これは下記のブログを月ごとにまとめたものです。
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東芝は11月12日、事業をスピンオフし、3つの独立会社とする方針を決定した。
東芝の事業にはビジネス特性が大きく異なるものがある。(下記)
成長戦略の明確化、意思決定のスピードの向上、コスト構造の最適化により各事業の競争力を強化することが必要であるが、戦略委員会があらゆる選択肢を検討し、東芝と株主にとり最善となるスピンオフ計画を提案、取締役会が全会一致で承認した。
戦略委員会の委員は全員が社外取締役である。
東芝取締役 敬称略
綱川 智 会長、社長CEO Paul J. Brought 社外 元 KPMG 委員長 Ayako Weissman 社外 元 投資会社 委員 Jerry Black 社外 イオン顧問 委員 George Zage V 社外 元 投資銀行 委員 畑澤 守 代)副社長 綿引 万里子 社外 元 裁判官 橋本 勝則 社外 元 デュポン 委員
2つの会社をスピンオフする。
1) インフラサービス Co.:カーボン・ニュートラルの目標の達成およびインフラレジリエンスの向上に貢献する会社
2023年度には2兆2,300億円となる見込み。営業利益率は同期間に5.1%から5.2%に伸長する見込み。
2) デバイス Co.:社会・ITインフラの進化を支える会社
2023年度には8,800億円となる見込み。
注力領域であるパワー半導体は、2021年度950億円を2023年度には1,200億円に
ニアラインHDDは、2021年度2,000億円を、2023年度2,800億円に大きな成長を見込む。
営業利益率は2021年度の7.1%から、2023年度には6.1%となる見込み。
残る東芝は、事業は営まず、キオクシアと東芝テックの株式を保有する。
キオクシア株式については、株主価値の最大化をはかりつつ、実務上可能な限り速やかに現金化し、手取り金純額についてはスピンオフの円滑な遂行を妨げない範囲で、全額株主還元に充当する。
これまでは、「将来のキオクシアホールディングスの株式売却から得られる手取金純額の過半を原則として株主還元に充当する」としていた。
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事業分割の理由:
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このスピンオフは、大規模な日本企業として初めて法人税法上のいわゆるスピンオフ税制の利用による適格組織再編を目指したもの。
スピンオフ税制(2017年税制改正)
企業の機動的な事業再編を促進するため、特定事業を切り出して独立会社とする「スピンオフ」を組織再編税制の中で位置付け、スピンオフを行う際に、譲渡損益や配当についての課税を繰り延べる。(最終的に株主が株を売却した時点で売却益に課税)
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東芝の組織の推移は下記の通り。
2017/4/25 東芝、主要事業を分社化
続き
General Electricは11月9日、会社全体を航空機エンジンと医療機器、電力の3事業に分割すると発表した。
2023年に医療機器部門を分割し(tax-free spin-off)、GE本体が19.9%を保有する。
2024年初頭には火力発電と再生可能エネルギー、デジタル部門を合わせて電力事業会社として分社化(tax-free spin-off) する。
本体には航空機エンジン事業を残し、ラリー・カルプ最高経営責任者(CEO)が引き続き経営を担う。
11月初旬に子会社のGEキャピタルが手掛けていた航空機リース事業の売却を完了し、金融事業から事実上撤退した。その売却代金を使い、近い将来に借入金を大幅に減らす。
GE本体に加え、分社する2社も株式上場を計画している。
Culp
CEOは当初、中核として残した航空機エンジンと医療機器、電力の各事業は相乗効果が高いと主張し、分社化に消極的だったが、新型コロナ危機に伴う旅客機の需要減で稼ぎ頭の航空機エンジン事業の収益が悪化、欧州を中心に火力発電を撤廃する動きも広がり、物言う株主など投資家から分社化を求める圧力が強まっていた。
Culp CEOは「世界はいま、航空と医療、エネルギーのそれぞれの分野で課題解決に最善を尽くすことを求めている」と分社化の理由を説明。「事業分野ごとに焦点を絞り、投資配分を決めることで企業価値を高める」と強調した。
Digital 部門:
GEは2015年10月1日付で、全社横断的に点在していたデジタル関連機能を1つに集約する変革的な取組みとして、新たにGE Digital を発足すると発表した。
GE Software Center、Global IT部門、各事業のsoftware teamと、2014年に買収したWurldtechのIndustrial
Security部門を1つに統合した。
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2000年のGEの売上高は金融が50%を占めたが、2016年の売り上げ構成は産業機器がほとんどを占める。
GEは2017年11月に、電力、航空、ヘルスケアの3事業を中核と位置づけ、その他の分野で200億ドルの事業売却を進めるリストラ策を発表していた。だが、その後も過去に手掛けた金融事業で1兆円近い追加損失が発生するなど業績悪化に歯止めがかからず、戦略の抜本的な見直しを迫られた。
GEは2018年6月26日に今後の事業構造を発表した。
Transportation(機関車)、HealthCare、Baker Hughesの処分を決めた。
Healthcareについては分離するとした。(実現せず)
その代わりに、2019年2月25日にGE Healthcareのバイオ医薬事業を産業機械大手のDanaher Corporation に214億ドルで売却すると発表した。GE Capital については、引き続き縮小し、コア事業を支える方向に進めるとした。
2018/7/2 GE、今後の事業構造を発表、GE Healthcareを分離
Jeff Immelt
会長兼CEOは2017年12月31日に会長を退任し、引退した。
GE Healthcareの社長John
Flanneryが2017年8月1日付でGEのCEOになり、2018年1月1日付で会長兼CEOになった。
しかし、John Flanneryはその後の業績悪化と株価低迷の責任を取って、就任1年2か月後の2018年10月1日に退き、後任に2000年から2014年まで米産業機器大手Danaher Corporation のCEOを務めたH. Lawrence (Larry)Culp, Jr が就任した。GEのCEOに外部の人材が就くのは初めて。
GEは2021年3月10日、GE Capital の航空機リース事業 GECAS (GE Capital Aviation Services business )をアイルランドの同業大手AerCap Holdings N.V. に売却し、金融子会社のGE Capitalを解散すると発表した。
売却額は300億ドル以上で、うち240億ドルは現金、約60億ドルはGECAS統合後のAerCapの株式で、10億ドルはAerCapの手形又は現金で支払われる。
GEは株式取得でAerCapの約46%の株主となるが、取引完了の15か月後に全体を売却する権利を持つ。GE Capitalは住宅ローン事業など過去に手掛けた金融事業の大部分から撤退したが、主力の航空機エンジン事業との関連性が高い航空機リースは継続していた。
2018年に就任した会長兼CEOのH. Lawrence Culp, Jr. はバイオ医薬関連事業など非中核事業の売却を進めてきた。リース事業の分離により、産業部門を中核とする事業再編が完了する。
CEOは「GEは焦点を絞り、よりシンプルで、より強力な事業会社に変貌する」と述べた。
2021/3/13 GE、金融事業から撤退
11月初旬に子会社のGEキャピタルが手掛けていた航空機リース事業の売却を完了し、金融事業から事実上撤退した。売却代金を使い、近い将来に借入金を大幅に減らす。
2021/11/16 Johnson & Johnsonも 会社分割
米日用品・製薬大手Johnson & Johnson(J&J)は11月12日、日用品や市販薬を含む「消費者向け部門」と、処方薬や医療機器などの「医療向け部門」の2事業に分割すると発表した。
現在は「消費者向け」と、処方薬やワクチンを含む「医薬品」、手術用医療器具などを扱う「医療機器・診断器具」の3部門を経営の柱としている。
消費者向け事業をスピンオフして、上場企業とし、本体は医療向け事業に注力する。スピンオフは18─24カ月での完了を目指すとしている。
同社のCEOは、「今後数十年にわたり価値を提供するため、事業を継続的に進化させる必要がある。消費者向けの分離は、患者や消費者、医療従事者へのサービス提供を加速させ、高い収益性と成長を促進する最善の方法だ」と述べた。
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「消費者向け」Consumer Health Company は、下記のような有名製品を持ち、世界で毎日、多くの消費者が使用する。
バンドエイド、リステリン、ボディケア用品(ニュートロジーナ、アビーノ)、赤ちゃんのスキンケア、使い捨てコンタクト(アキュビュー)、OTC医薬品(頭痛薬「タイレノール」、禁煙補助剤「ニコレット」、皮膚用薬、鼻炎用薬、鎮咳去痰薬、目薬など)
売上高10億ドル以上が4ブランド、150百万ドル以上が20ブランドに及ぶ。
2021年度の売上高見通しは150億ドル。
新しいJohnson & Johnsonはがん治療薬やワクチン、手術用機器などの「医療向け」専業となる。2021年度の売上高見通しは800億ドルで、消費者向けを大きく上回る。
医療用医薬品はJanssen Pharmaceutical が担当、「がん」、「免疫疾患」 、「精神・神経疾患(中枢神経・疼痛)」、「ワクチン」 、「代謝・循環器疾患」の5つの疾患領域を扱っている。
同社の新型コロナワクチンはFDAのEUA、WHOの承認を受けており、2021年5月に厚労省に申請した。1回接種で済む。
医療機器は、抗菌縫合糸等の創閉鎖・創傷管理関連製品、不整脈診断治療支援システム、整形外科用医療機器(骨接合材料)、脳血管内治療用医療機器、使い捨てコンタクトレンズ「アキュビュー®」など。
2021/11/17 米高裁、バイデン政権の民間へのワクチン義務化を差し止め
連邦政府が新型コロナウイルスの感染防止策として発表した民間企業従業員へのワクチン接種義務化について、ルイジアナ州の5th U.S. Circuit Court of Appeals(連邦巡回裁判所)が一時的に実施を差し止める暫定命令を出した。
義務化の発動にはまだ1カ月程度あるが、共和党が知事を握る他の多くの州も訴訟を起こしており、今後、混乱が続くと思われる。
最終的に本件が連邦最高裁判所に持ち込まれる可能性もある。
付記
米ミズーリ州東部地区の連邦地裁は11月29日、高齢者や低所得者向けの医療保険を運営する政府機関 Centers for Medicare & Medicaid Services(CMS)による医療従事者へのワクチン接種義務化について、同機関の権限を超える可能性があるとして10州で一時差し止めを命じた。
米南部ルイジアナ州の連邦地裁は11月30日、CMSの従事者に新型コロナウイルスワクチンの接種を義務化する連邦政府の制度 を、裁判所が訴訟で判断を下すまで執行を一時停止するよう命じた。上記の10州以外の全 州に適用される。ホワイトハウスは12月1日、司法省はワクチン義務化を推進する政府の権限を「精力的に擁護するだろう」と発表した。
付記 new
米連邦最高裁は2022年1月13日、バイデン政権が導入した、従業員100人以上の企業に対して、従業員に新型コロナウイルスのワクチン接種か週1回の検査を義務付ける措置について、施行差し止めを命じる判断を下した。
判決は、保守派判事6人が差し止めを支持、リベラル派3人は反対した。
一方で、医療従事者にワクチン接種を義務付ける措置については施行を認めた。判決は5対4で、リベラル派全員と保守派のロバーツ長官およびカバノー判事が支持した。
判決は、OSHAの規則は連邦当局の通常の権力行使には当たらず、多くの従業員の生活や健康に対する重大な侵害になると指摘。議会の明確な承認なしにOSHAの規制権限を大幅に拡大することになるとした。
イデン大統領は声明で、最高裁がワクチン接種・検査の義務化を差し止めたことに失望しているとした上で、従業員にワクチン接種という簡単で効果的な措置を行うことを義務付けるかどうかは、各州と雇用者の判断に委ねられるとした。
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バイデン政権は11月4日、従業員100人以上の民間企業などに対して従業員の新型コロナウイルスワクチン接種を義務付ける規定を導入すると発表した。
対象となるのは従業員100人以上の企業と、医療従事者や連邦政府機関の業務を請け負う業者などで、来年1月4日までに、Pfizerか、Modernaか、Johnson & Johnsonのワクチン接種を完了することを義務付ける。
大統領は声明を発表し、「ワクチンはこのパンデミックから抜け出す唯一最善の道だ。私は義務化が必要になることは望んでいなかった。だがワクチンをまだ接種していない人があまりに多い」と指摘した。そのうえで、ワクチン義務付けに起因する大量解雇や人員不足はこれまでのところ起きていないと強調、「雇用主に行動を呼びかける」と訴えた。
労働省は今回の措置導入に関して、2020年以降、新型コロナウイルスによる米国内の死亡者はおよそ75万人に達するが、その多くは職場で感染したとし、ワクチン未接種の労働者を守るために緊急措置が必要と判断した結果だとした。
ワクチン義務付け対象:
1) 従業員100人以上の大企業の従業員 8400万人
労働省の労働安全衛生局(OHSHA)が監督に当たる。
OSHAの規定では、従業員が自分の意思でワクチンを接種しないことも認めている。
その場合は週1回以上の頻度で検査の陰性証明を雇用主に提示し、職場ではマスクを着用する必要がある。
違反した場合は1回につき約14,000ドル以下の罰金などを命じることもある。順守を徹底させるため、立入検査も予定している。
2) 医療機関の医療従事者 1700万人
公的医療保障制度のMedicareおよびMedicaid(低所得者向け医療保険)を運用するCMS (Centers for Medicare & Medicaid Services)が監督に当たる。
ワクチン接種が必要で、ワクチンに代わる陰性証明の選択肢は認めていない。
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これに対し、共和党が知事を握る10州の司法長官が11月10日に各地の連邦裁判所に訴訟を起こした。
ミズーリ、ネブラスカ、アーカンソー、カンザス、アイオワ、ワイオミング、アラスカ、サウスダコタ、ノースダコタ、ニューハンプシャーの各州。
カンザス州の司法長官は「医療施設・従業員にこうした追加の義務を課せば、問題が悪化し、特に十分なサービスを受けていない地方の一部の施設が、必要な数の従業員を雇えず、閉鎖される公算が大きい」との声明を発表した。
10州は、バイデン政権が「州の規制権限」を侵害したと主張、意見公募期間を設けずに義務化を発表したのは行政手続法違反だとしている。
ルイジアナ州の5th U.S. Circuit Court of Appeals(連邦巡回裁判所)は11月6日、連邦政府が新型コロナウイルスの感染防止策として発表した民間企業従業員へのワクチン接種義務化について、 一時的に実施を差し止める暫定命令を出した。
連邦政府の措置に「法律上および憲法上の重大な問題がある」と指摘。連邦政府に対し、差し止め請求への反論を8日までに行うよう命じた。
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司法省は11月8日、裁判所に対し、命令開始には1カ月あり、一時的に実施を差し止める暫定命令は必要がないと伝えた。非接種者のマスク着用義務は12月5日以降であり、ワクチン接種義務は1月4日からである。
また、連邦法では5つ以上の州が同様の訴えをする場合、1つの州を選ぶことが必要であるとした。
その場合、「くじ引き」によって一本化する制度がある。今回の連邦高裁の差し止め命令は今後、訴訟が別の高裁に一本化されれば、その高裁によって解除される可能性もある。
原告側の主張については、命令の否定のメリットが、数千人の命を救い、数十万人の入院を防ぐ命令のメリットを上回らないとした。命令を否定すると、1日当たり数十人、数百人の死者が出るとしている。
ホワイトハウスの副報道官は、「バイデン政権には労働者を守る権限がある。接種の義務化は命を守り新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐことを目的とするものである」と述べた。
労働省の弁護士は、法律は「労働者が重大な危険にさらされており、労働者を保護するために新しい基準が必要であると当局が判断した緊急時に、迅速に行動する権限をOSHAに明示的に与えている」と述べた。
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政府の回答を受け、5th U.S. Circuit Court of Appealsは11月12日、 ワクチンの義務化を、規制が広すぎる(staggeringly overbroad)とする 判決を下した。
3人の裁判官は、バイデン大統領の義務化は「OSHAの法的権限を著しく超えている」とし、「この義務化は、繊細に扱われたメスというよりも、職場と労働者の違いをほとんど考慮していない、なんでも叩く大きなハンマー("a one-size-fits-all sledgehammer)であり、義務化が対処しようとしているとされる「重大な危険」に対する労働者の感受性の度合いの違いをみていないとした。
We next consider the necessity of the Mandate. The Mandate is staggeringly overbroad. Applying to 2 out of 3 private-sector employees in America, in workplaces as diverse as the the country itself, the Mandate fails to consider what is perhaps the most salient fact of all: the ongoing threat of COVID-19 is more dangerous to some employees than to other employees.
All else equal, a 28 year old trucker spending the bulk of his workday in the solitude of his cab is simply less vulnerable to COVID-19 than a 62 year-old prison janitor. Likewise, a naturally immune unvaccinated worker is presumably at less risk than an unvaccinated worker worker who has never had the virus.
The list goes on, but one constant remains --- the Mandate fails almost completely to address, or even respond to, much of this reality and common sense.
各判事は、義務化は企業に経済的負担を強いるものであり、憲法に違反する可能性があるとし、「義務化は、OSHAの規制スキームへの参加を代行することで企業に経済的負担を強いるものであり、遵守を拒否したり怠ったりした場合には深刻な経済的リスクに晒され、不本意な従業員に注射やテストを受けさせたり、路頭に迷わせたりすることで、労働力および事業の見通しを衰退させる恐れがある」とした。
この高裁は保守的なことで知られ、判事3人はいずれも共和党政権時に任命されている。
連邦政府は、各州の異議を申し立てを1か所の裁判所で併合して審理すべきだとし、「その裁判所が決まるまで、ワクチンの義務化を見合わせる理由はない」という立場を維持している。
2021/11/18 JERA、Freeport LNG に出資
東京電力と中部電力のJVのJERAは11月15日、米国のFreeport
LNGプロジェクトを運営するFreeport LNG Development, L.P.に出資すると発表した。
インフラファンドであるGlobal Infrastructure Partnersの子会社が保有するFreeport LNG
Developmentの全権益 約25.7%を約25億米ドルで取得することを定めた権益売買契約を締結した 。
(これまでの情報ではGlobal Infrastructure持分は25%で、今回の25.7%との差については不明。)
Freeport LNG Developmentのパートナーは下記の通りとなる。
Michael S. Smith 会長 | 57.5% | |
大阪ガス | 10% | ←Contango Oil & Gas |
JERA | 25% | ←Global Infrastructure Partners← Zachry American Infrastructure ←Cheniere Energy |
Dow | 7.5% |
大阪ガスは2008年に出資。
Dowは2013年5月にFreeport
LNGのLNG輸出プロジェクトには参加しないと発表している
このため、Michael
S. Smith 会長 以外は、日本の大阪ガスとJERAが実質的な株主である。
大阪ガスとJERAは既に、第1系列の液化会社に出資している。
付記
Dowは2013年5月にFreeport LNGのLNG輸出プロジェクトには参加しないと発表しているが、Freeport LNGの出資は下記の通りとなった。
石油資源開発(JAPEX)は2024年5月30日、JERAの孫会社の持分の一部取得(15%)を発表した。取得価額は約3.8億USDで、 売買契約の締結完了2024年6月を予定。
Freeport LNG Development 63.5% 大阪ガス 10.8% JERA 25.8% →10.8% JAPEX →15.0% Dow 0%
Freeport LNGは2005年にテキサス州FreeportのQuintana
IslandにLNGを海外から輸入してガスに戻す設備を完成させたが(Dowはこの事業に参加)、米国内でガスの採掘が進んだため、天然ガスの液化設備を建設してLNGの輸出基地に替えることを決め、2010年にエネルギー省に輸出認可を申請した。
Freeport LNGの能力は公称
440万トン/年×3系列で、現状は3系列合計で約1,545トン。
商業生産開始:第1系列 2019/12/8、第2系列 2020/1/17、第3系列 2020/5/5
第4系列(500万トン)を計画中。
2012年4月にFreeport LNGは大阪ガス、中部電力(現在はJERA)との間で年220万トンずつ、合計440万トンの輸出契約を締結、同時に第一系列の液化会社に大阪ガスと中部電力が25%ずつ出資する契約を締結した。
LNG輸出のFTA非締結国向けについては2013年5月に承認を受けた。(FTA締結国向けは
2011/2)
2013/5/20 米エネルギー省、日本へのLNG輸出を許可
今回のFreeport LNG Developmentの出資により、JERAは、
第1系列液化会社への参加に加え、既存のフリーポートLNGプロジェクト(全3系列、年間生産能力約1,545万トン)全体に関与するのみならず、同社とともに、生産能力拡張プロジェクトや第4系列の開発などの新規LNG事業を進めることとなる。
(大阪ガスは既にこの立場にある。)
第3系列からの購入を契約した東芝は2018年11月、米国産LNGに係る事業から撤退すると発表した。
中国の民間ガス大手の新奥生态控股股份(ENN Ecological Holdings )への売却を決めたが、解除され、最終的にTotalに売却した。
2019/4/13 東芝、米国のLNG購入契約 譲渡できず 末尾に記載
Freeport LNG は2018年9月、住友商事の米国子会社との間で年間220万トン、20年間のLNG供給契約を締結したと発表した。
契約は、テキサス州Freeport の近くのQuintana Islandで建設中の第4系列LNGプラント(年産500万トン)が商業生産を開始する2023年にスタートする予定。
2018/9/12 住友商事、Freeport LNG とLNG長期購入契約締結
しかし、この契約は最終契約が締結されないまま、2020年に終了した。第4系列はまだ着工していない。
グローバルな需給ひっ迫のなか、多くの交渉が続いているとされ、CEOは、うまくいけば2022年夏にも着工の最終決定をするだろうとしている。
2021/11/19 Royal Dutch Shell、英本社に一本化し、社名をShell に変更
英蘭資本の石油メジャー、Royal Dutch Shell plc は11月15日、英国とオランダの二重構造となっていた株式や本社機能を英国に一本化する計画を明らかにした。組織構造を簡素化し、社名もShell plc.に変更する。
脱炭素社会の流れからエネルギー業界は変革を迫られており、経営の効率化や競争力の向上を狙う。
英政府がこれを歓迎する一方、オランダ政府は不快感を示している。
これまで、税制上の拠点をオランダとする一方、登記上の本社は英国に置き、株式もA株をオランダ、B株を英国で発行していた。
今後は税制上の拠点を英国に移し、株式の二重構造も廃止して英国に一元化する。これに伴い、社名から「Royal Dutch」を削除する。
グループのCEO、CFOは英国に移動する。
12月10日にオランダで開く株主総会で承認を得た上で実施する。
同社を巡っては、「物言う株主」の米国の投資ファンドのThird Point が出資比率を拡大しており、石油・精製・化学事業とガス・再生可能エネルギー・マーケティング事業の2社に分割することを提案していた。
ーーー
Royal Dutch Shellは、元は、オランダの Royal Dutch Petroleum(正式名
N.V. Koninklijke Nederlandsche Petroleum Maatschappij)と英国のThe
Shell Transport & Trading Company plcという別々の会社であった。
前者は1890年にオランダ王室からの特許状を得て、設立されたオランダ領東インド石油開発会社が元である。
Rockefeller 系のStandard Oil との競争が熾烈になったため、両社は1903年にAsiatic Petroleum CompanyというJV設立をきっかけに提携、1907年にRoyal Dutch Petroleumが60%、Shell が40%の比率で出資する持株会社を通じてグループ企業を統治するRoyal Dutch Shell Groupを形成した。この二元上場会社が100年近く続いた。
2005年5月、Royal Dutch Shell Groupは統合した。
新会社 Royal Dutch Shell plc を設立し、2つの親会社(Royal Dutch PetroleumとThe Shell Transport & Trading Company)を実質的に吸収する。
新会社は英国に設立され、本部はオランダのハーグに置き、税務上の本社はオランダに置く。
これまでの出資比率を守るため、Royal Dutch Petroleum株主には新会社の株式の60%、The Shell Transport & Trading Company株主には40%が支給される。
株主の受取配当金の税務上の扱い(源泉徴収の有無)を維持するため、新会社はA株とB株を発行する。
A株はRoyal Dutch Petroleum株主に支給され、B株は Shell Transport & Trading株主に支給される。配当はユーロ建てで決まるが、B株の株主は英ポンドで受け取る。ADRの保有者は米ドルで受け取る。
(会社はオランダ法人で、ポンドでの配当支払いは出来ないため、形式的に、英国法人である子会社のShell Transport and Trading / BG Group から配当を受ける形をとる。)A株はオランダ株のため、オランダの源泉徴収税 15%がとられる。B株は英国株で、源泉徴収課税はない。
ーーー
今後は税制上の拠点を英国に移し、株式の二重構造も廃止して英国に一元化する。
株主の立場はこれまでと変わりない。
新会社の株式はAmsterdamと London、ADRについてはNew York で上場される。
配当の受取方式は次のようになる。
11月18日、中国で国家反独占局(国家反垄断局)が発足した。
これまで独禁法は国家市場監督管理総局が管理していたが、国家市場監督管理総局から分離独立する形で誕生した。同じビルに入居する。
11月15日に国務院は国家市場監督管理総局の甘霖・副局長を独占禁止法担当部門の局長に任命した。この時点で独禁法担当部門の名称が「反壟断局」から「国家反壟断局」に変更されており、部門の地位が格上げされる可能性があると見られていた。
国家市場監督管理総局は今年、オンラインプラットフォーム運営企業を中心に、反競争的行為の取り締まりを強化しており、甘霖氏は大きな役割を果たしてきた。
2021/7/29 中国独禁法当局、規制強化
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中国の反壟断法(独占禁止法)は2008年8月1日施行された。
2008/8/4 中国、独占禁止法施行
反壟断委員会(国務院直属) 独占禁止政策の調査、市場動向のモニター、執行機関間の政策の調整 実務
機関発展改革委員会価格調査局 価格独占行為の調査・処分 商務部反独占局 事業者結合行為 国家工商行政管理総局
(工商総局)独占協定、市場支配的地位の濫用、行政権力を濫用した競争の排除・制限(価格独占を除く)
2018年3月、中国の「構造改革」の一環として、国家工商行政管理総局、国家品質検験検疫総局、国家食品薬品監督管理総局を統合し、国務院直属機構の国家市場監督管理総局が新設された。
これに合わせ、 これまで分割して管理されていた各省庁の独禁法関連の業務は全て、国家市場監督管理総局の反独占局に移管された。
2018/6/9 中国の独禁法執行体制変更
今回、国家市場監督管理総局から分離独立し、独禁法専任の国家反独占局(国家反垄断局)が生まれた。独禁法関連業務をすべて管轄する。
人民網日本語版は次のように報じている。
市場経済が発展するにつれ、公平な競争がますます重要になっている。現在、中国のマーケットエンティティの総数はすでに1億5千万を突破し、反独占の取り組みの強化と資本の無秩序な拡大の防止は、高水準の市場システム構築、質の高い発展推進、共同富裕の促進、高水準の対外開放実現への重要な意義がより一層顕在化している。
国家反独占局が発足したのは、反独占の体制・メカニズムのさらなる改善を体現している。このことは、反独占の監督管理の力を充実させ、市場における競争行為を着実に規範化し、強大な国内市場の建設を促進し、各種のマーケットエンティティの投資と事業展開、規範的で健全な発展のために、公平で透明かつ予測可能な良好な競争環境を創出するだろう。
2021/11/22 米下院、1.75兆ドルの税制・支出法案を可決、上院は不透明
米連邦議会下院は11月19日午前、社会的セーフティーネットや気候変動対策、増税といったバイデン米大統領の経済優先施策を盛り込んだ1.75兆ドルの税制・支出法案 Build Back Better Actを賛成220、反対213で可決した。
下院の共和党トップのマッカーシー院内総務が採決を阻止しようと11月18日午後8時半すぎから19日午前5時すぎまで8時間半にわたって法案を批判し続ける異例の演説を行った。下院の歴史における最長時間を更新したと報じられている。(下院にはフィリバスター制度はない。)
共和党 民主党 合計 欠員 賛成 220 220 反対 212 1 213 棄権 1 1 合計 213 221 434 1 欠員のフロリダ州の議席は2022/1/11に決まる。
同法案は上院に送付されるが、審議の行方はなお不透明な状況だ。
付記 上院では民主党穏健派のウエストバージニア州選出のJoe Manchin議員が現状のままの法案賛成に強く難色を示している。
もともと総額3.5兆ドルの予算規模で民主党が単独で起案を進めていたが、Manchin議員の要請でその半分の規模の1.75兆ドルまで圧縮させられた経緯がある。
今回の法案で同議員はChild Tax Credit(児童税額控除)の扱いに反対している。
本法案は財政調整法案に基づくため上院でも過半数の賛成で可決できるが、与野党が50:50のため1議員でも反対すると可決できない。
大統領は党内調整を続ける意向で、採決は来年にずれ込む。
付記
Joe Manchin上院議員は12月19日、法案を支持しないと表明した。法案の行方が更に不透明となった。
ーーー
米下院は11月5日夜、バイデン政権の2つの看板政策のうち、5500億ドル規模の超党派インフラ投資法案を可決した。
これは1兆ドル予算とも呼ばれる。既に予算配分済みの支出を除いた新規支出は約5,500億ドルである。
上院はすでに可決しており、バイデン大統領は11月15日、インフラ投資法案に署名、成立した。
2021/11/8 米インフラ法案、下院で可決、成立へ
子育て支援などに10年で1.75兆ドルを投じる歳出・歳入法案Build Back Better Actは党内調整になお時間がかかるため採決を先送りした。
これは「10年で3.5兆ドルの予算案」であったが、与党民主党内で意見が対立し、進展していないため、バイデン大統領が10月28日に1.75兆ドルに修正した Build Back Better Act を発表した。
2021/11/1 バイデン大統領、10年間3.5兆ドルの予算案を修正
6人の中道派議員が、1.75兆ドルの予算法案について「議会予算局による財源の精査が終わっていない」として早期の法案採決に反対した。下院で民主党から4人が反対すれば可決できないため、ペロシ議長は「説得は困難だ」と判断した。
次善の策として、議長はインフラ投資法案を先に成立させる方針に転じたが、今度は左派が、インフラ法案を通してしまうと、大型歳出法案がそのままでは通らない可能性があるとして議決に反対した。
最終的に中道派議員が「議会予算局の精査の結果が政府の推計と矛盾しなければ、大型歳出法案に賛成する」と文書で約束したことで、左派が態度を軟化させ、インフラ投資法案を可決した。
2021/8/11 米上院、5500億ドル規模のインフラ包括法案を可決、下院採決時期は不透明
今回、中道派議員が賛成し(1議員のみ反対)、Build Back Better Act を可決した。
但し、議会予算局(CBO)が11月18日に公表した収支見通しによると、大企業などへの増税だけでは法案の財源がまかなえず、2022〜31年の財政赤字が計3671億ドル増加する。ただ、この見通しには主要財源であるIRSの徴税強化の内容が含まれておらず、バイデン政権は徴税強化により収入が4000億ドル増加するとの試算を示し「法案の財源はすべて確保されており、財政赤字は増えない」と説明している。
しかしCBOは収入増が2070億ドルにとどまるとの独自の試算をまとめており、上院で穏健派の妥協を引き出せるか見通せない状況である。
上院では与野党が各50議席で、民主党から1名でも反対すれば否決される。
(賛否同票なら、上院議長を兼ねる副大統領が賛成票を投じると可決される。)
議会ではまだ、本年度(2021/10〜2022/9)の予算が通らず、本年12月3日までのつなぎ予算で運営している。
2021/10/2 米、政府機関の閉鎖回避 12月までのつなぎ予算成立
下院は9月21日、連邦政府の債務上限の適用を2022年12月16日まで凍結する民主党提出の法案を可決したが、上院では審議に入れなかった。
その後、債務上限を4,800億ドル引き上げる法案を可決したが、イエレン米財務長官は11月16日、連邦政府の12月15日にも上限に達するとの見通しを議会に示した。
2021/10/12 米上院、債務上限の一時引き上げ可決
12月3日までに更なるつなぎ予算が可決されないと政府機関の閉鎖もありうる。バイデン政権は、まだ大きな問題を抱えている。
2021/11/23 インドのReliance、AramcoとのOil-to-Chemicalsでの協力関係を棚上げ
RelianceとAramcoは、AramcoがRelianceのOil-to-Chemicals 部門に出資する契約に間もなく調印するのではと噂されていたが、Relianceが事業の中心をGreen energy に置くことを決めたため、検討中のOil-to-Chemical 事業への投資を再検討することで合意した。11月19日に発表した。
この結果、Oil-to-Chemical 事業をReliance 本体から分離するための会社法審判所(National Company Law Tribunal)への申請を取り下げた。
両社はインド及びサウジにおける投資での提携関係を継続する。
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Saudi AramcoとインドのReliance Industriesは2019年8月12日、AramcoがRelianceのOil-to-Chemicals 部門に出資する非拘束のLetter of Intent を結んだ。
Oil-to-Chemicals
部門は石油精製と石油化学と燃料のマーケティングの事業で、西海岸GujaratのJamnagar refining complex (精製能力
日量124万バレル)を含む。
燃料の卸事業については、BPとのJV(BPが49%)とすることを決めたため、JVの51%分が対象となる。
Oil-to-Chemicals 部門の事業価値を750億ドル(債務込み)と想定し、これの20%を取得する。150億ドルの投資となり、外国企業によるインドへの投資の最大のものの一つとなる。
2019/8/16 Saudi Aramco、インドのRelianceの石油・化学関連事業へ出資
インド政府がこれを阻止しようとして動いたが、Reliance とAramco は2021年4月、協議を再開した。
Reliance は2021年6月の株主総会で、SaudiAramco のYasir Othman Al-Rumayyan 会長を取締役に選任した。株式取引について年内完了を期待していた。
2020/1/4 インド政府、RelianceとAramcoの提携を阻止
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RelianceのMukesh Amani会長は2021年6月の株主総会で、同社がgreen energy に投資すること、Jamnagarに創業者の名前を採ったDhirubhai Ambani Green Energy Giga Complex を建設することを明らかにした。
新時代では燃料電池ギガファクトリーが内燃機関に代替し、自動車、トラック、バス、その他を動かすことになると述べた。
精油所のあるJamnagarの5000エーカーの土地に4つのギガファクトリーを建設する。
1.
太陽電池モジュール工場
2.
バッテリー工場
3.
水素の生産のための電解工場
4.
燃料電池工場
3年間でRs 75,000 crore(100億米ドル)以上を投じる。更に追加の Rs 15,000 が、バリューチェーンや提携、上流・下流産業を含む未来の技術に投じられる。
エコシステムの強化のため、2つの新部門、Renewable Energy Project Management and Construction Divisionと Renewable Energy Project Finance Divisionを創設する。
Reliance は10月10日、ノルウェーに本社を置く国際的な太陽エネルギー企業で、ヨーロッパ最大手のソーラーパネルブランドであるRECの株式を100%取得する契約に署名した。
Relianceが同時にSterling & Wilson Solarの株式の40%を取得した。
2021/10/15 Reliance Industries、欧州太陽電池REC Solar を買収
神戸地裁は11月22日、「関西スーパーマーケット」と阪急阪神百貨店などの運営会社エイチ・ツー・オーリテイリング(H2O)傘下の食品スーパー2社との経営統合の手続きを差し止める仮処分決定をした。
「関西スーパーマーケット」の臨時の株主総会で 食品スーパー2社との経営統合案が承認されたことをめぐり、首都圏のスーパー「オーケー」が賛否の集計に問題があったとして統合に向けた手続きの差し止めを求める仮処分を11月9日に裁判所に申し立てていた。
関西スーパーは同日、下記の通り発表した。
当社の主張が認められなかったことは誠に遺憾であり、当社は上記の決定に対し、保全異議の申立て等を行う予定です。
付記
最高裁第2小法廷(菅野博之裁判長)は12月14日、統合手続きの差し止めを求めるオーケー(横浜市)の許可抗告を棄却する決定をした。
オーケー側の主張を退け、臨時株主総会での経営統合の議決は有効と判断した。
「議決権行使者の意思が議案に賛成するものであることが明確であったなど、二審が認定した事実関係の下では、二審の判断は結論において是認できる」とした。
最高裁決定を受け、オーケーは同日、関西スーパーの買収を断念すると発表した。関西スーパーと食品スーパー2社(イズミヤ、阪急オアシス)は、12月15日に経営統合に向けて株式交換をする。
付記
関西スーパーマーケットは2022年1月6日、オーケーなど一部株主からの株式買い取り請求について、1株1518円で買い取ると発表した。
オーケーの提示していたTOB価格の2250円は下回る。
臨時株主総会の翌取引日から、それぞれの株主が買い取り請求権を行使した日までの株価終値の平均値(加重平均)を算出し、そのなかで最高値とした。
オーケーなど15人の株主が買い取りを請求しており、1518円で合意した場合、約74億円の資金が必要になる。
ーーー
付記
関西スーパーは11 月24 日付で、神戸地裁に保全異議の申立てを行ったが、地裁は11月26日にこれを退けた。同社は11月30日、大阪高裁に保全抗告の申立てを行 った。争いの場は大阪高裁に移る。
H2Oと関西スーパーは、統合予定日を当初の12月1日から12月15日に延期した。
付記
大阪高裁は12月7日、神戸地裁の仮処分決定を取し、経営統合を認めた。
「株主の意思が投票用紙と異なっていたと明確に認められることなどから賛成票として取り扱うことも許容されるべきで、法律に違反するとも、著しく不公正であるとも言えない」とした。
「オーケー」は、最高裁判所の判断を求めたいとして、抗告を行う方針を固めた。
大阪高裁は8日、統合差し止めを求めるオーケーの最高裁への許可抗告を認める決定を出した。
ーーー
阪急阪神百貨店を傘下に持つエイチ・ツー・オー(H2O)リテイリングは8月31日の取締役会で、大阪や兵庫で食品スーパーを展開する「関西スーパーマーケット」を子会社にすることを決め、発表した。
H2Oは、関西スーパーの株式を10.66%保有する筆頭株主で、株式交換で保有比率を58%まで引き上げて子会社化する。
関西スーパーはイズミヤ、阪急オアシスを100%出資の子会社にするなどし、3社を経営統合する。関西スーパーの事業については新設する事業子会社に移し、関西スーパーは中間持ち株会社になる。一連の統合作業は来年2月の完了をめざす。
2021年3月期の売上高は、イズミヤが1330億円、阪急オアシス が1107億円。関西スーパーが1289億円。
↓
2021年3月末時点での関西スーパーの上位株主は、1位が取引先持株会(保有比率10.07%)、2位が伊藤忠食品(4.94%)、3位が三菱東京UFJ銀行(3.96%)とみずほ銀行(同)。首都圏地盤のオーケーも7%強を出資していた。
そのオーケーは市場を通じて約160万株を約15億9000万円で取得し、9月2日にも追加取得して合計8.04%となった。保有目的は「政策投資、営業関係強化、重要提案行為などを行うこと」としている。
オーケーは9月3日、「関西スーパーマーケット」を買収したい意向を正式発表した。
関西スーパーに対し、時価の2倍超で上場来最高値と同
1株2250円でのTOBを提案した。
以前から経営陣との協議を申し入れていたが、関西スーパーから7月に、特別委員会で検討すると連絡を受けた。その後は数回やりとりがあっただけで「実質的な協議の場」が設けられないまま、関西スーパーは8月末にH2O傘下入りを発表した 。
オーケーは、10月に予定されている関西スーパーの株主総会でH2O子会社化に反対する考えを示し、H2O傘下入りが撤回・否決された場合、TOBを実施したいとし た。
関西スーパーの最近の株価は1000円〜1500円であるが、現株主は2,250円で売却できることとなり、利益は確実である。
これに対し、H2O案の場合は「新関西スーパー」(関西スーパーとイズミヤ、阪急オアシスを統合)の株式を受け取ることになるが、株価がいくらになるかは不明である。
統合による相乗効果で株価が上がるかどうか不明であり(下がることもあり得る)、上がるとしても、相乗効果がでるまで時間がかかる。
常識的にはオーケー案が有利だが、関西スーパーの株主の取引先持株会や伊藤忠食品などはH20との取引もあるため、短期の利益だけでは決められない。
ーーー
10月29日の関西スーパーの臨時株主総会(6時間)で、H2Oとの経営統合案が賛成 66.68%で可決された。可決には2/3の賛成が必要 だが、これをわずかに上回った。両方に納入する業者が多く、棄権したと見られた。
これを受け、オーケーは下記により、TOB提案を取り下げた。 オーケーの姿勢は立派である。
たとえ僅差による可決といえども、総会検査役の立会いの下で公正に議事運営された結果と考え、その結果を関西スーパー株主の判断であると真摯に受け止めた。
しかし、オーケーは11月8日、この臨時総会での集計に疑義が判明したことを明らかにした。
総会検査役の報告によ ると、一旦は本経営統合に係る議案が僅差で「否決」となる集計結果を確認した が、その後、関西スーパーの判断によって一部の「棄権」の投票の取り扱いが「賛成」に変更されたことにより、その結果が覆され、僅差での「可決」になったというもの。
マークシートによる投票に際しては、当該マークシートには「賛成・反対・棄権のいずれにもご記入がない場合は、棄権として集計いたします。」と明記され、議長からも「マークのご記入のない投票用紙をご提出いただいた場合は、棄権としてお取り扱いいたします。」ということを再三にわたり説明されていた。
集計の結果は僅差の否決であったが、最終的に可決とされた。ある株主から本来「賛成」する意図だったにもかかわらずマークシートを白紙で提出してしまったため、確認したい旨の申し出を 受けた。
(以下 関西スーパーの発表から)
直ちに、総会検査役の同席を求めたうえで、当該株主から事実確認を行いました。
その結果、以下の諸点が確認されました。
@この株主は、投票用紙に記入を行わなかったものの、投票用紙の回収の際に、本議案全てについて事前に行った賛成の意思表示のとおり議決権行使をする意思である旨を回収担当者に対して述べていたこと
A この株主が当日受付に提出した職務代行通知書に本議案に全て賛成の意思表示をする旨が記載されていたこと
Bこの株主が事前に提出していた委任状及び議決権行使書においても本議案について全て賛成の意思表示がなされていたこと
このような確認を経て、当社は、投票用紙の回収に際して回収担当者に対して述べられた内容については、投票用紙への記載と同様に取り扱うべきであることから、会社法その他の法令に照らし、この株主様は本議案の全てに賛成の投票をされたものと判断し、当該賛成票も含めて最終集計を行ったところ、本議案の承認可決が確定いたしました。
オーケーの主張:
総会検査役による報告を確認したのち、慎重を期して、外部の弁護士及び株主総会実務に詳しい専門家の意見を複数確認いたしました。かかる弁護士や専門家の全員に共通する意見として、以下の指摘を頂いております。
@ 上場企業における公正な株主総会の運営の在り方として、投票を締め切った後に特定の株主の投票内容のみを自社に有利に変更させること自体決してあってはならないこと
A 関西スーパーによる総会検査役に対する説明の真偽は確かめようがない上に、仮にその説明のとおりに、ある株主の方が本来は「賛成」する意図を有していたにもかかわらず本来の意図と異なる投票を行ったものだったとしても、投票を締め切った以上は、議長自身が議場で説明したとおり「棄権」として取り扱われるべきであること
B 仮に何らかの理由により例外的に当該投票が無効であり「棄権」として扱うべきでないと考えたとしても、その議決権の行使については「賛成」として扱われるべきではなく、「無効(不行使)」として扱われるべきであること
オーケーは、11月9日午後、統合手続きの差し止めを求める仮処分を神戸地方裁判所に申し立てた。
神戸地裁は11月22日、関西スーパーマーケットとエイチ・ツー・オーリテイリング(H2O)傘下の食品スーパー2社との経営統合の手続きを差し止める仮処分決定をした。統合を決めた臨時株主総会の手続きを巡り、食品スーパーのオーケー(横浜市)が示していた疑義を認めた。
裁判所の見解は次の通り。
白紙投票は「棄権」としか解することができない。
(株主の意図について)
総会に出席した株主は投票以外の方法で議決権を行使できない。投票した以上は、誤りがあっても訂正できない。決議の方法に法令違反または著しい不公正があり、決議に基づく株式交換を差し止める。
12月1日に予定されていた株式交換は一旦差し止められる。関西スーパー側は決定に不服があれば裁判所に異議を申し立てることができる。
関西スーパーは、保全異議の申立て等を行う予定としているが、この裁判所の判断が覆ることはないだろう。
オーケーは22日、仮処分決定を受けて「司法の良識ある判断が示されたものと受け止めている」とのコメントを発表した。同社は、差し止めが認められた場合には完全子会社化を前提にTOB(株式公開買い付け)を行う方針と発表している。
バイデン米政権は11月23日、日本や中国、インド、韓国、英国と協調して、今後数カ月かけて戦略石油備蓄(Strategic Petroleum Reserve)を5000万バレル放出すると発表した。
大統領は、他国と協調して備蓄を放出することで供給不足に対処し、値下がりにつながるとし、原油価格を抑える効果を訴えた。
放出量の5000万バレルは6億バレルの備蓄の約8%に相当し、国内需要の約3日分にあたる。
このうち、1800万バレルは議会が承認済みで、速やかに売却する。3200万バレルについては、将来備蓄に戻すのを 条件に今後数カ月間かけて石油会社に貸し出す。
原油価格は最近、7年ぶりの水準に急騰し、ガソリン小売価格は過去1年間で60%余り上昇している。
ここ数日の原油相場は備蓄放出の観測で下げていたが、世界需給への影響は限定的との見方が強く、買いなおす動きが出ている。WTIの24日の終値は78.39ドルとなった。
米政権は「OPECプラス」に対し、十分な原油供給量を維持するよう繰り返し求めてきた。しかし、OPECプラスは12月の原油の追加増産を見送った。
「OPECプラス」は7月18日の閣僚協議で、協調減産を8月から毎月日量40万バレルずつ縮小すると決めている。このままでいけば、2022年9月末に協調減産がほほ終了することになる。
今回の米国他の動きについて、「OPECプラス」の当局者らは、世界の石油消費国が計画する戦略備蓄の放出に対応する可能性が高いと警告した。
現在の市場の環境では備蓄放出は正当化されないとし、来週の会合で現行の生産引き上げ計画を再検討する必要があるかもしれないと述べた。
世界のエネルギー市場の主導権を巡って対立することになる恐れがある。
日本政府はバイデン政権の要請を受けて石油の国家備蓄の一部を放出する方針を決めた。
岸田首相は11月24日午前、石油の国家備蓄を初めて放出すると表明した。「米国と歩調を合わせ、現行の石油備蓄法に反しない形で国家備蓄石油の一部売却を決定した」と語った。原油価格の高騰を受けて上がるガソリンの価格を抑える狙いがある。 「原油価格の安定は経済回復を実現する上で大変重要な課題だ」とした。
萩生田経済産業相は、原油価格の高騰を抑えるために国家備蓄から放出する石油の量は、数十万キロリットルになると明らかにした。時期は精査中とした。必要なら追加も検討する。
その後、420万バレル(67万kl)と報じられた。
2日分の放出のため、国内の需給に与える影響は小さく、価格上昇を抑える効果があるとは思えない。
石油の備蓄放出としては、2011年6月にリビア情勢の悪化を受けて民間備蓄から出したのが最後で、国家備蓄からの放出は初めてとなる。
付記 過去の民間備蓄放出
1979年 第二次オイルショック
1991 湾岸戦争
2005 米国ハリケーン
2011 東日本震災、リビア情勢
石油の放出は、法律でガソリンなどの供給不足や地震など緊急時に限定されており、価格上昇の対応策としての放出は想定していない。
一方、国内の石油需要は年々減少しており、現在の備蓄量は法律で決められた量をかなり上回っている。
日本の石油備蓄は、国家備蓄、民間備蓄、産油国共同備蓄により実施している。(後記)
石油備蓄法では、国家備蓄は産油国共同備蓄の1/2と合わせ輸入量の90日分程度(IEA基準)、民間備蓄は消費量の70日分以上などと定めている。
2021年9月末現在の備蓄は、国家備蓄は1EA基準で133日分、産油国共同備蓄は6日分で、「産油国共同備蓄の1/2と合わせ輸入量の90日分程度」をはるかに超えている。
なお、民間備蓄はIEA基準で85日分となっている。
このため、政府としては余剰分であれば法律の枠組みの中で放出が可能だと判断し、余剰分を出すという異例の対応により各国と協調して取り組む。
直接の「備蓄の放出」ではなく、タンク内の古い石油を新しいものに入れ替える際に入れ替える量を減らす形をとる。入れ替える量を減らした石油は2022年3月までに入札で売り出す。
ーーー
韓国産業通商資源省の高官は11月18日、米国から石油備蓄を放出するよう要請があったことを確認したが、この時点では、「米国の要請について慎重に検討しているが、価格が上昇したからといって石油備蓄を放出することはない」と語った。韓国の現在の石油備蓄量は9700万バレルで106日分に相当すると明らかにした。
その後、放出を発表、量や時期は他国と相談するとした。量については前回のようなレベルになろうとしている。2011年のリビア危機の際には備蓄の4%、約350万バレルを放出した。
インドは500万バレルを放出する。
英国政府は、企業が自発的に150万バレルまでを放出するのを認めると発表した。 (1バレル=0.158987 kl)
中国の国家食料物資備蓄局はCNNに対し、中国政府が備蓄原油放出の作業をしていると述べた。
中国は、2017に9つの大きな備蓄基地があり、能力が3770万トンであることを明らかにしている。
付記
11月29日夜のBSフジ・プライムニュースがこれを取り上げた。
この問題はバイデン政権の矛盾の解決のため、日本などを巻き込んだものという。
米国消費者にとり、ガソリン値上がりは最大の問題で、政権としては放置できない。
産油国は、脱炭素で将来需要が減るのは必至で、儲かるときに儲ける必要があり、増産に応じない。
本来、産油国である米国が増産すればよいことである。トランプは生産者サイドに立ち、石油増産、パイプライン設置に動いたが、バイデンは脱炭素の立場で、石油・ガスの開発を規制し、パイプライン「キーストーンXL」の建設認可を取り消した。この結果、ガソリン価格上昇につながった。バイデン政策の矛盾が表面化した。
2021/1/29
Biden大統領、温暖化対策の大統領令、石油・ガスの開発規制
結論として、今後、石油増産の投資はなくなるため、需要が大幅に減らない限り、原油価格アップは必至である。
ーーー
日本の2021年9月末の石油備蓄は以下の通り。IEA基準はLPガス分を含む。
目標 |
備蓄日数 | 同 IEA基準 | 製品換算 | 保有量 | ||
原油 | 製品 | |||||
国家備蓄 | 90日* | 145日 | 133日 | 4,461万kl | 4,545万kl | 143万kl |
産油国共同 | 6日 | 6日 | 191万kl | ー | 201万kl | |
民間備蓄 | 70日 | 90日 | 85日 | 2,773万kl | 1,142万kl | 1,688万kl |
* (国家備蓄 + 産油国共同 x 0.5 )でIEAベースで90日
国家備蓄は、国家石油備蓄基地(10基地:合計能力4000万kl)と民間タンク借り上げにより行なわれている、
産油国共同備蓄は、産油国に東アジア向け基地として貸すもので、緊急時には日本に優先的供給をする約束をしている。
現在、下記の2カ所。
沖縄石油基地 SaudiAramco 130万kl
JX喜入基地 ADNOC 100万kl
2021/11/26 サムスン電子、米テキサス州に半導体工場新設
サムスン電子は11月24日、米国テキサス州Austin近郊のTaylor市に最先端の半導体工場を新設すると発表した。
建物、土地、工場設備などを含めた総投資額は170億ドルの見込みで、同社にとり米国最大の投資案件となる。
ホワイトハウスのSullivan大統領補佐官 (安全保障問題担当)と経済政策の取りまとめを担う国家経済会議のBrian Deese委員長は連名で、「工場の新設はサプライチェーンの保護や製造拠点の活性化、国内の雇用創出につながる」と歓迎、「バイデン政権は二度と半導体不足に直面しないよう、製造能力の拡大をはかるため、同盟国や友好国、民間セクターに働きかけ続けてきた。中間層を支援し、長期にわたる競争力を強化するため、引き続きあらゆる手段で製造やテクノロジー分野に投資していく」と 述べた。
2022年前半に着工し、2024年後半の製造開始を目指す。2,000人以上のハイテク人材の雇用、数千人規模の間接雇用、工場建設で6,500人以上の雇用を見込む。
Samsungは「新工場では先端工程が適用される」としており、半導体性能を左右する回路線幅で3ナノ(ナノは10億分の1)メートルの次世代品を生産するとみられる。
同社が現在量産する最先端は5ナノ品で、2022年に韓国の工場で3ナノ品の生産を始める予定であるが、米国新工場でも同じ性能の半導体を量産する見通し
。
台湾のTSMCは米国アリゾナでは回路線幅が小さい最先端型の工場(5nm)を建設中で、更に3nmの工場の建設を計画している。
2021/10/18 半導体大手、台湾のTSMCが日本で工場建設 に記載
Samsungにとって半導体回路を形成する「前工程工場」の新設は2017年に稼働した韓国平沢工場以来で、6カ所目となる。新工場が稼働すれば、韓国3カ所、米国2カ所、中国1カ所の生産体制となる。
同社は本年5月の韓米首脳会談後、170億ドルを投資し、米国内の第2ファウンドリー工場を建設する方針を発表、 その後、テキサス州Austin、アリゾナ州の2カ所 、New Yorkの計4カ所を候補とし検討してきた。
本年2月にテキサス州当局に提出した資料で、Austinと同市のあるトラビス郡から20年間で合計14億8000万ドルの税軽減措置を求めたことが判明した。
トラビス郡から今後20年間で100%の減税(7億1830万ドルの価値がある)を望んでおり、Austin市からの50%の減税(5年間で8720万ドル)も求めているほか、経済開発プロジェクトのための固定資産税の減税を与えることを可能にするテキサス税法の第313条の適用(推定2億5290万ドル相当)も要請しているという。
候補となっているニューヨークやアリゾナ州も不動産税の軽減措置を提供しているという。
最終的に、南西約25キロのAustin市内には1996年開設の同社半導体工場が既にあり、近接する両工場でインフラや資源を共有できる点が大きな決め手となった。
また、半導体産業の集積やインフラの充実度、地元政府の支援なども理由として挙げている。
Austin市周辺にはDell、Apple、Google、Facebookらハイテク企業が集積して おり、Silicon Hills と呼ばれている。最近ではOracleやTeslaがカリフォルニア州からAustinに本社を移転すると表明 している。
付記
2024年4月5日、サムスン電子が米テキサス州に建設中の半導体工場への投資額を約440億ドル(約6兆7000億円)と従来計画の2倍超に増やす可能性があることがわかった。
サムスンは2021年、170億ドルを投じてテキサス州テイラーに最先端の半導体工場を建設すると発表していたが、 追加で投じる資金は新たな半導体工場や先端パッケージングと研究開発のための施設に充てる計画だという。
WSJによると、サムスンは米政府からテキサスの新工場で数十億ドルの補助金を受け取る見通し。1社で受け取る金額としては最大規模が想定される。
米政府は2024年3月、米 Intel に最大85億ドルの補助金を支給すると発表した。台湾積体電路製造(TSMC)や米マイクロン・テクノロジーも補助金を受ける。
付記
米政府は2024年4月15日、韓国サムスン電子がテキサス州に建設する半導体の新工場と研究開発拠点に、最大64億ドル(9800億円)を補助すると発表した。
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Samsungの李在鎔副会長が11月14日、5年ぶりに北米に出張し、24日に帰国した。副会長は仮釈放中で、毎週木曜日に開かれる三星物産の合併・サムスンバイオロジックス不正会計疑惑関連の裁判に出席しているが、この時期は裁判がなく、海外出張が可能だった。新工場の発表は帰国後に行われた。
先ずModernaや世界トップの通信事業者Verizonの最高経営陣と会い、18日には米連邦議会を訪れ、半導体投資支援法案を担当する中心議員たちに会った。関連法案の可決などを巡る議会の協力を要請したという。
19日にはホワイトハウスの高官らと会い、半導体供給網問題の解決策や連邦政府レベルでの半導体企業向けインセンティブなどについて話し合った。
その後、西部に移動し、20日にMicrosoftのCEOと会って、半導体やモバイルだけでなく、仮想現実(VR)や増強現実(AR)、メタバースなど、浮上する次世代技術への協力やソフトウェア生態系の拡大について意見を交換、Amazon経営陣とは人工知能やクラウドコンピューティングなど、革新技術協力の拡大案について議論した。
韓国の財界関係者は、「特に今回の出張では、現地企業家だけでなく米国政界の中心人物たちと会って、グローバルサプライチェーン問題の解決および韓米友好増進に寄与するための民間外交官の役割を果たしたという点で、三星トップとしてさらに地位を高めた」と評価した。
米政府は半導体業界へ計520億ドルの補助金を拠出する方針。Samsung は補助金支給条件などを確認した上で、新工場建設を決定したという。
バイデン大統領は2021年3月31日、2兆米ドルを超えるインフラ投資計画 American Job Planを発表した。
そのうち、R&D、製造近代化、中小企業として5,800ドルが含まれている。
R&D、未来の技術への投資 1,800億ドル
製造業、中小企業活性化 3,000億ドル
Workforce Development 1,000億ドル大統領は、この中から、米国半導体業界の国内生産回帰の実現に向け、500億米ドルを割り当てることを明らかにした。
ホワイトハウスは、「超党派議員グループによって提唱されたCHIPS for America Act、American Foundries Act of 2020 の要望に従い、半導体の製造および研究に資金を投入する指示も出している」と述べた。2021/10/22 半導体供給問題:米国の場合
但し、当初の計画は大幅に削減されており、半導体向けの分がいくら残ったのか明らかでない。
また、競合となる米Intel が外国企業への補助金支出に反対姿勢を強めており、Samsungが予定通り補助金を受け取れるか不透明な面も残る。
公正取引委員会は11月24日、下請け企業への不当なしわ寄せを防ぐための対策を改定した。
原油高で納入コストが大幅に上がったのに、発注元が一方的に単価を据え置くことは、下請法が禁じる「買いたたき」の恐れがあるとの見解を周知する。コストを価格に適切に反映できる環境を整える。
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公取委は9月8日、最低賃金の引上げ等に伴い、買いたたき、減額、支払遅延などといった中小事業者等への不当なしわ寄せが生じないよう、「中小事業者等取引公正化推進アクションプラン」を策定した。
最低賃金の改定を含む労務費や原材料費等の上昇などが下請価格に適切に反映されることを促している。
今般、原油価格高騰に伴いエネルギーコストが大幅に上昇した下請事業者から単価の引上げを求められたにもかかわらず、親事業者が一方的に従来どおりに単価を据え置いて発注することについても、下請法上の「買いたたき」に該当するおそれがあることから、今般、新しく下記のQ&Aを作成した。
下請取引に対する監督体制の強化を更に進めていく。今後も引き続き、これらの成果を踏まえつつ、更なる取組を検討・実施していく。
原油価格の高騰に関する下請法Q&A
原油価格が高騰しているが、従来どおりの単価で発注することは問題な
A:
原油価格の高騰に伴いエネルギーコストが大幅に上昇した下請事業者から単価の引上げを求められたにもかかわらず、親事業者が一方的に従来どおりに単価を据え置いて発注することは、買いたたきに該当するおそれがある。
下請代金支払遅延等防止法
第4 親事業者の禁止行為
5. 買いたたき
(2) 次のような方法で下請代金の額を定めることは、買いたたきに該当するおそれがある。
ウ 原材料価格や労務費等のコストが大幅に上昇したため、下請事業者が単価引上げを求めたにもかかわらず、一方的に従来どおりに単価を据え置くこと。〈製造委託、修理委託における違反行為事例〉
5−3 下請代金を据え置くことによる買いたたき
(1) 親事業者は、親事業者から下請事業者に対して使用することを指定した原材料の価格や燃料費、電気料金といったエネルギーコスト、労務費等のコストが高騰していることが明らかな状況において、下請事業者から従来の単価のままでは対応できないとして単価の引上げの求めがあったにもかかわらず、下請事業者と十分に協議をすることなく、一方的に、従来どおりに単価を据え置くことにより、通常の対価を大幅に下回る下請代金の額を定めた。
南アフリカの専門家らは11月25日、少数ながら新型コロナウイルスの新たな変異株を検出したと発表した。
11月9日に採取された検体から最初の感染が確認された。11月24日にWHOに報告された。
この変異株は「B.1.1.529」と呼ばれ、体の免疫反応を回避したり、感染力を高めたりする可能性がある「非常に珍しい」変異を持つ。
生物情報学を研究するProf de Oliveira は25日の南アでのブリーフィングで、「B.1.1.529」には異例の多くの変異が生じており、これまでの例と「極めて明確に異なっている」と指摘した。
全体で50か所の変異があり、うち、スパイクたんぱくで32の変異がある。ワクチンはこのタンパク質を標的にしている。
変異が多すぎ、当初の武漢株とは著しく異なっている。このため、当初のウイルスを前提にしたワクチンが効かない可能性がある。
英ロンドン大学遺伝学研究所の科学者によれば、免疫不全の人の慢性感染の過程で進化したとみられ、治療を受けていないHIV感染者だった可能性がある。南アのHIV感染者は820万人と世界最多である。
WHOは11月26日「B.1.1.529」をオミクロン(Omicron)と命名、最初からVOC(Variants of Concern:懸念される変異株)に追加した。
複数の変異について「うちいくつかは懸念すべきだ」と表明した。ほかの変異ウイルスに比べ再感染する可能性が高いとみられるという。
VOC(Variants of Concern):懸念される変異株 感染しやすい、重症化しやすい、ワクチンや治療薬が効きにくいことなどが既に実証されている変異株
VOI(Variants of Interest):注目すべき変異株
VOCよりは警戒度は低いが、市中において複数の感染例やクラスターが確認されている変異株
日本の国立感染症研究所は11月26日、感染・伝播性、抗原性の変化等を踏まえた評価に基づき、注目すべき変異株(VOI:Variants of Interest)として位置づけ、監視体制の強化を行うと発表した。→11月28日にVOCに引き上げた。
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医療機関からの初期情報によると、この変異株は国内最多の人口を有する南アフリカの北部ハウテン州(Gauteng Province:州都はヨハネスブルグ)で急速に感染を拡大させている。他の8州にもすでに感染が及んでいる可能性があるという。
南アで確認された症例は約100例。ボツワナ(南アの北側、ハウテン州に近い)と香港でも確認されている。研究者によると、ハウテン州の新規感染者は90%がこの変異株への感染である可能性もある。
香港に到着した旅行者2人から「B.1.1.529」が検出された。香港政府が11月25日遅くに明らかにした。
1人は南アからの帰国者だが、もう一人はカナダからの帰国者で、向かいの部屋に隔離されていた。南アからの帰国者がマスクなしでドアを開けた際に、空気感染したと見られる。2人ともワクチンを2回接種している。2つの部屋と、同じ階の廊下と共用エリアの環境から陽性の検体が採取された。
ヨーロッパでも初めてベルギーで感染者が見つかり、既に世界に広がっている可能性も出てきた。
感染したのは若い成人女性で、ワクチンを接種しておらず、体内に抗体ができる感染歴もなかった。
11月11日にエジプトからトルコ経由で戻った。南アや近隣国との直接的なつながりはないという。イスラエルの感染者はアフリカ南部マラウイからの渡航者だった。
イスラエルでも見つかった。マラウイ(モザンビークの北)からの渡航者だった。他に感染した可能性の高い人が3人いるという。
(本稿作成は11月28日朝だが、その後、各国で多数が発見されている。)
英政府は11月25日、新たな変異株に対する懸念を理由に南アなど一部のアフリカ諸国からの航空便を一時禁止すると発表した。
日本政府は11月26日、新型コロナウイルスの新たな変異株が南アフリカで発見されたことを受け、水際対策を強化した。
強化する対象者は南アフリカやナミビア、ジンバブエ、ボツワナ、レソト、エスワティニの6カ国からの入国者や帰国者で、指定の場所で10日間の待機を義務付ける。
27日には、モザンビーク、マラウイ、ザンビアのアフリカ3カ国を水際強化の対象に追加した。付記 岸田首相は11月29日、全世界からの外国人の新規入国を11月30日午前0時から当面の間、原則禁止すると発表した。
付記 11月28日に第三国経由で成田空港に到着したナミビア大使館の外交官からオミクロン株が検出された(11月30日)。同行した家族2人は陰性だった。
EUは11月26日の緊急協議で、アフリカ南部7カ国から域内への渡航を制限する方針で一致した。上記6カ国にモザンビークを加える。
WTOは緊急の会合を開き、11月30日から12月3日までスイスのジュネーブで4年ぶりに開催することにしていた閣僚会議を無期限延期すると発表した。
林外相と萩生田経産相は現地への訪問を取りやめる。
EUは11月26日、Charles Michel大統領が訪日し11月29日に岸田首相と東京で会談すると発表したが、コロナウイルスの急拡大を受け、延期した。
ワクチンが効かない可能性があるとされるが、PfizerとBioNTechはオミクロン株へのワクチンの有効性を検証中で、今後2週間でデータが得られる見通し。ワクチンの改良が必要な場合は6週間以内にワクチンの内容などを再設計し、早期の生産を目指す。
ModernaやJohnson & Johnsonもワクチンの有効性を調べる試験などに着手しているという。
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WHOは「B.1.1.529」をオミクロンOmicronと命名し、VOC(Variants of Concern )に追加した。
ギリシャ語アルファベットでは、ミュー(mu)の次はニュー(nu)、クサイ (xi)、オミクロン (omicron)だが、何故か、ニューとクサイを飛ばした。
ネットには、尾身会長のオミから「尾身クローン」だと話題になっている。
実際は、ニューとクサイは意図的に避けられた。ニューは「new」という言葉と混同するため、クサイは「ある地域に汚名を着せないようにする」ためにそれぞれスキップされた。
クサイについては、英語ではxiと書くが、中国の習近平国家主席の英語名(Xi Jinping)と同じであることから、WHOが中国に気を遣って使用しなかったとの臆測が広がっている。
WHOのVOCとVOIは下記の通り。(2021/6/15 時点の表に加除した。)
随時、加除されており、当初、「注意すべき」としてVOIに入れたが、その後、問題なしとして削除したものが多い。
WHO 判断 |
WHO label | 最初に発見 | 変異 | ||
VOC: Variants of Concern |
アルファ |
VOC-202012/01 ( B.1.1.7) |
2020/9 英国 |
従来株よりも感染しやすく(1.32倍)、 重症化しやすい可能性あり。 |
23箇所の変異 H 69/V70欠失、Y144欠失、N501Y、A570D、P681H等 |
ベータ |
501Y.V2 (B.1.351) |
2020/5 南ア |
従来株よりも感染しやすく(1.5倍)、 免疫やワクチンの効果を低下させる可能性あり。 |
N501Y (easily
gain access to our cells) E484K, K417N (affect our immune system) 242-244欠失 |
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ガンマ |
501Y.V3 |
2020/11 ブラジル |
従来株よりも感染しやすく(1.4〜2.2倍)、 免疫やワクチンの効果を低下させる可能性あり。 |
N501Y (easily
gain access to our cells) E484K, K417N (affect our immune system) |
|
デルタ | B.1.617.2 | 2020/10 インド |
感染力 1.95倍 | L452R | |
オミクロン (11/26追加) |
B.1.1.529 |
2021/11 南ア |
K417N, N440K, G446S, S477N, T478K, E484A, Q493K, G496S, Q498R, N501Y, Y505H | ||
VOI: Variants of Interest |
B.1.427およびB.1.429 |
2020/3 米国 |
従来株よりもやや感染しやすく、一部治療薬の効果を低下させる可能性あり。 | L452R | |
P.2 |
2020/4 ブラジル |
||||
B.1.525 | 2020/12 多数国 |
||||
P.3系統 |
2021/1 フィリピン |
従来株よりも感染しやすく、免疫やワクチンの効果を低下させる可能性あり。 | N501Y E484K |
||
B.1.526 | 2020/11 米国 |
||||
B.1.617.1 |
2020/10 インド |
L452R、E484Q、P681R | |||
ラムダ | C.37 | 2020/8 ペルー |
感染力の強さに加え、ワクチン効果が最悪で
1/5落ちる。 南米のほか米国やドイツなど計29カ国で感染が確認 |
490番目のまったく違う新しいところに変異 | |
ミュー 8/30追加 |
B.1.621 |
2021/1 コロンビア |
国立感染症研究所による国内における変異株の分類(2021年10月28日時点)はWHOと異なる。VOC、VOIのほかにVOUがある。
11月26日にオクミロンをVOIに加えた。(これまでVOIは該当なしだった。)→ 11月28日にVOCに引き上げた。
分類 |
定義 |
主な対応 |
該当 変異株 |
懸念される変異株 (VOC; Variants of Concern) |
公衆衛生への影響が大きい感染・伝播性、毒力*、及び治療・ワクチン効果の変化が明らかになった変異株 |
対応 ? 週単位で検出数を公表(IDWR) ? ゲノムサーベイランス(国内・検疫) ? 必要に応じて変異株PCR検査で監視 ? 積極的疫学調査 |
ベータ株 ガンマ株 デルタ株 オクミロン |
注目すべき変異株 (VOI; Variants of Interest) |
公衆衛生への影響が見込まれる感染・伝播性、毒力、及び治療・ワクチン効果や診断に影響がある可能性がある、又は確実な変異株で、国内侵入・増加の兆候やリスクを認めるもの(以下、例) ・検疫での一定数の検知 ・渡航例等と無関係な国内での検出 ・国内でのクラスター連鎖 ・日本との往来が多い国での急速な増加 |
警戒 ?週単位で検出数を公表(IDWR) ?ゲノムサーベイランス(国内・検疫)で監視 ?積極的疫学調査 ?必要に応じて変異株PCR検査の準備
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オクミロン |
監視下の変異株 (VUM; Variants Under Monitoring) |
公衆衛生への影響が見込まれる感染・伝播性、毒力、及び診断・治療・ワクチン効果に影響がある可能性がある変異を有する変異株 また、VOCやVOIに分類された変異株であっても、以下のような状況では、本分類に一定期間位置付ける ・世界的に検出数が著しく減少 ・追加的な疫学的な影響なし ・国内・検疫等での検出が継続的に僅か ・特に懸念される形質変化なし |
監視 ?発生状況や基本的性状の情報収集 ?ゲノムサーベイランス(国内・検疫)で監視 ?(VOC/VOIからVUMに移行後国内発生が継続するものは)週単位で検出数を公表 (IDWR)
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アルファ株 (旧)カッパ株 ラムダ株 ミュー株
AY.4.2
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https://www.niid.go.jp/niid/ja/2019-ncov/2551-cepr/10792-cepr-b11529-2.html
三菱マテリアルは1962年にアルミ圧延品事業、72年にはアルミ缶事業に進出し、半世紀にわたってアルミ事業を展開してきた。三菱アルミニウム (圧延)とユニバーサル製缶(アルミ缶)の一貫生産体制で、アルミ缶リサイクルの分野で存在感を示している。
三菱マテリアルでは、同社の他の事業とのシナジーが見出しにくいアルミ事業について、収益構造改善を実施しつつ、事業再編の機会を模索してきた。
その状況下、アルミを含む素材業界に関するグローバルな知見及び経営資源を持つApolloの下で事業の競争力強化を追求していくことが三菱マテリアルにとってもアルミ事業2社にとっても最良の選択であるとの結論に至ったもの。
今後、銅加工品などに経営資源を集中する。 「EVなどで底堅い需要が見込まれる銅加工品や航空機需要回復が期待される超硬工具、金属リサイクルに配分する」としている。
売却額は公表していないが、負債を含めて約600億円との報道がある。三菱マテリアルでは、事業再編損失として約290億円の特別損失を計上する。
なお、本件に関する三菱マテリアルの説明は下記のとおりで、非常に分かりにくい。
・・・昭和アルミニウム缶に対し、当社が保有するユニ缶社の全ての株式を譲渡すること及び吸収分割により三菱アルミ社のアルミ圧延・押出事業を承継させたうえで新会社に分離再編すること等に関する契約を締結することを決議いたしました。
同社に問い合わせたところ、「三菱アルミの営む全事業(箔も含む)を昭和アルミニウム缶に譲渡」とのこと。
昭和アルミニウム缶は元は昭和電工の事業。
昭和電工は本年6月と8月に、会社分割によりアルミ缶事業を昭和アルミニウム缶鰍ノ、アルミ圧延事業を昭和電工堺アルミ鰍ノ承継、いずれもApollo Global Managementのファンドに引き継がれた。
Apollo Global Managementグループでは、昭和アルミニウム缶とユニバーサル製缶が統合することで、東洋製罐 グループホールディングス、大和製罐と並び大手3社の一つとなる。
UACJは2013年10月に古河スカイと住友軽金属工業が経営統合し、発足した。
社名のUACJは、世界市場を目指すとして「United Aluminium Company of Japan」の頭文字から採った。
Apollo Global Managementグループは昭和電工からの買収で圧延とアルミ缶を分離したが、今後、アルミ圧延事業の昭和電工堺アルミも一体化するのではないかと思われる。
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なお、三菱マテリアルは11月12日、孫会社(100%子会社の三菱電線工業の100%子会社)の菱星システム鰍、通信事業者向けの電気・通信基盤構築を手がけているエクシオグループ鰍ノ譲渡すると発表している。
菱星システムは下記の事業を行っている。
@ 電力送電線および配電線の建設を担う電設事業
A 有線、無線の通信工事でシステム建設を担うシステム事業
B ロードヒーティング、電気床暖房の環境システムを建設する冷熱事業