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これは下記のブログを月ごとにまとめたものです。

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2021/11/1  バイデン大統領、10年間3.5兆ドルの予算案を修正

バイデン大統領は10月28日、Build Back Better Act を発表した。与党民主党内で意見が対立し、進展していない 「10年で3.5兆ドルの予算案」を修正し、早期の法案成立を目指すもの。

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バイデン大統領は3月31日、国内のインフラの整備等に8年間で2兆2500億ドルを投入する新たな計画 American Jobs Plan を発表した。

最終的にこれは、インフラ包括法案と3兆5000億ドルの予算とに分かれた。
前者は上院で可決済みで、下院の決議待ちである。
後者は、上院でのフィルバスターを避けるため、予算決議案→
財政調整措置の形をとるが、予算決議案は上下両院で可決済みで、これをもとにした具体的予算案を討議中である。

2021/8/26  米下院、3.5兆ドルの予算決議案を可決

米下院歳入委員会の民主党メンバーは9月13日、これらを賄うための一連の増税案を発表した。10年間で3.5兆ドル規模の予算の財源となる。
法人税の引き上げ、所得税の引き上げ、キャピタルゲイン税の引き上げ、多国籍企業への税率の引上げである。

2021/9/16    米民主党の増税案

しかし、肝心の民主党内で、党内の急進左派が子育て支援などの「3.5兆ドル法案」を可決するまでインフラ法案に賛成しないと主張し、逆に、財政膨張を懸念する中道派議員は3.5兆ドル法案の規模圧縮を要求し、与党内の調整がつかない状況である。

 

バイデン大統領は民主党議員との議論を続けてきたが、政権の支持率が低迷する中、民主党内の対立を収めるため、「3.5兆ドル法案」について大幅な譲歩案を出した。今後、議会で詰める。 大統領は、合わせてインフラ包括法案も早期に可決することを求めた。

但し、現在のところ、民主党議員が一致してこれに賛成するかどうか不明である。(上院は与野党が50:50のため、議決には全員が賛成することが必要である。)

大統領案はBuild Back Better Act の名前で、当初の「10年で3.5兆ドル」を半減し、気候変動対策や子育て支援等に1兆7500億ドルを投じるものである。

バイデン氏は大統領選挙戦中の2020年7月に、公約としてBuild back better (より良い形で立て直す)を掲げた。
国内政策としては、@新型コロナ対策、A製造業の復活、B人種平等、Cクリーンエネルギーである。
今回、法案の名前にこれを使った。

法人税率などの引き上げを見送る代わり、財源として巨大企業を対象に会計上の利益に最低15%を課すことを盛った。自社株買いへの1%課税のほか、年間所得が1000万ドルを超える個人富裕層に追加税率を導入する。国際社会が合意した多国籍企業を対象に各国が15%の最低税率を定める税制改正もめざす。

内容は次の通り。

支出:       単位:億ドル

Clean Energy and Climate Investments
 
5550

気候変動対策 :下記

Child Care and Preschool
 
4000 高品質の安価な幼児ケア
 3-4歳児全員にPreschool
老人、障碍者ケアも
Child Tax & Earned Income Tax Credits 2000 Tax credit 1年延長
Home Care
 
1500 低所得者向け住宅建設
Affordable Care Act Credits, Including in Uncovered States  1300 医療保険控除
Medicare Hearing 350 medicareで耳の治療をカバー
Housing 1500 住宅不足解消
Higher Ed and Workforce 400 高校より上の教育補助
Equity & Other Investments 900  
合計 17500  
別枠 Immigration 1000 移民制度の改良


気候変動対策の内訳:単位:億ドル

 
Clean Energy Tax Credits 3200 住宅関連、自動車、クリーンエネルギー生産に10年間の税額控除
Resilience Investments 1050 山火事、干害、ハリケーン、公害、Civilian Climate Corps.への支出
Clean Energy推進 1100 Clean Energy技術の開発、製造、サプライチェーン
Clean Energy procurement 200 次世代技術の購入インセンティブ:エネルギー長期貯蔵、小型モデュール炉、クリーン建設材料など
合計 5550  

 

これらを賄うための収入は下記の通り。(億ドル) 主に大企業と金持ちに応分の負担を求める。

15% Corporate Minimum Tax on Large Corporations 3250 節税で税金を払わない大企業に財務上の利益に15%のMinimum tax
Stock Buybacks Tax 1250 自社株買いに1%のSurcharge
Corporate International Reform to Stop Rewarding Companies That Ship Jobs and Profits Overseas 3500 OECDの新規定に合わせ15%のGlobal minimum tax
ルールに従わない国にベースを置く外国企業にペナルティレートで課税
Adjusted Gross Income Surcharge on the Top 0.02% 2300 金持ちへの新しいサーチャージ
Close Medicare Tax Loophole for Wealthy 2500 自営業者による税逃れの制度(S corporations)の廃止
Limit Business Losses for the Wealthy 1700 金持ちに損失計上の制限
IRS Investments to Close the Tax Gap 4000 IRSによる税の抜け穴つぶし
Prescription Drugs: Repeal Rebate Rule 1450 Medicare の処方箋医薬品価格関連
合計 19950  

このうち、脱税防ぎで4000億ドルというのには、どうやってやるのか、疑問視する向きもある。


2021/11/1 米、対EU鉄鋼関税を一部免除 

バイデン米政権は10月30日、EUから輸入する鉄鋼とアルミニウムに課す追加関税を一部免除すると表明した。EUは代わりに報復関税を取り下げる。

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トランプ前政権は2018年5月31日、安全保障上の脅威に対抗する米通商拡大法232条(国防条項)に基づき、EUや日本、中国など外国製の鉄鋼に25%、アルミに10%の関税を上乗せした。

2018/6/2  米、EU・カナダ・メキシコに鉄鋼・アルミ関税発動 

欧州委員会は2018年6月6日、対抗措置として、米国からの輸入品に報復関税を課す方針を正式決定した。

EUは被害を2017年ベースで64億ユーロ(71億米ドル)としている。

  米のEUからの輸入 追加税率 追加税額
Steel 製品 59億ドル 25% 15億ドル
アルミ製品 12億ドル 10% 1億ドル
合計 71億ドル   16億ドル

EUは直ちに28億ユーロ(32億ドル)相当の製品に課税する。

残りの36億ユーロ(38億ドル)相当の製品には、3年後又はWTOでの裁定のあった時のいずれか早い時期に課税する。

EUの報復課税

時期 製品リスト 追加税率
即時課税 鉄鋼・アルミ製品、オレンジジュース、バーボン、たばこ、化粧品、シャツ、ズボン、靴、バイク、ボートなど 25%
(1品目のみ10%)
後日   10%、25%、35%、50%

2018/6/7 EU、米国の鉄鋼・アルミニウム輸入制限への報復関税、7月発動へ

残りの36億ユーロ(38億ドル)相当の製品への課税は本年6月に開始される予定であった。

 

バイデン米国政権と欧州委員会は本年5月17日、世界的な鉄鋼およびアルミニウムの過剰生産に対処すべく協議を開始するとの共同声明を発表した。2021年末までの合意を目指す。

米とEUは、第三国に起因する過剰生産が双方の国内産業に及ぼす影響に対する認識を共有し、また中国を名指しして、貿易歪曲的な措置を取る国に対して説明責任を負わせることで合意した。

これに伴い、EUは6月に開始される予定であった追加の報復関税措置を停止した。(12月1日まで延期)

米通商代表部(USTR)は10月12日、Katherine Tai USTR代表が訪問先のイタリアで、欧州委員会で通商を担当するDombrovskis執行副委員長と会談したと発表した。

鉄鋼とアルミニウムの世界的な過剰生産への解決に向けた対応を議論したとするが、米国が鉄鋼とアルミニウムに課している追加関税なども協議したとみられた。

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今回の合意は下記の通り。

米国は、鉄鋼とアルミにそれぞれ25%、10%上乗せしている追加関税は維持するが、一定の輸入量への関税は免除する。関税割当と呼ばれる仕組みで、具体的な数量枠は今後発表する。

報道によると、鉄鋼ではEUからの輸入の年330万トン分は関税を免除し、それを超えた分から関税を課す。

輸入制限を始める前の2017年の輸入量(英国を除く)は470万トンで、関税上乗せ後の2019年は390万トンまで減った。この場合、60万トン分 だけに課税される。

アルミについては関税が免除される分は非常に少ないとされる。

輸入制限自体は形を変えて今後も続く。

また、関税が免除されるのは、完全にEU域内で生産(“melted and poured”)されたもので、米国への輸出前に中国やEU域外から輸入され、若干の加工を加えられたものは除外される。

見返りに、EUは米国から輸入する二輪車やウイスキーなどにかけている報復関税を撤廃する。12月1日に予定していた報復関税の拡大も取りやめる。

 

英国はEUを離脱したため、今回の措置の対象外で、今後も課税が続く。日本も同様である。 (米商務省は、日本とも協議すると述べた。)

韓国については、2018年3月に米韓FTAの改正・延長交渉で合意した際、鉄鋼に関しては25%の追加関税を免除する代わりに、韓国は米国向け輸出数量 2015〜2017年平均輸出量383万トンの70%を限度とすることとした。

当時のホワイトハウスのNavarro通商製造業政策局長は、「鉄鋼関税が課されなかったすべての国はクォータ制に直面するだろう」と述べた。

2018/3/26 韓米FTA改正交渉妥結、鉄鋼の追加関税免除 


2021/11/2  SoftBank Vision Fund、日本企業に初投資 

神経・精神疾患領域における革新的な新薬の開発と商業化を推進する新しいバイオベンチャー企業であるアキュリスファーマ(Aculys Pharma)は10月28日、SoftBank Vision Fund 2をリード投資家とするグループから総額68億円の資金調達を実施したと発表した。

その他の投資家:Catalys Pacific、HBM Healthcare Investments、Global Founders Capital、三井住友トラスト・インベストメント、ANRI 

Catalys Pacificは2019年に日本における最大規模のライフサイエンス分野への投資に特化した独立系ファンドとして誕生した。
中外製薬、エーザイ、ソフトバンクグループ、武田薬品工業、セルジーンをストラテジック・パートナーとして、日本発のアセットへの投資および開発促進に貢献する。

アキュリスファーマはまた、フランスのBioprojet Pharmaとの間で、睡眠障害分野において米国・欧州で各当局の承認を受け、既に臨床現場で使用されているヒスタミンH3受容体拮抗薬/逆作動薬 pitolisantに関する日本での独占的開発・商業化に関するライセンス契約を締結したと発表した。

今回調達した資金はpitolisantの臨床開発や上市に向けた諸活動に充てられる。

ソフトバンクグループは、「Vision Fund 2として初の日本での投資先となるアキュリスファーマが、睡眠障害に対して革新的な医薬品と、AI・デジタル技術を駆使したbeyond-the-pill solutions(薬を超える解決策)を届けられると確信している」としている。

SoftBank Vision Fund 1は2017年5月にサウジアラビアなどと共同で10兆円規模でスタートした。

2017/5/25   ソフトバンクの「10兆円ファンド」発足

SoftBank Vision Fund 2は2019年7月に設立が発表された。今回はサウジは入っていない。
しかし、資金が集まらず、暫く凍結された。現在、全ての資金をソフトバンクが出している。

2019/7/29 「ソフトバンク・ビジョン・ファンド2」設立 

SoftBank Vision Fund 2現在、欧州や中東、アジア(中国以外)への投資を急速に増やしており、日本での次の投資も検討しているとされる。

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アキュリスファーマは、Catalys Pacificの全面的な支援を受け、神経・精神疾患領域の医療に変革をもたらすとして、2021年1月に設立された日本発のバイオベンチャー企業で、国際色豊かな取締役会メンバーの下に、大手製薬企業で長年、医薬品の開発や疾患啓発等に携わってきた経験豊かなメンバーが結集した。

共同創業者、代表取締役社長兼CEOの綱場一成氏は、2020年10月末までノバルティス ファーマの代表取締役社長 であった。

神経・精神疾患領域において革新的な医療手段への橋渡し役となり、欧米諸国から革新的で優れた医薬品を導入し、開発・販売を担い、さらに疾患を取り巻くさまざまな課題に対するソリューションを提供することを狙う。

同社は睡眠障害において新しい治療選択肢をもたらすべく新薬の臨床開発を進めている。また、神経・精神疾患領域の他の疾患についても、アンメットニーズを満たす薬剤を日々探索している。

今回、フランスのBioprojet PharmaからヒスタミンH3受容体拮抗薬/逆作動薬 pitolisantを導入した。


Bioprojet Pharmaは、pitolisant(Wakix®)等のアンメットメディカルニーズに応える革新的な医薬品の研究・開発を行なっている。自社で欧州7か国での業務展開を行うとともに、その他の地域は現地パートナーとの協業を通じて開発・販売活動を展開している。

Pitolisantは、人間の睡眠・覚醒リズムの制御において重要な役割を担っているヒスタミン含有ニューロンのシナプス前部に分布する自己受容体、ヒスタミンH3受容体へ選択的に結合する拮抗薬/逆作動薬で、欧州では2016年に欧州医薬品庁(EMA)に承認された。
また、2021年には「閉塞性睡眠時無呼吸症候群患者における覚醒状態の改善及び日中の過度の眠気の減少」を追加の効能・効果として承認取得した。

米国では2019年に「ナルコレプシーに伴う日中の過度の眠気」を効能・効果として米国食品医薬品局(FDA)に承認された。


2021/11/3 新型コロナウイルスの収束は「デルタ株のゲノム変異蓄積」 ?

国立遺伝学研究所と新潟大のチームは、10月に開かれた日本人類遺伝学会で、新型コロナウイルスの流行「第5波」の収束には、流行を引き起こしたデルタ株でゲノムの変異を修復する酵素が変化し、働きが落ちたことが影響した可能性があるとの研究結果を 発表した。

ウイルスは増殖する際にゲノムを複製するが、複製ミスが時々起きて変異が生じる。変異が積み重なるとやがて増殖できなくなる 。

1971年にManfred Eigenが『エラー・カタストロフの限界(ミスによる破局)』を予言した。

しかし、新型コロナウイルスを含むコロナウイルスの仲間は、ほかのRNAウイルスにはない複製エラーを修復するための一群の酵素を持つことがわかっている。
重要なのは「nsp(non-structural protein)14」と呼ばれる切断酵素で、これはほかのRNAウイルスに比べて約3倍も長いゲノムのコロナウイルスが、長大なゲノムに生じる複製エラーを修復するために獲得したシステムと考えられている 。

このため、これまでは変異が起きてもnsp14により複製エラーが修正され、変異が積み重なって増殖できなくなるという事態には至らないと考えられてきた。

チームは、新型コロナウイルスの流行「第五波」の収束には、流行を引き起こしたデルタ株で このnsp14酵素が変化し、働きが落ちたことが影響した可能性があるとする。

国立感染症研究所が公開する国内で検出した新型コロナのゲノムデータを分析したところ。第5波では、nsp14に関わる遺伝子が変化したウイルス の割合が感染拡大とともに増え、ピークの前から収束までの間は、感染者のほぼ全てを占めていた。

nsp14の遺伝子が変化したウイルスでは、変異を修正する機能が落ち、ゲノムの変異が通常の10〜20倍あった。

 

チームは、nsp14 酵素の変化の理由として、人間の体内でウイルスに変異を起こして壊す「APOBEC」という酵素がnsp14を変化させたと推測している。東アジアやオセアニアでは、この酵素の働きが特に活発な人が多いという。

APOBECは人体にも悪影響を与える。これによるゲノム変異が発がんの原因の一つであるとされる。

この推定が正しいなら、新しい別のウイルスが入ってこない限り、第6波はないことになる。逆に、収まったからといって海外からの渡航を緩めると、新しいウイルスが侵入し、再度、蔓延することが十分考えられる。

海外で再度蔓延しているのは、そのためではないか。

 


2021/11/4    テスラ、リン酸鉄リチウムイオン電池への世界的な移行を計画 

EVメーカーの米 Tesla は10月20日の第3半期決算の発表文で、同社が、航続距離が標準的なモデルの車載用電池については、リン酸鉄リチウムイオン(LFP)電池に世界的に移行する計画だと述べた。

For standard range vehicles, we are shifting to Lithium Iron Phosphate (LFP) battery chemistry globally.

TeslaのCEOは、同社のバッテリーは最終的に製品全体で鉄ベースが3分の2、ニッケルベースが3分の1になるだろうと語り 、「これは実際に好ましいことだ。世界には十分な量の鉄が存在しているから」と付け加えた。

現在、大半の自動車メーカーはニッケルやコバルトが含まれるNCM(ニッケル・コバルト・マンガン)バッテリー を採用しているが、原料価格は上昇基調にあり需給が逼迫している。

Teslaは現在、米国ではパナソニックのNCM電池を使用しているが、中国では寧徳時代新能源科技(CATL)から供給されるLFP電池を使用している。

CATLのLFP電池は正極側にリチウムや鉄、リンを使い、長寿命で、最高800℃までの耐熱性を有し、安全性と信頼性に優れていると言われる。火災や振動、衝突など様々な危険な状況を想定した300項目以上の試験で検証しているという。

70以上の特許技術を含む「CTP(cell–to-pack)」技術をもとに生産される。モジュールを組むこと無くバッテリーセルをそのままパックに入れるもの。

この特許は中国の大学や研究機関のコンソーシアムによって管理され、10年前に中国のバッテリーメーカーとの間で、LFPバッテリーが中国市場でのみ使用されることを条件にライセンス料を徴収しないことで合意した とされる。

 

DaimlerのCEOも10月26日、Mercedes-Benzの次世代電気自動車モデル「EQA」「EQB」に2024年からLFPバッテリーを搭載すると明らかにした。 主力の「EQS」よりも価格に敏感であるため、今後値上がりが予想されるニッケルなどの使用を避けるもの。

電池メーカーについては明らかにしていないが、既に主力の「EQS」向けにNCMバッテリーを供給しているCATLでないかと見られている。2020年のCATLとの供給契約では、Daimlerは個別の計画ごとにCATLの「CTP(cell–to-pack)」技術の採用が可能となっており、今回、CATLのCTPーLFPバッテリーではないかと思われる。


しかし、TeslaにNCMバッテリーを供給するパナソニックエナジーの只信社長は10月25日、同社製品がTeslaから「足元でも高いレベルでの出荷を求められている」とし、両社の関係に影響はないとの認識を示した。

同社はTeslaからの要請で新型電池「4680」を開発中で、「技術的な面ではほぼ完成した」としている。「円筒形は安全性が高く電池モジュール内のセル密度を高められる点で大きなメリットになる。より走行距離の長いEVを実現する上で「4680」という電池セルは重要な技術になるだろう」としている。

TeslaのEVには、パナソニック製の円筒型セルが採用されてきた。
「Roadster」や「モデルS」、「モデルX」にはノートパソコンなどに使われていた直径18mm×長さ65mmの「18650」と呼ぶセルが搭載されている。
モデル3には直径21mm×長さ70mmの「2170」と呼ぶ電気自動車向けセルが採用された。エネルギー容量は「1865」から「2170」で1.5倍になる。

これに対し、「4680]は直径46mm、長さ80mmの円筒形電池で、「2170」から電池容量を5倍に高めることができる。

 

パナソニックの当面の供給には影響はないとしても、Teslaは最終的に製品全体で鉄ベースが3分の2、ニッケルベースが3分の1になるだろうと しており、他社も追随すると見られるため、NCM(ニッケル・コバルト・マンガン)バッテリーのメーカーには大きな衝撃である。


2021/11/5 FRB、11月から量的緩和の縮小開始

米連邦準備理事会(FRB)は11月3日、11月にテーパリング(量的緩和の縮小)を開始すると発表した。

 

2019年7月末で一旦、保有資産の縮小を止めたが、直後の9月からは短期金利の状況を抑えるためレポ取引などで資金供給を増やし、2020年3月にコロナウイルス対策で資産買入を再開した。

これまで毎月、国債を800億ドル、住宅ローン担保証券を400億ドル、計1200億ドルを購入している。

11月から毎月の購入額を国債を100億ドル、住宅ローン担保証券を50億ドルの合計150億ドルずつ減らしていく計画を正式に決定した。順調にいくと8カ月で購入はゼロとなり、2022年6月でテーパリングは終了する。

FRBはまた、Federal Fund金利の目標誘導レンジを 0.00% ─ 0.25%に維持することを決定した。2020/3/15 以降の利率を維持する。

労働市場の状況が委員会の最大雇用の評価に一致する水準に達し、インフレ率が2%に上昇して当面の間2%をやや超えるような軌道に乗るまで、この目標誘導レンジを維持することが適切だとした。

 
2018/3  1.50%〜1.75%
2018/6  1.75%〜2.00%
2018/9  2.00%〜2.25%
2018/12  2.25%〜2.50%
2019/7     2.00%〜2.25%
2019/9  1.75%〜2.00%
2019/10

1.50%〜1.75%

2020/3/3

1.00%〜1.25%

2020/3/15

 0.00%〜0.25%


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FRBは2019年7月末で一旦、保有資産の縮小を止めたが、直後の9月からは短期金利の状況を抑えるためレポ取引などで資金供給を増やし、2020年3月にコロナウイルス対策で資産買入を再開した。

2020/3/24   米連邦準備理事会(FRB)、資金供給を急拡大


直近では約8兆5000億ドルに達している。今回の決定で残高の増え方が緩やかになり、2022年6月以降は横ばいになる。


電気自動車(EV)購入の際の税額控除額について、1台当たり現在の7,500ドルから、最大12,500ドルまで引き上げる案を盛り込んだ。実質的に値引きになる。

1台当たりの基本控除額4,000ドルと、バッテリー容量に応じた控除額3,500ドル(注)に加え、労働組合を持つ拠点で組み立てられた車両の購入に対しては4,500ドルの控除が定められている。

2026年12月31日以前に販売される車両の場合は、バッテリー容量40キロワット時(kWh)以上、
2027年1月1日以降に販売される車両は50kWh以上が対象。

さらに、組み立て工程での構成部品の50%以上が国内生産品で、動力として搭載されるバッテリーセルの組み立てが国内で行われている場合には、500ドルが上乗せされる。

対象は、車両総重量が14,000ポンド(約6.35トン)未満の新車で、2022、2023年販売車は7kWh以上、2024年以降は10kWh以上のバッテリーを搭載し、外部充電が可能な車両となっている。
しかし、その条件として、労働組合を持つ拠点で組み立てられたEVであることなどを設けている。

今回の法案では、控除申告が可能な収入の上限が、配偶者との合算申告の場合は80万ドル、世帯主のみでは60万ドル、その他の場合(扶養家族など)は40万ドルと定められている。

さらに、車両価格にも上限が定められており、乗用車(セダン)は5万5,000ドル、バンは6万4,000ドル、スポーツ用多目的車は6万9,000ドル、ピックアップトラックは7万4,000ドルとなっている。

また、現行規定にあるメーカー販売台数20万台の控除対象上限が撤廃される。(GMとテスラは上限に達しているが、適用が再開される。)

 

この4,500ドルの追加控除(実質値下げ)が労働組合を持つ拠点で組み立てられた車両の購入に対してのみ認められることから、労働組合を持たない日系メーカーを中心に波紋が広がっている。

米自動車業界は「ビッグスリー」と呼ばれるGM、Ford、Stellantis Fiat Chrysler とPeugeotのJV)にだけ労組が結成されており、トヨタ、ホンダ、現代・起亜、フォルクスワーゲンなど大多数の外資系自動車工場には労組がない。Tesla にも労組がない。

事実上、「ビッグスリー」製EVの購入を奨励する「バイ・アメリカン」政策だとする批判が出ている。 日系メーカーを含む自動車メーカー12社が不服を示す書簡を提出した。
非組合メーカーの拠点があるアラバマ、ジョージア、インディアナ、ミシシッピ、サウスカロライナ、テネシー州など11州の知事(いずれも共和党)が反対を示す内容の書簡を議会に提出した。

日本を含む25カ国・地域の駐米大使は本件に関し、多くの米国人労働者を雇用する外資系自動車メーカーを不当に妨害しているとし、反対の意を示す書簡を米議会およびバイデン政権に提出した。

 

トヨタの意見広告は、バイデン政権と民主党が推進する労組優先主義に異を唱え るものである。



2021/11/6 アンジェスのワクチン、十分な効果出ず、高用量製剤での臨床試験に注力 


アンジェスは11月5日、新型コロナウイルスDNA ワクチン:第1/2 相臨床試験及び第2/3 相臨床試験の結果について発表した。

それぞれの臨床試験において、安全性を確認したが、有効性として、細胞性免疫の上昇をある程度確認できたものの、主要指標である液性免疫において、期待する効果を得ることはできなかった。

今後、より有効性を高めるための取り組みとして、既に2021 年8月に開始している高用量製剤での臨床試験に注力する。

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アンジェスは大阪大学医学部の森下竜一助教授による研究成果を基に1999年に設立され、マザーズに2002年に上場した。

2020年3月に大阪大学と共同で新型コロナウイルス対策のための予防用DNAワクチンの開発を行うことを決定した。

新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)のゲノム配列に基づき、ウイルスのスパイク蛋白質の遺伝子を導入したプラスミドDNA(環状のDNA)を設計し、このプラスミドDNAを産生する組換え大腸菌を確立し、GLP試験に使えるDNAワクチンの原薬を製造した。

プラスミドDNAを体内に投与することで、体内で治療に必要とされる物質がつくられる。 

 

DNAワクチンは、危険な病原体を一切使用せず、安全かつ短期間で製造できる特徴がある。

2020年8月にワクチンの実生産(大規模生産)体制の早期構築を 図るための事業として、厚労省助成金 約94億円を得ている。

アンジェスは本ワクチンの開発・製造に当たり、体制を作り上げている。タカラバイオがその製造を担い、AGC Biologics社が中間体の分担製造、Cytivaが精製用資材の優先的な供給で、更にシオノギファーマが中間体の分担製造で協力体制に加わった。

2020/5/22    アンジェスの新型コロナウィルス向けDNA ワクチン開発

2020/6/26 アンジェスのコロナワクチン、大阪市大病院で治験へ


2021/11/6      Pfizerのコロナ飲み薬、重症化リスク89%減

Pfizerは11月5日、開発中の新型コロナウイルス向け飲み薬 PAXLOVIDの投与により入院や死亡するリスクを89%割減らせたとの臨床試験(治験)データを公表した。
緊急使用許可を得るため米食品医薬品局(FDA)に詳細なデータを提出する。

付記 Pfizerは11月16日、FDAに緊急使用許可(EUA)の承認を申請した。

 

米食品医薬品局(FDA)は12月22日、PAXLOVID™の緊急使用を承認したと発表した。
対象となるのは既往症や肥満などで重症化リスクの高い12歳以上。

「ニルマトレルビル」(PF-07321332)2錠と、既存の抗HIV薬「リトナビル」1錠をそれぞれ1日2回、計30錠を5日間かけて投与する。

米政府はPfizerと1000万回分の供給契約を締結している。

付記  

Pfizerは12月14日、PAXLOVIDによって、重症化しやすい患者の入院や死亡のリスクが89%減ったとする臨床試験の最終結果を公表した。
新たな変異株「オミクロン株」にも有効な可能性があるという。

岸田首相は12月17日、Pfizer のCEOとの電話会談で、同社の経口薬 200万回分の確保で基本合意したことを明らかにした。

付記 new

Pfizerは2022年1月14日、厚労省に 特例承認を申請した。


付記

EUの薬事当局「欧州医薬品庁(EMA)」は12月16日、PAXLOVIDについて緊急使用を認めるとの見解を発表した。重症化の危険性が高い成人を対象に使用できる。

発症してから5日以内の患者に投与したことで入院や死亡の可能性を軽減する結果が確認できた。
妊娠中や妊娠の可能性がある人、腎臓、肝臓の機能が著しく低下している人には使用できない。

PAXLOVID™は、開発中の新薬候補 PF-07321332と低用量のリトナビル(ritonavir)の合剤である。

 発症後3日以内の患者に投与したところ、投与していないグループに比べて入院・死亡リスクが89%減った。デルタ型など各種の変異ウイルスに対しても効果がある可能性があるという。

報道によると、1回の治療につき30錠の錠剤を5日間かけて投与する。

米政府はPfizerとの間でPAXLOVID 170万回分の新薬調達を交渉しており、さらに330万回分の追加調達枠も確保する見通し。米政府側は1回の治療分につき約700ドルの支払いを見込む。

Pfizerは途上国に対しては、国連が支援する非営利団体を通じて割引価格で供給する模様。

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Pfizer は2021年3月、PF-07321332を健康な成人を対象とした第1相試験で、治験薬の安全性、忍容性、および薬物動態を評価した。

7月には、フェーズ2/3試験に進み、リトナビルと組み合わせて、診断が確定した参加者の有効性と安全性を評価した。

Pfizerは9月27日、COVID-19治療薬を予防薬としても使うPhase2/3の開始を発表した。感染した人と同居する人を対象とする。


PF-07321332はプロテアーゼ阻害薬
で、特に経口投与するように設計されているため、患者を入院させることなく、感染の最初の兆候または曝露の最初の認識時に処方できる可能性がある。

用量のリトナビル(これも経口投与)との同時投与は、PF-07321332の代謝または分解を遅らせ、ウイルスとの闘いを助けるために高濃度で長期間、体内で活性を維持するのに役立つと期待している。

Ritonavir もプロテアーゼ阻害薬で、同じくプロテアーゼ阻害薬のLopinavirとの合剤(AbbVie Inc.が販売する商品名Kaletra)がHIV感染症のHAART療法に用いられている。


2021/11/8    米インフラ法案、下院で可決、成立へ

米下院は5日夜、バイデン政権の2つの看板政策のうち、5500億ドル規模の超党派インフラ投資法案を可決した。

これは1兆ドル予算とも呼ばれる。既に予算配分済みの支出を除いた新規支出は約5,500億ドルである。

上院はすでに可決しており、バイデン大統領が署名すれば成立する。

2021/8/11 米上院、5500億ドル規模のインフラ包括法案を可決、下院採決時期は不透明

子育て支援などに10年で1.75兆ドルを投じる歳出・歳入法案は党内調整になお時間がかかるため採決を先送りした。

付記 バイデン大統領は11月15日、インフラ投資法案に署名、成立した。

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バイデン大統領は3月31日、国内のインフラの整備等に8年間で2兆2500億ドルを投入する新たな計画 American Jobs Plan を発表したが、これは、1兆ドルのインフラ包括法案と3兆5000億ドルの予算とに分かれた。

前者は上院で可決済みで、下院の決議待ちであった。
後者は、上院でのフィルバスターを避けるため、予算決議案→財政調整措置の形をとるが、予算決議案は上下両院で可決済みで、これをもとにした具体的予算案を討議中である。

肝心の民主党内で、党内の急進左派が子育て支援などの「3.5兆ドル法案」を可決するまでインフラ法案に賛成しないと主張し、逆に、財政膨張を懸念する中道派議員は3.5兆ドル法案の規模圧縮を要求し、与党内の調整がつかない状況である。

バイデン大統領は10月28日、1.75兆ドルのBuild Back Better Act を発表した。与党民主党内で意見が対立し、進展していない 「10年で3.5兆ドルの予算案」を修正し、早期の法案成立を目指すもの。

2021/11/1  バイデン大統領、10年間3.5兆ドルの予算案を修正  


ペロシ議長は2つの看板政策を同時に実現させる方針を示してきたが、難航した。

従来は共和党と民主党の争いで難航してきた。しかし、今回は共和党は静観しており、民主党内部の争いである。

民主党は11月2日投開票のバージニア州知事選で敗北、大統領の支持率が40%台前半まで落ち込み、威信が低下している。

大統領反転攻勢の切り札にしたい思惑から、11月5日の演説で、インフラ投資法案と総額1兆7500億ドルの大型歳出法案を5日中に成立させるよう呼びかけた。主要な下院議員には電話で直接協力を求めた。

しかし、6人の中道派議員が、1.75兆ドルの予算法案について「議会予算局による財源の精査が終わっていない」として早期の法案採決に反対した。下院で民主党から4人が反対すれば可決できないため、ペロシ議長は「説得は困難だ」と判断した。

次善の策として、議長はインフラ投資法案を先に成立させる方針に転じたが、今度は左派が、インフラ法案を通してしまうと、大型歳出法案がそのままでは通らない可能性があるとして議決に反対した。

最終的に中道派議員が「議会予算局の精査の結果が政府の推計と矛盾しなければ、大型歳出法案に賛成する」と文書で約束したことで、左派が態度を軟化させた。

それでも下院の議決でインフラ法案に民主党から 急進左派6名が反対した。

しかし、共和党から13名が賛成に回り、ようやく可決された。大統領は与党民主党の反対で否決されるところを、野党共和党に救われた形となった。

  共和党 民主党 合計 欠員
賛成 13 215 228  
反対 198 6 204  
棄権 2   2  
合計 213 221 434 1

欠員3議席のうちオハイオ州の11月2日の選挙で、2議席を民主、共和が分け合った。
欠員の残り、フロリダ州の議席は2022/1/11に決まる。

1.75兆ドル規模の大型歳出法案は議会通過のめどが立たない状況で、11月5日の下院採決が見送られた。

民主党下院指導部は11月半ばごろの可決を目指す。


2021/11/9   化学大手の2021年9月期中間決算

各社の中間決算の発表が始まった。

各社とも、石化中心に大幅増益となっている。但し、下期予想については、原材料高など懸念要素が多く、多くの企業で年間予想は慎重である。

三菱ケミカルHD:中国の電力不足によるプラント稼働制限、原油や天然ガスの高騰が不安
住友化学:原料高に伴う交易条件の悪化や製品市況のピークアウトなどで上期の勢いは続かない。

化学会社の決算は右を参照 (順次更新) http://www.knak.jp/kessan/

    

信越化学

 

全事業が前年同期比で力強い増収増益を達成、収益伸長に特に貢献したのが北米の塩ビ事業。
同社の年間の当期損益予想は過去最高を大幅に上回る。

セグメント変更

生活環境基盤材料 塩ビ、苛性ソーダ、メタノール、クロロメタン、ポバール
電子材料 半導体シリコン、希土類磁石、半導体用封止材、フォトレジストほか
機能材料 シリコーン、セルロース誘導体、金属ケイ素ほか7
加工・商事・技術サービス  

 

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三菱ケミカルホールディングス

   MMAは18/3と19/3に価格が急騰

                                    

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住友化学

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三井化学

基盤素材が広義の石油化学製品
 
 石化製品:エチレン、プロピレン、ポリエチレン、ポリプロピレン等
 基礎化学品:フェノール、ビスフェノールA、高純度テレフタル酸、PET樹脂、EO/EG等
 ポリウレタン原料

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旭化成

マテリアルズは石油化学、繊維、高機能マテリアルズ(セパレータ、電子部品)を含む。

 

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東ソー


2011/11/10    BHP、豪州の石炭プロジェクトの一つを売却

BHPは化石燃料事業からの撤退の一環として、三井物産との原料炭JVのBMC(BHP Billiton Mitsui Coal)の権益80%を 豪Stanmore Resourcesに12億ドル (今後の石炭価格動向により最大1.5億ドルの追加の可能性)で売却することで合意した。
豪州の外国投資審査委員会からの承認が必要で、2022年半ばごろに売却が完了する見込み。

三井物産はBMCの20%の権益を維持する。

BMCはクイーンズランド州に操業中の2鉱山(Poitrel and South Walker Creek)を所有し、年間約1000万トンの石炭を生産している。主力炭鉱の1つであるPoitrel 炭鉱では、石炭処理・鉄道施設に関して豪の石炭生産企業 Peabody Pacificと提携している。

BMCのPoitrel 炭鉱はPeabody PacificのMillennium炭鉱と隣接している。Peabody Pacificは鉱山から採掘される石炭の処理施設や鉄道などの設備を所有しているが、BMCは2018年2月にこの権益の50%を購入、50/50JVのRed Mountain Joint Ventureとした。

BMCの権益を買収するStanmore ResourcesはシンガポールのGolden Energy and Resources が過半数権益を保有する。

Golden Energy and Resources は鉱山会社で、主にオーストラリアで原料炭・金、インドネシアでエネルギー石炭の探鉱、採鉱、販売に従事する。アジアで再生可能エネルギープロジェクトを対象にさまざまな投資も手掛ける。

Stanmore Resourcesはクイーンズランド州でIsaac Plains石炭コンプレックスを運営している。

Isaac Plains炭鉱は住友商事とVale のJVであったが、石炭価格の下落で大幅な損失を計上、2015年1月末をもって操業停止し、休山することを決定した。
両社は2015年7月、Isaac Plains炭鉱をStanmore Coal に 1 豪ドルで売却した

2014/10/1  住友商事、米国のタイトオイル開発などで大幅な損失計上

BHPは発表資料で、「今回の取引は当社の戦略に沿うものだ。世界が脱炭素化を進める中、BHPは効率性の向上と排出量の削減に向け世界の鉄鋼メーカーが求める高品質の原料炭の生産に一段と注力していく」と説明した。

 

BHPは三菱商事との50/50JVのBMA(BHP Billiton Mitsubishi Alliance) を持つが、世界の鉄鋼メーカーが求め高品位炭のため今後も保有する。

2001年に三菱商事がBHP Billitonから権益を取得することによりBMAが発足した。

BMAはイーンズランド州東部に位置するオーストラリア最大の石炭埋蔵地域であるBowen Basinに7つの炭鉱(Goonyella Riverside、Broadmeadow、Daunia、Peak Downs、Saraji、Blackwater、Caval Ridge)を持つ。また、石炭を出荷するための港湾施設Hay Point の操業も行っている。

当初、9つの探鉱を運営していたが、Norwich Park炭鉱は石炭価格下落、洪水による生産減、高コストを理由に2012年5月に休止、Gregory Crinumも2012年10月に休止した。

このうち、Gregory Crinumについては、2018年5月に双日が約82億円で買収した。

2018/6/13    双日、三菱商事 / BHPBillitonから豪州の休止中の炭鉱を買収

 

BHPは他に、発電用石炭のMount Arthur complex についても売却方針を示し、多くの企業が関心を示している。米国のPeabody Energyが有力と見られている。

 

BHPグループは8月17日、石油・ガス事業を豪 Woodside Petroleumに売却すると発表した。

世界的な「脱炭素化」の流れをにらみ、本業である鉱業に経営資源を集中させる。 化石燃料から脱却し、「未来に目を向けた」商品へのシフトを目指す。

石油・ガス事業から撤退する一方、ニッケル事業を強化している。

2021/8/19 BHPが石油・ガス事業から脱却


2021/11/10 TSMCとソニー、半導体ファウンドリ計画を発表 

台湾積体電路製造(TSMC)は11月9日、日本で初めてとなる工場をソニーグループと共同で熊本県に建設すると発表した。

経緯 2021/10/18     半導体大手、台湾のTSMCが日本で工場建設

TSMCとソニーセミコンダクタソリューションズは、TSMCが22/28nmプロセスを皮切りとした半導体の製造受託サービスを提供するJVの Japan Advanced Semiconductor Manufacturing を熊本県に設立し、ソニーセミコンダクタソリューションズが少数株主として参画する。

ソニーセミコンダクタソリューションズは、ソニーグループの100%子会社であり、イメージセンサーを中心に、各種LSI、レーザー、ディスプレイデバイスを含む半導体デバイス事業を展開するイメージセンサーのリーディングカンパニー。

JVには約5億米ドルを資本金として出資することにより、20%未満の株式を取得する予定。

立地はソニーが熊本県菊陽町に持つ工場の隣接地を予定している。当初の設備投資額は約70億米ドルで、2022年の建設開始を予定しており、2024年末までに生産開始を目指す。

約1,500人の先端技術に通じた人材の雇用を創出し、月間生産能力は45,000枚(300mmウェーハ)となる見込みで、当初の設備投資額は約70億米ドルとなる見込み。日本政府から強力な支援を受ける前提で検討している。

政府は数千億円の補助金を通じて、建設計画を支援する方針で、関連の改正法案が、年内にも開かれる臨時国会に提出される見込み。

TSMCは2019年に日本にデザインセンターを設立し、世界中の顧客にサービスを提供している。また、日本のパートナーと協力し、茨城県のTSMC 3DIC研究開発センターにおいて高度なパッケージング技術の研究を進めている。


2021/11/11 Sinopec、米企業と20年間のLNG売買契約に調印 

中国石油化工集団(China Petroleum & Chemical Corp.:Sinopec)と米国のVenture Global LNGは11月4日、ルイジアナ州のPlaquemines LNG export facilityから年間計400万トンのLNGを供給する20年売買契約2件の調印を発表した。

また、Sinopec子会社の中国国際石油化工聯合(UNIPEC)は、Venture GlobalのCalcasieu Pass LNG export facilityから短期的に350万トンのLNGを購入することに合意した。

これは米国企業が締結したこれまで最大の単一のLNG供給取引で、中国の米国産LNG輸入は倍増する。

Venture Global LNGはエネルギー省から非FTA諸国向け輸出許可を取得 している。


Venture Global LNGはルイジアナ州の2カ所にLNG施設を持ち、それぞれで増設を検討している。

  立地 能力  
Venture Global Plaquemines LNG Plaquemines, Louisiana 年間2000万トン  
Venture Global Calcasieu Pass LNG Cameron, Louisiana 年間1000万トン  
Venture Global CP2 LNG Cameron, Louisiana 年間2000万トン
最高2400万トン
計画段階
Venture Global Delta LNG Plaquemines, Louisiana. 年間2000万トン 計画段階

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Venture Global LNGは9月2日、同社がポーランドのPGNiG(Polish Oil and Gas Company)に20年間、液化天然ガス(LNG)を年200万トン追加販売する契約に最終合意した。LNGはVenture GlobalのCalcasieu Pass LNGとPlaquemines LNGの両輸出施設から供給される。

2018年に両社が結んだ既存の売買契約を修正し、Calcasieu Pass LNGから購入するLNG量を年150万トン、Plaquemines LNGからの購入量を400万トン、合計550万トンとする。


2021/11/12    韓国で尿素水不足、物流や工業セクターが大混乱

韓国でディーゼル車の運行や工場の操業に必要な尿素水が不足し、大問題となっている。

尿素水は排気ガスの浄化に使われている。韓国では、2015年以降に製造されたディーゼル車は、ディーゼルエンジンの排気中の窒素酸化物(NOx)を尿素水で浄化する尿素SCRシステムを搭載する必要がある。

韓国は他国に比べてディーゼル車の占める割合が高い。国内で運行中の車両約2600万台のうち、ディーゼル車は919万台を占め、尿素水を満たしておく必要のある排気ガス低減装置を装着した車は21%の216万台に達する。

尿素水がないと、乗用車は発進できず、トラックも最大時速20キロでしか走行できない。
排気ガス低減装置(SCR)には、尿素水を定期的に入れる必要があり、尿素水が不足すると警告灯がつき、エンジンがかからないようになるソフトウェアが使われている。

トラックの運行が止まれば、ガソリンスタンドにガソリンを供給できなくなる事態も想定される。ほぼすべての産業で物流コストが上がり、日用品の値上げにつながりかねない。

工業部門も環境汚染対策の一環で尿素の利用を義務付けられており、尿素が不足すれば、生産が止まる恐れがある。

2020年に輸入された尿素 835千トンのうち、工業用は34.7%、車両用は9.8%、残りは肥料用だった。

産業用尿素水は純度が低く不純物が多い。自動車に注入すれば、排気ガスの汚染物質が十分に取り除けない恐れがある。

なお、韓国外交部は11月10日、「中国製尿素の輸入手続きを速やかに進めるため、さまざまなルートで中国側と意思疎通した結果、わが企業の契約済みの物量1万8700トンに対する輸出手続きが進められることを確認した」と明らかにした。

尿素水の尿素濃度は約30%のため、尿素水5万6100トンを生産できる量となる。
韓国で1カ月に自動車運行に使われる尿素水は2万5000トン程度。

付記

ロッテ精密化学は11月11日、グループの辛東彬(重光昭夫)会長が自身の人脈を動員し、ベトナム(8000トン)、サウジ(2000トン)、日本(1000トン)、ロシア、インドネシアから尿素計1万1700トンを単独で確保したと明らかにした。

付記

中国が10月から輸出規制を始めたことで、日本(輸入の3割を中国に依存)でも品薄感が広がった。

経産省は12月に原料の尿素の増産を国内メーカー(三井化学と日産化学)に要請した。メーカーは増産に応じており、品薄感が改善に向かう見込み。

三井化学は定修開けの12月から従来より15%増のフル生産体制に入った。日産化学は8月からフル生産体制に入っている。

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アンモニアは窒素酸化物の酸素と結合する性質があり、窒素酸化物にアンモニアを吹きかけることで化学変化を起こして窒素(N2)と水(H2O)に還元される。
「SCR」 は「Selective Catalytic Reduction」(選択的触媒による還元)の略で、外部から排気ガス中にアンモニアを加えることで、窒素酸化物を浄化する。

アンモニアを車両に積むのは危険な為、尿素水をタンクに入れて搭載し、これを排気中に噴射することにより高温化で加水分解させアンモニアガスを得る。

                                                                                    

https://opty.co.jp/?page_id=211

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韓国では、韓国肥料(現ロッテ精密化学)など、国内で尿素を生産するメーカーがあったが、2010年代初頭に尿素水の生産から撤退し、100%を輸入している。

輸入品の97%が中国産であるが、中国は先月、国内市場を優先するため、輸出を制限した。

中国は毎年500万トンの尿素を世界市場に供給しているが、10月11日、自国内の肥料供給への支障を理由として、尿素に対する輸出前検査を義務付けた。
尿素は農業用化学肥料の最重要原料だが、9月初めまでは1トン当たり2500元を下回っていた尿素価格が急騰し、10月末にはほぼ3500元になった。

冬の小麦栽培を控えて中国海関は、特に検疫や検査なしに輸出されていた尿素などの29種の肥料品目に対して、検疫を義務付けた。

韓国政府は公的部門の尿素備蓄を放出しているほか、軍の備蓄も放出する。ベトナムや豪州などから尿素水を緊急輸入すると決め、まずベトナムから200トンの尿素を確保。最大1万トンの確保に向けて他の諸国とも交渉を進めている。

 


2021/11/13

ロシアの国営エネルギー大手Gazpromは9月10日、ロシア産天然ガスをドイツに運ぶパイプライン「Nord Stream 2」の完成を発表した。

Nord Stream -2 は全長約1200キロメートルで、サンクトペテルブルク北方のビポルクからバルト海海底約1200キロを通ってドイツ北東部グライフスバルトまでを結ぶ。輸送能力は年550億立方メートルで、ロシアの欧州へのガス輸出量の約4分の1に当たる。

2019/11/9 Nord Stream -2、年内完工へ

パイプラインは欧州のロシア産ガスへの依存を高め、ウクライナを迂回するものと批判されている。ロシアによる2014年のクリミア半島併合以降、対立関係にあるウクライナは、ロシアがパイプラインを「危険な地政学的武器」として利用する可能性があると欧州に警告してきた。

トランプ前大統領はこの計画でドイツのMerkel 首相を批判していた。バイデン大統領もNord Stream 2は欧州にとって悪い取引だと信じていると語っていた。

しかし、バイデン大統領は5月25日、Nord Stream 2 計画の完了を容認する立場を表明した。

バイデン大統領は、「私は初めからNord Stream 2に反対してきた」と述べつつ、一方で、同プロジェクトは自身が大統領に就任した際にはほぼ完成していたと指摘した。その上で、「そのため、現在さらに制裁を科し続けることは、米国の欧州との関係の観点から非生産的となり得ると考えている」と発言した。

米国とドイツは7月21日、Nord Stream 2 の建設計画をめぐる合意を発表した。米独両政府の共同声明では、ロシアが天然ガスなどのエネルギーを、敵対関係にあるウクライナなど他国を揺さぶる「武器」として使用した場合、ドイツが独自の制裁措置をとるほか、EUにも制裁を働きかけることを明記した。

2021/5/28 米、ガスパイプライン計画「Nord Stream 2」を容認 

 

欧州で天然ガス価格の高騰が止まらない。世界経済の回復によるエネルギー需要の高まりや風力発電の不振などが要因とみられる。

国際エネルギー機関(IEA)は9月21日、声明を出し、ガス価格上昇について解説した。  それによると、需要の回復、技術的問題などによる供給体制の混乱、異常気象などの要因が重なっている。昨年の欧州の冬が異常に寒く、しかも長期間続き、暖房需要が増えた。加えて、ここ数週間、風が弱く、風力エネルギーをいつものように利用できないでいるという問題もあるという。

Nord Stream -2 は完成したが、稼働にはドイツの独禁当局の承認を得る必要がある。障害は2019年のEUガス指令の改正である。

次の3つが条件となるが、2019年4月に欧州議会は、このルールをNordstream-2のような、第3国からEU圏へと入ってくるガスパイプラインへも適用する内容の指令を採択した。

(1)ガスの供給とガスの輸送を分離すること
(2)ガス輸送のために第三者にその利用を解放すること
(3)料金体系のドイツ規制当局による承認

(1) はEU域内の部分のみで、ドイツの領域の海底から上陸地点を経て既存のパイプライン網に至る接続部分に限り適用されるが、Gazpromが双方を担う現在の形態は認められない。

020年5月に欧州司法裁判所が、Nord Stream とNord Stream 2の2社による提訴を棄却しているが、デュッセルドルフ上級地方裁判所は本年8月25日、Nord Stream 2 AGによる訴訟を退けた。


付記

EU司法裁判所の法務官は10月6日、事業会社はガス指令について争う立場にないとの一般裁判所の判断を覆し、ガス指令の改正はそれ以前に建設が始まっていたノルド・ストリーム2だけが対象であることが実態であることなどを指摘し、事業会社にとってガス指令は直接的な関心事項であるとして、EU司法裁判所で争う立場にあることを認めるとともに、ガス指令の条件の適用の有無という問題の実質については一般裁判所に差し戻すべきとした。
 

これに対し、ロシア政府は早期稼働を求め、EUに対し圧力をかけている。

一部にはロシアが価格上昇を演出しているのではとの疑惑が出ている。

Gazpromは、供給契約で定められた約束は守っていると主張、欧州の大手ガス7社はGazpromが長期契約義務を果たしていると認めた 。

プーチン大統領は10月21日、「ドイツの規制当局があす供給を許可すれば、その翌日には175億立方メートルのガスの供給が始まる」と述べた。また、ガス不足と価格高騰はEUのエネルギー政策の責任だと指摘した。

Nord Stream 2の運営会社は10月18日、2本あるパイプラインの1本目について操業開始に向けテクニカルガスを充填したと発表した。2本目のラインについても稼働準備が順調に進んでいる。


付記

ドイツ連邦ネットワーク庁は11月16日、「Nordstream 2 」の認証手続きを凍結すると発表した。

運営する事業会社の「Nordstream 2 AG」はGazpromの子会社で、スイスに本拠を置くが、連邦ネットワーク庁は書類審査の結果、ドイツの法律に基づいて組織された事業会社だけが認可手続きの対象になるとの結論を出した。Nordstream 2 AGはドイツの法律に基づく子会社を設立する方針で、子会社が改めて認可を申請する。

ドイツ経済省は11月26日、「Nordstream 2 」を承認してもEUへのガス供給を脅かすことはないと発表した。EU諸国との協議の上、分析結果を当局に提出したとした。「分析の結果、承認はドイツおよびEUへのガス供給の安全性を脅かすものではないと結論付けた」と指摘している。

経済省のガス供給に関する分析は当局が承認手続きを続けるための需要な要件となっている。

 


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