日本経済新聞 2004/11/17
大型石化計画 中東でラッシュ 2008年輸出能力倍に 中国の需要にらむ
ペルシャ湾岸諸国で大型の石油化学プロジェクトが相次いでいる。中国の爆発的な需要拡大を背景に、サウジアラビアやイランで安い原料ガスを利用した大規模プラントが稼働、湾岸の輸出能力は2008年までに倍増する勢いだ。中国は国内増産で追いつかない需要の大半を中東から調達せざるをえず、石油に続いて石化製品でも中東依存が強まるとみられる。
サウジでは政府が株式の7割を保有するサウジ基礎産業公社(SABIC)が、東海岸のジュベイルと西海岸のヤンブーでそれぞれ年産100万トン超級のエチレン製造設備の新増設を計画中。国営石油会社アラムコも住友化学と組んで石化分野に参入、大型設備の建設を準備している。
サハラペトロケミカルやサウジインターナショナルペトロケミカルなど地元財閥が設立した民間企業も石化事業に参入、サウジだけで年産500万トン以上のエチレン増産計画が進行している。
イランでは、国営石油化学会社がバンダルアサリュエにインド石油と世界最大級のエチレン製造設備の建設で基本合意するなど、2010年代にエチレンの生産能力を年産1200万トンに引き上げる。オマーンでは米ダウ・ケミカルがオマーン国営石油会社と25億ドルを投じて一貫施設を建設することで合意した。
湾岸諸国の主な石油化学プロジェクト
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日本の経済産業省の試算によると、世界の石化製品の需要は2008年まで年率4.9%で伸びる。なかでも中国は年率10%以上のぺースで需要が拡大、欧米石化メジャーが大規模設備を中国に建設しても08年には1400万トン以上の供給不足が生じる。
湾岸産油国は雇用創出と石油以外の輸出拡大の観点から石化産業を重点分野に位置付け、原料となる天然ガス田の開発に力を入れている。
ナフサを原料とする日欧米の化学メーカーに比べて単価が数分の1の自国産天然ガスを使うため「石化製品の生産コストは世界で最も低い」(SABICのアルマディ最高経営責任者)のが強みだ。
生産能力を高める結果、現在は年870万トンの中東のエチレン生産能力は08年までに8割増大。内需を差し引いたポリエチレンなど誘導品の輸出能力は現在の530万トンから08年には1千万トン以上となり、輸出余力が中東に集中する原油と同じ構造になる。
中国が輸入する原油の5割はすでにサウジやイランなど中東産。湾岸の石化関係者は「中国の需要は今後も旺盛」とみており、中国での現地生産を含めた中国と中東の関係強化が進みそうだ。