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これは下記のブログを月ごとにまとめたものです。
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2007/3/1 BASF、ドイツ企業から欧州企業へ

BASFは2月27日、ドイツ企業から「欧州会社(Societas Europaea, SE)」に変身し、社名をBASF Aktiengesellschaft (BASF AG)からBASF SE にすると発表した。4月26日の株主総会に議題として提出することを決めた。本社は今まで通り、ドイツのLudwigshafen に置く。

付記

2008年1月14日、手続きが完了し、この日から BASF SE となった。

ーーー

欧州の複数の国で事業を行っている大手企業は、各国の国内法の下での会社設立に代わって、欧州法の下での「欧州会社」として設立できるようになることが、2001年10月8日の欧州閣僚理事会において決定され、2004年10月施行となった。
正式名称はラテン語で
ソシエタス・ヨーロピアSocietas Europeae)で通称は‘SE’。
この構想は、30年にわたり懸案となっていたもの。

SEは欧州全域において事業展開することができ、すべての加盟国に直接適用される欧州法に準拠する。
欧州会社法は二つの法令(legislation)から構成され、一つは会社法の諸条項を制定する規則(regulation=加盟国に直接適用される)、もう一つは労働者の経営参加に関する指令(directive=各加盟国の国内法として採択されたのち施行される)。

欧州会社は登録住所の置かれた加盟国において登録され、複数の加盟国にある既存企業を合併し、同じ規則と統合化された経営・報告システムの下に、EU全域で事業を展開することができる。(現在は他の国で子会社を設立)
   
また、法的制限を伴うことなく欧州域内のリストラクチャリング、事業再編および事業統合を柔軟に行うことが可能となる。
(子会社設立、解散、合併などの代わりに、単に事務所の設置、廃止、統合をすれば済む)
事業環境が変化した場合は、他の加盟国へ本社を容易に移転することが可能となる。
   
更に、子会社の場合は親会社又は他の子会社との取引では付加価値税(VAT)が課せられるが、欧州企業の場合は社内取引となるためVATは課せられないというメリットもある。
   
法人税課税は各国の税法に従い、他のすべての多国籍企業と同様に取り扱われる。
   
SEは上場する必要はなく、非公開企業も中規模企業もSEになることはできる。最低資本金は12万ユーロ。

 

今までに欧州会社になった企業には、ドイツの保険会社 Allianz、フィンランドの電機会社 Elcoteq、 スウーデンの金融サービス会社Nordea、ノルウエーのバッテリーメーカーNarada Europe などがある。


参考 
Statute for a European Company http://europa.eu/scadplus/leg/en/lvb/l26016.htm
    オランダ経済省企業誘致局 レポート 
http://www.nfia-japan.com/report/se.html

 


2007/3/2 Dow 買収説

Dow Chemical が買収されるかもしれないとの噂で、ミシガン州が大騒ぎになっている。

ロンドンのSunday Express が伝えたもので、Kohlberg Kravis Roberts KKR)、Blackstone Capital PartnersCarlyle Group などの投資ファンドがチームを組んでDow Chemical 買収を狙っているという。ニュースソースは明らかにしていない。同紙はグループの目標価格は1株60ドル(2月23日終値の38%増し)程度としており、これが事実なら史上最高の540億ドルの買収となる。

これを受け、インド紙はインドのReliance Industries が60億ドルを手当して、ファンドと組んで買収に参加するのではないかと伝えている。

Relianceはグローバルに石油化学、合成樹脂事業を拡大する機会を探っており、Innovene 買収には失敗したが、GEプラスチックの買収を狙っているほか、ダウと提携してJamanagar経済特区の新製油所での石化事業計画を実施し、見返りにダウの北米の石化事業に参加する交渉を進めている。
 
2007/1/16 「インドの Reliance Industries」 

 

Dowは基礎部門(売上の24%のプラスチックと11%のケミカルズ)が原料高騰、値下がりにより収益性が低下しているのを受け、対策としてJV化による“asset light” strategyを進めている。
 
2007/2/3 「ダウ、PSとPP事業のJV化を検討 

ダウはミシガン州でGM、フォードに次ぐ3番目の大企業で、州内の従業員は約 6,000 人、JVのDow Corningを加えると 8,700 人となる。
もし買収が実現すれば、収益性の低い基礎部門の処分などで、人員整理、工場閉鎖が起こるのではないかとの懸念が強い。

BIG 3 の不振が続く中で、1月にファイザーがミシガン州で2,400人をレイオフし、工場閉鎖を行うことを発表したばかり。


2007/3/3 ニュースのその後 − レジ袋税:ナイジェリアEleme石油化学:アル ゴア

1.レジ袋税の動き

2006/6/13  「改正容器リサイクル法成立」で「アイルランドでは、2002年からプラスチック税『Plastax』が課せられており、スコットランドでも検討されている」とした。 

アイルランド
アイルランド政府は、市民団体の要求を受け入れ、本年7月1日にレジ袋税「Plastax」を現在の 0.15ユーロ(24円)から 0.22ユーロ(35円)に引き上げる。    

アイルランドでは2002年に世界で初めて、レジ袋等の減少を目指して1枚 0.15ユーロのPlastax が課せられた。
その結果、1人当たりレジ袋は年間328枚から21枚にまで激減し、12億枚のレジ袋が節約され、プラスチックのゴミが95%以上減って環境改善に役立った。
1999年には買い物客の36%しか買物袋を持参しなかったが、2003年には90%が持参している。
税収は環境計画に使われている。
 

しかし、市中のゴミ削減を目指すロビー「Irish Business Against Litter」では昨年、市民がPlastax に慣れてしまって抑止力にならないとして、Plastax を0.30ユーロに倍増することを要求した。
Plastaxが0.15ユーロのままであったため、2006年には1人当たり 30枚にまで増えている。
 

 −−−

スコットランド:

スコットランドではプラスチック税は廃案となった。

2005年秋、1袋10ペンス(約20円)課税の「プラスチック袋に対する環境税」法案が審議され、通れば2007年から施行されることとなっていた。

スコットランドの環境及び農村開発委員会は同年暮れに、情報不足を理由に法案の審議を延期した。
法案は、レジ袋を減らすことで環境問題への意識を高めること、レジ袋の再使用・リサイクルによりゴミの埋め立て量を減らすこと、市中のゴミを減らすことを目的としているが、委員会では以下の点の追加情報が必要とした。
 ・レジ袋業界と小売業界への雇用及び経済的影響
 ・課税の手間とコストが大変で、目的達成が困難ではないか
 ・レジ袋税に付加価値税(VAT)を課すのかどうか

2006年10月、提案議員からの報告を受け、議会の委員会が審議した結果、本案実施が多くの予想外の影響を生むこと、ゴミを減らすという目的を果たし得ないということで、満場一致で本提案を却下した。

提案議員は尚も抵抗を示したが、環境大臣が政府の廃棄物管理戦略のなかでレジ袋縮減問題を検討することとなったため、目的を達したとして提案を引き下げた。しかし、政府が真剣に本問題に取り組まない場合は、再度提案するとしている。

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日本

2007年1月、スーパー大手のイオンは京都市左京区にあるジャスコ東山二条店でレジ袋の有料化に踏み切った。1枚5円。名古屋市、仙台市、横浜市の店舗でも有料化の協議を進めている。 

また、東京都杉並区とスーパー「サミット」はレジ袋を有料化して、削減効果や売り上げへの影響を調べる実験を成田東店で始めた。3月末まで行われる実験は、レジ袋を1枚5円で販売し、30%にとどまっている同店来店者のマイバッグ持参率を60%まで引き上げることを目標としている。

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2.ナイジェリア Eleme石油化学

2006/5/26 「アジア企業の海外展開」で以下の通り述べた。

インドネシア最大のポリエステルメーカーのインドラマSPL がナイジェリアの国有石油化学会社を買収した。
ナイジェリア政府は昨年
、国営の Port Harcourt 製油所と 石油化学会社 Eleme Petrochemicals Company の民営化を決定、インドラマが競売で韓国のLGやナイジェリア企業に勝ち、Eleme石化の75%225百万ドルで取得した。

国連傘下の国際金融公社(International Finance Corporation IFC)はこのたび、ナイジェリアのEleme石油化学に155百万ドルの投融資を行うことを決めた。

国連では同社がサハラ以南アフリカの最大の民営化事業であり、NGLをプラスチックへと付加価値を高めてナイジェリアの発展に資するものであるため、新生石油化学の成長を支えたいとしている。ナイジェリアには豊富な資源があり、また大きな消費者市場もあるため、石油化学の競争力はあるとしている。

具体的には経営主体のIndorama Petro Limited 50百万ドルの融資と80百万ドルの借入保証を行い、更に、Eleme 石油化学に補修投資資金として25百万ドルの直接融資を行う。

同社の能力は、オレフィンが30万トン、PE25万トン、PPが8万トンとなっている。

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3. アル ゴア

Al Gore のAn Inconvenient Truthがアカデミア賞(長編ドキュメンタリー賞)を獲得した。

The Economist (2007/2/22) は今秋のノーベル平和賞候補になるのではとし、理想的な大統領候補としている。
今のところ、本人は絶対に出ないとしているが、大統領になるはずであった彼が、ブッシュに代わってブッシュの失敗を覆すほど、素晴らしいことはないとしている。

付記 2007年のノーベル平和賞は Al Gore とIPCCの共同受賞となった。


2007/3/5 Lyondell、酸化チタン事業をサウジ社に売却

Lyondell は226日、酸化チタン事業をサウジのNational Titanium Dioxide Company Ltd. 通称 Cristal に売却する契約を締結したと発表した。売却額は負債込みで12億ドル、現金での支払いは10.5億ドルとなる。

2007/2/26 「Lyondell とシノペック鎮海煉油化工、寧波で PO/SM 生産」記載の通り、2004年12月にLyondell Millennium Chemical Equistar を吸収合併し、これらを子会社とした。

合併時のMilleniumの事業と能力は以下の通り。(千トン/年)

TiO2
 Chloride
 
Sulfate

 
 515
  155
VAM   385
Acetic Acid   545

今回、旧Millenniumのうちの酸化チタン事業子会社 Millennium Inorganic Chemicals を売却する。
Millennium Inorganic Chemicalsは能力67万トンで、世界第2位の酸化チタンメーカー。米国に2箇所(Ashtabula, OH と Baltimore, MD)、ブラジル(Camacari)、英国(Stallingborough)、フランス2箇所(LeHavre とThann)及び豪州2箇所(Australindに2つ)の工場を持つ。
なお、酸化チタン以外の旧
Millenniumの事業(酢酸関係、香料、シリカ等)は売却しない。

National Titanium Dioxide  (Cristal) はサウジの企業で、世界で9位の酸化チタンメーカー(商品名 CristalYanbu Al-Sinaiyah 工場で1991年から生産しており、2002年に3万トン増強して10万トンになった。設計能力は18万トン。中東/北アフリカでの唯一のメーカー。
本社はJeddah で、英国とシンガポールに販売拠点を持ち、世界70カ国以上に輸出している。
サウジの石化会社
TASNEE66%、湾岸6カ国が均等出資する Gulf Investment CorporationGIC33%出資している。残り1%は個人投資家。

TASNEEについては 2006/5/13 「サウジの民間ポリオレフィン計画」 参照。

GICはガルフの6国(バーレン、クウェート、オーマン、カタール、サウジ、アラブ首長国連邦)が均等出資する投資会社で、TASNEEにも出資している。


2007/3/6 カネボウ・トリニティ、社名をカネボウからクラシエに変更

ホームプロダクツ、薬品、食品の3事業などを擁するカネボウ・トリニティ・ホールディングスグループは2月27日に、本年7月1日付けで商号及びコーポレート商標を「Kanebo」から「Kracie(クラシエ)」へ変更すると発表した。
「快適な楽しい“
暮らしへ”」という願いを込めているという。

事業分野 新社名 現社名
管理・統括 クラシエホールディングス カネボウ・トリニティ・ホールディングス
ホームプロダクツ クラシエホームプロダクツ カネボウホームプロダクツ
クラシエホームプロダクツ販売 カネボウホームプロダクツ販売
薬品 クラシエ製薬 カネボウ 製薬
クラシエ薬品 カネボウ薬品
食品 クラシエフーズ カネボウフーズ
クラシエフーズ販売 カネボウフーズ販売
デザイン・マーケティング クラシエファッション研究所 カネボウIKSM研究所

産業再生機構の下でカネボウとカネボウ化粧品が花王と投資ファンド3社の連合に売却されたが、花王はカネボウ化粧品、ファンド3社はカネボウを引き受けることとなり、その際の取り決めで、「カネボウ」ブランドは2年経過後は化粧品のみが使うこととなっていた。

付記

アドバンテッジパートナーズなど国内投資ファンド3社は2009年6月、クラシエホールディングスを染毛剤最大手(ビゲンなどを展開)のホーユーに売却することで基本合意した。

3ファンドの共同出資会社が保有するクラシエ株の6割をホーユーが取得する。
株式取得額は100億円程度、約150億円の有利子負債を含め約250億円。

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カネボウ再建の歴史

付記

2008年11月に元カネボウ常務取締役の嶋田賢三郎氏の小説「責任に時効なし 小説巨額粉飾」が出版された。
当事者として経験した同社の粉飾、崩壊の詳細が小説の形で書かれている。
筆者も起訴されたが、粉飾に反対していたため、不起訴となる。

同社では1970年頃から粉飾が繰り返され、当時の公認会計士もそれに関与してきた。
それが限界にきて、解体され、その時点の経営者と公認会計士が起訴された。

関与した以前のトップ(伊藤名誉会長以下)は刑事上は時効だが、「責任に時効なし」(タイトル)
新経営陣の姿勢への批判も厳しい。

カネボウは1887年、「東京綿商社」として創業、紡績所設立認可を得た。
1893年「鐘淵紡績株式会社」となった。太平洋戦争直前には国内企業売上高一位を誇り隆盛を極めた。

1949年に、非繊維事業を鐘淵化学工業(現・カネカ)として分離独立させている。
(1961年に鐘化から化粧品事業を、1971年には石鹸事業を買い戻している)

1968年、伊藤淳二氏が45歳で社長に就任、労使運命共同体論で労使協調路線を進めるとともに、「ペンタゴン経営」といわれる多角化路線を取った。
「ペンタゴン(五角形)経営」では繊維、化粧品、薬品、食品、住宅の5事業を均等に拡大し、多角化の成功例と賞賛された。

しかし二度の石油危機と円高不況で収益環境が悪化したが、ペンタゴンの生みの親の伊藤氏が不振事業の縮小を認めず、経営は悪化した。「収益力も事業特性も全く異なる事業群が混在したことで全体の競争力を失った」(再生機構)。

2004年3月期の同社の事業と売上高(億円)は以下の通り。
繊維  1,150 羊毛、合成繊維、ファッション
ホームプロダクツ   399 入浴剤、シャンプー
食品   465 冷菓、飲料、カップめん
薬品   187 漢方薬(漢方薬を除いた新薬事業すべてを1999年に日本オルガノンへ売却)
新素材等   228 電池、電子関連、人工皮革、ビデオ検査システム
化粧品  1,948  

2003年に伊藤名誉会長が退任して初めて、同社は不振のアクリル事業からの撤退を決めた。

 

更に、経営不振を補うため、「宇宙遊泳」と呼ばれる粉飾取引が行われた。

カネボウは子会社のカネボウ合繊を通じて毛布原料のアクリルを興洋に売り、興洋は毛布にして商社に販売していた。
安価な中国製品に押され興洋の製品は競争力を失い、商社からの返品が増加した。カネボウは製品をいったん買い取って興洋に販売し、返品代金を興洋から手形で受け取っていたが、業績不振の興洋は現金支払いが滞り、多くが回収不能になった。
カネボウは2003年9月中間期までに流通在庫の損失も含め、計522億円の損失を蒙った。
しかし、カネボウは興洋に役員の半数近くを送り込んで実質的な子会社だったが、カネボウが14.5%出資するカネボウ物流が興洋に14%出資しているだけで、カネボウの連結対象にはなっていなかった。

ーーー

2005年7月、東京地検特捜部は、2003年3月期まで2年間の連結決算で総額約750億円の粉飾をしたとして、元社長、帆足隆容疑者ら元役員3人を証券取引法違反(有価証券報告書の虚偽記載)の疑いで逮捕した。

2005年9月、東京地検特捜部は証券取引法違反有価証券報告書の虚偽記載の共犯容疑で中央青山監査法人の会計士4人を逮捕した。連結決算の新会計基準が始まる直前の99年、ダミー会社に株を移して赤字子会社を連結対象から外す粉飾方法をカネボウ側に具体的に指南していたことが分かった。

なお、一連の粉飾決算が上場廃止基準に該当するとし、カネボウ株は2005年6月13日に上場廃止となった。

ーーー

2003年、同社は事業構造改革計画を作成した。

・2004年3月末までに化粧品事業を分離し新会社を設立。
  花王が49%を出資、2007年3月末をメドに花王の同事業と統合
・2006年3月末までにグループ従業員の2割にあたる2,800人を削減し、全従業員を12,000人に
・320億円を投じ、ナイロンの生産縮小や不採算事業から撤退で合繊事業の収益力を強化
・「フィラ」「ランバン」を除くアパレルブランドの縮小
・シャンプーなど家庭用品のブランド再構築。薬品、食品事業のスリム化

カネボウと花王は200310月、両社の化粧品事業を統合すると発表した。
カネボウは多額の有利子負債を抱え経営難に陥っているうえ、2003年9月中間期も400億円の事業構造改革に伴う特別損失の計上などで約630億円の債務超過となる。花王から630億円以上の出資を受け、これ相当の売却益で債務超過を解消するという予定であった。

2004年1月、花王は方針を変更し、カネボウの化粧品事業を完全買収することとした。
交渉過程で企業文化の違いが浮上したことなどから方針を転換した。買収にかかる金額は4千億円以上になる見通し。
この時点で花王は「カネボウ」ブランドを化粧品以外には使用しないことを求め、カネボウ側は「他の事業はつぶせというのか」と不信感を持ったと伝えられた。

この花王の計画に対抗して、国内大手投資ファンドのユニゾン・キャビタルがカネボウに、化粧品事業の買収・新会社設立を提案した。
また、花王によるカネボウの化粧品事業買収に、カネボウの労働組合が反対
を表明した。

2004年2月、カネボウは花王への化粧品事業売却を白紙撤回し、産業再生機構に支援を要請することを決めた。
収益源の化粧品事業を手放した後、生活用品など残る事業だけでは再建の見通しが立たないと判断したもの。
とりあえず、化粧品事業に機構の支援を受け、追って、本体にも支援を要請する。

2004年3月、産業再生機構は政策決定機関である再生委員会を開き、カネボウ再建の具体策を協議した。

 ・本体から分離する化粧品新会社を出資と債権買い取りで計3,800億円支援、出資比率を86%とする案。
 ・繊維事業など本体もカネボウから支援要請を受けた。

 

5月、化粧品会社の詳細が決定した。
 社名:「カネボウ化粧品」
 資本金:1千億円
 出資:再生機構86%/カネボウ14%(カネボウの連結から除外)
 再生機構拠出額:3,660億円(出資860億円+貸付金2,800億円)

  *2004年12月、貸付金のうち1,500億円を優先株(15百万株)に転換

 

6月、カネボウと再生機構はカネボウ本体の再建策を決定した。
同社は構造改善費用の拡大(3,343億円)で2004年3月期末で3,553億円の連結債務超過に陥った。

・取引金融機関に対し995億円の債権放棄を要請
 株主に対し99.7%の減資を実施
 主力行の三井住友銀行が300億円の出資(議決権なし)
 再生機構が50%超の議決権で200億円出資

・今後3年間で全社員の4割弱に当たる1,800人の人員削減

・事業整理
 主対象は繊維部門
  天然繊維は長浜、大垣両工場を売却・閉鎖し完全撤退
  合成繊維もナイロンを大幅に縮小し防府工場を売却もしくは閉鎖。
 食品はカップめん、飲料から撤退

この後、下記の事業分類基準に従って、順次事業整理が行われた。

    売却先
第一分類 事業性があり今後コアとなる可能性が高い
・ホームプロダクツ(シャンプーなど)  
・薬品  
・食品(菓子など)  
・ファッション 海外衣料ブランド:ロレアル、モルガン・スタンレー連合
繊維委託加工
あつみファッション
第ニ分類 事業性はあるがコアになるか見極めが必要
・合繊(ナイロン、ポリエステルなど) 合繊事業:KBセーレン(セーレン51%/カネボウ49%)
       →将来、セーレン100%
樹脂事業(機能性及びAペットシート):三菱化学
・紙パック飲料 チルド飲料:アサヒビール
第三分類 事業性を精査し、継続・売却・清算を判断
・食品(冷菓)
・カネボウ物流
継続する事業
(1)カネボウフーズで行なう冷菓事業
(2)カネボウ物流の事業
(3)婦人インナー部門のオリジナルブランド事業
第四分類 売却先を探し見つからない場合は清算
・食品(カップめん・飲料) カップめん:加ト吉
缶入り飲料:清算
・天然繊維 国内羊毛事業(大垣工場):三甲
・合繊(防府工場関連、海外) ラクトロン(防府工場生分解性繊維:東レ
海外:撤退
・新素材 電子関連:シキノハイテック
人工皮革「ベルエース」
倉本製作所
テキストグラス(
ガラス繊維、カーボン繊維、アラミド繊維):日東紡績
ベルパール事業(機能性高分子フェノール樹脂、ニューカーボン、PSA):エア・ウォーター
・電池 電池事業:昭栄エレクトロニクス
その他 医用材料事業:睦化学工業
カネボウ化成が行う建材事業:岩尾株式会社
カネボウ化成及び室町化学が行う化成品事業:富士ケミカル商事
室町化学が行うスリングベルト製品事業:日東物産
カネボウ合繊の新規市場開発事業:帝人ファイバー

カネボウベルタッチ(両ファスナー):伸和
半導体(先端ASIC、中級マイコン機種)の最終検査:カネボウ菊池電子のMBO

 

機構は2004年5月にカネボウとカネボウ化粧品を別途に再建することを決めたが、1年で「一体再生」へ方針転換した。

2005年6月、カネボウはカネボウ化粧品が200億円の増資を引き受け、カネボウの議決権の37.9%を持つことを決めた。

2005年12月、再生機構は入札の結果、カネボウとカネボウ化粧品を、花王とアドバンテッジパートナーズ、MKSパートナーズ、ユニゾン・キャピタルの国内投資フアンド3社の連合に売却すると正式発表した。(文末参照)
2006年1月末に機構が保有する株式と債権を花王側に譲渡し、再生機構は投入した資金を回収し、200億円前後の利益を得た。

花王はカネボウ化粧品を取得し、完全子会社として自らの化粧品事業との相乗効果を狙う。
   ・花王がカネボウ化粧品の株式のうち再生機構が保有する86%と本体保有分の14%を2,790億円で取得
     機構   普通株式 86百万株(86%)+無議決権株式 15百万株 計 2,634億円
     カネボウ 普通株式 14百万株(14%) 156億円
   ・花王がカネボウ化粧品から
ブランドなど知的財産権1,480億円で取得
     
「カネボウ」ブランドはカネボウ化粧品だけが使えるようにするが、2年間はカネボウにも使用を認める。
    (現金・現金同等物を除き合計約
4,100億円で買収)
   ・2006/2にカネボウ化粧品は所有するカネボウ株式 62.5百万株(37.9%)をトリニティに売却

カネボウ本体は3ファンドが出資するトリニティ・インベストメントが取得し、再上場も視野に再生を進める。
  ・国内3ファンドが「トリニティ・インベストメント」を通じ、カネボウ本体株のうち再生機構が保有する32.11%を取得
  ・カネボウ化粧品が保有する本体株37.9%も花王から譲渡を受け、持ち株比率を70.25%にする
  ・
ファンドは本体株の29.75%を保有する一般株主に対しTOB公開買い付けを実施

結局、紆余曲折のうえ、2004年2月にカネボウが白紙撤回した花王への化粧品事業売却案の通りとなった。

但し、旧「カネボウ」に関しては、問題はまだ解決していない。

トリニティ・インベストメントは一般株主に対してTOBを行ったが、
TOB価格が上場廃止時の360円から大きく乖離し162円という想定外の安値である上、算定方式や手続きに問題があった。このため、株主は反発し、適正な株式買い取り価格の決定を求める民事訴訟を東京地裁に起こしている。
トリニティ・インベストメントはTOBでカネボウの100%株主になる予定であったが、現在、議決権ベースで83%に留まっている。

2006年5月、トリニティ・ホールディングスは日用品、薬品、食品の3事業をカネボウから切り離し、「カネボウ・トリニティ・ホールディングス(新カネボウ)」の100%子会社にしたが、3事業の譲渡代金425億円はカネボウには支払われていない。

2006年末、カネボウの個人株主約500人が同社の再建手法は違法だとして、取締役5人を会社法の特別背任罪で東京地検に告発した。

付記

資産管理会社のカネボウは2007628日、定時株主総会を開き、6月30日付で解散することを決めた。
7月1日からは「海岸ベルマネジメント」と社名を変えて清算手続きに入る。残った資産を売却・処分して負債を返済し、残余財産を株主に分配する。

同社の資産評価を巡っては一部の株主が経営陣を提訴しており株主総会の席上でも解散に反対したが、普通株の85%を握るユニゾン・キャピタル、アドバンテッジパートナーズ、MKSパートナーズの3ファンドが賛成した。

日用品、医薬品、食品の3事業を引き継いだカネボウ・トリニティ・ホールディングスは7月1日付で「クラシエホールディングス」に社名変更する。

カネボウ個人株主の権利を守る会」では東京地裁に対して株式買取価格決定申請を行っている。
争点は、ファンドが実行した上記のカネボウ3事業の
カネボウ・トリニティ・ホールディングスへの営業譲渡の譲渡価格で、ファンド側は434億円、同会は2,785億円以上をそれぞれ主張している。

ーーー

付記 2008/3/14

一部株主が「会社が提示した株式買取り価格は不当に低い」として価格決定を求めていた裁判で、東京地裁は3月14日、1株360円が妥当とする決定を下した。

会社はTOB価格と同じ162円での買取りを提示、株主側は「少なくとも1,578円」と主張していた。
双方とも抗告する方針。

付記 2008/9/26

資産管理会社「海岸ベルマネジメント」は9月26日の株主総会で、旧カネボウ株を1株130円で買い取ることの承認を受けた。

付記

2008年7月 東京高裁判決

原告:投資ファンド側が2006年に産業再生機構などから旧カネボウ株の3分の2以上を相対取引で買い取った際、「大量の株式を買い付けるのにTOBをしなかったのは違法」と主張。「TOBに応じて株を売却する機会を逸した」などとして損害賠償を求めていた。
投資ファンド:「大量買い付けでも株の所有者が25人未満で、全員が同意していればTOBをしなくてよい」という例外規定を指摘。「買い付け対象は普通株と異なる種類株で、所有者は産業再生機構とカネボウ化粧品の2社のみ。いずれもTOBをしない売却に同意していた」と反論した。
一審・東京地裁:2007年5月、「例外規定の対象」と認定、男性の訴えを棄却した。

東京高裁:例外規定の対象となる同意が必要なのは「買い付け対象外を含めたすべての株所有者」と解釈し、多数の一般株主を含めると、例外規定の対象とならないと判断。そのうえで投資ファンド側が産業再生機構から購入した際の価格(1株201円)を基に損害賠償を命じた。

 

参考 カネボウ個人株主の権利を守る会 公式サイト
     
http://www.geocities.jp/tob_kanebo/index.htm

ーーー

2005/12/16 産業再生機構 発表

産業再生機構は、産業再生委員会の決定を経て、下記の対象事業者にかかる株式及び債権の譲渡等を決定しました。これにより、機構が対象事業者に対して持つ債権その他は一切なくなります。

出資額等
機構は、カネボウ化粧品に対し、86,000百万円の現金出資により、議決権割合の86%に当たる普通株式を取得していたほか、額面合計150,000百万円の債権の現物出資(DES)により、カネボウ化粧品が発行するA種優先株式の全てを取得していました。
また、カネボウに対しては、10,000百万円の現金出資及び、額面合計10,000百万円の債権の現物出資(DES)により、議決権割合の32.11%に当たるC種類株式を取得していました。
今般、機構がカネボウ化粧品及びカネボウに対して保有する株式の全てを譲渡するものです。

債権額等
機構は、カネボウ化粧品に対する元本150百万円の債権をカネボウから1円で買取り、事業再生計画に沿って債権放棄(150百万円)を行いました。その後、化粧品事業の譲受に伴い280,000百万円の新規融資を実行し、前述の150,000百万円の現物出資(DES)を行った後の130,000百万円の債権に関し、事業収益等による一部弁済を受けておりましたが、今般クロージング時点で残存する全額について額面で譲渡等を行うこととしました。
また、機構は、カネボウに対する元本103,821百万円の債権を金融機関等から47,235百万円で買取り、事業再生計画に沿って66,543百万円の金融支援(債権放棄56,543百万円、DES10,000百万円)を行った後、残った37,278百万円の債権に関し、事業売却・資産処分等により一部弁済を受けておりましたが、今般クロージング時点で残存する全額について額面で譲渡等を行うこととしました。

注 売却価格は「守秘義務に当たる」として公表しなかった。

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付記

産業再生機構は32日、最後の支援先として残っていたスカイネットアジア航空の支援を終了した、と発表した。

同機構が03年発足以降に手がけた41件の支援はすべて終わり、法律で決められた解散期限より1年早く、今年3月中に解散することになる。
06年3月末時点で178億円の剰余金があり、さらに06年度にもダイエー株式の売却益などが上積みされるため、国民負担は生じない。解散時に残った財産は、国庫と出資者である預金保険機構、農林中金に分配される。

2007/3/15 産業再生機構 解散  参照


2006/3/7 中国のエチレン生産量 2006年は941万トンに

中国の2006年のエチレン生産量は941万トンとなり、2005年の755万トンを24.5%上回った。
一方、
200711日現在の生産能力は967万トンとなった。(200611日は778万トン)
日本の2005年末の能力は796万トンで、中国の能力は日本の能力を上回った。

3つの海外企業とのJVが生産量の拡大に寄与した。
中海シェル(シェルと中国海洋石油
ほかとのJV)は広東省恵州市大亜湾800千トンクラッカーを第1四半期にスタートし、646千トンを生産した。2005年にスタートした上海SECCOBP/Sinopec/上海石化:900千トン)と南京のBASF-YPC(BASF/Sinopec:600千トン)は、それぞれ、336千トン、306千トンの増産となった。

生産能力は2006年中に189万トン増えた。中海シェルの800千トンのほかに、Sinopecの茂名石化が640千トン、PetroChinaの蘭州化学が450千トンの能力増強を行った。

各社の能力と生産量の推移は添付の通り。

        能力 生産
05/1/1 06/1/1 07/1/1 2004年 2005年 2006年
@ 大慶石化 CNPC 龍江省   600   600   600    456   556   517
A 吉林化学 CNPC 吉林省   530   750   750    580   511   752
B 盤錦エチレン Liaoning Huajin Group 遼寧省   160   160   160    166   157   180
C 遼陽石化化繊 CNPC   遼寧省   120   120   120    142   146   150
D 撫順石化 CNPC 遼寧省   150   150   150    175   168   180
E 北京東方化工 Sinopec 北京市   150   150   150    181   178   168
F 燕山石化 Sinope 北京市   710   710   710    801   812   820
G 天津石化 Sinopec 天津市   200   200   200    228   207   232
H 斎魯石化 Sinopec 山東省   720   720   720    456   825   839
I 揚子石化 Sinopec 南京市   650   650   650    813   776   755
J 上海石化 Sinopec 上海市   850   850   850    956   962   960
K 廣州エチレン Sinopec 広東省   200   200   200    217   214   196
L 茂名石化 Sinopec 広東省   380   380  1,020     394   348   522
M 中原石化 Sinopec 河南省   180   180   180    209   192   214
N 蘭州化学 CNPC 甘粛省   240   240   690    239   246   240
O 新疆独山子 CNPC 新彊省   220   220   220    254   261   247
P BASF-YPC BASF/Sinopec 江蘇省      600   600    ー    341   647
Q Secco BP/Sinopec/上海石化 上海市      900   900    ー    642   978
R 中海シェル Shell/CNOOC 広東省         800    ー       646
合計  6,060  7,780  9,670   6,266  7,555  9,412

 


2007/3/8 住友ベークライト、熱硬化性樹脂事業を更に拡大

住友ベークライトはこのたび、スイスの熱硬化性樹脂メーカー Neopreg AG 買収した。
同社は繊維強化熱硬化性樹脂のメーカーで、繊維強化ポリイミド成形材料 Kinel、繊維強化エポキシ成形材料 Neonite を製造販売している。
住友ベークライトは同社を、2005年に
スウェーデンのPerstorp AB から買収したベルギーの熱硬化性樹脂成形材料メーカーのVyncolit N.V. に統合するが、Neopreg の名称は存続させる。

ーーー

住友ベークライトは、最初のプラスチックの「ベークライト」を日本で最初につくった会社である。
 2006/2/15 「
プラスチック100周年 参照  

住友ベークライトは米国オキシデンタルとの合弁で世界各地でフェノール樹脂事業を行っていたが、2000年9月、オキシデンタルから同事業全体を1億5千万ドルで買収した。これにより、買収後の生産能力はフェノール成形材料67千トン、フェノールレジン112千トンとなり、世界シェアはそれぞれ25%、11%となった。

会社 工場所在地 買収対象 事業内容 製品
デュレズ事業部 オハイオ
ニューヨーク
オンタリオ
100%事業・株式 生産・販売 フェノールレジン成形材料
ヨーロッパ法人 ゲンク・ベルギー 100%株式 同上 フェノールレジン他
スミデュレズ カナダ オンタリオ 50%持分 生産 高機能フェノール成形材料
スミデュレズ アメリカ 50%持分 販売
スミデュレズ シンガポール シンガポール 25%株式 生産・販売 フェノール成形材料
住友デュレズ  静岡 25%株式 生産 フェノールレジン
OXYSIM技術 導体テープ用レジン技術

* 住友デュレズは2001年4月1日付で吸収合併した。

ーーー

同社は2003年8月に、フェノール樹脂事業のうち摩擦材用レジンを主力製品とするスペインのFers Resin SA社およびその関連会社を買収した。コア事業のフェノール樹脂事業の重点用途である摩擦材用レジンのグローバル展開を促進するのが目的。

買収したのは販売会社 Fers Resin SA製造会社 Fenocast SA及び両社が保有する子会社3社。

ーーー

同社は2005年、スウェーデンのPerstorp AB から子会社のVyncolit N.V.(ベルギー)とVyncolit North America, Inc.(米国)の全株式を約 114億円で買収した。

住友ベークライトはフェノール樹脂関連事業について、日本、米国、東南アジア、中国、欧州の5大市場に拠点を有しているが、戦略用途である自動車分野で米国や欧州には、これまでフェノール樹脂(レジン)拠点を持つのみで、フェノール樹脂成形材料の拠点は持っていなかった。
Vyncolit N.V. はベルギーに拠点を持ち、欧州における自動車部品用フェノール樹脂成形材料の分野で需要家から信頼を得ている。

この買収により同社は、フェノール樹脂関連事業で 日本、米国、東南アジア、中国、欧州の5大消費マーケットに、8ヶ国16拠点を持つことになった。

今回、スイスのNeopreg AGが加わることとなる。


2007/3/9  韓国の石油精製 S-Oil に韓進グループが参加

SaudiAramco の関係会社の韓国の石油精製会社 S-Oil は、以前に雙龍セメントが所有していた金庫株 28.4% を時価の14%増しの25億ドルで韓国航空など韓進グループに売却することを決めた。

S-Oilには SaudiAramco の子会社 Aramco Overseas Company B.V. 1991年以降35%出資しており、韓進グループは第二の株主となる。

韓進グループは本買収のため、3月2日に韓進エネルギーを設立した。グループの韓国航空が82.5%、韓進海運が14.6%、韓進空港サービスが2.9%出資した。

S-Oil はSK(蔚山)、LG-Caltex(麗水)に次ぐ韓国第三位の石油会社で、温山に製油所を持つ。

第4位は現代Oilbank(大山)で第5位は仁川製油(仁川)
仁川製油は2001年に会社更生法で再建を図り、一時は中国のSinochemによる買収の覚書を締結したが、最終的に2006年3月にSKが買収した。SKはこれにより、Sinopec
中国石油天然気集団(CNPC)、新日本石油に続き、アジア地域で第4位の石油会社として急浮上した。
  

同社は中国の需要増を見込んで、忠清南道瑞山市に2010年までに37億ドルを投じて日産48万バレルの製油所建設を計画しており、株式売却資金をこれに充当する。
新製油所が完成すると、同社の能力は106万バレルとなり、第二位のGS Caltex (65万バレル)を追い越す。

付記

S-Oil は2009年12月、12億ドルを投じて温山の製油所(58万バレル)の拡大を決めた。2011年完成の予定。

S-Oil は今後、韓国航空や韓進海運など韓進グループへの製品供給を行うとともに、韓進海運を使って原油や製品の輸送を行う。

SaudiAramco は原油の安定的供給で韓国の安定的発展に寄与しており、S-Oil は韓国とサウジの経済協力のシンボルとなっている。

ーーー

なお、第4位の現代OilbankにはアブダビのInternational Petroleum Investment Company (IPIC)70%を出資している。
1999/1250%2002年に更に20%取得。
 現在の出資はIPICが20%、IPIC子会社のHanocal Holding が50%)

ーーー

SaudiAramcoは日本では昭和シェル石油に15%の出資をしている。
2004年に50%株主のシェルから10%分の譲渡を受け、2005年に更に5%分を購入した。

昭和シェル石油はこれまで原油の過半をシェルから購入していたが、SaudiAramcoからの出資受け入れで原油調達能力を高め、競争力を強化、SaudiAramcoは悲願の日本市場進出を果たした。


2007/3/10  地球温暖化のエセ科学?

フリーの国際情勢解説者、田中 宇(たなか・さかい)が、「新聞やテレビを見ても分からないニュースの背景を独自の視点で説明」するサイトがある。http://tanakanews.com/ 

元共同通信記者で、1997年にマイクロソフトに入社、「MSNジャーナル」を立ち上げ、国際ニュースに関する解説記事を書いた。
その後独立して本サイトをひらくと共に、多くの本を出している。世界の新聞雑誌記事を集め、それを基にまとめるという手法を取っている。

ここで2週にわたり、地球温暖化問題が取り上げられた。

2007年2月20日のタイトルは「地球温暖化のエセ科学
http://tanakanews.com/070220warming.htm

概要:
IPCCには130カ国の2500人の科学者が参加している。ほとんどの学者は、政治的に中立な立場で、純粋に科学的な根拠のみで温暖化を論じようとしている。問題はIPCCの事務局にある。事務局の中に、温暖化をことさら誇張し、二酸化炭素など人類の排出物が温暖化の原因であるという話を反論不能な「真実」にしてしまおうと画策する「政治活動家」がいて、彼らが(イギリスなどの)政治家と一緒に、議論の結果を歪曲して発表している。

▼三位一体で温暖化問題は完璧?
▼海面はそれほど上昇しない
▼学者の良心を悪用するIPCC事務局
▼5月発表の本文は、2月発表の概要版と正反対

▼無視されてきた太陽黒点説
   黒点活動が活発→電磁波(太陽風)を多く放出→電磁波は宇宙線を蹴散らす→地球にふりそそぐ宇宙線が減る
   →宇宙線が減ると雲の発生が抑えられる→地球は温暖化

2007年2月27日号はその続編で、「地球温暖化の国際政治学
http://tanakanews.com/070220warming.htm

結論は「イギリスを中心とする先進国が、発展途上国の成長率の一部をくすねるために考えついたのが、地球温暖化問題である」というもの。

ーーー

安井先生の「市民のための環境学ガイド」(2007/3/4)で「地球温暖化はエセ科学か」として、最初の論文を取り上げ、田中論文の各ポイントについて詳細に説明している。
http://www.yasuienv.net/GWPoliticsTanaka.htm

田中論文では「正しいが少ない情報と正しくない多くの情報がごちゃ混ぜ状態」になっており、「先に結論があって、それに合う論説だけを選択する、という手法を取れば、世の中、どんな結論でも主張できそうです」。


2007/3/12 米国Formosa PlasticsのPVC工場爆発事故の調査結果

U.S. Chemical Safety Board (CSB) は6、2004423IllinoisIlliopolis Formosa PlasticsPVC工場で発生した爆発事故の調査結果を発表した。

工場はFormosa Plasticsが倒産したBorden Chemicals and Plasticsから2002年に買収したもので、能力は汎用PVC 80千トン、特殊PVC 80千トン、従業員は135名。

爆発で5人が死亡、3人が重傷を負った。工場は全壊し、閉鎖された。

CSBは詳細な報告書とビデオを発表した。
 報告書 
http://www.csb.gov/completed_investigations/docs/FormosaPlasticsFinal.pdf
 ビデオ http://events.powerstream.net/002/00174/Player/?contid=Formosa_Illiopolis_Illinois
       (Launch Presentation をクリックすると画像が開く)

報告ではオペレーターが安全ロックを無理やり開けたため、VCMが放出され、爆発したと結論付け、Formosa Plastics と以前のオーナーのBorden Chemicals and Plasticsヒューマン・エラーへの対応が不十分であったとしている。

当日、オペレーターがリアクター上部を洗い終り、下部を洗うため階段を降りたが、VCMの入っている別のリアクターと間違い、バルブを開けようとした。リアクターに圧力がかかっているため、安全ロックが機能していてバルブが開かなかったが、リアクターの間違いに気づかないまま、何故開かないのかをチェックせずに、無理やり安全ロックを外した。
VCMが漏れ出し、ガスが充満し、非常ベルが鳴った。オペレーターは圧力を下げて放出を抑えようとしたが、爆発が起こった。

Formosa PlasticsBorden Chemicals and Plasticsも、ヒューマン・エラーの発生を減らす努力をしていなかったのが分かった。
圧力がかかっている場合には安全ロックが外れない工夫がなかった。リアクターが4つ並んでいるが、バルブのある階下には操業状況を示す表示がなく、連絡の手段もなかった。
また、オペレーターには避難する時間は十分あったが、避難せずに無駄な努力をしたが、こういう際には直ぐに避難するという指示も訓練もしていなかった。

同工場で何度も危険な事態が発生し、VCM漏れが大事に至ることが分かっていながら、対策を取っていなかったとしている。

ーーー

なお、Borden Chemicals and Plasticsの3つの工場のうち、Louisiana州Addisの工場はShintechが、ルイジアナ州Geismar の工場はWestlake GroupGeismar Vinyls)が買収した。

Addis工場は1979年に信越化学の技術を導入し建設された工場で、シンテックの工場から約2km離れた場所に位置するが、Shintechは買収後、設備に問題がありとして廃棄した。
「1回でも事故を起こせば致命的な打撃を受ける。今回の買収では、商権を手に入れただけで投資の成果は十分に上がった。」(金川社長「私の履歴書」)

ーーー

参考 2005/10/6 テキサス州ポイント・コンフォートのフォモサ・プラスチックスの爆発事故について
  2006/8/7
 米工場爆発事故の調査結果


2007/3/13 中国の収入格差問題

中国の第10期全国人民代表大会(全人代)が3月5日午前、北京の人民大会堂で開幕した

温家宝総理は政府活動報告を行った。
「2006年は第11次五カ年計画を実施し、かつ良好なスタートを切った1年であり、国民経済と社会の発展は重大な成果を上げた」とし、マクロコントロールの強化と改善、三農(農業、農村、農民)対策の拡充、経済構造調整の加速、改革開放の積極的推進、社会事業の力強い発展、就業・雇用保障対策の着実な実施への努力、民主・法制建設の継続的強化の7方面から、過去1年間の政府の主要活動を総括した。
しかし、「わが国の経済・社会の発展には多くの矛盾と問題がなお存在し、政府活動にもいくつかの欠点と不足があることを、われわれも直視している。第
は経済構造の矛盾が際立っていること、第は経済成長方式の粗放さ、第民衆の利益に関わる際立った問題の解決不十分、第は政府自身の建設にいくつかの問題があることだ」と指摘した。

国家発展改革委員会の馬凱主任は記者会見で、経済社会の発展やマクロ調整などの問題について質問に答えたが、問題点の一つの収入格差問題について、以下のとおり述べた。

 全体的にみて、国民の収入水準は向上している。

・収入格差が拡大傾向にあるのは事実だ。都市・農村間、地域間、階層間で収入格差は拡大し、一部では深刻化している。

1978年と2006年とで、都市部住民の一人当たり平均可処分所得は343元から11,759元に増加
農村部住民の一人当たり
平均収入は134元から 3,587元に増加

注 これによれば都市と農村の格差は1978年の2.55倍から2006年は3.28倍に拡大
  但し、都市部住民のは「平均可処分所得」だが、農村部住民のは「平均収入」
   農家では、現金収入の約3分の1を次年度の耕作のための種・肥料等の購入に充てざるを得ない。

「都市と農村の表面的な所得格差は、統計的に3倍程度と公表されているが、実質的な格差は、その10倍、すなわち30倍ほどあると内々報告されている。」 
2006/8/8 
杉本信行著 「大地の咆哮 元上海総領事が見た中国」

・これに対して、政府は一連の措置を取ってきた。
 都市・農村間の格差を縮小するために、「三農」(農民、農村、農業)への支援を強化
 西部地域と東部地域との格差を縮小するために、西部大開発などの戦略
 都市部の最低生活保障制度を制定し、最低賃金制度を実施
 過大な収入の調整には、個人所得税の徴収を強化

・ この問題を根本的に解決するためには、次の措置を取るべきだ。
 第一に、順調かつ急速な発展を実現し、国民経済の総量を大きくし、これをしっかりと配分する必要がある。
 第二に、収入分配制度を含むさまざまな改革を深化させ、分配制度を整えると同時に、
      平等な機会、ルール、プロセスを備えた制度・メカニズムを構築する必要がある。
 第三に、低所得層の収入を引き上げ、中間層を拡大し、高所得層を調整するとともに、
      合法的な所得を保護し、違法所得を取り締まる必要がある。

ーーー

7日の新華社は所得格差に関して面白い記事を載せている。

それによると、裕福な都市住民の間で、永年の「一人っ子政策」を無視して、罰金を払って多くの子供をもつ人が増えており、10%のひとは3人も子供を持っていることが、最近のNational Population and Family Planning Commission の調査で判明した。

1970年代に制度が決められた当初は、貧しい農民が制度を守らないのではとの懸念があったが、最近は金でなんでも出来るとする都市の’nouveau riche にわか成り金)が政府の頭痛の種となっている。

政府は違反者に罰金を課し、省によっては罰金は地域の平均年収の6にも達するが、効果は見られず、金持ちの特権として民衆の怒りをかっている。

 

付記(2007/3/17補足)

全人代は8日、第二回全体会議を開き、「中華人民共和国企業所得税法(草案)」が正式に審議段階に入った。
16日、閉会。
物権法と企業所得税法は圧倒的多数の賛成で可決された。
胡錦濤国家主席は第62号、第63号主席令に署名し、両法律が公布された。
物権法は2007年10月1日から、企業所得税法は2008年1月1日からそれぞれ施行される。

  2006/12/28 「中国、法人所得税率を統一、一律25%へ」参照 


2007/3/14 インドのRelianceIPCLを吸収合併

インド最大の私企業で石化業界のリーダーのReliance と、石化業界第二位の Indian Petrochemicals Corporation Limited IPCL)の取締役会は10日、それぞれ、Reliance IPCLの統合を承認した。

Reliance は石油・ガス、石油製品、石油化学に多角化し、内外で事業の拡大を図っている。
2002年にインド政府の民営化方針に基づき、IPCLの政府持分26%を買収し、その後、20%を追加取得し、46%を所有している。

同社はまた、
2004年に採算悪化を理由に石油化学プラントの稼働を中止していたNOCIL(National Organic Chemical)から石油化学と樹脂事業を買収した。

海外では2005年8月には、失敗はしたが、BPの石化子会社 Innovene 買収(80億ドル)のためのDue diligence を実施している。
現在、
Jamanagar経済特区に新しく石化コンプレックスを建設することでダウと交渉をしており、ダウが参加する場合には、見返りにダウの米国の石化事業への参加を求めているといわれている。GEプラスチックやダウの買収を狙っているとの噂もある。

 2007/1/16インドの Reliance Industries 
 2007/3/2 「Dow 買収説

RelianceはJamnagar に製油所、Haziraにナフサクラッカー、NarodaPatalganga に合成繊維等のコンプレックスを持っている。
Haziraのエチレン能力は75万トン。

IPCL Baroda にナフサクラッカー、Gandhar Nagothane にガスクラッカー(合計エチレン 875千トン)を持つ。
同社はまた、
2005年にポリエステルメーカー社を同社に統合し、ポリエステルメーカーになった。

Reliance は統合により、規模拡大を図るとともに、IPCLへの原料(天然ガス、ナフサほか)供給等も行う。

統合後の全社能力は下記の通り。 (千トン)

  Reliance IPCL 合計
Ethylene 750 875 1,625
Propylene 365 225 590
Paraxylene 1,856 48 1,904
PP 1,150 195 1,345
PE 450 555 1,005
PVC 325 205 530
PTA 1,350    ー    1,350
Polyester Staple Fibre 550 126 676
Polyester Filament Yarn
Partially Oriented Yarn
523 266 789

ーーー

各コンプレックスの概要 (千トン)

Reliance
  Hazira
ナフサ
エチレン  750
PE  360
PP  360
Aromatics  350
MEG  340
PVC  160
VCM  160
PTA  700
PET   80
POY  120
PSF  160
PFF   30
 : IPCL
  Baroda
ナフサ
Gandhar
  (ガス)
Nagothane
  (ガス)
エチレン   175   300   400
ブタジェン    54    
ベンゼン    55    
LDPE    95      80
LLDPE/HDPE       220
HDPE     160  
PP   100      60
PPCP    35    
PBR    60    
PVC    55   150  
VCM     170  
塩素     115  
EO        50
EG        5
ブテン-1        15

Relianceの他の工場の概要は以下の通り。。

Jamnagar に新設する製油所の隣には年産27百万トンの製油所があり、石化原料のナフサ、芳香族とPPを生産している。
PPは当初の3系列77万トンに、2006年第4系列28万トンが加わった。
同じく27百万トンの新製油所では100万トンのPPを新設する。

PatalgangaではPTA、ポリエステル繊維、LAB等を生産。
Naroda インドで最も近代的な繊維のコンプレックス。

ーーー

IPCLは
2005年にポリエステルメーカー6社を統合した。

会社 立地 製品  能力(t)
Recron Synthetics Allahabad PFY    66.,000
India Polyfibres Barabanki PSF    40,000
Orissa Polyfibres Dhenkanal PSF   35,000
Appollo Fibres Hoshiarpur PSF   51,681
POY  14,870
PFF (Conjugate)  28,330
PFF (fibrefill)  10,630
Chips  14,600
Central India Polyesters Nagpur POY  45,000
Silvassa Industries Silvassa PFY 141,000
PTT    600



2007/3/15 産業再生機構 解散

産業再生機構は3月15日で解散することが決まった。

産業再生機構は2002年11月の総合デフレ対策で打ち出された期限付きの新組織で、2003年4月10日施行の「株式会社産業再生機構法」に基づき設立され、5月に業務を開始した。
再建可能な企業向けの不良債権を主に主力銀行以外から買い取って、主力銀行と一緒になって経営再建を支援するのが仕事である。
もし、解散時に赤字であれば、国民負担となる。

3月2日のスカイネットアジア航空の支援終了で、同機構が発足以降に手がけた41件の支援はすべて終わり、法律で決められた解散期限より1年早く解散する。
機構はこれまでに約1兆円を企業支援に投じたが、再生後の株式売却益などで300-500億円の利益剰余金が出る予定で、国民負担は生じない。解散時に残った財産は、国庫と出資者である預金保険機構、農林中金に分配されることとなっているが、全額国庫納付とする案が有力になっているという。

対象41社は以下の通り。

支援決定 社名 業種 完了
2003/8/28 うすい百貨店 卸売・小売 2005/11/30
2003/8/28 ダイア建設 建設・不動産 2005/8/10
2003/8/28 九州産業交通 運輸 2005/12/20
2003/9/1 三井鉱山 鉱業 2006/3/17
2003/9/26 マツヤデンキ 卸売・小売 2004/11/10
2003/9/26 明成商会 化学品専門商社 2005/3/31
2003/10/24 津松菱 卸売・小売 2005/5/20
2003/10/31 八神商事 卸売・小売(医療用品) 2005/1/31
2003/12/19 富士油業 鉱業(石油油脂製品販売) 2005/10/3
2004/1/28 金門製作所 ガス・水道メーターほか 2006/3/31
2004/1/28 大阪マルビル 建設・不動産 2004/12/17
2004/2/16 カネボウ   2005/12/16
2004/4/27 フレック 卸売・小売(スーパー) 2004/8/31
2004/5/17 大川荘 観光 2005/4/28
2004/5/20 タイホー工業 工業薬品類 2006/1/25
2004/6/4 ホテル四季彩 観光 2006/4/28
2004/6/4 ミヤノ 工作機械及び機械器具 2006/8/22
2004/6/25 スカイネットアジア航空 運輸 2007/3/2
2004/7/13 アメックス協販等 2006/11/10
2004/7/21 栃木皮革 皮革 2006/10/16
2004/8/6 オーシーシー 通信ケーブル 2006/8/8
2004/8/30 フェニックス 卸売・小売(スポーツ用品) 2005/12/27
2004/8/31 服部玩具 卸売・小売 2004/12/22
2004/9/28 粧連 卸売・小売(化粧品) 2005/1/14
2004/9/28 大京 建設・不動産 2005/4/8
2004/11/26 関東自動車 運輸 2006/5/30
2004/11/30 三景 卸売・小売(服飾服資材卸売) 2005/12/30
2004/12/8 あさやホテル 観光 2006/4/28
2004/12/8 金精 観光 2006/4/28
2004/12/8 田中屋 観光 2006/4/28
2004/12/24 玉野総合コンサルタント 建設コンサルタント 2005/5/31
2004/12/28 ダイエー 卸売・小売 2006/11/10
2004/12/28 ミサワホームホールディングス 建設・不動産 2006/3/31
2005/1/18 オグラ 菓子卸売 2005/6/30
2005/1/18 宮崎交通 運輸 2006/10/27
2005/1/18 鬼怒川グランドホテル 観光 2006/4/28
2005/1/18 鬼怒川温泉山水閣 観光 2006/4/28
2005/1/18 アビバジャパン パソコン教室 2005/2/28
2005/2/3 釜屋旅館 観光 2006/5/29
2005/2/3 金谷ホテル観光 観光 2006/4/28
2005/2/3 奥日光小西ホテル 観光 2005/11/28

中小企業が多く、大口はダイア建設、三井鉱山、カネボウ、大京、ダイエー、ミサワホーム程度である。

このうち、ダイエーは経営陣が最後まで独自の再建案にこだわったが、監査法人の決算不承認通告でようやく再生機構に依頼した。

また、三井鉱山の場合は、機構が大口の支援実績づくりを望んだためか、十分調査せずに支援策を発表し、その後に追加の評価損が出て、新たな支援策を発表するという事態になった。

なお、初めに、国民負担は生じないとしたが、実は政府機関による多額の債権放棄があり、国民負担が生じている。
三井鉱山の100%子会社の三井石炭は1997年3月に三池鉱業所を閉山、国内炭採掘事業から撤退し事業活動を中止していたが、炭鉱閉山に伴う政策的支援として、経済産業省所管の新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が642億円の融資をしていた。
NEDOは、このうち525億円を債権放棄している。NEDO自体は債権放棄に反対したが、政府系金融機関は再生機構の要請に協力しなければならないという「協力規定」により、最終的に放棄した。

各社の支援会社は以下の通り。

ダイア建設 レオパレス21
三井鉱山 大和証券プリンシバル、新日本製鐵、住友商事
大京 オリックス
ダイエー 丸紅、アドバンテッジパートナーズ
ミサワホーム トヨタ自動車、NPF−MG投資事業、あいおい損害保険

カネボウに関しては、2007/3/6 「カネボウ・トリニティ、社名をカネボウからクラシエに変更」 参照

ダイエーについては3月9日、イオンとの提携が決まった。イオンはダイエーの丸紅からダイエー株15%を、ダイエーから食品スーパーのマルエツ株20%取得し資本参加するほか、ダイエーに役員数人を派遣する。

付記

三井鉱山は2009年4月1日に「日本コークス工業」と改称する。

新日本製鐵、住友商事との資本・業務提携の強化、2008年3月期の期末配当、優先株式の処理方針を策定するなど、再生が完了するため。


続く

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