ブログ 化学業界の話題 knakのデータベースから 目次
これは下記のブログを月ごとにまとめたものです。
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3月20日、信越化学の直江津工場のメチルセルロース製造プラントで爆発があり、3人がやけどなどで重体、14人が重軽傷を負った。
2007/3/22 「信越化学 爆発事故」
同社によると、4月10日現在、直江津・セルロース製造工場に対しては全て「使用停止命令」が出ている。
同工場のメチルセルロース能力は22,000トンで、爆発現場のMC-Uプラントの能力は6,300トンとなっている。
同社ではMC-Uプラント以外のプラントについて早期の操業再開策を取るべく、損傷度合いの確認及び復旧計画を進めている。
同社では5月末の生産再開の検討に入ったとされるが、事故原因の特定と再発防止策が生産再開の前提であり、また地元自治体、住民の同意を得る必要があり、いつ再開できるか不明である。
日本経済新聞(4/13)によると、医薬品メーカーが代替先確保に躍起になっている。
セルロース誘導体は医薬品錠剤を固める結合材やコーティングなどに使い、信越化学は世界シェア約3割の大手で、医薬品向けは国内シェアの約9割を握り、直江津工場でしか生産していない。
付記 2007/5/11
他にドイツに子会社があるが、医薬品向けは製造していない。
2006/10/10 「信越化学、ヨーロッパのメチルセルロース能力増強完了」
日本経済新聞(2007/5/11)によると、信越化学はドイツのSEタイローズ社に医薬品用など高機能製品の専用設備を新設する。投資額は数十億円の見込み。
金川社長は 「1カ所生産の方が効率はよいが、安定供給のために生産拠点を2カ所に分散する」と語った。ーーー
2007/9/6
信越化学は6日、ドイツのSEタイローズ社に医薬品用の製造設備を新設すると発表した。能力は年4千トン程度。
直江津でも2008年10月に医薬品用を増産する。
総投資額は約300億円。
信越化学ではダウなど海外メーカー数社に供給の肩代わりを依頼したが、セルロースは世界的に品薄気味で、ダウでは「すぐに信越化学に対応するのは難しい」としている。また、海外品で代用する場合も、製品によっては原材料の一部変更を厚生労働省に申請し、審査・承認手続きが必要になることも考えられるという。
付記
2007/4/19 発表
発生原因:当局による事故原因の特定はまだだが、同社は粉塵爆発と推定。
安全対策:粉塵爆発の対策として以下を実施。
(1) 窒素置換
(2) 静電気除去対策
(3) 粉塵堆積の防止
メチルセルロース生産再開の目処:
爆発したMC−U工場については操業再開の目途は立たず。
その他については早期の操業再開に向け準備(5月末目処)
2007/4/24
23日緊急に開かれた厚労省の薬事・食品衛生審議会の薬事分科会は信越のセルロース5品目に代替品を使う場合、審査を不要とする特例措置を決めた。通常なら企業が半年ー1年間程度かけて試験した後、国の審査を受ける必要がある。
6月までに約400種類(大衆薬などを含む)の生産に影響が出る恐れがあることが判明した。
付記 2007/5/22
信越化学工業は21日、「セルロース誘導体」の生産を一部再開したと発表した。新潟県と地元消防当局が同日、設備の使用停止命令を解除した。設備の調整や製品の品質試験などを経て、6月初めにも顧客に製品の出荷を始める。
操業を再開したのは、製造5施設のうち被害が軽微だった3施設。残る2施設のうち1施設は5月末の再開を目指すが、事故があった残る1施設は再開のめどが立っていない。
ーーー
大きなシェアを持つプラントの停止で思い出されるのは、住友化学のエポキシ樹脂プラント爆発事故である。
住友化学はIC封止材用エポキシ樹脂の開発に成功して以来、半導体メーカーの発展とともに販路を拡大し、1993年時点で、同社のオルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂は半導体用途で世界の60%のシェアを占めていた。
1993年7月、愛媛工場の同樹脂製造設備で、溶媒の回収タンクに異物が混入したのを発端に、爆発、火災事故が発生、従業員1人が死亡、3人が負傷した。
同プラントの停止で、世界の半導体メーカーがパニックに陥った。世界的に半導体製品の価格が急騰した。
当時、石原慎太郎氏が講演で次のように述べている。
日本はもう消費財なんかほとんど輸出していません。完成品ではなしに大事な大事な部品を売っている。
例えばコンピュータなんかの半導体です。
インテル社が、日本が得意としたメモリーの素晴らしい製品を3〜4年前に作って、私達はこれはやられたとショックを受けたのです。これに追い付き追い越すには数年かかるぞ、と。
ところが半年経ったら、インテル社の社長が青ざめて飛んできた。なぜなら住友化学の工場が事故で止まって、あそこで作っているエポキシがなかったらインテル社の半導体は半導体として売れないのです。
全世界の需要家から早急な供給の再開を強く要請された住友化学は、技術提携していた日本化薬、同系製品を製造受託していた大日本インキ化学工業および化成品の取引がありエポキシ樹脂も手掛けていた台湾の長春人造樹脂社に同社の製造・品質管理技術を新たに供与し、応援生産を依頼した。
しかし、すべての需要は満たせず、止むなく割り当て販売を行った。
同社では同設備の復旧に全力を注ぎ、保安、安全管理システムを抜本的に見直し、同年11月に新居浜市から使用停止命令の解除を受けて1系列、年産能カ5,500トンの設備の操業を再開した。
(住友化学社史より)
当時、半導体製造に必須で、かつシェアが圧倒的な同事業が余り儲かっていないことが話題になった。
同社はその後、半導体封止材向けの需要が高水準で続いているのに対応し、愛媛工場の能力を7,500トンにアップした。
また、2001年1月には南アフリカに英国のメリゾール社とのJVの住化メリゾールを設立し、住友化学技術でエポキシ樹脂中間体のオルソクレゾールノボラックを生産した。(原料オルソクレゾールをメリゾールが供給、製品は住友化学が引取り)
しかし、2004年6月、同社は、情報電子材料分野における事業の「選択と集中」についてという発表を行い、情報家電向け表示材料および電子部品材料分野に一層資源を集中させていくという方向性をより明確にした。
この方針の下、同社は液晶ポリマーの生産能力を増強する一方、オルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂事業を台湾の長春人造樹脂に事業譲渡し、技術も全面的に移管した。南アフリカのJV持分も譲渡した。
Sinopec は4月10日に2006年度の Annual Report を発表した。
下記の通り、増収増益である。
しかし、部門別で見ると、政府の石油製品価格統制により、精製部門は原油高を製品価格に一部しか転嫁できず、大幅な赤字となっている。(精製部門は下記の通り、製品の内外価格差補填として多額の補助金を受けているが。)
2006/7/14 「SINOPECの損益構造の変化」参照
化学品は数量増と値上げで増収増益となっている。
化学品 生産数量 (千トン) | ||||||||||||||||||||||||||||
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* 2005、2006 にはShanghai Secco と BASF-YPC の2JV を含む。 |
損益状況は以下の通り。
損益 (百万RMB) | ||||||||||||||||||||
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1RMB=約15.4円 2006年 Net Profit 8,530億円
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部門別売上高 (百万RMB) | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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1RMB=15.4円 2006年 Chemicals売上高 約3兆4100億円
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部門別 Operating Profits (百万RMB) | |||||||||||||||||||||||||||||||||||
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1RMB=約15.4円 2006年 Chemicals 約 2,650億円
Sinopec は政府から石油精製事業の赤字を補填するために、2005年は9,415百万RMB、2006年は 5,000百万RMBの支給を受けており、決算に含まれている。
注 数値はIFRS (International Financial Reporting Standards) に組み替えたものを使用
PetroChinaの2006年度の決算を昨日のSinopec と比較する。
PetroChina もSinopec と同様、増収増益で、同様に精製部門は政府の石油製品価格統制により赤字となっている。
化学部門はSinopecがPetroChinaより売上高、利益とも多いが、全社損益では石油開発の差でPetroChinaが大幅に上回っている。
損益状況は以下の通り。
損益 (百万RMB) | ||||||||||||||||||||
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1RMB=約15.4円 2006年Net Profit 2兆2860億円 | ||||
参考 Sinopec 損益 (百万RMB) | ||||||||||||||||||||
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PetroChina/Sinopec 全社 純損益対比
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2006年 Chemicals売上高 約1兆2750億円
PetroChina/Sinopec 2006年 売上高対比
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2006年 Chemicals 約 780億円 |
PetroChina/Sinopec 2006年 営業損益対比
PetroChina/Sinopec Chemicals部門 営業損益対比
原油価格が高騰を続けていることから、日本の原油、ナフサ価格ともに高騰している。
2007/3/17「OPEC総会、生産量維持を決定」記載の通り、原油価格に比してナフサ価格の上昇が激しく、昨年7月の過去最高に近づいている。
参考 過去のナフサ関係記事
2006/7/17 | 「原油、ナフサ価格 急上昇」 |
2006/7/29 | 「2Qの国産ナフサ基準価格 49,800円/klに」 (「国産ナフサ基準価格」の説明) |
2006/9/25 | 「ナフサ価格 急落」 |
2006/11/1 | 「速報 3Q国産ナフサ価格 54,100円/kl に」 |
2007/1/31 | 「速報 2006/4Q 国産ナフサ価格 決定」 |
2007/3/17 | 「OPEC総会、生産量維持を決定」 |
なお、http://www.knak.jp/index.html で原則として毎日、グラフを更新しています。
2007/4/19 中東の石化計画、建設費アップが重大問題に
中東の石化諸計画が、建設費アップの影響を受け、難航している。
SaudiAramcoは昨年7月10日、サウジ東部のラスタヌラで計画している世界規模の石化・プラスチック・コンプレックスのパートナー候補に
Dowを選定し、独占的に交渉すると発表した。
世界最大規模のSaudiAramcoのラスタヌラの55万バレル/日の製油所と一体化して建設するもので、計画の詳細は明らかにされていないが、一部報道によれば120万トンのエチレン、40万トンのプロピレン、40万トンのベンゼン、46万トンのパラキシレンのほか、ベンゼン、パラキシレン、アクリロニトリル、ABS、SBR、PTA
などを生産するとされる。(135万トンのエチレン、90万トンのプロピレン、100万トンの芳香族とする報道もある。)
2006/7/18 アラムコの新石油化学計画
2012年の第2四半期スタートを目指し、予定では本年初めにもMOUに調印することになっていたが、いつになるのか明らかにされていない。
業界筋では当初100億ドルとみていた建設費は、Dowが候補に選ばれた昨年7月には150億ドルと予想したが、現在では220億ドルと見ている。
今のところ、AramcoもDow も、「交渉は順調で、計画に期待している」としているが、実現性について懸念が生じている。
付記 2007/5/15 アラムコとダウ、世界最大級の石油化学コンプレックス建設
ーーー
中東の建設費は各国政府が石油価格高騰で増えた収入でインフラ整備や新規の大事業計画を進めた結果、業者・機器・建設労働者の不足をきたし、結果として建設費が大幅に上昇している。
Aramcoと住友化学のPetro-Rabigh計画も最初は43億ドルの予定であったが、建設費が高騰し(電力・工業用水建設費の融資などの範囲拡大もあって)、85億ドルに上昇した。
2006/3/25
「ペトロラービグ起工式」
フランスのTotal の会長は先週、イランのSouth Pars油田でのガス採掘計画が建設費アップにより瀬戸際に来ていると述べている。
Qatarの石油相も建設費高騰で石油・石化計画を進められないとしている。
Kuwait で計画中の日産
615千バレルの製油所計画も60億ドルの予定が150億ドルを超え、再検討を余儀なくされている。
2月にはカタール石油 と ExxonMobil が建設費高騰のためGTLプラントの建設を取り止めることを決めた。当初の予算70億ドルのうち、プロセスガスを製品化するための設備の建設費は50億ドルであったが、これが180億ドルにまで上昇している。
2006/2/27 「ExxonMobil、カタールのGTL計画取り止め」
2007/4/20 イラン、新立地でエチレンプラント建設開始
4月9日、イランのBandar Imam の Petrochemical Special Economic Zone とAssaluyeh のPars Special Economic Zone の中間のGachsaranにあるGachsaran Petrochemical で新しいエチレンプラントの建設開始の式典が行われた。
建設費6億ドルで、2010年完成予定、エチレン能力は100万トン、他にプロパン9万トンが生産される。
原料のエタン(130万トン)は近くの
Bidboland Gas Refinery から供給を受ける。
GachsaranはEtylene Pipeline沿線にあり、製品エチレンは近くのDehdasht、Boroujen、Mamasani、Kazeroun に建設される誘導品プラントに送られる。
Etylene
Pipeline については 2006/7/20 「イラン、地方での石油化学推進」参照
なお、Gachsaran ではPipeline で送られるエチレンを原料とするエチレングリコール(MEG 500千トン、DEG 50千トン、TEG 3,500トン)とEO 100千トンのプラントが建設されている。工場建設は三井造船とイランのPIDECのコンソーシアムが受託している。
ーーー
既報の通り、Pars Special Economic Energy Zone では本年度に2つのエチレン・コンプレックスが完成する。
・Olefin
No.9 (Arya Sasol Polymer Co. 南ア Sasol Polymers 参加)
エチレン 1,400千トン
・Olefin
No.10 (Jam Petrochemical Co.)
エチレン 1,540千トン
2007/4/12 「イランで本年度 11計画が生産開始」
なお、Tehran
Times によると、Pars Special
Economic Zone
でのOlefin No.12 計画に中国が27億ドルを投資しての参加を希望し、両国で数回の交渉を行っている。
NPC
によると今後のイランの石化事業推進に外国資本の参加は必要で、中国の参加は歓迎するとしている
Olefin No.12 計画の概要は以下の通り。(単位:千トン)
Product 能 力 Ethylene 1,900 LLDPE/HDPE 300 MEG 660 DEG 70 PP 300 Benzene 388 Toluene 196 mixed Xylene 128 Propylene(excess) 545 Butadiene 277
2007/4/21 ニュースのその後 米国住宅着工件数、低迷続く
米商務部が17日発表した3月の住宅着工件数(季節調節済み)は、事前予想(1,490千戸前後)を上回り、年率換算で1,518千戸で前月比0.8%増となった。
(米国では毎月、前2ヶ月の数字を見直す。1月は1,399千戸、2月は1,506千戸と見直された)
米国の住宅着工件数は2000年以降、毎年上昇し、2005年は2,068千戸となった。
しかし、2006年1月の年率2,265千戸をピークに急下降し、2006年計では1,801千戸となり、本年1月には1,393千戸まで下がった。
(本年1-3月平均は1,474千戸)
2月、3月とやや好転し、最悪期を脱したのではと見る向きもあるが、住宅在庫は高水準で価格は下落しており、調整が長引く恐れがある。
中古住宅販売が予想外に伸びを示しているのに対し、最近の新築住宅販売は落ち込んでいる。
住宅販売の不振を受け、サブプライム向け住宅ローン会社の破綻が続いたが、最近はサブプライムよりも上のクラスの「オルトA」でもローンの延滞率が上昇している。
米国の住宅ローンは借り手の信用度に応じて、プライム、オルトA(Alternative
A)、サブプライムの格付けがある。
サブプライムの借り手は、過去12ヶ月以内の支払い遅延や、24ヶ月以内の住居の差し押さえ、収入に対しての過度の債務など、何らかの問題を抱えたクレジットの信用が低い借り手を指す。ローン会社は、担保となる住宅価格の上昇を前提としている為、借り手の十分な審査をしないまま、借り手に非常に有利な条件のローンを提供して来た。
他方、富裕層は住宅の値上がり益の確保のため、居住目的ではなく転売目的で住宅を購入してきた。
要はローン貸し手も借り手も住宅の値上がりを前提にしており、これまでの住宅産業の好調は将にバブルである。
一旦需要が落ち込み、値下がりが起こると、転売で損が出るし、ローンの返済不能で住宅を差し押さえても回収不能となる。
オルトAでの延滞率上昇はバブル破綻が更に進んでいることを示している。
住宅産業の不振が米国経済全体の不振につながることが懸念される。
参考 これまでの関連記事
2006/3/3 | 日本の塩ビ事業 住宅着工件数とPVC需要の関連 |
2006/11/18 | 米国住宅着工件数、続落 |
2007/1/23 | ニュースのその後、米国住宅着工件数 |
2007/2/19 | 速報 1月の米国住宅着工件数 |
付記 2007/6/30 日本経済新聞より
サブプライム問題 ヘッジファンドに飛び火
住宅ローン債権を担保とする資産担保証券(ABS)市場は売り優勢となり、証券の評価が下がった。
同市場に投資して状況が悪化したファンドは最近まで市場動向を反映した評価替えをしていなかった。
集めた資金の何倍もの借り入れで投資を膨らませ、多額の追加担保が発生して傷口を広げた。
ファンドの一つは資本の10倍超の借入金があったとされる。
2007/4/23 三菱ガス化学、ブルネイのメタノール事業決定
三菱ガス化学は12日、ブルネイ・ダルサラーム国バンダル・スリ・ブガワンでのメタノール事業実施の最終決定を行ったことを発表した。
ブルネイで年産85万トンのメタノールを生産し、日本を含むアジア市場に輸出することを目的としている。
同社は伊藤忠商事と共同で、ブルネイ政府が公募していた天然ガスからのダウンストリーム計画に対しメタノールプロジェクトとして応募し、2004年9月に最終交渉相手に選抜された。
その後、両社と現地のBrunei National Petroleum Company (PetroleumBRUNEI
)は、合弁会社、天然ガス供給、メタノール販売及びメタノールプラントの運営に必要となる諸設備・ユーティリティーなど主要な条件についてFSを行ない、2005年11月、3社はメタノール製造会社の設立に関する合弁契約を締結した。
今回、合弁事業に関する諸条件が確定したことから、投資の最終決定に至った。
(合弁事業の概要)
1. 社名 Brunei Methanol
Company
2. 出資比率 MGC:50%
PB Petrochemical (PetroulemBRUNEIの関連会社):25%
伊藤忠: 25%
3. 生産能力 年産850,000トン
4. 生産技術 三菱(MGC/MHI)メタノールプロセス
(MGCと三菱重工業株式会社が共同保有するプロセス技術)
5. 事業立地
ブルネイ・ダルサラーム国スンガイ・リアング工業地区(地図参照)
6. 天然ガス供給者 Brunei Shell Petroleum Company
Sdn Bhd(BSP)
7. 製品引取権者 MGC
8. 建設完了時期 2009年第4四半期
9.商業生産開始 2010年第2四半期
建設資金は約4億ドルで、国際協力銀行を中心とするプロジェクトファイナンスによる資金調達を行う予定。
付記
2009年12月にプラント完工、2010年4月にメタノールの生産を開始、同5月に製品の初出荷を行った。
Brunei Darussalam 国は15世紀初頭に初代スルタン、モハマッドがブルネイ王国の基を確立、1906年に英国の保護国となった。
1984年に完全独立した。立憲君主制をとっている。
1984年1月8日にASEANに加盟した。
三菱ガス化学のメタノール事業は以下の通り。(単位:千トン)
場所 | 現能力 | 計画能力 | 出資比率 |
中国重慶 | 850 | MGC 51%/重慶化医49% 2006/7/21 「中国政府、石炭化学を規制」 参照 →付記 中止 |
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ベネズエラ | @ 750 | A 850 | 2006/12/27 「三菱ガス化学、ベネズエラのメタノール合弁増設」 |
ブルネイ | 850 | 本件 | |
サウジ | 3,300 | 1,700 | 2006/3/31 「サウジ・メタノール計画」 |
合計 | 4,050 | 4,250 | 総計 8,300千トン |
日本のメタノール産業は、1970年代には東西の共同生産会社(東日本メタノール、西日本メタノール)、三菱ガス化学、三井東圧化学、協和ガス化学の5社体制であったが、安値海外品流入で相次ぎ操業停止、1995年7月に最後の国産メーカー・三菱ガス化学が新潟の
264千トンを操業停止し、設備は中国内蒙古の伊克昭盟化工集団総公司に売却した。
なお、サウジアラビアには日本側
35%出資のInternational Methanol Company がある。
設立:2002年
立地:Al-Jubail
能力:100万トン
出資:Saudi International
Petrochemical 65%
三井物産 20%
三菱商事 5%
ダイセル化学 5%
飯野海運 5% 出資
2007/4/24 Braskem とVenezuela 国営Pequiven、石化JV計画で合意
Brazil のBraskem は16日、Venezuela 国営石化会社 Pequiven との間で、Venezuela の Jose Petrochemical Complex で2つのJVを設立することで合意したと発表した。Venezuela の豊富な天然ガスを利用するもの。
一つは天然ガス原料のエタンクラッカーを建設し、エチレン130万トン、PE
110万トン、その他石化製品を製造するもの。
もう一つは450千トンのPPを製造するもので、当初は西部のEl Tablazo で計画されたが、Joseでの計画に変更となった。
前者は2011年下期完成予定で、建設費は25億ドル。後者は2009年末完成で、建設費は370百万ドル。
いずれも50/50のJVを予定している。
Braskem では電解、PVCを含むビニルチェーン計画への参加も検討している。
Jose
Petrochemical Complex
での石化計画は当初2004年に
Pequiven とExxonMobil のJVとして開発仮契約が締結された。
50/50JVを設立し、30億ドルを投じて105万トンのエチレンと105万トンのPEをJose Petrochemical
Complex に建設するものであった。
しかし、ExxonMobil と反米路線を明確にしているVenezuela 政府の関係が悪化、「再国営化の一環」として同社の現地の事業を国営石油会社PDVSA とのJVに切り替えさせるという政府の方針に反対し、利権をRepsolに売却した。
Pequiven は2006年1月にExxonMobil との仮契約を破棄した。しかし、計画は進めるとして、新しい提携相手を探していた。
なお、2006年1月、Venezuela のChavez 大統領は総額33億ドルに達する多数の石化計画を承認したと発表している。
主な計画は以下の通り。
計画 | 立地 | 投資額 |
propylene | El Tablazo | $350-mil |
PP | $125-mil | |
PE 拡張 | El Tablazo | $185-mil |
ethylene 1,050 m t/y | Jose | $1,596-mil |
PE 1,050 m t/y | ||
fertilizer plant | Moron | $150-mil |
fertilizer plant | Jose | $550-mil |
ammonium nitrate plant | Jose | $355-mil |
Braskemについては下記を参照
2006/4/21 ブラジルのブラスケム、住化などからポリテーノを買収
2007/3/23 ブラジルで石油・石油化学業界の再編
Dowは18日、リビアの国営石油会社(NOC)とJVを設立し、NOCのRas
Lanuf コンプレックスの石化コンプレックスを拡張・運営すると発表した。
リビアは最近、外国の技術、資本を導入する方針を立てており、ダウがリビアの石化事業に参加する最初のグローバルな化学会社となる。
JVに包含するのはRas Lanuf
のナフサクラッカー(エチレン 330千トン)とLLDPE(80千トン)、HDPE(80千トン)とインフラ設備で、今後、エタンクラッカーとPE、PP、及びその他の樹脂、化学品プラントを建設する。
Ras Lanuf コンプレックスは地中海沿岸にあり、1980年代に建設された。
LPG 106千トン、ナフサ 1,811千トン、ケロシン 525千トン、ナフサクラッカーではエチレン 330千トン、プロピレン 170千トン、C4 130千トン、分解ガソリン 325千トンの能力を持つ。
ダウは既報の通り、石油化学事業については "Asset light" strategy に基づき、JV方式で行うこととしている。
同社ではこの投資は石油化学等のダウンストリームを拡大することにより国内経済を多様化しようとするリビア政府の経済政策に沿うものであるとし、地中海沿岸という立地と競争力のある原料は魅力があるものであるとしている。
ーーー
リビアは1951年12月、リビア連邦王国として独立したが、1969年9月にカダフィ大尉(当時)によるクーデターで、リビア・アラブ共和国に改称、1977年に人民主権確立宣言(ジャマーヒリーヤ宣言)を発表し、現在の「大リビア・アラブ社会主義人民ジャマーヒリーヤ国」(The Great Socialist People's Libyan Arab Jamahiriya)となった。
リビアは反欧米・反イスラエルのアラブ最強硬派の国家で、1970年代や1980年代には欧米やイスラエルで数々のテロを引き起こし、「テロ国家」と非難された。また核兵器の開発も秘密裏に進めた。
1984年のロンドンのリビア大使館内からデモ隊に銃を発射した事件でイギリスはリビアとの国交を断絶した。
1985年にはイタリアの客船をリビア人がシージャック、同年トランスワールド航空機のハイジャックなどが発生、米国はこれらの一連のテロがリビアの政府の支援で行われていたと断定し、リビア空爆を行うとともに、1986年1月、対リビア経済制裁措置を発表した。
米国の石油企業は1986年以降、同国での活動を停止したが、ConocoPhillips、Amerada Hess、Marathon、Occidental はリビア国営石油会社(NOC)と現状維持(standstill)契約を締結し、各社の権益は没収されることなく保全され、操業・メンテナンスはNOC系企業が実施した。
1988年のパンナム機爆破事件により、1992年に国連安保理で対リビア制裁決議、1993年に対リビア制裁強化決議が採択された。
しかし、湾岸戦争の後、リビアは国際社会での孤立状態に終止符を打つため、西側に対し次々と和解策を提示した。
2002年8月に国内のアルカイダ関係者を拘束、2003年8月に1988年のパンナム機爆破事件について、責任を認め、賠償金27億ドルの支払いを表明した。
これを受け、2003年9月に国連安保理は対リビア制裁の解除を発表した。
2003年12月、米英政府との9ヶ月にわたる交渉の結果、リビアが大量破壊兵器(WMD)の開発計画の廃棄を約束し,国際機関による即時・無条件の査察受け入れに合意した。
この結果、米国はリビアを「テロ支援国家」指定から外し、その後、2006年5月にアメリカはリビアとの国交正常化を発表した。
付記
BP は 2007/5/30、リビアのNational Oil Company との間で Exploration and Production Agreement を締結した。
BPでは ”BP's single biggest exploration commitment”としている。