2019/5/20 米、輸入自動車・部品の 通商拡大法232条の 判断延期
米国は5月17日、輸入自動車や部品に対する関税の判断を最大6カ月延期すると正式発表した。交渉相手の日本やEUに猶予を与える。
トランプ大統領はライトハイザーUSTR代表に対し、交渉を加速させるとともに180日以内に報告するよう指示し、交渉で合意できない場合、追加措置が必要かなどを判断するとした。
一部の輸入車が「米経済を弱め、国の安全保障を脅かしている」との商務省の見解に同意したことを明らかにし、「輸入を減らして国内の競争環境を改善する必要がある」とし、強い国内自動車産業は米国の軍時的優位性に極めて重要との認識を示した。
ーーー
本件は昨年5月のトランプ大統領の決定に端を発する。
トランプ大統領は2018年5月、自動車、トラック、部品の輸入を巡り、通商拡大法232条に基づく調査開始を検討するよう商務省に指示した。
「自動車や自動車部品など中核的な産業は国力の重要な要素だ」と主張し、これらの輸入が米国の安全保障を脅かすかどうかを判断するとした。
米商務省は5月23日、乗用車やトラックなどの車両や関連部品の輸入が国内の自動車産業を侵害し、安全保障を脅かしたかどうか通商拡大法232条に基づき調査を開始すると発表した。
鉄鋼・アルミニウム輸入制限と同様の手段を自動車にも用いる。
2019年2月17日、米商務省は、通商拡大法232条に基づく自動車関税に関する報告書をトランプ大統領に提出した。
その詳細は公表されていないが、恐らくは「追加関税が妥当」との内容が含まれているとの見方が多い。
全輸入車に対して最高25%の関税を検討するほか、電気自動車に代表される先進技術を使った自動車部品も対象とされる可能性がある。
法律によれば、大統領は報告書提出から「90日以内」に内容を精査した上で、報告書の勧告する措置に関して最終決定する必要がある。その上で大統領による最終決定から「15日以内」にその措置が実施に至ることが法律で求められている。
2月17日の90日後は5月18日になる。大統領の判断が注目されていた。
ーーー
この問題については、EUと日本は米国と交渉を続けている。
1) EU
米政府は2018年5月31日、カナダ、メキシコ、EUに対し鉄鋼・アルミニウムへの輸入関税を適用すると発表した。適用は午前0時からで、税率は鉄鋼が25%、アルミニウムが10%。
2018/6/2 米、EU・カナダ・メキシコに鉄鋼・アルミ関税発動
これを受け、EUの欧州委員会は6月6日、対抗措置として、米国からの輸入品に報復関税を課す方針を正式決定した。
EUは被害を2017年ベースで64億ユーロ(71億米ドル)とし、直ちに28億ユーロ(32億ドル)相当の製品に課税する。対象は、鉄鋼・アルミ製品のほか、オレンジジュース、バーボン、たばこ、化粧品、シャツ、ズボン、靴、バイク、ボートなど。
これを受け、トランプ大統領は6月22日、「EUが関税や障壁をすぐに取り除かないなら、輸入自動車全てに20%の関税をかける。米国で生産せよ!」と呟いた。
2018/6/7
EU、米国の 鉄鋼・アルミニウム輸入制限への報復関税、7月発動へ
米オートバイ製造大手Harley-Davidsonは6月25日、EUの関税引き上げを受け、欧州向けオートバイの生産を米国から海外に移す方針を明らかにした。
2018/6/27
Harley-Davidson、一部生産を米国外に移転
トランプ米大統領は7月25日、訪米中のJean-Claude
Juncker 欧州委員長との会談後、関税引き下げに向け
EUと協力することで合意したと述べた。
米国とEUは直ちにExecutive Working Group
を設置する。加えて、短期的な対策を検討する。
この間は、どちらかが交渉を取り止めない限り、この合意の精神に反する行動を行わない。
EUは、「相互に追加関税の発動を控える」とし、ロス商務長官も「自動車の追加関税は課さない 」とするが、大統領は「合意の精神に反することはしない」とだけ述べている。
9月を目処に高官級の作業部会の初会合を開き、交渉内容の具体策の検討に入る。120日以内に結果を報告する方針であった。
2018/7/27 米国とEU、関税撤廃交渉へ
しかし、現時点で本件は進展していない。EU加盟国は本年4月に、執行機関である欧州委員会に米国との通商交渉をする権限を認めたが、この権限にはトランプ政権が重視する農業分野は含まれていない。
2) 日本
2018年9月26日、日米首脳会談がニューヨークで行われ、安倍首相とトランプ大統領が「日米物品貿易協定(TAG: Trade
Agreement on Goods
)」の交渉入りで合意した。
TAGは投資・サービス分野などを含む自由貿易協定(FTA)とは異なりモノの関税に絞る。関税撤廃・削減を目指しており、対象は農産品や工業製品などほぼ全ての貿易品目に及ぶ。税関手続きの円滑化などの交渉も含む。 日米はTAG交渉の見通しが立った後、サービスや投資分野でも2国間交渉を始める。
首脳会談に同席した茂木経済再生相は、実際の交渉入りの時期について、米国議会手続きなどがあるため「少し時間がかかる」としたが、「日米が関税について自由で公正な新たな枠組みを構築することは、国際経済全体に良い影響を与える」と述べた。
TAGでは、日本の農産品についてTPP水準を超えた自由化をしないと米国側に念押しした。
また、交渉中は米政権が検討する輸入自動車への高関税措置を発動しない ことを、会談で首相が直接、トランプ大統領に確認した。
2018/9/27 日米、物品貿易協定交渉へ、交渉中は自動車追加関税回避
米中貿易交渉が難航したこともあり、本件も進展していない。 トランプ大統領は4月26日の日米首脳会談で訪日時に調印したいと
発言したが、首相が参院選挙を理由に延期を説得した。
大統領はライトハイザーUSTR代表らの助言を無視し、本格的な協議を先送りすることに応じた。
ーーー
大統領は今回、中国との交渉が挫折したばかりであることもあって、通商拡大法232条の発動を延期した。
しかし、EUとの交渉も、日本との交渉も進まないため、交渉を加速させることを求めた。
輸入自動車と同部品に対する追加関税については、米国の自動車業界からも当初から反対の声が相次いでいた。
2018/6/29 米自動車業界も自動車の追加関税に反対
今回も決定を単に延期しただけのため、懸念や不満の声が相次いでいる。
米自動車工業会(AAM)は「政権が自動車関税の検討を続けることにメーカー各社はなお強く懸念している」と訴えた。
トヨタは、輸入車が「安全保障上の脅威」だとトランプ大統領が判断したことを非難し、「われわれの投資が歓迎されていない」というメッセージを日本メーカーに送ることになると指摘した。
EUのマルムストローム欧州委員(通商担当)は、「我々の自動車の輸出が米国の安全保障上の脅威という考えを断固として拒絶する」と述べた。「自動車を含む貿易交渉の準備がある」とする一方、「WTOのルールに沿わない形ではない」とも指摘した。
米国のWTO違反ともとれる対応には応じられないとの考えを示した。
2019/5/20 米、カナダ・メキシコへの鉄鋼・アルミ関税を撤廃
米国は5月17日、カナダ、メキシコとの間で、安全保障を理由とした鉄鋼・アルミニウム製品への追加関税措置を停止することで合意した。
カナダ、メキシコも、米農産物などにかけてきた報復関税を取りやめることで合意した。
米国とカナダ・メキシコ両国のそれぞれの共同声明の内容は次の通り。
Joint Statement by the United States and Canada on
Section 232 Duties on Steel and Aluminum
Joint Statement by the United States and Mexico on
Section 232 Duties on Steel and Aluminum
1. 米国と両国は2日以内に、 両国からの鉄鉱・アルミ製品への米国のSection
232 に基づく関税と、それに対する両国の報復関税を撤廃する。
2. 米国と両国は Section
232
actionに関するWTOへの相互の提訴を取り下げる。
3. 互いに次の措置をとる。
不当な補助金のついた and/or ダンピング価格での鉄鋼・アルミ製品の輸入の防止
米国と両国以外で生産された鉄鋼・アルミ製品の相手国への輸送の防止
4. 米国と両国は鉄鋼・アルミ製品の貿易を監視する手続きを決める。
5. 鉄鋼・アルミ製品の輸入が過去の数量を著しく超えた場合、協議を要請し、協議の後に輸入国は鉄鋼には25%、アルミ製品には10%の超過関税を課すことができる。その場合、輸出国はその分野(アルミとアルミを含む製品又は鉄鋼)においてのみ報復できる。
6.
(メキシコとの共同声明では下記を追加している。)
鉄鋼輸入の超過を考える場合、米国はメキシコから追加のビレット225千トンを認め、メキシコは米国から追加の 冷間圧延板200千トンを認める。
トランプ大統領は、「カナダとメキシコとの間で合意した。関税をかけられずに米国から輸出できるようになる」と述べた。
米政権は5月17日に安全保障を理由とした輸入車への追加関税についても180日間延期すると決めた。米中通商紛争が激化するなか、USTRなどが対中交渉に注力できる環境を整える。
日本やEUなどについては追加関税を継続する。
ーーー
トランプ米大統領は2018年3月1日、鉄鋼とアルミニウムの輸入増が安全保障上の脅威 になっているとして輸入制限を発動する方針を表明した。
2018/3/9
トランプ大統領、鉄鋼・アルミの輸入制限発動を命令
鉄鋼やアルミニウムの輸入制限は米東部時間2018年3月23日午前0時1分に発動された。同時刻以降に米国に輸入された製品から追加関税を徴収する。
ホワイトハウスはカナダ、ブラジル、メキシコ、EU、オーストラリア、アルゼンチン、韓国への関税を5月1日まで猶予する方針を示した。完全に除外するかどうかは各国と貿易問題などを交渉して決める。
日本は除外対象にならなかった。
2018/3/26
米国、鉄鋼とアルミの輸入制限を発動
トランプ大統領は、猶予期限切れ直前の4月30日、カナダ、メキシコ、EUへの関税の猶予を更に1カ月延長すると発表した。その間に譲歩を迫る。
カナダ・メキシコとはNAFTAの再交渉中。EUは「断固とした対応をとる」としており、難航する見通し。
ホワイトハウスによると、ブラジル、アルゼンチン、オーストラリアについてはほぼ合意に達しており、30日以内に詳細を詰める。
3か国は米国にとって貿易黒字国で、米国への鉄鋼・アルミ流入抑制対策で協力する。
付記
トランプ米大統領は12月2日、ブラジルとアルゼンチンから輸入する鉄鋼とアルミニウムに追加関税を課すと表明した。
両国が「大幅な通貨切り下げをしており、米農家に好ましくない」との持論を展開した。「多くの国が強い米ドルにつけ込まないよう米連邦準備理事会(FRB)も行動すべきだ」と述べ、FRBにも利下げでドル安に誘導するよう改めて要求した。
ブラジルとアルゼンチンは数量制限の受け入れを条件に関税を免除してきたが、トランプ氏は「ただちに」発動すると説明している。
韓国については、3月に米韓FTAの改正・延長交渉で合意した。鉄鋼に関しては25%の追加関税を免除する代わりに、韓国は米国向け輸出数量を減らす。
2018/3/26 韓米FTA改正交渉妥結、鉄鋼の追加関税免除
EUの欧州委員会は2018年6月6日、対抗措置として、米国からの輸入品に報復関税を課す方針を正式決定した。
2018/6/7
EU、米国の 鉄鋼・アルミニウム輸入制限への報復関税、7月発動へ
カナダ政府は2018年6月29日、米国が課した鉄鋼とアルミニウムの関税に対し、7月1日に報復関税を発動すると発表した。
鉄鋼やアルミ、食品など166億カナダドル相当の製品を対象に10〜25%の追加関税を課す。
2018/6/23
米国の鉄鋼・アルミ関税問題のその後
本件については トランプ大統領の強硬策に米国内でも反対が広がった。
2018/6/29 米輸入鉄鋼協会、鉄鋼関税を「違憲」と提訴 、米自動車業界も自動車の追加関税に反対
トランプ米政権は2018年9月30日、北米自由貿易協定(NAFTA)の見直しでカナダと合意したと発表した。メキシコとの間では、8月27日に基本方針に関する暫定合意が成立している
NAFTA(North American Free Trade
Agreement) の名称を「USMCA(the United States-Mexico-Canada
Agreement=米国・メキシコ・カナダ協定)」に変更する。
米国が求める乳製品の市場開放でカナダが一定の譲歩を示した。米国が撤廃を求めてきたNAFTA
19条の紛争解決メカニズムは、新協定ではそのまま残される。
協定は16年間有効で、発効後、原則6年ごとに再評価し、各国が次の16年間の更新意思を示さないと失効する「サンセット条項」も盛り込んだ。
2018/10/4
NAFTA、3カ国協定を維持 、USMCAに改称
米国、メキシコ、カナダの3か国首脳は2018年11月30日、「米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)」に署名した。
しかし、 各国の批准手続きが難航し、年内の成立が困難になりつつあった。米国は2020年に大統領選を控え、カナダも2019年10月に総選挙が予定されており、協定は批准の大幅な遅れで選挙の争点に浮上し、政治に翻弄されることになるのではとみられた。
カナダのフリーランド外相は5月15日、米国が鉄鋼とアルミニウムに対する関税措置を維持している限り、米・メキシコ・カナダ協定(USMCA)の批准には大きな問題があるとの認識を示した。
今回、米国が鉄鋼・アルミの追加関税措置を停止することで前進した。
今後は3カ国の議会が新協定を批准できるかに焦点が移る。米議会は下院で過半数を握る野党・民主党が労働者や環境の保護を強めるよう修正を働きかけており、与野党が妥協点を探る必要がある。
2019/5/21 主要企業の2019年3月決算 − 三菱ケミカルホールディングス
損益は前期を大幅に下回った。
単位:億円(配当:円)
売上高
営業損益
うち
税引前
法人税
税引後
うち
配当
コア
持分法
少数株主
株主帰属
中間
期末
2017/3
33,761
2,686
3,075
170
2,583
-444
2,165
603
1,563
8
12
2018/3
37,244
3,557
3,805
266
3,441
-677
2,764
646
2,118
15
17
2019/3
39,234
2,980
3,172
269
2,881
-713
2,167
472
1,695
20
20
前年比
1,990
-578
-633
3
-560
-36
-597
-174
-423
5
3
2020/3予
40,800
3,000
3,000
2,780
1,680
20
20
営業損益は下記の通り。2016/3からはコア営業利益で、これまで営業外損益扱いで除外されていた持分法損益等を含む。
セグメント内訳:
前年度はMMA部門の営業利益の伸びが大きかった。特にモノマーの市況が上昇した。MMAのコア営業利益は1096億円となり、前年を717億円上回り、これは全社の増益額とほぼ同じであった。
石化も増益であった。
本年は機能商品部門が減益となり、ケミカルズ部門のうちのMMAと石化がいずれも減益となった。ケミカルズのうちの炭素と産業ガスは好調だった。
ヘルスケアについては、 既報 の田辺三菱製薬の大減益が影響している。
産業ガスについては、下記の大陽日酸を参照。
IFRS コア営業損益 対比(億円)
2017/3
2018/3
2019/3
前年比
増減内訳
2020/3
予想
売買
差
数量差
コスト
削減
他
機能部材
623
580
401
-179
-95
-100
85
-144
580
機能化学
319
360
285
-75
380
MMA
379
1,096
944
-152
130
-222
45
-121
700
石化
209
259
122
-137
100
炭素
38
124
245
121
280
産業ガス
521
575
633
58
8
90
2
-42
930
ヘルスケア
984
812
569
-243
-156
-58
128
-157
100
その他
2
-1
-27
-26
-26
-70
合計
3,075
3,805
3,172
-633
-113
-290
260
-490
3,000
その他差には、受払差・持分法投資損益差等の金額が含まれる。
機能 部材は、情報電子・ディスプレイ関連製品等での販売数量 の減少に加え、原料価格上昇や固定費の 増加等により減益。
MMAは、 下期における中国を中心とした大幅な需要 の減速による販売数量の減少等により減益となった。
石油化学は、定期修理の影響に加え、昨年末以降の原料 価格急落に伴う受払差損等により減益。
炭素は、 ニードルコークスの市況上昇に伴う原料と 製品の価格差拡大等により増益。
黒鉛電極はニードルコークス とピッチを捏合したのちに成形するが、黒鉛価格が急騰している。(昭和電工決算
参照)
更にEVに使用されるリチウムイオン電池の負極材としてニードルコークスが使用され始めたことも、ニードルコークスの需給逼迫に追い打ちをかけた。
2020年3月期予想では、機能商品部門や炭素、産業ガスは増益(特に産業ガスが大きい)となるが、田辺三菱製薬の大減益が響く。
ーーー
大陽日酸の業績は下記の通り。三菱ケミカルHDの出資比率は50.7%。
大陽日酸は2018年7月5日、米国のPraxair,
Inc.による欧州事業(一部)の分割譲渡に係る入札に参加し、同日付でPraxairと子会社株式の売買契約を締結したと発表した。
2020年3月期にはこれがフルに貢献し、欧州ガス部門が大増益となる。
2018/7/13 大陽日酸、米国Praxairの欧州事業を買収
単位:億円 (配当:円)
売上高
営業損益
コア
営業利益
税引前
損益
株主帰属損益
配当
中間
期末
2017/3
5,816
537
547
502
347
9
11
2018/3
6,462
599
600
559
489
11
12
2019/3
7,403
669
658
621
413
12
13
前年比
941
70
58
62
-76
1
1
2020/3予
8,900
1,020
950
865
570
13
13
2018/3
2019/3
増減
2020/3予想
国内ガス
314
298
-16
306
米国ガス
136
156
20
190
欧州ガス
ー
66
66
265
アジア/オセアニア
92
91
-1
115
サーモス
77
92
14
94
全社&非コア
-19
-45
-26
-20
合計
601
658
57
950
2019/5/21 Monsantoの除草剤 Roundup による発癌被害での裁判で20億ドル超の罰金
Monsantoの除草剤 Roundup により癌になったとして夫婦が訴えたカリフォルニア州での裁判で、陪審員は5月13日、Bayerに対し損害賠償として55百万ドル、懲罰的賠償として1人当たり10億ドル、総額20億55百万ドルの支払いを命じた。
(損害賠償は夫に18百万ドル、妻に37百万ドル)
付記 Bayerは6月19日、「陪審の判断は扇動的な、作られた、無関係の証拠に基づく」として裁判長に却下を求めた。
Bayerにとっては、本件は3件目の敗訴となる。米国では約11,000件の訴訟が行われている。
既報の通り、1件目では カリフォルニアの陪審員が2018年8月10日に、損害賠償として39百万ドル、懲罰的損害賠償として250百万ドルの合計
289百万ドルの賠償評決を下した。
しかし、San Francisco Superior Court
は10月23日、損害賠償は39百万ドルのままとし、懲罰的賠償は39百万ドルに大幅減額し、合計 78百万ドルとした。
2件目は米カリフォルニア州地方裁判所の陪審が2019年3月27日、損害賠償527万ドル、懲罰的賠償75百万ドルの合計
80百万ドルの賠償を命じた。
付記
サンフランシスコの地裁判事は2019年7月16日、25.27百万ドルに減額した。被害に対しては527万ドルを認めたが、懲罰賠償は20百万ドルに減額した。被害に対して15倍もというのは憲法から認められないとした。(最高裁は比率を9:1としている。)
2018/8/28 Bayer
のMonsanto買収 完了と、Monsantoの除草剤への賠償命令判決
カリフォルニア州の Pilliod 夫妻(70歳代)がともに非ホジキンリンパ腫と診断された。二人は Monsanto
が販売を開始した1970年代から自宅でRoundupを使用していた。2人は地裁に訴えた。
陪審員は5週間の審理の後、Monsantoの除草剤が2人の発癌の原因とみなし、原告の弁護士の要求額の2倍の20億ドル以上の賠償を命じた。
原告側弁護士は次のように述べた。
最初の2つの裁判では裁判官は原告側の証拠を厳しく制限した。今回初めて、Roundupが動物や人間に著しい害を与えるのに、Monsantoが金儲けのため科学やメディアや規制当局をごまかしてきた山のような証拠を陪審員に示すことを許された。
Bayer
は「陪審員の決定に失望しており、控訴する。世界中の規制当局の間で、この製品が安全に使用することが出来ること、発癌性がないことでコンセンサスがある」と述べた。
付記
California Superior Court(Oakland )判事は7月25日、賠償額を引き下げた。
損害賠償 17 百万ドル←55百万ドル
懲罰的賠償 69百万ドル←20億ドル
裁判長は、陪審の懲罰的賠償は過大で憲法違反とした。しかしBayer側の懲罰的賠償全廃の要請を拒否した。
2019/5/22 主要企業の2019年3月決算 − 住友化学
2018年3月期からIFRS方式に変更した。
情報電子化学は好調だが、石油化学・農業関連、医薬品がいずれも減益となり、増収・減益となった。
住友化学の場合、シンガポールのTPCやサウジのPetroRabigh
などの石油化学関係は持分法損益で、本年度は減益となった。
三菱ケミカルと同様、大日本住友製薬など高収益企業の少数株主帰属利益分が大きい。
単位:億円 (配当:円)
売上高
営業損益
うちコア
うち
持分法
税引前
損益
法人
所得税
税引後
損益
うち
配当
少数株主
株主帰属
中間
期末
2017/3
19,390
1,265
1,845
422
1,223
132
1,091
326
765
7.0
7.0
2018/3
21,905
2,509
2,627
553
2,408
627
1,782
444
1,338
10.0
12.0
2019/3
23,186
1,830
2,043
372
1,884
359
1,525
345
1,180
11.0
11.0
前年比
1,281
-680
-584
-18 1
-524
-267
-257
-99
-158
1.0
-1.0
2020/3 予
24,400
1,900
2,050
1,00 0
11.0
11.0
営業損益のうち、コアに含まれない非経常的損益は下記の通り。(億円)
2017/3
2018/3
2019/3
事業構造改善費用
-182
-142
-91
減損損失
-365
-89
-216
固定資産売却益
10
68
14
公正価値変動
-65
61
90
その他
21
-16
-9
合計
-581
-118
-213
営業損益(コア営業損益)
2017/3以降はIFRS方式の「コア営業損益」で、持分法損益を含む。
それ以前の持分法損益(大部分が石油化学)は15/3 239億円、16/3 202億円
営業損益対比(億円)
2017/3
2018/3
2019/3
増減
内訳
2020/3
予
価格差
コスト差
数量差等
石油化学
589
946
616
-330
-60
10
-280
400
エネルギー・機能材料
60
192
230
38
-25
-35
98
250
情報電子化学
87
123
262
139
-105
100
144
270
健康・農業関連
474
440
197
-243
-95
-40
-107
370
医薬品
699
948
808
-140
-84
35
-91
810
その他
101
111
94
-17
-17
100
全社
-165
-132
-164
-32
-32
-150
1,846
2,627
2,043
-584
-369
70
-285
2,050
石油化学:ラービグ第二期計画の出荷が増加
千葉工場、シンガポール工場の定修の影響、交易条件の悪化により減益
エネルギー・機能材料:リチウムイオン電池用セパレータ、高純度アルミナ等の出荷が増加
情報電子化学:偏光フィルムは価格は下落したが出荷増、タッチセンサーパネルも出荷増
健康・農業関連:北米での農薬の出荷減、メチオニンの価格下落で減益
医薬品:下記
大日本住友製薬の業績は次の通り。 (住友化学出資比率 50.22%)
単位:億円 (配当:円)
売上高
営業損益
うちコア
税引前
損益
法人
所得税
税引後
損益
配当 (円)
中間
期末
2017/3
4,084
403
644
428
115
313
9.0
11.0
2018/3
4,668
882
906
849
314
534
9.0
19.0
2019/3
4,593
579
773
650
486
9.0
19.0
前年比
-76
-303
-133
-198
-48
2020/3予
4,600
690
770
490
14.0
14.0
日本では、薬価改定および長期収載品の売上減少の影響により減収減益
北米、中国は増収増益。
米国で、ラツーダANDA訴訟は後発薬の登場を2023年2月以降に4年遅らせることに成功。
2020年3月期は、日本の減益を北米でカバー。
2019/5/23 主要企業の2019年3月決算 − 三井化学、東ソー
三井化学
営業損益は 原燃料価格上昇や固定費の増加などで減少したが 、減損損失の減少で特別損益が大幅に改善し、当期利益は若干の増益となった。
単位:億円 (配当:円)
売上高
営業損益
持分法
経常損益
特別損益
当期損益
配当
中間
期末
2017/3
12,123
1,021
2
972
-114
648
5
9
2018/3
13,285
1,035
71
1,102
-160
716
9
9
2019/3
14,829
934
108
1,030
23
761
10
10
前年比
1,544
-101
37
-72
183
45
1
1
2020/3予
15,400
1,050
1,100
760
10
10
営業損益は下記の通り。 、
基盤素材がナフサ価格の 変動による在庫評価の影響等により、前期比
111億円の減益となった。
17/3
18/3
19/3
増減
増減内訳
19/3
予想
数量差
交易条件
固定費他
モビリティ
407
423
427
4
46
-14
-28
445
ヘルスケア
101
108
136
28
25
-1
4
155
フード&パッケージング
206
199
178
-21
-6
-7
-8
205
基盤素材
385
389
278
-111
-5
-26
-80
330
その他
-78
-84
-8 5
-1
-1
-8 5
合計
1,021
1,036
934
-102
60
-48
-113
1,050
特別損益は下記の通り。(億円)
2017/3
2018/3
2019/3
増減
特別利益
資産売却益
26
35
37
事業譲渡益
-
6
7
債務免除益
20
-
受取保険金 *
114
その他
3
1
合計
26
65
159
94
特別損失
固定資産処分・売却損
73
24
44
減損損失
41
150
15
火災損失 *
75
その他
26
51
1
合計
140
225
135
-90
特別損益
-114
-160
23
183
* 2018年6月に 大阪工場用役プラント で火災が発生した ( 8月に操業を再開)
2013年4月にドイツのHeraeus
Holdingsから 有利子負債を含め約543億円で 歯科材料事業
Heraeus Dentalを買収した。
2013/4/10
三井化学、歯科材料事業を543億円で買収
このノレンの減損を、 2016/3に195億円 、2018/3にも追加で143億円を計上した。
ーーー
東ソー
クロルアルカリの交易条件差が大きく、営業損益は前年に続き大幅減益となった。
単位:億円 (配当:円)
売上高
営業損益
経常損益
特別損益
当期損益
配当
中間
期末
2017/3
7,430
1,112
1,131
-26
757
7.5
16.5
2018/3
8,229
1,306
1,323
-19
888
12.0
16.0
2019/3
8,615
1,057
1,130
3
781
14.0
14.0
前年比
386
-248
-192
16
-107
2.0
2.0
2020/3予
8,600
950
1,000
670
14.0
14.0
営業損益は下記の通り。
17/3
18/3
19/3
増減
内訳
20/3予想
数量差
交易条件
固定費他
石油化学
201
225
134
-91
-22
-30
-40
132
クロルアルカリ
479
666
460
-206
70
-211
-65
365
機能商品
354
339
353
14
48
-3
-31
352
エンジニアリング
51
49
83
34
34
77
その他
27
27
27
-0
24
合計
1,112
1,306
1,057
-249
131
-244
-135
950
クロルアルカリは主力のウレタン原料の販売価格が下落し、採算が悪化した。
2019/5/23 韓国の原発、異常事態発生でも停止せず
韓国原子力委員会は、南西部の霊光にあるハンビッ原発1号機で5月10日に原子炉の熱出力が制限値を超えて急上昇したにもかかわらず、運営する韓国水力原子力が即時停止せず、原子炉を止めたのは約11時間半後だったと発表した。
5月10日午前10時30分ごろ、核分裂反応を抑える制御棒の制御能力を測る試験で、無資格の職員が原子炉の制御棒を抜く操作を行ったところ、熱出力が制限値の5%を超えて18%まで上昇したが、即時停止しなかった。
原子力安全法では、熱出力が制限値を超えた場合は原子炉の稼働をすぐに停止するよう定めている。
放射能漏れなどは確認されていないが、同委員会は重大事故につながる恐れがあったとみて、安全措置不足と原子力安全法違反として1号機の使用停止を命令した。
同委員会の安全政策局長は「事故には至らなかったが、今までに起こった国内の原発の問題の中で非常に深刻な状況なのは間違いない」と述べ、重大な事故につながる危険性があったと指摘した。
韓国水力原子力では、「熱出力が18%まで上昇した後、午前10時32分に制御棒を挿入し、10時33分には1%以下に下がり、11時2分以降は0%水準を維持した」と説明した。ただ
、運転は続いており、手動で運転を停止したのは午後10時2分ごろだったという。「出力が25%になれば原子炉は自動停止する設計になっている」と安全には問題がなかったと
している。
ただ無免許操業については「免許所持者が指示・監督していれば免許がない人でも作業できるが、当時免許所持者が指示・監督していたかは調査中」と明言を避けた。
東京工業大学の奈良林直特任教授は「再稼働の前に、出力ゼロの状態から徐々に制御棒を抜いて効き具合などを確認する通常の試験を行っていたと考えられる。制御棒を段階的に抜いていくはずが、何らかの原因で抜きすぎてしまったのではないか」と分析し
ている。制限を超えたあとも11時間半にわたって停止しなかったというのは、原子炉の知識がない人が操作していた可能性があるとしている。
韓国の原発の状況
文在寅大統領は選挙運動中に「新規の原発建設を全面中断し、建設計画を白紙化する」と公言していた。
2017年5月17日に、老朽火力発電の一時停止を命じたが、原発についても、老朽のものを閉鎖、建設中のものは見直し、今後40年で原発に頼らないエネルギー政策に切り替えると述べた。
同氏は大統領選挙前の2017年4月14日、脱原発市民団体6団体と反原発についての政策協定を結んだ。(下表 参照)
2017/6/1
韓国、建設予定の原発の設計を中断、新大統領の脱原発方針の一環
文在寅大統領は10月22日、建設途中の新古里原発5、6号機(蔚山市)の工事再開を有識者らでつくる公論化委員会が勧告したことを受け「建設を早期に再開する」と表明した。
建設中の5基(上記に加え、 新古里4号機、新ハヌル1号機、2号機)は認め、計画中のものは白紙に戻した。
大統領は、脱原発政策を支障なく進める考えを強調した。「これ以上の新規の原発建設計画を全面中止し、エネルギー需給の安定性を確認次第、設計寿命を延長し、稼動中の月城1号機の運転を中止する」とした。
2017/10/26 韓国大統領、 新古里原発5、6号機の建設再開を表明
新古里原発4号機は2019年4月22日、初めて送電網に接続され、送電を開始した。
原子力関連団体と保守政界が政府の脱原発政策に反対する国民署名運動に本格的に突入している。
署名運動本部は、2018年12月から脱原発政策反対と新ハヌル3・4号機の建設再開を要求して署名運動を開始した。2019年1月21日に国民33万人の署名をそろえ、大統領に宛てた5枚の手紙と一緒に、大統領府に渡した。(政府は無視)
運転開始
原子炉形式
容量 kW
文大統領の政策協定
ハヌル ( 蔚珍)
1
1988 /9 /10
加圧軽水炉 (PWR)
95万
2
1989 / 9 / 30
加圧軽水炉 (PWR)
95万
3
1998 / 8 / 11
加圧軽水炉 (PWR)
100万
4
1999 / 12 / 31
加圧軽水炉 (PWR)
100万
5
2004 / 7 / 29
加圧軽水炉 (PWR)
100万
6
2005 / 4 / 22
加圧軽水炉 (PWR)
100万
新ハヌル
1
(2018/4)
KSNP (APR-1400)
140万
建設を暫定的に中止し、社会的合意を通じて運転の是非を決定→建設
2
(2019/2)
KSNP (APR-1400)
140万
3
KSNP (APR-1400)
140万
許可を取り消す。→ 「取消」への反対運動
4
KSNP (APR-1400)
140万
ハンピッ (霊光)
1
1986 / 8 / 25
加圧軽水炉(PWR)
95万
2
1987 / 6 / 10
加圧軽水炉(PWR)
95万
3
1995 /12
加圧軽水炉(SYSTEM80)
100万
4
1996 /3
加圧軽水炉(SYSTEM80)
100万
5
2002 / 5 / 21
KSNP(OPR-1000)
100万
6
2002 / 12 / 24
KSNP(OPR-1000)
100万
月城
1
1983 / 4 / 22
CANDU
67.9万
運転延長取り消し判決の控訴を取り下げ、即時閉鎖
2
1997 / 7 / 1
CANDU
70万
3
1998 / 7 / 1
CANDU
70万
4
1999 / 10 / 1
CANDU
70万
新月城
1
2012 / 7 / 31
KSNP(OPR-1000)
100万
2
2015/7
KSNP(OPR-1000)
100万
3
KSNP(OPR-1000)
100万
(未認可)
4
KSNP(OPR-1000)
100万
古里
1
1978 / 4
加圧水型(PWR)
58.7万
(2017年6月停止決定)
2
1983 / 7
加圧水型(PWR)
65万
3
1985 / 9
加圧水型(PWR)
95 万
4
1986 / 4
加圧水型(PWR)
95万
新古里
1
2011 / 2
加圧水型(PWR)
100万
2
2012/7
加圧水型(PWR)
100万
3
2017/1
加圧水型(PWR)
140万
4
2019/5
加圧水型(PWR)
140万
建設を暫定的に中止し、社会的合意を通じて運転の是非を決定
→建設継続→ 2019/4 稼働
5
加圧水型(PWR)
140万
許可を取り消す。→
2017/10/26 韓国大統領、 新古里原発5、6号機の建設再開を表明
6
加圧水型(PWR)
140万
三陟
4基
白紙に戻す。
盈徳
4基
2019/5/23 Qualcomm、独禁法裁判で敗訴
2017年1月17日、米公正取引委員会(FTC)はQualcommをスマホ用の半導体の独占で連邦地裁に訴えた。 スマ
ホ用モデムチップで圧倒的なシェアを持つQualcommが、その地位を背景に端末メーカーに対して不利な契約条件を無理強いしたり、過剰なライセンス料を要求するなど独占禁止法に違反する行為を行っているとした。
これについては、Qualcomm敗訴の可能性があり、 米司法省の独禁法部門は5月2日、もしQualcommが有罪とされる場合、過度な罰則(remedy) が今後の5Gでの競争で米国が不利になることを懸念し、裁判所に対し、どんな罰則を与えるかについて注意深く考慮するべきだとし、罰則についてヒアリングを行うことを要請した。
過度に広範な罰則は5G技術とそれに依存する川下の利用技術の市場で競争力とイノベーションを下げる恐れがあるとし
、そうなれば、独禁法の罰則の適切な範囲を超えることとなるだけでなく、競争を助けるのではなく、競争を害する明確な可能性があるとする。
2019/5/8 米司法省、Qualcommの独禁法違反裁判で裁判所に賠償額で注文
なお、Qualcommのやり方の 最大の被害者で、これまで企業としても争ってきたAppleは4月16日、Qualcommとの間で、 Appleの契約メーカー(Contract
manufacturers)
との間のものも含めて、すべての訴訟を取り下げることで合意した。Appleとしては、iPhoneの5G対応を早期に進めるためにも、Qualcommとの和解を急ぐ必要があったとみられ、実質的にQualcommの勝利である。
2019/4/18 AppleとQualcomm、知財紛争で全面和解
この裁判は、 カリフォルニア州北部連邦裁判所でLucy Koh
判事が担当する。(Lucy Koh 判事はKorea系女性裁判官で、Apple vs Samsung の裁判も担当した。)
2019年1月に審理が始まったが、5月21日判決があった。
Qualcommがモデム事業での圧倒的な地位を悪用し、不当に競争を抑圧しているとした。同社のライセンス慣行が数年間にわたり、半導体市場の一角で競争を抑制し、競合他社、スマホ市場、消費者に悪影響を及ぼしたとの判断を下した。
同社のライセンス慣行はCDMA(符号分割多重接続)と第4世代(LTE)移動通信チップ市場で競争を阻害した。同社と競合している通信用半導体チップメーカーと携帯電話メーカーだけでなく消費者にも被害を与えた。
同社は自社特許権に過度に高いロイヤルティーを付けて競合企業を市場から締め出すなど反独占法に違反した。端末卸売価格に一定の割合をロイヤルティーとして上乗せして年間約50億ドルを稼ぐ収益モデル自体も不公正要素がある。
そのうえでQualcommに対し、ライセンスのやり方を変え、供給凍結をほのめかすことなく、手頃な価格でのライセンス契約を再交渉するよう命じた。
知財ライセンスの購入をモデム供給の条件にしないこと、顧客と契約条件を真摯に再交渉するよう命じた。競合の参入を妨げる独占契約を結ばないよう、SEP
(FRAND宣言した標準必須特許) ライセンスについてはルール通りに行うことを求めた。
命令を順守しているかどうかを、7年間にわたりFTCに報告することも義務付けた。
(1) Qualcomm must not condition the supply of modem chips on a
customer’s patent license status and Qualcomm must negotiate or
renegotiate license terms with customers in good faith under conditions
free from the threat of lack of access to or discriminatory provision of
modem chip supply or associated technical support or access to software.
(2) Qualcomm must make exhaustive SEP (FRAND宣言した標準必須特許)
licenses available to
modem-chip suppliers on fair, reasonable, and non-discriminatory ("FRAND")
terms and to submit, as necessary, to arbitral or judicial dispute
resolution to determine such terms.
(3) Qualcomm may not enter express or de facto exclusive dealing
agreements for the supply of modem chips.
(4) Qualcomm may not interfere with the ability of any customer to
communicate with a government agency about a potential law enforcement
or regulatory matter.
(5) In order to ensure Qualcomm's compliance with the above remedies,
the Court orders Qualcomm to submit to compliance and monitoring
procedures for a period of seven (7) years. Specifically, Qualcomm shall
report to the FTC on an annual basis Qualcomm’s compliance with the
above remedies ordered by the Court.
この判決は、Qualcommのビジネスモデルを問題視しており、スマートフォン業界を一変させる可能性がある。
Qualcommは同日、判事の結論、判事による事実の解釈および法の適用に強く反対するとし、控訴裁判所に控訴すると発表した。
FTCは「Qualcommの慣行が独占禁止法違反であるとする裁定は、経済の重要な分野における競争を維持するための重要な勝利だ」と述べた。
2019/5/24 大連市で石油精製・石油化学一体化設備が稼働開始
大手合繊メーカー・恒力集団(Hengli Group)の年産2000万トンの石油精製とエチレン年産150万トン等の石油化学の一体化(「煉化一体化」 )設備が5月17日、遼寧省大連市長興島
(Changxing island)で稼働を始めた。
中国の一度で建設した煉化一体化 設備としては過去最大規模で、石油化学産業構造のモデル転換と高度化を促進する役割のほか、地方経済の発展を牽引する役割を担うと期待されている。
中国は長期にわたって、エネルギー生産と消費の革命を一歩踏み込んで推進しており、関連の工業の分野への投資を継続して拡大して、エネルギー構造を、高効率、クリーン、低炭素の方向へ効果的に転換している。(
人民日報)
大連長興島臨港工業区は 長興島、交流島など5つの島にまたがり、総面積350
km2 である。2002年1月に遼寧省政府が省級経済開発区に認定した。
恒力集団(Hengli Group)は1994年設立で、PTAからポリエステル、ヤーンから繊維まで一貫して製造している。
PTAは子会社の恒力集団(Hengli Petrochemical)が担当する。
Invistaの技術を導入し、第一期は長興島で2012年に生産を開始した。現在、3期までで合計能力660万トンとなっている。
2018年5月にInvistaとの間で第4期分のライセンス契約を締結した。第4期の能力は250万トンで、完成すれば合計
710万トンとなる。
恒力集団(Hengli Group)は2015年12月に「煉化一体化」
計画を開始した。 投資総額は740億元(約1兆2500億円)とされる。
「煉化一体化」計画は次の6つに分かれる。
1) 石油精製
精製能力は年産10百万トンが2基で合計20百万トン、日量40万バレルである。
サウジ中質原油と重質原油およびカタール原 油を処理する。 UOP と Chevron
Lummus Technology が基本設計を担当した。
2) 芳香族炭化水素
3) Chemical
プロパン脱水素等の設備で、PP 45万トンやMTBE 82万トンを生産する。
4) 石炭から水素、酢酸(35万トン)、メタノール(50万トン)を生産
5)エチレン
エチレン 150万トンで、エチレングリコール 90万トン x 2基、HDPE 40万トン、SM 72万トン、PP
20万トン x 2基などを生産する。
6) タンク、発電、排水処理、海水の淡水化、バース
恒力集団(Hengli Group)は、原油から繊維まで一貫して製造することとなった。
詳細は https://e2nergy.com/wp-content/uploads/2018/08/Hengli-Refinery-profile-English-Version-2018.04.18.pdf
2019/5/24 メイ首相、辞任か? → 辞任表明
英紙Financial
Timesは5月23日、メイ首相がEU離脱案を巡り膠着状況にある中、最終的な辞任期日を24日に示すと伝えた。
同紙によると、同日に与党・保守党議員でつくる有力組織「1922年委員会」のグラハム・ブレイディ委員長と会う際に案を示すという。
保守党は長い間,現職議員の組織をもっていなかったが、1922年の選挙で初当選した議員の間から,幹部議員以外の議員の組織をつくることが要望されて,ようやく実現した。このため保守党議員委員会を通称1922年委員会と呼ぶ。
市場では、「メイ首相が辞任期日を明らかにすると共に、党首選挙等について何らかの発言をする可能性がある」とされる。
英国では早くも、次の首相候補をめぐる思惑が高まっている。最有力と目されているジョンソン元外相のほか、多くの名前が取りざたされている。
メイ首相は離脱協定法案を可決させるため、5月21日に10の提案を行ったが、これが裏目に出、与野党が一斉に反発した。
議会下院の運営を担う院内総務が辞任、不信任案提出の動きもでるなど、メイ首相への辞任圧力がかつてなく強まっている。
一方で、状況は依然極めて流動的だとの情報もあり、メイ首相の去就が注目される。
付記
メイ首相は5月24日、6月7日に辞任すると表明した。Brexitの実現に向け、「できることは全てやった」と涙声で述べた。
保守党は6月10日ごろから新党首選びに着手し、7月中には新首相を選出できるよう準備に入る。後任にはジョンソン前外相ら強硬離脱派が名乗りを上げている。
ーーー
メイ首相は5月14日、英国のEU離脱(Brexit)をめぐり、労働党のジェレミー・コービン党首と会談した。首相はその中で、6月第1週(6月3日からの週)に離脱協定法案を議会採決にかける意向を伝えた。
首相は5月16日、6月の離脱協定法案採決の結果にかかわらず、採決後に後継首相選出のための日程を明らかにすることを党内協議で約束した。
首相は5月21日、6月初旬に議会で採決する離脱協定法案について、議会支持獲得のため新たに下記の10の提案を打ち出した。
昨年制定した現行のEU離脱法で、ブレグジット協定を国内法に置き換える必要があると定められている。
1
北アイルランド問題
バックストップ 発動回避のため、移行期間終了の2020年末までに代替策をまとめる作業を行うことを法的に義務付け
2
バックストップ発動の場合でも、本島と北アイルランドの法規制上の一体性を維持。
新たな制度の導入の場合、北アイルランド自治政府と議会の同意を得ることを義務付け
3
対EU交渉
EUとの将来関係について、交渉前にその目標について、交渉後は条約の内容について、議会の承認を得ることを義務付け
4
労働・環境基準
労働者の権利をEU基準と同等又はそれ以上に維持することを確実にするための新法を導入。
将来の改正は労組、経済団体と協議
5
EUと同等の環境基準を維持。
最高レベルの環境基準を維持することを確実にするための独立機関を新設
6
EUとのモノの貿易
EU単一市場から離脱し、移動の自由に終止符を打つことを前提に、EUとのモノの貿易における国境手続きを最小化することを政府に義務付け
7
工業製品、農産物・食品についてはEUとの共通ルールを維持
8
独自の通商政策を確保しつつEUとの関税同盟の利益を享受する政府案か、EUの通商政策に発言権を有する一時的なEUとの関税同盟 を締結する妥協案かのいずれかを、議会が決定できるよう法制化
9
二度目の国民投票
離脱協定法批准に先立ち、議会が二度目の国民投票の賛否を採決することを法制化
10
政治宣言
上記方針に沿うよう、EUと合意した政治宣言の修正を追求(EUと協議)
出所:メイ首相演説を元にJETRO作成
2020年末までの移行期間中に解決策が出来ない場合、バックストップに移行し、本土は実質関税同盟だが、北アイルランドは、EUに残るアイルランド共和国との間に国境を設けることを避けるため、EUの多くの規制を残す必要がある。発動回避の代替策をまとめるとするが、法的に義務付けても、まとまるとは思えない。
EUとの関税同盟について、メイ首相は今回、かねて政府が主張していた独自の通商政策と両立可能な関税取り決めか、労働党との協議中に政府が妥協案として提示していた時限的な関税同盟の2案から議会が決定することを提案した。(但し、労働党は永久的な関税同盟を主張しており、「一時的な関税同盟」には満足していない。
2度目の国民投票の実施も、議会採決に委ねる意向を示した。
メイ首相は、個人的にはこの案には反対しているが、議会が持っている「真摯で正当な」思いは理解していると話した。その上で、2度目の離脱協定法案を可決することが国民投票実現への最初の関門 だと強調した。
メイ首相は演説で、「離脱協定法案が可決されて初めて、議会はEUからどのように離脱するか決定できる」とコメント。「反対票を投じるのは、ブレグジット阻止に投じるのと同じ」と続け、新提案に基づく法案への支持を訴えた。
しかし、メイ首相が発表した新たな計画に、与野党から非難が集まっている。与党・保守党のEU離脱派からは、党規則を変更してメイ首相の不信任案を提出しようとする動きも出ている。
保守党では2018年12月12日、メイ首相に対する不信任投票が行われ、結果は信任が200票、不信任が117票で、メイ首相の続投が確定した。 現在の党規則では、今年12月まで党内で辞任を求められることはない。この党規則を変更しようというもの。
メイ政権幹部で与党・保守党の議会運営を担うAndrea
Jacqueline Leadsom 下院院内総務が5月22日、メイ首相の新たな離脱方針に反対して辞任した。条件付きながらも2度目の国民投票を実施する可能性を表明したことに反発した。
与党からは次の発言がある。
ドミニク・ラーブ元EU離脱相は、「2度目の国民投票や関税同盟への参加を促す法案は支持できない。どちらの選択肢もブレグジットを実現させず、引っ掻き回すだけだ。そして保守党のマニフェストに反している」と指摘した。
ボリス・ジョンソン前外相も、保守党は2017年の総選挙で関税同盟からの脱却を公約に掲げており、今回の提案はそれに反していると反論。ツイッターで、「国民投票で決まったことを実現するため、私たちにはもっとできること、やるべきことがある」と訴えた。ジョンソン氏は、メイ首相が辞任した後の保守党党首選への立候補に意欲を示している。
北アイルランド地域政党で閣外 協力の 民主統一党はバックストップに反対しているが、今回の案について、「離脱協定案に含まれる根本的な欠陥は変わっていない」と一蹴。同党は4度目も反対するとしている。
労働党のコービン党首は「ほとんどこれまで議論したことの焼き直しで支持できない」と明言
した。
ーーー
これまでの経緯:
メイ英首相は4月6日深夜、Brexitについて、野党・労働党の支持を取り付ける以外に事態打開の道はないとする声明を出した。
2019/4/7 メイ首相、労働党との妥協に理解求める
EUと英国は4月11日、英国の離脱期限を10月31日まで再延長(“flexible
extension”)することで合意した。
メイ首相は、議会が離脱協定案を承認すれば、英国は6月30日以前に離脱できると述べた。
5月2日に英国のイングランドと北アイルランドで地方議会選挙が行われた。イングランドでは離脱派の保守党と独立党が大敗した。
2019/5/6
英国の地方議会選挙、EU離脱派の政党は大敗
メイ英政権のリディントン国務相は5月7日、5月23日の欧州議会選挙に英国も参加すると明言した。メイ首相は6月30日までに離脱することを目指し、労働党と協議を続けてきたが、合意に達せず、欧州議会選挙に参加せざるを得なくなった。
欧州議会は新議会(2019〜2024年)の開会初日時点の全加盟国から直接選ばれた議員で構成することが法的に義務付けられており、今回は7月2日がその日に当たる。
EUとのBrexit合意書では、「英国が欧州議会選挙に参加せず、かつ5月22日までに協定書を批准しない場合、5月31日に終了する」となっており、「合意なき離脱」となってしまう。
リディントン国務相は、「現在の目標は、欧州議会の新会期が始まる7月2日までに離脱を完了させること。英議会が夏季休会に入る(通常は7月半ば)までには「確実に」この問題を解決したい」とした。
しかし、労働党のコービン党首は5月17日、メイ首相に宛てた書簡で、離脱を巡る与野党協議の打ち切りを求めた。「重要政策で与野党の溝を埋めることができないことが明らかになった」としている。
2019/5/25 チッソの2019年3月決算
主力の液晶材料が赤字に転落した結果、営業損益、経常損益でも赤字に転落した。
当期利益は3年連続の赤字で、 2019年3月末の未処理損失は
1,501 億円 となった。
資本金は78億円で、純資産は −1,179億円 となっている。
単位:億円 (配当:円)
売上高
営業損益
経常損益
特別損益
当期損益
配当
中間
期末
2016/3
1,718
129
138
-39
55
0
0
2017/3
1,540
61
75
-64
-14
0
0
2018/3
1,600
29
48
-40
-33
0
0
2019/3
1,550
-38
-14
-38
-82
0
0
前年比
-50
-67
-62
1
-48
2020/3予
未定
特別損失 :
16/3
17/3
18/3
19/3
水俣病補償損失
-37
-35
-33
-31
災害損失
-16
-7
-7
経常損益は次の通り。
これまでの主力であった液晶材料等の機能材料部門は、2015年3月期には最高の182億円の利益を計上したが、その後、128億円、83億円、26億円に激減し
、本年は赤字に転じた。
パネルの供給過多の状況が増幅され、顧客が引き続き稼働調整したことに加え、中国液晶材料メーカーの台頭が影響したとしている。
液晶パネルから有機ELパネルに切り替わっており、今後、液晶が元に戻る可能性は少ない。
液晶材料の不振を補うような製品は見当たらず、このままでは補償金の支払いも難しくなる。
15/3
16/3
17/3
18/3
19/3
増減
機能材料
(液晶材料等)
182
128
83
26
-28
-54
加工品
(繊維製品、肥料、電子部品等)
21
16
15
18
5
-13
化学品
(アルコール、樹脂等)
-11
17
-1
21
32
11
商業事業
4
3
3
3
3
0
電力
5
1
0
1
1
0
その他
2
1
2
2
-3
-4
全社
-28
-28
-27
-23
-24
-1
合計
175
138
75
48
-14
-62
ーーー
チッソは2011年1月に「事業再編計画」に記載した100%子会社
JNC を設立し、事業を譲渡した。
2011/1/12 チッソ、「事業再編計画」に基づく、新会社 を設立
親会社のチッソは当面、子会社JNCの株式配当益で補償業務を担い、 3年後をめどに株式を他者に全面譲渡し、譲 渡益を熊本県に納付して補償業務を委ね、清算するという構想である。
特措法では、 「救済の終了」と「市況の好転」をJNC売却の条件としている。
JNCの資本と損益の状況は次の通り。現在のところは過去の蓄積分が残っている。
資本金
31,150
百万円
資本剰余金
27,149
利益剰余金
37,424
株主資本 合計
95,723
将来、チッソがJNCを売却して、譲渡益で補償を終える計画であるが、JNCの赤字が続くと、その構想も実現が難しくなる。
2019/5/25 米地裁、オプジーボの発明者に米学者2名を追加
Massachusettsの米国地裁は5月17日、 ノーベル医学・生理学賞を受賞した京都大学
の本庶佑・特別教授が開発した癌の治療薬「オプジーボ」の特許について、ハーバード大学医学部の主要関連医療機関の一つである
Dana-Farber Cancer Instituteの 研究者 Gordon Freeman
と Clive Woodの2人を共同発明者として認める判決を出した。
ーーー
癌細胞には、免疫細胞攻撃を防止する「免疫チェックポイント」という仕組みがある。
癌細胞は、免疫細胞からの攻撃を逃れるために、PD-L1 というタンパク質を出し、これが免疫細胞のPD-1
に結合すると、免疫細胞の働きが抑制される。
本庶教授は1992年に免疫細胞上のタンパク質(PD-1)を発見した。付記
1999年に PD-1欠損マウスが自己免疫疾患を発症することを発見、2002年に癌の免疫回避とPD-1の関与が判明した。 その後、ヒトのPD-1の働きを阻害する抗体を開発した 。
提携していた小野薬品には抗体を作る技術がなかったが、2005年に米ベンチャー企業 Medarexとの提携で「完全ヒト型抗PD-1
抗体」を入手でき、オプジーボが誕生した。。
(その後2009年にBristol-Myers SquibbがMedarexを24億ドルで買収した。)
↓
(治療薬の働き)
機能
承認
開発中
抗PD-1抗体
免疫細胞のPD-1に結合し、PD-1と癌細胞のPD-L1の結合を防止
オプジーボ(小野薬品 / Bristol-Myers
Squibb)
キイトルーダ(米Merck)
抗PD-L1抗体
癌細胞のPD-L1に結合し、PD-1とPD-L1の結合を防止
Roche / 中外製薬
AstraZeneca
独Merck / Pfyzer
抗CTLA-4抗体
免疫細胞のCTLA-4に結合し、CTLA-4と樹状細胞のB7の結合を防止
ヤーボイ(Bristol-Myers
Squibb / 小野薬品)
AstraZeneca
オプジーボの特許は本庶教授と小野薬品工業が持つ。日本、韓国、台湾以外はBristol-Myers
Squibbが開発・商業化の権利を持つ。
付記 2024/6/19〜 日本経済新聞 私の履歴書 本庶佑 (部分)
1986年6月、名古屋大医学部を出て愛知県がんセンター病院でレジデント(研修医)をしていた一人の若者が研究室を訪ねてきた。石田靖雅 くんだ。聞くと人間の免疫システムが、生体にとって正常な細胞の「自己」と異常な細胞の「非自己」とを区別する仕組みを研究したいという。まさしく免疫学における直球、ど真ん中のテーマである。
T細胞が正常な細胞まで誤って「非自己」と認識し反応すると、胸腺細胞内のある特定の遺伝子が働き「選択的細胞死」が起きるのではないか。石田くんが立てた仮説はとても興味深かったが、当初の実験デザインは甘く、何度も突き返した。
議論を重ねた結果、彼の提案した活性化した細胞とそうでない細胞とを比較する、いわゆる「引き算法」で実験をやってもらった。数カ月後、選択的細胞死に関与するとみられる分子(遺伝子)が見つかった と意気揚々と報告してきた。
「PD―1 」(Programmed
Death=予定された死)と命名したいという。92年11月、論文が掲載された。
次にやるべきはこの「PD-1」の機能を調べ、正体を突き止めることだ。遺伝子配列からT細胞の膜の上に存在し、細胞死に関わるたんぱく質を作るまでは推察できるのだが、詳細はわからない。ただ、実験を繰り返しても「PD-1」がT細胞の「自死」に関わると確証あるデータが出てこない。研究は皮膚科から来ていた大学院生の西村泰行 くんが引き継ぎ、石田くんは米国へ留学した。
94年、遺伝子破壊法で人為的に「PD-1」の機能を損ねたノックアウトマウスの作製に成功した。このマウスを経過観察していけばなんらかの異常が見つかるだろう。しかし、生後3カ月たっても比較対照となる正常なマウスと何ら変わらない。
マウスの寿命は約2年。もう少し長い期間、観察してみてはどうだろう。9歳年下の後輩でがん、免疫学が専門の湊長博教授(現在、京大総長)から助言をもらって、西村くんにはノックアウトマウスの観察を続けさせた。
1年ほどたったある日、ノックアウトマウスだけに自己免疫疾患の症状が現れているとの報告があった。免疫が過剰に活性化して関節炎を引き起こしていたようだ。「PD-1」は細胞を死に追いやるというより、免疫が亢進するのを制御するブレーキ役 として生体内で役割を果たしているに違いない。そして99年、「PD-1は免疫システムにおける負の調整因子である」とした論文を発表した。がん免疫薬への扉が開いた。
「PD-1」は免疫が亢進するのをコントロールするブレーキ役を果たしている。ならば、がんや感染症、関節リウマチなどの自己免疫疾患、移植された臓器の拒絶反応といった、免疫制御の欠陥を特徴とする様々な病気の治療へと道が開けるのではないか。
1998年春ごろだった。研究室メンバー数人で将来の臨床応用への可能性を探る研究が始まった。がんに対する免疫効果をいち早く見つけたのが当時、大学院生だった岩井佳子 くん(現在、日本医科大学教授)だ。
PD-1がブレーキ役であるなら、その働きを止めるスイッチ役となる分子もあるはずだと当初から想定していた。結合する相手を探したところ、がん細胞表面にある分子(PD-L1 と呼ぶ)が米国製薬企業との共同研究で見つかった。
そして2000年秋、このPD-L1を発現する骨髄腫を、正常マウスに移植したところ、がん細胞の増殖が増強し、そのPD-L1抗体を投与すると緩やかになることを突き止めた。
これならがんに効く可能性は十分にある。岩井くんからの結果報告を受けて私は興奮した。PD-1の応用標的が定まった瞬間だった。
ただ、餅は餅屋というが、本庶研究室は生化学、分子生物学を得意としており、がん研究については知見もなければ経験もない。
PD-1効果発見の際、実験手法で助言をもらった湊長博教授らは、PD-1かPD-L1の働きを阻害する抗体の作製に取り組んでいた。再び相談し両研究室で共同研究することになった。
一連の成果をまとめ、02年、米科学アカデミー紀要に論文を公表した。論文の最後にPD-1とPD-L1の相互作用に言及、これらはがん免疫療法の有望な戦略になるだろうと記した。
岩井くんはその後メラノーマ(悪性黒色腫)という黒いがん細胞を用いて、脾臓(ひぞう)から肝臓への転移実験をした。未治療のマウスの肝臓にメラノーマが転移すると肝臓は肥大し、真っ黒になるが、PD-1抗体を投与すると肝臓は大きくならず比較的白いままだったという。
将来のがん治療薬への応用を見据えると、成果が論文として公表になる前に、特許を押さえておかねばならない。これが研究にもまして大変で一筋縄でいかなかった。
当時、国立大学は04年の法人化を控え、大学の成果について従来は国の特許として出していたのを、大学自身が出願する方向に転換する時期だった。
01年、京大内に設置された特許を大学でもつか研究者個人でもつかを話し合う「発明委員会」で、私は「PD-1」という知的財産の将来性と重要性を力説した。「この技術はとてもポテンシャルが高い。大学としてきちんと特許を持つべきだ。弁理士を雇って申請してほしい」
産学連携なるものが叫ばれ、大学本部には知的財産を扱う部署もできていたが、実態は「もどき」の組織で人材も資金も足りない。「(特許の)申請や維持に相当のお金がかかる。大学では無理です。先生、どこか企業に頼んでください」と、担当者の回答はそっけなかった。
PD-1の一連の研究には全く関与していなかったが、付き合いのある小野薬品工業に依頼せざるをえなかった。
「 PD-1」に関する特許は、いくつかの別のテーマで共同研究していた小野薬品工業に援助をお願いし、特許出願することになった。
特許は普通、申請後 1年半ほどで公開される。 2002年の論文発表後、直ちに抗がん剤の開発に着手してほしいと小野薬品に依頼した。
しかし、小野薬品は関西を基盤とする中堅の製薬会社で、当時、がんに関する医薬品を扱っていなかった。臨床試験 (治験 )まで含めると数百億円かかるかもしれないハイリスクな開発に尻込みした。
私は「せっかくの特許を死蔵してもらっては困る」と担当者に迫った。すると「単独ではとても無理なので、共同開発のパートナーを探す」と返答してきた。
約 1年かけ日本中の大手製薬会社を訪問し共同開発をもちかけたそうだ。米製薬会社の日本支社にも相談したという。結局、 10社以上の訪問先リストを持ってきて「どこも相手にしてくれない。われわれとしても開発には協力できない」との結論だった。
がんを免疫で治すという発想は昔からあり、サイトカイン療法やワクチン療法など様々な手法で試みられてきたが、失敗の繰り返しだった。製薬企業にとっては開発に乗り出すと株価が乱高下する、まさに眉唾もの。「頭のおかしな免疫学者がまた変なことを言っている」。そんな反応だったのだろう。
しかし、私はどうしてもあきらめられなかった。「ならば小野さんは降りてくれ」。自らの手で開発してくれる企業を探すことにした。
米シアトルに大学教授であり免疫関連の医薬品開発を手がけるベンチャーを起業した友人がいた。渡米し、 PD-1の開発経緯や成果について半日かけてプレゼンテーションしたところ、その友人は「やる」と即答してくれた。
ただ、一つ条件を提示してきた。共同出願者の小野薬品が権利を放棄するか、専用実施権の同意がほしいということだった。
帰国後、パートナーが見つかったことと、 PD-1について今後一切手を出さないでほしいと、小野薬品の担当者に伝えた。少し考えさせてほしいと言って帰っていったのだが、 3カ月ほどして今度は一転、「うちで開発をやる」と言ってきた。
おかしいなとは思ったが、深くは問い詰めなかった。「やる」のであれば有り難い。小野薬品の意向に同意した。
後からわかるのだが、 04年ころ、メダレックスという米ベンチャーが開示された PD-1特許を見て、小野薬品に共同開発を申し入れたのだ。
この米企業は薬の原料となるヒト型モノクローナル抗体を作る技術を保有しており、 PD-1抗体を持っていたのだ。 06年、がんが進行し手の尽くしようのない末期がんの約 200人を対象に安全性を確認する治験が始まった。
そして 09年、米ブリストルマイヤーズスクイブ (BMS)がメダレックスを買収した。
資本力のある巨大製薬会社が主導権を持ち、治験は一気に加速する。
これまでの抗がん剤にない驚異的な有効性をもつ PD-1抗体 (製品名オプジーボ )は 14年、メラノーマ (悪性黒色腫 )を対象にがん免疫薬として承認された。
進捗状況について小野薬品からは知らされなかった。オプジーボ誕生の喜びとは裏腹に、私のなかに同社への不信感が芽生えていった。
重い決断を下さざるを得なかった。2020年6月、長年の共同研究先でがん免疫治療薬「オプジーボ」を製造・販売する小野薬品工業に対し、約262億円の支払いを求めて訴訟を起こした。
PDー1分子を使ったがん免疫治療には大きく分けて3つの特許がある。物質そのものに対する特許、免疫の仕組みに関する特許、そして薬につながる用途特許だ。いずれも私と小野薬品とが特許権者になっている。
小野薬品は米メダレックスと共同開発するにあたり、特許権の独占的使用を認めるよう私に求めてきた。特許権の持ち分やロイヤルティーの料率を決めなければならないのだが、科学者にとっては疎い分野で相場がどの程度なのかはわからない。正直、あまり関心もなかった。
実は当時、抗体の多様化に関する研究がピークに近い状況だったのだ。研究室メンバーである村松正道くんがクラススイッチをつかさどる遺伝子「AID(活性化誘導シチジンデアミナーゼ)」を発見したことで、こちらの研究に弾みがつき多忙だった。
小野薬品との交渉は、京都大学にいた大手製薬会社出身の知財担当者にすべてを任せた。今振り返ると、この判断によって、10年以上もたった後に、小野薬品との係争に発展してしまったように思う。
オプジーボの臨床試験はすこぶる順調に進んでいた。そんなある日のこと。学会の場で友人の岸本忠三氏がこう言ってきた。「本庶さん、一体いくら入るんや」
大まかな契約内容を伝えると、画期的な関節リウマチの薬をメガファーマのロシュと共同開発した経験をもつ岸本氏はあきれたように言い放った。「あんた、それめちゃめちゃや。低すぎるわ」
後日、稲盛財団が顕彰する京都賞の委員会で知り合いになった知財弁護士にも聞いてみたところ、契約条件について再交渉してもらえることになった。
条件の見直しがまとまりかけていた頃、今度は小野薬品とメダレックスを買収した米ブリストルマイヤーズスクイブ(BMS)とが、オプジーボと似たがん免疫薬「キイトルーダ」を発売したメルクを特許権侵害で訴えたのだ。
私は、小野薬品からこのメルクとの訴訟に協力してほしいと言われたので、同時に提示された条件を前提にこれに応じることにした。
海外製薬企業の特許を巡る係争は熾烈なものだ。証拠集めということで、あらゆる実験ノートを提出させられた。メルク側の弁護士から容赦のない尋問があり、こちらの失点を導こうと根掘り葉掘り聞かれた。
科学者としては想像を絶する壮絶な争いに巻き込まれてしまった。
17年1月、小野薬品・BMSとメルクとの係争は和解が成立した。
製薬会社同士の紛争がようやく解決してよかったと思った。その後、私と小野薬品との紛争が続いたことは広く知られているとおりである。
21年11月、訴訟協力や発明の対価に対する私と小野薬品との係争は、裁判所からの勧告もあって大阪地裁で和解した。「アカデミアの研究成果によって産業界が得た利益を若手研究者に還元したい」。私の願いが司法に聞き入れられたように感じた。
がん免疫総合研究センターは2020年4月、日本初のがん免疫研究に特化した拠点として発足した。京大医学部の敷地内に専用棟が新設される。米ブリストルマイヤーズスクイブ(BMS)のトップに呼ばれて講演に行った際、寄付をお願いした。後に、日本支社を通じて5000万ドルが入ってきた。これで何とか思い描いていた規模のセンターを完成させることができた。
安藤忠雄さんのデザインのおかげで、国立大学にはなかなかない、国際的にも誇れる研究センターになったと思う。正式名称は「がん免疫総合研究センターブリストルマイヤーズスクイブ棟」だ。
基礎研究から生まれた成果を臨床応用にまでうまくつなげる。センターの運営方針は明確である。基礎3部門、臨床3部門からなり、細胞レベルの研究段階から京大病院の臨床医らにも参加してもらう。国立がん研究センターとも連携し共同研究や人材交流をしていく。
何よりも優秀な若手研究者たちに活躍の場を与える。この1カ月、私の半生を読まれて気づかれたと思うが「PD-1」の発見にしろ「クラススイッチ」の解明にしろ、大学院生や博士なりたての若い体力、知力がなければ、2つの成果は達成し得なかった。
生命科学の分野では計測機器や実験装置がどんどん進化する。研究にますますお金がかかるようになった。若手にはなるべく資金集めで四苦八苦せず、研究に打ち込める環境をととのえる。
PD-1抗体薬「オプジーボ」の登場で、現代医学では完治できなかったがん患者の多くの命を救うことができるようになった。一方で残念ながら半数以上の患者には効果がないこともわかった。人間の体はやはり不思議だ。効く人と効かない人とがいる。
がんという病は、自らの細胞がほんの少しだけ変化して無限に増殖するようになり、体をむしばんでいく。「自己」から生まれた「非自己」は果たしてどこまで私たちの敵なのか。人類ががんを完全に克服する日が来るかどうかの「予言」は難しい。
がん研究の主戦場はがん免疫へと移った。米国が圧倒的にリードする。日本は相変わらずがんゲノムなどに注力し方向転換できていない。これでは若い人材も育たない。
がん免疫によって免疫学も大きく変化した。いま最も興味あるテーマが「ネオアンチゲン」だ。細胞の遺伝子変異によって新たにできるがん抗原を指すが、変異が繰り返されることで必ず発生するというものでもない。個人によってばらつきも大きい。
ネオアンチゲンとは一体何ものなのか。がん免疫の更なる進化にはこの正体を突き止めねばならない。
解明に向けてある仮説をたてた。それを近いうちに証明するつもりだ。仮説こそが科学や医学研究の神髄である。手の内をこの場で明かすことはご容赦願いたい。
ーーー
今般、米地裁の Patti B.
Saris裁判官は111ページの判決文で、2人が本件の6つのパテントの権利を有すると判断した。
Freeman はその研究で、癌細胞にも健康な細胞にもPD-L1が現れることに注目した。PD-1とPD-L1
の接続が、癌細胞が免疫システムから免れる主要な役割を果たす。
この接続を防ぐことで、人体の免疫システムは癌細胞を攻撃できる。
2人と本庶教授は2000年に共同研究を発表し、PD-L1の発見を報告した。そこでは、PD-L1
がT 細胞のPD-1 と結合することで、T細胞に免疫システムを働かせないよう伝え、阻止効果を生むことを示している。
裁判では、 本庶教授は Dana-Farber Cancer Instituteの2人からは重要な助けを得てはいないと主張した。
証言は1999年と2000年の双方の研究者の間での生体物質と非公開のデータのやり取りが中心となった。
Saris 裁判官は彼女の結論として次のように述べた。
3人は特許権者として名前を出すに値する。3人は共同の目的に向かって研究した。本庶教授の発明のコンセプトは3人全ての協力の結果である。
判決を受け、Dana-Farberは免疫チェックポイント 阻害剤の開発をする企業に技術をライセンスできるとしている。
本庶教授の弁護士は「現在、判決の内容を精査しているところで、特許の使用に関わっているBristol-Myers
Squibb や小野薬品工業と協議したうえで今後の対応方針を決めたい」とコメントした。
小野薬品工業は、「判決は不服で、関係者と協議したうえで控訴する予定だ」とコメントしている。
オプジーボをめぐっては、本庶教授が小野薬品工業に対し、特許料が低いとして配分を見直すよう求めており、今回の判決は今後特許収入に影響を与える可能性が
ある。
ーーー
京都大学の本庶佑特別教授らは4月10日、記者会見を開き、小野薬品工業と共同で取得したがん免疫薬「オプジーボ」に関する特許の対価について、引き上げを求めた。
2006年に特許のライセンス契約をした。
本庶氏はこの契約での取り分について、オプジーボによる小野薬品の売り上げや他社からのライセンス収入などの1%以下になっていたことを公表した。代理人弁護士は「常識的なレベルではない」と批判した。
2014年9月の販売開始から2018年12月までの4年の売上高約2890億円に対し、小野薬品からの支払(本庶氏が受け取りを拒否し、小野薬品は法務局に供託)は約26億円で1%以下となる。
本庶氏は抗がん剤として使う用途を視野にいれた特許と考えていたが、小野薬品はPD-1を作る遺伝子という狭い範囲の特許とみて契約を提示したため、料率の低い契約になったとしている。「用途特許ならば5〜10%が常識的なレベルだ」(代理人弁護士)
本庶氏が2011年に対価の引き上げを要請したが、現在は交渉が途絶えているという。
代理人は@小野薬品の売り上げAブリストルから入る権利使用料B同様の薬を開発した別企業から入る使用料、の3種類の一部を本庶さんが受け取るべきだと主張しており、仮に試算すると、現時点で約830億円になるとし、「今後さらに増える」と強調する。対価の一部は若手研究者を支援する基金に投じる予定だ。
本庶氏は当初、京大に出願を要請したが、当時、京大には知財を扱う専門人材やノウハウがなく資金も不十分だったため、本庶氏本人が、小野薬品と共同出願したという経緯があり、このことがこの問題を生んだ。
当時の契約は本庶氏が弁護士を雇わずに署名したもの。
当時はがんの免疫療法が「海の物とも山の物ともわからないという扱い」だった。業界関係者はごく初期の特許の料率が1ケタになることは珍しくないとしている。
このことからも、当初の契約に本庶氏が自ら署名していることからも、裁判で契約を覆すのは難しいとみられる。
小野薬品は5月22日、次のコメントを発表した。契約の見直しは拒否、別途京大への寄付を検討するとしている。
先般より報道されているPD-1特許に関するライセンス契約については、本庶教授と当社が合意の下、2006年に締結している。
そして、2014年より契約に基づく対価を支払いしており、今後も契約に基づく対価を四半期ごとに支払いする。
2011年に本庶教授から当社に要請のあった契約の見直しに対しても誠意をもって話し合いを続けてきたが、合意に至らず、2018年11月に本庶教授に対し、対価の上乗せという枠組みではなく、将来の基礎研究の促進や若手研究者の育成に資するという趣旨から京都大学への寄付を検討している旨、申し入れた。
今後は、本庶教授との話し合いを継続するとともに、基礎研究の促進や若手研究者の育成のための寄付について慎重に検討する。
米地裁判決への控訴には、小野薬品としては本庶氏との連携が不可欠になるが、特許契約を巡る対立から本庶氏と小野薬品の間では本件についても接触はないとされ、先行きは不透明である。
付記
小野薬品 の発表に対し、本庶氏は次のように主張している。
特許料増額交渉は2011年からしており、後出しジャンケンではない。
2013年に小野薬品は書面で増額提示を行った。
現行契約
小野薬品提案
小野薬品の売り上げ
1%以下
2%
Bristol-Myers Squibbから入る特許料
10%
Merckから入る特許料
40%
本庶氏は「安すぎる」として合意せず、交渉を続けたが、小野薬品が一方的に撤回した。
交渉が再開されない場合、訴訟も排除しない。
2019/5/27 トランプ政権、農業支援策発表
中国は2018年7月以降、特定の米国産品に報復関税を課しているほか、国有企業が購入を減らしたり輸入時の審査手続きを遅らせたりしている。この結果、大豆の2018年の対中輸出は7割超減り、市場価格も下落し、幅広い農産品に悪影響が出ている。
米農務省は5月23日、「不当な報復と貿易障壁で被害を受けた農家に対する支援策」を発表した。発表文は次の通り。
トランプ大統領が農務長官に指示し、政府が引き続き自由でフェアで互恵的な貿易に向け努力し、長期的に米国の農業がグローバルに競争するのを助ける一方で、米国の農業生産者を支えるための救済策を立てるよう指示した。
特に大統領は、農務省に対し、160億ドルの支援を認めた。これは米国の農産品に対する不当な報復やその他の貿易障壁に対応するものだ。
この計画は農業生産者を助けるもので、大統領は長期的な市場バリアに対応する。
中国は長い間ルールに沿っておらず、大統領は米国は最早、彼らのアンフェアな貿易慣行、知財盗用に我慢できないとの明確なメッセージを送った。大統領が愛する米国の農家や畜産業者は貿易摩擦の影響を受けている。今回の計画は、彼らが中国や他の貿易相手からの不当な報復関税の影響を受けないことを保証するものだ。
中国の報復関税や市場のひずみは多くの米国のコモディティ:大豆、コーン、小麦、綿花、コメ、ソーガム、ミルク、豚、果物、ナッツ、その他に悪影響を与えてきた。高関税のため新市場を探さざるを得なくなった。中国向け出荷は異常に厳密な通関手続きで時間がかかり、品質劣化を生み、日持ちのしない製品は売れなくなる。
具体的な支援は次の通り。
1) 2019年 市場活性プログラム(Market Facilitation Program):145億ドルを直接生産者に支払い
商品金融公社(CCC)の法的権限の下、米国農務省の農業サービス局が主管となり、大豆をはじめとする農産物の生産者に対し、植え付け面積に指定の単価を掛け合わせることによって算出される金額を直接支払う。
対象品:alfalfa hay, barley,
canola, corn, crambe, dry peas, extra-long staple cotton,
flaxseed, lentils, long grain and medium grain rice, mustard
seed, dried beans, oats, peanuts, rapeseed, safflower,
sesame seed, small and large chickpeas, sorghum, soybeans,
sunflower seed, temperate japonica rice, upland cotton, and
wheat
何を植えるかに関係なく、これらの植え付けに地方ごとの一定率を乗じて支払う。合計植え付けは2018年のものを超えない。
その他に、酪農業、果物等への支援
3回分割で支払いが行われる。
2) Food Purchase and Distribution Program (FPDP)
14億ドル
報復で影響を受けた余剰コモディティの購入(フードバンク、学校、低所得者向け販売店向けに配る)
果物、野菜、加工食品、ビーフ、ポーク、ラム、鶏肉、ミルク等
3) Agricultural Trade Promotion Program (ATP)
1億ドル
生産者のために新しい輸出市場を開発するのを支援
これらは既に議会から割り当てられた予算から拠出するため新たな承認は要らない。
ーーー
米政権は5月10日午前0時1分、2千億ドル分の中国製品に課す制裁関税を現在の10%から25%に引き上げた。
この日、Trump大統領はツイッターを連発した。
このなかに次のものがある。
今や2500億ドルの中国からの輸入品に25%の関税がかかる。大金の関税が直接、政府に入る。
追加で入る1000億ドルの関税で米国の農家から農業製品を購入する。中国がこれまでに買ったよりもはるかに多額だ。これを貧しく、飢えた国々に人道援助の形で供給する。
2019/5/11 中国製品の制裁関税についてのTrump
大統領のツイッター
大統領は政府に入る追加関税は中国が支払うものと信じており、その金で農産品を買って農家を救済し、それを飢えた国に人道援助で供給する、結構なことだとしている。
今後は別だが、少なくとも今までは、大統領の主張が正しいようだ。追加関税のかなりの部分を中国の輸出業者が値引きの形で負担している。
2019/5/13 米国の中国製品への追加関税の影響
今回の支援策はこれとは関係なく、農家の不満を抑えるために、追加予算や新しい法律の承認などを必要としない範囲で支援を行うものである。
2019/5/27 メキシコとの国境の壁建設、連邦地裁が一部を暫定差止
米カリフォルニア州の連邦地裁は5月24日、大統領権限で国防予算をメキシコ国境沿いの壁建設に振り向ける計画について、一部を暫定的に差し止める判断を下した。
トランプ大統領は2月に非常事態宣言を出し、議会の反対を押し切って壁建設の予算を確保したが、司法が待ったをかけた。同様の訴訟は他にも起こされているが、差し止めの判断が示されたのは初めて。トランプ大統領は最高裁まで争う構えを見せており、法廷闘争は続く見通し。
トランプ 大統領は2月15日、「非常事態」を宣言した。
財務省の没収資金から6億ドル、国防総省の反麻薬プログラムから25億ドル、軍事施設建設費から36億ドルを流用する。
2月18日、カリフォルニア州を筆頭に16の州がトランプ政権を提訴した。
2019/2/18 米国予算案
成立、大統領は同時に非常事態宣言で他予算を壁建設に流用へ
トランプ大統領は3月15日、国家非常事態宣言を巡り議会が可決した同宣言を無効とする決議案に拒否権を発動した。
2019/3/15 米議会、非常事態宣言の阻止決議 トランプ氏拒否権へ
下院は3月26日、大統領の拒否権を覆すための採決を行ったが、必要な2/3の賛成票を得られなかった。共和党からは14人しか賛成しなかった。
2019/3/27 米下院、非常事態宣言無効化に対する大統領の拒否権発動の阻止に失敗
米民主党が主導する下院は4月5日、トランプ大統領の国家非常事態宣言に基づいて政権がメキシコ国境の壁建設を進めるのは合衆国憲法に違反するとして、宣言に基づく建設費捻出の違憲確認と支出差し止めなどを求めて首都ワシントンの連邦地裁に提訴した。
2019/4/8
米下院、国境の壁建設は憲法違反として提訴
今回の司法判断は、カリフォルニア州の連邦地裁のHaywood Gilliam Jr. 判事によるもので、壁建設に反対する
Sierra Club と南部国境コミュニティ連合を代表してAmerican Civil Liberties Union
が行った訴訟に対するもの。5月25日にも壁の建設作業が開始される予定であった。
壁建設のために防衛予算から流用する資金は議会から使用を認められたものではないと理由で、資金使用を一時的に停止することを命じた。
政権が壁建設に使用しようとしている67億ドルのうちの、アリゾナ州とテキサス州の2つの地域で51マイルの壁を建設するための10億ドルについてである。
判事は次のように述べた。
議会が資金使用についての行政の要求を拒否した時に、行政が議会の承認なしに他の方法でその用途に資金を使うのは、建国時に遡る基本的な権力分立の原則に反するものだ。
原告が、国の行動が決められた権限を超えるものであり、その行動から回復不能の被害が生じるということを証明するだろうと思われるため、最終判断をする前に、一時停止命令を出す。
この裁判には、カリフォルニア州と他の19
州の連合による提訴も含まれているが、判事はこれについての一時停止命令は出さなかった。(緊急性を判断か?)
但し、最終判断のための審議にはこれを含めることを認めた。
最終判断のための審議は6月5日に行われる。原告側がより広範囲の差し止めや訴訟を起こす利益に関し陳述を行う。
これとは別に、5月23日にWashington D.C.
の連邦地裁でも米下院が提訴した裁判が行われ、原告の下院側は国防総省予算からの流用の51億ドルについて権限分立原則に違反すると主張した。
2019/5/28 武田薬品工業の2019年3月期決算
武田薬品は2019年1月4日、アイルランドの製薬大手 Shire
plc 買収に関して英ジャージー裁判所の認可を取得したと発表した。
裁判所の認可を得たことで、2019年1月8日付で買収を完了した。 1月8日に買収が完了した。
日本企業のM&Aとして最大となる460億ポンドの買収が実現した。
買収金額(円換算)は、買収を発表した昨年5月時点は約6.8兆円だったが、円高が進んだことで約6.2兆円となった。
同日付で普通株式を発行した。増加する資本金及び資本準備金の額は下記の通り。
増加する資本金の額:1兆5656億4千万円
増加する資本準備金の額:1兆5656億4千万円
連結売上高が3兆円超の世界8位となる巨大製薬会社が誕生する。
2019/1/5 武田薬品、1月8日に Shire
plcの買収完了へ
同社は2019年5月にShireの下記事業の売却した。(2019/3月決算に含まず)
売却先
2018 Sales
売却対価
ドライアイの兆候・症状の治療薬「Xiidra® 5%」
Novartis
3億8,800万米ドル
34億米ドルの一時金
最大19億米ドルのマイルストン
手術用パッチ剤「TachoSil® 」
Ethicon
約1億5,500万米ドル
4億米ドルの一時金
製造は引き続き武田
長期の製造供給契約を締結
付記
Ethicon(Johnson &
Johnsonの子会社)は2020年4月10日、TachoSil購入を取りやめた。
J&Jは米国で唯一の承認を受けたfibrin sealant patch "Evarrest" を持っており、FTCが懸念を表していた。
同社の決算は下記の通り。Shireの買収の影響で非常に複雑になっている。財務実績と、特殊処理、それを除いた実質に分けた。
財務実績:
単位:億円(配当:円)
売上高
営業損益
うち コア
税引前
株主帰属
損益
配当
中間
期末
2017/3
17,321
1,559
2,451
1,433
1,149
90.0
90.0
2018/3
17,705
2,418
3,225
2,172
1,869
90.0
90.0
2019/3
20,972
2,050
4,593
949
1,091
90.0
90.0
前年比
3,267
-368
1,368
-1,223
-778
ー
ー
2020/3予
33,000
-1,930
8,830
-3,690
-3,830
90.0
90.0
2019年3月期(実績)にはShireの2019/1-3の業績を、2020年3月期(予想)には年間業績を含む。
2019年3月期(実績)と2020年3月期(予想)にはShireの買収の影響(企業結合会計の影響と買収・統合関連費用)を含む。
概要は次の通り。
2019/3 実績
億円
武田
Shire
小計
結合会計
統合費用
合計
営業損益
4,118
598
4,715
-1,816
-850
2,050
持分法損益
-439
3
-436
-436
税引前
3,574
494
4,068
-1,856
-1,263
949
法人税
-446
-113
-559
440
261
141
当期利益
3,128
381
3,509
-1,376
-589
1,090
買収の影響の主なものは下記の通り。
売上原価:棚卸資産 の 公正 価値調整など 8 1 7 億円
販売費・一般管理費: S h i r e 社買収に係る買収関連費 用 2 3 8 億円
その他費用: S h i r e 買収 に 伴 い 取得 した 無形資産 の 償却費 9 9 2 億円、 S h i r e 買収 に 関連 した 統 合費用 5 9 6 億円
金融損益: S h i r e に 関連 する 財務費用 4 1 3 億円
税金:S h i r e 買 収に伴う税金 費用の減少影響 5 8 7 億円
2020/3 予想
武田
結合会計
統合費用
合計
営業損益
6,540
-6,930
-1,540
-1,930
税引前
5,810
-7,090
-2,410
-3,690
当期利益
4,130
-7,960
-3,830
上記を過去の実績を含めグラフ化すると下記の通り。
売上高
営業損益
内訳
税引前損益
株主帰属損益
財務損益と、統合会計・統合費用を除いた実質の対比
2019/5/28 化学メーカーの2019年3月期決算
化学メーカーの3月期決算がほぼ出揃った。
各社の決算状況は http://www.knak.jp/kessan/
決算でIFRS方式を採用する企業が増えている。
下のグラフでは、斜線で示した、三菱ケミカル、日立化成、住友化学、JSR、住友ベークライトで、これらについては、営業損益はコア営業損益、経常損益は税引前損益を表示している。当期損益は他社と同じ株主帰属損益を表示しているが、損益概念に相違点がある。
主な各社について、下記で詳細を報告している。
信越化学 、三菱ケミカルホールディングス 、住友化学 、三井化学&東ソー 、チッソ
三菱ケミカルや住友化学などが、昨年度に利益が急増し、本年度は減益となっているのに対し、信越化学は本年度も大増益となっている。
当期損益での差が更に大きいのは、少数株主帰属損益の多少による。
信越化学の場合、塩ビ、シリコーン、半導体シリコンのいずれもが増益である。
塩ビについては、米国の Shintechが増益を続けている。2020年3月期には更に自製エチレンが加わる。
日本の石化(塩ビを含む)が原料エチレンをナフサに依存し、原油価格に連動するため、損益が大きく変動するのに対し、米国ではエタンが原料で、原油価格とは連動せず、安定している。
今回、三菱ケミカルや住友化学は4年に一度の定期修理の影響を受けるが、米国では定期修理の慣習はない。
2019/5/29 米 FDA、世界一高額の難病治療薬を承認
米食品医薬品局(FDA)は5月24日、Novartisの米子会社による脊髄性筋萎縮症(spinal muscular atrophy:SMA)の遺伝子治療薬
Zolgensma (onasemnogene abeparvovec-xioi)
の販売を承認した。
米国での価格は212万5千ドル(約2億3200万円)と発表され、投与は1回で済むが、米メディアは「世界一高い薬」と報じた。
付記 従来の治療法を10年続けた場合にかかる医療費約4億円の半額で設定された。ゾルゲンスマは1回の投薬で治療を済ませるため、単価は高くなる。
脊髄性筋萎縮症は遺伝的要因により、脊髄等の運動神経細胞が変性・脱落 することで、筋収縮刺激がうまく伝達できなくなる疾患。
正常なSMN遺伝子(SMN1遺伝子)からは正常な活性を有するSMNタンパク質が合成されるが、遺伝子のエキソン7に変異 のある SMN2遺伝子 を持っている場合、活性のない異常SMNタンパク質が合成されてしまう。
主に生後6カ月ごろまでに筋肉の萎縮や呼吸困難を発症する希少疾患で、患者の多くが2歳になる前に亡くなるか、人工呼吸器を生涯、装着する必要があるとされ
る。
日本では難病に指定されており、治療薬には2017年に承認されたスピンラザ髄注(一般名:ヌシネルセン)しかなく、髄注( 抗がん剤を脊髄腔に注入) かつ4〜6か月毎の投与が一生涯必要 である。
日本ではバイオジェン・ジャパンが販売する国内初の「 アンチセンス核酸医薬品( 標的RNAに結合して、その遺伝子発現を調整する合成ヌクレオチド)」である。
ゾルゲンスマはウイルスを利用して静脈注射で患者に正常な遺伝子を導入する。FDAは2歳未満への使用を承認した。 1回の静脈内投与で治療が完結する。
ゾルゲンスマは、正常なヒトSMN1遺伝子(二本鎖DNA構造) を「 自己相補型アデノ随伴ウイルス9型(scAAV9) 」と呼ばれるウイルスの殻(カプシド)で包んだ構造をしている。
静脈内に投与されたゾルゲンスマは血液脳関門を通過し 、脊髄に到達する。
標的細胞内(SMNタンパク質産生細胞)に侵入すると、すぐに正常なヒトSMN1遺伝子が放出されて正常な遺伝子のみが核内に移行し、標的のDNA配列の箇所に 遺伝子が挿入 される。
1回の静脈内投与のみで正常SMN1遺伝子がDNAに組み込まれるため、これで治療が完了する。
これは米国のバイオテクノロジー会社のAveXisが開発した。Novartisは2018年4月、AveXisを総額87億ドルで買収することで合意した。
この薬は日本でも、厚生労働省が画期的な新薬を短期間で承認する制度の対象にして優先審査中。年内にも承認される可能性があり、薬価が注目される。
付記
厚生労働省の専門部会は2020年2月26日、世界一高い薬とされる脊髄性筋萎縮症の遺伝子治療薬「ゾルゲンスマ」の国内での製造販売を了承した。
3月中に正式承認される見通し。遺伝子治療薬としては国内2例目となる。5月にも薬価が決まるが、米国を参考に1億円を超え、国内で最高額になるとみられる。
付記
2020年5月13日の中央社会保険医療協議会の会合において、1億6707万7222円の薬価で保険適用することが了承された。
2歳未満の患者を対象に、1回の投与で治療が済むが、薬の値段としては国内では過去最高。
厚生労働省は2月20日、薬事・食品衛生審議会
再生医療等製品・生物由来技術部会を開催し、ノバルティスファーマの「キムリア点滴静注」(チサゲンレクルユーセル)を国内初のCAR-T細胞医療として正式承認することを了承した。
2019年3月26日に承認取得した。
厚生労働省は5月15日、「キムリア」の保険適用を決めた。薬価を3,349万円にし、5月22日から保険適用する。
治療対象は白血病の患者で抗がん剤が効かなかった人などに限定する。対象は216人と見込まれている。市場規模は72億円。
投与は1回で済む。ノバルティスの試験では、若年の白血病患者で8割に治療効果が見られた。
米国では約5200万円の価格がついたが、効き目に応じて患者から支払いを受ける成功報酬型が採用されている。日本では効果の有無に関係なく保険適用される。
2019/2/22 厚労省部会、国内初の遺伝子治療2品目の承認を了承
2019/5/29 欧州議会選挙で英国の与党と最大野党が敗北
欧州議会選挙は5月23日〜26日に行われた。 欧州議会議員は任期が5年。総議席は751で、英国は、本土が70議席、北アイルランドが3議席の合計73議席である。
英国では5月23日に実施され、12選挙区から73人が選ばれる。候補者か、党か、どちらかを投票する。
英国では投票率は37%弱であった。
開票の結果は次の通りで、Brexit党が29名で最多数となった。
Brexit
Party は元独立党党首のNigel Farage が直前の2019年4月に早期のEUからの離脱を目指し、設立した。
独立党は5年前に24名が当選したが、分裂し、うち14名がBrexit党に移っている。
なお、国民投票時の英国独立党の党首のNigel Farage
は、離脱すればEUへの拠出金週3億5千万ポンドが他の用途に使えると主張した。実際は1億6千万ポンドに過ぎず、投票直後に間違いを認めた。「うそを信じてしまった」と離脱に投票したことを後悔する書き込みが増加し、BREGRET
(Britain Regret) という言葉が使われるようになった。
欧州議会選挙は 、英国の下院選挙などと異なり、日常生活にはあまり関係がない。特に今回は、異常事態が起こらない限り、10月末には英国はEUから離脱することとなっており、議員としての任期は7月2日から4カ月に過ぎない。
EUとの合意書で、選挙をしなければ10月末でなく5月末に離脱をする必要があるため、やむを得ず選挙をするだけである。誰が議員になっても関係がない。
英国が 5/23〜26の欧州議会選挙期間中にEUメンバーである場合、英国は欧州議会選挙の義務を持つ。
それにも関わらず欧州議会選挙をしない場合、延期は5月31日に終了する。
元々欧州議会選は「人気投票」に流れる傾向があるが、今回は強硬離脱派の新党 Brexit Party が猛烈な選挙運動を行い、世論調査で30%の支持を集めていた。
この結果、離脱に賛成か反対かを選ぶ選挙になってしまい、離脱派と残留派が争う保守党と、中途半端な姿勢の労働党には票が入らず、特に保守党は議席でたったの4議席、得票率では1桁の9.1%にとどまった。
逆に、Hard Brexit 主張の2党は得票率 34.9%、EU残留を主張する5党は40.4%を勝ち取った。
EU残留派が40.4%も取ったこの結果は、最終的な方向決定に影響を与える可能性がある。
議席数
今回の得票率
今回
直前
増減
前回当選
独立党
0
3
-3
24
Hard Brexit
34.9%
3.3%
Brexit
29
14
+15
0
31.6%
労働党
10
18
-8
20
最大野党
14.1%
保守党
4
18
-14
19
政権与党
9.1%
緑の党
7
3
+4
3
EU 残留
40.4%
12.1%
スコットランド国民党
3
2
+1
2
3.6%
自由民主党
16
1
+15
1
20.3%
プライドカムリ
1
1
± 0
1
1.0%
Change UK
0
1
-1
0
3.4%
independent
0
6
-6
0
社会民主党
0
1
-1
0
(欠員)
2
-2
本土合計
70
70
± 0
70
Sinn Fein
1
1
± 0
1
民主統一党
1
1
± 0
1
アルスター統一党
0
1
-1
1
Alliance
1
0
± 1
0
合計
73
73
± 0
73
ーーー
メイ首相の辞意表明により、状況が変わった。
保守党の次期党首(与党党首が首相となるため、次期党首は自動的に首相)の選挙の立候補締切日は6月10日となった。
立候補者が3人以上の場合、まずは保守党議員によってこれを2人にまで絞る投票が行われる。既に8人が立候補を表明しており、更に増える可能性がある。
その後、イギリス全土の保守党党員による郵便投票が行われ、夏の議会開会までに結果が発表される。
10月末までの貴重な時間が浪費される。
2019/5/30 米国、半期為替報告書を公表、9か国を為替監視リストに
米財務省は5月28日、貿易相手国の通貨政策を分析した半期為替報告書を公表した。
Macroeconomic and Foreign Exchange Policies of Major Trading Partners of
the United States
日本と中国とドイツ、韓国を引き続き「監視リスト」に指定した。スイス、インドは今回、リストから外れた。新しく、アイルランド、ベトナム、イタリア、マレーシア、シンガポールをリストに加えた。
合計9カ国となった。
今回から基準を一部変更したが、イタリアとマレーシアは旧基準では対象外で、変更により対象となった。
未確認だが、シンガポール(外為市場への介入月数)もその可能性がある。
中国について、こう述べている。
昨年1年間のモノの対米貿易黒字は4,190億ドルで、これは中国の非関税障壁、非市場メカニズム、国家補助金、その他の施策の結果である。中国への輸入を妨げ、また外国の投資を妨げている。
2018年1年間で人民元は米ドルに対し5.4%安くなった。更に中国の対米黒字が増えることとなる。
為替介入をしないというG20での約束を守ることを注視する。
ーーー
2016年2月24日、 2015年貿易円滑化・貿易履行強制法が 成立した。これは アンチダンピング法、相殺関税法および貿易救済法などを強化したものだが、上院の審議で為替操作国に対する措置 が盛り込まれた。
対象は、重大な対米貿易黒字と実質的な経常黒字を有し、外為市場に対する長期かつ一方的な介入を行った米国の主要貿易相手国で、米財務省は次の基準で選ぶこととした。
今回、この基準を一部改正した。
従来の基準
2019/5より改正
@重大な対米貿易黒字
対米貿易黒字が200億ドル(米国GDPの約0.1%) 以上
同左
A実質的な経常黒字
経常黒字がその国のGDPの3.0% 以上
GDPの2.0% 以上
B外為市場に対する介入
GDPの2%以上(ネットで)の額の外貨を繰り返し購入
(12カ月のうち、8カ月 )
同左
(12カ月のうち、6カ月 )
財務省は2016年4月の報告で、3つの基準全てに当て嵌まる国はないことを確認したが、米国の主要貿易国の5カ国が3つの基準のうち2つに該当することを見つけた。
このため、新しい「監視リスト」を創設し、この5国を監視していくこととしたもの。
2016/5/2 米、日本や中国などを為替操作「監視リスト」に
その後の「監視リスト」の対象は次の通り。
日本
中国
韓国
台湾
ドイツ
スイス
インド
アイルランド
ベトナム
イタリア
マレーシア
シンガポール
2016/4
〇
〇
〇
〇
〇
ー
ー
ー
ー
ー
ー
ー
2016/10
〇
〇
〇
〇
〇
〇
ー
ー
ー
ー
ー
ー
2017/4
〇
〇
〇
〇
〇
〇
ー
ー
ー
ー
ー
ー
2017/10
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2018/4
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2018/10
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2019/5
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@A
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@
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@ A
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〇
@A
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AB
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@B
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@A
〇
@A
〇
@A
〇
@A
〇
AB
中国は、2016/10以降は@の1つしか基準を超えていないが、対米貿易黒字が膨大なため、次回の報告書でも自動的に指定される。今回も同様である。
韓国は今回、@が基準から外れたが、引き続きリストに残る。この状況が続けば、次からは外れる。
各国の状況は下記の通り。