(信越化学発表)
信越化学の米国子会社、ルイジアナ州の新塩ビ工場操業開始 (2000.12.21)
信越化学工業(本社:東京、社長:金川千尋)は、同社の100%子会社シンテック社の第二工場の建設を米国ルイジアナ州アディスで進めてきたが、2000年12月10日、新工場の生産能力59万tの半分である、第一段階の30万tの建設が当初の予定通り完成し、生産を開始した。
シンテック社は1998年にルイジアナ州アディスに生産能力59万tの塩ビ新工場を建設費米ドル250百万で建設する事を発表。
1999年10月15日にルイジアナ州の環境保護局から建設許可を取得し、直ちに建設工事に着手。
着工から僅か1年2ヵ月で建設工事を完了した。
残りの29万tの建設も2001年秋の完工を目指し計画通り進める。
このルイジアナ州の新工場は、最新鋭の大型設備の導入による高い生産性と規模の利益をシンテック社にもたらし、また既存のテキサス州フリーポート工場に加え、米国東海岸の顧客に近いアディス新工場の2拠点での生産が可能となり、今まで以上の効率的な販売・生産が可能となる。
信越化学は米国、日本、欧州に生産拠点を持つ世界最大の塩ビメーカー。信越グループの現在の全世界の塩ビ生産能力は、今回のシンテック社第二工場の30万tを含め290万t。2001年秋に完成予定のシンテック社のルイジアナ新工場の29万tを加えると、319万tとなり、2位以下を大きく引き離して、世界最大の塩ビメーカーとしての地位が更に強固なものとなる。
注 操業開始に至るまでの経緯 別紙
(日刊ケミカルニュース 2001/4/12-13)
『この人にきく』
国際化と経営戦略 信越化学工業社長 金川千尋氏
2003年6月9日 信越化学
オランダ信越PVC社VCM工場増設
信越化学工業梶i社長:金川千尋)は塩化ビニル樹脂(PVC)のヨーロッパでの生産・販売拠点、100%子会社の信越PVC社(Shin‐Etsu PVC B.V.、オランダ)が、塩化ビニルモノマー(VCM)の生産能力を年産50万トンから60万トンへ増強することを明らかにした。 工事は本年10月の完成を予定している。
信越化学は1999年末にシェルケミカルとアクゾノーベルが保有をしていたVCM/PVC事業を買収し、2000年初頭より信越PVC社として生産・販売を開始し、当初より信越グループの収益に貢献してきている。 今後も欧州ではPVCの需要が伸びる見込みから、中間原料であるVCM工場の増設に着手していたもの。 PVC工場もプロセス改良を加え当初能力の一割程度(40→44万トン)の増強を同時に行う。
信越PVC社は、欧州の顧客ニーズを的確にとらえ、強力な販売力で、過去三年間ほぼフル生産・販売を続けてきており、今回のVCMの増産後,更なるPVCの増産も視野に入れている。
欧州ではPVCは上下水道用パイプ等に加え、省エネ対策用として断熱性が求められる窓枠などで今後も堅調な伸びが見込まれている。
信越化学は米国、欧州、日本の三極体制でPVC生産を行っており,生産能力は合計350万トンに達する世界最大のメーカーである。
Shin‐Etsu PVC B.V.:VCM工場:Botlek(オランダ・ロッテルダム郊外)
PVC工場:Pernis(オランダ・ロッテルダム郊外)
→両工場は7kmほど離れた位置関係にある。
シンテック設立と外資合弁事業の推進
塩ビの新重合技術を先進諸国に輸出
ロビンテックと合弁会社を設立
米国での事業展開を決意
当社の塩化ビニル新技術に対する各国からの引き合いは一時50社を超え、その大部分が欧米の大手化学会社であった。その1つに航空機部品の銅管から出発して塩ビパイプ部門に進出、米国最大の塩ビ管メーカーに急成長したロビンテックがあった。当社の提出した技術資料を評価した上で、ロビンテックが交渉の具体化を申し入れてきたのは昭和47年夏であった。
これより前、金川千尋海外事業本部長は米国における事業展開に強い関心を持っていた。ポリカサヘの原料モノマー交渉を通じてダウ・ケミカルとの交流を深め、同社関係者から新技術による当社自身の塩化ビニル事業の企業化をアメリカで行うよう勧められていた。ロビンテックからの提携申し入れは、米国における企業化の夢を実現するチャンスであった。
申し入れを受けた直後に渡米して交渉を開始、この交渉で両社提携について基本合意に達することができた。当社技術に対する高い評価、テネコ・ケミカルズなどへの技術輸出実績、さらにダウ・ケミカルとの関係などを勘案した上での基本合意であった。コモディティ、スペシャルティを問わず、わが国の化学会社がアメリカで化学製品を生産することは特殊なケースを除いては考えられないころであった。
塩化ビニル製造の合弁会社シンテック設立に関する契約が調印されたのは昭和48年7月、初の折衝から約1年後であった。主な契約内容は次の通りである。
資本金は500万米ドル、当社とロビンテックの折半出資とし、役員は各4名、会長は2年ごとに両社で交替する。工場は当初年産10万トンとし、米国テキサス州フリーポートのダウ・ケミカルのコンビナートに隣接して建設する。当社は新技術を新会社に供与・プラント設計から建設、試運転、操業までの一切の指導に当たる。新会社の経営は当社とロビンテックが対等の立場で行う。必要資金は設備資金、運転資金を合わせて約2,000万ドル、原料はダウ・ケミカルから購入する。
ロビンテックとの共同出資によりシンテックを設立したことは、その後の当社の国際化路線を決定づけるものとなった。
モノマー購入契約、機器発注が先行
すでに述べたようにシンテック設立については、交渉の申し入れから1年で契約調印にこぎつけることができたが、昭和47,48年は第1次石油危機前とはいえ原油価格は小刻みに上昇を続けるなど、世界経済は混沌たる様相を呈していた。一方、国内では円切り上げ不況対策として大型予算が組まれる一方、過剰流動性、物価上昇に対する警戒感が強まっていた。このため、社内には海外における合弁プロジェクトに対する慎重な意見があった。ロビンテックの経営内容、ダウ・ケミカルヘの資本参加要請、米国での需要見通しと収支計画などである。
このような慎重論をめぐる社内論議が続けられる一方、モノマー購入、立地選定、資金調達、生産・販売計画の詰めなどが海外事業本部を中心に進められた。為替不安、物不足、価格高騰などのリスクを回避するためには思い切った対策も必要である。47年秋に、このプロジェクトが不成立の場合は他のプロジェクトに振り替えることを前提に、重合機、乾燥機などの主要機器を発注したのもその1つである。また、48年3月、世界的なインフレ進行を予想してダウ・ケミカルとの原料購入交渉を進めて長期の供給を保証する契約に調印したのも同様の理由からである。
もう1つの問題は資金調達であった。ロビンテックは48年2月、アライド・ケミカルの年産12万トンの塩化ビニル工場を買収した。当社との交渉が順調に進んでいる一方での工場買収は、当社との合弁事業による工場建設を待てなかったことのほか、新工場建設と運営管理のための人員確保が目的であったようである。この買収によってロビンテックは合弁計画への投資資金が不足し、その調達に苦労することになる。しかしながら、新会杜設立と工場建設のための準備は着々と進められていた。
生産、販売ともに順調なスタート
昭和48年7月、シンテック設立に関する調印が行われたあと直ちに工場建設のための準備が進められ、9月には工場建設予定地のテキサス州から建設認可を受けた。米国における初の工事であるためダウ・エンジニアリングの協力を得て整地、基礎および配管工事が開始された。当社およびロビンテック代表や州政府関係者が出席して鍬入れ式が行われたのは9月5日である。日本国内で調達した重合機、乾燥機、計器類が米国向けに船積みされ、現地における機器発注も開始された。
工事は翌年10月に完成して運転を開始、竣工式は同年12月、関係者多数が参加して盛大に行われた。米国の塩化ビニル企業、さらにスイス、ニカラグア、ポルトガルなど当社が技術を供与した企業の代表者と、ICI、エッソ・ケミカルなど新技術に関心を持つ多くの企業関係者も出席した。これらの出席者は極めて合理化された近代的なプラントに対し賛辞を借しまなかった。こうしてシンテックの操業開始は、同年における米国塩化ビニル業界の大きなニュースとなった。
シンテック株式を完全保有
シンテックが昭和49年(1974)10月に生産を開始してから1年余を経過した51年初め、ロビンテックは保有するシンテックの株式を譲渡したいと当社に申し入れてきた。これより前、同社は塩ビモノマーや電解事業など上流部門への進出を計画、当社に協力を求めてきたが当社はその意図がなく、塩ビ樹脂に専念すべしと主張してこの申し入れを断った。これに対しロビンテックは、西独企業との提携を進め、また、同社保有のシンテック株の譲渡を打診するなど、第三者への無断譲渡を禁ずる契約の趣旨に反するような行為も懸念された。
ロビンテックは48,49年の米国におけるパイプ需要急増を背景に急成長した企業で、創業後日も浅いこともあって経営が積極的である一方、堅実性に欠ける一面を持っていた。50年に入るとパイプ市場が急変し、同社の経営は悪化した。上流部門への進出計画はこれを打開するための方策であり、その資金を調達するための株式譲渡提案であったと思われる。シンテックは創業初年度に利益を計上し、実質的な初年度である51年6月期に売上高は3,000万ドルに達することが予想されるなど業績は好調であったが、当面は事業基盤の強化が最大の課題となっていた。その点で当社とロビンテックの経営方針は大きく異なり、時を追ってこれが拡大した。契約で会長は2年交替、当初2年間はロビンテックの社長が兼務して経営を一任する形となっていたが、経営方針の違いが明確となれば共同経営は解消せざるをえなくなる。
こうして51年4月、株式の買い取り価格を約1,200万ドルとするなどで基本合意に達したが、その後行われた細目についての交渉に時間を要した。それはこの間、ロビンテックの経営がいっそう悪化し、同社は少しでも有利な条件で株式を譲渡したいと考えたからである。
折から当社の業績は石油危機後の最悪期を迎えており、また日本企業の米国進出例の少ない時期でもあり、共同経営の解消、株式買い取りについては社内外にも異論があったが、小田切新太郎社長はシンテックの将来に対する強い期待から、一部取締役の反対を説得して、金川千尋海外事業本部長より提案のあったシンテック株式の100%買い取りを承認した。アメリカの塩化ビニル需要は今後とも伸びることが予想され、このなかでシンテックは生産コスト、損益分岐点、さらに原料購入などの面で他社に比べて優位にある。またロビンテックヘ今後3年間製品を供給することが契約で決められ、独自に開拓した需要家も徐々に増加していたからである。
販売最優先で販路を拡大
シンテックの株式譲渡交渉は難航して調印は昭和51年7月になった。交渉が長びいたのは譲渡条件をめぐる両社間の意見対立があったことにもよるが、当社としても法律、財務・経理、生産・販売、さらに人事などの広範囲にわたる問題を処理することが必要であり、何よりも米国での企業運営は初めての経験であったからである。ダウ・ケミカルなどからの助言、協力もあって妥結にこぎつけることができたが、この交渉は当社の海外事業に貴重な教訓を残すことになった。当社100%出資の新会社の発足に当たっては経営を現地人に任せる方針をとり、社長にアメリカ人が就任、会長に金川千尋常務が就任したが、約1年後、小田切新太郎社長の決断により金川常務がシンテック社長に就任した。従業員は65人、うち日本人は技術指導を主とする2人という少数精鋭主義を原則とし、経営方針として組織の簡素化、経費の合理化、現地金融、販売優先などを掲げた。また、給与、福利厚生の改善に努め、経営理念と基本方針を常に従業員に説明して理解を求めた。
このような方針が浸透してシンテックの業績は年々向上した。新発足した初年度の52年6月期に対し2年後の54年度の売上高は約2倍に増加、経常利益は7倍となっている。なお、この年の製品販売量は生産能力15万トンに対しほぼ100%であった。生産開始直後に立案した50%増設計画はその後延期されていたが、当社の株式買い取り後に再開され、53年1月に完成して年産15万トンになった。これは全米の300万トンに対し5%に相当する。さらに手直し増設によって54年6月に能力は年産18万トンとなった。
能力増に伴って積極的な販売活動が進められた。テキサス州を中心に全米の需要家を対象とし、カナダまで販路を拡大するなど、長期・安定需要の確保に努力した。この結果、新会社発足当時7社だったユーザーは、53年初めには30社を超えた。
海外事業が業績向上に寄与
ポルトガルにシレスを設立
輸出した塩化ビニルのクレーム処理と販売拡大のために、昭和34年初め欧州を訪問した当社の技術者が、同行の三井物産関係者と共にポルトガルを2月末に訪れた。その折に現地の機械商社を訪れ、当社が塩化ビニルを製造している旨説明したところ、同国に塩化ビニル企業化計画があり、政府からその認可を受けたグループがあることを知った。これがシレス計画のきっかけである。
このころ当社にフィリピンからプラント輸出の引き含いがありその検討を進めていたが、社内では現地企業化が製品輸出にマイナスになるとの意見もあった。このころ当社では信越ポリマーの設立計画を検討しており、これが樹脂販売にをって不利となるとの意見と一面では共通するものであった。しかし、ブーメラン効果を恐れるよりは先駆けて海外へ進出すべきであるとの基本認識に立って、ポルトガル計画を推進することが決められた。
当時ポルトガルは独裁政権とはいえ安定した政情が続き、生活水準は必ずしも高くはないが経済情勢は落ち着きをみせていた。化学工業は無機製品が少量生産されているに過きず、合成樹脂についても国内に原料のある塩化ビニルの計画のみが検討されていた。その認可を受けたウニオン・エレクトリカ・ポルトゲーザ(以下、UEP)は、同国最大の電力会社で傘下にカーバイド製造会社を持っていた。これを原料に塩化ビニルを製造すべく、欧米企業に技術導入の打診を続けている最中であった。
三井物産と先述の機械商社による度重なるUEPとの折衝、また当社派遣社員による基本計画づくりが急がれた。ポルトガル側は出資比率50%、役員同数、原料の現地購入、日本における従業員の技術指導などを条件としたが、これらに日本側も特に異論はなく、比較的早く基本合意に達することができた。資本金は2万コントス(2億5,OOO万円)、三井物産と当社がそれぞれ25%出資するほか、現地側はUEP12.5%、市中銀行2行で35%、機械商社2.5%の出資比率とすることが決定した。両国政府の認可のあとシレスは昭和35年(1960)11月23日に設立された。
合弁会社が発足するまでに工場建設の立地選定が難航し、結局原料の塩酸を生産しているポルト市南方のエスタレージャ村の工場に隣接して建設することが決まり、36年6月に着工した。塩化ビニルの生産能力は契約では当初月産300〜500トン、以後1,000トンまで増設可能となっているが、まず月産300トン設備の建設を進めることになった。主要機械類を日本、欧州、ポルトガルで調達、一部機器の納期と据え付けの遅れはあったものの建設は一応順調に進められ、37年10月に完了した。当社にとって初の海外工事であり、機器発注が数カ国にわたったこともあって、試運転に入っていろいろのトラブルが続いたが、短期間にこれを解決して12月から本格生産が開始された。建設費は約5億6,000万円で、米国およびポルトガルの銀行から融資を受けた。
その後のシレスの塩化ビニル生産量は、初年度の38年は3,050トンにとどまったが、39年には5,183トン、40年には5,626トンを記録し、順調な伸びを見せた。
日刊ケミカルニュース2001/7/19
同社の田代圓会長は「ビニル・チェーンの拡大に向けて検討に入ったが、インドネシア、フィリピンに次ぐ第三のPVCの生産拠点を中国につくる方向で、近くFS作業を開始することにしている。当社は中国にはVCM、PVCの輸出を行っており、塩ビ事業の今後の展開については重要な拠点として位置付けている」。
2002/8/12 化学工業日報
東ソー、フィリピンの電解設備をIM法に全面転換
東ソーは、フィリピンの電解事業でイオン交換膜法(IM法)への全面切り替えを図る。三菱商事などとの合弁の現地法人における設備を隔膜(D)法からIM法に転換するもの。現在、増設を進めているIM法設備は、来年には本格稼働を開始する。この稼働状況を見極めたうえで生産性に優れたIM法を全面的に採用する方向で検討している。先行き川下の塩化ビニル樹脂事業との一貫体制構築を視野に入れているなかでの競争力強化策となる。
東ソー、比で電解塩ビ事業拡大 IM法新設備に着工 第2系列計画再開も
東ソーは、フィリピンの電解・塩ビ樹脂事業の拡大に乗り出す。出資している現地メーカーを通じて電解設備の新設に着手、今年末までに総能力を大きく引き上げる。また中断していた塩ビ樹脂の倍増設計画も、需要動向次第ですぐにでも再開する。同社では、ビニルチェーンの国際規模での展開をコアコンピタンスと位置付けており、国内メーカー初となる塩ビ樹脂の中国生産なども計画している。ビニルチェーン強化の一環として、フィリピン事業の拡大に拍車をかける。
電解設備を新設するのは、現地上場企業のマブハイ・ビニル。東ソーは2000年に約23%の株式を取得し、三菱商事の出資分を加え、発行ずみ株式の3分の1以上を日本勢で確保している。既存の隔膜(D)法年産16千トンの電解設備に加え、イオン交換膜(IM)法同8千トン設備を建設する。このほど着工、年末には完成の見通し。
フィリピンでは、食品殺菌用の塩酸や飲料水殺菌用の塩素など一次塩化物の需要が増大している。そのため今回の新設に続き、次期増設も視野に入れていく。その場含、既存のD法設備から、よりエネルギー効率に優れるIM法設備への転換を合わせて図る公算が大きい。
一方、塩ビ樹脂に関しては、三菱商事との合弁であるフィリピン・レジンズ・インダストリーズ(PRII)で年産7万-9万トンの第2系列を建設する。当初の計画では2001年にも実施する予定だったが、現地需要の悪化などを受けて見合わせた経緯がある。ただ今年に入って需要に回復傾向も表れており、今後の動向次第では直ちに計画を再開する。第2系列が完成すれば、フィリピンでの塩ビ能力は現有の倍の14万-18万トン程度となる。
東ソーの海外塩ビ事業としては、ほかにインドネシアでのモノマー、樹脂合弁がある。加えて中国でも数年内に樹脂の生産を図る方向で、最終的な企業化調査を現在進めている。フィリピンでの増設も中国計画と同時並行的に実行することになる可能性が高く、ビニルチェーンのグローバル展開が大きく前進することになる。
日本経済新聞 2002/6/8
比で塩ビ8割増産 東ソー、建材向けなど拡大
東ソーはフィリピンで塩化ビニール樹脂設備を増設する。40億円程度を投資、2003年度中に稼働し、生産能力を現在の年9万トンから8割増の同16万トンに増やす。水道パイプなど建材や日用品向けに需要が伸びているため。中国でも工場建設を計画しており、アジア展開を加速する。
設備を増設するのは三菱商事との合弁会社、フイリピン・レジンズ・インダストリーズ(PRII、バターン州)の工場。現在ある1系列の設備に加え、新たに年産7万トンの1系列を建設する。将来、手直しでさらに同9万トンまで増強可能。
PRIIは1998年に生産を開始しており、現在はフィリピンで唯一のメーカー。現地市場の需要は年間十数万トンとみられ、供給が追いつかない状況という。
中国では樹脂だけでなく原料を生産することも検討しており、建設地などの選定作業を急いでいる。中国はアジア最大の塩ビ消費国で、年間需要は約500万トンと日本の約3倍。東ソーはインドネシアにも工場を持つ。
石油化学新報 2003/12/10
東ソー、フィリピンのPVC設備を手直し増強〜来年7月に1万t
東ソーは、フィリピンのPVC(塩ビ樹脂)事業合弁会社で来年7月の定期修理時に設備のボトルネック解消を行い、生産能力を年産1万トン増の10万トンに引き上げる。かねから7万トン設備増設を検討しているが、フィリピンでのPVC内需が当初予定より伸び悩んでいるため、小規模な設備増強で当面の需要増加に対応することにした。
東ソーはフィリピンで合弁会社、フィリピン・レジンズ・インダストリーズ(PRII、東ソー/三菱商事各50%出資)を通じて、98年末にバターン半島のリマイ地区に7万トンのPVC設備の操業を開始、2001年2月の設備増強で生産能力を現有の9万トンに引き上げた。PRIIはフィリピン唯一の本格的なPVCメーカーであるうえ、同国では関税障壁で輸入品の流入(現在年間7000トン前後)から守られていることから、内需(同約10万トン)に占めるシェアが高く、高水準の設備稼働率を維持している。原料VCM(塩ビモノマー)は競争力に優れる東ソーの南陽事業所から受給しており、2000年下期以降の慢性的なVCMとPVCの価格スプレッド縮小が収益を圧迫しているものの、設備稼働以来、黒字が続いているという。
ただフィリピンのパイプ向けを中心とするPVC内需は2000年以降、公共・民間投資の減速により数%の伸びにとどまっており、経済危機(97年)以前のような2桁成長の勢いはないのが実情。こうしたなかPRIIは来年7月に設備の手直し増強で当面の需要増加に対応することにした。引き続き7万トン設備増設は検討するが、工事に完工ベースで約20ヵ月を要するため実現は早くても2005年以降となる。なお東ソーは、PVCのアジア最大市場で高成長が続く中国での事業化計画を近く固める予定であり、PVC関連の投資は当面、中国に重点を置くことになるとみられる。
2004/2/24 東ソー
フィリピン・PRII社の出資比率を80%に引き上げ
東ソーは、フィリピンの塩ビ樹脂(PVC)の製造・販売会社であるフィリピン・レジンズ・インダストリーズ〔PRII〕(現行出資比率;東ソー50%、三菱商事50%)について、三菱商事が保有するPRIIの株式30%の買取を決定しました。株式購入時期は04年3月を予定しており、これにより東ソーのPRIIへの出資比率は50%から80%に高まり、今後は東ソ−主導で経営を行うこととなります。
PRIIは1996年に設立され、1999年からPVC年産7万トンの生産能力で生産・販売を開始しました。その後、フィリピンにおけるPVCの需要拡大にあわせ2001年に2万トンの増設を行い、現在1万トンの手直し増強を行っており2004年5月完工後は年産能力10万トンと、フィリピンでのPVC事業のNO1プレ−ヤ−の地位がより確固たるものとなります。また引き続きPVC生産の主原料であるVCMは全量東ソ−・南陽事業所より安定供給され、今後もPVC需要の安定的な成長が期待できるフィリピン市場において、PRIIは積極的なPVCの事業展開を行っていきます。
このように今回のPRIIの80%への出資比率引き上げは、東ソーのコア事業である「ビニル・イソシアネート・チェーン」事業の海外展開の拠点としての位置付けをより明確にし、今後の事業展開における一体的運営体制強化を図ろうとするものです。
■PRII社の概要
正式名称 ; Philippine Resins Industries, Inc.(PRII)
(フィリピン・レジンズ・インダストリーズ)
株主構成 ; 東ソー80%,三菱商事20% <2004年3月より>
事業内容 ; 塩ビ樹脂の製造および販売
生産能力 ; 年産 10万トン <2004年5月より>
東ソー株式会社
三菱商事株式会社
フィリピンで塩ビ樹脂の生産能力を9万トン増強
東ソーと三菱商事がフィリピンにおいて現地パートナーとともに出資している塩ビ樹脂の製造販売会社である「PRII」(フィリピン・レジンズ・インダストリィーズ)は生産能力を年産9万トン増強し、同16万トンとすることに決定しました。
まず現在有している第一系列の同7万トン設備を本年12月までにデボトルネッキング(手直し増強)により同9万トンに増強します。さらに2002年6月完工を目標に第二系列として同7万トンを新設する方針を決定し、ただちに資金調達を含む詳細検討に着手します。投資金額はあわせて約40億円。
フィリピンでは1998年に経済危機が表面化し、塩ビ樹脂の国内需要は7万トン程度に減少したものの、1999年は1997年並みの10万トンまで回復しています。今後も同国内の社会資本整備に伴う塩ビパイプや電線向けなどに需要が拡大し、年率10%を超える成長が見込まれています。
PRIIは年産7万トンの第一系列を約60億円投資して1998年10月に完工、同年12月末に商業運転を開始して以来フル稼動が続いており、フィリピンにおける塩ビ樹脂のさらなる需要増加に対応するため今回の決定に至りました。
東ソーの塩ビ樹脂事業は、南陽事業所のペースト塩ビ(年産能力2万8千トン)をはじめ、関係会社として国内では最大手の大洋塩ビ(同61万トン)、徳山積水工業(同11万トン)、海外ではPRIIのほか、インドネシアのスタンダード・トーヨー・ポリマー(同8万6千トン)やサトモ・インドビル・ポリマー(同7万トン)とアジア地域において積極的に展開しています。今回のPRIIの増強により、東ソーが関与する塩ビ樹脂の生産能力は年間106万4千トンとなります。
また、東ソーは、1999年7月に塩ビ樹脂の原料である塩化ビニルモノマー(VCM)の増強を完了、現在の生産能力は年間105万トンとなっており、アジアにおけるこれら塩ビ樹脂の関係会社に対しても相当量を供給していきます。
PRIIの概要 (Philippine Resins Industries, Inc.)
(フィリピン・レジンズ・インダストリィーズ)
資本金 | 10億ペソ(約27億円) | ||||||||||||||
株主構成 | 東ソー | 20% | |||||||||||||
三菱商事 | 20% | ||||||||||||||
Bank of The Philippine Islands(BPI) | 11% | ||||||||||||||
Mabuhay Vinyl Corporation(MVC) | 49% | ||||||||||||||
事業内容 | 塩ビ樹脂の製造および販売 | ||||||||||||||
プラント |
|
(ご参考)
アジア地域における東ソーの塩ビ樹脂の製造・販売会社の概要
○スタンダード・トーヨー・ポリマー(スタトマー)
立 地; インドネシア 西ジャワ
メラク地区
設 立; 1975年5月
能 力; 年産8万6千トン
株主構成; 東ソー60%、三井物産40%
(当初:東ソー 30%、三井物産
20%、サリムグループ 50%)
○サトモ・インドビル・ポリマー
立 地; インドネシア 西ジャワ
ボジョネガラ地区
設 立; 1996年1月
能 力; 年産7万トン
株主構成;
東ソー25%、住友商事25%、サリムグループ50%
東ソー株式会社
三井物産株式会社
スタトマーの株式を日系2社で全株取得
東ソーと三井物産は、インドネシアにおいて現地パートナーであるサリムグループとともに運営している塩ビ樹脂の製造販売会社であるスタンダード・トーヨー・ポリマー(スタトマー、出資比率;東ソー
30%、三井物産 20%、サリムグループ
50%)について、日系2社で同社の株式を全株取得する検討を出資会社間で進めてきましたが、この程、同国政府より日系2社で同社の株式を全株取得することが許可され、近日中に同社の資本構成は東ソー
60%、三井物産 40%となります。
インドネシアでは1998年7月に外資法が改正され、外資100%が認められるようになりましたが、同国に立地している化学企業でスタトマーが初の日系100%企業となります。
スタトマーは1975年に設立し、1977年から年産2万4千トンの生産能力を有する塩ビ樹脂プラントを稼働、同樹脂の販売を開始しました。その後、インドネシアをはじめとする東南アジアや中国などにおける塩ビ樹脂の需要拡大にあわせ4回に渡る増設を行い、現在の生産能力は年産8万6千トンとなっています。
インドネシアにおける塩ビ樹脂の需要は、1997年には年間30万トン程度あったものの、昨年は同国での経済混乱の影響で年間約10万トンまで減少、しかし、本年は年間20万トン近くまで回復する見込みです。今後も上下水道用パイプや電線被覆などの社会インフラをはじめ日用・雑貨品に至るまで、成長が期待されています。
東ソーの塩ビ樹脂事業は、南陽事業所のペースト塩ビ(年産能力2万8千トン)をはじめ、関係会社として国内では、最大手の大洋塩ビ(同61万トン)、徳山積水工業(同11万トン)、海外ではスタトマーのほか、同じくインドネシアのサトモ・インドビル・ポリマー(同7万トン)、フィリピンのPRII(同7万トン)とアジア地域において積極的に展開、生産能力として年間100万トン近い(97万4千トン)規模を有しています。さらに、スタトマーおよびPRIIでは次期増設の検討も進めています。
また、東ソーは本年7月に塩ビ樹脂の原料となる塩ビモノマーの増強を完了、アジアにおけるこれら塩ビ樹脂の関係会社に対しても相当量を供給していきます。
三井物産においても塩ビはエチレン派生商品のコアと位置づけ、塩ビ樹脂製造会社としてスタトマーをはじめ、タイプラスチック(タイ)、シレス(ポルトガル)、三井ビナプラスチック(ベトナム)、また、最近では二塩化エチレンあるいは塩ビモノマーといった塩ビ樹脂の上流部分を含めた製造会社としてバルカン・クロールアルカリ(米国)、ビニールクロライド・マレーシア(マレーシア)、滄井化工(中国)を設立、従来からのサプライヤー・ユーザー間の物流にこれら関係会社間の物流を融合させ三井物産のビニル・チェーン・ネットワークをさらに強固なものにしていきます。
注 サトモ関連もサリム・グループとのJVで、サリム持株は香港の会社に売却された。
別紙参照
フィリピンにおける塩ビコンパウンド会社
設立について
東ソーとプラス・テクはフィリピンにおいて塩ビコンパウンド会社を設立した。
東ソーと東ソーの関連会社で塩ビコンパウンドおよび二次製品の製造・販売を行っているプラス・テクは、これまでフィリピンでの塩ビ加工事業に関し、現地パートナーとともにFS(企業化調査)を進めてきたが、この程、マニラの南65キロメートルに位置するリマ・テクノロジー・センター工業団地において、塩ビコンパウンドの製造・販売を行う合弁会社「トーソー・ポリビン」を設立、年産1万2千トンの製造設備を建設することに決定した。99年3月に製造設備が完工、同年4月より営業を開始する予定。
投資金額は、約1200万USドル。
フィリピンの塩ビコンパウンドの国内需要は97年で年間2万3千トン程度であるが、同国内での生産量だけでは十分に需要を満たすことができず、約5千トンを輸入している。今後も、特に自動車用電線分野を中心に年率10%を越える成長が見込まれており、拡大していく塩ビコンパウンドの需要に対応するため、今回の決定に至った。
なお、原料となる塩ビ樹脂は、「PRII」(フィリピン・レジンズ・インダストリィーズ)などから調達する予定。東ソーの関連会社である「PRII」は現在フィリピンのリマイ地区で年産7万トンの塩ビ樹脂製造設備の建設を本年10月完工予定で進めている。
【新会社の概要】
社名 | Tosoh Polyvin Corporation(TPC) (トーソー・ポリビン) | |
社長 | 宇田川
憲一(東ソー
塩ビ海外プロジェクト統括チームリーダー
兼 東ソー塩ビ加工開発且ミ長) |
|
設立日 | 98年7月3日 | |
資本金 | 590万USドル | |
資本構成 | 東ソーグループ(東ソー、プラス・テク)
70% その他(マブハイ・ビニル、バタンガス・アセットなど) 30% |
|
事業内容 | 自動車電線用塩ビコンパウンドおよび他のコンパウンドの製造・販売 | |
プラント | 〈製造技術〉プラス・テク技術を採用
〈生産能力〉年産1万2千トン 〈工期〉 98年7月着工、99年3月完工 |
化学工業日報 2002/8/13
旭硝子 インドネシアPVC拠点、電解増強、37万トンに
第2ジェティも建設
旭硝子のインドネシアにおける塩ビ樹脂(PVC)拠点であるアサヒマスケミカルは、今年4月に電解設備を増強したことにより、完全な原料一貫体制を整えた。増強分も含め力性ソーダを国内市場で売り切ると同時に、従来不足分を輸入で補っていた二塩化エチレン(EDC)は逆に余剰分を外販するバランスとなっている。同国内の競合メーカーは塩ビ樹脂専業が多く、原料・塩ビモノマー(VCM)の高騰に苦しめられているだけに、競争力が際立っている。現在、建設中の第2ジェティにより2005年までの設備計画は完了するが、PVCの手直し増強を視野に入れて市場への影響力をさらに強化する。
アサヒマスケミカルは電解からの一貫による塩ビ樹脂メーカーで、電解が今年85千トン増強したことにより37万トン、VCMが40万トン、PVC28万5千トン能力となっている。同国内で一貫メーカーは他にスルフィンド・サトモグループのみで、他の3社はPVC専業。このため稼働率は業界平均で70%台とみられるのに対し、アサヒマスは96%に達している。
力性ソーダをインドネシア国内でほとんどさばけ、確実に収益が上がっていることが同社の強みで、増強後も出荷を増やしている。またEDCは輸出余力も生まれており、VCMは11万5千トンの外販能力がある。EDC、VCM市況が高止まりしている上半期は同社に追い風となった。
PVCをVCM能力に見合う40万トンに引き上げる検討は現在中止している。ただ、現状の設備で25%まで能力を引き上げる技術検討は進めており、段階的に35万トン程度まで手直し増強で実現したい考えだ。
現在、第2ジェティを建設中で、2003年1月に完成の予定。原料の塩とエチレンをそれぞれ専用のバースで受け入れることが可能になり、年間60万トンを購入している塩の輸送費は1トン当たり1ドル削減できる。第2ジェティの完成で2005年までの事業運営に必要な設備は整備されるとし、今後は現有設備で利益極大化を図る。
(化学工業日報 2000/9/22)
旭硝子 インドネシアで電解増設 30%増、年37万トンに
2002年春 塩ビ原料、全量自社生産
旭硝子はインドネシアの子会社、アサヒマス・ケミカル(ASC、本社・ジャカルタ市)において電解設備を増設することを正式決定した。3600万ドル(約38億円)を投資して力性ソーダの生産能力を約30%増強、年37万1千トンに引き上げる。来年1月に着工し、2002年4月の稼働予定。現地で拡大が続く力性ソーダ需要に対応するとともに、塩素の増産によって塩化ビニルの原料を全量自社生産に切り替えてコスト競争力を高める。同社のクロル・アルカリ事業戦略は、国内は縮小策を実施する一方、アジアでは拡大志向を打ち出しており、ASCでも将来的には塩ビ樹脂の増強を図りたい考え。
ASCはインドネシアで最大、日本を除くアジアでも有数の規模を持つ電解・塩ビメーカー。89年の操業開始以来、インドネシアの需要拡大にともなって3回にわたる増設を実施してきた。現状の生産能力は電解が年28万5千トン、塩ビモノマー(VCM)同40万トン、塩ビ樹脂(PVC)同28万5千トン。99年度の売上高は1兆9280億ルピア(約283億円)。
インドネシアにおける力性ソーダ需要は、アジア経済危機に見舞われた時期においても繊維産業用などに成長を持続している。2000年の総需要は電解メーカーの自家消費分を除いても43万トン。今後も年10%程度伸び、2003年には58万トンまで拡大すると見込まれている。ASCもフル操業が続き、品不足が懸念されている。
今回の増設は現地のカ性ソーダ需要に対応するのが狙い。同時に増産する塩素を塩ビ原料として活用し、二塩化エチレン(EDC)を自社生産にすべて転換する。これによって年4億円程度のコストダウンが図れるという。設備は旭硝子の最新鋭複極式電解槽「AZEC−B1」を導入する。
電解能力の増強によってASCの事業基盤は一層強化されることになる。また、将来的にはPVC生産をVCM能力に見合った規模にまで拡大し、さらなるコスト競争力の向上を図る方針。旭硝子は「シュリンク・トゥ・グロー」の経営戦略に基づき、クロル・アルカリ事業では国内縮小・海外拡大の姿勢を解明に打ち出している。今後もタイの電解拠点タスコ・ケミカル、パキスタンのPVC拠点エングロ旭ポリマーアンドケミカルスを含めてアジアの事業拡大を進めていく。
☆旭硝子、パキスタンPVCプラント、15日にメカコン
旭硝子などが出資してパキスタンに建設中の塩化ビニル樹脂(PVC)製造プラントが、15日にメカニカル・コンプリーションし、来月から商業生産に入る。同社は塩ビ事業の海外展開の一環として、現地企業のエングロ・ケミカル社および三菱商事との合弁で、97年に「エングロ旭ポリマーアンドケミカル」(EAPCL)を設立、年産10万tのPVC製造設備の建設を進めていた。
合弁会社の資本金は3千7百万ドルで、エングロ社50%、旭硝子30%、三菱商事が20%出資している。総投資額は8千3百万ドルとなる。
旭硝子は、すでにアジアにおいてインドネシアのアサヒマスケミカル、タイのタスコケミカルで塩ビ関連事業を展開しており、今回のパキスタン進出により、アジアで第3の生産拠点が確立される。原料の塩ビモノマーの供給は当面、三菱商事経由で輸入していくが、将来的には電解までの上流への展開も検討するとしている。
パキスタンで同国初の本格的塩ビ樹脂製造販売合弁会社を設立
旭硝子(株)(本社:東京、社長:瀬谷博道)及び三菱商事(株)(本社:東京、社長:槙原稔)は、パキスタンにおいて、現地の有力肥料会社であるエングロ・ケミカル社と同国初の本格的塩ビ樹脂(PVC)の製造販売合弁会社を設立することで合意し、10月10日に現地で合弁契約の調印を行いました。
パキスタンの塩ビ需要はここ数年、パイプ・靴・電線用を中心に年率10%強の伸びを見せており、96年の実績は約9万トンと見られています。過去には小規模の塩ビ樹脂メーカーがありましたが既に活動を停止しており、現在は国内メーカーがないため、全量サウジアラビア、イラン、タイ等からの輸入に頼っている状態です。一方、エングロ社は同国第2位の肥料会社で、かねてより塩ビを始めとする石油化学事業への多角化を指向していましたが、このたび日本側2社と合意に達し、塩ビ樹脂の国内生産を行うことになったものです。
旭硝子はアジア最大級のクロール・アルカリメーカーとして既にインドネシア、タイで事業を展開していますが、今回はこれに続く第3のクロール・アルカリ拠点になります。
また、三菱商事はパキスタンにおいてポリエステル繊維とポリプロピレンのフィルム事業を行っていますが、本件の投資は本格的な石油化学への進出になります。
新会社「エングロ旭ポリマーアンドケミカルズ(株)(EAPCL)」への出資比率は、エングロ社50%、旭硝子30%、三菱商事20%です。総投資額は約8,300万ドル(約100億円)、資本金は3,700万ドル(約44億円)で、旭硝子及び三菱商事が出資する資本金1,850万ドル(約22億円)は、パキスタンに対する日本企業からの出資としては過去最大です。社長はエングロ社が、副社長は旭硝子が指名しますが、エングロ社はパキスタンでの事業ノウハウ提供と販売、旭硝子はPVC生産、三菱商事は原料塩ビモノマー(VCM)の供給を、それぞれ担うことになります。
工場はカラチ東方約60qのポート・カシム工業団地内で、三井東圧化学(株)(現:三井化学(株))の技術により年産10万トンのPVCプラントを建設します。本年12月に着工し、商業生産開始は99年12月を予定しています。原料VCMは当面輸入で対応することになりますが、将来は上流への展開を視野に入れており、食塩電解による苛性ソーダ・塩素から、塩ビ中間原料である二塩化エチレン(EDC)、塩ビモノマー、塩ビ樹脂までの一貫生産を目指しています。
《参考》
1.新会社の概要
(1)社名 ENGRO ASAHI POLYMER & CHEMICALS LTD. (2)本社所在地 パキスタン カラチ市 M.T.カーン通り (3)資本金 3,700万ドル (4)従業員数 約140名 2.エングロ・ケミカル社の概要
(1)社名 ENGRO CHEMICAL PAKISTAN LTD. (2)本社所在地 パキスタン カラチ市 M.T.カーン通り (3)社長 ザッファール・A・カーン(Zaffar A. Khan) (4)資本金 876百万ルピー(約26億円) (5)営業品目 尿素肥料 (6)売上高 7,168百万ルピー(約210億円、96年) (7)従業員数 約650名
(化学工業日報 2001/2/2)
鐘化 塩ビペースト マレーシアで生産開始
年3万トン アジア展開加速 初年度フル操業めざす
鐘淵化学工業はマレーシアで塩ビペーストの本格生産を開始し、アジア市場での需要拡大に乗り出す。年3万トン能力の設備が先月から商業運転に入ったもので、日本からの輸出と合わせて供給力が大幅に拡充される。同社としては品質面で差別化が図れるディスポーザブル手袋、玩具用コンパウンドなどの分野での販売を強化していく方針。高い成長率が見込める中国をはじめとしてマレーシア、タイ、インドネシアといった東南アジアにも展開し、初年度からフル操業に持ち込みたい考えだ。
鐘淵化学はマレーシアをアジアの生産拠点と位置付けており、パハン州ゲベン工業団地に約40万平方メートルの工場用地を取得ずみ。すでにMBS樹脂、発泡ポリオレフィン樹脂、マグネットワイヤーなどの生産を行っている。塩ビペーストの製造にあたっては100%出資子会社「カネカペーストポリマー」を設立。同敷地内に設備を建設し昨年10月に完成、試運転を経て今年1月から商業運転を開始した。
日本を含めたアジア圏における塩ビペーストの需要は年53、4万トンと推定される。輸出加工拠点である中国に加えて、東南アジア諸国でも成長が見込まれており、今後10%近い伸びが期待されている。
これまで同社は高砂工業所(兵庫県)、鹿島工場(茨城県)で生産を行っており、年7万トンの能力を持つ。同社はこのうち2万トンを輸出に振り向けてきたが、供給力が不足していた。
マレーシアで生産を開始したことで、アジア向けの安定供給体制が整備された。従来から高い評価を得ていた玩具・雑貨向けのコンパウンドのみならず、厳しい加工性などが要求されるディスポーザブル手袋用などに力を入れる。とくに中国での拡販については、昨年11月に事業支援子会社「鐘化*詢(上海)有限公司」(*は次の下に口)に営業、技術サービスを担当する人員を派遣している。同社は日本からの輸出も現状の規模を維持できるとみており、マレーシア拠点の稼働を契機にしてアジア展開に弾みをつける。
同社は米国にも年3万トン能力の「カネカデラウエァ」を有しており、塩ビペーストでは10万トン以上の能力を持つ世界有数のメーカー。
(鐘化発表 1998年12月2日
マレーシアで特殊塩ビ樹脂の製造販売会社を設立
〜2000年央稼動、グローバル展開を加速〜
鐘淵化学はマレーシアに100%子会社の塩ビペースト樹脂製造販売会社を、来年早々の予定で設立する。設備能力は年産約30千トン。認可取得後直ちに着工し、2000(平成12)年央の稼動を目指す。
鐘淵化学は95(平成7)年、マレーシア東海岸のパハン州に約40万uの土地を取得し、カネカマレーシア有限責任株式会社を設立した。当地をアジア市場における総合的生産拠点と位置づけており、すでに塩ビ強化用MBS樹脂、マグネットワイヤー、偏向ヨーク用マグネット、発泡ポリオレフィンの製造設備が稼動している。塩ビペースト樹脂はそれらに次ぐ5番目の事業となる。
国内では、年産約70千トンの能力を有し、トップクラスに位置している。96(平成6)年には米国において、年産約30千トンの能力を有するカネカデラウエア株式会社を設立し、すでに海外展開を進めている。
今回のマレーシア進出により日本、米国、アジアの世界3拠点体制が整備され、世界でもトップクラスの設備能力をもつメーカーとなる。
当社の塩ビペースト樹脂は、約20年前より中国を含む東南アジア市場への拡販を図ってきており、品質差別化力を武器に高い評価を得てきた。今後とも成長の見込めるアジア市場への更なる展開を考える時、輸出による対応では供給能力面、市場開発面で限界があると判断し、現地密着型による本格的展開を図ることとした。
当面は日本からの輸出を置き換える既存需要分野向けの販売が中心となるが、日米市場で培った経験と実績を活かし新規需要分野の開発にも精力的に取り組む方針である。また、国内外における当社と関係の深い加工メーカーとの連携によって、現地市場での新たな需要創出も積極的に展開する。
今回建設する製造設備は、当社の独自技術を更に進化させ、経済性を最重点におきプロセスの簡素化に徹底して取り組むとともに、グレードの絞り込みによる高い生産性にも力点をおいており、充分な国際コスト競争力を有していると考えている。
〜参考資料〜
<新会社の概要>
●社名 カネカペーストポリマー有限責任(株) ●本社 マレーシアクアラルンプール ●工場 マレーシアパハン州クアンタン地区 ゲベン工業団地 ●資本金 20百万RM ●設立 1999年初め ●社長 佐野 久雄(鐘淵化学工業 常務取締役) ●社員数 約50名 ●製品 塩ビペースト樹脂 (2000年央稼動/年産30,000トン)
鐘淵化学/三井物産 米に塩ビペースト新会社
現地社の事業買収 能力も年産3.5万トンへ
鐘淵化学工業は2月29日、三井物産と共同で米国のジョージアガルフ社の塩化ビニルペースト事業を買収、新会社を設立すると発表した。塩ビペースト事業の国際展開の一環で、デラウエア州にある工場を引き継ぎ、米国、中南米へ販売する。また2年以内に10億円強を投じて生産能力を年産15千トン増強、35千トン体制にする。同社が塩ビペーストの海外生産を始めるのは今回が初めて。米国拠点の増産が完了すれば日本と合わせて年産10万トン以上の生産能力を有することになる。
買収に関する調印は2月末までに完了している。これを受け鐘淵化学工業と三井物産は、今月中に「カネカデラウエア」(仮称)を設立する。新会社の資本金は当初、約7百万米$で2年以内に約1千万米$に増資する。出資比率は鐘淵化学工業80%,三井物産20%。社長等詳細は未定。来月中旬にもジョージアガルフ社の生産を含めた塩ビペースト事業を引き継ぐ。これによりジョージアガルフ社は塩ビペースト事業から撤退する。買収額は明らかにしていない。
新会社が引き継ぐ工場は年産能力2万トンの製造設備を持つが、2年以内に同35千トンに増やす。投資額は10億円強を見込んでいる。売り上げ目標は初年度25億円、床材に加え、壁紙、タイルカーペット等のラインアップを図り(日本からの技術導入)、3年後に40億円以上の売り上げを計画している。販売エリアは米国内と中南米。
塩ビペーストは、塩化ビニル樹脂をベースに粒径を細かくするなどした特殊塩ビで、床材、壁紙、塗料等に使われる。鐘淵化学工業は現在、米国には塩ビペーストを輸出しておらず、今回の買収で米国市場に足掛かりを築くことになる。
その一方で国内生産体制も再構築している。従来、大阪工場、鹿島工場の2拠点で生産してきたが、大阪工場の設備を年内にも停止し昨年秋から本格稼働を始めた高砂工業所と鹿島工場との生産体制にする。これにより国内生産能力は年産5万トンから同約65千トンとなり、米国の新会社と合わせて同10万トン以上に大幅増強される。
鐘化発表資料(1998年12月2日)
<カネカデラウエア(株)の概要>
●社名 カネカデラウエア株式会社 ●場所 米国デラウエア州デラウエア市 ●敷地 約10万u(約24エーカー) ●資本金 7百万米ドル ●設立 96年3月 ●社長 乾 佐太郎(鐘淵化学工業 常務取締役) ●社員数 約100名 ●製品 塩ビペースト樹脂(96年3月稼動/年産30,000トン)
子会社の解散に関するお知らせ
当社は、平成15年3月24日開催の取締役会において、下記のとおり当社の連結子会社であるKaneka
Plastics Corporation 、Kaneka Delaware Corporation
の2社について解散することを決議いたしましたので、お知らせいたします。
1 .子会社の概要
@ | Kaneka Plastics Corporation | ||
所在地 | 米国 | ||
代表者 | 乾佐太郎 President | ||
事業内容 | Kaneka Delaware Corporation の持株会社 | ||
資本金 | 6,000 千US$ | ||
株主構成 | 鐘淵化学工業株式会社 100% | ||
A | Kaneka Delaware Corporation | ||
所在地 | 米国 | ||
代表者 | 山崎隆行 President 兼CEO | ||
事業内容 | 塩ビペースト樹脂の製造、販売 | ||
資本金 | 7,000 千US$ | ||
株主構成 | Kaneka Plastics Corporation 80% | ||
2 .解散の理由
Kaneka Delaware Corporation
は、米国における塩ビペースト樹脂の供給体制強化を目的として1996
年に設立され今日に至っておりますが、原料価格の波動が大きく安定的収益を確保することが困難であり、将来に向けて事業競争力を向上させる目処が立ちにくいと判断したため、同社の持株会社であるKaneka
Plastics Corporation とともに解散することといたしました。
3 .今後の見通し
当該連結子会社の解散にともなう投資損失として、平成15
年3 月期決算に、単独で約13億円、連結で約9
億円を特別損失に計上する予定でありますが、業績予想には織込み済みであります。
(石油化学新報 2000/6/28)
東ソー/三井物産、VCMを相互融通〜南陽とマレーシアで合理化
マレーシアの大型設備が1O月に稼動〜インドネシアヘ供給
東ソーと三井物産は塩ビモノマー(VCM)の相互融通を始める。三井物産がマレーシアで現地国営企業と共同で建設を進めている大型VCMプラントが10月をめどに商業運転に入るのに伴い、東ソーは日本の南陽事業所からインドネシアの塩ビ樹脂(PVC)事業合弁会社に輸送しているVCMをマレーシアからの供給に切り替える。一方、三井物産は南陽からVCMを引き取って近隣の中国などに外販することで、両社とも物流合理化を図る。
三井物産が資本参加の形で展開する主な塩ビ関連事業は下記の通りで、同社は昨年以降、積極展開に乗り出している。中国・河北省滄州では98年8月に現地VCM〜PVC事業会社に出資し、昨年4月からVCMとPVCプラントが操業を開始。またインドネシアでは東ソ一とサリムグループとの共同出資で運営していたPVC事業会社スタンダード・トーヨー・ポリマー(スタトマー)で、東ソーと、三井物産がサリム側の株式を昨年9月に取得した。スタトマーは原料VCMを、同国最大の電解〜塩ビ事業会社であるアサヒマス・ケミカル(旭硝子52.5%/三菱商事11.5%等出資)などから船舶で調達しているが、東ソーの出資比率が高まったのに伴い南陽からの調達を増やしている。
さらに三井物産はマレーシアでマレーシア国営石油(ペトロナス)と共同で年産40万トンのVCMと15万トンのPVCプラントの建設を進めており、各設備とも今年7月から8月にかけて相次ぎ完成、試運転を経て10月をめどに商業生産を開始する。原料EDC(二塩化エチレン)については、米ルイジアナ州ガイスマーで今年操業を開始した電解〜EDC事業合弁会社バルカン・クロールアルカリから主に調達する。
一方、東ソーは中核事業のビニル・チェーン拡大策の一環として、昨年7月に南陽で第2VCMプラントの増強を完了、南陽のVCM生産能力を25万トン増の81万トンに引きにげ、四日市と合わせて105万トン体制を確立した。なかでも南陽をアジアの国際的VCM生産拠点と位置づけ、同社が出資する大洋塩ビやスタトマー、フィリピンのPVC事業合弁会社へ優先的に供給しているほか、需要拡大が著しい中国向けを中心に外販も拡大している。
会社名 ・ | 場所 | 製品 | 生産能力 | 備考 |
タイ/プラスチック& |
タイ・マップタット |
VCM |
440,000 |
タスコ・ケミカル(旭硝子45%出資)25%、 |
PVC |
480,000 |
|||
華井化工有限公司 |
中国河北省滄州 |
VCM |
120,000 |
三井物産25%出資 EDC法VCM 99/4稼動 |
滄井化工有限公司 |
PVC |
150,000 |
||
スタンダード・トーヨー |
インドネシア |
PVC |
86,000 |
東ソー60%、三井物産40% (2000/9 日本側全額出資に) |
バルカン・クロルアルカリ |
米国ルイジアナ州 |
苛性ソーダ |
215,000 |
バルカンケミカルズ51%、三井物産49% |
EDC |
243,000 |
|||
ビニルクロライド |
マレーシア・ケルテ |
VCM |
400,000 |
ペトロナス60%、三井VCM30%、物産10% |
PVC |
150,000 |
*華井化工&滄井化工 統合→ Cangzhou Chemical Industry
トリケム (石油化学新聞日刊通信 1996/10/17)
☆ブラジルのCPCとサルジェマが一体化
プラジルでVCMとPVCを手がけているCPC(コンパニア・ペトロキミカ・カマサリ)は、9月1日に社名をトリケムに変更したのに続き、今年末には、同国唯一のEDCメーカーであり姉妹会社でもあるサルジェマと合併する。新会社の社名は同じくトリケムとなる。新会社の資本金や合併比率などは未定。これに伴いトリケムは、EDCからPVCに至るまでの一貫生産会社として再スタートする。今回の一体化は、旧CPCの株式の61%を持つとともにサルジェマの95%を保有しているオデプリヒトが塩ビ事業の展開の効率向上を目的に企画したもの。かねてから旧CPCの発行株式の19%を保有している三菱化学と、同14.3%を持つ日商岩井もこれに同意している。ただし、新会社に占める両社の出資比率は自動的に低下することになる。
→ Odebrecht and MarianiがCopene(エチレンメーカー)を買収
自社グループのTrikem(PVC)や Politeno(PE)等を統合し,Braskem社を設立へ
Trikem
S.A.
is a publicly-traded Brazilian company with 60,868,762,518 shares
on the Sao Paulo Stock Exchange (BOVESPA) that is controlled by
Odebrecht Quimica S.A. through its wholly-owned OPP Petroquimica
S.A. subsidiary.
Trikem
is the result of the merger of CPC - Companhia Petroquimica Camacari
with Salgema Industrias
Quimicas S.A. (including its wholly-owned Salgema Mineracao Ltda.
subsidiary) and with Companhia Quimica do Reconcavo -
CQR.
Odebrecht
Quimica acquired the control of these three companies in 1995
within the context of a privatization program conducted by the
Brazilian government. The first step for the formation of Trikem
was the merger of Salgema with CPC, which occurred in December
1996, with the subsequent change of the official name of the
company from CPC - Companhia Petroquimica Camacari to Trikem S.A.
In August 2000, CQR was merged into Trikem, thus consolidating
its corporate structure.
Trikem
is the leader in South America in the production and sales of PVC
and Caustic Soda. Its five manufacturing plants are located in
the states of Alagoas, Bahia and Sao Paulo, and they have been
certified under ISO 9001 and ISO 14001 standards, satisfying
international requirements for quality and environmental
protection.
The
continuous striving for technological improvement in products and
services allows Trikem to establish a policy of long-term
relationships with its customers, seeking to resolve their more
specific requirements. Within this context, Trikem operates two
pilot plants within its industrial facilities located in Bahia
and Alagoas for conducting research designed to optimize its
manufacturing processes. In Sao Paulo, it operates a Technical
Assistance Center that develops new PVC products and
applications.
2000年 12月 米国Vulcan Chlor-Alkali 社の Ethylene Dichloride製造設備の稼働開始
(98/6/22 三井物産発表)
米国バルカン社とEDC(二塩化エチレン)生産の合弁会社設立
三井物産は、米国バルカン マテリアルズ社(Vulcan Materials Company)の化学品部門であるバルカン ケミカルズ(Vulcan Chemicals)と苛性ソーダ、塩素、 EDC(ethylene dichloride=二塩化エチレン)の生産販売を目的とする合弁会社を設立しました。
出資比率は、バルカン ケミカルズ社51%、三井物産が49%です。
会社名はバルカン クロールアルカリ社(Vulcan Chloralkali LLC)で生産設備は米国ルイジアナ州ガイスマーのバルカン ケミカルズ社の工場敷地内に建設します。生産能力は苛性ソーダ年215,000MT、EDC年243,000MTでEDCは近隣で入手される塩酸を原料に製造されます。
総所要資金は約$200百万で、全額資本金で賄われます。生産開始は2000年の第一四半期が予定されています。 生産される苛性ソーダはバルカン ケミカルズ社が米国内市場で販売、EDCはアジアの市場で三井物産により販売されます。
苛性ソーダは紙パルプ、繊維、アルミナ、化学品産業の中和剤として消費され、EDCは塩化ビニールの原料として使用されています。
バルカン マテリアルズ社は建設資材及び化学品の生産販売を行い1997年の年商は16.78億ドル、化学品部門は年商6.27億ドルで生産品目は塩素、苛性ソーダ、塩酸、塩素系溶剤等電解関連製品及びソディウムクロライト 、水処理剤等です。
この合弁の設立に依りアジアの市場に苛性ソーダの販売に力を持つバルカン ケミカルズEDCを販売している三井物産と米国で社が組みアジアの塩化ビニール事業向けに競争力の有る原料を生産する事となりました。
Oxyvinyls homepage http://www.oxyvinyls.com/plants/infosheets/oxymarvcm.html
The OxyMar plant began operations in December 1990 as a joint venture between OxyChem and The Marubeni Corporation of Japan. An expansion was completed in June 1997, which increased the VCM production capacity to 2.1 billion pounds per year. The plant currently is a joint venture between Oxy Vinyls, LP and The Marubeni Corporation.
(日本経済新聞 1999/8/25)
丸紅、アメリカでの塩ビモノマー事業から撤退 (注 実際には依然として丸紅とのJV)
丸紅は、アメリカ・テキサス州の塩ビモノマー生産会社オキシマールに子会社を通じて50%の出資を行っているが、合弁会社のオキシデンタル・ケミカル社に持ち株を全株売却する方針。累積赤字があり、不採算事業としての見直し。(Japan-US Business Report No. 360, September 1999)
As part of its plan for restoring profitability to consolidated operations, MARUBENI CORP. is weighing the sale in FY 2000 of its half interest in OXYMAR. The world's largest supplier of vinyl chloride monomer with an annual capacity of 1.1 million tons, the Ingleside, Texas manufacturer is a 1990 joint venture with OCCIDENTAL CHEMICAL CORP. But Houston-based MAXROY CORP., the Marubeni subsidiary that is the actual investor in the company, continues to lose money because of a global glut of VCM. Current thinking at headquarters is to sell Maxroy's share of Oxymar to Occidental Chemical and to liquidate the subsidiary.
化学工業日報 1999/9/22
三井物産 マレーシアVCM合弁 出資比率引き上げ
マレーシアの塩ビ合弁事業で資本構成の再構築が行われた。年40万トン能力の塩ビモノマー(VCM)設備を建設中のビニル・クロライド・マレーシアでは、現地資本のランド・アンド・ジェネラル(L&G)が撤退し、三井物産が新たに単独出資するなどして出資比率を引き上げた。また、インダストリアル・レジンス・マレーシア(IRM)が進めていた同15万トン能力の塩ビ樹脂(PVC)新設計画は、VCM合弁が引き継ぐ。これにともなって、三井物産は東ソーとともにIRMから資本撤退した。
マレーシアのVCM計画は、国営の石油公社ペトロナスが進める石油化学事業の一環。従来の資本構成はペトロナス60%、現地で不動産品業などを手掛けるL&G20%、三井物産と三井化学が出資する三井VCM20%だった。
L&Gはアジア経済危機の影響もあって事業の見直しを図り、その結果として塩ビ事業からは実質的に手を引くことにした。L&Gの出資分が日本側に譲渡されたことにより三井VCMが30%に出資比率を上げ、三井物産が単独で10%を持つことになった。またIRMで行うはずだったPVC15万トン計画は、VCM合弁の川下事業として引き継がれた。
IRMは年3万トンのPVCとコンパウンド設備を持つ。新設計画がVCM合弁事業に移管されたことで、三井物産は東ソーとともに資本撤退。IRMはL&Gの全額出資となり、現有設備で事業を継続するとみられる。
VCM設備は来年3月の稼働を予定しているが、多少の遅れが予想されている。PVC設備は予定通り、来年夏の立ち上がりが見込まれている。
『この人にきく』 信越化学工業社長
金川千尋氏 塩ビ事業での世界戦略加速へ
『オーバーサプライ状態では収益確保はできない。まずは過剰な設備を廃棄して、需給環境を改善していくことだ。予備役など無意味で、今こそハード・ソフト両面での"改革"不可欠だ』と、金川さん。米国法人で信越化学全額出資のシンテックは今年度も最高益の更新が確実とされている。『米国のシンテック両工場、さらにはポルトガル・シレス、オランダのシンエツ・PVC工場はともにフル操業、フル販売を継続中だ。日本工場を除いて全て収益を確保している』(金川千尋社長)。代表的な汎用樹脂の塩化ビニル樹脂事業をべースに世界的なエクセレントカンパニーに成長した信越化学工業。経営努力を強調。2002年4月30日現在の世界化学企業時価総額ランキングはデュポン、ダウ、BASF、バイエルに次いで5位。また、世界ナンバーワン塩ビメーカーのシンテックは昨年の売上高1177億円、経常利益195億円、当期純利益125億円で群を抜いている。
ー | まず、わが国の塩ビ事業はなぜ収益確保ができない。 |
金川 ; | まさに世界的にみても魅力のない市場といえる。今のままでは事業存続も危ぶまれる危機的状態だ。いえることは需給バランスが悪い。つまり実力(内需)以上にキャパシティが大きい、やはり経済原則通り、物の値段は需給バランスが左右するので、まずは需給環境をよくすることだ。すでに、内需は150万tを割り込んでおり、今後も総体的にはシュリンク化していくと思う。ユーザーから評価されるためには現有能力250万t強に対して170−180万tぐらいあればよい。昭和56年ごろの未曾有不況時には産構法に基づいて25%の設備を廃棄した。これにより61年度から平成3年度までの6年間は収益を確保することができた。 |
ー | 再び平成4年度から赤字に転落している。 |
金川 | 昨年度まで11年連続の赤字で恐らく累計で1400億円以上に達している。今年度も今のままでは赤字だし、国家的損失だ。現在は中国を中心にした輸出に支えられている感じだが、やはり中国をはじめアジア各国における新増設計画も進み、自給化体制を確立し、逆に輸出に乗り出してくる。そういう意味では輸出依存型はどうしても不安定要素が大きい。限界利益論は無意味で、フルコストをカバーすることができない。今後日本の塩ビ業界が健全化していくためには内需中心に転換していくことが不可欠だ。そうなれば現有能力の250万tに対して約100万tは過剰ということになる。 |
ー | 信越化学も塩ビでは昨年度40億円の赤字とみられているが。 |
金川 | 赤字は事実だが、そんなに大きくはない。確かに、一昨年10月に値上げ(キロ20円)した時には久しぶりに黒字となったが、その後の値下げで再び水面下に転落した。いずれにせよ、収益構造にしていくには過剰設備を休・廃棄して需給環境をよくすることだ。さきにもいったように産構法後は一時的にしろ立ち直って収益が確保できた。 |
ー | ところで、米国のシンテックは今年も最高記録更新が。 |
金川 | 昨年秋口から今年1月までは予想以上に悪かった。9月のテロの影響もあるが、ちょうどルイジアナ州のアディス工場の2系列目(29万t)の稼働を控えていた時でもあって、操業入りを1−2年遅らせることも考えていた。最終的には私自身ゴーサインを出したわけだが、大正解だった。現在、シンテックはテキサス州フリーポートエ場に145万t、アデイス工場59万t、合計204万tのプラントをもっているが、フル操業、フル販売体制を続けている。ともかく、今年2月以降急速に回復しており、現在は荷繰りに苦慮している状態だ。まあ、米国は昨年までと”様変わり”し、塩ビ樹脂の市況も今年に入って8セント(ポンド)値上がりした。超コモディティのパイプグレードでみれば今年1月の19セントに対して、5月には27セン,トまで上昇。つまり2月以降、毎月2セント値上げし、さらに6月は4セントで交渉を進めている。まず、浸透すると思うし、実現する。リストプライス制により値上げ、値下げをくり返してきたが、これまで単月べースで4セントも値上げした例はない。いかに景気回復もあって米国の塩ビは絶好調か、という証明だ。 |
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ー | 今年3月には米国のボーデンケミカルのPVC設備を買収されたが。 |
金川 | もともと当社の技術でつくられたプラントで能力は27万t。シンテックのアディス工場からは2キロメートルぐらいしか離れていない隣接地にある。現在は手直し中で操業をストップしている。信越化学の製造技術と運営ノウハウを旧ボーデンのアデイス工場に導入していけば一段と競争力のあるプラントになるはずだ。今後じっくり時間をかけて操業を始める予定だが、シンテックの生産能力は204万tに27万tを加えて231万tとなった。鹿島工場55万t、ポルトガルのシレス20万t、オランダのシンエツ.PVC40万tを加えたシンテック・グループの塩ビ樹脂能力は346万tになる。 |
ー | 北米マーケットのシェアも29%にアップしたが。 |
金川 | シンテックを軸に日本市場を除いた全世界を対象に販売している。シンテックを本店、つまりヘッドクォーターとしてポルトガルとオランダは支店、一方の鹿島(日本)は出張所程度の貢献、役割しか果たしていない。世界戦略を推進していくにはアジアの拠点として不可欠だが、早急に収益体質づくりを行い、支店に昇格させる必要がある。まあ、今のままでは日本市場は全く魅力に欠けており、鹿島からはシンテックの肩代わりで中国市場を中心に輸出させている。 |
ー | シンテックは昨年末にアディスの2期30万tを完成した。 |
金川 | 第1期29万tを稼働していたが、1年半の間に約60万tの設備をつくり、いくらグローバリゼーション、全世界市場に販売していく、といっても大変だ、ということから慎重に検討していたことは事実だ。ともかくアメリカ経済も最低だった時期で、先行き明るい材料もみられなかっただけに決断(稼働入り)には勇気が必要だった。今年2月以降、まさかここまで様変わりするとは思わなかったし、現在は非常な荷繰り難に陥っている。 |
ー | ボーデンから買収した設備はいつから稼働する。 |
金川 | まだ決めていない。いくらタイトポジションといっても関係ユーザーさんへの供給責任は果たせるので、27万tについては十分に手直ししてゆっくり稼働していく方針だ。 |
ー | シンテックは次の設備投資はどうされる。 |
金川 | 需要があれば全世界に販売していく方針だし、必要とあれば当然、プラント建設も考えていきたい。ただし、中国での生産拠点づくりには全く興味はない。確かに、あれだけの大国だし、将来的にも需要は着実に期待できると思うが、当社としては「北米発」グローバリゼーションの基本方針に変わりはない。すでに中国には大小合わせて六十数社の塩ビメーカーがある。今なお、力ーバイド・アセチレン法で生産しているところもあって市況も混乱状態のようだ。そういう意味では中国輸出のあり方についても慎重に検討していく必要があるが、あと5〜7年ぐらいは輸入ポジションで、それ以降は自給化が進み、逆に輸出に転じる可能性もある。 |
ー | ところで、シンテックの大成功をべースに、信越化学は世界的なグローバル企業になったが。 |
金川 | 経営努力ということになろう。シンテックはスタート以来、一度も赤字を出したことはない。信越化学としても昨年は単独、連結ともに史上最高益を更新することができた。今年4月30日現在の世界化学企業時価総額ランキングはデュポン、ダウケミカル、BASF、バイエルに次いで5位となったが、さらに切磋琢磨の努力をやっていきたい。 |
ー | 最後にわが国石化もアライアンスによる大型化計画が。 |
金川 | 確かに国際競争力を強化していくにはスケールメリットの追求が不可欠になっている。ただし、日本の石化は基本的には国内産業として大いに知恵を働かせていけば生き残っていける。海外のメジャーと競争していくには相当ハンデもあろう。大型化してコストダウン、競争力強化の最大のポイントはいかに固定費を削減できるか、にかかっている。つまり、競争力強化のための大型化は固定費削減で知恵を絞ることだ。 |
化学工業日報 2003/3/10
トップインタビュー 信越化学 金川社長 常に新たな気持で桃戦
今期で8期連続して過去最高益を達成できる見通しとなっている信越化学工業。金川千尋社長は、「厳しい経済環境は今年も続く」と予想しながらも、「それだけに逆にやりがいもある」と連続増益の更新にさらに意欲をみせる。
★不況知らずの業績が続いています。
「客観情勢は確かに厳しく、そのうえ今年は去年よりも悪くなるとみている。しかし状況がどうあろうと困難に立ち向かっていく勇気が必要だ。景気の立ち直りに期待するつもりはない。どうしたら事態が打開できるのか、その道筋を示すのが経営者である私の役割だと思う。単なる景気循環による経済の落ち込みであれば、やり方次第で何とかできると思う。しかし構造的な不況となると、切り抜けるのは大変だ。それでも、今後も常に新しい気持ちで目標に向かって挑戦していきたい。」
★塩ビは内外とも調子が良いようですね。
「米国では、昨年から市況が上向き始め、秋には少し落ち込んだものの、ここにきてまた上昇局面にある。原料価格の動向が気になるが、米国子会社のシンテックでは、このところずっと好業績を上げて連結決算の売り上げと利益の引き上げに貢献している。またオランダの信越PVCも2000年の買収以来、毎年黒字となっている。
問題は国内の塩ビ事業だが、昨秋の値上げや設備削減の動きなどでいい方向には向かっている。しかし中国中心の輸出頼みの状態は問題だ。また価格の後決めの習慣は即刻やめるべきだ。塩ビはもともと良い樹脂なのだから、誤解に基づく忌避の動きに対して正しい理解を求め、国内でもっと需要を増やしていくべきだ。」
★半導体、通信関連はいかがですか。
「半導体ウエハーは、こ加からの投資は300ミリを中心にやっていく。すでに1月には、これまでの月産7.5万枚から10万枚体制へと供給能力を引き上げた。需給の山と谷の間隔がかつてより短くなってきていることもあり、市場動向をしっかり見極めながら、さらに積極的に増強していきたい。まず2003年度中に月産20万枚に伸ばし、その後も需要に合わせて30万枚まで増設する計画にしている。
一方、通信関連は、回復まであと1−2年はかかるだろう。このため、当社でやっている光ファイバーのプリフォーム用合成石英も厳しい市況となっている。通信分野が立ち直るまで、合成石英については液晶基板用や半導体用に一層力を入れていく考えだ。
★新規事業、M&Aについては。
「新規事業を生み出さなないことには企業の未来はない。しかし、これは大変な努力と時間、資金を必要とする。当社では事業化も合めて研究者任せにせず、私自身もできるだけ関与することにしている。またM&Aに関しても、情報があれば現場で判断せずに、私に報告するようにしている。ただM&Aは時間を節約するメリットはあるが、失敗すると連結業績を大きく傷つける可能性もあるので慎重に進めたい。」
『世界最大の塩ビメーカーに成長』信越化学工業社長 金川千尋氏
ー 米国での塩ビ事業の成功が国際的な優良企業に成長させた。
金川 74年にアメリカの小さな塩ビ工場を買収したのが、シンテックのルーツということになるが、ちょうど来年10月に30周年を迎える。確かに、これまでになるには曲折はあったが、常に前向きに、つまり守りを固めながら攻めの経営に徹してきた。例えば2000年春にはIT関連が絶頂期だったが、それこそ“ITバブル"がはじけて、今は良くない。シンテックの塩ビも同様で、いかに景気の悪いときにどう耐え抜けるか、ということだ。昨年上期の売上高701億円、経常利益120億円を達成したが、秋口から年末にかけて原油・ナフサ高となり、締めてみなければ何とも言えないが、まあ昨年も史上最高益を更新できたのではないか。
ー 米国を中心にした海外の塩ビ需要は好調のようだが。
金川 今年1月に180万戸べースだった米国の住宅着工件数が2月には160万戸までダウンしている。例えば、180万戸というのは大変に好調でハイレベルな状態だったのが、調整局面に入ったとみるべきか、4月ごろにならなければ判断できない。いずれにせよ、シンテックのPVC設備204万tはフル操業を継続中だ。ポルトガル工場 20万t、オランダ工場40万tもフル操業。日本の鹿島工場の55万tを含めた信越グループの塩ビ能力は346万t。
ー ボーデンケミカルズから買収した27万t設備の稼働については。
金川 まだいつ再開するか決めていない。再開させて市況に影響が出るようでは意味がない。
ー 世界一の塩ビメーカーに、しかも高収益をあげているが、次の展開については。
金川 石化産業もアジアの時代、中国進出については皆さんから良く聞かれるが、答えは一つで、いまのところ全く興味はない。仮にPVC設備をつくるとなれば、それこそ原料のエチレン、電解、VCMはどうするのか。これらの問題をクリアしていくには時間もかかる。そういう意味では当社としてはアメリカ、さらには鹿島からのPVCの輸出ビジネスに重点志向していく方針だ。
ー 海外の塩ビ事業では高収益を、日本は赤字ということだが。
金川 平成4年度以降、日本の塩ビ業界は赤字状態が続いており今年度も全体で100億円超は確実とみている。原因はいろいろあるものの、販売システムの思い切った改革・改善をやらなくては、水面上に浮上させることは難しい。すでに各メーカーともに自主的な“構改”さらには徹底した合理化を強力に推進してきたが、こうした“自助努力”が生かされていない。国際化対応ということで大いに努力したものの、成果が上がらないのは、やはり決算調整期の“決済”に問題があるからだ。今頃赤字決算を、しかも11年連続ということ自体ばかげたことだ。
ー わが国の塩ビ業界の「再生」には何が。
金川 過剰な設備を自主的に処理(休・廃棄)することだ。まあ、塩ビの内需150万t(昨年146万t)と、輸出60万tの半分30万、合計で170−80万tの能力まで削減できれば、それこそ赤字体質からの脱却、決別が可能になってくる。以前にも話したと思うがPS(ポリスチレン)業界を見習うべきだ。まさにPS業界の「再生」は思い切った設備の休・廃棄によるものだ。値上げも比較的順調に進んでいるようだ。11年連続の赤字、通算すれば1500億円もの損失になり、今こそ手を打たなければ大変な事態になってくる。
ー 信越化学さんも“構改”を検討されている。
金川 鹿島工場からのシンテックの肩代わり輸出などち行っているので、現有の55万t体制はいい状態といえる。汎用グレードを集中生産すれば55万t以上の生産が可能だが、現在は高く売れる、いわゆる高付加価値の特殊グレードの生産にも力を入れているので、せいぜい52−3万tの生産にとどまっている。いずれにせよ、原油・ナフサ高に対応して4月からキロ20円の値上げをお願いしているが、早急に決着し、新価格での取引を開始したい。
ー 米国、欧州の塩ビは好調のようだが。
金川 米国では原油・ナフサ高に加えて天然ガスが暴騰している。こうした原料高に対応した値上げ、つまり新しい価格体系づくりに取組んでいる。シンテックは昨年1〜6月にかけてポンド14セント値上げした。8〜9月はステイできたが、10〜11月は逆に2セント値下がりした。ところが、依然として需要は好調でフル操業を行ってもナフサの急騰によって収益面に影響を与えていることから今年1、2、3月にかけて2セントずつ、トータル6セント値上げをアナウンスし全て浸透させた。4月には5セントの引き上げを表明しているが、仮に原油・ナフサ価格が下がった場合には「TVA」(暫定値引き)も考えている。いずれにせよ、現在の値上げは原料高に対応したもので、何も不当な利益をあげるつもりはない。
ー 信越グループの業績は好調だが、今期も連結べースで史上最高益を。
金川 3月の状況をみてみなくては何もいえないが、目標としては経常利益1220億円を何とかクリアできるよう最大限努力しているところだ。
ー 日本の化学工業の「再生」については。
金川 今もいったように合理化、コストダウンヘの取り組みは活発に行われてきているが、その成果があまり生かされていない。いえることは売り方に大いに問題があるからだが、原料が値上がりすればその分は引き上げるべきだし、それが市場経済の原則だ。それこそ旧態依然の19世紀の売り方はいまや通用しないし、確実に時代は変わっている。幸いにも塩ビ樹脂の輸入は少ないし、国内市場への外圧のインパクトはほとんどみられない。世界一安い市場は海外メーカーから敬遠されている。
ー 最後にシンテックの設備投資計画について。
金川 売れる市場があれば大いに、ということになろうが、現段階では何も決めていない。今後も守りつつ"攻めの経営”を貫いていく方針だが、なんとか国内の塩ビ産業も収益体質にし、再生産を可能にすることだ。大いに知恵を働かしていきたいものだ。