2022/11/24 LG Chem、米国に正極材工場建設
LG Chemは11月22日、テネシー州と正極材工場建設業務協約(MOU)締結式を行ったと明らかにした。
LG Chem
は11月15日、正極剤工場を米国に建設することを検討していると発表した。
ソウル経済新聞が同日、LGが米国のインフレ対策法案への対応として、テネシー州Clarksvilleで32億ドルを投じて建設すると報じたのに対し、発表したものだが、詳細は決まっていないとしていた。
2022/11/18 LG
Energy Solution、米国Compass Mineralsから炭酸リチウムを調達
LG Chemは30億ドル以上を単独投資し、テネシー州Clarksvilleの170万平方メートルの敷地に来年1〜3月期中に着工する。
同じテネシー州のSpring
HillにはGMとLG Energy SolutionのJV Ultium
Cells LLCのバッテリー第二工場もある。
付記
LG Chem
は2023年12月19日、現地で地鎮祭を行った。2026年に第一期6万トンでスタートする。
2025年から正極材の量産を始め、その後生産ラインを段階的に拡大して2027年には年産12万トン規模に増やす。走行距離500km以上の高性能電気自動車約120万台分のバッテリーを作れる水準で、米国で最大規模の正極材生産施設となる。
次世代電気自動車バッテリー用ハイニッケルNCMA(ニッケル・コバルト・マンガン・アルミニウム)正極材を生産する。NCMA正極材はエネルギー密度を決めるニッケル含有量を高めて安定性が高いアルミニウムを使い出力と安定性を備えたのが特徴。
生産ラインもまた熱を加える焼成工程設計技術を高度化し、ライン当たり生産量を年間1万トン以上に引き上げる。
また、スマートファクトリー技術を活用しすべての工程の自動化と品質分析・管理システムを構築する。工場は太陽光や水力など100%再生可能エネルギーで稼動する。
同社はこれを通じて米インフレ抑制法と世界の電池素材市場に積極的に対応する方針である。
8月に米国で成立したインフレ対策法案(Inflation Reduction
Act of 2022)では、低・中所得者がエコカーなどの新車を購入する際に1台当たり最大7500ドルの税控除を受けられる。
ただ、EV減税の対象となる新車について、北米地域での最終組み立てを義務付けた。
さらにEV用電池の原材料である重要鉱物の調達先を、米国か、米国と自由貿易協定(FTA)を結んでいる国に事実上制限する。
上記のLG Energy Solutionの米国Compass Minerals
からの炭酸リチウム調達はこれに対応するもので、今回のLG Chemの計画もこれが米国立地の理由の一つである。
今回の計画を基に LG Chemは正極材を含む電池素材事業の売り上げを今年の約5兆ウォンから2027年には約20兆ウォンと4倍に成長させる。
LG Chemは本年7月、次の3分野に2025年までに総額10兆ウォン(約9524億円)を投資すると発表していた。
△環境にやさしい素材を中心とした持続可能なビジネス(3兆ウォン、約2857億円)、
△電池素材を中心としたE-モビリティ(6兆ウォン、約5714億円)、
△グローバル新薬(1兆ウォン、約952億円 )
付記
LG Chemはこの発表の直後に、Korea Zinc
社との間で正極剤製造に使われるメタルの共同開発を含めた全面的事業提携(株式交換を含む)を行う覚書を結んだ。
金属回収、高純度金属製造を可能とするKorea
Zinc社の精錬技術を使い、バッテリー材料の安定的なサプライチェーンをつくる。
2022/11/25 英国最高裁、スコットランド独立を問う住民投票 実施認めず
英最高裁は11月23日、スコットランドの議会は独立を問う住民投票を実施するための立法権はないとし、英政府の同意を得ずに住民投票は実施できないとの判断を下した。
スコットランド自治政府の
Sturgeon 首相は、英国からの独立の是非を問う2度目の住民投票を2023年10月に実施する計画を表明していた
が、英国政府が反対したため、最高裁判所に判断が委ねられていた。
リード最高裁長官は判決文を読み上げ、住民投票を行う権限は英議会に属し、「スコットランド自治議会は(これに関する)立法の権限を有しない」と述べた。全会一致の判断だったという。
1998年スコットランド法30条では、住民投票の実施権限を英国議会からスコットランド議会に移譲するとなっている。しかし、特定の事項については移譲されない。
今回の“Should Scotland be an independent country?”
と問う住民投票については、スコットランドと英国の統合を含む憲法の問題であり、移譲されない問題(reserved
matters)に属し、英国議会の権限であるとした。
単に意見を聞くだけだとするスコットランド側の主張も、正当に実施された住民投票の結果は政治的に大きな意味を持つとして否定した。
判決文 https://www.supremecourt.uk/cases/docs/uksc-2022-0098-judgment.pdf
最高裁判所の判断を受けて、
Sturgeon 首相は「スコットランドの人々が意思を表明できる民主的な別の手段を見つけなければならない」などと述べ、引き続き独立の道を模索する考えを示し
、「英議会下院の次の総選挙が事実上の住民投票になる」と述べた。
ーーー
スコットランド王国は1707年合同法により、イングランド王国に統合され、Kingdom
of Great Britainとなった。
ブレア内閣はスコットランド住民の独立志向を抑えるため、1999年にスコットランド議会を設置して、中央政権の権限を大幅にスコットランド自治政府に移譲した。
スコットランドの独立志向は一時的に抑えられたかに見えたが、2011年5月のスコットランド議会選挙でスコットランド独立を公約に掲げるスコットランド国民党が議会の過半数を占める大勝利を収め、党首が自治政府の首相に就任した。
2012年10月にイギリスのキャメロン首相と自治政府首相の会談で住民投票の実施が決まった。
スコットランドの独立を問う最初の住民投票は2014年9月18日に実施された。住民投票では55%が独立に反対し、否決された。
2016年のBrexit
国民投票ではスコットランドは62%が離脱に反対した。
スコットランドの自治政府のNicola Sturgeon
首相は2019年4月24日、2021年までに独立の是非を問う2回目の住民投票を行う準備を開始する意向を示した。
もし、スコットランドが独立し、EUに帰属すると問題は大きい。
国境管理(モノ、ヒト)、通貨、北海原油の帰属、
安全保障(原子力潜水艦基地はスコットランドにある)、・・・・
2019/4/25
スコットランド首相、独立問う住民投票再実施 目指す
ジョンソン首相は2019年12月のSturgeon
首相との電話会談で、「2014年の独立住民投票の結果は決定的であり,第二回独立住民投票を認めるつもりはない」と発言した。
2021年5月6日に投票が行われたスコットランド議会選挙は、与党スコットランド民族党が64議席を獲得し第1党となった。
独立のための住民投票を公約に掲げる同党は単独過半数を目指していたが、過半数(65)には1議席届かなかった。
しかし、独立を支持する緑の党は8議席を獲得し、独立を支持する勢力で72議席となり過半数を確保した。
2021/5/10 スコットランド議会選挙、独立派が過半数確保
スコットランド自治政府のNicola
Sturgeon 第一首相は2022年6月28日、スコットランド独立の是非を問う2度目の住民投票を2023年10月19日に行う意向を示した。
住民投票で問う内容について、2014年の前回投票と同じ、「スコットランドは独立国となるべきか?」にすると述べた。
また、すでに(当時の)ボリス・ジョンソン首相に書簡を書き、投票実施の正式な承認を求めたが、政府の承認が得られなくても投票計画を進めていくと述べた。その上で、住民投票は「議論の余地なく合法的」かつ合憲である必要があると強調した。
これに対し、英国政府は、提案を検討するとしながらも、今は住民投票を再び行う「タイミングではない」という立場に変わりはないと強調した。また、
英国政府が憲法を解釈する権利をもっていることは「明確」だとした。
この問題は英最高裁の判断に委ねられ、今回の判断となった。
2022/11/26 塩野義製薬、COVID-19ワクチンS-268019の国内における製造販売承認申請
塩野義製薬は11月24日、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対する予防ワクチン(開発番号:S-268019)について、成人における初回免疫(1回目、2回目接種)および追加免疫(3回目接種)によるCOVID-19の予防を適応として、日本国内における製造販売承認申請を行ったと発表した。
国内の製薬会社が開発を進めてきた新型コロナワクチンの承認申請は初めて。
S-268019は、同社グループ会社のUMNファーマが有するBEVSを活用した遺伝子組換えタンパクワクチンで、ウイルスの遺伝子情報から目的とする抗原タンパクを発現・精製後に、アジュバントを添加して投与される。
BEVS(Baculovirus Expression Vector
System)は昆虫細胞などを用いたタンパク発現技術で、UMNファーマが有する技術ではバキュロウイルスや昆虫細胞由来の成分・病原ウイルスの混入なしに抗原タンパクの精製が可能である。
同社は2021年12月27日に、S-268019について、グローバル第3相臨床試験 をベトナムで開始したと発表している。
同社は安全性の観点から2種類のヘルパーT細胞のバランスを重視して選択したアジュバント
を用いて、2020年12月より第1/2相臨床試験を実施してきた。
2021年7月末より、2種類のヘルパーT細胞のバランスを維持しつつもより高い中和抗体価の誘導が必要と判断し、アジュバントを変更した新製剤を用いて国内における第1/2相臨床試験を新たに開始した。10月20日に国内第2/3相臨床試験を開始、12月3日には国内において、追加接種による臨床試験を開始した。
2021/12/31 塩野義製薬、COVID-19ワクチンのグローバル第3相臨床試験開始
製造販売承認申請は、国内で実施した5つの臨床試験の良好な結果に基づくもので、1回目と2回目の接種を想定した臨床試験で、ウイルスの働きを抑える中和抗体の値がアストラゼネカのワクチンよりも高いと確認できたほか、3回目の接種を想定した臨床試験では、中和抗体の値がファイザーのワクチンを接種した場合と同じ程度だった。
また、これまでの臨床試験で、安全性に大きな問題は確認されなかった。
ーーー
厚生労働省の専門家分科会は11月22日、塩野義製薬が開発した新型コロナ飲み薬「ゾコーバ」の緊急承認を了承した。安全性を確認したほか、症状改善を早める有効性が推定できると判断した。厚労省は同日、承認した。
2022/7/25
塩野義コロナ飲み薬、「緊急承認」見送り 付記
2022/11/28 アラスカ州の中間選挙
アラスカ州の中間選挙の結果が11月23日にようやく発表された。いずれもトランプ派が敗北した。
上院:
Lisa Murkowski(共和党) |
現職、反トランプ |
53.7% |
Kelly Tshibaka(共和党) |
トランプ派の刺客 |
46.3% |
Patricia Chesbro(民主党) |
|
0% |
Buzz Kelley(共和党) |
|
0% |
共和党のLisa
Murkowski(現職)は、トランプ大統領支持者らによる昨年1月の連邦議会襲撃を受け、共和党上院議員として初めてトランプ氏の辞任を求め、その後、弾劾裁判でトランプ氏の有罪に投票した。
下院:
Mary Peltola(民主党) |
現職、アラスカ先住民 |
54.9% |
Sarah Palin(共和党) |
トランプ派、2008年の副大統領候補 |
45.1% |
Nick Begich(共和党) |
|
0% |
Chris Bye(Libertarian) |
|
0% |
共和党下院議員 Don
Young が2022年3月18日に死去、補欠選挙が8月末に行われた。その結果、Mary Peltola(民主党)が共和党のSarah Palin(元アラスカ州知事、元副大統領候補)を破り、アラスカ先住民として初めて連邦下院議員になった。Don
Young 議員の残り任期を務め、今回、中間選挙に臨んだ。
8月末と今回と2回とも、Mary PeltolaがSarah Palinに勝利した。
先住民エスキモーにはイヌイット族とユピック族があるが、Sarah Palinの母親はユピック族。
Sarah Palinについて 2008/9/8 Governor
Sarah Palin とAlaska
Gas Pipeline
今回、選挙結果の確定が遅れたこと、両院とも3位以下の得票率がゼロとなっていることは、アラスカ州で2020年の住民投票で導入が決まり、今回から採用された優先順位付き連記投票(Ranked choice general election )制度によるもの。
東部メイン州で2020年11月3日に行われた大統領選挙と連邦議会上下両院の選挙で米国で最初に採用された。西部ネバダ州でも導入に向けた動きが進んでいる。
Ranked choice general electionについて(NPB放送による説明):
得票率50%以上を勝利とし、ジョージア州のように50%以上が無しの場合に再選挙を避けるための仕組みを折り込んだ。
予備選挙により、候補者を4人までに制限、投票に当たり1位から4位までを予め、決めさせる。
1.予備選で候補を上位4人に絞る。
2.投票 候補に順位(rank)をつける。
3.集計の結果、1位が50%超の候補があれば、確定
4.全てが50%未満なら、最下位の候補の票をその票の第2rankの候補に配分
5.それでも全てが50%未満なら、3位の候補の票(配分を受けた最下位候補の票を含む)を2候補に配分
(3位の候補の票を、2候補のうちの上位のrank の候補に配分)
従来の制度では、各党で強硬な主張をする候補が有利になりやすい。今回の制度では、逆転勝利もあり得ることとなる。
今回の投票結果と最終結果は下記の通り。
上院:
|
|
投票 |
最終 |
Lisa Murkowski(共和党) |
現職、反トランプ |
43.4% |
53.7% |
Kelly Tshibaka(共和党) |
トランプ派の刺客 |
42.6% |
46.3% |
Patricia Chesbro(民主党) |
|
10.4% |
0% |
Buzz Kelley(共和党) |
|
2.9% |
0% |
1位、2位はいずれも共和党候補となった。
下院:
|
|
投票 |
最終 |
Mary Peltola(民主党) |
現職、アラスカ先住民 |
48.8% |
54.9% |
Sarah Palin(共和党) |
トランプ派、2008年の副大統領候補 |
25.7% |
45.1% |
Nick Begich(共和党) |
|
23.3% |
0% |
Chris Bye(Libertarian) |
|
1.7% |
0% |
Sarah Palinは共和党が割れたため、得票率は低いが、新制度で善戦した。但し、3位のNick Begichに入れた共和党員の多くが、第2ランクに共和党のSarah Palinではなく、民主党のMary Peltolaを入れたことを示している。
2022/11/29
米FCC、Huawei
やZTEなどの通信機器の輸入と販売を禁止
アメリカのFCC(連邦通信委員会)は11月25日、華為技術など中国の大手企業の通信機器の輸入と販売を禁止すると発表した。
決定:REPORT
AND ORDER, ORDER, AND FURTHER NOTICE OF PROPOSED RULEMAKING
発表:FCC
Bans Authorizations for Devices That Pose National Security
Threat
今回の措置について、FCCは声明で「安全保障上の脅威からアメリカ国民を守るための継続的な取り組み」だとしている。
政府から補助金を受けるアメリカ企業が華為技術などから機器を購入することは既に禁じられている。
2018/12/11
2019年度米国防権限法(NDAA2019) --- Huawei、ZTE等の米政府機関との取引からの排除
今回の規制で国内からの排除を徹底する。
バイデン政権は先月に最先端半導体技術の中国への輸出規制を強化したばかりで、ハイテク製品をめぐる米中の対立は深まる一方である。
米商務省は10月7日、国家安全保障上の懸念を理由に、中国に対する半導体および関連製造装置の輸出制限を強化した。
中国は同技術を使用して、大量破壊兵器を含む軍事システムを製造し、軍の効力を向上させ、人権侵害を犯しているとし、中国による高度な半導体の購入や製造、スーパーコンピュータの開発を規制する。
「国家安全保障を守り、軍事用途の機密技術が中国の軍や諜報機関、セキュリティサービスに不正に入手されるのを防ぐために、あらゆる手段を適切に講じている。脅威の環境は絶えず変化している。本日政策を更新したのは、同盟国やパートナーとの支援活動や調整を継続する中で、中国がもたらす課題に確実に対処するためだ」としている。
具体的には、国家安全保障と米国人の安全に容認できない脅威をもたらし得るとして指定された「対象機器・サービス」(“Covered
List” に掲載されたもの)について米国への輸入と販売を禁止するもの。
現在のリストは下記の通り。
Covered
Equipment or Services* |
Date of
Inclusion
on Covered List |
Telecommunications equipment produced by
Huawei Technologies Company |
March 12, 2021 |
Telecommunications equipment produced by
ZTE Corporation |
Video surveillance and
telecommunications equipment produced by
Hytera Communications Corporation |
Video surveillance and
telecommunications equipment produced by
Hangzhou Hikvision Digital Technology Company |
Video surveillance and
telecommunications equipment produced by
Dahua Technology Company |
以上について 2021/6/22 米、Huaweiなど中国製の通信機器の認証禁止へ
その後、下記が追加された。 |
Information security products,
solutions, and services supplied, directly or indirectly, by
AO Kaspersky Lab
or any of its predecessors, successors, parents, subsidiaries, or
affiliates. |
March 25, 2022 |
International telecommunications
services provided by China Mobile
International USA Inc.
|
Telecommunications services provided by
China Telecom (Americas) Corp.
|
International telecommunications
services provided by
Pacific Network Corp
and its wholly-owned subsidiary ComNet (USA) LLC
. |
September 20, 2022 |
International telecommunications
services provided by China Unicom
(Americas) Operations Limited. |
本件はFCCが2021年6月17日に安全保障上のリスクとみなす中国企業5社の通信機器の認証を禁じる(その場合、国内販売が出来ない)方針を決め、米議会はこれを法制化し、法案は下院では2021年10月20日、上院は10月28日に可決、バイデン米大統領は11月11日にこの法案(Secure
Equipment Act of 2021)に署名、成立している。
この法律では、安全保障上の脅威をもたらし得ると指定された“Covered Equipment or Services
List”に掲載された製品について認証をしないということを明らかにするルールを制定することを命じている。
これに従い、正式にそのルールを定めたもの。
We
adopt revisions to our equipment authorization program
to prohibit authorization of
equipment that has been
identified on the Commission’s Covered
List – published pursuant the Secure
and Trusted Communications Networks Act of 20192
– as posing an unacceptable risk to national security
of the United States or the security or safety of United States
persons, and we prohibit the marketing and
importation of such equipment in the
United States.
We also address what constitutes “covered”
equipment for purposes of implementing the equipment
authorization prohibition that we are adopting.
The actions we take today in adopting new rules and procedures
comply with Congress’s directive in the
Secure Equipment Act of 20213
to prohibit authorization of “covered” equipment on the Covered
List
within one year of that Act’s enactment and lay the foundation
to prohibit the authorization of any
additional “covered” equipment that may be added to the Covered
List based on a determination that such
equipment poses an unacceptable risk to national security
ーーー
これまでの経緯は次の通り。
米司法省は2019年1月28日、イランとの違法な金融取引に関わった罪などで中国の通信機器最大手、華為技術(Huawei)と同社の孟晩舟・副会長兼最高財務責任者(CFO)を起訴したと発表した。
2019/2/1 米司法省、Huawei
を起訴
カナダ司法省は2018年12月1日、中国の通信機器最大手、華為技術(Huawei
Technologies )の創業者 任正非(Ren Zhengfei)の娘である孟晩舟(Meng Wanzhou)副会長
兼 最高財務責任者(CFO)をバンクーバーで逮捕した。米司法省は孟氏を逮捕したカナダに身柄の引き渡しを求めた。
2018/12/10 華為技術(Huawei
Technologies )の副会長の逮捕
米上下両院は2018年8月、華為技術(Huawei)や中興通訊(ZTE)と、監視カメラ大手の杭州海康威視数字技術(HIKVISION
)、浙江大華技術(Dahua
Technology)、海能達通信(Hytera)の計5社への締め付けを大幅に強化することを盛り込んだ「2019年度米国防権限法(NDAA2019)」を超党派の賛成で可決し、8月13日にトランプ大統領が署名、成立した。
禁止を国防総省以外の政府機関にも拡大するもので、禁止対象製品は次の通り。
(A) Huawei Technologies と ZTE
(関係会社を含む)製の通信機器 (Telecommunications equipment)
(B) Hytera
Communications、Hangzhou Hikvision Digital Technology、Dahua
Technology Company (関係会社を含む)製のセキュリティ用のビデオ監視・通信機器 (video
surveillance and telecommunications equipment)
禁止は2段階に分かれる。
第1 段階(発効日の1年後=2019年8月13日以降)
米政府機関(連邦政府、軍、独立行政組織、政府所有企業)が5社の製品や、5社が製造した部品を組み込む他社製品を調達することを禁止
第2段階(発効日の2年後=2020年8月13日以降)
5社の製品を社内で利用している世界中の企業との取引を禁止
(米政府機関に収めている製品・サービスが通信機器とは一切関係のない企業でも、5社の製品を使っておれば禁止)
2018/12/11
2019年度米国防権限法(NDAA2019) --- Huawei、ZTE等の米政府機関との取引からの排除
Trump 大統領は2019年5月15日、米企業が安全保障上リスクがある企業の通信機器の調達を禁じる大統領令に署名した。名指しはしていないが、中国の通信機器最大手、華為技術(Huawei)などが念頭にあると報じられている。
米商務省は同日、安全保障上の懸念があるとして輸出を規制する外国企業のリスト(Entity
List)に中国の通信機器最大手、華為技術(Huawei)を追加したと発表した。
米連邦通信委員会(FCC)は2019年11月22日、政府の補助金を受けている米通信事業者に対し、中国通信機器大手の華為技術(Huawei)と中興通訊(ZTE)製の通信機器の利用を禁止する規制の導入を決めた。
2019/11/26
米FCC、補助金を受けている米通信事業者に HuaweiとZTE機器の利用禁止
米商務省の産業安全保障局 (Bureau of Industry and Security ) は5月15日、Entity
Listによる華為技術(Huawei)に対する輸出禁止措置を強化すると発表した。
米国に由来する技術を使った半導体は、外国製でも同社への輸出ができなくなる。
2020/5/18
米商務省、Huawei向け輸出規制を強化
米政府は2020年7月14日、米政府機関が Huaweiなど指定企業の製品などを利用している企業と契約を行うことを禁止する2019年度国防権限法第889条に関する最終暫定規則を官報で公表した。
米政府は8月13日、華為技術(Huawei)など中国企業5社の製品やサービスを使う企業と、米政府との取引を禁止する規則を施行した 。
2020/7/20
米国、Huaweiなどの中国企業の通信機器等利用者からの政府調達を禁ずる規則案を発表
米国務省は2020年7月15日、Huaweiなど中国のハイテク企業の従業員に対するビザ制限を発表した。「当該の外国人の入国が、『米国の外交政策にとって深刻な悪影響を及ぼす可能性がある』と国務省が信じるに足る理由があれば、特定の従業員の米国への入国資格を認めない」としている。
2020/7/21
米、Huaweiなど中国ハイテク企業の従業員にビザ制限
米商務省の産業安全保障局は8月17日、Huaweiに対する輸出規制を更に強化すると発表した。
米国技術が関わる半導体やソフトがHuaweiにわたるのを完全に遮断する。さらに禁輸リストであるEntity
ListにHuaweiの関連会社38社を追加した。
2020/8/20 米商務省、Huawei向け輸出規制を更に強化
中国の華為技術(Huawei)に対する米政府の新たな輸出規制が9月15日に発効した。米国の技術を活用してつくる半導体について、国外で製造されるものも含めてHuaweiへの供給を認めない。
2020/9/16 Huaweiへの半導体供給 停止
米連邦通信委員会(FCC)は2021年3月12日、米国の通信ネットワークの保護のための2019年の法律に基づき、上記5社を安全保障上の脅威に認定した。
FCCは通信機器の安全性確のため、米国内で使える通信機器を認証している。今後は対象の中国5社の製品を認証しないほか、過去の認証を取り消すことも検討する。一般から意見を募って規則の詳細を決める。当局の認証がなくなれば、米国内で販売できなくなる。
FCCは2021年6月17日、安全保障上のリスクとみなす中国企業5社の通信機器の認証を禁じる方針を決めた。
禁止の対象は次の5社の製品:
企業名 |
Covered Equipment or Services |
華為技術
Huawei Technologies Company |
Telecommunications
equipment including telecommunications or video
surveillance services |
中興通訊
ZTE Corporation |
海能達通信
Hytera Communications Corporation |
Video surveillance and
telecommunications equipment to the extent it is used
for the purpose of public safety, security of government
facilities, physical security surveillance of critical
infrastructure, and other national security purposes |
杭州海康威視数字技術 (Hikvision)
Hangzhou Hikvision Digital Technology |
浙江大華技術
Dahua Technology Company |
米議会はこれを法制化し、法案は下院では2021年10月20日、上院は10月28日に可決された。バイデン米大統領は11月11日、この法案に署名、成立した。
2021/6/22 米、Huaweiなど中国製の通信機器の認証禁止へ
2022/11/30 三菱マテリアル、中国人元労働者側に「謝罪金」計25億円支払い
人民日報は11月28日、戦時中の中国人強制連行問題をめぐり、三菱マテリアル(旧三菱鉱業)と中国人元労働者側の2016年6月の和解合意に基づき、「歴史・人権・平和」基金を通じて、これまでに元労働者側の1290世帯に1億2900万元(約25億円)の「謝罪金」が支払われたと報じた。
2016年の和解合意では元労働者側に、1人あたり10万元(約190万円)を支払うことなどを柱としており、和解合意後の2019年、三菱マテリアルと中国側で基金が設置された。
人民日報は、これまでの支払いについて、元労働者側らが「十分に認めている」と伝え、評価する姿勢を示した。
三菱マテリアルは、2016年6月1日、北京市において、第二次世界大戦中に中国人元労働者が同社の前身である旧三菱鉱業の事業所において労働を強いられたことについて、3
名の元労働者のと和解した。
同社は、歴史的責任に対し真摯かつ誠実な謝罪の意を表明し、3
名の元労働者に謝罪の証として
1
人当り
10
万人民元を支払うことで合意した。
また、今後中国国内で基金を設立し、旧三菱鉱業の事業所において労働を強いられたその他の元労働者またはその遺族所在調査と和解、記念碑の建立等を行うこととした。
和解事業として、下記をおこなう。
@
基金の設立
A
基金運営資金の拠出
B
基金による所在未判明者の調査とその適格性確認
C
基金による謝罪の証としての金員の支払い
D
基金による記念碑の建立と慰霊追悼行事
同社の発表では、対象者は北海道の美唄炭鉱、大夕張炭鉱、雄別炭鉱、秋田県の尾去沢鉱業所、福岡県の勝田炭鉱、飯塚炭鉱、長崎県の端島炭鉱、高島炭鉱、崎戸炭鉱、宮崎県の10事業所に合計3,765人を受け入れている。
このうち、これまでに1,290人に支払ったことになる。
ーーー
戦時中の徴用工問題については、韓国では原告らが2015年5月に三菱重工業や日本製鉄、三井造船(現・三井E&S)、ENEOS、住友金属鉱山、三菱マテリアルなど17社(うち1社はその後、取り下げ)を相手取り提訴した。
韓国大法院は2018年10月、日本製鉄強制徴用の被害者が出した損害賠償訴訟で被害者の勝訴を確定した。日本製鉄(旧新日鉄住金)に対し、戦時中に日本の工場に動員された4人の韓国の元労働者に1人あたり約1000万円の賠償を命じた。その後も同種訴訟で日本企業敗訴が相次いでいる。
日本側は、1965年の日韓請求権協定で解決済みとする日本政府の見解に沿って賠償責任はないと主張している。
1965年の日韓請求権協定では、日本から韓国に対して,無償3億ドル、有償2億ドルの経済協力を約束する(第1条)とともに,両締約国及びその国民(法人を含む)の財産,権利及び利益並びに両締約国及びその国民の間の請求権に関する問題は「完全かつ最終的に解決」されており,いかなる主張もすることはできない(第2条)ことを定めている。
韓国の最高裁判所は、三菱重工業が韓国国内にもつ資産の売却命令に対する会社側の再抗告について、本年8月にひとまず判断を見送った。
2022/8/22 韓国最高裁
徴用めぐる三菱重工業の再抗告 判断を見送り
岸田首相は11月のASEAN首脳会議中に韓国の尹錫悦大統領との首脳会談で、「元徴用工(旧朝鮮半島出身労働者)」問題の早期解決を図ることで一致した。
「(今年9月の)ニューヨークでの私と尹大統領との指示を受け、外交当局間での協議が加速していることを踏まえ、懸案の早期解決を図ることで改めて一致した」と語った。
サンフランシスコ平和条約では、連合国の日本への戦後補償請求権は放棄されることとなった。放棄された「請求権」の主体は個人も含む。
しかし、当時、中華民国、中華人民共和国いずれを中国とするのか国際的に定まっていなかったため、中国(中華民国と中華人民共和国)は同会議に招請されず、上記放棄条項を批准していない。
中国については、1972年9月の日中共同声明で、「中華人民共和国政府は、中日両国国民の友好のために、日本国に対する戦争賠償の請求を放棄することを宣言する」としているが、個人の請求権の扱いについては触れていない。
中国の強制連行被害者が西松建設を相手におこした裁判では、日本の最高裁が2007年4月、裁判上の個人の請求権は日中共同声明により失われたとしながらも、「個人の実体的な請求権までは消滅していない」と判断、「被害者らの苦痛は極めて大きく、西松建設を含む関係者に被害救済の努力が期待される」として日本政府や企業による被害の回復に向けた自主的解決の期待を表明した。その後、2010年4月に西松建設は被害者らと正式に和解、謝罪し、記念碑を建立、和解金を支払っている。
西松建設は強制労働について歴史的責任を認めて謝罪。解決金として1億2800万円を中国の民間団体に信託し、新潟県の水力発電所建設に連行された中国人労働者183人への補償や慰霊碑の建立費用などに充てる。
三菱マテリアルの「謝罪金」支払いが公表されたことが、韓国側の姿勢に影響を与える可能性もある。
日韓請求権協定では日本から韓国に対して無償3億ドル、有償2億ドルの経済協力を約束しており、賠償請求を放棄した中国とは差がある。