U Technology が所有する。
WeChat Pay 中国で最も利用されているTencentのコミュニケーションアプリ「WeChat(微信)」内で提供されている決済サービス
WPS Office Office 互換ソフトの老舗のKingsoft Corporation(金山軟件)が販売する Microsoft Office の互換ソフト

 


2021/1/7  ジョージア州上院議員選挙 決戦投票で民主党が2議席確保、「トリプルブルー」に

ジョージア州の上院議員選挙は1月5日に行われた。

98%開票時の結果は下記の通りで、いずれも民主党が勝利した。各紙が報じた。
このまま進めば、差は0.5ポイント以上のため、再集計はない。(訴訟はあり得るが)
 

2議員の正式就任は少し先になる。

各郡は選挙後の第2金曜(1/15)までに結果を認定、その後、州の州務長官が1/22までに認定する。大統領の弾劾が始まれば、正式就任は遅れる。

11月3日の選挙と今回の決選投票の結果、上院は次の通りとなった。

  共和党 民主党 民主系
無所属
合計
改選前 53 45 2 100
非改選 30 33 2 65
改選 補選 21+2 12 0 35
結果 補選   2   2
改選 20 13   33
改選後 50 48 2 100

上院はこれで共和党 50、民主党(無所属含む)50となる。

上院では賛否が同数の場合のみ、議長である副大統領が票を投じる。

このため、上院は民主党が支配することとなり、大統領選、上下両院を制する「トリプルブルー」となる。
(民主党はBlue、共和党はRed)


2021/1/7 米議会にトランプ支持者が乱入、大統領選確定の上下両院合同会議が中断 

米連邦議会は1月6日、上下両院合同会議を開いた。大統領選の結果を最終確定し、バイデン次期大統領を正式に選出する。

この議場にトランプ支持者が乱入し、大混乱となった。

ーーー

連邦議会集計は以下のように行なわれる。

上下両院合同会議は、下院議場で午後1時から開催される。上院議長 (副大統領)が会議を主宰し、自ら選挙人から送付された投票証明書を開封する。
開封された投票証明書は、上院議員2名、下院議員2名からなる投票計算役に渡され、読み上げられた後、集計される。

集計結果は、上院
議長から発表される。
選挙人総数の過半数の投票を獲得した大統領候補が大統領
に、選挙人総数の過半数の投票を獲得した副大統領候補が副大統領になる。

538人の選挙人から、270票以上の選挙人投票を獲得する必要がある。
この条件を満たした大統領候補、副大統領候補が当選となり、集計結果の発表が当選の宣言とみなされる。

上院、下院議員は、投票証明書に異議がある場合、「書面で」反対することができる。
その場合、上院、下院はそれぞれ、2時間以内に、この反対を認めるかどうかを単純過半数で決める。反対を認める場合、両院の一致が必要。

2017年にTrumpが大統領になった際、民主党議員が反対したが、書面での反対はなく、当時のBiden副大統領が"It's over"と宣言した。

トランプ大統領は共和党議員にこれによる逆転を狙った。

2020/12/27 トランプの大統領選 最後の無駄な抵抗 

ーーー

トランプ大統領は1月5日、上下両院合同会議の 議長を務めるペンス副大統領に対し、バイデン次期大統領の勝利を受け入れないよう威圧した。ツイッターに「副大統領は不正に選ばれた選挙人を拒否する権利がある」と投稿した。

If Vice President @Mike Pence comes through for us, we will win the Presidency.
Many States want to decertify the mistake they made in certifying incorrect & even fraudulent numbers in a process NOT approved by their State Legislatures (which it must be).
Mike can send it back!

States want to correct their votes, which they now know were based on irregularities and fraud, plus corrupt process never received legislative approval.
All Mike Pence has to do is send them back to the States, AND WE WIN.
Do it Mike, this is a time for extreme courage!

ペンス副大統領はトランプ大統領への忠誠を取るか、憲法上の義務を尊重するかで厳しい立場に追い込まれた。
(大統領に背けば次の選挙が危ないし、大統領に従えば、大統領の不当な要求を認めたとして世間の批判を受け、これも次の選挙に影響する。)

最終的に、副大統領は上下両院合同会議を前に、「熟慮の末に判断した。どの選挙人投票を集計すべきで、どれを集計すべきでないかを決める一方的な権限を私が主張することは、憲法を支持し守るという私の宣誓によって制約される」との書簡を議会に送った。

大統領は副大統領を批判した。

Mike Pence didn’t have the courage to do what should have been done to protect our Country and our Constitution, giving States a chance to certify a corrected set of facts, not the fraudulent or inaccurate ones which they were asked to previously certify. USA demands the truth!
ツイッターはこれに「この主張には根拠がない。暴力のリスクがあるので、リツイートするな」という警告文をつけた。
This claim of election fraud is disputed, and this Tweet can’t be replied to, Retweeted, or liked due to a risk of violence.


合同会議に先立ち、トランプ大統領はホワイトハウス近くで選挙結果に反対する大規模集会を開催し「敗北を認めない」と重ねて訴えた。

同氏はさらに「ペンシルベニア通りを歩き、この国を取り戻すのに必要な誇りと大胆さを(連邦議会議員に)与えよう」と、支持者に対して議会に向かうよう呼びかけた。

 

合同会議は午後1時から始まった。上院議長のペンス副大統領が議事進行役を務め、アルファベット順に州ごとの選挙結果を確定する。

Alabama、Alaska、Arizona、Arkansas、California、・・・・・

バイデン氏が勝利したArizona州の結果に共和党から異議申し立てがあり、合同会議はいったん中断。上下両院それぞれが異議について討論に入ったさなかに、 トランプ支持者による侵入事件がおきた。

議事堂内では、トランプ氏の支持者旗を掲げて行進し、上院本会議場を占拠した。
議事堂内で白人女性が法執行機関に肩を撃たれ、死亡した。さらなる負傷者も出ている。

催涙ガスが使用され、議員らは警察からガスマスクを着用するよう指示された。

警察当局は不審物がある可能性があるとして、下院の建物からの退避を呼びかけ、ペンス副大統領や上下両院議員らは避難した。

 

支持者に議会に向かうよう、けしかけた大統領は、議事堂に押し寄せた人たちに平和的に行動するよう求めた。

Please support our Capitol Police and Law Enforcement. They are truly on the side of our Country.
Stay peaceful!

I am asking for everyone at the U.S. Capitol to remain peaceful.
No violence! Remember, WE are the Party of Law & Order – respect the Law and our great men and women in Blue. Thank you!

これに続くツイッターは「このツイートはTwitter ルールに違反したため表示できません」として消された。
報道では、
“We love you, you’re very special” と騒乱参加者への謝意とも受け取れる内容とのこと。

ワシントンD.C.の市長は、同日午後6時から翌7日午前6時までの外出禁止令を発令。ホワイトハウスと国防総省は事態の収拾に向け、ワシントンと周辺州に州兵を出動させると発表した。

報道では、州兵出動の要請に大統領は当初抵抗した。最終的にペンス副大統領が承認した。

与党共和党の重鎮であるロムニー上院議員は声明で、「今日起こったことは、アメリカ大統領によって引き起こされた暴動だった」と大統領を厳しく批判した。

米国製造業者協会声明を発表した。

退任する大統領が権力を維持しようとして暴力を煽り立てている。ペンス副大統領は民主主義の維持のため議会と協力し、憲法修正25条の発動を真剣に検討すべきだ。

憲法修正25条
第4節
 副大統領および行政各部の長官の過半数または連邦議会が法律で定める他の機関の長の過半数が、上院の臨時議長および下院議長に対し、大統領がその職務上の権限と義務を遂行することができないという文書による申し立てを送付する時には、副大統領は直ちに大統領代理として、大統領職の権限と義務を遂行するものとする。

米CNNは1月6日、複数の閣僚がトランプ氏を免職するための合衆国憲法修正25条の発動に向けた事前協議をしていると報じた。

Obama前大統領は、攻撃をあおったのは、公正な選挙結果に関して根拠のない嘘をつき続けているトランプ氏だと非難し「わが国にとって非常に不名誉で恥ずべきこと」とした。

Bill Clinton元大統領も、「われわれは今日、連邦議会議事堂、合衆国憲法、米国に対する前例のない攻撃に直面した」と述べ、この攻撃は「4年にわたる有害な政治」と意図的な誤情報にあおられたものだと指摘した。「火を付けたのは、大統領選の敗北という結果をひっくり返そうとするドナルド・トランプ氏と、多くの議員を含むその最も熱心な支援者たちだ」としている。

TwitterとFacebookに対し、Trump氏のアカウント停止と、暴力を扇動する投稿へのより強固な措置を求める声はさらに強まったとされる。

Twitterは公式アカウントを通じ、「首都ワシントンで前例のない暴力的な状況が継続していることを受けて、3件の投稿について削除を要求した」と明らかにした。
トランプ氏が問題となった投稿を削除した後も、12時間は新たな投稿ができない状態にした。
さらに、今後、トランプ氏がルールに違反した場合、「同氏のアカウントを永久に停止することになる」と述べた。

ーーー

ペロシ米下院議長(民主党)は1月6日夜、バイデン次期大統領の当選を正式承認する議会手続きを同日中にも再開すると発表した。上院議長を兼務するペンス副大統領とも合意したとしている。


2021/1/7 大統領選確定の上下両院合同会議再開、バイデン候補の勝利が確定 

1月6日午後8時、中断されていた上下両院それぞれでのアリゾナ州の選挙結果への異議について討論が再開された。

議事堂に侵入したトランプ支持者が共和党議員に選挙結果への反対に加わるよう圧力をかけようとしたのであれば、全くの逆効果となった。

最初に異議がでたアリゾナ州についての上院での討論で、当初異議に賛成するとしていた多くの共和党議員が、暴力に嫌悪感を示し、最早賛成しないと述べた。

上院では6対93の圧倒的大差で選挙結果を受け入れた。

下院ではアリゾナ選出の共和党議員が選挙結果を受け入れるよう同僚に求めた。下院は121対303で選挙結果を受け入れた。

反対を認めるかどうかは単純過半数で決める。反対を認める場合は両院の一致が必要。

ーーー

院司法委員会の18人の民主党議員がペンス副大統領に書簡を送り、憲法修正25条でトランプ大統領を排除することを求めた。大統領が議事堂での暴力を引き起こしたとしている。

憲法修正25条
第4節
 副大統領および行政各部の長官の過半数または連邦議会が法律で定める他の機関の長の過半数が、上院の臨時議長および下院議長に対し、大統領がその職務上の権限と義務を遂行することができないという文書による申し立てを送付する時には、副大統領は直ちに大統領代理として、大統領職の権限と義務を遂行するものとする。

Washington DCの警察当局は、4名の死亡を発表した。女性1名(サンディエゴ在住の元米空軍の退役軍人で、 大統領の熱狂的支持者)が警察に撃たれて死亡したが、他に女性1名、男性2名が死亡した。詳細は明らかにせず。
暴動と外出禁止令違反で52名が逮捕された。うち26名が議事堂構内で逮捕された。
警官14名が負傷した。その後、警官1名が死亡、死亡者は計5名となった。

メラニア米大統領夫人の首席補佐官で大統領報道官も務めたStephanie Grishamが辞任を表明した。議会乱入事件に反発したとみられる。
Robert O'Brien大統領補佐官(国家安全保障担当)も辞任を検討している。Elaine Lan Chao 運輸長官も辞任の検討に入った。

Matt Pottinger大統領副補佐官(国家安全保障担当)は辞任した。

ーーー

この後、上下両院合同会議が再開された。アルファベット順に進んだ。

Arizona、Arkansas、California、・・・・・ Florida、Georgia、・・・・・ Pennsylvania

ジョージア州について、下院共和党が反対を表明したが、上院共和党が今回の事件を受け、反対を引き下げたため、討論・投票がなくなった。
正式の反対は書面によるが、下院議員と上院議員のサインが必要である。

ミシガン州では下院議員が反対を書面で出したが、上院議員のサインがなく、ペンス副大統領に却下された。

ネバダ州では、下院議員が反対を表明したが、上院議員がこれに加わらず、ペンス副大統領が書面による反対でないとして却下した。

ペンシルべニア州については、上院議員1名、下院議員80名が書面にサインして提出し、異議が受け入れられた。

合同会議はここでいったん中断し、上下両院それぞれが異議について討論に入った。

上院では議論を行なわず、直ちに投票に入り、92 対 7 で否決された。(1月7日午前1時)

反対を認める場合は両院の一致が必要なため、これで決着がついたが、下院は2時間の制限一杯議論し、投票に入った。
1月7日午前3時過ぎ、下院も
282-138で否決した。

この時点で共和党Jake LaTurner下院議員がCovid-19の陽性と分かったと発表した。4時間前のアリゾナ州の投票には加わっていた。今後は出席しない。

議員はまた、合同会議に戻った。残り12州。

1月7日午前3時半過ぎ、7州目のバーモント州で反対がなく、これでこれまでのバイデン候補の獲得選挙人数が過半数の270を超え、バイデン候補の勝利が確定した。

ペンス副大統領は、異議のないまま、次々と進めた。最後の州のワイオミングで下院議員が異議を表明したが、これに加わる筈の上院議員が取り止めた。ペンス副大統領が「異議は却下」と述べ、終了した。

ペンス副大統領は、選挙人538のうち、バイデン氏が306、トランプ大統領が232との結果を読み上げた。

ーーー

こんな暴動をあおったトランプ大統領に、まだ忠誠を誓い、正当な選挙の結果を否定する共和党議員(特に下院)がこんなに多いのは驚きである。

 


2021/1/8 ドイツ与党のキリスト教民主同盟(CDU)党首選挙  

ドイツ与党のキリスト教民主同盟(CDU)は1月15〜16日にオンラインで党大会を開き、16日に党首選挙 を行なう。地域の代表者1001人が投票する。

ドイツは連邦議会選挙を遅くとも2021年秋には実施するが、CDUの新党首は総選挙の結果、次期首相に就任する公算が大きいとみられている。

CDUは南部バイエルン州を地盤とする姉妹政党・キリスト教社会同盟(CSU)と統一会派を組んで いるが、「CDU-CSU」の支持率は現在1位を維持しているおり、この勢いを保てば次期首相に選出される可能性が高い。 (但し、前回選挙では統一会派は1位ではあるが過半は取れず、ドイツ社会民主党:SPDとの連立でようやくメルケル首相が再選された。)

しかし、高支持率の背景にはメルケル首相個人の人気もあるとみられ、CSU党首は「メルケル氏によって得ているボーナスは消える」と警鐘を鳴らしてい る。

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メルケル首相は2018年10月末に、自らが党首のCDUが独ヘッセン州議会選でも敗北、連敗した責任をとり、党首を退任する考えを表明した。
2021年の任期切れまでは首相にとどまり、その後 、政界を引退する意向を示した。

CDUは2018年12月7日、メルケル首相の後任の次期党首を選ぶ選挙を行い、決選投票の結果、党幹事長のAnnegret Kramp-Karrenbauer 女史を選出した。

しかし、新党首は2020年2月10日、次期首相候補となることを断念し、党首も辞任する意向を固めた。

党首就任から1年あまりが経過し、政治的な失言や選挙での相次ぐ敗北で求心力を大きく失っていた。
就任以降、指導力を発揮できず、直前には旧東ドイツのテューリンゲン州支部が党中央部の指示を無視して極右政党「ドイツのための選択肢(AfD)」と連携し、同氏に屈辱を与えた。

CDUは2020年2月24日、新しい党首を決める臨時党大会を4月25日に開くと決めたが、新型コロナウイルスへの感染 の拡大で、臨時党大会の開催を延期した。
感染が収まり次第、開催するとしたが、その後もCOVID-19は拡大を続けて、2020年12月の党大会も中止し、新党首選出を延期した。

2020/10/31 ドイツ与党CDU、新型コロナで新党首選出を延期、メルケル後継は誰? 

CDU指導部は2020年12月14日、2021年秋までの連邦議会選挙を控える中、感染が収まる見込みが立たないため、2021年1月15〜16日のバーチャル(オンライン)での党大会の開催に合意した。

メルケル首相は1月5日、各州首相の同意を得て、新型コロナウイルスの感染拡大を抑えるための規制を再び強化すると発表した。感染が深刻な地域の住民は居住地から15キロまでに移動が制限される。レストランや商店、学校の閉鎖は少なくとも1月末まで続ける。英国で感染力の高い変異種が広がっており、メルケル首相は「我々はとりわけ慎重でなければならない」と語った。

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現在、次の3人が候補に挙がっているが、いずれも決め手に欠け、混戦になると見られている。

候補(年齢)   2020/12調査*  
Norbert Roettgen (55)  元環境相  31.7% 外交政策に精通
「脱原発」を決めたドイツ政府のエネルギー政策を環境相として推進。
女性登用に積極的で若い世代への浸透も図る。
ただ、地元の州議会選挙で惨敗した責任を問われ、2012年に環境相を更迭された経緯もある。
Friedrich
Merz (65)
元党下院議員団長  28.8% 「非主流派」
移民に厳しい姿勢を示し、党内保守層の支持を得ている。  
2009年にメルケル氏との路線対立に敗れて政界を離れた後は公職に就いておらず、コロナ対策では存在感を発揮していない。
Armin
Laschet (59) 
ドイツ最大人口州のNorth Rhine-Westphalia州首相 11.8% 寛容な難民政策や同性婚容認、脱原発といった比較的リベラルな政策を進めてきたメルケル首相の路線を踏襲するとみられる。
同州内で発生したコロナ集団感染への初動対応が遅れ、州首相としての力量に疑問符が付き、支持が低迷。

 *シュピーゲル誌が2020年12月中旬に実施した「CDU党首に最もふさわしい人物」を問う調査

 


2021/1/8 元慰安婦訴訟で日本政府に賠償命令 

韓国で旧日本軍の元従軍慰安婦の女性らが日本政府に損害賠償を求めた訴訟で、ソウル中央地裁は1月8日、請求を認め日本政府に賠償支払いを命じる判決を出した。

原告は、ソウル郊外の元慰安婦支援施設「ナヌムの家」で暮らす李玉善さん(93)ら12人。

日本政府が「日帝強占期」(1910年から1945年までの35年間)に自分たちをだましたり強制的に慰安婦にしたとし、「元慰安婦に対する反人道的な犯罪行為は主権免除の例外とすべきだ」と主張し、2013年8月 に日本政府に損害賠償を求める調停を地裁に申請した。

日本政府が出頭しなかったため調停不成立となり、2016年1月に正式訴訟に移行した。

日本政府は訴状の受け取りを拒否したが、地裁は20年1月、書類を受け取ったとみなす「公示送達」の手続きを取った。

日本政府は国家は外国の裁判権に服さないとする国際法上の「主権免除」の原則から、 調停にも審理にも、一度も出席していない。

主権免除には、
@絶対免除主義(国家の活動はすべて裁判権から除外される)と
A制限免除主義(国家の活動を「権力行為」と「職務行為」に分け、「権力行為」のみを免除の適用範囲とする)
の2つの説がある。

日本では1928年12月に大審院が絶対免除主義を取ったが、最高裁が2006年7月に制限免除主義を採ることを明言、大審院判例を変更した。
その後、2010年の「外国等に対する我が国の民事裁判権に関する法律」施行、同年の国連裁判権免除条約批准で、制限免除主義を採用している。

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第二次大戦時にナチス・ドイツに強制労働させられたイタリア人がドイツ政府に損害賠償を求めた件では、イタリアの最高裁は2004年に国際人道法違反は主権免除の対象外としたが、国際司法裁は2012年に主権免除を認めた。

  付記

朝日新聞は1月9日、日本政府が国際司法裁判所(ICJ)に提訴する案を有力な選択肢として検討していると報じた。

しかし、韓国は相手国がICJに訴訟を提起すれば無条件に受け入れるICJの「強制(義務的)管轄権」を受け入れておらず、日本が提訴するとしても韓国政府がこれに応じない場合、訴訟自体が成立しない。
(日本は1958年に義務的管轄権を受諾した。)


調停申請時、原告は12人だったが、多くが他界し、生存者は5人となっている。

ソウル中央地裁は、原告1人あたり1億ウォン(約948万円)の支払いを命じる原告勝訴の判決を出した。

「主権免除」については、「この事件の行為は合法的と見なしがたく、計画的、組織的に行われた反人道的行為で、国際強行規範(国際法上いかなる逸脱も許されない規範)を違反した。原告は精神的、肉体的な苦痛に対し、被告から国際的な謝罪を受けていない」とし「特別な制限がない限り『国家免除』は適用されない」とした。

日本は1965年の日韓請求権協定と2015年の日韓合意で解決済みとの立場だが、判決は「 請求権協定と慰安婦合意をみると、この事件の損害賠償請求権が含まれていると見るのは難しく、請求権は消滅したと見ることはできない」とした。

そのうえで、「各種資料と弁論の趣旨を総合すると、被告の不法行為が認められ、原告は想像しがたい深刻な精神的、肉体的苦痛に苦しんだとみられる」とし「被告から国際的な謝罪を受けられず、慰謝料は原告が請求した1億ウォン以上と見るのが妥当」とした。

地裁は仮執行を認めており、日本政府が控訴をするかしないかの判断に関わらず、韓国内にある日本政府資産の差し押さえ手続きを取ることが可能になる。

付記

実際には日本政府資産の差し押さえは難しい。

在韓日本大使館の建物と敷地、大使館の車両などは、ウィーン条約第22条第3号が「公館、公館内にある用具類その他の財産及び使節団の輸送手段は捜索、徴発、差押え又は強制執行を免除される」と規定しており、強制執行が不可能である。

日本文化院も外務省所属の政府機関であり、各国派遣大使館(または総領事館)の一部としてウィーン条約の特権が保証される。

日本国内の日本政府資産に対する差し押さえも、韓国の裁判所が日本司法当局を相手に「執行承認」を要請しなければならず、日本の裁判所が執行を許諾する可能性はない。

付記 (9月1日に下記が判明)             

日本政府は韓国の裁判権に服することは認められないという立場から控訴せず判決が確定した。

その後、裁判所は6月に日本政府に対して韓国国内にある資産の目録を開示するよう命令。
これに関連して2022年3月21日に法廷で開示するよう期日を指定した。

 

元徴用工への賠償を日本企業に命じた2018年の韓国大法院(最高裁)判決に続き、日本政府の賠償責任を認めた韓国の司法判断 となる。

韓国大法院は2018年11月29日、三菱重工業に対し、第2次世界大戦中に同社の軍需工場で労働を強制された韓国人の元徴用工らに対する賠償支払いを命じる判決を下した。

大法院は、損害賠償訴訟2件について、三菱重工業の上告を棄却し、2件の訴訟の原告に対し、1人あたり最大で1億5000万ウォン(約1500万円)の支払いを命じた。

 

韓国で元慰安婦らが日本政府を相手に損害賠償を求めた訴訟は2件あり、1月13日には「日本軍性奴隷制問題解決のための正義記憶連帯」が支援する元慰安婦ら20人による訴訟の判決が言い渡される。

付記 判決は延期された。裁判所は追加の審理の必要性があるとみて弁論を再開、3月24日を弁論期日に指定した。

付記   2012/4/21    韓国地裁、慰安婦訴訟2件で原告側の訴えを却下 


2021/1/9 英国、香港市民に特別ビザ発給 

英政府は香港国家安全維持法への抗議として、1月31日から香港市民向けの英国市民権取得につながる特別ビザ(査証)の申請受付を開始する。

 

中国全人代は2020年5月28日、香港での反政府的な動きが「国家安全」に直接的に関わるとし 、「香港国家安全維持法」を香港に導入する方針を採択、習近平国家主席は6月30日、「香港国家安全維持法」に署名し、香港政府は同日夜施行した。

英政府は即座に対抗措置として、香港を脱出したい市民で「英国海外市民旅券」(BNO旅券)の保有者を、市民権付与も含め、受け入れる方針を正式に表明した。

英国は1997年の香港返還までの間にBNO旅券を300万人以上の香港市民に発給した。1997年の返還前の香港に居住、申請した人は、現在でもBNO旅券を保有・更新することができる。
但し、BNO旅券を持つ香港人から生まれた子供は1997年6月30日以降に生まれた場合は取得できない。

これに対し中国外務省は、香港のBNO旅券保持者は全員が「中国国民」であり、イギリスの動きは「国際法違反」にあたると反発した。

2020/6/5   英首相、香港住民に英国市民権授与を示唆

英政府は特別ビザの対象を2020年7月22日に発表した。

特別ビザの対象になるのは1997年の香港返還前に生まれた香港市民を対象にした「英国海外市民旅券」(BNO=British National Overseas旅券)の保持者とその扶養親族ら。

特別ビザで英国での就学や就職が可能で、5年間滞在すれば永住権が得られ、その1年後には英国の市民権も取得できる。

但し、特別ビザによる長期滞在を希望する場合、英政府による補助金支給の対象にはならず、生活に必要な経済力を確保する必要がある。

英語を学び習得する意欲があることを示さなくてはならない。

 

1月31日から特別ビザの申請を受け付ける。

英政府はBNO旅券の保持者と扶養家族合わせて最初の1年で約12万〜15万人がビザを申請すると予測、5年後には合計で約26万〜32万人に達するとみている。


2021/1/9 英政府、「中外製薬のリウマチ治療薬が新型コロナに有効 」

英政府は1月7日、関節炎治療薬の「トシリズマブ」と「サリルマブ」が新型コロナウイルス感染症の治療にも有効だと発表した。

8日から、英国全土の病院の集中治療室に入院中のコロナ患者を対象に投与する。コロナの治療薬としては抗炎症薬「デキサメタゾン」などに続くものとなる。

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抗炎症薬「デキサメタゾン」

英オックスフォード大は2020年6月16日、抗炎症作用のある一般的なステロイド剤デキサメタゾンが、新型コロナウイルスの重症患者の死亡率を減らすのに効果的だとする臨床試験の結果を公表した。

これを受けて英国の保健・社会福祉相は同日、新型ウイルス感染症の標準治療に午後からデキサメタゾンを含めると表明した。

日本の厚生労働省は、7月に新型コロナウイルス感染症の診療ガイドラインに「デキサメタゾン」を新たに掲載した。
効果が検証され国内で使用が認められた治療薬は、5月に特例承認された「レムデシビル」に続いて2例目。

既に承認、保険適用されていて、肺の疾患や重症の感染症も投与の対象となっている。低価格で手に入りやすいのが利点。

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英政府が支援した臨床研究では、集中治療室の患者に対して抗炎症薬「デキサメタゾン」の投与など通常の治療をした場合の死亡率は35.8%だったのに対し、搬送から24時間以内にトシリズマブなども追加で使った場合は27.3%まで低下した。

この結果、2つの薬を追加で投与した場合に死亡リスクが24%下がると結論づけられ、患者が集中治療室に入る期間も7〜10日間短縮できたという。
英国では今後、集中治療室に運ばれた患者に対して使用する。

英政府はこの2剤を輸出制限リストに掲載した。英国民向けの供給を守るため、英国民用の薬を購入し、他国で高値で販売することを禁じる。

2剤の概要は次の通り。

「トシリズマブ(Tocilizumab)」(中外製薬の製品名 アクテムラ)

トシリズマブは大阪大学と中外製薬が共同開発した日本発の治療薬で、ヒト化抗ヒトIL-6レセプターモノクローナル抗体 。関節リウマチ, 若年性特発性関節炎, 成人スチル病, 高安動脈炎・巨細胞性動脈炎, キャッスルマン病の治療に使われている。

日本では2020年5月から、新型コロナで肺炎が重症化した入院患者を対象に治験が実施されている。海外ではコロナ治療薬のレムデシビルと併用する治験が行われている。
中外製薬はこれらの治験結果を踏まえ、2021年中に日本で新型コロナ用として承認申請することを目指している。

欧州では中外製薬の親会社であるスイスのRocheが製造・販売している。英政府はRocheと連携する。

「サリルマブ(Sarilumab) 」(Sanofi の製品名 ケブザラ)

ヒト型モノクローナル抗体で、アクテムラに次ぐIL-6阻害薬。炎症を引き起こすIL-6の活性を抑制することで関節の炎症を改善し、全身症状(関節の破壊や変形から生じる機能障害、疲労、骨粗鬆症など)を緩和することが期待される。

Sanofiと米国のRegeneronが共同で開発を行い、米国、カナダ、欧州2017年に承認され た。日本ではサノフ2017927日 に既存治療で効果不十分な関節リウマチ」の効能・効果において製造販売承認を取得した

サノフィは2017年12月に旭化成ファーマと日本でのライセンス契約を締結した。サノフィおよびRegeneron社が製造を担い、旭化成ファーマが流通・販売を 担う。

これらの薬の有効性は下記の研究で明らかになった。

国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構の平野俊夫理事長は2020年4月15日、北海道大学遺伝子病制御研究所の村上正晃教授と共同で、新型コロナウイルスに関する論文を発表した。

COVID-19で肺炎を起こしても軽い症状で治る場合もあるが、重篤化する人もいる。特に重症化したCOVID-19に発症する急性呼吸器不全は致死率が高い。この原因は免疫系の過剰な生体防御反応のサイトカインストームが原因であることを見付けた。

感染後期に見られる致死的な急性呼吸器不全症候群の治療には、すでに遺伝子導入T細胞(CAR-T)療法におけるサイトカイン放出症候群の治療に使用されており、かつIL-6アンプを阻害できる抗IL-6受容体抗体も有望である。

有望視されるのが、中外製薬のIL6 阻害薬「アクテムラ」(ヒト化抗ヒトIL-6レセプターモノクローナル抗体)とされた。

2020/5/6   COVID-19の致死的急性呼吸器不全症候群の原因はサイトカインストーム

 


2021/1/9 トランプ大統領、就任式欠席、ツイッター、トランプのアカウントを永久停止 

トランプ米大統領は1月7日、凍結が解除されたツイッターに動画を投稿し「新政権が20日に発足する。今は円滑で秩序だった政権移行に集中している」と述べた。 初めて退任を認めた。

"Now that Congress has certified the results, a new administration will be inaugurated on January 20th.  My focus now turns to ensuring a smooth, orderly and seamless transition of power.”

"To all of my wonderful supporters, I know you're disappointed, but I also want you to know that our incredible journey is only just beginning."


大統領は1月8日午前、ツイッターへの投稿で「質問してきたすべての人たちへ。私は1月20日の大統領就任式に出席しない」と表明した。

まず、大統領を支持する人々を賛美し、その後に就任式欠席を表明した。

“The 75,000,000 great American Patriots who voted for me, AMERICA FIRST, and MAKE AMERICA GREAT AGAIN, will have a GIANT VOICE long into the future.
They will not be disrespected or treated unfairly in any way, shape or form!!!”

 

“To all of those who have asked, I will not be going to the Inauguration on January 20th.”


米ツイッターは1月8日、トランプ米大統領のアカウントを永久停止したと発表した。暴動後の同氏の上記のツイートを精査した結果、さらなる暴力行為を扇動する危険性があると判断したという。

直接的に暴力行為を扇動する発言はないが、「6日に起こった暴力行為を再現するよう、人々を鼓舞する可能性が高い」と説明した。

 

現在、トランプのツイッターをクリックすると、下記が表示されるだけである。過去の記事もすべて抹消されている。

アカウントは凍結されています
Twitterでは、Twitterルールに違反しているアカウントを凍結しています

 

付記

上記のトランプのアカウントは https://twitter.com/realdonaldtrump で、個人としてのアカウント(Real Donald Trump) である。

大統領としては別の https://twitter.com/potus がある。(POTUSはPresident of the United States の略。)

前者が永久停止となった直後の1月8日夜、トランプ大統領は後者に下記の反論を載せた。

“As I have been saying for a long time, Twitter has gone further and further in banning free speech, and tonight, Twitter employees have coordinated with the Democrats and Radical Left in removing my account from their platform, to silence me — and YOU, the 75,000,000 great patriots who voted for me.”

ツイッターの従業員たちは民主党員や急進左翼と連携し、私や私に投票した7500万人を黙らせるため、私のアカウントを削除した。

Twitter may be a private company, but without the government's gift of Section 230 they would not exist for long. I predicted this would happen. We have been negotiating with various other sites, and will have a big announcement soon, while we also look at the possibilities of building out our own platform in the near future. We will not be SILENCED! Twitter is not about FREE SPEECH. They are all about promoting a Radical Left platform where some of the most vicious people in the world are allowed to speak freely. STAY TUNED!

ツイッター社は永久停止処分を受けた者が異なるアカウントから迂回して投稿するのを禁じるルールに基づき、抹消した。現在、同アカウントでのTrump名義の投稿はすべて消され、White House名義の投稿のみ載っている。


2021/1/10 米民主党、トランプ大統領の弾劾決議案を準備 
 

トランプ米大統領の支持者たちによる議会襲撃を受けて、野党・民主党は大統領が「反乱を扇動」したとする弾劾条項を含む訴追決議案を11日にも連邦議会の下院に提出する。

民主党ペロシ下院議長は、ペンス副大統領に憲法修正25条に基づく解任を求めたが、副大統領は応じていない。

ペロシ下院議長は1月8日、トランプ大統領が直ちに辞任しないなら弾劾手続きを進めると述べた。

民主党議員の半数をはるかに超える150人の下院民主党議員が弾劾訴追決議案に署名した。

 

下院が弾劾の罪状について大陪審の役割を果たし、調査・起訴する。
弾劾訴追決議案を可決し、上院に送付(=起訴)する。

 

2019年末の「ウクライナ疑惑」に関しての弾劾に続く2度目の弾劾となる。

この弾劾裁判では、陪審員を務める上院議員による評決を行い、与党・共和党の多数票で、無罪判決が下された。


下院が短期で弾劾決議しても、上院では出席議員の3分の2以上の賛成が必要で、ハードルは高い。

民主党は、弾劾決議が成立しても、当面、上院に決議案を送付しない可能性があるとしている。

弾劾裁判は全ての上院議員が出席するため裁判中は委員会で指名公聴会を開いたり、法案を審議したりできなくなる。
送付を遅らせる案は、バイデン政権が指名する政府高官の承認や新型コロナウイルス対策を優先する狙いがある。

共和党トップのマコネル上院院内総務もトランプ政権下で裁判を行わない方針を周辺に伝達しており、裁判はバイデン政権発足後に始まるのは確実な情勢となっている。 (1月5日のジョージア州上院議員選挙で当選した民主党の2人は、まだ就任の手続きが終わっておらず、上院は共和党が多数である。)

1月20日にトランプ氏が退任した後も弾劾裁判が続く場合、罷免ではなく「有罪」だとの判断を議会として示すことで、大統領選への再出馬を阻止することが目的になる。上院は過半数の賛成で、弾劾裁判で有罪となった人物から公職に就く資格を剝奪できる。

 

弾劾決議案は下記の通りで、議事堂侵入を焦点とし、大統領が暴動を扇動したと非難しているが、加えて、1月2日にジョージア州の州務長官に電話し、同州での大統領選の結果をひっくり返す票を見つけるよう伝え、脅したことなども挙げている。 (その後、一部修正した。1/12記事参照)

Resolution

Impeaching Donald John Trump, President of the United States, for high crimes and misdemeanors.

 Resolved, that Donald John Trump, President of the United States, is impeached for high crimes and misdemeanors and that the following article of impeachment be exhibited to the United States Senate:

Article of impeachment exhibited by the House of Representatives of the United States of America in the name of itself and of the people of the United States of America, against Donald John Trump. President of the United States of America, in maintenance and support of its impeachment against him for high crimes and misdemeanors.

 Article T:Incitement of Insurrection

 The Constitution provides that the House of Representatives "shall have the sole Power of Impeachment" and that the President "shall be removed from Office on Impeachment for, and Conviction of, Treason, Bribery, or other high Crimes and Misdemeanors".  In his conduct of the office of President of the United States - and in violation of his constitutional oath faithfully to execute the office of President of the United States and, to he best of his ability, preserve, protect, and defend the Constitution of the United States, and in violation of his constitutional duty to take care that the laws be faithfully executed -  Donald John Trump engaged in high Crimes and  Misdemeanors by willfully inciting violence against the Government of the United States, in that:

 On January 6, 2021, pursuant to the Twelfth Amendment of the United States Constitution, the Vice President of the United States, the House of Representatives, and the Senate met at the United States Capitol for a Joint Session of Congress to count the votes of the Electoral College. Shortly before the Joint Session commenced, President Trump addressed a crowd of his political supporters nearby. There, he reiterated false claims the "we won this election, and we won it by a landslide".
He also willfully made statements that encouraged - and foreseeably resulted in - imminent lawless actions at the Capitol. Incited by President trump, a mob unlawfully breached the Capitol, injured law enforcement personnel, menaced Members of Congress and the Vice President, interfered with the Joint Session's solemn constitutional duty to certify the election results, and engaged in violent, deadly, destructive, and seditions acts.

 President Trump's conduct on January 6, 2021 was consistent with his prior efforts to subvert and obstruct the certification of the results of the 2020 presidential election. Those prior efforts include, but are not limited to, a phone call on January 2, 2021, in which President Trump urged Georgia Secretary of State Brad Raffensperger to "find" enough votes to overrun the Georgia presidential election results and threatened Mr. Raffensperger if he failed to do so.

 In all of this, President Trump gravely endangered the security of the United States and its institutions of government. He threatened the integrity of the democratic system, interfered with the peaceful transition of power, and imperiled a coordinate branch of government. He thereby betrayed his trust as President, to the manifest injury of the people of the United States.

 Wherefore President Trump, by such conduct, has demonstrated that he will remain a threat to national security, democracy, and the Constitution if allowed to remain in office, and has acted in a manner grossly incompatible with self-governance and the rule of law. President Trump thus warrants impeachment and trial, removal from office, and disqualification to hold and enjoy any office of honor, trust, or profit under the United States.


2021/1/11 日亜化学、30秒照射でコロナウイルス99.99%を不活化 する深紫外LED開発

日亜化学工業(徳島県阿南市)は2020年12月、新型コロナウイルスの不活化効果を持った深紫外LEDを開発したと発表した。

波長280ナノメートル(nm)、光出力70ミリワット(mW)の深紫外LEDである。

深紫外光波長が200〜350nmの光を指す。

最も不活化効果が高いのは260nmの波長とされているが、波長が短いと光出力が低下し、深紫外LEDの寿命が短くなる
(紫外線LEDは、波長が短くなると出力、寿命等の性能が低下し、電力変換効率が極端に低くなる特性を持つ。)

寿命を長くするため、波長を280nmとすると、殺菌効果は約60%に落ちてしまう。

そこで、波長を280nmとし、光出力を70mWまで高めると、260nmの波長と同程度の不活化効果があることを確認した。長寿命化にもつながる。

  波長 光出力 殺菌効果 推定寿命
理想品 260nm   100%  
日亜品 265nm 35mW 約95% 約2千時間
  280nm 35mW 約60% 約2万時間
今回開発品 280nm 70mW 100% 約2万時間

この深紫外LEDを12個使った「ハンディUV照射機」を試作し、徳島大で実験すると、ウイルスから5センチの位置から30秒間照射したところ、99.99%不活化すると確認した。
(経済産業省は、除去効果について99.99%以上の感染価減少率を目安として有効性を判断している。)

 

感染症防止対策として推奨されている手洗い等の殺菌効果は、
・流水で手洗いを行った場合は、15秒で99%程度、
・一般的な消毒用アルコール(エタノール濃度77〜81%)を用いた場合は、30秒で99.99%
とされているが、時間や手間を要する。

深紫外LEDを用いることにより、短時間で手間をかけることなく高い殺菌効果が期待できる。

既に量産体制を整え、空気清浄機やエアコンなどへの応用が期待できるとしている。


2021/1/12  天然痘ワクチンを改良した新型コロナウイルスワクチン 

東京都医学総合研究所と国立感染症研究所の研究チームは1月7日、天然痘ワクチンを改良した新型コロナウイルスワクチンをつくり、動物実験で発症予防効果を確認したと発表した。
他のワクチンに比べ、効果が長く持続する可能性があるという。

東京都の補助金による特別研究として実施し、AMED(日本医療研究開発機構)の支援を受けて、ノーベルファーマ鰍ニともに早期の実用化を目指したワクチン開発を進めている。

COVID-19は世界中の各国で猛威を振るっている。COVID-19の快復者の約30%ではウイルス排除後においても免疫誘導が不十分であるため、再感染リスクが懸念されている。
一方で、風邪コロナウイルス感染で誘導される免疫は、感染後1、2年という比較的短期間で低下・消失し、周期的に感染が繰り返される。

これらの点から、強力に免疫を誘導し、かつ長期間免疫を維持できる予防ワクチンの開発が望まれる。また、SARS-CoV-2に遺伝子変異が起こり得るため、変異に伴う抗原性変化にも対応し得る幅広い交差反応性を持つワクチンが求められる。

チームは、COVID-19に対する予防ワクチンとして、天然痘ワクチンであるワクシニアウイルスVaccinia virus)をさらに弱毒化したDIs株に、SARS-CoV-2遺伝子を導入した組換え生ワクチンを開発した。

参考

Oxford University/ AstraZeneca のワクチンAZD1222 は、チンパンジーに感染する風邪のアデノウイルスが人間の体内で増殖できないように複製能を欠損させた改変ウイルスを作り、そこに、SARS-CoV-2粒子の表面に存在するスパイクタンパクの遺伝子を組み込んだもの。これをヒトに注射すると、人間の体内でSARS-CoV-2のスパイクタンパクが作られ、それに対する免疫反応が惹起され、中和抗体ができる。

2020/5/22   アストラゼネカ、新型コロナウイルスのワクチン

 

このワクチンではワクシニアウイルスベクターを用いることによって、ワクチン接種後短期間でSARS-CoV-2に対する中和抗体及び細胞性免疫を強力に誘導できた。

また、付与された免疫が長期にわたって持続し、かつ抗原変異にも対応可能な幅広い交差反応性を持つ免疫の誘導が期待できる。

さらに、温度安定性が高く保存及び輸送時の温度が冷蔵あるいは室温でも良いといった利点がある。(Pfizerのワクチンは -70℃ 前後で保存する必要がある。)

 

この rDIs-Sワクチンを(ヒトACE2発現トランスジェニック)マウスへ接種してSARS-CoV-2感染防御試験を行った。

3週間隔で2回接種し、その1週間後にSARS-CoV-2による攻撃感染実験を行ったところ、比較対象の非組換えDIs株接種マウスでは、急激な体重変化に伴い死亡したが、本ワクチン接種個体では、ほとんど体重減少を認めず、100%の生存率を示した。

カニクイザルに接種した場合では、ワクチン接種群では肺内のSARS-CoV-2の増殖が1/50,000以下まで減少、強力に抑制され、肺炎の発症もほとんど見られず、ワクチンによる重篤な副反応も認められなかった。

年内にも、ノーベルファーマが治験を開始する。


2021/1/12 民主党、トランプ大統領弾劾決議案を下院に提出 

トランプ米大統領の支持者たちにより米連邦議会議事堂が襲撃・占拠され、5人が死亡した事件で、野党・民主党は大統領が「反乱を扇動」したとする弾劾条項を含む訴追決議案を作成した。

2021/1/10 米民主党、トランプ大統領の弾劾決議案を準備 

野党民主党は1月11日、大統領が支持勢力を扇動したとして米憲法修正25条を適用して同氏を解任するようペンス副大統領に要求する決議案を下院本会議 に提出した。

憲法修正25条
第4節  副大統領および行政各部の長官の過半数または連邦議会が法律で定める他の機関の長の過半数が、上院の臨時議長および下院議長に対し、大統領がその職務上の権限と義務を遂行することができないという文書による申し立てを送付する時には、副大統領は直ちに大統領代理として、大統領職の権限と義務を遂行するものとする。

決議案はトランプ大統領の行動を批判し、副大統領に大統領代理として大統領職の権限と義務を遂行することを求める

Resolved, That the House of Representatives calls upon Vice President Michael R. Pence—
(1) to immediately use his powers under section 4 of the 25th Amendment to convene and mobilize the principal officers of the executive departments in the Cabinet to declare what is obvious to a horrified Nation: That the President is unable to successfully discharge the duties and powers of his office; and

(2) to transmit to the President pro tempore of the Senate and the Speaker of the House of Representatives notice that he will be immediately assuming the powers and duties of the office as Acting President.

民主党の下院院内総務は全会一致による賛同を求めたが、共和党議員が反対した。このため1月12日に改めて採決し、賛成多数で可決する見通し。

ペロシ下院議長は、決議後24時間以内にペンス副大統領が動かなかった場合、弾劾訴追の手続きを進めると表明した。

ペンス副大統領は25条発動の考えを否定している。ホワイトハウスの弁護士は調査の結果、この条項は重症、麻酔などでの就労不能の場合だとしている。

 

下院民主党は同日、トランプ大統領が支持者らによる連邦議会議事堂の襲撃・占拠事件を扇動したとして、大統領を罷免するため弾劾訴追決議案(起訴状に相当)を提出した。

提出された弾劾決議案は「反乱の扇動」(Incitement of Insurrection)と題する1条項で、議事堂侵入を焦点とし、大統領が暴動を扇動したと非難しているが、加えて、1月2日にジョージア州の州務長官に電話し、同州での大統領選の結果をひっくり返す票を見つけるよう伝え、脅したことなども挙げている。 (当初原稿から一部修正)

当初の案に加え、憲法修正14条第3節の文言を引用し、トランプは大統領になれないとしている。

Section 3 of 14th Amendment.

No person shall be a Senator or Representative in Congress, or elector of President and Vice President, or hold any office, civil or military, under the United States, or under any state, who, having previously taken an oath, as a member of Congress, or as an officer of the United States, or as a member of any state legislature, or as an executive or judicial officer of any state, to support the Constitution of the United States, shall have engaged in insurrection or rebellion against the same, or given aid or comfort to the enemies thereof. But Congress may by a vote of two-thirds of each House, remove such disability.

 

提出された訴追決議案

Resolution

Impeaching Donald John Trump, President of the United States, for high crimes and misdemeanors.

 Resolved, that Donald John Trump, President of the United States, is impeached for high crimes and misdemeanors and that the following article of impeachment be exhibited to the United States Senate:

Article of impeachment exhibited by the House of Representatives of the United States of America in the name of itself and of the people of the United States of America, against Donald John Trump. President of the United States of America, in maintenance and support of its impeachment against him for high crimes and misdemeanors.

 Article T:Incitement of Insurrection

The Constitution provides that the House of Representatives "shall have the sole Power of Impeachment" and that the President "shall be removed from Office on Impeachment for, and Conviction of, Treason, Bribery, or other high Crimes and Misdemeanors".  Further, section 3 of the 14th Amendment to the Constitution prohibits any person who has "engaged in insurrection or rebellion against" the United States from "holding any office... under the United States".   In his conduct while President of the United States - and in violation of his constitutional oath faithfully to execute the office of President of the United States and, to the best of his ability, preserve, protect, and defend the Constitution of the United States, and in violation of his constitutional duty to take care that the laws be faithfully executed -  Donald John Trump engaged in high Crimes and  Misdemeanors by  inciting violence against the Government of the United States, in that:

On January 6, 2021, pursuant to the Twelfth Amendment of the United States Constitution, the Vice President of the United States, the House of Representatives, and the Senate met at the United States Capitol for a Joint Session of Congress to count the votes of the Electoral College. Shortly before the Joint Session commenced, President Trump repeatedly issued  false statements asserting that the Presidential election results were the product of widespread fraud and should not be accepted by the American people or certified by State or Federal officials. Shortly before the Joint Session commenced, President Trump, addressed a crowd at the Ellipse in Washington, DC. There, he reiterated false claims that  "we won this election, and we won it by a landslide".
He also willfully made statements that, in context,  encouraged - and foreseeably resulted in -  lawless actions at the Capitol, such as: "if you don't fight like hell you're not going to have a county anymore". Thus incited by President Trump, members of the crowd he had addressed, in an attempt to, among other objectives, interfere with the Joint Session's solemn constitutional duty to certify the results of the 2020 Presidential election, unlawfully breached and vandalized the Capitol, injured and killed law enforcement personnel, menaced Members of Congress, the Vice President, and Congressional personnel, and engaged in other violent, deadly, destructive, and seditious acts.


President Trump's conduct on January 6, 2021, followed his prior efforts to subvert and obstruct the certification of the results of the 2020 Presidential election. Those prior efforts included a phone call on January 2, 2021, in which President Trump urged Secretary of State of Georgia, Brad Raffensperger,  to "find" enough votes to overrun the Georgia presidential election results and threatened Secretary Raffensperger if he failed to do so.

In all of this, President Trump gravely endangered the security of the United States and its institutions of Government. He threatened the integrity of the democratic system, interfered with the peaceful transition of power, and imperiled a coordinate branch of Government. He thereby betrayed his trust as President, to the manifest injury of the people of the United States.

Wherefore, Donald John Trump, by such conduct, has demonstrated that he will remain a threat to national security, democracy, and the Constitution if allowed to remain in office, and has acted in a manner grossly incompatible with self-governance and the rule of law. Donald John Trump thus warrants impeachment and trial, removal from office, and disqualification to hold and enjoy any office of honor, trust, or profit under the United States.

ペロシ下院議長は声明で「米国に対する大統領の脅威は差し迫っており、われわれの対応もまた同様だ」と述べ、政権がトランプ氏解任に動かなければ弾劾へ進む意向を強調した。

弾劾決議案の本会議での採決は早ければ13日に行われ、過半数の賛成でトランプ氏は弾劾訴追される。

但し、下院で可決した場合でも、上院での次期政権の閣僚の指名承認手続きを優先させるため、上院への送付は遅らせる。バイデン次期大統領が就任して100日後以降に開始との案が出ている。

現時点で上院運営の主導権を握る共和党トップのマコネル院内総務はトランプ政権下で裁判を行わない方針を周辺に伝えた。
(ジョージア州での決戦で当選した民主党の2名は、まだ正式に認定されておらず、就任していない。)

トランプ大統領は1月20日に任期切れを迎えるが、議会調査局は公職を離れた後でも弾劾裁判を開くことができるとしている。

上院の弾劾裁判で3分の2の賛成で(退任後の)トランプ氏を有罪とした後、上院は過半数の賛成でトランプ氏に今後公職に就く資格を剝奪する採決を行うことができる。
トランプ氏の2024年の大統領選への再出馬を阻める。


2021/1/13 武漢のCOVID-19患者、退院半年で7割超に後遺症

新型コロナウイルスの感染が最初に拡大した中国・武漢市の医師らでつくる研究チームが、拠点病院の患者約1700人の7割以上に退院から半年が経っても後遺症とみられる症状があったとの研究結果を1月8日付英医学誌Lnacet(電子版)に発表した。

6-month consequences of COVID-19 in patients discharged from hospital: a cohort study

武漢市で最も早くから患者を受け入れた「金銀潭病院 (Jin Yin-tan Hospital)」の医師らが参加した研究チームは、2020年1月7日〜5月29日に退院した人を対象に、退院日からおよそ半年(中央値は186日)がたった時点(6月16日〜9月3日)で診察と身体検査、6分間の歩行テスト(6分間平地を歩いてもらい、肺や心臓の病気が日常生活の労作にどの程度障害を及ぼしているのか調べるための検査)を実施した。

退院した2469人のうち、拒否、接触不能、重度の精神的・身体的症状、死亡等を除く 1733人を調べた。このうち516人には追加で詳細な検査を行った。年齢の中央値は57.0歳で、うち男性は52%。

何らかの症状があった人は76%に上った。

最も多かったのは「倦怠感や筋力低下」(63%)で、「睡眠障害」(26%)、「脱毛」(22%)や「嗅覚異状」(11%)も比較的高い割合を示した。
他に、動悸(9%)、関節痛(9%)、食欲減(8%)、味覚異常(7%)、眩暈(6%)、下痢・吐き気(5%)、胸の痛み(5%)・・・と続く。

不安やうつ症状を訴える人は23%あった。これは女性の方が頻度が高かった。

さらに390人に肺機能の検査をしたところ、入院中に高機能機器による酸素吸入治療を受けた重症患者の56%は肺機能が低下していた。酸素吸入をしなかった人でも肺の機能低下は22%に上ったという。

今回の調査結果は、患者がたとえ新型コロナウイルス感染症から回復したとしても、長期にわたる後遺症に見舞われる可能性があることを示唆している。


2021/1/13 米下院、憲法修正25条の発動求める決議を可決 

米下院は1月12日夜、民主党が提出した「米憲法修正25条を適用して大統領を解任するようペンス副大統領に要求する決議案」を可決した。共和党から1名(Adam Kinzinger 議員)が賛成、5名が棄権した。

  賛成 反対 棄権 合計
民主党 222 0 0 222
共和党 1 205 5 211
合計   223 205 5 433

下院は2議席が未定
 ルイジアナ州  5 区 は決選投票で勝利した議員が12月29日に新型コロナで死去し、空席になった。2021年3月20日に選挙が行われる。
 ニューヨーク州22区は小差(現在 0.009%の差)のため裁判になっている。(当局のミスで選挙人登録ができず、無効となった票の扱いなど)

ーーー

トランプ大統領とペンス副大統領は1月11日、ホワイトハウスの大統領執務室で会談し、1月20日までの任期を勤めあげることを確認した。

大統領は任期終了前に退任するつもりはなく、副大統領も修正25条を発動させてトランプ氏を免職するつもりはないとした。

大統領は1月12日に記者団に対し、1月6日の抗議集会でに演説した内容について、「不適切なところは一切ない」と断言した。2度目の大統領弾劾について、「政治史上で最大の魔女狩りが続いている。全くばかげている」と切り捨てた。

民主党は副大統領に、修正25条発動決議の可決後 24時間以内に大統領を罷免するよう副大統領に迫っていた。

しかし、副大統領は1月12日の投票の数時間前にペロシ議長宛ての修正25条発動拒否のレターを公表した。残り任期が8日しかなく、意味がないとしている。

"With just eight days left in the President's term, you and the Democratic caucus are demanding that the Cabinet and I invoke the 25th Amendment.
I do not believe that such a course of action is in the best interest of our nation or consistent with our Constitution."

これを受けて、民主党は13日に下院で弾劾決議案の採決を行う。2019年12月の弾劾訴追 に次ぐもので、これまでに弾劾訴追を2回受けた大統領はいない。

共和党内ではトランプ大統領の求心力は低下しており、少なくとも4人の共和党議員が弾劾に賛成票を投じる考えを示した。

既報のとおり、下院で決議しても、バイデン政権が指名する政府高官の承認や新型コロナウイルス対策を優先するため、上院への送付を遅らせる可能性が高い。

報道によると、Biden次期大統領は共和党のMcConnel上院総務に電話し、弾劾と通常審議を(例えば午前と午後に分け)並行して行う「分離審議(Bifurcatiion)」の可能性について話し合ったという 。

2021/1/12 民主党、トランプ大統領弾劾決議案を下院に提出 


2021/1/14 COVID-19の治療に一酸化窒素の鼻スプレイ 

カナダの SaNOtize Research and Development Corp.は1月10日、同社がCOVID-19 対策に開発した一酸化窒素の鼻スプレイ:SaNOtize Nitric Oxide Nasal Sprayの英国での臨床試験が英国の Ashford and St Peter's Hospitals NHS Foundation Trustで始まると発表した。

ウイルスを上気道で殺し、肺に広がるのを防止する。Utah State UniversityのAntiviral Research Instituteのテストで、COVID-19の新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)を2分以内に99.9%殺すことが認められたという。現在、カナダでPhase 2 の治験を実施中。

原料は一酸化窒素で、光化学スモッグや酸性雨の成因に関連するが、体内でも生成し、血管拡張作用を有する。

SaNOtize Research and Development Corp の共同設立者でCEOのカナダ系イスラエル人 Dr Gilly Regevは、「ウイルスは鼻から入り、拡散する。身体に入る段階でウイルスを殺せば、病気にかからない」と述べている。

付記

インドの製薬会社Glenmark Pharmaceuticals は8月2日、SaNOtize との間でSaNOtize’s nitric oxide nasal sprayの独占的長期戦略パートナーシップを締結した。
インド、シンガポール、マレーシア、香港、台湾、ネパール、ブルネイ、カンボジア、ラオス、ミャンマー、スリランカ、チモール、ヴェトナムでの製造販売の権利を得た。

インド当局はインドでのPhaseV治験開始を認めた。年内に完了する見込み。

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2003年の重症急性呼吸器症候群(SARS)による肺の障害に対して、以下の点から一酸化窒素(NO)吸入療法の有効性が認められた。

@ 感染細胞内のコロナウイルス増殖抑制
血管拡張による肺換気血流改善とそれによる動脈血酸素化改善
炎症抑制(白血球粘着抑制、血小板凝集抑制、血栓形成の抑制など)

COVID-19のウイルス(SARS-CoV-2)は、SARSのウイルス(SARS-CoV)の姉妹種である。

COVID-19対策としても、一酸化窒素を利用して各地で試験が行われている。

 

FNNプライムオンライン(2020/4/28)に、マサチューセッツ総合病院で一酸化窒素をコロナ患者に吸入させる臨床試験を行っている麻酔科医の市瀬 史医師のインタビューが載っている。

一酸化窒素は私たちの細胞も出しているガスで、おもに血管を拡張させるものです。
それが最初に注目されたのは、新生児の肺高血圧という肺の血圧が上がってしまう病気で、一酸化窒素を吸入させることで効果が見られた。大人の肺疾患にも一酸化窒素吸入は行われている。

2003年に中国で流行したSARS(重症急性呼吸器症候群)の患者に使用し、一定の効果が認められた
当時のSARSウイルスと、今回の新型コロナウイルスはもちろん違うものだが、かなり似た点もある。

新型コロナウイルス肺炎になると患者の肺の近くの血管は細くなったり血栓ができたりして流れが悪くなって酸素を取り込みにくくなる。そこに一酸化窒素が吸入されると、肺の近くの血管に達し、血管を広げて血栓をできにくくするので血液の流れを良くすることができる。流れが良くなった血管には、肺から十分に酸素を取り込むことができるから息が楽になる。

 

城西大学薬学部・城西大学薬学研究科の小林 順 教授・村田 勇 助教を中心とした研究グループは、クラッシュ症候群(腎不全やサイトカインストームから起こる多臓器不全による致死的病態)にNO供与体が病態改善の効果と著明な救命効果があることを動物実験などで報告している。

COVID-19の肺障害を介したサイトカインストームに着目し、ECMOへの移行を減らすため、NO吸入療法を提案している。上記のSARSへのNOガスの有効性の3つのポイントを根拠にしている。

ドイツの救急医療専門雑誌のAnnals of Intensive Careに2020年5月20日付で投稿した。

Nitric oxide inhalation as an interventional rescue therapy for COVID-19-induced acute respiratory distress syndrome

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COVID-19の治療に一酸化窒素が有用との資料は多いが、これまでは、COVID-19の患者の治療である。

今回は鼻から入ったウイルスを一酸化窒素で殺し、予防するというものである。

これが有効であれば素晴らしく、治験の効果が期待される。

発表されたのはウイルスを殺す効果(99.9%)であるが、COVID-19防止の効果が示されるであろうか。

素人の疑問として、

・一酸化窒素の効果がどれだけ続くのか、どんな頻度でスプレイする必要があるのか?

・唾液検査が有効なのは口からのウイルス侵入があるためと思われるが、これはどうやって防ぐのか?


2021/1/14 トランプ大統領 2度目の弾劾訴追

米下院は1月13日、トランプ大統領の支持者が連邦議会議事堂に乱入した事件を巡り、反乱を扇動したとして大統領を弾劾訴追する決議案を討論した。

2021/1/12 民主党、トランプ大統領弾劾決議案を下院に提出 

民主党幹部のPelosi下院議長は、「アメリカの大統領がこの反乱、私たちの国に対するこの武装反逆を扇動した」、「彼は去らなくてはならない。私たち全員が愛する国にとって、彼は明確で差し迫った危険になっている」と述べた。

共和党議員の多くは、トランプ氏の主張を擁護はしなかった。その代わり、慣例となっている聴聞会が開かれていないなど、進め方を批判した。

共和党のKevin McCarthy下院院内総務は、「大統領には暴徒による議会襲撃に責任がある。あの襲撃を目のあたりにしたら、直ちに暴徒を非難すべきだった」としたが、「これほど短期間で大統領を弾劾するのは間違いだ」と主張した。そして「米国の分断を深める」として弾劾決議には反対した。

トランプ派の議員は、民主党が政治的報復のため、危険を顧みずに国家を分断していると非難した。

採決に入り、232対197の賛成多数で可決した。

共和党からは下院ナンバー3のLiz Cheney下院共和党会議議長を含め、10人が賛成票を投じ、4名が棄権した。

付記 共和党は5月12日、Liz Cheney下院共和党会議議長の役職を解任した。2022年の中間選挙に向け、トランプ氏の協力が必要と判断した。

  賛成 反対 棄権 合計
民主党 222     222
共和党 10 197 4 211
合計    232 197 4 433

トランプ大統領は2回の弾劾訴追を受けた史上初の米大統領となった。

今後、上院で弾劾裁判が開かれることになるが、上院は休会中ですぐに再開の予定はな く、トランプ大統領は1月20日正午に任期を満了する見通し。

上院での弾劾裁判は退任後に行われる。上院の2/3の賛成で有罪となった場合、民主党は上院の過半数の賛成により、トランプ氏から今後公職に就く資格を剝奪することを狙っている。

ーーー

トランプ大統領は下院での審議中に、暴力を否定する非常に短い声明を発表した。造反の拡大を食い止める狙いがあったとみられる。

In light of reports of more demonstrations, I urge that there must be NO violence, NO lawbreaking and NO vandalism of any kind.
That is not what I stand for, and it is not what America stands for.
I call on ALL Americans to help ease tensions and calm tempers. Thank You.

トランプ大統領は下院での採決後に White Houseのツイッターでビデオメッセージを発表した。

まず、先週の暴力を批判し、支持者に向けて平静を保つよう呼びかけた。

"No true supporter of mine could ever endorse political violence. No true supporter of mine could ever disrespect law enforcement or our great American flag."

"Now I am asking everyone who has ever believed in our agenda to be thinking of ways to ease tensions, calm tempers and help to promote peace in our country."

新しいデモ計画があることを聞いたと述べ、同日出した声明を繰り返した。

"I urge that there must be NO violence, NO lawbreaking and NO vandalism of any kind. "

最後に、ツイッター等が大統領のアカウントを閉鎖したことを言論の自由への前例のない攻撃であると非難した。

"(It is) unprecedented assault on free speech we have seen in recent days."
"Efforts to censor, cancel and blacklist our fellow citizens are wrong and they are dangerous."
"What is needed now is for us to listen one another, not to silence one another."

弾劾訴追が決議されたことには一切言及しなかった。


共和党 賛成者:

Liz Cheney (Wyoming)、Anthony Gonzalez (Ohio)、Jaime Herrera Beutler (Washington)、John Katko (New York)、Adam Kinzinger (Illinois)、
Peter Meijer (Michigan)、Dan Newhouse (Washington) 、Tom Rice (South Carolina)、Fred Upton (Michigan)、David G. Valadao (California)

 

付記

米共和党上院トップのマコネル院内総務は1月19日の上院本会議で、6日に起きた連邦議会議事堂占拠事件について、「トランプ大統領や他の影響力を持つ人々に扇動された」と発言した。
「暴徒はウソをすり込まれていた」と述べ、大統領選で大規模な不正があったとの根拠のない主張を繰り返したトランプ氏らを批判、「我々は団結し、米国ではたとえ一晩でも怒る暴徒たちが法の支配を拒否することはさせないと明言した」と強調した。

同事件を巡る上院のトランプ氏弾劾裁判に影響を与える可能性がある。


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