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2021/1/15 朴槿恵・韓国前大統領、懲役20年が確定 

韓国最高裁は2021年1月14日、サムスングループなどから巨額の賄賂を受け取ったとの特定犯罪加重処罰法上の収賄罪などに問われた前大統領、朴槿恵被告(68)の上告審で、検察の上告を棄却、刑が確定した。

差戻し二審で検察は懲役35年等を求刑したが、ソウル高裁は2020年7月10日、懲役20年、罰金180億ウォン(約17億円)などの実刑を言い渡した。高裁は、政治生命が絶たれたに等しい上、「刑の執行が終了する時点の年齢なども考慮した」と説明した。

これに対し、検察側が上告していた。

今回、最高裁はこのソウル高裁での差し戻し控訴審判決を支持、これが確定した。

  朴槿恵被告 崔順実被告
一審 2018年4月6日 ソウル中央地裁
懲役24年、罰金180億ウォン(約18億円)の実刑判決
 2018/4/6  朴前大統領に懲役24年の実刑判決
2018年2月13日
懲役20年、罰金180億ウオンの実刑判決
 
2018/2/13 朴前大統領親友に懲役20年、ロッテ重光会長も実刑
二審 2018年8月24日、ソウル高裁
懲役25年、罰金200億ウォン
同左
懲役20年、罰金200億ウォン
最高裁 2019年8月29日
差戻し
大統領在任中の収賄罪は、公職選挙法の規定に従い、他の罪と分けて判決を宣告する必要あり。収賄は認定。
同左
差戻し
強要罪のうち一部は無罪にすべきだと判断

2019/8/29 韓国最高裁、朴前大統領とサムスン電子副会長の二審判決破棄、差し戻し

差戻し二審 検察は5月20日、懲役35年などを求刑 

ソウル高裁は7月10日、懲役20年、罰金180億ウォンなどの実刑判決を言い渡した。

求刑は懲役35年だが、高裁は、政治生命が絶たれたに等しい上、「刑の執行が終了する時点の年齢なども考慮した」と説明した。

2020年2月14日 ソウル高裁
懲役18年と罰金200億ウォン、追徴金約63億ウォン
最高裁 2021年1月14日
検察の上告を棄却

 懲役20年、罰金180億ウォン(約17億円)などの実刑が確定

2020年6月11日
上告棄却。懲役18年の実刑と罰金200億ウォン、
追徴金約63億ウォンの2審判決が確定

 2020/6/11 朴槿恵前政権下での国政介入事件の崔順実被告、実刑確定

付記

韓国大法院(最高裁)は2021年1月14日、朴槿恵被告の裁判で、懲役20年、罰金180億ウォン(約17億円)を言い渡した昨年7月の高裁判決を支持し、刑が確定した。

朴被告は別の選挙介入事件でも懲役2年が確定しており、合わせて懲役22年の実刑となる。

朴槿恵元大統領については、収賄などの罪で懲役22年の実刑が確定し服役中であったが、2021年12月31日付で赦免された。健康状態の悪化などを考慮して、文在寅前大統領による新年の特別恩赦の対象者に含まれた。2021年に入り、慢性的な肩の疾患や椎間板ヘルニアなどのため、3回入院を重ねていた。

ーーー

全斗煥元大統領は大統領在任期間中などに不正に蓄財していたとして1997年に追徴金2205億ウォンを科す大法院判決が出た。

盧泰愚元大統領は政治資金隠匿で有罪となったが、その後、粛軍クーデターと光州事件の捜査が行われ、1997年4月17日にそれらを含めた公判で最高裁判所は懲役17年、追徴金2688億ウォンを宣告した 。

付記 2021年10月26日、ソウル市内の病院で死去した。88歳だった。

サムスン電子などから巨額の賄賂を受け取り、会社資金を横領したとして収賄、横領罪などに問われた李明博元大統領について、2020年10月29日に懲役17年、罰金130億ウォン(約12億円)、追徴金約57億8000万ウォン(約5億3000万円)の実刑判決が確定した。
韓国最高裁は「横領、収賄の事実認定に関する原審の結論に過ちはない」として、弁護・検察双方の上告を棄却した。

 

韓国の歴代大統領で有罪判決を受けたのは全斗煥、盧泰愚、李明博に続いて、今回、朴槿恵が4人目となる

2020/10/30 韓国の李明博元大統領に懲役17年の実刑確定
 


2021/1/15 トランプ政権、政権交代直前に対中圧力を強化

トランプ政権は政権交代直前に対中規制を相次いで発動し、バイデン次期政権にも圧力を続けるよう迫っている。

国防総省は1月14日、「共産主義中国の軍事企業」のリストにスマートフォン世界3位の小米(Xiaomi Corp)のほか、航空機メーカーの中国商用飛機(COMAC)など9社を追加した。
米国人はリストに掲載された企業の新たな株式購入が禁じられ、持ち分も売却する必要がある。

Advanced Micro-Fabrication Equipment Inc.
Luokong Technology
Xiaomi Corp  (小米)
Beijing Zhongguancun Development Investment Center
GOWIN Semiconductor
Grand China Air
Global Tone Communication Technology
China National Aviation Holding
Commercial Aircraft Corporation of China

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トランプ米大統領は11月12日、中国軍によって所有または支配されていると米政権がみなす中国企業 (“Communist Chinese military company” )について、米国人による投資を禁止する大統領令に署名した。

大統領令はまた、米国の投資家に対し、対象企業が発行する証券や対象企業に影響を受ける証券の保有ないし取引を禁じる。
年金基金を通じた保有や直接保有が禁じられる。投資家は2021年11月までに対象企業の証券を売却する必要がある。

大統領令は2021年1月11日に発効する。

“Communist Chinese military company” は国防長官が指定する。当初20社が指定されていたが、8月28日に11社を追加、12月3日に半導体受託生産最大手、中芯国際集成電路製造(SMIC)など4社を追35社となってい たが、今回9社を追加した。

2020/11/13 米国、中国軍支援企業への投資を禁止

商務省は同日、安全保障上の問題がある企業を並べた「Entity List」に中国の国有石油大手、中国海洋石油(CNOOC)を追加すると発表した。
原油など特定製品を除き同社への輸出が事実上禁じられる。

領有権が争われている南シナ海の海域での海洋掘削に長年関与し、中国が進める南シナ海の軍事拠点化に関わっていると批判した。

 

付記 

米首都ワシントンの連邦地裁は3月12日、小米(シャオミ)を投資禁止の対象となる中国軍関連企業に指定した決定について一時差し止めを命じた。投資制限措置は3月15日に発効する予定だった。

シャオミは1月末に同指定は「違法で違憲」だとして指定の取り消しを求め訴訟を提起。中国人民解放軍に支配されている事実はないと主張した。

連邦地裁は国防総省側が問題としている国家安全保障上の利益について必要不可欠なものと証明できていないとの判断を下した。

シャオミの広報担当者は、「同指定を違法と認定し、恒久的に解除するよう裁判所に引き続き求めるつもりだ」と述べた。

 

付記     

2021年5月、バイデン政権は小米(シャオミ)を投資禁止の対象から外した。連邦地裁に提出した資料で判明した。正式な除外に向けた条件を同社と詰める。

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米商務省は2020年12月18日、半導体メーカーの中芯国際集成電路製造(SMIC : Semiconductor Manufacturing International Corporation)を含む中国企業77社をEntity Listに加えたことを明らかにした。「国家の安全を守るため」だと理由を挙げた。

Entity Listは輸出管理法(規則 744.11(b) )に基づき安保上懸念がある企業を指定するもので、海外企業を含む企業が米国のハイテク製品や技術を同社に輸出する場合は商務省の許可が必要になり、原則却下される。

2020/12/19 米国、半導体SMICなど中国企業77社をEntity Listに追加

商務省はまた中国企業 北京天驕航空産業投資(Skyrizon)をMilitary End-User List に加えた。

Skyrizonは北京信威科技集団(Beijing Xinwei Technology:旧称北京中創信測科技)子会社で、以前からウクライナの航空機エンジンメーカー Motor Sich の買収に動いている。

Skyrizonがウクライナの「世界最大の飛行機」と呼ばれる6発エンジンの大型輸送機 AN-225 のエンジンを重慶で生産するとの噂があり、米国はこれに懸念を示していた。

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米商務省は2020年12月21日、Export Administration Regulationsに基づき、航空宇宙分野などの中国企業58社とロシア企業45社の計103社を新しく軍事エンドユーザー(‘Military End User’)に指定したと発表した。

広範囲の米製品・技術を対象企業に輸出、再輸出、国内移転する場合は許可制とし、規制を強化する。申請は却下される可能性のほうが大きい。

2020/12/24 米、中国・ロシアの軍関連企業リスト公表 取引制限の対象に 


2021/1/16  老化細胞の選択的除去で加齢現象・老年病・生活習慣病を改善

東京大医科学研究所の中西真教授らは、加齢に伴い蓄積し、動脈硬化や糖尿病などさまざまな加齢関連疾患の原因となる「老化細胞」(senolysis) だけを除去する薬剤を発見し、マウスの実験で疾患の改善にも成功した。

論文は1月15日にの米科学誌 Scienceに掲載された。

"Senolysis by glutaminolysis inhibition ameliorates various age-associated disorders"

同様の研究は大阪大学微生物病研究所の原英二教授らのチームで行われており、2020年4月22日付けで英国の科学雑誌『Nature Communications』にオンライン掲載されている。

A BET family protein degrader provokes senolysis by targeting NHEJ and autophagy in senescent cells

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正常な細胞は発がんの危険性がある修復不可能なDNA損傷が生じると、アポトーシス (細胞死)を起こすか、細胞老化を起こして細胞周期の進行を不可逆的に停止する。

これらの現象は、異常細胞の増殖を防ぐ重要ながん抑制機構として働いていると考えられてきた が、アポトーシスとは異なり、老化細胞は生存可能なため、加齢とともに老化細胞が体内に蓄積していく。体内に蓄積した老化細胞は炎症性サイトカインやケモカインなどの炎症性物質を分泌する ことで慢性炎症を惹起し、がんを含めた様々な炎症性疾患の発症を促進することがわかってきた。

また、老齢のマウスから特殊な方法で老化細胞を除去すると、動脈硬化や腎障害などの発症が遅れることが分かっているが、薬剤などで除去する方法は見つかっていなかった。

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東京大医科学研究所チームは、ヒトの細胞を使って老化細胞を人為的に作製、老化細胞の生存に必要な遺伝子を探索し、glutaminase 1 (GLS1) というグルタミン代謝に関する遺伝子を見つけた。

さらに、細胞内小器官の異常で老化細胞内は酸性に傾いており、GLS1が過剰に働いて中和することで、細胞を維持していることも分かった。

老化細胞の細胞内pHは、リソソーム膜の損傷によって低下し(酸性に傾く)、腎臓型グルタミナーゼ(KGA)の発現を誘導する。
増強されたグルタミノリシスはアンモニア産生を誘発し、中和して、老化細胞の生存を
維持する。


正常細胞と老化細胞にそれぞれGLS1の働きを阻害する阻害剤を添加したところ、老化細胞だけが死滅した。

GLS1の働きを止める阻害剤を老齢マウスに投与したところ、さまざまな臓器で老化細胞が除去され、腎臓や肺、肝機能などの低下が改善 、動脈硬化や糖尿病などの症状にも改善が見られた。

人間の年齢に換算すると、握力や免疫機能は60歳程度から30〜40歳程度になり、病気をもたらす腎臓の糸球体硬化や肺の線維化、肝臓の細胞炎症なども改善したという。

人間でも加齢とともにGLS1の働きが強まることは分かっており、同様の効果が期待できるという。


東大医科研の中西真教授(がん防御シグナル分野)は「がんを含め、さまざまな病気に老化細胞が関わっている可能性がある。GLS1阻害剤の副作用を慎重に調べ、5〜10年程度で臨床研究を開始したい」と話した。

このGLS1の働きを止める阻害剤は、抗がん剤の候補物質として、患者に投与して有効性や安全性を確かめる臨床試験が進んでいる。

チームは候補物質を明らかにしていないが、大阪大学チームは候補物質を明らかにしている。

ーーー

大阪大学微生物病研究所のチームは、武田薬品工業のオープンイノベーションプラットフォームを利用し、体内に蓄積した老化細胞を選択的に死滅させる薬剤(セノリティックドラッグ) の候補物質を15個同定した。

そのうち最も活性が高かった4化合物がBET inhibitorであることがわか った。

BET(Bromodomain and extra-terminal family protein)は、染色体を構成するヒストンの内、アセチル化したヒストンを認識し、転写因子を動員することで遺伝子の転写を調節する分子で、細胞において様々な遺伝子の発現制御に関与している。

研究の結果、BET degraderの一つであるARV825がセノリティックドラッグとしての効果が最も高いことが 分かり、作用機序を解析した。

老化細胞で働く主なDNA二重鎖切断修復機構を阻害すると同時に、オートファジー関連遺伝子群の発現上昇を促進することで老化細胞の細胞死を引き起こす 。

さらにARV825が生体内でもセノリティックドラッグとして働くかどうかを確認するために、肝がんの発症が促進されることが知られている肥満マウスにARV825を投与したところ、細胞老化を起こした肝星細胞が減少し、肝がんの発症率も低下することが 分かった。

ヒトのがん細胞を移植したヌードマウスに抗がん剤Doxorubicinを投与した後にARV825を投与すると、Doxorubicinの投与により発生した老化細胞が減少し、Doxorubicinによる腫瘍抑制効果が増強されることが わかった。

最近、抗がん剤処理や放射線照射で生き残ったがん細胞の一部が細胞老化様の増殖停止を起こし、更に 炎症性サイトカインを含む様々な分泌性タンパク質を高発現することでがんの再発や悪性化を引き起こす可能性が指摘されており、BET degraderのようなセノリティックドラッグは抗がん剤の治療効果の向上にも貢献できる可能性が期待されるとしている。


2021/1/16 ドイツ政権与党の党首選結果

ドイツの中道右派与党、キリスト教民主同盟(CDU)は1月16日、有力3氏による党首選を行い、メルケル首相に近いとされるNorth Rhine-Westphalia州首相Armin Laschet (59)を選出した。

メルケル氏が進めてきた中道路線が継続することになると見られている。

 

CDUは1月15〜16日にオンラインで党大会を開き、16日に党首選挙を行なった。地域の代表者1001人が投票した。

メルケル首相は今年9月の総選挙に出馬せず政界引退する。CDUの新党首は総選挙の結果、次期首相に就任する公算が大きいとみられている。

CDUは南部バイエルン州を地盤とする姉妹政党・キリスト教社会同盟(CSU)と統一会派を組んで いるが、「CDU-CSU」の支持率は現在1位を維持しているおり、この勢いを保てば次期首相に選出される可能性が高い。 (但し、前回選挙では統一会派は1位ではあるが過半は取れず、ドイツ社会民主党:SPDとの連立でようやくメルケル首相が再選された。)

しかし、高支持率の背景にはメルケル首相個人の人気もあるとみられ、CSU党首は「メルケル氏によって得ているボーナスは消える」と警鐘を鳴らしている。

統一会派のCSUのゼーダー党首(バイエルン州首相)が厳格な新型コロナ対策で評価を上げており、これを首相候補に担ぐ動きもあるという。

2021/1/8 ドイツ与党のキリスト教民主同盟(CDU)党首選挙  

立候補したのは次の3人。いずれも決め手に欠け、混戦になると見られていた。

候補(年齢)   2020/12調査*  
Norbert Roettgen (55)  元環境相  31.7% 外交政策に精通
「脱原発」を決めたドイツ政府のエネルギー政策を環境相として推進。
女性登用に積極的で若い世代への浸透も図る。
ただ、地元の州議会選挙で惨敗した責任を問われ、2012年に環境相を更迭された経緯もある。
Friedrich
Merz (65)
元党下院議員団長  28.8% 「非主流派」
移民に厳しい姿勢を示し、党内保守層の支持を得ている。  
2009年にメルケル氏との路線対立に敗れて政界を離れた後は公職に就いておらず、コロナ対策では存在感を発揮していない。
Armin
Laschet (59) 
ドイツ最大人口州のNorth Rhine-Westphalia州首相 11.8% 寛容な難民政策や同性婚容認、脱原発といった比較的リベラルな政策を進めてきたメルケル首相の路線を踏襲するとみられる。
同州内で発生したコロナ集団感染への初動対応が遅れ、州首相としての力量に疑問符が付き、支持が低迷。

 *シュピーゲル誌が2020年12月中旬に実施した「CDU党首に最もふさわしい人物」を問う調査


最初の投票で、1位の
Friedrich Merz (65)が2位のArmin Laschet (59)を5票差で上回り、3位がNorbert Roettgen (55)となったが、いずれの候補も過半数に届かず 、1位と2位の決選投票となった。
決選投票では、Armin Laschetが521票、Friedrich Merz が466票となり、Armin Laschet が逆転勝利した。

 

付記

9月の連邦議会(下院)選挙の前哨戦で、3月14日に実施されたドイツ西部2州の州議会選挙で、国政与党のキリスト教民主同盟(CDU)がいずれも過去最低の得票率で敗北した。
バーデン・ビュルテンベルク州では緑の党、ラインラント・プファルツ州ではドイツ社会民主党(SPD)が勝利した。


2021/1/18 バイデン次期大統領、1兆9千億ドル規模の追加経済対策案を発表

バイデン次期大統領は1月14日、1兆9千億ドル(約197兆円)規模の追加経済対策案American Rescue Plan を発表した。

この対策案にはCOVID-19への対応、COVID-19の影響に苦しむ家計支援、COVID-19の影響を受けたコミュニティへの支援など、世界最大の経済を再生するための多くの措置が含まれている。

デラウェア州ウィルミントンで演説したバイデン氏は、「こうした雇用や人種間の平等に対する投資は、長期的な経済損失を防ぐことにつながり、その利益は投資費用をはるかに上回る」と訴えた。「この危機的状況の中で、(中略)何もしないわけにはいかない 。」

さらに、「われわれは税金を米国の再建に使う。米国製品を買い、米製造業界で働く数百万人の雇用を支え、競争が激化する世界で米国の競争力を高める」と言明した。

政権移行チームは政策案発表に当たり、「時間との闘いだ。追加の政府支援がなければ経済と公衆衛生の危機が今後悪化する恐れがある。学校は安全に再開できず、ワクチン接種は進まないままとなる」と警告した。

バイデン次期大統領は1月20日の大統領就任直後に第2の「回復」計画(報道では下記のようなもの)を議会に提出する意向だという。

・再生エネルギーへの投資と雇用創出(選挙中は4年で2兆ドルと公約)
・バイアメリカン(連邦政府の物品調達などで)
・育児・介護支援(保育園無償化、子育て世帯の税優遇など)

問題は、共和党がこれまで反対してきた支出が多数含まれていることである。トランプ大統領が主張した一人当たり1400ドルの追加支給は下院が可決したが、上院では共和党が握りつぶした。州などの支援は主に民主党系知事の州への支援だとして共和党は反対してきた。最低賃金引上げなども、州レベルでは多く引き上げられているが、国レベルでは2009年から引き上げられていない。

下院は民主党が多数であるが、上院が問題である。決選投票での勝利で民主党(民主系無所属2名を含め)は共和党と同じ50票を獲得し、賛否同数の場合は上院議長である副大統領が投票するルールで辛うじて多数を得た。

失業給付や最低賃金などの措置は「財政調整措置」として知られるプロセスを用いれば単純過半数で可決が可能であるが、州・地方自治体支援やワクチン向け資金などの上院通過には60の賛成票を要する。
(共和党議員ののフィルバスターによる実質否決を避けるには 3/5の60票が必要である。)

共和党から10名の賛成票が得られるかどうかがキイとなる。

ーーー

American Rescue Plan は3つの部分からなる。

1.コロナ対応(ワクチン計画、COVID-19抑え込み、学校再開)
   
Mount a national vaccination program, contain COVID-19, and safely reopen school

2.コロナ危機に苦しむ勤労家庭の即時救済
   
Deliver immediate relief to working families bearing the brunt of this crisis

3.COVID-19の影響を受けたコミュニティの支援
   
Support communities that are struggling in the wake of COVID-19

 

詳細は下記の通り。 予算 億ドル

コロナ対応 全国的なワクチンプログラム 全国にワクチンセンター設置、遠隔地には移動ワクチン隊
全国民に無料接種
200
COVID-19検査体制 検査の拡大(急速検査購入、ラボ能力増強投資など)、学校と地方政府が常時検査できるよう支援 500
サポート体制 10万人のヘルスワーカー雇用 900
対策での差別排除等々 Community Health Center設立などを通じ、対策での差別を排除
(コロナ対策 合計) 1600
学校の再開支援 学校の安全な再開 1300
Higher Education Emergency Relief Fundの拡大
 カレッジなどの学生に1人当たり1700ドルまでの支援
350
深刻な影響を受けた学生支援のため知事向けのファンド 50
緊急有休休暇 ウイルス拡散防止のため106百万人に14週の緊急有休休暇(週1400ドル)を与える。
2021年9月末まで継続
 子供の学校、保育所がクローズの場合の両親、家族が症状 等々
 連邦職員 2百万人
雇用者には政府が補填
 
家計支援 直接給付金 増額 直接給付金を昨年12月承認の600ドルから計2000ドルに1400ドル増額  

トランプ大統領は少なすぎるとして当初認めなかったが、その後承認し、同時に議会に対し、無駄な支出を避け、国民に成人には2000ドル、子供には600ドルを渡すよう、伝えた。
下院は追加の1400ドル支給法案を通したが、与党共和党主導の上院は認めず、1人当たり600ドルで確定した。

 
失業保険の州支給分への上乗せ 昨年は週600ドルであったが、追加景気対策予算では 週300ドル上乗せとした。
これを400ドル上乗せとする。
 
住宅支援 被害の大きい家族に、強制立ち退き、担保権執行などの9月末までの延期  
被害の大きい賃貸人に賃貸料や光熱水道料補助に300億ドル供与 300
ホームレス回避に50億ドルの緊急支援 50
飢餓対策 Supplemental Nutrition Assistance Programの15%増  
女性、幼児、子供の食品確保に30億ドルの投資 30
レストランと組み、米国の家族に食を与え、同時にレストラン従業員の雇用継続  
Supplemental Nutrition Assistance Programで州の拠出を一時的にカット  
米国海外領土の住民のため10億ドルの追加の栄養支援 10
最低賃金の引き上げ 連邦法では2009年7月以降、時給は7.25ドルのまま、これを15ドルに引き上げ

州法ではワシントン州の13.50ドル以下、10ドル以上が10州以上ある。
従業員は連邦と州の高い方を受け取る権利がある。
市でも決めているところがあり、NY市は2020年から15ドル。 

 
essential workersへの対応 必要不可欠業務従事者は黒人等が多いが、リスクの割に報酬が少ない。業務に見合った報酬を払うよう、雇用者に要求  
高品質で低価格のchild care 業者の業務継続支援のため250億ドルの緊急安定化ファンド 250
両親が職場に戻れるよう、支援を拡大  
費用の補助のため税額控除を拡大  
家計補助 勤労所得税額控除の拡大など  
健康保険 失業者は健保がなくなるが、COBRAプログラム( 雇用時と同様の保険を継続)の適用を検討など  
コミュニティの支援 中小企業支援 事業再建の支援  
被害の大きい100万以上の中小企業に150億ドルの補助金 150
350億ドルの政府資金をテコに、1750億ドルの低利融資 1750
州等への支援 職員の雇用を継続し、COVID-19に対応するための支援として州や市町村に3500億ドルの緊急支援 3500
同じ目的で Economic Development Administrationに30億ドルの資金供与 30
公共交通の将来を保護 公共交通機関の支援 200
インデアン 部族政府のコロナ対策支援 200
サイバーアタックに対応し情報技術を保護 Technology Modernization Fundの拡大 90
サイバーセキュリティ技術向上と専門家採用 2
Technology Transformation Servicesの投資 3
セキュリティモニター、事故への対応 7
総合計 1兆9000

 

ーーー

バイデン次期大統領は1月15日、地元デラウェア州で演説し、新型コロナウイルスのワクチンの接種が進んでいないとして「アメリカのワクチン接種は今のところ惨めな失敗だ」とトランプ政権の対応を批判した。

トランプ政権は12月中に2000万人に接種を受けさせるとしていたが、1月14日朝の時点で各州に届けられたワクチンは約3000万回分で、接種を受けたのは1110万人にとどまっている。

そのうえで、ワクチンを接種できる施設を就任後1か月間で新たに全米100か所に設け、最終的には数千か所に増やすほか、遠隔地には医師などを派遣して接種を進める方針を明らかにした。

また、人手不足を補うため、退職した医師などに協力を求め、接種の対象者もこれまでの医療従事者などに加え、65歳以上の高齢者や、教師、食料品店の従業員などにも広げる 。また、低所得地域でのワクチン接種拡大や、ワクチンに懐疑的な国民向けに接種を奨励するマーケティングキャンペーンを打ち出す。

さらに、列車や航空機で州をまたぐ移動をする人や、連邦政府の職員にマスクの着用を義務づける大統領令を出すことも明らかにし、感染対策に力を入れると強調した。

マスクを着けるのは「愛国的な行動だ。皆さんにお願いしたい。われわれはこのウイルスとの戦いの中にある」と強調した。


2021/1/18 バイデン 次期大統領の最初の10日間 

Ron Klain 次期大統領首席補佐官は1月16日、バイデン新大統領の ホワイトハウスのメンバー向けのOverview of First Ten Days"メモを発表した。

米国は4つの危機(COVID-19危機、結果としての経済危機、温暖化、人種問題)に直面しているとし、これに対応する。

バイデン氏はトランプ政権による重大な損害を覆すだけでなく、米国を前進させるために行動を起こすと強調した。

大統領就任後、直ちに多くの大統領令を出す。

1日目(1月20日):

教育省に、国の奨学金の返済、利子支払いの繰延を求める。
パリ協定への復帰
イラクを含む7つのイスラム教徒多数の国の旅行禁止(“Muslim Ban”)の廃止
“100 Day Masking Challenge”:政府の施設と州をまたがる旅行に100日間のマスク使用 の義務付け
国全体での
強制立ち退き、担保権執行などの延期

1月21日:

COVID-19,学校や事業の安全な再開に関する多くの行動
  検査の拡大、労働者保護、明確な公共衛生基準の設定など

1月22日:

各省庁に労働者家族の経済的な救済のための即時の行動をとるよう指示

1月25日から2月1日までの間に、追加の指示を出す。

Buy American 政策を強化し、米国の将来は米国でつくる。
有色人種や十分なサービスを受けていないコミュニティを支える。
刑事司法制度の改革
温暖化対策(科学に基づく政策決定)
ヘルスケア
移民制度、国境管理
米国の復活、世界における地位の取り戻し

これらは始まりであり、もっともっとやる必要がある。

 

付記

複数の米メディアはバイデン氏が早ければ20日に「Keystone XL Pipeline 」の建設許可を撤回する大統領令に署名する見通しと報じた。

2017/1/26 Trump大統領、原油パイプライン建設へ大統領令

 

 


2021/1/19 中国がレアアースの統制強化へ 

中国政府は1月15日、レアアース(希土類)への統制を強化する「レアアース管理条例」(稀土管理条例)の草案を発表した。「国家利益と産業の安全を守る」ための措置だと説明しており、ハイテク分野で対立の長期化が見込まれる米国を牽制する狙いとみられる。

レアアースは中国の伝統産業の変容、新興産業の発展、国防科学技術産業の発展にとって非常に重要であると指摘し、「特別に保護」し、希土類の採掘と製錬の分離のために「総合指数管理システム」を確立する必要があるとしている。

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中国の全国人民代表大会常務委員会は2020年10月17日、ハイテク製品の輸出管理を強化する輸出管理法案を可決、同法が成立した。12月1日に施行した。
国家の安全を損ねると判断した海外企業をリスト化し、輸出を禁止できるようにする。

米国が通信機器大手、華為技術(Huawei)など中国企業への禁輸措置を強める中、同様の対抗措置が可能となる。

対象品目の全容は明らかになっていないが、高速通信規格「5G」関連や、ソフトウェアの設計図である「ソースコード」などが入る見通しで、レアアースが品目に含まれるかが焦点の一つである。 

2020/10/21 中国、輸出管理法成立、ハイテク禁輸

中国商務部は12月2日、国家安全に関わる物品や技術の輸出を制限する輸出管理法を巡り、規制対象となる品目の一部を発表した。レアアースは含まれていない。

2020/12/4 中国、輸出管理法の対象品目第一弾を発表

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工業情報化省が公表した草案によると、条例はレアアースの採掘や精錬分離、利用、製品流通などサプライチェーンの全体に適用する。
また、レアアースの輸出入に携わる企業に対し輸出管理などの法律・法規を順守しなければならないと明記した。

「輸出管理法」でレアアースが対象になるとの見方があるが、複数の制度を使い統制強化が進む可能性がある。

草案について2月中旬まで専門家などの意見を集めており、年内にも施行される可能性がある。

草案では、国内のレアアースの採掘、精製、分離に亘る割当管理、投資の承認システム、監督を含んでおり、中国がレアアース産業の管理を標準化し、産業の高度の開発推進を進めると見られる。

レアアース産業の政策立案の責任を持つ調整機構を設立する。

レアアースの生産割当制度は2006年から行なわれているが、厳しい規則や監督はなかった。新制度がこれを行なう。

レアアースの輸出についても影響があると見られている。

レアアースの輸出は最近減少しており、2020年は35,448トンで、前年比23.5%減となっている。
一つは、政府が産業の高度化を図り、レアアース鉱石での輸出を減らし、加工品の輸出を奨励していることによる。
政府が戦略的材料の規制を強化していることも影響している。

 

中国紙は本件の記事のなかで、トランプ米大統領が昨年、国防生産法を使用して国の鉱業開発を加速し、米国の輸入鉱物への依存を減らすことを承認する執行命令に署名した、と述べている。

トランプ大統領は2020年9月30日、レアアースにおける米国の中国依存を低減し、米国内の鉱山開発を加速させるため、国内鉱業界の緊急事態を宣言する大統領令に署名した。

大統領令は、内務省に対し、国防生産法(Defense Production Act)に基づき国防のための鉱石加工の資金を得るための計画を策定することを命じている。

国防生産法は朝鮮戦争の勃発を受け、1950年9月8日に成立した。大統領に下記の権限を与える。

 ・企業に対し、国防に必要とみなされる契約を結ぶことを命じる権限。
  売り惜しみや、便乗値上げすることを禁じる対象品目を指定する権限。

  ・国防のため、モノやサービスや設備を割り当てるためのメカニズム(規則や命令など)を決める権限。

  ・国防のために必要な不足する物品や重要な物品が防衛のために使えるよう、民間経済に介入する権限。

 ・国防のため、資産の徴用、業界への生産増の命令、賃金・価格のコントロール、労働紛争の終止、
  消費者与信や不動産与信の制限、優先度の設定、原材料の配分などの権限


2021/1/19  サムスントップ、贈賄罪差し戻し審で懲役2年6月、再び収監 

韓国サムスン電子トップの李在鎔副会長が朴槿恵・前大統領らへの贈賄罪に問われた差し戻し審で、ソウル高裁は1月18日、贈賄罪などを有罪とし、李被告に懲役2年6月(求刑は9年)の実刑判決を言い渡した。
執行猶予は付かず、再び収監された。下記のとおり2017/2〜2018/2の1年間収監されており、残り1年6月となる。

サムスン電子は経営トップが不在になる。

サムスン側は上告を検討するが、すでに最高裁は二審が贈賄額を36億ウオンとみなしたのに対し86億ウオンとみなし、差し戻しており、今回の高裁判決が確定する可能性が高い。

付記 

サムスン側は1月25日、高裁判決を受け入れ、上告を断念したと明らかにした。検察側も上告せず、26日午前0時に判決は確定。
収監中の李被告の残り刑期は約1年6カ月で、満期の場合は2022年7月に出所することになる。

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李被告は2017年2月に逮捕・拘束され、同年8月の地裁判決で懲役5年の実刑判決を受けて収監された。

控訴審判決公判が2018年2月5日開かれ、検察側は懲役12年を求刑していたが、ソウル高裁は地裁判決を破棄し、李被告に新たに懲役2年6カ月、執行猶予4年を言い渡した。
李被告は約1年ぶりに釈放された。

2018/2/5 サムスントップ釈放

上告審で韓国大法院(最高裁)は2019年8月29日、前大統領の朴槿恵被告、朴被告の友人の崔順実被告、サムスングループの実質トップである李在鎔・サムスン電子副会長らがかかわった国政介入事件の上告審判決を言い渡した。

李在鎔被告については、執行猶予付きの二審判決を破棄し、審理を高裁に差し戻した

二審では、朴被告の収賄額は86億ウオンなのに李被告の贈賄額は36億ウオンとしたが、サムスンが購入した馬3頭の購入費を賄賂に含めるかどうかの差である。
最高裁はこれも賄賂と認めた。

法律では、横領額が50億ウオンを超えると5年以上の懲役刑となっている。

2019/8/29 韓国最高裁、朴前大統領とサムスン電子副会長の二審判決破棄、差し戻し 

高裁での差し戻し審は異例の経過をたどった。

2019年10月の初公判で裁判官が改善策を促し、サムスン側が外部の有識者らで構成する「順法監視委員会」を立ち上げた。
2020年5月には李氏が「国民への謝罪」を表明する記者会見を開き世襲を否定した。
2020年12月の最終弁論で李被告は「最高の透明性、道徳性を持つ会社にする」との誓いの言葉を口にしていた。

ソウル高裁は今回、贈賄罪などを有罪とし、李被告に懲役2年6月(求刑は9年)の実刑判決を言い渡した。

なお、収賄側の朴槿恵被告については、 韓国最高裁は2021年1月14日、検察の上告を棄却、刑が確定している。

2021/1/15 朴槿恵・韓国前大統領、懲役20年が確定  

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サムスン電子の李在鎔副会長は別途、2015年のサムスン物産と第一毛織の合併過程における背任、サムスンバイオロジクスの粉飾会計などサムスン経営権継承を巡る一連の疑惑でも裁判を受けている。

争点は次の3つ。

1.サムスン物産・第一毛織の合併の違法性
2.第一毛織子会社のSamsung BioLogicsの4兆5000億ウォン粉飾会計疑惑
3.李副会長が関与したのか

検察は本件を3年以上先延ばしにしていた。

2020年5月26日、李在鎔副会長はソウル中央地検に出頭、17時間に及ぶ聴取を受けた。地検は5月29日にも再度呼び出して聴取した。

検察は6月4日、李在鎔副会長らについて、資本市場法違反(不正取引及び相場操作行為)や偽証などの容疑で逮捕状を請求した。

 ソウル中央地裁は6月9日未明、「被疑者を拘束する必要性が不十分」として、サムスン電子副会長に対する検察の逮捕状請求を棄却した。

韓国の検察捜査審議委員会は6月26日、検察に対し、本件捜査を中断し不起訴にするよう勧告した。強制力はないが、検察の捜査に影響を及ぼす。   

しかし、韓国のソウル中央地検は9月1日、李在鎔サムスン電子副会長を株価操作などの罪で在宅起訴した。

検察が勧告に従わずに起訴に踏み切ったことで、裁判は最長1年半かかり、最終的に最高裁が判断する事態となれば、決着までさらに2年を要することもあり得る。

2020/6/2  韓国検察、サムスン電子副会長を再度聴取、経営権継承巡る疑惑

 

2020年10月25日にサムスン電子 李健熙会長(78歳)が死去した。 
2014年に急性心筋梗塞で倒れ、長く入院、実質的に長男の李在鎔副会長に権限移譲しており、副会長が会長に就任する予定である。

 


2021/1/20  レナサイエンス、開発中のコロナ薬の優先交渉権を第一三共に供与 

レナサイエンスは1月17日、同社の開発品目であるRS5614(PAI-1阻害薬)について、第一三共とオプション契約を締結した と発表した。

RS5614のCOVID-19肺炎及びその他肺傷害等の呼吸器疾患治療薬の全世界を対象とした開発及び商業化の独占的実施許諾(ライセンス)に関する優先交渉権を第一三共に供与 する。

同社は本契約締結後も、COVID-19肺炎に対する国内における多施設第II相医師主導治験を進めるとともに、米国及びトルコで独立して実施中の第U相医師主導治験についても推進 する。

 

レナサイエンス(Renascience)は東北大学大学院医学系研究科 宮田教授等の研究成果を用いて、老化に伴う疾病及びメンタル疾患等の医薬品の開発と実用化を目指し、2000年2月に大学発の創薬ベンチャーとして横浜市に設立 された。

同社では、「老化」あるいは加齢に伴い生じる種々の疾患の原因分子 として、PAI-1(Plasminogen Activator Inhibitor-1)に注目した。

これは、血管内皮細胞や肝臓、血小板、脂肪細胞などに存在し、血管内皮障害や血小板の崩壊により、血中に多く放出され る血栓の形成に必要な分子であり、血栓症治療の標的として研究が進められてきた。

PAI-1は、形成された血栓を溶解するプラスミンの生成反応を助ける組織プラスミノゲンアクチベーター(t-PA)を特異的かつ即時的に阻害することで、線溶系反応を制御するはたらきがあ る。

近年ではこれが「老化」あるいは加齢に伴い生じる種々の疾患の原因分子として、その関与が強く示唆されてい る。

同社ではこのPAI-1の阻害薬を何とか開発したいと考え 、ヒトのPAI-1分子の結晶構造から、活性を阻害できる医薬品(低分子)を、コンピューター工学を利用して推測した。
そして、理論上、活性を阻害できる新規化合物を、10年以上かけてこれまで1,300個以上合成し、それらの活性や安全性、薬物動態などを評価する中で、RS5614 という候補を 得た。

動物での安全性試験を終了して、ヒトでの安全性試験(第一相試験)も終了した。

現在、RS5614を慢性骨髄性白血病、悪性黒色腫、新型コロナCOVID-19感染症の重症化の治療薬として臨床試験の段階 。

今後は、当初の目的である代謝疾患など、加齢に伴い生じる疾患にも、順次研究開発を進める予定 。

 

COVID-19感染症の重症化 )

高齢者や糖尿病などの基礎疾患を有するCOVID-19感染患者では、肺の炎症、線維化、肺気腫などが背景にあるため、 COVID-19による肺の傷害が急速に進行する場合がある。
また、肺傷害には微小血栓が著明に認められるなど、COVID-19感染患者は血栓症リスクが高く、血液凝固能が高まっていることが報告されている。

2020年5月18日に厚生労働省が発行した『診療手引き・第2版』においても、新型コロナウイルス感染症の患者での血栓症予防が重症化を回避するための重要な治療と考えられて いる。

開発しているRS5614(PAI-1阻害薬)は、微小血栓の溶解を促進することが分かっており、動物試験で肺の気道炎症、線維化、肺気腫を有意に抑制 する。

したがって、特に肺に基礎的障害を持つ高齢者や、代謝性疾患、動脈硬化、心疾患、腎疾患、悪性腫瘍などの基礎疾患を持ち、COVID-19感染症が悪化しやすい患者のARDS (急性呼吸窮迫症候群) への悪化を防ぎ、肺を保護する新薬として有用である可能性が強く示唆されている。

現在、軽症から中等症の肺炎を伴うCOVID-19感染患者を対象として、RS5614の治療効果と副作用を確認するための第二相試験(医師主導治験)を日、米、トルコの3地域で独立して実施中 。

 

(がん治療)

がんの大きな問題は、一旦治療したがんが「再発」してしまうことで、同社では、血液のがんである慢性骨髄性白血病を対象として、がんの再発を防ぐための新しい治療法の開発に取り組んでい る。

がん細胞は、がんの幹細胞から増えるが、がん幹細胞は微小環境(がんニッチ)という環境に守られているため、これまでの抗がん剤の治療法ではがん幹細胞を攻撃することは出来 ない。

RS5614(PAI-1阻害薬)は、がん幹細胞をがんのニッチから追い出す効果が期待され、抗がん剤と併用することでがん幹細胞を滅ぼし、がんの再発を防げると考えられ る。


2021/1/20  トランプ政権、欧州諸国等からの入国禁止を解除、バイデン政権はこれに反対 

米ホワイトハウスは1月18日、新型コロナウイルス拡大防止策として導入してきた欧州などからの外国人の入国禁止措置を1月26日に解除すると発表した。

Proclamation Terminating Restrictions on Entry of Certain Travelers from the Schengen Area, the United Kingdom, the Republic of Ireland, and Brazil

発表概要は以下の通り。

米国は2020年9月15日に、国外からのウイルス流入を抑える手段として、次の各国に直近14日以内に滞在した外国人に対する空路での入国禁止を発表した。

中国(香港とマカオを除く)、イラン
シェンゲン圏(欧州26カ国:EU以外のアイスランド、ノルウェー、スイス、リヒテンシュタインを含む)、英国、アイルランド、ブラジル

米国CDCは2021年1月12日、外国から米国に飛行機で入国するすべての乗客に、1月26日以降、COVID-19テストで陰性であること、又はCOVID-19から回復したことの証明が必要であるとの命令を出した。

これに従えば、入国禁止にしていた各国(中国とイランを除く)についても、入国を認めても、COVID-19を蔓延させる恐れはなくなる。

このため、トランプ大統領は、シェンゲン圏(欧州26カ国:EU以外のアイスランド、ノルウェー、スイス、リヒテンシュタインを含む)、英国、アイルランド、ブラジルからの入国制限を1月26日に解除する。

中国とイランについては、米国の衛生当局との協力を拒否し、ウイルスの蔓延に関するタイムリーで正確な情報の交換に応じなかった。これらの国が上記の1月12日のCDCの命令に協力することに疑いを生じる。このため、入国禁止を継続する。

 

これを受け、1月20日に発足するバイデン次期政権で大統領報道官に起用されるJen Psaki 女史はツイッターで、1月26日に解除する積りはないと表明した。
むしろ、COVID-19の蔓延を防ぐため、海外旅行に関する公共衛生措置を強化する計画だとしている。

With the pandemic worsening, and more contagious variants emerging around the world, this is not the time to be lifting restrictions on international travel.

On the advice of our medical team, the Administration does not intend to lift these restrictions on 1/26.
In fact, we plan to strengthen public health measures around international travel in order to further mitigate the spread of COVID-19.

 


2021/1/21 トランプ氏の大統領最後の日 

トランプ大統領は1月20日、次期大統領の就任式には出席せず、任期を終える正午を前にホワイトハウスを出発してワシントン郊外の軍のAndrews 基地に向かい離任の式典に臨んだ。
支持者に
"Goodbye. We love you. We will be back in some form" と述べた。

その後、大統領専用機 Air Force Oneに搭乗し、登録上の居住地として定めているフロリダ州Palm Beachにある別荘 Mar-a-Lagoに向かった。

噂では、トランプ氏は破産の危機にあるが、その対策という。
一般的に、
居住用不動産、自動車、家具等は一定の限度額以上は差押え対象となる。
しかし、フロリダ州やテキサス州では居住用不動産には上限額が定められておらず、すべて差押え対象外となる。
このため、
Mar-a-Lagoを居住不動産として登録したという。


米国で前任大統領が後任の就任式を欠席する4人目となる。(うち、弾劾訴追された2人目)

        前任 後任 退任事情
2代 John Adams 連邦党 1797/3/4
 〜1801/3/4
George Washington
(無所属)
Thomas Jefferson
(民主共和党)
副大統領(党が異なる)のThomas Jefferson に敗れる。
6代 John Quincy Adams
(John Adamsの息子)
民主共和党 1825/3/4
 〜1829/3/4
James Monroe
(民主共和党)
Andrew Jackson  
(民主党)
民主共和党が分裂。
Andrew Jackson 支持者からの議事妨害に晒され、「呪われた政権」とよばれた。
史上最悪の中傷合戦でAndrew Jackson に敗れる。
17代 Andrew Johnson
 副大統領から昇格
 (Lincoln 暗殺)
民主党 1865/4/15
〜1869/3/4
Abraham Lincoln
(共和党)
Ulysses Simpson Grant
(共和党)
南部再建で南部人に寛大な政策をとり、共和党急進派と対立、政敵の陸軍長官罷免で弾劾訴追、上院で1票差(2/3以上)で否決
議会との対立の溝は決定的なものになり、レームダック化
45代 Donald John Trump 共和党 2017/1/20
〜2021/1/20
Barack Obama
 (民主党)
Joe Biden
(民主党)
二度の弾劾訴追 一度目は上院で否決、二度目は未定

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米共和党上院トップのマコネル院内総務は1月19日の上院本会議で、6日に起きた連邦議会議事堂占拠事件について、「暴徒はウソをすり込まれていた。トランプ大統領や他の影響力を持つ人々に扇動された」
と述べ、大統領選で大規模な不正があったとの根拠のない主張を繰り返したトランプ氏らを批判、「我々は団結し、米国ではたとえ一晩でも怒る暴徒たちが法の支配を拒否することはさせないと明言した」と強調した。

"The mob was fed lies. They were provoked by the president and other powerful people, and they tried to use fear and violence to stop a specific proceeding of the first branch of the federal government which they did not like. But we pressed on. We stood together and said an angry mob would not get veto power over the rule of law in our nation, not even for one night."

同事件を巡る上院のトランプ氏弾劾裁判に影響を与える可能性がある。

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ホワイトハウスは1月20日、トランプ大統領が退任を目前に、バノン元首席戦略官など元側近や共和党関係者など73人に恩赦を与え、70人を減刑したと発表した。

なお、退任後に訴追される可能性を排除するため、みずからへの恩赦を検討していると報じられていたが、これは実施しなかった。今後、訴追される可能性がある。

米国憲法は「弾劾を除き、合衆国に対する犯罪で刑執行の猶予を与えたり恩赦したりする権限が大統領にはある」としているが、大統領が自身を恩赦することが合憲である可能性を憲法は明示していない。
これまで試した大統領はおらず、法廷も審理したことはない。

1974年に法律顧問局の法律専門家が、当時のニクソン大統領が自身を恩赦することについて、「誰も自分を裁くべきではないという根本的な原則からは、大統領は自身を恩赦できない」とするメモを作成している。これは個人のメモである。

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ホワイトハウスは1月19日、トランプ大統領のお別れ演説のビデオ動画を公開した。

4年前の大統領就任について「to make America great again — for all Americans という任務に着手した」と振り返り、大型減税や規制緩和などの成果を列挙した。

そのうえで、「私たちが起こした運動はまだ始まったばかりだ(the movement we started is only just beginning)」とも述べた。

バイデン次期大統領に対して「米国の安全と繁栄をうまく継続させることを祈っている」と述べた。

連邦議会議事堂の占拠事件をめぐっては「全ての米国民をぞっとさせた。政治的暴力は米国人が大切にしている全てのものに対する攻撃だ。決して許されるべきではない」と非難した。

以下 全文:

Remarks by President Trump In Farewell Address to the Nation

My fellow Americans: Four years ago, we launched a great national effort to rebuild our country, to renew its spirit, and to restore the allegiance of this government to its citizens. In short, we embarked on a mission to make America great again — for all Americans.

As I conclude my term as the 45th President of the United States, I stand before you truly proud of what we have achieved together. We did what we came here to do — and so much more.

This week, we inaugurate a new administration and pray for its success in keeping America safe and prosperous. We extend our best wishes, and we also want them to have luck — a very important word.

I’d like to begin by thanking just a few of the amazing people who made our remarkable journey possible. (家族、副大統領以下、名前を列挙)

Most of all, I want to thank the American people. To serve as your President has been an honor beyond description. Thank you for this extraordinary privilege. And that’s what it is — a great privilege and a great honor.

We must never forget that while Americans will always have our disagreements, we are a nation of incredible, decent, faithful, and peace-loving citizens who all want our country to thrive and flourish and be very, very successful and good. We are a truly magnificent nation.

All Americans were horrified by the assault on our Capitol. Political violence is an attack on everything we cherish as Americans. It can never be tolerated.

Now more than ever, we must unify around our shared values and rise above the partisan rancor, and forge our common destiny.

Four years ago, I came to Washington as the only true outsider ever to win the presidency. I had not spent my career as a politician, but as a builder looking at open skylines and imagining infinite possibilities. I ran for President because I knew there were towering new summits for America just waiting to be scaled. I knew the potential for our nation was boundless as long as we put America first.

So I left behind my former life and stepped into a very difficult arena, but an arena nevertheless, with all sorts of potential if properly done. America had given me so much, and I wanted to give something back.

Together with millions of hardworking patriots across this land, we built the greatest political movement in the history of our country. We also built the greatest economy in the history of the world. It was about “America First” because we all wanted to make America great again. We restored the principle that a nation exists to serve its citizens. Our agenda was not about right or left, it wasn’t about Republican or Democrat, but about the good of a nation, and that means the whole nation.

With the support and prayers of the American people, we achieved more than anyone thought possible. Nobody thought we could even come close.

We passed the largest package of tax cuts and reforms in American history. We slashed more job-killing regulations than any administration had ever done before. We fixed our broken trade deals, withdrew from the horrible Trans-Pacific Partnership and the impossible Paris Climate Accord, renegotiated the one-sided South Korea deal, and we replaced NAFTA with the groundbreaking USMCA — that’s Mexico and Canada — a deal that’s worked out very, very well.

Also, and very importantly, we imposed historic and monumental tariffs on China; made a great new deal with China. But before the ink was even dry, we and the whole world got hit with the China virus. Our trade relationship was rapidly changing, billions and billions of dollars were pouring into the U.S., but the virus forced us to go in a different direction.

The whole world suffered, but America outperformed other countries economically because of our incredible economy and the economy that we built. Without the foundations and footings, it wouldn’t have worked out this way. We wouldn’t have some of the best numbers we’ve ever had.

We also unlocked our energy resources and became the world’s number-one producer of oil and natural gas by far. Powered by these policies, we built the greatest economy in the history of the world. We reignited America’s job creation and achieved record-low unemployment for African Americans, Hispanic Americans, Asian Americans, women — almost everyone.

Incomes soared, wages boomed, the American Dream was restored, and millions were lifted from poverty in just a few short years. It was a miracle. The stock market set one record after another, with 148 stock market highs during this short period of time, and boosted the retirements and pensions of hardworking citizens all across our nation. 401(k)s are at a level they’ve never been at before. We’ve never seen numbers like we’ve seen, and that’s before the pandemic and after the pandemic.

We rebuilt the American manufacturing base, opened up thousands of new factories, and brought back the beautiful phrase: “Made in the USA.”

To make life better for working families, we doubled the child tax credit and signed the largest-ever expansion of funding for childcare and development. We joined with the private sector to secure commitments to train more than 16 million American workers for the jobs of tomorrow.

When our nation was hit with the terrible pandemic, we produced not one, but two vaccines with record-breaking speed, and more will quickly follow. They said it couldn’t be done but we did it. They call it a “medical miracle,” and that’s what they’re calling it right now: a “medical miracle.”

Another administration would have taken 3, 4, 5, maybe even up to 10 years to develop a vaccine. We did in nine months.

We grieve for every life lost, and we pledge in their memory to wipe out this horrible pandemic once and for all.

When the virus took its brutal toll on the world’s economy, we launched the fastest economic recovery our country has ever seen. We passed nearly $4 trillion in economic relief, saved or supported over 50 million jobs, and slashed the unemployment rate in half. These are numbers that our country has never seen before.

We created choice and transparency in healthcare, stood up to big pharma in so many ways, but especially in our effort to get favored-nations clauses added, which will give us the lowest prescription drug prices anywhere in the world.

We passed VA Choice, VA Accountability, Right to Try, and landmark criminal justice reform.

We confirmed three new justices of the United States Supreme Court. We appointed nearly 300 federal judges to interpret our Constitution as written.

For years, the American people pleaded with Washington to finally secure the nation’s borders. I am pleased to say we answered that plea and achieved the most secure border in U.S. history. We have given our brave border agents and heroic ICE officers the tools they need to do their jobs better than they have ever done before, and to enforce our laws and keep America safe.

We proudly leave the next administration with the strongest and most robust border security measures ever put into place. This includes historic agreements with Mexico, Guatemala, Honduras, and El Salvador, along with more than 450 miles of powerful new wall.

We restored American strength at home and American leadership abroad. The world respects us again. Please don’t lose that respect.

We reclaimed our sovereignty by standing up for America at the United Nations and withdrawing from the one-sided global deals that never served our interests. And NATO countries are now paying hundreds of billions of dollars more than when I arrived just a few years ago. It was very unfair. We were paying the cost for the world. Now the world is helping us.

And perhaps most importantly of all, with nearly $3 trillion, we fully rebuilt the American military — all made in the USA. We launched the first new branch of the United States Armed Forces in 75 years: the Space Force. And last spring, I stood at Kennedy Space Center in Florida and watched as American astronauts returned to space on American rockets for the first time in many, many years.

We revitalized our alliances and rallied the nations of the world to stand up to China like never before.

We obliterated the ISIS caliphate and ended the wretched life of its founder and leader, al Baghdadi. We stood up to the oppressive Iranian regime and killed the world’s top terrorist, Iranian butcher Qasem Soleimani.

We recognized Jerusalem as the capital of Israel and recognized Israeli sovereignty over the Golan Heights.

As a result of our bold diplomacy and principled realism, we achieved a series of historic peace deals in the Middle East. Nobody believed it could happen. The Abraham Accords opened the doors to a future of peace and harmony, not violence and bloodshed. It is the dawn of a new Middle East, and we are bringing our soldiers home.

I am especially proud to be the first President in decades who has started no new wars.

Above all, we have reasserted the sacred idea that, in America, the government answers to the people. Our guiding light, our North Star, our unwavering conviction has been that we are here to serve the noble everyday citizens of America. Our allegiance is not to the special interests, corporations, or global entities; it’s to our children, our citizens, and to our nation itself.

As President, my top priority, my constant concern, has always been the best interests of American workers and American families. I did not seek the easiest course; by far, it was actually the most difficult. I did not seek the path that would get the least criticism. I took on the tough battles, the hardest fights, the most difficult choices because that’s what you elected me to do. Your needs were my first and last unyielding focus.

This, I hope, will be our greatest legacy: Together, we put the American people back in charge of our country. We restored self-government. We restored the idea that in America no one is forgotten, because everyone matters and everyone has a voice. We fought for the principle that every citizen is entitled to equal dignity, equal treatment, and equal rights because we are all made equal by God. Everyone is entitled to be treated with respect, to have their voice heard, and to have their government listen. You are loyal to your country, and my administration was always loyal to you.

We worked to build a country in which every citizen could find a great job and support their wonderful families. We fought for the communities where every American could be safe and schools where every child could learn. We promoted a culture where our laws would be upheld, our heroes honored, our history preserved, and law-abiding citizens are never taken for granted. Americans should take tremendous satisfaction in all that we have achieved together. It’s incredible.

Now, as I leave the White House, I have been reflecting on the dangers that threaten the priceless inheritance we all share. As the world’s most powerful nation, America faces constant threats and challenges from abroad. But the greatest danger we face is a loss of confidence in ourselves, a loss of confidence in our national greatness. A nation is only as strong as its spirit. We are only as dynamic as our pride. We are only as vibrant as the faith that beats in the hearts of our people.

No nation can long thrive that loses faith in its own values, history, and heroes, for these are the very sources of our unity and our vitality.

What has always allowed America to prevail and triumph over the great challenges of the past has been an unyielding and unashamed conviction in the nobility of our country and its unique purpose in history. We must never lose this conviction. We must never forsake our belief in America.

The key to national greatness lies in sustaining and instilling our shared national identity. That means focusing on what we have in common: the heritage that we all share.

At the center of this heritage is also a robust belief in free expression, free speech, and open debate. Only if we forget who we are, and how we got here, could we ever allow political censorship and blacklisting to take place in America. It’s not even thinkable. Shutting down free and open debate violates our core values and most enduring traditions.
In America, we don’t insist on absolute conformity or enforce rigid orthodoxies and punitive speech codes. We just don’t do that. America is not a timid nation of tame souls who need to be sheltered and protected from those with whom we disagree. That’s not who we are. It will never be who we are.

For nearly 250 years, in the face of every challenge, Americans have always summoned our unmatched courage, confidence, and fierce independence. These are the miraculous traits that once led millions of everyday citizens to set out across a wild continent and carve out a new life in the great West. It was the same profound love of our God-given freedom that willed our soldiers into battle and our astronauts into space.

As I think back on the past four years, one image rises in my mind above all others. Whenever I traveled all along the motorcade route, there were thousands and thousands of people. They came out with their families so that they could stand as we passed, and proudly wave our great American flag. It never failed to deeply move me. I knew that they did not just come out to show their support of me; they came out to show me their support and love for our country.

This is a republic of proud citizens who are united by our common conviction that America is the greatest nation in all of history. We are, and must always be, a land of hope, of light, and of glory to all the world. This is the precious inheritance that we must safeguard at every single turn.

For the past four years, I have worked to do just that. From a great hall of Muslim leaders in Riyadh to a great square of Polish people in Warsaw; from the floor of the Korean Assembly to the podium at the United Nations General Assembly; and from the Forbidden City in Beijing to the shadow of Mount Rushmore, I fought for you, I fought for your family, I fought for our country. Above all, I fought for America and all it stands for — and that is safe, strong, proud, and free.

Now, as I prepare to hand power over to a new administration at noon on Wednesday, I want you to know that the movement we started is only just beginning. There’s never been anything like it. The belief that a nation must serve its citizens will not dwindle but instead only grow stronger by the day.

As long as the American people hold in their hearts deep and devoted love of country, then there is nothing that this nation cannot achieve. Our communities will flourish. Our people will be prosperous. Our traditions will be cherished. Our faith will be strong. And our future will be brighter than ever before.

I go from this majestic place with a loyal and joyful heart, an optimistic spirit, and a supreme confidence that for our country and for our children, the best is yet to come.

Thank you, and farewell. God bless you. God bless the United States of America.


2021/1/22  米国、民主党が「トリプルブルー」に 

民主党のJoe Biden大統領、Kamara Harris 副大統領が就任した1月20日、Harris 副大統領(上院議長)は上院で3人の上院議員の就任式を行った。

1月5日に行なわれたジョージア州の上院議員の決戦投票で当選した2人が正式に就任した。

通常選挙 Jon Ossoff
特別選挙 Raphael Wamock (ジョージア州初のアフリカ系上院議員)

もう一人はHarris 副大統領の後任の上院議員(臨時)Alex Padillaである。


Kamala Harrisは2016年11月の選挙でカリフォルニア州選出の上院議員となった。あと2年の任期がある。

副大統領に選出されたため、本年1月18日に上院議員を辞職した。

上院議員が辞任や死亡により議員の欠員が発生した際には、選出州において補欠選挙を行い、欠けた議員の残りの任期を務める議員を選出する。

補欠選挙の開催時期は州に任せられており、多くの州において補欠選挙は2年毎の下院議員等の選挙と併せて行われるが、補欠選挙までの期間に置かれる臨時の議員を指名する権限を州議会が州政府に与えることができる。

カリフォルニア州知事は後任議員(臨時)にAlex Padillaを指名した。カリフォルニア州初のラテン系上院議員である。

 

ジョージア州の決選投票の結果、上院の議席は下記の通りとなる。

  共和党 民主党 民主系
無所属
合計
改選前 53 45 2 100
改選後 50 48 2 100

上院では賛否同数の場合、上院の議長である副大統領が1票を投じるため、民主党主導となる。

但し、通常の議決では共和党の議事妨害(フィリバスター)を打ち切って採決に持ち込むには3/5以上の60議席の賛成が必要になる。

大統領と副大統領、下院に加え、上院も民主党となり、「トリプルブルー」を達成した。(民主党はBlue、共和党はRed)

2021/1/7 ジョージア州上院議員選挙 決算投票で民主党が2議席確保、「トリプルブルー」に


2021/1/22    三井物産、モザンビークの炭鉱事業から撤退

三井物産は1月21日、Vale S.A.と共同でモザンビーク共和国で開発しているモアティーズ炭鉱事業およびナカラ回廊鉄道・港湾インフラ事業の三井物産全持分、これに付随する融資をValeにそれぞれ1.0米ドルで譲渡する基本合意書を締結したと発表した。

 

三井物産は、2017年3月にValeより、モアティーズの95%権益を保有する同社子会社の15%持分、およびナカラを推進する同社子会社の50%持分を取得し、本事業の開発推進と操業改善に取り組んできた。

出資関係
  参加前 参加
Moatize炭鉱 Vale子会社 95% Vale(Vale子会社の85%) 80.75%
三井物産(Vale子会社の15%) 14.25%
モザンビーク鉱物資源公社 5% モザンビーク鉱物資源公社 5.00%
 
Logistics Nacala Corridor Vale子会社 70% Vale(Vale子会社の50%) 35%
三井物産(Vale子会社の50%) 35%
モザンビーク企業、鉄道港湾公社

30%

モザンビーク企業、鉄道港湾公社 30%

2016/10/7 三井物産のモザンビークの炭鉱と鉄道・港湾インフラの投融資額変更 

 

モアティーズ炭鉱は原料炭と一般炭を産出し、2019年の生産量は900万トンだった。

Valeは脱炭素の流れを受け石炭事業からの撤退を決めており、三井物産も歩調を合わせる。年内の譲渡を目指す。

Valeは当面操業を継続し、最終的には第三者への売却を検討する。

 

三井物産はこれまでに本事業での減損を計上しており、2020年9月末時点での投融資簿価は、炭鉱事業がゼロ、回廊鉄道・港湾インフラ事業が約5億ドルだった。

本事業の譲渡実行に伴い見込まれる損失は現在精査中だが、2021年3月期の通期連結業績予想では損失を考慮している。


2021/1/22 Biden大統領、就任当日に多数の大統領令に署名 

Biden米大統領は1月20日、就任から数時間後に多数の大統領令に次々と署名した。「パリ協定」への復帰など、トランプ前大統領の主要政策を覆すものも多く含まれている。

Ron Klain 次期大統領首席補佐官は1月16日、バイデン新大統領の ホワイトハウスのメンバー向けの "Overview of First Ten Days"メモを発表した。大統領就任後、直ちに多くの大統領令を出す。
2日目、3日目も、更に1月25日から2月1日までの間に、追加の指示を出すとしている。

2021/1/18 バイデン次期大統領の最初の10日間

1月21日にはCOVID-19関連(青字)を10件、発表した。

これに伴い、ホワイトハウスのJen Psaki広報部長が国立アレルギー・感染症研究所の所長Dr. Anthony Fauci とともにブリーフィングを行った。
  https://www.whitehouse.gov/briefing-room/press-briefings/2021/01/21/press-briefing-by-press-secretary-jen-psaki-january-21-2021/

 

1日目、2日目の大統領令は次の通り。
 

統一の訴え  National Day of Unity A National Day of Unity
トランプ政策の転換 パリ協定復帰(2020/11/4に離脱) Paris Climate Agreement

付記 2月19日に正式復帰した。

WHO残留(国連事務総長へのレター)
 2020/7/6 の通知の取り消し

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Harris 副大統領のWHOのTedrosへの電話

 

Letter to His Excellency António Guterres


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Readout of Vice President Harris’s Call with World Health Organization Director-General Dr. Tedros Adhanom Ghebreyesus

イスラム、アフリカ等からの入国禁止命令取り消し Proclamation on Ending Discriminatory Bans on Entry to The United States
不法移民を匿っている「聖域都市に対する連邦補助金停止」の廃止等
2017/9/20 米地裁、聖域都市への補助金停止を差し止め 
Executive Order on the Revision of Civil Immigration Enforcement Policies and Priorities
問題対応のため過去の大統領令の廃止
 COVID-19、経済復興、人種差別、温暖化等、米国が直面する問題に対応するため
Executive Order on Revocation of Certain Executive Orders Concerning Federal Regulation
メキシコの壁建設中止 Proclamation on the Termination Of Emergency With Respect To The Southern Border Of The United States And Redirection Of Funds Diverted To Border Wall Construction 
リベリア難民について、米国からの強制出国の延期、2022年6月30日までの雇用許可 Reinstating Deferred Enforced Departure for Liberians
幼少時に親に連れられて米国へ不法入国した若者の強制送還を猶予する措置「DACA」

2020/6/19    米最高裁、トランプ政権によるDACA撤廃を認めず

Preserving and Fortifying Deferred Action for Childhood Arrivals (DACA)
差別解消 人種差別解消
 
Executive Order On Advancing Racial Equity and Support for Underserved Communities Through the Federal Government
性、性的指向による差別禁止 Executive Order on Preventing and Combating Discrimination on the Basis of Gender Identity or Sexual Orientation
コロナ対策 連邦職員等にマスク、距離、米国全体でマスク奨励
Safer Federal Woforce Task Force設置
Executive Order on Protecting the Federal Workforce and Requiring Mask-Wearing
White House の体制
US Leadership (WHOの強化)
Executive Order on Organizing and Mobilizing the US Government to Provide a Unified and Effective Response to Combat COVID-19 and to Provide United States Leadership on Global Health and Security
学生救済
国の奨学金の返済停止、金利を0%にする。
Pausing Federal Student Loan Payments
COVID-19下での旅行ルール Executive Order on Promoting COVID-19 Safety in Domestic and International Travel
新療法開発促進、対応能力増、よりよいHealthcare Executive Order on Improving and Expanding Access to Care and Treatments for COVID-19
科学に基づくCOVID-19対策  Executive Order on Ensuring a Data-Driven Response to COVID-19 and Future High-Consequence Public Health Threats
州への資金補助 Memorandum to Extend Federal Support to Governors’ Use of the National Guard to Respond to COVID-19 and to Increase Reimbursement and Other Assistance Provided to States
対策資材のサプライチェーン Executive Order on a Sustainable Public Health Supply Chain
COVID-19 Health Equity Task Force Executive Order on Ensuring an Equitable Pandemic Response and Recovery
学校 Executive Order on Supporting the Reopening and Continuing Operation of Schools and Early Childhood Education Providers
労働者対策 Executive Order on Protecting Worker Health and Safety
国際協力
COVAXへの参加も
National Security Directive on United States Global Leadership to Strengthen the International COVID-19 Response and to Advance Global Health Security and Biological Preparedness
COVID-19 Pandemic Testing Board Executive Order on Establishing the COVID-19 Pandemic Testing Board and Ensuring a Sustainable Public Health Workforce for COVID-19 and Other Biological Threats
政府職員の倫理 倫理規定
Lobbyist からのGiftの禁止
Revolving Door、Golden Parachute (天下り)等の禁止
Executive Order on Ethics Commitments by Executive Branch Personnel
公衆衛生、環境等 諸問題を科学で対応
Keystone XL Pipeline認可取消も
Executive Order on Protecting Public Health and the Environment and Restoring Science to Tackle the Climate Crisis
下院の議席数の公正化 国勢調査 Executive Order on Ensuring a Lawful and Accurate Enumeration and Apportionment Pursuant to the Decennial Census

 


2021/1/23 中国外交部、米国の前政権幹部に制裁 

中国外交部は1月21日、トランプ前政権のMichael R. Pompeo 国務長官ら28人に対して制裁を課す決定をしたとの声明を発表した。

付記

全国人民代表大会(国会に相当)常務委員会は6月10日、「反外国制裁法」を可決し、即日施行された。

貿易、技術、香港、新疆ウイグル自治区を巡る問題について、米欧から圧力を受けていることが背景で、欧米から相次ぐ対中制裁に対抗する法的根拠となる。

この法案は4月に1回目の審査が行われ、2回目の審査を経て6月10日に承認された。

通常は3回の審査が必要になるが、3回目の審査は省略し、2回目の審査を行うと発表したわずか2日後に承認された。

 

中国は、外国による封じ込めや圧力、国民への差別的な制限措置などに対し、相応の報復をする権利があると規定し、中国政府は報復の対象となる外国の個人や組織に対して、ビザの発給拒否や国外退去、中国国内の資産の差し押さえ、国内での商取引の禁止などの措置をとることができるとしている。

法律のねらいについて、中国外務省報道官は「国家の主権や尊厳、核心的利益を守り、西側の覇権主義と強権政治に反対するためだ」と述べた。

 

過去数年間に米国の一部の政治家が中国の内政に深刻に干渉し、中国の利益に損害を与え、米中関係を破壊したと非難し、28人およびその家族に対し、中国大陸、香港、マカオへの入境を禁じるとともに、それらの関連企業・機関が中国側とビジネスをしたり、接触したりすることを制限した。

関連する企業も対象にしたことは、「これらの高官らが離任後に企業に雇用された場合、雇用した企業は中国市場での利益を失うという明確なシグナル」との見方がある。

1月21日の発表では、制裁を課すとされた28人のうち、10人のみ名前が明らかにされた。

Michel Pompeo 国務長官
Peter K. Navarro Director of the Office of Trade and Manufacturing Policy
Robert C. O'Brien 国家安全保障問題担当大統領補佐官
David R. Stilwell Assistant Secretary of State for the Bureau of East Asian and Pacific Affairs
Matthew Pottinger Deputy National Security Advisor
Alex M. Azar II 保健福祉長官
Keith J. Krach Under Secretary for Economic Growth, Energy, and the Environment
Kelly D. K. Craft  
John R. Bolton   国際連合大使、国家安全保障問題担当大統領補佐官などを歴任
Stephen K. Bannon  最初の7ヶ月間 ホワイトハウスの首席戦略官

 

Pompeo 国務長官はトランプ大統領の退任の前日の1月19日、中国新疆ウイグル自治区のウイグル族や他の少数民族に対する同国政府の弾圧をジェノサイド(民族大量虐殺)と認定し、米中関係の緊張を一段と高めた。

 

外務部の華報道官は、制裁対象となった政治家について「これらの反中政治家は自身の行為に対して代償を支払わなければならない」と非難した一方、バイデン新政権に対しては「客観的かつ理性的に中国と米中関係を捉え、米中関係が健全かつ安定した発展の軌道に戻ることを期待する」と述べた。



2021/1/23 
バイデン大統領、生活支援で大統領令 
 
バイデン米大統領は1月22日、新型コロナウイルスで打撃を受けた低所得者の生活支援や、労働者保護を目的とした大統領令に署名した。

政府全体で、パンデミックから生じる経済危機に対応するため、可能な行動を早急に見出すことを命じた。

個人や中小企業の問題について、下記を挙げている。

Fact Sheet: President Biden’s New Executive Actions Deliver Economic Relief for American Families and Businesses Amid the COVID-19 Crises

  1)  COVID ECONOMIC RELIEF

担当 対象  
農務省 飢餓に瀕する29百万人+子供12百万人 フードスタンプnutrition assistance programs)の拡大
財務省 国の支援を受領できない8百万人 一人当たり2000ドルの支払方法の変更
退役軍人省 貧困の退役軍人2百万人 過払いと債務の連邦徴収の一時停止
労働省 失業者 COVID-19関連の危険な仕事を拒否した労働者が失業保険を受けられるよう検討
全体   省庁間調整機構をつくり、政府支援がうまく機能するよう検討

  2) 連邦職員と業者の保護(PROTECTING AND EMPOWERING FEDERAL WORKERS AND CONTRACTORS)

  • トランプ大統領命令13836、13837、および13839を取り消し、団体交渉力と労働者保護を回復
     
  • トランプ大統領は2020年10月に政策立案に関与する公務員を新しい“Schedule F” に移す大統領令を出したが、これを取り消す。
     
    この分類の職員には従来のような雇用保証が与えられなくなる。
     大量退職につながるとともに、
    政治任用を加速させるとして反対が強い。
     
  • 連邦職員の最低賃金を 1時間当たり $15 にするよう、Office of Personnel Management に勧告するよう命じた。

 別途、これらを含めた連邦職員保護の大統領令を出した。  

Executive Order on Protecting the Federal Workforce

 大統領のツイッター:

Federal employees have dedicated their careers to serving the American people — and they are worthy of the utmost dignity and respect.
Today, I took action to improve the wages, benefits, and bargaining rights of federal workers and contractors.


本件に関し、大統領がスピーチを行った。

Remarks by President Biden on the American Rescue Plan and Signing of Executive Orders

また、ホワイトハウスのJen Psaki広報部長がNational Economic Council Director とともにブリーフィングを行なった。  

Press Briefing by Press Secretary Jen Psaki and National Economic Director Brian Deese

ーーー

なお、この日は48年前に米最高裁が画期的な Roe v. Wade 判決を下した日である。

「妊娠を継続するか否かに関する女性の決定はプライバシー権に含まれる」として、アメリカ合衆国憲法修正第14条が女性の堕胎の権利を保障していると初めて判示し、人工妊娠中絶を規制するアメリカ国内法の大部分を違憲無効とした。

Biden大統領と Harris副大統領は声明を発表、これを推し進めていくとしている。

Statement from President Biden and Vice President Harris on the 48th Anniversary of Roe v. Wade


2021/1/24   米上院、トランプ氏の弾劾裁判は2月9日開始

上院で予定されるトランプ前大統領の弾劾裁判は2月9日に審理を開始することで与野党が合意した。


1月6日の米連邦議会議事堂襲撃事件について、民主党はトランプ氏が「反乱を扇動」したとして、
1月13日に下院で232対197の賛成多数で弾劾訴追した。

2021/1/14 トランプ大統領 2度目の弾劾訴追

本来であれば、下院は弾劾訴追決議を上院に付託し、 これを受けて上院は弾劾裁判を開く。

しかし、今回はバイデン政権の閣僚指名の承認手続きがほとんど終わっておらず、また経済対策法案の審議も必要であり、これらを優先させる必要がある。

報道によると、Biden次期大統領は共和党のMcConnel上院総務に電話し、弾劾と通常審議を(例えば午前と午後に分け)並行して行う「分離審議(Bifurcatiion)」の可能性について話し合ったというが、合意できていない。

このため、下院は上院への送付を遅らせた。

民主党と共和党で日程を協議した結果、下記の通りとなった。

1月25日に下院が弾劾決議を上院に送付

(この間、通常の法案審議と、トランプ前大統領の弁護準備)

2月9日に審理開始 

上院議員が弾劾裁判の陪審員となり、最高裁長官が裁判長となる。

上院の審議日程は、多数党の院内総務が決める。今回、民主党が多数党となったが、民主党院内総務のChuck Schumer上院議員が審理開始前の準備期間を認めた。

共和党のMitchell McConnell 院内総務は、 審理開始前の準備期間を民主党が認めたことを歓迎し、「下院が素早く最低限の手続きで進んだだけに、共和党としては上院が今後、トランプ前大統領の権利と法定手続き、上院という制度や大統領の職位を尊重するよう、働きかけた。その目的は実現した。これは法定手続きと公平性の勝利だ」 と評価した。

トランプ前米大統領は、上院での弾劾裁判を担当する弁護人にサウスカロライナ州のButch Bowers 弁護士を起用した。
当初は顧問弁護士の Rudy Giuliani 氏が担当する見込みだったが、同氏は最近、議事堂乱入事件直前の支持者集会に自らも参加していたことを理由に弁護を担当しない考えを明らかにした。

上院は与野党の勢力が50対50となったが、有罪とするには3分の2以上(67人)の賛成が必要で、共和党から少なくとも17人の賛同が必要となる。

McConnell 院内総務は1月19日の上院本会議で、連邦議会議事堂占拠事件について、「トランプ大統領や他の影響力を持つ人々に扇動された」と発言した。
「暴徒はウソをすり込まれていた」と述べ、大統領選で大規模な不正があったとの根拠のない主張を繰り返したトランプ氏らを批判、「我々は団結し、米国ではたとえ一晩でも怒る暴徒たちが法の支配を拒否することはさせないと明言した」と強調した。

同事件を巡る上院のトランプ氏弾劾裁判に影響を与える可能性がある。

有罪となった場合、上院は過半数の賛成で、トランプ氏から今後公職に就く資格を剝奪することができる。

憲法に2つの規定がある。

 憲法 第1章第3条第7項

弾劾事件の判決は、職務からの罷免、および名誉、信任または報酬を伴う合衆国の官職に就任し在職する資格の剥奪以上に及んではならない。
"Judgment in Cases of Impeachment shall not extend further than to removal from Office, and disqualification to hold and enjoy any Office of honor, Trust or Profit under the United States."

第6項では「何人も、出席議員の3分の2の同意がなければ、有罪の判を受けることはない」としているが、資格剥奪については3分の2の規定がない。

1862年と1913年に上院はWest Humphreys 判事と Robert Archbald 判事の弾劾裁判で3分の2の同意でそれぞれ有罪とし、資格剥奪については単純多数決で決めた。

ーーー

 憲法修正14条

第3節、アメリカ合衆国議会議員、国の機関の役人、州議会議員、あるいは州の行政及び司法の役人として、アメリカ合衆国憲法を支持することを以前に誓い、かつそれらに対する反乱に加わった者あるいはその敵に対して援助や同調した者は、アメリカ合衆国下院または上院議員、大統領および副大統領の選挙人、あるいは国または州の公的、軍事的役職に就くことはできない。
ただし、アメリカ合衆国議会が各院の議席の3分の2以上で決した場合は、その禁止規定を排除する。

第5節、アメリカ合衆国議会は適切な立法により本修正第14条の条項の施行権限を有する。

今回の弾劾は、「反乱を扇動」で訴追されており、上院で有罪となれば、憲法修正14条で公職につくことができず、これは議会の適切な立法で過半数で施行できる。

 

参考

米国は南北戦争時に憲法修正13条で奴隷制度廃止を決めたが、更に修正14条を採決し、南部各州に批准を迫った。
第3節の意味は下記の通り、南部連合を支持した公務員からの選挙権と公職就任権をはく奪するためのものであった。

  1. 合衆国市民権は出生または帰化によって取得される。各州は合衆国市民に保障されている権利を制限してはならない。
  2. 南部が黒人男子に投票権を認めない場合は、その数が男子総人口に占める割合に比例させて、その州から選出される下院議員数を削減する。
  3. 南北戦争で南部連合を支持した元公務員から選挙権と公職就任権を剥奪する。
  4. 南北戦争中の政府の公共債務は支払われるが、南部諸州の負債支払いと奴隷解放による損失の補償の請求権は認めない。

2021/1/25 貧困国へのCOVID-19 ワクチン供給 

貧困国へのワクチン供給について、この数日間で多くの動きがあった。

WHOのTedros Adhanom 事務局長は1月18日、COVID-19ワクチン接種の状況について、分配の不平等が起きていると懸念を示した。

WHOなどが主導する枠組み「COVAX ファシリティー」で貧困国・低所得国にワクチンの供給を 行なうこととしているが、一部の先進国はCOVAXに先回りして自国分を確保するため、ワクチン価格を押し上げて製薬会社と取引している、と苦言を呈した。

また、これまでに少なくとも49の高所得国で計3900万回分以上が投与された一方、アフリカのギニアを想定して「最低所得国での投与はたったの25回だ」とも指摘し 、「世界は悲惨な道徳的失敗の危機に瀕している」として、先進国や製薬企業に公平なアクセスへの貢献を求めた。

 

直後の1月22日、WHOは「COVAXファシリティー」を通じた新型コロナウイルスのワクチン供給を2月に開始すると発表した。
このたびPfizer /
BioNTechが開発したワクチンについて、4000万回分の供給を受けることで合意し、開始のめどが立った

ーーー

2020年4月24日にWHOとCEPI、GAVI(下図参照)が国際協働の仕組み「Access to COVID-19 Tools Accelerator」(ACT Accelerator を立ち上げた。この柱の一つのワクチン分野をCOVAX(COVID-19 Vaccine Global Access)ファシリティが担当する。

CEPI「感染症流行対策イノベーション連合」が開発GAVIワクチンアライアンスが供給を取りまとめる

COVAXの目標は、2021年末までに、規制当局の承認やWHOの事前承認を受けた20億回分の安全で効果的なCOVID-19ワクチンを提供する。各参加国の20%を占める弱者に対して収入レベルに関わらずワクチンの平等な分配を実現しようとするもので、10年前のパンデミックから得た教訓をもとにしている。

資金を出して参加する国は一定額を前払い金として支払う。ワクチン開発に取り組む複数の製薬企業の研究開発などに使われ、開発に成功した場合、出資国は人口の20%分を上限にワクチンを確保できる。
途上国はGaviを通じてワクチンの提供を受ける。

日本政府は2020年9月1日、「COVAXファシリティ」に参加する方針であると発表した。

ホワイトハウスは9月1日、WHO主導の「COVAX」には参加しない方針を明らかにした。

トランプ政権は2020年7月6日、国連のグテーレス事務総長にWHOからの脱退を正式に通知し、1年後の2021年7月6日に脱退すると表明した。

COVAXの参加表明の期限だった9月18日までに日本を含む150カ国以上が加わったが、米国やロシア、中国は参加を見送っていた。

しかし、中国外務省は10月8日、「COVAX」に正式に加入した。「実際の行動でワクチンの公平な分配や発展途上国への供給確保を促進するためだ」と説明した。

2020/8/5   政府、ワクチン確保へ国際共同購入を検討

5月中国の習近平国家主席はWHO総会で演説し、途上国を中心とする国際的な感染対策のために今後2年間で20億ドル(約2100億円)を提供すると表明。ワクチンの開発に成功すれば「国際公共財」とする考えも示した。


Trump大統領は不参加を決めたが、Biden新大統領は1月21日、大統領令でCOVAXへの参加を表明した。

 National Security Directive on United States Global Leadership to Strengthen the International COVID-19 Response and to Advance Global Health Security and Biological Preparedness

Sec. 2.  United States Leadership in the Global Response to COVID-19

The Secretary of State and the Secretary of HHS shall inform the WHO and Gavi, the Vaccine Alliance, of the United States’ intent to support the Access to COVID-19 Tools (ACT) Accelerator and join the multilateral vaccine distribution facility, known as the COVID-19 Vaccine Global Access (COVAX) Facility. 

米国立アレルギー感染症研究所のAnthony Fauci 所長は1月21日のWHO執行理事会で、米国がCOVAXを含むWHOの包括的な新型コロナ対策支援策「ACTアクセラレーター」に参加し、WHOへの拠出金を出す義務を果たすと表明した。

米国のCOVAX加入で途上国などへのワクチンの公平な配分が進む可能性がある。

ーーー

「COVAX」は1月21日、本年に18億回分を貧困国・低所得国に供給するとの最新目標を明らかにした。
ワクチン買い取り補助金事前保証制度(AMC)を通じ、92カ国に供給する。対象国の総人口の約27%への接種が可能になるという。

今年後半には、これと別に自国で資金の工面ができる参加国との供給契約を履行したいとの期待も示した。


WHOは1月22日、「COVAXファシリティー」を通じた新型コロナウイルスのワクチン供給を2月に開始すると発表した。
既にAstraZenecaなどとは合意に達していたが、このたびPfizer /
BioNTechが開発したワクチンについて、4000万回分の供給を受けることで合意し、開始のめどが立った。

PfizerのCEOは1月22日、WHOのテドロス事務局長らとともにオンラインで会見し、同社が年内に製造する20億回分のうちCOVAXに供給する分は「利益を度外視する」と述べ、今後、追加供給する意向も明らかにした。


中国政府は1月20日、「COVAX」に国内のワクチンメーカー3社が参加を申請したと発表した。

シノバック・バイオテック(科興控股生物技術)、中国医薬集団(シノファーム)、康希諾生物(カンシノ・バイオロジクス)がCOVAXを通じたワクチンの供給を申請したと明らかにした。ワクチンの供給量等は明らかにしていない。


2021/1/26   J&Jのワクチン、2週間以内に米国で緊急使用許可へ 

米国立アレルギー感染症研究所(NIAID)のAnthony Fauci 所長は1月22日、今後2週間以内にJohnson & Johnson 子会社のJanssen Pharmaceutical が開発中の新型コロナウイルスワクチンがFDAから緊急使用の承認を受けるとの見通しを示した。“I would be surprised if it was any more than two weeks from now that the data will be analyzed and decisions would be made.”

付記 Johnson & Johnson は2月4日、新型コロナウイルスワクチンの緊急使用許可をFDAに申請した。

付記 FDAは2月27日、緊急使用を承認した。

付記 

米CDCは12月16日、J&Jのワクチンよりも、PfizerやModerna製の接種を推奨するとの声明を出した。J&J製の接種後、血栓ができて死亡する例が報告されていることを重視した。

CDCによると、米国内ではJ&J製のワクチンが約1700万回接種され、接種後に血栓ができる割合は100万人あたり3.8人。発症した人は入院していて、計9人の死亡が確認されている。

所長は、「J&Jのワクチンは超低温で保管する必要がないうえ、接種は1回で済むという点で、Pfizer製やModerna製とは大きく異なる」と評価した。

超低温が必要ではないため、保管や管理が容易であり、開発途上国では評価が高いだろうと述べた。

J&J は当初は2回接種で試験をしていたが、現在の試験は1回接種で行なっている。

J&Jは、FDAからの緊急使用許可が得られれば、4月までに1億本(1億人分)のワクチンを生産し、2021年中に全世界向けに10億本を供給する。
2020年10月にはEUと最大4億回分のワクチンを供給することで合意している。

J&J は2020年10月12日、Janssen Pharmaceutical の新型コロナウイルスワクチンの全ての臨床試験を一時停止したと発表した。治験参加者が原因不明の病気になった。
しかし、
本ワクチン候補が本事象を引き起こしたというエビデンスは認められず、試験を再開した。

2020/10/15 Johnson & Johnson、コロナワクチンの治験を一時停止、Eli Lillyの抗体治療薬も

ーーー

Fauci 所長は米国政府が6つのワクチン候補について医薬会社と作業を進めていると述べた。

米国では既に、Pfizer/BioNTech と Moderna のワクチンがFDAから緊急使用許可を受けている。

Fauci 所長は、12月に2回目のワクチン(Moderna)の接種を受けた際、軽度の副反応があったことを明らかにした。倦怠感や痛みがあったが「病気ではない」としている。
ワクチンに対する信頼を高めるため、自身がワクチン接種を受ける模様を公開した。

他に、2020年12月28日時点で、米国ではJ&J (Janssen) 、AstraZeneca、Novaraxの3つのワクチンがPhase 3 の臨床試験を行っている。

AstraZenecaは既に2020年12月30日に英国の承認を受けている。

これで5種類となるが、あと1種類は明らかでない。ドイツのCureVacのワクチンの可能性がある。

ドイツのCureVacのワクチンについて、メキシコ政府が1月初めにPhase 3の臨床試験実施を承認した。
CureVac は欧州に加え、米国での販売も狙っていると思われる。同社は2020年8月に米国のNASDAQに上場した。

同社のワクチンについては、トランプ政権が独占を狙い、EUやドイツなどは多額の資金を供与し、これを防いだ。

2020/3/19 米国がコロナウイルスワクチン技術独占を画策?

CureVacは1月7日、開発中のワクチンについて、当局の承認獲得や配布で Bayerと提携すると発表した。
Bayerは、臨床、規制対応、医薬品の安全性対策、医療情報、サプライチェーン、特定の国での支援などの分野において専門知識と確立されたインフラを提供する。

EU域内と、域外の特定市場への販売はCureVacが担当し、Bayerはこれを支援する。一方、その他の市場については、Bayerが販売権取得のオプションを付与された。
ワクチン製造に関しては、CureVac は
Wacker Chemie AGと契約を締結している。

先進ワクチンの状況

Developer/manufacturer Platform Type doses Timing Route Phase 承認
 1  1/2  2  3
University of Oxford/AstraZeneca Non-Replicating Viral Vector ChAdOx1-S 1*    IM  

UK  2020/12/30
EU   2021/1/29

CanSinoBiological Inc./Beijing Institute of Biotechnology Non-Replicating Viral Vector Adenovirus Type 5 Vector 1   IM   〇   
Gamaleya Research Institute(ロシア) Non-Replicating Viral Vector Adeno-based 2 0, 21 days

 

IM  

Sputnik V
ロシア 2020/8
 

Vektor (State Research Center for Virology and Biotechnology)   ロシア                  

EpiVacCorona
ロシア 2020/10

 

Janssen Pharmaceutical (J&J) Non-Replicating Viral Vector Ad26COVS1 2→1 0,56 days IM      
Sinovac(中国) Inactivated Inactivated 2 0, 14 days IM      
Wuhan Institute of Biological Products/Sinopharm Inactivated Inactivated 2 0,14 or
0,21 days
IM  

 

 
Beijing Institute of Biological Products/Sinopharm Inactivated Inactivated 2 0,14 or
0,21 days
IM    

 

中国 2020/12/31

Bharat Biotech (インド) Inactivated Whole-Virion Inactivated 2 0, 14 days IM    

Covaxin
インド 2021/1/3

Moderna/NIAID(米国立アレルギー感染症研究所) RNA LNP-encapsulated mRNA 2 0, 28 days IM  

FDA 2020/12/17
EU 2021/1/6

BioNTech(独)/Fosun Pharma(上海復星医薬)/Pfizer       RNA 3 LNP-mRNAs 2 0, 28days IM  

 

UK 2020/12/2
FDA 2020/12/11
EU 2020/12/21
WHO 2020/12/31

Novavax(米) Protein Subunit Full length recombinant SARS CoV-2 glycoprotein nanoparticle vaccine adjuvanted with Matrix M 2 0, 21 days IM    
Curevac(独) RNA mRNA 2 0, 28 days IM   〇     

 


2021/1/26 米Merck、ワクチン開発中止  

米国のMerck (米加以外での社名はMSD : Merck Sharp and Dohme)は1月25日、同社のCOVID-19ワクチン(V590 と V591) の開発プログラムを打ち切ると発表した。
2つの新型コロナ治療薬の開発に集中する。

2種のワクチンは、Phase 1の臨床試験で自然感染や既存のワクチンと比べ、免疫反応が劣るとデータで示された。

開発中止となるワクチン候補は、Merckのエボラ出血熱の予防接種技術を用いた「V590」 (「国際エイズワクチン推進構想(IAVI)」との協業)と、欧州で使われている「はしかワクチン」を基にしたThemis社の「V591」 で、Merckは2020年5月26日、COVID-19ワクチンを開発しているオーストリアのThemis Bioscience社を買収すると発表した。

Developer/manufacturer   Platform Type doses Timing Route Phase
1 1/2 2  3
Merck/ IAVL

 

V590 Replicating Viral Vector Replication-competent VSV delivering the SARS-CoV-2 Spike 1   IM      
Institute Pasteur/Themis/Univ. of Pittsburg CVR / Merck V591 Replicating Viral Vector Measles-vector based 1 or
2
0, 28 days IM

 

     

 

一方、2つの新型コロナ治療薬、MK-7110 MK-4482の開発に集中する。

うち1つの治療薬「MK-7110」(旧称CD24Fc) は、バイオ医薬品会社OncoImmuneが開発したもの。

Merckは2020年11月23日、株式非公開のバイオ医薬品会社OncoImmuneを425百万ドルの現金前払いで 買収すると発表した。2020年末までに買収を完了する。
OncoImmuneの株主は売上高および一定の規制関連のマイルストン達成に基づいた支払いを受け取る権利を得る。

OncoImmuneは 新型コロナ治療薬「CD24Fc」のほか、がんや自己免疫疾患の治療薬を開発する。

「CD24Fc」は、自然免疫系を標的とするfirst-in-classの組換え融合タンパク質で 、過剰な免疫反応を抑えることで炎症を防ぎ、治療の効果を飛躍的に高めるも

2020/11/28 米メルク、バイオ医薬品会社OncoImmuneを買収、新型コロナ薬候補を取得

Merckは2020年12月23日、開発中の新型コロナウイルス治療薬「MK-7110」 6万〜10万回投与分を3億5600万ドルで供給する契約を米政府と結んだと発表した。
米当局から緊急使用向けの承認が受けられた場合、2021年6月末までに最大で10万回分の出荷を目指す。

新型コロナで入院中の重症患者を対象としたこれまでの臨床試験(治験)で、この薬を投与した患者グループは偽薬と比べて病状の改善や死亡リスクの低下が認められた。


MK-4482  (molnupiravir)はRidgeback Bioと共同で開発中で、現在 Phase 2/3 臨床試験中。体内でウイルスの増殖を抑える経口薬で、感染患者の早期回復や重症化防止への効果を期待している。

経口薬のため、実用化すれば患者が自宅で服用できる利点がある。

 


2021/1/27 網膜色素上皮不全症に対するiPS細胞由来RPE細胞懸濁液の移植 

神戸市立神戸アイセンター病院は1月20日、「網膜色素上皮((RPE)不全症に対する同種iPS細胞由来RPE細胞懸濁液移植に関する臨床研究」が、1月20日に開催された厚生科学審議会再生医療等評価部会にて了承されたと発表した。

付記

神戸アイセンター病院は3月12日、「網膜色素上皮不全症」の患者にiPS細胞を含む液体を移植する手術を行い、成功したと発表した。

RPE細胞は視細胞の外側にあり、視細胞を保護する役目を持つ。

RPE不全症、RPE細胞の遺伝子に異常があったり、近視がとても強かったり、加齢によるストレス、または炎症が起きたりすることでRPE細胞が働かなくなり、続いて、RPEに保護されなくなった視細胞も働かなくなるために、目が見えにくくなってしまう、いろいろな種類の病気が含まれる。

理化学研究所と先端医療振興財団は2013年8月1日、iPS細胞を使い、RPE細胞異常による滲出型加齢黄斑変性の患者6人を対象に目の網膜を再生する世界初の臨床研究を開始した。

網膜下の脈絡膜新生血管や傷害を受けたRPEを取り除いた後、iPS細胞から作製したRPEシートを網膜下へ移植する。

  2013/12/4 大日本住友製薬と理研認定ベンチャーのヘリオス、iPS細胞由来医薬品を共同開発

神戸アイセンター病院では、滲出型加齢黄斑変性の患者に対し、RPE細胞の移植(自家細胞シート1例、他家懸濁液5例)を実施した。(安全性について確認済)

これまでのRPE細胞移植では、安全性を確認することを主な目的としていたが、今回の臨床研究では、移植の対象疾患を拡充し、新しい治療法の有用性(視機能、QOL)や安全性を確認する。

 

今回の臨床研究では、RPEシートの移植ではなく、他家(他人の細胞)のiPS細胞より作製したRPE細胞を含む液体(懸濁液)を、RPE不全症の患者に移植する。

理化学研究所で製造したRPE細胞を使って、神戸アイセンター病院網膜再生細胞手動調製室で細胞懸濁液を作る。

目標症例数は50例で、移植後の観察期間は4年間。

RPE不全症に含まれる病気のうち、どの病気にRPE細胞移植の効果が期待できるかを調べることと、移植の効果を調べるために行う検査について評価する。
また、移植したRPE細胞が患者の眼の中で生着しRPE細胞としての機能を果たすかや、免疫拒絶反応などの安全性の評価も行う。

 

神戸市立神戸アイセンター病院は、「網膜色素変性に対するiPS細胞由来網膜シート移植に関する臨床研究」を実施している。

2020/6/15 iPS網膜シートの移植、臨床研究開始へ 

なお、大阪大の西田幸二教授(眼科)らのチームの「角膜上皮幹細胞疲弊症に対する他家 iPS 細胞由来角膜上皮細胞シー トの first-in-human 臨床研究」を行なっている。

2019/3/8 厚労省、iPS細胞の角膜移植臨床研究計画を了承 


2021/1/27   塩野義、コロナ重症化抑制薬の開発権を米社にライセンス 

 

塩野義製薬は1月26日、アレルギー性鼻炎に対する適応取得を目指して開発を進めていたDP1受容体拮抗薬S-555739について、 米国のBioAge Labs, Inc.との間で COVID-19の重症化抑制を対象としたライセンス契約を締結したと発表した。

BioAge Labsは本化合物のCOVID-19の重症化抑制に関する米国、欧州での独占的開発・販売権を獲得、さらに、新型コロナ以外の感染症の重症化抑制など、他の疾患への適応追加に対する独占的交渉権が付与される。

塩野義は、本契約の締結に伴う一時金、今後の開発進展に応じたマイルストン、製品上市後の販売額に応じたロイヤリティーを受領する。

この化合物は、塩野義が創製したDP1受容体拮抗薬であり、アレルギー性鼻炎に対する適応取得を目指して開発を進めていたが、この開発は現在中止している。
複数の非臨床および2,400例以上を対象とした臨床試験において、DP1受容体への高い親和性および選択性に加え、良好な忍容性、安全性が確認されている。

DP1受容体(DP1 receptor)は、ヒトなどに存在するGタンパク質共役受容体の1種で、全身の様々な細胞に発現しており、様々な生理反応に関与している他、病理学の分野では炎症やアレルギーに関係する受容体の1つとして知られる。

BioAge Labs は加齢や老化に関連する疾患を治療するための医薬品を開発している米国のバイオテクノロジー企業で、同社が実施した独自のAIによるオミクス解析(生体を構成しているさまざまな分子を網羅的に調べること)から、加齢に伴う免疫機能低下を改善する創薬ターゲットとして、DP1受容体が同定された。

加齢による免疫機能の低下は、感染症に対する罹患率ならびに死亡率を高める大きなリスク因子となる。そのため免疫機能を亢進させることで、COVID-19を含む種々の感染症の重症化抑制に繋がる可能性が示唆されている。

また、アイオワ大学で実施されたSARSコロナウイルスを感染させた加齢マウスモデルに既存のDP1受容体拮抗薬を投与した試験では、マウスの死亡率の改善とともに、肺内のウイルス量の有意な低下が報告された。

これらを踏まえてS-555739のドラッグリポジショニング(ヒトでの安全性や体内動態が確認されている既承認薬について、別の疾患に対する治療薬として開発する手法)による高齢者の免疫亢進薬としての開発期待から、今回の契約締結に至った。

BioAge Labsは、2021年上期に、COVID-19患者を対象とした第U相臨床試験の開始を計画している。

塩野義では、BioAge Labsによる試験結果が良好であれば、これを活用して国内申請する可能性もあるとしている。

 


2021/1/28   バイデン大統領、米国製品の政府調達拡大の大統領令 、ワクチン接種目標引き上げ  

バイデン大統領は1月25日、政府調達で米国製品を優先する 「バイ・アメリカン」法の運用を強化する大統領令に署名した。

Executive Order on Ensuring the Future Is Made in All of America by All of America’s Workers

Buy American Act は米国で国内産業の保護・生産奨励を目的として、自国製品の優先購入などを義務付けた法律で、大恐慌下の1933年に、連邦政府が物資の購入契約又は公共建設の委託契約を締結する場合に、米国製品の購入又は米国製資材の使用を連邦政府に義務づけるものが最初。

米国製 」は米国産品の比率が50%以上のもの。

次の場合は適用除外

 @公共の利益に反する場合、
 A米国製品価格
が外国製品より6%以上高く 、当該米国製品を調達することが「不合理」とされる場合、
 B当該製品が米国
内で入手不可能な場合等

米国がGATT/WTOのGPA(政府調達協定)を締結したため、連邦政府に関しては同協定の締約国に対する適用が除外されている。
また、NAFTAや二国間自由貿易協定を独自に結んだ国なども除外される。

今回、「バイ・アメリカン」法の運用を強化する。

 ・ Directs agencies to close current loopholes in how domestic content is measured and increase domestic content requirements.

「バイ・アメリカン条項」で政府調達で一定比率以上の米国製品を使うよう求めているが、 従来認められてきた適用除外を最小限に減らし、運用面の抜け穴をふさぎ、調達条件となる米国製の要件を引き上げる。

(i)   “component test” で米労働者が製造に寄与した付加価値を考慮
   domestic content is measured by the value that is added to the product through U.S.-based production or U.S. job-supporting economic activity

(ii)  国内比率の引き上げ

(iii) 外国品使用が可能な場合の内外価格差の引き上げ

 ・ Appoints a new senior leader in the Executive Office of the President in charge of the government’s Made-in-America policy approach.
 ・ Increases oversight of potential waivers to domestic preference laws.

ホワイトハウス内の米行政管理予算局に担当ポストを設け、米国製品を優遇する政策を省庁横断で進める 。

 ・ Connects new businesses to contracting opportunities by requiring active use of supplier scouting by agencies.

全米のネットワークManufacturing Extension Partnershipを活用し、省庁が必要とする製品を生産できるメーカーを探すのに役立たせる。

 ・ Reiterates the President’s strong support for the Jones Act.

米国内の地点間の物品の輸送を行う船舶は米国船籍で、1)米国人配乗、2)米国人所有、3)米国建造でなければならない、という法律

 ・ Directs a cross-agency review of all domestic preferences.

各省庁は半年ごとにレビュー

政府の調達を通し、米国労働者をサポートするとしている。


大統領は署名に先立ち、記者団に対し「米国の製造業の活力が過去のものであるということを私は少しも信じない」と指摘。「米製造業は第2次世界大戦時における民主主義の兵器庫だった。そして現在では、米国の繁栄の原動力の一部でなければならない」と述べた。

「アメリカは将来に向けた競争で傍観者の立場を取ることはできない。われわれの競合相手は待ってはくれない」と指摘。「アメリカで将来がつくられることを確実にするため、われわれは今日の雇用だけでなく、明日の雇用と産業を勝ち取る必要がある」と述べた。

Remarks by President Biden at Signing of Executive Order on Strengthening American Manufacturing

バイデン政権の高官は、新型コロナウイルス流行によって重要な医薬品などの流通システムの弱点が明らかになったことを受け、米国のサプライチェーンを強化することがバイ・アメリカン政策の目標だと説明した。

 

バイデン大統領は1月25日、上記の他に次の大統領令を出した。

トランスジェンダーの米軍入隊 許可
(トランプ大統領令の取消)
Executive Order on Enabling All Qualified Americans to Serve Their Country in Uniform

Remarks by President Biden in Signing of Executive Order Reversing the 2018 Transgender Military Ban

Fact Sheet: President Biden Signs Executive Order Enabling All Qualified Americans to Serve Their Country in Uniform

トランプ大統領は2017年7月、トランスジェンダーが軍務に就くのを「いかなる資格」においても禁止すると表明し、8月に禁止指示文書に署名 、国防総省が2018年3月に従来の方針の見直しを決めた。

今回、ホワイトハウスは、「トランスジェンダーの軍人が、性自認を理由に除隊や分離される可能性はなくなる」との声明を発表した。
 

コロナ懸念国からの入国禁止

(トランプ大統領令の取消)

Proclamation on the Suspension of Entry as Immigrants and Non-Immigrants of Certain Additional Persons Who Pose a Risk of Transmitting Coronavirus Disease

トランプ政権は1月18日、新型コロナウイルス拡大防止策として導入してきた欧州などからの外国人の入国禁止措置を1月26日に解除すると発表した。
シェンゲン圏(欧州26カ国:EU以外を含む)、英国、アイルランド、ブラジル

2021/1/20 トランプ政権、欧州諸国等からの入国禁止を解除、バイデン政権はこれに反対 

今回、これを取り消すとともに、新たに南アを禁止対象に加えた。

サキ報道官は記者会見で「新型コロナの感染拡大が悪化し、感染力が強い変異種が拡大している。今は国際的な渡航制限を解除する時期ではない」と述べた。

 

1月26日の大統領令は次の通り。

差別対策 Remarks by President Biden at Signing of an Executive Order on Racial Equity

アフリカ系アメリカ人の黒人男性George Floydが、2020年5月25日にミネアポリス近郊で、警察官の不適切な拘束方法によって死亡させられた事件に触れ、差別問題の解決を図るとした。

Memorandum Condemning and Combating Racism, Xenophobia, and Intolerance Against Asian Americans and Pacific Islanders in the United States

アジア系、南太平洋諸島系の米国人に対する差別批判

Memorandum on Redressing Our Nation’s and the Federal Government’s History of Discriminatory Housing Practices and Policies

黒人等の住宅政策差別の是正

Memorandum on Tribal Consultation and Strengthening Nation-to-Nation Relationships

部族国家(American Indian and Alaska Native Tribal Nations)の自治の尊重

私営の刑事拘禁施設への依存を段階的に廃止 Executive Order on Reforming Our Incarceration System to Eliminate the Use of Privately Operated Criminal Detention Facilities

投獄と矯正シスムはrehabilitation and redemptionを優先すべきだが、私設施設はこの点で劣る。
私営の刑事拘禁施設との契約を更新しない。
 

ワクチン接種 Remarks by President Biden on the Fight to Contain the COVID-19 Pandemic

Fact Sheet: President Biden Announces New Steps to Boost Vaccine Supply and Increase Transparency for States, Tribes, and Territories

ワクチン供給を週860万回分から1000万回分に増やす。

3週間先までの予定の開示、地方政府が効率的に接種の計画を立てられるようにする 。

Pfizer、Modernaから各100万回分を追加で購入
 ワクチン供給を4億回分から
6億回分に50%アップ、これで夏の終わりまでに3億人に接種

 

 



2021/1/28 トランプ前大統領の弾劾裁判 始まる 

米下院の弾劾管理人は1月25日、トランプ前大統領に対する弾劾条項を正式に上院に送付した。

2021/1/14 トランプ大統領 2度目の弾劾訴追

米上院では1月26日に上院議員100人全員が陪審員役としての宣誓を行った。

前回のトランプ大統領の弾劾裁判では、John Roberts最高裁長官が裁判長となったが、今回はトランプは前大統領であるため、上院仮議長(the president pro tempore )のPatrick Leahy 上院議員が裁判長を務める。

憲法第1章第3条第6項
すべての弾劾を裁判する権限は、上院に専属する。この目的のために集会するときには、議員 は、宣誓または宣誓に代る確約をしなければならない。合衆国大統領が弾劾裁判を受ける場合には、最高裁判所長官が裁判長となる。何人も、出席議員の3分の2の同意がなければ、有罪の判決を受けること はない。

宣誓の後、共和党のRand Paul 上院議員が、退任して民間人となったトランプ前大統領の弾劾裁判は「違憲」とし、弾劾裁判自体の合憲性を問う動議を提出した。

これに対し、民主党Chuck Schumer 院内総務は、退任すれば弾劾されないなら、弾劾されるべき大統領に憲法が免罪符(get-out-of-jail-free card)を与えることになるとして反論した。

退任後の弾劾は “late impeachment”と呼ばれるが、異論はあるが、違憲でないとするのが一般的である。大統領弾劾では先例はないが、閣僚では辞任後に弾劾訴追された例がある。

1876年に米下院は陸軍大臣のWilliam Belknap を収賄で弾劾しようとしたが、BelknapはWhite Houseに行き、辞表を提出した。

しかし下院は弾劾で告発し、上院は、辞任しても許されない、さもないと、弾劾されそうになると辞任して逃げてしまうとして裁判を行った。結果は37対29で、3分の2を得られず、無罪となった。

Rand Paul 上院議員が提案した動議を棚上げにする採決が行われ、55対45で棚上げが決まった。共和党からは5人が民主党に同調した。

  共和党 民主党 民主系
無所属
合計
賛成 5 48 2 55
反対 45     45

合計

50 48 2 100

 

弾劾裁判は2月9日から実質的な審理が始まる。

有罪には出席議員の2/3の賛成が必要で、共和党から17名の造反が必要である。Rand Paul 上院議員は26日の採決で5人しか造反がなかったため、「弾劾裁判はもはや終わったも同然だ」と宣言した。

しかし、反対した共和党議員の中には弾劾裁判での投票とは別であるとする議員もいる。

ーーー

トランプ氏は弾劾裁判に対応する弁護士チームを集めつつあり、防御戦略をサウスカロライナ州コロンビアのButch Bowers 弁護士と練り始めた。
情報筋によると、トランプ氏は弁護士探しに苦労している。いくつかの法律事務所は報酬を受け取れるのか疑念を抱いているほか、死者が出た議事堂事件とのつながりを回避したいとの思惑を持つところもあるという。

顧問弁護士の Rudy Giuliani 氏は、議事堂乱入事件直前の支持者集会に自らも参加していたことを理由に弁護を担当しない考えを明らかにした。

 


2021/1/29 Biden大統領、温暖化対策の大統領令、石油・ガスの開発規制 

Biden米大統領は1月27日、温暖化ガスの排出削減を目指す新たな大統領令に署名した。

大統領令 Executive Order on Tackling the Climate Crisis at Home and Abroad

資料   FACT SHEET: President Biden Takes Executive Actions to Tackle the Climate Crisis at Home and Abroad, Create Jobs, and Restore Scientific Integrity Across Federal Government

スピーチ Remarks by President Biden Before Signing Executive Actions on Tackling Climate Change, Creating Jobs, and Restoring Scientific Integrity

大統領は、「将来のクリーンエネルギーで米国は世界をリードする」と脱炭素の実現に意欲をみせ、石油・ガス業界に対して「雇用を失うのではなく、我々は雇用をつくり出す」と理解を求めた。

概要は次の通り。

 温暖化対策を米国の外交政策、安全保障の中心に置く。
 政府を挙げて温暖化危機に対応

The President will host a Leaders’ Climate Summit on Earth Day, April 22, 2021

 政府の購買でリード  電気、自動車(クリーンエネルギーを推進、かつ Made-in-America で)
 各省庁は温暖化対策実施
 

    化石燃料開発の再検討  (国有地の新規リース中止、既存リースも再検討)

to pause on entering into new oil and natural gas leases on public lands or offshore waters to the extent possible,
launch a rigorous review of all existing leasing and permitting practices related to fossil fuel development on public lands and waters,

identify steps that can be taken to double renewable energy production from offshore wind by 2030.

 化石燃料補助金の廃止

to eliminate fossil fuel subsidies as consistent with applicable law
and identify new opportunities to spur innovation, commercialization, and deployment of clean energy technologies and infrastructure. 

 インフラ投資での温暖化対策

directing steps to ensure that every federal infrastructure investment reduces climate pollution and that steps are taken to accelerate clean energy and transmission projects under federal siting and permitting processes in an environmentally sustainable manner.

 国土、海洋の保全

the goal of conserving at least 30 percent of our lands and oceans by 2030
conserving and restoring public lands and waters, increasing reforestation, increasing carbon sequestration in the agricultural sector, protecting biodiversity

 化石燃料産業の救済

to coordinate investments and other efforts to assist coal, oil and natural gas, and power plant communities. 
reduce emissions of toxic substances and greenhouse gases from existing and abandoned infrastructure and prevent environmental damage
to turn properties idled in these communities, like brownfields, into new hubs for the growth of our economy.

 環境面での正義

to address the disproportionate health, environmental, economic, and climate impacts on disadvantaged communities.

 科学、データに基づく決定

directs agencies to make evidence-based decisions guided by the best available science and data 

これについては別途、メモランダムを発表した。政治的配慮で歪めてはいけないとしている。

Memorandum on Restoring Trust in Government Through Scientific Integrity and Evidence-Based Policymaking

It is the policy of my Administration to make evidence-based decisions guided by the best available science and data. 

Scientific and technological information, data, and evidence are central to the development and iterative improvement of sound policies, and to the delivery of equitable programs, across every area of government. 

Scientific findings should never be distorted or influenced by political considerations. 

When scientific or technological information is considered in policy decisions, it should be subjected to well-established scientific processes, including peer review where feasible and appropriate, with appropriate protections for privacy. 

Improper political interference in the work of Federal scientists or other scientists who support the work of the Federal Government and in the communication of scientific facts undermines the welfare of the Nation, contributes to systemic inequities and injustices, and violates the trust that the public places in government to best serve its collective interests.

 


2021/1/30 アストラゼネカ、ワクチンを日本で製造委託 

アストラゼネカは2020年12月10日、日本政府との間で、日本における1億2千万回分の新型コロナウイルスワクチンAZD1222の供給について最終合意書を締結した。

付記 2022/9/30 使用終了 

契約  120  百万回分
キャンセル    62.3
差引    57.7
 うちアジア各国無償供与    44
   使用   0.2
   廃棄    13.5

 

日本においては国内の臨床試験の結果も合わせてアストラゼネカが承認申請を行う。

米政府の新型コロナウイルスのワクチン開発を加速するOperation Warp Speedのスラウイ首席顧問は2020年12月30日、このコロナワクチンの緊急使用について、米国では2021年4月に承認される公算が大きいと述べた。

日本への供給の1億2千万回分のうち、25%分は輸入し、75%の9千万回分を日本で委託生産する。輸入の3千万回分は3月までに輸入する。

製造委託先はJCRファーマで、海外での供給遅れが表面化するなか、国内のワクチン生産で一定量を確保して安定供給につなげる。

JCRファーマは20201230日、下記発表を行った。

当社アストラゼネカが開発中のアデノウイルスベクターを用いたCOVID-19に対するワクチン(AZD1222)について、国内における原液製造に関し、アストラゼネカと業務請負契約を締結した。

アストラゼネカが国内導入するワクチンの原液の国内製造を受託すること、よび、原液製造のために室谷工場(神戸市西区)の製造ラインを確保し製造することにつき、アストラゼネカと合意し契約を締結した。

当社は、バイオ医薬品の製造技術を有する製薬会社として、遺伝子治療の研究に携わっている研究員も参画し、早期に同ワクチンの国内安定供給に向け、原液の製造を加速する。

JCRファーマは旧称日本ケミカルリサーチ鰍ナ、「バイオ医薬品のJCRと自負している。

アストラゼネカから製造技術の移管を受け、遺伝子を改変したアデノウイルスの提供も受けた。これを培養し、精製する。

JCRでの出荷準備が整うのは早くても5月頃とされる。

日本での供給体制は下記の通り。

原液

@ 輸入、A JCRファーマに製造委託

バイアル充填 第一三共バイオテック KMバイオロジクス
保管・流通 第一三共 Meiji Seika ファルマ

KMバイオロジクス は1945年に熊本大学の実験医学研究所を母体として設立された化学及血清療法研究所の医薬品製造販売業を継承して2018年に設立された。明治ホールディングスの連結子会社で、「ヒト用ワクチン」「動物用ワクチン」「血漿分画製剤」を扱う国内唯一のバイオロジクス企業。

付記

ニプロは5月26日、製造子会社ニプロファーマアストラゼネカのワクチン「バキスゼブリア™筋注」の製剤化工程の製造に係る受託製造契約を締結した。国内生産分の一部を受託する。


PfizerやModernaのワクチンは零下20〜70度での保存が必要とされるが、AstraZenecaのは普通の冷蔵庫と同じ2〜8度で保存できるため扱いやすく、接種を大規模に広めやすいとされている。

 

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AstraZenecaは2020年6月、日本政府との間で、新型コロナウイルスワクチンの日本への導入に向けた具体的な協議を進めることに合意した。

厚生労働相は2020年8月7日、AstraZenecaから日本国内向けに1億2千万回分の供給を受けることで基本合意したと発表した。

第一三共は6月26日、このワクチンの国内における製剤化(バイアル充填、包装、保管等)などについてAstraZenecaと協議を進めることに合意したと発表した。

明治ホールディングスは同日、傘下のMeiji Seika ファルマとKMバイオロジクスが、アストラゼネカ鰍ェ日本へ導入予定の新型コロナウイルスワクチンの国内安定供給に向けた協議を進めることに合意したと発表した。

2020/6/27 政府、新型コロナワクチン供給でAstraZenecaと協議 

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EUはAstraZenecaに対し、Astraが契約通りに供給しないことに不満を表し、英国工場からの供給を強く求めた。

European Medicines Agency (EMA) は間もなく、このワクチンを承認する。(英国は既に2020年12月30日にこれを承認している。)

付記

欧州委員会は1月29日、AstraZenecaのワクチンを承認した。EUでの新型コロナワクチンの承認は3例目で、近く接種を始める。
ドイツの当局は65歳以上への使用を推奨しないとの考えを示していたが(下記)、EMAは高齢者に対しても効果が期待できるとした。

18歳以上が対象で、1回目の接種から4〜12週間後に2回目を接種する。

AstraZenecaはEUに対し、欧州工場(ベルギーとオランダ)における生産問題が原因として2021年1〜3月に契約量の60%しか供給できないと伝えていた。

生産が予定より2か月遅れているとしている。

英国には予定通り供給しているが、これについてAstraZenecaは、EUは2020年8月に3億回分の契約をしたが、英国はその3か月前に契約しており、十分調整できたとしている。

これに対しEU側は、契約には早く契約したところを優先するという条項はないとし、英国工場からの供給を求めた。


欧州委は近く、ワクチンをEUから域外に輸出する場合、登録を義務付ける新制度の提案をまとめる。輸出禁止を計画しているものではなく、透明性を高めることが目的だとしている。

 

米Pfizerも、1月下旬から2月上旬にかけ、出荷量が一時的に減少すると発表した。

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ドイツのワクチン委員会は1月28日、AstraZeneca ワクチンについて、65歳以上の高齢者に接種すべきではないとの見解を発表した。

「65歳以上の被検者の数が少なかったことから、高齢者における有効性と安全性に関する結論を出すことはできない。従って現時点でワクチンを勧告するのは、18〜64歳の年齢層のみとする」としている。

これに対しAstraZenecaは、「65歳以上の高齢者に対する同ワクチンの有効性は、最新の臨床試験データの分析によって裏付けられている」と反論、EU医薬品規制当局による判断を待つとしている。

 


2021/1/30   米 Novavaxのコロナワクチン、英治験の有効性89.3% 南アは60% 

米バイオ製薬 Novavaxは1月28日、開発中の新型コロナワクチン(NVX-CoV2373)について、英国で実施した最終段階の臨床試験(治験)の結果、予防効果が89.3%だったと発表した。

Developer/manufacturer Platform Type doses Timing Route Phase 承認
 1  1/2  2  3
Novavax(米) Protein Subunit Full length recombinant SARS CoV-2 glycoprotein nanoparticle vaccine adjuvanted with Matrix M 2 0, 21 days IM    

1万5000人余り(18歳〜84歳、うち65歳以上が27%)を対象に実施したPhase 3の臨床試験では有効性89.3%となり、主要評価項目が達成された。

 偽薬(placebo)グループで56人、ワクチン投与グループで6人の合計62人が感染した。61人が軽症で、重症の1人は偽薬グループだった。

62人のうち、英国型変異種が32人、既存種が24人、不明1人。

既存のウイルスに対するものに対する有効性は95.6%で、英国型変異種に対するものは85.6%だった。

英国では有効性が確認できたとして、ワクチンの承認に向けた手続きを開始する。

 

一方、南アフリカで4400人を対象に実施したPhase 2b 臨床試験結果、対象の94%を占めるHIV陰性の人では有効性は60%だった。

偽薬(placebo)グループで29人、ワクチン投与グループで15人の合計44人が感染した。重症は1人で、偽薬グループだった。

感染者のうち、分析した27人のうちの25人(92.6%)が南ア型だった。

HIV陽性を含めた全体での有効性は49.4%であった。

 

南ア型に対して相対的に効果が低くなった治験結果を踏まえ、変異種への効果を高める追加接種のワクチンの治験を4〜6月中に開始する。


米国とメキシコでOperation Warp Speed の支援のもとで実施するPhase 3 治験 (
PREVENT-19) は継続中で、目標の3万人(2月央まで)のうち、1万6千人のテストを実施した。4月までに米食品医薬品局(FDA)に緊急使用許可を申請する。

富士フイルムの子会社 FUJIFILM Diosynth Biotechnologiesは2020年7月、Novavaxより、最大30,000人規模のPhase 3 臨床試験に向けたワクチン候補「NVX-CoV2373」の原薬製造を受託した。ノースカロライナ拠点で原薬製造を開始した。

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Novavaxは2020年8月7日、開発中のワクチンNVX-CoV2373の日本における開発、製造、流通に向けた提携に関して基本合意したと発表した。

- Novavax社が新型コロナウイルス感染症ワクチンの製造技術を提供し、武田薬品が日本国内向けにワクチンを製造・流通
- Novavax社がアジュバントMatrix-Mを供給
- 日本政府は本ワクチンの製造技術移転、生産設備の整備、スケールアップに対し助成

武田薬品は Novavaxからのワクチン製造技術の移転、生産設備の整備、およびスケールアップの資金として、厚生労働省から助成金を受領する。
年間2億5千万回分以上のワクチンの生産能力を整備する。
 

2020/8/23 新型コロナウイルスワクチンの日本における生産体制の構築 

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米テキサス大学と Pfizerが共同で行った研究結果(米研究所などが運営するbioRxivに掲載)では、Pfizer ワクチンは英国型、南ア型、双方に共通するタイプの計3種類の変異種に対して予防効果が確認された。南ア型はわずかに効果が低くなったという。


2021/1/31 EU、ワクチンの輸出規制 

EUは1月29日、輸出の透明性を高めるためだとして、域内の工場で生産されたワクチンを輸出する際、事前申告と許可を必要とする措置を導入すると発表した。

    「透明性・委任メカニズム」 Transparency and authorisation mechanism for exports of COVID-19 vaccines

対象は、EUが事前購入契約を締結している企業からの輸出に限定される。

この措置は、1月30日からことし3月末までの時限的なもので、ワクチンの公平な分配を目指す「COVAXファシリティ」と呼ばれる国際的な枠組みなどへの供給は例外だとしている。

 

欧州委員会が当初発表した「透明性・委任メカニズム」では、北アイルランドがEUから英国にワクチンを運ぶ「裏口」にならないよう、北アイルランド議定書16条を発動すると記されていた。

議定書では、EUから北アイルランドへの輸出はチェック無しで行われる。
但し、16条で、問題がある場合は双方が一方的にこれを中止できる。

Northern Ireland Protocol Article 16
     allows the EU or UK to unilaterally suspend aspects of its operations if either side considers that aspect to be causing “economic, societal or environmental difficulties”.

EUは、この措置はワクチン確保のために「正当性」があると説明していたが、北アイルランドは英国のワクチン接種事業を通じてワクチンが供給されているため、16条の発動が同地域に直接の悪影響を与えることはないと考えられている。

欧州委員会は英国からの「離脱の取り決めに反する」との批判を受け、16条は「発動しない」と発表。新たな「透明性・委任メカニズム」を30日にも公開すると述べた。

 

世界保健機関(WHO)は、「ワクチンの公平な分配を妨げうる」と批判した。原材料調達から接種までの複雑なサプライチェーン(供給網)が乱れかねないと指摘した。

Commission puts in place transparency and authorisation mechanism for exports of COVID-19 vaccines

In an effort to ensure timely access to COVID-19 vaccines for all EU citizens and to tackle the current lack of transparency of vaccine exports outside the EU, the Commission has today put in place a measure requiring that such exports are subject to an authorisation by Member States.

President of the European Commission Ursula von der Leyen said: “The pandemic is having devastating effects in Europe and all around the world. Protecting the health of our citizens remains our utmost priority, and we must put in place the necessary measures to ensure we achieve this. This transparency and authorisation mechanism is temporary, and we will of course continue to uphold our commitments towards low and middle income countries.”

Executive Vice-President and Commissioner for Trade Valdis Dombrovskis said: “This time-limited and targeted system covers only those COVID-19 vaccines that were agreed by Advanced Purchase Agreements with the EU. The aim is to provide greater clarity on vaccine production in the EU and their exports – this transparency has been lacking and is vital at this time. This mechanism includes a wide range of exemptions to fully honour our humanitarian aid commitments and protect vaccines deliveries to our neighbourhood, and to countries in need covered by the COVAX-facility.”

Commissioner for Health and Food Safety Stella Kyriakides said: “For the best part of the last year we worked hard to get Advance Purchase Agreements with vaccine producers to bring vaccines to the citizens, in Europe and beyond. We gave upfront funding to companies to build the necessary manufacturing capacity to produce vaccines, so deliveries can start as soon as they are authorised. We now need transparency on where the vaccines we secured are going and ensure that they reach our citizens. We are accountable towards the European citizens and taxpayers – that is a key principle for us.”

The Commission has invested large amounts in the development of the production capacity of vaccine developers in the EU. This with the aim to ensure quicker delivery of vaccines to the European citizens, support planning and vaccination strategies with the ultimate goal to protect public health. It is therefore reasonable for the EU to monitor how the funds disbursed under the Advance Purchase Agreements (APA) have been used, especially in a context of potential shortages of essential COVID-19 vaccines. The main purpose is to offer public transparency to the European citizens. The transparency and authorisation system will require companies to notify the Member State authorities about the intention to export vaccines produced in the European Union.

The export authorisation scheme

This implementing act, adopted by urgency procedure and published today, provides for authorisations of exports outside the EU of COVID-19 vaccines until the end of March 2021. This scheme only applies to exports from companies with whom the EU has concluded Advance Purchased Agreements.

Based on the previous experience with a similar measure on personal protective equipment in Spring 2020, the Commission will assist Member States in setting up the relevant mechanism to ensure a smooth and coordinated implementation of the regulation.

This measure is targeted, proportionate, transparent and temporary. It is fully consistent with the EU's international commitment under the World Trade Organization and the G20, and in line with what the EU has proposed in the context of the WTO trade and health initiative. Committed to international solidarity, the EU excluded from this scheme vaccine supplies for humanitarian aid or destined to countries under the COVAX facility, as well as our neighbourhood.

About the EU's vaccine strategy

The European Commission presented on 17 June a European strategy to accelerate the development, manufacturing and deployment of effective and safe vaccines against COVID-19. In return for the right to buy a specified number of vaccine doses in a given timeframe, the Commission finances part of the upfront costs faced by vaccines producers in the form of Advance Purchase Agreements (APA). Funding provided is considered as a down-payment on the vaccines that will actually be purchased by Member States. The APA is therefore a de-risk investment upfront against a binding commitment from the company to pre-produce, even before it gets marketing authorisation. This should allow for a quick and steady delivery as soon as the authorisation has been granted.

 


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