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これは下記のブログを月ごとにまとめたものです。

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2023/4/3 サウジ、日量50万バレルの減産を表明、クウェートやUAEも追随、OPECプラスとして昨年末比 165万バレル(計365万バレル)の減産 


OPECプラスは4月2日、5月から日量115万バレルの減産を実施すると発表した。市場の安定を維持するために供給を据え置くとこれまで約束していたため、協調減産は意表を突く格好となった。

ロシアが3月から単独で実施している減産を加えると、昨年末比で日量 165万バレルの減産となる。ロシアは6月までの減産としていたが、これを更に延長する。

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石油輸出国機構(OPEC)と非OPEC主要産油国で構成する「OPECプラス」は2022年10月5日にウィーンで久しぶりに対面形式により閣僚級会合を開き、11月の日量200万バレル減産で合意した。

これまでの経緯  2022/10/6   OPECプラス、11月は日量200万バレル減産

OPECプラスは12月4日、前回会合で決定した日量200万バレルの減産を維持することで合意した。

サウジアラビアのエネルギー相は2023年3月14日、OPECプラスが昨年10月に合意した減産方針を2023年末まで継続すると述べた。

OPECプラスとは別に、ロシアのノバク副首相は2023年2月10日、西側諸国がロシア産石油・石油製品に上限価格を設定したことを受け、3月に石油生産を約5%、日量50万バレル削減すると述べた。

「今日現在、生産した石油全量を全て販売しているが、すでに述べている通り、『価格上限』規則を順守する者には直接または間接的に販売しない。ロシアは3月に日量50万バレルの自主的な減産を行う。これは市場の関係回復に寄与するだろう」と述べた。当面、6月までの減産としていた。

今回、 サウジアラビアは5月から日量50万バレルの供給削減を表明、クウェートやアラブ首長国連邦(UAE)、アルジェリアなども同様に減産を発表した。

ロシアは減産を当初6月までとしていたが、その後も延長する。

  千バレル
サウジアラビア 500
イラク 211
UAE 144
クウェート 128
カザフスタン 78
アルジェリア 48
オマーン 40
小計 1,149
ロシア 500
合計 1,649

付記 最終的に上記に ガボン 4千バレルが追加された。

従来までの200万バレル減産に加え、合計で365万バレルの減産となる。

最近は価格の変動が見られるものの、市場では今年後半には供給が逼迫すると見込まれていたため、著しい供給減となる。


2023/4/4   最先端の半導体製造設備の輸出規制強化

西村経済産業相は3月31日、最先端の半導体製造装置23品目について輸出規制を強化すると発表した。改正省令を5月に公布、7月に施行する。

「高性能な先端半導体、これは軍事的な用途に使用された場合、国際的な平和および安全の維持を妨げる恐れがある」 西村大臣はこのように話し、高性能な半導体の製造装置について輸出管理を強化すると発表した。

最先端半導体をめぐっては米中の覇権争いが激しさを増しており、米国が日本やオランダに協力を呼びかけていた。   

バイデン米政権は2022年10月7日、中国への半導体先端技術(14〜16ナノメートル以下のロジック半導体の製造などに必要な装置や技術)の新しい輸出規制を実施すると発表した。軍事開発に欠かせないAIやスーパーコンピューターに使われる先端半導体の輸出を制限、さらに特定の先端半導体を扱う中国企業の工場に対し、米国製の製造装置を販売することも原則禁止する。

2022/10/10   米国、半導体の対中輸出制限を拡大

米国は日本とオランダにも協力を求めていたが、オランダは3月8日に先端半導体製造装置の輸出規制を強化すると表明していた。2023年の夏までに公表するが、半導体製造装置のメーカー ASMLが半導体メーカーに販売している深紫外線(DUV)露光装置に関する技術が影響を受ける。

JETROによると、中国向けの半導体製造装置全体の輸出は日本が31.5%を占め、最大である。今回の規制強化はそのうちの最先端の23品目だけでる。

今回、「国際的な安全保障環境が厳しさを増すなか、軍事転用防止目的としてWassenaar Arrangementを補完すもに半導体製造装置関する関係国の最新の輸出管理動向なども総合的に勘案し、特定の貨物及び技術輸出管理の対象に追加する 」こととした。

我が国をはじめとする主要国では、武器や軍事転用可能な貨物・技術が、我が国及び国際社会の安全性を脅かす国家やテロリスト等、懸念活動を行うおそれのある者に渡ることを防ぐため、先進国を中心とした国際的な枠組み(国際輸出管理レジーム)を作り、国際社会と協調して輸出等の管理を行っている。

国際輸出管理レジーム参加国一覧表

(WA参加国は42カ国で中国は含まれない。)

ワッセナー・アレンジメントとは、通常兵器及び関連汎用品・技術の輸出管理を実施することにより、地域の安定を損なう可能性のある通常兵器の過度の移転と蓄積を防止する目的で1996年7月に成立した国際的申し合わせに基づく国際的輸出管理体制である。

1 目的
  • (1)通常兵器及び機微な関連汎用品・技術の移転に関する透明性の増大及びより責任ある管理を実現し、それらの過度の蓄積を防止することにより、地域及び国際社会の安全と安定に寄与する。
  • (2)グローバルなテロとの闘いの一環として、テロリスト・グループ等による通常兵器及び機微な関連汎用品・技術の取得を防止する。
2 設立の経緯
1994年3月末に、ココムが解消されたことを踏まえ、1995年12月、新たな輸出管理体制の設立について関係国間で政治的な申合せが行われ、1996年7月の設立総会をもって正式に「ワッセナー・アレンジメント(WA)」が発足した。
なお、WAの名称は、設立のための協議が行われたオランダのワッセナー市にちなんで名付けられたものである。

3 基本的枠組み
 WAは、法的拘束力を有する国際約束に基づく枠組みではなく、通常兵器及び機微な関連汎用品・技術の供給能力を有し、かつ不拡散のために努力する意志を有する参加国による紳士的な申合せとして存在している。

参加国は、通常兵器及び関連汎用品・技術に関してWAで合意されたリストに掲載された品目について、国内法令(我が国においては、外国為替及び外国貿易法、輸出貿易管理令、外国為替管理令等)に基づき、輸出管理を実施している。

(a)汎用品・技術リスト:9カテゴリーに分類された「基本リスト」、基本リストの中でもより機微なものと位置づけられる汎用品・技術を抜粋した「機微品目リスト」及び「特に機微な品目リスト」の3種が存在する。

 【基本リストの9カテゴリー】
  (1)先端材料(超伝導材料、セラミック等)
  (2)材料加工(工作機械、ロボット等)
  (3)エレクトロニクス(集積回路、半導体等)
  (4)コンピュータ
  (5)通信関連(ケーブル、暗号装置等)
  (6)センサー・レーザー(ソナー、暗視センサー、レーダー等)
  (7)航法装置(ジャイロスコープ、GPS等)
  (8)海洋関連(潜水艇、水中用ロボット等)
  (9)推進装置(ロケット推進装置、無人航空機等)

(b)軍需品リスト:22項目にわたって武器(通常兵器)等を全般的に網羅したリスト。

 

今回、下記を含む23品目を輸出を制限する「リスト規制」の対象に加える。 軍事転用の防止が目的だとしている。

東京エレクトロンやニコン、SCREENホールディングス (京都市にある半導体・液晶製造装置・印刷関連機器などの産業用機器を製造する企業グループの持株会社)など10社程度が影響を受けるとみられる。

  メーカー
真空状態で不純物を除去する洗浄装置 SCREENホールディングス、東京エレクトロンなど
極端紫外線(EUV)フォトマスク向けの成膜装置 東京エレクトロン、KOKUSAI ELECTRIC、アルバックなど
EUVフォトマスク向けの防護カバー ニコン、三井化学など
フッ化アルゴン(ArF)を使う液浸露光装置   ニコンなど
記憶素子を立体的に積み上げるエッチング装置 東京エレクトロン、日立ハイテクなど

詳細は省令改正案 参照

対象品目は輸出時に経産省の審査を受ける。

審査が簡略化されるのは、Wassenaar Arrangement加盟の米国や韓国、台湾など42カ国・地域(国際輸出管理レジーム参加国一覧表 参照)に限られ、中国は含まれていない。(ロシアは含まれている)

省令改正に向けて3月31日からパブリックコメントの募集を始め、省令改正は5月の公布、7月の施行を予定する。

 

付記

中国外交部の反応

「日本側はこれまで中国側との意思疎通で、両国の経済・貿易関係は緊密であり、日本側は対中協力の推進に尽力し、『脱中国化』の手段を取ることはないと繰り返し表明してきた。日本側が実際の行動によってこの姿勢表明を実行に移し、公正な立場と市場原則を堅持し、自らの長期的利益の観点に立ち、グローバルな産業・サプライチェーンの安定性と円滑性を維持し、自由で開かれた国際貿易秩序を維持し、中日両国及び双方の企業の共通利益を維持することを望む」

「中国は世界最大の半導体市場であり、中国の集積回路輸入額は年間6000億ドル近くに達する。日本にとって中国は最大の半導体輸出市場であり、日本の対中輸出額は年間100億ドルを超える。中国市場は日本の半導体機器輸出シェアの4分の1を占め、中日双方はこれまで互恵・ウィンウィンの協力を実施してきた。日本側の講じようとする対中輸出管理は、この地域、さらには世界の半導体産業のサプライチェーンに影響を与えるだけでなく、日本企業にも損害をもたらすだろう」

「中国は日本の規制の影響を評価し、日本側が人為的に中日の通常の半導体産業協力に制限を設け、中国側の利益を深刻に損なった場合、中国側は座視することはせず、断固として対処する」

 


2023/4/5 韓国版CHIPS法を可決、米国CHIPS法の運営に懸念

韓国の国会は3月30日、半導体などへの投資を促進するために企業に税制優遇措置を与えることにより、同国の半導体産業をさらに後押しする法律案「租税特例制限法の一部改正法律案」を承認した。

「K-CHIPS法」とも呼ばれる同法は、国家戦略技術の投資税額控除率を引き上げる。

同法における国家戦略技術には半導体、二次電池、ワクチン、ディスプレイ、電気自動車など未来型移動手段が含まれた。

同分野の大企業と中堅企業は現行の8%から15%に、中小企業は16%から25%に税額控除率が拡大される。

更に、 直前3年間の年平均投資金に対する投資金の増加分に対しては、今年に限って10%の臨時投資税額控除の恩恵も提供する。

適用期間は、今のところ2024年12月末まで。

政府の企財部は、「半導体への投資に25%の税額控除の恩恵を与えることで、米国など半導体強国に対して世界最高レベルの税制支援が可能になった」と説明した。
 

米国商務省は2月28日、The CHIPS and Science Act(CHIPSプラス法)に基づく、半導体産業に対する第1弾の資金援助申請の受け付けを開始すると発表した。

韓国では申請内容に不満を持ち、各社は申請するかどうか、ためらっている。韓国政府も米政府に懸念を伝えている。

 

申請は3段階に分かれ、第1弾となる今回は商業用の半導体製造施設の建設、拡張、現代化が資金援助の対象となる。今春後半には素材や製造装置施設、今秋には研究開発施設に関する申請を受け付ける。

CHIPSに関する527億ドルの予算の内訳は次のとおり。

  1. 商務省製造インセンティブ(390億ドル):半導体の設計、組み立て、試験、先端パッケージング、研究開発のための国内施設・装置の建設、拡張または現代化に対する資金援助。
                      うち、60億ドルは直接融資または融資保証に使用可能。
  2. 商務省研究開発(110億ドル):商務省管轄の半導体関連の研究開発プログラムへの予算充当。
  3. その他(27億ドル):労働力開発や国際的な半導体サプライチェーン強化の取り組みへの予算充当。

また、上記のほか、半導体製造に関する投資に対して25%の税額控除を導入するとしている。

米政府はCHIPS法に基づく補助金を申請する半導体企業に対し、ウェハの生産能力、製造歩留まり、ウェハの予定販売価格およびその推移予測、長期利益計画などの詳細な財務予測情報を国立標準技術研究所に提出するよう求めており、企業は、さまざまな営業秘密情報の開示要求やペーパーワークなどに翻弄されているという。

米商務省は3月27日、半導体補助金を申請する企業が予想キャッシュフローなど収益性指標を明らかにする際に単純に数字だけでなく算出方式を検証できるエクセルファイル形態で提出しなければならないと明らかにした。

商務省が提示した例示には半導体工場のウエハーの種類別生産能力、稼動率、予想歩留まり、生産初年度販売価格、その後の年度別生産量と販売価格増減などが含まれた。半導体を生産するのに使われる素材、消耗品、化学薬品と工場運営に必要な人件費と公共料金、研究開発費用も入力しなければならない。このほかにも従業員の類型別雇用人数と製造に使われる素材別費用まで生産に関連した詳細なデータをすべて公開するよう求めた。

公表されている半導体の歩留まりの大部分は推定値であり正確な歩留まりは核心営業秘密に属する。

「半導体は原価構造を公開すればどのような技術をどのように使い、どのような工程を導入したのか敏感な情報が推定できる。競合相手である米マイクロンにこうした機密が伝われば韓国企業の競争力に相当な打撃になりかねない」との声がある。

米国政府は又、補助金受給企業は10年間にわたり中国にある半導体工場への投資に制限を受けることとなる。

米韓政府の交渉で、先端プロセスで5%、旧式プロセスでは10%という設備拡張制限条項さえ守れば、ひとまず10年間は中国工場を安定して稼働できることになった。

また、当初合意した基準以上に利益を上げた場合にその一部を米政府と共有することが義務付けられている。

2023/3/13   米商務省、CHIPSプラス法による第1弾の資金援助申請の受け付け開始

SKグループは、最先端の半導体パッケージング工場の建設を含め、米国の半導体部門に150億ドルの投資を計画している。SK Hynixは、米国工場建設そのものは計画通り実行するが、米国のCHIPS法の補助金申請プロセスが厳しすぎると感じており、補助金を申請するかどうかまだ検討していると している。

Samsungも、米テキサス州に総工費250億ドル超の半導体工場を建設中だが、SK Hynix同様、補助金を申請するか否かの姿勢を示していない。

産業通商資源省は「半導体法で定められた条件が事業の不確実性を高め、企業の経営権や技術権を侵害し、投資先としての米国の魅力を損ねる可能性がある」と述べた。

尹大統領は3月30日、ソウルを訪問した米国通商代表部(USTR)のタイ代表と会談し、「過剰な情報提供」を巡る企業の懸念を考慮するよう米政府に求めた。韓国産業通商資源省の通商交渉本部長は、タイ代表との会談で、サムスン電子やSKハイニックスなど韓国半導体企業にとって、米国の新しい半導体補助金の受給条件は重荷となる可能性があると述べた。

 


2023/4/6   米FTC、遺伝子診断大手Illumina によるGRAIL買収差し止め

米連邦取引委員会(FTC)は4月3日、遺伝子診断機器大手の米Illuminaに対し、同社のグループでがん診断を手がけるGRAILを切り離すよう命じた。両社の統合はがん診断技術の革新の遅れや患者の負担増を招きかねないと判断した。

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米国の遺伝子解析ツール開発会社Illumina, Inc.は2020年9月21日、がん検査技術の開発を手掛ける米新興企業GRAILを80億ドルで買収することで合意した。
Grailの株主は35億ドルの現金とIlluminaの普通株45億ドル相当を受け取る。両社の取締役会はすでに買収を承認している。

GRAILは元々、Illuminaが設立した。

世界最大のDNAシーケンサー(塩基配列読み取り装置)メーカーであるIlluminaは2016年1月10日、簡単な血液検査からがんスクリーニングを可能にするため、新会社GRAILの設立を発表した。
Illumina のsequencing technologyを使用し、血中の循環核酸を直接測定する全がんのスクリーニング検査を開発する。

GRAILはIlluminaが過半数を所有する別会社として設立、シカゴ大学での革新的な技術事業化イニシアティブをスピンオフして1986年に設立されたベンチャーキャピタルのARCH Venture Partners、アマゾン創業者のBezos Expeditions、Microsoft創業者のBill Gates、ベンチャーキャピタルのSutter Hill Venturesの参加型投資を得ている。

今回の合併について、IlluminaとGRAILが協力すれば、GRAILの革新的な複数がん早期発見用の血液検査をより幅広くより早く普及させることができるとした。

米FTCは2021年3月30日、IlluminaによるGRAILの買収を差し止めを求める訴訟を首都ワシントンの連邦地裁に起こした。

2021/4/8 米FTC、Illumina によるGRAIL買収に異議  

Illuminaは2021年8月18日、GRAILの買収を完了したと発表した。ただし、米連邦取引委員会(FTC)や欧州委員会(EC)の独禁法審査が終わっておらず、それまでは、独立した別会社のままにするとした。

米国ではF.T.C. administrative judge(行政法判事)が審理中だが、FTC勝利はほぼ確実であるとみられた。

2022/7/26 米Illuminaの元子会社Grail 買収に関する欧米での独禁法問題 

EUは2022年9月6日、IlluminaによるGrail 買収はEU競争法違反の疑いがあると警告する「異議告知書」を両社に送付した。欧州委員会による独占禁止法の調査終了前に買収を完了し、市場競争がゆがめられたとの見解を示した。今後、異議告知書に対する反論の機会が与えられ、その上で欧州委が最終的に違反を認定すれば、両社に年間売上高の最大10%を罰金として科すことになる。

Illuminaは「われわれは欧州委にグレイルの取引を調査する権限があるとの見解にも、制裁金を科す根拠にも同意しない」としている。


他方、米国では行政法判事は2022年9月1日に買収は競争を阻害しないとし判断した。FTCのルールでは、この決定は FTCでレビュー可能で、スタッフは手続きを行った。

米連邦取引委員会(FTC)は4月3日、Illuminaに対しGRAILを切り離すよう命じた。両社の合併により競争が損なわれるとして、合併を支持した行政法判事の判断を覆した。

IlluminaはFTCの今回の判断を不服として米連邦裁判所に申し立てる構えを示しており、その間、FTCの命令は差し止められる。

 

なお、著名投資家のCarl Icahn が同社の取締役会に3人を推薦する予定だとWall Street Journalが報じた。規制当局の反対にもかかわらずGrailの買収に踏み切ったことで、株主に約500億ドルの損害を与えたと主張している。


2023/4/7    敦賀原発2号機の安全審査を再中断

日本原子力発電の敦賀原発2号機の再稼働に向けた審査について、原子力規制委員会は4月5日、日本原電が審査資料の誤記を繰り返し 、改善がみられなかったとして、審査を一時中断することを決めた。

2020年2月にデータの無断書き換えが発覚、審査が約2年中断したが、2022年12月に再発防止の社内態勢が整ったとして審査を再開した。 しかし、審査が再開した後も、昨年12月に157件、3月には更に8件の誤りを報告した。資料の誤りは累計で約1300件に上り、実質的な審査ができていない。

今後の方針として、
@申請書をいったん取り下げさせ、内容を精査した上で再申請させる
A申請書のうち、誤りが多数見つかっている原子炉直下の断層に関する部分を修正し、8月末までに補正を提出させる――の2案が示された。  

規制委はこの日の議論で、A案を採用することを決定 した。

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同原発は原子炉建屋の直下の断層が活断層かどうかが焦点となっている。

原発敷地内の断層を調査した原子力規制委員会が2012年12月10日、外部の専門家4人を交えた評価会合で、原子炉建屋直下の断層を活断層の可能性が高いと判断した。

敦賀原発には、1、2号機の原子炉建屋直下を含め、敷地内に約160の断層がある。さらに、活断層の「浦底断層」が原子炉建屋の約200メートル東を通っている。このため、浦底断層が動くとき、原子炉建屋直下の断層が連動するかどうかが焦点になっていた。

現地調査では、2号機直下を通る断層「D-1」と浦底断層の合流地点付近を重点調査。D-1の近くに新たな断層 (K断層及びG断層)が確認され、K断層、G断層及びD-1破砕帯は、一連の構造である可能性が高い。断層ができた原因は浦底断層の活動とほぼ同じ力が加わったためとの見方で専門家らが一致した。力のかかり方は現在も変わらないとみられ、評価会合では、この断層は将来も動く可能性が否定できないと結論づけた。

これに対し日本原電側は、K断層は途中で消滅し、2号機原子炉建屋の方向に延びていないこと、また、G断層及びD-1破砕帯は一連の構造であるが、K断層は一連ではないと主張する。

日本原電は2015年11月に敦賀原発2号機の安全審査を規制委に申請した。規制委は2号機直下の破砕帯は活断層であるとの判断を下しているが、日本原電はこれに反発し適合性審査の場の論争の決着を狙う。

2012年9月に発足した規制委は旧原子力安全・保安院から検証作業を引き継ぎ、地質や地形、地震などの専門家からなる有識者会合を6つの原発ごとに設置、現場調査も含めた審査を開始した。
検証が始まった段階では、原子炉直下にある破砕帯が「活断層である」、あるいは「活断層であることを否定できない」と有識者会合が認定すれば、再稼働に向けた審査には入れず、事実上、廃炉が確定すると受け取られていた。

しかし規制委の姿勢は変わった。 委員会の設置法には有識者会合に関し法的な権限を定める記載がないため、有識者会合の結論を「重要な知見のひとつとして参考」とし、最終的な判断は適合性審査の場でを下す方向に転じた。
 

日本原電は申請に合わせて、地震など自然災害や電源喪失に備えた追加的安全対策を公表した。追加工事に約750億円を投じる計画で、すでに施した対策と合わせて約900億円を敦賀2号機の再稼働に投じる。


日本原電が提出した資料に関し、2019年に1000カ所以上の記載不備が見つかった。

2020年2月、同社が提出した「ボーリング柱状図」と呼ばれる断層岩の状態を観察記録したデータを無断で書き換えていたことが発覚し た。無断の書き換えは計80カ所に上った。

原電が、原子炉建屋直下に活断層があるかどうかの判断に必要な調査資料の記述を書き換えていた 。

書き換えられたのは、原電が2012年に敷地内で実施したボーリング調査の結果 の採取した地層の観察記録で、2018年の審査会合の資料では「未固結」などとしていた記述が、この日は「固結」に変わっていた。原電の説明はなく、規制委が計900ページに及ぶ資料の中から見つけた。

記述が変わった部分は少なくとも十数カ所あるという。観察記録は科学的な「生データ」で本来変えてはいけない。

原電によると、昨秋以降、同じ地層を顕微鏡などで詳しく調べたところ、肉眼で見るなどした元の観察記録と合わなかったため、記述を書き換えたという。規制委の石渡明委員は「基本的なデータについて、前の記述を残すのではなく、削って書き直すのは非常に問題がある。この資料をもとに審査はできない」と厳しく指摘した。

規制委は2021年8月、資料の信頼性が確保される必要があるとして審査を中断、原電本店に立ち入り検査するなどして業務の確認を進めてきた。

この結果、2022年10月26日の定例会合で「資料を作成するプロセスの改善が確認できた」として、1年以上中断していた再稼働に向けた審査を再開することを決めた。

規制委は社内規定が整備されたことなどを踏まえ「継続的に(審査資料の)品質を確保する取り組みがなされている」と評価した。

書き換えの背景として資料作成の体制が不十分だった点を指摘したが、「審査官を錯誤させる目的で意図的に審査資料の書き換えを行ったことは確認できなかった」とした。

規制委は2022年12月9日、再発防止の社内態勢が整ったとして審査を再開したが、新たに提出資料の誤りが157件見つかった。

本年3月17日の審査会合で、原電は再び審査資料の誤り8件を報告した。観察する地層の場所を間違えるという基本的なミスだった。しかも、規制委からの指示で資料の再精査をする中で見つかった。

原子力規制庁の審査担当者は「こちらから指摘しなければ、今回の誤りも見つからなかった。非常に遺憾」と憤った。

規制委の山中委員長は3月29日の会見で「審査の打ち切りも含め、最後の決断をする」と述べた。


2023/4/10     米国で経口中絶薬で相反する判決

米国で経口中絶薬の認可を差し止める判決と、認可変更を禁止する相反する判決が出た。

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米連邦最高裁は2022年6月24日、1973年の「Roe v. Wade判決」を覆す判断を下した。

「中絶は深い道徳上の問題だ。中絶の権利は憲法に明記されておらず、歴史や伝統に根ざしているわけでもない。憲法は州が中絶を規制したり、禁止したりすることを禁じていない」と結論づけた。

保守派判事5人が支持、リベラル派判事3人が反対し、ロバーツ長官も中絶が妊娠中期まで認められることに根拠がないとして州法の合憲性を認めた。(但し、中絶を選ぶ権利まで取り消すことには反対した。)

ミシシッピ州法については「胎児の生命を保護することなど州側の正当な利益があり、州法には合理的な根拠がある」と判断。州法を「違憲だ」とした連邦控訴裁(高裁)の判決を破棄し、審理を差し戻した。

中絶の権利に対する憲法の保障がなくなり、全米50州の26州で中絶が事実上禁止または大幅に制限される見込み。

2022/5/10   米最高裁の中絶権判例を覆す意見草案 付記

 

米食品医薬品局(FDA)は2023年1月、妊娠中絶に使用される経口薬「ミフェプリストン」の薬局での販売を許可すると発表した。

商品名:Mifeprex(一般名:mifepristone)は、妊娠を続けるために必要な黄体ホルモンのはたらきを抑える経口薬で、この薬をのんだ後、子宮を収縮させる働きがあるミソプロストールをのむことで中絶を起こすもので、世界で普及している。日本でも現在承認申請されて審議されている。

FDAが2000年に承認して以来、370万人以上が使用してきた。FDAは承認当初、妊娠7週までの使用を認め、2016年に妊娠10週まで延長した。

日本では、2021年12月に欧州のLinepharmaの日本子会社がミフェプリストン及びミソプロストールの製造販売承認の申請を行った。

本年3月中にも薬事分科会で審議予定だったが、募集したパブリック・コメントが多数寄せられたため、審議予定をいったん見送った。

付記 (4/21)

厚生労働省の薬事分科会は4月21日、人工妊娠中絶のための飲み薬「メフィーゴパック」について、製造販売の承認を了承した。厚労相が近く承認する見通し。 (4/28 承認) 国内では初の経口中絶薬。

妊娠9週までの初期中絶が対象。妊娠の継続に必要な黄体ホルモンの作用を抑える「ミフェプリストン」を1錠飲み、36〜48時間後に子宮を収縮させる「ミソプロストール」4錠を服用する。

日本では、母体保護法に基づき、母体保護法指定医師のみが人工妊娠中絶を実施することとされており、本剤の使用についても同様の扱いとなる。

米国では以前はこの錠剤は専門の医院でのみ調剤され、女性は直接受け取る必要があった。今回、小売薬局を通じての販売を可能にし、薬局はこれまで患者が直接受け取る必要があった錠剤を郵送で送ることができるようになる 。

FDAの規則緩和を受け、米国での中絶処置の半数以上を占める経口中絶薬へのアクセスは中絶が合法とされている州では容易になる。

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米テキサス州連邦地裁は4月7日、FDAが2000年に承認した中絶薬mifepristoneについて、認可を差し止める判断を下した。

テキサス州では人工中絶に反対する市民団体が、mifepristoneの安全性確認が不十分だと主張して使用停止を連邦地裁に訴えた。

これについて、ドナルド・トランプ前大統領が在任中に指名したMatthew Kacsmaryk判事は訴えを認め、FDAによる認可は、特定の医薬品に関する迅速認可のルールに違反したとの判断を示した。さらに、mifepristoneの「心理的影響」をFDAが「十分に考慮しなかった」ことの「重大性は看過できない」と指摘し、「生殖機能が発達中の18歳未満の少女への影響」が確認されていなかったと述べた。

その上で、FDAに控訴する時間を与えるため、判事自身がこの決定を7日間 一時停止(stay)した。

米司法省は、テキサス州地裁の判断を不服として連邦高裁に控訴した。

バイデン大統領は声明で、テキサス州の地裁判断を「女性の基本的自由を奪い、健康を危険にさらす前例のない措置だ」と厳しく非難した。

mifepristoneが禁止されればもう一方の薬ミソプロストールだけで処置することになり、効果が低下する。

付記 司法省は最高裁に介入を求め、係争中は流通を全面的に認めることを求めた。

   最高裁は4月19日に判断する予定であったが、延期し、4月21日まで流通を認めると発表した。

 

この判決後1時間以内に、ワシントン州の判事がFDAにmifepristoneの使用に変更を加えることを禁止する真逆の判決を下した。

バラク・オバマ元大統領の在任中に指名されたThomas O. Rice連邦地裁判事は、人工中絶を州法などで認める民主党知事の17州と首都ワシントンにおいて、テキサス連邦地裁の判断の適用を差し止め、mifepristoneの使用を引き続き認めるとの判断を示した。

ワシントン州の知事(民主党)は4月4日、mifepristoneが全国的に入手できなくなった場合に備えて、3年分を州内で備蓄したと発表していた。

 

この問題の最終判断は連邦最高裁へと至る可能性が高まった。



2023/4/11 Tesla、上海に蓄電池工場建設
 

中国国営新華社通信はTeslaが上海临港新片区に大型蓄電システム「メガパック」の生産工場を設けると報じた。

4月9日に地元政府との調印式を行った。

付記   

テスラの超大型商用バッテリー「メガパック」工場の着工式が2024年5月23日、上海自由貿易試験区臨港新エリアで行った。同工場はテスラが米国以外で初めて建設するバッテリー工場であり、中国に進出して10年になるテスラが、上海ギガファクトリーに続いて中国で行う大型投資プロジェクトでもある。

上海ギガファクトリーはバッテリー電気自動車(BEV)を年間95万台以上生産できる能力を備え、テスラにとって世界的に重要な生産拠点と輸出センターで、新工場は2025年第1四半期に生産をスタートする。
「メガパック」の生産能力は年間1万基近く、容量は40ギガワット時(GWh)近くに達し、製品は世界に供給される。

 

同社は2019年から同市内の巨大工場でEVを生産しており、対中投資を一段と強化する。

Gigafactory Shanghai  Model 3、Model Y 生産

2018/7/14   Teslaが上海にEV工場建設へ   2019/10/25 Tesla、中国工場の試運転開始

工場は本年第3四半期に建設開始、来年第2四半期に生産を開始する。当初、年間1万台のメガパック、約40GWh相当の蓄電分を製造する予定で、世界中で販売される。

TeslaはEVのほかにも、再生可能エネルギーに不可欠となる蓄電システムを主力事業に位置づけ、Gigafactory New Yorkを持つ。2022年10月にカリフォルニア州Lathropに新しいバッテリーエネルギー貯蔵システムMegapackを開設した。

米国以外にメガパックの生産拠点を設けるのは初めて。

Elon Musk CEO は上海の工場はカリフォリニアで昨年稼働したMegapackを補完するものだとしている。

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 ・ Gigafactory New York 

パナソニックとテスラは2016年12月に同工場での共同生産を発表し、2017年夏からバッファロー工場での太陽電池セルとモジュールの生産を 開始した。テスラは2016年8月にSolarCityを買収し太陽光発電事業に参入しており、米国ネバダ州の「ギガファクトリー」における電気自動車用電池の生産と同様、太陽電池でも両社による共同展開を狙いとしていた。

しかし、パナソニックは2020年2月26日、Teslaと共同で運営していた米国バッファロー工場での太陽電池セルおよびモジュールの生産を2020年5月までに停止し、2020年9月に撤退すると発表した。

2017/1/11    Tesla Motors とパナソニック、「Gigafactory」でバッテリーの生産開始

 ・ Megapack Lathrop

能力40GWhで、年間13,000台以上のメガパックの生産が可能。


参考  Tesla 工場一覧 2023/3/6 テスラ、メキシコに新工場



2023/4/12   米国で多くのLNG計画が進展 

日本経済新聞によると、米国の天然ガス会社Tellurian Inc.は同社のDriftwood LNG計画について日本やインドの企業と出資交渉をしている。資金調達にメドをつけて2027年の生産開始を目指す。

Tellurian Inc.は第一期として年産約1100万トンのLNGプラントを南部ルイジアナ州で計画している。

Driftwood LNG計画は年間約2,760万トンのLNG輸出施設で、フェーズ1ではLNGプラント2基(年間最大1,100万トン)を建設する。建設および操業に必要な全ての主要認可を取得し、詳細設計を約30%まで進めており、約1,200エーカーの不動産の購入およびリースを完了している。

同社は2022年4月、Driftwood LNG ターミナルの第1期工事を開始するため、米国建設会社Bechtel Energyと締結したEPC(設計・調達・建設)契約に基づき、プロジェクトを進めていくと発表した。

Bechtelは、解体工事、土木工事、重要な基礎工事を請け負う。設計はすでに約8割を終えた。米国石油サービス大手 Baker Hughesが、2つの天然ガスタービンの製造を請け負う。

2023年2月末までに計10億ドル(約1300億円)を投じている。

Tellurian Inc.は、同社が過半を維持する格好で2〜3社の出資企業を募っており、「日本企業やインド企業も関心を持っている」という。石油メジャーや米国の上流企業とも接触している。

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米国では多くのLNG計画が進展している。

Venture Global LNG は3月13日、Louisiana 州のPlaquemines LNG export plantの第二期計画を決定したと発表した。2025年ごろまでに計約2000万トンを生産する。

Venture Global LNGはルイジアナ州の2カ所にLNG施設を持ち、それぞれで増設を検討していた。

  立地 能力  
Venture Global Plaquemines LNG Plaquemines, Louisiana 年間2000万トン  
Venture Global Calcasieu Pass LNG Cameron, Louisiana 年間1000万トン  
Venture Global CP2 LNG Cameron, Louisiana 年間2000万トン
最高2400万トン
計画段階
Venture Global Delta LNG Plaquemines, Louisiana. 年間2000万トン  

 

2021/11/11 Sinopec、米企業と20年間のLNG売買契約に調印 

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米国のエネルギー企業Sempraの子会社Sempra Infrastructure Partners, LPは3月20日、同社が開発を手掛けるポートアーサーLNG(液化天然ガス)のフェーズ1プロジェクトの開発、建設、運営に関する130億ドル規模の最終投資決定を行ったと発表した。

Port Arthur LNGの第1期は全ての手続きを完了しており、液化設備2系列、LNGタンク3基その他からなり、年間11百万トンのLNG輸出を目指していた。その後、能力を1350万トンに変更した。将来的には4つの液化トレインで最大年間2,700万トンのLNG生産を計画している。

Saudi Aramco と米国のSempra Energyは2020年1月6日、Aramco Services Company が Sempra LNG がテキサス州で開発中のPort Arthur LNG export projectに参加する Interim Project Participation Agreement に調印したと発表した。

AramcoがPort Arthur LNG の第1期分 年間1100万トン(その後、1350万トン)のうち500万トンのLNGを20年間引き取るとともに、第1期計画に25%出資する。今後、最終確定し、正式契約を結ぶ。

しかし、Sempraは2021年6月、この契約がキャンセルされたと発表した。Aramcoの方針見直しによるとされている。

2020/1/14 Saudi Aramco、米国でPort Arthur LNG計画に参加


2023/4/13  ジャパンディスプレイ、世界第3位のディスプレイメーカー惠科股份(HKC)との戦略提携覚書締結 

ジャパンディスプレイ(JDI)は4月10日、世界第3位の生産出荷規模を誇る広東省深圳市ディスプレイメーカー のHKC:惠科股份有限公司との間で、グローバル戦略パートナーとして次世代OLED ディスプレイ技術の推進と工場建設 などに関する戦略提携覚書を47日付で締結したと発表した。

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JDI20225月に、世界で初めてマスクレス蒸着とフォトリソを組み合わせた方式で画素を形成し、輝度・寿命を大幅に高める次世代OLEDeLEAP」の量産技術を確立した。

また20223月には、世界で初めて第6世代量産ラインにおいて、従来の酸化物半導体薄膜トランジスタと比較して電界効果移動度 24 倍以上となるバックプレーン技術「HMOの開発に成功しており、早期の量産化を目指している。

そのほかを加え、6つの「世界初、世界一」独自技術を持つ。

eLEAP
(次世代OLED)
environment positive(環境ポジティブ)
Lithography with maskless deposition
マスクレス蒸着+フォトリソ方式

Extreme long life, low power, and high luminance
(超長寿命・省電力・高輝度)

Any shape Patterning
(フリーシェイプ・パターニング)

広発光領域でピーク輝度2倍または寿命3倍、フリーシェイプで明るく鮮明な画像を実現
OLED蒸着用マスクを使用せず、洗浄不要

HMO
(High Mobility Oxide)
電界効果移動度従来 OS-TFT 技術と比較し 2倍以上となる高移動度酸化物半導HMOHigh Mobility Oxide技術
及び 4倍以上となる超高移動度酸化物半導体UHMOUltra High Mobility Oxide技術
メタバース
(超高精細ディスプレイ)
圧倒的なリアリティと没入感
高い歩留りと安定した品質
AutoTech EVに対応した統合コックピットの実現
HUDの進化による安全性の向上
Rælclear
(透明ディスプレイ)
高い技術開発力により実現したバックライト無しで表示が可能な液晶ディスプレイで、電源や駆動回路、HDMIと組み合わせて作られた透過率84%を誇るモニターセット。
映し出された映像は、表と裏の両面からクリアに見ることが可能。
新技術・新商品・新事業 独自技術の用途拡大
 課題解決型の新規事業

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ジャパンディスプレイは、日立・ソニー・東芝の液晶事業を統合して2012年に発足し、スマホの上位モデルをターゲットに液晶を供給してきた。

しかし、最大顧客の米アップルが iPhone の新モデルで初めて有機ELを採用、有機ELに強い韓国メーカーを前に競争力を失った。

2019年4-6月期の決算で、顧客の在庫調整や米中貿易摩擦の影響を受けた需要減により売上高が減少したほか、白山工場の減損を含む517億円の事業構造改善費用を特別損失として計上し、債務超過となった。

2019/8/14   JDIが債務超過に

経営再建中のジャパンディスプレイ(JDI)は2020年1月31日、独立系投資顧問のいちごアセットマネジメントから最大1008億円の出資を受け入れる方向で最終契約を結んだと発表した。

2020/7/24    JDI、いちごアセットと追加出資受け入れの最終契約締結

現在、親会社「いちご」のScott Callon氏がCEOである。

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今回、中国のパネル大手、恵科電子(HKC)と有機ELパネルの量産化での提携を決めた。

有機ELは韓中勢が席巻する。JDIは上記の多くの技術を持つが、赤字経営が続き、資金力で劣る。

他方、HKC は、近年、大型ディスプレイ分野において急速な成長を遂げているエレクトロニクスメーカーで、2017年以降、中国の重慶、滁州、綿陽、長沙にて次々と第8.6世代ディスプレイ工場での量産を開始して売上を急拡大しており、強力なコスト競争力、販売力、機動力、更には資金力も有している。

JDIとHKC は、JDIの「世界初、世界一」独自技術及び生産技術力、HKC のコスト競争力及び販売力、並びに両社の人材力の融合が、両社の企業価値の飛躍的向上に資するとの考えで一致した。

下記で合意した。

1)グローバル戦略パートナーとして、次世代 OLEDeLEAP」、共同開発センター、ハイエンド車載ディスプレイ事業などについて、長期的・全面的・深い協力

2)
世界最先端の eLEAP 工場を共同で計画・建設し、2025 年内の量産開始を目指す。


JDIが虎の子の技術を供与してHKCが2025年の量産を目指す。

新工場の投資額は数千億円規模になる。

JDIの有機EL技術を使い、HKCが中国国内で工場を建設する。JDI側は工場建設への直接的な投資は行わなず、技術者を送るなどして対価を得る。

新工場にはテレビ向けパネルの生産にも対応できる8.6世代と呼ばれる大型設備を導入する。

日本国内には共同の開発センターを新設する。

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有機ELの権威 城戸淳二博士のブログ 大学教授のぶっちゃけ話(2023/4/12)

そんなに画期的な技術を開発したのであれば、

自社で設備投資してサムスンやLGよりも高性能で低価格な有機ELパネルを量産すれば、

売れまくって、一気に黒字化すると思うのですが、

その辺りが私のような一般ピープルには理解し難いところです。     

国策会社よ、

がんばってくれよ!

 

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ジャパンディスプレイは産業革新機構の下で液晶メーカーとして再出発した。しかし、最大顧客のアップルの有機EL採用があり、アップルの要請で同社向けに建設した白山工場が契約ミス(Take or Pay条項なし)で売却を余儀なくされた。

同社は2016年末に産業革新機構から750億円を調達、調達資金を有機ELに振り向けることで、競争力を強化した。

同社は一時、ソニーとパナソニックの有機EL事業を統合したJOLEDに51%出資する計画であったが、とりやめた。

そのJOLEDは2023年3月27日、東京地方裁判所に民事再生手続き開始の申し立てを行ったと発表した。JOLEDが培った有機発光ダイオード(OLED)ディスプレーの技術や知的財産権を継承することなどで、ジャパンディスプレイと基本合意した。

2023/3/29 有機EL事業のJOLED、民事再生手続き

ジャパンディスプレイ のeLEAPは、JOLEDが開発していた技術ではなく、液晶に頼ってきたJDIが事業建て直しの核として開発してきたもの。

今後、JOLEDの資産と技術者はJDIに移り、両社の技術が統合される。

但し、折角の優れた技術が、資金難のため自ら事業化できず、技術料で稼ぐだけというのは残念である。

いちごアセットは1108億円を投じてJDIを救済したが、採算が取れるのだろうか。


2023/4/14 サウジアラムコの韓国大型石油化学事業 Shaheen Project 着工

Saudi Aramco の韓国の子会社で石油精製、石油化学事業を行うS-Oil は 3月9日、蔚山市の蔚山工場で大型石油化学事業「Shaheen Project」の着工式を行った。

尹大統領をはじめ、産業通商資源相、蔚山市長、S-OilのCEO、親会社AramcoのCEOなど300人余りが参加した。

Shaheen Project (アラビア語で鷹計画)は、70億ドルを投じて蔚山温山国家産業団地内にスチームクラッカーをはじめとする大規模石油化学生産設備を建設する もので、最大規模の外国人投資であるだけでなく、韓国石油化学分野でも最大規模の投資プロジェクトである。

S-Oil はSaudi Aramcoと双竜グループとの共同経営であったが、Aramcoが双竜の持株を買収した。現在は韓国取引所に上場され、Aramcoが63.46%を出資し、最大株主である。(第二位株主は韓国年金基金の6.91%)

S-Oilの精油所は蔚山広域市に立地し、日量669,000バレルの精製能力を誇る。

化学製品の現状能力は次の通り。単位:千ton/year

BTX Facility Benzene 150
Toluene 350
Xylene 450
Xylene Center Para-Xylene 800
Benzene 150
No.2 Aromatics Para-Xylene 1,050
Benzene 300
RFCC Propylene   200
RUC/ODC Complex Ethylene 187
Propylene 710
Propylene Oxide 300
Polypropylene 405
MTBE 370
Benzene 72

 

サウジアラビアのサルマン皇太子は2022年11月17日に韓国を訪問、韓国企業とサウジの政府や機関、企業がさまざまな超大型協力プロジェクトを始動させた。

韓国産業通商資源部とサウジ投資省は同日、ソウルで「韓国・サウジアラビア投資フォーラム」を開催した。両国政府や企業の関係者300人あまりが出席し、26件の契約や覚書が締結された。

サウジの国営石油会社Aramco の韓国子会社「SーOil」は、韓国で大型石油化学事業「Shaheen Project」を実施することを決めており、フォーラムでは、S-Oilと韓国の建設会社3社との間で、設計・調達・施工契約が結ばれた。

2022/11/21 サウジのムハンマド皇太子、韓国訪問、来日は中止

 S-Oilは2022年11月17日にShaheen Project計画を発表した。 

 9兆2580億ウォン(70億ドル)を投資して「原油→TC2C(Thermal Crude to Chemical)→スチームクラッカー→石油化学製品」につながる精油 ・石油化学統合設備を建設する。

TC2C (Thermal Crude to Chemical) はLummusの技術で ある。

Lummus Technologyは2022年12月21日、TC2CTM crude-to-chemicals technology の第1号がShaheen Projectに採用されたと発表した。

概要は下図の通り。原油を効率よく分離する熱処理技術や副生物の有効活用などを組み合わせ、原油の約7割を石化製品の主原料に転換できる。
常圧蒸留装置なども不要である。

従来に比べ原油からの石油化学製品の生産量が増加するほか、生産コストを低減する効果があるとされる。

最終 製品の生産能力は 次の通り。

エチレン 58万トン、プロピレン 77万トン、ブタジエン 20万トン、ベンゼン 28万トン

LLDPE 88万トン、HDPE 44万トン

 
2026年6月にメカニカルコンプリーション、2026年末から本格的な稼動を開始する予定。


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