ブログ 化学業界の話題 knakのデータベースから 目次
これは下記のブログを月ごとにまとめたものです。
最新分は http://blog.knak.jp/
ダウは5月21日、中国の国有石炭最大手・神華集団との間で、陜西省楡林市にワールドスケールのCoal-to-Chemicals コンプレックスを建設するための詳細FS実施の契約を締結した。
2004年12月に神華集団との間でFS共同実施の契約を結んでいる。
神華集団は1995年に設立された国有企業で、世界8大炭田の一つとされている神府東勝鉱区の開発・運営を担当しており、関連事業として鉄道、発電、貯炭設備、輸送設備を運営している。
計画では
"clean
coal" technologies を使用し、石炭からメタノール、メタノールからエチレンとプロピレンを生産する。電解設備も建設し、苛性ソーダ、VCM、有機塩素等を生産する。
このほか、誘導品としてグリコール類、アミン、溶剤、界面活性剤、アクリル酸と誘導品、プロピレン誘導品などが計画されている。
ダウの中国での活動については
2006/8/23 中国でのダウの活動
ーーー
このところ、ダウは相次いで海外の大プロジェクトを発表している。
ダウは4月18日、リビアの国営石油会社(NOC)とJVを設立し、NOCのRas
Lanuf コンプレックスの石化コンプレックスを拡張・運営すると発表した。
2007/4/25 Dow、リビアに石化JV設立
5月12日にはダウとサウジアラムコは、世界最大級の化学品・合成樹脂のコンプレックス(ラスタヌラ総合計画)の建設・運営についての詳細覚書を締結したと発表した。
2007/5/15 アラムコとダウ、世界最大級の石油化学コンプレックス建設
ーーー
ダウは昨年3月に、基礎部門の強化を”Asset Light"戦略(JV化)を通して行う方針を明らかにした。他社と新しいJVをつくるだけでなく、場合によっては既存の設備を出してJVにすることも行うとした。
2007/2/3 ダウ、PSとPP事業のJV化を検討
Kuwait Petroleum Corporation と50/50JVのMEGlobalを設立してダウの設備を出したのが例である。
2006/5/31 「湾岸諸国の石油化学ー1」 参照
タイでのサイアム・セメントとのJVもこの一環である。
2006/10/24 「ダウ、アジア進出を促進」 参照
国内では4月10日に、既存のPS事業をJV化する計画を発表した。
Chevron Phillips
Chemical
との間で北南米のSM/PSの50/50JV設立のMOUを締結した。今後、Due
diligenceを行う。
2007/4/11 Dow、Chevron PhillipsとSM/PSのJV設立
引き続き、PP事業についてもJV化を検討している。
ーーー
Dowには買収説や基礎部門の分離・JV化説が飛び交っていたが、基礎部門での大プロジェクトが次々と発表されるのから見ると、そのような話は消えてしまったように思われる。
2007/3/2 Dow 買収説
2007/3/19 Dow JV説
なお、ダウは4月12日に、役員2人が、Dowの行動基準に極めて不適切に、また明らかに違反し、会社の被買収に関して第三者に話をしたとして解雇したと発表した。
Dow買収説で、Kohlberg Kravis Roberts が半分、中東のSaudi
Arabia、Kuwait、Bahrain、Qatar、UAE、Oman の投資家が残り半分を出資して過去最高の500億ドルで買収するという報道がなされた直後である。
2007/4/13 速報 Dowが買収情報漏えいで役員を解雇
これに関して5月8日、会社側、役員側がともに訴訟を行った。
会社側は報道の翌日にその役員が中東資本の代理人を務める銀行のCEOと会談したことが分かったとしており、会社の規則に違反したとして、株オプション等の返却と、雇用契約不存在の確認を求めている。
役員側はそれを否定し、何ら規則に違反していないとして、損害賠償を求めている。
2007/5/22 BP事故に関する米化学物質安全性委員会報告
米化学物質安全性委員会(U.S. Chemical Safety Board :CSB )のMerritt
委員長は5月16日の下院の小委員会で、BPのTexas City 工場の爆発事故と同社のPrudhoe Bay のパイプライン腐蝕、原油漏れ事故とには驚くほどの類似点があると証言した。
CSB自体はPrudhoe Bay については調べていないが、BPの内部報告書をレビューした。
証言の詳細 http://www.csb.gov/news_releases/docs/MerrittEnergyCommerceTestimony5.16.07.pdf
ーーー
2005年3月23日、Texas City, Texas
のBP のTexas City
製油所で爆発・火災事故が起き、15名が死亡、100名以上が負傷した(内70名が従業員及び請負業者。残りが周辺住民で、飛散したガラスやタイルによる負傷)。
事故はガソリンのオクタン価を上げる設備を2週間かけて補修した後の再スタート時に発生した。
アイソマーのラフィネートスプリッターのベントスタック先端から透明な液体が噴き出し、蒸気が地表近くに蓄積し爆発した。
瓦礫の中に、トレーラーと乗用車やトラックを含む約 30台の車の残骸があった。製油所の補修工事に従事している多くの請負業者が、爆発に無防備なトレーラを仮事務所等に使用していた。
ーーー
2006年8月、BPはアラスカのプルドー湾油田のパイプラインに深刻な腐食と小さな原油漏れを発見し、プルドー湾の油田の操業を停止した。
20万ガロン以上の原油が漏れたが、パイプラインは数年間にわたってメンテナンスを行わず、広範な腐蝕が見つかった。
同油田はBPがConocoPhillips、ExxonMobil
と所有権を共同保有するもので、日量40万バレル、米国内原油生産量の約8%を占める。
2006年8月28日 プルドー湾油田の操業停止ーBPとStandard Oil
ーーー
CSBの委員長によると、Prudhoe Bay 事故で明らかにされた7つの根本原因はTexas City事故でも見られる。中でも、BPの意思決定に予算と生産の圧力が強く反映され、安全性が極めて損なわれているとしている。
Prudhoe Bay事故では「逸脱」が常習化し、リスクレベルが次第に上がっていったが、Texas Cityでも異常なスタートアップが調査されないまま常習化し、重要な機器の故障も放置された。
事故の当日も蒸留装置の重要なアラーム(6つ)、機器、コントロール機器が正常ではなかった。安全性のレビューなしに多くのトレーラーが危険な場所に置かれていた。
Prudhoe Bay事故の内部報告書の指摘後も、補修やメンテナンスの改良は見られない。
その他、共通する問題点として、過去の教訓が正しく伝えられていない、安全性に関しての過度の分権化、トップの頻繁な交代などを挙げている。また、BPはこれまで人的安全には熱心であったが、プロセスの安全には注目せず、結果として大事故が発生したとする。
ーーー
CSBは米国の化学品事故の調査のための独立政府組織で、本ブログではFormosa Plastics の2つの爆発事故の報告を取り上げている。
2006/8/7 米工場爆発事故の調査結果
2007/3/12 米国Formosa PlasticsのPVC工場爆発事故の調査結果
2007/5/22 速報 GE、GE PlasticsをSABICに116億ドルで売却
GEは21日、子会社のGE Plastics をサウジのSABICに現金116億ドル+借入金で売却する契約を締結したと発表した。今後、当局の承認などの手続きを経て、本年第3四半期に取引完了する。
GEは売却で税引き後に約90億ドル(1兆円超)の収入を得るが、同社はこれを主に自社株購入に当て、2007年の60億ドルの購入計画を70〜80億ドルに増やす。
2007/5/19の速報では以下のように伝えた。
17日付けのWall Street Journal はGEがGE Plastics をSABICに110億ドルで売却間近と伝えた。
同紙はまた、昨年にDubai の会社が米国の港湾設備を買収する計画が安全保障の観点で潰されたが、本件については政治問題にはならないとしている。ロイターはBasell がGE Plastics 買収から離脱していると報じた。
また、その結果として、Basell と Lyondell の合併の可能性が出てきたともしている。
(既報の通り、Basell のオーナーのAccess Industries の会長が Lyondell 株式を購入したが、今後、同氏 or Basell が GE Plastics と Lyondell の両方の買収はさすがに無理である。)10日付けのBloomberg は、GE Plastics の売却先がApollo, Sabic と Basell の3社に絞られたと報じていた。
本件については下記を参照。
2006/9/21 GE、シリコーン事業を売却
2007/1/11 GEがGEプラスチックスを売却か?
2007/1/22 GEについて
2007/2/13 GE Plastics、中国のPC計画延期 (売却と関連か?)
2007/4/2 GE Plastics 争奪戦にSABICも参戦
GEプラスチックス:
GEプラスチックスは、Jeff Immelt 現会長やJack Welch
Jr. 前会長の出身事業部で、製品には変性PPE、PC、PBT、PEI
(polyetherimide)、ABSやそれぞれのアロイ、及びLNP
コンパウンド(川鉄から買収)がある。
1953年にポリカーボネート樹脂を開発して以来、エンプラ・トップメーカの地位を維続するとともに、現地化を積極的に推進している。
日本では日本GEプラスチック(GE 51%、三井化学
41%、長瀬産業 8%)が変性PPO、ポリカーボネートなどを製造、販売している。
GE:
GEは1月19日に第4四半期結果を発表したが、その中でプラスチックス事業の処分を検討していることを正式に明らかにした。
発表のなかで、GEのJeff Immelt 会長兼CEOは次のように述べている。
「我々はleadership businessへの投資戦略を継続して実行する。我々の狙いはより速い成長、より高い利益である。本年に入り、原油・ガス、ヘルスケア、航空という成長プラットフォームでの150億ドルの買収を発表した。逆に成長が遅く、変動の激しい事業からの撤退を続ける。現在、プラスチック事業の処分を検討中である。」
・ | 2006年9月14日、GEはシリコーン事業のGE Advanced Materials をApollo
Management, L.P. に38億ドルで売却すると発表した。 GEは1971年に東芝と設立したGE Toshiba Silicones、1998年にBayerと設立したGE Bayer Silicones の2つのJVを持つが、両社からJV持分を買い取ってGE 100%とした上で、本体とともにApollo に売却する。 |
・ | GEは今年に入り、1月8日にJPモルガン・パートナーズなどの投資ファンドから、原油・ガス採掘関連機器のVetco Gray を19億ドルで買収すると発表した。石油・ガス産業でのGEの存在を拡大するもので、インフラストラクチャー部門の強化となる。 |
・ | 1月15日には自動車・航空部品大手の英スミス・グループの航空宇宙部門Smiths Aerospace を48億ドルで買収することも決めた。この買収はGE Aviation 部門の民間機及び軍用機用エンジンに、Smith の飛行管理システムその他を加えることにより、この分野での活動を高める効果がある。 |
・ | さらに1月18日に米医薬大手のアボット・ラボラトリーズの診断機器部門の一部を81億3千万ドルで買収すると発表した。アボットの診断事業のうち試験管を使った血液検査機器などで、アボットの糖尿病治療ビジネスやエイズ検査に使う分子診断薬などは含まれない。 |
売却候補:
GE Plastics
売却情報で多くの会社が買収を希望した。
投資会社では、Blackstone はKoch Industries (DuPontのTextiles
& Interiors 部門のINVISTAを買収)と組み、Carlyle
は投資会社のTexas Pacific Group と、KKR もBain Capitals(Rhodia
のフェノール事業を買収、イスラエルDor Chemicalsに出資)
と組んだ。昨年、GE Silicones を買収したApollo
Management も買収に手を挙げた。
化学会社ではBasell、SABICのほか、インドの Reliance
Industries も手を挙げた。
5月10日付けのBloomberg は、GE Plastics の売却先がApollo、Sabic
と Basell の3社に絞られたと報じていた。
SABIC:
SABIC は2002年にSABICが22.5億ユーロでDSMの石化部門を買収しているが、昨年には7億ドルでHuntsman
の欧州汎用品事業を買収した。
その際、SABIC副会長は、それがSABICがグローバルに拡大する意思を示すものであるとしていた。
今回の買収で同社は欧州に次ぎ、北米に進出するとともに、エンプラなどの高機能樹脂も手に入れることとなる。
同社はまた、中国とインドへの進出を狙っている。
付記
European Commission は8月3日、SABICによるGE Plastics 買収を承認した。
GE Plastics はSABIC Americas の下のSabic Innovative Plastics となる予定。
2007/5/22 信越化学、直江津のセルロース製造設備の生産再開
信越化学は21日、3月に事故を起こした直江津工場のセルロース製造設備について、安全対策工事を完了し、監督官庁の許可を得られたものから、順次操業を再開すると発表した。
設備の調整や製品の品質試験などを経て、6月初めにも顧客に製品の出荷を始める。
[1]操業再開のセルロース製造設備:
5月21日付けで使用停止命令解除
以下の製造設備より順次操業を再開。
・HP工場
・L−HPC工場
・MC−W工場
[2]上記以外のセルロース製造設備:
・事故が発生したMC-U工場については操業再開の目途は立っていない。
・MC−V工場は、監督官庁への手続きなど、操業再開に向けた準備を進めている。
なお、現在のところ、事故原因の特定には至っていないとのこと。
参考:
2007/3/22 信越化学 爆発事故
2007/4/16 信越化学 爆発事故のその後
付記 2007/9/6
信越化学は6日、ドイツのSEタイローズ社に医薬品用の製造設備を新設すると発表した。能力は年4千トン程度。
直江津でも2008年10月に医薬品用を増産する。
総投資額は約300億円。
2007/5/23 PetroChina、陝西省延安でエチレン100万トン計画
PetroChina は13日、陝西省政府との間で延安(Yan'an)での大規模エチレン計画の契約を締結した。
延安のエチレン計画は能力100万トンで、建設費は26億ドル。PetroChina
と陝西省政府のJVが建設・運営する。
PetroChinaがマジョリティを持つが、出資比率やスケジュール、誘導品能力は明らかにされていない。
付記
陝西延長石油とPetroChinaの合弁で、100万トンのナフサクラッキングのほか、75万トンのPEや35万トンのPPも含まれる。
投資額220億元で陝西省延安市の洛川に建設される。
しかし、国家発展改革委員会は同事業を第12次5ヵ年計画期(2011〜2015年)に先送りした。具体的な建設スケジュールは未定のまま。
ーーー
PetroChina総経理と陝西省の省長はとも に、本協定は両者が石油産業一本化戦略を進めていく重要な一部で、陝西省の資源優位を活用し、国家経済成長によるエチレン需要を満たし、同省とその周辺部の関係産業をけん 引することに重要な意義をもつと評価した
陝西省北部は石炭、石油、天然ガス、塩の資源が豊富で、石油化学工業を進めていく基盤を築き上げている。
協定により、双方は延安で企業登録を扱い、「公司法」により進める。詳細は
双方が話し合って決定するがPetroChinaが持株会社にする。
PetroChina は陝西省の延安近郊に長慶(Changqing)油田を、また咸陽(Xianyang)に製油所・長慶石油化学を持っている。
一方、陝西省政府は2005年10月に、陝西省北部地域における石油資源の統合を推進するため、石油探鉱開発企業21社(陝西省の所管する石油開発会社7社、陝西省北部各区・県の所管する石油開発会社14社)ならびに製油所3社(延煉集団、永坪精油所、楡林製油所)を統合し、全額出資企業「陝西延長石油(集団)有限責任公司(Shaanxi Yanchang Petroleum Group
Co.)」を設立した。
統合により同社は、PetroChina, Sinopec、CNOOCに次ぐ中国第4位の石油会社となった。
中国における原油生産シェア(2004年ベース)
PetroChina 59% Sinopec 22% CNOOC 9% 陝西延長 4% 外資ほか 6%
陝西省は中国で最も古い産油地帯であり、中華人民共和国設立前から石油の生産が行われていた。
延長油田は、陝西省北東部部(延安市東方約50Km)に位置しており、延長(Yanchang)油田の他、小規模油田群の総称である。
長慶油田は、オルドス盆地中・西部に位置しており、陝西省だけではなく、甘粛省、寧夏回族自治区に位置している。馬嶺(Maling)油田の他、小規模油田群の総称である。
なお、PetroChina
の製油所・長慶石油化学は西安の西の咸陽にあるが、PetroChina長慶油田公司は昨年11月に北は甘粛省慶陽市の西峰油田から、南は咸陽の長慶石化までの慶咸原油輸送パイプラインの利用を開始した。
同社は陝西、甘粛、寧夏を結ぶ陝西靖辺−咸陽、陝西靖辺−寧夏恵安堡の原油輸送パイプラインの建設を終えており、隴東、安塞、靖安、靖綏など長慶油田公司の中堅油田の原油が、環状パイプラインを通じて、北の寧夏、西の蘭州、南の陝西まで送られることとなる。
PetroChina と陝西延長の石油生産量は以下の通り。
2004年 石油生産量 (単位:万トン) | ||||||||||||||
|
原油処理については、PetroChinaの長慶石油化学は昨年290万トンの原油を処理しており、陝西延長石油グループは970万トンの原油を処理している。
このため、新エチレン計画の原料ナフサは両社の既存製油所から供給を受けることが出来る。
本計画は中国の現在の5ヵ年計画には含まれておらず、次期計画に含まれることとなるため、スタートは2010年以降となる。
本計画については、(1)中国政府が陝西省を含む西部地域の開発を重視していること、(2)PetroChinaがSinopec
に対抗して石油化学事業拡大に熱意を持っていることから、本計画の承認は間違いないと見られている。
2007/5/24 中国・田湾原子力発電所 1号機 商業運転、2号機 試運転開始
中国核工業集団公司は、江蘇省の田湾原子力発電所の2号プラントが14日夜
試運転に成功したと発表した。年末に商業運転を開始する予定。
1号プラントは既にフル稼働に入っており、17日に本格的な商業運転を開始した。
田湾原発は、これまでに中国とロシアが協力した最大の技術経済提携事業で、ロシアのAES-91式加圧水型炉(PWR)を採用し、1、2号機それぞれ106万kw と、単体では中国最大の出力を持つ。
中国の原子力開発は1955年に中ソ原子力協力協定の締結で始まったが、中ソ対立のため、ソ連は1960年に中国から引き上げた。これを契機に中国は独力で原爆開発を進め、原子力の軍事利用技術を確立した。
中国最初の原子力発電所である秦山1号機は31万kWのPWRで、中国が独自に設計・建設し、1994年4月に営業運転を開始した。
広東の大亜湾原子力発電所はフランスのフラマトムに発注したもので、1994年に営業運転を開始した。
第9次5カ年計画に基づき、広東嶺澳発電所、秦山第2期・第3期工事、田湾発電所を建設し、田湾を除いて全て2005年までに営業運転を開始した。2005年12月末現在運転中の原子炉は合計9基、700万kW。
このうち、泰山第3のみCANDU(カナダ型重水炉)で、タービンは日立が供給した。他はすべてPWR(加圧水炉)。
このほか、広東省の嶺澳第2と陽江が着工しており、浙江省の三門と泰山第2の3号機、4号機が計画されている。
なお、2004年の中国における発電の内訳は次の通り。
石炭火力 | 82.6% |
水力 | 15.0% |
原子力 | 2.3% |
再生可能エネルギー | 0.1% |
中国の原子力発電所は以下の通り。
|
資料
http://mext-atm.jst.go.jp/atomica/14020303_1.html
http://www.fnca.jp/pi/workshop2005_img/2005_02.pdf
付記
2007/5/22、原子力発電技術を統括する国家核電技術公司が国務院の正式認可を経て発足した。
国務院、中国核工業集団公司、中国電力投資公司、中国広東核電集団公司の4者共同出資で、資本金40億元のうち60%を国家が出資した。
国務院に代わり、国家を代表して外国との契約を行い、第3世代の先進的原子炉技術の移転を受け、関連プロジェクトの設計や管理を行う。また、技術を吸収し、新たな中国の原子力発電技術ブランド形成で主体的役割を担う。
2007/5/25 INEOS、Norsk Hydro からポリマー事業を買収
INEOS は21日、Norsk Hydro からポリマー事業のKerling 社(旧称 Hydro Polymer)を670百万ユーロで買収する契約を締結したと発表した。
Norsk Hydro はエネルギーとアルミを中心事業と考え、Hydro Polymer については切り離して上場するか、又は売却するかを考えていた。
2005年5月の株主総会の承認を得て、上場を前提にHydro Polymerの社名をKerling ASA と改称した。kerling は古代ノルウェー語で老女の意で、バイキングの船のマストを支える大きな木の塊のことである。
しかし、その後も上場の決断が出来ず、現在もNorsk Hydro の100%子会社である。従業員は1200人。
電解からVCM、PVC、コンパウンドを中心事業としており、欧州で4位のPVCメーカーである。
買収したINEOSは2001年にICIとEniChemの塩ビJVのEVCの過半を買収、2005年にEVCを100%買収している。
2006/6/14 事業買収で急成長した化学会社
今回の買収で、INEOSはクロルアルカリ、PVC、コンパウンド分野の強化を図る。
付記
Norsk Hydro はQatar Vinyl の29.7%の株式も売却対象としたが、Qatar Petroleum に優先権があるため、INEOS には売却できなかった。
2008年8月、Qatar Petroleum への売却が完了、 Polymers 事業から完全撤退した。
欧州のPVC能力 (Norsk Hydro 2007/2報告 単位:千トン) |
||||||||||||||||||||||
|
Kerlingの生産拠点は以下の通り。(能力:千トン 若干古く、現状と異なっている可能性がある)
国 | 社名 | 塩素 | ソーダ | VCM | e-PVC | s-PVC | コンパウンド |
ノルウエー | Kerling | 130 | 140 | 470 | 25 | 125 | |
スエーデン | Kerling | 116 | 131 | 140 | 58 | 144 | |
Hydro Sydplast | ◎ | ||||||
英国 | Kerling | 245 | 125 | ||||
(JV) | |||||||
中国 | Suzhou Huasu Plastics | 130→330 | |||||
カタール | Qatar Vinyl Company | 300 | 336 | 279 | |||
ポルトガル | CIRES | 200 |
他に、ノルウエーにBorealis
との50/50JVのエチレンメーカー
Noretyl AS を持つ。
(エチレン 550千トン、プロピレン 80 千トン)
付記 2007/6
Borealis はノルウエーの設備及びNoretyl の持分をIneos に売却した。
このため、NoretylはIneos 100% となる。
Suzhou Huasu Plastics
Westlake Chemical
のオーナーの台湾のT.T. Chao Group とNorsk Hydro
その他のJV。
江蘇省太倉にPVC、PVCフィルムの工場を運営。
Norsk Hydro 31.8% 出資。
2004/12にPVC 200千トンの増設計画を発表した。
Qatar Vinyl Company (電解、EDC、VCMのJV)
株主 The
Qatar Petrochemical Company (QAPCO) 31.9%.
Norsk Hydro 29.7%
Elf Atochem 12.9%.
Qatar General Petroleum
Corporation (QGPC) 25.5%
(QAPCO80%、Elf Atochem 10%、Enichem 10%)
CIRES
信越化学とのPVCのJVで、Norsk Hydro 26%出資
ーーー
なお、同日、INEOS ChlorVinyls はペーストPVC事業をVinnolit GmbH & Co. KG. に譲渡する契約を締結した。
英国のHillhouseとドイツのSchkopauのペーストPVC工場を併せ譲渡し、イタリアのPorto Torres 工場で生産するペーストPVC全量の引取り権も譲渡した。
英国のRuncorn とBarry、ドイツのWilhelmshaven とSchkopau、イタリアのPorto Marghera, Porto Torres、Ravenna 各工場のVCMとサスペンジョンPVC事業は当然維持する。
Vinnolit はヘキストとワッカーのJVであったが、2000年に投資会社のAdvent International Corporation が 買収した。
アメリカのクロルアルカリメーカーのOlin Corporation は21日、同業のPioneer の買収を発表した。取得価額はネットで411百万ドル。
これにより、Olin
は北米クロルアルカリの4位から3位にアップするとともに、カナダ東部やアメリカ西部などにも地域を拡大する。
また、Pioneer は北米最大の工業用漂白剤メーカーでもある。
両社の電解工場と能力は以下の通り。(地図にはPioneer の漂白剤工場所在地も表示)
(Nevada のHenderson工場は元
Stauffer Chemical の工場)
* Sunbelt
Chloralkali はPolyOne
(旧 Geon) |
Olin社はクロルアルカリのほかに、銅合金とWinchester
印のスポーツ用銃弾の事業を行っている。
クロルアルカリについては塩素、苛性ソーダとも外販している。
Olinは以前はTDIの米国でのトップメーカーであったが、MDIを持たず、ポリオールのためのPOも持たないため、1997年にTDI
と ADI イソシアネート事業をARCOに565百万ドルで売却した。
Olin はこの売却収入で自社株購入、借入金返済を行ったほか、DuPont
との50/50JV(Niachlor)であったNiagara Falls
工場を買取った。このほか、アラバマ工場内に、PVC分野での主需要家のGeonとの50/50JV(Sunbelt)を設立している。
なお、同社は日本では旭硝子とのJVの旭オーリンを設立して旭硝子 鹿島工場内でPPGを生産していたが、Olin の事業売却に伴い、旭硝子100%の旭硝子ウレタンとした。
1999年にはスペシャリティケミカル事業をスピンオフし、Arch Chemicals として独立させた。
ーーー
同社の発表によると、北米のクロルアルカリメーカーの状況は以下の通り。
1位はダウ。
なお、2位のOccidental、3位のPPGや、Olin 等、未だに水銀法電解が残っている。
SABICによるGE Plastics 買収が決まり、次の買収の噂がいろいろ出ている。
1)Dow/DuPont
びっくり仰天のニュースである。
5月25日のNew York Times は、米国証券取引委員会(SEC)が、ダウを解雇された2人の役員が会社を買収対象とすることで株価の操作をしたのではないかどうか調査を開始するが、同時に、昨年秋の件も調査する模様と伝えた。
表面には出ていないが、昨年秋にDowがDuPont に対し買収提案をしたとのこと。
買収額は400億ドル以上で、実現すれば米国1位と3位の化学会社の合併となる。(2位はExxonMobil)
この提案に対し、DuPontは拒否し、交渉に入らなかったと伝えられている。
本件は表面に出ていないにかかわらず、9月から12月にかけて両社の株は変動し、DuPont株は15%上昇した。
これが事実なら、今後どんなことが起こるか、想像がつかない。
2)Basell/Lyondell
Basell を買収したAccess
Industries の会長 Leonard (Len) Blavatnik がLyondell Chemical の株式 8.3%を「戦略的投資」として購入する契約を締結した。
2007/5/16 Access Industries
の会長、Lyondell Chemical の株式を購入
これにより、Blavtnik が Lyondell を買収し、Basell と合併させるのではないかとの噂が出ている。
Lyondell の CEO はもし買収の提案があれば検討するとしながらも、景気の悪化したときのことを考えると、買収のために80億ドルから100億ドルも資金を貸す側は大変だろうとコメントしている。
ロイターはBasell がGE Plastics 買収から離脱したと報じ、その結果として、(Blavtnik or Basell が GE Plastics と Lyondell の両方の買収はさすがに無理だが、GE Plastics を諦めたことから)Basell と Lyondell の合併の可能性が出てきたともしている。
エチレンやPO/SMに強いLyondell とポリオレフィン世界一のBasell との組み合わせは強力である。
Access
Industries は2005年に57億ドルでBasell を買収している。
2006/6/15 「Basellの買収」 参照
Lyondell
Chemical については下記を参照。
2007/2/26 「Lyondell
とシノペック鎮海煉油化工、寧波で PO/SM 生産」
3)Lanxess/Degussa
以前からLanxess が Degussa を買収するという噂が流れていたが、第1四半期決算発表の席で会長が、2005年1月のBayer からのスピンオフの後、業績が改善し、今や買収により成長する時期にきたとし、買収の候補の幾つかの中にDegussa があることを認めた。
両社には重複事業があまりなく、理想的な相手であり、合併で新しい強力なグローバルプレーヤーとなり、BASFに次ぐ欧州第二の化学会社になると述べている。
会長は更に、Degussaの企業価値は100〜130億米ドルだが、年金や負債等を勘案すると買収額は50〜80億米ドルであろうとしている。
これに対してRAGは、Degussa売却の考えはないとしている。
Lanxessは2004年7月にBayer
がChemicalsの大半と
Polymersの一部を新会社として分離し、2005年に上場した。
2006/9/6 Bayer と Lanxess
Degussaについては下記参照。
2006/12/14 Degussa、上海にMMAコンプレックス建設
4)ICI
DowがICIを買収するという噂が流れた。
2007/4/7 DowがICIを買収?
更に、Akzo Nobel のトップが Coatings
事業で大規模な買収を検討していると述べた。
買収候補がICIでないのかという質問にはノーコメントであった。
これに対してICIの会長は5月23日の株主総会で次のように述べ、Dow やAkzo Nobel による買収説を打ち消した。
2006年はICIにとり80周年であったが、好業績であった。2003年に設定した目標、売上伸び率、利益率向上、資本利益率向上、キャッシュフロー増加、を全て達成した。
2003年の業績悪化に対応するため4年間の長期の縮小均衡策を取ったが、今後は成長路線に転じる。
特に、アジア、東欧、ラテンアメリカの成長市場で積極的に事業を拡大する。
又、コア事業を買収により拡大を図る。
Profit before taxation, exceptional items and goodwill amortisation | |
2006/5 油脂化学、界面活性剤を扱う Uniqema部門 をCroda International に売却
2006/11 Quest部門をGivaudanに売却
2006/11/30 ICI、Quest部門をGivaudanに売却
なお、ICIの抜本的構造改革については下記参照
2006/3/7 ICIの抜本的構造改革
SABICとARAMCOのトップが上海でのフォーラムで24日、両社がそれぞれSinopecとJV交渉を進めていることを明らかにした。
いずれも間もなく発表される予定。
SABICはSinopec天津の新しい100万トンエチレン計画に10億ドルを投資して参加する。
付記
SABICは2008年1月31日、Sinopec との間で、50:50のJVを設立して天津にエチレン誘導品コンプレックスを建設する Heads of Agreement を締結したと発表した。
天津に年産60万トンのPEと、40万トンのエチレングリコールのコンプレックスを建設する。
本計画は当初、ダウケミカルと中国側(SINOPEC/天津市)の50/50
JVとして検討されたが、ダウが経済性を理由に撤退した。
その後、天津市は外資企業の参加を求め、SaudiAramcoやSABICも検討対象となったが、進展はなかった。
SINOPEC天津分公司は2005年末、政府から単独での大拡張計画の承認を受け、昨年6月26日、天津浜海新区の大港石油化学基地で着工した。2009年9月スタートの予定。
既存の500万トンの製油所を1250万トンに拡張し、エチレン100万トンを新設するもので、既存エチレンと合わせ、エチレン能力は120万トンとなる。誘導品は以下の通り。
LDPE 300千トン
HDPE 300千トン(INEOS Innovene S Process)
PP 450千トン
EOG 420千トン(ダウ技術)
その他
2006/7/3 SINOPEC天津分公司の100万トンエチレン計画着工
SABICはその後、参加に熱意を示し、昨年1月のサウジのアブドゥッラー国王の最初の公式訪中を機に、交渉を再開したといわれている。
SABICはこのほか、2004年6月に大連実徳グループと50/50のJVで、大連市の旅順港に50億ドルをかけて、年産1千万トンの製油所と年産130万トンのエチレンコンプレックスをつくる計画をたてた。(その後、エチレン能力を100万トンに落とした。)
2007/1/4 SABIC、大拡張計画
大連の計画は中国の11次5ヵ年計画(2006-2010)にも含まれておらず、当面承認の可能性がない。
中国政府がSaudiAramco
の福建計画の承認で、とりあえずはサウジはお終いとしたとの見方もあった。
天津、大連のいずれの進出計画も一向に進展をみなかったため、SABICの会長のPrince
Saud bin Thunayan Al-Saud は2月25日にメディアの取材に対し、「中国政府が出来るだけ早くプロジェクトを承認することを希望する」「わが社の投資先は中国だけではない。他にもたくさん投資先がある」と述べた。
但し、一方で「中国市場には未来がある。中国への投資は大きなチャンスだ」とも語っている。
なお、SABICはこのたび、北京と深センに事務所を開いた。既存の上海、香港を加え、4事務所となる。
SABIC会長は、中国はSABICにとって戦略的に最も重要な輸出国であり、世界で最も成長力のあるポリマーの市場であるとし、今回の事務所の開所は中国へのコミットメントを示すもので、SABICの新しい石化プラントの製品のほとんどは中国を中心とするアジアに輸出されると述べた。
SABICはこのたびGE Plasticsの買収を決めたばかりで、SABICの大拡張計画は着々と進展している。
ーーー
SaudiAramco はSinopecの山東省青島の製油所に参加する契約書を間もなく締結する。
Sinopecは青島製油所の持分の25%をSaudiAramcoに譲渡するといわれている。
青島製油所は第一期の能力10百万トンで、来年末に商業生産開始の予定。
本年4月に両社は、Aramcoが2010年まで、100万バレル/日の原油を毎年Sinopecとその子会社に供給する覚書を締結している。
今回の青島製油所への参加はAramcoにとっては福建石化計画に次ぐもので、潜在需要の大きい中国への進出を意味し、Sinopecにとっては原油の安定供給の確保に大きな意味がある。
キヤノンは5月25日、今年10-12月に予定していた新型薄型テレビ、SED(Surface-conduction Electron-emitter Display:表面伝導型電子放出素子ディスプレイ)テレビの発売を当面見送ると発表した。
キヤノンが1986年から研究を開始。1999年からはキヤノンの電子源と微細加工技術、東芝のブラウン管技術と液晶・半導体量産技術を結集して共同開発に着手し、2004年10月、合弁会社「SED」を設立。東芝姫路工場を量産拠点とし1800億円の投資を計画した。
2005年8月から月産3,000台を生産し、同年中に両社別々のブランドのテレビとして発売する計画であった。
しかし、ライバルの液晶、プラズマの価格が急落したため、当初の想定より低コストで量産できる技術開発が必要になり、両社は発売時期を2006年春に延期したが、2006年に入り、発売時期を再延期していた。
付記
キヤノンは2010年5月、家庭用SEDテレビの開発を凍結する方針を固めた。
テレビ価格の下落の勢いに製造コスト低減が追いつかないと判断、今後は業務用の開発に注力する。付記
キヤノンは2010年8月18日、「SED」の事業化を断念し全額出資の開発子会社「SED」を9月末で解散すると発表した。薄型テレビの価格下落が進んでおり、採算確保が困難と判断し た。
医療機器向けな どへの研究、開発は継続する。
SEDは薄型テレビ市場の大半を占める液晶やプラズマとは、仕組みが大きく異なる。
液晶は、白い光をカラーフィルターに通して色を表現。
プラズマは、気体を光らせ、その光に反応する蛍光体で色を出す。
SEDはブラウン管と同じ発光原理で、赤緑青の蛍光体に電子線を当てて画像を表示する。
ブラウン管は一つの電子銃が出す電子を偏向ヨークで曲げるために奥行きが厚くなるが、SEDは1つの蛍光体ごとに1つの電子をぶつけるため薄型にできる。画素を区切るワイヤーも不要で、無駄な発熱も防げる。
画質はブラウン管並みに明るく、高コントラストで、原理上は液晶、プラズマより低消費電力とされる。
キヤノン ホームページから |
ーーー
発売延期には2つの理由がある。
第一は売価下落への対応。
両社は重要技術の特許出願をせず、技術を社外に一切出さない方針を徹底したため、主要部品などを外注できず、開発スピードが思うように上がらなかったといわれる。
その間、ライバルの液晶、プラズマは価格が急落、当初1インチ1万円のテレビが最近では3千円に下がっている。
松下は2,800億円をかけて尼崎市にブラズマパネルの国内第5工場を新設し、液晶のシャープも高水準の投資を続け、巨額投資によるコスト削減に突き進んでいる。
第二の問題は、キヤノンに対するSEDの技術に関連する米国訴訟問題である。
キヤノンは1999年に米国の Nano-Proprietary から関連技術のライセンスを受けているが、東芝とのJVの「SED」の扱いに関してNP社は2005年4月にテキサス連邦地裁に提訴した。
訴状では
・SEDカラーテレビは特許ライセンス契約の範囲外である。
・東芝とのJVのSED社はライセンス可能な子会社ではない。
としている。
キヤノンは、同社がSED社株を東芝より1株多く持つため子会社であり、契約に基づいてSED社にもライセンスを移せると主張。
これに対し、NP社は「SED社の意思決定には東芝の同意が必要で、実質的には子会社ではない」と反論した。
キヤノンは「子会社」との判決を求める訴えを米連邦地裁に出したが、棄却された。
このため、キヤノンと東芝は本年1月末に、キヤノンが東芝保有のSED株を買い取り、完全子会社とすることを決定した。 東芝・姫路工場での量産計画も白紙に戻した。
しかし、NP社が契約違反として契約を破棄したため、これでNP社との問題は解決とはならなかった。
5月3日、NP社は訴訟で勝訴したと発表した。陪審は契約違反による当初のライセンス契約の終了を認めた。
これと同時に、NP社は新しい仕組みでキヤノンに対して再ライセンスすることを示唆している。
キヤノンはライセンス契約の終了を認めたことに関して控訴するとし、訴訟の解決と低コスト化技術の確立を早期に進めて、発売時期を改めて決定するとしている。
Nano-Proprietary, Inc.は、100%所有の2つの事業子会社を持つ持株会社で、200以上の特許(申請中を含む)を持ち、技術ライセンスを業としている。
・Applied Nanotech Inc.
:カーボンフィルム/ナノチューブから電子放射への応用分野。
・Electronic Billboard Technology, Inc.:electronic digitized
sign 技術。
2006年5月、同社は三井物産との間で、カーボンナノチューブ技術の商業化のための戦略的提携を発表している。
付記
2007年12月30日の朝日新聞報道
次世代の薄型テレビ「SEDテレビ」について、キヤノンが独自技術で開発に乗り出した。すでに試作段階に入っており、量産技術の開発を経て商品化を目指す。
キヤノンが開発したのは、映像を映し出すために電子を放出する部分を製造する基幹技術。
これまで使うことにしていたナノ・プロプライアタリーの特許では、ガラス基板上に電子を放出する膜を形成し、カーボンで覆っていたが、安定性に問題があることもわかり、キヤノンはカーボン以外を使う手法を開発した。今年5月の地裁判決はキヤノンが契約違反をしていると判断、現在は控訴審で審理中。
付記
2008年9月8日、キヤノンは米連邦控訴審裁判所がNano社との特許ライセンス契約を有効とする逆転勝訴の判決を下したことを明らかにした。Nano社は3ヶ月以内に最高裁に上告できる。
ーーー
SEDテレビがモタモタしている間に次世代の目玉として有機ELが台頭してきた。
ソニーは本年4月、表示装置に有機EL(エレクトロ.・ルミネッセンス)を使い、液晶やブラズマよりも大幅に薄いテレビを世界で初めて年内に発売することを発表した。まず11型で商品化する。
豊田自動織機と折半出資のディスプレー製造会社、エスティ・エルシーディ(愛知県東浦町)でパネルを量産する。
有機ELは電圧をかけると光を放つ有機化合物から成るパネル向け電子材料。
明暗がはっきりとした画面表示が可能で、応答速度が速い。材料そのものが発光するため、画面の背後から光を当てる必要がある液晶や、発光するための空間が要るプラズマに比べて大幅に薄型化できる。
東芝も2009年度末までに有機ELテレビを商品化することを表明、32型で発売を検討する。
先発する液晶TVとプラズマTVも競争は激しい。
2007年の液晶の出荷台数(37インチ以上)は2,270万台と前年の2.2倍となるのに対し、プラズマは1,230万台と3割強の伸びに止まる見通し。2005年はプラズマが大きく上回り、2006年はいずれも1,000万台程度で液晶が若干上回った。
キヤノンがSEDの事業化に時間をかけるほど、状況は苦しくなる。
付記
同社の社名は「キャノン」ではなく、「キヤノン」である。
同社のホームページに以下の記載がある。 http://web.canon.jp/about/mark/index.html
「ヤ」の字が大きく表記された「キヤノン」が生まれたのは、1947年に、社名を「精機光学工業株式会社」から「キヤノンカメラ株式会社」と変更したときでした。当時の登記簿や株主総会後に発表される営業報告書、朝日新聞に掲載した広告など、すべて「ヤ」が大きくなっています。では、なぜ「キャノン」ではなく「キヤノン」にしたかというと、全体の見た目の文字のバランスを考え、きれいに見えるようにしたからなのです。
「キャノン」では、「ャ」の上に空白が出来てしまい、穴が空いたように感じてしまうので、それを避けたのです。
マレー半島を横断する石油パイプラインの建設計画が実現に向けて動き出した。
マレーシアの石油輸送会社 TRANS-Peninsula Petroleum Sdn Bhd は28日、建設工事を担当するマレーシアのエンジニアリング会社Ranhill Bhd 及び計画をマネージするインドネシアのPT Tripatra Engineers & Consultants と提携契約(Master alliance agreement )を締結した。今後、土地取得を行い、来年央に着工する。
調印式にはAbdullah首相、Yudhoyono インドネシア大統領のほか、スチールパイプを供給するインドネシアのPT Bakrie & Brothers Tbk、原油供給側としてサウジのAl-Banader International Group も出席した。
本計画は5月7日にマレーシア政府の承認を得た。
パイプラインはKedah州のYan からKelantan州 Bachok までの全長312キロで、貯蔵タンクはYan、Jeli、Bachokの3か所に建設される。
第1期(20億ドル)では、1日当たり200万バレルの輸送を目指す。
その後、第2期(25億ドル)、第3期(25億ドル)と総額70億ドルを投じ、2014年の完成時には600万バレルに拡大する。
完成すると中東から東アジアへの石油輸送で、海賊事件やタンカー渋滞が問題となっているMalacca海峡を回避し、かつ輸送期間も短縮できる。
TRANS-Peninsula Petroleum では「中東の主要な生産国からイスラム基金、東アジアの利用企業まで、投資はすべて歓迎だ」としている。
最新分は http://knak.cocolog-nifty.com/blog/