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2010/11/1  COP10、名古屋議定書を採択 

生物多様性条約第10回締約国会議(COP10)は、最終日の日付を超えた10月30日未明に、遺伝資源の利用と利益配分を定める「名古屋議定書」を採択した。

付記

西田恒夫・国連大使は2011年5月11日、国連本部で「名古屋議定書」に署名した。

議定書をめぐっては、先進国と途上国が激しく対立して協議がまとまらず、29日朝に議長の松本龍環境相が自ら議定書案を各国に提示、ぎりぎりで各国がこれに同意する過去に例のない事例となった。

   COP10については 2010/10/21 COP-MOP5、「名古屋補足議定書」を採択

生物多様性条約の15条(遺伝資源の取得の機会)では以下の通り規定している。

5. 遺伝資源の取得の機会が与えられるためには、当該遺伝資源の提供国である締約国が別段の決定を行う場合を除くほか、事前の情報に基づく当該締約国の同意を必要とする

7. 締約国は、遺伝資源の研究及び開発の成果並びに商業的利用その他の利用から生ずる利益を当該遺伝資源の提供国である締約国と公正かつ衡平に配分するため、------ 適宜、立法上、行政上又は政策上の措置をとる。その配分は、相互に合意する条件で行う。

しかし、先進国と途上国の利害が対立し、この利益配分(Access and Benefit-Sharing : ABS) の具体的なルールが決まらないままとなっていた。

このため、遺伝資源の持ち出しを禁止する国も出てきており(インドネシアは鳥インフルエンザのウイルスの国外への持ち出しを禁止)、今回、どうしてもルールを設定することが必要であった。

過去の争いの例

1) ペルーの植物マカ

マカは、特定の地域では性的不全のための民間療法として何世紀にもわたって用いられてきた。
バイアグラの大流行で
Natural Viagraとして販売され、栽培面積が急激に拡大した。

2001年に米国特許庁がPureWorld Botanicals社にマカ抽出物 MacaPure に特許を認めた。

これに対し、ペルー農民がBiopiracyとして反対運動を起こしている。

その後、ペルーでは伝統的に受け継がれてきた動植物を国外に持ち出して医薬品などを開発する場合、ペルー政府と地元民に一定の割合で、利益を配分するように求める法律ができた。

2) アフリカ南部の植物フーディア(Hoodia)

アフリカ南部に住むブッシュマン(サン族)が長期の狩りに出ても空腹にならないようにガガイモ科の多肉植物のフーディア・ゴルドニー(Hoodia gordonii)を伝統的に食べてきた。
フーディアをしゃぶるだけで何も食べずに何日間もエネルギッシュに平気で狩猟を続け、体調は良好である。

南アフリカの国立研究機関の科学・工業研究評議会(CSIR)が、1997年にフーディアの中の食欲抑制効果を持つ生物活性化合物の分離に成功し、特許を取得、英国の製薬会社Phytopharmに特許使用権を与え、PhytopharmPfizerと(後に)Unileverに再実施権を与えた。(その後、両社ともギブアップ)

南アの弁護士が、「謝礼なしに伝統的な知識を横取りすることは許されざるバイオ・パイラシーである」と主張、ブッシュマンに謝礼を支払うようCSIRPhytopharmに圧力をかけた。
現在、カラハリ砂漠で合法的にフーディアを収穫する全ての企業はブッシュマンに使用料(伐採料)を支払っている。

米国ではフーディアのサプリメントが氾濫しており、ほとんどはニセモノといわれている。

3) 資生堂

資生堂は、 インドネシアの生薬で51件の特許(インドネシアのハーブを使った化粧品原料など)を取得したが、現地のNGOがABSに抵触すると主張した。
実際は違法な使用ではなかったが、資生堂は「企業イメージが傷付くことを恐れ」、2002年に全特許を取り下げた。

4) 鳥インフルエンザウイルス

世界で最も鳥インフルエンザ感染者の多いのはインドネシアだが、インドネシア政府は、ワクチン製造に必要な、人に感染した鳥インフルエンザウイルスの国外への持ち出しを禁止している。
(2007年からWHOへのウイルス提供を拒否)

先進国の企業はワクチンで利益を上げ、先進国の国民はワクチンによって鳥インフルエンザから守られるが、ワクチンの値段が高く、インドネシアの国民が接種できる可能性は少なく、インドネシアには恩恵がないというのが理由。

ーーー

今回の「名古屋議定書」の要旨は次の通り。

 ・遺伝資源の利用で生じた利益を衡平に配分する。

 ・遺伝資源と並び、遺伝資源に関連した先住民の伝統的知識(薬草の使用法など)も利益配分の対象とする。

 ・利益には金銭的利益と非金銭的利益を含み、配分は互いに合意した条件に沿って行う。

 ・遺伝資源の入手には、資源の提供国から事前の同意を得ることが必要。

 ・利益配分の対象
    「遺伝資源の利用に対し利益配分する」という表現で、遺伝資源を加工した「
派生物」という語は削除。
    玉虫色の表現で、実際には派生物を含む余地を残した。契約時に個別に判断することとなる。

 ・多国間の利益配分の仕組みの創設を検討する。
  (利益配分の対象を議定書発効以前や植民地時代に
遡及しないことの代替措置)

 ・人の健康上の緊急事態に備えた病原体の入手に際しては、早急なアクセスと利益配分の実施に配慮する。

 ・各国は必要な法的な措置を取り、企業や研究機関が入手した遺伝資源を不正利用していないか、各国がチェックする。

 ・50カ国・地域の批准から90日後に発効する。

 

問題となった主な点は以下の通り。

・違法持ち出しの監視

途上国は、先進国側での特許申請時に原産国を開示することを義務付け、合法かどうか確認することを要求。
先進国は、特許申請時の開示は企業活動に影響するとして義務化に反対。

・適用時期

アフリカなど植民地化された国々は、数百年前から途上国の資源を用い、先進国で作られた商品に対する利益の配分を要求していた。

・派生物

タミフルを例にとると、タミフル中国の広西チワン族自治区、貴州省、雲南省、四川省で生育するトウシキミの実(八角)から抽出したポリフェノールのシキミ酸を化学的に変化させて生産する。

東大の柴崎正勝教授は八角を使わず、1,4-シクロヘキサジエンから不斉触媒を用いて合成に成功した。
   
2006/02/26  話題 植物使わずタミフル合成に成功 東大グループ

後、成分を変化させて他の医薬品が作られる可能性もある。

八角は遺伝資源だが、これから作るタミフル、別原料でつくるタミフル、成分を変化させてつくる他の医薬品などは「派生物」といわれ、途上国はこれらすべてを利益配分の対象にせよと主張。
「派生物が入らなければ意味がない」とした。

先進国は派生物まで対象となっては企業活動が妨げられると断固反対。

名古屋議定書では玉虫色の表現となった。

・病原体の扱い(上記の鳥インフルエンザウイルスの例)

途上国は確実に利益配分される仕組みを要求。

インドネシアは、「議定書が採択され利益配分についての契約が整えば、ウイルス(H5N1)の提供を開始する」としている。

 

ーーー

COP10では他に、生物の多様性を守るため、2020年までの10年間に各国が取り組む国際目標「愛知ターゲット」が全会一致で採択された。20項目の目標(義務付けではない)がある。

主な項目は以下の通り。

・自然生息地の損失速度を少なくとも半減、可能なところではゼロに近づける
   2002年採択の現行目標は「2010年までに生物多様性の損失速度を著しく減少させる」であったが、
   具体性や実効性に欠けていたため、目標達成は失敗に終わった。

・少なくとも陸域の17%と海域の10%を保全
   先進国は「陸地は20%か25%」などと高い目標を掲げ、
   途上国が資金不足などを理由に「15%」を主張して対立していた。
   現在の海域保護区は1%にとどまる。

・水産資源を持続可能な手法で管理し、乱獲しない。
・農業や林業地域を、持続可能な方法で管理
・侵略的外来種を特定し、侵入を防止、根絶
・サンゴ礁への気候変動や海洋酸性化の影響を最小化
・絶滅危惧種の絶滅を防ぎ、保全状況を改善
・農作物や家畜の遺伝子の多様性を維持
・劣化した生態系の15%以上を回復
・気候変動対策に貢献
・先住民と地域社会の伝統的知識を尊重し、保護

保護対策に必要な資金の目標については、発展途上国が強く求めた具体的な金額は盛り込まれず、遅くとも2020年までに今の水準より大幅に増額することで合意した。

 


2010/11/2 注目企業の9月中間決算ー1 信越化学、JSR東ソー 

9月中間決算の発表が始まった。

各社とも、「セグメント情報等の開示に関する会計基準」を適用し、セグメント区分を見直した。

「マネジメント・アプローチ」と呼ばれる方法で、企業が経営者の意思決定や業績評価に使用する情報に基づいてセグメント情報を開示することとなった。
必ずしも製品区分別ではないため、従来よりも企業間の比較が難しくなる。

ーーー

信越化学

前年同期比で増益となったが、年度予想でも以前の利益水準を大きく下回る。
塩ビ、シリコン半導体の損益が依然低迷している。

移転価格課税に対する日米相互協議の合意により、10,663百万円の過年度法人税等戻し入れがあった。

単位:百万円(配当:円)
  売上高 営業損益  経常損益 当期損益    配当
中間 期末
08/9中間  695,413  150,101  156,519  100,953  50.0  
09/9中間 417,229 52,939 55,818 35,528 50.0  
10/9中間 532,562 76,143 81,203 62,342 50.0  
増減 115,333 23,204 25,385 26,814  
             
10/3 916,837 117,215 127,019 83,852 50.0 50.0
11/3 1,040,000 148,000 160,000 110,000 50.0 50.0

営業損益対比              億円
  09/9中 10/9中 差異   10/3
塩ビ・化成品 100 93 -7   196
シリコーン 99 175 76   249
機能性化学品 71 60 -11   139
半導体シリコン 100 210 109   226
電子・機能材料 133 180 47   307
その他 32 42 9   68
調整 -6 2  7    -13
合計  529 761 232   1,172
塩ビ・化成品 従来の(塩ビ系)から信越ポリマーを除外、
(その他有機・無機)のソーダ、メタノール、クロロメタン
機能性化学品 (その他有機・無機)から上記3品目と信越ポリマーを除外
電子・機能材料 (電子材料)から半導体シリコンを除外(→独立)
(機能材料その他)から技術・プラント輸出、その他を除外
その他 信越ポリマーの樹脂加工製品と、技術・プラント輸出等

半導体シリコンについては値上げを行い、利益は倍増した。
しかし、以前の水準からは大きく下回る。

塩ビについてはシンテックと欧州は高稼働が続いている。

しかし、シンテックの損益をみると、大幅に減益となった2009年中間決算と余り変わらない。
理由(推定)については 2010/5/3 
注目企業の決算-1(信越化学) 

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JSR

前年同期に比較すると、需要は大きく回復し、業績は改善した。
同社では、未だ回復の途上であると認識し、さらなる業績の向上を目指し総力を結集し取り組むとしている。

単位:百万円(配当:円)
  売上高 営業損益 経常損益 当期損益  配当
中間 期末
08/9中間  208,037 26,166 27,822 16,204 16.0  
09/9中間 142,943 3,290 3,107 -448 13.0  
10/9中間 170,315 20,079 21,479 13,315 16.0  
増減 27,372 16,789 18,372 13,763 3.0  
             
10/3 310,183 20,230 22,377 13,644 13.00 13.00
11/3 340,000 38,000 40,500 26,000 16.00 16.00

営業損益対比         億円
  09/9中 10/9中 差異
エラストマー -47 64 111
合成樹脂 -6 15 21
多角化事業 86 122 36
合計 33 201 168

従来、区分掲記していたエマルジョンは、エラストマーに含める。
ブタジエンモノマー等の化成品は、多角化事業からエラストマー事業に変更

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東ソー

前年同期比で増益となったが、クロルアルカリ(塩ビ+ウレタン材料)は依然、大きな赤字となっており、年度予想でも以前の水準から下回る。

単位:百万円(配当:円)
  売上高 営業損益 経常損益 当期損益   配当
中間 期末
08/9中間  425,775 12,009 13,574   5,318 4.0  
09/9中間 297,737 2,491 -60 -2,238 3.0  
10/9中間 322,135 10,056 7,119 2,437 3.0  
増減 24,398 7,565 7,179 4,675  
             
10/3 628,706 13,047 10,080 6,890 3.0 3.0
11/3 680,000 29,000 26,000 11,000 3.0 3.0

営業損益対比         億円
  09/9中 10/9中 差異
石油化学 26 28 2
クロルアルカリ -64 -56 8
機能商品 58 106 48
エンジニアリング -6 10 16
その他 11 12 1
合計 25 101 76

クロルアルカリは従来は塩ビ系が中心であったが、今回からはウレタン原料が加わった。

 


2010/11/3 法人税率引き下げとナフサ課税 

菅政権発足後初となる政府税制調査会(会長=野田佳彦財務相)が10月6日、首相官邸で開かれ、2011年度税制改正の論議がスタートした。

菅直人首相は「法人課税の見直しを議論し、結論を得てほしい」と述べ、法人税減税の具体化を指示した。
法人税の実効税率(現行約40%)について、政府は5%引き下げを検討する。

米国はカリフォルニア州の場合、ドイツは全ドイツ平均、スイスは州により異なり、現在12.7〜24.5%となっている。

財務省は法人税率を5%引き下げると国税で1兆7000億円、地方税で3000億円、合計2兆円程度の減収になるとし、経産省に対し財源や効果を明示するように求めた。

政府は6月に閣議決定した財政運営戦略で、新たな減税措置は税収減を穴埋めする代替財源の確保を条件とするルールを設定している。

経済産業省は10月28日、2011年度税制改正で要望している法人税率の5%引き下げを実現した場合の効果についての試算をまとめた。経済産業省は金融危機後に急減した法人税収をもとに5%下げに必要な財源を1兆円とはじいている。

GDPの押し上げ効果を合計14.4兆円と試算。海外移転抑制や国内投資促進の効果などを合わせ、3年後のGDP成長率を2.6ポイント押し上げると主張。

財源については租税特別措置、減価償却費制度、繰越欠損金制度の見直しなどで「5000億〜6000億円程度を想定」。法人税減税による増収効果「4800億〜6400億円」と合わせ、1兆円程度は確保できるとした。

さらに「法人税率引き下げは中長期的に経済成長につながり、数年後の最大の税収確保策になる」と強調。3年後に1兆1500億円の国税の増収効果が見込めるとの試算を示した。 

これに対し、政府税制調査会が検討している代替財源案のたたき台が判明した。

内容は以下の通りで、全体で2.6兆〜4.5兆円の財源確保につながるとしている。

財務省は法人税率引き下げの影響を2兆円とみており、また減税による増収効果も疑問視している。
今回の試算は法人税率引き下げ影響を上回るもので、「考えられる財源を列挙」したものとしている。

ナフサの免税措置の縮小・見直し @ or A
  石油化学製品の原料ナフサの免税措置の縮小
@暫定税率分課税  1兆6800億円〜1兆7200億円
A燃料部分への課税    4300億円〜4400億円
減価償却制度の抜本見直し 6000億円〜8000億円
繰越欠損金の利用制限
  繰越欠損金の課税所得との相殺を、課税所得の「半分まで」に制限
  大手6銀行グループの2009年度の法人税の納付額がゼロ
4000億円〜5000億円
研究開発税制の大幅縮減
  「総額型」の全廃
2700億円〜5100億円
準備金の廃止・縮減 3300億円
貸倒引当金などの廃止・縮減 2000億円〜2500億円
受取配当の益金不算入の見直し 1500億円〜1700億円
特別償却などの廃止・縮減 1200億円〜1400億円
不動産の買い換え特例の廃止・縮減 700億円〜900億円
一般寄付金の損金不算入の廃止・縮減 200億円〜300億円
合計 ナフサAのケースの最小 2兆5900億円
ナフサ@のケースの最大 4兆5400億円

ーーー

ナフサ等の揮発油は下記の課税がされるが、石油化学用のナフサについては租税特別措置法で免税となっている。

  石油石炭税 揮発油税
税率 原油・石油製品 2,040 円/KL
[本則の税率]
   24,300 円/KL (国税)
  +4,400 円/KL (地方税)
     
[暫定税率]
  24,300 円/KL (国税)
  + 800 円/KL (地方税)
     
53,800 円/KL  
     
免税の
定め方
租税特別措置法で2年毎に延長
租税特別措置法で期限を定めず
に免税
免税
相当額
  約1,000億円   約3兆円

2008年に当時の野党の民主党(参議院で多数)の反対で租税特別措置法の改正が通らない可能性が出て、大問題となった。
(揮発油税免税は期限を定めていないが、石油石炭税は2年ごとの延長のため、改正がないと課税となってしまう)

租税特別措置法改正案のうち、道路関連の暫定税率を除いた優遇措置を5月末まで延ばす「つなぎ法案」が3月31日に成立、6月19日の衆議院本会議で再可決し、延長された。

2008/1/22 ガソリン税問題と石油化学業界への影響

2009年秋に、政府税制調査会で租税特別措置の見直し等の一環として、ナフサ等石油化学原料の免税に手を加えようとする動きが出た。

これに対し、石化協は11月19日、緊急決議を行った。

1. 工業原料の非課税原則は世界の常識
    世界を見渡しても原料用ナフサ等に課税している国はない。
   
2. 世界に類のない石化原料課税は産業存立基盤を破壊
  石油化学工業は下流部門を含めると出荷額30兆円、雇用者73万人、中小企業2万社を擁する重要産業。
中東産油国の石化増強などで厳しい競争にさらされているこの産業の存立基盤をさらに脅かす。
   
3. ナフサ等の課税は国民生活にも大きな影響
  各種容器、食品包装、断熱材などから電気製品や自動車の部品に至るまで材料として広汎に使用され、課税に伴う価格上昇は国民生活に大きな影響を与えるおそれがある。
   
4. 民主党の政策一貫性を期待
  昨年租税特別措置法が期限切れを迎えた時、野党であった民主党は租特法の延長には反対しつつも国民生活に多大な影響のある7項目(ナフサ等の石油石炭税免税を含む)の免税措置を延長する法案を参議院に提出した。
民主党の主張の一貫性を期待。

2010年度税制改正の焦点となっていたナフサに対する租税特別措置については、課税化を見送り、免税措置を継続することとなった。

2009/12/3 「ナフサ免税」継続 
 

今回の政府税調内で有力視されている案は、石油化学製品の製造工程などで燃料として使われる「オフガス」への課税。
オフガスは税制法上は“原料”との通達が出ている。)

経産省によれば、オフガスはナフサの10%程度を占め、課税すれば3000億円規模の負担増となる。
(政府税調試算は上記の通り、4300〜4400億円)
原油価格のアップなどと異なり、これは日本だけのコストアップとなるため、国内・国外とも価格転嫁は不可能である。

エチレンセンター各社の損益状況は以下の通りで、課税されれば、中東や中国の石化大増設により存続が危ぶまれる日本の石油化学産業の「存立が不可能になる」(経産省)。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

大畠章宏経産相は10月26日の会見で、「国際的にも課税していない。断固として反対」と、ナフサ免税の見直しに異議を唱えた。
国際的にナフサ原料へ課税している例はなく、課税すれば、国産品は価格面で輸入品に太刀打ちできなくなるとして、経産省は免税の恒久化を要望する。

日本経団連の米倉会長は10月25日の定例会見で、「世界各国でもナフサを原料として使う場合は無税として認められている」と述べ、「日本だけが課税すれば、法人税を下げて投資・雇用を増やす流れは完全に断ち切られ、日本国内の数十万人の化学産業労働者が不要になる」と強い懸念を示した。

石化協の高橋会長(昭和電工社長)は、「原料非課税は国際的に一般化している。オフガスも石化原料であり課税している国は皆無だ。課税には絶対に反対である」、「石化産業は、加工産業の裾野が広く中小企業も多い。原料課税による国際競争力喪失はわが国の経済や雇用問題に大きな影響を与える」と述べた。

11月2日の政府税調による意見聴取で、経団連の渡辺副会長は、「安易な課税ベースの拡大は経済に悪影響を及ぼし、雇用の確保につながらない」とし、ナフサについては、「わずかでも課税すれば、日本で石油化学産業は立地を断念せざるを得ず、70万人の雇用が一気に失われることが必至だ」と訴えた。

付記

石化協は11月19日、「原料ナフサの課税絶対反対 総決起大会宣言」を発表した。

1.工業原料の非課税原則は世界の常識
2.世界の類のない石化原料課税は産業存立基盤を破壊
3.ナフサ等の課税は国民生活にも大きな影響
4.副生ガスの課税は論外

1〜3は上記の昨年11月の緊急決議と同じだが、今回はオフガスが対象となる可能性があるため、4が加わった。

4.副生ガスの課税は論外

副生ガスは製造プロセス上やむを得ず生ずるものであり、資源節約のために有効利用されている。現行税法上も石化工業で使うナフサは副生ガスを含めて免税とされており、世界でも課税の例はない。


2010/11/4 注目企業の9月中間決算ー2 医薬メーカー  

主要各社の営業損益は以下の通り。

武田薬品工業とアステラス製薬で、米国の特許切れの影響が大きく出ている。

中外製薬(6月決算)はインフルエンザ流行の早期沈静化によるタミフルの販売減で、大日本住友製薬は米国医薬会社買収に伴う経理処理の影響で減益となっている。

ーーー

武田薬品工業

単位:百万円 (配当:円)
  売上高 営業損益 経常損益 当期損益   配当
中間 期末
09/9中間  755,453 242,527 254,905 189,634 90.0  
10/9中間 714,025 221,619 225,473 144,211 90.0  
増減 -41,428 -20,908 -29,432 -45,423  
             
10/3 1,465,965 420,212 415,829 297,744 90.0 90.0
11/3 1,400,000 350,000 360,000 230,000 90.0 90.0

売上高 前年同期比 414億円の減
  うち、
米国で特許切れの消化性潰瘍治療剤が557億円の大幅減収

営業損益は前年同期比 209億円の減益となった。
  減収と売上原価構成の変化による損  
-516億円
  研究開発費減 114億円

  販売費・一般管理費減 193億円(益)、円高による影響など

ーーー

アステラス製薬

単位:百万円 (配当:円)
  売上高  営業損益 経常損益 当期損益   配当
中間 期末
09/9中間 494,644 129,319 128,327 83,488 60.0  
10/9中間 461,729 67,920 65,499 43,887 60.0  
増減 -32,915 -61,399 -62,828 -39,601 -  
             
10/3 974,877 186,407 190,986 122,257 60.0 65.0
11/3 942,000 124,000 122,000 82,000 60.0 65.0

同社は2010年6月、OSI Pharmaceuticalsの全株式をTOBにより取得した。取得原価 3,543百万ドル。

売上高は329億円の減。

免疫抑制剤プログラフ  後発医薬品発売で214億円の減
排尿障害改善剤ハルナール  
同上でロイヤリティ収入が253億円の減
OSI買収により 109億円の増

営業損益は614億円の減。

減収と品目構成の変化で売上総利益は277億円の減
研究開発費 260億円増
  ヒトモノクローナル抗体開発技術契約延長一時金 183億円
  OSIの研究開発費 40億円
販売費一般管理費 76億円増  
  OSI買収に伴う無形固定資産等の償却費負担 70億円を含む。

ーーー

エーザイ

単位:百万円 (配当:円)
  売上高 営業損益 経常損益 当期損益   配当
中間 期末
09/9中間   394,982 49,119 45,197 30,922 70.0  
10/9中間 412,283 67,191 62,167 39,949 70.0  
増減 17,301 18,072 16,970 9,027  
             
10/3 803,152 86,406 79,690 40,338 70.0 80.0
11/3 795,000 116,000 107,000 70,000 70.0  

売上増による売上総利益の増加に加え、販売費・一般管理費の効率化により、営業利益、経常利益および四半期純利益は増益となった。

ーーー

第一三共

単位:百万円 (配当:円)
  売上高  営業損益 経常損益 当期損益   配当
中間 期末
09/9中間 470,568 50,850 52,259 18,691 30.0  
10/9中間 498,886 90,107 92,647 52,154 30.0  
増減 28,318 39,257 40,388 33,463  
             
10/3 952,105 95,509 103,114 41,852 30.0 30.0
11/3 980,000 100,000 100,000 55,000 30.0 30.0

高血圧症治療剤オルメサルタンの伸長やランバクシー・ラボラトリーズの増収(49%増の985億円)の寄与などにより増収となった。
営業損益は、増収と販管費の減少などで増益となった。

ーーー

田辺三菱製薬  

単位:百万円 (配当:円)
  売上高  営業損益 経常損益 当期損益   配当
中間 期末
09/9中間 198,239 27,456 27,910 13,552 14.0  
10/9中間 204,684 40,155 40,473 22,704 14.0  
増減 6,445 12,699 12,563 9,152    
             
10/3 404,747 61,475 61,649 30,253 14.0 14.0
11/3 401,000 67,000 67,000 35,500 14.0 14.0

売上高は64億円の増収だが、薬価改定などで若干の減益。
研究開発費減(前期に一時払い100億円あり)、退職給付費用や販売促進費の減で販売管理費が130億円減少した。

ーーー

中外製薬(6月中間決算)

単位:百万円 (配当:円)
  売上高  営業損益 経常損益 当期損益   配当
中間 期末
09/6中間 191,691 37,175 43,454 26,306 17.00  
10/6中間 182,379 27,562 26,158 16,376 17.00  
増減 -9,312 -9,613 -17,296 -9,930  
             
09/12 428,947 82,612 90,395 56,634 17.00 23.00
10/12 418,500 70,000 70,500 44,000 17.00 17.00

売上高は、タミフルが134億円の減、マイルストーン収入の40億円減があり、全体で93億円の減収。
営業損益は、タミフルとマイルストーン収入の減を除くと増益。

ーーー

大正製薬

単位:百万円 (配当:円)
  売上高  営業損益 経常損益 当期損益   配当
中間 期末
09/9中間 129,755 18,199 18,855 10,364 12.0  
10/9中間 133,046 24,635 26,833 16,219 12.0  
増減 3,291 6,436 7,978 5,855  
             
10/3 258,441 34,686 36,671 19,485 12.0 15.0
11/3 265,500 39,000 43,000 26,000 12.0 15.0

売上高:セルフメディケーション +38億円 (「パブロン」、「リポビタンD」、「リアップ」など) 
     医薬事業 
-5億円

営業損益:販売増 +14億円、研究開発費減 +44億円、販売管理費減 +6億円

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塩野義製薬

単位:百万円 (配当:円)
  売上高  営業損益 経常損益 当期損益   配当
中間 期末
09/9中間 132,639 17,838 16,397 11,591 18.0  
10/9中間 143,366 19,228 17,696 6,862 20.0  
増減 10,727 1,390 1,299 -4,729 2.0  
             
10/3 278,502 52,438 50,522 38,625 18.0 18.0
11/3 283,000 54,000 51,500 30,000 20.0 20.0

単体の営業損益は268億円の益で、前年同期比 1億円増。米国事業が赤字となった。

当期損益は、米国事業に係る特別損失64.7億円があり、赤字となった。
(なお、米国事業については、決算期変更で9ヶ月分が算入されている。)

ーーー

大日本住友製薬

単位:百万円 (配当:円)
  売上高  営業損益 経常損益 当期損益   配当
中間 期末
09/9中間 132,210 18,919 19,053 12,654 9.0  
10/9中間 188,574 14,941 14,381 8,650 9.0  
増減 56,364 -3,978 -4,672 -4,004  
             
10/3 296,261 35,624 33,837 20,958 9.0 9.0
11/3 365,000 18,000 15,500 9,000 9.0 9.0

   

同社は2009年10月に米Sepracor Inc.を買収した。(本年10月にSunovion Pharmaceuticals と改称)

Sepracor の通常ベースの上期の業績は、売上高 630億円、営業損益 160億円、純損益 102億円であるが、
特許権やのれんの償却等、取得原価配分の影響が税引前で
-192億円(税引後 -128億円)あり、
減益となった。

  詳細は 2010/5/12 注目企業の決算-3 (住友化学の欄 参照)

 


2010/11/5  注目企業の9月中間決算ー3 住友化学、三菱ケミカル、三井化学、旭化成  

各社とも、「セグメント情報等の開示に関する会計基準」を適用し、セグメント区分を見直した。

「マネジメント・アプローチ」と呼ばれる方法で、企業が経営者の意思決定や業績評価に使用する情報に基づいてセグメント情報を開示することとなった。
必ずしも製品区分別ではないため、従来よりも企業間の比較が難しくなる。

ーーー

住友化学

基礎化学、石油化学、情報電子化学が回復、前期の赤字から黒字となった。

同社は本年4月に豪州農薬メーカー Nufarm20%出資したが、同社の時価が大きく下落したため、のれん相当額を一時償却し、特別損失287億円を計上した。この結果、当期損益は25億円にとどまった。
(これは仮計上で、2011年3月末に時価が戻れば、取り消される。)

単位:百万円 (配当:円)
  売上高  営業損益 経常損益 当期損益   配当
中間 期末
08/9中間  1,009,207 31,009 22,973   6,288 6.0  
09/9中間 735,205 11,172 7,788 -3,485  
10/9中間 989,245 53,043 52,107 2,515 3.0  
増減 254,040 41,871 44,319 6,000 3.0  
             
10/3 1,620,915 51,455 34,957 14,723 6.0
11/3 1,950,000 72,000 62,000 10,000 3.0 6.0

営業損益対比         億円
  10/3   09/9中 10/9中 差異   11/3予
基礎化学    13   -18 101   119   195
石油化学 -2   -36 58 94   106
精密化学 36   8 20 12   15
情報電子化学 63   -41 171 212   260
農業化学 293   144 139 -5   225
医薬品 299   161 137 -24   135
その他 67   14 18 4   25
全社 -254   -121 -114 7   -240
合計 515   111 530 419   720

今回、セグメント区分そのものはほとんど変わらないが、全社費用(主に全社共通研究費)を配賦せず、別記した。

医薬品については 2010/11/4 注目企業の9月中間決算ー2 医薬メーカー 参照

ーーー

三菱ケミカルホールディングス

当期より三菱レイヨンを連結子会社とした。

これと、機能商品・素材分野の需要の回復で大増益となった。
年間の営業損益は2030億円の予想。

本年8月3日発表の三菱レイヨンの業績予想は以下の通り。
 上期 売上高 2400億円、営業損益 120億円、経常損益 100億円、当期損益 25億円
 年間 売上高 4700億円、営業損益 183億円、経常損益 153億円、当期損益 37億円

単位:百万円 (配当:円)
  売上高  営業損益 経常損益 当期損益   配当
中間 期末
08/9中間  1,587,734 56,211 65,516   23,544 8.0  
09/9中間 1,145,807 2,071 -4,551 -2,567 4.0  
10/9中間 1,564,658 111,393 106,388 43,976 5.0  
増減 418,851 109,322 110,939 46,543 1.0  
             
10/3 2,515,079 66,342 58,990 12,833 4.0 4.0
11/3 3,190,000 203,000 196,000 75,000 5.0 5.0

営業損益対比         億円
  10/3   09/9中 10/9中 差異   11/3
ケミカルズ    69   -26 219   244   440
ポリマーズ -224   -264 243 507   450
エレクトロニクス・アプリケーションズ -14   -25 32 58   40
デザインド・マテリアルズ 125   29 208 179   380
ヘルスケア 710   319 446 127   770
その他 62   26 6 -20   30
全社 -65   -38 -41 -2   -80
合計 663   21 1,114 1,093   2,030

セグメント区分名は同じだが、以下の変更がある。

  従来のセグメント 新セグメント
無機化学品 エレクトロニクス・マテリアルズ デザイント・゙マテリアルズ
化学繊維(三菱レイヨン)  − デザイント・゙マテリアルズ
肥料(三菱化学アグリ) 化学品  −(JV化)

三菱レイヨンを除く、ケミカルズ、ポリマーズの国内連結子会社の減価償却方法を定額法に変更した。
この結果、営業損益は75億円増加している。

ヘルスケアについては 2010/11/4 注目企業の9月中間決算ー2 医薬メーカー 参照

ーーー

三井化学

自動車関連をはじめとする需要の回復に伴う販売数量の増加及び石化・基礎化学品分野における交易条件の改善などにより、増益となった。

単位:百万円 (配当:円)
  売上高  営業損益 経常損益 当期損益   配当
中間 期末
08/9中間   905,615 9,989 13,343   7,640 6.0  
09/9中間 549,869 -19,010 -22,131 -31,363  
10/9中間 672,823 17,357 14,604 17,126 3.0  
増減 122,954 36,367 36,735 48,489 3.0  
             
10/3 1,207,735 -9,461 -13,132 -28,010 3.0
11/3 1,340,000 35,000 29,000 24,000 3.0 3.0

営業損益対比                                       億円
  10/3   09/9 10/9 差異 内訳   11/3
数量差 交易条件 固定費他
石化 -34   -68 62    129 26 75 28   110
基礎化学品    -48   -50 65 115 26 76 13   120
ウレタン -21   -34 -43 -9 8 -5 -12   -60
機能樹脂 -44   -52 45 96 61 -3 38   75
加工品 8   -2 12 14 22 -5 -3   20
機能化学品 74   24 45 21 10 1 10   120
その他 11   10 1 -9     -9    
全社 -41   -20 -13 6     6   -35
合計 -95   -190 174 364 153 139 72   350

従来の区分

機能材料 自動車・産業材(エラストマー)、包装・機能材(工業樹脂)、
生活・エネルギー材(機能加工品)、
電子・情報材(電子材料、情報材料、機能性ポリマー)、ウレタン樹脂原料
先端化学品 精密化学品、農業化学品
基礎化学品 基礎原料(エチレン、プロピレン等)、フェノール、合繊原料・ペット樹脂、工業薬品、
ポリエチレン、ポリプロピレン
その他 その他関連事業等

今回からの区分

石化 エチレン、プロピレン、ポリエチレン、ポリプロピレン
基礎化学品 フェノール、ビスフェノールA、高純度テレフタル酸、ペット樹脂、エチレンオキサイド
ウレタン ポリウレタン材料、コート材料、接着材料、成形材料
機能樹脂 エラストマー、コンパウンド製品、特殊ポリオレフィン、エンジニアリングプラスチック
加工品 衛生材料、半導体材料、エネルギー材料、包装用フィルム
機能化学品 眼鏡レンズ用材料、ヘルスケア材料、化成品、特殊ガス、触媒、農業化学品
その他 その他関連事業等

ーーー

旭化成

ケミカル事業が製品市況の上昇及び海外需要の拡大に伴い業績を大幅に伸ばしたことや、住宅事業やエレクトロニクス事業も好調に推移したことなどから、大増益となった。

単位:百万円 (配当:円)
  売上高  営業損益 経常損益 当期損益   配当
中間 期末
08/9中間 843,185 40,139 40,665 23,415 7.0  
09/9中間 658,648 17,964 15,077   4,242 5.0  
10/9中間 764,794 63,521 59,586 28,464 5.0  
増減 106,146 45,557 44,509 24,222  
             
10/3 1,433,595 57,622 56,367 25,286 5.0 5.0
11/3 1,608,000 115,000 110,500 58,500 5.0 5.0

営業損益対比                                    億円
  10/3実   09/9中 10/9中 差異 内訳
数量差 売価差 コスト差他
ケミカルズ 261   115 373   258 50 345 -137
ホームズ 253   41 101 60 26 20 13
ファーマ 40   34 42 8 17 -27 18
せんい -28   -29 23 52 25 2 25
エレクトロニクス 72   28 107 79 127 -99 51
建材 12   6 11 5 -1 -4 10
Service & Eng 18   10 8 -2 -1 0 -1
全社 -53   -26 -30 -4 - - -4
合計 576   179 635 456 243 237 -25

 


2010/11/5 総合化学5社と信越化学の中間決算対比

三菱ケミカルホールディングス、住友化学、三井化学、旭化成、東ソーの総合化学5社と、高収益の信越化学の中間決算を対比した。

2010年9月中間と2010年3月予想で、営業損益と経常損益では三菱ケミカルが信越化学を上回るが、当期損益では信越化学が上回っている。

中間決算では、
@信越化学に上期に
移転価格課税に対する日米相互協議の合意により、10,663百万円の過年度法人税等戻し入れがあり、それだけ税引後損益が増大した。

A三菱ケミカルは中間決算の連結税引後損益が659億円あるが、このうち220億円が少数株主利益で、ネットは440億円。
 これに対し、信越化学は少数株主利益が9億円しかなく、ほぼ全てが信越株主の純利益となる。

年間損益でも@は本年だけだが、Aは今後も影響する。


2010/11/6 BPの原油流出事故損失 398億ドルに

BP112日、第3四半期(7-9月)の決算を発表した。

前期末在庫の影響を除いた税引後損益(当期のコストによる損益)は以下の通り。(単位:百万ドル)

  1Q 2Q 3Q
Replacement Cost 損益  5,598  -16,973  1,847  -9,528
(2009年) 2,387 3,140 4,981 10,508
増減 3,211 -20,113 -3,134 -20,036
         
Gulf of Mexico 税前損失   -32,192  -7,656  -39,848
          税引後   -22,189 -5,099 -27,288
差引 通常の損益
(Replacement Cost 損益)
5,598 5,216 6,946 17,760
         
損失のうち引当分(3Q末)       16,405

3四半期の損益は1,847百万ドルの黒字となったが、原油流出事故の損失7,656百万ドルを含んでいる。

事故の損失は第2四半期に32,192百万ドルを計上したが、油田の完全封鎖の遅れ、浄化や機器撤去の追加費用、対応センターの運営費や弁護士費用などが増加した。
累計の
39,848百万ドルは現時点での最も良い見積もりとしているが、罰金や賠償費用が更に膨らむ可能性がある。

2010/8/2  BP、油井完全封鎖へ (米国油濁法、Clean Water Act

2010/10/20 BP、メキシコ湾原油流出事故で油濁法の損害賠償限度額の権利放棄を言明

なお、事故費用を除いた通常の損益は1-9月で17,760百万ドルとなり、前年の10,508百万ドルを大きく上回っている。

同社はまた、2011年末までに250300億ドルの資産を売却すると発表しているが、既に140億ドル程度の売却の契約を締結している。

2010/10/25 BP、メキシコ湾の4油田の権益を丸紅に売却

同社では販売損益の改善と資産処分が順調なことで「勇気づけられ」ており、2011年早々に通年の損益状況を勘案して将来の配当復活を検討するとしている。

ーーー

三井物産は子会社の三井石油開発(の子会社MOEX)がBPから請求されている費用が1,898百万ドルであることを明らかにした。

これまで明らかになっていたのは次の通り。

  Anadarko 25% MOEX 10%
5月分 272百万ドル 111百万ドル
6月分 919百万ドル 368百万ドル
合計  1,191百万ドル  479百万ドル
     
現状 4,745百万ドル 1,898百万ドル

 

付記 三井石油開発発表(2011/5/6)

本年44日、BPは、MOEX OffshoreおよびAnadarko Petroleum Corporationに対して、当事者間のOperating Agreementに基づきNotice of Disputeを送付した。
Notice of Disputeには、MOEX Offshoreに対する2011228日時点の請求金額合計は約1,856百万米ドルであると記されている。

直近の201145日付け請求書では、MOEX Offshoreの負担額合計は約2,067百万米ドルとされている。


2010/11/8 光ファイバーカルテルで住友電工に株主代表訴訟 

光ファイバーケーブルをめぐるカルテルで2010年5月に約68億円の課徴金納付命令を受けた住友電気工業の株主が近く、損害賠償を求めて同社の取締役と元取締役を相手取る株主代表訴訟を大阪地裁に起こす。

2010/5/26  光ファイバーケーブルのカルテルで過去最高の課徴金

付記 

12月1日、当時の経営陣を相手取り損害賠償を求める株主代表訴訟を大阪地裁に起こした。
現役員に元役員を加えた計17人に、課徴金と同額の68億円を会社に支払うよう求めている。

リーニエンシー制度を使わずに損害が膨らんだ点を問題視しており、リーニエンシー制度を使わなかった取締役の責任が問われる初の代表訴訟となる。

リーニエンシー制度は、独禁法改正で2006年1月に導入された。
談合やカルテルへの関与を公正取引委員会に自主申告した先着3社が対象で、立ち入り検査前の申告であれば、1社目は課徴金がゼロに、2社目は5割、3社目は3割、それぞれ軽くなる。検査後の場合は3割の軽減となる。

今回の光ファイバーカルテルでは、NTTグループへの販売の見積価格を調整したとして、住友電工、古河電気工業、フジクラ、昭和電線ケーブルシステム、住友スリーエムの5社に計161億円の課徴金の納付を命令した。

アドバンスト・ケーブルシステムズ(Corning Cable Systems 50%、日立電線 50%)は自主申告で全額免除となっており、古河電工は、課徴金が3割減となったことを明らかにしている。
(あと1社、減免の会社があることとなる)

8月26日に株主は同社の監査役に対し、責任追及等の訴え提起請求書を送付した。

同社は、課徴金納付命令を応諾し、67億6272万円を納付したので、同社には同額の損害が発生した。

以下の理由で、本件カルテルが認定された2005年2月9日から立入調査を受けた2009年6月までの間、一時期でも取締役の地位にあったことがある者全員に対し、連帯して全額を請求する訴えを提起するべきだ。

@ 本件カルテルに関与又は黙認した過失
   本件カルテルに関与し、又は知り得たにもかかわらず看過黙認して本件カルテルを放置。

A カルテル防止に関する内部統制システム構築義務違反
   真に有効なコンプライアンスシステムを構築しなかった過失。

B 課徴金減免制度(リーニエンシー)に関する内部統制システム構築義務違反
   他事業者の申告に先駆けて違反事実を申告して課徴金を免れるための、
   有効なリーニエンシーに関するコンプライアンスシステムを構築しなかった過失。

C 実際にリーニエンシーを利用しなかった過失
   他事業者はリーニエンシーにより課徴金を免れている。
   この減免申請を怠り、減免の機会を失した過失。

役員らに対して責任追及の訴えを提起するに際して同社を代表する監査役に対し、会社法847条1項に基づき、本件取締役らを被告として、上記課徴金相当額の損害賠償を求めて責任追及等の訴えを提起するよう、請求する。

上記責任追及等の訴えを提起しないときは、会社法847条3項に基づき、株主代表訴訟を起こす。

この請求に対し、同社の監査役は調査の結果、10月25日に、不提訴理由通知書を送付した。

提訴しないこととした理由は以下の通り。

(1)本件行為に関与又は黙認した過失
公正取引委員会から指摘された覚悟値及び見積価格の決定等の行為に関しては通信営業部長と担当グループ長というごくわずかの担当者で、電話等によつて短期間で行われ、会合の場合も、自己負担で行われており、取締役等には完全に秘匿されていた。結果的に、本件については担当取締役や執行役員、他の取締役には、全く知らされていなかった。

社内では、カルテルの防止について周知・徹底されており、本件行為がなされていることを疑わなかつたとしても、過失責任は問えない。

(2)カルテル防止に関する内部統制システム構築義務違反
社内の内部統制システムの構築は真摯に、かつ、熱心に行われており、独占禁止法遵守に関しても、社内全体を対象として、各種の研修が継続的に行われている。

(3)課徴金減免制度に関する内部統制システム構築義務違反
独占禁止法に関する研修の中で必ず課徴金減免制度に十分な時間を割き、その動向も含めて説明しており、社員等が違反行為を申告するための社内外の窓口も整備され、社内報等を通じて周知されている。
立ち入り後、法務部門が直ちにリニエンシーの準備作業に着手した。

(4)リニエンシーを利用しなかった過失
取締役は、立ち入り検査前にこれを知ることはできず、リニエンシーを利用できなかった。
立ち入り検査時点で、リニエンシーの準備に着手していたが、事実確認等の準備中に3番目に申告を行った会社があることを知り、リニエンシーによる免除を受けることができなかった。
結果的に短時間のうちに席が埋まったため、リニエンシーの利益が受けられなかったもので、過失は認められない。

監査役が提訴しないため、株主代表訴訟を行うこととなった。

原告を支援する弁護団は「内部統制の仕組みが形式的な水準にとどまり、有効な法令順守体制を築いてこなかった」とし、電線業界をめぐり繰り返し価格カルテルが指摘されている点も問題視し、「カルテルの発生を十分に予想できたにもかかわらず、これを怠った責任は大きい」と指摘しているという。

本件を扱うのは、「株主の権利弁護団」。

株主の権利の実現・株主の被害の救済・株主権利の啓蒙・教育などを目的とする。
具体的には
 ・株主の権利の実現の為の立法・政策・運用の提言を行う
 ・株主の被害の相談・アドバイス・必要な場合は株主の依頼により会社・所管庁・証券取引所などへの
  要請・申告、裁判・告訴・告発などを行う
 ・株主の権利などについての講演会、セミナーなどを行う

日立造船橋梁談合、大林組土木建築工事談合、住友金属橋梁談合・使途秘匿金・ステンレス鋼板カルテル、神戸製鋼所橋梁談合などで株主代表訴訟を扱っている。

  2010/4/10 株主代表訴訟での和解、相次ぐ

 


2010/11/9  BraskemGreeen PP 製造へ

Braskem1028日、Greeen PP製造計画が構想段階を終了したと発表した。
2011年に基礎設計を終え、最終承認を取得後、建設を開始する。
投資額は
1億米ドル程度で、最低能力は年産3万トン、2013年上期の商業生産開始を予定している。

世界でベストの再生可能エネルギーソースである砂糖キビ・エタノールを原料に、通常製法のPPと同じ性能と加工性を持つPPを製造するもの。

Braskem 2008930日、世界で初めて再生可能原料からのグリーンPPの開発に成功したと発表した。
最初は実験室で、次にパイロットプラントで製造に成功、
Beta Analytic Inc.から認証を得た。

同社ではこれをバイオポリマー開発戦略の一部と考え、今後、製品群を広げ、能力を拡大し、環境への貢献を高める。

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Braskemは2007年6月、サトウキビベースのエタノールからHDPEを生産するのに成功したと発表、同年10月に、HDPE及びLDPEをあわせて年間20万トンのプラント建設を発表した。

2007/11/5 Braskem、サトウキビからHDPEを製造

同社は2008年6月、Rio Grande do Sul 州の Triunfo Petrochemical Complex での建設を発表。
2010年9月、green ethylene 200千トンの操業を開始した。

なお、豊田通商は2008年9月、Braskem が世界で初めて商業生産を開始する植物由来ポリエチレンに関し、日本を含むアジア地 区の販売パートナーとしての業務提携を行うことに合意した。

また、Tetra Pakは2009年11月、Braskemのグリーンプラスチック(HDPE)を容器の製造に試用する契約を締結している。

2009/12/1 テトラパック、ブラスケムのグリーンプラスチックを使用

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Braskem2009年12月、サトウキビからのPP生産に関し、酵素メーカーのNovozymesと提携した。

Novozymesとの提携で、Novozymesの発酵技術とBraskemの化学、プラスチック技術を結びつけ、大規模生産技術を確立し、グリーンポリマーでの世界のリーダーを目指すとしている。
開発期間は最低5年。

Novozymesも農業廃棄物をバイオ燃料にする酵素を生産しており、また、再生可能原料からアクリル酸を生産する計画でCargill 提携している。

CargillNovozymes は20081、再生可能原料から3-ヒドロキシプロピオン酸(3HPA)を経由してアクリル酸を製造する技術を共同で開発する契約を締結したと発表した。
米エネルギー省から
150万ドルの支援を受ける。

バイオ技術でつくった微生物を使用して砂糖を発酵させて3HPAに変換する。
3HPAはその後、アクリル酸を含む幅広い化学製品に変えられる。

2009/12/21 BraskemNovozymesGreen plastic で提携

Braskemは2008年にバイオポリマー開発でState University of Campinas (Unicamp)及び São Paulo State Research Support Foundation (Fapesp)と提携、本年9月には Laboratório Nacional de Biociências (LNBio)と提携している。

 

エタノールからの効率的なプロピレン製造には触媒の選択が必要で、日本でも産業技術総合研究所と触媒技術研究組合、東京工大、広島大学が共同で研究している。

セルロース系バイオマスエタノールからプロピレンを製造するプロセス開発

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バイオポリマーに関しては、BraskemのほかDowSolvayの計画がある。

Dowは2007年7月、ブラジルのバイオエタノール大手のCrystalsev と共同で、ブラジルでサトウキビからワールドクラスのLDPE工場を建設する計画を明らかにした。

両社はブラジルで合弁会社を設立して、350千トン能力のLDPE工場を建設、2011年に生産を開始する。
DowのPE技術(DOWLEXT法)とCrystalsev のエタノールのノウハウと経験を統合し、Dowのブラジルの需要家に供給、輸出も考える。

2007/7/27 Dow、ブラジルでサトウキビからLDPE製造

SolvayはブラジルでグリーンPVCを製造する。

子会社Solvay Indupa2007年12月に135百万ドルの投資計画を承認した。
サンパウロに年産12万トンのプラントを建設する計画で、当初の2011年スタート予定は遅れてはいるが、同社では計画の変更はないとしている。

同社は2007年4菜種油からのバイオディーゼル生産時の副生グリセリンを原料とするエピクロルヒドリンの生産をフランスのTavauxで開始した。当初の能力は年10千トンで、需要に応じて簡単に拡張できる。
エピクロルヒドリンのグリーン製法はEpicerol 法と名付けられている。

同社はタイのJVのVinythaiでも10万トンのプラントを建設した。

2007/9/12 Solvay、タイでエピクロルヒドリン生産

 


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