ブログ 化学業界の話題 knakのデータベースから 目次
これは下記のブログを月ごとにまとめたものです。
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2011/3/14 日韓連合、ブラジルのレアメタル鉱山に投資
日本と韓国の鉄鋼メーカーが共同でブラジルとレアメタル大手に出資する。
新日鉄などが3月4日に発表した。
新日鉄、JFEスチール、韓国のPOSCOの3社に加え、双日、JOGMEC(石油天然ガス・金属鉱物資源機構)、韓国国民年金公団も出資する。
新興国を中心に高級鋼材の需要が伸びる中、その生産に不可欠のレアメタルのニオブの世界生産量のトップシェアを占めるCBMM に日韓合計で15%出資することで、ニオブの安定調達体制を整える。
出資先は、ブラジルCompanhia Brasileira de Metalurgia
e Mineracao (CBMM)。
1955年設立の鉱山企業で、ブラジル南東部Minas Gerais州Araxaにニオブ鉱山と精製工場を保有している。
ブラジルには世界のニオブ埋蔵量の大半があるが、CBMMはその殆どの権益を保有している。
2010年の生産量は7.2万トン。
出資は以下の通りで、日本側の投資額は13億ドル、韓国側は6.5億ドルとなる。
日本側特別目的会社(SPC) 10% : 新日鉄、JFEスチール、双日、JOGMECが各25%出資 韓国側SPC 5% POSCO、韓国国民年金公団が各50%出資 合計 15% JOGMECはこれまで稼働中の鉱山への出資は出来なかったが、政府は日本側コンソーシアムへの参加が日本の資源政策上、重要と判断し、2010年にJOGMEC法を改正した。これは新制度(資産買収出資制度)の適用第1号案件となる。
付記
中国鉄鋼大手の宝鋼集団は2011年9月2日、中国企業5社の特別目的会社がCBMMの15%の株式を19.5億ドルで取得したと発表した。
参加したのは、宝鋼集団、鞍山鋼鉄集団、首鋼集団、太原鋼鉄の国有鉄鋼大手4社と、中国政府系の複合企業の中信集団。
高級鋼板の強度を高めるのに使うニオブについては中国は輸入に頼っている。
新日鉄、JFE、双日、POSCOは出資を機に、CBMMとニオブの長期引取契約を締結した。
双日はこれまで単年度契約で日本向けニオブの輸入を独占的に行ってきたが、長期契約に切り替える。
ニオブはレアメタルの一つで、高級鋼材・特殊鋼材を生産するために必要不可欠な原料。
微量の添加により鉄鋼製品の強度・靭性・耐熱性を飛躍的に向上させる特性があり、ニオブを添加した高級鋼材・特殊鋼材・スーパーアロイは、パイプライン・自動車・大規模建築・タービンに使用されるほか、スペースシャトルにも使われている航空エンジンなどの最先端機器にも使用されている。
他に、光学、電気、電子分野でも使用されている。
世界のニオブの需要は2002年〜2009年の間に年率約10%で拡大しており、特に中国の輸入量は直近の4年間で倍増している。
ニオブの将来の需要は世界の粗鋼生産量の拡大以上に伸長するとみられているが、CBMM 社との新たな関係構築により、日本および韓国向けに、ニオブの安定的な供給体制が整うことになる。
2011/3/15 ロシアの天然ガス開発ー BP撤退、Total進出
ロシアの天然ガス開発で、BPの撤退とTotalの進出が同時に発表された。
1)東シベリアガス田権益、ガスプロムが取得
ロシアのGazprom
が、BPのロシア合弁のTNK-BPが保有していた子会社の資産を711百万ドルで取得した。
TNK-BPが発表した。.
TNK-BPが62.9%出資しているRUSIA PetroleumはKovykta天然ガス田の開発権を持ち、対中輸出を計画していたが、政府がGazpromのガスパイプラインを同社に開放する案を取り消したため、輸出を阻まれ、2010年6月に破産を申請、10月に自己破産した。
このRUSIA Petroleumの資産競売でGazpromが落札したもので、711百万ドルの落札価額は入札のスタート価額より50%以上高い。
2007年に当時のPutin大統領のロシアの石油・天然ガス資源のコントロール確保方針により、GazpromはRUSIA Petroleumの買収交渉に入ったが、折り合いがつかず、買収方針を撤回していた。
Kovyktaガス田は1970年代後半に発見され、1987年に開発が開始された。
イルクーツクの北東400km、バイカル湖北端の西側にあり、埋蔵量は2兆立方メートル。
RUSIA Petroleumはイルクーツク州の石油・ガス開発のため1992年に設立された。
株主は、TNK-BPが62.9%、OGK-3が24.99%、イルクーツク州政府が10.78%となっている。
なお、今回はBPの資産を政府の権限で(輸出を不可能にすることで)取り上げる結果となったが、ロシア単独では掘削が不可能な北極海大陸棚のSouth Kara Sea(下の地図参照)の深海油田開発ではRosneft はBPとの戦略的提携を行っている。
2011/1/17 BP、ロシアのRosneft と戦略的提携
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2)Total、ロシアガス大手と提携
Totalは3月2日、Putin首相の立会のもと、ロシア天然ガス2位のNovatekとの間で、ロシアのヤマル半島のガス田開発での資本・業務提携契約に調印した。
TotalはNovatek子会社でヤマル半島でLNGの開発をしているYamal LNG に20%出資する。Novatekは51%出資となる。
Totalはまた、Novatek本体に12.08%を出資、12か月以内に15%に、36か月以内に19.40%に出資を増やす。
Novatek株の12%は大株主2社から購入するが、金額は40億ドル程度となる。
付記 最終的にNovatek 60%、Total 20%、中国CNPC 20%となった。
Yamal LNG はYamal半島のSouth Tambey ガス田を開発する。推定埋蔵量は1兆2500億m3で、年間1500万トンのLNGの生産が可能。
LNG基地を含む投資額は200億ドルとされる。
Novatekは2010年7月に、このガス田の権利の49%を5〜6社の外国企業に売却する考えを明らかにしている。
Totalは20〜25%の権利取得の考えを表明していた。
Totalのほか、Shellを含むいくつかの企業が関心を示していた。
Totalは今回の契約(20%の権益)で、今後10年間、原油換算で日量9万バレルを得る。
Novatek はロシア最大の独立ガスメーカーで、国内市場の約10%を供給する。
2010年の生産量はコンデンセートを含み原油換算で日量75万バレルで、大ガス田を5〜6か所持っている。
TotalとNovatekは2009年からTermokarstovoyeガス田を共同で開発している。
Total は1989年以来、ロシアに進出している。Nenets自治州のKharyaga ガス田に40%の権益を持ち、オペレーターとなっている。
Phase 3の開発計画が2007年に承認され、2010年のTotalの生産持分は原油換算日量1万バレルとなっている。
2007年7月には、TotalはGazpromとの間で、
Barents SeaのShtokman 巨大ガス・コンデンセート田のPhase1の開発契約を締結した。
2008年にTotalが25%出資するShtokman Development AG が設立された。Phase1は年間237億m3の生産を行う。約半分がLNGの形で輸出される。
2011/3/16 Dow、BASF、Bayer の2010年決算
DowとBASFが合成樹脂や機能製品が好調で大幅増益になった。
しかしBayerは、合成樹脂(Material)が大増益になった反面、医薬や農薬が不振で減益となった。
2008年に世界経済の悪化で、Dow やDuPont
などで人員整理が行なわれる中、Bayerが気を吐いていた。
今回は逆になった。
BayerのWerner Wenning 会長は2008年12月に 同社の状況を以下の通り説明した。
この数週間で経済状況は著しく悪化した。
しかし、Bayerでは相変わらず自信を持っている。こんな時こそ、長期的は企業戦略が成果を生む時である。売上高の70%を占める HealthCare 部門と CropScience 部門は、不況の影響を受け難い。
2008/12/15 Bayer、来年も増益
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1) Dow
増収増益となった。特にPlasticsの増益の影響が大きい。
2009年4月にRohm & Haasの買収を完了した。
2009/4/3 ダウ、Rohm & Haas の買収を完了
単位:100万ドル | ||||||||||||||||||||||||
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EBITDA
2007 | 2008 | 2009 | 2010 | 増減 | |
Electronic & Specialty Materials | 737 | 835 | 1,046 | 1,612 | 566 |
Coatings & Infrastructure | 51 | 134 | 367 | 743 | 376 |
Health & Agricultural Sciences | 576 | 872 | 573 | 640 | 67 |
Performance Systems | 624 | 235 | 674 | 855 | 181 |
Performance Products | 1,991 | 1,050 | 1,142 | 1,311 | 169 |
Plastics | 2,804 | 1,746 | 1,665 | 2,910 | 1,245 |
Chemicals & Energy | 952 | 278 | 103 | 574 | 471 |
Hydrocarbons | -45 | -70 | 391 | -1 | -392 |
Others | -854 | -1,005 | -1,133 | -1,444 | -311 |
Total | 6,836 | 4,075 | 4,828 | 7,200 | 2,372 |
同社は2010年に一部、セグメントを組み替えている。上の2009年は新セグメントベースに組み替えている。
Electronic &
Specialty MaterialsElectronic Materials
Specialty MaterialsCoatings & Infrastructure Adhesives and Functional Polymers
Dow Building and Construction
Dow Coating MaterialsHealth &
Agricultural SciencesDow AgroSciences
Performance Systems Automotive Systems
Dow Elastomers
Dow Wire and Cable
The Formulated SystemsPerformance Products Amines、Emulsion Polymers、Epoxy
Oxygenated Solvents
Performance Fluids, Polyglycols and Surfactants
Performance Monomers
PolyurethanesBasic Plastics
→PlasticsPolyethylene
Polypropylene
StyrenicsBasic Chemicals
→Chemicals & EnergyChlor-Alkali/Chlor-Vinyl
Ethylene Oxide/Ethylene GlycolHydrocarbons and
Energy
→HydrocarbonsBenzene、Butadiene、Butylene、Cumene、
Ethylene、Propylene、Styrene、
Power、steam and other utilitiesOthers
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2) BASF
大幅増益となった。
百万ユーロ | ||||||||||||||||||||||||
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EBIT
2007 | 2008 | 2009 | 2010 | 増減 | |
Chemicals | 1,903 | 1,369 | 735 | 2,310 | 1,575 |
Plastics | 1,172 | 539 | 554 | 1,273 | 719 |
Performance Products | 681 | 768 | -150 | 1,345 | 1,495 |
Functional Solutions | 434 | 151 | 107 | 457 | 350 |
Agricultural Products | 516 | 705 | 769 | 749 | -20 |
Oil & Gas | 3,031 | 3,844 | 2,289 | 2,334 | 45 |
Other | -421 | -913 | -627 | -707 | -80 |
合計 | 7,316 | 6,463 | 3,677 | 7,761 | 4,084 |
部門 内訳 Chemicals Inorganics Petrochemicals Intermediates Plastics Performance Polymers Polyurethanes Performance Products Dispersions & Pigments Care Chemicals Nutrition & Health Paper Chemicals Performance Chemicals Functional Solutions Catalysts Construction Chemicals Coatings Agricultural Solutions Crop Protection Oil & Gas Oil & Gas
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3) Bayer
増収だが減益となった。
部門別には、Materialsは大幅増益だが、医薬と農薬が減益となった。
単位:百万ユーロ | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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2007年の事業譲渡益は以下の通り。 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
Diagnostics 2,065、H.C.Starck 91、Wolff Walsrode 239 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
金利前損益(EBIT) | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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Healthcareは各国の健保制度改正の影響、ジェネリック医薬品メーカーとの競争で大幅減益。
Crop Protectionは販売数量と価格の減で減益、BioScience はR&D費用の増大で赤字となった。
Materials(2009年からSystemを包含)は、数量増、原料コストアップを上回る価格アップで大幅増益となった。
HealthCare Pharmaceuticals Consumer Health 含む Animal Health Bayer CropScience, Crop Protection Environmental Science 家庭用、防疫用殺虫・殺鼠剤 BioScience 種子等 Bayer MaterialScience Coatings, Adhesives, Specialties
Polyurethanes
Polycarbonates
Thermoplastic Polyurethanes
日本化学会は3月7日、化学にまつわる貴重な歴史資料「化学遺産」に、日本初の化学講義録など4件を認定したと発表した。
これで化学遺産は10件となった。
日本化学会は、化学と化学技術に関する貴重な歴史資料の保存と利用を推進するため、化学遺産委員会を設置し、さまざまな活動を行っている。
歴史資料の中でも特に貴重なものを文化遺産、産業遺産として次世代に伝え、化学に関する学術と教育の向上及び化学工業の発展に資することを目的とし、2010年3月に、第1回として6件の「化学遺産認定」を行っている。
2010/3/18 化学遺産認定
第二回認定は以下の通り。
1) 日本最初の化学講義録 朋百舎密書(ポンペせいみしょ)
オランダ人軍医ポンペが、1859年に行った医学や化学の講義を、明治政府初代の軍医総監となった松本良順が筆記したもので、現在、松江赤十字病院(松江市)に2冊が残る。
舎密は当時の化学の呼び方。「1857年に長崎の商館医としてオランダから来日した軍医ポンペ(ポンぺ・ファン・メールデルフォート) (1829〜1908)は医学伝習所において1859年1月から4月にかけて行った医学・化学などの講義を行った。
この化学講義の底本となったのはドイツ 人ルドルフ・ワグネル(1822~1880)の著書のオランダ語訳書「De Scheikunde」である。
この講義を弟子の一人である松本良順(後に幕府医学所頭取、明治政府初代軍医総監)らがオランダ語の筆記体で記録した講義 録が「朋百舎密書」(ぽんぺせいみしょ)と名付けられ、現在、島根県松江市の松江赤十字病院にその無機化学の部分2冊だけが残されている。
ポンペによるこの日本最初の化学講義が我が国の化学の始まりに果たした役割は非常に大きく、その実際の有様を伝える本資料は貴重な化学遺産である。」
2) 「化学新書」など日本学士院蔵 川本幸民化学関係資料
日本で初めて「化学」という言葉を書名に使った洋学者、川本幸民の翻訳本「化学新書」(1861年)などで、日本学士院所蔵。
付記
当時に中国から入ってきた「六合釈精義」という本などに「化学」という言葉が入っており、これを採用したと思われる。「川本幸民(1810〜1871)は三田藩医から幕府の蕃書調所の教授となり、同所内に1860年に設置された精錬方(のちに化学方)の主任を務めた。
1861年の翻訳『化学新書』は原子や当量、化学式などを示し、「化学」の語を書名にもった我が国最初の本である。
日本学士院 には本書を含め、川本家から寄贈された幸民と長男清一の資料が所蔵されている。
それらのうちから化学関係の14点を化学遺産として認定する。これには自筆書き込みのある『化学新書』稿をはじめ、訳稿、翻訳メモのほか、自製の写真機で撮影したと推測される幸民と妻秀子の写真も含まれ貴重な化学遺産である。」
3) 「日本のセルロイド工業の発祥を示す建物および資料」
「堺セルロイド」「日本セルロイド人造絹糸」(ともに1908年設立、現在はダイセル化学工業に統合)の製品や工場内部の写真などの資料、現存する石炭ボイラー施設など
「セルロイドは世界初の汎用樹脂であり、日本では1908 年設立の堺セルロイド梶i大阪府)および日本セルロイド人造絹糸梶i兵庫県。現在のダイセル化学工業(株)網干工場)が初めて製造し、1937 年には世界一の生産量を誇った。
用途は、キューピー人形などの玩具・眼鏡フレーム・ピンポン球・筆箱や下敷きなど、身の回りで広く愛用された。
しかし戦後の石油化学樹脂の隆盛に押され、また燃えやすさによる事故の多発もあり衰退、1996年国内生産の幕は閉じられた。
本認定化学遺産は、我が国セルロイド工 業の発祥・隆盛を現在に伝える貴重な建物と資料である。」セルロイドはニトロセルロースと樟脳などから合成される。
1856年にイギリスのAlexander Parkesによって初めて作られた。
1870年にアメリカのJohn Wesley Hyattがビリヤードの玉の原料として実用化に成功し、Celluloidの商標を登録した。1880年代後半から乾板に代わって写真フィルムとして使われるようになった。
1884年にHannibal Goodwin とEastmanのHenry Reichenbackがflexible filmを開発、Eastmanとの長期の特許紛争でGoodwinが勝訴し、1914年に5百万ドルの特許料を受け取った。ダイセル化学工業の前身の大日本セルロイドは、1919年9月に下記の8社が合同して設立された。
・堺セルロイド(三井財閥系:明治41年創業の日本でのセルロイド製造の先駆け)
・日本セルロイド人造絹糸( 網干:三菱財閥・鈴木商店系)
・大阪繊維工業(岩井産業系)
・東京セルロイド
・三国セルロイド
・能登屋セルロイド
・十河セルロイド
・東洋セルロイド付記 上の2社はお雇い外人が処理できなかった品質問題を自ら解決し、販売を開始したが、海外品に対抗できず、破たんに瀕した。その時に第一次世界大戦で海外設備が軍事用に転用され、日本2社は生き残り、多くの企業が新規参入した。
しかし、大戦終了で再度不況となり、全社が合同した。
(合同すれば、台湾で産する原料の樟脳を独占できるというアメも与えられた。)なお、写真フィルム製造の国産工業化計画に基づき、1934年1月に大日本セルロイドの写真フィルム部の事業一切を分離継承して富士写真フイルムが設立された。
1996年でセルロイドの生産は停止したが、ダイセル事業は以下のように展開している。
4) 日本の板硝子(ガラス)工業の発祥を示す資料
1909年に旭硝子関西工場(尼崎市)が「手吹円筒法」と呼ばれる方法で板ガラスの工業生産に成功した。
ここに所蔵されている円筒が選ばれた。
円筒は再び加熱して広げ、板ガラスにする。「わが国では、幕末に鹿児島などで試験的にガラス製ビン類、食器類が作られた。明治に入り、西欧から設備・技術を輸入し、 1873年の興業社をはじめ、何度か国営、民営事業により板ガラスの工業化が試みられたが、いずれも失敗した。
岩崎俊弥は1907年に旭硝子鰍設立し、ベルギーの手吹円筒法を導入して尼崎に工場を建設し、1909年にわが国で初めて手吹きによる板ガラスの工業生産に成功した。続いて1914年には戸畑 (牧山)にラバース式機械吹き板ガラス工場、1916年に鶴見に同様の工場を建設した。
認定化学遺産は、板ガラス生産の中間製品である手吹円筒およびラ バース式機械吹き円筒ならびに手吹き円筒の製作に用いられた吹棹であり、この円筒を再び加熱して縦に開き板ガラスを製作したもので、我が国板ガラス工業の発祥とその製造法の特徴を示す貴重な資料である。」
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日本化学会では、2011世界化学年記念として第5回「化学遺産市民公開講座」を開く。→ 震災で中止
日時:3月26日(土)10:30〜16:45
場所:神奈川大学横浜キャンパス
詳細は http://www.chemistry.or.jp/archives/kouza2011.pdf
テルモは3月7日、輸血関連事業分野の世界的大手企業の米国の医療機器メーカーのCaridianBCTの100%の株式を購入する契約を締結したと発表した。同社に全額出資するスウェーデンの大手医療機器メーカー、Gambro ABから取得する。
買収額は2,625百万米ドルで、手元資金(700億円弱)と銀行借り入れで賄う。同社はこれまで無借金経営を続けてきた。
テルモは1960年代に輸血関連事業に参入して以来、血液バッグを中心に国内ばかりでなく海外市場にまで事業を拡大し、グローバルで業界第5位の地位を獲得している。
同業界は、先進国では高齢化に伴うがん患者の増加、新興国では経済発展による医療水準の向上が、世界的な輸血需要の増加を促進、グローバルに力強い成長が期待される。
こうした中で、テルモは世界で存在感のある企業を目指し、「10年以内に売上高1兆円」の実現に向けた重点成長戦略のひとつとして、輸血関連事業の拡大を掲げ、更なる事業拡大を狙っている。
CaridianBCTは、採血から治療システムに至る幅広い領域での高い技術力とグローバルな販売網を生かして、今後とも高成長が期待される企業で、テルモは、買収により売上高1兆円へ向けた成長戦略を大きく前進させることが可能となるとしている。
テルモは本買収の意義を以下の通りとしている。
(1) 世界でトップの地位を確立
テルモの2009年の輸血関連事業の売上高は240億円で世界5位だが、買収により約700億円とトップになる。
CaridianBCTの持つ高付加価値の成分採血システムなどが加わり、世界中の広範な輸血需要に対応。
地域的には米国・欧州・中南米での事業基盤を強化血液関連機器メーカー売上高(2010年度見通し)
両社の地域別売上高(単位:百万ドル)
欧州 米大陸 日本 他 合計 CaridianBCT 170 260 20 80 530 テルモ 50 40 105 95 290 合計 220 300 125 175 820
(2) 持続的な高成長事業の獲得
CaridianBCTの主力事業である成分採血システムによる血小板採取の技術は、世界で高い評価を得ている。
(主に抗がん剤投与や放射線照射などのがん治療によって起こる血小板減少の際に輸血)CaridianBCTはイノベーション重視の企業で、自動製剤システムや病原体低減システムのような新 しい課題に対応した医療技術を有している。
(3) グローバル成長エンジンの新たな柱
本件買収により、輸血関連事業の売上構成比は現在の8%から18%になり、テルモの成長を支える新たな柱となる。
テルモの新宅祐太郎社長は記者会見で「心臓カテーテル(医療細管)以外の新たな成長エンジンになる」と強調した。
テルモのカテーテル事業は2009年度の売上高が1300億円で、全売上高の4割を占める。
世界のカテーテル市場では2位のグループを形成しており、米Johnson & Johnson、米Abott Laboratoriesの首位陣を追っている。テルモの2010年3月期のセグメント別業績は以下の通り。(億円)
売上高 営業損益 ホスピタル商品群 1,498 336 心臓・血管領域 1,358 387 輸血関連 239 34 ヘルスケア 64 4 全社 - -129 合計 3,160 633
2011/3/19 米最高裁、Bayerの“pay for delay” 和解の独禁法違反審査請求を却下
米最高裁は3月7日、Bayerが抗生物質のCipro (ciprofloxacin)について競争を阻害するために金を支払った件で、これを独禁法違反とする訴えを却下した連邦控訴審の判断の見直しをしないことを、理由なしに決定、特許訴訟の“pay for delay” 和解を法的に支持した。
Bayerは1997年(主要特許の切れる6か月前)にBarr Laboratories (その後、イスラエルのTeva Pharmaceuticalが買収)との間で和解し、BayerがBarr に 398百万ドルを支払う代わりに、BarrはBayerの特許無効の訴えを撤回し、2003年6月までCiproのgenetic薬を販売を遅らせることで合意した。(このため、“pay for delay” 和解と呼ばれる)
これに対して、米国の三大ドラッグストアのうちの2社、CVS Caremark と Rite-Aid、消費者団体、32の州などが、このような和解は製薬業界で多く行われ、消費者に年間35億ドルの損害を与えているとして、この和解を覆すよう求めた。
このような和解は、コストのかかる特許訴訟を終わらせ、特許を持つ会社にもgeneric薬の会社にもメリットがあるが、特許が切れても、一定の期間、安いgeneric薬の販売を遅らせることとなる。
このためFederal Trade Commission もこのような契約は独禁法に違反し、高い処方薬で米国の消費者、納税者に年間35億ドルの負担をさせているとし、連邦控訴審に意見書を提出している。
Obama大統領はこのような特許和解を禁止する法案を提案している。連邦政府に20年にわたり、88億ドルもの節約になるとしている。
製薬会社はgeneric会社を含め、これに反対している。
しかし、裁判所は同様のケースで何度も、私企業間の契約を違法ではないとしている。
Bayerなどは和解はgeneric薬メーカーとの特許紛争の解決策として正当なものと主張し、Ciproについては、和解によってBarrは全特許が切れる6か月前にgeneric 品を販売できたため、消費者にもメリットありとしている。
CVSとRiteはBayerの特許は有効性に問題ありとしている。Barrは予審段階では勝っており、裁判になった時点で和解した。
これに対し、Bayerは、Cipro特許では連邦控訴裁でのMylanとの裁判で勝利しており、他のすべての裁判で勝っていると反論している。
石油化学工業協会の高橋恭平会長(昭和電工会長)は3月17日の記者会見で、石化製品の基礎原料となるエチレンについて「生産能力の4分の1 が停止状態になっている」と説明した。
地震の影響で三菱化学の鹿島事業所(茨城県神栖市)の2基、丸善石油化学の千葉工場(千葉県市原市)、JX日鉱日石エネルギーの川崎製造所(川崎市)の計4基の生産設備が止まり、3月以降の生産は大幅に落ち込む見通し。
停止設備能力は定修実施年ベースで1,712千トンで、合計能力7,279千トンの23.5%となる。
このうち、早期の復旧が難しい三菱と丸善の両工場の能力は1,308千トンで、全体の18%に相当する。
三菱化学・鹿島1、2号機(年産能力 828千トン)
製造設備は全て停止、自家発電等も停止。
バースが損傷を受けており、道路の損傷等のため、陸上・海上いずれによる入出荷も困難な状況で、復旧にはかなりの期間が見込まれる。(3/16発表)付記
バース以外のインフラ関連設備・機器の一部に著しく損傷しているものがあることが判明、プラント稼働再開までには最短でも2か月以上を要する見込み。(3月23日発表)
丸善石油化学・千葉(480千トン)
隣接するコスモ石油の爆発火災で操業を停止、再開見通しは未定。
(コスモ石油のLPGタンクの火災は3月21日午前10時10分、鎮火を確認した。石油精製設備の再稼働の見通しは立っていない。)なお、隣接の京葉エチレン(丸善石油化学/三井化学/住友化学のJV)は操業している。
付記
同社のアルコールケトン製造装置は復旧には最低でも1年間は必要とみられ、その間、メチルエチルケトン(MEK)、セカンダリーブチルアルコール(SBA)、ジイソブチレン(DIB)の出荷を停止する。(4月1日発表)
JX日鉱日石エネルギー・川崎(404千トン)
地震直後に手動によりエチレンプラントを停止
付記
3月30日に操業を再開した。
設備被害はなく、これまで安全確保のため点検作業を進めていた。
鹿島コンビナートには旭硝子や信越化学工業、花王など20社以上がプラントを持っているが、これらの工場が復旧しても三菱化学からの原料供給が遅れれば、生産再開が遅れる懸念がある。
三菱化学では、もうひとつの生産拠点である水島事業所による代替供給も含めて検討している。
その水島事業所のエチレンプラント(450千トン)は5月から定期修理に入る予定である。
このほか、本年は住友化学(千葉 380千トン)、三井化学(千葉
553千トン)、出光興産(千葉 374千トン)、
東ソー(四日市 493千トン)が定期修理の予定。
(三菱化学の鹿島1、2も予定)
定期修理でエチレン生産能力がさらに低下すれば、生活必需品などの生産にも影響を与えかねないため、石化協の小林喜光副会長(三菱化学社長)は、「プラントの定期修理の延期も含めた超法規的な措置をお願いせざるを得ない事態もあり得る」と述べ、政府に延期を働きかけていく可能性を示唆した。
今後、エチレンの輸出分を削減したり、アジアから手当てする可能性もあり、すでにアジア市況が上がり始めるなどの影響も出ている。
なお、エチレンの2月の生産量は596,600トンで、設備稼働率は95.7%。稼働率は90%台を22カ月連続で維持した。
BPは3月11日、ブラジルのエタノールと砂糖のメーカーのCompanhia Nacional de Acucar e Alcool (CNAA)のマジョリティを買収することで合意したと発表した。
買収により、BPはGoias州とMinas Gerais州のエタノール工場を手に入れるが、CNAAは Minas Gerais州に第三工場を建設中で、これが完成すれば、エタノール製造能力は年間14億リットル(900万バレル)になる。
BPはCNAAの株式の83%取得と同社の既存の借入金のリファイナンスに680百万ドルを支払う。
サトウキビの栽培地はブラジルのAgro-Ecological Zoning of
Sugarcaneで認められた地域にある。
3工場のサトウキビを圧搾する能力はフル稼働時には年間でサトウキビ
1500万トンで、各工場の生産能力はエタノール換算で年間480百万リットルとなる。
各工場はまた、年間340GWhの電力を供給する能力を持つ。
BPはこのほかに、2008年以降、Tropical BioEnergia S.A.の株式の50%を保有している。
同社はGoias 州に年間435百万リットルのエタノール生産能力を持っている。
最近発表されたBP Energy Outlook 2030によれば、代替エネルギーは今後20年間で最も成長の速いエネルギーで、世界のバイオ燃料生産は3倍以上になるとみられる。
BPはこの需要に応じるため、バイオ燃料に注力するとしており、今回の取引もこの戦略に沿ったもの。
BPは2006年以降、バイオ燃料の研究開発と生産に15億ドル以上を投資するとし、欧州、ブラジル、米国の生産施設に投資してきた。
San Diegoにグローバルなバイオ燃料技術センターを有し、バイオ技術のエネルギーへの適用を調査しているEnergy Biosciences Institute (EBI)に10年にわたって5億ドルを投資している。
2005年11月にはBPのローカーボンエネルギーを統合してBP Alternative Energy を設置、バイオ燃料、風力、太陽エネルギーなどの成長分野に80億ドルを投じるとともに、カーボン捕集・貯蔵やクリーン技術に長期的に取り組んでいる。
このうち、既に50億ドルが支出されている。
前回、BPのブラジルのバイオエタノール事業について書いた。
ブラジルでは双日が2007年にバイオエタノール事業会社に参加、その会社が2010年には同業大手と戦略的統合を行い、サトウキビ由来のエタノール生産能力で世界最大となっている。
双日は長年、ブラジルで鉄鉱石などのビジネスを行ってきており、その関係から2007年にブラジルの大手コングロマリットのOdebrecht S.A.からバイオエタノール事業に参画しないかと打診を受けた。
Odebrechtはブラジル最大のコングロマリットで、傘下に、南米最大の総合建設会社 Construtora Norberto Odebrecht S.A.や、南米最大の石油化学会社 Braskem S.A.などがある。
BraskemはバイオエタノールからのHDPE生産を開始しており、更にPPも計画している。
2010/11/9 Braskem、Greeen PP 製造へ
Odebrecht S.A.は2007年7月、農園のサトウキビ栽培からバイオエタノール・砂糖生産までの一貫事業を手がける会社、ETH Bioenergia S.A.を設立しており、双日は約92億円で同社の33.33%を取得した。
ETH Bioenergiaはバイオエタノール・砂糖製造を行う事業会社の買収と自社工場の建設で事業を拡大、現在は5か所で事業を行っている。
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* 発電はサトウキビの圧搾残滓(バガス)を利用したバイオマス発電 |
2016年に サトウキビの年間圧搾量約1600万トン(エタノール生産量年間98万キロリットル+粗糖生産量年間79万トン)、2021年にはサトウキビの年間圧搾量を約 4400万トン(エタノール生産量年間260万キロリットル+粗糖生産量年間240万トン)に増大し、エタノール・砂糖の生産においてブラジルトップクラスとなることを目指した。
双日は、エネルギー分野以外でも事業の拡大を図り、化学品分野ではBraskemの上記のグリーンプラスチック事業への進出、環境分野では排出権 つきの電力販売やバイオマス燃料を使った発電などへの事業進出、食料分野では粗糖のブラジル国外への輸出を検討するとしていた。
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ETH Bioenergiaは2010年2月、同業のBrenco Holding S.A.との戦略的事業統合に合意し、主要株主間の統合契約を締結致した。
Brencoは3州の州境のAraguaiaに4つの工場を建設中で、2012年には圧搾能力1500万トン、エタノール140万キロリットル、電力1520GWhとなる。
統合新会社は、ETH Bioenergiaの社名を継承し、旧ETHが65%、Brenco株主が35%の出資となる。
新会社は、ブラジル国内に9工場(旧ETHの5工場、Brencoの建設中の4工場)を保有、2012年度にはサトウキビ圧搾能力で4000万トン、エタノール生産能力は30億リットル、粗糖 48万トン、サトウキビの圧搾残滓(バガス)を利用したバイオマスの発電量も2700ギガワット時となり、サトウキビ由来のエタノール生産事業としては世界最大となる。
新会社は、今後35億レアル(約1750億円)を投入し、生産設備を拡充する。
また、バイオエタノール需要が高まる欧米市場向けの輸出を視野に入れ、17億レアル(約850億円)をかけ、生産地からサンパウロ州サントス港までの約1100kmのバイオエタノール輸出用大型パイプラインを敷設する計画も検討していく。
2011/3/24 浙江逸盛石化、寧波でPTA第三期計画の認可を取得
浙江逸盛石油化学(Zhejiang
Yisheng Petrochemical)はこのたびNDRCから、浙江省寧波市北侖区でのPTA第三期計画の認可を取得した。
第三期計画は30億人民元を投じるもので、Invistaの技術を導入、公称能力は年産150万トンだが、実際の能力は180万トンとされる。
同社は、紡織大手の浙江恒逸集団(Zhejiang Hengyi Group)と浙江栄盛化纖集団(Zhejiang Rongsheng Chemical Fibre
Group )及び佳栢国際投資有限公司、香港盛暉有限公司のJVで、製品PTAはすべて親会社の恒逸及び栄盛のポリエステル工場に供給される。
浙江逸盛化学は寧波に既存のPTA2基を持つほか、大連にJVの逸盛大化を持っている。
同社のPTAの公称及び実質能力は以下の通りで、今回の計画( )を合わせると実質能力は450万トンとなる。
単位:万トン | |||||||||||||||||||||||||||||
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逸盛大化石油化学(Yisheng Dahua Petrochemical)は逸盛化学80%、大化集団20%のJV。
当初年産50万トンのQTAを計画したが、最終的に1系列
120万トンのPTAに変更した。
中国は2009年にネットで508万トン、2010年に540万トンのPTAを輸入した。
なお原料PXについては2009年の輸入は337万トン、2010年は353万トンとなっている。
2011/3/25 Saudi Aramco と Sinopec、サウジで製油所建設
Saudi Aramco と Sinopecは3月16日、サウジ西海岸のYanbuのワールドクラスの製油所 Red Sea Refining Company (RSRC)に関する覚書を締結した。その後、社名をYanbu Aramco Sinopec Refining Co.(YASREF)とした。
付記
中国のNational Development & Reform Commission (NDRC)は2011年8月、本件を承認した。
その後、社名をYanbu Aramco Sinopec Refining Co.(YASREF)とした。
付記
2014年秋に完成、12月に初輸出する。
RSRCは輸出用の製油所として2010年7月にAramcoの100%出資で設立され、既に数社とEPC(Engineering, Procurement and Construction)契約を締結している。将来の世界のエネルギー需要に対応するためのAramcoの多くの川下計画の一環。
今回、両社は、RSRCに対して Saudi Aramcoが62.5%、 Sinopecが 37.5%出資することで合意した。両社はコマーシャル面、技術面の知見を供与する。両社はまた、両国間の輸送用燃料の売買に関する戦略的パートナーシップを創る。
RSRCの計画は、日量40万バレルのArabian Heavy 原油
を処理し、国内及び海外市場の最も厳しい規格に合った高品質製品を生産する。
製品は日量90千バレルのガソリン、同263千バレルの超低サルファディーゼル、同6300トンの石油コークス、同1200トンの硫黄など。
2014年稼働予定で、Aramcoの既存の原油受け入れ設備、製品輸出設備を利用する。
両社は中国とサウジで既にJVを持っており、今回の契約は両社の協力の一環である。
福建聯合石油化工(Fujian Refining & Petrochemical)では、Aramcoが25%、ExxonMobilが25%、Sinopecと福建省が共同出資するFujian Petrochemicalが50%出資し、2008年にエチレン80万トンのコンプレックスを運営している。
サウジではSinopec 80%、Aramco 20%出資の Sino Saudi Gas Limitedが Rub' al-Khali Basinでガス開発を行っている。
2011/3/26 イレッサ訴訟、東京地裁は国の責任も認める
肺がん治療薬「イレッサ」の副作用をめぐり、東日本に住む死亡患者3人の遺族が、輸入を承認した国と販売元のアストラゼネカに計7700万円の損害賠償を求めた訴訟で、東京地裁は3月23日、患者2人について国とア社の責任を認め、計1760万円の支払いを命じる判決を言い渡した。
死亡患者3人のうち1人については、発売3カ月後に説明書の「警告」欄で副作用が注意喚起された後に服用しており、請求は退けられた。
裁判長は「国は承認前の時点で副作用による間質性肺炎で死に至る可能性があると認識していた」と指摘した。
そのうえで「安全性確保のための必要な記載がない場合、国は記載するよう行政指導する責務がある」との見解を示し、間質性肺炎の危険性を目立つように記載するよう指導しなかった国の対応を違法と結論付けた。
ア社に対しては「イレッサは特定の患者に高い効能、効果があり、製造上の欠陥はない」としたが、「当初の添付文書の記載では医師らへの情報提供が不十分で、指示・警告上の欠陥があった」とした。
PL法上で規定する「通常の安全性を欠いた状態だった」と認定し、「添付文書に致死的となる可能性を記載していれば、服用を開始・継続することはなく、間質性肺炎で死亡することはなかった」と結論付けた。
付記
国は4月5日、控訴した。細川厚労相は「上級審の判断を仰ぐ必要がある」とした。原告団も「原告全体の一律救済を否定した点で判決を受け入れられない」として、6日に控訴した。
付記
死亡した患者3人の遺族が販売元のアストラゼネカと国に計7700万円の損害賠償を求めた訴訟の控訴審で、東京高裁は2011年11月15日、ア社と国の責任を認めた一審・東京地裁判決を取り消し、原告側の請求を全面的に退けた。
ーーー
イレッサで深刻な副作用を受けた患者と副作用によって死亡した患者の遺族計15人が、国とアストラゼネカに損害賠償を求めた訴訟で、東京、大阪両地裁は、原告側の和解勧告の上申書に基づき、事前に協議して、本年1月7日に和解勧告した。
しかし、政府は1月28日、東京、大阪両地裁の和解勧告に応じないことを決めた。アストラゼネカも勧告受け入れを拒否した。
2011/1/31 政府、イレッサ訴訟で和解勧告拒否
大阪地裁では2月25日に以下の判決が言い渡された。
アストラゼネカ:
警告欄に記載するなどして注意喚起を図るべきだった。
緊急安全性情報配布(2002/10)前は製造物責任法上の欠陥があり、賠償責任あり。
原告9人に計6050万円の賠償。
2002/10以降服用し死亡した男性の請求は棄却。
政府:
添付文書に関する行政指導は必ずしも十分ではないが、当時の知見のもとでは一定の合理性がある。
国家賠償法上の違法はない。
政府の責任については、1995年6月のクロロキン薬害訴訟の最高裁判決(下記)に沿ったもの。
「被害が生じても直ちに国家賠償法上の違法性は生じず、許容限度を超えて著しく合理性を欠く場合に違法性がある」
この判決に対し、原告側、被告側がともに控訴している。
原告側は、国の責任が認められなかったことなどを不服とした。
付記
2012年5月25日に、西日本の生存患者1人と、死亡患者3人の遺族10人が、輸入を承認した国と輸入販売元アストラゼネカに計約1億円の損害賠償を求めた訴訟の控訴審判決が大阪高裁であった。
裁判長は、国とア社双方とも責任はないと判断。ア社に賠償を命じた一審・大阪地裁判決を取り消し、原告側の全面敗訴を言い渡した。
大阪地裁の判決を受け、細川厚生労働相は、医薬品の安全性対策を強化するため、薬事法の改正や抗がん剤の副作用被害救済制度の検討に着手する考えを示した。
今回の東京地裁の判決は、政府にも責任を認めたもので、これについては両地裁で判断が分かれた。
判決を受け、細川厚生労働相は記者会見で、「判決内容を精査し、関係省庁と協議しながら今後の対応を決めたい」とした上で、「(東京地裁と大阪地裁で)異なった判断なので、一般的に申し上げれば、上級裁判所の判断を仰ぐというのも一つの方法かと考える」と述べた。
アスト
ラゼネカ社は、「東京高裁に控訴することも視野に入れ検討中」とのコメントを発表した。
代理人の弁護士は、「判決の論理に従えば、添付文書は警告だらけになり、本当に注意すべき情報が埋没する」「治験数を何倍にも増やさなければならず、ドラッグ・ラグにつながる」と主張した。
今回の震災で6製油所が停止、一時は全体能力
4,516千バレル/日の3割の1,398千バレルの生産が止まった。
このうち、3月21日までに3製油所が復旧した。
しかし、JXエネルギーの仙台、コスモの千葉の火災はようやく鎮火したが、鹿島石油を含め、全体能力の14%が再開の目処が立っていない。
2011/3/28 新日鉄化学大分のBTXとSM事業、昭電とのJVに
新日鐵化学と昭和電工は3月24日、新日鐵化学大分製造所の芳香族事業(スチレンモノマー およびベンゼン、トルエン、キシレン)を母体とする共同事業会社「NSスチレンモノマー(仮称)」を設立し、両社の合弁事業として運営することで合意したと発表した。
新日鉄化学が新設分割で同事業を承継する会社を設立し、その株式の49%を昭電に譲渡するもので、会社設立は8月1日を予定している。
事業の内容は以下のとおり(能力:千トン)で、昭電は現在、同事業に分解ガソリンとエチレンを供給している。
JVはベンゼン、トルエン、キシレンとスチレンモノマーの製造・販売を行う。
なお、ジビニルベンゼンについては、従来通り、新日鐵化学の事業とし、JVが製造を受託する。
今回の共同事業化は、原料から製品に至る垂直連携と、設備改善の実施などにより本事業を強化し、中国をはじめとするアジア市場への輸出競争力の 向上および、国内市場への安定供給体制の整備を図るものであるとしている。
但し、プラントは新日鉄化学の工場内にあり、JVは新日鉄化学の連結子会社(51%を保有)であり、実態は現在と変わらないと思われる。
昭電は早くにPSから撤退しており、SMの需要を持たない。
同社は実は、一時このSM事業に出資していたが、撤退している。(下記)
SMは生産量の半分が輸出であり、先行きに懸念がある。三菱化学は3月末に鹿島のSMを停止し、撤退する。
しかし、昭電にとっては、JVへの参加は、将来もエチレン需要を繋ぎ止めるための担保となる。
同様のケースとして宇部丸善ポリエチレンがある。
宇部興産は2001年10月にグランドポリマーの持分を三井化学に譲渡しPP事業から撤退したが、新聞報道では丸善石化コンビナートに197千トンの能力を持つPE事業についても2003年までに撤退する方針を決め、事業売却の検討に入ったと伝えられた。
しかしながら、京葉モノマーのVCMと同様、宇部のPEプラントが停止するとエチレンの操業に支障を生じる丸善石化の提案により、丸善石化のエチレンとの一体運営を行うこととし、宇部はPE事業を分離して宇部丸善ポリエチレンを設立し、その50%を丸善石化に譲渡し、JVとした。2004年10月に営業開始した。
ーーー
新日鉄化学大分製造所のスチレンモノマーは2系列で、No.2設備が19万トン、No.3設備が23万トン、合計 42万トンとなっている。
No.2設備は当初から新日鉄化学の設備であるが、No.3設備は日本スチレンモノマーの設備として建設された。
日本スチレンモノマーは1988年に新日鉄化学65%、新大協和石化35%のJVとして設立された。
その後、1990年に東ソーが新大協和石化を吸収したため、新日鉄化学と東ソーのJVとなった。
1992年に昭和電工がこれに参加したが、1994年に撤退している。今回、再度、株主になることとなる。
昭和電工は以前から住友化学とのポリスチレンのJVの日本ポリスチレン工業(NPS)に参加していたが、原料SMの確保のため、日本スチレンモノマーに出資した。
しかし、同社は1994年にPS事業を旭化成に譲渡し、SM事業からも撤退した。
東ソーは四日市のSMを1998年に休止したが、日本スチレンモノマーにはとどまっていた。
しかし、2008年3月末に新日鉄化学がスチレンモノマー事業強化のため、東ソーの持ち株を買い取って100%完全子会社とし、同年4
月に同社の設備等資産を取得し、6月末に同社を解散した。
2010/3/29 中国、レアアース資源税を大幅アップ、環境規制も
新華社(3月24日)によると、中国財政省はレアアースを生産する企業に課す資源税の税額を4月1日か
ら引き上げ、中・重希土類を1トン当たり30元(約370円)、軽希土類を60元(約740円)にすることを決めた。
現在は一般の非鉄金属として課税を受けており、税額は1トンあたり0.5〜3元であるため、10倍以上の大幅な増税となる。
中国政府は環境保護や資源枯渇の懸念を理由に、レアアースの生産や輸出を大幅に絞り込んでいる。採掘・生産を大手国有企業に集約する計画も進めており、課税強化には中小業者の退出を促す狙いもありそうだ。
レアアース生産大手、内蒙古包鋼稀土高科技の幹部は、増税で今年の同社の生産コストは1.1億ドル程度上昇するとの見通しを示した。
同社によると、レアアース価格は2月以降、大幅にアップしており(Neodymiumの場合、昨年末の30万元/トンが3月後半には倍の60万元)、値上がりがコストアップをカバーするとしている。
中国政府は増税分を、レアアースの加工、用途の技術開発や、環境補償基金の設定、レアアースの備蓄などに使用する。
資源税の増税は中国政府のレアアース産業の高度化の方策の一つ。
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中国商務部は2010年の12月28日に、2011年上期のレアアースの輸出許可枠を発表した。
それによると、上期の輸出許可枠は14,446トンで、前年同期比で35%の減となる。
2010/12/29 中国商務部、2011年上期のレアアース輸出許可枠を発表
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環境保護部は3月初めに、「希土
(レアアース)工業汚染物排出基準」を公布、10月1日から施行する。
基準はレアアース産業参入のハードルを効果的に高め、レアアース業界の持続的かつ健全な発展を促すとみられる。
これまでの過度な開発により、中国のレアアース資源備蓄量は急速に減少、レアアース生産過程における環境汚染問題が日増しに浮き彫りになっている。
レアアース産業に特化した汚染物排出標準がなかったため、生産過程で排出される特殊な汚染物はこれまで有効な抑制がされていなかった。
今回の「排出基準」ではレアアース関連企業の生産技術、生産設備の特徴、および添加材料の成分に基づき、
レアアース関連企業の生産過程で排出される主な汚染物を抑制項目とし、レアアース業界の排水・排気・放射性物質の排出抑制などが明確に規定された。
企業による希釈排出を防ぐため、基準はさらに製品あたりの基準排水量・基準排気量も定めている。
基準は中国国内のレアアース鉱山で採掘し、希土類金属・合金を生産する各種規模のレアアース特有の生産技術・装置からの排水・排気汚染物排出管理、さらにレアアース産業建設プロジェクトの環境アセスメント・設計・竣工検収にも適用される。
既存企業については2年の猶予期間を設けた後、同じく基準制限値を守ることが義務付けられる。
これにより、中小の企業を追い出したり、大企業と合併させることを狙っている。
内蒙古包鋼稀土高科技では、今後の5年間で五大製品のシェアを著しくアップさせると述べている。
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商務部の陳徳銘部長は3月7日、中国政府は、非常に大きな環境圧力に直面しており、レアアースの採掘、加工および国内での使用、輸出に対するの減量制限策をうち出すことを決定したと述べた。
国内での使用と輸出とを同等に扱うとし、理解を求めた。
また、国務院の要求に基づいてレアアースの総合的な産業政策を改善するにはどのようにすればよいか、現在検討中であることを明らかにした。
「より望むことは、日本など一連の国と共同でレアアースの代替原料を研究することだ。地球上のレアアース資源には限界があり、今のペースで使用すれば、何年もしないうちに枯渇してしまう。レアアースの循環型利用の方法や代替原料をぜひとも見つけなければならず、この方面で共同研究を行うことを願っている」と述べた。
付記
中国の国土資源省は3月31日、2011年のレアアース(希土類)の国内採掘量を93,800トン以下に抑える目標を決めた。
前年の目標に比べ5.16%増となる。
内訳は、軽希土類が80,400トン、中・重希土類が13,400トンとなっている。
国土資源部はまた、レアアース、タングステン、アンチモンの新しい探査及び採掘申請は2012年6月30日まで受け付けないとしている。
3月29日付の毎日新聞の「発信箱」に以下の内容の記載がある。
岩波書店の雑誌「科学」の1997年10月号に載った地震学の権威、神戸大の石橋克彦氏の論文「原発震災〜破滅を避けるために」に今回起きたことが正確に想定されていた。
(論文では中部電力浜岡発電所と東海地震の可能性について書かれている。浜岡は現在は3基稼働だが、当時は4基あった。)
・ | 最大の水位上昇がおこっても敷地の地盤高(海抜6m以上)を越えることはないというが、1605年東海・南海巨大津波地震のような断層運動が併発すれば、それを越える大津波もありうる |
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・ | 外部電源が止まり、ディーゼル発電機が動かず、バッテリーも機能しないというような事態がおこりかねない |
・ | 炉心溶融が生ずる恐れは強い。そうなると、さらに水蒸気爆発や水素爆発がおこって格納容器や原子炉建屋が破壊される |
・ | 4基すべてが同時に事故をおこすこともありうるし(中略)、爆発事故が使用済み燃料貯蔵プールに波及すれば、ジルコニウム火災などを通じて放出放射能がいっそう莫大になるという推測もある |
2005年の公聴会で石橋氏は以下の警告を行っている。
「日本列島のほぼ全域が大地震の静穏期を終えて活動期に入りつつあり、西日本でも今世紀半ばまでに大津波を伴う巨大地震がほぼ確実に起こる」
付記
石橋克彦・神戸大学名誉教授は本年3月15日付で、「2011年東北地方太平洋沖地震による『原発震災』について」を書かれている。
http://historical.seismology.jp/ishibashi/opinion/2011touhoku.html
その中に上記の論文も含まれている。
http://historical.seismology.jp/ishibashi/opinion/9710kagaku.pdf
2011/3/30 BASFがロシアの South Stream 天然ガスパイプライン計画に参加
BASFのエネルギー分野の子会社Wintershallはロシアの South Stream 天然ガスパイプライン計画に参加することで合意した。
3月28日にモスクワ郊外で行われた覚書の調印式にはロシアの
Putin首相が参加した。
Wintershallはパイプラインの海底部分に15%参加する。
黒海の海底にパイプを敷くもので、計画全体のコスト200〜250億ユーロのうち、100億ユーロ程度となり、BASFの負担は20億ユーロ程度となる。
付記
WintershallとElectricite de France SA が15%ずつ参加した。
当初はGazpromとENIが均等出資で設立したが、この結果、ENIの出資比率は20%となった。
South Stream計画は、ロシアと中央アジアの天然ガスを黒海海底パイプライン(900km)でブルガリアまで運び、複数経路でイタリア、オーストリアに輸送するもの。
2008年にGazpromとENIが均等出資でSouth Stream AGを設立した。
2015年の稼動を目指し、当初は年間310億m3、最終630億m3の天然ガスの輸送を計画している。
ブルガリア、ハンガリー、セルビア、ギリシャと政府間協定を締結済み。
BASFでは、これにより、今後伸びが期待され、同社の長期戦略の対象となっている欧州南東部の市場にアクセスできると述べている。
今回の合意は、BASFとWintershallのロシアとの関係を更に深めるものとなる。
Wintershallは、ロシアのもう一つの欧州向けの天然ガスパイプライン、Nord Stream計画に参加している。
これは、サンクトペテルブルク北方のビポルクから独北東部グライフスバルトまで、バルト海海底約1200キロを結び、年間最大550億立方メートルのシベリアの天然ガスを供給するもの。ロシアにとって、西欧へのガス輸送にウクライナを経由しないで済むメリットがある。
Gazpromはウクライナ向けに日量110百万m3、ウクライナ経由欧州向けに326百万m3の天然ガスを送っている。
2009年には天然ガス代金の支払い等の問題で、Gazprom がウクライナへの天然ガス供給を完全に停止した。2009/1/2 ロシア、ウクライナ向け天然ガス供給停止
2005年9月、Gazpromとドイツの電力会社E.On、及びWintershallの3社が契約文書に調印した。
Gazprom 51%、Eon 24.5%、BASF子会社Wintershall 24.5%の出資であったが、2008年6月に、オランダのNederlandse
GasunieがE.OnとWintershallから4.5%ずつを取得した。
現在の出資比率は、Gazprom
51%、Eon 15.5%、Wintershall 15.5%、Gasunie 9%、
GDF SUEZ 9%となっている。
ーーー
South
Stream計画は、EUが計画しているNabuccoパイプライン計画と競合するもの。
Nabuccoパイプライン計画は、ロシアのガス依存を減らすため、カスピ海地域からブルガリア、ルーマニア、ハンガリー等を通って中欧にガスを運ぶものだが、現時点ではまだ、ガス供給者も、投資者も決まっていない。
参考 2010/9/22 カスピ海の天然ガス、黒海経由で輸出へ
2011/3/31 中国の国家発展改革委員会、Sinopec-KPCの石油精製・石油化学計画を認可
中国の国家発展改革委員会(NDRC)は3月16日、シノペックとクウェート石油(KPC)のJVによる広東省湛江市東海島での石油精製・石油化学計画を承認したと発表した。
投資額は600億人民元で、年産1500万トンの原油精製能力と100万トンのエチレンクラッカー及びPE、PP、BTX、MEG等の誘導品からなる。
KPCがJVに原油を供給する。2013年スタートの予定。
付記
2016/12 ようやく建設を開始、第一期のエチレンは80万トン。KPCとの50/50JV。
出資はシノペックとKPCが50%ずつだが、KPCは持分の半分をパートナーに売却する予定で、候補としてダウやBPが挙がっている。
当初はシェルも交渉したが、その後シェルは上流に集中するという戦略に基づき、不参加を決めた。
能力は以下の通り。 | |||
原油精製 | 15,000 | 千トン | |
エチレン | 1,000 | ||
PE | 460 | ||
PP | 750 | ||
BTX | 710 | ||
MEG | 400 | ||
EO | 38 | ||
EVA | 200 | ||
ブタジエン | 150 |
ーーー
計画は5年越しのものである。
2006年にSINOPECとクウェート国営石油会社の石油精製プロジェクトが国家発展改革委員会の承認を受けた。
広州市南沙経済開発区で年間1,200万トンの石油精製を行うものである。
事前報道では15百万トンの石油精製と100万トンのエチレンコンプレックスと伝えられたが、石油精製能力は12百万トンで承認を受け、エチレンコンプレックスについては未定であった。
実は2005年12月に中国とクウェートが広東省での石油精製計画について覚書を締結、クウェートの石油大臣がペトロチャイナと会談して協議を行った。
しかし、この地域が本拠地であるSINOPECが巻き返し、政府を動かした。
2006/8/1 クウェートの中国進出
その後、2007年12月に年産15百万トンの石油精製と100万トンのエチレン計画のFS実施が承認された。
しかしながら、南沙計画に対しては環境面から反対が相次いだ。
南沙区は人口密集の珠江デルタの中心にあり、香港から37km、港珠澳大橋(香港〜珠海〜マカオ)から40kmしか離れていない。
香港やマカオから強い反対が起こった。
漁業やエビ養殖の盛んな南沙区の住民は、周辺の製油所による大気汚染と臭気に悩まされており、反対した。
広東省の議員も環境問題を理由に本計画の棚上げのロビー活動を行っていた。
この結果、移転が決まった。
2009年8月、Sinopecは移転先を湛江(Zhanjiang)市
東海島(Donghai Island)に決めたと発表した。
(Sinopec側は、1250万トンの製油所と100万トンのエチレンを持つ茂名市への移転を希望したが、省政府が湛江市を求めた模様。)
2009/8/4 広州のシノペックとクウェートの石油精製・石油化学計画 移転
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