吉澤和徳・北海道大准教授、上村佳孝・慶応大准教授と海外の研究者のチームが「生物学賞」を受賞した。日本人の受賞は11年連続。

ブラジルの洞窟で見つかった新種の虫の雌が「ペニス」のような器官を持ち、それを使って雄と交尾することを解明した。
(“Female penis, male vagina and their correlated evolution in a cave insect”)

この虫は体長約3ミリで、「チャタテムシ」の仲間。世界中にチャタテムシは約5千種いるが、交尾器官が逆転するのはブラジルの洞窟にいる4種だけで、和名を「トリカヘチャタテ」と名付けた。平安時代の「とりかへばや物語」からとった。

2010年以降に新種として登録された。吉澤さんらは生態を詳しく観察し、40〜70時間と長時間にわたる交尾で、実際に雄雌の交尾器官が「逆転」して機能することを解明、2014年に論文で発表した。

トリカヘチャタテは雌がペニス様の交尾器を持ち、これを雄に挿入することで交尾を行うことが明らかになった。
雌ペニスの根元には多くの刺が生えており、雌はこれを使って、交尾中、雄をしっかり拘束する。
トリカヘチャタテの交尾時間は約 40〜70 時間と極めて長く、この長い拘束時間中に、雌ペニスに開いた管を通して、雌は雄から栄養の入ったカプセルを精子と一緒に受け取る。
栄養カプセルの贈与などにより、雄の生殖にかかるコストが上昇したことで、雄よりも雌の方が早いペースで再交尾が可能になったと考えられる。これにより、雌雄の交尾への積極性が逆転し、雌に強い性選択が働いたことが、交尾器構造の逆転を促したと考えられた。
さらにトリカヘチャタテの雌雄の交尾器間には、相互に形が対応するように進化する、共進化の関係が見られた。