ブログ 化学業界の話題 knakのデータベースから      目次

これは下記のブログを月ごとにまとめたものです。

最新分は http://blog.knak.jp


 

2018/7/16   Pfizer、トランプ大統領の批判受け、医薬品値上げを先送り 

Pfizerは7月10日、今月1日に米国で実施した医薬品の値上げを撤回し、当面は以前の値段に戻すと発表した。

値上げの撤回は、同社のCEOがトランプ大統領と直接話し合って決めた。価格据え置きはあくまで一時的な措置で、大統領が進めている薬価引き下げの取り組みを形にする「機会を与える」と説明している。

大統領は早速、呟いた。

Just talked with Pfizer CEO and@Sec Azar (Alex Azar,  Secretary of Health & Human Services ) on our drug pricing blueprint.

Pfizer is rolling back price hikes, so American patients don’t pay more.
We applaud Pfizer for this decision and hope other companies do the same. 

Great news for the American people!

この問題は、大統領が医薬品値下げに懸命になっている時に、Pfizerほかが値上げを発表したことから発展した。

ーーー

トランプ氏は大統領就任直前の2017年1月11日、製薬会社は生死にかかわるような医薬品の価格を大幅に値上げし、「殺人」の罪を犯しているにもかかわらず、罰せられておらず、政府に多額の費用を負担させていると批判、薬価の改革を進める意向を表明した。

また海外へと拠点を移す動きが加速しているとして、製薬業界を国内に回帰させる必要があるとした。

トランプ氏は薬価をめぐり、新たな入札制度を導入し、費用を圧縮すると主張、「われわれは世界最大の医薬品の買い手であるにもかかわらず、適切な価格設定が出ていない。入札を開始し、数十億ドルを削減する」と述べた。

トランプ氏は選挙期間中、高騰する薬価の問題に言及してきた。公約では「製薬産業は民間部門だが、製薬企業は公共サービスを提供している」と指摘、メディケア(高齢者向け公的医療保険)プログラムについて、現在は法律で禁止されている政府と製薬会社との薬価交渉を可能にするとしていた。

2017年1月31日の製薬企業幹部との会談では、薬価の引き下げと米国内での製造拡大を求めると同時に、新薬承認の迅速化や規制緩和を約束した。

新薬承認の迅速化は、大統領選直前に公表した「有権者との契約」(就任後100日間で実行)にも盛り込まれていた。
「お役所的な複雑な手続きの打破」を含むFDAの改革を公約、「4000もの医薬品が承認を待っている。特に生命を救う医薬品の迅速な承認を望む」としていた。

2018年1月30日に行った一般教書演説では、薬価の高騰問題について、「政権にとって、最優先課題のひとつだ」と述べた。

医療関連としては、オバマケアの撤回、オピオイド乱用問題、薬価の高騰問題に言及した。

薬価については、「同じ薬剤に対して諸外国の人が払う額は、米国人よりもはるかに安い。非常に、非常に不公平だ」と指摘した。

 

その後も、医薬品価格の引き下げに度々言及した。

2018年5月11日、トランプ米大統領は処方箋薬の価格抑制に関する演説を行った。製薬会社、保険会社、薬剤給付管理会社(PBM)が処方箋薬を高価で手の届かないものにしたと非難し、競争強化と価格引き下げに向けた措置を取ると表明した。

製薬業界の「中間業者」が大きな富を得ているとして排除する方針を示したほか、医薬業界のロビー団体についても、納税者の金で富を得たと批判した。
外国政府についても、米製薬会社に不当な引き下げを強要しているとして批判した。

米保健社会福祉省は「American Patients First」と題した詳細な計画を公表。メディケア(高齢者向け公的医療保険)パートD(処方せん薬給付)管理会社の製薬会社との価格交渉能力を高めることなどが含まれる。

但し、専門家からは、レトリックにすぎないとの批判がなされた。

5月30日、大統領は突然、主要医薬品会社(複数)が2週間以内に医薬品価格を「自発的に、大幅に」引き下げると発表した。医薬会社の役員(名前を明らかにせず)がホワイトハウスを訪問し、発表すると述べた。

大統領は、末期患者が実験中の医薬品を使うのを容易にする法案にサインしながら、「我々はまた、医薬品のコストの引き下げに努力しており、国民はこの国で初めて、処方箋薬の大幅引き下げを経験することとなる」と述べた。

しかし、その後、値下げの発表はなく、大統領が予告した理由は不明のままである。

逆に、Pfizerは7月1日付で値上げを発表した。

「バイアグラ」を含む同社の代表的製品100品目を値上げした。値上げ率は大半の品目で9%強で、消費者物価指数を大きく上回る。
バイアグラは19.8%の値上がりとなった。
但し、5品目については、価格を16〜44%引き下げている。

Pfizerでは、割引やリベート(割戻金)を計算に入れると値上げ幅は「1桁台前半」にとどまるとしている。

Pfizerのほか、イスラエル製薬大手 TevaやスイスのRoche なども最近値上げに踏み切っている。

トランプ米大統領は7月9日のツイッターで、「理由もなしに値上げした。自らを守ることができない貧しい人々などの弱みにつけこみ、他方で海外で安値販売している」と、Pfizer などの製薬大手を批判し、何らかの対策を講じると言明した。

Pfizer & others should be ashamed that they have raised drug prices for no reason.
They are merely taking advantage of the poor & others unable to defend themselves, while at the same time giving bargain basement prices to other countries in Europe & elsewhere.

We will respond!

 
これを受け、PfizerのCEOがトランプ大統領と直接話し合い、値上げ撤回を決めた。

 



2018/7/17 インドネシアのアサハンアルミ、銅鉱山運営の
Freeport Indonesiaの株式の51%を取得  

インドネシアのジョコ大統領は7月12日、米鉱山大手 Freeport-McMoRan Inc.の現地法人 PT Freeport Indonesiaの株式の51%を国営鉱業大手のアサハン・アルミ(PT Indonesia Asahan Aluminium:Inalum)が取得すると明らかにした。 世界第2の銅鉱山のGrasberg鉱山を取得する。

ーーー

アサハンアルミ(Inalum)はインドネシア国有のアルミニウム精錬会社であるが、2017年に政府の方針で、国有の鉱工業企業の持株会社となった。

2017年11月の政令で、非鉄金属のPT Aneka Tambang (ANTM) の65%、石炭のBukit Asam (PTBA)の65%、錫のTimah Tbk PT (TINS)の65.2%の政府持ち株がアサハンアルミに譲渡された。
各社固有の経営資源と技術の相乗効果を狙う。

シナジー効果の一つは、後述のアルミナ生産計画の加速化である。また、PTBAがこれら他の国有会社と共同で発電所を開発することにより、ANTMのフェロニッケル製錬所やInalumのアルミニウム製錬所に電気を供給するプロジェクトも計画されている。その他には、港湾建設の下流事業への投資も拡充する予定。

インドネシア政府は、国内の豊富な鉱石をそのまま輸出するのではなく、国内での加工を推進しようとしている。

2014年1月12日、国内での加工推進を目的とし、未加工の鉱石の輸出禁止措置を導入した。

2014/1/16 インドネシアが鉱石禁輸実施、直前に緩和 

ーーー

大統領は、世界第2の銅鉱山(金、銀も産出)のGrasberg鉱山を運営するFreeport-McMoRanに対し、採掘権や輸出を認める代わりに、株式の51%超を譲渡するよう求めていた。

今回の合意で、政府は現在 9.36%のFreeport Indonesiaの 持株を51.38%に引き上げる。将来的にはGrasberg鉱山があるパプア州政府や地元自治体も一定の株式を持つ見通し。

実際の取引にはRio Tintoも絡む。

Grasberg鉱山の運営会社は、Freeport Indonesiaが60%、Rio-Tintoが40%所有するJVである。

Rio Tintoはインドネシア政府の資源ナショナリズムに
対応し、離脱を模索していた。

Inalumは、JVのRio権益持分(40%)を35億ドルで 買収する。これをFreeport Indonesiaに譲渡し、見返りにFreeport Indonesiaの株式32.66%を取得する。

別途、InalumはFreeport Indonesiaに9.36%を出資するFreeport-McMoRanの投資会社PT Indocopper Investamaを3.5億ドルで買収する。

この結果、既存の政府持ち株を合わせ、Inalumは51.38%を取得する。

 

ーーー

アサハンアルミ(Inalum)は、日本とインドネシアのJVとして設立された。

1975年7月に日本側参加12社とインドネシア政府間の基本協定が締結された。

同年末に日本側投資会社の「日本アサハンアルミニウム」が設立された。

国際協力銀行 50%
精錬5社 各7.5%、計37.5%
7商社合計 12.5%

1976年1月、日本アサハン 90%、インドネシア政府 10%の出資で、P.T. Indonesia Asahan Aluminium (INALUM)が設立された。

北スマトラ、Kuala Tanjung地区にアルミニウム年産225千トンの製錬工場(75千トン3系列)
トバ湖から流れるアサハン川の上流のSiguragura、Tanggaの両瀑布に最大出力513千kwの発電所
原料アルミナは輸入(Alcoa of Australia)

2010/10/14  インドネシア、アサハンアルミの将来

インドネシアと日本のJVのアサハンアルミが操業30年を迎える2013年11月以降、インドネシア政府は日本の出資分を買い取る権利を持つ。

2010年現在の出資比率は日本側 59%、インドネシア側 41%となっている。
JV協定は「生産開始」(1983年11月1日)から30年後に満了、設備は簿価などの補償を条件として、インドネシア政府に移管されることとなっている。

日本の企業連合とインドネシア政府は2013年12月9日、日本側が全保有株を同政府に5億5670万ドルで売却するとの合意文書に調印した。
合弁は解消され、インドネシアが事業を国有化した。

2013/12/11 日本企業連合、アサハンアルミから撤退 

アサハンアルミの現在の能力は26万トンである。

同社は現在、ボルネオ島Kalimantan の新立地で、次の通り35億ドルの拡張を計画している。

アルミ精錬第二工場(20万トン) 7億ドル
 (当初の構想は、
アルミ精錬能力を2020年に50万トンに、2025年に100万トンとする というものであった。

800MW水力発電 10億ドル

アルミナ工場 50万トン 18億ドル

原料アルミナは現在輸入しているが、自製を開始し、輸入依存を減らす。

立地は西カリマンタン。

今回Inalumの子会社となった非鉄金属のPT Aneka Tambang (ANTM) とInalum のJV PT Inalum Antam Alumina が中国のAluminium Corporation of China (CHALCO) と合弁で生産する。
インドネシア側が過半数を持つ。

ANTMがカリマンタンで採取するボーキサイトを原料とする。

これまでANTMはボーキサイト全量を 中国などに輸出、アサハンはアルミナを全量、オーストラリアとインドから輸入している。(インドは最近)



2018/7/18 EU離脱を巡る英国の混乱

EU離脱を巡り、英国が混乱している。

7月8日夜、デービス欧州連合(EU)離脱担当相が辞任した。メイ首相がEUとの関係を重視する「穏健離脱」の方針を打ち出したことに反発した。
翌7月9日、ジョンソン外相が辞任した。

EUとの合意のないまま「無秩序離脱」を迎えるリスクが高まった。


メイ氏の責任論もくすぶり始めた。保守党内の規定では保守党議員の15%にあたる48人が同意すれば、首相の不信任投票の手続きが可能。

今後英政府が体制を立て直せても、EUは、通商協議のほか、アイルランド国境問題など離脱協定の全てで合意できなければ交渉を「白紙」に戻す方針。

2019年3月に混乱なく離脱するためには、英・EUは2018年10月までに離脱条件や将来関係の大枠で合意する必要がある。10月までの残り3カ月でメイ氏が党内融和とEUとの離脱交渉を進められなければ、EUと合意のないまま離脱する「無秩序離脱」 は現実味を帯びる。

ーーー

これまでの経緯は下記の通り。

2016年6月23日英国で実施されたEU離脱の是非を問う国民投票は、大方の予想を裏切る「離脱」という結果となった。

スコットランドは、全選挙区で「残留」支持であった。

2016/6/25 英国、EU離脱 

英国のTheresa May首相は2017年1月17日、EUからの離脱を巡り、移民制限や司法権独立など英国の権限回復を優先し、EU単一市場から完全に離脱すると表明した。

単一市場に残りながら移民を制限する “soft Brexit ” は、「いいとこ取り」を認めると他に離脱国が出ることを恐れるEUが認めないことが確実なため、“hard Brexit" に踏み切った。

2017/1/19 BREXIT の12のポイント

欧州理事会(EU首脳会議)のDonald  Tusk常任議長は2017年3月31日、今後のEUとしての交渉ガイドラインの原案を公表した。

課題として、次の4つを挙げている。

 1. 英国で生活・就労・就学するEU市民、EUで生活・就労・就学する英国市民の互恵・無差別の権利保全

 2. 英国でのEUの企業、EUでの英国企業に影響を与えるが、法的空白を避ける必要がある。

 3. EUも英国も、離脱前に決めた義務を守る必要がある。全ての法的、予算上の約束、偶発債務を含めた債務についてである。

 4. 英国(北アイルランド)とアイルランドの国境問題について、国境復活などの厳格な対応ではなく、柔軟で建設的な解決を模索すべきである。

2017/4/6 EUのBrexit 交渉ガイドライン

EUは2017年12月15日の首脳会議で、英が払う「清算金」などの離脱条件を協議してきた「第1段階」に「十分な進展」があったと判断。「第2段階」となる通商協議に入るための交渉指針を採択した。

2017/12/20 英のEU離脱交渉、第2段階へ 

ーーー

上の4つの課題のうち、英国とアイルランドの国境管理が解決不能の問題として残った。

アイルランド島は、EUに残留するアイルランド共和国と英国の北アイルランドに分かれており、英国が唯一、EU加盟国と陸路で接しているところである。
また北アイルランドは、先住のアイルランド人と後に英国から移住した英国人が、長年にわたり争いを続けてきた。

1998年の聖金曜日の和平合意により、争いが終結した。
北アイルランド人は英国籍かアイルランド国籍、あるいは両方を取得できるようになり、さらに、検問がなくなって国境地域は通商で大きな恩恵を受けるようになった。

英EU離脱はこれら全てを切り崩してしまう。

アイルランドは、逸早く国境問題を英EU離脱協議の優先課題にするようEU諸国を説得した。
英国がアイルランドの要求(北アイルランドの現状維持)に応じない場合、アイルランドは離脱交渉の進め方に拒否権を使うと明言している。

 

EUの交渉ガイドラインでは、「北アイルランドとアイルランドの国境問題について、国境復活などの厳格な対応ではなく、柔軟で建設的な解決を模索すべきである」としている。

しかし、これを実行すれば、[EU=アイルランド]と[北アイルランド=英本土]が結びつき、人やモノが自由に移動できることとなり、EU離脱の意味が無くなる。

逆に北アイルランドと英本土の間を遮断すれば英国が分断される。
メイ首相は、「北アイルランドは英国と同じ条件でEUから離脱しなければならない。経済的にも政治的にも英国との規制の違いは受け入れられない。英国との一体が損なわれることは認められない」と述べていた。

2017年12月に、下記の通り合意した。

南北アイルランドの間では従来通り、国境管理(規制)を行わない。

北アイルランドと英国本体との間に新たな規制の障壁を設けない。北アイルランドの企業の英国本体の市場へのアクセスを保証する。

英国は南北アイルランドの協力と、南北アイルランド国境に鉄条網や検問所などハードボーダーを設けないと約束する。これは英国とEUとの将来の関係を通じて達成する。

実際には詳細を先送りしているが、今回の合意で、北アイルランドは英国本体と一体となってEUの統一市場と関税同盟から離脱できると解釈でき、英国側の懸念が消えた模様。


しかし、実際には、南北アイルランドにハードボーダーを設けずに、北アイルランドが本土と一体になってEU統一市場と関税同盟から離脱する方法は見つかっていない。離脱交渉の最大の難関となった。

ここにきて、一時的対策「backstop措置」 が提案された。(Backstopは野球のバックネットの意味)

EU案は、英領北アイルランドとアイルランド共和国との国境を目に見えないままにし、北アイルランドを関税同盟に残す もの。

英国は、これは英本土と北アイルランドの間に関税国境をつくるものとして反対した。

英国は正式提案していないものの、EU案を英国全体に適用すべきだとの考えを示唆し た。これはアイルランド島内での国境設置を回避する最後の手段として、英国全体が単一市場と関税同盟の一部にとどまることを意味する。

  しかし欧州委員会はこれに反対しており、北アイルランドに特別な地位を与えるだけにとどめたい意向 である。

英国は6月7日、アイルランド問題解決のためのTechnical note: temporary customs arrangement を発表した。

EUの提案は、英本土と北アイルランドの間に関税国境をつくるもので、受け入れられない。
英国案は、2020年12月に移行期間が終了した後、一定期間、英国全体をEUと関税同盟を結ぶというもの。
但し、将来の協定ができるまでの臨時の措置であり、遅くとも2021年12月末までと期待する。

この期間中も英国は世界の他の国々と貿易協定を結び、施行できる。但し、モノの貿易はEUとの関税同盟があるため、他国との協定はサービスに関することに限られる。

EU側はこれに抵抗感を示した。

 

6月20日に、現在受け入れているEU法を国内法に置き換えるEU離脱法案が議会を通過した。離脱後も英国内の規則や規制を継続させるためのもので、スムーズな離脱を目指すメイ政権 にとり重要手続きの一つ。

この法案をめぐっては、英国がEUと合意に至らないまま離脱日を迎えた場合について激しい議論があった。
EUとの合意なしの強行離脱に反対する親EU派の議員が、内閣の強硬離脱の提案を認めない権限を英議会に与える修正案を付けた。

メイ首相は交渉の手足を縛られるのを嫌いつつ、親EU派にも配慮し、交渉決裂時には英議会で審議する時間を設けると約束 した。

この結果、修正案は303票対319票の僅差ながら反対多数で否決された。

メイ英首相は7月6日、閣議を開き、EU離脱後の通商関係について議論し、交渉方針で合意した。

EUとの関係を尊重する内容で、EUの影響力を排した完全な離脱を求めるジョンソン外相ら強硬派閣僚が反対し、メイ氏が約12時間かけて説得した。

離脱条件を巡るEUとの実質合意期限が10月に迫る中、「Hard Brexit(強硬な離脱)」から協調優先の「Soft Brexit(穏健な離脱)」路線に修正して交渉の局面打開を図る もの。

内容は次の通り。

「モノの自由貿易圏」創設を提案し、EUとの貿易面での緊密関係を維持する。EUが定める製品や農産物の規格などEUの一定の通商ルールに離脱後も従う。

関税面でもEUと連携し、現状並みの円滑な貿易を確保することで企業が国境を越えて展開するサプライチェーンを守る。

離脱後に米国などとの自由貿易協定(FTA)締結を目指すほか、TPP 11への参加も視野に入れる。

人の移動の自由を終わらせる。EU加盟国の漁船が英国領海内で操業することを認めず、英国の海域を自国でコントロールする。

但し、金融サービス分野の一部では、EUと現状通りの取引ができなくなることを受け入れる。 (EU側の「いいとこ取りは許さない」との主張に配慮)

この案には「いいとこ取り」の面が強く、EUのバルニエ首席交渉官は「実現可能性を吟味したい」と 述べた。

強硬離脱派は、メイ氏の方針では部分的に事実上、関税同盟に残ることになり、「EUにさらなる譲歩を迫られやすい弱い立場に追い込まれる」と厳しく批判した。


7月8日夜、デービス欧州連合(EU)離脱担当相が辞任した。「政府方針は離脱を骨抜きにし、英国はEUに対して交渉で弱い立場になる」と述べた。

同氏は7月6日の閣議の前にメイ首相に宛てた書簡で、首相の案を実行不可能とし、首相の新提案は失敗すると指摘した。

デービス欧州連合(EU)離脱担当相に続き、ジョンソン外相が7月9日、辞任した。

ーーー

メイ首相のSoft Brexit 路線の新しい交渉方針では、離脱後に米国などとの自由貿易協定(FTA)締結を目指すほか、TPP 11への参加も視野に入れるとしている。

しかし、訪英中のトランプ大統領が冷水を浴びせた。

大統領は7月12日の英紙サンとのインタビューで、メイ英首相が進めるSoft Brexit 手法に賛同しない考えを示し、現状の離脱条件では米英の貿易協定にも悪影響が及ぶことになると警鐘を鳴らした。この案で進められれば英政府は米国との貿易協定を「おそらく結べない」と述べた。

また、辞任を表明したジョンソン前外相については、「非常に能力のある人物」と辞任を惜しみつつ「将来は偉大な首相になると思う」と付け加えた。

トランプ氏は米大統領予備選挙中の2016年5月、英国がEUから離脱した方が良いとの考えを示していた。

7月13日の首脳会議では、トランプ大統領はメイ首相に、英国はEUと交渉するよりEUを訴えるべきだと提言した。


 


2018/7/19 イタリア政権、カナダとの包括的経済貿易協定(CETA)に批准しないと表明
 

イタリアのディ・マイオ経済発展・労働相は7月13日、EUとカナダの包括的経済貿易協定(CETA)について、「イタリアは批准しない」と述べた。

CETAの正式な発効には28のEU加盟国全ての議会での批准が必要で、EUが目玉としてきた協定が破談となる可能性も出てきた。

イタリアの農産物の保護などが理由で、6月に発足した政権は公約に「自国産の農産物を守る」と盛り込んでいる。

経済発展・労働相は、CETAはイタリアの特産品の保護を十分に保証していないとし、カナダからの輸入増加がイタリア産品に悪影響を与えると懸念を示した。

EUは地域の高品質な農産品や食品を保護するため、「原産地呼称保護(Protected designation of origin:PDO)」や「地理的表示保護(Protected geographical indication:PGI)」という制度を運用しており、イタリアはパルマハムなど約290品目が認定されている。

しかし、カナダとのCETAで保護対象になっているのは40品目ほどにすぎない。農業生産者団体は「多くの偽物が出回るリスクがあり、地元農家などが不利益を被る」と反発している。

ーーー

カナダとのCETAは当初から揉めた。

2014年に交渉が終わり、2016年10月27日に正式調印を目指していた。

CETAが実現すれば、関税が98%撤廃されるだけでなく、手厚く保護されているEUの農業市場をカナダの農家に開放するほか、EU企業がカナダの公共部門の調達市場にアクセスできるようになる。
同時に、労働および環境の基準、公共サービスなどについての国家の選択に新たなセーフガードも設けられる。

具体的な内容:

  • 関税撤廃:協定発効後、ほとんどの品目(全ての関税品目の99%以上)で速やかに関税を撤廃

   農産品関税については https://www.jetro.go.jp/ext_images/_Reports/01/1dfdcf14c5f14bcb/20170075.pdf

  • 非関税障壁(NTBs):双方の適合性評価承認の改善を図ることで、技術的な規則における透明性の改善
  • サービス貿易:企業従業員の一時的派遣(移動)の容易化や専門職資格の相互承認
  • 投資:無差別で公平かつ公正な扱いと、収用権を行使する際の適切な賠償を保証するEUの投資家保護規定を盛り込む
  • 公共調達:連邦政府より下位の全てのレベルでの調達市場を2国間で開放
  • 地理的表示保護制度(GI):特定の地理的起源を持つ多くのEU農産品リストに対して、カナダ市場での特別な地位を承認、保護
  • 紛争解決メカニズム:公式な協議を通じた合意形成に失敗した場合、独立した法律専門家を入れた仲裁パネルの設置を要請できる
  • 調停:EU・カナダ間の貿易と投資に有害な影響を与える措置に取り組むため、任意の調停メカニズムを用意

正式調印にはEU加盟の28カ国の全ての承認が必要である。

当初、ブルガリアとルーマニアがCETAに留保を表明した。

これについては、両国からカナダへの渡航者に対する査証(ビザ)取得義務を2017年後半までに撤廃することにカナダが合意し、政治的解決を見た。

しかし、ベルギーのWallonia地域議会が投資家を保護する紛争解決手続きに問題があるとして反対を決定した。ベルギーの条約締結には地方議会の承認が必要なため、ベルギーは国として承認できない状態となった。

反対の核心は、投資家と政府の間の紛争を解決するための独立した法廷を設置することで、多国籍企業に強すぎる権力を与えることを懸念した。

欧州委員会は、CETAでは新たに設置する法廷が政府にサービスの民営化を迫ったり国営化を阻んだりするために利用されないよう確約するなど、強力なセーフガードを設けてあると主張したが、了解を得られなかった。

2016/10/29 EUとカナダの貿易協定、ベルギーの一地区の反対で締結できず 

この問題は最終的に、反対していたベルギーのWallonia地域の説得に成功し、EUとカナダは10月30日、ブリュッセルで首脳会談を開き、署名した。

首脳会談終了後に発表された「共同声明」でも、「公共の利益の観点、特に公共サービスや環境配慮、労働者の権利保護などの分野で政府が規制する権限は、自由貿易協定においても守られることを原則として確認する」とあらためて明記した。

ーーー

欧州委員会は2017年7月8日、EUがカナダの「包括的経済貿易協定(CETA)」を9月21日から暫定適用することでカナダと合意したと発表した。

正式発効には加盟国全ての批准が必要だが、加盟国がEUに対して権限移譲している分野についてのみ、欧州議会の批准手続き後に発効に先行して適用を開始するもの。

欧州議会は2017年2月15日に、カナダ側は2017年5月17日に批准を終えていた。

正式発効には時間がかかる見通しである。

韓国とEUは2010年10月6日に、自由貿易協定(FTA)を締結した。欧州議会は2011年2月17日、賛成多数で承認した。

2011年7月に暫定適用を開始したが、イタリアなどの批准手続きに時間がかかり、最終的に協定全体が正式発効したのは2015年12月だった。

今回、イタリアの新政権が批准に反対の意向を表明したもの。
 



2018/7/19 中国人のApple 元社員、自動運転車の企業秘密窃盗で 起訴 

 

米当局は7月10日、企業秘密の窃盗で米Appleの元社員 Xiaolang Zhang を起訴した。自動運転車に関連した設計図を個人のパソコンにダウンロードし、出国しようとしたという。

最高10年の懲役と25万ドルの罰金を科される可能性がある。

Xiaolang Zhang は、2015年12月に 自動運転車のソフトウエアとハードウエアの開発者として採用され、回路基盤の設計やテストに携わった。

Appleの 自動運転車プロジェクトのデータアクセス権限を持つ従業員はざっと5000人で、その中でもZhangは、より高度なアクセス権を認められた約2700人の「コア従業員」だった 。


本年4月に子供が生まれ、4月1日〜28日の間、父親としての育児休暇をとり、家族と中国に一時帰国した。

米国に戻り、4月30日に上司に、Appleを辞めて病身の母親のいる中国に戻り、中国の電気自動車会社のXMotors (Xiaopeng Motors:小鵬汽車) に転職する意思を伝えた。

小鵬汽車は電気自動車のスタートアップ企業(2014年設立)で、インターネット通販のAlibaba と世界大手電子機器受託製造企業の鴻海科技(Foxconn Technology)から出資を受けている。

上司は 彼の言動を不審に感じ、社内のセキュリティ部門に連絡、調査を開始した。

その結果、下記が判明した。

4月30日までの数日間にAppleのネットワークへのZhangのコンタクトが過去2年と比べて「指数関数的に増加」して いる。
大部分は膨大な資料探索と秘密データベースからの情報のダウンロードである。

休暇中の筈の4月28日の午後に、自動運転車のソフトウエアとハードウエアの研究所に現れ、1時間後にコンピューターのキーボード、ケーブルと大きな箱を持ち出すのが映っていた。

AppleはZhangを呼び出し、証拠を示して尋問すると、下記を認めた。

Apple在籍中にXMotorsに移籍の話をしていたこと。
休暇の前に、ハードウエア研究所からの2枚の回路基板とLinuxサーバーを持ち出したこと。
その理由は、Appleの他の部署への異動の話があり、新職場で役立つと思ったためであること。
持ち出したデータは妻のパソコンにダウンロードしたこと。

そして、自宅に取りに戻り、妻のパソコンと持ち出した回路基板とLinuxサーバーを提出した。

AppleはFBIに通報、データの60%が問題を含むものであると伝えた。

Zhangは5月5日にAppleを退職、XMotors のMountain Viewオフィスに入社した。

FBIは6月27日、自宅の捜査令状をとり、尋問した。

FBIは7月7日に、Zhangが同日の北京行き飛行機の予約を取ったことを知り、空港で逮捕した。

 

小鵬汽車はZhangの起訴について、「非常に驚いており、事態を遺憾に思う」との声明を出している。法律事務所の協力の下で独自の社内調査を実施しており、Zhang はすでに「正式に解雇した」という。

ーーー

Appleが自動運転技術の開発に取り組んでいるという噂は数年前からあったが、詳細は不明だった。

今回の事件で、研究体制の概要が明らかになった。

 

Appleは本年4月、社内ブログで、昨年のうちに「29件の情報 漏洩が発覚し、12人が逮捕された」と述べるとともに「失業するだけでなく、他社での再雇用も非常に困難になるかもしれない」と警告したと報じられてい る。

ーーー

小鵬汽車(広東省)は4月23日、同社初の市販車「G3」を発表した。

人工知能(AI)を駆使し、ドライバーが降りたあと、リモコンのボタン一つで車が自動で縦列駐車をするなど便利な機能を搭載した。

価格は20万〜28万元(約340万〜約480万円)だが、政府の補助金を受けられるため、価格は実質200万円台となる。納車は年末になる見込み。

車の屋根部分に360度回転するカメラを搭載、風景を撮影しながらドライブし、車内のタブレット画面やスマホで見て楽しめるようにするといった工夫をした。
20分で、8割の急速充電ができる。

何小鵬・董事長は日経(2018/2/27)のインタビューで次のように話している。

来年半ばに年産20万台の自前の新工場も完成し、事業を本格化する。

米テスラからは自動運転の責任者を採用し、シリコンバレーに開発拠点を設け、優秀な人材を集めている。
日本メーカーの経験者も多く、元マツダのデザイナーもいる。
年内には自動運転の技術者は6倍の600人にする予定。

 


2018/7/20 閉鎖したVermont Yankee 原発の売却 難航 

米国の大手原子力発電企業 Entergy Corporationは2016年11月8日、バーモント州で2014年末に永久閉鎖したVermont Yankee 原子力発電所(BWR、65万kW)を施設の解体およびサイトの復旧事業を専門とするNorthStar Group Servicesに売却すると発表した。

アメリカの電力大手Entergy Corporationは2013年8月27日、バーモント州南部にあるYankee 原子力発電所の稼働を2014年の末に停止し、廃炉にすることを決めたと発表した。
原発は"safe-store"(
安全貯蔵)の状態に置かれ、核物質が冷却されて取り除けるまで60年間そのままに置かれる。


 

2013/9/2 米・電力大手Entergy、Vermont Yankee原発の廃炉を決定

Vermont Yankee 原発は閉鎖後、廃止措置オプションの1つである「SAFSTOR」が適用され、汚染構造物を一定期間安全に貯蔵する措置が取られていた。
当初計画によると、Vermont Yankee 原発の除染と解体作業は2068年に開始し、廃止措置とサイトの復旧作業は2075年までに完了する予定だった。

 廃止措置オプション

DECON(Decontamination:除染)

5年ほどで廃止措置を完了させることができ、発電所閉鎖後わずか数カ月で廃止措置を開始することができる。
除染もしくは核燃料及び設備(施設の放射能の99%を占める)の撤去により放射線レベルはすぐに下がり、作業員が残りの廃止措置プロセスを安全に完了できるようになる。

SAFSTOR(Safe Storage:安全貯蔵)

時間の経過によって放射性物質が安定した状態になるのを待つもの。
閉鎖された施設は何も手をつけず、60年間管理貯蔵状態に保たれる。燃料は原子炉格納容器から取り出された後サイト内の燃料プールで補完され、その間はNRCが監視、メンテナンス、防護を行う。
放射能が適切なレベルまで減衰した後、施設はDECONアプローチと同様の方法で解体される。

ライセンス保有者は、ほぼすべての段階でこのSAFSTORアプローチを中止し、DECONアプローチに移ることができる。

ENTOMB(Entombment:埋葬)

国際原子力機関は、シビアアクシデント発生後といった特定の状況下でしかこのアプローチを推奨していない。
放射能エリアは最大限減少し、(コンクリートなどで)不特定期間、箱のように閉じられる。

 

Entergy Corporationは、NorthStar Group Servicesの子会社にVermont Yankee 原発を売却するとともに、米原子力規制委員会(NRC)が発給した同発電所のライセンスを移転することで、廃止措置とサイトの復旧作業を数十年、加速することができると説明 している。

NorthStar Group Servicesへの売却により、除染と解体は2021年までに、最終的なサイトの復旧は2030年(できれば2026年)に早められる見通しである。
また、使用済燃料を乾式貯蔵施設(ISFSI)に移送する作業も促進する方針で、2020年に予定していた移送完了日程は2018年に前倒しされる。

売却価格は公表されていないが、現地の報道によるとEntergy は同原発の廃止措置信用基金5億7490万ドルを、使用済燃料の管理義務とともにNorthStar に移すことになると見られている。

売却手続を実行に移すには、NRCおよびバーモント州公益事業委員会の承認が必要。

現地では、意見が分かれた。

廃炉が早く終われば、跡地利用も描きやすくなる。

しかし、NorthStar は研究用原子炉を解体した経験しかない。
Entergy Corporationの場合は半公共企業のため、心配はないが、NorthStarの場合、もし経営破綻をすれば、廃炉途中のまま置き去りにされる。

NorthStar とAREVA Nuclear Materials は2017年2月、原発の廃炉を目的とする JV のAccelerated Decommissioning Partners (ADP) を設立したと発表した。

JVは、米の原発を安全に、かつNRCや各州の規制に対応して廃止するための全ての経営上、規則上、技術上、かつ財政上の要件を取得することを狙う。

AREBAの持つ原子力機器の解体、使用済燃料の管理技術と、NorthStarの持つ施設の解体、サイト復旧の能力を組み合わせ、確実な廃炉作業を提供するとしている。

 

協議は15カ月続き、2018年3月2日に妥協案が発表された。現地の先住民の団体や、最も強力に反対したNew England Coalitionも加わった。但し、Conservation Law Foundationなど一部は納得せず、調印に参加しなかった。

参加団体:NorthStar and Entergy、州のPublic Service Department、State Attorney General’s Office、Agency of Natural Resources、New England Coalition、先住民のElnu Abenaki tribe、Windham Regional Commission、Vernon Planning and Economic Development Commission

それによると、下記を条件に原発のEntergyからNorthStar Group Servicesへの譲渡を認めるというもの。

売り手と買い手は廃炉を支えるため、追加でほぼ2億ドルを用意する。

施設の汚染の “comprehensive assessment”を含む新しい復旧基準に同意する。

Entergy は本年末までに売却を終えたいとしている。

 

しかし、Nuclear Regulatory Commission は4月5日、今までの情報では資金面で十分であるとの認識は出来ないとし、両社に詳細な説明を求めた。
NRCがライセンスの移転を認めないと、売却は意味がない。

州のPublic Utility Commission は7月6日、NRCが結論を出すまで、売却承認の決定を延期すると発表した。

両社は依然、12月31日までに売却することを期待している。


2018/7/20    エーザイ、アルツハイマー薬治験で有意な結果

エーザイ及びアルツハイマー薬で同社と提携するBiogen, Inc は7月6日、両社が共同開発している抗アミロイドβ(Aβ)プロトフィブリル抗体 BAN2401 の早期アルツハイマー病856人を対象とした臨床第U相試験において、有意な結果を得たと発表した。

臨床第U相試験の18カ月の最終解析で、統計学的に有意な臨床症状悪化抑制脳内アミロイドベータ蓄積減少を証明した。

米国イリノイ州シカゴで開催されるアルツハイマー病協会国際会議(Alzheimer's Association International Conference)において、7月25日に口頭発表する。

この発表を受け、同社の株価は高騰した。

 

ーーー

エーザイとBiogen は2017年10月23日、臨床第III相試験進行中のaducanumabを含むアルツハイマー病治療剤の開発・販売に向けた提携契約を拡大すると発表した。

両社はアルツハイマー関連で下記の製品を開発しており、エーザイが以前から販売しているアリセプトを除き、開発で提携している。

今回の提携契約拡大で、エーザイは、Biogenの抗アミロイドβ(Aβ)抗体BIIB037=aducanumab に対する共同開発・共同販促オプション権を行使した。

エーザイ アリセプト 〈既存製品〉
(donepezil)
エーザイの杉本八郎博士らが開発
 
アルツハイマーでは、神経伝達物質のアセチルコリンが脳内で減少している。

アセチルコリンを分解するアセチルコリンエステラーゼの作用を阻害することで、アセチルコリンの濃度を高める。

新規ヒト化モノクローナル抗体
「BAN2401」
2007/12 スウェーデンのBioArctic Neuroscience ABから全世界の研究・開発、製造、販売の独占ライセンスを受ける。 アルツハイマー病の原因と考えられるベータ・アミロイド成分を除去
βサイト切断酵素(BACE)阻害剤
elenbecestat「E2609」
エーザイが創製

 

βアミロイドの脳内の沈着はアルツハイマー型認知症の病因の一つ
アミロイド前駆体タンパク質のβサイト切断酵素であるBACEを阻害することでβアミロイドの総量を低下させる。
Biogen 抗アミロイドβ(Aβ)抗体
aducanumab
(BIIB037)
Neurimmune社より共同開発およびライセンス契約締結のもとに導入 アミロイド斑(プラーク)は、アミロイドβ蛋白が蓄積したもので、アルツハイマー病患者の脳にみられる。

aducanumab 投与でアミロイドプラークのレベルを下げる

2017/10/27 エーザイとバイオジェン、アルツハイマー治療剤での提携契約を拡大 

ーーー

今回の「BAN2401」は、スウェーデンのBioArctic Neuroscience ABが開発した、アルツハイマー病に対する免疫療法剤創製を目的としたベータ・アミロイド(Aβ)に対するヒト化モノクローナル抗体で、2003年1月に同社を設立した Uppsala UniversityのProf. Lannfelt により発見された家族性アルツハイマー病の原因であるアークティック変異Aβに関連する研究に基づいたもの。

アルツハイマー病発症には、神経毒性を有するAβの脳内への蓄積が重要な役割を果たしていると考えられている。病理学的には、繊維化し不溶性となったAβを主成分とする老人斑が脳内に認められる。

近年の研究により、アルツハイマー病の発症プロセスとしての神経毒性の本体は、繊維化し不溶性となったAβではなく、その前段階であるAβプロトフィブリルを含む可溶性のAβ凝集体であることが明らかにされている。

アルツハイマー病免疫療法には、
Aβを投与して生体内でAβに対する免疫反応を惹起させるワクチン療法や、
Aβをターゲットとしたモノクローナル抗体を投与する抗体療法がある。

BAN2401はBioArctic が有する技術を用いてAβプロトフィブリルをターゲットとした抗体療法を目指すもので、アルツハイマー病発症の原因の一つと考えられている脳内のAβプロトフィブリル量を低下させるもの。


エーザイとBioArctic は、2007年12月3日、BAN2401について、全世界におけるアルツハイマー病を対象とした研究・開発、製造、販売に関する独占ライセンス契約を締結した。

BAN2401は、Aβの可溶性凝集体の一種であるプロトフィブリルを選択的に認識するヒト化モノクローナル抗体であり、前臨床段階にある。

エーザイは、自社で創製したE2012(ガンマ・セクレターゼ・モジュレーター)とともに新規性の高い抗体であるBAN2401の開発を進めることで、低分子化合物と免疫療法という異なるアプローチで次世代のアルツハイマー病治療薬の創出を目指す。「アリセプト®」によって切り開かれたアルツハイマー病の薬物療法のパイオニアとしての使命を果たすため、自社開発および他社との提携を通じて、次世代のアルツハイマー病治療薬の開発を加速させていく 。

アリセプト(donepezil) は、コリンエステラーゼ阻害剤の1種であり、アルツハイマー型認知症(痴呆)、レビー小体型認知症進行抑制剤として利用される。

E2012はエーザイが創製した低分子化合物で、ガンマ・セクレターゼ・モジュレーターとして病因となるAβの産生を抑制する。
一方、BAN2401は免疫療法薬を目指すヒト化モノクローナル抗体で、アルツハイマー病の原因と考えられるAβ成分を除去する。

2014年3月にBAN2401に関する共同開発・共同販促契約をBiogenと締結した。

エーザイは2006年3月31日、ディナベック 梶iNNAVEC:現在のIDファーマ)との間で アルツハイマー病に対するワクチン療法の創薬研究に関する契約を締結。

ディナベック

1995/3 遺伝子治療関連技術開発を目的とした、国家研究プロジェクトが開始され、医薬品機構及び製薬会社7社が出資し、ディナベック研究所 設立
2003/9 経営陣と製薬会社4社(協和発酵工業、三共、久光製薬、山之内製薬)が出資、上記から営業譲渡を受け、ディナベック鰍設立
2006/3 エーザイと「センダイウイルスベクターを用いたアルツハイマー病用ワクチンの開発」に関する研究協力契約を締結
2013/10 潟Aイロムホールディングスの子会社に
2015/4 蟹Dファーマに改称
エーザイは2002年以降、TorreyPines Therapeutics, Inc.との間でアルツハイマー病に関する遺伝子の発見の共同研究を行ってきたが、2008年11月にこれを終了し、TorreyPines Therapeuticsの研究結果を全て買い取った。

 

この領域で世界初の薬「アリセプト(一般名ドネペジル)」を1997年に発売すると、ピーク時の2010年3月期には世界で約2900億円を売り上げた。

しかし、アリセプトの特許は米国で2010年11月に、日本では2011年6月に切れ、売上高は激減した。

今回の発表を受けての株価高騰は、この新薬への期待を表している。

 


2018/7/21   独禁法に「確約手続」を導入

公取委は7月11日、「確約手続に関する対応方針」(案)を作成し、意見募集を始めた。

環太平洋パートナーシップ協定において、競争政策は第16 章に規定されているが、次の規定が含まれている。

「各締約国は、自国の国の競争当局に対し、違反の疑いについて、当該国の競争当局とその執行の活動の対象となる者との間の合意により自主的に解決する権限を与える」

このため、 「環太平洋パートナーシップ協定の締結及び環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定の締結に伴う関係法律の整備に関する法律」(平成28年法律第108号)により、独占禁止法の違反の疑いについて公正取引委員会と事業者との間の合意により自主的に解決するための手続(「確約手続」)が導入された。

これを受け、公取委では、確約手続に係る法運用の透明性及び事業者の予見可能性を確保する観点から、まとめたもの。

確約手続きとは、独禁法違反の疑いに係る公取の通知を受けた者が、その疑いの理由となった行為を排除するために必要な措置に関する計画を作成して公取委の認定を申請し、公取委が当該計画を認定した場合には、排除措置命令及び課徴金納付命令をしないという制度。

下記の行為は確約手続きの対象としない。

・ 入札談合、価格カルテル等のいわゆるハードコアカルテルである場合
・ 違反被疑行為に係る事件について10年以内に同一の違反行為を行ったことがある場合
・ 刑事告発に相当するような国民生活に広範な影響を及ぼすと考えられる悪質・重大な違反被疑行為である場合

確約措置の典型例

・ 違反被疑行為をT李辞めること、又は取り止めていることの確認
・ 取引先・利用者等への通知又は周知
・ コンプライアンス体制の整備
・ 契約変更
・ 事業譲渡等
・ 取引先等に提供させた金銭的価値の回復
・ 履行状況の報告

施行期日

環太平洋パートナーシップ協定が日本国について効力を生ずる日。
(少なくとも6か国がそれぞれの国内法上の手続を完了した旨を寄託者のニュージーランドに通報した日の60日後)

 



2018/7/23 千代田化工、ナイジェリアのLNG増設計画のFEED、EPC 業務を共同受注 

千代田化工建設は7月17日、Nigeria LNG(NLNG)がナイジェリアの沖合で計画するLNGの第7 系列プロジェクトのFEED(基本設計)業務およびEPC(設計・調達・建設工事)業務をイタリアのSpaipem、韓国の大宇建設両社と共同受注したと発表した。

NLNGは同国リバーズ州ボニー島で、石油・ガスの開発プロジェクトを推進中で、既存のLNGトレインの拡張に加えて輸出用Jettyや周辺設備の拡張、既存設備との接続も業務範囲となっている。

 

Nigeria LNG はナイジェリアのNLNG Act に基づき、同国の豊富な天然ガスをソースにLNGとNGLsの生産のため、1989年5月17日に設立された。

株主は、政府を代表するNigerian National Petroleum  (49%)と、Shell (25.6%)、Total Gaz Electricite Holdings ​ (15%) 及び Eni (10.4%)の4社。

原料ガスは次の各社と長期供給契約を締結している。

Shell Petroleum Development Company of Nigeria  (SPDC)
Total Exploration Production Nigeria (TEPNG)
Nigerian Agip Oil  (NAOC):
joint venture of Nigerian National Petroleum, Eni, and ConocoPhillips

現在、Bonny Island に6系列のLNGプラントが稼働している。

日量35億立方フィートの天然ガスから、年産2200万トンのLNG、500万トンのNGLs(LPGとコンデンセート)を生産する。

今回の第7系列の増設で、LNG能力は年産3000万トンになる。

  LNGプラント 建設業者 他の工事 生産スタート
Base Project Train 1 Technip
Snamprogetti、
Kellog
Japan Gas Corp(日揮 )

(TSKJ コンソーシアム)

Gas Transmission System (GTS)
Residential Area
2000/2
Train 2 1999/9
Expansion Project Train 3 condensate stabilisation system 2002/11
NLNGPlus project Train 4   2005/11
Train 5 2006/2
NLNG Six project Train 6 condensate processing  facility
LPG storage facility
2007/12
本件 Train 7 千代田化工
Spaipem
大宇建設
輸出用Jetty
周辺設備の拡張
既存設備との接続
 


なお、米司法省はTSKJコンソーシアムが、受注と引き換えにナイジェリアの公務員に対して贈賄を贈ったとして海外腐敗防止法( FCPA ) で起訴した。

今回はこの事件で4社が外れ、新しく3社が選ばれた。

 

起訴されたのは、TSKJの4社、Kelloggの元会長、英人弁護士、丸紅、Kollogg元社員。

1994年から2004年6月の間、4社は受注のため、ナイジェリア政府の役人に広範囲に賄賂を渡すことを決めた。
ナイジェリアの高官に賄賂を渡すため、英人弁護士を、下級役人に渡すために丸紅を雇った。
英人弁護士の Gibraltarの企業を通じ132百万ドルを、丸紅を通じ51百万ドルを支払った。

各社はそれぞれ下記の罰金を支払い、司法省と和解した。
 Technip:2010/6 240百万ドル
 Snamprogetti:2010/7  240百万ドル
 Kellog(の後継の
Kellogg Brown & Root LLC):2009/2  402百万ドル
 Japan Gas (日揮):2011/4 218.8百万ドル
 丸紅:2012/1 54.6百万ドル

次の3人の個人は、裁判所で下記の判決を受けた。英人2人は英国から米国に引き渡された。

 Kellogg元CEO:禁固30カ月+その後3年の仮釈放、および、別の賄賂事件被害者のKBRへの10.8百万ドルの返還
  英人弁護士:禁固21カ月+その後2年の仮釈放と罰金 2万ドル、及び報酬 149百万ドルの没収
  Kellogg 元社員(英国人):禁固1年、罰金2万ドル、及び報酬 727千ドルの没収

 

 



2018/7/23 東洋エンジ、タイ Map Ta Phut Olefins のオレフィンプラント拡張プロジェクトを受注

東洋エンジニアリングは7月19日、タイSCG Chemical (67%)と米国 Dow Chemical (33%) の合弁会社であるMap Ta Phut Olefins Co., Ltd によるオレフィン増産プロジェクトの設計・調達サービスを受注したと発表した。

Map Ta Phut Olefins は2012年4月に生産を開始した。現在の能力は、エチレン90万トン、プロピレン80万トンとなっている。

2012/4/5 Dow、タイで新コンプレックスの開所式 

今回、470百万ドルを投じて35万トンを増設する。このうち、85-90%がエチレンとされており、増設後のエチレン能力は120万トンとなる。2021年第2四半期の完成を目指す。

 

タイのオレフィン事業の状況は下記の通り。
 

  エチレン プロピレン
2011/2 2013/2 2014/2 2011/2 2013/2 2014/2

NPC
(National Petrochemical Corp.)

           

PTT(タイ石油公社)38%
Siam Cement 25%

TOC
(Thai Olefins)

           

PTTが49%保有

PTT Global Chemical
(merger of PTTCH & PTTAR)
1,376 1,376 2,376 487 487 512 NPC、TOCが合併→PTT Chemical PTTCH)
PTT Aromatics and Refining と合併→PTT Global Chemical
2013/7 PTTPEから移管
PTTPE 1,000 1,000

25 25

(jv of PTT and PTT Chemical)
2013/7 PTT Global Chemicalに移管
ROC
(Rayong Olefins Co.)
800 800 800 400 400 400

Siam Group

TPI (Thai Petrochemical Industry)IRPC
(Integrated Refinery Petrochemical Complex)

360 360 360 312 412 412

経営危機でPTTが31.5%保有
 

Map Ta Phut Olefins 900 900 900 800 800 800 Siam Cement / Dow
Alliance Refining *
 
Star Petroleum Refining
      132 130 130  
HMC         310 310 2010年 PDH
合計 4,436 4,436 4,436 2,156 2,564 2,564

+

*Alliance Refining
  Star Petroleum Refining (Chevron Texaco /PTT) Rayong Refinery (Shell/PTT) JV

 

 


 

2018/7/24   トランプ大統領とEUとNATO

ランプ大統領はEUとの間で関税問題で揉めているが、NATOのと間でも問題発言をしている。

 

(防衛費)

トランプ大統領は7月11日に開幕した北大西洋条約機構(NATO)首脳会議で、加盟各国による防衛費の支出を国内総生産(GDP)比4%に引き上げるよう要請した。

NATOはこれまでに加盟国の防衛費を対GDP比2%以上とする目標を掲げているが、ドイツなど目標を達成してない加盟国は多く、トランプ大統領は首脳会談に先立ち、各国の拠出が不十分として批判していた。

2024年までに全加盟国がNATOへの防衛費支出を対GDP比2%に引き上げると公約したにもかかわらず、現在、GDPの2%を超えているのは、米国のほか、英国、エストニア、ラトビア、ギリシャだけである。

フランスは1.8%、ドイツにいたっては1.2%にとどまっている。

 

トランプ大統領自身は、NATO加盟国が直ちに防衛支出の対GDP比率を2%に引き上げる必要があるとツイッターに投稿し、「ドイツがロシアに対し天然ガスとエネルギーを巡り多額の支払いを行うなら (下記)、NATOにどのような価値があるのか。米国は欧州の防衛のために多額の支出を行う一方、貿易で多額の損失を出している。防衛支出の対GDP比率を直ちに2%に引き上げる必要がある。2025年までではない」との考えを示した。
そのうえで、
4%まで増やすべきだと主張した。

ドイツはロシアとともに、シベリアの天然ガスをサンクトペテルブルク北方からバルト海海底約1200キロを通ってドイツ北東部グライフスバルトに運ぶ Nord Stream 2 計画を進めている。

2015/9/10 BASFとGazprom、Nord Stream 2 計画もスタート  

トランプ氏は、ドイツがガスパイプライン・プロジェクト「Nord Stream 2 」に参加することについて問われると、「それはドイツの選択だ。しかし、NATO加盟国であるため、難しい」と語った。

 

加盟国首脳らは共同声明で「加盟各国のコストや責務の負担において均衡を取ることにコミットする」とし、防衛費支出を拡大する目標の達成に向けた「揺るぐことのないコミットメント」を確認した。

 

(モンテネグロ)

旧ユーゴスラビアのモンテネグロは2018年6月5日、NATOに正式加盟した。これで加盟国は29カ国となった。

NATOの外相理事会は2015年12月2日、モンテネグロの新規加盟を承認した。その後、各国が批准手続きをとっていた。

バルカン半島に位置するモンテネグロはユーゴスラビア時代の1999年にNATOが空爆したかつての「敵国」だが、2006年に独立して以降はEU加盟を目指して民主化政策を推進し、NATOにも2009年から加盟手続きに入っていた。

旧ユーゴスラビアは現在、モンテネグロ、スロベニア、クロアチア、セルビア、マケドニア、ボスニア・ヘルツェゴビナ となっている。
このうち、スロベニアとクロアチアはEUとNATOの双方に加盟、モンテネグロは今回NATOに加盟したが、EUには入っていない。
他の3国はいずれにも入っていない。

モンテネグロのNATO加盟には、同国と歴史的につながりの深いロシアが強く反発していた。

トランプ米大統領は7月17日放送の米FOXニュースのインタビューで、NATO加盟国のモンテネグロに対して集団防衛義務を果たせば「第三次世界大戦になる」と、その必要性を疑問視するような発言をした。

NATO条約第5条は加盟国に対する攻撃をNATO全体への攻撃と見なす集団的自衛権を規定している。

だがトランプ氏はインタビューで、「モンテネグロは小国だが、国民は非常に強く攻撃的だ。(集団防衛義務を果たせば)彼らはもっと攻撃的になり、第三次世界大戦になる」などと答えた。

 

NATOとEUの加盟状況は下記の通り。

NATO EU
原加盟国 米国 対象外
カナダ
イタリア 1952
オランダ
フランス
ベルギー
ルクセンブルク
英国 1973
デンマーク 1973
ポルトガル 1986
アイスランド

非加盟

ノルウェー
1952/2

ギリシャ

1981
トルコ 非加盟
1955/5 ドイツ(西ドイツ) 1952
1982/5 スペイン 1986
1999/3 チェコ 2004/5
ポーランド
ハンガリー
2004/3 エストニア 2004/5
ラトビア
リトアニア
スロバキア
スロベニア
ブルガリア 2007/1
ルーマニア
2009/4 アルバニア 非加盟
クロアチア 2013/7
2017/6 モンテネグロ 非加盟
非加盟 アイルランド 1973
オーストリア 1995
フィンランド
スウエーデン
キプロス 2004/5
マルタ
非加盟 スイス 非加盟
ボスニア・ヘルツェゴビナ
セルビア
マケドニア
ベラルーシ
モルドバ
ウクライナ
29か国   28か国

 


 

2018/7/25    ロシア国営石油大手 Rosneft、サハリン1の参加者を提訴

ロソア国営石油大手 Rosneft はこのたび、サハリン1 計画に参加する5社に対し、889億ルーブル(1411百万米ドル)の支払いを求め、提訴した。

各社に対する求償額は次の通りで、サハリン1の出資比率に応じている。
なお、
Sakhalinmorneftegzs-Shelf と RN-Astra はRosneft の子会社である。

  出資 億ruble 百万$
Exxon Neftegas 30%  267 423.8
Sakhalin Oil and Gas Development 30%  267 423.8
Indian VIdesh 20% 178 282.5
Sakhalinmorneftegzs-Shelf 11.5% 102 161.9
RN-Astra 8.5% 75 119.0
合計   889 1411.0

サハリン石油ガス開発の株主構成は、日本政府50%、伊藤忠商事14.46%、石油資源開発15.3%、丸紅11.68%、伊藤忠石油開発 1.83%、国際石油開発帝石 6.08%などとなっている。

訴状を受理したサハリン州仲裁裁判所の発表によると、訴訟は2015〜2018年の「不当な収入」と「他者の資金の利用による金利」(unjust enrichment as well as interest for using other entity’s funds in 2015-2018) に対して申し立てられた。

サハリン1のオペレーターのExxon Neftegaz は、提訴内容については否定し、サハリン1 の権利を守るため戦うと述べた。

予備審問は9月10日に行われる。

 
訴因については、サハリン1に隣接するロスネフチ管轄の油田との原油生産の分配を巡り、5社とロスネフチの間で意見の相違があったとの情報もある。

これから考えると、サハリン1のChayvo 鉱区 & Arkutun-Dagl 鉱区と、これらに隣接するサハリン3のVeninsky鉱区との境界線での生産ではないかと思われる。

付記

提訴された5社が9月29日までにRosneft と和解した。日本側関係者が明らかにした。5社側は2億3000万ドルを支払う。

Rosneftは同社の鉱区から隣接するサハリン1に地下を通じて原油が流れ、5社が不当に利益を得たとして、889億ルーブル(1411百万米ドル)の支払いを求めて提訴した。

今回、サハリン1からRosneft の鉱区に原油が流れた場合に同社に賠償請求しないなどの条件で和解が成立した。和解金は5社が権益比率に応じて支払う。サハリン石油ガス開発は30%。

 

サハリン1は3つの鉱区からなる。

実は、この付近は多くの鉱区が入り組んでいる。

  株主 鉱区
サハリン 2 Gazprom  50%+1株
Shell 27.5%-1株
三井物産 12.5%
三菱商事 10%
Piltun-Astokhskoye (サハリン1のArkutun-Dagiの北隣)
Lunskoye(サハリン3のKirinskyの北西隣)
サハリン 3 Gazprom East Odopinsky (サハリン1のOdoptuの東隣)
Ayashsky(サハリン1のArkutun-Daglの東隣)
Kirinsky (サハリン2のLunskoye の東隣)
Rosneft  74.9%
Sinopec  25.1%
Veninsky(サハリン1のChayvo & Arkutun-Dagl の南隣)

2006/6/6 「新・国家エネルギー戦略」発表 のサハリン計画の項を参照

 


2018/7/26    旭化成、米国の自動車内装材メーカー Sage Automotive Interiors, Inc.を買収   付記 帝人

旭化成は7月19日、米国の自動車内装材メーカーである Sage Automotive Interiors, Inc.を現金約700百万米ドルで買収することを決定したと発表した。

Sage社を100%保有するClearlake Sage Holdings, LLCとの間で合意した。

取得価額約700百万米ドルは、クロージング時点での現預金・借入金の残高や運転資金の増減等により変更される。なお、本取得価額にSage社の純有利子負債を加えて算出した買収価格は1,060百万米ドルとなる。

Sage社は自動車内装材に用いる各種繊維製品の開発・製造・販売を手掛けており、シートファブリック市場ではグローバルNo.1シェアを保持している。

同社の推移は下記の通り。

2009年に米国の繊維・化学品メーカーであるMilliken & Companyからスピンオフした。役員2人と投資会社のAzalea Capital, LLC. が買い取った。

2011年5月に、投資会社のThe Gores Group, LLCが買収した。

2014年10月に投資会社のClearlake Capital Groupが買収した。

同社は内装材に関する総合提案力、高いデザイン力、加工技術等により、自動車メーカーおよび部品メーカーに対し高いプレゼンスを有しており、ニット・織物の多様な技術的繊維を含め、車載用ボディークロスを世界の大手自動車メーカーに供給している。
生産拠点を米国、イタリア、ポーランド、ルーマニア、ブラジル、中国に持つ。

旭化成はスエード調人工皮革「ラムース」をSage社に販売しており、両社は従来より良好な関係を構築・維持してきた。
(Sage 社が「ラムース」を購入、染色などの加工を施した上で部品メーカー・ 自動車メーカーに供給している)

旭化成は、成長する自動車内装市場でのポジションを強化し、自動車分野向け事業の拡大実現を目指しており、 領域内横断で「自動車メーカーおよび部品メーカーとのコネクト(関係)強化」「グローバル拠点の確立」等に取り組んでいる。

自動車分野向け事業の拡大を加速させるためにSage社の事業を取り込むことを検討してきたが、2017年10月より両社で協議を始め、このたび本買収の合意に至 った。

買収を通じ、「川上」から「川中」へサプライチェーンを拡大する。

本買収による具体的な効果は以下のとおり。

自動車メーカーおよび部品メーカーに対するアクセスを強化し、自動車市場の動向やニーズを迅速かつ的確に把握

Sage社の有するマーケティング力・デザイン力と、 旭化成の有する繊維製品、樹脂製品、センサ等のさまざまな製品・技術を組み合わせて、車室空間に関する総合的なデザイン、ソリューションを提案・提供

Sage社の営業・製造・マーケティング拠点を、旭化成のグローバル展開にあたっての経営インフラ・リソースとして活用

 

旭化成は2012年に米救急救命機器大手 Zoll Medical を約1800億円で、2015年に米セパレーター(絶縁体)メーカーのPolypore Internationalを約2600億円で買収しており、買収金額でそれらに次ぐ規模になる。

2012/3/19 旭化成、米国ZOLL Medical Corporationを買収

2015/2/26 旭化成、米電池素材会社Polypore International を買収

 

付記

帝人は7月30日、子会社の帝人フロンティアが、欧州を中心に自動車向け内装材の生産・販売を展開する J.H. Ziegler GmbHの全株式を約125百万ユーロで取得し、完全子会社にすると発表した。

Ziegler は、長年培ってきた不織布の生産・加工技術を応用し、優れた静音性能を有する吸音材製品を市場投入しており、欧州で高いシェアを誇っている。欧州の自動車市場においては、シートワディング材のリーディングメーカー。欧州に4ヵ所の工場を有し、2014年には中国・浙江省に工場を新設して、グローバル展開を加速している。

帝人は、この買収により、欧州、北米、アジアにおける生産・販売拠点を取得することとなり、今後、自動車事業のグローバル展開を加速していく。

 


2018/7/26    韓国が太平洋同盟に「準加盟国」入り申請

メキシコ外務省は7月23日、メキシコとコロンビア、ペルー、チリの中南米4カ国が参加する貿易自由化の枠組み「太平洋同盟」に韓国が準加盟国としてメンバー入りを申請する手続きを始めたことを明らかにした。
ビデガライ外相はツイッターを通じて韓国に対して歓迎の意向を示した。

ーーー

中南米の太平洋岸にあるメキシコ、コロンビア、ペルー、チリの各大統領は2012年6月6日、チリ北部パラナル天文台で首脳会合を行い、経済統合を目指す「太平洋同盟」設立の合意文書に署名、同盟が発足した。

オブザーバーのパナマとコスタリカも上記諸国との二国間FTAが終了した段階で正式に加盟する。

太平洋同盟4カ国の人口は計約2億人で、GDPは計約1.7兆ドル、親米色が比較的強い。

2011年4月にペルーの当時のガルシア大統領が、メキシコ、コロンビア、チリ及びパナマに呼びかけ、首脳会合を行い、「太平洋同盟」の設立に合意した。
この時の「リマ宣言」では、加盟国間の財、サービス、資本、人の流れを一層自由化するとともに、アジア太平洋地域との政治経済関係の強化を謳い、「深く統合された地域を形成する」とした。

2012/6/30 中南米4カ国の太平洋同盟発足 

 

現在の加盟国・オブザーバー国は次の通り。

太平洋同盟の4カ国はコロンビアを除き TPP 11に参加している。コロンビアもすでに参加を希望する意向を表明している。

ステータス 条件 会合出席 国名 国数
正規加盟国 全加盟国との間で
2国間FTAを締結
全会合 チリ、コロンビア、メキシコ、ペルー 4
加盟国候補
オブザーバー
全加盟国の半数とFTAを締結 全会合 コスタリカ、パナマ 2
オブザーバー 閣僚評議会の承認のみ 首脳会合、
閣僚会合のみ
カナダ、米国、グアテマラ、エルサルバドル、ホンジュラス、ハイチ、ドミニカ共和国、トリニダードトバゴ、エクアドル、パラグアイ、ウルグアイ、アルゼンチン、日本、韓国、中国、タイ、シンガポール、インド、インドネシア、オーストラリア、ニュージーランド、トルコ、イスラエル、エジプト、ノルウェー、スウェーデン、フィンランド、英国、デンマーク、ドイツ、ベルギー、オランダ、フランス、スペイン、ポルトガル、イタリア、スイス、オーストリア、ギリシャ、ポーランド、ハンガリー、チェコ、スロバキア、ルーマニア、ジョージア、ウクライナ、スロベニア、リトアニア、クロアチア、モロッコ 50
合計   56

 

太平洋同盟の第17回閣僚評議会が2017年6月2日、メキシコ市で開催された。同会合では、「準加盟国(Estado Asociado)に関する指針」が採択され、太平洋同盟と域外国の間の自由貿易協定(FTA)締結に向けた道筋が明確となった。

指針1で「準加盟国」の定義を「太平洋同盟枠組み協定の目的の追求に資するハイレベルの経済連携・通商協定を締結し、発効させている国」とした。

招待や要請が承認された場合、太平洋同盟と域外国の間で交渉が開始されるが、最初に太平洋同盟側から経済連携・通商交渉の範囲とスケジュール案が域外国に提示され、域外国の同意を求める。
経済連携・通商交渉の範囲については、最低でもモノの貿易、サービス貿易、投資の3分野が含まれなければならない。3分野に加え、政府調達や知的財産権保護などその他の分野を含む、より包括的な協定であってもよい。

太平洋同盟に加盟するためには、全ての正規加盟国とFTAを発効させる必要がある。
加盟国候補として承認されているのはコスタリカとパナマだけで、コスタリカは全加盟国とFTAを発効させており、正規加盟に向けたプロセスを進めている。

 

太平洋同盟の第12回首脳会合が2017年6月30日、コロンビア西部のカリで開催され、カナダとオーストラリア、ニュージーランド、シンガポールの4カ国との準加盟交渉を開始することが発表された。

太平洋同盟の発足当初から基本方針に盛り込まれていたアジア太平洋地域との関係強化に向けた取り組みが、いよいよ本格化する。

今回、韓国が準加盟交渉を開始する。

 

南米には既に関税同盟のMERCOSUR共同市場形成を目指すアンデス共同体がある。

太平洋同盟とMERCOSURは7月24日、首脳会議を開き、通商・経済関係を緊密化する決意を表明した。米国発の貿易戦争のリスクに対抗する。

メキシコのペニャニエト大統領は「中南米で最も重要な貿易圏の関係を強化することを目指す」とし、「地域の統合と自由貿易を推し進めるという明確なシグナルを世界に送る」と述べた。

また、太平洋同盟とMERCOSURが共通の利益となる分野の貿易拡大を目指し新たな協力の方法を探ることで一致したと明らかにした。 チリのピニェラ大統領は、太平洋同盟として加盟国間の貿易品の約8%に依然適用されている関税を撤廃することに取り組むと表明した。

  太平洋同盟 メルコスル アンデス共同体 TPP
メキシコ Observer  Observer
コロンビア 準加盟  
ペルー 準加盟
チリ 準加盟 (→) 準加盟
パナマ 加盟前提のObserver   Observer  
コスタリカ      
アルゼンチン   準加盟  
ブラジル   準加盟  
パラグアイ   準加盟  
ウルグアイ   準加盟  
ベネズエラ   () 脱退  
ボリビア    
エクアドル   準加盟  
ガイアナ   準加盟    
スリナム   準加盟    

域外

カナダ 準加盟申請    
オーストラリア 準加盟申請    
ニュージーランド 準加盟申請 Observer  
シンガポール 準加盟申請    
韓国 準加盟申請      

 

 

I told you so! The European Union just slapped a Five Billion Dollar fine on one of our great companies, Google.
They truly have taken advantage of the U.S., but not for long!

これまでの最高額は2017年6月に同じく Googleに支払いを命じた2,424,495 千ユーロで、ネット検索市場での支配的な地位を乱用し、商品価格を比較する際に同社のサイト Google shopping を競合他社のサイトよりも目立つように表示されるようにすることで、公正な競争を阻害したとした。Googleはこれを不服としてEU司法裁判所へ提訴し、法廷闘争が続いている。

2017/7/4 EU、Google に24億2千万ユーロの制裁金 

今回、モバイルプラットフォームAndroidを採用するデバイスにGoogleのアプリをプリインストールさせ、モバイル検索やモバイルサービスにおける公正な競争を阻害していると判断した。

90日以内にGoogleが効果的な対策を講じなければ、Alphabetの毎日の世界の売上高の最大5%の罰金を追加で科す。
 

GoogleはGoogle検索アプリ(Google Search)で収入の大部分を得ている。

同社は早くから、デスクトップコンピューターからモバイルインターネットにシフトすると予想、ユーザーがモバイルでも確実にGoogle Search を使うよう動いた。

2005年にAndoroid社(2003年設立)を買収、それ以降、開発を続け、現在では欧州及び世界のスマホの約80%がAndroidで動いている。これとGoogle Search を結び付けた。


スマホ向けOSで圧倒的シェアを占める「アンドロイド」と自社製のアプリを「抱き合わせ」でメーカーなどに提供する戦略などが、他社のアプリを締め出して競争を損ねたと判定した。

具体的には、デバイスメーカーや通信キャリアに対して以下の3つの制限を設けることで、Andoridを通じて「モバイル検索サービス」「ライセンスを与えられるスマートモバイルOS」「Android用アプリストア」で市場を独占しているとしている。



 

1) Googleのアプリストア (Google Play Store)のライセンス条件として、Chromeブラウザ(Google Chrome  browser) と Google検索アプリ (Google Search) のプリインストールをメーカーに要求。

Google Play Storeは、Android向けのコンテンツサービスで、Android搭載スマートフォン/タブレットで利用できるアプリ、映像、音楽、電子書籍などが配信されている。

欧州委員会の調査では、ユーザーはPlay Storeが入っているのが必須としている。

Googleは、Play Storeのラインセンスで、Google Chrome  browser Google Search をプリインストールすることを条件とした。

2) Google検索アプリ(Google Search)のみをデバイスにプリインストールする一部の大手メーカーやモバイルネットワークオペレータにインセンティブ支払い。


3) Googleのアプリのプリインストールを希望するメーカーが、Google版ではないAndroidフォーク (Androidのベース部分だけを使用、独自のアプリを採用するもの)を販売するのを妨げた。

ーーー

AppleのiOSやBlackberryもモバイルOSにブラウザや様々なアプリをプリンストールしている 。
それらはハードウェアとOS、ソフトウェアの統合によって自社製品の体験を向上させるものであり、サードパーティのデバイスメーカーへのライセンスは行っていない。
サードパーティへのライセンスを通じて大きな市場シェアを握るGoogleとは、ビジネスモデルが異なる。

Googleの場合、ライセンスを通じて多くのユーザーがAndroidを使用し、Androidにアプリを提供する開発者が増え、さらにユーザーが増加するネットワーク効果が、Googleのサービス分野に他社が参入するのを妨げる高い障壁になっているとしている。

 



2018/7/27 米国とEU、関税撤廃交渉へ 


トランプ米大統領は7月25日、訪米中のJean-Claude Juncker 欧州委員長との会談後、関税引き下げに向け EUと協力することで合意したと述べた。

ーーー

米政府は5月31日、カナダ、メキシコ、EUに対し鉄鋼・アルミニウムへの輸入関税を適用すると発表した。適用は午前0時からで、税率は鉄鋼が25%、アルミニウムが10%。

2018/6/2 米、EU・カナダ・メキシコに鉄鋼・アルミ関税発動 

これを受け、EUの欧州委員会は6月6日、対抗措置として、米国からの輸入品に報復関税を課す方針を正式決定した。

EUは被害を2017年ベースで64億ユーロ(71億米ドル)とし、直ちに28億ユーロ(32億ドル)相当の製品に課税する。対象は、鉄鋼・アルミ製品のほか、オレンジジュース、バーボン、たばこ、化粧品、シャツ、ズボン、靴、バイク、ボートなど。

これを受け、トランプ大統領は6月22日、「EUが関税や障壁をすぐに取り除かないなら、輸入自動車全てに20%の関税をかける。米国で生産せよ!」と呟いた。

2018/6/7     EU、米国の鉄鋼・アルミニウム輸入制限への報復関税、7月発動へ 

米オートバイ製造大手Harley-Davidsonは6月25日、EUの関税引き上げを受け、欧州向けオートバイの生産を米国から海外に移す方針を明らかにした。

2018/6/27   Harley-Davidson、一部生産を米国外に移転


米国が輸入自動車全てに20%の関税をかけると、世界中に影響が出る。

EUの欧州委員会は7月17日、 Juncker 欧州委員長が7月25日に訪米し、トランプ大統領と通商関係について協議すると発表した。
「Juncker委員長とトランプ大統領は欧米間の通商関係の発展と経済的連携の強化に注力する。」

欧州委員会のマルムストローム委員(通商担当)は、Juncker委員長の訪米で貿易摩擦が緩和されることを望むとしながら、米国がEUからの自動車輸入に関税を発動した場合に適用する報復関税のリスト作成を進めていることを明らかにした。
 

ーーー

両首脳は貿易戦争につながる懸念の沈静化に努めた。

7月25日の会談後の共同声明によると下記で合意した。

1) 自動車以外の工業製品について、関税ゼロ、非関税障壁ゼロ、補助金ゼロに向かい、協力する。

 また、非関税障壁を減らし、サービスや化学品、医薬品、医療製品、及び大豆の貿易を増やすため協力する。

何故、どちらが、自動車を対象から除外しようと提案したのか、不明である。

報道では、米側要請で政府調達が協議の対象から除外され、EU側要請で農産物が除外された。

但し、例外的に大豆が含まれた。EU当局者は、米側から大豆の輸入を拡大するよう強い圧力があったと明らかにした。
米農家は米国産大豆に対する中国の報復関税の打撃を受けており、トランプ大統領は7月24日、農家に対し最大120億ドルを支払う支援策を発表した。

なお、EU高官は7月26日、最終的には自動車も関税撤廃の対象に含まれるとの見通しを示した。自動車だけを除くのは考えられないとしている。
 

2) エネルギーに関し、戦略的協力関係を強化する。EUはエネルギー供給の多様化を図るため、米国からもっとLNGを輸入する。

Juncker委員長は、米国が欧州向けLNG供給を拡大するため輸出ターミナルを増設することで合意したと明らかにした。

大統領はドイツが参加するNord Stream 2 計画(ロシアの天然ガスの海底パイプライン輸送)に不満を表明している。

3) 貿易を容易にし、官僚的障害を減らし、コストを下げるため、基準に関する緊密な意見交換を行う。

4) 米国とEUの企業をアンフェアなグローバル貿易慣行から守るため協力する。
 同意見の諸国と緊密に連絡を取り、WTOを改革し、アンフェアな貿易慣行(知的財産の窃盗、技術移転の強制、補助金、国有企業による歪み、過剰生産など)に対応する。

5) これらに対応するため、直ちにExecutive Working Group を設置する。加えて、短期的な対策を検討する。

 この間は、どちらかが交渉を取り止めない限り、この合意の精神に反する行動を行わない。

EUは、「相互に追加関税の発動を控える」とし、ロス商務長官も「自動車の追加関税は課さない」とするが、大統領は「合意の精神に反することはしない」とだけ述べている。

いずれにせよ、トランプ大統領が今後の進展に不満を抱き、「交渉を取り止め」れば、関税を課すことは可能である。

9月を目処に高官級の作業部会の初会合を開き、交渉内容の具体策の検討に入る。120日以内に結果を報告する方針。

6) 鉄鋼とアルミの関税問題と報復関税を解決することを望む。
  (We also want to resolve the steel and aluminum tariff issues and retaliatory tariffs.)

どのように話を進めるのかについての言及は一切ない。 単なる希望だけか?

ーーー

トランプ大統領は会見後、両者の「関係は新たな段階に入った」とし、「自由で公正な貿易にとって重要な日」になったと語った。さらに、「今すぐ交渉を開始するが、向かっている方向はとてもはっきりしている」と述べた。
 

大統領はツイッターで、米国とEUはお互いが好きだと呟いた。

Obviously the European Union, as represented by Juncker and the United States, as represented by yours truly, love each other!

“We met today...to launch a new phase in the relationship between the U.S. & the EU – a phase of close friendship, of strong trade relations in which both of us will win, of working better together for global security & prosperity, & of fighting jointly against terrorism.”

Great to be back on track with the European Union. This was a big day for free and fair trade!
 

EUが米国からの液化天然ガス(LNG)の輸入を増やし、EUは「巨大な買い手」になると語った。

さらに、大豆の非関税障壁を削減することで合意したとし、「EUは大豆の購入を大幅に増やす。彼らは巨大な市場で、特に中西部を中心とする農家から大量の大豆を買う」と述べた。

ツイッター:

European Union representatives told me that they would start buying soybeans from our great farmers immediately.

Also, they will be buying vast amounts of LNG!


Juncker委員長は、工業製品の関税ゼロに向けた取引が「主要な目的」だったと語った。

トランプ、Juncker両氏は声明で、自動車関税には直接言及せず、他の工業製品に焦点を当てた。
自動車・部品関税について問題解決に向けた進展があったのかは不明。


 

今回の会談を歓迎する向きが多いが、具体的に決まったことが少ないことから、米国と中国の交渉のように、後になってご破算になる恐れも残っているとする意見もある。

 

 


2018/7/28    EU独禁当局、ネット販売巡りパイオニアなど4社に罰金 

EU独占禁止当局は7月24日、自社製品のネット販売で固定、最低価格を設定したとして、台湾のPCおよびPCパーツ、スマートフォン、周辺機器製造メーカーのAsus、日本のDenon & Marantz とパイオニア、オランダの医療機器・ヘルスケア大手Philipsの4社に合計1億1120万ユーロの罰金を課した。

  Reduction for cooperation Fine (€)
Asus 40 % 63,522,000
Denon & Marantz 40 % 7,719,000
Philips 40 % 29,828,000
Pioneer 50 % 10,173,000
合計   111,242,000

4社は、固定又は最低の再販売価格維持制度(Resale Price Maintenance =RPM) をとり、ネット小売各社が台所器具やノートパソコン、ハイファイ製品などの価格を設定する能力を制限するなどした。

特に製品を安値で販売するネット小売り各社がメーカー希望価格に従わない場合、供給を停止するなどして脅した。モニタリングシステムにより、安値販売を見つけ、素早く対応した。

パイオニアの場合は更に、ネット小売りが欧州内の国を超えて販売するのを妨げ、国ごとに異なる価格での販売を維持した。

欧州委のMargrethe Vestager委員は声明で「これら4社の行為の結果、数百万人の欧州消費者が、台所器具やヘアドライヤー、ノートパソコン、ヘッドホンなど多数の製品価格上昇に直面した」と指摘した。

 

Denon & Marantzについて:

2001年に日本コロンビアのオーディオ&ビジュアル機器製造部門が独立し、デノンとなり、Ripplewood Holdingsが日本コロンビアから株式の98%を買収し、子会社とした。

2002年にPhilipsの傘下であった日本マランツ(前身はスタンダード工業)と株式移転により、D&M Holdings を設立した。

2008年にBain Capitalが友好的買収を行った。

2017年に米国のSound United LLCが買収した。


2018/7/30 ベネズエラ、通貨5ケタ切り下げ 

ベネズエラ政府は7月25日、ハイパーインフレに対応するため、通貨の単位を5ケタ切り下げるデノミ(通貨単位の切り下げ)を実施すると発表した。

8月20日付で、10万Bolivaを5ケタ切り下げ、新通貨1Bolivar Soberano (Sovereign Bolivar)に切り替える。

従来の計画では8月4日付で現在流通する1000 Bolivarを3ケタ切り下げ、新通貨1 Bolivar Soberanoに切り替えるとしてきた。

しかし、国際通貨基金(IMF)が同国の物価上昇率について年内にも100万%に達すると発表(下記)するなど上昇ペースが加速しており、対応しきれないと判断した。

ベネズエラでは外貨不足で生活に必要な物資を十分に輸入できず、足元では月2倍のペースで物価上昇が続いている。
下のグラフ(たった1年間のグラフ)では5月末時点で27,364%だが、議会の調査では6月では約4万6000%となっている。

ブルームバーグは独自に、首都カラカス東部にあるベーカリーのコーヒー1杯の値段を調査し、経済指標として使っている。「カフェ・コン・レチェ(ミルク入りコーヒー)指数」と呼ばれるこの指標によれば、過去12カ月間でインフレ率は6万%上昇した。上昇はさらに加速しており、過去3カ月のインフレ率は年率で30万%を記録した。
 

IMFの西半球部門のAlejandro Werner部長は、7月23日付のレポート Outlook for the Americas: A Tougher Recovery で、同国の2018年のGDPは3年連続の2桁のマイナスが予想され、インフレ率は2018年末までに100万%に達する可能性があると警告した。

「経済活動の崩壊、ハイパーインフレ、公共財の供給不足、補助金つきの食料の不足が、大規模な国外への移住につながっている。近隣諸国にも大きな影響を与えるだろう」と指摘している。すでに生活条件の悪化から、100万人以上が国を捨て、近隣諸国へ逃げだしている。

IMFのReportは次の通り。

Venezuela remains stuck in a profound economic and social crisis.

Real GDP is projected to fall by about 18 percent in 2018—the third consecutive year of double-digit declines in real GDP—driven by a significant drop in oil production and widespread micro-level distortions on top of large macroeconomic imbalances.

We expect the government to continue to run wide fiscal deficits financed entirely by an expansion in base money, which will continue to fuel an acceleration of inflation as money demand continues to collapse.

We are projecting a surge in inflation to 1,000,000 percent by end-2018 to signal that the situation in Venezuela is similar to that in Germany in 1923 or Zimbabwe in the late 2000’s.

The collapse in economic activity, hyperinflation, and increasing deterioration in the provision of public goods (health care, electricity, water, transportation, and security) as well as shortages of food at subsidized prices have resulted in large migration flows, which will lead to intensifying spillover effects on neighboring countries.

ーーー

インフレ率 100万%は第一次世界大戦の敗戦後の1923年のドイツや、2000年代後半のジンバブエに匹敵する。
(2015〜2017年の
Ig Nobel 賞の賞金には10兆ジンバブエドル紙幣が与えられた。これは米国の40セントに相当する。)

 

産油国ベネズエラは、経済を支える原油の生産量が昨年28年ぶりの水準に落ち込んだ。 OPEC発表では、ベネズエラの昨年の原油生産は前年比約13%減の日量 2072千バレルで2017年12月の生産は日量1621千バレルで、前年比29%減った。

産油国は昨年、OPEC主導の協調減産を2018年末まで延長することで合意したが、他国が自主的に生産を抑えているのに対して、ベネズエラの石油産業は非効率な投資、納入業者への支払いの遅れ、米国の経済制裁、頭脳流出などで大きな打撃を受けており、6年続く原油生産の減少に歯止めを掛けることができずにいる。

本年5月20日に投開票された大統領選で、反米左派のニコラス・マドゥロ大統領(55)が再選された。

マドゥロ大統領は経済改革の実施を拒み、現在の危機を、国内の反政府派がアメリカやその他の競争相手国と手をくんで仕掛けた「経済戦争」のせいだとしている。政府機関は、国の崩壊の本当の姿を隠すために、経済統計の公表を停止している。


2018/7/30 京大がiPS細胞でパーキンソン病治療臨床試験へ 

京都大学医学部附属病院は7月30日、iPS細胞由来ドパミン神経前駆細胞を用いたパーキンソン病治療に関する医師主導治験を8月1日より開始すると発表した。
高橋淳教授らのチームが学内の治験審査委員会の審査を終えて、6月4日付で医薬品医療機器総合機構(PMDA)を通じ、厚生労働大臣に医師主導治験として治験計画届を提出していた。

iPS細胞からつくった細胞を人に移植する研究が認められるのは目の難病と心臓病に続いて3例目。パーキンソン病の治験としては世界で初めてとなる。

理化学研究所と先端医療振興財団は2013年7月30日、iPS細胞を使い、滲出型加齢黄斑変性の患者6人を対象に、目の網膜を再生する世界初の臨床研究を8月1日に開始すると発表した。

2013/12/4  大日本住友製薬と理研認定ベンチャーのヘリオス、iPS細胞由来医薬品を共同開発

厚生労働省の再生医療等評価部会は2018年5月16日、iPS細胞から作った心臓の筋肉細胞をシート状にして重症心不全患者の心臓に移植する大阪大の臨床研究計画を、臨床研究の患者の対象を厳しくすることなどの条件付きで承認した。

2018/5/19 iPS細胞の心臓病臨床研究、承認

パーキンソン病は脳で神経伝達物質のドパミンを分泌する神経細胞が失われる難病で、体が震えたり筋肉がこわばったりする。

ドパミンはドパミン神経細胞の中で作られる。パーキンソン病は、ドパミン神経細胞が進行性に失われ、ドパミン産生量が減少することにより発症する。

症状を和らげる飲み薬などの治療では神経細胞の減少を止められず、根本的な治療法はない。

京都大学iPS細胞研究所で構築している「再生医療用iPS細胞ストック」から提供されたiPS細胞をドパミン神経前駆細胞へ分化させ、分化誘導したドパミン神経前駆細胞(計約500万個)を、定位脳手術により、患者の脳の線条体部分(左右両側)に移植する。

ドパミン神経前駆細胞は、ドパミン神経細胞に分化する手前の細胞で、パーキンソン病モデル動物を用いた研究から、ドパミン神経前駆細胞を移植することによって脳内に成熟ドパミン神経細胞を効率的に生着させられることが明らかになっている。

手術は、頭部を固定した上で頭蓋骨に直径12mmの穴を開け、そこから注射針のような器具を用い、細胞を注入する。

細胞移植後に免疫反応が起こる可能性があるため、本治験では、既に臓器移植等において臨床実績のあるタクロリムスを細胞移植時の免疫抑制剤として使用する。

実施予定人数は7人で、移植後2年間観察する。

本治験は、国立研究開発法人 日本医療研究開発機構(AMED)と大日本住友製薬より支援を受けて実施される。

治験が成功すれば大日本住友製薬が開発を引き継ぎ、実用化を目指す

ーーー

大日本住友製薬は2018年3月1日、吹田市の総合研究所内に建設中の再生・細胞医薬製造プラント「SMaRT」(Sumitomo Dainippon Manufacturing Plant for Regenerative Medicine & Cell Therapy)が竣工したと発表した。

本施設は、他家iPS細胞由来の再生・細胞医薬品専用の商業用製造施設としては世界初。

同社は産学の連携先と、加齢黄斑変性、パーキンソン病、網膜色素変性、脊髄損傷等を対象に、他家iPS細胞を用いた再生・細胞医薬事業を推進しており、本施設では、治験薬製造と初期の商用生産を行う。

京都大学iPS細胞研究所と大日本住友製薬は2011年4月、難治性希少疾患の治療法創成を目的とする5年間の共同研究を行うことについて合意し、共同研究契約を締結した。
研究期間は2011年3月〜2016年3月(5年間)で、両者は疾患特異的人工多能性幹細胞(iPS 細胞)を用いて、病気が進行するメカニズムを解明し、疾患特有の疾患関連シグナルを同定してその経路を阻害する治療薬を探索する。
大日本住友製薬は、両者の共同研究で探索した化合物の評価・最適化・合成展開を行う。

大日本住友製薬と理研認定ベンチャーのヘリオス(旧称 日本網膜研究所)は2013年12月2日、再生・細胞医薬事業に関する提携を発表した。
加齢黄斑変性等の眼疾患を対象としたiPS細胞由来網膜色素上皮細胞(RPE細胞)を用いるもので、世界初のiPS細胞技術を用いた再生・細胞医薬事業に向けたもの。

2013/12/4  大日本住友製薬と理研認定ベンチャーのヘリオス、iPS細胞由来医薬品を共同開発

京都大学 iPS細胞研究所(CiRA)と大日本住友製薬は2017年8月1日、戸口田淳也教授、池谷真准教授を中心とするグループが iPS細胞を使って、進行性骨化性線維異形成症(FOP)の異所性骨化のメカニズムを解明し、それを抑える薬の候補としてラパマイシンを同定したと発表した。

2017/8/3    京大が iPS創薬の世界初の治験開始

 

 

 


2018/7/31 BHP、米国の陸上石油・ガス資産全てを売却 

BHP は7月26日、米国のEagle Ford、Haynesville、Permian 及びFayetteville の陸上石油・ガス資産全てを合計108億ドルで売却する契約を締結した。

売却の概要は下記の通りで、今後、所定の手続きを経て、10月末までに取引が完了する見込み。7月1日以降の経済的利益が買い手に移る。

BHPでは、事業を簡素化して強化し、株主価値を高めるという長期計画に沿い、2017年8月に米国のシェール事業の高値での売却を決定し、今回2社と契約を結んだ。

今後、売上高、利益の約4割を占める鉄鉱石や、電気自動車の普及で需要増が見込まれる銅など中核事業に経営資源を集中する。

同社では借入金は低位にあり、売却収入の株主還元を考えている。損益面では、税引前29億ドル、税引後で28億ドルの減損損失を計上する。

売却概要:

売却先 売却子会社 石油・ガス田 生産量 内訳 売却額
BP American Production Company Petrohawk Energy Corporation Eagle Ford 90,000 boe/d 70% liquids $10.5 billion
Haynesville 60,000 boe/d all gas
Permian 40,000 boe/d 70% liquids
MMGJ Hugoton III, LLC
(Merit Energy Company子会社)
BHP Billiton Petroleum (Arkansas) Inc
BHP Billiton Petroleum (Fayetteville) LLC
Fayetteville 37,000 boe/d   $0.3 billion

BHP Billitonは外国からの米国のシェールへの最大の投資者であり、4つのシェールオイル (Eagle Ford、Permian、Haynesville、Fayetteville)で権益を有している。

BHPは2011年2月に、米天然ガス大手Chesapeake Energyからアーカンソー州のFayetteville Shaleの権益全てとパイプラインを47.5億ドルで買収した。

2011/2/23 BHP Billiton、米シェールガス鉱区を買収 

2011年7月には、テキサス、ルイジアナ両州に約100万ネットエーカーのオイルシェール資産を保有するPetrohawk Energy の全株式を現金でのTOBで取得する契約を締結した。
買収金額は121億ドルで、借入金込では151億ドルになる。

この買収で、BHPはテキサスの
Permian BasinEagle Ford、テキサスとルイジアナにまたがるHaynesvilleの権益を取得した。

2011/7/19  BHP Billiton、米のオイルシェール企業 Petrohawk Energy を買収

同社は2016年1月15日、米国のオンショアエネルギー資産(シェールガス)について減損処理すると発表した。72億ドル(税引き後で49億ドル)という過去最大の減損処理となる。

2016/1/17 東京ガスとBHP Billiton、米国のシェール関連で減損処理

ーーー

BPはBHPからの3つの石油・ガス田の買収により、米国の石油・ガス事業を拡大する。

BPの現在の米国での生産は744千boe/d (石油換算日量バレル)で、本土の陸上が315千boe/d 、メキシコ湾が315千boe/d 、アラスカが109千boe/d となっている。

同社は7月3日にアラスカの Greater Kuparuk 油田の39.2%の権益をConocoPhillips に売却した。アラスカのPrudhoe Bay油田に専念する。

これに今回の取得 190千boe/d を差し引きすると、米国での生産は約885千boe/d に拡大する。

 


次へ

最新分は http://blog.knak.jp