ブログ 化学業界の話題 knakのデータベースから 目次
これは下記のブログを月ごとにまとめたものです。
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2009/5/11 サウジのSABICとSipchem、新プロジェクトで相互協力の覚書
サウジのSABICとSaudi International Petrochemical Company (Sipchem) は5月9日、それぞれの新計画の実施に当たり、互いに既存の余剰能力を出して協力する覚書に締結した。
SABICの計画:投資額 32億ドル | |||
MMA | 250千トン | ||
PMMA | 30千トン | ||
アクリロニトリル | 200千トン | 付記 旭化成がJV交渉 | |
ポリアクリロニトリル | 50千トン | ||
ポリアセタール | 50千トン | ||
カーボンファイバー | 3千トン | ||
青酸ソーダ | 40千トン | ||
Sipchemの計画:投資額 8.1億ドル | |||
ポリ酢酸ビニル | 125千トン | ||
エチレン酢ビ | 200千トン | ||
いずれも2013年にスタートの予定。
付記
Sipchemは5月20日、エチレン酢ビの生産のため、ExxonMobil の高圧法LDPE技術を導入したと発表した。
Sipchemは7月12日、本事業を韓国のHanwha Chemical とのJVとすることで合意したと発表した。
Sipchem が75%、Hanwha が25%の出資となる。
投資額は10.7億米ドル。付記
SABICとCelaneseは2010年4月1日、両社及びDuke Energy (PanEnergy を統合)のJVのNational Methanol (Ibn Sina) で50千トンのポリアセタール(POM)を製造すると発表した。
IBN SINAはSABIC 50%/Celanese 25%/Pan Energy 25%で設立。メタノール110万 トンとMTBE を製造販売。
ポリアセタールの生産開始後はセラニーズの出資比率は32.5%になり、Duke Energyは17.5%となる。
覚書では、SABICはSipchemに割り当てられた原料エタンを子会社でエチレンにして供給、SipchemはSABICにMMA生産用の一酸化炭素を供給するとなっている。
MMAの製法にはACH法、直酸法、Lucite (三菱レイヨンが買収予定)のエチレン法(Alpha technology)などがある。
ACH法の場合はアクリロニトリル生産時に副生する青酸を利用する。MMA用の一酸化炭素であればLucite のエチレン法(Alpha technology)である。
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Sipchemについては下記を参照。
2008/2/29 サウジ Sipchem の石油化学計画
第二期計画で、酢酸、VAM、一酸化炭素を既に生産しており、今回の計画はVAMの利用。
付記
Sipchem は2009年6月、International Acetyl Company とInternational Vinyl Acetate Company の持株87%のうち、11%分をKuwait のIkarus Petroleum Industries Company に譲渡した。
2006年11月、第三期計画として Sipchemはオレフィンと誘導品計画を発表した。
原料 :アラムコ(エタン35%、プロパン65%)
製品 :エチレン 1,000千トン
プロピレン 215千トン
HDPE 500千トン
EVA / LDPE 250千トン
PP
ANM 200千トン(Ineos 技術)
MMA 250千トン(Lucite 技術)
Carbon
fiber
Ethylene
vinyl alcohol
Polyvinyl
acetate、Polyvinyl alcohol、Polyvinyl butyral
Polyacrylonitrile
Sodium
cyanide
PE
pipe and film
生産開始:2011年
投資額:US$ 7 billion
しかし、同社は2008年6月にエチレン、PE、PP計画を取り止めた。
中東の石化プラント建設ラッシュで建設業者が確保できず、スケデュールやコストに狂いが出たこととファイナンス問題が理由とされている。
同社はエチレン、プロピレンをAl-Jubail の他のメーカーから購入し、付加価値製品の生産に専念することとした。
2008/6/23 サウジ Sipchem がエチレン、PE、PP計画取り止め
今回のSABICの新計画は(ポリアセタールを除いて)全て、Sipchemの第三期計画に入っていたものである。(上記の青字)
2008年2月に、SABICがSipchemの第三期計画に参加するとの情報が流れた。
別途Sipchemは、ANMとMMAの技術を供与するIneos (Luciteに22%出資)にも参加の要請を行っている。
おそらく、その後、事業分担の話し合いが行われ、Sipchemは酢酸関係(上記の赤字)に限定し、残りをSABICに譲ったものと思われる。
日本触媒、住友ベークライト、電気化学、三菱ガス化学、田辺三菱製薬
日本触媒
基礎化学品、機能性化学品事業が大幅減益となった。機能性化学品は営業損益で赤字となった。
連結決算 単位:億円(配当:円) | ||||||||||||||||||||||||||||||
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営業損益対比(億円)
08/3 09/3 増減 2009年 上期 下期 基礎化学品 67 16 -51 35 -19 機能性化学品 88 -19 -107 17 -36 環境・触媒 28 12 -16 11 2 全社 1 -3 - 4 - 5 2 合計 184 6 -178 58 -52
基礎化学品事業:アクリル酸、酸化エチレン、エチレングリコールほか
機能性化学品事業:高吸水性樹脂、医薬中間原料、コンクリート混和剤用ポリマー、電子情報材料ほか
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住友ベークライト
営業損益は、販売の減少に加え、退職給付会計の数理計算差異が38億円の損失となったこともあり、前期に比べ107億円減少した。半導体・表示体材料の減益が大きい。
特別損失に、事業再建関連費用および事業整理損を41億円、株式評価損42億円、減損損失15億円等を計上した。
連結決算 単位:億円(配当:円) | ||||||||||||||||||||||||||||||
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営業損益対比(億円)
08/3 09/3 増減 2009年 上期 下期 半導体・表示体材料 107 47 -60 49 -2 回路製品・電子部品材料 -27 -35 -9 -11 -25 高機能プラスチック 30 13 -17 22 -9 Quality of life 30 10 -21 17 -7 その他 2 1 -1 1 0 全社 -52 -51 1 -26 -26 合計 90 -16 -107 52 -68
同社では退職給付会計の数理計算差異を毎期発生年度に一括償却している。
このため、株価が上昇した2006年3月期はこれが79億円の利益となったが、2008年3月期は逆に46億円の損失、今期も38億円の損失となった。また、2008年3月期は海外子会社の連結対象期間変更で9
ヶ月間となり、営業損益が約19 億円減少した。
これらの影響を除外すると、営業損益は次の通りとなる。
営業損益対比(億円)
08/3 09/3 増減 半導体・表示体材料 132 57 -75 回路製品・電子部品材料 -19 -32 -13 高機能プラスチック 45 21 -24 Quality of life 44 22 -22 その他 2 1 -1 全社 -49 -48 1 合計 155 21 -134
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電気化学
スチレン系製品やクロロプレンゴムなどの有機系素材や電子材料などの減益が大きい。有機系素材は営業赤字となった。
連結決算 単位:億円(配当:円) | ||||||||||||||||||||||||||||||
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営業損益対比(億円)
08/3 09/3 増減 2009年 上期 下期 有機系素材 133 -19 -152 33 -52 無機系素材 29 25 -4 16 9 電子材料 78 30 -48 34 -4 機能・加工製品 53 62 9 23 39 その他 6 5 -1 4 1 全社 -1 -1 0 0 0 合計 299 103 -196 109 -6
有機系素材:
SM、PS、ABS、クリアレン、耐熱・透明樹脂、酢酸、酢ビ、ポバール、クロロプレンゴム、アセチレンブラック 他
無機系素材:
肥料、カーバイド、耐火物、セメント、特殊混和材 他
電子材料:
溶融シリカ、電子回路基板、ファインセラミックス、電子包装材料 他
機能・加工製品:
食品包装材料、ワクチン、関節機能改善剤、診断薬、建設資材・産業資材 他
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三菱ガス化学
各分野が大幅減益となった。
連結決算 単位:億円(配当:円) | ||||||||||||||||||||||||||||||
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営業損益対比(億円)
08/3 09/3 増減 2009年 上期 下期 天然ガス系 33 -49 -82 9 -57 芳香族 121 -74 -194 15 -89 機能化学品 162 64 -98 31 33 特殊機能材 152 23 -129 42 -19 その他 5 6 1 3 2 全社 1 -1 -2 -4 3 合計 474 -31 -505 96 -127 天然ガス系:メタノール、アンモニア、アミン系製品、メタクリル酸系製品、多価アルコール類ほか
芳香族:キシレン異性体及びその誘導品
機能化学品:過酸化水素、電子工業用薬品類、エンプラ
特殊機能材:プリント配線板用材料、プリント配線基板、脱酸素剤
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田辺三菱製薬
2007年10月1日に田辺製薬と三菱ウェルファーマが合併し「田辺三菱製薬」になった。
上場している田辺製薬が存続会社だが、但し逆取得となっており、08/3は三菱ウェルファーマの中間決算に誕生した田辺三菱製薬の下期を加えたものとなっている。
このため、比較のため田辺製薬の上期を加算する。
連結決算 単位:億円(配当:円) | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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既報の通り、薬害肝炎の給付金の負担割合が決定した。
同社では昨年度に 91億円を繰り入れ、合計112億円を引き当てていたが、見込み額が200億円となったため、当期に88億円を特別損失に計上した。
2009/4/15 薬害肝炎救済法に基づく給付金の負担割合
なお、特別損失は前期が上記に加えて合併関連費用(49億円)、特別退職金(11億円)など、合計174億円であったが、当期は上記に加え、有価証券評価損(66億円)、特別退職金(43億円)、減損損失(34億円)など、合計258億円となり、84億円の損失増加となった。
住友化学、三井化学、三菱化学はいずれも大赤字となった。
住友化学
大幅減益で、期末配当を3円減とした。
次期については営業損益で350億円の黒字を見込む。
サウジのラービグ計画の本格稼動で持分法投資損益が改善する。
次期配当は未定。
連結決算 単位:億円(配当:円) | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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営業損益対比(億円)
08/3 09/3 増減 2009年 上期 下期 基礎化学 106 -153 -259 -12 -142 石油化学 45 -303 -349 -101 -202 精密化学 114 16 -98 22 -5 情報電子化学 63 -10 -73 123 -133 農業化学 209 244 35 123 122 医薬品 465 324 -141 192 131 その他 37 -79 -116 -36 -43 全社 -15 -17 -3 -1 -16 合計 1,024 21 -1,003 310 -289
基礎化学、石油化学ともに大幅な赤字となった。情報電子化学も若干の赤字に転落した。
医薬品は研究開発費の増加等により減益。
その他での大幅減益は、高分子有機EL
等の新規事業における研究開発費等の増加による。
医薬品のうち、大日本住友製薬の実績は以下の通り。(単位:億円)
売上高 営業損益 経常損益 当期損益 08/3 2640 398 377 256 09/3 2640 312 314 200 増減 0 -86 -63 -56
経常損益では、持分法投資損益が前期の112億円の利益から128億円の赤字と、240億円の悪化となっている。
特別利益では前期にラービグ計画の上市に伴う持分変動利益が288億円あったが、当期には退職給付信託設定益が148億円あった。
株価下落で目減りした退職給付債務の積立不足額に充当するため、保有株式の一部を拠出して、164億円の退職給付信託を設定した。この株式の簿価と信託設定金額との差額である148億円を特別利益として計上した。
特別損失には構造改善費用 88億円、有価証券評価損 41億円などのほか、減損損失として208億円を計上した。
環境の著しい悪化等により、収益性の低下した一部の事業用資産について減損損失を計上したもので、減損対象は、カプロラクタム(61)、リチウムイオン二次電池用セパレーター(112)、及び PO(36)。
同社では繰延税金資産の回収可能性を検討した結果、その一部を取崩し、196億円を法人税等調整額に計上した。
その分だけ税引後損益が悪化した。(この分はその時点で利益が回復し課税所得があれば税金の減になる。)
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三井化学
大幅減益で、期末配当を3円減とした。
2010年予想でも営業損益で380億円の赤字、当期損益で560億円の赤字とみている。
次期配当は未定だが、中間配当は取り止める。
藤吉社長は次期に2年連続で営業赤字になる見通しとなったことの責任を取り、社長を辞任する。
連結決算 単位:億円(配当:円) | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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営業損益対比(億円)
08/3 09/3 増減 増減理由 2009年 数量差 交易条件 固定費他 上期 下期 機能材料 359 -160 -519 -274 -132 -113 92 -252 先端化学品 108 73 -35 -5 -10 -20 36 38 基礎化学品 335 -320 -655 -465 -160 -29 -2 -318 その他 34 1 -33 -20 -15 16 -2 3 全社 -63 -49 14 -24 -25 合計 772 -455 -1,227 -764 -317 -146 -28 -427
機能材料 自動車・産業材(エラストマー)、包装・機能材(工業樹脂)、生活・エネルギー材(機能加工品)、電子・情報材(電子材料、情報材料、機能性ポリマー)、ウレタン樹脂原料 先端化学品 精密化学品、農業化学品 基礎化学品 基礎原料(エチレン、プロピレン等)、フェノール、合繊原料・ペット樹脂、工業薬品、PE、PP
機能材料、基礎化学品が下期に大幅赤字となり、通期で赤字転落した。数量減と交易条件差(コスト減以上の値下がり)が大きい。
当期の業績及び厳しい経営環境を考慮し、繰延税金資産の回収可能性を慎重に検討した結果、当期末において繰延税金資産を取崩すこととし、その影響額 447億円を法人税等調整額に計上した。
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三菱ケミカルホールディングス
下期の石油化学関連の赤字が大きく、通期で大幅赤字となり、配当も4円減らした。
次期予想は経常損益までは黒字だが、180億円の特別損失を見込んでおり、当期損益は赤字となる。
連結決算 単位:億円(配当:円) | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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営業損益対比(億円)
08/3 09/3 増減 概算増減理由 2009年 数量差 売値差 買値差 固定費他 その他 上期 下期 エレクトロニクス・アプリケーションズ 316 48 -268 -180 -280 190 10 -10 106 -59 デザインド・マテリアルズ 97 -21 -118 -70 70 80 -40 0 27 -48 ヘルスケア 572 793 221 130 -140 10 40 180 372 421 ケミカルズ 109 -555 -664 -90 910 -1,140 -70 -270 70 -625 ポリマーズ 112 -130 -242 -120 240 -290 0 -70 -5 -124 その他 141 88 -53 -60 30 -40 10 0 62 26 全社 -97 -141 -44 - - - -40 - -70 -71 合計 1,250 82 -1,168 -390 830 -1,350 -90 -170 562 -480 -520
エレクトロニクス・アプリケーションズ 記録材料、電子関連製品、情報機材、無機化学品 デザインド・マテリアルズ 食品機能材、電池材料、精密化学品、樹脂加工品、複合材 ヘルスケア 医薬品、診断製品、臨床検査 ケミカルズ 基礎石化製品、化成品、合成繊維原料、炭素製品、肥料 ポリマーズ 合成樹脂 その他 エンジニアリング、運送及び倉庫
ヘルスケアを除き減益となったが、特にケミカルズとポリマーズが営業損失となった。
同社の場合は棚卸資産の評価を総平均法としているため、住友化学や三井化学(後入先出法)と比べ、前期末の高値在庫の影響が大きい。
なお、2008年3月期決算時の予想によると、鹿島の事故関連は、本決算では保険金の入金で益となっている。
鹿島事故損失予想(億円)
2008/3 2009/3 合計 科目 減産、減販、代替品調達 - 82 -55 -137 営業損益 プラント停止・低稼働 -20 - 20 営業外費用 - 30 - 30 特別損失 合計 -112 -75 -187 保険金 140 140 営業外収入 差引合計 -112 65 - 47
ヘルスケア増益は、2007年10月1日に田辺製薬と三菱ウェルファーマが合併し「田辺三菱製薬」になった影響による。
田辺製薬が存続会社だが逆取得の形をとったため、2008年3月期は三菱ウェルファーマの中間決算に田辺三菱製薬の下期を加えたものとなっている。
比較のため、田辺製薬の2007年上期を加算すると以下の通りとなる。
連結決算 単位:億円(配当:円)
売上高 営業損益 経常損益 当期損益 配当 中間 期末 08/3 田辺 上期 938 184 192 99 13.0 田辺三菱製薬 3156 540 544 220 ( 7.68) 13.0 年間ベース 4094 725 736 319 13.0 13.0 09/3 4148 717 726 265 14.0 14.0 増減 53 -8 -11 -54 1.0 1.0
特別損益は以下の通り。(億円)
08/3 09/3 増減 特別利益 田辺合併 持分変動利益 1,181 その他 52 148 合計 1,233 148 -1,085 特別損失 投資有価証券評価損 1 115 減損損失 19 114 薬害肝炎訴訟損失引当 95 88 原材料仕入契約解約損 50 田辺合併関連 49 鹿島事故に伴う低稼働損失 30 その他 150 202 合計 344 569 225 差引 889 -421 -1,310 減損損失には、停止が決まったヴイテックのPVC設備(水島、川崎:45億円)や黒崎のカプロラクタムやナイロン設備(27億円)などが含まれる。
薬害肝炎の給付金については、負担割合が決定し、見込み額が200億円となったため、当期に88億円を特別損失に追加計上した。
なお、同社の場合は、繰延税金資産の取り崩しは行っていない。
2009/5/14 注目会社 2009年3月決算−5 旭化成、東ソー、トクヤマ、宇部興産
旭化成
大幅減益だが、ケミカルズ、エレクトロニクスなどの減益をホームズ、ファーマ(いずれも前期損益維持)がカバーしている。
次期は黒字を見込む。
連結決算 単位:億円(配当:円) | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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営業損益対比(億円)
08/3 09/3 増減 増減理由 2009年 数量差 売値差 (うち為替) その他 上期 下期 ケミカルズ 652 -4 -656 -195 -72 (-179) -389 185 -189 ホームズ 214 219 5 33 26 ( - ) -54 30 189 ファーマ 127 120 -6 88 -74 ( -26) -20 102 18 せんい 72 -9 -81 -31 -16 ( -29) -34 17 -26 エレクトロニクス 222 33 -189 -51 -95 ( -35) -43 82 -49 建材 28 17 -11 7 13 ( - ) -31 8 9 Service & Eng. 52 56 5 4 0 ( 0) 1 31 25 全社 -90 -83 7 - - ( - ) 7 -53 -30 合計 1,277 350 -927 -145 -219 (-269) -563 402 -52
ケミカルズが下期に大幅赤字となって通期で赤字、せんいとエレクトロニクスも大幅減益となった。
他方、ホームズが下期に大きな益となり、損益を維持した。
次期の営業損益の予想は、せんいは20億円の赤字だが、ケミカルズは150億円の黒字、エレクトロニクスも80億円の黒字としている。
ケミカルズは販売量の回復と在庫評価損の減を折り込んだ。
緊急対策として以下を決めた。
・汎用事業の見直し
既に意思決定したもの
@ポリエステル長繊維の生産停止
Aモノフィラメント事業からの撤退
B特薬事業(コエンザイムQ10)からの撤退(極端な供給過剰で大幅値下がり)
C軽量気泡コンクリート・白老工場の閉鎖(需要減)
・固定費の削減 ▲約135億円(減価償却費の増36億円を含む)
・設備投資の削減
08年度実績1,267億円→09年度予定 900億円
・在庫(棚卸資産)の圧縮
・役員報酬の減額 ▲10%〜20%
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東ソー
大幅減益で、営業損益、経常損益、当期損益がいずれも赤字となった。
連結決算 単位:億円(配当:円) | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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営業損益対比(億円)
08/3 09/3 増減 上期 下期 石油化学 150 -48 -198 45 -92 基礎原料 27 -175 -201 -8 -166 機能商品 380 -9 -389 66 -75 サービス 34 28 -5 18 11 合計 591 -203 -794 120 -323
石油化学 オレフィン製品、スチレンモノマー、キュメン、PE、クロロプレンゴム、PPS 樹脂 基礎原料 苛性ソーダ、VCM、PVC、セメント 機能商品 無機・有機ファイン製品、計測・診断商品、水処理装置、電子材料(石英ガラス、スパッタリングターゲット)、機能材料、ウレタン原料等
石油化学、基礎原料(ビニルチェーン)、機能商品(ポリウレタンなど)いずれも大幅減益となった。特にビニルチェーンの赤字が大きい。
いずれも下期に大幅赤字となった。
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トクヤマ
減益だが、営業損益ではセメントほかが若干の赤字となっただけで、化学品、特殊品とも健闘し、黒字を維持した。特に多結晶シリコンなどの特殊品は好調。当期損益では「防耐火個別認定仕様と異なる仕様の樹脂サッシ販売」に関する製品補償損失引当金繰入や関連する固定資産の減損損失などで赤字となった。
連結決算 単位:億円(配当:円) | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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営業損益対比(億円)
08/3 09/3 増減 上期 下期 化学品 47 13 -35 14 -1 特殊品 305 263 -42 155 109 セメント建材他 37 -6 -43 -1 -4 全社 -36 -43 -7 -21 -22 合計 353 227 -126 146 81
化学品 苛性ソーダ、ソーダ灰、塩化カルシウム、珪酸ソーダ、VCM・PVC、PO、イソプロピルアルコール、メチレンクロライド、二軸延伸PPフィルム、共押出多層フィルム、無延伸PPフィルム、微多孔質フィルム 特殊品 多結晶シリコン、湿式シリカ、乾式シリカ、窒化アルミニウム、歯科器材、医薬原体・中間体、プラスチックレンズ関連材料、イオン交換樹脂膜、金属洗浄用薬品、電子工業用高純度薬品、環境関連装置、医療診断システム、半導体ガスセンサ セメント建材その他 普通ポルトランドセメント、早強ポルトランドセメント、高炉セメント、生コンクリート、プラスチックサッシ、セメント系固化材、廃棄物処理
特別損失に樹脂サッシの製品補償損失引当で200億円、関連固定資産の減損損失で29億円を計上した。
2009/1/10 樹脂サッシメーカー5社が防火性能偽装
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宇部興産
化成品・樹脂が下期に損益が悪化したが、全部門で営業黒字を維持した。
連結決算 単位:億円(配当:円) | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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営業損益対比(億円)
08/3 09/3 増減 上期 下期 化成品・樹脂 186 21 -165 107 -87 機能品・ファイン 141 67 -74 59 8 建設資材 109 89 -20 38 51 機械・金属成形 67 41 -26 23 17 エネルギー・環境 47 87 40 42 44 その他 9 8 -1 4 4 全社 1 -1 -1 -3 2 合計 559 312 -247 271 40
化成品・樹脂 カプロラクタム、ナイロン樹脂、工業薬品、ポリブタジェン 機能品・ファイン 機能性材料、ファインケミカル、医薬品 建設資材 セメント、クリンカー、生コンクリート、建設資材製品 機械・金属成形 諸機械器具、アルミホイール エネルギー・環境 石炭、電力
化成品・樹脂セグメントは第3四半期以降、出荷は大幅に落ち込み減産となった。製品価格が大幅に下落し在庫評価額を下回ったため、多額のたな卸資産評価損を計上した。
石炭、電力卸などのエネルギー・環境セグメントが好調。
東レ、帝人、三菱レイヨン、チッソ
東レ
全分野で大幅減益となった。但し、すべてで営業利益を確保した。
連結決算 単位:億円(配当:円) | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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営業損益対比(億円)
08/3 09/3 増減 上期 下期 繊維 214 77 -137 62 14 プラスチック・ケミカル 207 41 -166 82 -41 情報・通信機器 298 98 -199 96 2 炭素繊維複合材料 181 84 -97 56 28 環境・エンジニアリンク 98 33 -65 2 31 ライフサイエンスその他 63 32 -31 8 24 全社 -25 -4 21 -3 -1 合計 1034 360 -674 303 57
特別損失で、減損損失(123億円)、投資有価証券評価損(138億円)、関係会社事業損失(57億円)などを計上、ネットの特別損益は前期の129億円の損失から403億円の損失に、274億円の悪化となった。
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帝人
合成繊維、化成品(PETフィルム、PC)が大幅減益となった。合成繊維は営業赤字。
次期予想は未定としている。
連結決算 単位:億円(配当:円) | ||||||||||||||||||||||||||||||
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営業損益対比(億円)
08/3 09/3 増減 上期 下期 合成繊維 244 -28 -272 41 -69 流通・リテイル 53 39 -14 20 19 化成品 202 2 -200 39 -37 医薬医療 217 248 31 107 141 IT・新事業 35 36 1 5 31 全社 -100 -118 -18 -61 -57 合計 652 179 -473 151 28
成長SBU
積極的資源投入安定収益SBU
安定収益と
キャッシュ・フロー確保再建SBU
抜本策による再建実施合成繊維 パラアラミド繊維、
炭素繊維、PEN繊維ポリエステル繊維 化 成 品 ポリカーボネート、
PENフィルム、
PEN樹脂ポリエステルフィルム、
ポリエステル樹脂医薬医療 医薬医療 流通・リテイル 流通・リテイル IT IT
繊維はポリエステル繊維が赤字拡大、高機能繊維も大幅減益となった。
化成品もPETフィルムが減益、PC樹脂は赤字転落。
他方、医薬医療は増益となった。
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三菱レイヨン
各部門とも大幅な減益となったが、アクリル繊維が大きな赤字に転落した。
連結決算 単位:億円(配当:円) | ||||||||||||||||||||||||||||||
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同社は2006/3より、退職給付会計における数理計算上の差異の処理方法を、定額法償却での営業外費用処理から発生の翌年度に営業費用として一括償却する方法に変更した。
これまでの実績は以下の通りで、2007年3月期は株価高騰で大幅益となったが、その後は損失となっており、当期は前期比で38億円の損失増となった。
2006/3 933百万円の損 2007/3 14,209百万円の益 2008/3 2,050百万円の損 2009/3 5,899百万円の損
これが営業損益におおきな影響を与えるため、これを除外すると、以下の通りとなる。
営業損益対比(億円)
08/3 09/3 増減 上期 下期 化成品・樹脂 236 44 -192 52 -9 アクリル繊維・AN 10 -91 -101 -29 -62 炭素繊維・複合材料 113 19 -95 25 -6 アセテート・機能膜 36 10 -26 10 0 全社 0 1 1 1 0 合計 396 -17 -413 60 -77
アクリル短繊維は、安価な他素材へのシフトが進み、世界的な需要減退が一層深刻となった。
このため、インドネシアの紡績会社ボネックス
インドネシア社の売却による紡績事業からの撤退、日本での原綿生産能力の大幅縮小を実施するとともに、中国の寧波麗陽化繊有限公司の抜本的改革を進めることを決定した。
特別損失には 減損損失(113億円)、投資有価証券評価損(132億円)などのほか、インドネシアでの紡績事業撤退に伴う損失見込額(43億円)と中国での原綿生産事業の構造改革に伴う損失見込額(37百万円)を事業整理損失引当金に計上した。
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チッソ
減益とはなったが、特別損失に水俣病補償損失(37億円)、公害防止事業費負担(8億円)、減損損失(5億円)などを計上した上で、税引後損益で30億円の黒字を確保した。
次期でも黒字を見込む。
連結決算 単位:億円 | |||||||||||||||||||||||||
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チッソは2000年3月決算で債務免除益 635億円を計上した。
2006/5/1 水俣病50年
最近の特別損失は以下の通り。(億円)
06/3 07/3 08/3 09/3 水俣病補償損失 -43 -42 -40 -37 公害防止事業費負担 -15 -9 -8 -8 固定資産処分損 -6 -1 -3 減損損失 -121 -5
2009/3/末の未処理損失は 1,139億円で、資本金 78億円に対し、資本勘定は -966億円となっている。
武田薬品工業、第一三共、アステラス製薬、エーザイ
武田薬品工業
減益決算となったが、これは米国の事業を今後拡大するための再編に伴うもので、営業損益には再編のための費用が2423億円入っており、これを除くと実質増益となる。当期の特別損益にはこの関連で713億円の益が入っている。
期末配当を当初予定の88円から4円増やし、年間180円とし、次期も同様とする。
連結決算 単位:億円(配当:円) | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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同社は2008年3月、Abbott Laboratories との50/50JVのTAP Pharmaceutical Products Inc. を均等な価値で会社分割を実施することでAbbottと合意した。ルブロン事業をAbbot に譲渡し、残りを同社が取り込む。
2008/4/4 武田薬品工業、米国事業再編
同社は更に、米国バイオ医薬品会社 Millennium Pharmaceuticalsを約88億ドルで買収することを発表した。
2008/5/13 2008年3月期 注目会社決算 武田薬品工業
この2つの関係で以下の損益が当期の決算に折り込まれた。
TAP社の分割・子会社化 | ミレニアム社の買収 | 合計 | ||
販売費一般管理費 | 無形固定資産償却費 | 258億円 | 427億円 | 685億円 |
のれん償却費 | - | 139億円 | 139億円 | |
研究開発費 | インプロセスR&D費 | 543億円 | 1,056億円 | 1,599億円 |
合計=営業損益 | -801億円 | -1,622億円 | -2,423億円 | |
特別利益 | ルプロン事業譲渡益 | 713億円 | 713億円 |
また、今期には為替の影響で、営業損益で前期比 171億円の赤字となっている。(売上高で791億円のマイナス)
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第一三共
連結決算 単位:億円(配当:円) | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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同社は当期にRanbaxy Laboratoriesを子会社化した。(2008年11にランバクシー株の63.9%を取得した。)
2009/1/8 第一三共、ランバクシーの評価損計上 参照
2008年9月に米FDAが品質問題を理由にRanbaxyのインドの2工場から米国への輸入を禁じた。更に本年2月にはFDAがインドのパンタ・サヒブ工場のデータの一部に虚偽があるとして、これを使った製品を認可しないとした。
米国市場への輸出の激減で、Ranbaxyの業績は悪化している。
同社の株価は低迷を続け(上記記事参照)、本会計年度末における同社の株価が第一三共の取得価格に比べ50%以上下落したため、株式評価損を計上、連結決算では特別損失に「のれん償却」 3544億円を計上した。
取得価額は4883億円で、ネット資産を引いた「のれん」は4087億円となり、20年で均等償却する予定であった。(当期の通常償却 108億円)。今回、3544億円を追加償却した。
Ranbaxy の影響を除くと、当期の損益は以下の通りとなる。
売上高 | 営業損益 | 経常損益 | 当期損益 | |
08/3 | 8801 | 1568 | 1691 | 977 |
09/3 | 8421 | 883 | 546 | -3358 |
うち | ||||
Ranbaxy損益 | 386 | 6 | -239 | -162 |
同買収関連 | -198 | -198 | -3695 | |
上記以外損益 | 8035 | 1075 | 983 | 499 |
前年比 | -766 | -493 | -708 | -478 |
* 特別損失にのれん償却 -3544
売上高については、非医薬品の日本乳化剤などを日本触媒に売却したことによる減や、前年度に欧州子会社の決算期変更による余分の3か月分(2007/1〜3)が加算されていることなどで前期比減となった。
営業損益では売り上げ減の影響のほか、海外事業強化のための販管費増、研究開発費の増で減益となった。
同社では2009年の課題の1つとして、複眼経営の実現に向けたランバクシーとの協業体制の推進を挙げている。
・FDA問題の早期解決
・バリューチェーン機能の協業体制の構築
・グローバルリーチ活用策の推進
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付記
2009/6/1 第一三共、決算を訂正、最終赤字 1200億円減
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アステラス製薬
連結決算 単位:億円(配当:円) | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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研究開発費が245億円増えたため、減益となった。
開発プロジェクトの進展に加え、アルツハイマー型認知症治療薬のライセンス料、買収したアジェンシス社の研究開発費の追加、つくば研究センター新研究棟の償却費などで増加となった。
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エーザイ
当期に10円増配して年間140円とし、次期も更に増配して年間150円とする予定。
連結決算 単位:億円(配当:円) | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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エーザイは2007年12月、がん・救急治療に強みを持つ米国バイオファーマ企業であるMGI PHARMA, INC を総額約39億米ドルの現金にて買収する最終契約を締結した。
このため、昨年度と本年度の損益には MGI Pharma 買収に伴う特殊整理を含んでいる。
これを除外すると、以下の通りで、研究費は増加したが、営業損益は増益、当期損益は若干の減益にとどまった。
連結損益 単位:億円(配当:円)
売上高 営業損益 研究費 経常損益 当期損益 08/3 7343 1108 1378 1119 707 09/3 7817 1203 1553 1111 693 増減 474 95 175 -8 -14
金融危機の影響で開発資金獲得に苦しむ豪州の2つのレアアースのメーカーに中国企業が相次いで出資する。
1.Arafura Resources
豪州のNorthern TerritoryのNolans Bore レアアース・リン・ウラン鉱床の権益100%を保有するArafura Resources は、4月29日、中国の資源開発グループである有色金属華東地質探査局( East China Exploration & Development Bureau )から25%(24百万ドル)の出資を受け入れる正式契約に調印した。
昨秋以降の金融危機の影響で開発資金の調達難に陥り、プロジェクトを継続するには、中国資本を受け入れるしかなかった。
資金はNolans Bore鉱床のレアアース開発に使用する。
同鉱床は1995年に発見され、1999年にNorsk Hydroが露頭サンプリング・分析を実施している。2000年にArafra 社が権益を取得、資源量確認ボーリングを実施中。
有色金属華東地質探査局はまた、Arafura のNorthern TerritoryのJervois 鉄/バナジウム計画にも51%(800万ドル)を出資する覚書を締結した。
2. Lynas Corp
西豪州にあるレアアース鉱 Mt Weld 鉱を開発する Lynas Corp. はこのたび、中国の国有非鉄大手、中国有色鉱業集団(China Nonferrous Metal Mining Co.)から252百万豪ドルの出資(マジョリティ)を受け入れることを決めた。
認可を待って、新株を発行する。出資に加え、有色鉱業集団はLynas に対し、中国の銀行からの104百万米ドルと80百万米ドルの2つの借入契約に保証を与える。
これによりLynas は合計で522百万豪ドルの資金を得るが、このうち、286百万豪ドルがMt Weld 鉱の開発の第一段階に使われる。
Lynas も開発資金に苦しんでいたが、中国からの提携申し入れを断っていた。
これからのレアアース資源開発では、「中国と繋がっていないことが重要」だと認識、「自分たちは中国と提携する意思はない」としていた。
しかし、95百万ドルの開発資金の供給契約を結んでいたヘッジファンドが、昨秋以降の金融危機と資源価格の暴落の影響などにより資金供給を拒否したため、2月10日にMt Weld 鉱の開発計画の中断を発表した。
豪、マレーシア、日本などの政府系機関や需要家などに支援を要請したが、日本の需要家も支援に慎重で、万策尽きて、中国に依存することとなった。
付記
豪州のForeign Investment Review Boardは9月24日、中国有色鉱業の出資を50%未満、取締役を50%未満にするよう要求、有色鉱業はこれを拒否し、撤退した。
ーーー
Lynasは、1983年にYilgangi Gold NLとして設立され、1985年にLynas Gold NLに改称し、西オーストラリア州Pilbara地域で金探鉱を行っていたが、2001年6月、金 プロジェクトを売却し、社名をLynas Corporation に変更、2002年5月にMt.Weld 鉱床の権益100%を取得し、同鉱床の探鉱開発に集中していった。
Mt.Weld 鉱の鉱物資源量は、770万t、酸化レアアース品位12%となっている。
(精測鉱物資源量120万t :品位15.7%、概測鉱物資源量500万t
:品位11.8%、予測鉱物資源量150万t :品位9.9%)
同社はMt.Weld プロジェクトのコスト削減のため、中国山東省にレアアース分離プラントの建設を計画した。
しかし、2006年に入って、レアアース産業に対する生産抑制、輸出制限、増価税リベート見直し、環境規制など中国政府による締め付けが強くなったことから、同社は中国でのレアアース分離プラント建設を断念し、マレーシア東海岸のPahang 州 Kuantan のGebeng Industrial Area にプラントを建設することとした。
計画では酸化レアアースの生産量を当初年間5千トン、将来21千トンとしている。
Mt.Weld レアアース鉱床からレアアース鉱物(モナザイト等)を採掘、西オーストラリア州南部のEsperance 港からマレーシアへ海上輸送、分離・精製し、更に最終消費者の要求にあったレアアース製品とした後、米国・欧州・日本などへ販売する。
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レアアースは中国の生産量が世界の96%を占めている。
中国のレアアースの過度な開発問題について、全国人民代表大会(全人代)代表の周洪宇氏が全人代に提出した「レアアース生産・輸出の厳格な規制を求める建議」が、中国で幅広い注目を集めている。
周氏は「3年以内に、レアアースの輸出量を現在の10万トン前後から2、3万トン前後に減らし、レアアース金属の高利潤と持続可能な発展維持に向け、中国は長期的なレアアースの価格決定権を確保しなければならない」と強調している。
2009/4/22 中国がレアアースの輸出を制限?
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中国 国土資源部は5月7日、資源保護のため、2009年のタングステン、アンチモニー、レアアースの生産量を下記の通りに制限すると発表した。
タングステン鉱 68,555トン
アンチモニー鉱 90,180トン
レアアース鉱 82,320トン国土資源部ではまた、これら3つの資源に関しては2010年6月30日までは、新しい掘削ライセンスの申請を受け付けない。
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このため、日本のレアアース需要家は中国以外にソースを求めつつある。
Mt.Weldでの採掘、マレーシアでの精錬の計画は、完全に中国の影響を排除できる「脱中国」プロジェクトとして日本の需要家も注目していた。
しかし、豪州メーカーの中国資本の受け入れに、日本企業関係者は「中国とは関係ないプロジェクトだから価値があるのに、中国の出資を受け入れたら何の魅力もない」としている。
2009/5/18 三井化学、事業構造改革を実施、千葉地区で出光興産と生産最適化検討
三井化学は5月12日、経営概況説明会を開き、2009年3月期の業績の説明とともに、事業構造改革の説明を行った。
事業戦略見直しの基本方針は、国内での勝ち残り、海外(特にアジア)での事業拡大で、内容は以下の通り。
国内 @千葉地区における出光興産との生産最適化
A体質改善のための設備統廃合の推進
B景気変動の影響を受けがたい事業の強化・拡大の加速
C機能フィルム・シート事業の強化・拡大
海外 @Sinopecとの提携による中国事業拡大
Aベトナム・ニソン計画参加
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出光興産との生産最適化
三井化学と出光興産は5月11日、出光興産・三井化学の強みを活かした「千葉地区における生産最適化」の検討開始で合意したと発表した。
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三井化学は住友化学との経営統合計画の解消後、2004年2月に同じ千葉にコンビナートを持つ出光興産/出光石油化学と包括提携で基本合意した。 原料・留分から石化製品、また、工場基盤・業務を含めた幅広 い領域にわたり、石油精製と石油化学という業種や企業の枠を超えた業務提携の検討を進め、千葉地区コンビナートの国際競争力の強化を目指すこととした。
2004年11 月、三井化学と出光興産は包括提携の一環として、千葉地区へ輸入するナフサを大型タンカーを使い共同輸送すると発表した。
2004年5月、三井化学/出光興産/出光石油化学は三井化学と出光石化のポリオレフィン事業の統合を発表した。
統合会社プライムポリマーは三井化学 65%/出光興産
35%で設立され、2005年4月に営業を開始した。
(出光石油化学は2004年8月に出光興産が吸収合併した。)
最近ではコンビナートナフサ供給連携事業の実施を決めている。
2009/4/11 平成21年度 コンビナート連携石油安定供給対策事業
今回、両社は以下を検討する。半年から1年程度の期間で詳細検討を進め、段階で有限責任事業組合(LLP)設立等により、最適体制を発足させる。
1.
両社ナフサクラッカーを中心とした生産最適化
2.
出光・千葉製油所のリファイナリー装置も含めた生産最適化
3. 既に両社でJVとして運営している、ポリオレフィン・フェノール以外の両社石化誘導品の生産最適化
ポリオレフィンは上記のプライムポリマー
フェノールは出光興産内の千葉フェノール(三井 55%/出光 45%)
(フェノール能力 200千トン、アセトン能力 60千トン)
4.
生産最適化にあたっては、有限責任事業組合(LLP)制度の活用を検討
これにより、
1.
ナフサクラッカーを中心とした最適生産体制の構築、精製・石化のインテグレーションによる国内トップクラスの競争力の実現
2.
石化誘導品におけるリファイナリー留分の更なる有効活用等による競争力の強化
を狙う。
千葉地区コンビナートには、4つの製油所(83万バレルの製油能力=国内の2割)、5つのエチレンセンター(エチレン能力 247万トン=国内の3割)がある。
同社では三井・出光の生産最適化により、
・合計能力100万トン、売上規模2000億円の競争力のあるナフサクラッカーの一体的体制構築
・「クラッカーを中心にした石油精製〜石化誘導品の生産最適化」という国内初のビジネスモデルにより、国内最強の競争力が実現するとしている。
これは三井と出光の千葉地区だけでの「生産最適化」の検討であって、両社の合併の検討ではなく、最適化のメリットをどのように分け合うかが問題となろう。
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B景気変動の影響を受けがたい事業の強化・拡大の加速
農業化学品事業の早期規模拡大を目指す。
同社は2007年3月に第一三共から三共アグロを買収した。三共アグロは事前に三共ライフテックからアメニケア事業(防蟻剤、防疫剤)を譲り受けた。
三井化学は2009年4月に農業化学品事業を会社分割して三共アグロに承継させ、原体事業と製剤事業を一体化し、三井化学アグロに改称した。
C機能フィルム・シート事業の強化・拡大
第一ステップとして、東セロを核とする機能フィルム・シート事業の再編・集約を行う。
ーーー
海外計画は以下の通り。
@Sinopecとの提携による中国事業拡大
三井化学は 4月15日、シノペックとの間で協力関係拡大の覚書を締結した。
両社は2006年4月に折半出資により、ビスフェノールA合弁会社「上海中石化三井化工有限公司」を設立し、本年1月に年産12万トンのプラントを稼動し、順調に推移している。
今回、両社が合意した主な内容は、以下の通り。
・フェノール/アセトン、ビスフェノールA及びその誘導品(例えばMIBK)等の協力関係について検討すること
フェノール、MIBKはFS中で、他にEPT等の機能製品を検討している。
・以下の事項に関し協力の可能性を検討すること
a) 技術交流並びに共同研究開発
b) その他のプロジェクト合弁
c) エンジニアリングサービス
なお、前日の4月14日に、三菱化学とシノペックは、相互の技術、原料、市場における優位性を活かし両社の提携をより一層強化して事業を拡大加速することを目的とする戦略提携パートナー関係を確立するための基本合意に至ったと発表している。
2009/4/15 三菱化学、シノペックと事業戦略提携の基本合意
Aベトナム・ニソン計画参加
出光興産と三井化学は3月27日、クウェート国際石油(KPI)・ペトロベトナム(PVN)と、「ベトナム ニソン製油所・石油化学コンプレックス」の建設に向けて、装置の詳細設計や経済性、資金調達方法などを検討する合弁会社「ニソン精製有限責任会社(仮称)」に
合弁会社の概要
(1)会社名 (仮称)ニソン精製有限責任会社
<英文名:Nghi Son Refinery &
Petrochemical Limited Liability Company>
(2)所在地
ベトナム社会主義共和国タインホア省ニソン経済区
(3)設立 2008年6月投資ライセンス取得後設立
(4)資本金 2億米ドル(約200億円)
(5)出資比率 出光 35.1%、クウェート国営石油
35.1%、PVN 25.2%、三井 4.7%
(6)精製能力 日量20万バレル
(7)建設費用 約58億米ドル(約5,800億円)
合弁会社設立後、2年間かけて装置の基本設計や経済性、資金調達方法などを検討し、建設移行の場合は2013年末の操業開始を目指す。
三井化学は出資によりアロマ原料を安定的に調達することにより、PTAおよびフェノール事業の安定化と収益拡大につなげるとしている。
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