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2009/11/12 イラク、第一次油田開放で進展

イラクは6月30日、第一次開放対象の国際入札を実施した。権益は与えず、生産量に応じ報酬を得るもの。

Rumaila油田については、BP 66% /CNPC33% 連合がExxonMobil 80.1%/Petronas 19.9%連合を破り、落札したが、他の油田、ガス田は条件が合わず。マンスーリャは応札なし。

BP/CNPCは投資コストを回収した上で原油1バレル3.99ドルの利潤を得ることを提案していたが、イラク石油省はこの利潤を2ドルに引き下げるよう求めた。さらに、イラクはルマイラ油田の一日の採掘量を110万バレルから280万バレルに引き上げることも求め、BP側は承諾した。

BP連合は11月3日、イラク政府のState Oil Marketing Organisation と技術サービス契約に調印した。
コンソーシアムはBP 38%、CNPC 37%、イラク政府の
State Oil Marketing Organisation 25%となった。

BP CNPC 150億ドルを投資する計画。

2009/4/7 イラクの油田開放、クルド人自治政府と契約の韓国企業を除外

他社が落札しなかったのには問題があった。

イラク側の条件は権益は与えず、生産量に応じ報酬を与えるというものだが、各社が4〜5ドルの報酬を求めたのに対し、イラク側は2ドルを主張した。
しかもイラクの税制では、全収入(石油コスト
+利潤)に課税するというもので、税引後では余り残らず、各社にとってメリットがなかった。

ーーー

今回、イラク政府は税制を改正し、利潤にのみ課税されるようになった。

112日、イラク石油省はイタリアのEni、米Occidental Petroleum、韓国ガス公社(KOGAS)の連合と、41億バレルの Zubair開発の仮契約に調印した。

7年内に現在の日量20万バレルを110万バレルにする。連合の利潤は当初の要求額バレル当たり4.80ドルに対し、2ドルに引き下げられた。

なお、第一次開放とは別枠でNasiriyah油田(Samawahの南東)の交渉が行われている。

将来、日量数十万バレルの生産が見込まれる有望油田で、日本連合(新日本石油/国際石油開発帝石/日揮)とEniが争ってきた。

Eniは今回調印したZubair開発に注力するため、Nasiriyah油田は放棄する意向で、日本側に権利が与えられるのは確実とみられている。

ところがロイターの報道によると、日本石油の代表が交渉のために11月初めにバグダッドに到着したが、空港から出て石油省に行くのを拒否しているとのこと。

Hussain al-Shahristani 石油相は10日、「多忙のためオフィスを離れて外で交渉する訳には行かない。多くの石油会社が石油省で交渉をしているのに、石油省に来ないというのは分からない。日本石油のやり方は不可解である」と述べた。

これが本当なら、本当に不可解である。

その後の報道では "due to traffic jams and the security situation" となっている。.

日本石油は11日、依然交渉中であるとし、コメントを拒否した。

ーーー

イラク石油省は11月5日、ExxonMobil (80%)/Shell(20%)にWest Qurna開発の仮契約に調印した。

契約では
250億ドルを投資し、運営に更に250億ドルをかける。
現在の日量27万バレルを7年内に225万バレルに引き上げる。利潤は1.90ドル。

米系石油会社主導によるイラク石油開発は、1972年の石油国有化以来初めて。

 

第一次開放対象は以下の通り。

  発見 埋蔵量
(億バレル)
現状
(千b/d)
 
北ルメイラ油田(Rumaila)
南ルメイラ油田
1953      92
    73
    470
    585
BP/CNPC
キルクーク油田(Kirkuk) 1927     65     360  
西クルナ油田(Qurna) 1973     74     300 ExxonMobil/Shell
ズベイル油田(Zubair) 1949     40     240 Eni/Occidental Petroleum/KOGAS
ミサン油田群(Missan)
(アブギラブ、ブズルガン、
ジャバルファウキ)
1969
1971
1974
    25     114 付記 CNOOC
バイハッサン油田(Bai Hassan) 1953     23      7.5  
アッカス ガス田(Akkas)     7tcf    
マンスーリヤ ガス田(Mansuriyah)     5tcf    

付記

20093月、Exxon Mobil/Royal Dutch Shell West Qurna Phase One は基本生産レベルを244bpd とすることで合意した。ボーナス支払い額は4億ドル。

Eni/Occidental Petroleum/KOGASZubair油田は生産レベルを183bpdとした。最終生産目標は120bpd

付記

中国のCNOOCが2010年5月にMissan oil field complexFakka, Buzurgan and Abu Ghirab )の権利を取得した。
当初の入札では
Sinopecと組み、利潤を21.4$とし、その後 18.9$まで下げたが、イラク側の水準を大幅に超えた。
今回、日量
45万バレル、利潤2.3$で合意した。 

CNOOCはこれとは別に、2009年3月からバグダッドから東南180kmのAl Ahdab油田の開発を開始している。
2008年11月にイラク政府と開発契約を締結した。契約期間は23年。
フセイン旧政権が1997年にCNPCと契約していたが、2003年の同政権の崩壊に伴い契約が取り消されていた。

 


2009/11/13  中間決算対比

各社の9月中間決算がほぼ出揃った。

営業損益で見ると、各社とも前年同期比で大幅減益で、2007年9月期と比べると、更に大幅な減益である。

特に総合石油化学の減益幅が大きい。JSRなど、新規事業でも大幅減益となっている企業も多い。

この中で、チッソの健闘(前年同期比プラス)が目立つ。液晶と液晶関連材料が好調としている。
協和発酵キリンは2008年4月にキリンファーマを逆取得した。

2009/10/28 注目企業の9月中間決算ー1 信越化学、JSR
2009/11/2 注目企業の9月中間決算-2 住友化学、三井化学
2009/11/5 注目企業の9月中間決算-3 三菱ケミカル
2009/11/6 注目企業の9月中間決算-4 東ソー、旭化成
2009/11/11 注目企業の9月中間決算-5 帝人、東レ、三菱レイヨン

6月中間決算会社の赤字が大きいのは期間の問題。
全般的に本年1-3月が最悪、4-6月、7-9月と大きく改善しており、9月中間決算会社と比べ、7-9月の代わりに1-3月が入るのが響く。

6月中間決算の旭硝子の営業損益の前期比は、
  ガラス   -478億円   
  電子・ディスプレイ   -409億円
  化学   -127億円など、
    -1,021億円
       
昭和電工は、
  電子・情報   -232億円
  石油化学   - 40億円など、
    -475億円
       
いずれも電子・情報部門の赤字が大きい。

7-9月期では旭硝子の営業損益は318億円の益、昭和電工も67億円の益となっている。
旭硝子では電子・ディスプレイ部門が391億円の益となっている。

ーーー

既報の通り、中国向け輸出が好調で、エチレンはほぼフル操業を続けている。

製品別でもPE、塩ビはよくないが、他の製品の操業度はかなり高い。

それにもかかわらず、上期の営業損益は極端に落ちこんでいる。

中国向けの11月のPVC輸出価格は850ドル/トンとなった。米国の塩ビメーカーが中国や中東に輸出攻勢をかけている。
日経の商品相場欄では国内価格は135.5円/kgとなっており、内外価格差は大きく、輸出は以前のように採算の取れるものではなくなっている。

その中国の需要は「家電下郷」、「汽車下郷」などの景気刺激策に負うところが大きく、いつまでも続かない。

PetroRabighが11月8日に竣工式を挙行したが、今後も中東・中国の新設備が次々に完成する。
更に、ナフサ価格の更なる上昇などマイナス要因が多い。

石油化学については、今後、損益が大きく改善する可能性は見当たらない。

 


2009/11/13 豪州向け苛性ソーダ輸出価格、大幅値下がり

東ソーが豪州アルミナ各社と進めていた7-12月期の苛性ソーダ価格は、前期比210ドル安の180ドル/トン(本船渡し)となった。

2008年7-12月期に史上最高の495ドルとなった。

    2008/7/8 豪州向け苛性ソーダ輸出価格、最高値に

しかし、2009年1-6月分は交渉が難航した。
日本側は2008年11月に670ドルを提示、豪州
勢は反発して購入希望価格も提示しなかった。
その後、アジアスポット市場が急落、中東や台湾メーカーが390ドルで決着したため、日本もこれで妥結した。

2009年4月のPlatts の報道では、米国でパルプ、製紙、アルミナでのソーダ需要減により価格が急降下、中国品が200ドル/トンまで下がった。

今回の交渉では、5月半ばに300ドルの売値を示したが、豪州勢の提案は200ドル未満で、交渉が難航したという。
なお、今回から、各社が個別に交渉する。

付記 2010年上期の価格は200ドルとなった。当初の日本側提示は250ドル、豪州側は150ドル。

    2010年下期の価格は240ドルとなった。当初、東ソーは270ドルを提示した。

    2011年上期の価格は295ドル。


2009/11/14 三菱化学、マレーシアの撤退工場に廃棄物処理施設を設置

三菱ケミカルHDは2009年9月中間決算で、マレーシアに廃棄物処理施設を設置する工事費用の負担に備え、関係会社整理損として125億円を計上した。

当時の三菱化成が1973年にマレーシア最大の選鉱業者で希土類事業に進出を企てていたBEH Minerals Sdn Bhd との合弁会社 Malaysian Rare Earth Corporation を設立した。

三菱化成は1979年にBEH Minerals などとともに同社35%出資でAsian Rare Earth (ARE)を設立した。
1982年にイットリウムなどレア・アースをスズの鉱石と一緒に出るモナザイト鉱などから抽出する事業を首都クアラルンプールの北側にある町 Ipoh 郊外にあるBukit Merah Industrial Estate で開始した。

能力は年産 4200 トンの軽希土類、550トンの重希土類、4400トンのリン酸三カルシウムで、希土類は全て日本に輸出され、日本で分離精製された。

しかし、工場はトリウムを 含む残土の保管施設を持たず工場の裏にあった池や地面に野積み状態にしていた。

このトリウムはウランと同じように放射性物質で、日本では 1968年の原子炉等規制法の改正により、その投棄や保管には厳格な法規制が課せられた。1971年には日本での操業はなくなった。

工場の目の前には人口1万人が住むBukit Merah 村があった。住民たちの間に健康被害が現れ、住民はAREの操業停止を求めて抗議活動を展開した。

1985年にはイポー高等裁判所に提訴し、高裁はすぐさま仮処分として操業停止命令を出したが、その後AREは廃棄物の仮備蓄場を建設し、マ レーシア原子力許可委員会から操業の再開を認められた。

しかし保管は完全でなく反対運動は続いた。

1992年にはイポー高裁で操業中止の判決が出されたが、1993年にクアラルンプールの最高裁で操業を合法として認める判決が出された。

しかし、三菱化成は1994年1月、マレーシアからの撤退を決め、問題の工場も閉鎖された。

ーーー

工場撤去工事はマレーシア政府認可に基づき2005年末までに完了し損失処理が終了している。

三菱化学は、2007年7月にマレーシア政府から廃棄物処理施設設置工事の認可を得た後、2009年3月に複数の候補との間で工事契約締結に向け詳細検討を開始、8月に契約締結を決定した。

 


2009/11/16 三井化学、増資

2009年11月13日の取締役会で増資の決議を行ったと発表した。株数で29%増、総額643億円もの多額の増資となる。

同社が公募増資を実施するのは、1997年10月に三井石油化学と三井東圧化学が合併し、三井化学が発足して以来、初めて。

同社は11月2日に経営概況説明を行い、主要戦略見直しを説明した。
http://jp.mitsuichem.com/ir/pdf/event_rev3_091102.pdf

主要戦略見直しで、「新たな成長戦略」と「事業基盤の強化」を打ち出したが、そのための設備投資、投融資の資金とする。

1.新たな成長戦略
  他社との提携やM&Aにより、事業拡大と新事業創出のスピードアップを図りながら、
  次の3つの基本戦略を推進する。
   @ 競争優位事業のグローバルな拡大
   A 持続可能な発展のための高付加価値事業の拡大
   B 地球環境との調和を担う新製品・新事業の創出

2.事業基盤の強化
  上記の3つの基本戦略を進めるために、次の方策により事業基盤の強化にも取り組む。
   @ 筋肉質な体質への転換 (更なるコストダウンの推進)
   A 国内設備の統廃合推進 (最新鋭の大型設備への統合による競争力の強化)
   B マーケティング力強化
      (営業部門やアジア各拠点への新たなマーケット要員配置による市場開発加速)

 

今回の公募増資及び第三者割当増資により、発行済株式総数は以下の通りとなる。

現在の発行済株式総数     792,020,076株
     
公募増資による増加株式数    206,000,000株
第三者割当増資による増加株式数   24,000,000株
     
増資後の発行済株式総数   1,022,020,076株
     
増資による手取概算額合計 上限   64,292百万円

付記
公募増資206百万株のうち、46百万株が、欧州を中心とする海外市場(米国及びカナダを除く)の海外投資家に対して販売される。

発行価格は11月24日から27日までの間のいずれかの日に決める。
(上記の手取り概算は279.5円)

付記 2009/11/25 三井化学の増資 続報 (発行価格決定)

手取額概算643億円のうち、60億円は、フェノールプラントを建設する上海中石化三井化工と、中国華南地区に設立する佛山三井化学ポリウレタンへの投融資資金とする。
    2009/11/4  
三井化学、シノペックとの合弁事業の基本合意

残りは同社の一般の投資資金に充てる。

セグメント 設備の内容 投資予定額 うち
既支払額
機能材料 α−オレフィンコポリマー製造設備増強
液状ポリオレフィンオリゴマー製造設備増強
超高分子量ポリエチレン製造設備増強
ウレタンフォーム原料製造設備増強
太陽電池封止シート製造設備増強
その他設備の合理化・維持更新等
480億円 93億円
先端化学品 リチウムイオン電池用電解液製造設備増強
その他設備の合理化・維持更新等
80億円 13億円
基礎化学品 1−ヘキセン製造設備新設
メタロセン直鎖状低密度ポリエチレン製造設備増強
ポリプロピレンコンパウンド製造設備増強
その他設備の合理化・維持更新等
410億円 80億円
その他 各種設備の合理化・維持更新等 380億円 73億円
  1,350億円 259億円

ーーー

増資のタイミングとしては最悪の時期ではないであろうか。

同社は2009年3月期に952億円の赤字を計上、2010年3月期も390億円の赤字を予想している。
中間配当も無配とした。

                                 単位:百万円(配当:円)
  売上高 営業損益  経常損益 当期損益  配当
中間 期末
08/9中間  905,615   9,989  13,343   7,640   6.0  
09/9中間 549,869 -19,010 -22,131 -31,363 0.0  
増減 -355,746 -28,999 -35,474 -39,003 -6.0  
             
09/3 1,487,615   -45,493 -50,768 -95,237   6.0   3.0
10/3 1,210,000 -15,000 -23,000 -39,000   0.0 未定

同社の株価は(住友化学や三菱ケミカルHDも同様だが)、現在非常に低い水準にある。(発表前日の終値は288円)

 

付記

13日の発表後の翌取引日の11月16日の終値は243円と13.2%の大幅値下げとなった。
(10年来最安値は3月3日の一時201円、終値206円)

時価総額は1,924億円となり、7ヶ月ぶりに2,000億円を下回った。
(同日の株価で住友化学の時価総額は5,941億円、三菱ケミカルHDは4,714億円)


2009/11/17 Braskem、メキシコでProject Ethylene XXI を実施

Braskem 119日、メキシコのProject Ethylene XXI のための原料エタンの入札(Pemex Gasによる)で、メキシコの化学会社IDESAと組み、落札したと発表した。

メキシコ政府は2004年に同国の石油化学の拡大のため、野心的な "Phoenix project" を打ち出した。
国営石油会社 Pemex がパートナーとしてカナダの Nova Chemicals とメキシコの私企業2社 Idelpro Grupo Idesa を選んだが、Pemex が天然ガス等の原料の価格を米国の市場価格ベースにするよう主張したため、話がまとまらなかった。

2008年2月、Felipe Calderón 大統領は、新しく年産100万トンのエチレンコンプレックスを建設して同国の石油化学を復活させるための入札を発表した。
今回の計画には Pemex
自体は参加せず、長期契約での原料のエタン、天然ガスの購入の入札を行なうこととした。

2008/2/23 メキシコ政府、第二のPhoenix project 開始

Project Ethylene XXI Veracruz州のCoatzacoalcos Petrochemical Complex2015年に操業開始を予定している。
メキシコは現在、年間100万トン以上のPEを輸入しており、これを自製しようという政府の方針に基づく。

Braskemが主導でIDESAが参加するJVが運営に当たる。
・競争力ある価格で原料エタンを
Pemex Gasから20年間の契約で購入する。
・エタンを原料に年産
100万トンのエチレンクラッカーを建設する。
3系列合計年産100万トンのPEプラントを建設する。

付記

Braskem Idesa20103月、Pemex Gas y Petroquímica Básica との間で25億ドルの石化コンプレックス建設の契約を締結した。クラッカーだけで10億ドルとされる。

JVの出資比率は Braskem65%Idesa35%.

ーーー

BRASKEM IDESAは2012年11月、建設を開始した。2015年央に完成する予定。

エチレンの一部は、PEMEX Petroquimicaの既存のVCMプラントに供給される。VCMプラントは同じCoatzacoalcosにあり、3年内にデボトルネックされる。

投資額は5年間で25億ドルと想定されており、70%を借入金、30%を自己資本で賄う計画で、Braskem201012月までに最終的な投資計画を確定する。

Project Ethylene XXIBraskemの米大陸におけるレジンのリーダーになるという戦略を補完するものとなる。

ーーー

当初、メキシコの化学会社3社、MexichemIDESAAlpekが参加を表明した。3社は昨年、コンソーシアムを結成した。
JVを設立し、有利な価格でエタンが得られれば、エチレンとPEPPのコンプレックスを建設することとした。

Mexichemはエチレン自製により、PVCチェーンのコストダウンを狙った。
IDESA PEに関心を持つ。
AlpekAlfaグループの石油化学部門)PPに関心を持つ。

Alpek LyondellBasell PPJV Indelpro に参加している。ほかにEPSPTAPETを生産している。

しかし3社のどれもエチレンの生産をしておらず、ポリオレフィンでもAlpekPPJV Indelpro に参加しているだけである。

Braskemの参加はコンプレックスの技術面、運営面で大きな意味を持つが、反面、Braskemが中心となり、3社のJVにおける位置付けが弱まる。
また、
BraskemPEに関心があり、PP計画は消えた。

今回 IDESAのみがパートナーとなったのは、この理由で他の2社が撤退したためと思われる。

ーーー

Grupo IDESAPetrochemicalConstruction SystemsDistribution 3事業を行っている。

Petrochemical1956年にメキシコ市近辺での無水フタル酸の生産で始まった。

現在の扱い製品は以下の通り。
  エチレングリコール、プロピレングリコール、エタノールアミン、ポリスチレン(
EPSGPPSHIPS
  可塑剤
DOP、無水フタル酸、無水マレイン酸


2009/11/17 地球温暖化懐疑論批判

文部科学省科学技術振興調整費で行われている「戦略的研究拠点育成」で、東京大学が環境関係の大プロジェクトIR3Sを実施しているが、このプロジェクトの叢書No.1として、「地球温暖化懐疑論批判」という冊子が発行された。

内容: http://www.ir3s.u-tokyo.ac.jp/pages/236/all.pdf

「人為起源の二酸化炭素排出を主な原因として地球規模で気候が温暖化するという、いわゆる人為的地球温暖化説の信憑性や地球温暖化による被害を緩和するための対策の重要性に対し、懐疑的あるいは否定的な見解をとる議論が日本国内でも存在している。
社会からの信頼にその活動基盤を置く科学者コ ミュニティは、こうした現状を座視すべきではないと考える。
したがって、本稿ではこれらの議論から主な論点を拾い上げ、一方的な、あるいは間違った認識に 基づくものに対して具体的な反論を行う。
(本文「our mission」より)

執筆者(批判側)と、取り上げられた否定的見解(批判される側)は以下の通り。(敬称 略)

批判   批判される側
明日香 壽川 東北大学
吉村 純   気象研究所
増田 耕一   海洋研究開発機構
川宮 未知生   海洋研究開発機構
江守 正多   国立環境研究所 
野沢 徹   国立環境研究所
高橋 潔   国立環境研究所
伊勢 武史   海洋研究開発機構
川村 健二   国立極地研究所
山本 政一郎   東京大学

      

  槌田 敦
薬師院 仁志
渡辺 正
伊藤 公紀
近藤 邦明
池田 清彦
矢沢 潔
ロンボルグ
ダーキン(映像監督)
武田 邦彦
伊藤・渡辺
山口 光恒
丸山 茂徳
武田・丸山
養老 猛司
赤祖父 俊一

安井至氏の「市民のための環境学ガイド」がこれを取り上げ、内容を紹介している。
  
http://www.yasuienv.net/CriticalSkeptic.htm

その中で同氏は、「ざっと読んだ感想としては、これで科学的な論破はできているように思う」とし、「いずれにしても、この冊子が懐疑論者に対して、決定的な影響を与えるだろう。これはほぼ確実だ。果たしてどんな結末になるか、しばらくは見守りたい」としている。

これに対してNPO法人「もったいない学会」会長の石井吉徳・東京大学名誉教授は、「あまりに幼稚な内容の冊子、東大サステナの知性を疑いました」と述べている。

 

付記

著書「CO2温暖化説は間違っている」に対する批判で名誉を傷つけられたとして、槌田敦元名城大教授が東大などを相手取り損害賠償を求めて東京地裁に提訴した。

「私は地球温暖化は進んでいると認めている。しかし原因はCO2が一番じゃない。別の論を唱える科学者に何の事前連絡もなく、一方的に批判本を東大が出すのは異論者の社会的評価をおとしめる政治的なものだ」 としている。

出版に携わった一人の教授は「温暖化の主因がCO2であることは世界的な研究で確定している。気候変動の危険が迫る中、誤った議論を正したまでで個人批判ではない。全面的に争う」としている。


2009/11/18 欧州委員会、熱安定剤カルテルで制裁金

欧州委員会は11月11日、塩ビ用熱安定剤のカルテルでAkzo、Ciba等に合計192,126千ユーロの制裁金を科した。
(委員会発表では
173,864千ユーロとなっているが、各社の金額を合計すると上の通りとなる)

各社は、スズ安定剤については1987年から2000年の間に、エポキシ化大豆ESBO/esters)については1991年から2000年の間に、価格協定、需要家割り当て、市場情報交換などを行った。

調査はChemtura からの情報に基づき、2003年2月に始められた。

2003年2月には、欧州委員会の要請に基づき、米国司法省、カナダ競争局、日本の公正取引委員会が塩ビ樹脂用モディファイヤーのMBSの販売を巡る国際カルテルに関する同時調査に着手している。

Chemtura はこの調査の過程で本件カルテルについて通報したのではないかと思われる。

本年3月に各社に対して異議告知書を送付し、法的措置を開始した。

「異議告知書」とは、欧州独占禁止法違反の疑いに関する欧州委員会の暫定的な見解(未確定)を示し、当事者の意見を求めるもの。「異議告知書」は調査途中の文書であり、欧州委員会の最終決定ではない。

制裁金は以下の通り。

  tin stabiliser ESBO/ester 合計
Fine (Euro)
  加減率 Fine (Euro)  加減率 Fine (Euro)
Akzo (オランダ)    21 800 000    18 800 000  40 600 000
Elementis (英/)    16 834 000    15 741 000  32 575 000
Arkema France (フランス) +90% -30%  10 046 400 +90% -50%  18 600 400  28 646 800
Baerlocher (ドイツ)  -20%   1 000 000       1 000 000
Chemson (オーストリア)         3 801 600   3 801 600
Chemtura()  -100%       0 -100%       0        0
Ciba (スイス) -15%  61 320 000 -25%   7 104 000  68 424 000
Faci (イタリア)         5 940 000   5 940 000
Reagens(イタリア)    10 791 000      10 791 000
AC Treuhand (スイス)      174 000      174 000    348 000
合計   121 965 400    70 161 000  192 126 400

Chemtura はカルテルの存在を通知したため、制裁金を免除された。
他方、
Arkemaは以前にも同様のカルテルに参加していたため90%増しとなった。

ArkemaBaerlocherCibaは調査への協力で減額された。

AC Treuhand はスイスのコンサルタントで、カルテルのアレンジをしたため、制裁金を科せられた。

マリーンホースカルテルでも、コンサルタントが同様の理由で米国で30ヶ月の禁固刑、10万ドルの罰金を科せられている。

Cibaを買収したBASFでは、Ciba1998年に添加剤事業を売却(Witcoのエポキシ事業と交換)しており関係がないという理由で、本件を欧州第一審裁判所へ提訴するとしている。

Witco 1999年にCrompton & Knowles と合併し、Crompton となった。
2005年にCrompton Great Lakes Chemical が合併し、現在のChemtura となった。

Chemtura は制裁金を免除されが、カルテル当時はWitcoである。

AkzoNobel も2001年に添加剤事業部 Akcros Chemicals PVC を英国の投資会社 GIL Investmentsに売却している。

 


2009/11/19 「化学ビジョン研究会」 発足

経済産業省は11月12日、化学産業について、その将来の方向性と官民の今後の取り組みについて検討するため、「化学ビジョン研究会」を発足すると発表した。

1.目的
我が国の化学産業は、時代とともに発展し、最近では、電子材料や、自動車に部材を提供し、我が国製造業の競争力の源泉となっている。
他方、昨年来の世界的な不況や地球環境問題への対応の必要性、中東や中国での新鋭プラントの増強等、化学産業をめぐる環境には大きな変化が生じている。
こうした中で、次世代に向けた新たな化学産業の方向性について問題意識を共有化し、その対応のあり方について検討を行う。

2.主要議題
@ 化学産業の現状と課題
A 新たな化学産業の方向性
 (グローバリゼーション、地球温暖化問題、ビジネスモデル、研究開発、人材育成)
B 化学産業の発展のための取組

3.検討スケジュール
 第1回(11月13日): 現状と課題を議論
 第2回(2月):作業ワーキンググループの検討経過を踏まえた中間段階の議論
 第3回(3月頃):研究会報告取りまとめ

メンバーは東京大学大学院の橋本和仁教授を座長に、産学代表、有識者ら16人で構成する。(順不同、敬称略)

◇座長   橋本和仁   東京大学大学院 工学系研究科教授
         
◇委員  : 石川城太   一橋大学大学院 経済学研究科教授
    水野哲孝   東京大学大学院 工学系研究科教授
    橘川武郎   一橋大学大学院 商学研究科教授
         
    小林喜光   三菱ケミカルホールディングス 代表取締役社長
    榊原定征   東レ 代表取締役社長
    菅原公一   カネカ 代表取締役社長
    高橋恭平   昭和電工 代表取締役社長
    田中稔一   三井化学 代表取締役社長
    土屋 隆   東ソー 取締役会長
    蛭田史郎   旭化成 代表取締役社長
    廣瀬 廣   住友化学 代表取締役社長
    古河直純   日本ゼオン 代表取締役社長
    吉田淑則   JSR 代表取締役会長
         
    小柳正治   JEC(日本化学エネルギー産業労働組合)連合会 会長
         
    金井孝男   シティグループ証券 調査部マネージングダイレクター
    西村修一   野村證券 企業調査三部長
         

第一回会合は11月13日に開かれ、メンバーのほか、METIの松下忠洋経済産業副大臣、近藤洋介政務官、平工奉文製造産業局長らが出席した。
 
松下副大臣は以下の通り挨拶した。

鳩山総理から直嶋経済産業大臣には
(1)アジアの成長を取り入れた経済成長戦略の構築
(2)中小企業対策の強化
(3)安定した資源の確保
(4)チャレンジ25、つまり25%カットを目指した地球温暖化対策への取組み、
の4つをしっかりやるよう指示されている。
どれも重要なテーマだが、このビジョン研究会の議題ともよく合致している。
化学産業の将来のためにもよく議論し、立派な結果を出してほしい。

同日、具体的検討を開始するに当たり、次の2つのワーキング・グループを立ち上げた。

 ・研究会ワーキング・グループ   (座長、水野哲孝・東京大学大学院工学系研究科教授)
 ・石油化学サブ・ワーキング・グループ   (座長、橘川武郎・一橋大学大学院商学研究科教授)

ーーー

このブログで何度も取り上げているように、日本の石油化学の問題点は、小規模多数のエチレンコンプレックスの存在である。
産構法以降で日本の石油化学が儲かったのは、1985年〜1990年頃のバブル時と、2003年頃からの中国バブルの時代だけで、今後は期待できない。

中東や中国の大規模プラントの新設で、今後は輸出に依存することは難しい。

このため、国内需要に合わせて、エチレンコンプレックスを統合・削減することが必要である。

石油化学事業を今のままにして、化学産業の将来のビジョンはあり得ない。

この研究会が大胆な結論を出すことを期待したい。
(但し、産構法の場合のように、政府主導のカルテルで構造改善することは出来ず、各社で独自に対応するしかない。)

 


2009/11/19 三菱ケミカルHDが三菱レイヨンを買収

三菱ケミカルHDと三菱レイヨンは11月19日、三菱ケミカルHDに三菱レイヨンを統合することに合意し、基本合意書を締結したと発表した。

三菱ケミカルHDが三菱レイヨンの発行済株式のすべてを取得し、三菱レイヨンを完全子会社とする。

三菱ケミカルHDは、国内外の関係法令に基づく必要な手続き及び対応が完了することを条件に、2010年2月上旬に、三菱レイヨンの発行済株式のすべてを対象とする株式公開買付けを開始し、3月末までに決済を完了する予定。
買付価格は、三菱レイヨンの普通株式1株当り380円を予定。(11月18日終値 271

(買収総額は最大で2174億円となる)

公開買付けは三菱レイヨンの議決権の過半数を保有することとなる株式数を下限として設定。
(応募株式が当該数に達しない場合には、応募株式の全部の買付けを行わない予定)

三菱レイヨンの発行済株式のすべてを取得できなかった場合、取得できなかった株式については、三菱レイヨンとの間で三菱ケミカルHDの株式を対価とする株式交換を行い、三菱レイヨンを完全子会社とする。

三菱レイヨンの上場は廃止。

ーーー

付記 

三菱ケミカルホールディングスは2010年2月16日、TOBを発表した。

公開買付価格は1株当たり380円。
 2009年11月18日の終値に対し、40.22%のプレミアム

   ーーー

三菱ケミカルホールディングスは公開買付けを2010年3月19日で終了したと発表した。

3月30日付で、発行済み株式総数の74.57%(議決権ベースで78.19%)を取得する。
買付けに要する資金は170,025百万円。

残り株式については、三菱レイヨンの株式総会の決議を経て10月1日をめどに株式交換を実施し、100%子会社とする方針。

   ーーー

両社は4月28日、三菱ケミカルホールディングスを完全親会社とし、三菱レイヨンを完全子会社とする株式交換を行う旨の株式交換契約を締結した。
三菱レイヨン 1株に対し、三菱ケミカル 0.8株を割り当てる。

株式交換の効力発生日(2010年10月1日)に先立つ9月28日に三菱レイヨンの株式は上場廃止(最終売買日は9月27日)となる。

ーーー

8月10日の日本経済新聞はトップ記事で三菱ケミカルホールディングスが三菱レイヨンを買収する方針を固め、TOBにより完全子会社化する方向で調整していると伝えた。

三菱ケミカルホールディングスの小林善光社長は8月21日の記者懇談会で、三菱レイヨン買収で同社と協議を進めていることを正式に認めた。

両社の歴史、三菱レイヨンの概要は以下を参照。

2009/8/10 三菱ケミカルホールディングスが三菱レイヨンを買収?

ーーー

両社は本経営統合の目的を、両社の経営資源を一体化し、企業規模の拡大と強固な事業基盤の確立を図るとともに事業競争力と開発力を強化し、今後一層の激化が予想されるグローバルな競争に勝ち抜く企業グループとなることとしている。

新体制
三菱ケミカルHD 三菱化学 化学品                         
三菱レイヨン MMAを基軸とした化成品・樹脂事業
アクリル繊維・アクリロニトリル及び誘導品事業
炭素繊維・複合材料事業
アセテート・機能膜事業
三菱樹脂 機能商品
田辺三菱製薬 ヘルスケア


 
経営統合で期待される効果は以下の通り。

 三菱ケミカルHD:
  企業規模の拡大に加えて、 
  三菱レイヨンのMMA事業という新たな中核事業の獲得
  今後急速な需要拡大が期待される
炭素繊維・複合材料事業及び水処理事業などの成長事業の獲

  高付加価値事業へのシフト加速
  スペシャリティーケミカル事業分野におけるシナジー
  物流、購買調達、事業拠点及び類似事業を行う関係会社群の統合等によるコストシナジー

 三菱レイヨン:
  MMA系事業、炭素繊維・複合材料事業及び水処理事業の育成と拡大などについて、
  三菱ケミカルHDの強固な事業基盤や優良な経営資源をフル活用することが可能
  (
Lucite買収資金は16億米ドルで、同社にとっては重荷である)

  グループ内のシナジー効果によって「世界市場でトップの事業群を構築する」という基本目標の実現を加速
  人材面を含めた様々な経営資源の拡充・強化

三菱ケミカルHDの小林社長は、「三菱レイヨンの参画により、三菱ケミカルグループの連結売上高は3兆5000億円、世界の化学会社の中ではデュポンを抜き、SABICに次いで第6位となる。レイヨンのMMA事業や炭素繊維・複合材、水処理事業、スペシャリティケミカル事業など、次世代コア事業を一体的に運営することによりコストで30億円、事業面で70億円、計100億円のシナジーが実現できる」と強調した。

世界の化学メーカーの売上高(三菱ケミ資料)

1 BASF  7.8兆円
2 Dow Chemical  6.0
3 LyondellBasell  4.9
4 Bayer  4.1
5 SABIC  3.9
6 三菱ケミカル+三菱レイヨン  3.5
7 DuPont  2.7
8 Evonik Industries(Degussa)  2.0
9 Akzo Nobel  1.9
10 住友化学  1.7
11 Air Liquid  1.6

 

付記

発表後の19日の三菱レイヨンの終値は80円アップの351円に、三菱ケミカルHDは16円安の294円(一時287円)になった。


2009/11/20 石化協が緊急決議 「ナフサ等原料非課税の原則を守れ」

石油化学工業協会は11月19日、政府税制調査会で租税特別措置の見直し等の一環として、ナフサ等石油化学原料の免税に手を加えようとする動きがあることに対し、重大な懸念を表明、非課税の原則が貫かれるよう強く要求するとする緊急決議を行った。

内容は以下の通り。

1. 工業原料の非課税原則は世界の常識
    世界を見渡しても原料用ナフサ等に課税している国はない。
   
2. 世界に類のない石化原料課税は産業存立基盤を破壊
  石油化学工業は下流部門を含めると出荷額30兆円、雇用者73万人、中小企業2万社を擁する重要産業。
中東産油国の石化増強などで厳しい競争にさらされているこの産業の存立基盤をさらに脅かす。
   
3. ナフサ等の課税は国民生活にも大きな影響
  各種容器、食品包装、断熱材などから電気製品や自動車の部品に至るまで材料として広汎に使用され、課税に伴う価格上昇は国民生活に大きな影響を与えるおそれがある。
   
4. 民主党の政策一貫性を期待
  昨年租税特別措置法が期限切れを迎えた時、野党であった民主党は租特法の延長には反対しつつも国民生活に多大な影響のある7項目(ナフサ等の石油石炭税免税を含む)の免税措置を延長する法案を参議院に提出した。
民主党の主張の一貫性を期待。
   

本来、本則で非課税とすべき工業原料用ナフサを便宜的に租税特別措置という形で免税しているが、他の特例的措置と同列に論ずること自体がおかしい。

原料ナフサの課税は世界の常識に反し、産業、雇用、地域経済の実態を理解しないばかりか、国民生活にも配慮せず、論理的にも一貫しない行為であり、全く受け入れることが出来ない。

付記

政府税制調査会(会長・藤井財務相)は11月20日、租税特別措置の存廃をめぐって本格的な議論をスタートさせた。

会合では、増子経産副大臣が、ナフサの免税措置について「製造業の基盤で、雇用確保にもつながっている。課税すれば国際競争力が著しく低下する」と主張。特例ではなく「本則化すべきだ」と、恒久化を要求した。
これに対し、査定側の古本財務政務官は免税措置の導入時と比べて円高が進み、原油の輸入価格が低下していることなどを挙げ、「ナフサをまったく議論もしない『聖域』でいいのか」などと反論した。

日本経団連の御手洗会長は11月24日の記者会見で、各種の租税特別措置の見直しに関し、「立法時の趣旨と違ったものや機能していないものはやめればいい」と理解を示す一方、技術革新を促す研究開発優遇税制や石油化学製品の基礎原料であるナフサへの免税措置については、「本則化し、恒久化すべきだ」との考えを示した。

ーーー

ナフサ等の課税の概要

  石油石炭税 揮発油税
税率 原油・石油製品 2,040 円/KL
[本則の税率]
   24,300 円/KL (国税)
  +4,400 円/KL (地方税)
     
[暫定税率]
  24,300 円/KL (国税)
  + 800 円/KL (地方税)
     
53,800 円/KL  
     
免税の
定め方
租税特別措置法で2年毎に延長
(来年3月末で期限切れ)
租税特別措置法で期限を定めず
に免税
免税
相当額
  約1,000億円   約3兆円

なお、ナフサ(輸入)価格は11月現在 約4万5000 円/KL

参考 2008/1/22 ガソリン税問題と石油化学業界への影響

 


2009/11/21 現代グループ、Hyundai Oilbank の経営権を奪還

現代重工業を中心とする現代グループは、アブダビ首長国100%所有の投資会社 IPIC からHyundai Oilbank の株式を買い戻すべく、国際仲裁裁判所に訴えていたが、このたび国際仲裁裁判所はIPICに対し、全持ち株を現代グループに買い戻させるよう命じる判決を下した。

ーーー

Hyundai Oilbank は大山に日量36万バレルの製油所と、年産38万トンのパラキシレン、11.3万トンのベンゼン工場を持つ。

本年6月9日、コスモ石油(同じく IPICが20%を出資)がHyundai Oilbank と共同で韓国でパラキシレン事業を行うと発表した。
合弁会社が大山の38万トンのパラキシレン設備を購入し、新たに80万トンの設備を新設する。

2009/5/8 コスモ石油、韓国でパラキシレン製造へ

アジアの金融危機の後の199912月にIPICはHyundai Oilbank の50%を現代重工業から取得した。その後2003年に現代重工業が持つ残り20%を買い取る権利を取得し、2006年にこれを実行した。

現在の株主はIPIC International が20%、IPIC子会社のHanocal Holding が50%で、残り30%を現代グループ各社が保有している(うち現代重工業 が19.2%現代自動車が 4.35%)

しかしIPIC2007年に Hyundai Oilbankの業績悪化を受け、20-50%を第三者に売却しようとした。
同年
11月に韓国紙がGS Caltex Corp.がこれに応募すると伝えた。

2008年3月、現代重工業はHyundai Oilbankを買収する意向を示しているGS Caltex などGSグループの3社を相手取って株式買収禁止仮処分を法廷に申請した。
また、IPICが保有しているHyundai Oilbank の全株式に対し株式購入のための権利を行使することにし、これをIPIC側に伝えた。
更に、IPICがこれを不服とする場合に備え、シン ガポールの国際仲裁センターに法的紛争の仲裁も要請した。

IPICによると、現代にも売却の意向を伝えたという。しかし、現代側はこれに応じず、全株式の譲渡を求めて訴えた。
現代重工業では「IPICは現代重工業など以前の現代系列の株主と2003年に結んだ株主間契約を違反し、第三者に売却しようとした。契約内容に背いた場合、相手の持っている株式をすべて買収できるように定められている」と主張した。

ーーー

国際仲裁裁判所は今回、IPICが保有する全株式を時価より25%安い価格(@15,000 won)で現代重工業など旧現代グループ系列企業に売却することを命じた。

IPICは1999年と2006年に2回にわたり、現代側から現代オイルバンクの株式を計70%取得しているが、同時に配当2億ドルを受け取 ことを取り決めている。
この際、現代側はHyundai Oilbankが配当2億ドルの支払いを完了するまで、買戻し権の行使を放棄することに同意した。

国際仲裁裁は今回、 IPIC側が故意に配当の受け取りを先延ばしし、現代側の買戻し権行使が妨害されたと認定した。
現代とIPICが当初締結した契約に「一方が契約に違反した場合、相手側に株式を全て譲渡しなければならない」との条項があることを根拠として、現代側への株式売却を命じたという。

ーーー

現代グループの中で、これをどう配分するかは明らかでない。

造船業の現代重工業は最近、事業の多角化を行っており、昨年には CJ Investment and Securitiesを買収している。

ーーー

IPICについては下記を参照。

  2009/2/24 アブダビのIPIC、カナダのNOVA Chemicals を買収

 

付記

現代重工業は2010年8月、IPICが裁判所の判決に従い、Hyundai Oilbank株式(70%)を現代重工業に22億ドルで売却することに合意したと発表した。ソウルの裁判所が7月に現代重工業の買戻しの権利を認める判決を下していた。

2009年11月に国際仲裁裁判所が同様の決定を下したが、IPICは事実誤認としてこれを拒否した。

現在の出資は:
 現代重工業 
21.13%
 現代自動車  4.35%
 現代製鉄   2.21%


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