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これは下記のブログを月ごとにまとめたものです。
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2009/4/1 中国アルミのRio Tinto への出資のその後

Rio Tinto 本年2月12日、中国国有アルミ大手、中国アルミ業公司(Chinalco)から現金で195億ドルの出資を受けると発表した。

1)Chinalco はRio が世界各地に持つアルミ、銅、鉄などの利権をJVへの出資の形で取得する。対価は合計123億ドル。
2)Chinalco
は Rio の両本社の転換社債を72億ドルで取得する。
  全て転換されれば、Rio Tinto 全体への出資比率は現在の9%
から18.0%に増える。

2009/2/13  中国アルミがRio Tintoに出資、鉱山利権を取得

本件の現状は以下の通り。

資金問題:

Chinalco は327Rio Tinto との提携のための資金 210億ドルがアレンジできたと発表した。

China Development Bank が主導するコンソーシアムとの契約を締結したもので、今回の取引のための195億ドルの融資契約と、運転資金や本取引に関係するその他の支出のための15億ドルのスタンドバイ・ファシリティから成っている。

コンソーシアムの他のメンバーはいずれも国営銀行の、Export-Import Bank of ChinaBank of China (国営商業銀行)、Agricultural Bank of Chinaである。

ーーー

豪州政府の承認問題:

本件の成立には2つの政府承認が必要となる。

第一は豪州の独禁法当局(Australian Competition and Consumer CommissionACCC)で、 Trade Practices Act 1974 に基づき、取引が競争を制限するかどうかを審査する。

第二はForeign Investment Review Board (FIRB) で、Foreign Acquisitions and Takeovers Act 1975 に基づき、国の利益に反するかどうかで判断する。FIRBの勧告に基づき、財務相が最終決定を下す。

ACCC325日、本件に反対しないと発表した。
Chinalcoによる事業参加が競争を著しく減らす可能性が少ないと判断した。

Rio Tinto の豪州の鉄鉱石事業と中国の製鉄メーカーChinalco との垂直統合が、中国の製鉄メーカーのために鉄鉱石価格を競争レベルよりも下げるような影響力を与えることはないと判断した。

ボーキサイト、銅、アルミナについての豪州市場での競争についても、Rio Tinto Chinalco の事業の重なりは少なく、これら市場で競争を減らす可能性は少ないと判断した。

一方、FIRB316日、レビューを6月まで延長した。
(原則
30日で判断するが、重要案件については90日間の延長が可能)

Rio Tinto の第三位の株主のAustralian Foundation Investment Co (AFIC) ChinalcoRio Tintoの事業経営に参加することに対し、懸念を表明している。Chinalcoが中国の国営企業であること、需要家であるとともに競合会社でもあることを問題視した。
AFICの取締役にBHP Billiton の会長が入っている)

豪州の資源の需要家である中国が価格や生産に影響を与えるのを懸念する声がある一方、これを拒否すると中国と豪州の貿易に悪影響を与えるとの懸念もある。

2008年の調査では外国政府がコントロールする企業に対する投資規制強化を強く支持する人が85%に達する。

これに対し、Rio Tintoは、この取引で390億ドルの借入金で苦しむ同社にとって必要な金利の安い資金が手に入ると反論している。
この取引が成立しない場合、借入金返済のため資産売却を急ぐ必要が出てくるとする。
2009年に入って
大手鉱山会社が世界的経済不景気を理由に多数の解雇を発表しているが、更なる解雇を示唆している。

最終的には条件付きで認めるのではないかとの見方が強い。

ーーー

豪州3位の鉱業会社で世界2位の亜鉛メーカーのOZ Minerals と、中国の国有企業 五鉱集団(Minmetals)の子会社の五鉱有色金属Minmetals Non-ferrous Metals)は2月16日、Minmetals OZ Minerals 1株82.5豪セントで全株式を取得する実現案契約を締結したと発表した。

2009/2/21 中国五鉱集団、豪州OZ Minerals を買収 

これに対しては3月27日、豪州財務相が声明を発表、OZ Minerals Prominent Hill 鉱山は南豪州のWoomera Prohibited Area (豪軍の武器テスト場)にあり、これが含まれる限り、本案は承認できないとした。

Prominent Hill の銅/金プロジェクトは本年2月に生産開始した。

 Reserves 確定鉱量  1.4Moz gold, 0.95Mt copper
 Resources 埋蔵鉱量(確定鉱量+推定鉱量)  7.4Moz gold, 2.5Mt copper

これを受け、OZ Minerals は五鉱集団と協議するとしている。

付記 2009/4/25 豪州政府、中国五鉱集団による豪州OZ Minerals 買収を条件付で承認

ーーー

中国の豪州進出が目立つなか、首相や国防相の姿勢を巡り、政治問題化してきた。

発端は国防相Joel Fitzgibbonとシドニー在住の豪州籍を持つ中国系ビジネスウーマンHelen Liu との関係で、軍治安当局が安全保障上の問題があるとして調査を始めた。
LiuWorld Federation of Overseas Chinese Association の副会長で、一族は中国人民軍と密接な関係をもっていると言われている。

国防相はLiuを個人的な友人としているが、2002年と2005年(野党時代)に訪中旅行の費用をLiuに出してもらっていた。しかも先週まで、議会の証言でそれを隠していた。Liuの家族の所有するタウンハウスを借り、洋服もプレゼントされていた。

Kevin Rudd 首相は中国語を話す元外交官で中国通を自負しており、政権発足以来、中国との関係強化を進め、最近では、国際通貨基金での中国の役割拡大について、G20首脳会議の場で取り上げると表明している。

野党党首のMalcolm Turnbull は国防相の辞任を要求、首相を北京の移動大使のように行動していると批判した。

 

これに対し財務相は野党党首が国民の間の潜在的な反中感情をあおり、黄禍論をあおっていると逆批判した。豪州財務相が五鉱集団のOZ Minerals 買収に関し、Prominent Hill 鉱山が含まれる限り、本案は承認できないとしたことに対し、Sydney Morning Herald は、政府は恣意的な投資障壁をつくり、「中国に立ち向かっている」ように見せかけているが、これは中国マネーは危険だとのメッセージを国民に与えるもので、「赤禍ヒステリア」を起こしかねないとしている。

鉱山は武器テスト場から150km離れており、安全保障上の懸念はないという。

 


2009/4/2 温暖化ガス削減中期目標

政府は3月27日、首相直轄の地球温暖化問題に関する懇談会の中期目標検討委員会(座長・福井俊彦前日銀総裁)を開き、2020年時点の温暖化ガス排出削減 の中期目標案を公表した。 

選択肢として6つのケースを考えた。(1つは分析継続中)

  GHG   下図
05年比  90年比
 ・努力継続
  (既存技術の延長線上で機器等の効率改善に努力し、
   耐用年数の時点でその機器に入替え)
 -4%  +4%   ケース@
 ・最先端技術の最大導入
  (規制を一部行い、新規導入の機器等を
   最先端のものに入替え)
 -14%  -7%   ケースB
 ・最先端技術導入の義務付け
  (規制に加え導入の義務付け等を行い、
   新規導入の機器等を最先端に入替え。
   更新時期前の既存の機器等も
   一定割合を最先端に入替え)
 -21〜
 -22%
 -15〜
 -16%
  ケースD
       
先進国全体で -25%、国別では、      
 ・限界削減費用を均等にするケース   -6〜
 -11%
 ±0〜
 -3%
  ケースA
 ・GDP当たり対策費用を均等にするケース        ケースC(分析継続中)
 ・一律 -25%  -30%  -25%   ケースE

政府は残る1案(ケースC)の確定を急ぎ、試算を参考に国民からの意見を聴いた上で、今後10年間の温暖化対策の目標値を6月までに定める。


付記

麻生首相は6月10日、首相官邸で記者会見し、日本の2020年時点の温暖化ガスの中期目標を海外から購入する排出枠などを除いて05年比15%削減(1990年比8%減)にすると表明した。
同時に目標実現に必要な政策や家計負担も提示。太陽光発電を現状の20倍導入するほか、1世帯あたり年間約7万円超の負担増が必要だと試算した。


検討委では、これまで主に化石燃料の燃焼に伴って排出されるCO2を対象に分析していたが、今回は代替フロンなど京都議定書で定められている温室効果ガスすべてを試算に含めた。


付記

日本経団連は5月12日、温室効果ガスの2020年までの中期削減目標について、政府が示した6案のうち90年比4%増(05年比4%減)のケース@が合理的だとする意見を発表し、政府に提出した。

温暖化対策が欧米に比べ進んでいる日本は、同じ量の二酸化炭素を削減するのにより多くの費用が必要と主張。オバマ米大統領が掲げた05年比14%減など、欧米の目標達成に必要な費用と同じ負担で日本が対策をとるとケース@が妥当だとしている。

これに対し、斉藤環境相は12日の閣議後会見で「世界の笑い物になる。技術を持った日本が後ろ向きの目標を出すのは国際社会での地位をおとしめる」と批判した。

参考 2009/3/21 経済団体の温暖化意見広告

日本鉄鋼連盟の進藤 環境・エネルギー政策委員長(新日鉄副社長)は、5月22日の会見で、「国民に過剰な負担にならないように国益を主張するのが行政責任者の役割だ」と厳しく反論した。

日本経団連の三村副会長(新日鉄会長)は5月22日の講演で、90年を基準年にCO2排出量削減を目指すことを決めた京都議定書を「外交上の失敗」と批判し、中期目標は慎重に検討すべきとの考えを示した。



それぞれのケース実現のために必要な対策は研究機関により異なるが、日本エネルギー経済研究所の分析では以下の通り。

  太陽光発電 次世代自動車 省エネ住宅 高効率給湯器
@ 現状の4倍
住宅:130 万戸(455 万kW)
工場・ビル:120 万kW
新車販売の10% 次世代省エネ基準(平成11年基準)を
満たす住宅が、
新築住宅の70%、新築建設物の80%
現状の約70 万台から
約900 万台まで普及
B  現状の10 倍
住宅:320 万戸(1120 万kW)
(新築持家住宅の7割)、
工場・ビル:300万kW)
新車販売の50%、
保有台数の20%
新築住宅の80%、新築建築物の85% 約2800 万台まで普及
D 現状の約40倍
住宅:1000 万戸(3500 万
kW)
(新築持家住宅すべて、
既築も毎年60 万戸)
工場・ビル:2100 万kW
新車販売の100%
保有台数の40%
新築住宅の100%
(既築はすべて平成4年基準に改築)、
新築・既築建築物の100%
約4400万台
(全世帯の9割)まで普及
E 同上 同上 同上 同上

試算は、産業構造が現状のまま推移するとの仮定に基づいており、政府内でも検討している「グリーン・ニューディール」政策など低炭素社会に向けて経済・社会構造をどこまで変えられるかという点は加味していない。

ケース@をベースとし、それぞれのケースの影響は以下の通り。

  実質GDP 押下げ 民間設備投資
(2020 年で)
失業者増加 世帯当たり
可処分所得押下げ
(2020年所得)
家庭の光熱費
支出増加
(世帯当たり、年)
2020 年までの
累積
金額 失業者 失業率 金額 金額
B 0.5〜0.6% −1〜
 +3 兆円
−0.8〜
 +3.4%
11〜
 19 万人
0.2〜
 0.3%
4〜
 15 万円
0.8〜
 3.1%
2〜
 3 万円
13〜
 20%
D 0.8〜2.1% ±0〜
 +8 兆円
−0.2〜
 +7.9%
30〜
 49 万人
0.5〜
 0.8%
9〜
 39 万円
1.9〜
 8.2%
6〜
 8 万円
35〜
 45%
E 3.2〜6.0% −13〜
 +11 兆円
−11.9〜
 +12.5%
77〜
 120 万人
1.3〜
 1.9%
22〜
 77 万円
4.5〜
 15.9%
11〜
 14 万円
66〜
 81%

政府内では
ケースB(90年比 7%減)と
ケースD(15〜16%減)
の2案の実現可能性が高いとの声が多い。

ケース@(4%増)では国際交渉で他国・地域から批判されるのは確実で、
ケースE(
25%減)では経済への負担が大きすぎるとする。(検討委の委員からも「現実的ではない」との意見が出た。)

ーーー

これについて、地球温暖化問題に取り組むNGOの代表が同検討委員会の検討状況について、厳しく批判するコメントを発表した。

1. CO2排出量を90年より増やすオプションや京都議定書の目標値よりも低いオプションが提案されており、日本としての低炭素社会づくりへの意欲が全く見られない。科学の要請に反し、国際交渉の足を引っ張るもので、後ろ向きの提案である。
   
2. 対策費用ばかりが負担として強調されているが、対策をとらない場合の悪影響へ対応する費用との比較は全く考慮されていない。
   
3. 温暖化対策によるエネルギー削減で得をする費用が、モデルによっては過小評価されている。
   
4. 新たな温暖化対策費用追加による雇用創出効果、内需拡大の経済効果が全く考慮されていない。
   
5. そもそも温暖化防止のために何がどこまで必要なのかというバックキャスティングの発想で議論が行なわれていない。中期目標については、地球の平均気温上昇を産業革命前に比べ、2℃よりはるかに低く抑えるため科学的に整合した野心的な削減目標(1990年比25〜40%削減)を掲げるべきである。
   
6. これまでの議論に市民社会の参加・関与が全く認められておらず、産業界の主張に偏った議論が行なわれている。今後のプロセスについては、市民・NGOの参加を確保すべきである。

2009/4/3 ダウ、Rohm & Haas の買収を完了

ダウは4月1日、Rohm & HaasR&H)の買収を完了したと発表した。

R&Hは同日付で上場廃止となり、ダウの新しい事業部門 Advanced Materials division に帰属する。

なお、当初より
売却を予定していたR&Hの製塩事業の子会社Morton Salt については、ドイツの肥料、園芸、製塩会社のK+S Aktiengesellschaft に16.75億ドルで売却することが決まったと発表した。

Morton Salt は米国の塩メーカーで、1848年創業で、1889年にJoy Morton が買収して Joy Morton & Companyに改称、更に1910年にMorton Salt Companyとなった。1999年にR&Hが買収した。

包装にあるMorton Umbrella Girl とスローガン “When it rains it pours” で有名で、1914年から使用されている。

When it rains it pours は通常は「雨が降れば土砂降り」という意味だが、ここでの後の it はMorton Salt のことで、「雨が降っても、(固まらずに、図のように)さらさらとこぼれる」という意味。

付記

K+Sは101、買収が完了したと発表した。
評価額16.75億ドルから債務を控除、調整を行い、現金で15.76
億ドルの支払いとなった。

ーーー

ダウ は昨年7月10日、 188億ドルでRohm and Haas (R&H)を買収する契約を締結したと発表した。
現金153億ドルで全株式を買収し、R&Hの35億ドルの借入金を引き継ぐ。

2008/7/11 速報 Dow ChemicalRohm and Haas を買収

同社はクウェートのPICとの合弁会社 K-Dow Petrochemicals 設立により、事業売却額マイナス出資で75億ドル、配当15億ドルで、合計90億ドル(税引後では70億ドル)を受け取ることとなっていた。

Dow はR&H 買収資金188億ドルを、つなぎ融資 130億ドル、Warren Buffett のBerkshire Hathaway Inc. からの投資 30億ドル、Kuwait Investment authorirty からの投資10億ドルで賄うことにしており、PICへの売却資金でつなぎ融資の一部を返済する予定であった。

しかし、本年1月1日のスタートを目前にして、昨年12月28日、K-Dow Petrochemicals が破談となり、この金が入らなくなった。

2008/12/29 ダウとクウェートの石油化学合弁、一転破談に

1月23日、ダウはR&H との統合でFTCの承認を得たと発表した。ECは既に1月8日に承認しており、買収の全ての条件が満たされた。

2009/1/26 FTC、Dow と Rohm and Haas の統合を条件付で承認

契約ではすべての条件が満たされた2日後に買収を実行することとなっており、1月27日が期限となる。

しかし、DowはR&Hに対して27日に買収を実施しない旨伝えた。

つなぎ融資は1年間の契約のため、 K-Dow 破談により、このまま買収を行えば資金繰りが危うくなるとして、格付会社が投資基準以下への格下げを行うことを明言しており、格付を投資適格にとどめることが必須であるとするダウとしては資金繰りの目処をつけるまでは買収を行えない状況に陥っていた。

R&Hは1月26日、契約の履行を求め、Delaware州の裁判所にDow を訴えた。この裁判は3月9日と決まった。

そして、裁判の始まる当日、ダウはR&H 及びその大株主との間で、これまでと異なる条件で41日までに買収を行うことで合意した。

2009/3/10  ダウ、Rohm & Haas 買収で合意 

当初発表の1株 $78 でのR&H株式買収(153億ドル)のうち、$63 124億ドル)は現金で支払い、残りの$1529億ドル) は優先株で渡す。

R&H2大株主(ヘッジファンドのPaulson & Co. Inc.Haas Family Trusts はダウの出す永久優先株25億ドルを購入、更に、そのうちのHaas Family Trusts はダウのオプションでダウの株式に5ドル投資する。
(ダウはオプションを行使し、
Haas Family Trusts に追加の5億ドルの投資をしてもらうこととなった)

ダウはつなぎ融資の条件変更に成功した。
  当初契約  130億ドル 20104月まで
  
改正     合計125億ドル、うち45億ドルは2010480億ドルは20114まで(1延長)

このほか、Berkshire Hathaway Inc. から30億ドル、Kuwait Investment authorirty から10億ドルは従来どおりとなっている。

また、ダウは史上初の減配を行い、年間10億ドルの資金を節約した。
   2009/2/23 
Dow Chemical、史上初の減配

今回のMorton International の売却額は16.75億ドルで、当局の承認などを経て、年央に完了する見込み。

ダウは上記の処理を通じ、つなぎ融資の額を減らすとともに、融資期限の延長により、その間に有利な事業売却を検討できることとなった。

しかし、化学業界の不振はしばらく続くと見られており、同社の将来の資金繰りに対する懸念は依然収まっていない。

Standard & Poor's は4月1日、ダウの格付けをBBBからBBB-(ジャンクボンドの1ランクだけ上)に引き下げた。

Moody's も422Baa3 (ジャンクボンドの1ランクだけ上)に引き下げ、"negative outlook”(否定的な見方)とした。
これは、12〜18ヶ月内に更に引き下げる可能性があるという意味。

ダウではK-Dow Petrochemicals PICの代わりを求めて、国営の石油・ガス会社2社と交渉しているとされるが、そのほか、
・Total Group
との合弁のオランダの石油精製 Total Raffinaderij Nederland NV のダウ持分(45%)の売却
・東南アジアのオレフィン及び誘導品JVのダウ持分の売却
の交渉をしている。

ーーー

R&H の各事業が組み込まれる Advanced Materials Division は以下の通りとなっている。

なお、FTCと同意審決で、ダウの以下の設備が売却対象として指定されている。
1) DowClear Lake, Texas のアクリルモノマー製造設備
2) Dow St. Charles, Louisiana のアクリルポリマー製造設備
3) DowAlsip, Illinois のアクリルポリマー製造設備
4) Dow Torrance, California のアクリルポリマー製造設備
5) DowSouth Charleston, West Virginia のアクリルモノマー研究開発グループ
6) Dow Cary, North Carolina のアクリルラテックスポリマー研究開発グループ
7) その他、これら事業の関連施設

 


2009/4/4  日本ポリスチレン 2009年9月末に操業停止、解散へ

三井化学と住友化学は4月2日、両社の共同出資会社である「日本ポリスチレン(JPS)」を解散し、ポリスチレン事業から撤退することを決めたと発表した。本年9月末を目途に大阪と千葉の工場の操業を停止し、その後解散する。

今後ますます厳しさを増す事業環境下においては、中長期にわたって安定的に収益を確保することは困難であると判断した。

同社の損益は2004年3月期以降、昨年までは黒字であった。
                      単位:百万円
   売上高 営業損益 経常損益 当期損益
07/3  23,443   557   531   224
08/3  24,248   919   902   675

日本ポリスチレンは三井化学(旧 三井東圧)と住友化学の50/50JVとして1997年8月に設立され、199710月に営業開始した。 (同じ 1997年10月に三井化学が誕生)

三井東圧は宇部にSMプラントを持ち、大阪工業所に年産 133千トンの生産設備(GP,HI各2系列)を保有していたほか、サンスチレン(電気化学と三井東圧の合弁会社)から年間17千トンのPSを引き取っており、実質的には年産150千トンの生産設備を保有していた。
一体化に伴い、サンスチレンの株式は電気化学に譲渡した。

なお、三井化学は2004年1月、宇部のSMプラントを太陽石油に譲渡した。

住友化学は、昭和電工とのJV・日本ポリスチレン工業(
NPSのプラントが停止、同社から離脱したが、千葉に独自に建設した92千トンの設備(GP、HI各1系列)を保有していた。

現在の能力は大阪が62千トン、千葉が100千トンで、合計162千トンとなっている。

日本のポリスチレン業界は再編が進み、現在は
・PSジャパン(
旭化成  45%三菱化学 27.5%出光石油化学 27.5%)
・東洋スチレン(電気化学 50%
新日鉄化学 35%ダイセル化学 15%)、
・JPS

DIC(旧 大日本インキ化学)
4社体制となっているが、JPSの解散で3社体制となる。

2004年6月、PSジャパンの3社と大日本インキ化学(現 DIC)はポリスチレン事業を再編・統合することに基本合意したと発表した。DICのPS事業をPSジャパンに営業譲渡し、出資比率を旭化成 40%、三菱化学 20%、出光興産 20%、DIC 20% とするもの。

しかし、これに関しての公取委との交渉は難航し、予定の2004年10月の統合は延期され、2005年4月、各社は公取委の「競争を実質的に制限する恐れがある」との指摘を受け、基本合意を解消した。

この公取委判断に対する批判: 
  
2006/02/20  競争政策研究会の「企業結合審査における改革の進展状況と今後の課題」

 

PS業界の再編の推移は以下の通り。

PS業界の再編については 2006/10/7 日本のPS業界の変遷

 

工場別能力は以下の通り (2007/12/末 単位:千トン/年)

会社名 工場 能力 備考
PSジャパン
旭化成・千葉   207 旭化成      45%
三菱化学    27.5%
出光石油化学 27.5%
三菱化学・四日市    85
旭化成・水島   108
出光・千葉    45
合計   445
DIC 四日市   131 (旧 大日本インキ化学)
東洋スチレン 電気化学・千葉    87 電気化学    50%
新日鉄化学  35%
ダイセル化学 15%
新日鉄化学・君津   138
ダイセル化学・姫路    53
合計   278
日本ポリスチレン 住友化学・千葉   100 住友化学   50%
三井化学   50%
三井化学・大阪    62
合計   162
合計    1,016 JPS撤退後は854

PS業界は2つの点で他のレジン業界と異なっている。

第一は「需要に合わせた能力」で、PSジャパンの前身のA&Mスチレンの発足時に親会社負担で老朽設備を廃棄した。
東洋スチレン発足時には電気化学が、PSジャパン発足時には出光石化が設備を廃棄している。

第二は儲からない輸出をやめたことで、2001年2月に中国がPSのダンピング調査を開始、同年12月には「損害なし」として調査が終結したが、業界では2002年頃から輸出を減らし、現在では月2千トン弱となっている。

2007年の能力が1,016千トン、内需が862千トン、輸出が44千トン、内需計906千トンとなっている。

この余剰能力がないことが、逆にPSジャパンとDICの統合時に公取委から「供給余力がない中で一層高度な寡占市場となる」とされ、不承認の理由の一つとされた。

2008年下期から内需が前年比で大きく減少、本年に入っても更に減少が続いている。

 
  2007 2008
内需   862   768
輸出   44   37
合計   906   806
能力 .1,016  

石化業界では2000年頃にようやく「選択と集中の時代」に入り、三菱化学の四日市エチレン停止や、三井と住友の合併(のちに破談)、塩ビ各社の撤退、ポリオレフィン統合会社の再再編などが相次いだ。

その後、中国バブル(と原油価格高騰化での値上げ)で石化は一転して儲かる事業となり、この動きは止まった。

今回のグローバルな経済危機の中、再び「選択と集中」が動きだしたようだ。

昨年11月には三菱化学がABS事業から撤退することを決定、ABSの統合会社テクノポリマーJSR100%子会社とすることを発表している。

2008/11/28 三菱化学、ABS事業から撤退

 


2009/4/6 BASFCiba買収 承認

BASF42日、米国のFTCと中国商務部がBASFによるCiba買収を、ECによる条件以外の追加条件なしで、承認したと発表した。

BASFは2008年9月15日、スイスの特殊化学薬品メーカー Ciba を買収する意向だと発表した。

2008/9/19  BASFがCiba買収へ

3月12日にはECが条件付きで承認しており、これで公開買付けの条件は満たされたこととなる。
この結果、4月9日に1株50.00スイスフランでの買付けが行われ、BASFはCibaの95.8%を取得する。

ECが問題ありと指摘した点について、BASFは以下の処理を約束した。

DMA3 (dimethylaminoethyl acrylate)BASFLudwigshafen の資産の処分
・製紙向け
EEA synthetic dry strength agentCiba の 事業全体を売却
bismuth vanadate(顔料):Ciba の全世界の事業を売却
・顔料
indanthrone blueCiba know-how、供給契約、需要家リスト、在庫を処分
紙用接着剤のstyrene acrylicCiba のフィンランドの事業(及びPVC、アクリレート事業)を処分
HALS (ヒンダードアミン系光安定剤)Ciba Chimassorb 119 FL事業を処分
UV filters :第三者に技術ライセンス

BASFは今回、Ciba のChimassorb 119 FL事業(HALS)をイタリアのSabo S.r.l. に売却する契約を締結したと発表した。

BASFは本年24日、Cibaの買収承認を前提に、4月1日からの新しい組織を発表している。
Cibaの事業は Performance Products に帰属することになる。

2009/2/14 BASFCiba 統合で組織改正

ーーー

両社の業績は以下の通り。

BASF (単位:ユーロ)

  Net Sales    Income from operations
2008 2007 増減   2008 2007 増減
Chemicals  10,324   9,358   966    1,376  1,903  -527
Plastics   9,675   9,976   -301     530  1,172  -642
Performance Products   8,967   8,862   105     787   681   106
Functional Solutions   9,388   9,491   -103     151   434  -283
Agricultural Products   3,409   3,137   272     705   516   189
Oil & Gas  14,445  10,517  3,928    3,844  3,031   813
Other   6,096   6,610   -514     -930   -421  -509
合計  62,304  57,951  4,353    6,463  7,316  -853

Ciba (単位:スイスフラン)  1スイスフランは約 0.65ユーロ

  Net Sales    Operating income
before restructuring
charges
2008 2007 増減   2008 2007 増減
Plastic Additives  1,930  2,161  -231     154   323  -169
Coating Effects  1,604  1,837  -233     158   219   -61
Water & Paper Treatment  2,385  2,525  -140     96   116   -20
Corporate and others          -100  -106    6
Total  5,919  6,523  -604     308   552  -244

 


2009/4/7 イラクの油田開放、クルド人自治政府と契約の韓国企業を除外

イラク政府は37年ぶりに油田権益を外資企業に開放し、増産体制を整備して、2013年に原油生産能力を現状の日量250万バレルから460万バレルに 引き上げる。

現在、第一次、第二次開放対象が発表され、一次、二次審査で入札資格社が選ばれている。

第一次開放対象は北部の主要油田キルクークや南部の大油田ズベイル、ルメイラなど油田6カ所と、西部のアッカスなど天然ガス田2カ所。

付記
イラクは6月30日、第一次開放対象の国際入札を実施した。権益は与えず、生産量に応じ報酬を得るもの。
一日の採掘量とバレル当たり利潤を提示した。利潤でイラク側要求と大きな差があった。

Rumaila油田については、BP 66% /CNPC33% 連合がExxonMobil 80.1%/Petronas 19.9%連合を破り、落札した。
BP/CNPCは投資コストを回収した上で原油1バレル3.99ドルの利潤を得ることを提案していたが、イラク石油省はこの利潤を2ドルに引き下げるよう求めた。さらに、ルマイラ油田の一日の 採掘量を110万バレルから280万バレルに引き上げることも承諾した。

BP連合は11月3日、正式調印した。
コンソーシアムはBP 38%、CNPC 37%、イラク政府の
State Oil Marketing Organisation 25%となった。

他の油田、ガス田は条件が合わず。マンスーリャは応札なし。

なお、別枠でNasiriyah油田(Samawahの南東)の交渉が続いている。
将来、日量数十万バレルの生産が見込まれる有望油田で、日本連合(新日本石油/国際石油開発帝石/日揮)とイタリアのEniが争っている。イラク側は両社提出の開発計画の修正を求めているとされる。

付記
2009112日、イラク石油省はEniOccidental Petroleum、韓国ガス公社(KOGAS)の連合と、41億バレルの Zubair開発の契約に調印した。7年内に現在の日量20万バレルを110万バレルにする。連合の利潤は当初の要求額バレル当たり4.80ドルに対し、2ドルに引き下げられた。
但し、現行の税制では全収入(石油コスト
+利潤)に課税されていたが、改正により利潤にのみ課税されるようになった。

  発見 埋蔵量
(億バレル)
現状
(千b/d)
北ルメイラ油田(Rumaila)
南ルメイラ油田
1953      92
    73
    470
    585
キルクーク油田(Kirkuk) 1927     65     360
西クルナ油田(Qurna) 1973     74     300
ズベイル油田(Zubair) 1949     40     240
ミサン油田群(Missan)
(アブギラブ、ブズルガン、
ジャバルファウキ)
1969
1971
1974
    25     114
バイハッサン油田(Bai Hassan) 1953     23      7.5
アッカス ガス田(Akkas)     7tcf  
マンスーリヤ ガス田(Mansuriyah)     5tcf  

             

2008年12月31日に発表された第二次入札対象油ガス田は以下の通り。

  埋蔵量
 
bn bbl
生産能力
 ‘
000 b/d
現状生産量
 ‘
000 b/d
<油田>      
Majnoon(マジヌーン)   8.20  600-800   40-50
West Qurna 2(西クルナ)   13.50    600   na
Halfaya(ハルファーヤ)   4.60  250-600 ** 10-15
East Baghdad(東バグダッド)   0.80   80-350 **   7
Gharaf(ガラフ)   1.00  100-140    -
Kifl(キフル)   0.21    28    -
West Kifl(西キフル)   *0.18    25    -
Marjan(マルジャン)   *0.15    20    -
Badrah(バドラ)   0.50    70    -
Qayara(カイヤラ)   0.80    80    -
Najmah(ナジマ)   0.85    85    -
Qarmar(カマール)   0.15    20    -
Gilabat(ギラバット)   0.20    30    -
Nauduman(ナウドマン)   0.05   >10    -
<ガス田>      
Kashm al-Ahmar(カシムアルアマール)  1,550 Bcf 150mn cf/d    -
Siba(シバ) 4,000 Bcf 300mn cf/d    -

  * 未確認、 ** パイロット生産

 

2008年10月の一次審査では日本の4社を含む35社が選ばれた。本年第2四半期に第一次開放対象の入札が行われる。

イラク石油省は
20094月1日、年内に実施する油田開発入札に参加できる外国企業9社を追加で発表した。
申請した38社から応札資格を得た。第2次入札から参加できる。
日本からは
石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)が選ばれている。

入札資格を得たのは次の各社。

  一次審査(2008/10) ニ次審査(2009/4)
日本  新日本石油、国際石油開発帝石、
石油資源開発、三菱商事
石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)
米国 AnadarkoChevronConocoPhillipsExxonMobil
HessMarathonOccidental
 
英国 BGBP Cairn Energy
豪州 BHPWoodside  
イタリア EdisonEni  
オランダ Shell  
ドイツ Wintershall  
フランス Total  
ノルウェー StatoilHydro  
スペイン  Repsol   
中国 CNOOCCNPCSinochemSinopec  
韓国 韓国ガス公社Kogas  
インド ONGC Oil India Ltd.
マレーシア Petronas  
インドネシア Pertamina  
ロシア GazpromLukoil RosneftTatneft
デンマーク Maersk  
カナダ Nexen  
トルコ TPAO  
カザフスタン   KazMunaiGas
ベトナム   Petrovietnam
アンゴラ   Sonangol
パキスタン   Pakistan Petroleum

 

新日本石油、国際石油開発帝石および日揮の日本側コンソーシアム3社は、イラクの石油開発等の入札に参加するため、各社会長が本年2月、バグダッドを訪問し、マリキ首相、シャハリスターニ石油大臣他、イラク政府首脳と会見した。マリキ首相はイラク 北部のキルクーク油田などの入札に対し、応札を要請した。

付記 シェルが中国国営2社(PetroChina, Sinopec)と共同でキルクーク油田開発を検討していると伝えられた。

付記

イラクとイランは4月23日、イラク南部で産出する原油をパイプラインでイランに運び、精製することで合意した。
バスラからアバダンまでパイププラインを設置、アバダン製油所で精製する。

バスラ近郊にはズベイル油田などがある。

ーーー

この中で、韓国の韓国石油公社とSKエナジーが除外された。

韓国石油公社などが参加する韓国コンソーシアムは2008年2月14日、イラクの北部クルド自治区内の油田4つの鉱区の開発とインフラ建設を並行して進める内容の覚書をクルド自治政府と締結した。

コンソーシアムは石油公社 38%、SKエナジー 19%、デソン産業、三千里(サムチョンリ)、ボムア資源開発(各 9.5%)、GSホールディングス、マジュコ通商(各 4.75%)、ユーアイエナジー(5%)などが構成している。

2008/2/20 韓国エネルギーコンソーシアム、イラク油田開発

イラクのシャハリスタニ石油相は4月2日、イラク駐在の河泰允 (ハ・テユン)大使に会い、「韓国石油公社やSKエナジーなどの韓国企業がクルド自治政府と締結した油田開発事業は、中央政府との協議を経ずに行われた違法なものだ。そのため両社は今後、イラクでの油田開発に関する入札に参加できない」と通知した。

イラク政府は昨年の第1回油田開発入札資格審査で両社を排除、今回の第2回審査でもSKエナジーを脱落させた。
現在イラクで入札資格を得ている韓国企業は、クルドでの油田開発に参加していない韓国ガス公社だけ。

本件はコンソーシアムのクルド自治政府との契約当初からイラク政府が問題視していた。

しかし、本年2月にイラクのタラバニ大統領が韓国を訪問した際、イラク南部バスラの油田開発と現地でのインフラ整備を行うために必要な35億5000万ドルを韓国側が投資するという覚書を交わしたことで、一旦は解消するかのように思われた。

しかし、クルド族出身のタラバニ大統領とシーア派でエネルギー相を兼任するジャアファリ首相の考えが異なっていたもの。

イ ラク側は「クルドとの契約を取り消せば入札への参加を認める」としているが、韓国政府は「取り消すことはできない」との立場。

韓国内では政府があまりにも楽観的かつ早急に事業を進めたとの批判が出ている。韓国政府は現地調査団を派遣し、イラク国内の道路、港湾、石油精製施設の建設など、イラク再建事業 への参加拡大を名目にイラク政府との再交渉に臨みたいとしている。


2009/4/8  信越化学も減益予想

信越化学は4月7日、3月決算の業績予想の修正を発表した。

同社は2008年12月に、2008年4月28日に公表した業績予想の達成は困難である旨を発表しているが、見直し数値は発表していなかった。但し、証券取引所上場規定による開示義務(損益が0.7以下)が生じるほどの落ち込みは想定していないとしていた。

各社の実績予想は 2009/2/10 2009年3月期損益予想 

今回の連結業績予想は以下の通り。(単位:億円)

米国金融危機に端を発した世界規模での市場環境悪化により、同社を取り巻く事業環境は昨年11月以降急速に悪化しており、同社の業績も半導体シリコンウエハー等電子材料事業を中心にその影響を受けてきているとしている。

  売 上 高 営業利益 経常利益 当期純利益
前期実績   13,764   2,871   3,000   1,836
         
2008/4/28 予想   14,000   3,070   3,200   2,000
今回修正予想   12,000   2,400   2,600   1,600
(予想増減)  (-2,000)   (-670)   (-600)   (-400)
(前期比増減)  (-1,764)   (-471)   (-400)   (-236)

同社の損益の推移は以下の通りで、これまで長期間にわたり増収増益が続いていたが、今回減収減益となる。
報道によると、経常損益の減益は10年ぶり、最終損益は16年ぶりとのこと。

ただし、期末配当予想の1株当たり50円(年間配当予想100円)には変更なしとしている。


2009/4/9 インドのアッサム・ガスクラッカー計画 動き出す

Ineosは3月25日、インドのBrahmaputra Cracker and Polymer Limited (BCPL) LLDPE/HDPE技術をライセンスしたと発表した。
能力は22万トン。

2006年4月にGAILの主導でアッサム州のLepetkata, District Dibrugarh に石油化学コンプレックスを建設するAssam Gas Cracker Project がインド政府の承認を得た。

アッサム州はインド北東部に位置し、ブータンおよびバングラデシュと国境を接している。
アッサム州は天然自然に恵まれており、1901年にはインド初の石油精製所が州内ディグボイに設置された。アッサム石油機構(AOD)のディグボイ精油所は、現在操業している石油精製所としては世界で2番目に古い。

Assam Gas Cracker Project のために2007年1月にBCPLが設立された。出資は以下の通り。

  GAIL  70%
  Oil India Ltd (OIL)   10
  Numaligarh Refinery Ltd(NRL)  10
  Government of Assam  10

天然ガスとナフサを原料にクラッカーと誘導品プラントを建設する。

  エチレン  220千トン
  プロピレン   60
  HDPE/LLDPE  220
  PP   60
  Pyrolysis Gasoline   55
  Fuel oil   12.5

OIL NRL 600万m3/日の天然ガスと16万トン/年のナフサをそれぞれ供給する。不足の天然ガスはONGC Ltd.から供給を受ける予定。

今回、HDPE/LLDPE技術が発表されたが、PP Lummus Technologies とされており、エチレン技術はまもなく発表される。

GAILでは杭打ちをした2007年4月9日から60ヶ月での完成を目指している。

 

参考    2006/6/5  インドのエチレン計画 


2009/4/10 ベビーパウダーから発ガン性物質、韓国と中国で大問題に

韓国食品医薬品安全庁(食薬庁)は4月1日、徳山(トクサン)薬品工業が、ベビーパウダーを製造する一部のメーカーに発ガン性物質のアスベスト(石綿)が含まれたタルクを供給したと発表した。

食薬庁はその後、徳山薬品工業が原料を供給したと確認された会社が304社で、うち約100社は製薬会社、残りは医療機器のメーカーや病院・医院であることを明らかにした。

食薬庁はまた、国内でタルクの原料を製造・輸入するすべてのメーカーを調べたところ、徳山薬品工業のほか7社の原料からアスベストが追加で検出されたこと明らかにした。

タルクはアスベストを含有している蛇紋岩とともに地中に埋まっているため、自然状態でアスベストを含有するケースが多いといわれている。

トクサン薬品工業は国内タルク需要の20%以上を輸入している。

食薬庁は6日、アスベストに汚染されたタルク成分を原料として作った化粧品に対し、販売禁止の措置を取った。

タルクはベビーパウダーやおしろいなど粉状の化粧品に使われ、医薬品の製造過程でも医薬品がお互いにくっ付かないようにするためにも使われる。

全体の原料でタルクが占める割合はベビーパウダーが70〜90%、フェイスパウダーが40〜50%に上る。薬品に入っているタルクの量は錠剤の重さの1%ぐらいでごく微量。

付記

医薬品については当初は含有量が少ないため問題ないという意見が強かったが、その後食品医薬品安全庁がアスベストを含むタルクを使った製薬メーカー120社の医薬品1122品目を販売禁止したため、製薬業界が反発している。

最終製品からアスベストが検出されたかどうかを確認せず、含まれている可能性があるというだけでリストを発表した。製薬大手では自社製品をDAの基準に合わせ自主調査したとこ ろ、アスベストは全く検出されなかったとし、検査もせずに発表し、製薬メーカー各社のイメージを低下させたと批判している。

世界90ヵ国以上で使われている乳首・哺乳びんのメーカーのドイツのNUK(ヌーク)のブランドでベビーパウダーをライセンス生産しているボリョンメディアンス(Boryung Medience) も、製品が汚染されていることが分かり、「24時間相談センターを稼動し、石綿が検出されていない製品に交換するか、購買金額の全額を返している」としている。

しかし、一部メーカーはきちんとリコールを行わないか責任を回避するなど、不真面目な態度で一貫し、消費者から批判を受けている。特に、製造メーカーと販売会社が異なる場合は責任を擦り付け合っているため、消費者の混乱がさらに深まっている。 被害を受けた消費者らの集団訴訟の動きも本格化している。

一方、有名化粧品会社では、原料のタルクをアスベストの規制が厳しいアメリカや日本から輸入しているため、問題なしとしている。

付記

食品医薬品安全庁は4月3日、タルク基準を改正して、アスベスト基準の他に鉄分の含有量基準試験法を新しく定め、タルク鉄分基準0.25%とした。

日本産タルクの需要が高まっているなかで、最近輸入された日本産タルクが鉄分含有量が0.29%で非適合判定を受け、需要家が混乱している。

ーーー

韓国でNUKブランドのベビーパウダーから発ガン性物質が出たとの報道を受け、中国国家質量監督検験検疫総局は44日、蘇州徳宝嬰童用品有限公司(Suzhou Debao Baby Supplies )の蘇州新興保健品工場に立ち入り検査を行い、加工済みのNUKブランドのベビーパウダー40キロを現場で押収した。製品は市場から回収された。

同社は2008年3月以降、蘇州市シルク輸出入公司を通じて韓国のBoryung Medienceから5回にわたってベビーパウダーの半製品計11.6トンを輸入し、蘇州新興保健品工場で加工を行い、NUKブランドで国内で販売していた。

中国では昨年、汚染ミルク問題が起こったばかりであり、消費者、特に若い母親の間に不安が高まっている。

2008/9/17 中国で粉ミルク汚染

ーーー

NUKはフランスの自動車部品などゴムやプラスチック製品のコングロマリットHutchinson Worldwide のドイツ子会社 MAPA GmbH のブランドで、乳首・哺乳びんは世界90ヵ国以上で使われている。

今回の報道を受け、同社は以下の声明を発表した。

我々はこれまでベビーパウダーを製造販売したことはない。
我々は50
以上にわたり、乳首や哺乳瓶などのベビー製品を製造してきたが、これらは我々の工場で開発・製造され、厳重なチャックを受けている。我々の全ての製品は安全です。

例外的に特定のメーカーにNUKブランドでライセンス生産することを認めている。
韓国の
BORYUNG MEDIENCE はその一つで、クリームやパウダーなどのベビー製品を扱っている。
ライセンシーは製品の製造販売に唯一 責任を持ち、我々はライセンサーとして、製品の処方の開示と、規則やルールに完全に合致することの保証を求めている。
BORYUNG MEDIENCE は過去20年間、全く問題がなかった。

現在、韓国の当局とライセンシーに連絡をとっている。

BORYUNG MEDIENCEのこの製品はドイツやEU、(韓国と中国以外の)他の諸国では販売されていない。

ーーー

日本では労働安全衛生法施行令等の一部改正により、2006年9月1日から、石綿をその重量の0.1%を超えて含有する製剤その他の物の製造、輸入、譲渡、提供又は使用が禁止されている。

しかし、その後、石綿をその重量の0.1%を超えて含有する粉状のタルクが製造されている可能性があるとの情報を受け、厚生労働省が同年10月、タルクの製造を行っている33事業場に対し、緊急調査を行い、その結果、1事業場で石綿を含有するタルクが製造されていたことが判明した。

この結果を受け、厚生労働省では都道府県労働局に対し、関係事業者に対して指導を徹底するよう指示するとともに、関係事業者団体に対しても、法令の遵守の徹底について要請した。


なお、ベビーパウダーについては1987年に原料のタルクにアスベストが不純物として微量混入していたとして社会問題になった。
1987年11月に当時の厚生省が「ベビーパウダーに用いられるタルク中のアスベスト試験法」を公表している。

 


2009/4/10 Petro-Rabigh スタート・アップ 

Rabigh Refining and Petrochemical CompanyPetro-Rabigh4 月8 日、サウジアラビアのRabighで建設している石油精製・石油化学コンプレックスの基幹設備の一つであるエタンクラッカー設備が、本格的に稼動 を開始したと発表した。

本計画については 2006/3/25  ペトロラービグ起工式

エタンクラッカーは年産130万トンのエチレンを生産、EPPE(次世代型ポリエチレン)、LLDPE、HDPE、EGにエチレンを供給する。

なお、ハイオレフィン流動接触分解装置(HOFCC)を稼動させるための、減圧蒸留装置(VDU)や、水素化処理装置(VGOHDT)といった、新規の精製関連設備も、既に稼動準備が整っている。

HOFCC は減圧軽油(VGO)を分解し、年産90 万トンのプロピレン、日産59 千バレルのガソリンを生産する。
プロピレンはPPとPOに使用する。
PP2系列設備のうちの一つは、すでに、輸入プロピレンを原料として、本年2月、試運転を完了している。
なお、POはサウジで初めてで、住友化学の新法(単産法)を採用した。

付記

Petro-Rabighは2009年11 月8 日、サウジアラビアのラービグにおいて、石油精製・石油化学統合コンプレックス事業(ラービグ計画)の竣工式を挙行した。
式典には岩國哲人政府特使、福田康夫元首相、河野洋平前衆院議長ら日本側関係者200人を含む900人が出席した。

当初は2008年秋に稼動する予定であったが、同社は2008年9月7日に、98億ドルと見込んでいた総事業費が101億ドルに膨らみ、一部設備の稼動開始が2009年第1四半期にずれ込む可能性があると発表した。
石油精製設備(簿価:2億3千万ドル)は予定通り 2008
10月1日にSaudiAramco からPetroRabigh に全面的に移管された。

製油所の原油はYanbuからタンカーで輸送されている。
エタンは東部のガス田とYanbuを結ぶEast-West Pipelineの原油パイプの1本をエタン用に転用しRabighまでの支線を新設した。

ーーー

Petro-Rabigh 2005年9月に住友化学 50%/Saudi Aramco 50%で設立された。
2008年1月に新規株式公開(IPO)を実施した結果、現在の出資は住友化学 37.5%/
Saudi Aramco 37.5%/サウジ一般投資家 25%となっている。

同社では「第二期合弁事業案」をサウジ政府当局に申請して、承認を得ている。
Saudi AramcoCEO Khalid A. Al-Falih 3月23日、サウジの商工会議所でのスピーチで、第二期計画について間もなく住友化学と覚書を締結すると述べた。

なお、Saudi Aramcoと住友化学がスポンサーとなって PetroRabigh に隣接して、面積は240ヘクタールのプラスチック加工団地 Rabigh Conversion Industrial Park設されており、住友化学は東洋インキとの合弁で年産10千トンのPPコンパウンド設備を建設している。

2008/6/27 住友化学、サウジでPPコンパウンドを生産

 


2009/4/11  平成21年度 コンビナート連携石油安定供給対策事業

石油コンビナート高度統合運営技術研究組合(RING)は4月1日、経済産業省からの補助金に係る平成21年度「コンビナート連携石油安定供給対策事業」について、補助金交付対象となる3事業を選定したと発表した。

RINGについては 2006/5/24 RING 第三次事業計画 発表 

コンビナート連携により、石油精製業を中心とするコンビナート域内外の連携設備の効果的設置による拡大融合を促進して製油所の競争力を強化するとともに、石油資源の有効活用を図り原油処理量を減らすことを通じ、エネルギーセキュリティを確保するための事業について必要経費を補助するもの。

対象事業 原油処理量の削減、製油所における主要製品の製造コストの削減等、
各地区石油コンビナートの特長ある展開を目指す事業
目指す効果 @石油製品需要の充足に必要な原油処理量の削減
A製造コスト低減、又は付加価値の向上。
実施期間 平成21年度の単年度事業、又は複数年度事業
対象事業者 石油精製業同士、又は石油精製業と連携した業種で構成する複数事業者
補助率 補助対象経費の1/2を限度に補助
予算 平成21年度の補助金予算額は17億円(業務管理費を含む)

 

選定された3事業は以下の通り。

事業名称 コンビナート水素回収・燃料連携事業
事業者名 ジャパンエナジー/出光興産
事業期間 平成21〜22年度
実施場所 愛知県 知多地区
実施内容 ジャパンエナジー知多製油所で自家燃料としている水素を回収・高純度化し、
出光興産愛知製油所へ供給。
また、これにより不足となる自家燃料を補うため、出光から分解重油、ブタンを供給する。

このための設備を設置することで、水素製造装置の稼動低減、分解重油の有効活用ができ、
原油処理量削減、石油の安定供給が図れる。

 水素回収装置、水素・燃料供給受入関連設備
 パイプライン(敷設距離:約5km)

 

事業名称 コンビナート間のブタンおよびブチレンの供給・受入配管の新設事業
事業者名 富士石油/住友化学
事業期間 平成21〜22年度
実施場所 千葉地区
実施内容 富士石油袖ケ浦製油所で生産されるブタンおよびブチレンを、
住友化学千葉工場(姉ヶ崎)のエチレン原料として供給するための配管および関連設備を設置。
  LPG配管 2.6km (従来は内航船で輸送、成分調整不可)
  住友化学の製造品目変動に応じて成分調整して供給

これにより、流動接触分解装置を有効に活用することが可能になるとともに、
エチレンプラントを効率的に操業することができ、原油処理量削減、石油の安定供給が図れる。

 

千葉地区コンビナート立地

事業名称 コンビナートナフサ供給連携事業
事業者名 出光興産/三井化学
事業期間 平成21〜22年度
実施場所 千葉地区
実施内容 出光興産・千葉工場および三井化学市原工場で使用する原料ナフサを共同で調達するための設備を設置
  ナフサ配管 6km、投資額 約20億円(折半)

これにより、フルレンジナフサ、ライトナフサの有効な活用ができ、
製油所における白油増産、石化工場におけるオレフィン収率の向上が可能となり、
原油処理量削減、石油の安定供給が図れる。

 

しかし、これらを見ると、果たして国が補助金を出す必要があるのだろうか。

メリットがあれば補助金なしでもやる筈で、そうでないとすれば、財政難のなかで補助金を出してまでやる程の社会的なニーズがあるとは思えない。

日本に 14もの(小規模の)エチレンセンターが必要でないことははっきりしており、現実に水島では2つのセンターを統合する案が進行しているという。このような案件を支援して、日本の石油化学の新しい体制をつくることの方が必要ではないか。

ーーー

付記

2010年度のコンビナート連携事業の補助金予算は、29.6億円で、以下が選定された。

事業名称 コンビナートLNG冷水活用連携事業
事業者名 出光興産/知多エル・エヌ・ジー
事業期間 平成22〜24年度
実施場所 愛知県 知多地区
実施内容 知多LNG事業所でLNG気化時に発生した冷水を出光興産愛知製油所へ供給する。
製油所では、この冷水を装置で活用することにより、
設備の冷却効率の向上、
蒸留分離工程における分離性能向上による製品回収率の向上及び
重油接触分解装置の重油分解率向上が可能となり、
原油処理量の削減、製造コスト低減を図ることができる。


事業名称 コンビナート高度統合生産連携事業
事業者名 新日本石油精製/ジャパンエナジー/三菱化学/旭化成ケミカルズ
事業期間 平成22〜25年度
実施場所 岡山県 水島地区
実施内容 コンビナートの統合一体運営による高効率化・高付加価値化を目指し、
LPGから自家燃料用重油まで多くの留分を相互に融通。
重質油分解〜石化製品までの幅広い需要変化に対応する設備の有効活用及び
原料・燃料多様化による安定生産体制を確立するための連携設備の設置により、
原油処理量の削減、製造コストの低減を図ることができる。

効果 : 原燃料や製品・半製品融通による原油処理量の削減 34.5万KL/年



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