日本経済新聞 2004/9/24

ナノテクノロジー特集

ナノ素材 量産体制に

 産業界では素材メーカーや商社が主導して、フラーレン(球状炭素分子)やカーボンナノチューブ(筒状炭素分子)などナノカーボン素材の量産体制が整備されつつある。ナノ素材の生産が本格軌道に乗れば価格が劇的に下がり、実用化に弾みがつくとの期待が高まっている。

価格低下、需要生む 商社・メーカーが主導

 三菱化学の黒崎事業所(福岡県北九州市)。昨年7月、同社や三菱商事が出資するフロンティアカーボン(友納茂樹社長)のフラーレン工場が稼働した。地上四階、延べ床面積約2千平方メートルで生産能力は年間40トン。素材や電機、医療、スポーツ用品メーカーなど約400社に出荷を開始した。
 フラーレンは炭素原子が球状につながった直径約1ナノ(ナノは10億分の1)メートルの分子。炭化水素を不完全燃焼させてできたススを精製してつくり出す。フロンティアカーボンは2002年にサンプル出荷をスタート。その時点の価格は小さじ1杯1グラムあたり4千−5千円。高価なため、供給先は大学やメーカーの研究機関などに限られていた。
 量産プラントの稼働で1グラムの価格は約10分の1の500円前後にまで下がる。「スポーツ用品など市場に出回る製品の生産ラインでも使われるようになった」(フロンティアカーボンの高倉剛副社長・製造センター長)
 現在、1社あたりの取引量はグラム単位で、生産量は能力の40トンを下回る。同社では「実用化が進めばフル生産にまで増やせる」と期待をかける。
 住友商事が今年1月に出資した米ベンチャー企業の
カーボンナノテクノロジーズ(CNI、テキサス州)。今年8月、ヒューストンの工場内で年産能力15トンを備えるプラントが稼働を始めた。
 CNIが製造するのは炭素原子が円筒状につながり、層が一重の単層カーボンナノチューブ。ナノチューブは生成後の分散化が技術的なボトルネックになり、量産が難しかった。CNIは分散技術を改良し、現在、量産製品の最終的な品質検証をしている。
 
住商は現在、燃料電池や電界放出型ディスプレー(FED)などの用途開拓を進めている。CNIの工場は11月までに住商向けに出荷できる見通しだ。住商の森光男・エレクトロニクス本部電子材部電子材第四課課長は「需要の拡大に応じて年産150トンにまで拡張する」と意気込む。
 
三井物産子会社の物産ナノテク研究所(鈴木良三社長)は、東京都昭島市の事業所内に年間約120トンの生産能力を持つ多層カーボンナノチューブの量産設備を整えた。
 物産ナノテク研が照準を定める分野は
樹脂材料。導電性や強度が高いなどの特性を生かし、ハードディスクドライブ(HDD)のトレーや自動車の外装などで需要を掘り起こす。「技術が確立すれば大きな市揚」(鈴木社長)となる同分野をターゲットに絞り、メーカーとの共同研究を進める。
 既に供給先のメドが立っており、下期にも出荷を始める。将来的には1000トン体制にまで拡大する。「そうなれば1キログラム数千円にまで価格を下げられる」(鈴木社長)
 ナノカーボン素材の潜在二−ズは高まる一方だが、これまで実用化は遅々として進まなかった。価格が高く、幅広い用途向けの開発が難しかったためだ。ナノ素材各社が本格量産に入ることで価格低下や用途拡大に拍車がかかるーー。そんな好循環が定着すれば、ナノ関連製品はますます身近な存在になるだろう。

 

医療・産業 広がる用途

 ナノテクノロジー(超微細技術)を医療や産業に広く応用しようという研究開発が活発になってきた。大学、企業、国の研究機関が連携して取り組み、がんの新しい治療法などを目指している。情報技術(IT)などへの応用では、今後の日本のものづくりを左右する基盤としても実用化に期待がかかる。


微小機械、患部まで移動
 がん細胞狙い撃ち

 がん細胞にだけに薬を集中させる超微粒子や、体内で患部まで移動して治療をするナノ(ナノは10億分の1)メートルサイズの微小機械ーーこんな医療の現揚を大きく変える可能性を秘めた研究が進んでいる。ナノテクノロジーとバイオテクノロジーを融合した「ナノバイオ」と呼ばれる分野だ。抗がん剤はがん細胞だけでなく正常な細胞にも作用してしまうため、患者によっては副作用が大きい。薬をがん細胞にだけ送り届けることができれば、副作用を低減できる。
 これを実現するのが
薬物送達システム(DDS)という技術で、例えば薬を詰め込んだ直径約100ナノメートルの微小カプセルを投与する。最初のうちカプセルは血管内を血流で移動していくが、表面にがん細胞とだけ結合する性質を持たせてあるため、最終的にはがん周辺に集まって薬を放出する。副作用の抑制だけでなく、少ない投与量で大きな治療効果が期待できるという利点もある。
 この微小カプセルには高分子が球状に凝集した高分子ミセル方式と、リン脂質やコレステロールでできたリポソーム方式が有力。
 
高分子ミセル方式では東京大学の片岡一則教授の研究成果をもとに、日本化薬が膵臓がん向けの研究に取り組んでいる。現在、実際に患者に投与して安全性や治療効果を調べる第二相の臨床試験中だ。
 
リポソーム方式テルモなどが実用化を目指している。肝臓がんのほか、関節リウマチの治療向けも狙っており、これらの病気の実験用ネズミで試したところ、薬の投与量が従来の3分の1でも効果は3倍になることが分かった。製薬会社と組んで、1年後の臨床試験開始を目標にしている。
 
テルモは経済産業省の支援を受けて、ナノテクでつくる人工血液の開発にも取り組んでいる。抗がん剤などの代わりに、酸素と結合する血液成分のヘモグロビンを包んだ微小カブセルだ。輸血用の血液は常に不足しており、これを解決できるという。
 血流任せではなく、自力で患部まで到達できる微小機械の研究も進んでいる。大阪大学の難波啓一教授らの研究グループは、サルモネラ菌が移動するときに利用している極細のべん毛に着目した。べん毛は直径約20ナノメートル、長さ10マイクロメートル。この構造を詳しく解明する基礎研究の段階だが、将来はべん毛のような機構を人工的につくり、薬などを運ぶ微小機械の開発につなげる考えだ。
 遺伝子検出器具の
DNA(デオキシリボ核酸)チップもナノバイオの応用が期待されている。DNAチップは数センチ角の基板にDNA断片を並べて張り付けた構造で、特定の遺伝子と結合する。現在は研究用が中心だが、今後は医療機関で診断への応用が進む見通し。
 
東レは京都大学の辻本豪三教授と共同で、従来に比べて検出感度が約100倍のがん診断用DNAチップを開発した。検査時間も10分の1の2時間ほどに短縮、製造コストは10分の1程度に低減できるという。基板の表面構造をナノメートルレベルで制御して加工し、実現した。
 先端医療で重要な遺伝子、たんぱく質、細胞構造などは微細な世界だけに、今後もナノテクの活躍は広がりそうだ。

 

液晶超すディスプレー 少ない電カで精細画像

 「薄型ディスプレーの主流である液晶よりも高画質で、プラズマパネルよりも低消費電力にできる」。次世代の薄型として期待される
電界放出型ディスブレー(FED)の利点を、三菱電機の奥田荘一郎FEDプロジェクトグループマネージャーはこう強調する。FEDは基幹部分となる電子放出源に代表的なナノテク素材であるカーボンナノチューブ(筒状炭素分子)を採用しているのが特徴。ナノチューブの働きにより、少ない電力で精細な画像が描ける。
 経済産業省が実用化を主導し、2003年度から05年度の3年間で産官学が実用化に共同で取り組んでいる。
三菱電機のほか、日立ディスプレイズ、ノリタケカンパニーリミテド、旭硝子、大阪大学、大阪府立大学などが参加。まだ単体の光源をつくった段階だが、05年度末には10インチサイズのFEDを試作、将来の40インチサイズ大型ディスプレーの開発につなげることを目標にしている。
 
NECはナノチューブを、超高速で動作し消費電力も少ない大規模集積回路(LSI)に応用する研究に取り組んでいる。回路の配線にナノチューブを採用する技術で、実用化は20年以降との見方が強いが、実現すれば数十−百倍近い高速処理が可能になるという。
 今年9月初めには自由に狙った場所から設計した方向や直径でナノチューブをつくる新技術を開発したと発表。従来は場所などを正確に制御できなかったが、新技術では配置した鉄微粒子から直径1.3ナノ(ナノは10億分の1)メートルのナノチューブを成長させた。LSIの配線に応用するには重要な基礎技術で、実現に向けて着実に成果は出ている。
 新しい構造や機能のナノチューブも続々登場している。東京大学の中村栄一教授らの研究グループはナノチューブの一種で、角笛のような形をしたカーボンナノホーンの研究に取り組み、とがった先端部に金属のガドリニウム原子を注入することに成功した。これにより導電性を容易に制御できるようになると期待され、長時間駆動可能な新型電池などに応用できるとみている。
 信州大学の
遠藤守信教授らの研究グループは、2本のナノチューブを合体させて、断面がメガネのように2芯(しん)構造になっている新しいナノチューブを合成した。ナノチューブは直径やわずかな構造の違いによって導体にも半導体にもなる。2芯の一方に導体、もう一方に半導体の性質を持たせれば、電流を精密に制御できるようになる可能性がある。超微細なトランジスタなどの電子デバイスとして期待できるという。
 やはり代表的なナノテク素材である微細なサッカーボールのような構造のフラーレン(球状炭素分子)をナノチューブと複合する新材料の開発も進む。
 岡山大学の高口豊助教授らの研究グループは、ナノチューブの外側を囲むようにフラーレンを付着させることに成功。FEDなどの高性能化に応用できるのでないかとみている。
 高精細、低消費電力、高速処理、精密制御などナノテクは情報技術(IT)の可能性を大きく広げようとしている。ナノテクを駆使した電気・電子製品が消費者に届くのも間近に迫っている。

 

ベンチャーの起業 続々 大学発など すそ野拡大

 ナノテクノロジー(超微細技術)の急速な普及を背景に、ナノテクベンチャーの起業が相次いでいる。大企業や大学の技術者が新会社を設立し、超微細加工や新素材など得意分野の研究開発に專念する積極的な取り組みが目立つ。大企業とベンチャー企業がナノテク開発で連携する動きも本格化しそうだ。

ナノテクを武器にする主なベンチャー企業

社名 本社所在地 事業内容および主力製品・技術
フィルテック 東京・千代田 半導体の微細加工技術
SCIVAX 東京・中央 超微細加工装置の製造・販売
ナノテコ 東京都三鷹市 化合物半導体の開発
カンタム14 東京都小金井市 ナノシリコンの用途開発
ケー・アンド・ダブル 東京都小金井市 大容量の二次電池とス一パーキャパシタの開発
SNT 千葉県市川市 有害物質を吸着・分解する微粒子の塗布技術
ナノキャリア 千葉県柏市 微細な粒子で医薬品や遺伝子を体内に送り込む技術
アデプトジャパン 横浜市 微細部品を組み立てるロボットの開発
川口光学産業 横浜市 超小型プリズムの加工と光チップ試作
ペクセル・テクノロジーズ 横浜市 光電変換素子用部材の開発と販売


 半導体加工技術開発の
フィルテック(古村雄二社長)は、シリコンウエハーに直径60ナノ(ナノは10億分の1)メートルの穴をあける技術を確立した。従来より直径を20ナノメートル短縮、90ナノメートルが限界とされる半導体の回路線幅を45ナノメートルまで狭くできる道が開けてきた。古村社長は「1枚のウエハーから取れる半導体の数を大幅に増やせる」と語る。
 フィルテックは富士通の半導体技術者だった古村氏が2001年5月に設立した。早稲田大学理工学総合研究センターの鷲尾方一教授の研究室と組み、20ナノメートルの線幅で半導体回路を描く技術の実用化にも取り組んでいる。

 大量の情報を瞬時にやり取りできることから、将来の通信機器や計測機器の中核部品として使われる可能性を秘めている光チップ。このチップから発する光線の間隔をナノレベルに短縮する研究に取り組んでいるのが
川口光学産業(横浜市、川口裕三社長)だ。
 従来は2マイクロ(マイクロは百万分の1)メートルが最小限界だったが、同社は超小型プリズムの加工技術を駆使して1マイクロメートル、つまり千ナノメートルまで縮めることに成功、ナノの世界に入り始めた。通信・精密機器メーカーの研究開発部門から光チップの試作を請け負っている。

 大学発のナノベンチャーでは東京農工大学の躍進が目立つ。
カンタム14(東京都小金井市、嶋田壽一社長)は直径が3ナノメートルのシリコン結晶「ナノシリコン」を使った製品開発に取り組んでいる。
 ナノシリコンに電圧を加えると高速の電子を平行に放出する。取締役最高技術責任者の越田信義・農工大教授は「バイオや医療、照明、表面処理分野での実用化を目指したい」と語る。

 
ケー・アンド・ダブル(東京都小金井市、直井和子社長)も農工大を代表するナノベンチャーだ。大容量の一次電池や燃料電池の補助電源となるスーパーキャパシタをナノテクを使って開発しようとしている。
 電気通信大学発のベンチャーで半導体開発を手掛ける
ナノテコ(東京都三鷹市、加藤修一社長)は、トランジスタの上にナノサイズの金属抵抗体を薄く積層させる技術を研究している。加藤社長は「携帯電話機など通信機器の一層の小型化につながる」と話す。
 米国ではシリコンバレーやテキサス州を中心にナノテクベンチャーの起業が相次いでいる。日本でもベンチヤーのすそ野が広がれば、新産業創出は一段と加速しそうだ。

 

相次ぐ成果「8合目」 可能性秘めた「コメ」  遠藤守信・信州大教授に聞く

 技術革新や新産業創出が期待されるナノテクノロジー(超微細技術)。研究の第一人者である信州大学の遠藤守信教授にナノテクが秘める可能性や実用化の見通しなどについて聞いた。

ー 実用化に向けて今はどの段階か。
 「カーボンナノチューブ(筒状炭素分子)などのナノテク素材を使うことで、ノートパソコンや携帯電話機のリチウムイオン電池の駆動時問が向上したといった研究成果が登場。ナノテク素材は材料の性能を高める添加剤としてまず実用化されたが、その実績が他分野にも波及し始めた。登山に例えると、(本格的な実用化は)すでに8合目まで来ている。一気に頂上を目指す段階だ」

ー ゴルフクラブなどスポーツ用品で実用化が進んだが、その後はあまり続いていない。
 「スポーツ用品から実用化するのは意味がある。現在広く普及している炭素繊維は今でこそ飛行機やスペースシヤトルに採用されているが、最初は同じようにスポーツ用品だった。今後用途は確実に広がる」

ー 半導体に代わる新たな「産業のコメ」との期待もある。
 「1970年代という半導体産業の黎明期を知る研究者にお会いした際、今のナノテクは当時の半導体以上に期待が大きいと言われた。半世紀に一度あるかないかの新技術との感触を持っている」

ー 応用分野の展望は。
 「既存の樹脂にナノテク素材を添加すると強度が高まるので、自動車のボディーの軽量化につながる。燃料電池の性能向上にも役立つ。医薬品では副作用を低減できる薬物送達システム(DDS)などに応用できる。情報技術(IT)分野でも超高速で計算処理でき、消費電力も少ない大規模集積回路(LSI)などに使える」
 「国民の安心・安全を高める技術の開発にも貢献できるだろう。ただ、今はまだ思いもしないような分野に将来利用できる可能性を秘めているのがナノテクだ。新産業の創出につながり、地方にもナノテクを駆使した魅力ある産業が生まれるのでは」

ー 海外でナノテク素材の毒性を指摘する研究報告が出ている。
 「新素材を実用化する際には毒性の問題は避けて通れない。医薬品であればなおさらだ。実用化が遠い材料であればそのような研究は誰もしない。毒性を調べる段階なのは、実用化が確実に進んでいる証拠だ」


株式会社フィルテック
http://www.philtech.co.jp/japanese/annai/index.html

本社   東京都千代田区麹町5−7 秀和紀尾井町TBRビル401
設立   平成13年5月21日
資本金   2億 530万円
     
平成13年5月   株式会社フィルテック設立
平成13年8月   東北大学と近接X線露光装置(PXL)システム利用と管理に関する契約締結
三菱電機(株)とPXL装置システムの施設利用に関する契約締結
PXL利用に関するコンソーシアム設立(代表 : 株式会社フィルテック)
平成14年11月   300mm露光ウエハの製造・供給開始

川口光学産業
http://www2.odn.ne.jp/kawaguchi-opt/index_J.htm

創業   昭和36年3月
設立   昭和57年10月6日
資本金   3,000万円
代表者   代表取締役 川口裕三
主要営業品目   超精密光学部品製造
 ビームスプリッター
 光チップ
 ロッドプリズム
    レーザー光源の開発
 近接場光学用ファイバープローブ
 光ファイバー簡易接合器
 RBS(Ring Beam Systems)
総従業員数   10名
本社所在地   神奈川県横浜市青葉区寺家町167番地

 私たち川口光学産業は、創業以来、超高精度光学部品メーカーとして、通信機器、半導体計測、光学測定器に不可欠な、高精度光学部品を、お客様にご提供してまいりました。


株式会社カンタム14
http://www.tuat.ac.jp/~crc/e/img/e_05_0206.pdf

社長   嶋田壽一
所在地   東京都小金井市中町
国立大学法人東京農工大学 インキュベーション施設
研究指導教員   大学院教授越田信義
設立年月日   平成14年12月13日
資本金   11,000,000 円
従業員数   8名
事業概要   ナノシリコン(NS)技術に基づいた革新的な製品の開発・製造・販売

経営理念
 カンタム14は、ナノシリコン技術(NS Technology)をベースとした製品を生み出すことにより産業を革新する世界のリーダーをめざします。

事業内容

 カンタム14 は、NS技術の電子エミッタ−としての利用に特に注目しています。NS 電子エミッタ−の動作原理はNS層での弾道電子伝導であり、
1) 均一な面電子放出
2) 5-10 eV の電子が面から垂直放出
3) 低真空中〜大気中で動作可能
という、他の電子エミッタ−を用いては得ることができない特性を示します。これらの特性を活かして、現在、大気中・ガス雰囲気中での材料表面処理やイオン発生源、医用電子源への事業展開をはかっており、将来は自発光型フラットパネルディスプレイへの応用を計画しています(右図→ナノシリコン電子エミッタ−の事業展開)。

事業の背景
 NSの基本技術は、東京農工大越田教授の研究チームにより開発されました。NSは、弾道電子の発生、可視PL・EL発光、熱誘起型超音波発生等、ユニークな特性を示します。いずれも従来のバルクシリコンでは得られない特性であり、NSの強い量子閉じ込め効果が関係しています。
 左図は弾道電子放出機構を示しています。NSは直径約3 nm の微結晶が直列に連なる1 次元構造の集合体です。
 微結晶内の電子は閉じ込められ、ランダムな運動を禁止されますが、電圧が外部より印加されると微結晶どうしの接触部分に強電界が発生し、電子は高い確率で隣接する微結晶にトンネルします。
 トンネルは微結晶が接する部分に限られるため、連続してNS層内を伝導できるのは、直進する高いエネルギーをもった電子(波)だけになります。これがNS電子エミッターの動作原理です。

製品化計画
 NS の弾道伝導機構によりはじめて可能となった“真空から大気圧までの広範囲で動作し、かつ被照
射対象にダメージを与えない低/中エネルギー電子エミッター”の製品化をおこなう。
@ 「大気圧型線状電子・負イオンビーム照射装置」:ナノメートルレベルの表面改質/滅菌・殺菌
A 「小型電子・イオン照射デバイス」:各種放電管の安定化
B 「X線照射ユニット」:半導体製造ラインにおける帯電防止
C 「真空型線状電子ビーム照射装置」:キュアリング(硬化・成形)


有限会社ケー・アンド・ダブル
http://www.tuat.ac.jp/~crc/e/img/e_05_0208.pdf

代表者名   直井和子
所在地   東京都国分寺市光町2-17-36
研究指導教員   共生科学技術研究院教授 直井勝彦
研究開発部長   荻原信宏(博士後期課程3年在学中)
設立年月日   平成14 年1 月29 日
業種   エネルギー・デバイスの開発
資本金   300 万円
事業概要   1、電池、スーパーキャパシタ等の新型エネルギーデバイスの開発・研究・企画
2、電気自動車等への新型エネルギーデバイスの応用展開に関する技術指導
  及びコンサルティング
3、電池、スーパーキャパシタ等に関するセミナー、ワークショップの開催
4、電気自動車電源の市場調査等
5、電気化学出版物への企画・製作・翻訳業務

 有限会社ケー・アンド・ダブルは、東京農工大学工学部・直井研究室の研究成果を技術移転させ、実際のエネルギーデバイスを実用化することを目的に設立されました。長年の共同研究の経験を踏まえ、大学の問題点と企業側の問題点を何とかして乗り越え、製品を世に出すことによる社会貢献をしたいと願っています。そのためには、研究室から一歩踏み出し大学と企業をつないで、基礎から実用化までを一貫して関わることが重要だと考えております。

・大容量一次電池の開発(パートナー企業と一緒に工業化を進行中)
 我が社提案の、負極にリチウムメタル、正極に有機ナノ材料を使った大容量の一次電池は、非常に容量が大きく軽量で材料が安価かつ製法が簡単でず。新規性が高く非情にオリジナリティがあるのが特徴だと思います。大容量の一次電池ならではの設計をすることにより、新たなビジネスの市場、モバイル機器や新しいユビキタス製品などに焦点をあてたいと考えています。

・大容量スーパーキャパシタの開発
 期待されている燃料電池は蓄えられるエネルギーの量は大きいですが、一度に出力できる量は少ないという欠点があります。そこで出力密度の大きいスーパーキャパシタが補助電源として重要な鍵を握っています。我が社は、電極材料の分子設計(ナノシンセシス)、3Dアーキテクチャー(ナノファブリケーション)などを駆使し、比表面積を大きくすることにより大容量のスーパーキャパシタを提案したいと思います。


株式会社ナノテコ(NANOTECO CORPORATION)
http://www.nanoteco.com/overview/index.html

創業   平成12年4月 (有限会社ナノテコとして創業)
設立   平成13年10月 (株式会社に組織変更)
資本金   1億7,340万円
本社   東京都三鷹市下連雀3丁目38番4号 
代表取締役   加藤修一
業務内容   電子部品、材料の開発、製造、販売、輸出入、関連コンサルティング業務
業務提携先   株式会社キャンパス・クリエイト
技術協力先   電気通信大学 SVBL,共同研究センター

 ナノテコ社は電気通信大学の化合物半導体研究グループが中心となって設立した大学発の企業です。
 先進的な化合物結晶技術研究(森崎研究室)とRFデバイス回路設計・評価研究(本城 研究室)が融合し、先端的RFデバイスを開発することを目指します。
 その他、化合物半導体の分野でその専門的な知見を生かし、新規のディスクリートデバイス、マイクロ波集積回路(MMIC)、光 集積回路(OEIC)の開発をふくめた、電子、光デバイスに関する技術を提供します。
 また、それら化合物半導体製品の製造や材料の特性試験などの技術支援や、関連する 市場、技術調査も提供します。


SCIVAX株式会社
http://www.scivax.com/

設立   2004年2月
本社所在地   東京都中央区東日本橋3-4-10
研究所所在地   茨城県つくば市千現2-1-6つくば創業プラザ216
代表者   前野拓道
資本金   50,000,000円
事業内容   技術経営・事業化サポート
知的財産戦略サービス
研究開発アウトソーシング受託

 ナノインプリント技術は、まさに破壊的技術(disruptive technology)に位置づけられ、数あるナノテクノロジーの中でも最も期待される技術の一つです。このナノインプリント技術を社会・産業の発展に寄与する技術として世に送り出すには、サイエンスから事業までを繋ぐ異分野組織とのコラボレーションが必要不可欠です。SCIVAXは自らがナノインプリント産業創出の最適プラットフォームを形成し、今まで成し得なかったナノインプリント産業創出に向けた異分野融合を推進します。


株式会社 SNT (旧社名:株式会社 白鳥ナノテクノロジー)
http://www.snt.jp/

本社   千葉県市川市大洲
活動所在地   川崎市幸区小倉144-8 慶応義塾大学K2タウンキャンパスO棟103
設 立   平成14年3月6日
資本金   2900万円
代表取締役   白鳥 世明   慶応義塾大学理工学部 助教授
事業内容   薄膜の作製、
評価に関するナノテクノロジーの委託研究、
共同開発及びその技術の販売、薄膜製造装置の販売 など


 当社代表取締役 白鳥世明が率いる慶應義塾大学の研究室では、ナノレベルの薄膜を研究開発しています。
 ここでは、従来の真空を使った薄膜作製技術に代わって、常温・常圧状態の電解質高分子の水溶液で薄膜を作る『交互積層法』とよばれる次世代の薄膜作製技術に取り組んでいます。
 これにより、常温・常圧下で、低コストの製膜が可能となりました。

 ナノテクノロジーと薄膜作製技術を用いて、研究開発した野菜・果物の鮮度保持シートは、すでにベンチャー企業との連携で商品化され、関係者の注目を集めました。
 また、ガスセンサの感応薄膜への応用を考案し、高性能かつ小型のガスセンサを試作開発しました。多種・多様なニーズに対応した豊富なセンサを提供していきます。
 さらに、超撥水膜や有機・無機複合太陽電池などの新技術への応用も積極的に進め、実用化を目指しています。
 私たちは、センサー、ナノコーティング、薄膜という3つのキーワードで、人と地球に優しい環境を製品を生み出そうと研究開発に取り組んでいます。


アデプトジャパン株式会社
http://www.adeptjapan.co.jp/

設立   1998年7月
         10月  大型液晶マスク高精度位置決め装置開発
本社   神奈川県横浜市中区新港2−2−1 横浜ワールドポーターズ6F
売上   2003年度 約5億円
従業員   12名

ペクセル・テクノロジーズ株式会社  Peccell Technologies, Inc.
http://www.peccell.com/

本社   横浜市青葉区鉄町1614(桐蔭横浜大学内)
設立   平成16年(2004年)3月1日
資本金    880万円
社員数   10名
代表取締役   宮坂 力 (桐蔭横浜大学教授)

 ペクセル・テクノロジーズ社は、色素増感太陽電池、有機薄膜光センサーなどのナノケミストリー技術が基盤となる光エネルギー変換素子の実用化を目指し、産学連携の研究力を原資とする大学ベンチャーとして設立しました。ペクセルの名は、光電気化学を意味し、光と電気化学のかかわる広い技術領域をにらんでおります。

 弊社の扱う材料、装置は、桐蔭横浜大学で培った技術基盤の上に立って開発されたもので、高い信頼性をもった商品を、他社にない低価格で提供することを社員全員のモットーとしております。アフターサービスも共同開発メーカーのサポートを得て万全な体制で臨みます。ユーザーの皆様の期待にお答えするよう、社員一同、鋭意努力いたしますので、よろしくお願い申し上げます。