ブログ 化学業界の話題 knakのデータベースから      目次

これは下記のブログを月ごとにまとめたものです。

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2024/1/15    Chesapeake Energy、同業のシェール開発 Southwestern Energy を買収

Chesapeake Energy CorporationとSouthwestern Energy Companyは1月11日、時価総額74億ドルでの全株式取引による合併契約を締結したと発表した。Southwesternの株主はSouthwestern 1株につきChesapeakeの普通株式0.0867株を受け取る。

Southwestern Energyは独立系のエネルギー会社で、Appalachia とHaynesville Basinsに 938,000 net acres 以上を有している。

合併企業はクロージング時には新しい名前を採用する予定。

合併により、Appalachia と Haynesvilleの高品質で大規模なエーカレージを組み合わせることで、約7.9 Bcfe/d のネット生産となる。年間のシナジーは約4億ドルとしている。


シェールガスの生産量は業界トップのEQT Corporationを抜き、最大手になる見込み。

EQT Corporation (当初の社名はEquitable Gas)は、アパラチア盆地のマーセラスシェールおよびユーティカシェールを中心に事業を展開する天然ガス生産会社で、マーセラス地域の約180万エーカーを含む約200万エーカーにおいて、約25兆立方フィート相当(Tcfe)の天然ガス、天然ガス液(NGL)、原油の確認埋蔵量を有する。

主にMarkWest Energy Partners L.P.と契約し、天然ガスを処理し、生産された天然ガスからエタン、プロパン、イソブタン、ノーマルブタンおよび天然ガソリンからなる重質炭化水素ストリームを抽出する。

Chesapeake Energyはシェール革命の初期から業界をリードしてきたが、新型コロナウイルスの影響による原油相場の下落で経営が悪化、2020年6月28日、連邦破産法11条(Chapter 11) に基づく会社更生手続きをテキサス州南部地区の連邦破産裁判所に申請したと発表した。原油相場下落による破綻としては米国最大の業者である。

同社は積極的な事業拡大で抱え込んだ重い債務負担に苦しんでいた。

3月末時点の負債総額は95億ドルで、6月の金利支払いが出来ず、本年に返済期限がくる長期債が1ドル当たりたった5セントで取引されており、Chapter 11 申請はむしろ遅すぎると見られている。

同社は5月にSECに提出した資料で、新型コロナの影響で資本市場へのアクセスが制限され、「年内に期限を迎える社債の償還資金が手当てできない可能性がある」と説明、Chapter 11の適用申請を検討しているとしていた。

同社では既に債権者の大半との間で負債を約70億ドル削減することで合意しており、さらに事業の続行のために925百万ドルのつなぎ融資(debtor-in-possession financing )を確保している。

2020/6/30 米シェール大手のChesapeake Energy、Chapter 11 申請 

その後、同社は経営を再建し、2022年1月には同業の Chief E&D Holdings, LP と、関連する未稼働資産(Tug Hill, Inc の関連会社所有)を現金20億ドルと普通株式約944万株で購入する契約を結んだ。

Chief E&D Holdingsの所有ガス田はペンシルベニア州のMarcellus ShaleのChesapeake Energyのガス田に隣接している。(下図のCHKはNasdaq市場でのChesapeake Energy の略号)

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参考

2023/5/25 Chevron、米シェール会社 PDC Energy を買収

2023/10/17 Exxon Mobil、米シェール大手Pioneer Natural Resources を595億ドルで買収合意


2024/1/16 「英史上最大の冤罪事件」 で富士通の責任を問う声 

イギリスで多数の郵便局長らが不当に有罪判決を受けた「イギリス史上最大の冤罪事件」と呼ばれる郵便局スキャンダル(詳細後記)で、欠陥のある会計システムを郵便局に納入した富士通に対し、補償金を支払うよう求める声が高まっている。

この会計システム(Horizon system) を開発し、納入したのはICL(International Computers Limited) である。1998年に富士通は同社を100%子会社化し、2003年にFujitsu Services Holdings PLCに改称した。

ストライド英雇用・年金相は1月9日、「このツケを払うのは納税者だというような状況に陥ることにはならないのは確かだと思う」と語った。これより先に、調査によって「富士通が多くの意図的ミスを犯し、そればなければ起きなかったであろうさまざまな問題を誘発したと判断されれば、それはかなり深刻な事態ということであり、非常に深刻な結果を招くことになるだろう」と語っていた。

ポストオフィスを管轄する英閣僚ケビン・ホリンレイク氏は、調査によって富士通に責任の一端があると結論づけられた場合、英国は富士通に賠償金の一部負担を求めることを検討すると述べた。

.スナク英首相は1月10日、冤罪被害者らの容疑を晴らして1人あたり7万5000ポンドの補償金を支払う救済法案を提出すると発表した。財源についてホリンレーク郵政担当相は「富士通の責任が明確になれば富士通に負担させる」との見通しを明らかにした。
下院のビジネス貿易特別委員会は9日、富士通幹部に対して16日に証言するよう要請した。

富士通は、郵便支局支局長らの苦痛に一役買ったことを謝罪し、英政府の実態調査に加わっていると説明。「何が起こったか理解し、そこから学ぶために全面的に調査を支援している。郵便支局支局長と家族の生活に及んだ計り知れない影響が、調査結果からあらためてうかがえる」とコメントした。16日の下院証言に応じることを明言した。 

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1970年頃、日本と英国は米IBMに対抗しようと努力していた。

日本では通産省による行政指導の下、1972年3月に国内6 社が3つの企業連合(富士通・日立、日本電気・東芝、三菱電機・沖電気)を構成し、技術研究組合を創立した。国際競争力を付けるための補助金制度が整えられ、企業連合は1976年までに約570億円の補助金を受けた。政府のバックアップを受け、日本企業は海外で買収を繰り返した。

英政府は世界の主要メーカーに対抗できる英国のコンピューター産業を創出するため、1968年にICLを設立した。

ICLはメインフレーム(大型コンピューターシステム)やソフトウェアなどを手掛けたが、競争力に欠けるICLの経営状況が悪化していった。1981年に赤字を出した際には、当時のマーガレット・サッチャー首相は支援を拒んだと言われている。

富士通とICLとの関係は1980年代から深まった。

1981年 技術援助契約締結
1990年 ICLに80%資本参加
1996年 90.1%資本参加
1998年 100%子会社化
2003年 Fujitsu Services Holdings PLCへ社名変更

問題となっている Horizonシステムは、ICL(International Computers Limited) により開発され、英国の郵便事業会社Post Office Ltd.で2000年に運用を開始した勘定系システムである。

英国の郵便制度は民営化されており、郵便事業を手がける Royal Mailと、郵便局の窓口業務を手がけるPost Officeなどが存在する。ポストオフィスは英国内に約1万1500の郵便局を展開し、郵便サービスに加えて年金受取口座や保険販売といった金融サービスや、提携する銀行の窓口サービスなどを提供している。

英国の郵便局における業務は1990年代まですべて紙ベースであり、これが初めての本格的なシステム導入だった。

各郵便局内で稼働するブランチ(支店)サーバーと、窓口端末で稼働するクライアントソフトウエアによって構成するクライアント/サーバー型だった。基本的には各郵便局内だけでトランザクション処理が完結する非同期型のシステムである。ブランチサーバーのデータベース(DB)管理システムは「Oracle Database」だった。

2013年には少なくとも11,500の支局で運用され、毎日約600万件の取引を処理していた 。


Horizonは2000年に稼働したが、それ以降、原因不明の不一致や損失が郵便支局支局長から報告されるようになった。

Horizonは元々は1994年に発表された給付金支払いの自動システムに使われるはずだったが、その基準をクリアできていなかった。

これに対し、郵便事業会社はHorizonは堅牢であり、支局長による支局口座の不足や不一致はHorizonに起因する問題ではないと主張していた。不足分を埋めようとしない、あるいは埋められない支局長は、窃盗、不正会計、詐欺の罪で社内監査局より起訴されることもあった 。

これは、あくまでシステムの処理結果が正しいことを前提の上で行われた。

一部の支局長は郵便事業会社が窃盗罪を取り下げると言われ、自分の弁護士から偽装会計の罪を認めるように説得された。郵便事業会社は有罪判決を受けると、有罪判決を受けた支局長に対して犯罪収益法による命令を出し、資産を差し押さえて破産させようとした。

郵便事業会社によるこうした行為により数百人が失職したほか、破産、離婚、不当な懲役刑、そして1人の自殺者を生み出した。

 

元支局長Alan Bates は被害者団体 Justice for Subpostmasters Alliance を結成、郵便事業会社に対して集団訴訟を起こした。

英国高等法院は2019年12月16日、原告勝訴の判決を言い渡した。
裁判所はシステムにバグ、エラー、欠陥が存在し、これらが原因で支局の口座や取引に明らかな不一致や不足が生じ、取引を正確に処理・記録するはずのHorizonの信頼性が損なわれた可能性があると し、このようなことが何度も起こっていたと判断した。

2020年9月、郵便事業会社は44人の有罪判決を受けた支局長の控訴院上訴に反対しないことを宣言した。2020年12月には6人の有罪判決が取り消され、2021年4月には英国控訴院がさらに39人の有罪判決を取り消した。BBCは一連の有罪判決を「英国で最も広範な司法の誤審」と呼んだ 。

2021年4月、郵便事業会社はHorizonシステムを新しいクラウドベースのITシステムに置き換えることを発表した。

2024年1月、本騒動を題材としたテレビドラマ「Mr Bates vs the Post Office」が民放テレビ局ITVで制作・放映された。
 

 

郵便局スキャンダル後も、富士通UKは英政府から受注を続けて いる。富士通UKは同国3位のITサプライヤーとされる。

英政府が2013年以降、富士通UKに発注した金額は合計37億ポンド(6160億円)を超える。大規模な契約としては、歳入税関庁(10億ポンド)、国防省(5億7200万ポンド)、内務省(4億8700万ドル)がある。

富士通側が開発したシステムには以前から問題が生じていた が、富士通のメインフレームは歳入税関庁と労働・年金省が何十年と使っており、依存して おり、富士通なしには英国政府のITはまわらないため、切れないとされる。
 


2024/1/17 台湾総統選挙 & 南太平洋のナウル、台湾と断交 中国と国交樹立へ 

4年に一度の台湾の総統選挙は1月13日に投票が行われ、即日開票の結果、民進党の頼清徳副総統が当選した。

民進党・頼清徳 558万6019票 当選
国民党・侯友宜 467万1021票
民衆党・柯文哲 369万466票

頼氏は「台湾は中国の一部」とする中国の主張を認めず、アメリカなどとの関係強化によって中国を抑止しようという現職の蔡英文総統の路線を引き継ぐ。

侯氏は「民進党政権が中国との武力衝突の危機をもたらしている」と述べ、防衛力を強化しながら中国との交流を密にして衝突のリスクを下げると主張する。2023年7月、中国が台湾との公的な対話の再開の前提条件としている「92年コンセンサス」について受け入れを明言した。

「92年コンセンサス」は、1992年に中国の共産党政権と台湾の国民党政権が「中国大陸と台湾が1つの中国に属することを確認した」とするもの。

柯氏は「民進党は中国から相手にされず、国民党は中国に従順すぎる」と2大政党を批判し、文化や経済の分野を先行して中国との交流を進めるとしている。しかし、「92年コンセンサス」について受け入れを明言していない。

総統選挙と同時に行われた議会・立法院の選挙では、113議席のうち、民進党が51議席、国民党が52議席、民衆党が8議席をそれぞれ獲得、民進党は過半数を取れず、国民党にトップを譲った。

 

直後の1月15日午後、南太平洋の島国ナウルは声明を発表し、台湾と断交し中国と国交を結ぶことを明らかにした。

中国とナウルは、2002年に国交を樹立した後、2005年にナウルが台湾との国交を回復したことを受けて断交していた。

ナウル政府は、同国と国民の「最善の利益」を鑑み、中国との外交関係を樹立すると宣言。「もはや台湾を個別の国とは認識せず、中国領の不可分な一部と見なす。本日をもって台湾との外交関係を解消し、台湾とは今後、公的な関係や交流を持たない」とする声明を発表した。

中国外務省は「決定を称賛し、歓迎する」として国交を回復させる方針を示した。「世界に中国は1つしかなく、台湾は中国の領土の不可分の一部だ。中国は『1つの中国』の原則のもとナウルと共に両国関係の新たな1章を切り開きたい」と述べた。

また、台湾総統選挙の直後の発表となった背景については「ナウルが主権国家として自主的に選択したものだ」と述べ、あくまでもナウルの判断だったと強調した。

ナウルはインフラ整備や地域の競技大会開催などに充てるため、台湾に多額の財政援助を求めていたが、中台の資金援助の内容を比較し、中国を選んだとされる。

南太平洋では2019年9月にソロモン とキリバスが台湾と断交し、中国との国交を結んでいる。

2023/9/27  米国、太平洋諸島フォーラム首脳との2回目の会合を開催

 

最近、台湾と断交し、中国と国交を結んだ国は下記の通り。

2016/12 サントメ・プリンシペ(アフリカ)
2017/6 パナマ(中米)
2018/5 ドミニカ(中米)、ブルキナファソ(アフリカ)
2018/8 エルサルバドル(中米)
2019/9 ソロモン諸島、キリバス(ともに南太平洋)
2021/12 ニカラグア(中米)
2023/3 ホンジュラス(中米)

中華民国(台湾)と外交関係を持つ国は12カ国となった。

中南米 7カ国 ハイチ、グアテマラ、パラグアイ、セントルシア、セントビンセント・グレナディーン、セントクリストファー・ネビス、ベリーズ
南太平洋 3カ国 パラオ、マーシャル諸島、ツバル
アフリカ 1カ国 エスワティニ(旧スワジランド)
欧州 1カ国 バチカン

   


2024/1/18 富士通幹部、英郵便局の冤罪事件で議会証言

英国で多数の郵便局長らが不当に有罪判決を受けた「英国史上最大の冤罪事件」と呼ばれる郵便局スキャンダルで、欠陥のある会計システムを郵便局に納入した富士通に対し、補償金を支払うよう求める声が高まっている。

1999年から2015年までの間に郵便局の窓口の現金と富士通が納入した会計システム上の残高が合わなかったなどとして郵便局長ら700人余りが横領などの罪で訴追された。

2024/1/16 「英史上最大の冤罪事件」で富士通の責任を問う声  

英国の郵便局スキャンダルの渦中にある富士通の欧州のトップ、Fujitsu Services のPaul Patterson CEO は1月16日、英下院Business and Trade Committee で証言し、「われわれが目にしてきた証拠に個人的に愕然としている。会社には貢献する道義的義務があると思う」と述べた。

Paul Patterson は10年以上同社で働いており、2019年に現職に就任した。富士通本体の執行役員も務める。

証言では、富士通社内の人間が1990年代から会計システムHorizonソフトウエアの問題を知っていたと語った。「富士通は最初から関与していた。システムにはバグとエラーがあったが、700人以上の郵便支局長の裁判で郵便事業会社側を支援した。本当に申し訳ない。」

裁判では富士通は郵便事業会社に対して、郵便局長以外は誰もHorizonの記録にアクセスしたり、変更したりできないと伝えた。これにより責任は郵便局長だけにあるとされた。しかし、これが事実でないことが分かった。

Paul Patterson はこれが無実の郵便局長を有罪にするのに使われたことを認めた。

何故、富士通がそれを知りながら何もしなかったのかと問われ、「知らない。本当に知らない」と答えた。

「契約により郵便事業会社に渡した情報ではっきりしており、郵便事業会社もバグとエラーがあったことを知っている」と述べた。

 

被害者への賠償についても「道義的責任がある」としたが、「責任が明確になった場合に判断する。具体的な金額は裁判官による調査の終了後にのみ決定される」と述べた。
 

郵便事業会社のCEOのNick Read も証言したが、まともに質問に答えず、非難された。

郵便局長以外は誰もHorizonの記録にアクセスしたり、変更したりできないというのが事実でないことを郵便事業会社がいつ知ったのかなどの質問に答えなかった。

委員会にはHollinrake 担当相も出席し、富士通の発言を肯定的に評価した。政府から被害者への補償額は「最終的には10億ポンド(1855億円)以上になるかもしれない」と語った。富士通がこの一部を負担することになれば、補償額は数百億円に上る可能性もある。

被害者団体 Justice for Subpostmasters Alliance を結成、郵便事業会社に対して集団訴訟を起こし、テレビドラマ「Mr Bates vs the Post Office」の主人公であるAlan Batesが証言し、まだ補償を受けていないとし、“it’s madness” と述べた。

 

富士通は契約で24億英ポンドを得ており、契約が終了するまでに四半世紀以上かかる。

スナク首相は先週、冤罪被害者を無罪とし、約980人の郵便局員への補償を早める新たな法律を導入する考えを表明していた。補償は、スキャンダルに巻き込まれながら私財を投じて弁済し、起訴されなかった多くの人にも提供される。
  

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富士通の時田隆仁社長は1月16日にダボスで英BBC放送の取材に答え、「郵便局長らとその家族の人生に壊滅的な影響を与えたことをおわびする」と謝罪した。時田社長が公の場で事件についてコメントするのは初めて。

ダボス会議に参加した同氏は「これは大きな問題であり、富士通として非常に深刻に受け止めている」と語った。欠陥のある会計システムで得た収益を返還するかとの問いには答えなかった。

 

付記

イギリスのテレビ局 Sky News は1月17日、イギリスの Kemi Badenoch貿易相(Secretary of State for Business and Trade)が富士通の時田社長宛てに被害者らへの補償について協議するため早期の面会を求める書簡を送ったと伝えた。

スカイニュースはレターの一部を見たとし、下記の通り内容を報じている。

she would "value the opportunity to discuss Fujitsu's involvement in the Post Office Horizon scandal".

"As you may know, my department is at the forefront of our government's efforts to right the wrongs of the past.

"I am committed to ensuring that postmasters affected get the justice they deserve.

"This is why the UK government announced new legislation last week, to overturn wrongful convictions and a plan to ensure swifter access to compensation."

 

付記

1月19日の独立した調査機関の公聴会で、Paul Patterson は「早い段階でシステムにバグや欠陥などがあったことを関係者全員が知っていた」と証言した。システムが導入されたあとの1999年11月には欠陥が把握されていたものの、2018年まで20年近く問題が続いていたという認識を示した。そして、「こうした事実を郵便局の運営会社に知らせていた」と述べた。

調査団によれば、富士通がソフトの開発段階で「マイナス」と設定するはずの記号を誤って「プラス」と設定したせいで、数字のデータを削除すると逆に倍増する現象が起きていたことが判明した。

郵便局長らの裁判では富士通が提供したデータが証拠として提出されたが、ソフトの欠陥を示す数字の誤りなどは事前に削除されていたことも、この日の公聴会で明らかになった。

イギリス政府は1月18日、富士通側から「問題の公的な調査が終了するまで、政府案件の新たな入札への参加を一時停止する」とする書簡を受け取ったと明らかにした。

 


2024/1/19     LyondellBasell、サウジのNATPETに35%出資

LyondellBasell は1月16日、サウジの西岸Yanbu Industrial City でPPを製造販売するNational Petrochemical Industrial Company (NATPET) の株式35%をサウジの投資会社Alujain Corporationから取得したと発表した。
契約締結は同日、リヤドのエネルギー省でおなわれた。

National Petrochemical Industrial Company (NATPET) は2009年以降、Yanbu Industrial Cityで年産40万トンのPPを生産販売している。

 PP 製品は、Teldene® というブランド名で、世界 60 か国以上、ほぼすべての地域で販売されている。

 PP プラントはLyondellBasell がライセンスしたSpheripol technologyを使用、原料プロピレンは UOPの Oleflex 技術を使用した Propane Dehydrogenationにより自社生産している。

National Petrochemical Industrial Company (NATPET) の当初の出資者は、サウジのAlujain Corp と Xenel Group(サウジのAlireza一族の投資会社)とポリマーのグローバルサプライヤーのNoble Resources である。

Alujain Corpは1991年設立で、サウジで石油化学、採掘、金属、エネルギー分野などのさまざまな産業プロジェクトに出資している。

当初の出資比率は不明だが、Alujain Corpは2023年10月に出資比率を88.59%から97.55%にしていた。

この中から35%をLyondellBasellに売却し、今後は実質的にAlujain Corp とLyondellBasell のJVとする。(62.55% / 35%)
 

LyondellBasell とAlujan は株式売買と同時に、新しくPDH法によるプロピレン工場と、現工場と同じLyondellBasellのSpheripol technologyを使うPP 第2工場を建設する検討を開始した。

LyondellBasell とAlujan の株式売買契約は、エネルギー省がこのプロピレン用の原料の割当を承認するのを待って行われた。

Alujain Chairman のMohammed Bin Saleh AlKhalil は、「われわれは、最初はライセンシーとして、そして現在は合弁パートナーとして、LyondellBasell との関係を深める機会を歓迎します」と述べた。

 

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Yanbu Industrial City のNational Petrochemical Industrial Company (NATPET) の工場の隣には、Sabicの関係会社のArabian Industrial Fibers IBN RUSHD)の工場がある。

IBN RUSHD1993年にSABIC 70%、その他1530%JVとして設立され、Yanbu に芳香族→PTA→ポリエステルのコンプレックスを1995年から稼動させている。

LyondellBasell は2009年8月6日、Arabian Industrial Fibers (IBN RUSHD)が同社のSpheripol PP 技術を採用したと発表した。

今回、初めてPPに進出し、Yanbu に525千トンのプラントを建設するもので、2012年のスタートを目指す。

2008年10月、Lummus Technology はIBN RUSHDからプロパン脱水素設備の技術供与、基礎設計の契約を受けた。

2008/8/12 SABICのArabian Industrial Fibers、PP進出


2024/1/19 2024年度の公的年金支給額

厚生労働省は1月19日、2024年度の公的年金の支給額を23年度に比べて2.7%引き上げると発表した。

年金額の伸びを抑える「マクロ経済スライド」が2年連続で発動されるため、増加率は0.4ポイント目減りした。

本ブログで2023年11月にニッセイ基礎研究所 中嶋 邦夫上席研究員の試算を報じた。 

2023/11/21 2024年度の公的年金支給額も実質減額

当時の時点での予想に基づいたものだが、実績で若干変わった。
  
  直近1年の物価変動率 +3.1% → +3.2%
     過去3年の名目手取り賃金変動率 +3.0% → 3.1%
  採用  +3.0% → +3.1%

これにマクロ経済スライド -0.4%  を加え、最終改定率は +2.7%となる。

65歳に到達し、新たに年金を裁定(決定)するものも同じ。

 

既裁定者(68歳到達年度以後の受給権者)

  実績 予想 実績 原則
2020年度 2021年度 2022年度 2023年度   2024年度
直近1年の物価変動率(基本) +0.5% +0.0% -0.2% +2.5% +3.1% +3.2%

基本は物価変動率
賃金変動率が物価変動率より低い場合は賃金変動率を採用

過去3年の名目手取り賃金変動率 +0.3% -0.1% -0.4% +2.8% +3.0% +3.1%
(採用) +0.3% -0.1% -0.4% +2.5% +3.0% +3.1%  
マクロ経済スライド
公的年金被保険者の変動と平均余命の伸びに基づいて、スライド調整率を設定し、その分を改定率から控除
-0.1% -0.1%
(調整せず)

当期 -0.2% 
繰越 -0.1%
計  -0.3%

(調整せず)

当期 -0.3%
繰越 -0.3%
計 -0.6%
当期   -0.4%
繰越       0
計  -0.4% 
 

-0.4%

上記の(採用)がマイナスの場合は、調整せず、その分を翌年に繰り越す。

最終改定率 +0.2% -0.1% -0.4% +1.9% +2.6% +2.7%  
マクロ経済スライド繰り越し   -0.1% -0.3%    


65歳に到達し、新たに年金を裁定(決定)するときには、直近の賃金の動向を反映させるため、賃金の変動による改定(+マクロ経済スライド)を行う。

  実績 予想 実績 原則
2020年度 2021年度 2022年度 2023年度   2024年度
過去3年の名目手取り賃金変動率 +0.3% -0.1% -0.4% +2.8% +3.0% +3.1%  
マクロ経済スライド
公的年金被保険者の変動と平均余命の伸びに基づいて、スライド調整率を設定し、その分を改定率から控除
-0.1% -0.1%
(調整せず)
当期 -0.2% 
繰越 -0.1%
計  -0.3%
(調整せず)
当期 -0.3%
繰越 -0.3%
計 -0.6%
当期   -0.4%
繰越       0
計  -0.4% 

-0.4%

上記の(採用)がマイナスの場合は、調整せず、その分を翌年に繰り越す。

最終改定率 +0.2% -0.1% -0.4% +2.2% +2.6% +2.7%  
マクロ経済スライド繰り越し   -0.1% -0.3%    

 


2024/1/22 米国つなぎ予算案成立、政府機関の閉鎖回避

米議会上院と下院は1月18日、3回目のつなぎ予算案を可決した。19日に迫る連邦政府機関の一部閉鎖を回避するための同予算案はバイデン大統領に送付され、 大統領は19日、これに署名し、同法が成立した。

19日に暴風雪が予想され、議員らが週末に地元に戻るのが難しくなる可能性があったことから上下院とも採決を早めた。

ーーー

米上院は2023年10月1日午前0時の期限を数時間後に控え、下院が通した11月17日までのつなぎ予算案を可決した。政府機関閉鎖を土壇場で回避した。

共和党保守派が大規模な歳出削減や人工中絶などに係る法案の修正を求め、本予算が通らない状況が続いている。

ーーー

そのつなぎ予算が1週間後に期限切れとなり、政府機関 が閉鎖されるのを前に、下院のジョンソン議長は11月11日、共和党の暫定予算案を発表した。

内容は:

新規のつなぎ予算案は退役軍人省やエネルギー省、農務省、運輸省、住宅都市開発省向けが2024年1月19日まで、それ以外 (金融・サービス、商務・司法・科学、労働・保健・教育、国防、国土安全、内務・環境、立法、外交の8分野)は2月2日までの歳出をまかなう。

共和党保守派の一部が求めている支出の即時30%削減や移民政策変更を盛り込まなかった。

イスラエルやウクライナへの新たな支援も除外された。

米上院は11月15日深夜の本会議で、下院で議決した新たなつなぎ予算案を賛成87、反対11の圧倒的賛成多数で可決した。

新規のつなぎ予算案は退役軍人省やエネルギー省、農務省、運輸省、住宅都市開発省向けが来年1月19日まで、それ以外は2月2日までの歳出をまかなう。

2023/11/15 米下院、政府機関閉鎖回避へつなぎ予算案可決 上院に送付

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今回のつなぎ予算案は 退役軍人省やエネルギー省、農務省、運輸省、住宅都市開発省向けを3月1日まで、他の機関 (金融・サービス、商務・司法・科学、労働・保健・教育、国防、国土安全、内務・環境、立法、外交の8分野)の資金を3月8日まで手当てするもの。

歳出カットは実施せず、ウクライナとイスラエルへの軍事支援は含まない。

軍事支援に関しては、民主党主流派と共和党主流派はウクライナとイスラエルへの支援を主張、一方で、民主党左派はガザ攻撃の非人道性を重く見てイスラエル支援には慎重で、反対に、トランプ派はウクライナへの支援には強く反対していた。こうした複雑な思惑の中で、ウクライナもイスラエルも切り捨てた。

上院

  共和党 民主党 民主系
無所属
無所属 合計
賛成 26 48 2 1 77
反対 18       18
棄権 5       5
合計 49 48 2 1 100

 民主系無所属 はSanders, King 議員、無所属 は元民主党のSinema議員

下院

  共和党 民主党 合計 欠員
賛成 107 207 314  
反対 106 2 108  
棄権 7 4 11  
今後 220 213 433 2

下院は2023年12月1日、経歴詐称や選挙資金の不正利用などが指摘され、複数の刑事事件でも訴追されている共和党のGeorge Santos下院議員の除名処分を超党派の賛成で可決した。
10月に史上初めて下院議長職を解任されたマッカーシー下院議員(共和党)は12月6日、年末に議員を辞職すると表明した。
この結果、2名が欠員とな っている。

共和党の保守強硬派Freedom Caucusの会長を務めるBob Good下院議員は投票後、「民主党と手を組んで連合を形成し、Schumer民主党上院院内総務や上院が望むことをやるのは国民にとって損失だ」と 記者団に述べ、ジョンソン議長への怒りをあらわにした。

 

本予算に関しては、既に上院のSchumer民主党院内総務と下院のJohnson議長(共和党)との間で、歳出規模をおおむね債務上限合意に沿った1兆5,900億ドルとすることで合意されているが、下院ではなお共和党保守派が大規模な歳出削減や人工中絶などに係る法案の修正を求めている状況で、本予算が今回のつなぎ予算の期間内に成立するかはなお不透明な状況である。

米議会上下両院の指導部は1月7日、2024会計年度(2023年10月─2024年9月)の歳出規模を1兆5900億ドルとすることで合意した。バイデン大統領は、今回の合意について「不必要な政府閉鎖を回避し、国家の重要な優先事項を守る」ことへ一歩前進したと評価した。
 
ただ民主党と共和党の間では合意内容について既に見解のずれが見られた。共和党のジョンソン下院議長は声明で、歳出額には国防費8860億ドルと非国防費7040億ドルが含まれると述べた。一方、上院民主党トップのシューマー院内総務は別の声明で、非国防費は7727億ドルになるとした。

2024/1/23  日本とバングラがEPA交渉へ 

日本とバングラデシュ両政府は月内にも経済連携協定(EPA)の交渉開始で合意する。2025年中の交渉妥結をめざす。

日本政府は2022年12月12日に、バングラデシュ政府との間で「あり得べき日・バングラデシュ経済連携協定(EPA)に関する共同研究」を立ち上げることで一致、その結果を2023年12月27日に発表した。

  1. 日本とバングラデシュとの間の貿易は、相互補完的な関係にあり、あり得べきEPAは、両国間の貿易及び投資の増大及び「戦略的パートナーシップ」の強化に寄与する。
  2. 共同研究グループは、広範かつ詳細な議論を通じて、両国の特定の品目のセンシティビティに留意する必要はあるものの、日本とバングラデシュとの間で包括的かつ高いレベルの、世界貿易機関(WTO)に整合的なEPAを締結することが、両国に多大な利益をもたらし、両国間の経済関係を更に強化するであろうことを認識した。また、そのようなEPAは、両国企業によるビジネスの活性化、更には両国の政治・外交関係の強化にもつながると認識した。
  3. 共同研究グループは、日本国政府とバングラデシュ政府が両国間のEPA締結のための交渉を開始することを提言する。

バングラから日本への輸入総額は2022年におよそ17.2億ドル(当時のレートでおよそ2200億円)だった。衣服や靴といった衣料品が9割以上を占める。日本からの輸出総額は25.7億ドル程度(同3300億円)で、3割程度が鉄鋼 である。

バングラデシュは2026年に先進国への輸出品の関税が免除される「後発発展途上国(LDC)」から外れる予定である。

バングラデシュの主要輸出品は 現在は特別特恵制度で関税が無税だが、LDCから外れると一般特恵関税が適用される。

一般特恵関税制度(Generalized System of Preferences: GSP)とは、わが国が「特恵受益国」と認めた開発途上国を原産地とする品目(一部の例外品目は除く)を日本に輸入する場合に、通常の関税率より低いか、あるいは無税(Free)の特恵税率が適用される。

特恵受益国のうち、「特別特恵受益国」として認められた後発開発途上国(Least developed country: LDC)(2022/8で46ヶ国・地域)の原産品を輸入する場合は、特別特恵関税が適用され原則無税になる。

バングラは経済成長が著しくインフラ需要が高まっている。現在は日本からの鉄鋼輸出に10%程度、自動車に最大25%ほどの関税がかかっているが、「後発発展途上国(LDC)」から外れるのを機に、輸出拡大に向けて撤廃・引き下げを求める。 コメや和牛などの関税も協議し、農産品の輸出増を狙う。

他方、繊維などでユニクロなどのアパレル企業が進出し、製品を日本に輸入している。これまで輸入関税は無税であったが、今後は関税がかかる。EPAにより、関税引き上げの影響を抑える。

ーーー

国連は2021年11月24日、第76回国連総会でバングラデシュ、ラオス、ネパール3カ国の後発開発途上国(LDC)卒業の決議案を採択したことを発表した。

バングラデシュは1975年のLDC認定以降、諸外国への輸出に際して、LDC向けの関税優遇措置を受けているが、2018年にLDC卒業資格の要件を満たし、2021年2月には2度目の審査(トリエンナーレ・レビュー)を経て、国連の開発政策委員会が2026年のLDC卒業を推薦していた。今般の採択により、同委員会によるモニタリングなど所定のプロセスを経て、2026年11月24日にLDC卒業見込みとなることが決定した。

    https://www.bd.emb-japan.go.jp/files/000355547.pdf


2024/1/24   SABIC、福建省での石油化学計画で最終 決定

SABICは1月21日、福建省での石油化学計画の最終決定を したと発表した。

2018年9月11日、サウジのSABICは福建省との間で石油化学コンプレックスの建設について覚書を締結した。

詳細は一切触れず、事業の多様化と世界の石化市場でのトップの地位を強化するという戦略に沿ったものとしていた。

2018/9/19 SABIC、BASFも中国で新規エチレンセンター構想

2022年3月、中国政府はSABICと福建省政府が出資するFujian Petrochemical Industrial GroupのJV計画を承認した。

63.3億ドルを投じて福建省古雷镇(Gulei) 石油化学基地に年産180万トン(当初計画は150万トン)のエチレンコンプレックスを建設する。エチレングリコール、PE(2系列)、PP(2系列)、ポリカーボネートなども生産する。PE能力は年産100万トン、PPは年産95万トン。

今回の発表では、SABICが51%、Fujian Fuhua Gulei Petrochemical が49%を出資する。Fujian Fuhua Gulei Petrochemical は Fujian Petrochemical Group と福建省漳州市のJiulongjiang GroupのJVである。

建設は2024年上半期に開始、2027年の第一四半期にスタートする予定。

SABICとしては、幅広い製品の主要マーケットであるアジアでの製造での存在感を高める。

ーーー

福建省古雷镇(Gulei)石油化学基地には、Sinopecと福建省政府の50/50JVのFujian Petrochemical Companyが台湾の投資会社Dynamic Ever Investments Ltd (旭騰投資有限公司)との50/50出資で古雷石化(Gulei Petrochemical )を設立し、エチレンコンプレックスを運営している。

エチレンは年産100万トン(当初計画は80万トン)で、EO、EG、SM、PPなどを生産している。


2024/1/26 韓国の徴用工問題

韓国最高裁は1月11日、日本統治期に強制労働させられたとして、韓国人元徴用工の遺族が日本製鉄(旧新日鉄住金)に損害賠償を求めた訴訟の上告審で、同社の上告を棄却した。日本製鉄に約1億ウォン(約1100万円)の賠償を命じた一、二審判決が確定した。

戦時中に「女子勤労 挺身隊」の一員として軍需工場で強制労働をさせられたとして、韓国人女性らが機械メーカー「不二越」を相手取り損害賠償を求めた訴訟3件の上告審判決が1月25日午前、韓国大法院(最高裁)であり、同社の上告をいずれも棄却した。賠償を命じた2審の高裁判決が確定し、同社の敗訴が決まった。

判決は元挺身隊員らに対し、1人あたり8000万ウォン〜1億ウォン(約880万〜約1100万円)の支払いを不二越に命じた。
 

1月25日の不二越に対する判決により、大法院が日本企業側に賠償を命じる判決を確定させた元徴用工関連の訴訟は計12件となった。関連の訴訟はほかに少なくとも60件が各地裁などで進んでいる。

2018/10 日本製鉄 1件 4人 1人当たり約1000万円 11人は財団が支払い、4人は受領拒否

2023/5/26    徴用工問題、生存者に賠償額初支給
2018/11/29 三菱重工業名古屋 2件 女性4人と親族1人 各約1500万円
同    広島 6人 各約800万円
2023/12/21 日本製鉄 1件 7人 1人当たり
約1100万〜約1650万円
2023/12/22 元徴用工訴訟、日本企業の賠償命令確定
三菱重工業 1件 女性3人と遺族1人
2023/12/28 三菱重工業 2件 16人 1人当たり
約36万〜約1300万円
上記
付記
 
日立造船 1件 1人 2019年  供託、2024/1/23 差押取立命令
    上記 付記
2024/1/11 日本製鉄 1件   約1100万円  
2024/1/25 不二越  3件 女性3人 1人当たり880〜1100万円  
合計 12件  


日本政府は、1965年の日韓請求権協定で問題は解決済みとの立場である。

日韓請求権協定

第一条 日本が韓国に対して無償3億ドル(生産物、役務を10年にわたり供給)、有償2億ドル(長期低利の貸付)を供与する

第二条
 1 両締約国は,両締約国及びその国民(法人を含む) の財産,権利及び利益並びに両締約国及びその国民の間の請求権に関する問題が,1951年9月8日にサン・フランシスコ市で署名された日本国との平和条約第四条(a)に規定されたものを含めて,完全かつ最終的に解決されたこととなることを確認する。 (中略)

 3 2の規定に従うことを条件として,一方の締約国及びその国民の財産,権利及び利益であつてこの協定の署名の日に他方の締約国の管轄の下にあるものに対する措置並びに一方の締約国及びその国民の他方の締約国及びその国民に対するすべての請求権であつて同日以前に生じた事由に基づくものに関しては,いかなる主張もすることができないものとする。

 

韓国の朴振外相は2023年3月6日、元徴用工問題の解決策を正式に発表した。韓国最高裁が日本企業に命じた賠償金の支払いを韓国の財団が肩代わりする。

2023/3/9 韓国、元徴用工解決策を発表 

しかし、原告勝訴が続けば財団からの支給が膨らみ、財源が不足する恐れも指摘される。受け取りを拒む原告もおり、解決は難航している。


日立造船が2019年に賠償金を供託し、本年1月23日に差押取立命令が出たのも問題である。実際にこれが原告に引き渡された場合、日立造船が賠償金を支払った形となり、請求権協定に反する形となる。


2024/1/30 西アフリカ諸国経済共同体(ECOWAS)

西アフリカ・ニジェールの軍事政権は1月28日、国営テレビで共同声明を読み上げ、隣国のマリ、ブルキナファソとともに 西アフリカ諸国経済共同体(ECOWAS)を即時離脱すると発表した。

ニジェールでは昨年7月、軍によるクーデターが発生して欧米寄りの大統領が排除されたほか、2020年にはマリで、2022年にはブルキナファソでもクーデターが起きて軍が政権を掌握してい る。

これらの国々ではイスラム過激派のテロが頻発するなど治安が不安定で、声明ではECOWASが「テロや情勢不安との戦いにおいて、3か国を支援することに失敗した」と非難してい る。

軍事政権発足以降はいずれもロシアへの接近が指摘されており、マリではロシアの民間軍事会社「ワグネル」が派遣されているとみられてい る。

ーーー

西アフリカ諸国経済共同体(ECOWAS:Economic Community of West African States)は、1975に西アフリカの域内経済統合を推進する準地域機関として設立された。その後、経済統合の基盤となる政治的安定の確保を目指し、防衛・紛争解決機能等を備え、さらに安全保障機能の強化に取り組んでいる。

加盟国:

 西アフリカ15か国: ベナン、カーボベルデ、コートジボワール、ガンビア、ガーナ、ギニアビサウ、リベリア、ナイジェリア、セネガル、シエラレオネ、トーゴ、ギニア、ニジェール 、マリ、ブルキナファソ
 
 ギニアと、今回離脱を表明したニジェール、マリ、ブルキナファソの合計4カ国は,、クーデターを起こしたため、参加資格停止中。
    当初、
モーリタニアが加盟していたが、通貨統合等に反対して脱退(2000年12月)
 


活動及び事業内容:

(1)マクロ経済政策の調和

  • ア 西アフリカ経済通貨同盟:ECOWAS内で経済統合の深化を進めるサブ・リージョナルグループで、8か国(ベナン、ブルキナファソ、ギニアビサウ、コートジボワール、マリ、ニジェール、セネガル、トーゴ)から成る。
  • イ 域内統一通貨統合(ECO)の実現:ECOWAS共通通貨「ECO」の導入を目指す。2027年を目標に、ECOWAS加盟国の中で経済収斂基準を満たした国から順次、ECOの段階的な導入を計画。

(2)貿易と市場の統合

  • ア 自由貿易プログラムの推進:貿易障壁の撤廃、自由貿易地域・関税同盟・共通市場の設置。
  • イ 共通貿易政策と貿易開発戦略の制定:2015年に対外共通関税(CET)導入。また、域内共通税関申告書の導入も進んでいる。
  • ウ EUとの経済連携協定(EPA)の締結:2004年より、ECOWASの15加盟国にモーリタニアを加えた16か国を対象に交渉開始。

(3)域内の自由な人の移動

  • ア 域内の自由な人の移動のためのロードマップ策定
  • イ 共通パスポート導入

(4)平和、安全保障、安定とガバナンス

  • ア 選挙支援メカニズム
  • イ 停戦監視グループ(ECOMOG:ECOWAS Monitoring Group):
    • 紛争を抱える域内諸国にて平和維持活動を実施。
       
  • ウ 紛争予防・管理・解決・平和維持・安全保障メカニズム
  • エ ECOWAS待機軍
  • オ ECOWAS小型武器条約

2024/1/31  NTT、米インテルなどと提携、光の半導体開発

NTTと米インテル、韓国のSK Hynixなどは光技術を活用した次世代半導体を共同で開発する。NTTの次世代通信基盤の「IOWN」の中核技術で、日本政府が計約450億円を支援する。 日本経済新聞が伝えた。

NTTのIOWN (Innovative Optical and Wireless Network) 構想とは、革新的な技術によりこれまでのインフラの限界を超え、あらゆる情報を基に個と全体との最適化を図り、多様性を受容できる豊かな社会を創るため、光を中心とした革新的技術を活用した高速大容量通信、膨大な計算リソース等を提供可能な、端末を含むネットワーク・情報処理基盤の構想で、NTTが2030年の実現をめざして研究開発を始めている。

IOWN構想では、これまでの情報通信システムを変革し、現状のICT技術の限界を超えた新たな情報通信基盤の実現をめざしている。ネットワークから端末まで、すべてにフォトニクス(光)ベースの技術を導入した「オールフォトニクス・ネットワーク」、実世界とデジタル世界の掛け合わせによる未来予測等を実現する「デジタルツインコンピューティング」、あらゆるものをつなぎ、その制御を実現する「コグニティブ・ファウンデーション」からなりた つ。

  • オールフォトニクス・ネットワーク (APN: All-Photonics Network)  <情報処理基盤のポテンシャルの大幅な向上>
  • デジタルツインコンピューティング (DTC: Digital Twin Computing) <サービス、アプリケーションの新しい世界>
  • コグニティブ・ファウンデーション (CF: Cognitive Foundation®) <すべてのICTリソースの最適な調和>
図1:IOWN構想の機能構成イメージ
 

「IOWN」は電気と光を融合する「光電融合」と呼ばれる次世代の情報通信基盤で、NTTが2019年に世界に先駆けて構想を発表した。

電気は発熱しやすい性質をもつため、処理が高速になるほど消費電力が増え、遅延を生みやすい。そこで「IOWN」は、すべてのネットワークや情報処理を電気信号から光信号に変えることで、従来に比べて消費電力を100分の1に抑えられ、遅延はほとんどなくなり、容量を125倍に増やすことができる。

これには情報処理、コミュニケーション、ネットワーク基盤の大きな転換が必要となり、多くの革新的な技術を創造し、組み合わせることが必要となるため、NTTグループのみで実現できることではない。

そこで、2020年1月に、インテル、ソニー、NTTの3社で、コミュニケーションの未来をめざした国際的な非営利団体「IOWN Global Forum」を設立した。2021年1月時点で39社、2022年1月時点で88社と、メンバー数を急速に拡大しながら活動を続け、その後さらに多くのメンバーが加入し、2023年9月時点でメンバー数は130を超える組織となっている。

日経によると、NTTは今回、光電融合の機器開発に取り組む国際協調の枠組みを整えた。

演算用の半導体を手掛けるインテル、記憶用の半導体を手掛けるSK Hynix と提携するほか、半導体基板の新光電機工業、半導体メモリーのキオクシアなども参画する。

光電融合技術のロードマップ

 

経済産業省は1月30日、NEDOの次世代通信規格「6G」向け通信基盤研究開発事業として 、「光電融合」技術に最大で452億円を補助すると発表した。

2029年までの5年間の研究開発を補助する。NTTや半導体基板の新光電気工業、半導体メモリーのキオクシアなどが対象。


政府の半導体関連事業への支援としては3つある。

1)  次世代通信規格「6G (post5G) 」向け通信基盤研究開発事業  「Rapidus」向け 2回計3300億円

2)「半導体の安定供給確保のための取組に関する計画(供給確保計画)」 18件

3)  特定半導体生産施設整備等計画認定制度  TSMC、キオクシア、マイクロンメモリ(2件)

 


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