2021/10/15 Reliance Industries、欧州太陽電池REC Solar を買収
インド大手財閥Reliance Industries Ltd は10月10日、子会社のReliance New Energy Solar を通じて、欧州の太陽電池大手REC Solar Holdings をChina National Bluestar (中国藍星)から 771百万ドルで買収すると発表した。
また、Reliance New Energy Solar が、太陽光発電のEPC(設計・調達・建設)を手がける地場のSterling & Wilson Solar の株式を40%取得するとも発表した。
再生可能エネルギー関連事業の拡大につなげる。
Reliance のMukesh
Ambani会長はRECの買収発表にあたり「気候危機に打ち勝つためのグリーンエナジーへの移行に向けて、インドは世界のリーダーになれる」とコメントした。
Relianceは石油化学を中心に発展してきた財閥だが、近年は事業モデルの転換を進めている。
Ambani会長は6月の株主総会で、今後3年で太陽光や水素などの分野に7500億ルピー(約1兆1000億円)を投資すると表明していた。
Relianceはインド最大の私企業で、石油化学を中心に、石油・ガス開発、小売、インフラ、バイオテクノロジーなどの事業を手がけるインド最大のコングロマリットで、石化業界のリーダーである。
同社については 2007/3/14 インドのReliance
が IPCLを吸収合併
Reliance IndustriesとSaudi Aramcoは2019年8月12日、AramcoがRelianceのOil-to-Chemicals
部門に出資する非拘束のLetter of Intent を結んだ。
インド政府はこれに反対していたが、2021年末までに実現する見込み。Relianceは2021年6月の株主総会でAramco会長を取締役に選んだ。
2020/1/4 インド政府、RelianceとAramcoの提携を阻止付記
ーーー
REC
Solarは1996年設立で、ノルウェーに本社を置く。
事業本部をシンガポールに置き、北米、欧州、豪州、アジア太平洋に拠点を持つ。
1996年に Fornybar
Energi として設立された。2000年9月に ScanWafer AS とSolEnergy AS と合併し、REC
Solarとなった。
1997年にノルウェーとスウェーデンでウェハー、太陽光セル、太陽光モジュールを生産開始した。
2010年にシンガポールの最先端工場でウェハー、セル、モジュールの全自動・統合生産を開始した。
製品は、欧州、米、豪、タイ、インド、日本をはじめとする多くの地域で採用されており、2020年末時点での累計出荷枚数は4,300万枚以上、出力で11.3GW以上である。
REC Solarは2014年11月、中国のBluestarの傘下の投資法人Bluestar
Elkem Investmentに事業を売却すると発表した。株式の取得価格は43億4000万ノルウェークローネ(約750億円)。2015年1月に同社の臨時株主総会で承認を得た。
China
National Bluestar (Group) Corp. (藍星グループ)は中国化工集団公司(CNCC:ChemChina)を構成する中核会社。
2004年にChina
National Blue Star (Group) Corp と China
Haohua
Chemical Industrial (Group) Corp
が統合して中国化工集団公司が誕生した。
2007年に中国化工集団公司と米国の投資会社であるBlackstoneは戦略的提携を発表、Blackstone はChina
National Bluestar (Group) Corp.の20%を6億米ドルで取得した。
ーーー
Relianceが同時に株式の40%を取得したSterling & Wilson Solarについて:
インドのWilson Electric Works と Shapoorji Pallonji
Constructionは以前からインドの諸プロジェクトを共同で行なってきたが、1971年にWilson Electric Works がShapoorji
Pallonjiのグループ会社の Sterling Investmentsと合併し、EPC会社のSterling and Wilsonとなった。
2011年に太陽光発電のEPCを行なう事業を開始、2017年に独立し、Sterling
& Wilson Solar
となった。
インド、東南アジア、中東、アフリカ、欧州、南北アメリカ、豪州と、世界中で257件のプロジェクトを行い、合計能力は 11.4 GWp。
2021/10/16 中国当局、独禁法違反で美団に
5.27億ドルの罰金
中国の国家市場監督管理総局は10月8日、食品宅配最大手の美団に対し、市場の支配的な地位を乱用したとして「違法行為」の中止を命じ、34億元(5億2740万ドル)の罰金を科したことを明らかにした。罰金は同社の2020年の国内売上高の3%に相当する。
2010年に創業した美団は食品宅配や旅行予約などの生活全般のサービスを提供するネット企業として急成長してきた。「Uber
Eats」のような存在で、中国で広く利用されている。
国家市場監督管理総局は、加盟店が美団のプラットフォームのみの利用を強要されている疑いがあるとして、4月に美団の独占禁止法調査を開始した。
2018年以降、取引先に美団の競合企業と取引をしないよう求める契約を交わしていた。「二者択一」(「二選一」)と呼ばれる行為で、当局は約7割のシェアを持つ同社が、市場で支配的地位を乱用してきたと認定した。
美団は取引先に競合と取引しないよう求めたが、これに違反すれば、契約の際に預かっていた保証金を没収する措置をとっていた。美団が没収した保証金は12億8900万元に上り、当局はこの全額の返還も命じた。
国家市場監督管理総局は同社に、手数料の仕組み改善や提携する飲食店の法的権利保障、配送ドライバーの保護強化を命じた。
美団は罰金を受け入れ、同局から命じられた是正措置を実施すると表明した。
ーーー
中国のネット大手に対する規制当局の圧力は強まり続けている。
国家市場監督管理総局は本年4月、電子商取引大手のアリババ集団(Alibaba
Group)に対して、同様の慣行を理由に過去最高の27億5千万ドル(2019年の中国国内の売上高の4%)の罰金を科した。
国家市場監督管理総局は7月24日、インターネットサービス大手のTencent(騰訊控股)に対し、音楽配信事業で楽曲の独占的利用を是正するよう命じた。Tencentが2016年に実施した音楽配信大手
中国音楽集団(China Music ) の買収を問題視した。
7月10日にはTencent系のゲーム動画配信サイト
「闘魚」を運営する武漢闘魚網絡科技と同業の「虎牙直播」を運営する広州虎牙信息科技の合併を認めないと発表した。虎牙と闘魚は同国のゲーム動画配信市場で1、2位を占める。
国家市場監督管理総局(市場監管総局)は7月7日、インターネット業界の複数の大手企業が、独占禁止法上の「事業支配力の過度な集中」を避けるために定められたJVの事前の届け出を怠っていたとして、該当する22件に行政処分を下した。
2021/7/29 中国独禁法当局、規制強化
2021/10/18
半導体大手、台湾のTSMCが日本で工場建設
半導体受託生産会社(foundry)世界最大手のTSMC:台湾積体電路製造(Taiwan
Semiconductor Manufacturing Company)は10月14日、日本に新工場を建設すると発表した。
1990年代以降、ゲート長が250nm、180nm、130nm、90nm… と短くなるにつれ、装置のコストだけでなく、クリーンルームの清浄度の向上も必要となり、クリーンルームの建設・維持・管理には莫大なコストが必要となってきている。
このため、各社がそれぞれ一貫生産をすることが難しくなり、設計と製造が分業され、半導体の設計は行うが生産ラインを持たないfablessと、半導体チップ製造専門のfoundryに分かれた。
半導体受託生産会社(foundry)として、TSMCは世界のシェア50%と圧倒的である。他に、韓国のSamsung電子が18%、台湾のUMC(聯電)が8%で続く。
なお、回路幅が10nm未満の先端半導体では、世界シェアの9割超を握る。
同社は
2022年に工場を建設を始め、2024年から量産する計画で、魏哲家CEOは「当社の顧客および日本政府の双方から、このプロジェクトを支援するという強いコミットメントを得た」と話した。
総投資額は1兆円程度になるとされ、日本政府は先端半導体工場を国内に誘致する意向を表明しており、総事業費の半分程度を補助できるよう調整に入った。関連費用を今年度の補正予算案に盛り込む方針
とされる。
政府は6月に「半導体・デジタル産業戦略」(下記)を策定し、半導体のてこ入れに「国家事業として取り組む」と宣言している。
建設地は熊本県菊陽町にあるソニーセミコンダクタマニュファクチャリングの画像センサー工場の隣接地が検討されている。ソニーや自動車部品大手のデンソーなどと協力する可能性もある。
なお、TSMCはつくば市に研究開発拠点を新設し、最先端半導体の開発を進めると発表している。開発には、半導体の製造装置や素材に強みがある日本メーカーや研究機関も参画する。総事業費は約370億円で、日本政府が約半分の190億円を補助する。
付記
2022年4月19日、熊本県菊陽町と立地協定を結んだ。
TSMCの劉会長は2023年6月6日に開かれた株主総会のあとの会見で「現在、日本で2つ目の工場の建設を検討中で、やはり熊本に建設する予定だ」と述べた。2つ目の工場の土地はまだ取得中で、計画はまだ日本政府と協議中だとしている。
付記
TSMCは2024年2月6日、日本で2番目となる半導体工場を熊本県に建設すると正式に発表した。運営子会社のJapan
Advanced Semiconductor Manufacturing (JASM)にはソニーグループ、デンソーに加えて新たにトヨタ自動車が出資し、第1工場と合わせた投資額は200億ドル、日本円で2兆9600億円を超える規模となる。
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当初 |
2022/2 |
2024/2 |
TSMC |
80%以上 |
70%程度 |
86.5% |
ソニーグループ |
20%未満 |
20%未満 |
6.0% |
デンソー |
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10%超 |
5.5% |
トヨタ |
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|
2.0% |
合計 |
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100% |
年末までに始め、2027年末の稼働開始を目指す。
なお、第一工場は着工から1年8カ月という異例の速さで工事を終え、2024年2月24日に開所式を開く。年末の量産開始を目指す。
両工場の生産品目は下記の通り。
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生産品目 |
月間生産能力 |
第一工場 |
12/16nm、22/28nm |
55,000枚(300mmウェーハ) |
第二工場 |
6/7nmなど |
1, 2工場合計100,000枚以上 |
経産省は2022年6月に新しく設定した「認定特定半導体生産施設整備等計画」に選び、最大4760億円を助成する。第二工場には7500億円規模が盛り込まれるとされている。
第一工場は2024年2月24日、開所式を行った。
斎藤経済産業相は同日、熊本第2工場に最大7320億円を助成すると明らかにした。
ーーー
TSMCは現在、台湾内外に17の製造工場を持つ。海外での大規模工場は、稼働中の中国と建設中の米国(2021年から建設開始、2024年の稼働)に続き日本が3カ国目となる。
米国にはテキサス州Austin とカリフォルニア州San Joseに設計センターを持つ。
なお、同社は7月に、ドイツ政府から工場誘致の話があり、検討を開始していると述べた。
工場建設がドイツ国内の主要クライアントにとって重要かつ効果的かどうかを確認している段階で、まだ何かを公表できる段階には至っていないとした。
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台湾 |
中国 |
USA |
12-inch GIGA
FABs
(300mm) |
本部/R&D:Fab
12A/B(新竹Science Park) |
TSMC Nanjing
Company, Fab 16
(南京) |
建設中
アリゾナ州 Phoenix |
Fab 14(台南Science Park) |
Fab 15(中部Science
Park:台中市) |
Fab 18(台南Science Park) |
8-inch Fabs
(200mm) |
Fab 3(新竹Science Park) |
TSMC China
Company, Fab 10
(上海) |
WaferTech L.L.C., Fab
11
(ワシントン州 Camas) |
Fab 5(新竹Science Park) |
Fab 6(台南Science Park) |
Fab 8(新竹Science Park) |
6-inch Fabs
(150mm) |
Fab
2(新竹Science Park) |
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Backend Fabs |
Advanced Backend Fab
1(新竹Science Park) |
|
|
Advanced Backend Fab
2(台南Science Park) |
Advanced Backend Fab
3(桃園市) |
Advanced Backend Fab
5(中部Science Park:台中市) |
中国では前世代型の工場(南京は28nm)を稼働させている。
米国アリゾナでは回路線幅が小さい最先端型の工場(5nm)を建設中で、更に3nmの工場の建設を計画している。
台湾では台南で3、5nmの工場を建設中で、新竹では2nmの新工場を計画している。
これに対し、日本で生産するのは、演算用のロジック半導体で22〜28nmの前世代型技術を想定している。
スマートフォンなどに用いられる10nm前後の最先端半導体の供給確保は、今後も課題として残る。
ーーー
「半導体戦略」(経済産業省 2021年6月)
https://www.meti.go.jp/press/2021/06/20210604008/20210603008-4.pdf
(参考)
エルピーダメモリは破綻し、米国のマイクロンメモリが引き取った。
ルネサスはその後、過剰な設備や人員を抱え、最終赤字が続き、産業革新機構その他の出資を仰いだ。
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当初 |
2014/3/31 |
2018/6/30 |
2021/6/30 |
産業革新機構 |
ー |
69.15% |
33.38% |
20.26% |
三菱電機 |
25.1% |
6.26% |
4.53% |
3.91% |
日立製作所 |
30.7% |
7.66% |
3.71% |
3.20% |
NEC |
33.4% |
0.75% |
ー |
ー |
デンソー |
ー |
0.49% |
4.99% |
7.92% |
トヨタ自動車 |
ー |
2.49% |
2.99% |
2.58% |
日産自動車 |
ー |
1.49% |
ー |
ー |
|
日の丸半導体凋落の主要因
・ 日米貿易摩擦によるメモリ敗戦
・ 設計と製造の水平分離の失敗
・ デジタル産業化の遅れ
・ 日の丸自前主義の陥穽
・ 国内企業の投資縮小と韓台中の国家的企業育成
国内のロジック半導体工場
国内の半導体製造基盤の確保・強化に向けて
・半導体は、デジタル社会を支える重要基盤・安全保障に直結する戦略技術として死活的に重要。
経済安全保障の観点から、国家として整備すべき重要半導体の種類を見定めた上で、必要な半導体工場の新設・改修を
国家事業として主体的に進めることが必要。
・ 具体的には、先端半導体を国内で開発・製造できるよう、海外の先端ファウンドリの誘致を通じた日本企業との共同開発・生産や、
メモリ・センサー・パワー等を含めた半導体の供給力を高めるための我が国半導体工場の刷新等について、他国に匹敵する大胆な支援措置が必要。
国内対策@
先端半導体製造技術の共同開発とファウンドリの国内立地
国内対策A デジタル投資の加速と先端ロジック半導体の設計強化
国内対策B 半導体技術のグリーンイノベーション促進
国内対策C 国内半導体産業のポートフォリオとレジリエンス強靭化
経済安全保障上の国際戦略
2021/10/19 日本製鉄、特許侵害で中国宝山鋼鉄とその需要家のトヨタ自動車を提訴
日本製鉄は10
月14
日、中国の鉄鋼メーカーである宝山鋼鉄と同社製品を使用しているトヨタ自動車に対して、無方向性電磁鋼板に関する日本製鉄の特許権の侵害を理由として、損害賠償請求訴訟を東京地裁に提起した。
付記 日本製鉄は三井物産も提訴した。三井物産がトヨタと宝山鋼鉄の取引に関わったと判断したとみられる。
併せてトヨタ自動車に対して、トヨタ自動車の電動車について同地裁に製造販売の差止仮処分の申立てを行った。
宝山鋼鉄に対して |
約200
億円の損害賠償請求 |
トヨタ自動車に対して |
約200
億円の損害賠償請求
同社特許を侵害する無方向性電磁鋼板を使用したモータを搭載した電動車の製造・販売の禁止の仮処分 |
宝山鋼鉄は宝鋼集団傘下の中国の大手鉄鋼メーカーである。(宝鋼集団は2016年に武漢鋼鉄集団と合併し、現在は宝武鋼鉄集団となっている。)
日本製鉄は、自動車の電動化に必要不可欠な無方向性電磁鋼板に関する同社特許を宝山鋼鉄およびトヨタ自動車が侵害していると判断したため、それぞれと協議を行なってきたが、問題の解決に至ることが出来ず、法的措置を講じ、知的財産権の保護を図るとしている。
日本製鉄は、当該特許は日本でしか出願しておらず中国の裁判所では争えない。日本と中国の間では、互いに相手国の判決を承認する相互保証をしていないため、仮に東京地裁で日本製鉄が宝山に勝訴しても、中国の裁判所に日本の判決をそのまま執行してもらうことはできない。
日本国内で確実に販売などの差し止めの効果や賠償金を得るために、トヨタにも訴訟を提起する必要がある。
付記
日本製鉄は2023年11月2日、トヨタ自動車及び三井物産に対するすべての訴訟について、請求の放棄により終了させたと発表した。宝鋼との訴訟については、引き続き訴訟の場で当社の知的財産権の保護を図る。
日本製鉄は自動車業界を含めたパートナーなどとの脱炭素などの分野での共同の取り組みをさらに強化していくとした。
電磁鋼板は、軟鋼にケイ素を添加することで、コイルの鉄芯の鉄損(磁化した時に鉄芯が消費するエネルギー)を低減した磁性材料
で、トランス(変圧器)やモーターなどの電気機器の鉄芯材料として不可欠な材料である。
優れた磁気特性が要求され、「絶縁被膜」と呼ばれるコーティングが施されるとともに、磁気特性に悪影響のある不純物(炭素、窒素、硫黄など)が極限まで低減されるなど、通常の鋼板にはない特徴がある。
製造する機器の特性により、「方向性電磁鋼板」と「無方向性電磁鋼板」が使い分けられている。
方向性電磁鋼板は鉄の磁化しやすい結晶方向が圧延方向のみに揃うよう製造されたもので、主に変圧器に使用される。
無方向性電磁鋼板は、鋼鈑のすべての方向にほぼ均一な磁気特性が得られるよう製造され、主にモーターに使用される。
今回問題になったのは「無方向性電磁鋼板
」で、BEV(バッテリー電気自動車)もPHEV(プラグイン・ハイブリッド車)
、HEV(ハイブリッド)も、すべて電動モーターを使う。電動モーターには永久磁石と電磁石を使うタイプと電磁石だけを使うタイプとがあるが、電磁鋼板はこの両方に必須である。
なお、トヨタと宝山鋼鉄との間には、以前に「方向性電磁鋼鈑」についても問題があった。(後記)
2019年11月、鉄鋼新聞が次のように報じた。今回の問題の基である。
中国・宝山鋼鉄がトヨタ自動車の日本国内の工場向けに無方向性電磁鋼板の供給を始めた。関係者らが明らかにした。すでに韓国ポスコが2009年からトヨタ国内工場に供給を始めており、海外メーカーとしては2社目となる。契約数量などは不明だが、すでに出荷しているもよう。
日本経済新聞も2020年7月、下記のとおり報じた。
電気自動車(EV)に使う電磁鋼板と呼ばれる高機能な鋼材について、トヨタ自動車が中国最大手の宝武鋼鉄集団の製品を一部で採用することが分かった。同鋼板は高い生産技術が必要で、これまでは主に日系の製鉄大手から調達してきた。中国の鉄鋼業界は汎用品の大量供給を強みとしてきたが、質でも日本勢を追い上げ始めた。
日本製鉄によると、トヨタの採用直後から、自社の特許の侵害を時間をかけて調査してきた。
「2年前から調べていた」。
宝山から鋼板を調達したりして成分を分析し、秘中のはずの自社の技術が使われているとの疑いを深めた
という。
トヨタの電動車に使われた宝山鋼鉄製の電磁鋼板を入手して分析したところ、成分や板厚、結晶粒径、磁気特性といった項目について数値などの結果が日本製鉄の特許とほぼ重なったという。
2社に協議を申し入れたが不調に終わった。トヨタの幹部レベルでの協議でも溝は埋まらず、「このままでは訴えを起こさざるを得ない」と複数回手紙を送ったが、進展が無く、今回、提訴に踏み切った。
トヨタと日本製鉄の間には、価格問題でも新しい展開があった。
トヨタは8月に2021年度下期の部品会社に卸す鋼材価格の引き上げを決めた。上げ幅は1トン2万円と10年度以降で最大である。
日本製鉄は価格交渉の過程で「値上げを受け入れないと供給量を減らす」と伝えたとされる。不快感を強めたトヨタは輸入材などの調達拡大も検討する。
その前に(5月28日)、日本鉄鋼連盟の会長を務める日鉄の橋本英二社長は、「個社の社長として」と前置きした上で
、「日本の鋼材価格は国際的に見て理不尽に安い価格で採算がとれない。早急に是正すべきだ」と、異例の意見表明でトヨタをけん制していた。
日本製鉄側は、「国策として政府の後押しを受けている中国メーカーに脱炭素技術で勝つためには、顧客にもこれらの投資を踏まえた適正価格を受け入れてもらう必要がある」とする。
これまで価格交渉をリードしてきた両社の間で亀裂が広がっている。
世界経済の大きな変動を受け、各社は生き残りのためには、これまでの日本の慣行ではやっていけなくなったことを示している。
ーーー
提訴を受け、トヨタ自動車は下記の発表を行った。
本件は、本来、材料メーカー同士で協議すべき事案であると認識しており、弊社が訴えられたことについては、大変遺憾に感じている。
様々な材料メーカーとの取引にあたり、その都度、特許抵触がないことを材料メーカーに確認するプロセスを丁寧に踏んでおり、宝山の電磁鋼鈑についても、取引締結前に、他社の特許侵害がないことを確認の上、契約している。
本件については、日本製鉄より当該の指摘を受けたことから、改めて宝山鋼鉄に確認、先方からは「特許侵害の問題はない」という見解をもらっている。
日本製鉄がユーザーである弊社に対し、このような訴訟を決断したことは、改めて大変残念に思う。
宝山鋼鉄は読売新聞の取材に対し、グローバル企業として各種法規を厳格に順守しているとし、「日本製鉄の一方的な主張は認めない。積極的に応訴し、会社の権益を断固として守る」と主張した。
報道では、日本製鉄と何度も意思疎通を試みたとも説明している。
ーーー
「方向性電磁鋼板」
で当時の新日鉄の技術が宝山鋼鉄に流れた事件があった。
2007年10月、韓国のPOSCOの社員が、POSCOの「方向性電磁鋼板」に関する営業秘密を約550万ドルで中国・宝山鋼鉄に売り渡したとして、韓国で拘束・起訴された。
被告は裁判で、「宝鋼へ売却したのはPOSCOが不正に入手した新日鐵の技術情報である」として無罪を主張、多数の証拠を提出した。
2008年10月2日に大邱高等法院で懲役3年・執行猶予5年が確定したが、判決文に下記の記載がある。
•
「POSCOが新日鐵の退職技術者と契約を締結し、新日鐵の各種資料と情報の提供を受けたと見られる事情が一部窺える。」
•
「POSCOが本件資料の一部を正当でない方法で取得、保有しているという事情が一部窺える。」
新日鉄は刑事事件記録の閲覧・謄写請求を行ない、大法院まで争ったが、認められなかった。
それ以前に、POSCOの製品の品質が急激によくなり、新日鉄は技術流出の疑念を持っていたが、POSCOは独自技術であると言い張った。
しかし、これは同社が本事件の存在を認識する端緒になり、その後徹底的な調査を開始した。
同社は、疑惑の退職者(10人)を突き止め、その自宅等に証拠保全手続等を実施、段ボール数十箱分の重要資料(契約書、報告書、議事録、技術資料等
盗用事実を示す膨大な資料)を得た。
新日鉄は2012年4月、POSCOが「方向性電磁鋼板」の製造技術を新日鉄の元従業員を通じて持ち出したと主張し、POSCOと新日鉄元社員(主犯の1人)を提訴した。POSCOに要求した損害賠償金額は986億円だった。
POSCOは、米国特許庁と韓国特許庁に当該特許無効審判訴訟を提起し、新日鉄もこれに対応し、韓国裁判所でも争いとなった。
POSCOは2015年9月、新日鉄住金に300億円を支払い、4年間続けてきた法的紛争に終止符を打った。
新日鉄住金と元社員との間では2016年末に和解が成立、元社員10人が責任を認めて会社側に謝罪し、解決金(金額公表せず)を支払うことで和解が成立した。
この事件では、新日鉄の「方向性電磁鋼板」
技術は、不法にPOSCOに移管され、更に不法に宝山鋼鉄に流れた。新日鉄はPOSCOに対しては提訴したが、宝山鋼鉄に対してはなにも対応していない。
2021/10/20
日本人開発のCOVID-19ワクチン:レプリコン(次世代mRNA)ワクチン、治験開始
国産ワクチンをめぐっては、第一三共は来年中に、塩野義製薬は来年3月までに、KMバイオロジクスは来年度中の実用化を目指している。
2021/10/21 Stellantis N.V.、米国でLGと合弁で電池生産
Stellantis N.V.は10月18日、LG Energy Solutionと合弁会社を設立し、北米で電動車用の電池を生産すると発表した。年間生産能力は40ギガワット時で2024年
第1四半期の生産開始を目指す。総投資額は4000億円規模になるという。
Stellantis N.V.は、2021年1月16日付でFiat Chrysler Automobiles
N.V.とPeugeot S.A.の統合により が創設された。
2009年1月、イタリアのFiat S.p.Aは経営不振に陥っていた米国のChryslerへの資本参加を発表、2014年にFiatがChryslerの株式を買収し完全子会社化することを発表、同年10月12日に持株会社Fiat Chrysler Automobilesが設立された。
2019年初頭、Fiat
Chrysler
はフランスのグループ会社Renaultとの合併を模索し、暫定合意に達したが、フランス政府はこの合意を支持せず、合併は撤回された。
2019/6/1
フィアット、ルノーに経営統合提案
その後、Fiat
Chrysler
はPeugeotにアプローチし
、2019年12月に50/50で統合することで正式に調印された。2020年12月21日、欧州委員会は、競争を確保するために最小限の救済措置を課して合併を承認した。
2021年1月16日、新会社Stellantis N.V.が誕生した。主要株主は次の通り。
Exor NV(Fiat創業家の持株会社) 14.4%
Peugeot家 7.2%
フランス政府 6.2%
東風汽車集団(Peugeot株主)
4.5%
Stellantis とLG Energy
Solutionは同日、米国でのバッテリーセルとモデュール生産のJVの設立のMOUを締結した。
2030年までに米国で販売する自動車の40%以上を電気自動車にするというStellantisの目標の達成を助けるものである。(欧州では70%以上としている)
2024年第1四半期の生産開始で、年間生産能力40ギガワット時。立地は今後決め、2022年第2四半期の鍬入れを目指している。
生産されたバッテリーは、米国、カナダ、メキシコのStellantis
の組み立て工場に送られ、Stellantis の各ブランドのplug-in hybrids から full batteryまでの次世代電気自動車に装着される。
両社の協力体制は、2014年に当時のLG Chemの電池がFiat
Chryslerの電気自動車ミニバン Chrysler Pacifica Hybrid に装着されたのに始まる。
Stellantisは本年7月に、全世界で2025年までにEV分野に300億ユーロ(約4兆円)を投じ、2030年までに年間260ギガワット時の生産能力を確保するとした。
2025年時点 130ギガワット時(3つのギガファクトリー:欧州 80GWh、米国 50GWh)
2030年時点 260ギガワット時(5つのギガファクトリー:欧州 170GWh、米国 90GWh)
欧州では2020年にTotal との50/50JVでバッテリー製造会社Automotive
Cells Companyを設立した。フランスやドイツなどの当局が支援して、欧州最大規模の生産能力を持つEV向けバッテリー工場を目指している。
2021年9月24日、Mercedes-Benzが加わった。1/3ずつの出資となる。合弁の規模を70億ユーロ(約9000億円)余りに拡大し、2030年までに欧州で少なくとも120ギガワット時の生産能力を持つ。
ーーー
LG Chemの電池子会社LG Energy
Solution
は3月12日、2025年までの5年間で米国に45億ドル以上を投資すると発表した。少なくとも2工場を建設、米国での電気自動車の成長に対応し、能力を70GWh増やす。
LG単独ではミシガン州Hollandに5GWhの工場を持ち、GM、Ford
Motor、Chrysler などに供給しており、米国では単独で75GWhの能力となる。
別途、GMとのJVで2工場を建設中で、合計能力は65GWh(単独分を加えると135GWh)となる。
LG
は韓国と米国のほか、ポーランドと中国にも電池工場を持ち、各地で増産計画を進めている。
本年7月末には、LG Energy Solution
と現代自動車が共同で、インドネシアの首都ジャカルタ近郊にEV向けニッケル・コバルト・マンガン・アルミニウム酸リチウム正極(NCMA正極)を採用したリチウムイオン電池セル生産工場を建設することを発表した。投資金額は両者の折半で合計11億ドル。2024年から、年間10ギガワット時(GWh)(EV15万台相当)の電池セルを生産する。
2021/10/22 半導体供給問題:米国の場合
前回、「半導体戦略」(経済産業省 2021年6月)をもとに、日本の問題と台湾のTSMC誘致について述べた。
2021/10/18 半導体大手、台湾のTSMCが日本で工場建設
米国でも大問題になっている。
米国の半導体工業会によれば、米国は今から70年以上前、全世界の半導体を製造していたが、現在では世界生産量全体のわずか12%を占めるにとどまっている。
昨年秋以降、世界で半導体不足が深刻になった。特に自動車向けが深刻である。急な需要回復のなか、スマホ向けなどが優先された。ルネサスなどの生産トラブルもあった。
バイデン米大統領は2月24日、重要部材のサプライチェーン(供給網)を見直す大統領令に署名した。新型コロナウイルスの初期の医療用品不足や、半導体チップの供給不足による自動車産業等への打撃、中国によるレアアース輸出規制の懸念などが背景にある。
先ず重要4品目の供給網を100日以内に見直す。リスクを調べ、それへの対応策の提案を求める。 商務長官には「半導体と先端パッケージング」が割り当てられた。
更に、6分野について1年以内に戦略をまとめる。
2021/3/1 米、半導体などの供給網見直し
この一環として、商務部は9月23日、TSMCなど大手メーカーに対して出荷に関する詳細な情報を45日以内に提出することを求めた。(過剰発注等をチェック)
メーカー側は機密事項に当たるとして反発し、揉めている。(TSMCなどは自社機密情報が Intelに流れるのを懸念)
ーーー
Intel のPat Gelsinger CEO
は10月17日、米国が半導体の生産を現在のように韓国と台湾に依存するのは「地政学的な不安定」を招くと主張した。
台湾にはチャイナリスク、韓国には北朝鮮リスクがあるからで、リスク回避のため、自国で半導体を製造すべきであるとした。
半導体チップ製造が特定地域に集中しているは「実際的でもない。神は石油埋蔵地がどこかを決めたが、ファブ(半導体工場)がどこにあるかは我々が決めることができる」と述べた。
"It also isn't practical. God decided where the oil reserves are. We can decide
where the fabs are."
また、「我々がアジアより30−40%も高くてはいけない」とし、議会に向けて「我々がその差を狭め、米国国内により大きく、迅速に半導体生産施設を構築できるよう助けてほしい」と支援を求めた。
"So help us close that gap so that we can build bigger and faster on U.S.
soil."
米国の半導体工業会によれば、米国は今から70年以上前、全世界の半導体を製造していたが、現在では世界生産量全体のわずか12%を占めるにとどまっている。
そのなかでIntelもチップ製造の分野で優位性を失い、需要家のApple、NVIDIA、Qualcomm、AMDら各社は、TSMC、サムスン、聯華電子(UMC)といったファウンドリーを採用するようになった。
(以前はパソコンには、「インテル入っている(Intel Inside)」の記載があったが、最近は余り見かけない。)
Intelはこれまで自社開発チップの製造にほぼ専念してきたが、方針を変更し、他社開発のチップの製造に乗り出すことになった。新たに同社のCEOに就任したPat
Gelsinger が、3月23日に製造関連の戦略「IDM
2.0」を明らかにした。
IDM
2.0は、半導体製造において、1)Intel内製、2)サードパーティーの利用、3)外部に向けたファウンドリーサービスの3つを組み合わせるもの。
1)Intelにおける生産能力を拡大するため、約200億ドルを投資し、アリゾナ州Chandlerの「Ocotillo
Campus」に2棟の新しい工場を建設する。「EUV(極端紫外線)リソグラフィを導入できるラインを整備する」とした。
2)「今後も大部分のIntel製品を自社工場で製造し続ける」と述べつつ、「われわれの製品ポートフォリオ全般において、サードパーティーのファウンドリーサービスの利用も拡大していく。
台湾のTSMCやUMC、Samsung
Electronics、米国のGlobalFoundriesとの連携を密にすることで、当社の製品のコストや性能、開発スケジュールなどを最適化でき、より柔軟で拡張性のある対応ができるようになると確信している」
とした。
3)「Intel Foundry Services」という完全に独立した事業をつくる。
「あらゆる産業におけるデジタル化によって、半導体への需要は急速に増加しているが、主な課題となっているのが生産能力だ。Intelは、半導体供給に対する需要に応え、持続性のある安定した半導体供給を行える立場にいる」と語る。
Intelは今後、米国と欧州の工場で生産能力を拡大する計画で、CEOは「現在、約80%の半導体生産能力がアジアに集中する中、地理的な不均衡を解消していきたい」と述べた。
「先端のパッケージング技術とプロセス技術を組み合わせること、米国と欧州で生産能力を拡大すること、CPUコアからグラフィックス、AI、ディスプレイ、インターコネクトまで多岐にわたるIP(Intellectual
Property)ポートフォリオを顧客が選択できること」を強みとして挙げた。
ーーー
上記の通り、米国の半導体業界は、現在では世界生産量全体のわずか12%を占めるにとどまっている。
このような現状に対して、2020年6月に超党派の議員グループが、半導体製造の国内回帰を支援する法案として「CHIPS
for America
Act」を提出した。
CHIPS = Creating Helpful Incentives to
Produce Semiconductors
投資税額控除制度を中心とした明確なベネフィットを産業界に提供することにより、高度な半導体製造能力を国内に創出することを目指している。米国国防総省をはじめとする政府機関によるプロジェクトへの資金提供を主とした法案で、資金提供額はおよそ120億米ドルとなる。
続いて同月、超党派の上院議員が新たな法案American Foundries Act of 2020 (AFA)を提出した。米国の各州に対し、商業的な半導体製造施設の拡大を促すための助成金を提供するもので、資金提供額はおよそ250億米ドルである。
トランプ政権の積極的な誘致により、台湾のTSMCが120億米ドルを投じて、米国アリゾナ州に5nm工場を建設することとなったが、AFAとCHIPSは、これに続く取り組みである。
両案とも通っていないが、バイデン大統領はこの趣旨を折り込み、これらを上回る案を提案した。
バイデン大統領は2021年3月31日、2兆米ドルを超えるインフラ投資計画 American
Job Planを発表した。
そのうち、R&D、製造近代化、中小企業として5,800億ドルが含まれている。
R&D、未来の技術への投資 1,800億ドル
製造業、中小企業活性化 3,000億ドル
Workforce Development 1,000億ドル
大統領は、この中から、米国半導体業界の国内生産回帰の実現に向け、500億ドルを割り当てることを明らかにした。
ホワイトハウスは、「超党派議員グループによって提唱されたCHIPS for America Act、American
Foundries Act of 2020
の要望に従い、半導体の製造および研究に資金を投入する指示も出している」と述べた。
2021/4/2 バイデン大統領、American
Jobs Plan 発表、8年間で2兆2500億ドル投資
しかし、American
Jobs Plan は最終的に2つに分けられたが、いまだに可決されていない。
@5500億ドル規模のインフラ包括法案
A10年間で3.5兆ドルの予算(予算決議→財政調整法=予算)
@は上院では通ったが、下院はまだである。
Aは「予算決議」は上下院で通ったが、それに基づく具体的予算(財政調整法)は見通しが付かない状況である。
民主党内の急進左派が子育て支援などの「3.5兆ドル法案」(予算決議は通っており、これに基づく具体的な予算案のこと)を可決するまでインフラ法案に賛成しないと主張し、財政膨張を懸念する中道派議員は3.5兆ドル法案の規模圧縮を要求し、与党内の調整がついていない。
バイデン政権は「3.5兆ドル法案」の規模を縮小することで、両議案を通すことを狙っている。
付記
このAmerican
Jobs Plan の説明は間違いであることが分かった。
大統領の半導体国内生産回帰のための500億ドル(実際は520億ドル)は、上院が6月8日に可決した拡大する中国の影響力に対抗することを目的とした異例の超党派法案
United States Innovation and Competition
Act に含まれていた。
但しこの法案は、上院が超党派で6月に可決したにもかかわらず、下院との法案のすり合わせに時間がかかっており、採決は年明けになる。
政府支援が決まらないなか、インテルのCEOは議会に向けて、「米国国内に半導体生産施設を構築できるよう助けてほしい」と改めて支援を求めた。
2021/10/23 デルタ型とアルファ型の混じったウイルスを検出
国立感染症研究所は10月18日、国内の新型コロナウイルス感染者から、英国由来の「アルファ株」とインド由来の「デルタ株」の組換え体とみられるウイルスを国内で6検体検出したとは発表した。
遺伝子配列のアライメント解析を行ったところ、デルタ系統であるものの、ORF6遺伝子からN遺伝子にかけて、アルファ系統と同一の変異プロファイルを有する配列が存在した。
遺伝子解読でこれらの検体に2種類のウイルスが混入していた可能性を示す所見はなく、両変異株の同時感染や他検体の混入によるものではないと考えられる。
6検体の遺伝子配列はほぼ同一で、共通起源を有するウイルスと考えられる。
ベースのデルタ株の部分は国内で流行するデルタ株由来と考えられる。アルファ株に組換えが生じた箇所は感染性・免疫逃避に影響が生じる箇所ではないため、デルタ株と比較して感染・伝播性や免疫等への影響が強くなる可能性はないと考えられ、現時点では追加的な公衆衛生リスクは無いと考えられるが、今後の動向に注意するとしている。
当該6検体は、ずっとデルタ株の配列であるが、特定の部分のみがアルファ株の配列と合致する。
これは「変異株」とは異なる。
例えばラムダ株の場合、次の6箇所が一部、変異したり、欠失している。RNA複製の際に一定の確率でミスが生じ、RNAを構成する塩基の配列が変わる。
今回のように、本来のデルタ株のかなりの部分がアルファ株の配列に置き換わるのは、複製のミスとしては考え難い。
「遺伝子解読でこれらの検体に2種類のウイルスが混入していた可能性を示す所見はない」としているが、以前のどこかの段階で2種のウイルスが混入し、それが何世代か経って、これになったというのではないであろうか。(素人考えだが)
2021/10/24 英国でデルタ株の亜種が蔓延 英国で「Delta
Plus」と呼ばれる新型コロナのデルタ株の亜種「AY.4.2」が増えている。WHOは B.1.617.2 strain と名付けた。
ウイルスのスパイクタンパクのK417Nの変異(ベータ株に存在するものと同じ変異)で、免疫回避に関係している部分だが、現在のところ、症状がより重くなるとか、ワクチンが効きにくいとかの症候はない。
英国の衛生当局によると、9月末時点で感染件数の6%に上り、さらに増加傾向にあるという。米国、ロシア、イスラエルでも見つかった。
米 CDCは、この変異株はアメリカでも確認されたものの、「アメリカで勢力を広げている兆しはない」としている。
従来のデルタ株よりも感染力が10%高いとする専門家もいるが、詳しいことはまだ分かっていない。
英国保健安全保障庁は10月20日にこれをVariant Under
Investigationに指定した。(VUI-21OCT-01)
WHOはまだ、Variant of concern (VOC) にもVariant under Investigation (VOI) にも指定していない。
2021/10/25 Stellantis、米国でSamsung
SDI とも合弁でEV電池生産 Stellantis N.V.は10月18日、LG Energy
Solutionと合弁会社を設立し、北米で電動車用の電池を生産すると発表した。年間生産能力は40ギガワット時で2024年第1四半期の生産開始を目指す。
2021/10/21 Stellantis N.V.、米国でLGと合弁で電池生産
そのStellantis N.V.は10月22日、韓国電池大手のSamsung
SDIとも米国で合弁会社を設立し、電気自動車用の電池工場を建設する覚書を締結したと発表した。
Stellantisは両社との同時契約で、Samsung
SDIの得意な、安定性が高いとされる「角形電池」と、LGの軽量で高出力な「パウチ型電池」の2種類を安定調達する狙いがあるとみられる。
具体的な建設地は現在検討中だが、2025年に年産23ギガワット時で稼働し、将来的に40ギガワット時まで拡張する。両社の投資金額は計4000億円規模とみられる。
付記
2022年5月24日、両社はインディアナ州Kokomoでの建設を発表した。2025年稼働を目指す。当初能力は23GWhで、数年後に33GWhに増やす。
当初投資額は25億ドルで、最終31億ドルとする。
Stellantis
はこれまでもSamsungから「Fiat 500e」や「Jeep Wrangler
4xe」向けに電池供給を受けてきた。今回のJV設立で、両社の協力関係はさらに堅固になる。
Samsung
SDIは現在、韓国と中国、ハンガリーで電池工場を持つが、米市場のEVシフトの潮流に乗り遅れないように米国進出を検討してきた経緯がある。(同社はミシガン州にバッテリーパックの組み立て工場は持っている。)
Samsung SDIは2017年5月にハンガリーのグドゥ(Goed)市に、蔚山と中国西安に次ぐ3つ目の工場を新設した。
|
稼働 |
韓国(蔚山〉 |
5万台 |
中国(西安) |
4万台 |
ハンガリー(Goed) |
5万台 |
合計 |
14万台 |
調査会社テクノ・システム・リサーチによると、2020年の車載電池の世界シェアでSamsung SDIは9%で4位。LG Chemは23%で2位、SK
Innovationは5%で7位。
韓国3社は世界各地で自動車用電池工場を稼働させている。
2018/12/4 SK
Innovation、米に電気自動車バッテリー工場を建設、LG & Samsung も各地で増設
2021/10/25 米国の2021年度財政収支赤字、過去2番目の大きさ
米財務省と行政管理予算局は10月22日、2021会計年度(20年10月〜21年9月)の財政収支は約2兆7720億ドル(約314兆7600億円)の赤字だったと発表した。
赤字額は、American
Rescue Plan Act とワクチン接種の効果などで、過去最高だった前年度と比べると11.5%減った。当初予算と比較しても897億ドル減少した。
しかし、過去2番目の大きさとなった。
歳入は、経済回復による個人所得税、法人税の増により4兆ドルとなり、前年比
6260億ドル増えた。個人所得税で4357億ドル、法人税で1600億ドル増えた。予算比でもそれぞれ、3395億ドル、1033億ドルの増である。経済の回復によるものである。
歳出は6兆8千億ドルで、予算を下回ったが、前年比では増加した。
これは次のようなことのためである。
前政権が決めた新型コロナウイルス対策第3弾の2兆ドル規模の景気刺激策の法律(CARES
Act)(後半に記載)
同じく、2020年12月末にオムニバス歳出法案(2021年9月末までの予算)と合わせて通した
9千億ドルの新型コロナウイルス追加景気対策予算
バイデン(次期)大統領が1月14日に発表した1兆9千億ドル規模の追加経済対策案American
Rescue Plan Act
など。
2021/10/26 米国の対中技術規制
米国は米中貿易戦争が進むなか、華為技術など個別企業に対する規制はどんどん厳しくしている。しかし、同時に発表した「新興技術」「基盤技術」の輸出規制については全く進んでいない。
産業界からの反発が大きいことが理由である。
ーーー
トランプ前大統領は膨大な対中貿易赤字が一向に減らないことを問題視し、米国の失業と結びつけ、通商法301条を活用するなどして、いろいろの対策をとった。
同時に、中国が組織的に米国の知財を盗用しているとし、対応した。
その一つとして、Entity
Listがある。輸出管理法(規則 744.11(b)
)に基づき安保上懸念がある企業を指定するもので、海外企業を含む企業が米国のハイテク製品や技術を同社に輸出する場合は商務省の許可が必要になり、原則却下される。
「知財戦争」に適用するものでは、2018年10月29日に中国の福建省晋華集成電路(Jinhua
Integrated Circuit Company:JHICC)が初めてである。
米商務省は2019年5月15日、その2番目として華為技術(Huawei)を加えた。2019年6月21日には、スーパーコンピューター大手5社とそれぞれのグループ会社を追加、2019年10月には、監視カメラ世界首位の杭州海康威視数字技術(ハイクビジョン)などハイテク8社をEntity
Listに加えた。
2020年12月18日には、半導体メーカーの中芯国際集成電路製造を含む中国企業77社をEntity Listに加えた。
米国の情報が盗まれるのを恐れ、中国の通信機器、セキュリティ機器を締め出す措置もとった。
2018年8月13日、2019会計年度国防権限法が発効した。華為技術と 中興通訊製の通信機器と、海能達通信
等3社のセキュリティ用のビデオ監視・通信機器
について、まず、指定された製品の購入禁止を国防総省以外の政府機関にも拡大、1年後には5社の製品を社内で利用している世界中の企業は、米政府機関との取引が禁止された。(米政府機関との取引継続には5社の製品を使用しないことが求められる。)
更に、2021年6月17日、安全保障上のリスクとみなす中国企業5社の通信機器の認証を禁じる方針を決めた。
2020/7/20 米国、Huaweiなどの中国企業の通信機器等利用者からの政府調達を禁ずる規則案を発表
2021/6/22 米、Huaweiなど中国製の通信機器の認証禁止へ
一方で、特定の技術の輸出規制については、産業界からの反発が強く、停滞したままである。
現在は、規制品目リストによる輸出規制が行なわれている。
米国輸出管理規則により、規制品目リストをつくり、特定国(Country
chart で規定)への輸出・再輸出・国内移転(みなし輸出・再輸出を含む)の場合には産業安全保障局の事前許可が必要としている。
しかし、研究開発で連邦政府支出の割合が減少し、民間セクター支出額の割合が増加する傾向が続いており、新しい技術が外国の企業・団体に知られ
、外国からの投資の対象にな
っており、新しい重要技術が規制品目リストに載る前に、流出してしまうことになる。
このため、技術のライフサイクルのより早期の段階から建設的に関与し、新基本技術を早期に特定し、実効的な規制を行う必要性が急速に高まっている。
スウェーデンの環境活動家グレタ・トゥンベリ(Greta
Thunberg)さんは、COP26について「明白な失敗だ」と酷評し、各国が表明した取り組みを「みせかけ」と批判した。
"This is no longer a climate conference. This is now a global
greenwashing festival."
2020年3月には、リチウムイオン動力電池とその陽極材料、蓄電池と関連するインテグレーション製品の研究開発などを行う目的で、日本法人の蜂巣能源日本技研を横浜市に設立した。
米連邦通信委員会(FCC)は2022年1月27日、中国の国有通信大手、中国聯合網絡通信(China
Unicom)の米国事業免許を取り消す方針を決めた。中国政府のスパイ活動に米国の通信インフラが使われるなど、安全保障上の懸念が大きいと判断した。米子会社に60日以内に米国事業を中止するよう命じる。