ブログ 化学業界の話題 knakのデータベースから 目次
これは下記のブログを月ごとにまとめたものです。
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BASFとBayerによる買収劇が行われている。BASF案件は買収が成立したが、Bayerの方は雲行きが若干変わってきた。
1)BASF、エンゲルハードを買収
BASFは6月9日、米触媒大手エンゲルハードの買収を完了したと発表した。同社はBASFの100%子会社となる。
エンゲルハード側の株価引き上げ作戦が成功した形となった。
BASFは、両社のビジネスを統合することにより、特殊顔料をはじめとする他の成長市場にも進出し、触媒マーケットでのトップメーカーになるとしている。
経緯は以下の通り。
・ | BASFは昨年末にエンゲルハードに対して友好的買収を申し出たが、エンゲルハード側が話し合いを拒否。 |
・ | BASFは敵対的買収を決め、本年1月3日、エンゲルハードを総額49億ドル(1株37ドル:90日平均の株価の30%増し)で買収する提案を行ったと発表した。 |
・ | エンゲルハード側はBASFに対してオファー価格(1株37ドル)を引き上げるよう要請し、BASFは38ドルを提案した。 しかしエンゲルハード役員会でこれを満場一致で拒否した(4月26日に発表)。 同社ではBASFに対抗して株数の20%相当分について1株45ドルで自社株買いを行うことや、コスト削減策などを決めた。 |
・ | BASFの当初の買収提案(37ドル)に対して、4月28日までの期限で1%以下しか応じなかった。このためBASFは5月1日に、買収価格を1株38ドルに引き上げ、買収期間を6月5日に延長すると発表した。 |
・ | しかし、これに対しても応募が少ないことから、BASFはエンゲルハードの大株主とも協議した結果、5月22日に買収価格を39ドルに引き上げるとともに、「これが最良の、最後のオファーであり、これ以上価格を引き上げる考えはなく、これが受け入れられないなら撤退する」と宣言した。 |
・ | エンゲルハード側はこの案を評価し、5月30日に両社は買収で合意した。 エンゲルハードは株主に対し、BASFによる1株39ドルでのTOBに応じるよう勧めるとともに、同社が出していた45ドルでの株式20%分の自社株買いのオファーを取り下げた。 |
・ | 6月5日のTOB締め切り時点で約89%の株主がこれに応じた。BASFは買収を完全にするためTOB期間を6月8日まで延長した。 |
・ | 6月8日時点で90%以上がTOBに応じた。 これにより、BASFはエンゲルハードを100%子会社とし、TOBに応じなかった株は1株当たり39ドルを受け取る権利に変換される。 |
2.バイエルによるシェーリング買収
本件は下の2つの記事で書いた。ドイツのSchering AGの買収の件である。
2006/3/23 2つのMerck社
2006/3/24 速報 バイエルがシェーリングの買収合意
これまでの経緯は以下の通り。
・ | 本年3月12日、ドイツのMerckがScheringに対して1株77ユーロでの買収を提案、Scheringは価格が著しく安すぎるとし、独立した医薬会社として存続したいとの意向を発表した。 |
・ | 3月23日にBayerが1株86ユーロでオファーし、Bayer-Schering Pharmaceuticalsを設立することを提案、Schering役員会もこれを歓迎した。 |
・ | Merckがこれに対抗して買収競争になるかと思われたが、同社は翌日、77ユーロを引き上げる考えがないことを発表した。 しかし、両社の統合が両社にとってよいオプションであると確信している旨述べている。 |
・ | 4月13日、Bayerは正式にTOBをかけた。 1株86ユーロ、総額165億ユーロで、締め切りは5月31日。 |
・ | 5月30日、Bayerは期間を延長、6月14日までとした。最低引受限度は75%。 |
6月2日時点で11%を所有する最大株主のAllianzがTOBに応じ、合計39.21%を集めた。 |
これで予定通り買収が成功するかと思われたが、突如、買収を諦めたと思われたMerck がSchering株を6%強所有していることを明らかにした。BayerによるTOB期間中であり、株式購入に関してはコメントしないとしている。
これに対してBayerは以下の理由で同社の態度は理解できないとのコメントを出した。
・ | Merckは先にBayerの出した86ユーロは高すぎるとして買収提案を取り下げたのに、その価格で株を買っている。 |
・ | この行為はBayerの買収を邪魔しようとしているように見えるが、こんな手は戦略的投資家なら取らない。 |
・ | Merckは市場に対してその意図を明らかにしておらず、投資家や当事者は同社の戦略が分からないままである。 |
今後のMerckの出方が注目される。
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付記 6月14日、バイエルとメルクは、メルクがこれまで購入したシェーリングの株式(21.8%)をバイエルに売却することで合意したと発表した。これにより、バイエルによるシェーリングの買収が決定する。
レジ袋の排出抑制対策などを定めた改正容器包装リサイクル法(容器包装に係る分別収集及び再商品化の促進等に関する法律の一部を改正する法律案)が9日、参院本会議で可決、成立した。来年4月に施行される。
内容は下記の要綱の通りで、家庭ごみの6割を占める容器包装ごみの対策として、
1)消費者の意識向上や事業者との連携を図るための取組み
2)事業者の自主的取組を促進するための措置
大手スーパーやコンビニなどに削減への取り組みを義務づける
3)リサイクル費用を払わない場台の罰金の引き上げ
等が決められた。
焦点となっていたレジ袋の有料化は業界が強く反発し、明文化は見送られた。
業界は既に対応に乗り出している。
コンビニエンスストアの業界団体の日本フランチャイズチェーン協会は削減目標を発表している。業界の04年度の使用重量33千トン、1店当たり813kg(00年は937kg)を10年度までに609kgまで削減する。
百貨店業界では容器包装使用量を10年までに00年比で25%削減する方針を決めている。
「モスバーガー」を展開するモスフードサービスは、持ち帰り用のポリ袋を7月に全廃すると発表した。
環境グループは全世界で毎年5,000億枚から1兆枚の袋が使われていると推計するが、環境問題や資源問題からレジ袋規制の動きは世界中で見られる。
アイルランドでは、2002年からプラスチック税「Plastax」が課せられており、スコットランドでも検討されている。日本では東京都杉並区が2002年、レジ袋1枚につき5円の税金を課す「レジ袋税(すぎなみ環境目的税)条例」を制定した。ただし税の施行については、景気の動向やレジ袋の削減状況等に配慮し、議会と協議した上、総務省への同意協議が必要ということで、今のところ具体的な日程は決っていない。
(資料: http://www2.city.suginami.tokyo.jp/library/library.asp?genre=48 )
そのほか下水が詰まる、美観を害する等の理由で、バングラデシュでは首都ダッカでの販売と使用を禁止、インドのムンバイ(ボンベイ)
も、薄いプラスチック袋を禁止した。台湾や南アフリカではプラスチック袋を使用する小売業者に罰金を課している。
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容器包装に係る分別収集及び再商品化の促進等に関する法律の一部を改正する法律案要綱
第一 容器包装廃棄物の排出の抑制に向けた取組の促進 | |||
一 | 目的及び基本方針等の規定において容器包装廃棄物の排出の抑制の促進に係る規定を追加すること。 (第一条、第三条、第五条、第六条、第八条及び第九条関係) |
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二 | 消費者の意識向上や事業者との連携を図るための取組について、次の事項を規定すること。 | ||
1 | 容器包装廃棄物の排出の抑制についての消費者の意識啓発等を図るため、環境大臣が「容器包装廃棄物排出抑制推進員」を委嘱することができることとすること。(第七条の二関係) | ||
2 | 環境大臣は、容器包装廃棄物の排出の抑制に資する情報の収集、整理及び提供や容器包装廃棄物の排出量等の調査及び公表を行うこととすること。(第七条の三関係) | ||
三 | 事業者の自主的取組を促進するための措置について、次の事項を規定すること。 | ||
1 | 主務大臣は、その事業において容器包装を用いる事業者であって、政令で定める業種に属する事業を行うもの(以下「指定容器包装利用事業者」という。)による容器包装廃棄物の排出の抑制を促進するために、判断の基準となるべき事項を定めることとすること。また、この場合、主務大臣はあらかじめ環境大臣に協議するとともに、環境大臣は必要に応じて、主務大臣に意見を述べることができることとすること。(第七条の四関係) | ||
2 | 主務大臣は、判断の基準となるべき事項を勘案して、指定容器包装利用事業者に対する指導及び助言を行うことができることとすること。(第七条の五関係) | ||
3 | 指定容器包装利用事業者であって、その事業において用いる容器包装の量が政令で定める要件に該当するもの(以下「容器包装多量利用事業者」という。)は、毎年度、容器包装を用いた量及び容器包装の使用の合理化により容器包装廃棄物の排出の抑制を促進するために取り組んだ措置の実施の状況に関し、主務大臣に報告しなければならないこととすること。(第七条の六関係) | ||
4 | 主務大臣は、容器包装廃棄物の排出の抑制の促進の状況が著しく不十分な容器包装多量利用事業者に対し、必要な措置をとるべき旨の勧告、勧告に従わなかった場合の公表、公表後に正当な理由なく当該勧告に係る措置をとらなかった場合の命令を行うことができることとすること。(第七条の七関係) | ||
四 | 市町村は、市町村分別収集計画を定め、又は変更したときは、これを公表することとすること。(第八条第四項関係) | ||
第二 事業者が市町村に資金を拠出する仕組みの創設 | |||
市町村から特定分別基準適合物の引渡しを受けた指定法人又は認定特定事業者は、その再商品化に現に要した費用の総額として主務省令で定めるところにより算定される額が再商品化に要すると見込まれた費用の総額として主務省令で定めるところにより算定される額を下回るときは、その差額に相当する額のうち、各市町村の再商品化の合理化に寄与する程度を勘案して主務省令で定めるところにより算定される額の金銭を、主務省令で定めるところにより、当該各市町村に対して支払わなければならないこととすること。(第十条の二関係) | |||
第三 その他 | |||
一 | 再商品化の義務を果たさない特定事業者に対する罰金の額の引上げ等所要の規定の整備を図ること。 (第四十六条から第四十九条まで関係) |
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二 | 基本方針に定める事項に「分別収集された容器包装廃棄物の再商品化のための円滑な引渡しその他の適正な処理に関する事項」を追加すること。(第三条第二項関係) | ||
第四 施行期日等 | |||
一 | この法律の施行期日について定めること。(附則第一条関係) | ||
二 | 所要の経過措置を設けること。(附則第二条及び第三条関係) | ||
三 | 政府は、この法律の施行後五年を経過した場合において、新法の施行の状況を勘案し、必要があると認めるときは、新法の規定について検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずることとすること。(附則第四条関係) |
事業買収により設立され、その後どんどん事業買収を行って急成長した化学会社がある。Ineos である。
BPから買収したEO事業をもとに1998年に設立して以来、ICIの抜本的構造改革に乗ってその諸事業を買収、その他 BP、Degussa、BASF、UCB等の事業を次々に買収し、昨年末にはBPの石油化学子会社Innoveneを買収した。この結果、創立8年後の現在では世界の14ヶ国に68の工場を持ち、従業員は15,600人、30百万トン以上の石化製品を販売し、売上高は年ベースで330億ユーロに達する。
同社の創業者で会長を務めるのが億万長者のJim
Ratcliffe(現在53歳)である。最初はエッソのケミカルエンジニアであったが、1995年に事業家と組んでBPからEO事業を買収し
Inspecを設立、大きな利益を上げ、1998年に単独でこれを買取り、Ineosを設立した。
買収は借入金で行った。通常、買収には自己資本が20%程度は必要だが、彼はIneosを担保にした。事業買収でIneosを拡大し、更に金を借りるという形で、他の事業を買収していった。
1999年にCharterhouse
Development Capital と組んでICIのアクリル事業を買収しINEOS Acrylics とした。(Ineos
は22%出資で、後にLuciteと改称)
2001年にICIからシリカ、塩素、代替フロン等の事業を買収、ICIとEniChemの塩ビJVのEVCの過半も買収した。(2005年にEVCを100%買収)
そのほか、多くの事業を買収、2005年末にBPから同社の石油化学子会社Innoveneを買収した。Innovene買収に際しては社内にも秘密にして会長が単独で極秘裏に交渉したといわれる。
同社の各部門の内容は以下の通り。
INEOS Oxide (EO,EG) | |
(1966年にUCCがアントワープに工場建設) (1978年BPが買収) 1995年Inspecが買収 1998年Ineos設立、Inspecを買収 2001年BPから欧州のアセテート事業、ENB事業を買収 |
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INEOS Phenol (フェノール) | |
2001年 Degussaから子会社 Phenolchemieを買収 2005年 Chevron Phillipsからテキサスのキュメン工場を買収 |
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INEOS Styrenics (PS) | |
2005年 BASFの米国・カナダのPS事業を買収 | |
INEOS ChlorVinyls | |
(1986 ICIとEniChemが50/50の塩ビJV EVCを設立) 2001 IneosがEVCの過半を買収、INEOS Vinylsの傘下に置く。 同年 ICIから塩素化学事業を買収、INEOS Chlorとする。 |
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2005年 EVCを100%子会社とし、組織を再編 塩素とPVC事業をINEOS
ChlorVinyls |
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INEOS Films and Compounds. | |
INEOS Silicas (シリカ、ケイ酸塩、ゼオライト) | |
(1997年 ICIがUnileverから4部門を買収) 2001年 ICIから上記のうちのシリカ等のCrossfield部門を買収 |
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INEOS Fluor (代替フロン) | |
2001年 ICIからKlea部門を買収 | |
Lucite International 〈関係会社〉 | |
1999年 Ineos (22%)/Charterhouse Development
Capital (78%)でICIのアクリル事業を買収、 INEOS Acrylicsを設立 2002年 Lucite International と改称 |
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INEOS Melamines | |
2005年 CytecがUCBを買収するに際し、UCBのメラミンを原料とするアミノレジン、添加剤事業を買収 (元はヘキストの事業) |
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INEOS Paraform | |
2003年 DecussaのMethanova部門を買収 | |
INEOS Healthcare | |
INEOS Enterprises | |
2004年にINEOS Chlor Enterprisesがつくられ、2005年に改称 | |
6つの事業 | |
・Brine & Water business | |
・sulphur chemical 2004年 Albionから事業買収 |
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・Electrochemical Technology business | |
・Esters business | |
・(ドイツWilhelmshaven) 塩素(PVC用)、ソーダ外販 |
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・(タイ)The East Asiatic (Thailand) CompanyとのJV・IACCで可塑剤製造 | |
(以下、Innovene買収で新設) | |
INEOS Refining | |
Grangemouth と Lavera の製油所 | |
INEOS Olefins | |
InnoveneのGrangemouth, Lavera、Koln のC2, C3, C4 及び芳香族 | |
次ぎの計画を含む | |
・IneosのドイツのWilhelmshavenでのエチレン80万トン計画 | |
・InnoveneのサウジでのDelta Oil
とのエチレン及び誘導品計画 (http://www.bp.com/genericarticle.do?categoryId=2012968&contentId=7006623) |
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* BPの上海SECCO計画はBPに残したため、Ineosとは無関係 | |
付記 2007/10/3 Ineos はIneos-Delta
ethylene project を棚上げするという報道を認めた。 |
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INEOS Polyolefins | |
欧州、アジアのInnoveneのポリオレフィン事業 | |
付記 INEOSは2008年11月、欧州のOlefins 事業とPolyolefins 事業を統合し、 INEOS Olefins & Polymers Europe とすると発表した。 |
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INEOS Olefins & Polymers, USA | |
InnovenのChocolate Bayou と
Battlegroundで製造するオレフィン、PE、PP (スチレン事業は INEOS Styrenicsへ) |
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INEOS Nitriles | |
Innoveneの全世界のニトリル事業 | |
INEOS Technologies | |
Innoveneの技術ライセンス、触媒 及びIneosの塩ビ事業のライセンス、触媒ほか | |
INEOS Oligomers | |
LAO(linear alpha olefin)、PAO(polyalphaolefin)、PIB (ポリイソブチレン) |
2005年にBASFとShellは50/50のポリオレフィンJV・Basell をAccess Industries に売却した。
Basellの設立経緯は4月19日の記事に記載の同社変遷図参照。
Shell 100%となったHimont(PP+PE)、BASF/ShellのElennac
(PE), BASF 100%のTagor (PP)が2000年に統合し、BASF/Shellの50/50JVとして設立された。
昨年時点でBasell は世界の21カ国に生産拠点をもち、120カ国以上で販売を行い、従業員は6600人、売上高は67億ユーロであった。
2004年7月29日にBASFとShell はBasellに関する戦略を同社株の売却を含め再検討していると発表した。
BASFは、Shellとのポリオレフィン事業の統合は大成功で、今や業界のリーダーになったので、次ぎの手を考えるよい時期であるとし、BASFとしてはスチレン系、機能性ポリマー、ポリウレタンや関連製品に注力したいと述べた。シェルも同様に、株主価値を高めるための戦略案を考えたいとした。同社は石油製品と化学品のシナジーを高め、欧州と北米のコア製品を強化し、かつアジアと中東での成長を図りたいとした。
これを受け、多くの化学会社や投資会社が買収に向けて動き出した。
化学会社も買収している米国投資グループのBlackstoneとApolloの連合にBain
Capital とGoldman Sachs Capital Partners が加わって一大買収ファンドコンソーシアムを作り、最有力と報道された。
イランのNPC(National Petrochemical Company )も手を上げた。アメリカ政府の反対を予想してルイジアナ州の工場は買収から除くという約束までしたが、それでは不十分であった。
米国国務省は「米国はBasellの技術が悪用されるのを懸念しており、もしイランが買収した場合、イランに対する制裁措置で米国企業が取引が出来なくなるおそれがある」と述べ、BASFとShellに懸念を表明したことを明らかにした。
NPCはBASFとShellの条件は満たしていたが、両社から非公式に売却できないと伝えられた。
2005年5月5日、BASFとShellはBasell をニューヨークのAccess Industries とChatterjee Group のコンソーシアムに売却すると発表した。対価は44億ユーロ(借入金込み)であった。
Access
Industriesは後述。Chatterjee Group はインドのDr. Purnendu
Chatterjeeが米国に設立した投資会社で、インドの Haldia Petrochemicals の大株主。
しかし、その後Chatterjee Group
は本件から撤退し、Access Industries が単独で買収することとなった。
2005年8月1日、BASFとShell は関係当局の手続きも終り、Access Industries の子会社のNell Acquisition へのBasellの売却手続きが完了したと発表した。
Access
IndustriesはLen Blavatnik が設立し、所有する投資会社である。
Len
Blavatnikは本年49歳、ロシアで生まれ、21歳の時に米国に移住し米国籍をとった。ハーバードビジネススクールのMBAを取り、1986年にAccess
Industriesを設立した。
その後、ロシアの友人及びロシアの富豪と組んで
Tyumen Oil Co. (TNK)
を設立、更にBPとTNKの合弁で2003年にTNK-BP を設立した。
TNK-BP は現在ロシア第二の石油会社で西シベリア、ボルガーウラル地区、東シベリア、樺太等で石油の採掘をしており、ロシアとウクライナに5つの製油所を所有している。
このほか、Len Blavatnik は Siberian-Urals Aluminum やカザフスタンの電力会社、アルゼンチンや英国の不動産などに投資している。
2005年のForbes のアメリカの富豪番付で、純資産35億ドルで第61位となっている。
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速報
バイエル、ドイツのシェーリングを買収
2006/6/12「2つの買収劇」でバイエルのTOB期間中にメルクがシェーリング株を購入していることが判明したと書いた。
この後、バイエルはTOBを続けるが、それ以外でも購入することを明らかにし、仮にTOB外の購入価格がTOB価格より高い場合にはTOBでの購入にもこれを適用するとした。
14日、バイエルとメルクは、メルクがこれまで購入したシェーリングの株式(21.8%)をバイエルに売却することで合意したと発表した。これにより、バイエルによるシェーリングの買収が決定する。
今回の合意は両社首脳の話し合いで決まったもので、メルクは全所有株を1株89ユーロでバイエルに譲渡する。バイエルのTOBに応じた株主は1株3ユーロの値上げを享受することとなった。
メルクはこの取引により4億ユーロの売却益を得た。またバイエルとメルクは今後協力関係を強化できないか検討する。
Ineosの最近の発表に、BPから買収した元 Innovene のドイツ・ケルン工場のエチレンを10万トン増設するが、一部はARGパイプラインで他のプラントに送るとある。
2006/5/24 「RING 第三次事業計画 発表」記事に「コンビナート高度統合研究会」報告があるが、コンビナート統合の実現に向けた「提言」7項目の中の(3)「広域的パイプラインの敷設・整備」はこれを参考にしたものである。
コンビナート高度統合研究会の議事録に以下の発言がある。
「欧州に関して、日本の石油精製・石油化学が有し得ない競争力の一つはパイプライン網である。日本では、高コスト等によりパイプラインを欧州のように設置することができない。」(2005/11/25)
「我が国においても、ドイツのようにパイプラインは社会に必要であるとしたら必ず通すというようにしなければいけないと思う。パイプライン敷設を最初からあきらめていると、進まないのではないか。」(2005/12/16)
「石油・石化の連携・統合のための広域パイプラインの敷設は簡単ではないが、わが国の石油・石化産業が生き残るために必要だと考える。広域のパイプラインについても、非常にチャレンジングな課題ではあるが、このことを認識して、具体化を進めていきたい。」(2006/3/1)
欧州エチレンパイプライン会社ARGは正式には
Aethylen
Rohrleitungs Gesellschaft mbH & Co. KG で、1969年に BP、Huls(後 Degussaが吸収)、Erdolchemie (BP/BayerエチレンJV)、 Bayer、DSM (後 SABICが買収)及びScholven-Chemie(その後VEBA Chemie と改称、後
Degussaが買収) により設立された。
全長495kmで欧州のエチレン能力の半分、ドイツ・オランダ・ベルギーの能力の90%を結んでいる。(図参照)
現在の株主はBP、Westgas、Bayer、SABIC Hydrocarbons(元 DSM Hydrocarbons)、Sasol Germany、BASF の6社。2001年にDegussaの当時の株主のE.ONがBPにVeba Oel の製油・石油化学部門を売却した結果、BPがARGのHuls とScholven-Chemie持分を取得し 3/6の株主となるため、独禁法当局の認可条件として、 両社持分をSasol Germany と BASF に譲渡した。南アのSasol は欧州に誘導品 6工場をもち、うち2工場はパイプラインに接続している。
欧州にはARGのほかに、以下のようなエチレンパイプラインがある。
Shell pipeline
:Rotterdam-Antwerp
FAO pipeline(Fina Antwerp Olefins ):Antwerp
NSM pipeline :Antwerp-Feluy
Solvay pipeline: to Jemeppe
InfraServ and BASF pipelines :in Germany
あるエチレン需要家は、ARGは高すぎるので、他のパイプラインと統合して値下げするべきだと主張している。
ARGの基本料率は、1トンのエチレンを50km運ぶのに30ユーロとなっている。(4.3円/kg)
大口割引は例えば、年間20万トンで6年契約などとハードルが高い。
ところで、日本にこのようなパイプラインが本当に必要だろうか。
千葉地区では既に北の丸善石油化学から南の住友化学までパイプラインが通じており、「コンビネーテッド・コンビナート」を形成している。欧州と異なり日本のコンビナートは全て海岸にあり、異なるコンビナートの間では船での輸送が行われている。
高い費用をかけて新しくパイプラインを設置する必要性があるのだろうか。
経産省は13日、日・マレーシア経済連携協定の効力の発生に関する外交上の公文の交換が同日クアラルンプールで行われ、同協定は同日から効力を生じたと発表した。シンガポール、メキシコに続く3カ国目の経済連携協定となる。
両国政府は、昨年12月13日の日・マレーシア首脳会談において、「経済上の連携に関する日本国政府とマレーシア政府との間の協定」(日マレーシア経済連携協定)を署名している。
日マレーシア経済連携協定の概要については http://www.meti.go.jp/press/20051213003/4-fta-set.pdf
鉱工業品の物品市場アクセスに関しては上記概要では以下の通りとなっている。
・両国とも、ほぼ全品目の関税を協定発効から10年以内に撤廃
・マレーシア側 化学品はほぼ全ての品目について10年以内に関税撤廃
・日本側 日本が輸入する鉱工業品の関税は、実質上全て即時撤廃される。
日本が輸入する化学品の個別の取扱いについては 附属書一(第二章関係) 第十九条に関する表では以下の通りとなっている。
http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/treaty/pdfs/treaty164_2a.pdf#170
無機・有機化学品 ほぼ全品目即時撤廃 | |||
ソルビトール、クエン酸(対象外) グルタミン酸ソーダ 関税率 5.2%、6回の毎年均等引き下げでゼロへ |
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プラスチック | |||
PE | 関税率 1.3%(上限@4.48円/kg) | 11回の毎年均等引き下げ | |
PP | 関税率 1.3%(上限@5.12円/kg) | 11回の毎年均等引き下げ | |
PS | 関税率 1.3% | 11回の毎年均等引き下げ | |
ABS | 関税率 0.62% | 11回の毎年均等引き下げ | |
PVC | 関税率 0.78% | 10回の毎年均等引き下げ | |
PVDC | 関税率 0.56% | 7回の毎年均等引き下げ | |
PMMA | 関税率 0.58% | 7回の毎年均等引き下げ |
参考 日本・シンガポール新時代経済連携協定における日本の化学品の輸入の扱いについては別紙を参照。