2019/8/7
中国、米農産品の購入を一時停止
中国商務部は8月6日未明、米国からの農産品の購入を一時停止すると発表した。トランプ米大統領が対中制裁関税「第4弾」の発動を表明したことへの制裁措置としている。
発表文:
米国は中国の米国向け輸出の3000億ドル分に10%の追加関税を課すると発表した。これは中国と米国のトップの会談の重大な違反である。
中国の関税委員会は8月3日以降、新たに購入する米国農産品に追加関税を課することを排除しない。中国の関連企業は米国農産品の購入を停止した。
中国市場は大規模であり、米国産の高品質農産物の輸入には将来性がある。しかし、米国側が首脳会談の共通認識を真摯に実行し、発言の信頼性を高め、約束したことを実行し、両国の農業協力に向け必要な条件を整えることを望む。
トランプ大統領は、中国が約束した米国農産品を購入していないと主張するが、人民網によると、中国の国家発展改革委員会の叢事務局長は8月5日、次の通り述べた。
中米両国トップの大阪での会談後、中国は米国産農産品の調達をめぐり協力への誠意を積極的に示し、大きな進展を遂げたが、米国産農産品に競争力が欠如するといった現実的な問題も存在する。
大阪会談から7月末までの間に、米国産大豆227万トンが新たに船積みされて中国に運ばれ、8月には200万トンが積み込まれる予定で、双方の企業が契約調印した大豆1400万トンは、9月に積み込む予定の30万トンを残すばかりとなった。
7月19日より中国の関連企業は米国の大豆、コーリャン、小麦、トウモロコシ、綿花、乳製品、干し草、エタノール、ワイン・ビール、果物、果物加工品などの農産品の調達について、持続的に価格問合せを行ってきた。
8月2日夜までに、大豆13万トン、コーリャン12万トン、干し草7万5千トン、小麦6万トン、豚肉・豚肉加工品4万トン、綿花2万5千トン、乳製品5700トン、果物400トン、果物加工品4500トンの契約に調印した。
契約が成立した農産品はすべて、中国企業が国務院関税税足委員会に輸入関税の上乗せ対象リストから外すよう申請している。
現在、エタノール、トウモロコシ、大豆油、ワイン、ビールなどの農産品の取引がまだ成立していない主な原因は、これらの米国製品に価格競争力が欠けていることにある。
エタノールの場合、昨年3月と7月、米国が中国に対して発動した通商拡大法232条と通商法301条に基づく調査に対抗するため、中国は米国から輸入されるエタノールについて通常の30%の関税をベースに、さらに15%と25%の上乗せを行い、現在の関税率は70%となっている。
米国の輸出企業の見積もりでは、301条調査に対抗して上乗せした25%の関税を除外しても、輸入関税コストを含んだ価格は中国国内市場の価格より30%以上高く、ビジネスにおける操作の可能性がない。
トウモロコシの場合、米国の輸出企業の見積もりでは、上乗せされた関税を除外しても、中国に到着して輸入関税を支払った後の価格は中国国内価格よりも高く、企業は基本的に利益が出ない。
また中国のトウモロコシ市場は供給にゆとりがあり、中国の飼料企業のニーズは相対的に弱く、企業は調達にそれほど積極的ではない。
また大豆の場合、以前は100万トン単位で輸入されていたが、今回新たに契約が成立したのはわずか13万トンで、これは主に中国国内で大豆飼料と大豆油脂加工のニーズが旺盛ではないこと、中国企業の海外産大豆の調達の意欲が低いことが原因だ。
また米国産大豆はタンパクと油脂の含有量がブラジル産を下回るため、価格はブラジル産を下回るべきだが、現在の価格はブラジル産に接近しており、中国市場では価格競争力がなく、従って取引量も少ない。
2019/8/8 韓国公取委、自動車部品カルテルで日本企業に課徴金
韓国公正取引委員会は8月4日、同国の自動車メーカーへの部品納入で談合したとして、三菱電機など日本企業4社に課徴金計92億ウォン(約8億1400万円)を課し、三菱電機など2社を検察に告発したと発表した。
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課徴金
(億ウォン) |
告発 |
三菱電機 |
80.90 |
〇 |
日立オートモティブシステムズ |
4.15
|
〇 |
デンソー |
4.29
|
|
ダイヤモンド電機 |
2.68
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合計 |
92.02 |
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2004年から2014年にかけて、韓国でオルタネーターとイグニションコイルの価格維持、値上げのため共謀した。
三菱電機、日立オートモティブシステムズ、デンソーの3社はオルタネーターについて、値下げ要請に共同で対応するため、関連情報の交換で合意した。需要家が価格見積もりを要請した場合、3社は集まり、価格を決めた。
共謀の結果、三菱のオルタネーターがRenault SamsungのQM5 向けに決まった。
逆に、Hyundai MotorのGrandeur HGとKia MotorsのK7
VGなどに搭載されるオルタネーターはデンソーに決まった。
韓国のオルタネーター市場では、Valeo Group、Borg
Warner、デンソー、三菱電機が争っている。
一方、ダイヤモンド電機、三菱電機、デンソーは Hyundai MotorのGrandeur
HGとKia MotorsのK7
VG向けのイグニションコイルをデンソーが販売することで合意した。需要家が見積もりを求めた際に、ダイヤモンドは降り、三菱電機は意図的にデンソー価格より高い価格を提示した。
韓国のイグニションコイル市場ではデンソーと韓国のYura Techが最大である。
2010年代初めに日本の自動車部品メーカーによるグローバルカルテルが明らかになると、海外の競争当局は調査に乗り出した。この結果、米国やEUなどが三菱電機や日立オートモティブシステムズなどに罰金や課徴金を科すなどしている。
2012/11/24
公取委、自動車メーカー発注の自動車用部品コンペ参加業者に 排除措置命令と課徴金納付命令
2016/2/1
EU、自動車部品カルテルで日本メーカーに制裁金
米国については、各社別々に摘発しており、4社はいずれも制裁金を払っている。 最終リスト
韓国公取委は2014年から調査を開始、このほど、これら日本企業に対する制裁方針をまとめ、先月15日に発表する予定だった
。
日本政府による韓国のホワイト国からの除外を巡り、韓国政府が対話を通じた解決を日本側に求めていたため、政治的判断で発表を先延ばしにしていた。
しかし、「日本が国際社会の懸念にもかかわらず経済報復をするという状況の中、発表することになった」という。
2019/8/9 米政権、FRBに大幅利下げを要求
米連邦準備理事会(FRB)は7月31日の米連邦公開市場委員会(FOMC)で、短期金利の指標であるフェデラルファンド(FF)金利の誘導目標を、年2.25~2.50%から年2.00~2.25%に引き下げた。
但し、パウエル議長は「景気循環の途中の調整」と述べ、長期の利下げ局面入りは否定した。
利下げの理由を「海外経済の動向とインフレ圧力の停滞」とし、景気悪化を未然に防ぐ「予防的利下げ」とした。
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2008/10 |
2.00%→1.50%→1.00% |
2008/12 |
0.00%~0.25% |
↓ |
0.00%~0.25% |
2015/12 |
0.25%~0.50% |
2016/12 |
0.50%~0.75% |
2017/3 |
0.75%~1.00% |
2017/6 |
1.00%~1.25% |
2017/12 |
1.25%~1.50% |
2018/3 |
1.50%~1.75% |
2018/6 |
1.75%~2.00% |
2018/9 |
2.00%~2.25% |
2018/12 |
2.25%~2.50% |
2019/7 |
2.00%~2.25% |
|
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付記
2019/9 |
1.75%~2.00% |
2019/10 |
1.50%~1.75% |
大幅利下げを要求していた米政権はこれにいら立ちを示した。
Peter Navarro大統領補佐官(通商製造政策局長)は8月6日、FRBに対し年内にあと75~100bp
(0.75%~1.00%) の利下げを実施するよう要求した。
「パウエルFRB議長は就任後
計1%利上げしたが,、利上げ幅が大きく、急ぎすぎた。経済成長を犠牲にした」と語った。
パウエル氏が議長就任後に引き上げた分の政策金利を下げるよう促した形だ。
Powell 議長は2018年2月25日に就任した。
2018年3月、6月、9月、12月に各0.25%、合計 1.00% 引き上げた。今回 0.25% 下げた。
トランプ大統領は8月7日、ツイッターへの一連の投稿で、FRBを強く批判した。
初めに、同日、インド、ニュージーランド、タイが利下げしたことに触れた。
“Three more Central Banks cut rates.”
米国の問題は中国ではない。今までより強力で、資金は米国に流入している。一方、中国からは企業が逃げ出しており、人民元は包囲されている。
Our problem is not China - We are
stronger than ever, money is pouring into the U.S. while China is losing
companies by the thousands to other countries, and their currency is
under siege -
我々の問題はFRBだ。引き締めをやり過ぎた誤りを認めようとしない。
Our problem is a Federal Reserve that
is too proud to admit their mistake of acting too fast and tightening
too much (and that I was right!).
FRBはより大幅かつ早急な利下げを行い、そのひどい量的引き締めを即刻停止しなくてはならない。
They must Cut Rates bigger and
faster, and stop their ridiculous quantitative tightening NOW.
Yield curve is at too wide a margin,
and no inflation!
無能ぶりは見るに堪えない。いとも簡単に対処できるというのに。
Incompetence is a terrible thing to
watch, especially when things could be taken care of sooo easily.
いずれにせよ、われわれは勝利する。しかし、
米国は他国と競っており、いずれの国も米国の犠牲の上に成功したいと考えている。このことを米金融当局が理解していたら、状況はずっと簡単なのに、彼らは理解しなかったし、今もしていない。
We will WIN anyway, but it would be
much easier if the Fed understood, which they don’t, that we are
competing against other countries, all of whom want to do well at our
expense!
Trump大統領は、8月5日に人民元のレートが7元台に下落したのを受け、呟いた。FRBに暗にドル安に誘導する利下げを要求している。
中国は元の価値を大幅に下げた。これは為替操作だ。FRBよ、聴いているか?
China dropped the price of their currency to an almost a historic
low.
It’s called “currency manipulation.” Are you
listening Federal Reserve?
This is a major violation which will greatly weaken China over time!
中国の為替操作の結果、追加関税は中国が払っていることとなる。中国は為替操作で米国の職を奪ってきた。今後は許さない。何年も前に止めるべきだったのだ。
Based on the historic currency manipulation by China, it is now even
more obvious to everyone that Americans are not paying for the Tariffs –
they are being paid for compliments of China, and the U.S. is taking in
tens of Billions of Dollars!
China has always used currency manipulation to steal our businesses
and factories, hurt our jobs, depress our workers’ wages and harm our
farmers’ prices.
Not anymore!
米中貿易摩擦の悪化や世界の需要後退を背景とした景気後退リスクを踏まえ、市場ではFRBが年内にあと3回の利下げに動くとの観測が高まっている。
付記
米連邦準備理事会(FRB)は9月18日の米連邦公開市場委員会(FOMC)で政策金利を0.25%引き下げ、7月に続く利下げに踏み切った。
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2018/3 |
1.50%~1.75% |
2018/6 |
1.75%~2.00% |
2018/9 |
2.00%~2.25% |
2018/12 |
2.25%~2.50% |
2019/7 |
2.00%~2.25% |
2019/9 |
1.75%~2.00% |
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2019/8/10 キリンホールディングスとファンケル、資本業務提携
キリンホールディングスとファンケルは8月6日、資本業務提携契約を締結したと発表した。
背景は次の通り。
キリングループ:
長期経営構想「キリングループ・ビジョン2027」では、「酒類メーカーとしての責任」を果たすことを前提に「健康」、「地域社会・コミュニティ」、「環境」の3つを重点課題として選定した。
このうち、「健康」については、ライフサイエンス分野に進出してからは、酒類・飲料による「食領域」
と医薬事業による「医領域」の双方から社会課題を解決してきたが、「食領域」と「医領域」の中間領域にあたる「医と食をつなぐ事業」を立ち上げ、次世代の成長の柱として育成していく方針を打ち出した。
本年4月には
従来「医領域」にあった
協和発酵バイオを「医と食をつなぐ領域」の中核事業会社に位置づける再編を完了した。高機能アミノ酸、免疫、脳や腸内環境に関する機能性素材などを強みとして
最大限に活用する。
協和発酵キリンは2019年4月に、連結子会社の協和発酵バイオの株式の95%を 親会社のキリンHDに約 1,280 億円で譲渡した。
協和発酵バイオの事業は次の通り。
ファインケミカル事業:各種医薬用アミノ酸、核酸関連物質、医薬品原料等
ヘルスケア事業:各種アミノ酸、ビタミン、カロチノイド等の機能性食品素材、健康食品
2019/2/8
キリンホールディングス、協和発酵バイオを子会社に
ファンケル:
2018年に長期ビジョン「VISION2030」を発表し
、「美」と「健康」の領域での企業集団になることを目指し、確かな機能を持つ健康食品を提供することで、「健康寿命の延伸」と医療費の削減に貢献することが使命であると考える。
このように、「健康」に関する社会課題の解決を通じて成長を目指すキリンの考え方と、「健康寿命の延伸」という大きな社会課題の解決に取り組むことで成長を目指すファンケルの考え方は共通しており、両社の目指す理念や方向性は一致している。
資本業務提携の概要は次の通り。
(1)業務提携の内容
①素材・商品・ブランド開発
②共同研究・事業開発の推進
③インフラの相互利用
生産面での協業、チャネルの相互乗り入れ(キリンの自動販売機チャネル、ファンケルの直販チャネル等の活用)
(2)資本提携の内容
キリンによるファンケル株式の購入 取得総額は1,293億円、議決権割合
33.0%
(
3)キリンによる役員の派遣 常勤取締役1名、非常勤取締役1名および常勤監査役1名
2018/8/12 米国防権限法
8月13日に発効、Huaweiなど中国5社を米政府調達から排除
トランプ米政権は8月7日、昨年8月に成立した2019年度米国防権限法(NDAA2019)が8月13日に発効すると発表した。
2019年度米国防権限法(NDAA2019)は、指定された製品の購入禁止を国防総省以外の政府機関にも拡大するもので、禁止対象製品は次の通り。
(A)
華為技術(Huawei
Technologies)と 中興通訊(ZTE)製の通信機器
(B)
海能達通信(Hytera
Communications)、杭州海康威視数字技術(Hangzhou
Hikvision Digital Technology)、浙江大華技術(Dahua
Technology Company)製のセキュリティ用のビデオ監視・通信機器
(C)
国防長官が国家情報長官、FBI局長との協議で、中国政府の影響下またはつながりがあるとみなす企業の通信機器及びビデオ監視システムも同様の扱いとなる。
現時点では、これに該当するものはない。
禁止は2段階に分かれ、今回は第1段階である。
第1 段階(発効日の1年後=2019年8月13日以降)
米政府機関(連邦政府、軍、独立行政組織、政府所有企業)が5社の製品や、5社が製造した部品を組み込む他社製品を調達することを禁止
問題は第2段階(発効日の2年後=2020年8月13日以降)で、5社の製品を社内で利用している世界中の企業との取引を禁止する。米政府機関に収めている製品・サービスが通信機器とは一切関係のない企業でも、5社の製品を使っておれば米政府機関との取引が禁止される。
既に世界の企業で多くの中国製通信機器が利用されている。企業が米国政府と取引を続けたい場合には、問題視されている機器の利用を一切やめ、その旨を米政府に報告・誓約しなければならなくなる。
2018/12/11
2019年度米国防権限法(NDAA2019) --- Huawei、ZTE等の米政府機関との取引からの排除
華為技術(Huawei)は本年3月7日、同社の製品を米政府機関が調達することを禁じる2019年度米国防権限法が米国の憲法違反だとして、同社の米国子会社の本社があるテキサス州の裁判所で米政府を提訴したと発表した。
中国の王毅国務委員兼外相は3月8日、華為技術(Huawei)の米政府に対する訴訟を支援すると表明した。
2019/3/7 Huawei、米政府を提訴
今回の発表を受け、Huawei は8月㏧、メディアへの声明を発表した。
我々は本日のニュースを意外に感じてはいない。これは米国の『国防権限法2019』の実施条例に過ぎない。Huaweiは引き続き米連邦裁判所においてこの禁止令の合憲性を問うていく。
『国防権限法2019』及びその実施条項が Huaweiに不当行為があったと証明するいかなる証拠も存在しない状況において、Huaweiに対し懲罰的な行動を取るのは、原産国が設けた貿易障壁に基づいており、米国の電気通信のネットワークとシステムのセキュリティ保護にとっていかなる役にも立たず、最終的に損害を被るのは米国の農村地域でHuaweiのネットワークに頼っている数多くのユーザーたちだ。
ーーー
これとは別に、Trump
大統領は本年5月15日、米企業が安全保障上リスクがある企業の通信機器の調達を禁じる大統領令に署名した。
非常に抽象的で、米政府が問題だと思う企業をいつでも指定できるように見える。名指しはしていないが、華為技術(Huawei)などが念頭にあると報じられている。
米商務省は同日、華為技術(Huawei)に対する米国製ハイテク部品などの事実上の禁輸措置を発表した。
2019/8/13 イタリア連立政権、崩壊の危機
昨年6月に発足したイタリアの「五つ星運動」と「同盟」の連立政権が崩壊の危機に瀕している。
左派「五つ星運動」のLuigi Di Maio党首(副首相・産業相)と極右「同盟」のMatteo
Salvini党首(副首相・内務相)は、インフラや移民などのさまざまな政策を巡ってたびたび対立していた。
「同盟」のMatteo Salvini党首は8月8日に「政権は壊れた」と述べ、Giuseppe
Conte首相に総選挙の実施を求めた。同盟は8月9日、内閣不信任案を上院議会に提出した。
イタリア議会は既に夏季休会に入っているが、Salvini
氏は今週にも内閣不信任案を審議をするように要求した。
一方、 Conte首相はSalvini
氏に対し、議会を招集するのは同氏ではないと突き放し、政府の活動を突如妨害する理由について、「有権者に説明し、正当性を示す必要がある」とクギを刺した。
現地通信社は、早ければ8月20日にも上院が開会され、Conte首相の退陣表明が行われる可能性があると報じた。その後数日のうちに議会解散もあり得るとしている。
憲法では、議会解散後50~70日以内に選挙を実施しなければならないと定められている。
秋の選挙となれば、2020年の予算についてEUとの交渉のさなかとなる。
付記
イタリア議会の上院は8月13日、与党の「同盟」が提出していた内閣不信任案について、14日に審議するよう求める同党の要請を拒否し、政権危機を巡る議論を来週に先送りした。
上院は審議を見送る代わりに、コンテ首相が8月20日に政権危機について演説することを決めた。
付記
イタリアのコンテ首相は8月20日、議会上院で演説し、辞意を表明した。連立政権をつくる同盟が内閣不信任案を提出したことで政権運営は困難と判断した。
マッタレッラ大統領がコンテ氏の辞表を受理すれば、21日から各党と新政権樹立に向けた協議を始めるとみられる。大統領は議会の解散権を持つ。各党との協議が円滑に進まない場合、解散して総選挙を実施する可能性もある。イタリアの政治情勢は混迷が避けられない。
付記
イタリアで、中道左派「民主党(PD)」とポピュリスト(大衆迎合主義者)政党「五つ星運動」が8月28日、新たな連立政権を樹立することで合意した。
セルジオ・マッタレッラ大統領は、連立協議の期限としていたこの日、両政党の党首と首都ローマで会談した。
両政党は、ジュゼッペ・コンテ首相を次期首相に推すことで合意、大統領はコンテ首相に再び組閣を要請した。
連立政権は、次期総選挙が開かれる2023年まで続くこととなる。
付記
イタリアのコンテ首相は9月4日、「五つ星運動」と「民主党」の2党連立による組閣名簿をマッタレッラ大統領に提出した。これを受け、大統領府は5日に新閣僚の就任宣誓式を行うと発表した。
両党は政策合意で、EUとの連携を打ち出した。
ーーー
2018年3月4日の総選挙では、パオロ・ジェンティローニ首相の「民主党」が大敗した。
総選挙後、政治の空白が続いていたが、反EUの「五つ星運動」と「同盟」が連立することとなった。
|
2018年選挙 |
元老院
(上院) |
代議院
(下院) |
五つ星運動 |
112 |
+58 |
227 |
+118 |
同盟 |
58 |
+41 |
125 |
+107 |
(小計) |
(170) |
|
(352) |
|
民主党 |
53 |
-52 |
112 |
-185 |
フォルツァ・イタリア |
57 |
-41 |
104 |
+6 |
その他 |
35 |
-6 |
62 |
-46 |
合計 |
315 |
|
630 |
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(過半数) |
(158) |
|
(316) |
|
6月1日に両党の推す法学者Giuseppe
Conteの内閣が発足した。首相は学者で政治経験がなく、両党の主張をうまく調整できるか、疑問視された。
反EUの立場では同じだが、政治姿勢の異なる2つの党の連立である。連立の早期瓦解の可能性も指摘されていた。
「五つ星運動」
大衆の不満に率直な賛同を示す人民主義政党(ポピュリズム)として行動。反政党政治(直接民主主義)やEU離脱など急進的政策を掲げ、政治不信の募る若年層の間で急速に台頭した。五つの星は社会が守り抜くべき概念(発展・水資源・持続可能性のある交通・環境主義・インターネット社会)を指している。
失業者らへの最低所得保障など「ばらまき型」の経済刺激策を重視する。
「同盟」
右派ポピュリズム政党。イタリア北部の郷土主義政党「北部同盟」であったが、近年は反EUや排外主義などが支持基盤に変わりつつある。
EUの移民政策を批判、違法移民の強制送還の強化や、難民が域内で最初に到着した国で保護申請することを義務づけたEUのダブリン規則の見直しを強く求める 。
2018/6/5
イタリアの混迷
ーーー
もともと「五つ星運動」は左派、「同盟」は右派で、政策的にはかなり違いが大きい。共通していたのは、財政規律など、EUの各種ルールに従わずイタリアのやりたいようにやっていくという点だった。
最近になって対立が深まった大きな要因に、高速鉄道の建設がある。「同盟」は鉄道建設に賛成で、「五つ星運動」は反対だったが、議会では他党に賛成派が多く、最終的には鉄道建設は進められることになった。
「五つ星運動」は4月に、「同盟」幹部の汚職疑惑で連立崩壊の危機をもたらしていると批判した。同盟のSalvini党首の経済顧問が汚職容疑で捜査対象となった。
Salvini氏が強気に出ているのは「五つ星運動」との対立が深まったからだけではなく、最近の世論調査で「同盟」の支持率が高まっていることがある。解散総選挙を行えば五つ星運動を上回る第1党に躍進できる可能性がある。
解散総選挙が行われない場合、連立解消に動くと示唆している。同党より小規模で同じく右派の「フォルツァ・イタリア」との連立政権樹立の可能性も噂されている。
連立政権が解消になったり解散総選挙になると、イタリアの政治が不安定化し、影響はEU全体に広がる。
2019/8/14
JDIが債務超過に
経営再建中のジャパンディスプレイは8月9日、4-6月期の決算を発表した。
顧客の在庫調整や米中貿易摩擦の影響を受けた需要減により売上高が減少したほか、白山工場の減損を含む517億円の事業構造改善費用を特別損失として計上した。
この結果、連結純損益は833億円の赤字となり、債務超過となった。
JDIは6月12日、構造改革の実施と、合わせて執行体制の刷新に関する発表を行った。
1)
今後の需要の大幅回復の見込みが立たないモバイル事業の縮小と、これに伴う白山工場の一時稼働停止
及び茂原工場後工程ラインの閉鎖
2) 人員削減
3) 役員報酬及び社員給与等の削減
4) 執行体制の刷新
詳細は 2019/6/17
ジャパンディスプレイ、苦境に
問題の増資問題については下記の通り。
6月27日、中国の嘉実基金管理から合計522億円のコミットメントレターを受領したと発表した。
JDIの需要家の米国のAppleからの支援の出資100百万ドルを含んでいる。
香港のOasis
Management からの150~180百万ドル
については6月28日に出資決定の通知を受領した。
7月12日にHarvestは追加で100百万ドル出すこと、為替レートなどで合計が800億円未達の場合、差額をOasisが出すとの発表があった。
これにより800億円の目途が立ったため、臨時株主総会を8月29日を目処に開催するとした。
2019/6/29
JDI、一部の支援は決まるが、依然、不安 及び付記
JDIは8月7日、中国ファンドなどからの最大800億円の資金支援に関し、資本業務提携の正式な契約を結んだと発表した。
契約が想定よりも遅れたため、臨時株主総会は8月29日から9月27日に変更する。
8月9日夕方にファンド側と東京都内で共同記者会見を開く予定としたが、「健康上の理由もあり、来日できなかった」ため中止となった。
「関係当局の許認可などが得られる時期が確定できない」として、払い込みの期限を今年12月30日から来年の8月28日に延ばす。
支援の前提条件としては①中国の政府当局からの介入がない②顧客の米アップルから製品購入の大幅削減の通知を受けていない③JDIの株価の終値が30円以下になったことがない-などとなっている。
JDIでは、筆頭株主で政府系ファンドのINCJ(旧産業革新機構)から新たに200億円の融資を受け、当面の運転資金に充てる。返済期限は2020年8月8日としている。
現在の経営実績、アップルの購入見通しなどから考えると、ファンドからの実際の入金があるまでは安心できない。
出資条件に、株価の終値が30円以下にならないというのがあるが、8月13日の連休明けの株価は一時、前週末から11円安の59円をつけた。
また、800億円の入金があっても、現在の経営状態からはすぐに資金不足になるとみられている。
付記
中国ファンドの嘉実基金管理グループが、支援を見送る方針をJDIに伝えたことが9月26日、わかった。複数の交渉関係者が明らかにした。
JDIの再建策は事実上、白紙に戻る。
JDIは同日夜、Harvest
Techより、JDIのガバナンス(企業統治)に対する考え方に「重要な見解の不一致が生じた」として、企業連合からの離脱を通知してきたと述べた。
2019/8/14 米の対中関税第4弾、スマホなど12月15日に先送り
米通商代表部(USTR)は8月13日、中国から輸入する約3000億ドルへの10%の追加関税について、詳細を発表した。
第4弾の関税自体は予定通り9月1日に発動するが、健康や安全、安全保障に関わる製品は除外する。また、スマートフォンやノートパソコン、玩具など特定品目の発動を12月15日に先送りする。
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トランプ米政権は5月13日、中国への制裁関税の第4弾として、携帯電話など約3000億ドル分の中国製品に最大25%の関税を課す計画を正式表明した。
対象は約3800品目で、金額ベースでは Apple
の「iPhone」など携帯電話(432億ドル)が最も多く、次にノートパソコン(375億ドル)などがある。衣類など消費財 も多い。
生活や産業への影響が大きい一部の医薬品やレアアースは除外する。
適用除外の対象には冷蔵庫に使用される部品やレストランで使用されるドリンクミキサー、自動車のカメラ部品なども含まれる。
6月下旬まで産業界の意見を聴取する予定で、発動は6月末以降になる。 意見聴取次第で、除外品目を増やしたり税率も25%から圧縮したりする可能性がある。
トランプ大統領と習近平国家主席は6月29日、大阪市内で会談した。
会談で、中米が平等と相互尊重に基づいて経済貿易協議を再開することで合意した。米側は、中国の輸出品に再び新たな関税を上乗せしないと表明、両国の経済貿易チームは具体的な問題について討議する。
2019/6/29 米中首脳会議、「米は追加関税課さず」
米中両国は7月30~31日に中国・上海で高官級の通商協議を開催、帰国した米側の交渉団から報告を受けた。
トランプ大統領は8月1日、中国からの輸入品3千億ドル分を対象とする追加関税「第4弾」を9月1日に発動すると表明した。スマートフォンなど従来は追加関税の対象外だった輸入品のほぼ全てに、10%の関税を上乗せする方針。
2019/8/2 トランプ大統領、9月1日に対中関税第4弾 ツイートで表明
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今回、意見聴取の結果などを折り込み、実施計画を発表した。
5月中旬に発表した約3800品目の原案から、健康や安全、安全保障に関わる製品は除外した。
スマホやノートパソコン、ゲーム機、特定の玩具、コンピューター用モニター、特定の靴や衣服など代表的な消費財への発動を12月15日に先送りする。
第4弾は消費財が4割を占めており、実際に発動すれば米国の個人消費や中国を中心としたサプライチェーンへの影響が甚大である。
トランプ米大統領は同日、追加関税を一部先送りする理由について「クリスマスシーズンのためにやる。万が一にも関税の一部が米国の消費者に与えうる影響を考えた」と語った。
また、主要品目の発動を12月に延期することで、米中両政府には協議の余地が生まれる。
具体的な品目は次の通り。
2019/9/1 発動品目 List
4A – Effective September 1, 2019
2019/12/15 発動品目 List
4B – Effective
December 15, 2019
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